特表2019-515732(P2019-515732A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-515732発作の特徴付けのためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-515732(P2019-515732A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(54)【発明の名称】発作の特徴付けのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20190524BHJP
   A61B 5/0488 20060101ALI20190524BHJP
【FI】
   A61B5/00 G
   A61B5/04 330
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2018-554764(P2018-554764)
(86)(22)【出願日】2017年4月19日
(85)【翻訳文提出日】2018年11月20日
(86)【国際出願番号】US2017028429
(87)【国際公開番号】WO2017184772
(87)【国際公開日】20171026
(31)【優先権主張番号】62/324,786
(32)【優先日】2016年4月19日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】513092671
【氏名又は名称】ブレイン センティネル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Brain Sentinel,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】カルデナス、デイモン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】カヴァゾス、ホセ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ジルアード、マイケル アール.
(72)【発明者】
【氏名】ハルフォード、ジョナサン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホイットマイア、ルーク イー.
【テーマコード(参考)】
4C117
4C127
【Fターム(参考)】
4C117XA01
4C117XB04
4C117XB20
4C117XC11
4C117XD40
4C117XE19
4C117XE51
4C117XJ13
4C117XJ17
4C117XJ48
4C127AA04
4C127FF00
4C127FF02
4C127GG16
(57)【要約】
発作または発作関連事象を検出および特徴付けるためのシステムおよび方法が記載される。本明細書における方法は、信号の少なくとも1つの高周波数グループおよび低周波数グループのそれぞれについての大きさデータおよび/またはスケーリングされた大きさデータを決定するステップを含み得る。決定された大きさデータおよび/またはスケーリングされた大きさデータに基づき、発作事象または発作関連事象が特徴付けられ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発作活動の特徴についてのEMG信号を分析する方法であって、
分析のためのEMG信号データを受信するステップと、
前記EMG信号データの中に含まれる発作関連事象についてのデータを選択するステップと、
前記発作関連事象についての変換されたデータを生成するために、1つまたは複数のウェーブレット変換を用いて前記発作関連事象についての前記データを変換するステップと、
前記発作関連事象についての前記変換されたデータをEMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループおよびEMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループに編成するステップであって、
前記EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループは、約120Hz〜約400Hzの周波数帯域についてのデータを含み、
前記EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループは、約6Hz〜約70Hzの周波数帯域についてのデータを含む、ステップと、
前記EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループおよび前記EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループのそれぞれについて、大きさデータを決定するステップと、
前記EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループについてのスケーリングされた大きさデータおよび前記EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループについてのスケーリングされた大きさデータを生成するために、前記EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループおよび前記EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループのそれぞれについて、前記大きさデータをスケーリングするステップであって、
前記EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループおよび前記EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループのそれぞれについての前記大きさデータを最大大きさ値で除算するステップを含む、ステップと、
強直相発作活動を検出するために、前記EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループについての前記スケーリングされた大きさデータを1つまたは複数の閾値と比較するステップと、
間代相発作活動を検出するために、前記EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループについての前記スケーリングされた大きさデータを1つまたは複数の閾値と比較するステップと、
前記強直相発作活動、前記間代相発作活動またはその両方の存在に基づいて前記発作関連事象を類別するステップと、
前記発作関連事象の前記類別についての結果を1人または複数の介護者に報告するステップと
を含む方法。
【請求項2】
EMG信号データを受信する前記ステップは、格納されたEMG信号データを含む1つまたは複数の医療データベースにアクセスするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
EMG信号データを受信する前記ステップは、患者の1つまたは複数の筋肉に配置された1つまたは複数のEMG電極からEMG信号データを収集するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記EMG信号データは、指定されたEMG発作データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記EMG信号データは、1つまたは複数の標示を含む分類されたデータであり、
前記1つまたは複数の標示は、前記発作関連事象が検出された時間、前記発作関連事象についての1つもしくは複数のタイプまたはその両方を識別する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループは、約10Hz〜約70Hzの周波数帯域についてのデータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループは、約20Hz〜約70Hzの周波数帯域についてのデータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループは、約30Hz〜約70Hzの周波数帯域についてのデータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループは、約150Hz〜約400Hzの周波数帯域についてのデータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記発作関連事象についてのデータを選択する前記ステップは、発作関連事象を検出するように構成された1つまたは複数の発作検出ルーチンを用いて前記EMG信号データを分析するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記1つまたは複数の発作検出ルーチンは、信号振幅の上昇を含む前記EMG信号データのサンプルを検出するように構成された発作検出ルーチンを含み、かつ基準値と閾値との比較に基づいて前記サンプルの適格性を認定し、
前記基準値は、継続時間幅と、信号対ノイズ比および振幅の1つまたは複数とを含み、
前記閾値は、最小継続時間幅と、最大継続時間幅と、最小信号対ノイズ比、最小振幅および最大振幅の1つまたは複数とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記発作関連事象についてのデータを選択する前記ステップは、前記発作関連事象を検出するために、前記EMG信号の1つまたは複数の特性値を計算し、かつ前記1つまたは複数の特性値を1つまたは複数の閾値と比較するための命令を含む1つまたは複数の発作検出ルーチンの実行を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1つまたは複数の特性値は、T二乗値を含み、および前記1つまたは複数の閾値は、閾値T二乗値を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数の追加の基準に基づいて前記類別を検証するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記1つまたは複数の追加の基準は、前記EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループについての大きさの積分領域の、前記EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループについての大きさの積分領域に対する比率が1つまたは複数の比率閾値を満たしているかどうかまたは超過しているかどうかを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
PNES発作事象を検出し、かつ前記PNES発作事象をGTC発作から区別するための方法であって、
分析のためのEMG信号データを受信するステップと、
前記EMG信号データの中に含まれる発作関連事象についてのデータを選択するステップと、
前記発作関連事象についての変換されたデータを生成するために、1つまたは複数のウェーブレット変換を用いて前記発作関連事象についての前記データを変換するステップと、
前記発作関連事象についての前記変換されたデータをEMG信号データの高周波数グループおよびEMG信号データの低周波数グループに編成するステップであって、
前記EMG信号データの高周波数グループは、約120Hz〜約400Hzの周波数帯域についてのデータを含み、
前記EMG信号データの低周波数グループは、約6Hz〜約70Hzの周波数帯域についてのデータを含む、ステップと、
前記EMG信号データの高周波数グループおよび前記EMG信号データの低周波数グループのそれぞれについて、大きさデータを決定するステップと、
前記EMG信号データの高周波数グループについての前記大きさデータおよび前記EMG信号データの低周波数グループについての前記大きさデータのそれぞれについての積分領域を決定するステップと、
前記積分領域間の1つまたは複数の比率を決定するステップと、
前記1つまたは複数の比率が閾値比率条件を満たしているかどうかを決定するステップと、
前記閾値比率条件が満たされているかどうかに基づき、PNES発作事象またはGTC発作のいずれかとして前記発作関連事象を類別するステップと
を含む方法。
【請求項17】
EMG信号データを受信する前記ステップは、格納されたEMG信号データを含む1つまたは複数の医療データベースにアクセスするステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
EMG信号データを受信する前記ステップは、患者の1つまたは複数の筋肉に配置された1つまたは複数のEMG電極からEMG信号データを収集するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記EMG信号データは、指定されたEMG発作データを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記EMG信号データは、1つまたは複数のデータ標示を含む分類されたデータであり、
前記1つまたは複数のデータ標示は、前記発作関連事象が発作事象または非発作運動事象であることを識別する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記1つまたは複数のデータ標示は、医師、患者、その場の介護者およびそれらの組み合わせのいずれかによって提供される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
個人のモバイルデバイスを用いて患者を監視しているときに検出されたアラームが実際の発作、偽陽性事象またはその両方に適切に関連付けられているかどうかを標示するのに適したコンピュータ上で入力を提供するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記EMG信号データの低周波数グループは、約10Hz〜約70Hzの周波数帯域についてのデータを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記EMG信号データの低周波数グループは、約20Hz〜約70Hzの周波数帯域についてのデータを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記EMG信号データの低周波数グループは、約30Hz〜約70Hzの周波数帯域についてのデータを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記EMG信号データの高周波数グループは、約150Hz〜約400Hzの周波数帯域についてのデータを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記発作関連事象についてのデータを選択する前記ステップは、発作関連事象を検出するように構成された1つまたは複数の発作検出ルーチンを用いて前記EMG信号データを分析するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記1つまたは複数の発作検出ルーチンは、信号振幅の上昇を含む前記EMG信号データのサンプルを検出するように構成された発作検出ルーチンを含み、かつ基準値と閾値との比較に基づいて前記サンプルの適格性を認定し、
前記基準値は、継続時間幅と、信号対ノイズ比および振幅の1つまたは複数とを含み、
前記閾値は、最小継続時間幅と、最大継続時間幅と、最小信号対ノイズ比、最小振幅および最大振幅の1つまたは複数とを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
1つまたは複数の追加の基準に基づいて前記類別を検証するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発作の特徴付けのためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発作は、脳内の異常なまたは過剰な同調活動として特徴付けられ得る。発作の初期には、脳内のニューロンが特定の位置で興奮し始めることがある。発作が進むにつれ、このニューロンの興奮が脳全体に広がり、場合により脳の多くの領域がこの活動に巻き込まれることもある。脳内の発作活動により、脳が末梢神経系を通して電気信号を送り、身体の様々な筋肉を活発化させる。心因性または非てんかん性発作(PNES:psychogenic or non−epileptic seizure)などの他の発作事象は、異常筋運動によって特徴付けられ得るが、必ずしもより一般的な発作事象に伴い得るものと同一タイプの非同調性の脳活動を伴うとは限らない。
【0003】
発作を調査および監視するために設計された手法は、通常、発作を起こし易い個人または発作患者の頭皮または頭部に装着される電極を使用して電気信号を特徴付ける脳波記録法(EEG:electroencephalography)に依存してきた。EEGでは、電極は、そのような活動、すなわち神経組織から生じる電気活動を測定するように配置することができる。あるいは、筋電図検査法(EMG:electromyography)を発作の検出のために用いることができる。EMGでは、電極は、皮膚の上またはその近傍や筋肉上に配置され、筋繊維の活発化に由来する電気活動を検出することができる。
【0004】
EEGを使用するてんかん性発作の検出は、通常、多数の電極および関連する電線を頭に装着し、脳波活動を監視する増幅器を使用する必要がある。複数のEEG電極は、非常に扱い難いことがあり得、概して貼付および監視に何らかの技術的専門知識を必要とする。さらに、発作を確認するには、ビデオモニタおよびビデオ記録機器を備えた環境での観察が必要であり得る。スタッフを配置した臨床環境で使用しないのであれば、そのような機器は、発作が進行中であるかどうかを決定するのではなく、むしろ発生後の発作履歴を提供することを目的とし得る。そのような機器は、通常、ビデオカメラ記録または介護者の観察により発作を確証できる病院のような環境向けであり、通常、多発性発作を経験している患者のための病院滞在など、より集中的な治療レジメンの一部として使用される。
【0005】
EEGを用い、またビデオ記録を備えた患者の環境で患者を監視する場合でも、患者が経験し得るすべてのタイプの発作関連事象を特徴付けるのは難しいことがあり得る。例えば、専門的な介護者またはてんかん専門医は、全身性の強直−間代性(GTC:generalized tonic−clonic)発作などのてんかんに起因し得るある種の発作と、PNES事象などの他のタイプの関連事象とを区別することができる場合もあるが、依然として見落としまたは不正確な診断が生じるおそれがある。加えて、専門知識および訓練のレベルが専門的なてんかん専門医と同じでない可能性がある他の介護者は、概して、GTC発作とPNES発作との間の違いを識別することができない。PNESの診断の遅れまたは不正確な診断は、病院にとって大きい損害になる可能性があり、不正確または不完全な診断により、患者が適切な治療を受けられないおそれがあるため、これは特に厄介な問題である。したがって、てんかんおよび/または他の関連する状態を検証し、かつ/または介護者が適切な診断を行い易くするように設計された方法は、極めて有用であろう。
【0006】
発作を診断するための携行用デバイスもやはり主としてEEGベースであり得るが、上記の欠点があるため、それらのデバイスは、家庭での長期の使用または日常的な着用可能性のために設計されていないか、またはそれに適するものではない。他の発作警告システムは、身体の動き、通常、四肢の動きを検出することによって動作され得る。そのようなシステムは、概して、発作が起こっている間に人が不規則かつ激しく動くであろうという前提で動作され得る。例えば、加速度計を使用して、激しい四肢の動きを検出することができる。しかしながら、発作のタイプにより、この前提は、当てはまる場合も当てはまらない場合もある。何らかの発作中に脳から送られる電気信号は、同時に多くの筋肉に送信されることにより、筋肉が互いに競合して激しい動きを効果的に相殺し得る。換言すると、筋肉は、実際の激しい動きを招くよりも人を硬直化させるように機能し得る。このため、発作によっては、加速度計ベースの検出器で一貫して検出されないことがあり得る。
【0007】
発作を診断するための携行用デバイスは、概して、強度に基づく発作の等級付けに適しておらず、事象タイプに基づく発作関連信号の区別にも適していない。むしろ、異なるタイプの発作は、多くの場合にまとめてグループ化され得る。例えば、携行用デバイスを使用して収集されたデータの特徴付けに適した方法および介護者にとって有用な統計情報を生成するための方法は、著しく不十分であるかまたは欠けているものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、頭部または四肢への多数の煩雑な電極がなくても非入院環境または入院環境で使用可能なてんかん性発作検出の方法および装置が必要とされている。発作事象を特徴付けて患者ケアの医学的、外科的な管理に役立てるために、タイプおよび/または強度によって発作を分析するのに適した検出方法に対する必要性がさらに存在する。例えば、GTC発作をPNES発作から区別するための確かな方法は、患者ケアを大幅に改善することができる。個人のモバイルデバイスから生成することができるような広範囲の患者データを迅速に探索し、特徴付けるのに使用可能なものを含む、自動化または半自動化アルゴリズムを用いて発作を特徴付けるのに適した方法に対する必要性がさらに存在する。介護者がてんかんおよび/または他の関連する状態の適切な診断を行い易くし、かつ/または検証し易くするのに役立つシステムおよび方法に対する必要性がさらに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの実施形態では、発作活動の特徴についてのEMG信号を分析する方法は、分析のためのEMG信号データを受信するステップと、EMG信号データの中に含まれる発作関連事象についてのデータを選択するステップと、発作関連事象についての変換されたデータを生成するために、1つまたは複数のウェーブレット変換を用いて発作関連事象についてのデータを変換するステップと、発作関連事象についての変換されたデータをEMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループおよびEMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループに編成するステップであって、EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループは、約120Hz〜約400Hzの周波数帯域についてのデータを含み、EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループは、約6Hz〜約70Hzの周波数帯域についてのデータを含む、ステップと、EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループおよびEMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループのそれぞれについて、大きさデータを決定するステップと、EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループについてのスケーリングされた大きさデータおよびEMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループについてのスケーリングされた大きさデータを生成するために、EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループおよびEMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループのそれぞれについて、大きさデータをスケーリングするステップであって、EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループおよびEMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループのそれぞれについての大きさデータを最大大きさ値で除算するステップを含む、ステップと、強直相発作活動を検出するために、EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループについてのスケーリングされた大きさデータを1つまたは複数の閾値と比較するステップと、間代相発作活動を検出するために、前記EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループについてのスケーリングされた大きさデータを1つまたは複数の閾値と比較するステップと、強直相発作活動、間代相発作活動またはその両方の存在に基づいて発作関連事象を類別するステップと、発作関連事象の類別についての結果を1人または複数の介護者に報告するステップとを含み得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、PNES発作事象を検出し、かつPNES発作事象をGTC発作から区別するための方法は、分析のためのEMG信号データを受信するステップと、EMG信号データの中に含まれる発作関連事象についてのデータを選択するステップと、発作関連事象についての変換されたデータを生成するために、1つまたは複数のウェーブレット変換を用いて発作関連事象についてのデータを変換するステップと、発作関連事象についての変換されたデータをEMG信号データの高周波数グループおよびEMG信号データの低周波数グループに編成するステップであって、EMG信号データの高周波数グループは、約120Hz〜約400Hzの周波数帯域についてのデータを含み、EMG信号データの低周波数グループは、約6Hz〜約70Hzの周波数帯域についてのデータを含む、ステップと、EMG信号データの高周波数グループおよびEMG信号データの低周波数グループのそれぞれについて、大きさデータを決定するステップと、EMG信号データの高周波数グループについての大きさデータおよびEMG信号データの低周波数グループについての大きさデータのそれぞれについての積分領域を決定するステップと、積分領域間の1つまたは複数の比率を決定するステップと、1つまたは複数の比率が閾値比率条件を満たしているかどうかを決定するステップと、閾値比率条件が満たされているかどうかに基づき、PNES発作事象またはGTC発作のいずれかとして発作関連事象を類別するステップとを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】EMG信号データを特徴付けるための方法のいくつかの実施形態を示すフローチャートである。
図2A】ある患者についてのEMG信号データを示す。
図2B図2AのEMG信号データから引き出された調整されたEMG信号データを示す。
図3】ビンのいくつかの実施形態を示す概略図である。
図4A】高周波数帯域からのビンの集合を含むEMGデータのグループについての大きさのEMG信号データを示す。
図4B】低周波数帯域からのビンの集合を含むEMGデータのグループについての大きさのEMG信号データを示す。
図5】エンベロープフィルタの形状を示すデータを示す。
図6】信号の高周波数グループおよび低周波数グループについてのEMG信号データの大きさデータを示す。
図7図6に示される信号の高周波数グループおよび低周波数グループについてのEMG信号データのスケーリングされた大きさデータを示す。
図8】EMG信号データを特徴付けるための方法またはサブプロセスのいくつかの実施形態を示すフローチャートである。
図9】EMG信号データを特徴付けるための方法またはサブプロセスのいくつかの追加の実施形態を示すフローチャートである。
図10】EMG信号データを特徴付けるための方法のいくつかの追加の実施形態を示すフローチャートである。
図11】EMG信号データを特徴付けるための方法の追加の実施形態を示すフローチャートである。
図12】EMG信号データおよびGTC発作の様々な相の決定された移行時間を示す。
図13A】GTC事象およびPNES事象についてのQUACデータを示す。
図13B】GTC事象およびPNES事象についての追加のQUACデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用する場合、以下の用語は、示された意味を有すると理解されるものとする。
項目が「1つの(a)」または「1つの(an)」によって導入される場合、こうした項目の1つまたは複数を意味すると理解するものとする。
【0013】
本明細書で使用する場合、「ビニング」という用語は、EMG信号データの1つまたは複数のビン(bin)を作成することにより、EMG信号データを編成するプロセスを意味する。
【0014】
「含む」は、包含することを意味するが、限定するものではない。
「含んでいる」は、包含していることを意味するが、限定するものではない。
「コンピュータ」は、機械可読命令を実行することができる任意のプログラム可能な機械を意味する。コンピュータは、汎用コンピュータ、マイクロプロセッサ、コンピュータサーバ、デジタル信号プロセッサまたはそれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定するものではない。コンピュータは、1つまたは複数のプロセッサを含むことができ、単一の機械または複数の機械の一部を含むことができる。
【0015】
「コンピュータプログラム」という用語は、コンピュータによって実行されて、コンピュータを所望の方法で動作させ得る命令のリストを意味する。
「コンピュータ可読媒体」という用語は、1つもしくは複数のコンピュータプログラム、1つもしくは複数のデータまたはそれらの組み合わせを格納するための容量を有する有形の製造物品を意味する。コンピュータ可読媒体は、コンピュータメモリ、ハードディスク、メモリスティック、磁気テープ、フロッピー(登録商標)ディスク、(CDまたはDVDなどの)光ディスク、zipドライブまたはそれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定するものではない。
【0016】
本明細書で使用する場合、「指定されたEMG発作データ」という用語は、1人または複数の介護者によって1つまたは複数の発作に関連付けられるものとして識別されたEMG信号データを意味する。例えば、介護者は、EEGデータ、ビデオデータ、他のデータおよび/またはそれらの組み合わせに基づき、EMG信号データを発作に関係するものとして識別することができる。指定されたEMG発作データの中に含まれる発作事象についてのEMG信号データは、指定されたEMG発作事象を指し得る。
【0017】
本明細書で使用する場合、「検出」という用語は、何らかの存在を識別することを意味する。例えば、発作関連事象の検出は、収集されたEMG信号の部分における発作関連事象の識別を指し得る。発作関連事象の検出を指す場合、このような検出は、収集された1つまたは複数の信号における発作関連事象の識別を指し得る。発作関連事象の検出は、リアルタイムで収集され、処理された信号、収集後に後処理ルーチンで分析された信号またはその両方の使用を含むことができる。検出が、リアルタイムで行われる検出に特に限定される場合、「リアルタイム検出」という用語を使用することがある。
【0018】
「有している」は、包含していることを意味するが、限定するものではない。
「発作事象」という用語は、患者が様々なタイプのてんかん性発作、発作性疾患に関連付けられる発作、心因性もしくは非てんかん性発作(PNES)または他の発作のいずれかを経験している臨床エピソードを指す。
【0019】
「発作検出ルーチン」という用語は、発作に関連した筋肉活動について患者を監視するために使用し得る方法または方法の一部を指す。発作検出ルーチンは、患者を監視するための戦略において個別に実行され得、または患者監視のための全体的な戦略において他の発作検出ルーチンもしくは方法と組み合わせて実行され得る。例えば、プロセッサは、EMG信号の1つまたは複数の測定可能な特性の1つまたは複数の値を計算するためにEMG信号を処理するように構成された発作検出ルーチンであって、1つまたは複数の発作関連事象を検出するために、この1つまたは複数の特性を1つまたは複数の閾値と比較するように構成された発作検出ルーチンを実行することができる。
【0020】
本明細書で使用する場合、「発作に関連した筋肉活動」という用語は、EMGを使用して検出可能である測定可能な特性を示す筋肉の活動を指し、筋肉の活動は、安静時および正常状態または非発作状態において、ある患者について測定された1つまたは複数のレベルの特性と比較したときに、様々なタイプのてんかん性発作、発作性疾患に関連付けられる発作、心因性もしくは非てんかん性発作(PNES)または他の発作のいずれか中に増大するかまたはより多く出現する。前述の発作中に増大するかまたはより多く出現し得る測定可能な特性には、筋肉活動全体のレベル、筋肉群のコヒーレンス、律動的または反復的な筋肉活発化のレベル、前述の発作に関連付けられる他の特性およびそれらの組み合わせが含まれる。EMGを使用して測定可能ないくつかの特性は、発作が生じているときにより多く出現し得るが、何らかの非発作活動中にも少なくともある程度までそれらの特性が存在するかまたは増大し得る。したがって、本開示で使用する場合、測定または検出された発作に関連した筋肉活動は、実際の発作またはてんかん性発作を示すことも示さないこともある。
【0021】
本明細書で使用する場合、「発作関連事象」という用語は、患者が発作に関連した筋肉活動を示す臨床エピソードまたは事象を意味する。発作関連事象は、実際の発作またはてんかん性発作に関連付けられることも関連付けられないこともある。
【0022】
値の範囲が記載されている場合、文脈により明白にそうでないことが規定されていない限り、こうした範囲の上限と下限との間に介在する値および他の記載された範囲の他のいずれかの記載された値または介在する値は、本明細書に記載の実施形態において用いられ得ることを理解されたい。
【0023】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、発作事象または発作関連事象を検出し、かつ/または特徴付けるために用いられ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステムおよび方法は、患者のリアルタイム監視のために構成され、介護者に発作関連事象をタイムリーに警告し、かつ/または警報応答を更新するために使用することができる。他の実施形態では、本明細書に記載の方法は、例えば、1つまたは複数のEMGセンサおよび/または他のセンサを用いて収集された患者データを含む、それまでにまたは以前に収集されたデータを特徴付けるかまたは分析するために使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステムおよび方法は、診断を検証するか、または介護者が診断し易くするために用いられ得る。例えば、本明細書に記載のシステムおよび方法は、患者がPNES事象を経験しており、てんかんを有していない可能性があることを介護者が診断し易くするために使用され得る。本明細書に記載の装置は、患者の皮膚の上、付近もしくは下に配置されている(例えば、患者によっては埋め込み型電極が用いられ得る)か、または患者の衣服に装着されている1つまたは複数の電極を含むセンサを含むことができ、筋肉の電気活動を測定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の装置および方法は、検出センサを除外することまたは検出センサの使用を含まないことができるが、EMG信号データまたは他のセンサ信号データを受信し、このデータを処理して、発作事象データまたは発作関連事象データを検出し、かつ/または特徴付けるように適切に構成された1つまたは複数のプロセッサを含むか、あるいは1つまたは複数のプロセッサの使用を含むことができる。発作の検出については、例えば、本出願人の米国特許第8,983,591号明細書、同第9,186,105号明細書、同第9,439,595号明細書および同第9,439,596号明細書、ならびに本出願人の米国特許出願第13/542,596号、同第14/816,924号および同第14/920,665号、ならびに本出願人の国際出願PCT/US14/61783号、PCT/US14/68246号、PCT/US15/00475号、PCT/US15/49859号およびPCT/US16/28005号明細書、ならびに本出願人の米国仮特許出願第61/875,429号、同第61/894,793号、同第61/910,827号、同第61/969,660号、同第61/979,225号、同第62/001,302号、同第62/032,147号、同第62/050,054号、同第62/096,331号、同第62/429,359号、同第62/324,786号および同第62/485,268号にさらに記載されており、これらのそれぞれの開示内容は、すべてが参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
いくつかの実施形態では、EMG信号は、発作事象または発作関連事象の1つまたは複数の特徴の値を決定する方法で処理および使用されるか、または方法に含まれ得る。特徴の値は、例えば、事象活動の特徴の定量的要約に含まれ得る。こうした情報は、次に1人または複数の介護者に提供され得る。例えば、検出された発作の特徴の定量的要約が作成可能であり、定量的要約は、非限定的な例として、強直相、間代相、発作全体およびそれらの任意の組み合わせを含む発作の相または発作の部分の継続時間を含むことができる。いくつかの実施形態では、発作または発作全体の1つまたは複数の相の強度または正規化された強度も決定され得、1人または複数の介護者に提供される要約に含まれ得る。いくつかの実施形態では、本出願人の同時係属中の米国特許出願第14/920,665号に記載されているような、例えば、間代相活動に関係するとして適格性が認定された振幅上昇部を含むEMG信号のサンプルの特徴を含む、発作事象または発作関連事象に関連付けられる他の特徴も決定され得る。例えば、本明細書に記載の方法およびルーチンは、明示的な記載または参照による組み込みを問わず、場合により、適格性が認定されたサンプルをカウントし、1人または複数の介護者に対し、適格性が認定されたサンプルの統計的要約を提供するのに適した他の方法またはルーチンとともに実行され得る。例えば、いくつかの実施形態では、発作の1つもしくは複数の相への移行時間および/または発作の1つもしくは複数の相からの移行時間は、本明細書に記載の方法を用いて決定することができる。また、それらの移行時間を用いて、(例えば、バーストデータを間代相にリンクするなど)バーストデータを編成または検証し、適正なバーストデータが間代相に適切にリンクされ、何らかの他の方法でより正確にカウントされ、かつ/または特徴付けられるようにすることができる。
【0025】
本明細書において検出し得る発作事象または発作関連事象は、てんかんによって起こり得る全身性の強直−間代性発作(GTC)事象を含む。しかしながら、本明細書に記載の実施形態のいくつかは、例えば、てんかん以外の状態に起因し得るものなどを含めた他のタイプの発作関連事象を検出するためにも使用され得る。例えば、筋肉活動の増加または反復的な筋肉活動の増加など、一般にてんかんと関連付けられる全身性の強直−間代性発作と1つまたは複数の特徴を共有し得るいくつかの発作も検出され得る。例えば、いくつかの実施形態では、てんかん以外の状態と関連付けられる可能性があるPNES事象が検出され得る。したがって、PNES事象を検出し、これを用いて、患者がてんかん以外の状態を有する可能性があることを示し得る。患者の身体の2つ以上の箇所または側面に検出ユニットを配置できる場合など、いくつかの実施形態では、複雑部分発作も検出され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、発作の過程中に変化し得る筋肉活動の周波数成分についての筋肉活動を分析することができる。例えば、本明細書に記載の方法は、EMG信号を収集し、信号を処理して、約100Hzを上回る信号を含むEMG信号の1つまたは複数の高周波数成分を検出することができる。本明細書に記載の方法は、信号をさらに処理して、約75Hz未満の信号を含むEMG信号の1つまたは複数の低周波数成分を検出することができる。いくつかの実施形態では、筋肉活動の低周波数成分を監視することができ、これらの低周波数成分は、筋肉疲労および/または発作の強直相と間代相との間の移行に関係し得る筋繊維の分布の変化を示す場合もある。例えば、いくつかの実施形態では、EMG信号を収集し、処理して、約20Hz〜約75Hzの周波数成分を識別することができる。いくつかの実施形態では、通常、四肢の反復的な運動に関連付けられるEMG信号の低周波数成分は、発作の間代相の部分中に識別され得、場合により、発作の強直相と間代相との間の移行を示すのに用いられる1つまたは複数の周波数帯域から除外され得る。例えば、いくつかの実施形態では、約20Hz未満または約10Hz未満の周波数帯域は、場合により、1つまたは複数の周波数帯域から除外され得る。したがって、低周波数のノイズ源は、場合により、約10Hz未満の周波数で発現する筋肉活動から完全に除去または区別することが困難であり得るが、効率よく回避または除去することができる。次に、発作の間代相への移行は、高感度で検出または予測され得、かつ/または相移行の検出と移行の物理的発現との間の最小の時間的遅れで検出または予測され得る。発作の間代相への移行の早期検出または予測が行われるいくつかの実施形態は、例えば、発作の処置または軽減に用いられる方法もしくはシステムにおいて、または1つもしくは複数のセンサもしくは他のデバイスの起動を用いたデータの収集が発作の検出に基づいてゲート制御されるかもしくは開始される方法もしくはシステムにおいて用いられ得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のウェーブレットおよび/または他の処理は、様々な周波数および/または様々な時間スケールにわたって発現し得るデータ特徴を検出するためのデータを構成するように信号データを変換するために使用され得る。いくつかの実施形態では、発作の1つまたは複数の相の存在を検出するために、または発作の相間の移行時間を検出するために、1つまたは複数のウェーブレット変換または他の変換を用いて、処理に適した形式にEMG信号データを変換することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、信号は、モーレットウェーブレット変換、ハールウェーブレット変換、ドブシーウェーブレット変換、高調波ウェーブレット変換または他の適切なウェーブレット変換を用いて処理することができる。ウェーブレット変換によっては、他の変換よりも正確な入力データの再構成が提供できる場合がある。しかしながら、概して、それらのウェーブレット変換は、他のウェーブレット変換を用いるよりも多少規模の大きい処理リソースを必要とし得る。1つまたは複数のウェーブレット手法の選択は、いくつかの実施形態では、例えば方法が発作のリアルタイム検出に適用し得るかどうか、または格納されたもしくはこれまでのEMG信号データの後検出処理に適用し得るかどうかを含む考慮事項、および/またはそれ以外の本明細書に記載の考慮事項に基づき得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のウェーブレット処理の代わりに、1つもしくは複数のフーリエ変換または他の周波数変換が用いられ得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、ウェーブレット変換信号データは、1つまたは複数のマザーウェーブレットに基づく関数群によって数学的に表すことができる。概して、マザーウェーブレットは、式1に示すように概略的に表すことができる。
【0030】
∫ψ(t)dt=0[極限+∞/−∞] 式1
次に、関数群は、様々なスケール因子を適用することにより、マザーウェーブレットから生成することができ、スケール因子は、例えば、マザーウェーブレットの圧縮または拡張に用いることができる。他の因子を用いて関数を経時的に変換することができる。例えば、式2に概略的に示すように、因子aおよびbを用いて、マザーウェーブレットから関数群または関数族を作成することができる。
【0031】
Ψa,b(t)=1/[a1/2]ψ[(t−b)/a] 式2
因子(a)および(b)を変えることにより、EMG信号またはEMG信号データの様々な周波数成分に焦点を合わせるのに適するように一連の関数を作成することができる。
【0032】
例えば、大量のEMGデータおよび他の患者に関連したデータを収集し、システムの最適化またはデータベースクエリの実行のためにそのようなデータを編成し、発作活動の疑いに基づいてアラームまたは他の応答を開始するために使用し得る適切なシステムは、本明細書に組み込まれる様々な参照文献に記載されている。例えば、本出願人の米国特許出願第14/920,665号は、本明細書に記載の実施形態のいくつかで使用し得る装置の構成要素についてのさらに詳細な説明を含んでいる。システムは、例えば、1つまたは複数の検出ユニットと、基地局と、他の構成要素とを含むことができる。検出ユニットは、患者の皮膚表面またはその付近で筋肉からの電気信号を検出し、処理するためにそれらの電気EMG信号をプロセッサに送達することが可能な1つまたは複数のEMG電極を含むことができる。EMG電極は、患者に結合されるかまたは装着され得、いつくかの実施形態では、発作中に活発化し得る患者の筋肉の付近で組織内に埋め込まれ得る。EMG電極から引き出された電気EMG信号を処理するのに適切なプロセッサは、検出ユニットに含まれ得、または別の場所にあり得る。例えば、いくつかの実施形態では、検出ユニットは、1つまたは複数の基地局に信号を送ることができる。基地局は、検出ユニットからのEMG信号および/または他のセンサからのデータを受信し、処理することが可能であり、かつ処理された信号から、発作が生じていたかどうかを決定するために用いられて、介護者に警報を送信することができるコンピュータを含み得る。
【0033】
図1は、例えば、EMGセンサを含み得るかまたはEMGセンサからなり得る1つまたは複数のセンサを含む1つまたは複数のセンサを用いて収集された患者の医療データを分析するための方法10のいくつかの実施形態を図示する。いくつかの実施形態では、方法10は、ステップ12に示すように、EMG信号データを受信するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、EMG信号データは、1つまたは複数のデータベース、例えば医療データベースなどに含まれる格納されたEMG信号データにアクセスすることによって受信することができる。ステップ14に示すように、EMG信号データの1つまたは複数の部分は、次にEMG信号データの他の部分から選択および/または除去され得る。例えば、1つもしくは複数の発作事象もしくは発作関連事象の付近の時間またはそれを含む時間中に収集されたEMG信号データの部分は、EMG信号データの他の部分から除去され得る。方法10の追加のステップは、次に、発作事象データまたは発作関連事象データを特徴付けるために、選択されたデータを処理するステップを含むことができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、EMG信号データを受信するステップは、1つまたは複数の医療データベースに格納されたEMG信号データにアクセスするステップを含むことができ、格納されたEMG信号データの部分は、1つもしくは複数の発作関連事象または1つもしくは複数のタイプの発作関連事象に関連付けられるEMG信号データの部分を識別または標示するために分類することができる。例えば、いくつかの実施形態では、非限定的な例として、非発作運動事象、発作事象またはその両方を含む様々なタイプの発作関連事象を標示することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、データの標示は、1人または複数の介護者によって遂行することができる。いくつかの実施形態では、患者、介護者および/または何らかの他の適格者がデータを標示することができる。例えば、いくつかの実施形態では、患者、その場の介護者(local caregiver)および/または患者の関係者は、個人のモバイル検出装置にアラームをトリガした事象が特定のタイプの事象であったかどうかを指定することができる。例えば、患者または近くにいる他の人物は、アラームをトリガした事象が偽陽性事象(例えば、非発作運動事象)であったことを識別するために、モバイル検出装置または個人のモバイル検出装置の1つまたは複数のボタンを押すことが可能であり得る。または、患者(あるいはその場の介護者もしくは患者の家族またはそれ以外の人などの他の人物)は、アラームをトリガした事象が実際の発作によるものであったことを指定することが可能であり得る。例えば、まさに発作があったことを認識している患者またはその場の介護者は、アラームをトリガした事象が実際に発作によるものであったことをコンピュータまたは基地局に標示することが可能であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、基地局は、アラームが開始されると常に、こうした情報を追加するのに適した入力ボックスを自動的に提供することができる。発作または発作エピソード中に提供された治療に関する他の記述的情報もログに記録することができる。データの標示に関係したデータは、次に、例えば他のEMG信号データとともに医療データベースにアップロードされ、方法10のステップ12において、EMG信号データと一緒に受信され得る。または、データ標示は、何らかの他の適切な方法でEMG信号データと関連付けられ得る。これにより、ステップ12で受信されたデータは、1つまたは複数の発作関連事象が存在し得るときに(例えば、事象データを基地局にタイムスタンプするか、またはグラフィックウィンドウもしくはバーを、グラフィックユーザインターフェースを横切って「ドラッグ」するなどによって)、それを識別する1つまたは複数の標示および発作関連事象のタイプなど、他の発作関連事象に関する情報を含むことができる。(例えば、タイムスタンプされた発作関連事象が標示されている場合に)格納されたデータのどこに発作関連事象を見つけることができるか、またはデータベースのどこに発作関連事象のタイプを示す情報が含まれているかを識別するために、データベース内に含まれるEMG信号データが標示される場合、EMG信号データは、標示されたEMG信号データまたは分類されたEMGデータと呼ぶことができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法およびシステムは、例えば、医師、患者、現場の介護者およびそれらの組み合わせを含めた、ある人数の別の人物の誰もが発作関連事象データを標示することが可能であるように構成され得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、標示された発作関連事象データおよび/または発作関連事象データの近隣または付近で収集されたデータは、ステップ14において、他のデータから識別、選択および/または除去され得る。例えば、データ標示は、他のEMG信号データとともに医療データベースに含まれる探索可能なメタデータとして含まれ得る。メタデータは、データが基地局から記憶医療データベースに送信されるときに、例えばEMG信号データとともにデータベースに追加され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、EMG信号データは、生のEMGデータ、リアルタイムで収集されたEMG信号データ、または何らかの他の形式の例えば発作事象もしくは発作関連事象の事前の検出もしくは標示がないEMGデータであり得る。しかしながら、方法10のいくつかの実施形態は、以前に識別または標示されなかった可能性がある発作関連事象を検出するために、生のEMG信号データまたは他のEMG信号データを分析するように構成され得る。例えば、ステップ14に記載されているように、EMG信号データは、1つまたは複数の発作関連事象を検出し、かつこの1つまたは複数の発作関連事象を含むEMG信号データの1つまたは複数の部分を選択または除去するように構成された1つまたは複数の発作検出ルーチンを用いて処理することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、ステップ14において選択されたEMG信号データは、1つの医療データベースから、方法10に含まれる1つまたは複数の追加のステップを実行するための命令を有する1つまたは複数のプロセッサに送信され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、コンピュータプロセッサは、1つまたは複数の医療データベースを含むことができ、また方法10を完全にまたは部分的に実行するのに適した1つまたは複数のインストールされたプログラムも含むことができる。いくつかの実施形態では、個人の検出ユニットまたはモバイル検出ユニットは、方法10を完全にまたは部分的に実行するように構成されたコンピュータプロセッサを含むことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、ステップ12において受信されたEMG信号データは、EMG発作データを指定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、訓練を受けたてんかん専門医または他の介護者は、診断に役立てるか、または1人もしくは複数の患者がてんかんもしくは何らかの関連する状態を有する疑いのある診断の検証に役立てるために、方法10を用いてEMG信号データを分析することができる。したがって、患者がGTC発作を有していたと予想された間または患者がPNES事象を有していたと予想された間に収集された、指定されたEMG発作データを分析することを選択することができる。または、介護者は、患者が発作を有していたと予想された間に収集された、指定されたEMG発作データを分析することを選択できるが、この場合、介護者は、発作がGTC発作またはPNES事象として適切に類別されているはずであるかどうかについて確信がもてない。例えば、ビデオデータまたは他のデータを調べた後でも、介護者は、患者が特定のタイプの発作を経験していたかどうかについて確信がもてないことがあり得る。介護者は、例えば、方法10を実行するように適切にプログラムされた1つまたは複数のコンピュータにEMG信号データまたは指定されたEMG発作データをインポートすることができる。例えば、介護者によって操作または維持される1つまたは複数のローカルコンピュータに、方法10を実行するように構成されたプログラムをインストールすることができる。あるいは、介護者は、プログラムが適切にインストールされた1つまたは複数のコンピュータを用いて、方法10を実行するように訓練を受けた1人または複数の専門オペレータに対し、指定されたEMG発作データを送ることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の指定されたEMG発作事象が他のEMG信号データの中から容易に選択され得るように、指定されたEMG発作データを標示することができる。あるいは、介護者は、1つまたは複数の指定されたEMG発作事象を単に入力するのみで、1つまたは複数の指定されたEMG発作事象など、適切なデータをさらに分析するための実質的な選択ステップが必要ではないことがあり得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、ステップ12において受信されたEMG信号データは、選択されたデータがGTC発作、PNES事象またはその両方の発作関連事象タイプの組み合わせのいずれかを含むか、または排他的に含むように分類された1つまたは複数の発作関連事象を含むことができる。それらの実施形態のいくつかは、例えば、てんかんおよび/または発作もしくは発作様の発現を含み得る状態などのてんかん以外の状態を含む、1つまたは複数の状態を患者が経験しているという診断を下すかまたは診断を検証するのに特に良好に適合され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、ステップ12におけるEMG信号データの受信は、患者の1つまたは複数の筋肉に関連付けられて配置された1つまたは複数のEMG電極を用いたEMG信号の収集を含むことができる。例えば、方法10は、収集されたデータを特徴付け、リアルタイムで応答を発するように動作され得る。図10に関連して本明細書に記載の方法130は、いくつかの実施形態についての追加的な詳細を提供しており、そこでは、受信されたEMG信号データがリアルタイムで提供されている。本開示では、文脈により明白にそうでないことが示されていない限り、方法130において提供されている説明は、方法10のいくつかの実施形態を補助するために用いることができる。同様に、文脈により明白にそうでないことが示されていない限り、方法10において提供されている説明は、方法130のいくつかの実施形態を補助するために用いることができる。例えば、方法10、130のいずれかに対して記載された適切な限定は、他方の方法において用いることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、ステップ14において、EMG信号データの1つまたは複数の部分の選択は、少なくとも何らかのレベルの確率において、1つもしくは複数の発作事象または発作発生のリスクの増大を示す1つまたは複数の他の事象を検出するステップを含むことができる。例えば、1つまたは複数の発作関連事象が検出され得る。1つまたは複数の発作関連事象の検出に続いて、EMG信号データの1つまたは複数の部分が選択され得る。例えば、選択されたデータ部分は、検出された発作関連事象の1つもしくは複数の付近の時間またはそれを含む時間中に収集されたデータを含むことができる。いくつかの実施形態では、選択されたデータは、検出された発作関連事象に先行する時間、検出された発作関連事象を含む時間、検出された発作関連事象に後続する時間またはそれらの任意の組み合わせの時間に収集され得る。例えば、EMG信号データを正規化するのに有用な選択された参照データは、ステップ16に関して本明細書に記載されているように、検出された発作関連事象が生理学的に発現した時間もしくは時間範囲に先行する時間またはそれらの直前の時間に収集され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、発作関連事象の検出は、真の発作(例えば、全身性の強直−間代性発作または一般にてんかんおよび/もしくは発作性疾患に関連付けられる他の発作タイプ)が生じているかまたは生じていた可能性があることの高い信頼度を示すことができる。しかしながら、本明細書に記載のいくつかの実施形態では、ステップ14におけるEMG信号データの選択は、真の発作に関連付けられる徴候を示しているが、真の発作の存在または発作が高い信頼度で検出されたことを示す場合も示さない場合もある、1つまたは複数の発作関連事象の検出を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、ステップ14におけるデータの選択は、1つもしくは複数の信号振幅の検出または何らかの適切な閾値レベルを超えて上昇し得る信号振幅の変化率の検出を含むことができる。それらの振幅および/または信号振幅の変化率は、発作発生のリスクの増大を示し得るが、それらの状態は、やはり上昇したEMG信号データを生成し得るいくつかの非発作源から信号を完全に区別するのに不十分である可能性がある。いくつかの実施形態では、ステップ14を超える追加のステップにおけるさらなる処理を用いて、検出された発作関連事象を類別し、選択されたデータがおそらく真の発作に関連付けられ得ることの信頼度を向上させることができる。あるいは、検出された発作関連事象が非発作運動または真の発作のもの以外の他の発作関連事象タイプとして適切にカテゴリー化され得ることを識別するために、場合により、ステップ14を超える追加のステップにおけるさらなる処理を用いることができる。これにより、いくつかの実施形態では、方法10を用いた収集されたEMG信号の処理は、偽陽性発作検出の確率を低減することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、ステップ14におけるデータの選択は、さらなる処理のトリガまたはフィルタとしての役割を果たすことができる。例えば、選択されたEMG信号データのみをさらに処理すること(例えば、方法14の追加のステップにおける処理)は、人材、バッテリおよび/またはコンピュータリソースを含むリソースが無差別なデータ分析に不必要に割り当てられることを防ぐのに有用であり得る。例えば、発作関連事象をリアルタイムで検出するための患者監視戦略の一部として方法10が実行されるいくつかの実施形態では、コンピュータリソースおよび/またはバッテリリソースの保全が極めて有益であり得る。なぜなら、例えば、バッテリの耐用寿命が延び得るからである。加えて、いくつかの実施形態では、(ステップ12において、事前に分類されていないEMG信号データが受信される場合など)大多数が概して非発作信号である可能性がある信号をすべて非選択的に分析および特徴付けることは、他の理由で望ましくないことがあり得る。例えば、収集されたEMG信号データをすべて(例えば、選択またはデータのフィルタ処理なしに)無差別に処理し、特徴付けることにより、1つまたは複数の擬似的なまたは誤った特徴付けの結果が得られる可能性が増大し得る。したがって、ステップ14におけるデータの選択は、スクリーンとしての役割を果たすことができ、例えば有意のEMG信号データ(例えば、信号振幅の上昇が知られているEMG信号データ)のみを特徴付けることができる。しかしながら、方法10の様々な実施形態が実行され得、そこでは様々な選択性のフィルタが用いられ得る。したがって、いくつかの実施形態では、EMG信号データは、ステップ14においてデータのフィルタ処理または選択をせずに処理することができる。
【0045】
例えば、ステップ12において分類、標示または指定されたデータが受信または入力された実施形態を含むいくつかの実施形態では、ステップ14におけるデータの選択は、データを1つまたは複数の標示された時間に関して識別または編成するステップを含むことができる。例えば、類別のためのEMG信号データを送る介護者は、発作関連事象が生理学的におおよそいつ発現したかを既に知っていることがあり得る。したがって、適切な時間(例えば、事象期間または発作前関連事象の期間の開始を標示する時間)は、方法10を実行するプロセッサに標示および/または読み込むことができる。したがって、ステップ14におけるデータの選択は、標示された時間を読み取り、それらの時間に関して期間を識別するステップを含むことができる。
【0046】
複数の適切な発作検出ルーチンまたは発作検出ルーチンの組み合わせのいずれかを用いて発作関連事象を検出し、ステップ14においてEMG信号データを選択することができる。例えば、いくつかの実施形態では、少なくともあるレベルの時間分解能(例えば、高レベルまたは低レベルの分解能)に対して、発作活動が疑われる時間または時間範囲の検出に用いることが可能な任意の発作検出ルーチンをEMG信号データの選択に適用することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の発作検出ルーチンは、発作の疑いの開始の時間または時間範囲を大まかに定義するために使用され得る。したがって、以下でさらに説明するように、方法10の追加のステップにおいて、発作の開始時間および/または発作の1つまたは複数の相に関連付けられた他の時間がより正確に決定され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、発作関連事象の開始の時間または時間範囲が決定可能になると、発作関連事象および/または1つもしくは複数の他の期間を含むデータの1つもしくは複数の部分の開始を含むデータの一部は、他のEMG信号データから選択および/または除去され得る。例えば、いくつかの実施形態では、発作関連事象が検出される場合、データのおよそ10分の部分または何らかの他の適切な期間からのデータは、ステップ14において選択および/または削除され得る。例えば、発作回復中の患者の進捗状況を特徴付けるのに適したいくつかの実施形態では、場合により、より長い期間のデータを選択することができる。検出された発作関連事象の開始の時間または時間範囲が、選択されたデータ内のほぼ中心にまたは何らかの他の所望の態様で位置するように、データが選択され得る。したがって、いくつかの実施形態では、発作前関連事象の期間のデータは、選択されたデータのほぼ前半のうちに識別することができる。1つまたは複数の発作前関連事象の期間は、次にデータの選択された部分から分割され、さらなる処理において用いられ得る。例えば、ステップ16に記載されているように、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の発作前関連事象の期間から計算された統計的な情報を用いて、発作関連事象中に収集されたEMG信号データを正規化または調整することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、発作関連事象を検出するために、ステップ14において、複数の適切な発作検出ルーチンまたは発作検出ルーチンの組み合わせのいずれかが適用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、発作検出ルーチンは、ある期間にわたって収集されたEMG信号データの分析、および閾値振幅を超過し得るかまたは特定の期間の閾値を超過し得る1つまたは複数の振幅値を探すためのEMG信号データの検査を含むことができる。いくつかの実施形態では、発作検出ルーチンは、何らかの期間にわたって収集されたEMG信号データを検査するステップと、EMG信号データの中の1つまたは複数のデータ値がその期間内の1つまたは複数の時間窓内の1つまたは複数の閾値を超過し得るかどうかを決定するステップとを含むことができる。したがって、例えば、1つまたは複数の閾値が超過された複数の時間窓または連続する時間窓に基づいて発作関連事象が検出され得る。いくつかの実施形態では、発作関連事象を検出するためにEMG信号データが積分され得、1つまたは複数の積分データ値が閾値と比較され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、ステップ14における発作関連事象の検出を容易にするために、データを他の方法で処理することができる。例えば、いくつかの実施形態では、筋肉活動のレベルに関係し、かつ1つまたは複数の周波数帯域に分離された信号から処理された統計値の大きさを決定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、統計値は、T二乗統計値または筋肉活動のレベルに関係し得るだけでなく、発作活動に対する感度も、例えば、1つまたは複数の周波数帯域から決定された出力成分を含む筋肉活動に関係する他の値よりも高い主成分値(principal component values)であり得る。T二乗統計値および主成分値を計算する方法については、本出願人の米国特許第9,186,105号明細書および米国特許第9,439,596号明細書にさらに詳細に記載されており、これらは、それぞれ本出願人によって共通して所有され、すべてが参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、T二乗値の決定は、複数の周波数帯域を選択するためのフィルタ処理により、ある期間について収集されたEMG信号の処理を含むことができる。例えば、EMG周波数スペクトルは、複数の周波数帯域、例えば3つ以上に分割することができ、例えばEMG信号の振幅またはその帯域の出力成分など、各周波数帯域の1つまたは複数の特徴を決定することができる。ある周波数帯域について測定された特徴は、その分散および他の周波数帯域で測定されたその特徴に対する共分散によって正規化することができ、その結果得られた正規化後の数値が処理され、T二乗統計値を決定することができる。概して、文脈により明白にそうでないことが示されていない限り、本明細書でEMG信号またはEMG信号データの振幅について言及する場合、それから決定された統計的なメトリックの大きさは、例えば、T二乗値、主成分値または前述の参考文献に記載されたような他の統計値を含み、いくつかの代替的実施形態において用いられ得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、ステップ14におけるEMG信号データのフィルタ処理または選択を用いて、発作関連事象タイプの分布を修正することができる。例えば、本明細書でデータを選択するために用いられるすべての発作検出ルーチンは、概して、GTC発作などの発作に関係し得るEMGデータを検出するフィルタとしての役割を果たすことができる。しかしながら、それらのルーチンは、場合により、GTC発作および/またはPNES事象の検出に対し、選択性および/または感度が異なることがある。本明細書で使用する場合、1つまたは複数のタイプの発作関連事象に対する検出の選択性は、特定の状態のセットを用いるときに、すべての検出された発作関連事象に対して検出し得る1つまたは複数のタイプの発作関連事象の割合を指す。1つまたは複数のタイプの発作関連事象に対する検出の感度は、特定の状態のセットを用いるときに、検出される1つまたは複数のタイプのすべての発作関連事象の割合を記述するメトリックである。このため、本明細書で使用する場合、1つまたは複数のタイプの発作関連事象に対する検出の感度は、他のタイプの発作関連事象を除外する能力を含意するものではない。例えば、上述したように、本明細書におけるT二乗統計値またはPCA値の測定を含む発作検出ルーチンのいくつかは、発作活動検出の感度が特に良好であり得る。それらのルーチンは、発作事象検出のいくつかの実施形態について許容レベルの選択性も有し得る。したがって、それらのルーチンは、リアルタイムで患者を監視するために方法10(および方法130も同様に)が用いられるいくつかの実施形態を含む、リアルタイムで検出するために個人のモバイル検出ユニットを用いて患者を監視することができるいくつかの実施形態において有利に用いられ得る。それらのルーチンは、方法10が後処理特徴付け/類別方法として適用されるいくつかの実施形態でも用いられ得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、ステップ14におけるEMG信号データの選択は、例えば、高い選択性において、GTC発作タイプおよびPNES発作タイプを含む発作関連事象タイプを検出するように構成された1つまたは複数の発作検出ルーチンの実行を含むことができる。例えば、本出願人によって共通して所有される米国特許出願第14/920,665号に記載されたいくつかの方法は、振幅の上昇を含むEMG信号のサンプルの検出を含むことができ、かつ発作活動に関係し得るサンプルの適格性を認定するための手法を含むことができる。この特許文献にさらに記載されているように、サンプルの適格性を認定するためのいくつかの実施形態は、それ自体、発作関連事象を類別するために用いることができる。本明細書のいくつかの実施形態では、それらのルーチンを用いて、GTC発作および/またはPNES事象のいずれかを含み得るデータセットを選択し、準備することができる。いくつかの実施形態では、次に方法10の追加のステップを用いて、GTC発作とPNES事象とを区別することにより、例えばPNES事象の存在を診断するのに適した特定の方法を提供することができる。
【0052】
例えば、EMG信号データを選択するためにサンプルの適格性認定を用いることができるいくつかの実施形態は、信号振幅の上昇を含む筋電図検査法信号のサンプルの検出およびそれらのサンプルを発作活動に関係していると識別する1つまたは複数の特性を含むとして、サンプルの適格性を認定することを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、EMG信号のサンプルは、基準値と閾値との比較に基づいて適格性を認定され得、その場合、基準値は、継続時間幅と、信号対ノイズ比および振幅の1つまたは複数とを含み、閾値は、最小継続時間幅と、最大継続時間幅と、最小信号対ノイズ比、最小振幅および最大振幅の1つまたは複数とを含む。それらのルーチンのいくつかは、GTC発作タイプおよびPNES発作タイプを高い選択性で検出するために理想的に適合され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、EMG信号データの適格性認定は、2つ以上のサンプルをまとめてグループ化するステップも含み、適格性認定は、サンプルグループの集約特性を集約特性閾値と比較することによって達成され得る。例えば、グループ内のサンプルの適格性を認定するために使用可能な集約適格性認定閾値(aggregate qualification threshold values)には、サンプルもしくはサンプルの一部の継続時間幅から計算される最小偏差値、サンプルもしくはサンプルの一部の継続時間幅から計算される最大偏差値、最小サンプル反復率、最大サンプル反復率、1つもしくは複数のサンプル特徴の最小規則性、1つもしくは複数のサンプル特徴の最大規則性および/またはそれらの集約適格性認定閾値の組み合わせの1つもしくは複数が含まれる。しかしながら、方法10で使用するためのデータの選択に適したいくつかの実施形態では、適格性認定は、個々のサンプルの適格性認定のみを含むことができる。例えば、個々のサンプルの適格性認定は、PNESなどの重要な病状を類別し、かつ診断するための方法10の追加のステップにおいて、次に処理することができるEMG信号データを選択するのに適切であり得る。したがって、本明細書に記載の方法は、PNES事象を検出するための代替メカニズムであって、個々のサンプルをより高い感度で検出することが必要であり得、かつ/またはより複雑なサンプルグループの評価方法を含み得る他のPNES検出方法と異なる代替メカニズムとしての役割を果たすことができる。例えば、本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態は、少なくとも一部の患者のために、本出願人によって共通して所有される国際出願PCT/US16/28005号明細書に記載されているような、他のPNES検出方法に代わる有利な選択肢を提供することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、ステップ16に記載されているように、EMG信号データの1つまたは複数の選択された部分は、1つまたは複数の発作前関連事象の期間中に収集されたEMG信号データから計算された1つまたは複数のEMG信号データ値に基づいて正規化または調整され得る。いくつかの実施形態では、EMG信号データの1つまたは複数の選択された部分の正規化または調整は、1つまたは複数の発作前関連事象の期間におけるEMG信号データの振幅の平均値(average value)または平均値(mean value)を計算し、発作関連事象中に収集されたEMG信号データから、計算した値を減算するステップを含むことができる。あるいは、中央値または最頻値などの平均値に関係する適切な統計値も用いられ得る。これにより、いくつかの実施形態では、発作関連事象についてのEMG信号データは、あらゆる直流(DC)オフセット信号を実質的に除去することにより、DCオフセット信号データまたは補正したEMG信号データを提供することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、EMG信号データの正規化または調整は、1つまたは複数の発作前の期間に収集されたEMG信号データの標準偏差または平均標準偏差でDCオフセット信号データまたは補正したEMG信号データ(例えば、前述の減算後のデータ)を除算するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、データセットの広がりに関連付けられた適切な統計メトリック(例えば、広がり、分散、平均偏差または他の適切な統計メトリック)を標準偏差の代わりに用いることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、ステップ14において複数の発作前関連事象の期間を選択することができ、ステップ16において、複数の発作関連事象の期間のそれぞれにおけるEMG信号データから1つまたは複数の統計値を計算することができる。2つ以上の発作前関連事象の期間でEMG信号データの1つまたは複数の統計値を計算することができる場合、プールされた統計メトリック(例えば、プールされた平均値または他のプールされた値)を決定することができる。いくつかの実施形態では、経時的な統計値の傾向も決定することができる。例えば、場合により、EMG信号データの振幅の平均値の大きさおよび患者に適したDCオフセットの関連するレベルは、発作開始付近で変化することがある。したがって、例えば、外挿された統計値を用いて、1つまたは複数のDCオフセット補正またはデータの正規化もしくは調整に用いられる他の値を推定することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、EMG信号データを正規化および/または調整することで患者間および/または監視セッション間のEMG信号データの比較を改善し易くすることができる。例えば、DCオフセット信号を除去し、かつ/または発作前のノイズレベルに基づいてEMG信号データを調節することにより、患者間または患者1人に対する監視セッション間のデータが方法10の自動および/または半自動分析実施形態においてより正確に特徴付けられるように、EMG信号データを正規化することが有用であり得る。いくつかの実施形態では、発作前関連事象の期間における広がりまたはノイズの1つもしくは複数の測定値は、発作関連事象が検出された時間中に構成されるような皮膚/電極界面の特性に対する一次推定としての役割を果たし得る。したがって、前述の測定値は、異なる患者間および/または1人または複数の患者に対する異なる監視セッション間の電気信号の収集効率の差異に対する一次補正としての役割を果たすことができる。これにより、本明細書で特徴付けられた、例えば発作強度に関係するメトリックを含むいくつかのメトリックをより正確に決定することができる。
【0058】
例として、図2Aは、t=75秒とt=140秒との間で明らかなように、全身性の強直−間代性発作を有する患者から収集されたEMG信号データを示す。図2Bは、図2Aのデータからの、100秒間の発作前関連事象のデータ(図示せず)から計算された平均値を減算し(すなわち、ここで、図2Aの信号のデータが被減数であり、100秒間の発作前のデータから計算された平均値が減数である)、得られた差異を同じ発作前関連事象の期間から計算された標準偏差で除算した後の正規化されたEMG信号データを示す。
【0059】
ステップ18において、EMG信号データは、1つまたは複数の周波数変換および/またはウェーブレット変換を用いて処理することができる。ステップ18において(および方法10でステップ18後に続いて実行される追加のステップにおいて)、EMG信号データという場合、文脈により明白にそうでないことが示されていない限り、EMG信号データは、ステップ16で上述したような正規化または調整を行っても行わなくてもよいEMG信号データを指すことができる。実施形態が正規化または調整されたEMG信号データに特に限定される場合、「調整されたEMG信号データ」という用語を用いることとする。いくつかの実施形態では、EMG信号データは、EMG信号データの経時的な周波数の複素電力を表現するために用いることができるモーレットウェーブレット(Morlet wavelet)で処理することができる。そのようなアプローチでは、モーレットウェーブレットを用いて、ほぼ所与の時間に(例えば、特定の時間分解能内に)または所与の時間間隔にわたって信号の周波数成分が存在し得る大きさを計算するのに適した形式にEMG信号データを変換することができる。モーレットウェーブレット変換は、式3および式4によって特徴付けることができる。すなわち、用いるウェーブレット変換は、以下の通りであり得る。
【0060】
【数1】
【0061】
式中、aは、スケール因子であり、bは、シフト因子である(式2も参照されたい)。式3において、f(t)は、分析された信号であり、ψ(t)は、波動関数である。例えば、いくつかの実施形態では、f(t)は、ステップ16に記載されているように正規化または調整されたEMG信号データを含むことができる。いくつかの実施形態では、f(t)は、ステップ14から選択されたEMG信号データの1つまたは複数の部分を含むことができる。これにより、いくつかの実施形態では、正規化または調整されたEMG信号データをステップ18で処理するか、またはステップ14で選択されたデータを処理することができる。いくつかの実施形態では、用いられる波動関数は、以下の通りであり得る。
【0062】
【数2】
【0063】
式4において、ω0は、中心周波数であり、sωは、スケーリングされた周波数であり、U(sω)は、へヴィサイド(Heaviside)の階段関数である。
信号のウェーブレット変換の適用を用いて、例えば、三次元のデータセットを生成することができ、その場合、信号の時間および周波数成分は、それぞれx軸およびy軸に沿って表され得、信号の大きさの推定は、色分けしたプロットまたは等高線プロットで示し得るような第3の次元で示し得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、ステップ20に示すように、EMG信号データの1つまたは複数のグループを生成するために、変換されたEMG信号データを編成することができる。さらに、ステップ20の追加の部分において、EMG信号データの1つまたは複数のグループ内の信号の1つまたは複数の大きさを決定することができる。例えば、データのグループ化は、1つまたは複数の周波数範囲にわたって延在するEMG信号データの1つまたは複数のグループを生成することができる。したがって、1つまたは複数の周波数範囲内のEMG信号データの大きさまたは振幅が次に決定され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、変換されたEMG信号データの編成およびEMG信号データのグループの1つまたは複数の大きさの決定は、例えば、変換されたEMG信号データを1つまたは複数の積分の境界にわたって積分するステップと、変換されたEMG信号データをビニングするステップと、1つまたは複数の作成されたビンもしくはビンの集合またはその両方に含まれるデータの合計を生成するステップとを含むことができる。
【0066】
EMG信号データのビンは、周波数および時間の範囲によって境界を定められたEMG信号データのセグメントを指し得る。いくつかの実施形態では、周波数、時間またはその両方についての変換されたEMG信号データの積分の境界またはビンの境界は、変換されたEMG信号データの分解能限界に対してスケーリングすることができる。例えば、前述の境界の1つまたは複数は、周波数分解能限界、時間分解能限界またはその両方にほぼ比例してスケーリングすることができる。いくつかの実施形態では、積分の境界またはビンの境界は、一定に保たれる1つの変数についての第1の境界(例えば、時間または周波数)を含むことができ、別の(すなわち第2の)境界(例えば、他の時間または周波数)は、こうした変数の測定のために変換されたEMG信号データの分解能に対してスケーリングすることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、ステップ20においてデータを編成するステップは、複数のビンの作成を含むことができる。例えば、複数のビンは、EMG信号内で収集された周波数の範囲のすべてのサブセットまたは一部のサブセットをまたいで(across)延在することができる。いくつかの実施形態では、複数のビンが1つまたは複数の周波数範囲に及ぶ可能性がある場合、複数のビンを作成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、約190個のビン(例えば、193個のビン)を作成することができる。ビンは、例えば、約3Hz〜約420Hzの周波数範囲にわたって延在し得、またはビンは、本明細書に記載の何らかの他の周波数範囲にわたって延在し得る。
【0068】
上述したように、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のビンは、周波数もしくは時間のいずれかまたはその両方をまたいで変化する周波数の境界および/または時間範囲の境界を含むことができる。例えば、ビンの境界は、ウェーブレット変換された信号データの周波数および/または時間の分解能がどのように変化し得るかに応じて、周波数もしくは時間範囲のいずれかまたはその両方をまたいで変わり得る。例えば、任意の固定された時間間隔について、ウェーブレット変換を用いたEMG信号データの処理は、(変換された信号の周波数分解能がより高い可能性がある)低周波数範囲の方が、(変換された信号の周波数分解能がより低い可能性がある)高周波範囲においてよりも大きい周波数分解能でデータを生成することができる。例えば、図3を参照して理解され得るように、高周波数ビン40は、時間間隔(t1)に関連付けられ、かつ周波数範囲内または間隔42内の周波数にも関連付けられたデータを含むように構成され得る。図4にも示すように、低域周波数ビン44は、同じ時間間隔(t1)に関連付けられ、かつ周波数範囲内または間隔46内の周波数にも関連付けられたデータを含むように構成され得る。ビン44に関連付けられた周波数範囲46は、ビン40に関連付けられた周波数範囲42よりも狭い周波数範囲を含むことができる。例えば、周波数範囲42、46は、各ビン40、44のそれぞれに含まれる信号の分解能限界にほぼ比例し得る。したがって、低周波数における方が周波数の分解能限界が高いため、範囲46は範囲42よりも狭くなっている。
【0069】
やはりステップ20を参照すると、いくつかの実施形態では、変換されたEMG信号データからビンの2つ以上の集合を作成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、第1のビンの集合(または高周波数の集合)は、約150Hz〜約260Hzの周波数範囲に含まれる1つまたは複数のビンを含むことができる。高周波数のビンの集合を含むEMG信号データのグループは、EMG信号データの高周波数グループと呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、高周波数のビンの集合は、約120Hz、約150Hzまたは約180Hzの低域周波数境界を含み得る1つまたは複数のビンを含むことができる。いくつかの実施形態では、高周波数のビンの集合は、約200Hz、約260Hz、約300Hzまたは約400Hzの高域周波数境界を含み得る1つまたは複数のビンを含むことができる。いくつかの実施形態では、ほとんどの患者にとって比較的弱い場合がある400Hzを超える収集された高周波数信号は、すべて高周波数のビンのセットに含まれ得る。
【0070】
第2のビンの集合(または低周波数の集合)は、約6Hz〜約70Hzの周波数の範囲に含まれる1つまたは複数のビンを含むことができる。いくつかの実施形態では、低周波数のビンの集合は、約60Hz、約50Hzまたは約45Hzの高域周波数境界を含み得る1つまたは複数のビンを含むことができる。いくつかの実施形態では、低周波数のビンの集合は、約10Hz、約20Hzまたは約30Hzの低域周波数境界を含み得る1つまたは複数のビンを含むことができる。低周波数のビンの集合を含むEMG信号データのグループは、EMG信号データの低周波数グループと呼ばれることがある。高周波数のビン集合および低周波数のビン集合のそれぞれを含むいくつかの実施形態では、強直相および間代相発作活動は、全身性の強直−間代性発作の全過程を通して検出することができる。例えば、EMG信号データの2つのグループを使用するかまたは排他的に使用して、発作症候(seizure semiology)を実施することができる。いくつかの実施形態では、ステップ20において編成されたグループは、高周波数帯域をまたいで延在する1つもしくは複数のビンの集合を含むか、または1つもしくは複数のビンの集合で構成されたEMG信号データの第1のグループを含むことができる。また、EMG信号データの第2のグループは、低周波数帯域をまたいで延在する1つもしくは複数のビンの集合を含むか、または1つもしくは複数のビンの集合で構成され得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、EMG信号データの第1のグループは、約120Hzを超える範囲の周波数に含まれる1つまたは複数のビンを含む高周波数のビンの集合を含むことができる。高周波数のビンの集合は、場合により約400Hzの高域遮断周波数を含むことがある。2つ以上の低周波数のビン集合も編成することができる。例えば、第1の低周波数のビンの集合は、約6Hz〜約70Hzの周波数の範囲に含まれる1つまたは複数のビンを含むことができる。こうした第1の低周波数のビンの集合の低域周波数境界は、約10Hz、約20Hz、約40Hzまたは約50Hzであり得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の追加の低域周波数のビンの集合を編成することができる。例えば、追加の低周波数のビンの集合は、約2Hz〜約10Hzの周波数の範囲に含まれる1つまたは複数のビンを含むことができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、ステップ20において、EMG信号データの高周波数グループの1つまたは複数の大きさおよびEMG信号データの低周波数グループの1つまたは複数の大きさは、1つまたは複数の分析時間窓をまたいで決定することができる。いくつかの実施形態では、分析時間窓は、例えば、発作前の期間と、典型的なGTC発作の全継続時間または何らかの他のタイプの発作関連事象の予想継続時間とを包含するのに適した持続時間をまたいで延在することができる。いくつかの実施形態では、分析時間窓は、ステップ14において選択されたEMG信号データの全継続時間をまたいで延在することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、EMG信号データの1つまたは複数の大きさは、1つまたは複数のビンの集合から決定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの高周波数のビンの集合についての信号の大きさおよび少なくとも1つの低周波数のビンの集合の大きさは、分析時間窓の全体を通してまたは一部を通して決定および追跡することができる。例えば、1つまたは複数のビンは、分析時間窓内の特定の時間増分または時間単位にわたって延在することができ、1つまたは複数の周波数範囲にわたっても延在することができる。ステップ20において、ビンの大きさは、ビンの集合内の各ビンをまたいで合計することができる。時間をまたいで(例えば、分析時間窓内の他の時間増分または時間単位について)このプロセスを繰り返して、時間をまたいだ1つまたは複数のビンの集合についての大きさデータを引き出すことができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、EMG信号データのグループの1つまたは複数の大きさは、周波数および/または時間に対して境界にわたり、変換されたEMG信号データを積分することによって決定することができる。例えば、変換されたEMG信号データは、何らかの増分または単位時間(例えば、全分析窓内の時間増分または時間単位)にわたり、かつ上述したような様々なビンの集合のいずれかに関連付けられた前述の周波数範囲のいずれかにわたり積分することができる。全分析時間窓内の他の時間増分または時間単位について前述の積分を繰り返すことができる。これにより、1つまたは複数の帯域における信号の積分された大きさまたは強さは、分析時間窓のいずれの部分にわたっても追跡することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、EMG信号データの第1のグループは、例えば、約150Hz〜約260Hzの範囲にある帯域などの高周波数帯域をまたいで延在する1つまたは複数のビンの集合からのデータを含むことができる。高周波数のビンの集合は、何らかの時間の増分をまたいで延在するデータをさらに含むことができる。例えば、ビンの集合は、前述の周波数範囲および何らかの時間の増分、例えば約10ミリ秒〜約100ミリ秒の時間の増分などにわたって延在することができる。任意の所与の時間の増分について、ビンの集合を分析することができる。例えば、ビンの集合内の信号の大きさに関係する適切なメトリックを決定することができる。例えば、信号の大きさは、集合内のビンの合計値、平均値または中央値の1つまたは複数を用いて決定することができる。この分析は、分析時間窓にわたって他の増分について繰り返すことができる。同様に、例えば、低周波数帯域をまたいで延在するグループを含む、EMG信号データの1つまたは複数の他のグループについての大きさも決定することができる。すなわち、何らかの周波数範囲および時間の増分にわたって延在するビンの信号の大きさを決定することができる。手順は、時間をまたいでEMG信号データを生成するために、分析時間窓をまたいで延在する他の増分について継続することができる。例えば、そのような手順は、以下の図4Aおよび図4Bに記載されているような、EMG信号データの1つまたは複数のグループについての大きさデータを生成することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、ステップ20において追加的な処理も実施することができる。例えば、いくつかの実施形態では、EMG信号データを平滑化し、1つまたは複数のDCオフセット補正もしくはベースライン補正を適用するか、またはその両方を適用することができる。例えば、EMG信号データの1つまたは複数のグループについての大きさデータを平滑化するために、1つまたは複数のエンベロープフィルタを適用することができる。本明細書で言及する場合、EMG信号データの1つまたは複数のグループについての大きさデータは、平滑化されたEMG信号データについての大きさデータまたは平滑化されていないEMG信号データについての大きさデータのいずれかを指すことができる。
【0077】
例えば、図4Aは、約150Hz〜約260Hzの周波数の範囲にわたって延在する高周波数のビンの集合についてのEMG信号データの大きさデータを示す。図4Bは、約6Hz〜約70Hzの周波数の範囲にわたって延在する低周波数のビンの集合についてのEMG信号データの大きさデータを示す。図4Aおよび図4Bは、EMG信号データを1つまたは複数のエンベロープフィルタに通すことによるデータの平滑化をせずに引き出されたものである。
【0078】
上述したように、いくつかの実施形態では、EMG信号データの1つまたは複数のグループについてのEMG信号データは、1つまたは複数のエンベロープフィルタを用いて処理することができる。例えば、本明細書に記載のいくつかの実施形態において使用するのに適した代表的なエンベロープフィルタは、式5に示す指数関数的減衰関数によって記述され、図5にさらに示されている。
【0079】
【数3】
【0080】
図6は、式5に示された指数関数的減衰フィルタを用いて、図4Aおよび図4Bで用いられたのと同じデータセットを処理することにより得られた結果を示す。加えて、図6に示すデータセットは、あらゆるDCオフセットを除去するために補正されたベースラインとなっている。図6では、曲線60は、(約150Hz〜約260Hzの)高周波数のビンの集合についての大きさデータを示し、また曲線62は、(約6Hz〜約70Hzの)低周波数のビンの集合についての大きさ値を示す。曲線60に示されたデータは、EMG信号データの高周波数グループについての大きさデータと呼ぶことができ、また曲線62に示されたデータは、EMG信号データの低周波数グループについての大きさデータと呼ぶことができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、ステップ22に示すように、EMG信号データの1つまたは複数のグループの1つまたは複数の大きさは、EMG信号データの1つまたは複数のグループについての1つまたは複数のスケーリングされた大きさを生成するためにスケーリングすることができる。例えば、大きさデータのスケーリングは、EMG信号データのグループについての大きさデータを、分析時間窓内または一部の分析窓内の時間間隔などの時間の間隔にわたり、EMG信号データのグループについて達成された最大大きさ値(maximum magnitude value)で除算するステップを含むことができる。
【0082】
例えば、図6を参照すると、高周波数データセットおよび低周波数データセットのそれぞれ(例えば、図6の例における曲線60および曲線62)について、最大大きさまたは強さを計算することができる。具体的には、高周波数のビンの集合に関連付けられたデータセットについて最大大きさ64が示されている。同様に、低周波数のビンの集合に関連付けられたデータセットについて最大大きさ66が示されている。最大大きさ値は、絶対最大大きさ値または局所最大大きさ値であり得る。例えば、EMG信号データが後処理において評価されるいくつかの方法では、検出された発作関連事象の、ある継続時間または全継続時間中に収集されたEMG信号データは、スケーリングされた大きさデータを決定するときにプロセッサにより利用可能であり得る。したがって、絶対最大大きさ値を容易に割り当てすることができる。しかしながら、リアルタイムの分析に適したいくつかの実施形態では、1つまたは複数の局所最大大きさ値を割り当ておよび/または使用して、スケーリングされた大きさデータを計算することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、局所最大大きさ値が、発作関連事象中に収集されたEMGデータについての絶対最大大きさ値であると指定される要件を満たしているかどうかを決定することができる。例えば、局所最大大きさが約5秒〜約10秒よりも長い時間維持されている(すなわち局所最大大きさ値を超える近隣の値または後続する値が他にない)場合、局所最大大きさは、絶対最大大きさ値として指定することができる。いくつかの実施形態では、局所最大大きさ値/絶対最大大きさ値のいずれかの側のEMG信号データの勾配または形状などの他の情報も、大きさ値が局所的大きさ値または絶対大きさ値として指定されるかどうかを決定する際に用いることができる。
【0083】
さらに、例として、大きさデータをスケーリングするために(図1のステップ22)、高周波数のビン集合についてのデータの大きさ(例えば、図6における曲線60)は、高周波数データセット内で達成された最大大きさ(例えば、図6における大きさ64)でデータを除算することにより、スケーリングすることができる。低周波数のビンの集合(例えば、図6における曲線62)についてのデータの大きさは、低周波数データセット内で達成された最大大きさ(例えば、図6における大きさ66)で除算することができる。図7は、図6に示された低周波数信号および高周波数信号のそれぞれの、2つのデータセットについてのそれぞれの最大大きさに基づいた大きさデータのスケーリングの結果を示す。
【0084】
図1のステップ24に示すように、発作関連事象を特徴付けるために、大きさおよび/またはスケーリングされた大きさの分析を実行することができる。いくつかの実施形態では、ステップ24において決定することができる発作関連事象の特徴は、非限定的な例として、発作関連事象の相または部分の継続時間、事象のタイプ、事象の強度およびそれらの組み合わせを含むことができる。ステップ26において、例えば、識別された発作関連事象の特徴に基づいて1つまたは複数の応答を開始することができる。いくつかの実施形態では、ステップ24および/またはステップ26は、方法90および方法110の1つまたは複数の実行を含むことができる。例えば、それらの方法の1つまたは複数(またはそれらの方法における1つまたは複数のステップ)は、方法10の1つまたは複数のサブルーチンとして実行することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、ステップ24における分析は、EMG信号データの1つまたは複数のグループの1つまたは複数の大きさまたはスケーリングされた大きさと、1つまたは複数の閾値との比較を含むことができる。したがって、大きさデータおよび/またはスケーリングされた大きさデータと、1つまたは複数の閾値との比較に基づいて発作活動の1つまたは複数の相を決定することができる。例えば、本明細書に記載の実施形態のいくつかは、間代相活動、強直相活動またはその両方の存在の検出を含むことができる。発作関連事象の類別は、次に前述の相の1つまたは複数が検出されたかどうかの評価を含むことができる。いくつかの実施形態では、発作の1つもしくは複数の相への移行時間および/または発作の1つもしくは複数の相からの移行時間も決定することができる。
【0086】
例えば、いくつかの実施形態では、方法10のステップ24および/またはステップ26は、(図8に示す)方法90に記載されているサブルーチンの実行を含むことができる。ステップ92において、1つまたは複数の検出された発作事象、および/または1つもしくは複数の発作関連事象についての大きさデータ、および/またはスケーリングされた大きさデータを受信することができる。例えば、方法90が方法10におけるサブルーチンとして実行される場合、大きさデータおよび/またはスケーリングされた大きさデータは、上述したように決定することができる(例えば、データは、1つまたは複数のEMG信号データの高周波数グループおよび1つまたは複数のEMG信号データの低周波数グループについてのデータを含むことができる)。したがって、受信された発作関連事象は、ステップ14に関するものを含め、上述したように検出された1つまたは複数の発作関連事象を含むことができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、ステップ94に示されるように(サブステップ1を参照)、発作の強直相を識別するために、1つまたは複数のEMG信号データの高周波数グループについてのスケーリングされた大きさは、約0.65〜0.90の閾値と比較され得る。例えば、いくつかの実施形態では、EMG信号の高周波数成分を含む1つまたは複数のEMG信号データのグループについて約0.80のスケーリングされた大きさが決定される場合、強直相が認識され得る。いくつかの実施形態では、上記の範囲内の他の閾値を用いることができる。例えばかつ限定せずに、いくつかの実施形態では、上記の範囲の閾値内で約0.65、約0.70、約0.75、約0.80、約0.85および約0.90の閾値を適用することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、発作の強直相の開始の移行時間は、EMG信号データの1つまたは複数の高周波数グループについてのスケーリングされた大きさが閾値を超えたときの検出に基づいて識別することができる。例えば、移行時間は、閾値が最初に満たされたときに識別することができ、いくつかの連続点が閾値を満たしたときに基づいて識別されるか、または閾値を超過し得るデータポイントの何らかの他の適切な分析に基づいて識別される。いくつかの実施形態では、強直相からの移行は、EMG信号の高周波数成分を含むEMG信号データの1つまたは複数のグループについてのスケーリングされた大きさが閾値を超えないときを決定するステップを含むことができる。あるいは、間代相が強直相に後続する場合、以下に説明するように、強直相の継続時間は、発作の間代相への移行の決定された時間に基づくことができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、ステップ94に示すように(サブステップ2を参照)、発作の間代相を識別するために、EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループについてのスケーリングされた大きさは、約0.65〜0.90の閾値と比較され得る。例えば、いくつかの実施形態では、EMG信号の低周波数成分を含むEMG信号データの1つまたは複数のグループについて約0.80のスケーリングされた大きさが決定される場合、間代相が認識され得る。いくつかの実施形態では、上記の範囲内の他の閾値を用いることができる。例えばかつ限定せずに、いくつかの実施形態では、上記の範囲の閾値内で約0.65、約0.70、約0.75、約0.80、約0.85および約0.90の閾値を用いることができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、発作の間代相の開始の移行時間は、EMG信号データの1つまたは複数の低周波数グループについてのスケーリングされた大きさが閾値を超えたときの検出に基づいて識別することができる。例えば、移行時間は、閾値が最初に満たされたときに識別することができ、いくつかの連続点が閾値を満たしたときに基づいて識別されるか、または閾値を超過し得るデータポイントの何らかの他の適切な分析に基づいて識別される。いくつかの実施形態では、間代相からの移行は、EMG信号の低周波数成分を含むEMG信号データの1つまたは複数のグループについてのスケーリングされた大きさまたはスケーリングされていない大きさが閾値を超えないときを決定するステップを含むことができる。
【0091】
いくつかの発作事象について、相間の移行などの特定の時間中、発作の強直相および間代相のそれぞれについての活動が前述の閾値の1つまたは複数を超過していることが認められ得る。したがって、2つ以上の発作の相を事前に識別することができる。いくつかの実施形態では、ステップ96に示すように、本明細書に記載の方法は、2つ以上の相が検出されているかどうかを決定するステップを含むことができ、2つ以上の相が検出されている場合、相を割り当てするために、1つまたは複数のルールを適用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、両方の相の活発化が事前に認められる場合、割り当てられる相は、高周波数成分を含むEMG信号データのグループと、低周波数成分を含むEMG信号データのグループとの間の1つまたは複数の比率に基づくことができる。例えば、いくつかの実施形態では、両方の相の活発化が認められる場合、低周波数成分を含むEMG信号データのグループのスケーリングされた強さが、高周波数成分を含むEMG信号データのグループのスケーリングされた強さよりも約1.25倍を超えて大きいことが認められない限り、その相は強直性であると説明することができる。例えば、こうしたシナリオ下では、発作相は、次に間代性として類別され得る。あるいは、いくつかの実施形態では、両方の相の活動が識別される時間を類別する試みが行われないことがあり得る。
【0092】
ステップ98に示すように、いくつかの実施形態では、発作関連事象は、強直相活動および/または間代相活動の存在に基づいて類別され得る。いくつかの実施形態では、間代相活動および強直相活動の両方が検出される場合、発作は、GTC発作として類別され得る。いくつかの実施形態では、発作関連事象は、間代相を含むものとして類別され得る。例えば、強直相活動が検出されなくても、1つまたは複数の応答を開始することができる。例えば、方法10、方法90が発作活動のリアルタイムでの検出に用いられるいくつかの実施形態では、間代相活動の検出に基づいて1つまたは複数の緊急アラームまたは他のアラームを開始することができる。いくつかの実施形態では、発作関連事象は、強直相を含むものとして類別され得る。例えば、間代相活動が検出されなくても、1つまたは複数の応答を開始することができる。例えば、少なくとも、何人かの患者または何らかの状態にある何人かの患者について、強直相活動のみの検出を用いて、緊急応答が必要でない可能性がある発作事象を識別することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、ステップ98において行われた類別を検証するために、1つまたは複数の追加のルーチンを実行することができる。したがって、上記のように類別された発作関連事象および/または発作事象は、例えば、追加の類別ステップが実施されているかどうかに基づき、類別されたGTC発作または事前に類別されたGTC発作のいずれかを指すことができる。いくつかの実施形態では、GTC発作(または他の発作タイプ)として事前に類別された発作関連事象の最終的な類別は、1つまたは複数の追加の基準の分析を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、追加の基準の第1のグループ、追加の基準の第2のグループ、追加の基準の第3のグループまたは前述の追加の基準の任意の組み合わせを用いて類別するか、または発作関連事象の類別を検証することができる。
【0094】
例えば、ステップ100に示すように、いくつかの実施形態では、追加の基準の第1のグループは、EMG信号データの1つまたは複数のグループの大きさデータが1つまたは複数の閾値を満たしているかどうかを含むことができる。例えば、GTC発作または強直性のみの事象の陽性の識別は、EMG信号の高周波数成分を含むEMG信号データの1つまたは複数のグループについての大きさデータが1つまたは複数の大きさ閾値を満たしているかまたは超過していることの検証を含むことができる。いくつかの実施形態では、前述の大きさデータは、発作の強直相部分の一部であると事前に類別された時間中に収集されたデータから決定することができる。例えば、大きさデータは、発作の強直相であると事前に識別されたものの中に含まれるデータから選択することができる。例えば、相の事前の識別は、EMG信号データの高周波数グループからスケーリングされた大きさデータと、上述したような1つまたは複数の閾値との比較に基づいて決定することができる。
【0095】
同様に、GTC発作または間代性のみの事象の陽性の識別は、EMG信号の高周波数成分を含むEMG信号データの1つまたは複数のグループについての大きさデータが1つまたは複数の大きさ閾値を満たしていることの検証を含むことができる。いくつかの実施形態では、前述の大きさデータは、発作の間代相部分の一部であると事前に類別された時間中に収集されたデータから決定することができる。例えば、大きさデータは、発作の間代相であると事前に識別されたものの中に含まれるデータから選択することができる。例えば、相の事前の識別は、EMG信号データの低周波数グループからスケーリングされた大きさデータと、上述したような1つまたは複数の閾値との比較に基づいて決定することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、大きさ値の値閾が、強直相であると事前に類別された間に収集されたデータに達している場合、大きさ値の閾値が、間代相であると事前に類別された時間中に収集されたデータに達している場合、または前述の条件が両方とも満たされている場合、追加の基準の第1のグループが満たされたと見なすことができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、GTC発作(または他の発作関連事象)の類別のための追加の基準の第2のグループは、個々の相の継続時間または合計発作継続時間の1つまたは複数の時間が1つまたは複数の継続時間の閾値を満たしているかどうかを含むことができる。例えば、GTC発作の陽性の識別のための第2の追加の基準は、発作の強直相の継続時間、発作の間代相の継続時間、発作全体の継続時間またはそれらの組み合わせの継続時間と、1つまたは複数の継続時間の閾値との比較を含むことができる。例えば、上述したように、GTC発作の1つまたは複数の相へのかつ1つまたは複数の相からの移行時間を決定することができる。したがって、GTC発作の相の継続時間は、該当する移行時間中の継続時間を計算することによって容易に決定することができる。したがって、いくつかの実施形態では、GTC発作の陽性の識別のための追加の基準の第2のグループは、1つまたは複数の継続時間と、1つまたは複数の継続時間の閾値(例えば、最大継続時間閾値、最小継続時間閾値またはその両方)との比較を含むことができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、GTC発作の陽性の識別のための第3の追加の基準は、EMG信号データの高周波数グループに含まれる信号の大きさと、EMG信号データの低周波数グループに含まれる信号の大きさとの間の比率が1つまたは複数の比率閾値を満たしているかどうかを決定するステップを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、EMG信号データの高周波数グループの下の領域に対する積分値は、発作関連事象またはGTC発作であると事前に類別された発作関連事象の過程にわたって決定することができる。例えば、発作関連事象は、例えば、上述した基準の1つまたは複数を含む様々な基準を満たしているため、GTC発作であると予想することができる。同様に、EMG信号データの低周波数グループの下の領域に対する積分値を決定することができる。積分の時間的な境界は、発作相へのかつ発作相からの1つまたは複数の移行時間(例えば、スケーリングされた大きさデータと1つまたは複数の閾値との比較に基づいて決定され得るような)から確立することができる。あるいは、時間に対する積分境界は、何らかの他の好都合な方法で選択することができる。例えば、時間に対する積分境界は、すべての選択されたデータなど、ステップ14で選択されたEMG信号データのある部分を含むことができる。いくつかの実施形態では、EMG信号データの高周波数グループの大きさと、低周波数グループの大きさとの間の比率は、曲線下適格性認定領域比率(qualified area under the curve ratio)、すなわちQUAC比率と呼ぶことができ、式6に示すように表現することができる。
【0099】
【数4】
【0100】
いくつかの実施形態では、QUAC比率を決定することができる。QUAC比率が下側のQUAC比率閾値よりも大きい場合、GTC発作関連事象の存在の検証を確認することができる。例えば、第3の追加の基準が満たされていると見なすことができる。いくつかの実施形態では、下側のQUAC閾値比率は、約0.02〜約0.04であり得る。いくつかの実施形態では、QUAC比率が下側のQUAC比率閾値および上側のQUAC比率閾値のそれぞれの内側にある場合、GTC発作関連事象の存在の検証を確認することができる。例えば、第3の追加の基準が満たされていると見なすことができる。いくつかの実施形態では、上側のQUAC比率閾値は、約0.5〜約1.0であり得る。当然ながら、事象を類別するために他の適切な比率を定義することができる。例えば、いくつかの実施形態では、上記のQUAC比率の分母および分子を入れ替えることができる。同様に、他の適切な比率閾値を用いることができる。
【0101】
ステップ102に示すように、最終的な類別は、分析された1つまたは複数の発作関連事象のいずれについても決定することができる。いくつかの実施形態では、最終的な類別は、ステップ98で行われる類別であり得る。例えば、追加の基準の追加的なグループを評価しなくてもよい。あるいは、最終的な類別は、ステップ100に関係して説明した追加の基準の1つまたは複数が、事前に類別された発作関連事象の存在を確認または否定しているかどうかを評価するステップを含むことができる。例えば、場合により、事前に類別されたGTC発作事象は、基準の追加的なグループの1つまたは複数を満たしていない場合、未決定の発作関連事象タイプであると見なすことができる。
【0102】
さらに、ステップ102において、1つまたは複数の応答を開始することができる。いくつかの実施形態では、応答は、類別データおよび/または発作関連事象についての他の特徴データ(例えば、検出された相の継続時間)の編成および介護者へのデータの提供を含むことができる。例えば、1つまたは複数のレポートを生成することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、患者がてんかんに類似した病状を起こしている可能性があるが、実際には患者がPNES事象を起こし易い可能性がある場合の検出を含むことができる。例えば、診断または患者がPNESを罹患している可能性の診断の検証に有用ないくつかの実施形態では、GTC発作またはPNES発作のいずれかとして指定されたEMG発作事象を類別するために、指定されたEMG発作データを処理することができる。いくつかの実施形態では、例えば、生のEMG信号データまたは分類されたEMG信号データを含むEMG信号データを分析することができる。例えば、発作関連事象を含むEMG信号データは、PNES発作を検出するために選択し、類別することができる。
【0104】
例えば、いくつかの実施形態では、EMGデータは、方法10を用いて評価することができ、その場合、(図9に示される)方法110で説明するサブルーチンに含まれるステップは、ステップ24および/またはステップ26の実行に含まれ得るかまたは実行に用いられ得る。例えば、ステップ112に示すように、1つまたは複数の検出された発作関連事象または指定されたEMG発作事象についての大きさデータおよび/またはスケーリングされた大きさデータを受信することができる。このため、いくつかの実施形態では、受信された大きさデータおよび/またはスケーリングされた大きさデータ(ステップ112)は、指定されたEMG発作データから引き出すことができる。他の実施形態では、受信された大きさデータおよび/またはスケーリングされた大きさデータ(ステップ112)は、1つまたは複数の発作検出ルーチンに基づいてステップ14で選択されたEMG信号データから引き出すことができる。例えば、いくつかの実施形態では、発作事象に対する高い選択性を達成するために、1つまたは複数の発作検出ルーチンを構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、たとえそのような構成が検出感度を犠牲にして達成し得るものであっても、発作事象を検出するための高い選択性を維持するために、1つまたは複数の発作検出ルーチンを構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ステップ14において適用された1つまたは複数の発作検出ルーチンは、上昇部を含むEMG信号のサンプルの検出および適格性認定に基づくことができ、その場合、発作検出のための閾値は、高い選択性を維持するのに適したものである。いくつかの実施形態では、受信された大きさデータおよび/またはスケーリングされた大きさデータ(ステップ112)は、分類されたEMG信号データから引き出すことができる。例えば、本明細書に記載されているように、分類されたEMG信号データは、発作事象を識別するために、介護者、患者、他の人物およびそれらの組み合わせの1つまたは複数によって標示することができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、ステップ114に記載されているように、EMG信号データの高周波数グループと、EMG信号データの低周波数グループとの間の1つまたは複数の比率を決定することができる。例えば、式6に示すように、1つまたは複数のQUAC比率を計算することができる。したがって、ステップ116に示すように、1つまたは複数のQUAC比率は、1つまたは複数のQUAC比率閾値と比較され得る。例えば、QUAC比率または他の適切な比率(以下に記載されているような逆の比率など)が1つまたは複数の閾値比率条件を満たしているかどうかを決定することができる。いくつかの実施形態では、ステップ118に記載されているように、1つまたは複数の発作関連事象または指定されたEMG発作事象は、例えば、QUAC比率と、閾値との比較に基づいて類別され得る。例えば、いくつかの実施形態では、QUAC比率は、約0.02〜約0.04である上側のQUAC比率閾値と比較され得る。QUAC比率が上側のQUAC比率閾値よりも小さい場合、事象(例えば、発作関連事象または指定されたEMG発作事象)は、PNES発作として類別され得る。いくつかの実施形態では、QUAC比率は、1つまたは複数の下側のQUAC比率と比較され得、また例えばQUAC比率が下側のQUAC比率よりも大きい場合、事象は、GTC発作として類別され得る。当然ながら、GTC事象および/またはPNES事象として事象を類別するために、他の適切な比率を定義することができる。例えば、いくつかの実施形態では、式6に示されるQUAC比率の分母および分子を入れ替えることができる。したがって、他の適切な比率閾値を用いることができる。例えば、式6の比率の項が入れ替わっているいくつかの実施形態では、発作または発作関連事象をPNES発作として類別するために、逆のQUAC比率が下側の比率閾値を超えるものであるかどうかを決定することが適切であり得る。
【0106】
加えて、いくつかの実施形態では、ステップ120に示すように、1つまたは複数のQUAC比率と、1つまたは複数の閾値との上記の比較に基づき、事象が決定された通りに適切に特徴付けられているはずであるという類別を検証するために、1つまたは複数の追加の手順を開始することができる。疑いのある類別を検証するために1つまたは複数の追加の手順が実行され得るいくつかの実施形態では、こうした類別は、事前の類別と呼ぶことができる。
【0107】
例えば、いくつかの実施形態では、ステップ120において、方法110に従ってGTC発作として類別された発作が適切であることの信頼度を高めるために、方法90の1つまたは複数のステップを実行することができる。あるいは、追加の手順によって事前の類別が適切であったことが示されない場合、事前の類別は、度外視(discount)または変更され得る。いくつかの実施形態では、ステップ120において、1つまたは複数のステップを実行して、PNES事象として事前に類別された1つまたは複数の事象の類別を検証および/または度外視することができる。例えば、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のルーチンを実行して、PNES事象に関係することに疑問があるデータが不自然に周期的であるかどうかを検査することができる。例えば、本出願人の米国特許第8,983,591号明細書にさらに記載され、かつ信号データの周期性に関連付けられたルーチンの1つまたは複数は、例えば、PNES事象であるとして事前に類別された1つまたは複数の事象を検証または度外視するために用いることができる。
【0108】
ステップ122に示すように、1つまたは複数の応答を開始することができる。例えば、いくつかの実施形態では、類別データは、医師または他の介護者に提供することが可能な1つまたは複数のレポートに含まれ得る。
【0109】
図10は、例えば、EMGセンサを含むか、またはEMGセンサからなるセンサを含む1つまたは複数のセンサを用いて収集された患者の医療データを分析するための方法130のいくつかの実施形態を図示する。いくつかの実施形態では、方法130は、リアルタイムで収集された医療データの分析を含むことができ、かつ例えば検出された発作、発作のタイプまたは特定の特徴を有する発作に適したアラームまたは他の応答を開始するために用いることができる。
【0110】
ステップ132に示すように、EMG信号の収集は、患者の1つまたは複数の筋肉に関連付けて1つまたは複数の電極を配置するステップを含むことができる。電極は、筋肉の活発化に関連付けられたエネルギーを電子的に処理され得る形式に変換するように適切に構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、患者の二頭筋、三頭筋、発作中に活発化され得る患者の他の筋肉および/またはそれらの筋肉の任意の組み合わせの付近の患者の皮膚に双極差動電極を配置することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、収集されたEMG信号を処理して、コンピュータプロセッサでの入力および/または処理に適した形式でEMG信号データを提供することができる。例えば、いくつかの実施形態では、収集されたEMG信号は、デジタルEMG信号データを生成するために、アナログ−デジタル変換器を使用して増幅および処理することができる。いくつかの実施形態では、整流、低域通過フィルタ処理および/またはEMG信号を整形または調整するために使用可能な他の動作などの動作もステップ132で実行され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、ステップ134に示すように、さらなる処理のためにEMG信号データの1つまたは複数の部分を選択することができる。例えば、1つまたは複数の発作検出ルーチンを用いて、1つまたは複数の発作関連事象を検出することができる。また、検出された発作関連事象の付近のまたは検出された発作関連事象を含むEMG信号がさらなる処理のために選択され得る。いくつかの実施形態では、方法10のステップ14に記載されているような、EMG信号データの選択に用いられる任意の適切な発作検出ルーチンをステップ134で用いることができる。いくつかの実施形態では、ステップ134におけるEMG信号データの選択は、患者の筋肉の1つもしくは複数またはその付近に配置された検出装置に含まれる1つまたは複数のプロセッサを用いて、発作のリスクの存在または増大を示す発作関連事象を検出するステップを含むことができる。例えば、1つまたは複数の発作関連事象を検出することができる。いくつかの実施形態では、検出装置は、患者に対して最小限の侵襲性を有するとともに、日常の活動中に患者の自由な動きが可能であるように構成され得るデバイスであり得る。いくつかの実施形態では、選択されたEMG信号データは、他のEMG信号データから分離し、固定基地局に含まれ得るような遠隔プロセッサに送ることができ、その場合、選択されたEMG信号データは、方法130の追加のステップにおいてさらに処理することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、ステップ134において選択されたデータは、ステップ134におけるデータの選択時に使用されるのと同じモバイル検出装置内でさらに処理することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、ステップ134において選択されたEMG信号データは、検出された発作関連事象中、その前またはその後に収集されたデータを含むことができる。例えば、ステップ138にさらに記載されているように、選択されたデータは、1つまたは複数の周波数変換および/またはウェーブレット変換を用いてさらに処理することができる。いくつかの実施形態では、ステップ134において選択されたEMG信号データおよびステップ138における処理は、検出された発作関連事象の近隣または付近で収集された所定量のEMG信号データを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、5分間(または何らかの他の適切な所定の期間)にわたって収集されたすべてのデータを選択することができる。あるいは、処理のために選択されたEMG信号データは、ステップ134における発作関連事象の検出後に収集されたすべてのデータを含むことができる。または、発作関連事象の検出後であるが、停止信号よりも前に収集されたすべてのEMG信号データを選択することができる。例えば、検出された発作関連事象後に収集されたEMG信号データがベースライン振幅レベルに戻る場合、処理のためのデータの選択を停止することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、ステップ134は、バッテリまたは他のエネルギー源から大量のエネルギーを引き出さずに連続的にまたはほぼ連続的に実行可能な1つまたは複数の発作検出ルーチンの実行を含むことができる。例えば、本出願人によって共通して所有される米国仮特許出願第62/485,268号にさらに記載されているように、振幅値またはT二乗統計値もしくは主成分値など、それから計算した何らかの統計値を決定するために、比較的短時間のセグメントのEMG信号(例えば、約数秒未満のデータ)を処理する発作検出ルーチンは、概して、限られたコンピュータリソースを用いて、しかもバッテリまたは他のエネルギー源から大量のエネルギーを引き出さずに動作され得るため、有利な点として、バッテリおよびコンピュータリソースまたは処理リソースが限られている可能性がある患者着用型または個人のモバイル検出装置とともに用いる際に特に有益であり得る。
【0115】
いくつかの実施形態では、発作検出ルーチンは、EMG信号の1つまたは複数の特性値を閾値と比較することができる。例えば、いくつかの発作検出ルーチンは、EMG信号振幅の上昇の存在についてEMG信号データの1つまたは複数の短い区分を検査することができる。1つまたは複数の閾値を上回るEMG信号振幅の1つまたは複数の値の上昇が検出されると、ほぼその直後に応答を開始することができる。いくつかの実施形態では、振幅値またはT二乗統計値もしくは主成分値など、それから計算した何らかの統計値を決定するために、ステップ134において実行される発作検出ルーチンは、EMG信号データの1つまたは複数のセグメントを評価することができる。前述の特性値は、発作関連事象が検出されているかどうかを決定し、かつステップ134においてEMG信号データを選択するために1つまたは複数の閾値と比較され得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の発作検出ルーチンは、発作活動の開始時間または開始の時間範囲を検出するために用いることができる。発作の開始時間または開始の時間範囲が決定されると、発作の開始を含むデータの部分および/または1つもしくは複数の発作前の期間を含むデータの部分を選択することができる。例えば、発作関連事象の検出が、発作関連事象の推定開始時間前の最後の約60秒(または発作関連事象の検出のための時間分解能と矛盾しない他の範囲)以内のある時点で発作が生じていた可能性があることを識別する場合、発作前関連事象は、発作関連事象のこうした推定開始時間の約60秒以上前に収集されたデータから選択することができる。したがって、1つまたは複数の発作前期間が分割され、さらなる処理において用いることができる。例えば、ステップ136に記載されているように、1つまたは複数の発作前期間から計算された統計情報を用いてEMG信号データを正規化または調整することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、ステップ136に示すように、選択されたデータは、正規化または調整され得る。例えば、データの正規化または調整は、方法10のステップ16に記載されているようなステップを含むことができる。
【0118】
ステップ138に示すように、EMG信号データまたは調整されたEMG信号データは、1つまたは複数の周波数変換および/またはウェーブレット変換を用いて処理することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の周波数変換および/またはウェーブレット変換は、何らかの所定の間隔にわたりまたは処理のためのデータがそれ以上選択されるのを防ぐために、何らかの停止信号がトリガされるまで実行され得る。いくつかの実施形態では、ステップ138で用いられるウェーブレット変換は、リアルタイム検出での適用に適したものであり得る。例えば、モーレットウェーブレットまたは他の適切なウェーブレットを用いることができる。
【0119】
ステップ140に示すように、EMG信号は、1つまたは複数のグループに編成することができ、また1つまたは複数のグループの信号の大きさを決定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、データは、1つまたは複数のビンの集合に編成することができる。集合は、例えば、方法10のステップ20で詳細に記載されているような1つまたは複数の高周波数のビンの集合と、1つまたは複数の低周波数のビンの集合とを含むことができる。
【0120】
ステップ142に示すように、大きさデータをスケーリングすることができる。大きさデータのスケーリングは、EMG信号データのグループについての大きさデータを、何らかの期間にわたるEMG信号データのグループについて達成された最大大きさ値で除算するステップを含むことができる。方法10のステップ22にさらに記載されているように、大きさデータのスケーリングは、1つもしくは複数の絶対最大大きさ値または1つもしくは複数の局所最大大きさ値を決定するステップを含むことができる。例えば、経時的に収集された大きさデータをスケーリングする場合、1つまたは複数の局所最大大きさ値を決定して、データをスケーリングするために用いることができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、局所最大大きさ値が、絶対最大大きさ値として指定されるための要件を満たしているかどうかを決定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、局所最大大きさが約5秒〜約10秒よりも長い時間維持されている(例えば、局所最大大きさ値を超える近隣の値または後続する値が他にない)場合、局所最大大きさは、絶対最大大きさ値として指定することができる。いくつかの実施形態では、局所最大大きさ値/絶対最大大きさ値のいずれかの側のEMG信号データの勾配または形状などの他の情報も、大きさ値が局所的大きさ値または絶対大きさ値として指定されるかどうかを決定する際に用いることができる。いくつかの実施形態では、スケーリングされた大きさ値が絶対最大大きさ値に基づいていると決定された場合にのみ、ステップ144において開始される1つまたは複数の応答を行うことができる。
【0121】
ステップ144に示すように、EMG信号についての1つまたは複数のグループの大きさまたはスケーリングされた大きさは、1つまたは複数の閾値と比較され得る。この比較に基づいて1つまたは複数の応答を開始することができる。
【0122】
方法130において、EMG信号のデータの決定された大きさおよびスケーリングされた大きさ(ステップ140、142)は、時間をまたいで決定することができる。例えば、EMG信号データの1つまたは複数のグループへのEMG信号データの編成(ステップ140)、編成されたグループについての大きさデータの計算(ステップ140)および大きさデータのスケーリング(ステップ142)は、1つまたは複数の時間間隔にわたって実施することができる。プロセスは、次に分析中の他の時間の間隔について繰り返すことができる。例えば、1秒ごとまたは他の適切な時間間隔において、このプロセス内で連続的にまたは周期的に大きさデータおよび/またはスケーリングされた大きさデータを分析することができ、また1つまたは複数の応答を開始することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の特徴付けステップの1つまたは複数に基づき、発作関連事象がGTCまたは他の発作事象タイプであると決定された場合、1つまたは複数のアラームを開始することができる。
【0123】
図11は、EMG信号データを処理するための方法150の実施形態を図示する。方法150は、例えば、方法10とは独立して実行することができ、または方法10と組み合わせて用いることができる。例えば、本明細書に記載の強直相および間代相に対する指標を用いて、GTC発作または他の活動が存在しているかどうかの特徴付けに役立てることができる。方法150を用いて、非発作源を示している可能性があるいくつかの検出された事象と真の発作とを見分けることができる。例えば、いくつかの非発作事象は、いくつかの発作検出ルーチンによって検出することができ、また大きくても経時的に持続されない可能性がある、大きさが大きいデータの存在によって特徴付けることができる。方法150は、そのような活動を区別するために用いることができ、また非発作事象と真のGTC発作とを識別するために用いることができる。
【0124】
ステップ152において、方法150は、EMG信号データの1つまたは複数の部分の選択を含むことができる。EMG信号データの1つまたは複数の部分の選択は、少なくとも何らかのレベルの確率において、1つもしくは複数の発作事象または発作発生リスクの増大を示す1つまたは複数の事象を検出するステップを含むことができる。発作を含んでいる可能性があるデータの選択は、例えば、方法10のステップ14にさらにより詳細に記載されている。例えば、いくつかの実施形態では、データの約10分の部分を選択して、ステップ152において処理するために用いることができる。
【0125】
ステップ154において、発作の強直相活動および/または間代相活動の1つまたは複数の指標を計算することができる。例えば、発作の強直相および間代相についての発作活動の指標は、式7および式8にそれぞれ示されるように計算することができる。
【0126】
=k1∫(大きさ(高周波)dt 式中、0<t<xである 式7
=k2∫(大きさ(低周波)dt 式中、0<t<xである 式8
式7において、強直相指標(I)は、スケーリング因子klと、EMG信号データの高周波数グループについて計算された信号の大きさに対する時間にまたがる積分値とを含む。例えば、方法10のステップ20に記載されているような大きさデータを式7に含めることができる。他の実施形態では、(方法10のステップ22において決定することができるような)スケーリングされた大きさデータを用いることができる。式8において、間代相指標(I)は、スケーリング因子k2と、EMG信号データの低周波数グループについて計算された信号の大きさに対する時間にまたがる積分値とを含む。他の実施形態では、(方法10のステップ22において決定することができるような)スケーリングされた大きさデータを用いることができる。大きさデータの決定および/または例えばウェーブレット処理および正規化など、(式7および式8で用いられているような)スケーリングされた大きさデータの決定に関連した動作およびステップについて、方法10に関してより詳細に記載されている。
【0127】
ステップ156において、強直相および間代相に対する指標を用いて、選択されたEMG信号データを特徴付けることができる。例えば、いくつかの実施形態では、真のGTC発作として特徴付けられることになるデータセットについて、強直性指標および間代性指標の両方が閾値を超過し得る。いくつかの実施形態では、1である閾値を用いて強直相活動および/または間代相活動の特徴付けを示すことができるように、スケーリング因子klおよびk2を選択することができる。いくつかの実施形態では、発作の強直相および間代相に対する指標は、時間をまたいでまたは1つもしくは複数の分析窓中に評価することができる。例えば、式7および式8において、EMG信号データの高周波数グループについての大きさ値および低周波数グループについての大きさ値は、約10分の間隔にわたって評価することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、強直性活動および間代性活動に対する指標は、経時的に連続的にまたは数箇所の離散した時点において評価することができる。したがって、信号の特徴付け(ステップ156)も時間をまたいで実行することができる。例えば、いくつかの実施形態では、発作または発作の可能性が生じていたときに識別された時間後に続いて、一定の間隔で指標を評価することができる。例えば、発作または発作活動の可能性の検出後に続いて、一定の間隔、例えば約30秒〜約240秒の間隔で強直相活動および間代相活動に対する指標を評価することができる。それらの実施形態のいくつかでは、スケーリング因子klおよびk2は、時間に依存し得る(例えば、スケーリング因子klおよびk2は、発作の疑いの進行中に変わり得る)ため、kl(t)およびk2(t)として記載され得る。
【0128】
本明細書に記載の方法および装置に関係した追加の情報は、以下に記載の実施例に関連して理解することができる。
【実施例】
【0129】
実施例1
本実施例1では、EMG電極を用いて、発作を起こし易い患者の発作活動について監視した。センサが患者の二頭筋に配置され、EMG信号が収集され、発作活動の存在について収集された信号が分析され、発作が検出された。発作は、EMG信号データの高周波数グループおよび低周波数グループを形成するために、ビンの2つの集合の編成を含む手順を用いて後処理で特徴付けられた。例えば、約150Hz〜約260Hzの範囲にわたって延在するビンを含む高周波数のビンの集合が編成された。約6Hz〜約70Hzの範囲にわたって延在するビンを含む低周波数のビンの集合が編成された。2つのビンの集合についての大きさおよびスケーリングされた大きさが時間をまたいで決定され、(約150Hz〜約260Hzの高周波数データに基づいて)強直相が存在したかどうか、および/または(約6Hz〜約70Hzの低周波数データに基づいて)間代相が存在したかどうかを示すのに適した閾値と比較された。活動の検出のための閾値が0.8に設定された。
【0130】
検出された発作の分析の結果が図12に示されている。図12では、EMG信号データ(表面運動電位)の振幅が時間に対してプロットされている。加えて、本実施例で用いられる高周波数データ(200)および低周波数データ(202)についてのスケーリングされた大きさがEMG信号データの上に重ねて示されている。決定された発作の強直相への移行時間(204)、発作の間代相への移行時間(206)および発作からの移行時間(208)もそこに示されている。具体的には、本実施例で検出された発作は、強直相の継続時間が約11秒であり、間代相の継続時間が約32.3秒であり、発作の合計継続時間が約43.3秒であった。
【0131】
実施例2
本実施例2では、EMG電極を用いて患者の発作活動について監視した。センサが患者の二頭筋に配置され、EMG信号が収集され、収集された信号は、発作活動のリスクの増大を示し得るEMG信号の振幅増大事象の存在について分析された。発作および/または発作の可能性を示す複数のそのような事象が検出された。この患者について6つの事象が識別され、そのうちの2つの事象が真のGTC発作であることが検証された。それらの事象は、方法150を用いて後処理で分析された。本実施例2では、ビンの高周波数グループは、約150Hz〜約260Hzの周波数範囲にわたって延在したビンを含んでおり、強直性指標の作成に用いられた。ビンの低周波数グループは、約6Hz〜約70Hzの周波数範囲にわたって延在したビンを含んでおり、間代性指標の作成に用いられた。本実施例2における6つの事象を処理した結果が表1に示されている。
【0132】
【表1】
【0133】
実施例3
本実施例3では、多施設臨床試験を行って患者の発作活動について監視した。この試験では、EMG信号データおよびEEG信号データの両方が収集された。訓練を受けたEEG専門家に依頼して、PNES事象が疑われる任意のデータが精査された。次に、訓練を受けたてんかん専門医に依頼して、異常筋運動によって特徴付けられたPNES事象を類別するために、PNESが疑われる任意のデータが精査された。具体的には、3人の訓練を受けたEEGてんかん専門医がEEGデータを精査し、3人のてんかん専門医のうちの2人がその事象をPNES事象として識別した場合、発作関連事象がPNES事象であると見なされた。10個のPNESの事象がこの手順に基づいて類別された。
【0134】
PNES事象として類別されたすべての事象について収集されたEMG信号データは、次にT二乗発作検出ルーチンに対してテストされた。T二乗発作検出ルーチンを用いるときに、EEGデータを用いて識別されたすべての類別されたPNES事象も検出された。加えて、多施設臨床試験から無作為に選択された10個のGTC発作事象も同じT二乗発作検出ルーチンを用いて分析され、検出された。検出された事象は、次に本明細書に記載の方法を用いて処理するために選択された。特に、EMG信号データの高周波数グループおよび低周波数グループのそれぞれの大きさデータを決定するためにデータが処理された。本実施例3では、約150Hz〜約260Hzの周波数帯域のビンのグループについて高周波数データが収集された。約6Hz〜約70Hzの周波数帯域のビンのグループについて低周波数データが収集された。次に、式6に記載しているように、また方法110に関係してさらに記載されているようにQUAC比率が決定された。PNES事象について、QUAC計算のための積分の境界は、事象の全継続時間を含むように選択された。GTC事象について2つの別個の分析がテストされた。第1の分析では、図13Aを参照して本明細書に記載されているように、QUAC計算のための積分境界は、発作事象の全期間にまたがって延在していた。第2の分析では、図13Bを参照して本明細書で説明しているように、それぞれの検出された事象の強直相および間代相を別々に考慮するために、QUAC計算のための積分境界が選択された。例えば、2つの相へのかつ2つの相からの移行の終点は、方法10に関係して記載されているように、スケーリングされた大きさデータおよび閾値との比較から決定することができる。
【0135】
10個のPNESの疑いおよび10個のGTC発作についてのQUACデータが図13Aおよび図13Bに示されている。図13Aに示されるように、PNES事象および発作事象の両方の全期間にわたってQUAC比率が決定され、PNES事象についてのQUAC比率は、GTC発作事象についてよりもかなり低い(P<.05)。図13Bに示されるように、検出されたGTC発作事象の強直相および間代相のそれぞれにわたってQUAC比率が決定され、PNES事象についてのQUAC比率も、GTC発作事象についてよりも低かった。図13Bに示されるように、強直相にわたって積分境界が選択されたときの方が、差異が大きかった(P<.05)。したがって、EMGが、訓練を受けたてんかん専門医によるEEG分析および検証に基づいた手法と比較して、PNESの検出に関して同様の結果をもたらすことが見出された。このように、EMGデータの集合は、PNESの検出およびPNESを起こし易い可能性がある患者の診断に役立つ選択肢を提供することができる。前述したように、EMG分析は、発作を検出するための携行型の方法での使用に理想的に適している。このように、EMG分析は、経時的に大規模なデータセットを収集し、稀にのみ発現し得るPNESなどの状態を検出するのに好都合な方法を提供する。
【0136】
開示された方法および装置ならびにそれらの利点について詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明から逸脱することなく、様々な変更形態、置換形態および改変形態が本明細書においてなされ得ることを理解されたい。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載されるプロセス、機械、製品、組成または材料、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。「包含する(include)」という単語の使用は、例えば、「含む(comprising)」という単語が解釈されるように、すなわちオープンエンドとして解釈されるものとする。本開示から容易に理解できるように、本明細書に記載の対応する実施形態と実質的に同一の機能を実行するか、または実質的に同一の結果を達成する既存のまたは後に開発されるプロセス、機械、製品、材料の組成、手段、方法またはステップを利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製品、材料の組成、手段、方法またはステップをその範囲内に含むことを意図する。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
【国際調査報告】