(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-519188(P2019-519188A)
(43)【公表日】2019年7月4日
(54)【発明の名称】フィルタリング手段を含むDC電力を三相AC電力に変換するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20190614BHJP
【FI】
H02M7/48 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-566501(P2018-566501)
(86)(22)【出願日】2017年6月16日
(85)【翻訳文提出日】2018年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2017064809
(87)【国際公開番号】WO2017220447
(87)【国際公開日】20171228
(31)【優先権主張番号】1655813
(32)【優先日】2016年6月22日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(71)【出願人】
【識別番号】517357424
【氏名又は名称】マヴェル ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】MAVEL S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】フランチェセッティ、 マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ベットーニ、 ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】ディブ、 ヴィサム
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA02
5H770AA05
5H770BA01
5H770CA03
5H770CA04
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA03Y
5H770JA20X
5H770KA01X
5H770KA05X
(57)【要約】
本発明は、DC電力を三相電力に変換するシステムであって、3つの整流アーム(A、B、C)と、調整回路と、電気エネルギー回収モジュール(8)と、フィルタリング手段(7)とを有するシステムに関する。フィルタリング手段(7)は、キャパシタ(Cf)と、ダイオード(D)と直列に接続されたフィルタリングコイル(Lf)から形成された組立体とを有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの整流アーム(A、B、C)と、
AC出力相毎に1つのキャパシタ(Cs)及びコイル(Ls)を有する、電圧及び電流における変化のための調整回路と、
前記整流アーム(A、B、C)及び前記調整回路に接続された電気エネルギー回収モジュール(8)と、
を有するDC電力を三相電力に変換するシステムにおいて、
フィルタリングキャパシタ(Cf)と、
ダイオード(9)と直列に接続されたフィルタリングコイル(Lf)から形成された組立体と、
を含むフィルタリング手段を、前記変換システムの出力相毎に有することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記フィルタリングコイル(Lf)は、インダクタンスが0.5から50μHである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記フィルタリング手段の前記ダイオード(9)は、ショットキーダイオードである、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記フィルタリングコイル(Lf)及び前記ダイオード(9)から形成された前記フィルタリング手段の各組立体が、フィルタリングモジュール(10)に取り付けられた、請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
各フィルタリングモジュール(10)が、前記整流アーム(A、B、C)、前記調整回路及び前記電気エネルギー回収モジュール(8)を有するプリント基板に搭載された、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記フィルタリング手段が、前記変換システムの前記整流アーム(A、B、C)と前記電気エネルギー回収モジュール(8)との間に配置された、請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記電気エネルギー回収モジュール(8)は、少なくとも1つのインダクタンス(Lrec)と少なくとも1つのコミュテータ(6)とを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記電気エネルギー回収モジュールは、単一の接合点(P)に接続された3つのブランチを有し、
前記3つのブランチは、
コミュテータ(6)を有する第1のブランチ、
ダイオード(4)を有する第2のブランチ、及び
インダクタンス(Lrec)を有する第3のブランチを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記調整回路の前記コイル(Ls)が、前記変換システムのDC入力相と、複数の整流アームの接合部との間に配置された、請求項1から8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記調整回路の各キャパシタ(Cs)が、前記変換システムの1つのAC出力相に接続され、かつ前記調整回路の前記コイル、前記整流アーム(A、B、C)及びキャパシタ(Cov)の前記接合部に接続された、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記電気エネルギー回収モジュール(8)が、前記変換システムのDC入力相と、前記整流アーム(A、B、C)と前記調整回路の前記キャパシタとの前記接合部との間に配置された、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
各整流アーム(12)は、2つのコミュテータ(1)と2つのダイオード(D)とを含み、前記変換システムの前記出力相が、各整流アームの前記中点(E)に接続された、請求項1から11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記変換システムは双方向システムである、請求項1から12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
少なくとも1つの電気エネルギー蓄積手段と三相電機機械(M)とを有するモータシステムであって、
前記電気エネルギー蓄積手段からのDC電気エネルギーを前記電動機用の三相AC電気エネルギーに変換する、請求項1から13のいずれか1項に記載の変換システムを有することを特徴とするモータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを変換するコンバータの分野に関し、特に高速電動機及び/または可変速電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
スタティックコンバータは、電気信号を異なる特性を有する他の電気信号に変換するのを可能にするシステムである。例えば、コンバータは、交流/交流変換器またはAC/ACコンバータと呼ばれる、交流電圧を周波数及び/または振幅が異なる他の交流電圧に変換することが可能である。他の例によれば、コンバータは、交流/直流変換器またはAC/DCコンバータと呼ばれる、交流電圧を直流電圧に変換することが可能である。直流電圧を交流電圧に逆変換するのに使用される装置はDC/ACコンバータと呼ばれる。最後に、コンバータは、DC/DCコンバータと呼ばれる、直流電圧を定格が異なる直流電圧に変換することが可能である。コンバータは、可逆的であってもよく、非可逆的であってもよい。一般に、変換には複数の制御コミュテータ(スイッチ)が使用される。
【0003】
1つまたは2つ以上の電気エネルギー蓄積システム(例えば、電池)を用いて電動機、具体的には永久磁石電動機を動作させる場合、DC電気エネルギーを三相ACエネルギーに変換する必要がある。この変換は、DC/ACコンバータによって実現できる。この種のコンバータは、互いの位相変位が120°であり、振幅が必要とされるトルクに比例し(但し、回転速度にも比例する)、周波数がコンバータに接続された電動機の回転速度に比例する、3つの正弦波電圧を供給することが必要とされる。
【0004】
従来のDC/ACコンバータは3つの整流アームを備えている。各整流アームは、2つの制御コミュテータと、該制御コミュテータと並列に配置される2つのダイオードとを有する。アームは、必要な電流負荷に応じて、並列に配置された複数の「サブアーム」から構成されていてもよい。電動機の各相は各アームの中点に接続される。各アームは、三相信号を生成するために、カットアウト間隔(cut-out interval)を通してコミュテータを開閉させることで個別に制御される。
【0005】
図1は、この種の従来のDC/ACコンバータを示している。電気エネルギー蓄積手段のDC電圧はUdcで示されている。三相モータMは、電流Ia、Ib及びIcが供給される3つのコイルで概略的に示されている。該コンバータは、3つの整流アームA、B、Cを有し、各整流アームA、B、Cが電動機Mの1つの相に接続される。各整流アームは、2つのコミュテータ1と2つのダイオード2とを有する。整流アームA、B、Cは、電圧コンバータUdcの2つのDC入力相の間に並列に配置される。整流アームA、B、Cの出力相は、該整流アームの(2つのコミュテータ間の)中点に接続される。
【0006】
図2は、(
図1を参照して上述した)従来のDC/ACコンバータにおけるデューティ比が50%で一定であるスイッチのコマンド信号COMと、コミュテータの各端子の電圧Udc及び電流Icを示している。コマンド信号COMにおいて、矩形パルスの下部は開いたコミュテータに相当し、矩形パルスの上部は閉じたコミュテータに相当する。この種の整流方式は、ハードまたは「オン/オフ」(またはハードスイッチング)と呼ばれる。この構成のコンバータでは、電圧Udc及び電流Ioでオーバーシュートが発生することが認められる。電流Ioは、Icの常在値(permanent value)に相当し、電動機に送られる電流に相当する。
【0007】
したがって、この従来の構成のコンバータの主な欠点は以下の通りである。
・スイッチング損失:この構成は、高いスイッチング周波数のアプリケーションに相応しくない、それ故に、非常に高速に動作する電動機には相応しくない、大きなスイッチング損失を伴う。
・電流/電圧オーバーシュート:
図2で示したように、この方式はスイッチの転流の瞬間に電圧及び電流のオーバーシュートを伴う。そのため、この種の動作では、該コンバータの設計(インバータとも呼ばれる)において様々な構成要素の電圧定格及び電流定格にマージンを設ける必要がある。その場合、使用する構成要素の寸法が過度に大きくなる(例えば、DCバス電圧が300Vである場合、電圧及び電流のオーバーシュートを考慮して定格電圧が600VのIGBTコミュテータが使用される)。及び
・大きな電磁放射(EMC)が生じる。
【0008】
これら「ハードスイッチング」方式の欠点(損失、高速モータに対する不適合性)の考察に基づいて、「ソフトスイッチング」構成が開発されている。その結果として、コミュテータの電流及び電圧オーバーシュートを制限するために、上述した回路にコイル及びキャパシタが付加される。コイルは電流の変化di/dtを調整し(「ターンオン」)、キャパシタは電圧の変化dv/dtを調整する(「ターンオフ」)。さらに、回路を確実に動作させ、ゼロエネルギーバランスを確保するために、使用するエネルギー源の電圧と容量性回路との間の回路に抵抗器が付加される。この抵抗器は、この回路を確実に動作させ、容量性回路の端子の電圧のプルダウンを可能にする。この種のDC/ACコンバータの具体的な構成は、WO2011/016854号に記載されている。
【0009】
図3は、ソフトスイッチングのためのキャパシタCs、コイルLs、抵抗器R及びキャパシタCovを有する整流アーム(2つのコミュテータ1を含む)の簡略化された概略図を示している。この回路は、「Undeland snubber」の英語名で知られている。電圧Udcは、DC電気エネルギー蓄積手段の複数の端子における電圧に相当する。コイルLSは、1つのDC入力相Udcと整流アームAとの間に配置される。コイルLsと整流アームAとの接合部からブランチが形成され、このブランチは、2つのダイオードDを有し、抵抗器RとキャパシタCovの接合部まで配線される。抵抗器Rの他方の端部は、コンバータのDC入力相に接続されている。キャパシタCsの他方の端部は、整流アームAのAC出力相に接続されている。キャパシタCovの他方の端部は接地される。キャパシタCsは、コミュテータの複数の端子における電圧の変化の調整を可能にする。このキャパシタは、複数のスイッチのソフトスイッチングに関するエネルギーの一部(proportion)を蓄積する。このエネルギーの残りは、より高い定格Covを有するキャパシタに蓄積される。キャパシタに蓄積されたエネルギーは、抵抗器を介して蓄積システム(電池)へ戻される。コイルLsは、コミュテータの複数の端子における電流の変化の調整を可能にする。実際には、コイルLsで生成されたエネルギーの全てがキャパシタCsに蓄積されるわけではなく、Csよりも高い定格を有する第2のキャパシタCovが必要になる。抵抗器は、システムを確実に動作させ、電圧Vrecのプルダウンを可能にする。
【0010】
図4は、
図2と同様に、整流信号COM、「ソフト」スイッチングに関連するコミュテータの電圧Udc及び電流Icの変化を示している。コマンド信号COMにおいて、矩形パルスの下部は開いたコミュテータに相当し、矩形パルスの上部は閉じたコミュテータに相当する。この図では、電圧Udc及び電流Icのオーバーシュートが「ハード」スイッチングと比べて低減していることが認められる。
【0011】
ソフトスイッチングの利点は以下の通りである。
・スイッチング損失の低減:この構成のコンバータは、高いスイッチング周波数に相応しく、それ故に、電動機の高速運転に使用できる。
・コミュテータの電圧及び電流のオーバーシュートが制限され、構成要素の寸法を過度に大きくする必要がなくなる。
・切替え時のコミュテータの複数の端子における電圧及び電流の変化は、Ls及びCsをそれぞれ選択することで調整される。
【0012】
この構成のコンバータは、様々な電気構成要素の特定の配置を必要とするため、これらの構成要素の組立てに時間がかかり、かつ複雑になる。さらに、この構成のコンバータは、受動構成要素のゼロエネルギーバランスを実現し、電圧Vrecをプルダウンすることを目的とする抵抗器でエネルギーを消散させる必要があるため、エネルギーの損失が発生してコンバータの効率が低下するという重大な欠点を有する。
【0013】
さらに、コンバータの設計上の別の制約は、コンバータの実装面積であり、該実装面積は許容される範囲内になければならない。
【発明の概要】
【0014】
これらの欠点を解消するため、本発明は、DC電力を三相電力に変換するシステムであって、3つの整流アーム、調整回路、電気エネルギー回収モジュール及びフィルタリング手段を有するシステムに関する。フィルタリング手段は、キャパシタと、ダイオードと直列に接続されたフィルタリングコイルから形成された組立体とを有する。ダイオードとコイルを組み合わせることで、より低いインダクタンスを有し、より体積が小さいコイルを選択することが可能になる。さらに、調整回路によって、ソフトスイッチングが実行され、それにより、特にコミュテータの電圧及び電流のオーバーシュートと共に、スイッチング損失が低減する。さらに、電気エネルギー回収モジュールは、コンバータの効率の最適化を可能にする。
本発明によるシステム
本発明は、DC電力を三相電力に変換するシステムであって、3つの整流アームと、前記変換システムのAC出力相毎に1つのキャパシタ及びコイルを有する、電圧及び電流における変化のための調整回路と、前記整流アーム及び前記調整回路に接続された電気エネルギー回収モジュールとを有するシステムに関する。前記変換システムは、フィルタリングキャパシタと、ダイオードと直列に接続されたフィルタリングコイルから形成された組立体とを含むフィルタリング手段を、前記変換システムの出力相毎に有する。
【0015】
一実施態様によれば、前記フィルタリングコイルは、インダクタンスが0.5から50μHである。
【0016】
前記フィルタリング手段の前記ダイオードは、ショットキーダイオードであることが有利である。
【0017】
一実装例によれば、前記フィルタリングコイルと前記ダイオードから形成された前記フィルタリング手段の各組立体は、フィルタリングモジュールに取り付けられる。
【0018】
各フィルタリングモジュールは、前記整流アーム、前記調整回路及び前記電気エネルギー回収モジュールを有するプリント基板に搭載されることが好ましい。
【0019】
実施態様の一変形例によれば、前記フィルタリング手段は、前記変換システムの前記整流アームと前記電気エネルギー回収モジュールとの間に配置される。
【0020】
一特徴によれば、前記電気エネルギー回収モジュールは、少なくとも1つのインダクタンスと少なくとも1つのコミュテータとを含む。
【0021】
一構成によれば、前記電気エネルギー回収モジュールは、単一の接合点に接続された3つのブランチを有し、3つのブランチに、
コミュテータを有する第1のブランチと、
ダイオードを有する第2のブランチと、
インダクタンスを有する第3のブランチと、
を含む。
【0022】
前記調整回路の前記コイルは、前記変換システムのDC入力相と前記整流アームの接合部との間に配置されることが有利である。
【0023】
前記調整回路の各キャパシタは、前記変換システムの1つのAC出力相に接続され、かつ前記調整回路の前記コイル、前記整流アーム及びキャパシタの接合部に接続されることが好ましい。
【0024】
一変形例によれば、前記電気エネルギー回収モジュールは、前記変換システムのDC入力相と、前記整流アーム及び前記調整回路の前記キャパシタの接合部との間に配置される。
【0025】
一実施態様によれば、各整流アームは、2つのコミュテータと2つのダイオードとを含み、前記変換システムの出力相が各整流アームの中点に接続される。
【0026】
さらに、前記変換システムは双方向システムであってもよい。
【0027】
さらに、本発明は、少なくとも1つの電気エネルギー蓄積手段と三相電動機とを有するモータシステムに関する。このモータシステムは、前記電気エネルギー蓄積手段からのDC電気エネルギーを前記電動機用の三相AC電気エネルギーに変換する、上述した特徴のうちの1つの変換システムを有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明によるシステムの他の特徴並びに利点は、非限定的な例として与えられる後述する実施形態の説明を添付の図面と併せて読むことで明らかになるであろう。
【0029】
本発明によるシステムの他の特徴並びに利点は、非限定的な例として与えられる後述する実施形態の説明を添付の図面と併せて読むことで明らかになるであろう。
【
図1】従来技術によるハードスイッチングを行う、従来型のDC/ACコンバータを示す、説明済みの図である。
【
図2】
図1に示した構成のDC/ACコンバータの1つの相における整流信号、電圧及び電流を示す、説明済みの図である。
【
図3】ソフトスイッチングを行う、従来技術によるDC/ACコンバータを示す、説明済みの図である。
【
図4】
図3に示した構成のDC/ACコンバータの1つの相における整流信号、電圧及び電流を示す、説明済みの図である。
【
図5a】本発明の一実施態様によるコンバータ用の電気エネルギー回収モジュールの典型的な実施態様を示す図である。
【
図5b】
図5aに示した電気エネルギー回収モジュールの等価抵抗モデルを示す図である。
【
図6】本発明の一実施態様による変換システムの1つの相の電気回路を示す図である。
【
図7】本発明によるフィルタリングモジュールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、DC電気エネルギーを三相AC電気エネルギーに変換するDC/AC変換システム(コンバータ)に関する。本発明による変換システムは、双方向(可逆的)システムであることが有利である。そのため、本発明による変換システムを用いると、三相ACエネルギーをDC電気エネルギーに変換することができる。
【0031】
通常、本発明による変換システムは、3つの整流アームと、1つのDC入力相と、3つのAC出力相とを有する。3つの整流アームの構成は、従来技術によるAC/DCコンバータの整流アームの構成と同様であってもよく、例えば、この構成は
図1で示した構成であってもよい。そのため、各コンバータアームは、2つの制御コミュテータ(スイッチ)と2つのダイオードとを有していてもよい。該ダイオードは、コミュテータと並列に配置され、電流が単一方向へ流れるようにする。公知のように、コミュテータを制御することでAC電圧を生成できる。変換システムの出力相は、整流アームの中点、すなわち2つのコミュテータ間に接続される。
【0032】
本発明の一特徴によれば、コミュテータには、MOSFET型(英語“Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor”の頭字語)及び/またはIGBT型(英語“Insulated gate Bipolar Transistor”の頭字語)のコミュテータがなり得る。
【0033】
複数のコミュテータは、パルス幅変調法(英語では、“Pulse Width Modulation”に相当するPWMで表される)で制御されることが好ましい。この変調法の一般的な原理によれば、選び出された複数の時間間隔にわたる離散状態の連続によって、所定の時間間隔に関する任意の平均中間値を得ることができる。
【0034】
後述する実装形態の様々なモードは、それらの効果及び利点を組み合わせるために、組み合わされてもよい。
【0035】
本発明によれば、変換システムは、さらに電圧及び電流調整回路を有する。電圧及び電流調整回路は、ソフトスイッチングを可能にし、スイッチング損失の制限、並びにコミュテータの電圧オーバーシュート及び電流オーバーシュートの制限を可能にする。調整回路は、電流の変化を調整する1つのコイルと、電圧の変化を調整する、相毎に1つのキャパシタとを有する。
【0036】
本発明の一実施態様によれば、調整回路は、整流システムの1つのDC入力相と複数の整流アームとを接続する調整コイルを有する。さらに、整流回路は、AC出力相と、調整回路のコイルと複数の調整アームの接合部とを接続する、相毎に1つの調整キャパシタ(3つの整流アームにそれぞれ1つ、それ故に3つのキャパシタ)を含む。コイルは電流の変化di/dtを調整し(「ターンオン」)、キャパシタは電圧の変化dv/dtを調整する(「ターンオフ」)。典型的な一実施態様によれば、本発明によるコンバータシステムの調整回路の構成は、抵抗器Rを含まない
図3で示したソフトスイッチングの構成と一致してもよい。さらに、変換システムの3つのアームを作製するために、この回路を3度再現してもよい(整流アーム毎に1度)。加えて、エネルギー蓄積システムと電動機との接続は、
図1で示した従来のコンバータの接続と同様であってもよい。
【0037】
本発明によれば、変換システムは、さらに電気エネルギー回収モジュールを有する。したがって、本変換システムは、従来技術においてエネルギーを消散する抵抗器を有していない。逆に、抵抗器に代わる電気エネルギー回収モジュールは、ソフトスイッチング及び変換システムのDC相と接続された電気エネルギー蓄積手段(例えば、電池)に対するエネルギーの送信に関連して得られるエネルギーの回収によって、「ソフトスイッチング」と併用して得られる、または生成されるエネルギーの回収を可能にする。その結果、電気的損失が大きく低減する。電気エネルギー回収モジュールは、整流アームと調整回路とに接続されている。
【0038】
本発明によれば、変換システムは、さらにフィルタリング手段を有する。フィルタリング手段は、複数のAC出力相における電圧及び電流の平滑化を可能にする。周知のように、フィルタリング手段は、コンバータの出力相毎にフィルタリングコイルとフィルタリングキャパシタとを有する。さらに、フィルタリング手段は、フィルタリングコイルと直列に接続されたダイオードを有する。この構成では、フィルタリング手段のコイルのインダクタンスを低減させることが可能であり、変換システムの実装面積を低減する効果を有する。実際のところ、ダイオードがない場合、最適なフィルタリングを確実に実現するには、10cm×5cm程度の実装面積になり得る、定格が数百マイクロヘンリーのフィルタリングコイルを使用する必要があり、(本発明による)ダイオードを取り付けた場合、フィルタリングコイルを0.5マイクロヘンリーから50マイクロヘンリーの定格にすることが可能であり、これは実装面積が1cm×1cm程度であることを示している。コイルのインダクタンスを低減させることのさらなる効果は、発熱が少なくなることであり、それにより変換システムの冷却の簡易化が可能になる。
【0039】
本発明の実行の一形態によれば、各フィルタリング手段は、変換システムの整流アームと電気エネルギー回収モジュールとの間に配置される。
【0040】
フィルタリング手段におけるフィルタリングコイルと直列に配置されるダイオードは、(非常に低い直流しきい値電圧及び非常に短いスイッチング時間を有するダイオードである)ショットキー型のダイオードであることが好ましい。該ダイオードは、整流アームから電気エネルギー回収モジュールへ電流が流れるように配置される。該ダイオードは、電気エネルギー回収モジュールの複数の端子における電圧スパイクの低減または除去を可能にする。該ダイオードは、電流フローの方向において、フィルタリングコイルの上流側に配置されることが好ましい。
【0041】
本発明の実行の一形態によれば、フィルタリング手段のコイルとダイオードで形成される組合せは、独立したフィルタリングモジュールに取り付けられる。用語「モジュール」は、所定の機能を実行するために全ての電子構成要素を組み合わせたユニット形式の独立した要素を示している。モジュール形式のこの実施態様は、簡単な組立てを可能にすると共に、変換システムのモジュール方式を確実にする。フィルタリングモジュールは、複数の整流アーム、調整回路及び電気エネルギー回収モジュールを有するプリント基板に搭載されることが好ましい。複数の整流アームは、電力モジュールと呼ばれるモジュール形式で作製することが有利である。そのため、変換システムは、フィルタリングモジュール(出力相毎に1つ)、電力モジュール(出力相毎に少なくとも1つ)及び電気エネルギー回収モジュールをプリント基板上で組み立てることで作製されてもよい。したがって、複数のユニットを個別にかつ標準的な方法で製造することが可能であり、変換システムはプリント基板上で組み立てられた様々なモジュール(ユニット)で構成される。変換システムの全ての電子構成要素は、単一の要素上で組み立てる必要はない。さらに、モジュール形式のこの実施態様は、メンテナンスを容易にして、欠陥のあるモジュールのみを交換することが可能であり、コンバータ全体を交換する必要が無くなる。この構成のさらなる利点は、標準モジュールを使用することが容易であり、所望の用途に応じて標準モジュールを選択できることである。
【0042】
可能性がある一構成例によれば、電気エネルギー回収モジュールは、少なくとも1つのインダクタンスと、少なくとも1つのダイオードと、少なくとも1つのキャパシタと、少なくとも1つのコミュテータとを有することができる。コミュテータは、エネルギーを回収して電気エネルギー蓄積手段へ送るのを可能とするために制御される。
【0043】
本発明の実施態様の一変形例によれば、電気エネルギー回収モジュールは、単一の接合点に接続された3つのブランチを有することが可能であり、これらのブランチには、
コミュテータを有する第1のブランチ、
ダイオードを有する第2のブランチ、及び
インダクタンスを有する第3のブランチが含まれる。
【0044】
そのため、変換システムのプリント基板は、高いスイッチング周波数に適合し、調整回路の動作のために付加される受動回路に関連する損失を最小限に抑制する、ソフトスイッチングコンバータの構成を用いるための特定の方法で修正できる。
【0045】
図5aは、この種の電気エネルギー回収モジュールを概略的にかつ非限定的に表している。電気エネルギー回収モジュールは、単一の接合点Pに接続される3つのブランチを有しており、これらのブランチには、
コミュテータ6を有する第1のブランチ、
(ダイオード自体の各端子における電圧の関数として電流iLが流れる)ダイオード4を有する第2のブランチ、及び
インダクタンスLrecを有する第3のブランチが含まれる。
【0046】
図5aにおいて、キャパシタ5は、電気エネルギー蓄積手段(電池)のキャパシタンスを表し、回収モジュールの構成要素ではない。キャパシタ5は、インダクタンスLrecと接地との間に配置されている。
【0047】
さらに、キャパシタ3は、キャパシタンスCrecを表し、回収モジュールの構成要素ではない。キャパシタ3は、コミュテータと接地との間に配置されている。
【0048】
ダイオード4は、3つのブランチの接合点と接地との間に配置されている。
【0049】
コミュテータ(そのデューティ比)を制御することで、VrecとUdcとの間を流れる電流iL(電池へ送られる電流)を制御することが可能である。
【0050】
したがって、回収モジュールと電気エネルギー蓄積手段のキャパシタで形成される組合せを考慮すると、結果として生じる組合せは、点Pと接地との間に配置された3つの並列なブランチから形成されており、これらのブランチには、
コミュテータ6とキャパシタ3とを有する第1のブランチ、
ダイオード4を有する第2のブランチ、及び
インダクタンスLrecと電気エネルギー蓄積手段のキャパシタンス5とを有する第3のブランチが含まれる。
【0051】
コミュテータが閉じると、ダイオードが遮断モードとなり、コイルLrecを流れる電流iL(
図5aに表されている)は
【0054】
コミュテータが開くと、ダイオードが導通モードになり、コイルLrecを流れる電流iL(
図5aに表されている)は
【0057】
したがって、コミュテータの開閉時間を制御することで、電流iLの平均値を制御することが可能であり、抵抗回路と同等の機能を実現できる。
【0058】
図5bは、
図5aで示した電気エネルギー回収モジュールの等価電気回路図を非限定的に表している。電気エネルギー回収モジュールは、電流iLが流れるが、電気エネルギーを消散しない等価抵抗Reqと等価である。
【0059】
この実施態様の変形例では、電気エネルギー回収回路内の平均電流
【0063】
ここで、
Tはコミュテータのスイッチング周期、
Vrecは回収電圧、
UdcはDC入力相電圧、
Lrecは回収モジュールのインダクタンス、
Reqは等価抵抗、
Fswはスイッチのスイッチング周波数を示している。
【0064】
この種のエネルギー回収モジュールは、調整回路を備える変換システム内に配置され、電気エネルギー回収モジュールは、変換システムの1つのDC入力相と、調整回路の整流アームとキャパシタの接合部との間に配置されることが好ましい。
図5aで示した実施態様では、電気エネルギー回収モジュールを、
変換システムの(電圧Udcにおける)DC入力相に接続された回収モジュールのポイントが、インダクタンスLrecと第2のキャパシタ5(このキャパシタは電池のキャパシタンスである)との間の回収モジュールの第3のブランチのポイントに対応し、
(電圧Vrecにおける)整流アームと調整回路のキャパシタの接合部に接続された回収モジュールのポイントが、コミュテータ6と第1のキャパシタ3との間の回収モジュールの第1のブランチのポイントに対応するように接続できる。
【0065】
図6は、(フィルタリングコイルと直列に接続されたダイオードを含む)本発明の実施態様の一形態による変換システムの電気回路を概略的にかつ非限定的に示している。この図の理解を容易にするため、後段は、変換システムの1つの三相出力に関する単一の整流アームを備えた回路を示しており、この回路が他の2つの相に関しても再現される。この変換システムは、
接地に対して電圧Udcが供給されるDC入力相と、
第1の端部がDC入力相と接続された調整コイルLsと、
一端が調整コイルLsの第2の端部に接続され、他端が接地された、1つのブランチの直列に接続された2つのコミュテータ1、調整コイルLsの第2の端部と2つのコミュテータ1を備える1つのブランチとの接合点に接続された、直列に接続された2つのダイオードD、並びに2つのコミュテータ1の中点に位置し、電流IoのAC出力Eを有する、調整コイルLsの第2の端部と接続された整流アーム12と、
一方の端部が整流アーム12の2つのダイオードDの接合点と接続され、他方の端部が整流アーム12の出力Eに接続された調整キャパシタCsと、
電気エネルギーの一部の蓄積を可能にする、2つのダイオードDを有する、整流アーム12のブランチの(調整コイルLsに接続されていない)端部と接地との間に配置されたキャパシタCovと、
フィルタリング機能を実行するフィルタリングコイルLf及び該フィルタリングコイルLfと直列に接続されたダイオード9から構成され、2つのダイオードDを保持する整流アーム12のブランチの端部とフィルタリングコイルLfの端部の接合点Jとの間に接続されたユニット、並びに該接合点Jと接地との間に接続されたフィルタリングキャパシタCfを有する、キャパシタCovと並列に配置された、2つのダイオードDを有する整流アーム12のブランチの端部と接地との間に接続されたフィルタリング手段7と、
コミュテータ6を有する、端部がフィルタリング手段7の接合点Jと接続された第1のブランチ、ダイオード4を有する、端部が接地された第2のブランチ、並びにインダクタンスLrecを有する、端部が変換システムのDC入力相と接続された第3のブランチを含む、
図5aで示した電気エネルギー回収モジュールと同一であり、接合点Pに接続された3つのブランチを有する電気エネルギー回収モジュール8と、
Crecで示される、電気エネルギー回収モジュール8の第3のブランチの端部と接地との間に接続された(すなわち、コイルLrecと接続された)キャパシタ5と、
を有する。
【0066】
図6で示した実施態様の形態に関して、限定されるものではないが、一例として、以下の定格を有する構成要素を用いることができる。
【0067】
Ls〜=300μH
Cs〜=6.8nF
Cov〜=2820nF(6*470nF:6つの並列接続キャパシタから形成される)
Vrec〜=1.15Vbus
Lrec=21μH
Crec=27.2nF(6.8nF×4:4つの並列接続キャパシタから形成される)
Lf=2.2μH
Cf=10μF+470nF=10.47μF、及び
コミュテータの種類:IGBT。
【0068】
図7は、本発明の一実施態様によるフィルタリングモジュールを概略的かつ非限定的に示している。フィルタリングモジュール10は、コイルLfと直列に接続されたダイオード9を有する。フィルタリングモジュールは、ダイオード9及びコイルLfの端部において、コンバータの他の要素と電気的に接続するための電気的接続手段12を有する。さらに、フィルタリングモジュールは、フィルタリングモジュール自体をプリント基板に取り付けるためのオリフィス11を有する。取付けは、ねじ止め、スナップ嵌め(クリップオンアタッチメント)、はんだ付け、または任意の同様の手段によって実現できる。
【0069】
本発明の実施態様の一変形例によれば、変換システムは、2つの相における電流を測定する少なくとも2つの電流プローブを有することができる。
【0070】
本発明の実施態様の一変形例によれば、変換システムは、相間の合成電圧(compound voltage)を測定する少なくとも2つの絶縁された電圧プローブを有することができる。
【0071】
これらの電流センサ及び電圧センサは、複数の整流アームの制御に貢献できる。
【0072】
本発明による変換システムは、全ての種類の用途において、具体的には、非常に高速に回転し、高いインバータ(コンバータ)出力を有する電動機に関して、該電動機の動作を可能にする。
【0073】
本発明によるコンバータは、具体的には車両、特に地上車、航空用または海軍用ビークルにおけるオンボード用途向けにデザインできる。
【0074】
本発明による変換システムは、タービン、マイクロタービンまたは風力タービンを含む電気エネルギーの生成に関するオフボード用途に使用することもできる。
【0075】
本発明は、さらに電気エネルギーを蓄積する少なくとも1つの手段、例えば電池と、1つの三相電動機、例えば永久磁石電動機とを有するモータシステムに関する。モータシステムは、電気エネルギー蓄積手段からのDC電気エネルギーを電動機用の三相AC電気エネルギーに変換する、及びその逆の変換を行う可能性がある、前述した実施態様のうちの1つ(またはこれらの実施態様の組合せのうちの1つ)による変換システムを有する。そのため、変換システムによって電動機を動作させることが可能であり、同時に電気的損失を抑制することができる。さらに、変換システムが双方向(可逆的)システムである場合、電動機が回転することで生成される電気エネルギーを(例えば、電池に)蓄積することも可能である。
【国際調査報告】