【実施例】
【0142】
以下の実施例は、本発明を作成し使用する方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために示され、本発明者らが本発明と見なすものの範囲を限定するためのものではなく、下記の実験が実施された全てまたは唯一の実験であることを表すためのものでもない。使用された数字(例えば、量、温度等)に関しては、正確さを確実にする努力がなされたが、いくらかの実験誤差および偏差は考慮に入れられるべきである。そうでないことが示されない限り、部分は重量部分であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0143】
実験方法
ベクターおよびレンチウイルス上清の作製。本明細書中に記載されるように、LVを生成した。coRPK配列は、配列のGC含量を増加させ、潜在性のスプライス部位を防止するため、GeneArt(登録商標)ソフトウェアを使用して設計された。ベクターは、Dr.Naldini(HSR-TIGET, San Raffaele Telethon Institute, Milano, Italy)から寛大に提供されたpCCL.sin.ppt.hPGK-EGFP-Wpre*構築物を骨格として使用して開発された。VSV-Gシュードタイプ化LVのベクターストックは、以前に記載されたように[Follenzi A, et al.(2000).Nat Genet 25:217-222]、293T細胞(ATCC:CRL-1573, Rockeville, MD, USA)における3プラスミドリン酸カルシウム媒介トランスフェクションによって調製された。感染性LVの力価は、他の場所に記載されたように[Charrier S, et al.(2005).Gene Ther 12:597-606]、qPCRによって、HT1080細胞(ATCC:CCL-121)において決定された。10
7〜10
8ウイルス粒子(vp)/mLの力価のレンチウイルスストックが、ルーチンに入手された。
【0144】
マウスHSCの精製および形質導入。8〜14週齢雄PKDマウスに由来するBMを、脚骨から採集し、Lin
-細胞枯渇キット(Miltenyi Biotec, Gladbach, Germany)を使用して、系統陰性細胞(Lin
-)を精製し、70〜90%の純度を得た。Lin
-細胞を、20%FBSおよび0.5%抗生物質(50U/mLペニシリンおよび50μg/mLストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA))が補足されたIMDM-Glutamax培地において、100ng/mLの組換えヒトIL-11(Peprotech EC Ltd., London, UK)および100ng/mLの組換えマウスSCF(R&D Systems Inc., Minneapolis, MN)によって24時間予備刺激し、次いで、1〜10vp/細胞のMOIで、2サイクルの形質導入において、EGFPまたはcoRPKを保持するLVによって形質導入した。各形質導入は、4℃で一晩、CH-296フィブロネクチン断片(2μg/cm
2;Retronectin, TakaraShuzo, Otsu, Japan)で事前にコーティングされたプレートにおいて、前記サイトカインの存在下で24時間実施された。
【0145】
インビボRBC生存。coRPKトランスジーンを保持する移植マウスに、ビオチン3-スルホ-N-ヒドロキシサクシニミドエステルナトリウム塩(50mg/kg)(Sigma Aldrich, Saint Louis, MO)の3回の連続的な静脈注射(12時間間隔)を注射した。最後の注射の12時間後に、尾静脈血を採集し、4℃で30分間、2μg/mLの抗マウスTer119-PE(BD Bioscience, San Jose, CA)およびストレプトアビジン-FITC(50μg/mL, BD Biosciences, San Jose, CA)によって標識した。注射後40日間、2〜4日毎に、EPICS XLフローサイトメーター(Beckman Coulter, Brea, CA)によって試料を分析した。RBC生存速度論を、全RBC集団内のビオチン化細胞の百分率によって測定した。
【0146】
CFCアッセイ。CFCアッセイは、Methocult培地GF M3434(Stem Cell Technologies, Vancouver, Canada)からの製造業者の手法に従って、対照マウスおよび移植マウスに由来するBMおよび脾臓において実施された。全てのマウス群から、移植後の異なる時点で、BM細胞を採集し、Nikon Diaphot-TMD顕微鏡への播種の7日後に、CFU(30個以上の細胞のクラスタ)をスコア化した。
【0147】
造血系統の同定。PBMCを、移植動物の尾静脈から入手し、異なる造血細胞を検出するための抗体のパネルによって標識した。骨髄系細胞は、抗GR-1ビオチン化抗体および抗Mac-1ビオチン化抗体(BD Bioscience, San Jose, CA、5μg/mL)によって検出され、リンパ系細胞は、T細胞については抗CD3-PE抗体、B細胞については抗B220-PE抗体および抗B220-PECy5抗体(BD Bioscience, San Jose, CA、10μg/mL)を、SAV-TRC二次抗体(Invitrogen, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)と共に使用して検出された。死細胞を排除するため、DAPI(Boehringer, Ingelheim, Germany、2μg/mL)を添加して、BD LSR Fortessa Cytometer(BD Bioscience, San Jose, CA, USA)において、試料を分析した。
【0148】
構造的研究および組織学的研究。脾臓を収集し、写真撮影し、脾腫の存在を決定するため、精密スケールで計量した。従来の組織学的方法に従って入手され、ヘマトキシロン(Gill-2 Haematoxylin, Thermo, Pittsburgh, USA)およびエオシン(Eosin Alcoholic, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)で染色された脾臓および肝臓の切片に対して、組織学的研究を実施した。製造業者の説明書に従って、プルシアンブルーまたはペルルス染色(Sigma Aldrich, Saint Louis, MO)によって、脾臓における鉄沈着物も研究した。全ての切片を、Olympus BX40光学顕微鏡を使用して調査し、100倍または200倍の最終倍率で、Olympus DP21カメラで写真撮影した。
【0149】
赤血球分化。4μg/mLの抗マウスTer119-PE抗体(BD Bioscience, San Jose, CA)、10μg/mLのビオチン化抗CD71抗体(BD Bioscience, San Jose, CA)、およびストレプトアビジン-tricolor(Invitrogen, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)を使用して、他の場所に記載されるように[Socolovsky M, et al. (2001). Blood 98:3261-3273]、異なる赤血球亜集団を同定するため、BMおよび脾臓におけるTer119マーカーおよびCD71マーカーの強度のフローサイトメトリー分析を使用した。次いで、生細胞を検出するため、ヨウ化プロピジウム(IP、2μg/mL)を使用して、EPICS XLフローサイトメーター(Beckman Coulter, Brea, CA)において細胞を分析した。
【0150】
プロウイルス定量化。1細胞当たりの組み込まれたプロウイルスの検出および定量化は、パッケージングプロウイルス配列(Ψ)およびマウスTitinハウスキーピング遺伝子に相補的なプライマーを使用して達成された。全てのBM試料および末梢血試料を定期的に収集し、DNeasy Blood & Tissueキット(Qiagen, Venlo, Limburg, The Netherlands)を使用して、ゲノムDNAを有核細胞から単離した。7500 Fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)ならびに以前に記載されたプライマーおよびプローブを使用した多重qPCRによって、20〜50ngのゲノムDNA(gDNA)を増幅した[Charrier S, et al. (2011). Gene Ther 18:479-487]。
【0151】
キメリズム。ドナー細胞の存在を、Y染色体SRY遺伝子およびマウスβアクチンハウスキーピング遺伝子を検出するqPCRによって定量化した。以前に記載されたプライマーおよびプローブ[Navarro S et al(2006). Mol Ther 14:525-535]を使用し、移植マウスのPBに由来するゲノムDNAを、7500 Fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)を使用して増幅した。雄/雌マウス混合物に由来する0%から100%のBM細胞を含有している試料からのgDNA抽出物を使用して、標準曲線を調製し、キメリズムを以下のように計算した。ドナー生着%=100×2
(CtβAct-CtSRY)。
【0152】
LAM-PCR手法。ベクター組み込み部位を同定するため、3'ベクターLTR-ゲノムジャンクションを、Schmidt et al. 2007[Nat Methods 4:1051-1057]によって発表された方法に従って、LAM-PCRによって増幅した。初期の直線的増幅(100サイクル)を、ビオチン化LTR特異的プライマーおよび鋳型としての100ngまでのgDNAを使用して実施した。直線的増幅産物を、ストレプトアビジン磁気ビーズを使用して精製した後、相補鎖合成、2種の異なる制限酵素(Tsp509IおよびHpyCH4IV)による平行消化、ならびに酵素切断によって残された末端に相補的なリンカーカセットを使用した2種のライゲーション反応を行った。生成された断片を、2回の付加的な指数関数的PCR工程によって増幅した。MultiNA自動系(Shimadzu)におけるゲル電気泳動によって、LAM-PCR産物を分離し、定量化した。
【0153】
Illumina MiSeq配列決定のためのLAM-PCR産物のセットアップ。Parazynskiら[Paruzynski A, et al. (2010). Nat Protoc 5:1379-1395]によって発表された方法に従って、Tsp509I酵素およびHpyCH4IV酵素によって生成された第2の指数関数的PCR産物40ngを、Illumina MiSeqシーケンサーでのペアードエンドシーケンシングを可能にする特異的配列を含有している融合プライマーを使用して再増幅した。Roche 454 GS-FLXアダプターを付加するための融合PCRによって、LAM-PCR試料を454パイロシーケンシングのために適応させた:アダプターA+8ヌクレオチドバーコードを、LAM-PCRアンプリコンのLTR末端へ付加し;アダプターBを、リンカーカセット側へ付加した。5'-3'方向に、最終アンプリコンは、以下のように構成された:アダプターA、バーコード、LTR配列、未知のゲノム配列、リンカーカセット配列、およびプライマーB。精製された融合プライマーPCR産物を、MultiNA自動電気泳動系において実行し、定量化し、10nMの最終等モルライブラリーを入手するため、共にプールした。次いで、最終ライブラリーを、Viia7 real-time PCR system(Applied Biosystems, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)で、KAPA Library Quantification Kit for Illumina Sequencing Platform(Kapa Biosystems, Wilmington, MA)を使用して再定量化し、16.35nMという推定濃度を得た。最後に、Illumina MiSeq Reagent Kitを使用してライブラリーを配列決定した。
【0154】
バイオインフォマティクス分析。ハイスループットシーケンシングプラットフォーム、Roche 454およびIllumina MiSeq/HiSeqの両方からベクター組み込み部位(IS)を抽出するため、信頼性のあるISおよび最も近い遺伝子のリストを提供する、生データを取り込むパイプライン(典型的には、FastQファイルフォーマット)を設計した。クローン存在量定量化およびジーンオントロジー濃縮の上位レベルの分析は、Excel、GraphPad Prism(TM)、および入手可能なオンラインツールを使用して実施された。
【0155】
NGSデータ処理およびパイプライン使用法。全ての有効なシーケンスリードを参照ゲノムと整列させるNGSデータ処理の工程は、Illumina MiSeqシーケンシングプラットフォームからのハイスループットデータの管理に取り組み、ISを同定することを目標とする。データ処理は、2種の主要なアクティビティを含む:1. レンチウイルスベクター配列およびその他の混入物がトリミングされる、データ品質の検査および分析。2. 全ての有効なシーケンスリードが参照のゲノムと整列させられ、有効なISが検索される、組み込み部位同定。
【0156】
データ品質分析。Illumina MiSeq生データからISを同定するため、バイオインフォマティクスパイプラインを開発した。標準的なLAM-PCR産物は、LTR配列、隣接するヒトゲノム配列、およびリンカーカセット(LC)配列を含有している。459テクノロジーは、10bp〜900bpの範囲の長さを有するLAM-PCR配列の検索を可能にした。類似の結果が、Illumina MiSeqペアードエンドリードから検索された。これらの長さの境界は、その後のアライメント手法およびベクター成分同定のアルゴリズムの両方に影響するため、品質分析過程において考慮すべき重要なパラメータである。LC配列の一部または全部の喪失を回避するため、参照遺伝子と正確に整列し得ないほどに短い配列を廃棄し、NSGテクノロジーによって到達可能な最大サイズを超えるものも廃棄した。各プールについてのパイプラインが終わった後、全ての組み込み部位を、(TIGETネットワーク接続ファイルストレージNASにアーカイブされた)ファイルおよび内部データベースの両方に収集し、改変されたコピーの追跡を維持するストレージサーバーにおいて維持した。
【0157】
組み込み部位同定。独特の組み込み部位を同定し、最も近い遺伝子アノテーションを有する、全てのISを行に含み、各試料を列に含むexcelファイル(ISマトリックス)を抽出するため、以下の工程を実行する:1. プロジェクト間の衝突検出を可能にするcreate_matrixと呼ばれるプログラムを使用したISマトリックスの作出。このプログラムはタブ区切りファイル(TSV)を作製するであろう;2. インプットTSVファイルを使用した各プールについて、以下のように呼ばれるであろう、プログラムannotate_bedを使用したISマトリックスファイルのアノテーション:
;3. アノテーションおよびマトリックスファイルの両方の、本明細書においてXLSと呼ばれる新しいExcelワークシートへのインポート。
【0158】
衝突検出。各移植マウスからISの信頼性のあるデータセットを入手するため、本発明者らは、シーケンスカウントに基づき、可能性のある混入/衝突および偽陽性からのデータをフィルタリングした。異なる実験から得られた組み込み部位を組み合わせるため、データ標準化の付加的な工程が必要とされた。
【0159】
「衝突」という用語は、独立の試料における同一ISの存在を同定するために使用される。本発明者らの実験状況において、異なる細胞における全く同じゲノム位置におけるベクターの組み込みは、極めて低確率のイベントである。従って、独立の試料における同一ISの検出は、混入に由来する可能性が高く、それは、ウェットラボ手法(試料精製、DNA抽出、LAM-PCR、および配列決定)の異なる段階で起こり得る。本発明者らのワーキングパイプラインは、試料間接触の発生を最小化するよう設計されているが、ISのハイスループット分析は、ある程度のバックグラウンド混入を内因的に保持している。同じマウスから入手された異なる試料における同じISの検索は、ベクターによってマーキングされた造血細胞の生物学的特性(即ち、多系統可能性および持続的なクローン形成活性)を推測するためにその後の工程において使用されることからも、試料間の混入の程度の同定は重要である。従って、本発明者らは、(同じマウスに由来する)異なる試料における同じISの実際の発生を、混入/衝突から区別することができなければならない。これらの問題に取り組むため、本発明者らは、本発明者らの分析における衝突の程度を測定し、次いで、各マウスのデータセットから衝突が原因であり得るISを廃棄するためのルールを設計し、同じマウスに由来する試料の間の共有ISを探す時の偽陽性判定の可能性を最小化するための手段として、異なる試験アイテムおよびマウスに由来する試料の間の共有ISの程度を査定した。本発明者らは、各組み込み遺伝子座のバリデーションを可能にする衝突検出過程を設計した。全体的な結果は、組み込み遺伝子座のセットIがある時、Iの中の組み込み遺伝子座iが衝突として分類されるケースにおいて、iはIから廃棄されるというものである。本発明者らは、3種の独立の移植群の間に衝突検出過程を適用した:1. coPKR170:coRPK発現LVベクターによって形質導入されたLin
-細胞の移植後170日目に安楽死させられたアッセイ1からのマウス(coRPK1〜3)。2. EGFP:EGFP発現LVベクターを保持するLin
-細胞を移植されたアッセイ2からのマウス(EGFP1〜6)。3. coPKR-TC:一次移植マウスのサブグループ(coRPK11〜14)に由来するプールされたBMを移植された二次レシピエントを含む、血液およびBMが異なる時点で分析された、coPKR発現LVベクターによって形質導入されたLin
-細胞を移植されたアッセイ2からのマウス(coRPK1〜14)。
【0160】
各同一ISは、異なるマウスの間で異なるシーケンスリード(シーケンスカウント)を有する。シーケンスカウントは、1匹のマウスに由来する試料が、存在量基準に基づき、他のマウスの試料に混入したか否かを決定するために使用され得る。本発明者らの理論的根拠において、2匹のマウスにおいて見出された組み込みは、最も高い存在量を示すマウスに割り当てられ、他方のマウスにおいては混入物と見なされるであろう。従って、本発明者らは、あるマウスへの所定の衝突の割り当ておよび他のものからの除去を可能にするディファレンシャルシーケンスカウントの閾値を同定することができる。本発明者らは、データから閾値を検索し、10という値を得た。即ち、各ISについて、全てのTIの間で、ISが他のTIの最高存在量値(百分率シーケンスカウント)より10倍低い存在量値(百分率シーケンスカウント比)を得た場合、当TIからそれを廃棄する。本発明者らは、TIの間にも、選択された群の間にも、これらのルールを適用し、(本明細書中では、TIフィルタリングについて詳述されるが、群フィルタリングにも同様に拡張される)以下のルールを適用することによって、衝突検出を計算するため、Excelファイルを使用した:1. 各TIを単離して、シーケンスカウントを合計することによって、同じTIの全ての試料を共にグループ化する。2. 各ISについて、入手された3個のTIについて、TIについてのリードの総計に対するISシーケンスカウントの百分率比を計算する。3. 次いで、各ISを信頼性のあるTIへ割り当てることを可能にする10という閾値で、決定工程を計算するため、以下のルールを適用する。
【0161】
ISを除去すべきことが検出された後は、そのISのリードを群から除去したため、それはもはやその群にも割り当てられない。前記のフィルタを、異なるエクスビボ形質導入細胞集団を移植されたマウス(アッセイ2からのEGFP発現マウスの1つのコホート、および2回の独立の移植実験に属するcoPKRマウスの2つのコホート)の間に適用した。さらに、coPKR-TC群(アッセイ2)について、前述のフィルタ法を二通りに改変した:(a)クローン存在量分析に関して、時点間の組み込みの共有をより強調するため、以下のルールを追加した:ある組み込みが1匹または複数匹のマウスの間で共有される場合には、シーケンスカウントがマウスの間で最大シーケンスカウントの10%未満であったとしても、その組み込みは全ての時点について維持される;(b)関係の系統追跡のため、3未満のシーケンスカウントを有するISの排除、および時点間の共有についての10%シーケンスカウントフィルタによって、よりストリンジェントなフィルタを適用した。即ち、2つの時点の間で共有された組み込みは、それぞれ、他方より多い場合または少ない場合にのみ、維持されるかまたは廃棄される。
【0162】
ジーンオントロジー分析。全てのジーンオントロジー分析が、GREATオンラインソフトウェアを使用してなされた(http://bejerano.stanford.edu/great/public/html/)。ウェブページは、各データセットの組み込みのゲノム座標をアップロードし、(p値計算の二項分布分析に基づく)位置情報と、(p値計算の超幾何分布分析に基づく)組み込み部位に最も近い遺伝子のアノテートされた機能とを相関させることによって、試験されたデータセットにおける濃縮レベルを計算することを可能にする[Groeschel S, et al. (2011). J Inherit Metab Dis 34:1095-1102]。ジーンオントロジーデータベースの生物学的過程および分子機能を、濃縮分析のために選択した。両方の統計分析について偽発見率<0.05を有する遺伝子クラスのみを考慮した(
図20)。
【0163】
データストレージ。パイプラインからのアライメントが入手可能であり、存在量マトリックスおよびプロットも入手可能である、ルートフォルダ内のTIGETネットワーク接続ファイルストレージ(NAS)に、全てのデータ、生データおよび結果の両方を保管する。NASストレージは、認証および承認のポリシーによって保証されており、ディスクRAID 5のリダンダンシーアレイを使用して、信頼性のあるスケーラブルのインフラストラクチャーにおいて構築されており、TIGETに登録された本発明者らのCrashPlanソフトウェアでのバックアップ下にある。
【0164】
実施例1
PGK-coRPK治療用レンチウイルスベクターは、遺伝学的に矯正されたPKDマウスにおいて、貧血表現型の安定的かつ長期的な矯正をもたらす
PGK-coRPK LV(
図2a)のインビボ効力を、PKDマウスに由来する系統枯渇BM細胞(Lin
-細胞)の形質導入および移植によってアッセイした(
図2b)。
図2aは、対照ベクターにおけるEGFPトランスジーンの発現(上図)または治療用ベクターにおけるPKLR遺伝子cDNAのコドン最適化配列(coRPK)の発現(下図)を制御するヒトPGKプロモーターを保有する遺伝子療法実験全体で使用された自己不活化型レンチウイルスベクターの模式図である。coRPK配列は、アミノ酸配列の変化なしに、ヒトPKLR cDNAとの80.4%の相同性、マウスPklr cDNAとの76.5%の相同性を示した。
図2bは、開発されたPGK-coRPKレンチウイルスベクターの機能性を解明するために実施された遺伝子療法プロトコルの模式図である。PKD表現型の矯正は、血液学的分析および代謝プロファイリングを通して、PBおよびBMにおける移植の後に4〜9ヶ月間研究された。組み込み分析は、LVベクターの安全性を解明するため、全てのマウスに由来する異なる組織および時点で実施された。移植後280日目に、生着の安定性および安全性を試験するため、coRPKトランスジーンを保持する一次移植マウスに由来する全BMを、致死的に照射された雌PKDマウス(二次レシピエント)へ再び移植した。coRPK LVによって形質導入された欠損細胞を移植された致死的に照射されたPKDマウスは、非移植PKD同腹仔と比較して、またはEGFP LVによって形質導入された細胞を移植されたマウスと比較して、全ての試験された血中赤血球パラメータの有意な改善を示した(
図3および表2)。
【0165】
(表2)末梢血中の移植後140日目に記録された血液学的変数
【0166】
データは、平均値±SEMを表し、クラスカル・ウォリスノンパラメトリック検定を使用して、EGFP発現マウスとの比較によって統計的に分析された。
*p<0.05;
**p<0.01。
【0167】
PGK-coRPKトランスジーンを保持するマウスにおいては、RBC数が移植後40日目に早くも増加し(
図3a)、PKDの最も一般的な兆候のうちの一つである構成性網赤血球増加症が有意に逆転され、移植後少なくとも9ヶ月間、健常対照において観察されるものに近いレベルに達した(
図3b)。反対に、EGFP LV形質導入細胞を移植されたPKD動物は、分析された全ての時点で、PKDマウスと平行して、貧血および著しい網赤血球増加症を示した。ヘモグロビンレベル(HGB)、ヘマトクリット値(HTC)、平均血球体積(MCV)、および平均赤血球ヘモグロビン(MCH)値も、非移植PKD同腹仔と比較された時、レンチウイルスによって矯正された細胞を移植されたマウスにおいて矯正された(表2)。この血液学的矯正は、63.66±4.45%のドナーキメリズムおよび60%〜90%の範囲の形質導入効力で達成された(表3)。
【0168】
(表3)遺伝学的に改変された細胞を移植されたマウスにおける関連分子パラメータ
【0169】
データは、平均値±SEMを表し、n.dは未決定を表す。
a実験1から構築された線形回帰における内挿によって入手された推定形質導入百分率(X軸:VCN/WBC、Y軸:%プロウイルス
+CFU)。
【0170】
形質導入細胞は、平均して1細胞当たり1.65±0.08の組み込まれたベクターコピーを示し、このことから、PGK-coRPK LVベクターが溶血性貧血を逆転させるために十分なヒトRPKトランスジェニック発現を提供したことが示された。注目すべきことに、coRPKトランスジーンの発現は、非移植PKDマウスと比較された時、赤血球細胞半減期の延長をもたらした(
図3c、d)。平均して、PKDマウスは、19日のRBC半減期を示したが、遺伝学的に矯正されたマウスにおいて、これは、25日にまで延長され(6日の延長)、野生型RBCの半減期に近い値に達した(
図3d)。従って、coRPK発現マウスのRBCは、健常対照マウスと欠損対照マウスとの中間の生存速度論を示したが(
図3c)、これは、これらの動物において完全なキメリズムが達成されなかったためである可能性が最も高い(表3)。
【0171】
移植の9ヶ月後に、生着レベル(62.89±5.61%)およびVCN(1.44±0.08コピー)(表3)を維持していた一次レシピエントに由来する造血前駆細胞を、二次レシピエントへ移植した。二次移植レシピエントは、移植後5ヶ月までの多系統造血再構築(
図4)および全てのPB赤血球パラメータの有意な改善を示した(
図5および表2)。
図4aは、CD3-PE、B220-PE、B220-PECy5、Gr1-ビオチン、およびMac1-ビオチン抗体+SAV-PE-Cy5による標識によって異なる造血系統を同定するために使用されたフローサイトメトリー戦略の図である。
図4bは、移植後140日目のPB中の各系統の代表的なドットプロットおよび百分率(
図4c)を示す。バーは、健常マウス対照(n=2、黒色バー)およびPKDマウス対照(n=2、灰色バー)ならびにcoRPK治療用トランスジーンを発現する二次移植マウス(n=4、斜線付きのバー)の平均百分率±SEMを表す。さらに、プロウイルス組み込みは、異なって運命付けられた造血前駆細胞(
図6a、b)において検出され、その数は経時的に一定のままであり(
図6c)、そのことから、遺伝学的矯正の安定性が証明され、PGK-coRPK LVの安全性が強調された。
図6aは、移植後120〜170日目の個々の移植マウスに由来するBM CFU中の1細胞当たりのベクターコピー数を示す。形質導入およびキメリズムの百分率も示される。
図6bは、異なる造血コンパートメントからの細胞におけるプロウイルスコピー数を示す。カラムは、移植マウスの異なる群の平均値±SEMを表す。
図6cは、個々の移植EGFP発現マウス(灰色線)およびcoRPKトランスジーンを保持するマウス(黒色線)に由来するBM細胞におけるプロウイルス組み込みの速度論を示す。
【0172】
実施例2
レンチウイルスに由来するRPK発現は、赤血球分化を正常化し、機能性成熟赤血球の生成を可能にする
PKDマウスは、代償的な赤血球生成機序によって引き起こされる、赤血球コンパートメントの特徴的な増大を示す(Min-oo et al 2004)。移植マウスにおける赤血球分化パターンの研究は、異所RPK発現がこの機序を逆転させることを示した(
図7a、b)。EGFP発現PKDマウスは、BMおよび脾臓における未熟赤血球前駆細胞(亜集団I:前赤芽球および亜集団II:好塩基性赤芽球)の優勢ならびに後期赤血球細胞(集団IV:網状赤血球および成熟赤血球)の著しい減少を示したが、coRPK LVによって形質導入された細胞を移植されたマウスは、健常マウスと等しい、BMおよび脾臓における未熟赤血球前駆細胞(亜集団IおよびII)の有意な低下ならびに最後期赤血球コンパートメント(亜集団IV)の有意な増加を示した(
図7a、b)。さらに、EGFP発現PKDマウスと異なり、coRPKトランスジーンを保持するものは、血漿中のエリスロポエチン(Epo)レベルの有意な低下を示した(
図7c)。
図8aは、脾臓からの全CFUを示し、
図8bは、移植後140日目の骨髄を示す。ドットは、分析された各マウスのコロニー数を表し、線は各群における平均値±SEMを表す。データは、ノンパラメトリッククラスカル・ウォリス検定によって統計的に分析された。BM CFU含量の変化は認められなかったが(
図8b)、治療用ベクターによって処置されたPKDマウスにおける赤血球生成の正常化は、脾臓前駆細胞数の正常レベルへの低下を伴った(
図8a)。
【0173】
実施例3
coRPKレンチウイルスベクターによって形質導入された細胞の移植は髄外赤血球生成および器官病理を逆転させる
RPK欠損赤血球の活発な破壊のため、EGFP発現PKDマウスは、健常対照と比較された時、200%を超える脾臓の重量およびサイズの増加を伴う急性脾腫を示した(
図9a、b)。EGFP発現PKD肝臓切片における赤血球細胞クラスタの存在によっても支持される極度の髄外赤血球生成を示す、脾組織の構造の崩壊および赤脾髄の増大も、これらの動物において観察された(
図9c)。注目すべきことに、coRPKトランスジーンの異所発現は、遺伝学的に矯正されたマウスにおいて脾臓および肝臓の病理を完全に逆転させ、RBC蓄積を低下させ、脾臓の組織学的構造およびサイズを正常化した(
図9)。さらに、組織学的研究は、遺伝学的に矯正されたマウスの肝臓における鉄沈着物の完全な欠如を明らかにしたが、非移植群またはEGFP保持ベクターによって形質導入されたHSCを移植された群のいずれかからのPKDマウスは、連続的な溶血過程による極度の鉄過剰を示した(
図9c)。全体として、PKDマウスにおける遺伝学的に矯正されたHSCの移植は、赤血球生成の正常な状態および溶血性貧血によって引き起こされた全ての二次的効果を回復させた。
【0174】
実施例4
PGK-coRPK LVに由来する発現は、WBC代謝バランスを改変することなく、RBCにおける解糖経路を回復させる
次に、本発明者らは、RPK酵素活性の機能的矯正を研究するため、全ての移植マウスおよび対照マウスの広範囲のメタボローム分析を実施した。ノンターゲットプロファイリング戦略に従って、本発明者らは、異なる群の間のRBC内の解糖中間体の有意な変化を観察し、別個の傾向を有する代謝物質パターンの3つの広いクラスタを同定した(
図10a)。coRPK発現マウスに由来するRBCは、健常対照と類似しており、EGFPトランスジーンを保持する移植マウスと異なる、クラスタ1からの代謝物質の増加を示した。同様に、クラスタ3は、野生型マウスと類似しており、EGFP発現マウスと異なる、遺伝学的に矯正されたマウスにおける低下した代謝物質傾向を反映した。にも関わらず、アッセイ1からのクラスタ2は、移植マウス群(EGFP発現マウスおよびcoRPK発現マウス)の間の代謝物質プロファイルの違いを示さなかった(
図10a)。ノンターゲット代謝プロファイリングは、遺伝子改変が、いくつかの重要な解糖中間体を修飾することができ、PGK-coRPK LV形質導入HSCを移植されたマウスから単離された赤血球においてATP(
図10b)、ADP(
図10c)、およびピルビン酸(
図10d)のレベルの増加を達成し得ることも示した。これらの代謝傾向を考慮して、次いで、本発明者らは、ターゲットプロファイリングアプローチを使用して、PK触媒反応のより近くに位置する他の代謝物質を分析した。PK触媒反応の上流に位置する、直接のPK基質ホスホエノールピルビン酸(PEP)(
図10e)および3-ホスホグリセリン酸(3-PG)(
図10f)のレベルは、健常対照マウスのものに近づいた。coRPKトランスジーンを発現する欠損赤血球は、EGFP発現PKDマウスと比較された時、嫌気的解糖の最終産物であるD-乳酸の増加も生じた(
図10g)。解糖代謝物質の代償が、成熟赤血球におけるPK活性の正常化の結果であるか否かを試験するため、本発明者らは、この酵素の活性を測定し、欠損動物における多量の網状赤血球の影響を回避するため、ヘキソキナーゼ活性に対してそれを標準化した。白血球PK活性混入を防止するため、セルロースカラムを通してRBCを精製した。野生型健常動物および正常健常血液ドナーボランティアから入手されたものと類似した比に達する、PK活性の完全な代償が、coRPKを発現する動物において観察された(
図11)。
図11aは、対照マウスおよび形質導入細胞を移植されたマウスに由来するRBCにおけるピルビン酸キナーゼ活性を示し、
図11bは、ヘキソキナーゼ活性を示し、
図11cは、ピルビン酸キナーゼおよびヘキソキナーゼの酵素活性の比を示す。RBCは、白血球PK活性混入を回避するため、セルロースカラムを通して血液試料から精製され、酵素活性評価に供された。黒色バー、健常マウス(n=2);白色バー、EGFP発現ベクターによって形質導入された細胞を移植されたマウス(n=3);斜線付きのバー、coRPK発現ベクターによって形質導入された細胞を移植されたマウス(n=3)。格子縞のバーは、健常ボランティアからの値を表す(n=1)。データは、各群の平均値±SEMを表す。
【0175】
主成分分析は、RBCの代謝物質パターンが群によって異なり、WBCプロファイルと著しく異なることを示した(
図12a)。反対に、WBCサブグループは、極めて小さい群の間の違いで、共にクラスター形成し、異所coRPKを発現した時の白血球の代謝バランスの変化を示さなかった(
図12a)。さらに、RBCノンターゲットプロファイリングにおいて観察される特定の代謝物質の変化は、WBCには存在しなかった(
図12b〜d)。
【0176】
実施例5
PGK-coRPK LV形質導入細胞はベクター遺伝毒性の証拠なしにポリクローナル造血再構築を与える
coRPKトランスジーンまたはEGFPトランスジーンのいずれかを保持するLVの組み込みプロファイルを、移植マウスにおいて分析した。LVのゲノムワイドの組み込みプロファイルに起因して、各挿入は、個々の形質導入細胞におけるクローン挙動を追跡するために使用することができる独特の遺伝子マークを作出する。一次移植マウスおよび二次移植マウスに由来するWBCおよびBM細胞から、ゲノムDNA(gDNA)を入手し、移植前の形質導入細胞プール(Lin
-細胞)からも入手した。ベクター/ゲノムジャンクションを増幅し、ベクター挿入部位(IS)を同定するため、線形増幅媒介(Linear Amplification Mediated)PCR(LAM-PCR)を使用した(
図13および14)。
図13は、3'ベクターLTR-ゲノムジャンクションのLAM-PCR増幅によってベクター組み込み部位が同定されたことを証明する。いくつかのバンドを特徴とするパターンを生成するMultiNA自動系を使用した。ベクター骨格に由来するTsp509I内部対照バンド(IC)は、矢印によって示される。
図14は、3'ベクターLTR-ゲノムジャンクションのLAM-PCR増幅によってベクター組み込み部位が同定されたことを証明する。いくつかのバンドを特徴とするパターンを生成するMultiNA自動系を使用した。ベクター骨格に由来するHpyCH4IV5内部対照バンド(IC)は、矢印によって示される。
【0177】
PCR産物を、MiSeq Illuminaプラットフォームによって配列決定し、入手された配列を、バイオインフォマティクスパイプラインによってマウスゲノムにマッピングし、前記の方法セクションに記載されたように、衝突についてフィルタリングした(
図15)。
図15は、遺伝学的に改変された造血前駆細胞を移植されたマウスにおいて実施された組み込み部位マッピングの分析の一般的なスキームである。示されたパイプラインに従って、補足的方法に記載されたように、移植後の異なる時点で採集された、2回の独立の実験(表3)に属する移植マウスに由来する骨髄および白血球の試料を分析した。
【0178】
全体として、本発明者らは、2,220の独特のベクター組み込み部位をもたらす、5,173,892のシーケンシングリードを移植マウスゲノム上にマッピングした。2回の独立の実験からのISのゲノム分布は、転写単位内(具体的には、転写開始部位TSSの最初の50Kb下流以内)の組み込みについての以前に報告されたLVの好みとマッチし(
図16a)、マウスゲノムの特定の染色体への歪みを示さなかった(
図16b)。
図16aは、TSSの500kb上流および下流に及ぶ、最も近いRefSeq遺伝子の転写開始部位(TSS)の周辺の組み込み部位(IS)頻度分布を示す。上部の数字は、全ての試料および時点について検出されたISの数である。
図16bは、特定の染色体への歪みを示さない、EGFPトランスジーン(黒色バー)またはcoRPK治療用トランスジーン(灰色バー)を発現する移植マウスにおけるLV組み込み部位の染色体分布を示す。
【0179】
PGK-coRPK LVに基づく遺伝子療法の安全性を、データセットの配列の総数に対する各IS(クローンマーク)のシーケンスカウントの百分率を計算する、クローン存在量推定によって研究した。各マウスについて検索された各ISの相対存在量のドットプロットおよびヒートマップ表示(
図17、18、および19)は、異なるマウスおよびインビトロ培養Lin
-細胞のクローン組成の強力な変動を示した。
図17は、治療用PGK-coRPK LVベクターを保持する一次レシピエントマウスと二次レシピエントマウスとの間の追跡された共有された組み込みのチャートである。任意の器官および時点において、いずれかのマウスにおいて検出された組み込みが、プールされる。二次レシピエントは、移植マウスcoRPK11〜14に由来するプールされたBMを受容した。検出されたISの残りは、一次レシピエントまたは二次レシピエントにおいて検出された。ボックス内の数字は、言及されたマウスにおける相当する組み込みの提示率(%)を示す。組み込み分析に適用された≧5%フィルタに加えて、シーケンスカウント<3を有する全ての組み込みが排除された。
図19は、骨髄における各マウスにおけるプールされた組み込みのクローン存在量のドットプロット表示を提示する。各組み込み部位の相対百分率(y軸)は、各データセットにおいて入手されたシーケンスリードの総数に対するものである。co-RPK形質導入細胞と類似して(
図17)、グラフは、移植マウスの大部分が造血再集団のポリクローナルパターンを示すことを示す。
【0180】
また、いくつかの試料について、少数の組み込みが大量のシーケンスリードに寄与することを理解することが可能であり(
図17および18)、形質導入されたHSCの再集団のポリクローナルパターンが明らかにされた。さらに、治療用PGK-coRPK LVを保持する一次マウスと、その後に移植された二次マウスとの間の追跡された共有された組み込みは、群の間の組み込みの強力な共有を示さず、クローン優勢の欠如が確認された(
図18)。
【0181】
挿入変異誘発のホールマークが移植マウスに存在するか否かを決定するため、本発明者らは、現在進行中のLVによって媒介される臨床試験と類似の好発挿入部位(Common Insertion Sites/CIS)の発生を査定した。CISは、増殖優位性を付与するベクター組み込みを保有するクローンの形質導入またはインビボ選択の時の組み込みバイアスに起因し得る挿入ホットスポットである。Abelらに基づくアルゴリズムおよび外れ値についてのグラブス検定を使用してCISを同定したが、CISは見出されず、従って、このリードアウトによる遺伝毒性の警告兆候は見出されなかった。さらに、ジーンオントロジー(GO)分析は、再増殖造血細胞クローンの組織分布、時点、または存在量によって選別された組み込みデータセットのいずれにおいても、癌、細胞増殖、またはアポトーシスの制御に関与する遺伝子クラスへの歪みを明らかにしなかった(
図20)。
図20は、LVゲノム組み込みプロファイルを表す。ジーンオントロジー(GO)分析は、移植マウスに由来する試料に対してGREATソフトウェアを使用して実施された。この研究から検索された全ての組み込み(N=2220)が、図の左部分に示された遺伝子機能の過剰提示を示した。最も高存在量の組み込みが特定の遺伝子クラスにおいて濃縮されたか否かを解明するため、(
図17に示される)データセット全体に対する相対シーケンスカウント>5%を有する全ての組み込み部位を選択したところ、過剰提示されたGO遺伝子クラスは示されなかった。
【0182】
これらの結果は、ベクター組み込みの中立性を示唆し、前臨床状況におけるPGK-coRPK LVの安全性を証明する。
【0183】
実施例6
ヒト臨床試験
臨床試験は、脾摘出に対して抵抗性の重症輸血依存性貧血の病歴を有するピルビン酸キナーゼ欠損症を有する患者において、EU/3/14/1130医療用生成物(RPK遺伝子を含有しているレンチウイルスベクターによって形質導入された自己CD34+造血幹細胞)を使用した自己造血幹細胞移植(HSCT)の安全性および予備効力を評価するために実施される。
【0184】
ODD EU/3/14/1130は、治療用ヒトPKLR遺伝子のコドン最適化バージョンを発現する自己不活化型レンチウイルスベクターを含む(
図21)。
【0185】
自己不活化型レンチウイルスベクター(SIN-LV)は、より頑強な発現を提供し(Ellis 2005)、ガンマレトロウイルスベクターより転写サイレンシングを受けにくい(Pfeifer, Ikawa et al. 2002)。それらは、はるかに安全な組み込みプロファイル(Schroder, Shinn et al. 2002)(Mitchell, Beitzel et al. 2004)(Wu, Li et al. 2003)も示し、3'LTR配列(Miyoshi, Blomer et al. 1998)(Zufferey, Dull et al. 1998)内に保持する400bp欠失のため、トランスジーン発現が内部プロモーターによって制御され、そのことが、LVに基づく遺伝子改変の安全性を増加させる。
【0186】
受容されたレンチウイルスベクターのベクター配列は、標的細胞におけるトランスジーンの発現および安全性を改善するためのいくつかの改変も含む。
【0187】
一つの改変は、安定的なインビボ活性と遺伝子療法において使用される他のプロモーターと比較して改善された安全性特性とを既に特徴とするヒトホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターの使用である(Montini, Cesana et al. 2006、Modlich, Navarro et al. 2009、Montini, Cesana et al. 2009、Biffi, Montini et al. 2013)。PGKは、トランスジーンのより生理学的な発現および転写サイレンシングに対するより低い感受性をもたらす(Gerolami, Uch et al. 2000、Zychlinski, Schambach et al. 2008)。
【0188】
もう一つの改変は、転写時のmRNA安定性を増加させるヒトPKLR cDNAのコドン最適化バージョン(coRPK)である。最適化のため、転写サイレンシングを回避し、従って、トランスジーン発現を増加させるため、GC含量を増加させ、潜在性のスプライス部位を除去するGeneArt(登録商標)ソフトウェアが使用されている。coRPKの最適化配列は、タンパク質のアミノ酸配列の変化なしに、ヒトPKLR遺伝子との80.4%の相同性を示した。
【0189】
もう一つの改変は、残余のオープンリーディングフレームを欠く変異型ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(Wpre)(Schambach, Bohne et al. 2006)も、治療用遺伝子の発現および安定性のレベルを改善するために含まれることである。このレンチウイルスベクター(PGK-coRPK LV)の骨格、プロモーター、およびWpre
*配列は、医療用生成物「ファンコニー貧血A型患者の治療のためのファンコニー貧血A型(FANCA)遺伝子を含有しているレンチウイルスベクター」(Ref 141/2000)に相当するもの、および異染性白質ジストロフィー(MLD)のための現在進行中の臨床試験において使用されているベクター骨格と同じである(Biffi, Montini et al. 2013)。
【0190】
作用モード
骨髄(BM)または動員された末梢血細胞のいずれかから、PKD患者由来のCD34
+前駆細胞を採集した後、それらを医療用生成物によってエクスビボで形質導入し、治療用ベクターを細胞のゲノムに組み込む。組み込まれた後、PKD成熟赤血球において欠如しているかまたは低下している治療用RPKタンパク質が産生されるよう、治療用ヒト遺伝子(coRPK)が、欠損細胞において転写され翻訳される。次いで、形質導入されたPKD造血前駆細胞は、遺伝学的に矯正され、従って、機能を達成するために十分な量のATPを有するRBCを産生することができる(
図22)。(医療用生成物を構成する)これらの遺伝学的に矯正された造血前駆細胞は、次いで、患者に、戻し移植され、生着後、一生、正常な赤血球を生成し、疾患を治療する。
【0191】
有効成分は、ピルビン酸キナーゼ欠損症の処置のためのオーファンドラッグとしてEuropean Commissionによって指定された治療用レンチウイルスベクターPGK.coRPK.wpre(ODD EU/3/14/1130)によって矯正された造血幹細胞(CD34
+)細胞の細胞懸濁物にあるであろう。従って、この新しい医薬品は、遺伝子療法サブクラス内の先端治療開発の群に含まれるべきである。
【0192】
有効成分は、1細胞当たり少なくとも0.1コピーの治療用ベクターを有する体重1Kg当たり少なくとも2×10
6 CD34
+細胞の遺伝学的に改変された細胞懸濁物から構成される。細胞は、2%HSAを含む生理食塩緩衝液に懸濁させられる。
【0193】
最終的な治療用生成物は、GMPルールに従って作製され、従って、患者における遊離(liberation)および注入のための生成物の必要量は、生成物の品質に関係するであろう。これに関して、これらの明細は、細胞生存度≧30%、無菌性(薬局方によるグラム試験および無菌性)、マイコプラズマの欠如、複製性の競合的なレンチウイルス粒子の欠如、ならびに定量的PCRによる1細胞当たり少なくとも0.1ベクターコピーの存在の検出による治療可能性の効力の証明である。さらに、造血前駆細胞の含量およびこれらにおけるベクターコピー数の調査および研究が実施される。手法が前記の必要量に達することを確実にするため、3種の独立のバリデーションが健常対照細胞で実施される。
【0194】
最終生成物は、特に、凍結および患者への注入までの保管のため、熱によって密封された輸送バッグに最終的にパッケージングされ;事前に、試料は、正確な対応する品質管理のために収集されるであろう。
【0195】
動員
患者は、それぞれの病院において動員されるが、最初の2人の患者は、Hospital del Nino Jesus(Madrid, Spain)において動員されるであろう。動員過程は、12mg/kgの用量の組換え刺激因子顆粒球コロニー(G-CSF、Neupogen, Amgen, Thousand Oaks, CA, USA)の生後8日間までの1日2回の投与、240mg/kg/dのプレリキサホル(Mozobil(登録商標)、Genzyme Europe BV, Naarden, Netherlands)の4日目から4日連続の4回の皮下投与であろう。末梢血由来の造血前駆細胞が、MadridのHospital Nino Jesusにおいて、標準的なプロトコルに従って、細胞分離装置を通して、動員の5日目から、白血球アフェレーシスによって大量に収集される。全ての器機および溶液が、CEマーク付きであり、医療機器に関する法律の明細を満たしている。
【0196】
CD34+細胞精製
動員過程と一致して、アフェレーシスは、患者が動員される病院において行われるであろう。アフェレーシスは、強力な永久磁石および強磁性マトリックスを含む分離カラムを通した高磁場勾配による細胞の分離を可能にするMACS「磁気細胞選別」テクノロジー(Miltenyi Biotec, Germany)を通して、造血前駆細胞(CD34
+細胞)を選択するため、即座に処理されるであろう。CliniMACS(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)系は、コンピューター(CliniMACS(登録商標)plus Instrument)、特異的CD34
+選択ソフトウェア、無菌チューブのセット(CliniMACS Tubing Sets)、磁気によって調節される反応性無菌器機(CliniMACS CD34 Reagent)、および無菌緩衝液(CliniMACS PBS/EDTA Buffer)からなる。使用される器機および試薬は、CEマーク付きであり、医療機器に関する法律の明細を満たしている。この相および後の洗浄において、非特異的免疫グロブリン(静脈内フレボガンマ(Flebogamma)5% 0.5gr、Grifols)およびヒトアルブミン(ヒトアルブミンGrifols(登録商標)20%、Grifols)が利用され、それらは遠心分離後の洗浄によって後に除去される。次いで、CD34+細胞が定量化される。入手された生成物に対する微生物学的調節は、特定のプロトコルによる培養のため、標準的な真菌、好気性細菌、および嫌気性生物の試料を採取することによって実施される。
【0197】
CD34+形質導入
精製されたCD34
+細胞のODD EU/3/14/1130による形質導入は、患者からの細胞の抽出(アフェレーシス)から48時間以内の時間枠でGMP条件下で行われる。細胞のエクスビボ培養を、48時間未満続け、適切に製剤化された培地X-vivo-20(Lonza)の使用、造血増殖因子(10Ong/ml hrSCF、10Ong/ml hrFlt-3、10Ong/ml TPO、および20ng/mL IL-3(全て、Prepotech))、1μg/mLプルモザイム(Pulmozyme)、ならびに調節された5%O
2濃度の添加を含む、確立された標準に従って培養する。形質導入は、VIVEbiotech(San Sebastian, Spain)によって作製されたODD EU/3/14/1130のGMPレンチウイルスバッチによって実施される。形質導入後、細胞は、X-vivo-20(Lonza)で洗浄され、最終的には、凍結保存のために適当な輸送バッグにパッケージングされる。最終生成物が最終的な遊離のための既に言及された全ての明細を満たするか否かを決定するため、特定の試料が収集される。3種の独立のバリデーションが、生成物の安定性を評価するために実施される。ベクターを含む全ての生成物および溶液が、医療機器および臨床的使用についての法律の明細を満たす。作製の前に、(消耗品、生物学的試薬、および化学的粉末を含む)全ての原材料が、標準操作手順(SOP)に従って、Quality Control(QC)Unit of CliniStemによって検査される。
【0198】
コンディショニング
患者は、治験のために考慮された標準化された特定のプロトコルに従ってコンディショニングされる。代替のコンディショニングのために患者を考慮するため、調製された生成物が処置された患者の造血を完全に再構成しないケースにおいて使用するため、2×10
6個の未操作のCD34
+細胞/kgのバックアップを凍結する。
【0199】
注入
注入前に、研究の必要条件を満たすことを確実にするため、患者の適格性をチェックする。注入の日、使用された前投薬および予防的投薬を記録する。
【0200】
実施例7
非臨床開発
以前の研究は、25%を超える遺伝学的に矯正された細胞が移植された時、マウスにおけるPKDのHSC遺伝子療法が実行可能であることを証明した。これらの結果は、PKDにおける治療効果を達成するためには、相当数のドナー遺伝子矯正HSC(Zaucha, Yu et al. 2001)および高レベルのトランスジーン発現が必要であることを示唆する。本発明者らは、2014年8月にオーファンドラッグとして指定された、PKLR cDNAの発現を駆動するhPGK真核生物プロモーターを保有している、この臨床試験のために提唱された新しい治療用レンチウイルスベクターを開発した(EU/3/14/1130)。このベクターを用いて、本発明者らは、疾患のマウスモデルにおいてPKDの前臨床遺伝子療法プロトコルを実施した。臨床標準に基づくレンチウイルス投薬量で、異所RPK発現は、赤血球コンパートメントを正常化し、血液学的表現型を矯正し、器官病理を逆転させることができた。メタボローム研究は、遺伝学的に矯正されたRBCにおける解糖経路の機能的矯正を証明し、白血球における代謝妨害は観察されなかった。注目すべきことに、RPKがPGKのような偏在性プロモーターの活性の下で異所発現される時、平行して分析されたWBCは、白血球における代謝バランスの変更を示さず、そのことから、可能性のある安全性問題としての白血球代謝優位性が除外され、EU/3/14/1130ベクターの治療可能性が強化される。
【0201】
BM再移植によって誘導された増殖ストレスの後の二次レシピエントにおける多系統再構築および白血病イベントまたはクローン増大の欠如は、PGK-coRPK LVベクターに基づくプロトコルの長期安定性および安全性を証明する。(i)RPKトランスジーンのより生理学的な発現をもたらす可能性が高く、(ii)弱いトランス活性化因子であることが立証されており、(iii)異染性白質ジストロフィー(MLD)の臨床試験において現在使用されているヒトPGK真核生物プロモーターの使用も、手法全体の安全性を説明することができる。
【0202】
ベクター組み込み部位の分析を通してHSC遺伝子療法の長期安全性を査定するため、HSCにおける挿入による発癌のリスクを予測するため、次世代配列決定を使用した。5,173,892を超えるシーケンスリードが、マウスゲノム上の全部で2220の独特のベクターISへマッピングされたが、ISを保有するクローンのインビボ増大または選択の証拠は見出されなかった。むしろ、本発明者らのデータは、経時的なHSCの真の安定的な遺伝学的インビボ改変を示唆する、マウスにおける形質導入HSCの移植後の造血のクローン組成および動力学を示した。全体として、ベクター組み込みパターンの分析は、遺伝毒性の証拠なしにPKDの遺伝学的矯正を提供するPGK-coRPK LVベクターの安全性特性を強く示している。
【0203】
実施例8
臨床開発
現在までのところ、医療用生成物による臨床研究は実施されていない。プロトコルアシスタンスが規制当局へ必要とされるのは、これが最初である。本発明者らの目標は、European Commissionによって支援された臨床試験を実施することである。欧州の種々の臨床医および基礎研究者によって構成されるForGeTPKDコンソーシアムが、PKD研究および新しい治療戦略の開発に焦点を当てるために設立されている。ForGeTPKD臨床試験は、ヒトにおけるこの医療用生成物の最初の投与になる。それは、重症ピルビン酸キナーゼ欠損症を有する患者における赤血球型ピルビン酸キナーゼ(RPK)遺伝子を含有しているレンチウイルスベクター(EU/3/14/1130)によってエクスビボで形質導入された自己CD34+細胞の移植の安全性および効力を評価するための国際多施設第I/II相非盲検研究として設計される。
【0204】
規制状態
医療用生成物は、現時点で販売承認を有していない。PKDコンソーシアムの目的は、最終的に販売承認を受けるため、医療用生成物の臨床開発へ前進することである。
【0205】
言及された最終生成物は、以下のものと関係のあるオーファンドラッグ指定を受けたレンチウイルスベクターによって作製される:
【0206】
適応症:ピルビン酸キナーゼ欠損症の処置。
【0207】
基準:PKDの唯一の治療的処置は、他の措置に対して抵抗性の輸血依存性重症貧血を有する患者において使用されている同種BMTである。しかしながら、同種BMTは、化学療法または化学放射線治療による集中的なプレアロBMTコンディショニングに関連した重症合併症に関連しており、急性および慢性の移植片対宿主病(GVHD)にも関連しているため、PKDの広く認められた処置ではない(1人の患者のみが、文献(Tanphaichitr, Suvatte et al. 2000)において報告されている)。本発明者らの仮説は、ODD EU/3/14/1130によって提供される遺伝子の野生型バージョンを含有しているウイルスベクターによって形質導入された自己造血幹細胞を使用した遺伝子療法が、造血前駆細胞移植の失敗の主因であるGVHDのリスクを回避する、これらの患者のための可能性のある治療機会を表し得るというものである。
【0208】
活性物質:タンパク質の野生型バージョンを発現する赤血球型ピルビン酸キナーゼ(RPK)遺伝子を含有しているレンチウイルスベクター(ODD EU/3/14/1130)によって形質導入された自己CD34
+造血幹細胞。
【0209】
完成品:2%HASを含む生理食塩水緩衝液に懸濁した、患者の体重1kg当たり少なくとも2×10
6個の活性物質を含有している凍結バッグ。
【0210】
実施例9
薬理学
完了した研究:開発された医療用生成物は、PKDの遺伝子療法のためのいくつかの利点を提供する数種の改変を配列内に含む:(1)SIN-LVベクター設計の使用が、HSCを効率的に形質導入することができるウイルスストックの比較的容易で安全な作製を可能にした;(2)メチル化によるサイレンシングを受けにくい(Gerolami, Uch et al. 2000)hPGKのような弱い真核生物プロモーターの使用が、トランスジーンのより生理学的な発現をもたらし、臨床標準内のウイルス投薬量(1.65 VCN)で治療的レベルを達成する(Matrai, Chuah et al. 2010);(3)コドン最適化されたトランスジーン配列および変異型Wpre配列の存在が、トランスジーンmRNA安定性を増加させ:レポーター遺伝子が治療用ベクター配列に含まれず、可能性のある免疫原性の問題が回避された(Morris, Conerly et al. 2004);(Stripecke, Carmen Villacres et al. 1999)。
【0211】
開発されたhPGK-coRPK LV医療用生成物は、ODD EU/3/14/1130によって形質導入され矯正された前駆細胞を移植された一次欠損マウスおよび二次欠損マウスの両方においてPKD病理を効率的に逆転させた。矯正は、平均して1細胞当たり1.65コピーの治療用トランスジーンを保持している細胞で達成された。
【0212】
ヒトPGKプロモーターは、移植マウスにおける溶血表現型を回復させる、臨床的に適切なレベルのcoRPKタンパク質を発現させるために十分に強力であった。
【0213】
遺伝学的矯正は、RBC半減期を延長し;血液学的変数および網状赤血球レベルを正常化し;PKDマウスにおいて構成的に活性化された代償的な赤血球生成を逆転させ;脾臓および肝臓における病理を救済し、注目すべきことに、PKDの命に関わる合併症のうちの一つである鉄過剰を低下させることができた。さらに、ヒトRPKの異所発現は、WBCにおける代謝バランスを変更することなく、RBCにおけるエネルギー的欠陥を矯正し、そのことから、医療用生成物の効力および安全性が強く示された。
【0214】
実施例10
進行中の研究
(1)ヒト細胞におけるODD EU/3/14/1130の形質導入の効率の研究;(2)RPK治療用タンパク質の効率的な治療的な発現を得るための最適ベクターコピー数/細胞の明確化;および(3)造血幹細胞の能力を失うことなく、治療的な形質導入レベルを得るための最適条件の明確化:のための健常ドナーおよびPKD患者に由来するヒト造血前駆細胞の形質導入。
【0215】
計画されている研究には、GMP施設における大規模形質導入のための条件のセットアップ、ならび最終的な治療用生成物について明確化された必要とされる明細に達するための最適条件をセットアップするためのプレバリデーション研究および3種のバリデーション研究が含まれる。
【0216】
毒物学
完了した研究には、以下のものが含まれる。(1)ヒトRPKの異所発現は、WBCにおける代謝バランスを変更することなく、RBCにおけるエネルギー的欠陥を矯正した;(2)ベクターのゲノム組み込み分析は、以下のことを証明した。(i)特定の細胞クローンの相対存在量の分析は、いくつかのマウスのオリゴクローナルな造血再構築を明らかにし、一次移植マウスおよび二次移植マウスについてのクローン優勢を示さなかった;(ii)挿入変異誘発のホールマークと見なされる好発組み込み部位(CIS、定義されたゲノム間隔におけるベクター組み込みの高密度クラスタ)は、遺伝毒性の兆候を示さず、経時的なCISの異常な濃縮も、マウスにおいて実施された2回の独立の遺伝子療法実験から検出されたCISも、高いシーケンスカウントによって提示されず、癌遺伝子を優先的に標的としなかった;(iii)レンチウイルス組み込みによって標的とされた遺伝子のジーンオントロジー(GO)分析およびゲノムの特定の領域におけるベクター組み込みの位置の研究は、癌、細胞増殖、またはアポトーシスの制御に関与する遺伝子クラスへの歪みを示さなかった;(iv)全体として、医療用生成物組み込み分析は、遺伝毒性の証拠を示さなかった。
【0217】
計画されている研究には、以下のものが含まれる。(1)組換えコンピテントレンチウイルス(RCL)作製の分析:健常ドナーおよびPKD患者に由来するヒトTリンパ球を、ODD EU/3/14/1130によって形質導入し、長期間にわたりインビトロ培養する。可能性のあるRCLの生成を評価するため、ELISAによって上清中のウイルスp24タンパク質の存在を分析する。(2)医療用生成物の体内分布:マウス造血前駆細胞を、ODD EU/3/14/1130によって形質導入し、致死的に照射されたレシピエントへ移植する。移植後1ヶ月目に、動物を屠殺し、異なる器官(性腺、肝臓、腎臓、脳、骨髄、脾臓、および末梢血)を、ベクターDNAの存在について分析する;(3)ヒト細胞におけるベクターインテグローム(integrome):健常ドナーおよびPKD患者に由来する造血前駆細胞を、ODD EU/3/14/1130によって形質導入し、ヒト造血細胞の生着および増殖を可能にするため、重症免疫不全マウスへ移植する。異なる時点(移植後1ヶ月目、2ヶ月目、および3ヶ月目)で、血液およびBM移植片を採取し、ヒト細胞を選別し、マウス細胞で既に実施されたようなベクターインテグローム分析に供する。
【0218】
実施例11
ヒト臨床試験
臨床効力を試験するため、ForgetPKD治験を実施する。提唱された臨床試験は、脾摘出に対して抵抗性の重症輸血依存性貧血の病歴を有するピルビン酸キナーゼ欠損症を有する患者において、EU/3/14/1130医療用生成物(赤血球型ピルビン酸キナーゼ(RPK)遺伝子を含有しているレンチウイルスベクターによって形質導入された自己CD34
+造血幹細胞)を使用した自己造血幹細胞移植(HSCT)の安全性および予備的な効力を評価することを目標とする。
【0219】
主な目的は、処置の安全性および認容性/実行可能性を評価することである。従って、以下の終点を測定する:(1)形質導入細胞の注入に関連したAE、細胞注入前のコンディショニングに由来するAE、および形質導入細胞に関連したクローン進化に由来するAE:を含む有害イベント(AE)の発生率および特徴決定;ならびに(2)移植後30日目の幹細胞生着を有する患者の数。
【0220】
二次的な目的は、予備的な処置効力を評価することである。従って、以下の終点を測定する:研究の後わりの「輸血非依存性」になった患者の数;処置後に未だ輸血を必要とする患者における、研究期間(1年)内に必要とされた輸血の平均回数と、ベースライン評価前の最後の1.5年間の輸血の平均回数との比;研究の後わりの、ベースラインからの2gr/dLのヘモグロビンレベルの上昇を有する患者の数として定義される、貧血の臨床的に有意な低下;研究の後わりの、ベースライン評価からの50%の低下を有する患者の数として定義される、網赤血球増加症の臨床的に有意な低下;ならびに細胞注入後6ヶ月目および12ヶ月目および研究の後わりの、1%の形質導入細胞が検出され得る幹細胞生着を有する患者の数。
【0221】
調査目的は、患者の生活の質に対する処置の影響を評価することである。従って、以下の終点を測定する:生活の質に関する調査票(成人用のSF-36または子供用のPEDSQL)ならびに関係国の言語(イタリア語、オランダ語、およびスペイン語)に翻訳されたバリデートされたバージョンを使用した、研究の後わりの、生活の質のベースラインからの改善。
【0222】
ForGetPKD治験は、3つのEU加盟国:スペイン、イタリア、およびオランダにおいて実施される多施設国際治験である。参加施設には、Reference National Investigators and Institutions for PKD diagnosis and treatmentが含まれる。
【0223】
この治験は、記載された生成物のヒトへの最初の投与を表す。それは、非比較非盲検単回投与第I/II相研究として設計される。
【0224】
グローバルスタディ期間は、最初の患者の最初の診察から最後の患者の最後の診察までの2年になるであろう。これは、1年の動員期間ならびに1年の処置期間および初期(直後)追跡を含む。治験の終了後、含まれる対象は、移植後5年までの間、安全性および効力をモニタリングするその後の追跡研究に参加するように依頼される。
【0225】
疾患罹患率および研究設計によって、1年に6人の患者を含むことが計画されている。この推定は、既に同定された3人の可能性のある参加者が存在することを考慮して決定された。
【0226】
研究手法には、スクリーニング期間、処置期間、および追跡期間が含まれる。各相での診察の詳細および関連する研究手法は、以下に詳述され、表4に要約される。
【0227】
(表4)
【0228】
スクリーニング期間
初回診察:プレスクリーニング診察
可能性のある候補に、治験の目的および特徴が通知され、インフォームド・コンセント文書が二通入手され、記入され、患者(未成年の場合、法定代理人)によって署名される。研究に適格であるため、患者は、全ての選択基準を満たしていなければならず、いかなる除外基準も満たしていてはならず、それがチェックされる。これは、A. 非生着のケースのバックアップとして役立つ体重1kg当たり2×10
6個のCD34+細胞を保管し、B. 医療用生成物を生成し、医療用生成物の遊離のために必要とされる全ての品質管理を実施するため、体重1kg当たり少なくとも6×10
6個のCD34+細胞をEU/3/14/1130ベクターによって形質導入するため、生CD34
+細胞を動員し入手するための前処理手法を含む。医療用生成物の遊離の後に十分な形質導入細胞(体重1kg当たり2×10
6個の形質導入CD34
+細胞)が入手可能である患者のみが、研究に含まれる。
【0229】
以下の手法も、この診察において実施される:
−関連する病歴および手術歴の登録
−人口統計的データおよび臨床的に関連する身体検査所見の登録
−関連する併用薬の登録
−ルーチンの血球数算定(CBC)、生化学、凝固決定、および血清学のための末梢血試験
−心エコー図、肺機能試験、および胸部X線
−生活の質に関する調査票(SF-36またはPEDSQL)
−PKDの遺伝学的診断
【0230】
研究に適格であるため、患者は、以下の選択基準の全てを満たしていなければならず、いかなる除外基準も満たしていてはならない。
【0231】
選択基準は、動員の時点で年齢>2歳の男性または女性の患者であること、(18歳未満の子供のケースにおいては親または法定代理人によって署名される)署名されたインフォームドコンセントを与える意思があること、PKDの事前の診断が遺伝子検査によって確認されていること、脾摘出に対して不応性の重症輸血依存性貧血の病歴があること、自己造血幹細胞移植の候補であること、体重1kg当たり≧2×10
6個の形質導入CD34
+細胞が入手可能であること、および輸血歴を含む詳細な診療記録を維持している専門施設において少なくとも過去2年間処置され追跡されていることである。
【0232】
除外基準には、ヒト免疫不全ウイルス1型または2型(HIV 1およびHIV 2)の存在が陽性であること、未矯正の出血性障害があること、溶血の他の原因が存在すること、過去または現在の悪性疾患または脊髄増殖性障害または免疫不全障害があること、既知のまたは推測される(遺伝性乳癌卵巣癌症候群、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌症候群、および家族性大腸腺腫症を含むが、これらに限定されるわけではない)家族性癌症候群を有する近親者がいること、以前に同種移植を受けた患者であること、ドナー起源の残余細胞が存在すること、医学的評価の後にグレードIII/IVの心臓、肺、肝臓、または腎臓の機能異常に罹患していると見なされる重症合併症を有する患者であること、未管理の発作障害があること、(ヘモグロビンに対して補正された)期待値の<50%の一酸化炭素(DLco)の拡散能力を有すること、研究者の見解において除外を保証する重症鉄過剰の他の証拠があること、スクリーニング30日以内に調査薬による別の臨床研究へ参加していること、同種骨髄移植のためのHLA適合家族ドナーが利用可能であること、妊娠中または授乳中の女性であること、研究者基準によって、研究の目的、利益、およびリスクを理解しかつ/または研究手法を遵守することができないであろう患者であること、成人においてはカルノフスキー(Karnofsky)インデックス≦80または子供においてはランスキー(Lansky)≦80によって証拠付けられる不十分な機能的状態であることが含まれる。
【0233】
研究の統計分析は、記述的である。定性的終点は、頻度および百分率によって記載される。定性的終点には、有害イベント、幹細胞生着を有する患者の数、「輸血非依存性」になる患者の数、貧血の臨床的に有意な低下を有する患者の数、網赤血球増加症の臨床的に有意な低下を有する患者の数、形質導入細胞の存在が検出され得る幹細胞生着を有する患者の数、およびSF-36またはPEDSQL調査票によって測定されたベースラインからの生活の質の改善が含まれる。定量的終点は、平均値および標準偏差、または中央値および四分位数によって記載される。定量的終点には、貧血および網赤血球増加症のベースラインからの低下、ベースライン評価前の過去1年間の輸血の回数と比べた、研究期間内に必要とされた輸血の回数、ならびに末梢血および骨髄におけるベクターコピー数が含まれる。全ての終点が、研究の後わりに記載される。
【0234】
以前の研究は、25%を超える遺伝学的に矯正された細胞が移植された時、マウスにおけるPKDのHSC遺伝子療法が実行可能であることを証明した。これらの結果は、PKDにおける治療効果を達成するためには、相当数のドナー遺伝子矯正HSC(Zaucha, Yu et al. 2001)および高レベルのトランスジーン発現が必要とされることを示唆する。本発明者らは、2014年8月にオーファンドラッグとして指定された、PKLR cDNAの発現を駆動するhPGK真核生物プロモーターを保有している、この臨床試験のために提唱された新しい治療用レンチウイルスベクターを開発した(EU/3/14/1130)。このベクターを用いて、本発明者らは、疾患のマウスモデルにおいてPKDの前臨床遺伝子療法プロトコルを実施した。臨床標準に基づくレンチウイルス投薬量で、異所RPK発現は、赤血球コンパートメントを正常化し、血液学的表現型を矯正し、器官病理を逆転させることができた。メタボローム研究は、遺伝学的に矯正されたRBCにおける解糖経路の機能的矯正を証明し、白血球における代謝妨害は観察されなかった。注目すべきことに、RPKがPGKのような偏在性プロモーターの活性の下で異所発現される時、平行して分析されたWBCは、白血球における代謝バランスの変更を示さず、そのことから、可能性のある安全性問題としての白血球代謝優位性が除外され、EU/3/14/1130ベクターの治療可能性が強化される。
【0235】
BM再移植によって誘導された増殖ストレス後の二次レシピエントにおける多系統再構築および白血病イベントまたはクローン増大の欠如は、PGK-coRPK LVのベクターに基づくプロトコルの長期安定性および安全性を証明する。RPKトランスジーンのより生理学的な発現をもたらした可能性が高く、弱いトランス活性化因子であることが立証されており、異染性白質ジストロフィー(MLD)の臨床試験において現在使用されている、ヒトPGK真核生物プロモーターの使用も、手法全体の安全性を説明することができる。
【0236】
ベクター組み込み部位の分析を通してHSC遺伝子療法の長期安全性を査定するため、HSCにおける挿入による発癌のリスクを予測するため、次世代配列決定を使用した。5,173,892を超えるシーケンスリードが、マウスゲノム上の全部で2220の独特のベクターISへマッピングされたが、ISを保有するクローンのインビボの増大または選択の証拠は見出されなかった。むしろ、本発明者らのデータは、経時的なHSCの真の安定的な遺伝学的インビボ改変を示唆する、マウスにおける形質導入HSCの移植後の造血のクローン組成および動力学を示している。全体として、ベクター組み込みパターンの分析は、遺伝毒性の証拠なしにPKDの遺伝学的矯正を提供するPGK-coRPK LVベクターの安全性特性を強く示している。