特表2019-514250(P2019-514250A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-514250ミリ波信号伝送用の低損失誘電体導波路および低損失誘電体導波路を含むケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-514250(P2019-514250A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(54)【発明の名称】ミリ波信号伝送用の低損失誘電体導波路および低損失誘電体導波路を含むケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01P 3/16 20060101AFI20190510BHJP
【FI】
   H01P3/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-548188(P2018-548188)
(86)(22)【出願日】2017年3月15日
(85)【翻訳文提出日】2018年9月28日
(86)【国際出願番号】EP2017056178
(87)【国際公開番号】WO2017158062
(87)【国際公開日】20170921
(31)【優先権主張番号】16160596.9
(32)【優先日】2016年3月16日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100121533
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 まどか
(72)【発明者】
【氏名】ルッシュ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ディットマン,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】アルマイダ,カルロス
【テーマコード(参考)】
5J014
【Fターム(参考)】
5J014HA01
(57)【要約】
本発明は、ミリ波信号伝送用の誘電体導波路および上記誘電体導波路を含むケーブルを提供する。誘電体導波路は、電磁場を誘電体導波路に沿って通すことによりミリ波信号を伝送するように構成された誘電体媒質を有する内部コアを含む。誘電体媒質は誘電体を含み、誘電体は、伝搬する電磁場を内部コアに閉じ込めるように構成された誘電特性を有し、かつミリ波周波数範囲の信号周波数で低伝送損失を加える。誘電体媒質を、固体誘電体のコア、内部コアの長さに沿って延びるファイバの1つまたは複数の束、または内部コアの容積を満たす誘電体の粒子として設けることができる。誘電体は石英またはアルミナとすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波信号伝送用の誘電体導波路であって、
前記誘電体導波路は、電磁場を前記誘電体導波路に沿って通すことによりミリ波信号を伝送するように構成された誘電体媒質を含む内部コア(110;210;310)を含み、
前記誘電体媒質(120;220;320)は誘電体を含み、
前記誘電体は、伝搬する前記電磁場を前記内部コア(110;210;310)に閉じ込めるように構成された誘電特性を有し、かつミリ波周波数範囲の信号周波数で低伝送損失を加える誘電体導波路。
【請求項2】
前記誘電体媒質(120;220;320)は、前記ミリ波周波数範囲の信号周波数で3.0よりも高い比誘電率および0.001よりも低い損失正接を特徴とする、
請求項1に記載の誘電体導波路。
【請求項3】
前記ミリ波周波数範囲は、50GHz〜300GHzの範囲の周波数を含む、
請求項1または2に記載の誘電体導波路。
【請求項4】
前記内部コア(110;210;310)を取り囲むクラッディング(130;230;330)をさらに含み、前記クラッディング(130;230;330)は、前記ミリ波周波数範囲の周波数で前記電磁場を前記内部コア(110;210;310)にさらに閉じ込めるように構成された、
請求項1から3のいずれか一項に記載の誘電体導波路。
【請求項5】
前記クラッディング(130;230;330)は、前記内部コア(110;210;310)に直接隣接し、非金属材料から作られている、
請求項4に記載の誘電体導波路。
【請求項6】
前記クラッディング(130;230;330)は、前記ミリ波周波数範囲の周波数で0.001よりも低い損失正接を有するポリマー材料から作られている、
請求項4または5に記載の誘電体導波路。
【請求項7】
前記誘電体は、
3.0よりも高い比誘電率および0.0001よりも低い損失正接を有する石英、および/または、
アルミナを含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の誘電体導波路。
【請求項8】
前記誘電体媒質(120)は前記誘電体の固体である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の誘電体導波路。
【請求項9】
前記誘電体媒質(320)は、前記内部コア(310)の容積を満たす前記誘電体の粉末および/または粒子を含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の誘電体導波路。
【請求項10】
前記誘電体媒質(220)は、前記誘電体から作られている複数のファイバ(225)の1つまたは複数の束を含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載の誘電体導波路。
【請求項11】
少なくとも1つの束の前記複数のファイバ(225)の各々は、前記内部コア(210)に沿って延びる、
請求項10に記載の誘電体導波路。
【請求項12】
少なくとも1つの束の前記複数のファイバは、前記内部コアに沿って延びる糸を形成し、前記糸の各ファイバの長さは前記内部コアの長さよりも短い、
請求項10または11に記載の誘電体導波路。
【請求項13】
前記ミリ波周波数範囲の信号周波数で、伝搬する前記電磁場の約3%未満が前記誘電体導波路を取り囲む媒質によって通される、
請求項1から12のいずれか一項に記載の誘電体導波路。
【請求項14】
前記取り囲む媒質は空気である、請求項13に記載の誘電体導波路。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の誘電体導波路(100;200;300)を含む、ミリ波周波数で信号を伝送するためのケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波通信リンク用の誘電体導波路に関し、より詳細には、ミリ波周波数で動作する通信リンクに低伝送損失を加える誘電特性を有する誘電体導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバに基づく通信リンクを、例えば200nm〜2000nmの範囲の伝送信号波長での高速データ伝送用の完全電線リンク(電線だけのリンク)の代わりとして使用することが多くなっている。(データ転送速度)帯域幅を常に拡大する必要があることに鑑みて、電線リンクの長さは伝送損失によって制限されるが、光リンクは実用性が高く、長いリンク長さに広く使用されている。他方、従来の光リンクの解決策は、非ケイ素半導体技術、ファイバ位置合わせ、および表面精度に伴うコストによりリンク長さが短くなるにつれて関心が薄れる。
【0003】
誘電体導波路/ファイバは、低損失でミリ波信号を伝送するのに有用であることがわかっており、85GHzおよび140GHz前後のキャリア周波数を使用する新しい通信システムの候補となることが期待されている。しかしながら、高周波数範囲内で動作する集積回路の伝送電力は制限されており、それぞれの受信機は最小の信号入力電力レベルを必要とするため、十分なリンク長さを得るためには非常に低い減衰レベルの導波路が必要となる。純粋な誘電体から構成され金属部分を含まない誘電体導波路では、進行波の電磁場分布が、誘電体コア内で伝搬する部分と、ファイバを取り囲む媒質内、通常は空気内を伝搬する部分とに細分される。しかしながら、最も入手しやすい誘電体の誘電損失正接tanδにより、そのような誘電体導波路は通信リンクに非常に高い伝送損失を加える。
【0004】
調査研究によれば、非常に低い伝送損失を有する従来の誘電体導波路は、主に取り囲む空気内で伝搬場を導くようである。このため、ファイバの長さに沿ってより低い損失を得るために、従来の誘電ファイバは、通常、電磁場のかなりの部分がファイバを取り囲む媒質内を確実に伝搬するように構成される。しかしながら、そのような従来の構成は、ファイバを取り囲む媒質内を伝搬する電磁場と誘電体導波路に触れる指または手などの外部作用物(外部要因)との相互作用により、伝送信号の品位が低下する、またはさらには妨げられることがあるという欠点を有する。例えば、1メートルにわたる120GHzの12.7Gbpsリンクを、従来のポリマー材料に基づく誘電体導波路によって実現できることがわかっている。しかしながら、ユーザがファイバに触れると、ファイバに沿った信号伝送が妨げられることがある。
【0005】
米国特許出願公開第2014/0368301(A1)号は、伝送信号と外部物体との電磁妨害を減らす手段として、誘電ファイバのコアおよびクラッディング層の周りに金属シールドを加えることを記載している。しかしながら、銅またはアルミニウムシールドなどの金属シールドを含む誘電体導波路には、かなりのコストがかかる。さらに、ポリマーと金属材料とを組み込んだ導波路の製造プロセスは、ポリマー材料のみから作られる導波路よりも複雑で時間がかかる。加えて、入手可能な誘電体導波路は、伝搬電磁場のほとんどが誘電コアを取り囲む媒質(空気/発泡体)内を進行するように構成されるため、そのような導波路はかなり大きい断面を示し、それによりコンパクトな設計を必要とする適用において使用が制限されるおそれがある。
【0006】
したがって、通信リンクに低伝送損失を加え、誘電体導波路に沿って信号品位を維持することができ、簡単かつコスト効率の高い方法で製造することができ、既存の先行技術よりも直径の小さい、ミリ波信号伝送用の誘電体導波路の解決策が依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、先行技術の短所および欠点を考慮してなされたものであり、その目的は、低伝送損失を加え、通信リンクに沿って信号品位を維持し、かつ金属部分を有する導波路構成よりも製造コストが低いミリ波信号伝送用の誘電体導波路、および誘電体導波路を含む低損失ケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、添付の独立請求項の主題によって解決される。本発明の有利な実施形態は、添付の従属請求項の主題である。
【0009】
本発明は、ミリ波信号伝送用の誘電体導波路を提供する。この誘電体導波路は、電磁場を誘電体導波路に沿って通すことによりミリ波信号を伝送するように構成された誘電体媒質を含む内部コアを含む。誘電体媒質は誘電体を含み、誘電体は、伝搬電磁場を内部コアに閉じ込めるように構成された誘電特性を有し、かつミリ波周波数範囲の信号周波数で低伝送損失を加える。
【0010】
さらなる発展において、前記誘電体媒質は、前記ミリ波周波数範囲の信号周波数で3.0よりも高い比誘電率および0.001よりも低い損失正接を特徴とする。
【0011】
さらなる発展において、前記ミリ波周波数範囲は、50GHz〜300GHzの範囲の周波数を含む。
【0012】
さらなる発展において、誘電体導波路は、内部コアを取り囲むクラッディングをさらに含む。クラッディングは、前記ミリ波周波数範囲の周波数で電磁場を内部コアにさらに閉じ込めるように構成される。
【0013】
さらなる発展において、前記クラッディングは、前記内部コアに直接隣接し、非金属材料から作られている。
【0014】
さらなる発展において、前記クラッディング層は、前記ミリ波周波数範囲の周波数で0.001よりも低い損失正接を有するポリマー材料から作られている。
【0015】
さらなる発展において、前記誘電体は、3.0よりも高い比誘電率および0.0001よりも低い損失正接を有する石英および/またはアルミナを含む。
【0016】
さらなる発展によれば、前記誘電体媒質は前記誘電体の固体である。
【0017】
さらなる発展によれば、前記誘電体媒質は、内部コアの容積を満たす前記誘電体の粉末および/または粒子を含む。
【0018】
さらなる発展によれば、前記誘電体媒質は、前記誘電体から作られている複数のファイバの1つまたは複数の束を含む。
【0019】
さらなる発展によれば、少なくとも1つの束の複数のファイバの各々は、内部コアに沿って延びる。
【0020】
さらなる発展によれば、少なくとも1つの束の複数のファイバは、内部コアに沿って延びる糸を形成し、糸の各ファイバの長さは内部コアの長さよりも短い。
【0021】
さらなる発展によれば、前記ミリ波周波数範囲の信号周波数で、伝搬電磁場の3%未満が誘電体導波路を取り囲む媒質によって通される。
【0022】
取り囲む媒質は空気であってよい。
【0023】
本発明はまた、本発明の誘電体導波路を含む、ミリ波周波数で信号を伝送するためのケーブルを提供する。
【0024】
添付図面が本明細書に組み込まれ、明細書の一部を形成して本発明のいくつかの実施形態を示す。これらの図面は、明細書と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。図面は、本発明を製造および使用し得る方法についての好ましい例および代替例を示すためのものに過ぎず、本発明を図示し記載する実施形態に限定するものと解釈すべきではない。さらに、実施形態のいくつかの態様は、個々にまたは異なる組合せで本発明による解決策を形成することができる。したがって、以下に記載する実施形態を単独または任意の組合せで考察することができる。
【0025】
さらなる特徴および利点が、添付図面に示す本発明の様々な実施形態の以下のより詳細な説明から明らかになろう。図中、同一の参照符号は同一の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態による誘電体導波路の概略図である。
図2】本発明のさらなる実施形態による誘電体導波路の概略図である。
図3】本発明のさらなる実施形態による誘電体導波路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下で、本発明の例示的な実施形態を示す図面を参照しながら、本発明についてより完全に説明する。しかしながら、本発明は多くの異なる形で具体化することができ、本明細書で説明する実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。それどころか、これらの実施形態は、開示が網羅的かつ完全であるように提示され、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるものである。
【0028】
以下で、図1を参照しながら、ミリ波信号伝送用の誘電体導波路100について説明する。誘電体導波路100は、誘電体導波路の長さLに沿って延びる内部コア110を含む。内部コア110は、ミリ波信号に関連する電磁場を通すことによってミリ波信号を誘電体導波路100に沿って伝送するための誘電体媒質120を含む。誘電体媒質120は、伝搬電磁場を内部コア110に閉じ込めるように選択される誘電特性を有し、かつミリ波周波数範囲、例えば50GHz〜300GHzの周波数範囲の信号周波数で低伝送損失を導入する誘電体を含む、または誘電体から作られる。
【0029】
低伝送損失および低減衰特性を達成するために、誘電体媒質120の誘電体は、ミリ波周波数範囲の信号周波数で3.0よりも高い比誘電率εおよび0.001よりも低い損失正接tanδを示すように選択される。誘電体媒質120に高比誘電率値(ε>3.0)を有する誘電体を使用することにより、電磁場のかなりの部分が誘電体媒質120内に閉じ込められ、電磁場の小さい部分のみが、内部コア110を取り囲む媒質内を伝搬する。その結果、誘電体導波路100に沿った信号伝搬は、取り囲む物体との接触または電磁結合の影響を比較的受けにくく、かつ導波路100に沿って低伝送損失を加える。例えば、誘電体媒質120に選択される誘電体は石英であってよく、石英は、ミリ波周波数で4.0よりも高い比誘電率εおよび0.0001よりも低い損失正接tanδを示すことができる。石英の比誘電率の公表値は、50GHz〜300GHzの考えられる周波数範囲内において、材料の純度に応じて3.5〜4.3で変動する。内部コア110の誘電体媒質120に使用可能な低損失低減衰誘電体の別の例は、アルミナである。アルミナは、約100GHzの周波数で、(純度に応じて)約9.0の高比誘電率εおよび低損失正接tanδ<0.0007を示すことができる。
【0030】
誘電体媒質120の誘電特性は、ミリ波周波数で所望の低伝送損失および周囲環境による影響の少なさをもたらすのに十分であり得る。但し、誘電体導波路100は、内部コア110の周りに配置されたクラッディング130を含んで、伝搬電磁場を内部コア110にさらに閉じ込めることもできる。図1に示すように、クラッディング130を誘電体媒質120に直接隣接して誘電体媒質120を取り囲んで設け、高誘電低損失の内部コア110によってもたらされる波閉じ込めの効果を強化することができる。図1に示すように、クラッディング130を誘電体の単層として設けることができる。しかしながら、クラッディング130を複数の誘電層を含む多層構造として実施し、これらの誘電層のそれぞれの比誘電率が、誘電体導波路100の中心から外方へと低下してもよい。クラッディング130は、好ましくは、誘電体導波路100の組成に金属の使用を避けるように、非金属材料から作られる。特に、クラッディング130は、好ましくは、誘電体媒質120の比誘電率よりも低い比誘電率を有するポリマー材料などの誘電体から作られる。クラッディング130に選択される材料も、クラッディング130自体により導入される伝送損失を最小化するように、誘電体媒質120の損失正接に相当する値を有する低損失正接(tanδ)を示すことができる。しかしながら、誘電体媒質120の誘電特性により、内部コア110の外側で伝搬する電磁場の部分がすでに小さくなっているため、クラッディング130はミリ波周波数で大きい伝送損失を導入すべきでない。例えば、誘電体導波路100が石英の内部コア110およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から作られたクラッディング層130を有し、10GHzで約2.1の比誘電率εおよび約0.00015の損失正接tanδを示す構成について、非常に低い減衰(<2dB/m)を達成することができる。クラッディング層130の別の適切な材料は、PTFEとポリエチレン(PE)との組合せである。
【0031】
石英の内部コア110(2×1.5mm)およびPTFEベースの円形のクラッディング層130(外径d=4mm)を有し、取り囲む媒質として空気を使用する、140GHzのキャリア周波数用に設計された誘電体導波路100の信号減衰のシミュレーション結果は、金属シールドを使用することなく、伝搬電磁場の3%未満が取り囲む媒質(空気)内に通されることを示す。これに対して、それぞれ約2.4および2.15の比誘電率εを示す、低密度ポリエチレン(LPDE)から作られたコアおよびポリプロピレン(PP)のクラッディングを有する従来の誘電体導波路ファイバについて得られたシミュレーション結果は、約0.48mmのファイバ外径および0.4mm×0.2mmの矩形断面を有するコアについて、140GHzで約3.8dB/mの伝送損失を達成できることを示す。しかしながら、この場合、1メートル当たりの低伝送損失は、ファイバを取り囲む空気中を伝搬する電磁場成分のかなりの部分によるものであり、伝送波が接触および/または取り囲む成分との結合による強い影響を受けやすくなる。
【0032】
図1に示す誘電体導波路100の構成では、誘電体媒質120は、アルミナまたは石英などの高誘電率低損失誘電体の固体コアとして設けられる。しかしながら、固体状でのこれらの材料の剛性により、誘電体導波路100はかなり堅く曲げにくくなる。
【0033】
図2および図3は、前述した固体コア110を有する誘電体導波路100と比べて可撓性を改善した、低損失誘電体導波路の代替構成を示す。
【0034】
図2を参照すると、誘電体導波路200は内部コア210を含み、内部コア210内で、伝送信号に関連する電磁場を通すための誘電体媒質220は、高誘電率低損失誘電体から作られた複数のファイバ225を含む。各単一ファイバ225は、固体コア110と同様の誘電特性をもたらすように、石英またはアルミナなどの前述した内部コア110の固体誘電体媒質120に使用されるものと同じ誘電体から作ることができる。しかしながら、各単一ファイバ225の断面がより小さいことにより、直径がより大きい固体コアと比べて可撓性が向上するため、可撓性を有する誘電体媒質220を提供することができる。ファイバ225は、好ましくは、束状に配置され、ほとんどのミリ波信号の適用に適した数ミリメートルの断面を有する誘電体媒質220を提供するのに十分な数だけ設けられる。ミリ波信号の比較的大きい波長により、固体コア110の代わりにファイバの束を誘電体媒質220として使用しても、誘電体導波路200に沿った波信号の伝搬に大きく影響しない。
【0035】
図2に示すように、束の各単一ファイバ225は、誘電体導波路200の全長Lにわたって連続して延びることができる。加えて、単一ファイバ225を互いに略平行に延びるように配置して、コンパクトな配置とし、単一ファイバフィラメントの断線を避けることができる。
【0036】
ファイバ束のフィラメントの断線は、光リンクで使用される光導波路にとって重大な問題である。断線によって、光が光導波路の外で結合するからである。ミリ波周波数では、伝送信号の波長がより大きいため、ファイバ束の長さに沿ったフィラメントの途切れは、重大なものではない。したがって、低損失な誘電体導波路200の代替構成を実現することができ、この構成では、内部コアの誘電体媒質が、前述した高誘電率および低損失正接を有する同じ誘電体から作られた、より短いファイバの1つまたは複数の束を含み、より短いファイバは誘電体導波路の全長Lを有していない。より短いファイバの束の誘電特性を向上させるために、これらのファイバを紡いで、織編用糸のような糸またはより糸を形成することができる。これにより、より短いフィラメントを束にして必要な直径の可撓性糸にし、誘電体導波路200の内部コアのための可撓性誘電体媒質を提供することが可能となる。
【0037】
図2に示す誘電体導波路200の内部コア210は略矩形形状の断面を有するが、内部コアの誘電体媒質を形成するファイバ225または短いフィラメントを、正方形、円形、または楕円形などの別の形状の断面を有する束に配置してもよい。
【0038】
加えて、図1を参照して説明した導波路構成と同様に、内部コア210を取り囲むクラッディング230を施すことにより、可撓性のコア210をさらに加工してもよい。好ましくは、クラッディング230は、前述したクラッディング130と同様に、可撓性のコア210に直接隣接して配置され、非金属材料から作ることができる。
【0039】
以下で、図3を参照しながら、可撓性かつ低減衰低損失なミリ波信号伝送用の誘電体導波路300を実現するための代替構成について説明する。図示した構成では、誘電体導波路300は内部コア310を含み、内部コア310内で、伝搬波を通すための誘電体媒質320が、内部コア310の容積を満たす、高比誘電率および低損失正接、すなわちε>3.0およびtanδ<0.001の誘電体の粉末および/または粒子から作られる。例えば、誘電体媒質320は石英粉末またはアルミナ粒子のコアであってよい。粒子状の誘電体媒質320の一部が、ε=1.0およびtanδ=0.0を示す空気などの別の媒質で満たされるため、誘電体媒質320の有効比誘電率および損失正接は、同じ誘電体から作られた固体コアの有効比誘電率および損失正接よりも低くてよい。それにもかかわらず、アルミナまたは石英などの高誘電率を特徴とする誘電体の粉末を使用することにより、3.0よりも高い有効比誘電率εおよび低伝送損失を達成することができる。例えば、アルミナの内部コアの場合、有効比誘電率εが、固体コアにより示される約9.0から粒子コアの場合の約4.0〜5.0まで低下することが予想される。したがって、ミリ波信号周波数で低損失特性を有し、かつ同じ固体誘電体のコアを有する誘電体導波路と比べて高い可撓性を有する誘電体導波路を実現することが可能である。
【0040】
先の実施形態と同様に、誘電体導波路300も、伝搬場と外部作用物との相互作用をさらに減らすように、内部コア310を取り囲むクラッディング層330を含むことができる。前述したように、クラッディング層330は内部コア310に直接隣接することができ、好ましくは、非金属材料、例えば、PTFE、PE、または当技術分野で公知の他のポリマーを含むポリマー材料から作られる。
【0041】
ジャケット(図示せず)を、前述した誘電体導波路の内部コアおよびクラッディングの周りに設けてもよい。
【0042】
したがって、ミリ波信号の比較的大きい波長により、同じ高誘電低損失誘電体の固体コアと比べて、内部コアのキャリア媒質が、導波路の全長を有する単一ファイバの束、より短いファイバフィラメントの糸、および/または粉末/粒子として実施されることによって、波の伝搬が大きな影響を受けることがなくなる。加えて、粉末材料、および/または純粋な固体材料のコアよりも直径が小さいファイバの束から作られたコアの可撓性が向上することにより、固体材料が前述した高誘電低損失誘電体に関連する低損失特性を損なうことなく、誘電体導波路の曲げ特性を大きく向上させることが可能となる。
【0043】
加えて、前述した構成のいずれかによる1つまたは複数の誘電体導波路を単一ケーブルに組み込むことにより、高速通信用の低損失ケーブルを提供することができる。
【符号の説明】
【0044】
100 誘電体導波路
110 内部コア
120 誘電体媒質
130 クラッディング層
200 誘電体導波路
210 内部コア
220 誘電体媒質
225 複数のファイバ
230 クラッディング層
300 誘電体導波路
310 内部コア
320 誘電体媒質
330 クラッディング層
L 誘電体導波路の長さ
図1
図2
図3
【国際調査報告】