特表2019-515892(P2019-515892A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-515892成熟脳損傷の治療における使用のためのmGluR5のネガティブアロステリックモジュレーター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-515892(P2019-515892A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(54)【発明の名称】成熟脳損傷の治療における使用のためのmGluR5のネガティブアロステリックモジュレーター
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20190524BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190524BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20190524BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20190524BHJP
   A61K 31/4168 20060101ALI20190524BHJP
   A61K 31/403 20060101ALI20190524BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20190524BHJP
   A61K 31/4365 20060101ALI20190524BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20190524BHJP
   A61K 31/4162 20060101ALI20190524BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20190524BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20190524BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20190524BHJP
   A61K 31/4965 20060101ALI20190524BHJP
【FI】
   A61K45/00
   A61P43/00 111
   A61P25/00
   A61K31/4545
   A61K31/4168
   A61K31/403
   A61K31/506
   A61K31/4365
   A61K31/519
   A61K31/4162
   A61K31/4439
   A61K31/444
   A61K31/55
   A61K31/4965
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2018-551874(P2018-551874)
(86)(22)【出願日】2016年3月30日
(85)【翻訳文提出日】2018年11月2日
(86)【国際出願番号】SE2016050264
(87)【国際公開番号】WO2017171594
(87)【国際公開日】20171005
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518342294
【氏名又は名称】シンタクシス・エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィーロッチ、タデウス
(72)【発明者】
【氏名】スジョールンド、カリン
(72)【発明者】
【氏名】ベイルプ、ケルスティン
(72)【発明者】
【氏名】ルシャー、カルステン
(72)【発明者】
【氏名】オルソン、ロジャー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZC411
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC10
4C086BC21
4C086BC38
4C086BC48
4C086BC71
4C086BC79
4C086BC82
4C086CB05
4C086CB10
4C086CB22
4C086CB29
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086GA10
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZC41
(57)【要約】
本開示は、代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)の脳卒中後の損傷のような成熟脳損傷の治療における使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟脳損傷の治療における使用のための代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)。
【請求項2】
前記治療は成熟脳損傷を患う罹患体の脳機能の回復の改善をもたらす、請求項1に記載の使用のための代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)。
【請求項3】
前記NAMは、
【化1-1】

【化1-2】

およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される、
請求項1または2に記載の使用のためのNAM。
【請求項4】
前記NAMは、
【化2】

およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される、
請求項1または2に記載の使用のためのNAM。
【請求項5】
前記NAMは、
【化3】

およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物である、
請求項1または2に記載の使用のためのNAM。
【請求項6】
前記成熟脳損傷は、脳卒中、頭部外傷、心肺停止および急性脳損傷からなる群から選択される疾病によって引き起こされる、請求項1〜5の何れか1項に記載の使用のためのNAM。
【請求項7】
前記脳損傷は、認知障害、うつ病、疲労および感覚運動機能障害からなる群から選択される脳卒中後障害をもたらす脳卒中によって引き起こされる、請求項6に記載の使用のためのNAM。
【請求項8】
前記治療は、神経保護治療がもはや有効でなくなったら開始されるべきである、請求項1〜7の何れか1項に記載の使用のためのNAM。
【請求項9】
前記治療は、神経保護治療が完了した後に開始されるべきである、請求項8に記載の使用のためのNAM。
【請求項10】
前記治療は、最初の急性脳損傷が発生してから4時間後以降に開始されるべきである、請求項1〜8の何れか1項に記載の使用のためのNAM。
【請求項11】
前記治療は、経頭蓋磁気刺激、電気刺激および/または物理的および行動療法と組み合わせられる、請求項1〜10の何れか1項に記載の使用のためのNAM。
【請求項12】
成熟脳損傷を治療するかまたは緩和する方法であって、代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)の治療有効量をそれを必要とする罹患体に投与することを含む方法。
【請求項13】
前記治療は成熟脳損傷に苦しむ罹患体の脳機能の回復の改善をもたらす請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記NAMは、
【化4-1】

【化4-2】

およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記NAMは、
【化5】

およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
前記NAMは、
【化6】

およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物である請求項12または13に記載の方法。
【請求項17】
前記成熟脳損傷は、脳卒中、頭部外傷、心肺停止および急性脳損傷からなる群から選択される疾病によって引き起こされる請求項12〜16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記脳損傷は、認知障害、うつ病、疲労および感覚運動機能障害からなる群から選択される脳卒中後障害をもたらす脳卒中によって引き起こされる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記治療は、神経保護治療がもはや有効でなくなったら開始されるべきである、請求項12〜18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記治療は、神経保護治療が完了した後に開始されるべきである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記治療は、最初の急性脳損傷が発生してから4時間後以降に開始されるべきである、請求項12〜20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記治療は、経頭蓋磁気刺激、電気刺激および/または物理的および行動療法と組み合わせられる請求項12〜21の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、成熟脳損傷の治療における代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)の使用に関する。
【背景】
【0002】
グルタミン酸は、哺乳動物の中枢神経系における神経伝達物質であり、様々なグルタミン酸受容体と相互作用する。これらの受容体の幾つかは代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)であり、その中には3つのグループに分けられる8種の異なるサブタイプがある。グループIは、とりわけ、サブタイプ5であるmGluR5を含む。
【0003】
アロステリックモジュレーターは、受容体およびこの特定の場合には代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5のような標的タンパク質における他の物質(通常リガンドであり、それはアゴニストまたはアンタゴニストであり得、この場合はグルタメートである)の効果を間接的に調節する物質である。アロステリックモジュレーターは、アゴニストまたはアンタゴニストにおける受容体リガンド結合部位であるオルトステリック結合部位の位置とは異なる受容体上の部位に結合する。しばしば、アロステリックモジュレーターは、タンパク質構造内でコンフォメーション変化を誘起する。オルトステリック部位で作用する他の物質の効果について、ネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)はアテニュエーターであり、ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)はエンハンサーである。mGluR5のNAMは、グルタミン酸受容体サブタイプ5へのグルタミン酸の結合を調節する。mGluR5のNAMは、ゆえに代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5のアンタゴニストと同等ではない。
【0004】
実験研究では、2−メチル−6−フェニルエチニルピリジン(MPEP)のような少なくとも一部のmGluR5のNAMが、脳外傷後早期に投与された場合に神経保護作用を有することが、過去に示されている。しかしながら、これらの過去の研究によると、治療は外傷が起こった後非常に早期に、即ち、外傷後数分から最大4時間までの間に開始されなければならない。また、データは矛盾しており、mGluR5アンタゴニストおよびmGluR5 NAMによる脳の保護を示すものもあれば、mGluR5アゴニストによる反対の効果または保護を示すデータもある。故に、mGluR5NAMの神経保護治療可能時間窓は狭く、恐らく損傷の間の急性興奮毒性の阻害を反映する。
【0005】
本出願を通して参照される全ての文書の開示は、参照により本明細書に援用される。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、成熟脳損傷の治療における使用のための代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)に関する。
【0007】
本発明は更に、成熟脳損傷の治療のための医薬組成物の製造における代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)の使用に関する。
【0008】
本発明は更に、代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)の治療有効量を罹患体に投与する、罹患体における成熟脳損傷を治療する方法に関する。
【0009】
発明の詳細な説明
上述したように、本発明は、成熟脳損傷の治療における代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)の使用に関する。当業者は、幾つかの異なるmGluR5のNAMが存在することを知っている。過去に記述され、かつ本発明に従って使用することができる代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)の例を以下の表1に掲げる。表1では、種々のNAMが2つの化学型にグループ分けされている。即ち、幾つかの化合物はアルキン系列、即ちアセチレン骨格構造を有する化合物に属し、他は非アルキン系列、即ち非アセチレン骨格構造を有する化合物に属する。アルキン系列に属する化合物は全て一般構造:
【0010】
【化1】
【0011】
を有し、
式中、RおよびRの意味は、それぞれ表1からのものである。
【0012】
【表1-1】
【0013】
【表1-2】
【0014】
【表1-3】
【0015】
【表1-4】
【0016】
当業者は、特定の化合物がmGluR5のNAMであるか否かを決定するために使用され得る試験方法にも精通している。そのような試験方法(Vranesic et al,(2014) Bioorg. Med. Chem、22:5790-5803)の例は、放射性リガンド置換(Gasparini et al,(2002) Bioorg Med Chem Lett、12:407-409)、細胞Ca2+動員の阻害(Widler et al,(2010) J. Med. Chem、53:2250-2263)、およびイノシトールリン酸加水分解の阻害(Litschig et al.,(1999) Mol. Pharm、55:453-461)アッセイである。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態において、用いられるNAMは、以下の化合物:
【0018】
【化2-1】
【0019】
【化2-2】
【0020】
からなる群から選択される。
【0021】
幾つかの実施形態において、用いられるNAMは、
【0022】
【化3】
【0023】
であり、下記の例においてSIN010と示される。
【0024】
幾つかの実施形態において、用いられるNAMは、
【0025】
【化4】
【0026】
であり、下記の例においてSIN014と示され、これは下記の例においてSIN013と示される化合物のよく似た類似体である。
【0027】
幾つかの実施形態において、用いられるNAMは、
【0028】
【化5】
【0029】
であり、下記の例においてSIN011と示される。
【0030】
幾つかの実施形態において、用いられるNAMは、
【0031】
【化6】
【0032】
であり、下記の例においてSIN008と示される。
【0033】
幾つかの実施形態において、用いられるNAMは、
【0034】
【化7】
【0035】
であり、下記の例においてSIN015と示される。
【0036】
幾つかの実施形態において、用いられるNAMは、上記の特定の20個の化合物の何れかの薬学的に許容され得る塩および溶媒和物からなる群から選択される。
【0037】
この文脈において、薬学的に許容される塩は、本発明に従うNAMの塩を意味し、これは、それが投与される罹患体に顕著な刺激を引き起こさず、且つ化合物の生物学的活性および特性を無効にしない。
【0038】
本明細書に記載の化合物の溶媒和物は、融点、化学反応性、見かけの溶解度、溶解速度、光学的および電気的特性、蒸気圧および密度のような化学的および物理的特性を変更する目的で使用され得る。取り込まれた溶媒が水である場合、溶媒和物は一般に水和物としても知られる。
【0039】
幾つかの実施形態において、ヒトに投与すると上記のNAMの何れかに代謝される化合物を使用することが可能である。本発明に従うNAMは、その場合間接的に使用される。
【0040】
これらの化合物は以前から知られているので、当業者はそれらを合成する方法を知っている。
【0041】
本発明によれば、mGluR5のNAMは成熟脳損傷の治療に用いられる。
【0042】
本発明の文脈において、用語「成熟脳損傷」とは、確立されており、それ以上進行しない任意の脳損傷または脳外傷をいう。これは、脳内の細胞死が治まると生じる。脳損傷または脳外傷は、脳細胞の破壊または変性に関連し、多数の様々な疾病、病気および/または外傷によって引き起こされ得、本発明の文脈においては、用語脳損傷は、医原性および非医原性の両方の脳損傷を含む。
【0043】
幾つかの実施形態において、成熟脳損傷は脳卒中によって引き起こされたものであり得る。脳卒中は、虚血性脳卒中、出血性脳卒中および一過性虚血性発作からなる群から選択され得る。出血性脳卒中の場合、それは高血圧または動脈瘤および動静脈奇形を含む衰弱した血管の破裂によって引き起こされ得る。
【0044】
脳卒中によって引き起こされる成熟脳損傷は、認知障害、感覚運動機能障害、うつ病または疲労からなる群から選択される1つ以上の疾病または障害へと進行している可能性がある。認知障害は、注意力、記憶および作業記憶、判断および評価、推理および「計算」、問題解決および意思決定、並びに言語の理解および生産の欠如を含み得、また、失語、記憶機能不全および半空間無視を含む群から選択される1つ以上の疾病を含み得る。
【0045】
幾つかの実施形態において、成熟脳損傷は、心肺停止、急性脳損傷、外傷性脳損傷(TBI)、手術、放射線、血管性認知症、てんかん発作、脳血管攣縮、および/または心肺停止又は溺水の結果としての脳の低酸素症によって引き起こされたものである。
【0046】
成熟脳損傷を患っている罹患体に、本発明に従うmGluR5 NAMを投与すると、NAMの投与なしで状況がどのようになるかと比較して、罹患体の脳機能の改善された回復を引き起こすであろう。本発明に従う治療は、成熟脳損傷が生じてから開始されるべきである。脳損傷または脳外傷が更に進行しなくなったとき、脳における細胞死は治まり、神経保護治療はもはや有効ではない。したがって、本発明に従う治療は、神経保護治療が損傷に対してもはや有意な効果を有さないときに開始されるべきである。したがって、幾つかの実施形態において、治療は、急性脳損傷が生じてから少なくとも4時間が経過するまで開始するべきではない。幾つかの実施形態において、治療は、急性脳損傷が生じてから5時間後以降に開始される。幾つかの実施形態において、治療は、急性脳損傷が生じてから6時間後以降に開始される。幾つかの実施形態において、治療は、急性脳損傷が生じてから8時間後以降に開始される。急性脳卒中などの急性脳損傷が、血栓溶解剤で、即ち、線維素溶解療法で、または脳動脈における血流を妨げる閉塞の機械的除去によって治療される場合、本発明に従う治療の開始のタイミングは、線維素溶解療法の終了と同時であってもよく、または閉塞の機械的除去の後であってもよい。再疎通(薬理学的または外科的の何れか)が使用される場合、本発明に従う治療は、再疎通が実施されるときか、またはその直後に開始され得る。
【0047】
治療は早く開始されるほどより好ましい。しかしながら、急性脳損傷が確立されたはるか後、即ち、成熟脳損傷をもたらす初期の脳損傷または外傷のずっと後で、治療を開始することも可能である。成熟脳損傷の確立後、数日、数週間、数ヶ月、または数年後でさえも治療を開始することが可能である。本発明に従う治療のこの遅い開始は、成熟脳損傷の後期段階の間であっても規則的な物理療法が考慮され得る場合と同様である。
【0048】
本発明に従う治療は、生涯にわたって行われ得る。或いは、治療は2〜7日間、2〜4週間、2〜4ヶ月間、或いは1年または数年間継続され得る。
【0049】
本発明による治療は、1つ以上の他の治療と組み合わせてもよい。例えば、それは、経頭蓋磁気刺激法(Pollock et al、(2014) Interventions for improving upper limb limb function after stroke (review)、Chocrane Database Sys Rev、12:11)と組み合わせてもよい。或いは、本発明に従う治療は、脳の電気刺激(Pollock et al、2014)と組み合わせてもよく、そのような電気刺激は、陽極または陰極のいずれかであり得る。本発明に従う治療はまた、物理療法、コンピュータ支援バーチャルリアリティを含むリハビリ訓練、またはロボット支援訓練および療法(Laffont et al. Annals of Physical and Rehabilitation Medicine (2014) 57:543-551)と組み合わせてもよい。そのような物理的療法は、拘束誘発療法(constraint induced therapy)であり得る。これは例2でさらに議論される。
【0050】
本明細書で用いられる用語「治療」は、疾患または疾病を治癒または緩和するための治療に関する。
【0051】
用語「罹患体」は、本明細書で使用されるとき、本発明に従う治療を必要とする何れかのヒトまたは非ヒト哺乳動物に関する。
【0052】
用語「治療有効量」は、所望の治療効果、即ち治療される成熟脳損傷に対する有益な効果をもたらす量に関する。
【0053】
本発明に従うまたは本発明に従って用いられるNAMは、医薬組成物または製剤に含ませられ得る。そのような組成物は、希釈剤および担体を含む薬学的賦形剤および/またはアジュバントを含み得る。医薬組成物は、本発明に従うNAMの罹患体への投与を容易にする。医薬組成物はそれ自体知られた手段、例えば、慣用的な混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、粉砕、乳化、カプセル化、封入または錠剤化プロセスの手段によって製造され得る。
【0054】
本発明に従うNAMまたは医薬組成物の投与は、何れかの慣用的な方法によって実施され得、適切な投与の経路は、例えば、経口、直腸、経粘膜、局所または腸内投与;筋肉内、皮下、静脈内、髄内注射、ならびに髄腔内、直接的な脳室内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射を含む非経口送達を含み得る。化合物は、長期投与のために、持続放出または制御放出投与形態で投与することができる。
【0055】
本発明の1つの様態において、成熟脳損傷の治療における使用のための代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)が提供される。
【0056】
この様態の1つの実施形態において、治療は、成熟脳損傷を患う罹患体の脳機能の回復の改善をもたらす。
【0057】
この様態の1つの実施形態において、前記NAMは
【0058】
【化8-1】
【0059】
【化8-2】
【0060】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される。
【0061】
この様態の1つの実施形態において、前記NAMは
【0062】
【化9】
【0063】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される。
【0064】
この様態の1つの実施形態において、前記NAMは
【0065】
【化10】
【0066】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物である。
【0067】
この様態の1つの実施形態において、前記成熟脳損傷は、脳卒中、頭部外傷、心肺停止および急性脳損傷からなる群から選択される疾病によって引き起こされたものである。
【0068】
この様態の1つの実施形態において、前記脳損傷は、認知障害、うつ病、疲労および感覚運動機能障害からなる群から選択される脳卒中後障害をもたらす脳卒中によって引き起こされたものである。
【0069】
この様態の1つの実施形態において、前記治療は、神経保護治療がもはや有効でなくなったら開始されるべきである。
【0070】
この様態の1つの実施形態において、前記治療は、神経保護治療が完了した後に開始されるべきである。
【0071】
この様態の1つの実施形態において、前記治療は、最初の急性脳損傷が発生してから4時間後以降に開始されるべきである。
【0072】
この様態の1つの実施形態において、治療は、経頭蓋磁気刺激、電気刺激および/または物理的および行動療法と組み合わせられる。
【0073】
本発明の1つの様態において、代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)の治療有効量をそれが必要な罹患体に投与することを含む成熟脳損傷を治療しまたは緩和する方法が提供される。
【0074】
この様態の1つの実施形態において、治療は成熟脳損傷を患う罹患体の脳機能の改善された回復をもたらす。
【0075】
この様態の1つの実施形態において、前記NAMは
【0076】
【化11-1】
【0077】
【化11-2】
【0078】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される。
【0079】
この様態の1つの実施形態において、前記NAMは
【0080】
【化12】
【0081】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される。
【0082】
この様態の1つの実施形態において、前記NAMは
【0083】
【化13】
【0084】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物である。
【0085】
この様態の1つの実施形態において、前記成熟脳損傷は、脳卒中、頭部外傷、心肺停止および急性脳損傷からなる群から選択される疾病によって引き起こされたものである。
【0086】
この様態の1つの実施形態において、前記脳損傷は、認知障害、うつ病、疲労並びに感覚運動機能障害からなる群から選択される脳卒中後障害をもたらす脳卒中によって引き起こされる。
【0087】
この様態の1つの実施形態において、前記治療は、神経保護治療がもはや有効でなくなったら開始されるべきである。
【0088】
この様態の1つの実施形態において、前記治療は、神経保護治療が完了した後に開始されるべきである。
【0089】
この様態の1つの実施形態において、前記治療は、最初の急性脳損傷が発生してから4時間後以降に開始されるべきである。
【0090】
この様態の1つの実施形態において、治療は、経頭蓋磁気刺激、電気刺激および/または物理的および行動療法と組み合わせられる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
下記の例において、添付の図面を参照する。
図1A図1A〜Dは、アセチレン骨格構造を有するプロトタイプのmGluR5ネガティブアロステリックモジュレーター:SIN007;3((2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)エチニル)ピリジン;MTEPの、ビヒクル(Vh)処置と比較した、ラットの脳卒中後の機能回復における効果を示す。図1A:脳卒中2日後に開始した12日間の治療後の機能回復。
図1B図1B:脳卒中後の梗塞のサイズ。
図1C図1C:機能回復の時間経過。SIN007(S);ビヒクル(V)。
図1D図1D:5日間のSIN007治療が停止された後の回復の持続。
図2A図2A〜Fは、プロトタイプのmGluR5ネガティブアロステリックモジュレーターSIN007での治療の、ビヒクル(Vh)処置と比較した、マウスの脳卒中後の機能回復における効果を示す。図2A:治療の5日後の機能回復。
図2B図2B:脳卒中後の梗塞のサイズ。
図2C図2C:脳卒中の2日後(2d)又は10日後(10d)に開始した5日間の治療。
図2D図2D:SIN007での6日間の治療の1時間前の、mGluR5ポジティブアロステリックモジュレーターSIN006;(N−シクロブチル−6−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]−3−ピリジンカルボキサミドヒドロクロリド);VU0360172による事前処理。
図2E図2Eおよび2F:脳卒中の5日後、豊かな環境で飼育されるマウスは脳機能の回復を促進させ、SIN006(図2E)との併用治療では効果が失われたが、SIN007(図2F)との併用治療では更に促進された。
図2F図2Eおよび2F:脳卒中の5日後、豊かな環境で飼育されるマウスは脳機能の回復を促進させ、SIN006(図2E)との併用治療では効果が失われたが、SIN007(図2F)との併用治療では更に促進された。
図3A図3A〜Dは、経口利用可能なアセチレン性mGluR5 NAMの化合物の脳卒中後の機能回復における効果を示す。図3A:ラットの機能的回復におけるSIN008[6−フルオロ−2−[4−(ピリジン−2−イル)−3−ブチニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジン,ADX70084]の効果。
図3B図3B:マウスの機能的回復におけるSIN011(5−ヒドロキシ−5−(m−トリルエチニル)オクタヒドロ−1H−インドール−1−カルボン酸[3aS,5S,7aR]−メチル、mavoglurant)の効果。
図3C図3C:マウスの機能的回復におけるSIN013([2−クロロ−4−((2,5−ジメチル−1−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル))−1H−イミダゾール−4−イル)エチニル)ピリジン、CTEP)の2回の投与の効果。
図3D図3D:野生型およびmGluR5KOラットの機能回復におけるSIN013の効果。
図3E図3E:マウスの脳卒中後の機能回復におけるSIN014[2,5,−ジメチル−1−[4−フルオロ−フェニル]イミダゾール−4−イル]エチニル]ピリジン、(RG7090、Basimglurant))の効果。
図3F図3F:マウスの機能回復におけるSIN017(3−フルオロ−5−(5−((2−メチルチアゾール−4−イル)エチニル)ピリジン−2−イル)ベンゾニトリル、STX107)の効果。
図4A図4A:脳卒中の1週間および2週間後のラットの機能回復におけるSIN010[1−(3−クロロフェニル)−3−(3−メチル−5−オキソ−4H−イミダゾール−2−イル)尿素、フェノバム)の効果。
図4B図4B:ラットの豊かな飼育の回復増強効果におけるSIN010治療の相加的効果。
図4C図4C:ラットの脳卒中後の機能回復におけるSIN015[3−フルオロ−5−(3−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール5−イル)ベンゾニトリル]の効果。
【発明を実施するための形態】
【0092】

以下の例は、本発明および特にその特定の実施形態を例証するために提供される。
【0093】
例1:ラットの脳卒中後の機能回復におけるプロトタイプのアルキンmGluR5 NAM、SIN007の効果
実験手順
動物.全ての実験は、Malmoe−Lund動物実験委員会の承認を得て、ARRIVEガイドラインに従って実施した。動物を逆光条件下で飼育し、ラットが活動している暗期の間に試験を行った。実験は、オスのSpragueDawleyラットで行った(11週齢、Charles River、Scanbur A/S Karlslunde、デンマーク)。研究はランダム化され、手術および行動評価を行った研究者に盲検的な様式で行った。
【0094】
材料.(3−[(2メチル−1,3−チアゾール−4−イル)エチニル]ピリジン、MTEP)はBeijing Honghui Meditech Co., Ltd(北京、中華人民共和国)で合成され、構造をH−NMRで確認した。それを生理食塩水中の0.3%Tween80に溶解した。
【0095】
化合物の投与.この化合物を1ml/kgの急速投与量として腹部の下部象限に注入した。
【0096】
実験的な脳卒中.動物をイソフルラン(自発的換気下でO中約2%)により麻酔し、定位フレームに配置した。手術中、直腸温度プローブを用いて温度を監視し、フィードバック制御を備えた加熱パッドによって動物を37.0〜37.5±0.2℃に維持した。矢状皮膚切開を行い、皮下結合組織を除去し、頭蓋骨を乾燥させた。その後、光増感色素ローズベンガル(10mg/mLで0.5mL)を尾静脈に注入した。注入の2分後、頭蓋骨に8mmから4.5mmまでの領域で冷光(Schott、KL1500LCD)を15分間照射した(ブレグマから前後+4mmから−4mmまでおよび左側0.5mmから5mmまで)。その後、尾部および頭皮切開部を縫合し、ラットをそれらの飼育ケージに移した。脳卒中の発症の2時間後に、肢の配置試験を用いて機能不全を評価し、脳損傷半球の反対側の前肢および後肢両方についてスコア0を有する動物のみを研究に使用した。
【0097】
神経機能の試験.足の配置試験.光血栓症によってもたらされる皮質損傷は、感覚運動野におけるニューロン損失および病変の近傍のニューロンネットワークにおける機能の低下に起因する欠損(deficit)を引き起こす。これは、足の配置試験における応答の喪失によって示される。この試験は、肢への刺激に対する触覚/自己受容性応答に関する情報を提供する。動物は、テーブル表面上に4本の全ての足を配置し、足を端に沿って試験した。試験する足がテーブル表面に緩く接触するように、ラットを端まで移動させた。ラットが端に向かって動くとき、その動物のテーブル表面上に肢を戻す能力を評価した。重要なことに、頭部を45°の角度に保持して視覚および髭/鼻の刺激を防止した。テーブルへの肢の迅速な配置を1としてスコア付けした。肢の不完全な配置を0.5としてスコア付けし、肢および足の完全な伸張を0としてスコア付けした。薬剤またはビヒクルを用いた動物の処置の前に類似の機能的欠損を有する群を得るために、梗塞発達が治まったときである回復の時点の実験的脳卒中から2日後に選択的選別を行った。したがって、肢の配置の重度の欠損(スコア=0)を示した動物のみを研究に用いた。
【0098】
組織採集.動物を深く麻酔し(イソフルラン)、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)溶液で灌流固定した。脳を採集して4%のPFA溶液に4時間浸した後、25%スクロースリン酸緩衝液(0.1MのNaHPO、0.1MのNaHPO)内に移動させ、4℃で保存した。次いで、ミクロトームを用いて脳を30μmに薄切りし、1つの切片を梗塞のサイズの測定のために各1mmにした。他は免疫組織化学的検査および免疫蛍光検査のために保管した。全ての切片を凍結防止溶液(30%エチレングリコール、30%グリセロール、0.01MのNaHPO、0.03MのNaHPO)中に−20℃で保管した。
【0099】
免疫組織化学的検査.自由浮遊する脳切片をPBS(リン酸緩衝食塩水)内で3回すすぎ、3%のHおよび10%のMetOHで15分間クエンチした。PBSで洗浄した後、切片をブロッキング溶液(PBS中の5%の正常なロバ血清、Jackson ImmunoResearch、英国および0.25%のTriton X−100)で室温で1時間ブロッキングした。切片を、1:1500の希釈率のモノクローナルマウス抗NeuN抗体(A60/MAB377、Millipore)とともに4℃で一晩インキュベートした。PBS中の1%の正常なロバ血清および0.25%のTriton X−100で3回すすいだ後、切片をブロッキング溶液中1:400の希釈率の適切な二次ビオチン化抗体(ロバ抗ウサギ/マウス、Vector Laboratories、米国)と共に90分、室温(RT)でインキュベートした。可視化は、3,3−ジアミノベンジジン−テトラヒドロクロライド(DabSafe、Saveen Werner、スウェーデン)、8%のNiClおよび3%のHを用いるVectorstainABCkit(Vector)によって達成した。
【0100】
梗塞測定.オリンパスBX60顕微鏡(Solna、スウェーデン)を用いて明視野画像を取得した。1mm間隔の12枚の切片をスキャンし、ImageJソフトウェア(国立衛生研究所、米国)を用いて、梗塞半球および非病変対側半球の非損傷領域の輪郭を描き、測定した。無傷の対側半球の面積から非損傷の同側半球の面積を差し引くことによって梗塞容積(mm)を決定し、各動物の容積積分によって計算した。
【0101】
結果
脳卒中の2日後に開始したSIN007(5mg/kg、i.p.)またはビヒクル(生理食塩水中の0.3%Tween80)による5日間の毎日の治療の、脳卒中の14日後に評価した足の配置スコアへの効果を図1Aに示す。SIN007治療群(n=7)においては、ビヒクル(n=5)と比較して足の配置機能のほぼ完全な回復が見られた(p<0.001、マンホイットニー検定)。図1Bは、図1Aに含まれる動物の平均の梗塞のサイズを示す。梗塞のサイズは、ビヒクルで処置した動物においては18.8±2.5mmであり、SIN007の動物では19.5±4.6mmであった。ビヒクル群と治療群との間で梗塞のサイズに差はなかった。図1Cは、機能の回復の経過を示す。治療効果にはSIN007による少なくとも4日間の治療が必要であり、最大限の治療効果のためには14日間必要である(SIN007、s2−s7、n=11;Vh、v2−7、n=11;SIN007、s14、n=7;Vh、v14、n=5)。図1Dは、SIN007による5日間の治療(n=4)およびそれに続くSIN007による治療無しの回復期間(SIN007/off)の効果を示す。SIN007を用いた5日間の治療によって提供される機能の回復は、治療の完了後少なくとも7日間持続する。まとめると、データは少なくとも4日間、好ましくは14日間の脳卒中の2日後に開始するmGluR5 NAMによる毎日の治療は、脳の保護を提供せずに脳機能の持続的な回復をもたらすことを実証した。したがって、SIN007は、うつであるが脳卒中によって損傷されていない脳ニューロンネットワークの機能回復をもたらす。
【0102】
例2.マウスの脳卒中後の機能回復におけるプロトタイプのアルキンmGluR5 NAM、SIN007の効果
実験手順
動物.全ての実験は、Malmoe−Lund動物実験委員会の承認を得て、ARRIVEガイドラインに従って実施した。実験はオスのC57/BL6マウス(8週齢、Charles River Scanbur A/S Karlslunde、デンマーク)で行った。研究はランダム化され、手術および行動評価を行った研究者に盲検的な様式で行った。
【0103】
材料は例1と同様であり、薬剤の投与は例1と同様に行った。また、mGluR5受容体におけるポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)は、SIN006(N−シクロブチル−6−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]−3−ピリジンカルボキサミドヒドロクロリド;VU0360172)であった。
【0104】
マウスにおける脳卒中の誘発.マウスは、左感覚運動野の片側光血栓(photothrombotic、PT)皮質梗塞を受けた。手術の間、動物の体温を自己制御式加熱パッドを用いて37℃に維持した。動物を100%のOにおいて1.5〜2.5%のイソフルラン(Sigma)を用いて麻酔した。頭蓋骨の上の皮膚を切開した。2.5mmの開口直径を有する光ファイバー束を冷光源(CL1500ECO、Zeiss、ドイツ)に接続し、感覚運動野の定位座標、即ち、ブレグマの0.5mm前方および正中線から1.5mm側方へ調整した。光を20分間オンにする前に、0.25mlのローズベンガル(0.9%の生理食塩水中10mg/ml;Sigma-Aldrich、ドイツ)の一回の腹腔内(i.p.)注入を5分間与えた。光ファイバー束の下の頭蓋骨表面が38℃を超えないように注意した。手術後、動物を加熱パッド上で麻酔から目覚めさせ、飼料ペレットと水を自由に利用できるケージに戻した。
【0105】
豊かな飼育.豊かな環境下での齧歯類の飼育は、実験的な脳卒中後の回復を促進する、脳の様々な感覚運動系を刺激することはよく知られている。豊かな飼育は以下の手順で達成した。脳卒中の2日後の選択的選別の後、マウスを標準ケージ(STD、17cm×16cm×34.5cm)または豊かなケージ(EE、30cm×27cm×43cm)に無作為に分配した。マルチレベルの豊かなケージには、プラスチック製のトンネル、小屋、スライド、および齧歯類用走行輪などのさまざまな色の物体が装着され、2日ごとに物体の配置を変更した。マウスを標準ケージ(2匹/ケージ)または豊かなケージ(6〜8匹/ケージ)のどちらかで12日間飼育した。標準ケージ内の動物は、飼育小屋の状態を除いて同様に扱われた。
【0106】
足の配置試験.マウスをその吻側尾側伸長に沿ってベンチの端に固定し、片側の前側および後側の両方の足をそれに沿って静かに押した。マウスが端に向かって動くとき、各足の配置を記録した。感覚運動障害を1、0.5および0のスコアを用いて評価した。(1)−足がすぐにテーブル表面上に配置される。(0.5)−肢は伸展しているが、何らかの動きがあり、足をテーブルの表面上に配置することを試みる。(0)−足は完全に固定され、垂れ下がり、動きがない。薬剤またはビヒクルによる動物の処置の前に同様の機能的欠損を有する群を得るために、実験的脳卒中の2日後、即ち、梗塞の発達が治まった時の回復の時点で選択的選別を行った。したがって、足の配置に重度の欠損を示した動物(スコア=0)のみを研究に用いた。
【0107】
例1と同様に動物を潅流し、免疫染色し、梗塞のサイズを例1と同様に評価した。
【0108】
結果
脳卒中の2日後に開始された5日間のSIN007(5mg/kg、i.p.)を用いたマウスの毎日の治療の効果を図2Aに示す。ビヒクルで処置した動物(n=9)と比較して、SIN007で治療した動物(n=6)において強い回復増進効果が見られた(p<0.01、マンホイットニー)。2つの群で梗塞の平均サイズは同じであったことから、回復は脳の保護に関連するものではない。梗塞は、ビヒクル群で7.9±1.5mmであり、SIN007治療群で8.9±0.9mmであった、図2B。治療が遅れ、脳卒中の10日後に開始されても(n=5)、機能の回復は、治療が脳卒中の2日後に開始された場合(n=4)と同じである、図2C(Vh、n=8)(**は、p<0.01を示す、クラスカル・ウォリス検定)。SIN007の回復増進効果がmGluR5受容体の阻害により媒介されることを実証するために、mGluR5のポジティブアロステリックモジュレーター、SIN006(30mg/kg、p.o.)によってマウスを毎日処置し、当該処置は脳卒中の2日後、SIN007による治療(5mg/kg、i.p.)の1時間前から開始した(*はp<0.05を示し、**はp<0.01を示す、クラスカル・ウォリス、検定)、図2D。足の配置スコアを治療の5日後に評価した。SIN007(n=5)で治療した動物は、図2Aにも示す通り、ビヒクルで処置した動物(n=6)と比較して足の機能を回復させた。しかしながら、SIN007の前にSIN006(n=5)で処置した動物は機能を回復させなかった。脳卒中後の、脳機能の回復におけるmGluR5受容体阻害の重要性は、物理的手段、即ち、豊かな環境に動物を置くことによって脳機能が促進される実験的パラダイムにも示されている。脳卒中後、標準的な飼育(n=3)における動物と比較して、豊かな環境で5日間飼育された動物(n=7)に明らかな機能の促進された回復、図2E、は、mGluR5アゴニスト、SIN006(30mg/kg、p.o.、(n=4))の同時処置によって完全に阻止される。このことは、脳卒中後の脳機能の回復におけるmGluR5受容体の関与を再度実証している(n=4)(*はp<0.05を示す、クラスカル・ウォリス検定)。更に、SIN007(1mg/kg、i.p.、3日間毎日、n=5)による治療は、豊かな環境(EE)で飼育されたマウスに見られるのとほぼ同じ程度まで、機能の回復をやや促進する(n=7)。SIN007(1mg/kg、i.p.、3日間、n=5)の治療を豊かな環境における飼育と組み合わせることは、回復を有意に促進し、それは感覚運動トレーニングへのmGluR5NAMの追加の効果を示唆している。
【0109】
例3.経口的に利用可能なアルキンmGluR5 NAM、SIN008、SIN011、SIN013、SIN014およびSIN017の脳卒中後の機能回復における効果。
【0110】
実験手順
動物.ラットは例1と同様のものであり、マウスは例2と同様のものである。mGluR5遺伝子を不活性化したmGluR5 KOラットは、SAGE、Research Labs、ボイヤータウン、PA、米国からのものである。
【0111】
材料.SIN008(6−フルオロ−2−[4−(ピリジン−2−イル)−3−ブチニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジン、(ADX49621、Dipraglurant)、SIN013[2−クロロ−4−[2−[2,5,−ジメチル−1−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]イミダゾール−4−イル]エチニル]ピリジン,(CTEP))、SIN014[2,5,−ジメチル−1−[4−フルオロ−フェニル]イミダゾール−4−イル]エチニル]ピリジン、(RG7090、Basmiglurant))、SIN017(3−フルオロ−5−(5−((2−メチルチアゾール−4−イル)エチニル)ピリジン−2−イル)ベンゾニトリル(STX107))は、全てBeijing Honghui Meditech Co., Ltd(北京、中華人民共和国)で合成された。SIN011(3aR,4S,7aR)−オクタヒドロ−4−ヒドロキシ−4[2−(3−メチルフェニル)エチニル]−1H−インドール−1−カルボン酸メチルエステル(AFQ056、Mavoglurant))はSv chembiotech、Edmonton、カナダからのものである。全ての化合物の構造をH−NMRによって確認し、純度は>97%であった。SIN011を蒸留水中の0.5%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)に懸濁し、SIN008を蒸留水中の20%の2−ヒドロキシプロピルシクロデキストリンに懸濁し、SIN017、SIN013およびSIN014を塩水中の0.3%のTween80に懸濁した。ビヒクル中に懸濁した化合物は、安定な懸濁物を得るために15分間超音波処理した。
【0112】
化合物の投与.化合物を胃の中に配置されたカテーテルによって経口的に投与した(p.o.)。溶液の量は、0.2ml/ラット、0.1ml/マウスであった。
【0113】
脳卒中の誘発は、ラットについては例1と同様に行い、マウスについては例2と同様に行った。神経機能の評価は、ラットについては例1と同様に行い、マウスについては例2と同様に行った。動物を例1と同様に潅流および免疫染色し、梗塞のサイズを例1と同様に評価した。
【0114】
結果
SIN008(ADX48621、dipraglurant、30mg/kg、p.o.、20%の2−ヒドロキシプロピルシクロデキストリン溶液中;n=4))又はビヒクル(n=7)による5日間の処置は、ラットにおける脳卒中の2日後に処置を開始したとき、神経機能を有意に促進した、図3A
【0115】
脳卒中後の足の配置試験におけるマウスへのSIN011(mavoglurant)(30mg/kg、p.o.)又はビヒクル(0.5%のHPMC)の毎日の投与の効果を図3Bに示す。処置を脳卒中の2日後に開始し、5日間続けた。ビヒクル群(n=5)においては回復は見られなかった一方、治療群(n=5)では足の機能の優位な回復が見られた(p<0.01、マンホイットニー)。
【0116】
図3Cは、SIN013(CTEP)(2mg/kg、48時間ごと(SIN013(l)(n=5)または2mg/kg、毎日、SIN013(h)(n=7))或いはビヒクル(n=4)の投与の効果を示す。処置を脳卒中の2日後開始し、5日間続けた。ビヒクル処置群においては足の機能の改善は見られなかった一方、処置パラダイムの両方が機能の促進を提供し、それは2mg/kgの毎日の投与計画において顕著であった(p<0.05、クラスカル・ウォリス)。マウスにおけるSIN013による脳卒中後の回復の促進(図3C)は脳卒中のラットモデルにおいて確認した、図3D。SIN013(2mg/kg/日、p.o.、生理食塩水中の0.3%のTween80中、n=8)による5日間の治療は、ビヒクル群(n=11)と比較して足の配置機能を有意に改善した。処置は脳卒中の2日後に開始し、5日間続けた。mGluR5KOラット(n=3)ではSIN013処置によって刺激された回復は見られず、欠損(deficit)はビヒクルで処置した野生型ラットにおけるものと似ていた。このことは、脳卒中後の失われた脳機能の回復におけるmGluR5NAMの刺激効果はmGluR5受容体によって媒介される証拠を確固たるものとしている(図2D)。
【0117】
SIN014(basimglurant、RG7090;(l)5mg/kg、p.o.および(h)10mg/kg、p.o.、生理食塩水中の0.3%Tween中)によるマウスの5日間の治療は、より多い投与量(10mg/kg)で機能回復を改善した、図3E
【0118】
SIN017(3mg/kg、0.5%のHPMC中、p.o.(n=3))(STX107)での5日間の毎日の治療も、ビヒクル群(n=4)と比較してマウスにおける失われた機能の回復を促進した、図3F。SIN017での治療は脳卒中の2日後に開始した。
【0119】
例4.脳卒中後の機能回復における非アルキンmGluR5 NAM、SIN010およびSIN015の効果
実験手順
動物は、例1および2と同様であった。
【0120】
SIN010[1−(3−クロロフェニル)−3−(3−メチル−5−オキソ−4H−イミダゾール−2−イル)尿素、fenobam]およびSIN015[3−フルオロ−5−(3−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール5−イル)ベンゾニトリル]はBeijing Honghui Meditech Co., Ltd,(北京、中華人民共和国)によって合成されたものである。全ての構造をH−NMRによって確認し、純度は>97%である。SIN10を20%の2−ヒドロキシシクロデキストリンに懸濁し、SIN015を0.5%のHPMCに懸濁した。安定した懸濁物を得るために、ビヒクルに懸濁した化合物を15分間超音波処理した。
【0121】
化合物の投与は例3と同様に行った。
【0122】
脳卒中の導入、神経機能の評価、動物の潅流、免疫染色および梗塞のサイズの評価は、例1と同様に行った。
【0123】
結果
毎日p.o.(10mg/kg、p.o.、n=12)で5日間(SIN010(1w)、n=8)、または12日間(SIN010(2w)、n=4、(Vh、n=4)与えられたSIN010(fenobam)は、ラットにおける脳卒中後の回復を促進する、図4A。治療は、脳卒中の2日後に開始した。機能の経時的な改善が見られ、それは12日間の治療後においてビヒクルと比較して顕著であった。同様の改善が脳卒中の2日後に開始されたSIN010で治療された脳卒中に罹患したマウスにおいて見られる(図4B)。加えて、脳卒中の2日後のマウスにおいて、豊かな飼育をSIN010による毎日の治療と組み合わせることは、Vh(n=5)、EE単独(n=7)またはSIN010(n=5)治療単独と比較して回復を更に改善する、図4B。(a)はVh対SIN010治療、(b)はSIN010処置+EE対Vh処置、(c)はSIN010治療+EE対SIN010単独におけるp<0.05を示す。この結果は、豊かな飼育と組み合わせてSIN007で治療したマウスで見られたものと同様であり、図2F、組み合わせ治療の追加の効果を強く示唆している。脳卒中の2日後に開始され、3mg/kg(n=4)の投与量で5日間与えられたSIN015、3−フルオロ−5−(3−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール5−イル)ベンゾニトリルは機能の回復を改善した、図4C
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
【手続補正書】
【提出日】2019年3月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟脳損傷の治療における使用のための代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)を含む、成熟脳損傷の治療における使用のための医薬組成物
【請求項2】
前記治療は成熟脳損傷を患う罹患体の脳機能の回復の改善をもたらす、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
前記NAMは、
【化1-1】
【化1-2】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される、
請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項4】
前記NAMは、
【化2】
、並びにその薬学的に許容され得る塩及び溶媒和物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記NAMは、
【化3】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される、
請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項6】
前記NAMは、
【化4】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物である、
請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項7】
前記成熟脳損傷は、脳卒中、頭部外傷、心肺停止および急性脳損傷からなる群から選択される疾病によって引き起こされる、請求項1〜5の何れか1項に記載の医薬組成物
【請求項8】
前記脳損傷は、認知障害、うつ病、疲労および感覚運動機能障害からなる群から選択される脳卒中後障害をもたらす脳卒中によって引き起こされる、請求項に記載の医薬組成物
【請求項9】
前記治療は、神経保護治療がもはや有効でなくなったら開始されるべきである、請求項1〜の何れか1項に記載の医薬組成物
【請求項10】
前記治療は、神経保護治療が完了した後に開始されるべきである、請求項に記載の医薬組成物
【請求項11】
前記治療は、最初の急性脳損傷が発生してから4時間後以降に開始されるべきである、請求項1〜の何れか1項に記載の医薬組成物
【請求項12】
前記治療は、経頭蓋磁気刺激、電気刺激および/または物理的および行動療法と組み合わせられる、請求項1〜11の何れか1項に記載の医薬組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0123
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0123】
結果
毎日p.o.(10mg/kg、p.o.、n=12)で5日間(SIN010(1w)、n=8)、または12日間(SIN010(2w)、n=4、(Vh、n=4)与えられたSIN010(fenobam)は、ラットにおける脳卒中後の回復を促進する、図4A。治療は、脳卒中の2日後に開始した。機能の経時的な改善が見られ、それは12日間の治療後においてビヒクルと比較して顕著であった。同様の改善が脳卒中の2日後に開始されたSIN010で治療された脳卒中に罹患したマウスにおいて見られる(図4B)。加えて、脳卒中の2日後のマウスにおいて、豊かな飼育をSIN010による毎日の治療と組み合わせることは、Vh(n=5)、EE単独(n=7)またはSIN010(n=5)治療単独と比較して回復を更に改善する、図4B。(a)はVh対SIN010治療、(b)はSIN010処置+EE対Vh処置、(c)はSIN010治療+EE対SIN010単独におけるp<0.05を示す。この結果は、豊かな飼育と組み合わせてSIN007で治療したマウスで見られたものと同様であり、図2F、組み合わせ治療の追加の効果を強く示唆している。脳卒中の2日後に開始され、3mg/kg(n=4)の投与量で5日間与えられたSIN015、3−フルオロ−5−(3−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール5−イル)ベンゾニトリルは機能の回復を改善した、図4C
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
成熟脳損傷の治療における使用のための代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)。
[2]
前記治療は成熟脳損傷を患う罹患体の脳機能の回復の改善をもたらす、[1]に記載の使用のための代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)。
[3]
前記NAMは、
【化14-1】
【化14-2】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される、
[1]または[2]に記載の使用のためのNAM。
[4]
前記NAMは、
【化15】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される、
[1]または[2]に記載の使用のためのNAM。
[5]
前記NAMは、
【化16】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物である、
[1]または[2]に記載の使用のためのNAM。
[6]
前記成熟脳損傷は、脳卒中、頭部外傷、心肺停止および急性脳損傷からなる群から選択される疾病によって引き起こされる、[1]〜[5]の何れか1つに記載の使用のためのNAM。
[7]
前記脳損傷は、認知障害、うつ病、疲労および感覚運動機能障害からなる群から選択される脳卒中後障害をもたらす脳卒中によって引き起こされる、[6]に記載の使用のためのNAM。
[8]
前記治療は、神経保護治療がもはや有効でなくなったら開始されるべきである、[1]〜[7]の何れか1つに記載の使用のためのNAM。
[9]
前記治療は、神経保護治療が完了した後に開始されるべきである、[8]に記載の使用のためのNAM。
[10]
前記治療は、最初の急性脳損傷が発生してから4時間後以降に開始されるべきである、[1]〜[8]の何れか1つに記載の使用のためのNAM。
[11]
前記治療は、経頭蓋磁気刺激、電気刺激および/または物理的および行動療法と組み合わせられる、[1]〜[10]の何れか1つに記載の使用のためのNAM。
[12]
成熟脳損傷を治療するかまたは緩和する方法であって、代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)のネガティブアロステリックモジュレーター(NAM)の治療有効量をそれを必要とする罹患体に投与することを含む方法。
[13]
前記治療は成熟脳損傷に苦しむ罹患体の脳機能の回復の改善をもたらす[12]に記載の方法。
[14]
前記NAMは、
【化17-1】
【化17-2】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される[12]または[13]に記載の方法。
[15]
前記NAMは、
【化18】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物からなる群から選択される[12]または[13]に記載の方法。
[16]
前記NAMは、
【化19】
およびその薬学的に許容され得る塩並びに溶媒和物である[12]または[13]に記載の方法。
[17]
前記成熟脳損傷は、脳卒中、頭部外傷、心肺停止および急性脳損傷からなる群から選択される疾病によって引き起こされる[12]〜[16]の何れか1つに記載の方法。
[18]
前記脳損傷は、認知障害、うつ病、疲労および感覚運動機能障害からなる群から選択される脳卒中後障害をもたらす脳卒中によって引き起こされる、[17]に記載の方法。
[19]
前記治療は、神経保護治療がもはや有効でなくなったら開始されるべきである、[12]〜[18]の何れか1つに記載の方法。
[20]
前記治療は、神経保護治療が完了した後に開始されるべきである、[19]に記載の方法。
[21]
前記治療は、最初の急性脳損傷が発生してから4時間後以降に開始されるべきである、[12]〜[20]の何れか1つに記載の方法。
[22]
前記治療は、経頭蓋磁気刺激、電気刺激および/または物理的および行動療法と組み合わせられる[12]〜[21]の何れか1つに記載の方法。
【国際調査報告】