(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-514916(P2019-514916A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(54)【発明の名称】クロシン系化合物及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07H 13/04 20060101AFI20190517BHJP
C07H 13/06 20060101ALI20190517BHJP
A61K 31/7024 20060101ALI20190517BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20190517BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20190517BHJP
A61K 36/18 20060101ALI20190517BHJP
【FI】
C07H13/04
C07H13/06
A61K31/7024
A61P25/28
A61P25/00
A61K36/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2018-556352(P2018-556352)
(86)(22)【出願日】2017年3月16日
(85)【翻訳文提出日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】CN2017076911
(87)【国際公開番号】WO2017185900
(87)【国際公開日】20171102
(31)【優先権主張番号】201610284974.6
(32)【優先日】2016年4月29日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】512000260
【氏名又は名称】ジナン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Jinan University
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】シンシェン ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ユ
(72)【発明者】
【氏名】ダン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ニ
(72)【発明者】
【氏名】シウチ バオ
(72)【発明者】
【氏名】リン リ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイシア チャン
(72)【発明者】
【氏名】ハオ ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ユアンペン チェン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C057AA06
4C057BB03
4C057DD01
4C057HH01
4C057HH03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA03
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C088AB14
4C088AC04
4C088BA10
4C088BA15
4C088BA32
4C088CA08
4C088CA14
4C088NA14
4C088ZA01
4C088ZA02
(57)【要約】
一系列のクロシン系化合物及びそれのアルツハイマー病の予防・治療に関連する薬理学的用途を提供する。漢方薬クチナシを原料とし、複数の分離方法を通じて一系列のクロシン系化合物を得て、インビトロ細胞実験により、過酸化水素(H
2O
2)に起因する酸化損傷およびL−グルタミン酸に起因する興奮性アミノ酸損傷の保護作用を有する化合物をスクリーニングした結果、これらクロシン系化合物が良好なH
2O
2およびL−グルタミン酸に起因する細胞損傷を保護する作用が有することを示した。酸化ストレスと興奮性アミノ酸の著しい増加はアルツハイマー病の神経損傷の重要な要因であるため、これらの化合物は優れたアルツハイマー病の予防・治療効果を有し、開発と利用の見通しが広い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示されるクロシン系化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
ここで、13〜14位の二重結合の立体配置はトランスEまたはシスZであり、
R
1、R
2はそれぞれ独立に、H、CH
3、CH
2CH
3、グリコシル基およびキナ酸基を表し、
前記グリコシル基は、グルコース基、ゲンチオビオース基、キシロシル、ガラクトシル、マンノシル、アラビノース、ラムノシル、リボシル、リソソシルおよびキシラニルであり、
前記グリコシル基の数が0〜2であり、
前記グリコシル基のヒドロキシ基は、サクシノイル基、カフェオイル基、クマロイル基、シンナモイル基、CH
3(CH
2)nCO、HOOC(CH
2)nCOのようなアシル化基によってアシル化されてよく、
前記キナ酸基の3,4,5位のヒドロキシル基は、スクシニル基、カフェオイル基、クマロイル基、シンナモイル基、CH
3(CH
2)nCO、HOOC(CH
2)nCOのようなアシル化基によってアシル化されてよく、
キナ酸基の1位のカルボキシル基は、メチルエステル化またはエチルエステル化されてよく、
前記一般式(I)の化合物は以下の化合物を含まない。
【化2】
【化3】
【請求項2】
13〜14位の二重結合の立体配置がトランスE立体配置であり、R1がグルコース基であり、R2がキナ酸基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が以下の化合物である請求項2に記載の化合物。
【化4】
【請求項4】
13〜14位の二重結合の立体配置がシスZ立体配置であり、R1がH、グルコース基又はキナ酸基であり、R2がH、グルコース基またはキナ酸基である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が以下の化合物である請求項4に記載の化合物。
【化5】
【請求項6】
13〜14位の二重結合の立体配置がトランスE立体配置であり、R1がグルコース基であり、R2がグルコース基又はHである請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が以下の化合物である請求項6に記載の化合物。
【化6】
【請求項8】
13〜14位の二重結合の立体配置がトランスE立体配置であって、R1がグルコース基であり、R2がCH2CH3である請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が以下の化合物である請求項8に記載の化合物。
【化7】
【請求項10】
13〜14位の二重結合の立体配置がトランスE立体配置であって、R1がグルコース基であり、キシロシルであり、R2がHである請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物が以下の化合物である請求項10に記載の化合物。
【化8】
【請求項12】
以下の構造式で示されるクロシン系化合物。
【化9】
【請求項13】
請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の化合物の、神経変性疾患の予防および治療のための医薬品の製造への使用。
【請求項14】
前記神経変性疾患は、血管性認知症、血管性認知障害、アルツハイマー病、記憶喪失、脳組織変性疾患症候群、またはコリン作動性神経変性疾患を含む、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の化合物と、他のクロシン系化合物を含む組成物であって、前記他のクロシン系化合物が以下の化合物である組成物。
【化10】
【化11】
【請求項16】
請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬品組成物。
【請求項17】
漢方薬クチナシを原材料とし、エタノール、メタノールまたは水を用いて、異なる抽出回数と時間で熱抽出または超音波抽出する方法により抽出し、抽出液を減圧濃縮してクチナシの全抽出物を得ることを含む、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
【請求項18】
クチナシの全抽出物を適量の水で溶解し、遠心分離し、上清をマクロポーラス吸着樹脂オープンカラムクロマトグラフィーにより、水および/または30%〜95%エタノールで適量のベッド容量を溶出して、溶出液を収集し、クチナシクロシンの活性成分を減圧濃縮し、さらに種々のカラムクロマトグラフィーで分離する、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
4倍量の60%エタノールで、1回あたり2時間で3回加熱還流する、請求項17に記載の製造方法。
【請求項20】
水で溶出した後、30%、50%、70%、95%のエタノールで順に溶出し、各勾配で4つのベッド容量で溶出し、70%エタノール溶液を減圧濃縮してクチナシクロシンの活性成分を得る、請求項18に記載の製造方法。
【請求項21】
前記カラムクロマトグラフィーは、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、ODSオープンカラムクロマトグラフィー、Sephadex LH−20オープンカラムクロマトグラフィー、およびPre−HPLCカラムクロマトグラフィーを含む、請求項18に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロシン系化合物、及びそのアルツハイマー病の予防・治療における関連薬理学的応用に関する。
【背景技術】
【0002】
クロシン(crocins)は構造が特別な水溶性のカロテノイドであり、クロセチン(crocetin)及びその異なるグリコシル基と結合してなる糖エステルを含み、サフラン(Crocus sativus L.)及びクチナシ(Gardenia jasminoides Ellis)における共有色素成分である。伝統的な応用において、サフランはヨーロッパやアジアで婦人科良薬として広く使用され、クチナシ黄色色素は、天然着色剤として使用される。近年、サフラン粗抽出液(Crocus sativus L. Extracts:CSE)、クチナシ黄色色素及びモノマー成分であるクロシンビスゲンチオビオシド(crocin−1)、クロセチン(crocetin)が中枢神経系保護(非特許文献1〜4を参照)、心血管系・脳血管系保護(非特許文献5,6を参照)、及び悪性腫瘍の拮抗(非特許文献7〜9を参照)などの面で高効率、低毒性の薬理学的活性を示すことが、多くの研究により表明された。
【0003】
アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease,AD)は記憶障害、認知障害、及び人格変化を特徴とする老化に伴う進行性の神経変性疾患である。ADは、老人性認知症の最も一般的なタイプであり、AD患者の初期症状は記憶喪失であり、方向力、理解力、判断力及び記憶力の低下に進展し、患者の後期は全面的な衰退状態になり、知能は完全に失われ、運動や言語の障害がますます明らかになり、最終的に二次感染と不全で死亡することが多い。
【0004】
世界的な老年化の激化につれて、ADの発生率が年々急速に増加され、各国、特に発展途上国の社会及び人々に重い経済的、家族的な負担をもたらす。1906年、ドイツの医者Alzheimerが始めてこの疾患を記述してから今までの100年以上、国際的に、この疾患を治療する方法と医薬品がないと認められている。ここから分かるように、理想的な治療薬が存在しない場合、抗アルツハイマー薬のスクリーニング及び研究開発は、非常に広い市場の見通しと深い社会的意義を有する。
【0005】
ADの顕著な病理学的特徴は、大脳皮質及び海馬の細胞外のアミロイドβ蛋白(amyloid β−protein,Aβ)及び細胞内の凝集するtauタンパク質の絡み合いである。現在、多数の学者は、Aβの大量沈着がAD発症の直接の原因で、この過程において主に炎症及び酸化ストレスのような病理的変化が存在すると考えている。多数の研究により、酸化ストレスがAD発生・進展の重要なメカニズムであることが確認されている。従って、抗酸化損傷を標的とすることがAD予防・治療の有効な手段を見出す重要なルートとなっている。
【0006】
グルタミン酸は、大脳皮質及び海馬部の内因性神経伝達物質である。正常な生理学的条件下で、グルタミン酸は中枢神経系のシナプス伝達を調節し、学習、記憶、運動、認知及び発育を含む正常な脳のすべての機能に関与する。しかしながら、病理学的条件下では、様々な理由によりグルタミン酸含有量が増加し、受容体が過度に活性化されるため、ニューロン損傷を引き起こし、神経毒性を生じる。異常グルタミン酸がアルツハイマー病、脳虚血及び統合失調症を含む多くの神経学的疾患の病因学及び病態生理学において、重要な役割を果たすことが多くの研究によって発見された。従って、グルタミン酸の神経毒性に拮抗することにより、神経保護の役割を果たすことができる(非特許文献10を参照)。
【0007】
CSEは、優れた体外酸化防止作用及びAβ原繊維形成の阻害作用を有し、主色素crocin−1が低い用量でAβ原繊維の形成を阻害することができ、サフラン及びその色素がヒト脳におけるAβ凝集・沈殿を阻害する可能性があり、ADの予防・治療に係る活性を有することを示す(非特許文献2を参照)。Crocin−1はグルタチオン(GSH)含有量を増加させ、脂質過酸化物形成を阻害し、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を保持することによってPC−12細胞を保護することができる(非特許文献11を参照)。
【0008】
動物実験では、CSE(30mg/kg及び60mg/kg)で実験における正常ラットの学習及び記憶能力を改善することができ、ラットのプリンによる記憶障害を効果的に阻害することができる(非特許文献12を参照)。サフランをカプセル剤にして、軽度・中等度のADの臨床第II期治療に使用したところ、22週間におけるランダム二重盲検試験では、サフランカプセルが陽性医薬品であるドネペジルと同じ治療効果を有し、医薬品の不良反応が陽性薬剤と明らかな差異がなく、嘔吐の副作用は弱まった(非特許文献3を参照)。中等度・重度のADの臨床第II期治療に使用したところ、実験群の患者が30mg/日で、対照群が陽性対照薬メマンチンを30mg/日で服用した結果、実験群が対照群と同じ治療効果を生み出し、且つ明らかな不良反応がないことを示した(非特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Karakani A.−M.,RiaziG.,Mahmood G.−S.,et al.Inhibitory effect of corcin on aggregation of 1N/4R human tau protein in vitro[J].Iranian journal of basic medical sciences.2015,18(5),485−92.
【非特許文献2】Papandreou M.−A.,Kanakis C.−D.,Polissiou M.−G.,et al.Inhibitory Activity on Amyloid−β Aggregation and Antioxidant Properties of Crocus sativus Stigmas Extract and Its Crocin Constituents[J].Journal of Agriculture and Food Chemistry.2006,54(23),8762−8768.
【非特許文献3】Akhondzadeh S.,Sabet M.−S.,Harirchian M.−H.,et al.A 22−week,multicenter,randomized,double−blind controlled trial of Crocus sativus in the treatment of mild−to−moderate Alzheimer’s disease[J].Psychopharmacology.2010,207(4),637−643.
【非特許文献4】Farokhnia M.,Shafiee S.−M.,Iranpour N.,et al.Comparing the efficacy and safety of Crocus sativus L.With memantine in patients with moderate to severe Alzheimer’s disease:a double−blind randomized clinical trial[J].Human Psychopharmacology.2014,29(4),351−359.
【非特許文献5】Zheng Y.−Q.,Liu J.−X.,Wang J.−N.,et al.Effects of crocin on reperfusion−induced oxidative_nitrative injury to cerebral microvessels after global cerebral ischemia[J].Brain Research.2007,1138,86−94.
【非特許文献6】Higashino S.,Sasaki Y.,Giddings J.−C.,et al.Crocetin,a Carotenoid from Gardenia jasminoides Ellis,Protects against Hypertension and Cerebral Thrombogenesis in Stroke−prone Spontaneously Hypertensive Rats[J].Phytotherapy Research.2014,28(9),1315−1319.
【非特許文献7】Shengyu DONG, Fumei LIU, Xiangyong LI; CNE2細胞の増殖と移動に対するクロシンの阻害作用[J];湖北民族学院刊行物・医学版;2013、30(2)、6〜12.(董盛宇,劉付梅,李祥勇.藏紅花素対CNE2細胞的増殖及移動抑制作用[J].湖北民族学院学報・医学版.2013,30(2),6−12.)
【非特許文献8】Xinxing WANG,Zhenghong YU, Shulu SHIなど;クロシンのヒト肺腺癌SPC−A1細胞への増殖抑制効果及びメカニズムの研究[J];臨床腫瘍学会雑誌.2013,18(4),295−299.(王新星,于正洪,侍述碌等.藏紅花素対人肺腺癌SPC−A1細胞的増殖抑制作用及机制研究[J].臨床腫瘍学誌.2013,18(4),295−299.)
【非特許文献9】Fuxiong CHEN,Jia TAO,Sui HUANGなど;EBウイルス感染の小児におけるIM及びEBV−AHSの臨床研究及びウイルス感染特性[A];中国医師会、中国医師会小児科会;第17回全国医学会全国小児科学会編集(第1巻)[C];中国医師会、中国医師会小児科会;2012:1.(陳福雄,陶佳,黄穗等.児童EB病毒感染相関IM和EBV−AHS的臨床研究和病毒感染特征[A].中国医学会、中国医学会小児科学分会.中国医学会第十七次全国小児科学会編纂(上册)[C].中国医学会、中国医科小児科分会:,2012:1.)
【非特許文献10】Lau A.,Tymianski M..Glutamate receptors,neurotoxicity and neurodegeneration[J].European Journal of Physiology.2010,460(2),525−542.
【非特許文献11】Ochiai T.,Ohno S.,Soeda S.,et al.Crocin prevents the death of rat pheochromyctoma(PC−12)cells by its antioxidant effects stronger than those of a−tocopherol[J].Neuroscience Letters.2004,362(1),61−64.
【非特許文献12】Pitsikas N.,Sakellaridis N. Crocus sativus L.extracts antagonize memory impairments in different behavioural tasks in the rat[J].Behavioural Brain Research.2006,173(1),112−115.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の発明に関する。
[1]一般式(I)で示されるクロシン系化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
ここで、13〜14位の二重結合の立体配置はトランスEまたはシスZであり、
R
1、R
2はそれぞれ独立に、H、CH
3、CH
2CH
3、グリコシル基およびキナ酸基を表し、
キナ酸の基本構造は、
【化2】
であり、
これらの中で、1,3,4,5,7位のヒドロキシル基は、水素が除去された後に異なるキナ酸基を形成することができ、例えば、よくある3位、5位が以下のように表される。
【化3】
前記グリコシル基は、グルコース基、ゲンチオビオース基、キシロシル、ガラクトシル、マンノシル、アラビノース、ラムノシル、リボシル、リソソシルおよびキシラニルであり、
前記グリコシル基の数が0〜2であり、
前記グリコシル基のヒドロキシ基は、サクシノイル基、カフェオイル基、クマロイル基、シンナモイル基、CH
3(CH
2)nCO、HOOC(CH
2)nCOのようなアシル化基によってアシル化されてよく、
前記キナ酸基の3,4,5位のヒドロキシル基は、スクシニル基、カフェオイル基、クマロイル基、シンナモイル基、CH
3(CH
2)nCO、HOOC(CH
2)nCOのようなアシル化基によってアシル化されてよく、
キナ酸基の1位のカルボキシル基は、メチルエステル化またはエチルエステル化されてよく、
その中、前記一般式(I)の化合物は以下の化合物を含まない。
【化4】
【化5】
【0011】
[2]前記項[1]に記載の化合物であって、13〜14位の二重結合の立体配置がトランスE立体配置であり、R
1がグルコース基であり、R
2がキナ酸基である。
【0012】
[3]前記項[2]に記載の化合物であって、前記化合物が以下の化合物である。
【化6】
【0013】
[4]前記項[1]に記載の化合物であって、13〜14位の二重結合の立体配置がシスZ立体配置であり、R
1がH、グルコース基又はキナ酸基であり、R
2がH、グルコース基またはキナ酸基である。
【0014】
[5]前記項[4]に記載の化合物であって、前記化合物が以下の化合物である。
【化7】
【0015】
[6]前記項[1]に記載の化合物であって、13〜14位の二重結合の立体配置がトランスE立体配置であり、R
1がグルコース基であり、R
2がグルコース基又はHである。
【0016】
[7]前記項[6]に記載の化合物であって、前記化合物が以下の化合物である。
【化8】
【0017】
[8]前記項[1]に記載の化合物であって、13〜14位の二重結合の立体配置がトランスE立体配置であって、R
1がグルコース基であり、R
2はCH
2CH
3である。
【0018】
[9]前記項[8]に記載の化合物であって、前記化合物が以下の化合物である。
【化9】
【0019】
[10]前記項[1]に記載の化合物であって、13〜14位の二重結合の立体配置がトランスE立体配置であって、R
1がグルコース基であり、キシロシルであり、R
2がHである。
【0020】
[11]前記項[10]に記載の化合物であって、前記化合物が以下の化合物である。
【化10】
【0021】
[12]以下の構造式で示されるクロシン系化合物である。
【化11】
【0022】
[13]前記項[1]〜前記項[12]のいずれか1項に記載の化合物の、神経変性疾患を予防および治療するための医薬品の製造への使用である。
【0023】
[14]前記神経変性疾患は、血管性認知症、血管性認知障害、アルツハイマー病、記憶喪失、脳組織変性疾患症候群、またはコリン作動性神経変性疾患を含む、[13]項に記載の使用である。
【0024】
[15]前記項[1]〜前記項[12]のいずれか1項に記載の化合物と、他のクロシン系化合物を含む組成物であって、前記他のクロシン系化合物が以下の化合物である組成物である。
【化12】
【化13】
【0025】
[16]前記項[1]〜前記項[12]のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬品組成物である。
【0026】
[17]漢方薬クチナシを原材料とし、エタノール、メタノールまたは水を用いて、異なる抽出回数と時間で熱抽出または超音波抽出する方法により抽出し、抽出液を減圧濃縮してクチナシの全抽出物を得ることを含む、前記項[1]〜前記項[12]のいずれか1項に記載の化合物の製造方法である。
【0027】
[18]クチナシの全抽出物を適量の水で溶解し、遠心分離し、上清をマクロポーラス吸着樹脂オープンカラムクロマトグラフィーにより、水および/または30%〜95%エタノールで適量のベッド容量を溶出して、溶出液を収集し、クチナシクロシンの活性成分を減圧濃縮し、さらに種々のカラムクロマトグラフィーで分離する、前記項[17]に記載の製造方法である。
【0028】
[19]4倍量の60%エタノールで、1回あたり2時間で3回加熱還流する、前記項[17]に記載の製造方法である。
【0029】
[20]水で溶出した後、30%、50%、70%、95%のエタノールで順に溶出し、各勾配で4つのベッド容量で溶出し、70%エタノール溶液を減圧濃縮してクチナシクロシンの活性成分を得る、前記項[18]に記載の製造方法である。
【0030】
[21]前記カラムクロマトグラフィーは、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、ODSオープンカラムクロマトグラフィー、Sephadex LH−20オープンカラムクロマトグラフィー、およびPre−HPLCカラムクロマトグラフィーを含む、前記項[18]に記載の製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本願の発明者らは、複数の化学手段を通じて漢方薬のクチナシから、一般式(I)による新型のクロシン系化合物を抽出し、様々な分光法によって同定し、これらのクロシン系化合物が中枢神経系に優れた保護効果を有することを細胞実験により証明した。
【化14】
【0032】
各置換基の定義は、上述のとおりである。
第一組の好ましい化合物において、13〜14位がトランスE立体配置であって、R
1がグルコース基であり、R
2がキナ酸基である。
ここで、R
1がGlc−(1→6)−Glc(ゲンチオビオース基)であり、R
2が3−カフェオイルキナ酸−4−オキシである場合、新しい化合物neocrocin B(GJ−1と略称する)が得られる。
【化15】
【0033】
ここで、R
1がゲンチオビオース基であり、R
2が3−カフェオイルキナ酸−5−オキシである場合、新しい化合物neocrocin C(GJ−2と略称する)が得られる。
【化16】
【0034】
第二組の好ましい化合物において、13〜14位がシスZ立体配置であり、R
1がH、グルコース基またはキナ酸基であり、R
2がグルコース基またはキナ酸基である。
ここで、R
1がゲンチオビオース基であり、R
2が3−カフェオイルキナ酸−4−オキシである場合、新しい化合物neocrocin D(GJ−3と略称する)が得られる。
【化17】
【0035】
ここで、R
1が3−カフェオイルキナ酸−4−オキシであり、R
2がゲンチオビオース基である場合、新しい化合物neocrocin E(GJ−4と略称する)が得られる。
【化18】
【0036】
ここで、R
1がH、R
2はゲンチオビオース基である場合、化学名が13Z−クロセチン−8′−O−β−D−ゲンチオビオシドである新しい化合物(GJ−5と略称する)が得られる。
【化19】
【0037】
第三組の好ましい化合物において、13〜14位がトランスE立体配置であって、R
1がグルコース基であり、R
2がグルコース基又はHである。
ここで、R
1が6−O−トランス−シナポイルゲンチオビオース基であり、R
2がゲンチオビオース基である場合、新しい化合物neocrocin G(GJ−6と略称する)が得られる。
【化20】
【0038】
ここで、R
1が6−O−トランス−シナポイルゲンチオビオース基であり、R
2がHである場合、新しい化合物neocrocin F(GJ−7と略称する)が得られる。
【化21】
【0039】
第四組の好ましい化合物において、13〜14位がトランスE立体配置であって、R
1がグルコース基であり、R
2はCH
2CH
3である。
ここで、R
1がゲンチオビオース基であり、R
2がCH
2CH
3である場合、新しい化合物neocrocin H(GJ−8と略称する)が得られる。
【化22】
【0040】
第五組の好ましい化合物がneocrocinI(GJ−9と略称する)である。
【化23】
【0041】
第六組の好ましい化合物において、13〜14位がトランスE立体配置であり、R
1がグルコース基、キシロシルであり、R
2がHである。
ここで、R
1がH、R
2がキシロシル−(1→6)−グルコース基である場合、新しい化合物neocrocin J(GJ−10と略称する)が得られる。
【化24】
【0042】
また、一般式(I)の範囲での以下の表1に示す化合物は既知なものである。
【表1】
【実施例】
【0043】
実施例1:クチナシからのクロシン成分の抽出分離
クチナシの乾燥・成熟した果実40.0kgを採取し、適切な粉砕の後、4倍量の60%エタノールで加熱還流して3回抽出した。毎回2時間かけて行った。抽出液を合わせて減圧下で溶媒を除去して、クチナシ全部抽出物として6.2kg(収率15.5%)を得た。抽出物を適量の水に溶解して遠心分離し、上清をマクロポーラス樹脂オープンカラムのクロマトグラフィー(20.0×90cm)を行った。4倍のベッド容量の水、30%、50%、70%、95%のエタノールで勾配溶出し、各溶出液を回収し、それぞれ減圧下で溶媒を回収して、約4.5kgの水の溶出と30%エタノールの溶出を組合わせたものを得、710.0gの50%エタノールで溶出されたものを得、150.0gの70%エタノールで溶出されたものを得、112.0gの95%エタノールで溶出されたものを得た。70%エタノールで溶出されたものがクチナシクロシン活性成分であった。
70%エタノール溶出成分150gがシリカゲルカラムクロマトグラフィー(φ7×60cm)、クロロホルム−メタノール−水99:1〜6:4:0.8による勾配溶出により、化合物GJ−11(49.1mg)、GJ−12(136.5mg)、GJ−13(7.0g)をそれぞれ析出させた。
シリカゲルサブフラクションFr.9をODSカラムクロマトグラフィー、メタノール−水30%−70%による勾配溶出により、化合物GJ−19(545.1mg)を析出させ、HPLC、60%メタノール−水による溶出により化合物GJ−20(265.7mg)を得、HPLC、68%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、化合物GJ−1(120.0mg)、およびGJ−3とGJ−4との混合物104.8mg(1:2で混合)を得た。さらに、水(0.3%TEAA):アセトニトリル=55:45により化合物GJ−3とGJ−4を分離した。
シリカゲルサブフラクションFr.7をODSカラムクロマトグラフィー、メタノール−水40%−80%による勾配溶出により、化合物GJ−11(16.0mg)を析出させ、HPLC、55%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、化合物GJ−2(6.3mg)を得た。HPLC、42%アセトニトリル−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、GJ−13(8.0mg)、化合物GJ−5(16.0mg)を得た。
シリカゲルサブフラクションFr.8をODSカラムクロマトグラフィー、メタノール−水55%−65%による勾配溶出により、化合物GJ−16(143.7mg)を析出させ、HPLC、55%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、化合物GJ−6(59.1mg)、GJ−2(21.9mg)を得た。HPLC、68%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、化合物GJ−1(400.9mg)を得た。HPLC、32%アセトニトリル−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、GJ−17(1.8mg)、GJ−18(3.5mg)を得た。
シリカゲルサブフラクションFr.6をODSカラムクロマトグラフィー、メタノール−水50%−90%による勾配溶出により、化合物GJ−15(315.7mg)を析出させ、HPLC、60%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、化合物GJ−10(10.0mg)を得た。HPLC、65%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、GJ−9(2.0mg)、GJ−7(66.2mg)を得た。HPLC、70%メタノール−酸性水(0.1%酢酸)による溶出により、GJ−8(10.0mg)を得た。
【0044】
得られた化合物の構造は表2−1および表2−2に示すとおりである。
【表2-1】
【表2-2】
【0045】
得られた化合物の物性データは以下の通りである。
化合物GJ−1:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 1011[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 989.3642[M+H]
+(calcd for C
48H
61O
22,989.3654),化合物GJ−1の分子式がC
48H
60O
22であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):433(5.32),458(5.28),331(4.68),253(4.52)nm;IR(KBr)ν
max968,1061,1224,1268,1576,1610,1694,2920,3401cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0046】
化合物GJ−2:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 1011[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 989.3646[M+H]
+(calcd for C
48H
61O
22,989.3654),化合物GJ−2の分子式がC
48H
60O
22であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):431(4.63),457(4.56),331(4.12),249(3.85);IR(KBr)ν
max1064,1230,1279,1602,1698,2921,3417cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6150MHz)は表3に示した。
【0047】
化合物GJ−3:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 1011[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 1011.3471[M+Na]
+(calcd for C
48H
60O
22Na,1011.3474),化合物GJ−3の分子式がC
48H
60O
22であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):429(5.04),453(4.99),324(4.68),251(4.04)nm;IR(KBr)ν
max969,1062,1229,1277,1607,1693,2920,3368cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0048】
化合物GJ−4:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 1011[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 1011.3471[M+Na]
+(calcd for C
48H
60O
22Na,1011.3474),化合物GJ−4の分子式がC
48H
60O
22であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):429(5.04),453(4.99),324(4.68),251(4.04)nm;IR(KBr)ν
max969,1062,1229,1277,1607,1693,2920,3368cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0049】
化合物GJ−5:赤色アモルファス粉末,ESI−MS(positive):m/z 675[M+Na]
+,m/z 1327[2M+Na]
+,化合物GJ−14の分子量が652であると推定する。HR−ESI−MS:675.2617[M+Na
+](算出値:675.2629),化合物GJ−14の分子式がC
32H
44O
14であることを確認した。
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0050】
化合物GJ−6:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 1205[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 1183.4479[M+H]
+(calcd for C
55H
75O
28,1183.4445),化合物GJ−6の分子式がC
55H
74O
28であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):434(5.22),459(5.17),330(4.78),242(4.65);IR(KBr)ν
max1059,1119,1225,1273,1610,1701,2920,3385cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0051】
化合物GJ−7:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 881[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 881.3188[M+Na]
+(calcd for C
43H
54O
18Na,881.3208),化合物GJ−7の分子式がC
43H
54O
18であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):430(5.33),454(5.28),326(4.80),242(4.78);IR(KBr)ν
max 972,1069,1179,1227,1284,1610,1697,2922,3391cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0052】
化合物GJ−8:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 703[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 703.2904[M+Na]
+(calcd for C
34H
48O
14Na,703.2942),化合物GJ−8の分子式がC
34H
48O
14であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):430(4.64),456(4.59),322(3.84),257(3.95);IR(KBr)ν
max1074,1229,1697,2925,3400cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0053】
化合物GJ−9:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 659[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 659.2657[M+Na]
+(calcd for C
32H
44O
13Na,659.2680),化合物GJ−9の分子式がC
32H
44O
13であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):438(4.63),462(4.60),328(3.90),261(3.94);IR(KBr)ν
max1071,1515,1694,2921,3277cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【0054】
化合物GJ−10:赤色アモルファス粉末;ESI−MS(positive):m/z 645[M+Na]
+;HR−ESI−MS:m/z 645.2519[M+Na]
+(calcd for C
31H
42O
13Na,645.2523),化合物GJ−10の分子式がC
31H
42O
13であることを確認した。UV(MeOH)λ
max(logε):428(4.56),453(4.50),320(4.11),257(4.10);IR(KBr)ν
max1072,1230,1700,2924,3416cm
−1;
13C NMR(DMSO−d
6,150MHz)は表3に示した。
【表3】
【0055】
実施例2:クチナシにおけるクロシン単体のH
2O
2及びL−グルタミン酸誘発SH−SY5Y細胞傷害モデルにおける神経保護効果
【0056】
2.1 SH−SY5Y神経細胞培養法
SH−SY5Y神経細胞をDMEM培地(5体積%ウシ胎児血清を含む)で培養し、5%CO
2を含むインキュベーター内で37℃で培養し、3〜4日ごとに継代した。実験は、対数増殖期細胞を取って行った。
【0057】
2.2 過酸化水素損傷モデルスクリーニング法
SH−SY5Y細胞を96ウェルプレートに5×10
3の濃度で接種し、24時間続いて培養し、H
2O
2を含む医薬品液体培地100μLを96ウェルプレートに加えて、H
2O
2の最終濃度を400μMにし、医薬品の最終濃度を10μM、1μMおよび0.1μMにして各濃度について平行の3つのウェルを設定し、培養を24時間続けた。24時間後、上清を吸引し、100μLのMTT(0.5mg/mL)を各ウェルに添加し、インキュベーションを4時間続け、上清を吸引した。各ウェルに150μLのDMSOを添加し、10分間振とうし、570nmの波長を選択して、マイクロプレートリーダーで吸光度値
[12]を測定する。(有効率%=(OD
医薬品−OD
モデル)/(OD
コントラスト−OD
モデル)*100)、スクリーニング結果を表4に示す。
【表4】
【0058】
2.3 L−グルタミン酸損傷モデルスクリーニング法
SH−SY5Y細胞を96ウェルプレートに5×10
3の濃度で接種し、24時間続いて培養し、L−グルタミン酸を含む医薬品液体培地100μLを96ウェルプレートに加えて、L−グルタミン酸の最終濃度を160mMにし、医薬品の最終濃度を10μM、1μMおよび0.1μMにして各濃度について平行の3つのウェルを設定し、培養を24時間続けた。24時間後、上清を吸引し、100μLのMTT(0.5mg/mL)を各ウェルに添加し、インキュベーションを4時間続け、上清を吸引した。各ウェルに150μLのDMSOを添加し、10分間振とうし、570nmの波長を選択して、マイクロプレートリーダーで吸光度値[非特許文献13を参照]を測定する。(有効率%=(OD
医薬品−OD
モデル)/(OD
コントラスト−OD
モデル)*100)、スクリーニング結果を表5に示した。
【表5】
【0059】
実験結果によれば、化合物GJ−1〜GJ−10のいずれがH
2O
2誘発SY5Y細胞損傷モデルにおいて良好な保護を示し、化合物GJ−6、GJ−10、GJ−8がさらに優れた保護作用を示した。化合物GJ−1〜GJ−10のいずれがL−グルタミン酸誘発SY5Y細胞損傷モデルにおいても良好な保護を示し、化合物GJ−1、GJ−6、GJ−7、GJ−10、GJ−9、GJ−8がさらに優れた保護作用を示した。上記の実験結果から、異なる損傷モデルにおける各化合物の有効性は異なり、これはH
2O
2誘発損傷のメカニズムが酸化ストレスであるが、L−グルタミン酸誘発損傷のメカニズムが興奮性アミノ酸によって興奮毒性損傷が引き起こされ、化合物が異なるメカニズムによって損傷保護を発揮することが知られる。
【国際調査報告】