特表2019-514568(P2019-514568A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-514568(P2019-514568A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(54)【発明の名称】ポートニードル
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/02 20060101AFI20190517BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20190517BHJP
【FI】
   A61M39/02 112
   A61M5/158 500K
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-557044(P2018-557044)
(86)(22)【出願日】2016年5月25日
(85)【翻訳文提出日】2018年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2016025046
(87)【国際公開番号】WO2017194074
(87)【国際公開日】20171116
(31)【優先権主張番号】16020177.8
(32)【優先日】2016年5月12日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】518379315
【氏名又は名称】トリノギー ウーゲー (ハフトウンスべシュラント)
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】メイジン、マルクス
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066FF04
4C066KK04
(57)【要約】
本発明は、皮膚、組織および/またはポートのセプタムを、ポートのポートチャンバに流体を移送するべく、貫通することに適合しているポートニードルに関する。ポートニードルは、少なくとも1つの内面を画定している少なくとも1つのルーメンであって、流体を遠位部分から近位部分へと移送することに適合しているルーメンと、近位部分の少なくとも1つの外面を画定している少なくとも1つのメンブレンとを備え、近位部分の外面は、ニッケル(Ni)および/または任意のNi化合物を最大で0.05%の含有率で含み、および/または、最大で0.2μg/cm/週でNiおよび/または任意のNi化合物を放出することに適合している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚、組織および/またはポートのポートセプタムを、前記ポートのポートチャンバに流体を移送するべく、貫通することに適合しているポートニードルであって、
前記流体を受け取ることに適合している遠位部分と、
前記流体を前記ポートの前記ポートチャンバに輸送することに適合している近位部分と、
少なくとも1つの内面を画定している少なくとも1つのルーメンであって、前記流体を前記遠位部分から前記近位部分へと移送することに適合しているルーメンと、
前記近位部分の少なくとも1つの外面を画定している少なくとも1つのメンブレンと
を備え、
前記近位部分の前記外面は、Niおよび/または任意のNi化合物を最大で0.05%の含有率で含み、および/または、最大で0.2μg/cm/週でNiおよび/または任意のNi化合物を放出することに適合している、
ポートニードル。
【請求項2】
前記メンブレンは、液体および/または気体に対して不透過性である、
請求項1に記載のポートニードル。
【請求項3】
前記メンブレンは、基板上に少なくとも1つの外側層として配置され、および/または、少なくとも前記近位部分の外壁を形成する、
請求項1または2に記載のポートニードル。
【請求項4】
前記メンブレンは、金属および/または合金で形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のポートニードル。
【請求項5】
前記メンブレンは、非金属材料を 含み、および/または、非金属材料で形成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載のポートニードル。
【請求項6】
前記ポートニードルの断面係数は、少なくとも0.004mmであり、好ましくは0.01mmであり、より好ましくは0.1mmであり、さらにより好ましくは0.2mmであり、および/または、最大で0.3mmであり、好ましくは0.2mmであり、より好ましくは0.1mmであり、さらにより好ましくは0.01mmである、
請求項1から5のいずれか一項に記載のポートニードル。
【請求項7】
前記メンブレンは、前記ポートニードルのうち少なくとも前記近位部分の上方に設けられるコーティングおよび/または層によって画定され、焼きばめおよび/または接着剤によって密着させることが好ましい、
請求項1から6のいずれか一項に記載のポートニードル。
【請求項8】
前記ポートニードルの前記ルーメンの前記内面は、Niまたは任意のNi化合物を最大で0.05%含み、および/または、Niまたは任意のNi化合物を最大で0.2μg/cm/週で放出することに適合している、
請求項1に記載のポートニードル。
【請求項9】
前記近位部分は、最大長さが50mmであり、好ましくは40mmであり、より好ましくは30mmであり、さらにより好ましくは20mmであり、さらにより好ましくは10mmであり、および/または、最小長さが2mmであり、好ましくは5mmであり、より好ましくは10mmであり、さらにより好ましくは20mmであり、さらにより好ましくは30mmである、
請求項1から8のいずれか一項に記載のポートニードル。
【請求項10】
固体の前記メンブレン、および/または、層として配設されている前記メンブレンであって、下層の基板と組み合わせられている前記メンブレンは、最大外径が1.5mmであり、好ましくは1.2mmであり、より好ましくは1.0mmであり、さらにより好ましくは0.9mmであり、さらにより好ましくは0.8mmであり、さらにより好ましくは0.7mmであり、および/または、最小直径が0.3mmであり、好ましくは0.4mmであり、より好ましくは0.5mmであり、さらにより好ましくは0.6mmであり、さらにより好ましくは0.7mmであり、さらにより好ましくは0.9mmである、
請求項1から9のいずれか一項に記載のポートニードル。
【請求項11】
前記ポートニードルの前記近位部分は、終端部が平坦か、斜めであるか、および/または、少なくとも1つの側面ウィンドウを有する、
請求項1から10のいずれか一項に記載のポートニードル。
【請求項12】
前記近位部分は鈍角端部を持ち、前記ポートニードルはさらに、少なくとも前記ルーメンに対して逆行可能で鋭利先端部を持つ穿刺部を備えるので、前記鋭利先端部は前記近位部分から延出して前記皮膚、組織および/またはポートルーメンを貫通し、前記穿刺部は前記ルーメンからの取り出しに適合している、
請求項1から11のいずれか一項に記載のポートニードル。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のポートニードルとして利用されるニードル。
【請求項14】
皮膚、組織および/またはポートのポートセプタムに、前記ポートのポートチャンバに流体を移送するべく、ポートニードルを貫通させる方法であって、
遠位部分によって前記流体を受け取る段階と、
近位部分によって前記流体を前記ポートの前記ポートチャンバに輸送する段階と、
少なくとも1つの内面を画定する少なくとも1つのルーメンによって前記遠位部分から前記近位部分へと前記流体を移送する段階と、
少なくとも1つのメンブレンによって前記近位部分の少なくとも1つの外面を画定する段階と、
Niおよび/または任意のNi化合物を最大で0.05%の含有率で含む前記近位部分の前記外面を設ける段階であって、および/または、前記外面は最大で0.2μg/cm/週でNiおよび/または任意のNi化合物を放出することに適合している、段階と
を備える方法。
【請求項15】
ポートのポートセプタムに、前記ポートのポートチャンバに流体を移送するべく、ポートニードルを貫通させる方法であって、
前記ポートを人間または動物の体の外部に設ける段階と、
遠位部分において前記流体を受け取る段階と、
近位部分によって前記流体を前記ポートの前記ポートチャンバに輸送する段階と、
少なくとも1つの内面を画定する少なくとも1つのルーメンによって前記遠位部分から前記近位部分へと前記流体を移送する段階と、
少なくとも1つのメンブレンによって前記近位部分の少なくとも1つの外面を画定する段階と、
Niおよび/または任意のNi化合物を最大で0.05%の含有率で含む前記近位部分の前記外面を設ける段階であって、および/または、前記外面は最大で0.2μg/cm/週でNiおよび/または任意のNi化合物を放出することに適合している、段階と
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚、組織を貫通することに特に適合しているポートニードルに関し、および/または、埋め込まれたポートのポートメンブレンであって、流体を当該ポートのポートチャンバに移送するためのポートメンブレンに関する。
【背景技術】
【0002】
ポートカテーテルに入れる穿刺針またはポートニードルは、長期間にわたって患者の体内に留置させる必要があることが多い。最長で7日間にわたって体内にニードルを留置する。
【0003】
ポートニードルは、既に埋め込まれたポートまたはポートカテーテルに液体を入れるよう設計されている中空のニードルであり、一般的に使用されており公知である。医療関係者はさまざまな構造を容易または安全に使用することができる。
【0004】
緊急時または短期間の場合は血管アクセスポートにシリンジ型デバイスが使用されることが多いが、長期間の輸液治療の場合には特別なタイプのデバイスを使用する。このような輸液アセンブリデバイスは一般的に、ニードルと、挿入位置において皮膚に対して平坦な状態を保つ翼アセンブリとから成る。ニードルの近位端が、ニードルシャンクに対して角度を持つ翼アセンブリに取り付けられ、当該角度は約90度である。上述したように、このような長期用ニードルデバイスは、血管アクセスポートに挿入される場合、例えば、米国特許第4710176号に記載されているように、患者の皮膚に対して平坦な状態を保ち、皮膚に密着させる。当該特許は参照により本願に組み込まれる。
【0005】
血管アクセスポート用の輸液アセンブリで使用されるニードルのニードル先端に関しては、ノンコアリング構成が一般的に使用される。これは、血管アクセスポートのセプタムまたはメンブレンにニードルを繰り返し刺入させるためである。ハイポダーミック針または他の従来のニードルの先端がメンブレンまたはセプタムを通過する場合、セプタム材料のいずれかの部分が、ニードルの先端にある開口を通ってニードルのシャフトの内部に入り込んでしまうとコアリングが発生する。このプロセスでニードルの内側に入り込んでしまったセプタム材料のこの部分は実質的に、セプタム材料の本体部分の残りと分断されてしまう。このようなセプタムのコアリングによって、セプタムから小さい粒子が分離し、埋め込まれた血管アクセスシステムによって患者の血管系に輸液されている流体に入り込む可能性がある。これらの粒子は、血管アクセスポートの流出口ステムにおける流体の流れを妨げる可能性があり、または、血管アクセスポートの流出口ステムから抜け出した場合は、患者の心臓血管系で詰まってしまう可能性がある。さらに、セプタムのコアリングによって、セプタム本体を通る小さい通路が形成される。場合によっては、このような通路が、セプタムの外側から血管アクセスポート内部の流体リザーバーまで、セプタム全体を貫通するよう延在する。
【0006】
血管アクセスポートの筐体から、設置されているセプタムに対してかかる内向きの力は、最初はセプタム本体の材料をセプタム自身に内向きに付勢して、上述したような通路を、そこからニードルのシャフトを引き抜いた後で、塞ぐはずである。それにもかかわらず、コアリングが続くと最終的には、さまざまな種類のセプタム欠陥が発生し、このような内向きの力では解決できない。セプタム材料の連続性が一層脅かされることになり、セプタムマトリクスの一部領域が粉砕化されてしまう。
【0007】
最終的には、血管アクセスポート内の流体リザーバーからセプタムを通して流体が漏れることが予想され得る。このように血管アクセスポートの外部への流体漏れが一度発生すると、内部に血管アクセスポートが埋め込まれている皮下パケットの周囲を取り囲む組織は壊死してしまい、望ましくない状況を数多く引き起こしてしまう。このため、血管アクセスポート用の輸液アセンブリと組み合わせて使用するのはノンコアリングニードルまたはヒューバー針が好ましい。これらの針は、標準的または従来のハイポダーミック針とは対照的に、ナイフのようにセプタムを刺通するので、セプタムを再度封止することが容易になり、上述した問題の大部分が回避される。
【0008】
どのようなニードル型デバイスでも同じであるが、不注意による誤穿刺の問題がある。不注意による誤穿刺は一般的に、ニードル型デバイスの適切な処分に先だって患者からニードル型デバイスを引き抜く際に発生する。言うまでもなく、不注意で誤穿刺が発生すれば、患者の血液に医療従事者が接触するという望ましくない事態のために、さまざまな懸念が引き起こされる。不注意による誤穿刺は、医療従事者の側の不注意によって発生し得る場合、または、ニードル先端が露出した状態でデバイスを取り扱う際に発生する事故による場合、がある。具体的にヒューバー針に関しては、針刺し事故が発生し得る原因として、取り外しの難しさも挙げられる。この難しさは、ヒューバー針の構成が原因である。ヒューバー針はポート内部に対してフック状に曲がっているので取り外すのが難しくなっている。針をポートから取り外すために医療従事者が加える引き抜き力が大きくなることで、ニードル先端をポートから抜き去る際に制御しにくくなり、不注意による誤穿刺が発生することになる。
【0009】
本明細書で説明するような翼付き輸液アセンブリにおける不注意による誤穿刺の問題に対処するべく、さまざまな安全装置が設計されており、ポートからニードルを引き抜いた後でニードルを覆うようになっている。このような安全装置の1つとして、米国特許第5,755,694号で開示されているものがある。当該米国特許は、ニードルの一部分である近位端においてその上方に配設されるニードルベースを開示している。可撓性材料で形成される2つの概して平坦な翼状部材を備え、1つのヒンジが各翼状部材をニードルベースに接続している。患者からニードルを取り外すと、ニードルが完全に患者の皮膚から取り外されるまで、翼状部材をニードルに隣接した状態で維持する可動部材に対して翼状部材が屈曲し、完全に取り外された後で翼状部材はニードルの周囲を取り囲んで先端がニードルベースの外部と接触しないようにする。本特許は、参照により本願に組み込まれる。
【0010】
別のタイプの安全装置は米国特許第5,951,522号に記載されている。当該特許では、ヒューバー針の構成が説明されている。米国特許第5,951,522号は、斜めになっているヒューバー針の後端部に取り付けられている翼アセンブリを備えるセーフティ筐体を開示している。翼アセンブリは、複数の互いに離間した折り曲げ線を持つ単一の一体部材であって、折り曲げ線によって複数の相互接続されたパネルへと分割されている、単一の一体部材、または、ハサミ型の構成で取り付けられている一対の翼状部材のいずれかから成るよう構成されている。各実施形態において、医療従事者が針を患者から取り外すとき、翼アセンブリが針の周囲で閉じて一体的に係止して、針を内側に収容する。当該特許は参照により本願に組み込まれる。
【0011】
その他の発明によれば、米国出願第2013/0218085号でセーフティニードルが開示されている。当該出願によれば、ポートニードルまたはヒューバー針がずれないように保護するための安全装置が説明されている。これによれば、ポートニードルまたはヒューバー針のうち患者の皮膚の表面に位置している一部分を保護装置の内部開口に受け入れるので、ポートニードルまたはヒューバー針の位置を特に良好に固定することが可能になる。枠状のスペーサ部材が、ポートニードルまたはヒューバー針のうち患者の皮膚の表面に位置しているこの部分の周囲に設けられ、ニードルの高さの大部分にわたって延在する。このようにして、ある種の土手が形成され、ポートニードルまたはヒューバー針を全ての方向から保護する。当該出願は参照により本願に組み込まれる。
【0012】
しかし、先行技術のデバイスによれば原因が未知の感染が、特にポートニードルが皮膚を貫通する箇所で検出されている。
【発明の概要】
【0013】
ポートカテーテルは常に、原理的に、医薬物質を人体または動物の体内に供給すること、および/または、人体または動物の体内から流体を回収することを目的としている。この治療は、「非経口治療」と呼ばれている。つまり、どちらの方向であっても流体の移送は消化器系を回避する。複数の用途で一般的に実際に使用されている。全ての適切且つ承認済みの輸液治療を含む非経口式の血管および/または動脈を介した薬剤投与、全ての適切且つ承認済みの輸液治療を含む非経口式くも膜下薬剤投与、全ての適切且つ承認済みの輸液治療を含む非経口式腹膜薬剤投与、全ての適切且つ承認済みの輸液治療を含む非経口式の髄腔内または硬膜外の薬剤投与、腹水の常時ネガティブ(negative)吸引、および/または、これらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0014】
本発明は、以下の説明と同様、特許請求の範囲においても説明される。従属請求項およびさまざまな実施形態の説明において、好ましい実施形態を具体的に説明する。
【0015】
本発明は、皮膚、組織を貫通することに特に適合しているポートニードル、および/または、ポートのポートセプタムであって、流体を当該ポートのポートチャンバに移送するためのポートセプタムに関する。
【0016】
当該ポートは任意で、人体の外側または動物の体外で動作させるべく設けることが可能である。その場合、流体はチャンバにだけ、例えば、シミュレーションを目的として、および/または、トレーニングを目的として、輸送される。
【0017】
当該ポートニードルは、流体を受け取ることに適合している遠位部分と、流体をポートのチャンバに輸送することに適合している近位部分とを備える。流体は、患者用の任意の適切な種類の流体および/または物質を含む任意のリザーバー、容器等から受け取ることが可能である。当該流体はこの後、近位部分に供給または輸送される。近位部分は、ポートと直に連通している部分、または、ポートに隣接している部分であってよい。近位部分はさらに、ポートのセプタム、ならびに/または、患者の皮膚および/もしくは組織を貫通する部分を含む。
【0018】
少なくとも1つのルーメンが少なくとも1つの内面を画定または形成するとしてよく、当該ルーメンは遠位部分から近位部分へと流体を移送することに適合している。異なる目的を実現するべく複数のルーメンを設けることも可能である。このような目的としては、冷却、加熱、温度正常化、他の流体の供給および/または流体の回収が挙げられ得る。当該ポートニードルはその場合、これらの機能の全てについても、または、それらの一部だけについても対応する構造を設けるよう設計され得る。
【0019】
少なくとも1つのメンブレンは、近位部分の少なくとも1つの外面を画定している。メンブレンは、固体および/もしくは強固な壁部、ならびに/または、固体および/もしくは強固な基板上の任意の層もしくはコーティングであってよい。基板も壁部であってよく、その場合、基板上には、好ましくは固定された状態で、メンブレンが配置されている。ルーメンが1個の場合、基板またはメンブレンを形成する壁部は、断面が円形または任意のその他の形状、例えば、正方形もしくは多角形、または、これらの任意の組み合わせであってよい。ルーメンが複数の場合、外壁は同様に、ルーメンの配置にしたがって、そのような形状を取り得る。
【0020】
近位部分の外面は、金属を含み、最大含有率0.05%でニッケル(Ni)を含み、および/または、Niおよび/または任意のNi化合物を最大で0.2μg/cm/週の速度で放出することに適合している化合物または合金を形成している。Niおよび/もしくは任意の化合物の含有率、ならびに/または、Niおよび/もしくは任意の化合物を放出する能力は、0(ゼロ)であってもよく、または、実質的に0(ゼロ)に近いとしてもよい。
【0021】
メンブレンは、液体および/または気体について不透過性であるとしてよい。これは、使用する流体によって決まると共に、壁部または基板の構成によっても決まる。後者が不透過性である場合、メンブレンは流体について透過性を有するとしてよいが、減菌のために、不透過性が好ましく、流体および望ましくない物質、細菌、黴菌等が容易に留まることが出来ないようにする。
【0022】
メンブレンは、基板上に少なくとも1つの外側層として配置されるとしてよく、および/または、少なくとも近位部分の外壁を形成する。メンブレンは、金属および/または合金、スチール等、好ましくはステンレススチールで形成するとしてよい。これに代えて、少なくともポートニードルの近位部分、または、ポートニードル全体のメンブレンは、鉄を含まない金属または非金属材料を含むか、および/または、そのような材料で形成され、好ましくは炭素材料および/またはCFRP材料を含む。
【0023】
ポートニードルの断面係数は、少なくとも0.004mmであり、好ましくは0.01mmであり、より好ましくは0.1mmであり、さらにより好ましくは0.2mmであり、および/または、最大で0.3mmであり、好ましくは0.2mmであり、より好ましくは0.1mmであり、さらにより好ましくは0.01mmである。これは、ポートニードルデバイスが患者に取り付けられたとしても、そして、ニードル自体はポートチャンバ内に位置しているとしても、ポートニードルデバイスは破損の危険性があるので、有意義である。使用中にニードルが破砕してしまうと、破片が発生する可能性があり、そのような破片は患者の命に係わる危険性があり得る。
【0024】
メンブレンは、ポートニードルの少なくとも近位部分の上方に設けられるコーティングおよび/または層によって画定されるとしてよく、焼きばめおよび/または接着剤によって密着させることが好ましい。
【0025】
ポートニードルの内面は、Niまたは任意のNi化合物を最大で0.05%含むとしてよく、および/または、Niまたは任意のNi化合物を最大で0.2μg/cm/週で放出することに適合しているとしてよい。Niおよび/もしくは任意の化合物の含有率、ならびに/または、Niおよび/もしくは任意の化合物を放出する能力はまた、0(ゼロ)または実質的に0(ゼロ)に近くなるとしてよい。
【0026】
近位部分は、最大長さが50mmであってよく、好ましくは40mmであってよく、より好ましくは30mmであってよく、さらにより好ましくは20mmであってよく、さらにより好ましくは10mmであってよく、および/または、最小長さが2mmであってよく、好ましくは5mmであってよく、より好ましくは10mmであってよく、さらにより好ましくは20mmであってよく、さらにより好ましくは30mmであってよい。
【0027】
固体のメンブレン、および/または、層として配設されているメンブレンであって、下層の基板と組み合わせられているメンブレンは、最大外径が1.5mmであり、好ましくは1.2mmであり、より好ましくは1.0mmであり、さらにより好ましくは0.9mmであり、さらにより好ましくは0.8mmであり、さらにより好ましくは0.7mmであり、および/または、最小直径が0.3mmであり、好ましくは0.4mmであり、より好ましくは0.5mmであり、さらにより好ましくは0.6mmであり、さらにより好ましくは0.7mmであり、さらにより好ましくは0.9mmである。
【0028】
理論上、ポートニードルは6Gから30Gまで利用可能である。現在、ニードルは一般的に、22G、21G、20Gおよび19G(Gは、特定の内径を特定するゲージを意味する)のサイズを持つものが使用されている。19Gは一般的に、血液、アルブミン、血小板濃縮液等に使用される。サイズ20から22は一般的に、通常またはまれは輸液流体、例えば、化学療法組成物、非経口栄養摂取(parenteral nutrition)とも呼ばれる、完全および/または部分的非経口栄養法(parenteral feeding)、抗生作用、抗ウイルス作用、抗体治療等に使用される。
【0029】
ポートニードルの近位部分は、終端部が平坦(blunt)か、斜めであるか、および/または、少なくとも1つの側面(lateral)ウィンドウを有するとしてよい。
【0030】
近位部分は鈍角(dull)端部を持つとしてよく、ポートニードルはさらに、少なくともルーメンに対して逆行可能で鋭利先端部を持つ穿刺部を含むとしてよい。このため、鋭利先端部は近位部分から延出して皮膚、組織および/またはポートルーメンを貫通し、穿刺部はルーメンからの取り出しに適合している。このような穿刺部は、マンドレイン(mandrain)とも呼ばれる。
【0031】
本発明はさらに、先述および後述のポートニードルとして利用される、医療用ニードルに関する。
【0032】
本発明はさらに、皮膚、組織および/またはポートのポートセプタムに、流体を当該ポートのポートチャンバに移送するべく、ポートニードルを貫通させる方法に関する。当該方法はさらに、人体または動物の体の外側に取り付けられているポートのポートセプタムを貫通させるために実施され得る。
【0033】
本発明は、遠位部分において流体を受け取る段階と、近位部分によって流体をポートのチャンバに輸送する段階と、少なくとも1つの内面を画定する少なくとも1つのルーメンによって遠位部分から近位部分へと流体を移送する段階と、少なくとも1つのメンブレンによって近位部分の少なくとも1つの外面を画定する段階と、Niおよび/または任意のNi化合物を最大で0.05%の含有率で含む近位部分の外面を設ける段階であって、および/または、外面は最大で0.2μg/cm/週でNiおよび/または任意のNi化合物を放出することに適合している、段階と、を含むとしてよい。
【0034】
「コーティング」という用語は、メッキまたはメタライゼーション形成、電気メッキ、スパッタリング、収縮(shrinked)、粘着、密着等として説明され得るプロセスを含むことを意図している。
【0035】
「体」および/または「生物」という用語は、人間および/または任意の温血動物の体を含むことを意図している。
【0036】
「流体」という用語は、液体、気体、乳状液および/またはこれらの任意の組み合わせを含むことも意図している。
【0037】
「トゲ」という用語は、穿刺トゲ、貫通先端、棒、マンドレイン等を含む。
【0038】
「メンブレン」という用語は、少なくとも1つのシース、膜、薄膜および/もしくは被覆層、ならびに/または、これらの任意の組み合わせを含む。
【0039】
「化合物」という用語は、合金、混合物、組み合わせ、混合体および/またはこれらの任意の組み合わせも含む。
【0040】
「皮膚」という用語は、皮膚組織、皮下組織、皮下脂肪、筋肉も含む。
【0041】
驚くべきことに、ポートニードルを改良することでアレルギー反応の大半を回避できることが分かった。これは患者にとって多いに安心できる知らせである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
当業者であれば、後述する図面は説明を目的としたものに過ぎないと理解されるであろう。図面は本教示内容の範囲を限定することを決して意図したものではない。
図1】ポートニードル装置1またはポートニードル1の一例を底面から見た図を示す図である。側方で、遠位部分17が任意の流体を受け取っている様子を見ることが出来る。本体20は、全ての構成要素を保持しているか、または、全ての構成要素の少なくとも一部の周囲に配置されており、全ての構成要素を正しい位置に保持する機能を持つとしてよい。本体20において、任意の載置装置または載置層21が見られ得る。載置層は、抗生作用を実現する手段として設けられているとしてよい。さらに、紙面に対して垂直に延伸するポートニードル1の近位部分10が図示されている。利便性を向上させる目的でグリップ18を一体化するとしてもよい。
図2】ポートニードル1の側面図を例示する。同一または同様の構成要素には同一の参照番号を付与する。任意の載置部分21は、ポートニードルの底部に配置されており、載置部分21は、ポート(不図示)、または、ポートに近接している皮膚および/または組織に隣接して載置されるように設けられている。近位部分10は、好ましくは垂直方向で下方に、または、概して下向きの方向で延伸している。
図3】セプタム2と共にポートニードル1をさらに示す図である。図2に加えて、ニードルセプタム2を貫通することができる穿刺トゲ25が図示されている。トゲ25は、鋭利端部19を持つ。鋭利端部19は、任意で平坦端部11を持つ近位部分10の端部の延長線上の位置に位置決めされる。トゲ25は、後述するポート3のポートセプタム31に対する貫通を容易にすると共に、ポートニードル1をポート3に挿入すると引き抜くことができる。近位部分10はこうして、鋭利端部を有さなくてもポート内に載置することが可能となり、ポート内で安全且つより安定して配置され得る。平坦端部はポートチャンバ30の底部に対して平坦に載置され得るので、ウィンドウ11´を設けることでウィンドウ11´を介して近位部分10から流体が流出することが保証され得る。
図4】近位部分10の任意の端部11を示す図である。上記で開示したメンブレン13は、固体であってよく、メンブレン13の内面14およびメンブレン13の外面15でルーメン12を画定することができる。メンブレンが基板上の層またはコーティングである場合、メンブレンが外面15を画定し、基板が内面14を画定する。
図5】互いに組み合わせる場合もある、近位部分10の端部の設計についての2つの選択肢を示す図である。ウィンドウ11´は、斜めもしくは切断端部であり、または、ウィンドウ11´を含む斜め端部は、単独または組み合わせて設けられるとしてよい。近位部分12´の実施形態は、「ヒューバー針」として形成されるとしてよく、および/または、任意のその他のノンコアリング型ニードル先端として形成され得る。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、図面を参照しつつ本発明の実施形態例を説明する。これらの例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明への理解を深めることを目的として記載している。
【0044】
以下に記載する説明では、一連の特徴および/または段階を説明する。当業者であれば、文脈から必要にならない限り、特徴および段階の順序は、結果として得られる構成およびその効果にとって、重要ではないことを理解するであろう。さらに、当業者には明らかなように、特徴および段階の順序に関係なく、段階間の時間遅延の有無が、説明される段階の一部の間または全ての間に存在し得る。
【0045】
特許請求の範囲を含む本明細書で用いられる場合、文脈からそうでないことが分かる場合を除き、用語の単数形は複数形も含むものと解釈されるべきであり、その逆も同様である。このため、本明細書で用いられる場合、「a」、「an」および「the」といった単数形は、そうでないことが文脈から明確に分かる場合を除き、複数にも言及していることに留意されたい。
【0046】
明細書および特許請求の範囲において、「comprise(備える、有する、含む)」、「including(備える、有する、含む)」、「having(備える、有する、含む)」および「contain(含む、含有する)」という用語、ならびに、これらの活用形は、「含むが限定されない」ことを意味するものと理解されるべきであり、他の構成要素を排除することを意図しているわけではない。
【0047】
本発明ではさらに、用語、特徴、値および範囲等が「about(約)」、「around(およそ)」、「generally(概して)」、「substantially(略)」、essentially(本質的に)」、「at least(少なくとも)」等の用語と組み合わせて用いられる場合、これらの用語、特徴、値および範囲等の厳密な解釈を範囲に含めている(つまり、「about 3(約3)」は、「厳密に3」も範囲に含み、「substantially constant(略一定)」は「厳密に一定」も範囲に含むものとする)。
【0048】
「少なくとも1つ」という表現は、「1以上」を意味するので、1または複数の構成要素を含む実施形態をどちらも含むものと理解されたい。さらに、「少なくとも1つ」と記載された特徴を説明する独立請求項を参照する従属請求項は、その特徴が「前記」および「前記少なくとも1つ」と称される両方の場合において同一の意味を有する。
【0049】
本発明の上述した実施形態に対する変更は、本発明の範囲内に含まれつつ、行われ得るものと理解されたい。同一、均等または同様の目的を実現するための代替的な特徴は、特段の記載がない限り、本明細書で開示している特徴に代えて採用され得る。このため、別途記載されない限り、開示された各特徴は、一般的な一連の均等または同様の特徴の一例を表している。「Ni」という略字は、元素のニッケルを表しており、および/または、全ての同位体元素を含む。
【0050】
「for instance(例えば)」、「such as(など)」「for example(例えば)」等の例示を意味する用語を利用する場合、本発明をよりよく説明することを目的としているに過ぎず、そう主張していない限り、本発明の範囲を限定している旨を示すものではない。本明細書で説明した段階はいずれも、文脈から明らかにそうでないと分かる場合を除いて、任意の順序または同時に実施され得るものである。
【0051】
本明細書で開示した特徴および/または段階は全て、これらの特徴および/または段階のうち少なくとも一部が相互排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることが可能である。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明の全ての態様に適用可能であり、任意の組み合わせで利用されてよい。
【0052】
複数の異なる実施形態について同一の参照番号が用いられている場合、異なる実施形態の、同一または同様の機能を持つ部分または特徴を特定することを意図している。他の実施形態において同一の参照番号を特定していない場合、そのような参照番号が特定する対応する特徴が存在しないことを意味することを意図するものでは決してない。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】