(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-519497(P2019-519497A)
(43)【公表日】2019年7月11日
(54)【発明の名称】SPR741のヒト薬物動態及び有効用量
(51)【国際特許分類】
A61K 38/12 20060101AFI20190621BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20190621BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20190621BHJP
A61K 31/7052 20060101ALI20190621BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20190621BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20190621BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20190621BHJP
A61K 31/46 20060101ALI20190621BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20190621BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20190621BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20190621BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20190621BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20190621BHJP
【FI】
A61K38/12
A61P43/00 121
A61P31/04
A61K31/7052
A61K31/7048
A61K31/575
A61K31/351
A61K31/46
A61K31/496
A61K31/706
A61K31/407
A61K9/08
A61K9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-559730(P2018-559730)
(86)(22)【出願日】2017年5月15日
(85)【翻訳文提出日】2018年11月7日
(86)【国際出願番号】US2017032669
(87)【国際公開番号】WO2017197390
(87)【国際公開日】20171116
(31)【優先権主張番号】62/336,208
(32)【優先日】2016年5月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/347,174
(32)【優先日】2016年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】518395692
【氏名又は名称】スペロ ポテンシエーター インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPERO POTENTIATOR, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】コールマン、スコット
(72)【発明者】
【氏名】シャストリー、プラサップ エヌ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
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(57)【要約】
本発明は、SPR741以外の治療有効量の抗生物質と組み合わせて、治療有効用量の、ポリミキシン類似体であるSPR741を投与することを含む、ヒトの患者の細菌感染症を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、抗生物質は、レタパムリン、テリスロマイシン又はアズトレオナムである。本発明は、治療有効量の第二抗生物質と同時投与するためのSPR741の有効量として、100mg〜500mgのSPR741を1日2回〜4回投与することを確立する。本発明はまた、40mg/kg患者体重/日以下、好ましくは5mg/kg患者体重/日以下のSPR741を、治療有効量の第二抗生物質と組み合わせて投与することによって細菌感染症を治療する方法及びSPR741と第二抗生物質を含む医薬組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の抗生物質と組み合わせた、100mg〜500mgのSPR741を、1日2回〜4回投与することを含む、ヒトの患者の細菌感染症を治療する方法。
【請求項2】
200mg〜400mgのSPR741を、1日3回投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細菌感染症がグラム陰性菌感染症である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記細菌感染症が大腸菌(E. coli)感染症、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)感染症、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)感染症、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染症、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)感染症又はペスト菌(Yersinia pestis)感染症である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記細菌感染症が大腸菌感染症、肺炎桿菌感染症又はアシネトバクター・バウマニ感染症である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記抗生物質がアジスロマイシン、クラリスロマイシン、フシジン酸、ムピロチン、レタパムリン、リファンピシン、テリスロマイシン、メロペネム、ムピロチン、アジスロマイシン又はバンコマイシンである、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
100mg〜500mgのSPR741、及び担体を含む、医薬剤形。
【請求項8】
200mg〜400mgのSPR741を含む、請求項7に記載の剤形。
【請求項9】
前記剤形が、注射用又は静脈内注入用の製剤である、請求項7又は8に記載の剤形。
【請求項10】
前記剤形が、経口剤形である、請求項7又は8に記載の剤形。
【請求項11】
さらに抗生物質を含む、請求項10に記載の経口剤形。
【請求項12】
前記抗生物質がアジスロマイシン、クラリスロマイシン、フシジン酸、ムピロチン、レタパムリン、リファンピシン、テリスロマイシン、メロペネム、ムピロチン、アジスロマイシン又はバンコマイシンである、請求項11に記載の経口剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願への相互参照
本出願は、2016年5月13日に出願された米国特許出願第62/336,208号及び2016年6月8日に出願された米国特許出願第62/347,174号に対する優先権を主張するものであり、両出願の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
グラム陰性菌は、すべての敗血症性感染症のうちの40%以上の原因となり、かつ、グラム陰性菌の多くは、複数の抗生物質に対する耐性がある。グラム陰性菌は、外膜の構成成分としてリポ多糖類を保有しており、最終的な標的が位置する細胞内のより深部への多くの抗菌剤の拡散を阻害する。グラム陽性菌に対して有効な多くの抗菌剤は、グラム陰性菌に対して活性がない。
【0003】
ポリミキシンは、パエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)及び関連する微生物の菌株によって産生される、密接に関連する抗生物質の一群である。これらのカチオン性薬物は、約1000の分子量を有する比較的単純なペプチドである。ポリミキシン、例えばポリミキシンBは、デカペプチド抗生物質であり、すなわち、それらは10個のアミノアシル残基からなる。それらは殺菌性であり、かつ、グラム陰性菌、例えば大腸菌(Escherichia coli)及び腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の他種、シュードモナス(Pseudomonas)属、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)などに対して特に有効である。しかしながら、ポリミキシンは、腎毒性および神経毒性を含む重篤な副作用を有する。したがって、これらの薬物は、高い全身毒性のために治療剤としての用途が限られている。
【0004】
ポリミキシンは、1950年代に発見されて以来、これらの細菌によって引き起こされた重篤な感染の治療に広く使用されていたが、より新しく、より忍容性の高い抗生物質が開発された1970年代には、毒性のために、ほとんど使用されなくなった。グラム陰性菌の多剤耐性株が近年になって出現したことにより、毒性の低い抗生物質の多くがグラム陰性菌に対する有効性を失っている。ポリミキシンは、これらの新興のグラム陰性菌の多剤耐性株に対してその有効性を維持している。したがって、ポリミキシンは治療用の備蓄が想起されている、その毒性のために最終的な治療法であると考えられている。しかし、それらの全身性(すなわち、非局所性)の使用は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及びA.バウマニの多剤耐性株並びにカルバペネム耐性の腸内細菌科によって引き起こされる、生命を脅かす感染症の治療に、大きく制限されている。
【0005】
SPR741(PubChem ID:53323381)はAcetyl−Thr−dSer−cy[Dab−Dab−dPhe−Leu−Dab−Dab−Thr](式中、Dabはα,γ−ジアミノ−n−ブチリル残基であり、cyは環式である)という構造を有し、また、下記に示す化学構造である。
【化1】
【0006】
SPR741は、ムピロシン、アジスロマイシン、フシジン酸及びバンコマイシンに対する特定の細菌の感受性を増加させることが以前に示されている。SPR741は、グラム陰性菌の外膜を透過するため、結果として、SPR741と組み合わせて投与された場合、そうでない場合に排除されるであろう抗生物質に、標的へのアクセスを許可する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、治療有効量の抗生物質と組み合わせた、100mg〜500mgのSPR741を、1日2回〜4回投与することを含む、ヒトの患者の細菌感染症を治療する方法を含む。
【0008】
本発明は、100mg〜500mgのSPR741、及び担体を含む、医薬剤形を含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
SPR741の有効なヒト用量の決定は、3種のアロメトリックスケーリング分析を用いて行った。予想されるヒトPKプロファイル及びSPR741の有効な用量は、潜在的なパートナー抗生物質と一致する。医薬組成物/組み合わせの治療有効量は、細菌感染症に関連する罹患率及び死亡率を減少させる及び/又は治癒をもたらすなどの治療効果を提供するために、被験体に投与する場合に有効な量である。特定の状況において、微生物感染症に罹患している被験体は、感染の症状を示さない可能性がある。したがって、化合物の治療有効量はまた、被験体の血液、血清、他の体液又は組織中の、微生物の検出可能なレベルを有意に低下させるのに十分な量である。本発明はまた、特定の実施形態において、予防的処置及び治療的処置において本発明の化合物を使用することを含む。予防的または防止的処置の文脈において、「治療有効量」は、細菌感染症の発症率又はそれに関連する罹患率及び死亡率を、有意に減少させるのに十分な量である。例えば、被験体が嚢胞性線維症又は人工呼吸器患者のような、細菌感染症の危険性が高まっていることが分かっている場合には、予防的処置を施してもよい。有意な減少とは、スチューデントT検定(p<0.05)のような、統計的有意性の標準的パラメトリック検定において、統計的に有意である検出可能な負の変化である。
【0010】
「医薬組成物」は、少なくとも1つの活性剤、例えばSPR741、及び少なくとも1つの他の物質、例えば抗生物質、又は担体を含む組成物である。医薬組成物は、ヒト又は非ヒトの薬物のための米国FDAのGMP(good manufacturing practice)基準を満たす。本発明の医薬組成物/組み合わせに適用される用語「担体」は、活性化合物と共に提供される希釈剤、添加剤又は賦形剤を指す。
【0011】
本発明の医薬組成物は、眼、口、鼻、経皮、閉塞あり又はなしの局所、静脈内(ボーラス及び注入の両方)、吸入及び注射(腹腔内、皮下、筋肉内又は非経口)の製剤を含む。組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒、リポソーム、滅菌眼用溶液、非経口溶液又は懸濁液、計量エアロゾル又は液体スプレー、ドロップ、アンプル、自動注射装置又は坐薬のような投与単位であり得るものであり、眼に、経口的に、鼻腔内に、舌下に、非経口的に、又は直腸に、又は吸入もしくは吹送によって投与し得るものである。
【0012】
本発明の組成物を含有する剤形は、選択された投与経路による、治療効果を提供するのに必要な、有効量の活性剤を含有する。組成物は、本発明の化合物又はその塩形態を約5000mg〜約0.5mg(好ましくは約1000mg〜約0.5mg)含み、選択された投与様式に適した任意の形態に構成することができる。剤形は、即時放出、又は遅延放出もしくは持続放出を含む制御放出のために調剤され得る。医薬組成物は、SPR741及び少なくとも1つの直接作用抗生物質(生体内で病原菌を殺すのに有効な化合物)、例えばレタパムリン、テリスロマイシン、アズトレオナムを含む。
【0013】
SPR741は、標準的な手順を用いたhERGアッセイにおいて、300μg/mLの濃度までhERG媒介性カリウム電流の阻害について評価されている。SPR741は心肺機能及び一般的な毒性について、サルの心肺安全性薬理試験での死亡率、臨床観察、体重、体温、血圧(収縮期、拡張期及び平均動脈)、心拍数、心電図(QRS持続時間並びにRR、PR及びQT間隔)及び呼吸機能(呼吸数、一回換気量及び分時拍出量)に基づいて評価した。SPR741はまた、中枢神経系(CNS)効果について、サルにおけるGLP14日間の反復投与毒性試験の一環として、環境刺激に対する反応、不随意的又は定型的行動、歩行、腕渡り、姿勢、把持、活動レベル、バランス、共役運動、位置及び瞳孔反応に基づいて評価されている。
【0014】
hERGの研究において、SPR741の灌流は、300μg/mLまでの濃度での平均hERG媒介性カリウム電流に意味のある変化をもたらさなかった。SPR741の効果の欠如のため、IC
50を計算することができなかった。心肺研究では、SPR741に関連する、臨床徴候、体重の変化、体温の変化、収縮期、拡張期もしくは平均動脈の血圧に示される変化、心拍数で示される変化、RR間隔、PR間隔、補正されていないQT間隔、QRS持続時間もしくはQTcに示される変化、又は呼吸数、一回換気量もしくは分時拍出量に示される変化のいずれも認められなかった。CNS試験では、いずれの神経学的評価においてもSPR741の変化は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】100、200、300、400及び800mgでの、SPR741の1回の60分間静脈内注入後の、ヒトにおける模擬濃度対時間プロファイル。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、治療上有効量の抗生物質と組み合わせた、100mg〜500mgのSPR741を、1日2回〜4回投与することを含む、ヒトの患者の細菌感染症を治療する方法を含む。
【0018】
(1)200mg〜400mgのSPR741を、1日3回投与する。
【0019】
(2)前記細菌感染症がグラム陰性菌感染症である。
【0020】
(3)前記細菌感染症が大腸菌(E. coli)感染症、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)感染症、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)感染症、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染症、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)感染症又はペスト菌(Yersinia pestis)感染症である。
【0021】
(4)前記細菌感染症がマイコバクテリウム属の、大腸菌感染症、肺炎桿菌感染症又はアシネトバクター・バウマニ感染症である。
【0022】
(5)前記抗生物質がアジスロマイシン、クラリスロマイシン、フシジン酸、ムピロチン、レタパムリン、リファンピシン、テリスロマイシン、メロペネム、ムピロチン、アジスロマイシン又はバンコマイシンである。
【0023】
本発明は、100mg〜500mg又は200mg〜400mgのSPR741、及び担体を含む、医薬剤形を含む。
【0024】
(6)40mg/kg患者体重/日以下、30mg/kg患者体重/日以下、20mg/kg患者体重/日以下、10mg/kg患者体重/日以下又は5mg/kg患者体重/日以下のSPR741を、治療有効量の第二抗生物質と組み合わせて投与することを含む、ヒトの患者の細菌感染症を治療する方法。
【0025】
(7)態様(6)の方法であって、40mg/kg患者体重/日、30mg/kg患者体重/日、20mg/kg患者体重/日、10mg/kg患者体重/日又は5mg/kg患者体重/日のSPR741を、1日2回〜4回、又は1日3回投与する。
【0026】
(8)態様(6)又は(7)の方法であって、前記細菌感染症がグラム陰性菌感染症である。
【0027】
(9)態様(6)又は(7)の方法であって、前記細菌感染症が大腸菌感染症、肺炎桿菌感染症、アシネトバクター・バウマニ感染症、緑膿菌感染症、淋菌感染症又はペスト菌感染症である。
【0028】
(10)態様(6)から(9)のいずれかの方法であって、前記第二抗生物質がアジスロマイシン、クラリスロマイシン、フシジン酸、ムピロチン、レタパムリン、リファンピシン、テリスロマイシン、メロペネム、ムピロチン、アジスロマイシン又はバンコマイシンである。
【0029】
(11)態様(6)から(10)のいずれかの方法であって、SPR741が注射、経口又は静脈内に投与される。
【0030】
特定の実施形態では、本発明は以下の医薬組成物を含む。
【0031】
(1)前記剤形が、注射用又は静脈内注入用の製剤である。
【0033】
(3)前記経口剤形が、さらに抗生物質を含む。
【0034】
(4)前記抗生物質がアジスロマイシン、クラリスロマイシン、フシジン酸、ムピロチン、レタパムリン、リファンピシン、テリスロマイシン、メロペネム、ムピロチン、アジスロマイシン又はバンコマイシンである。
【実施例】
【0035】
以下の略語を実施例で使用する:
AUC 曲線下面積
CL クリアランス
C
max 最高血中濃度
h 時間
HED ヒト等価用量
PK 薬物動態
T
1/2 終末相半減期
V
d 分布容積
W 体重
NOAEL 無毒性量
【0036】
実施例1.アロメトリックスケーリングによるSPR741のヒトPKパラメータの予測
SPR741のヒト薬物動態(PK)パラメータは、固定及び浮動指数のアロメトリックスケーリング法の双方を用いて仮定した。マウス、ラット及びサル試験からのSPR741のPKデータを1−コンパートメントモデルに適合させ、そして同じモデルをヒトシミュレーションに使用した。PK分析は、Phoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)バージョン6.3(ファーサイト・コーポレーション[マウンテンビュー、カリフォルニア州])を用いて行った。前臨床試験からPKパラメータを導くために、SPR741の平均血漿濃度を使用した。
動物実験からの、及びヒトシミュレーションのためのPKパラメータを導出するために、線形排出PKを仮定した。アロメトリックスケーリングの目的を果たすために、標準種の体重を仮定した。スケーリングのために、マウス、ラット、サル及びヒトの体重をそれぞれ0.02、0.25、5及び70kgと仮定した。雄動物のみからのPKデータは、スケーリングに利用可能であった。
【0037】
1−コンパートメントモデルは、マウス、ラット及びサルのPK試験からの平均SPR741 PKプロファイルに適合した。MixRatio(加法及び乗法)加重はすべてのPKモデリングに適用した。ヒト等価用量(HED)を計算し、かつ、健康な被験体における、1回1時間の静脈内注入投与後のSPR741濃度をシミュレートするために、広範囲の推定値をもたらした、SPR741についての2組のスケーリングされたヒトPKパラメータを使用した。
【0038】
アロメトリックスケーリングは、以下の式を使用して固定(1)及び浮動(2)指数のスケーリング法の双方を使用して実行した。
【数1】
【数2】
式(1)において、CLはクリアランスであり、Wは体重である。指数は、クリアランスパラメータについては0.75に、分布パラメータの体積については1に固定した。
【0039】
浮動指数アロメトリック法(2)では、体重に対する(マウス、ラット及びサル由来の)PKパラメータについて線形回帰を行った。勾配a及び切片bを用いて、クリアランスなどのPKパラメータを算出した。計算には標準体重を用い、マウスは0.02kg、ラットは0.25kg、サルは5kg、そしてヒトは70kgとした。
【0040】
種々のアロメトリックアプローチからのSPR741のヒトクリアランス及び半減期の推定値は、それぞれ51〜103mL/h/kg及び2.2〜2.4時間の範囲であった。SPR741のマウスにおける有効性試験は、2〜60μg*h/mLの範囲のAUCで薬理学的活性を実証した。スケーリングされたクリアランス及びマウス研究で有効性を実証したAUCを用いて予測される、SPR741のヒト有効用量は、1日3回投与される、約100〜400mgの範囲である。ヒトPKシミュレーションは、100、200、400及び800mgのSPR741の1回の静脈内注入投与後に対してそれぞれ、AUCが14〜28、28〜56、55〜112及び110〜225μg*h/mLの範囲で実施した。固定指数及び浮動指数アロメトリックアプローチを用いて推定した薬物動態パラメータを表1に示す。すべてのモデルで70kgのヒト重量を使用した。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例2.薬理学的なヒト等価用量(HED)の予測
HEDは、60μg*h/mLのAUC値における、SPR741及びリファンピンを用いたマウス大腿試験からの有効性データに基づくものであった。薬理学的HEDは、以下の方程式を使用して計算した。
【数3】
用量=薬理学的HED、Cl=アロメトリックスケーリングから得られた推定ヒトクリアランス、AUC=60μg*h/mL。
【0043】
固定及び浮動のアロメトリックスケーリングモデルを用いて得られた、予測されるヒト等価用量を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
実施例3.ヒトPKシミュレーション
アロメトリックスケーリングから得られた低クリアランス推定値及び高クリアランス推定値を用いて、単回投与のシミュレーションを行った。動物データに適合させるために使用した1−コンパートメントモデルを、1回の静脈内注入投与後のヒトシミュレーションに使用した(表3)。1日目のデータはラットでは利用できなかった。わずか2〜3の測定可能な時点をマウスPKデータに用いた。
【0046】
【表3】
【0047】
非コンパートメント分析を、100、200、400及び800mg/kgの用量における、推定ヒトPKパラメータを得るためのシミュレーションからの濃縮時間値を用いて行った。表4は、100、200、400及び800mg/kgでのSPR741の60分間の1回の静脈内注入から得られる、ヒトにおける予測される臨床的AUC及びC
maxを示す。このデータは、
図1にグラフ形式でも示している。
【0048】
【表4】
【0049】
100、200、400及び800mg/kgでのSPR741の単回静脈内注入投与後の、ヒトの模擬SPR741濃度対時間のデータは、2回のシミュレーションを、表5及び6に示す。時間点は、静脈内注入の開始に対して与えられる。
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】
実施例7.SPRAGUE−DAWLEYラットにおける、SPR741のGLP14日反復投与試験
SPR741を、ラットにおける潜在的毒性について、5、15及び30mg/kg/日の用量レベルで、14日間連続して1日2回、12時間間隔で1時間注入して評価した。試験の生存期間中に評価したパラメータには、毎週の体重、臨床観察、生存、摂餌量、眼科学、臨床病理学、並びに尿及び血漿中の毒性動態を含んでいた。剖検では、肉眼観察を記録し、臓器重量を測定し、かつ、特定の組織を採取した。組織病理学的評価を、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した組織切片について行った。
【0053】
生理食塩水中のSPR741を、5、15又は30mg/kg/日で、約12時間間隔で1日2回、漸増用量で最初の3日間投与し、続いて留置カテーテルによる1時間の静脈内注入によって標的用量レベルで14日間投与した。漸増段階の使用は、ラットにおいて広範囲のポリミキシンによって一般的に見られる急性ヒスタミン及び/又は補体媒介反応のためであった。SPR741は、14日間の反復投与後に用量依存的な全身暴露を示した(表7)。
【0054】
毒物学的評価のために、すべての動物の死亡率及び瀕死について1日2回観察した。臨床試験は毎日実施し、詳細な身体検査は毎週行った。眼科検査は、試験開始前に1回及び試験中に1回実施した。予定された剖検に割り当てられたすべての動物について、(血中尿素窒素及び血清クレアチニンを含む)臨床病理パラメータを分析した。全ての動物について完全な剖検を行い、予定された剖検で選択した器官の重量を測定した。死亡した又は最終的に安楽死させたすべての動物、及び予定された剖検において対照、15及び10mg/kg/日の群であったすべての動物から、選択した組織を顕微鏡検査した。最初の剖検において低用量の群であったすべての動物から、肉眼的病変及び注入部位を検査した。中用量の群及び対照の群において、28日間の非投与期間後に回復を評価した。28日間の非投与(回復)期間の後、すべての動物について完全剖検を行い、予定剖検時に選択された器官の重量を測定した。すべての動物から、選択した組織を顕微鏡検査した。
【0055】
毒物動態評価のために、第1日目及び第14日目の第1回目のBID投与終了後に、用量投与の終了直後(5分以内)、並びに約30分後、並びに1、2、4及び12時間後(第2回目のBID投与の直前)に、SPR741投与ラットから血液サンプルを採取した。これらの試料からの血漿を、有効な生物分析法を用いて、SPR741について分析した。表8は、血中尿素窒素、クレアチニン及び腎臓尿細管再生について観察された変化を示す。
【0056】
5mg/kgの用量レベルは、良好な忍容性を示した。より高い用量レベルは、毒性を示した。
【0057】
【表7】
【0058】
【表8】
【0059】
実施例8.サルにおけるSPR741の、GLP14日反復投与毒性試験
SPR741を、20、40、60及び80mg/kg/日の用量レベルで、14日間連続、1日3回(8時間間隔)の1時間の注入によって、サルにおける毒性について評価した。試験の生存段階中に評価したパラメータには、毎週の体重、臨床観察(投与期間中の14x/日)、摂餌量、神経学的検査、心電図(ECG)、眼科学、臨床病理学(血液学、凝固、血清化学、尿検査)並びに尿及び血漿のTKを含む。剖検では、肉眼観察を記録し、臓器重量を測定し、かつ、特定の組織を採取した。組織病理学的評価を、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した組織切片について行った。
【0060】
雄及び雌のカニクイザルにおける1日3回の、1時間の注入を14日間繰り返した後のSPR741のNOAELは、40mg/kg/日であった。摂餌量、心電図、及び眼科学にSPR741に関連する影響はなかった。サルにおけるSPR741の標的毒性臓器は、腎臓である。40mg/kg/日を超える用量レベルのSPR741は、血中尿素窒素及び血清クレアチニンの軽度から中程度の増加によって示される、有害な腎毒性と関連していた。腎機能のバイオマーカーの軽度から中程度の増加は、淡色の腎臓、より高い腎臓重量、並びに尿細管の再生、変性/壊死、円柱及び拡張という腎臓における組織病理学的変化を伴う。腎毒性は、28日間の回復期間の後は完全に可逆的であった。SPR741は、80mg/kg/日の試験された最高用量を含むいかなる用量レベルにおいても、神経学的な効果とは関連していなかった。
結論:本試験におけるSPR741の標的毒性臓器は腎臓である。毒性はモニター可能かつ可逆的であるため、第1フェーズ試験への進歩の基準を示す。
【0061】
実施例9.心臓、肺及び中枢神経系における、SPR741のGLP安全性及び薬理学的試験
SPR741を、標準的な手順を用いたhERGアッセイによって、300μg/mLまでの濃度でhERG媒介性カリウム電流の阻害について評価した。簡潔には、hERGカリウムチャネルを安定的に発現するHEK293細胞を、300μg/mLまでの濃度のSPR741で灌流した。電流は、単一細胞パッチクランプを介して記録した。これらの試験の結果を表10に要約する。
【0062】
【表9】
【0063】
SPR741を、心肺効果及び一般的な毒性について、単回の1時間の注入によって投与された5、10及び20mg/kgの用量レベルでの、サルの心肺安全薬理試験における、死亡率、臨床観察、体重、体温、血圧(収縮期、拡張期、及び平均動脈)、心拍数、心電図(QRS持続時間、RR、PR及びQTの間隔)並びに呼吸機能(呼吸数、一回換気量、及び分時拍出量)に基づいて評価した。試験開始前に、試験用のサルを遠隔測定した。24時間にわたって1分間隔でデータを収集した。データは、最初の3時間にわたって15分間隔で報告した。心臓血管及び肺の試験の結果を表11に示す。
【0064】
【表10】
【0065】
SPR741の中枢神経系(CNS)効果について、20、40、60及び80mg/kg/日の用量レベルでの、サルにおけるGLP14日反復投与毒性試験の一環として、環境刺激に対する反応、不随意的又は定型的行動、歩行、腕渡り、姿勢、把持、活動レベル、バランス、共役運動、位置及び瞳孔反応に基づいて評価した。神経学的評価は、試験日第9日目又は第10日目に実施し、予備試験データ(試験日−6又は−7)及び溶媒対照の両方と比較した。全てのCNS評価は正常であった。
【国際調査報告】