(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
本開示は、式(I)または(IV)のスルホン酸またはスルホン酸誘導体を含有するアミノ脂質などの1つまたは複数のアミノ脂質を提供する。式中、変数は本明細書において定義される通りである。これらのアミノ脂質は、1つまたは複数のヘルパー脂質と核酸治療剤とを有する組成物において用いられうる。これらの組成物は、がん、嚢胞性線維症、または他の遺伝的疾患などの疾患または障害を処置するために用いられうる。
約25:57:15:3〜約75:19:5:1の化合物対ステロイドまたはステロイド誘導体対リン脂質対PEG脂質の比を含む、請求項81〜94のいずれか一項記載の組成物。
その必要がある患者における疾患または障害を処置する方法であって、請求項81〜98のいずれか一項記載の組成物の薬学的有効量を該患者に投与する段階を含む、方法。
がんが、膀胱、血液、骨、脳、乳房、中枢神経系、子宮頸部、結腸、子宮内膜、食道、胆嚢、胃腸管、生殖器、泌尿生殖路、頭部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、筋肉組織、頸部、口腔もしくは鼻粘膜、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、脾臓、小腸、大腸、胃、精巣、または甲状腺のがんである、請求項103記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0080】
例示的な態様の説明
本開示は、1つまたは複数のスルホン酸またはスルホンアミドのようなスルホン酸誘導体を含有するアミノ脂質組成物を提供する。これらの化合物を1つまたは複数のヘルパー脂質と組み合わせて、水溶液中にナノ粒子を形成させることができ、これを用いて、核酸に基づく治療剤を輸送することができる。いくつかの態様において、本組成物は、がん、嚢胞性線維症、または他の遺伝性障害のような疾患または障害を処置すべくsiRNA、sgRNA、mRNAまたはtRNA治療用物質を輸送するために用いることができる。
【0081】
A. 定義
本開示によって提供される化合物(本明細書においてアミノ脂質、化合物、本開示の化合物としても記載される)は、例えば、上記の概要の節および添付の特許請求の範囲に示される。それらは、実施例の節において概説された方法を用いて作出されうる。これらの方法は、当業者によって適用される有機化学の原理および技法を用いてさらに修飾および最適化することができる。そのような原理および技法は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるMarch’s Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure (2007)に教示されている。
【0082】
本開示の化合物は、1つまたは複数の非対称に置換された炭素原子または窒素原子を含み、光学的に活性な形態またはラセミ形態で単離されうる。したがって、特定の立体化学または異性体形態が具体的に示されない限り、化学式の全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ形態、エピマー形態および全ての幾何異性形態が意図される。化合物は、ラセミ化合物およびラセミ混合物、単一鏡像異性体、ジアステレオマー混合物ならびに個々のジアステレオマーとして生じうる。いくつかの態様において、単一のジアステレオマーが得られる。本開示の化合物のキラル中心は、S配置またはR配置を有することができる。
【0083】
本開示の化合物を表すために用いられる化学式は、典型的には、おそらくいくつかの異なる互変異性体のうちの1つのみを示すであろう。例えば、多くのタイプのケトン基が、対応するエノール基と平衡状態で存在することが知られている。同様に、多くのタイプのイミン基が、エナミン基と平衡して存在する。与えられた化合物についてどの互変異性体が描かれていても、どの1つが最も一般的であっても、所与の化学式の全ての互変異性体が意図される。
【0084】
本開示の化合物はまた、本明細書において記載される適応症でまたはそれ以外で用いるかどうかにかかわらず、それらが先行技術において公知の化合物よりも効果的であり、低い毒性であり、長く作用し、強力であり、少ない副作用をもたらし、容易に吸収され、および/または良好な薬物動態プロファイル(例えば、高い経口バイオアベイラビリティおよび/または低いクリアランス)を有し、ならびに/または先行技術において公知の化合物に比べて他の有用な薬理学的、物理的、または化学的性質を有しうるという利点がありうる。
【0085】
さらに、本開示の化合物を構成する原子は、そのような原子の全ての同位体形態を含むことが意図される。同位体は、本明細書において用いられる場合、同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子を含む。一般的な例として、限定するものではないが、水素の同位体には三重水素および重水素が含まれ、炭素の同位体には
13Cおよび
14Cが含まれる。
【0086】
本明細書において提供される化合物の任意の塩形態の一部を形成している特定のアニオンまたはカチオンは、塩が全体として薬理学的に許容される限り、重要ではないことが認識されるべきである。薬学的に許容される塩ならびにそれらの調製法および使用法のさらなる例は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, and Use (2002)に提示されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0087】
化学基の文脈において用いられる場合:「水素」は-Hを意味し; 「ヒドロキシ」は-OHを意味し; 「オキソ」は=Oを意味し; 「カルボニル」は-C(=O)-を意味し; 「カルボキシ」は-C(=O)OH (-COOHまたは-CO
2Hとも書かれる)を意味し; 「ハロ」は独立して-F、-Cl、-Brまたは-Iを意味し; 「アミノ」は-NH
2を意味し; 「ヒドロキシアミノ」は-NHOHを意味し; 「ニトロ」は-NO
2を意味し; イミノは=NHを意味し; 「シアノ」は-CNを意味し; 「イソシアネート」は-N=C=Oを意味し; 「アジド」は-N
3を意味し; 一価の文脈において「リン酸塩」は-OP(O)(OH)
2またはその脱プロトン化形態を意味し; 二価の文脈において「リン酸塩」は-OP(O)(OH)O-またはその脱プロトン化形態を意味し; 「メルカプト」は-SHを意味し; および「チオ」は=Sを意味し; 「スルホニル」は-S(O)
2-を意味し; ならびに「スルフィニル」は-S(O)-を意味する。
【0088】
化学式の文脈において、記号「-」は単結合を意味し、「=」は二重結合を意味し、および
[この文献は図面を表示できません]
は三重結合を意味する。記号
[この文献は図面を表示できません]
は任意の結合を表し、これは存在する場合、単結合または二重結合のどちらかである。記号
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は単結合または二重結合を表す。したがって、例えば、式
[この文献は図面を表示できません]
は
[この文献は図面を表示できません]
を含む。そのような環原子は2つ以上の二重結合の一部を形成しないことが理解される。さらに、共有結合記号「-」は、1個または2個のステレオジェン原子を連結する場合、いかなる好ましい立体化学も示さないことに留意されたい。そうではなく、それは全ての立体異性体およびその混合物を網羅する。記号
[この文献は図面を表示できません]
は結合を横切って垂直に描かれた場合
[この文献は図面を表示できません]
、基の結合点を示す。読者が結合点を明確に特定するのを補助するために、結合点は、典型的には、より大きな基についてこのようなやり方でのみ特定されることに留意されたい。記号
[この文献は図面を表示できません]
は、くさびの太端に結合した基が「頁の外」にある単結合を意味する。記号
[この文献は図面を表示できません]
は、くさびの太端に結合した基が「頁の中に」ある単結合を意味する。記号
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は、二重結合の周りの幾何(例えば、EまたはZのどちらか)が定義されていない単結合を意味する。それゆえ、両方の選択肢、およびそれらの組み合わせが意図される。本出願において示される構造の原子上のいずれの未定義の原子価も、その原子に結合した水素原子を暗示する。炭素原子上の太点は、その炭素に結合している水素が紙面の外へ配向していることを示す。
【0089】
基「R」が、例えば、式:
[この文献は図面を表示できません]
において、環系上に「浮遊基」として描かれているなら、Rは、安定な構造が形成される限り、描写された、暗示された、または明確に定義された水素を含む、いずれかの環原子に結合した任意の水素原子に取って代わりうる。基「R」が、例えば式:
[この文献は図面を表示できません]
にあるように、縮合環系上に「浮遊基」として描かれているなら、Rは、特別の定めのない限り、縮合環のいずれかの環原子のいずれかに結合した任意の水素に取って代わりうる。置換可能な水素には、安定な構造が形成される限り、描かれた水素(例えば、上記の式中の窒素に結合した水素)、含意された水素(例えば、示されていないが、存在するものと理解される上記の式の水素)、明確に定義された水素、および存在が環原子の同一性に依る任意の水素(例えば、Xが-CH-に等しい場合、基Xに結合した水素)が含まれる。描かれた例において、Rは、縮合環系の5員環または6員環のどちらかに存在しうる。上記の式において、括弧で囲まれた基「R」の直後の下付き文字「y」は数値変数を表す。特別の定めのない限り、この変数は、環または環系の置換可能な水素原子の最大数によってのみ制限される、0、1、2、または2より大きい任意の整数とすることができる。
【0090】
化学基および化合物クラスの場合、基またはクラスにおける炭素原子の数は以下のように示される: 「Cn」は基/クラスにおける炭素原子の正確な数(n)を定義する。「C≦n」は、基/クラスに入ることができる炭素原子の最大数(n)を定義し、最小数は対象となっている基/クラスに対して可能な限り小さいものとなり、例えば、基「アルケニル
(C≦8)」またはクラス「アルケン
(C≦8)」における炭素原子の最小数は2であるものと理解される。1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基を示す「アルコキシ
(C≦10)」と比較されたい。「Cn-n'」は、基中の炭素原子の最小数(n)と最大数(n')の両方を定義する。したがって、「アルキル
(C2〜10)」は、2〜10個の炭素原子を有するアルキル基を示す。これらの炭素数インジケータは、それが修飾する化学基またはクラスの前または後にあってもよく、意味のいずれの変化も示すことなく、括弧で囲まれていてもいなくてもよい。したがって、「C5オレフィン」、「C5-オレフィン」、「オレフィン
(C5)」および「オレフィン
C5」という用語は、全て同意語である。本明細書において定義される化学基または化合物クラスのいずれかが「置換された」という用語によって修飾される場合、水素原子に取って代わる部分中のいずれの炭素原子もカウントされない。したがって、メトキシヘキシルは置換アルキル
(C1〜6)の例である。
【0091】
「飽和した」という用語は、化合物または化学基を修飾するために用いられる場合、化合物または化学基が、以下に記載の場合を除いて、炭素-炭素二重結合なしおよび炭素-炭素三重結合なしを意味する。この用語が原子を修飾するために用いられる場合、その原子が任意の二重結合または三重結合の一部ではないことを意味する。飽和基の置換型の場合、1つまたは複数の炭素酸素二重結合または炭素窒素二重結合が存在しうる。そのような結合が存在するなら、ケト-エノール互変異性またはイミン/エナミン互変異性の一部として生じうる炭素-炭素二重結合は排除されない。「飽和した」という用語が物質の溶液を修飾するために用いられる場合、その物質がそれ以上その溶液に溶解しえないことを意味する。
【0092】
「脂肪族」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、そのように修飾された化合物または化学基は、非環式または環式であるが、非芳香族の炭化水素化合物または基であることを示す。脂肪族化合物/基において、炭素原子は、直鎖、分枝鎖、または非芳香族環(脂環式)において一緒に連結されることができる。脂肪族化合物/基は、一重炭素-炭素結合によって連結された飽和(アルカン/アルキル)、あるいは1つまたは複数の炭素-炭素二重結合(アルケン/アルケニル)または1つまたは複数の炭素-炭素三重結合(アルキン/アルキニル)による不飽和であることができる。
【0093】
「芳香族」という用語は、化合物または化学基を修飾するために用いられる場合、完全共役環式π系において4n+2個の電子を有する原子の平面不飽和環をいう。
【0094】
「アルキル」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、結合点としての炭素原子、直鎖または分枝鎖非環式構造を有し、炭素および水素以外の原子を有していない、一価の飽和脂肪族基をいう。基-CH
3 (Me)、-CH
2CH
3 (Et)、-CH
2CH
2CH
3 (n-Prまたはプロピル)、-CH(CH
3)
2 (i-Pr、
iPrまたはイソプロピル)、-CH
2CH
2CH
2CH
3 (n-Bu)、-CH(CH
3)CH
2CH
3 (sec-ブチル)、-CH
2CH(CH
3)
2 (イソブチル)、-C(CH
3)
3 (tert-ブチル、t-ブチル、t-Buまたは
tBu)、および-CH
2C(CH
3)
3 (neo-ペンチル)は、アルキル基の非限定的な例である。「アルカンジイル」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、結合点としての1つまたは2つの飽和炭素原子、直鎖または分枝鎖非環式構造を有し、炭素-炭素二重または三重結合を有しておらず、かつ炭素および水素以外の原子を有していない、二価の飽和脂肪族基をいう。基-CH
2- (メチレン)、-CH
2CH
2-、-CH
2C(CH
3)
2CH
2-、および-CH
2CH
2CH
2-はアルカンジイル基の非限定的な例である。「アルキリデン」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、RおよびR'が独立して水素またはアルキルである二価基=CRR'をいう。アルキリデン基の非限定的な例としては、=CH
2、=CH(CH
2CH
3)、および=C(CH
3)
2が挙げられる。「アルカン」は、Rが、この用語が上記で定義される通りのアルキルである、式H-Rを有する化合物のクラスをいう。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語とともに用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により置き換えられている。以下の基は置換アルキル基の非限定的な例である: -CH
2OH、-CH
2Cl、-CF
3、-CH
2CN、-CH
2C(O)OH、-CH
2C(O)OCH
3、-CH
2C(O)NH
2、-CH
2C(O)CH
3、-CH
2OCH
3、-CH
2OC(O)CH
3、-CH
2NH
2、-CH
2N(CH
3)
2、および-CH
2CH
2Cl。「ハロアルキル」という用語は、置換アルキルの一部であり、炭素、水素およびハロゲン以外の他の原子が存在しないように、水素原子の置き換えがハロ(すなわち、-F、-Cl、-Br、または-I)に限定されている。基-CH
2Clは、ハロアルキルの非限定的な例である。「フルオロアルキル」という用語は、置換アルキルの一部であり、炭素、水素およびフッ素以外の他の原子が存在しないように、水素原子の置き換えがフルオロに限定されている。基-CH
2F、-CF
3、および-CH
2CF
3はフルオロアルキル基の非限定的な例である。
【0095】
「シクロアルキル」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、結合点としての炭素原子を有し、該炭素原子は1つまたは複数の非芳香環構造の一部を形成し、炭素-炭素二重または三重結合を有しておらず、かつ炭素および水素以外の原子を有していない、一価の飽和脂肪族基をいう。非限定的な例としては、-CH(CH
2)
2 (シクロプロピル)、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシル(Cy)が挙げられる。「シクロアルカンジイル」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、結合点としての2つの炭素原子を有し、炭素-炭素二重または三重結合を有しておらず、かつ炭素および水素以外の原子を有していない、二価の飽和脂肪族基をいう。基
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は、シクロアルカンジイル基の非限定的な例である。「シクロアルカン」は、Rが、この用語が上記で定義される通りのシクロアルキルである、式H-Rを有する化合物のクラスをいう。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語とともに用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により置き換えられている。
【0096】
「アルケニル」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、結合点としての炭素原子、直鎖または分枝鎖非環式構造、少なくとも1つの非芳香族炭素-炭素二重結合を有し、炭素-炭素三重結合を有しておらず、かつ炭素および水素以外の原子を有していない、一価の不飽和脂肪族基をいう。非限定的な例としては、-CH=CH
2 (ビニル)、-CH=CHCH
3、-CH=CHCH
2CH
3、-CH
2CH=CH
2 (アリル)、-CH
2CH=CHCH
3、および-CH=CHCH=CH
2が挙げられる。「アルケンジイル」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、結合点としての2つの炭素原子、直鎖または分枝鎖、直鎖または分枝鎖非環式構造、少なくとも1つの非芳香族炭素-炭素二重結合を有し、炭素-炭素三重結合を有しておらず、かつ炭素および水素以外の原子を有していない、二価の不飽和脂肪族基をいう。基-CH=CH-、-CH=C(CH
3)CH
2-、-CH=CHCH
2-、および-CH
2CH=CHCH
2-はアルケンジイル基の非限定的な例である。アルケンジイル基は脂肪族であるが、両端で連結されると、この基は芳香族構造の一部を形成することから除外されないということが知られている。「アルケン」および「オレフィン」という用語は同意語であり、Rはこの用語が、上記で定義される通りのアルケニルである、式H-Rを有する化合物のクラスをいう。同様に、「末端アルケン」および「α-オレフィン」という用語は同意語であり、1つだけの炭素-炭素二重結合を有し、その結合は分子の末端のビニル基の一部であるアルケンをいう。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語とともに用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により置き換えられている。基-CH=CHF、-CH=CHClおよび-CH=CHBrは置換アルケニル基の非限定的な例である。
【0097】
「アルキニル」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、結合点としての炭素原子、直鎖または分枝鎖非環式構造、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有し、かつ炭素および水素以外の原子を有していない、一価の不飽和脂肪族基をいう。本明細書において用いられる場合、アルキニルという用語は、1つまたは複数の非芳香族炭素-炭素二重結合の存在を除外しない。基-C≡CH、-C≡CCH
3、および-CH
2C≡CCH
3はアルキニル基の非限定的な例である。「アルキン」は、Rがアルキニルである、式H-Rを有する化合物のクラスをいう。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語とともに用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により置き換えられている。
【0098】
「アリール」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、結合点としての芳香族炭素原子を有し、該炭素原子は1つまたは複数の6員芳香環構造の一部を形成し、環原子は全て炭素であり、かつ基は炭素および水素以外の原子からならない、一価の不飽和芳香族基をいう。2つ以上の環が存在する場合、環は縮合されても、縮合されなくてもよい。本明細書において用いられる場合、この用語は、第1の芳香環または存在する任意のさらなる芳香環に結合された、1つまたは複数のアルキルまたはアラルキル基(炭素数の制限が許容する)の存在を除外しない。アリール基の非限定的な例としては、フェニル(Ph)、メチルフェニル、(ジメチル)フェニル、-C
6H
4CH
2CH
3 (エチルフェニル)、ナフチル、およびビフェニルから誘導される一価の基が挙げられる。「アレーンジイル」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、結合点としての2つの芳香族炭素原子を有し、該炭素原子は1つまたは複数の6員芳香環構造の一部を形成し、環原子は全て炭素であり、かつ一価の基は炭素および水素以外の原子からならない、二価の芳香族基をいう。本明細書において用いられる場合、この用語は、第1の芳香環または存在する任意のさらなる芳香環に結合された、1つまたは複数のアルキル、アリールまたはアラルキル基(炭素数の制限が許容する)の存在を除外しない。2つ以上の環が存在する場合、環は縮合されても、縮合されなくてもよい。非縮合環は下記の1つまたは複数を介して連結されうる: 共有結合、アルカンジイル、またはアルケンジイル基(炭素数の制限が許容する)。アレーンジイル基の非限定的な例としては、
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が挙げられる。
【0099】
「アレーン」は、Rが、その用語が上記で定義される通りのアリールである、式H-Rを有する化合物のクラスをいう。ベンゼンおよびトルエンはアレーンの非限定的な例である。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語とともに用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により置き換えられている。
【0100】
「アラルキル」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、アルカンジイルおよびアリールという用語がそれぞれ前述の定義に一致した様式で用いられる、一価の基-アルカンジイル-アリールをいう。非限定的な例は、フェニルメチル(ベンジル, Bn)および2-フェニル-エチルである。アラルキルという用語が「置換された」という修飾語とともに用いられる場合、アルカンジイルおよび/またはアリール基からの1つまたは複数の水素原子は独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により置き換えられている。置換アラルキルの非限定的な例は、(3-クロロフェニル)-メチル、および2-クロロ-2-フェニル-エタ-1-イルである。
【0101】
「ヘテロアリール」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、結合点としての芳香族炭素原子または窒素原子を有し、該炭素原子または窒素原子は1つまたは複数の芳香環構造の一部を形成し、環原子の少なくとも1つは窒素、酸素または硫黄であり、かつヘテロアリール基は炭素、水素、芳香族窒素、芳香族酸素および芳香族硫黄以外の原子からならない、一価の芳香族基をいう。2つ以上の環が存在する場合、環は縮合されても、縮合されなくてもよい。本明細書において用いられる場合、この用語は、芳香環または芳香環系に結合された1つまたは複数のアルキル、アリール、および/またはアラルキル基(炭素数の制限が許容する)の存在を除外しない。ヘテロアリール基の非限定的な例としては、フラニル、イミダゾリル、インドリル、インダゾリル(Im)、イソキサゾリル、メチルピリジニル、オキサゾリル、フェニルピリジニル、ピリジニル(ピリジル)、ピロリル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリル、キナゾリル、キノキサリニル、トリアジニル、テトラゾリル、チアゾリル、チエニル、およびトリアゾリルが挙げられる。「ヘテロアレーンジイル」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、2つの結合点としての2つの芳香族炭素原子、2つの芳香族窒素原子、または1つの芳香族炭素原子および1つの芳香族窒素原子を有し、該原子は1つまたは複数の芳香環構造の一部を形成し、環原子の少なくとも1つは窒素、酸素または硫黄であり、かつ二価基は炭素、水素、芳香族窒素、芳香族酸素および芳香族硫黄以外の原子からならない、二価の芳香族基をいう。2つ以上の環が存在する場合、環は縮合されても、縮合されなくてもよい。非縮合環は下記の1つまたは複数を介して連結されうる: 共有結合、アルカンジイル、またはアルケンジイル基(炭素数の制限が許容する)。本明細書において用いられる場合、この用語は、芳香環または芳香環系に結合された1つまたは複数のアルキル、アリール、および/またはアラルキル基(炭素数の制限が許容する)の存在を除外しない。ヘテロアレーンジイル基の非限定的な例としては、
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が挙げられる。「N-ヘテロアリール」という用語は、結合点としての窒素原子を有するヘテロアリール基をいう。「ヘテロアレーン」は、Rがヘテロアリールである、式H-Rを有する化合物のクラスをいう。ピリジンおよびキノリンはヘテロアレーンの非限定的な例である。これらの用語が「置換された」という修飾語とともに用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により置き換えられている。
【0102】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、結合点としての炭素原子または窒素原子を有し、該炭素原子または窒素原子は1つまたは複数の非芳香環構造の一部を形成し、環原子の少なくとも1つは窒素、酸素または硫黄であり、かつヘテロシクロアルキル基は炭素、水素、窒素、酸素および硫黄以外の原子からならない、一価の非芳香族基をいう。2つ以上の環が存在する場合、環は縮合されても、縮合されなくてもよい。本明細書において用いられる場合、この用語は、環または環系に結合された1つまたは複数のアルキル基(炭素数の制限が許容する)の存在を除外しない。同様に、この用語は、得られる基が非芳香族のままであることを条件として、環または環系における1つまたは複数の二重結合の存在を除外しない。ヘテロシクロアルキル基の非限定的な例としては、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、テトラヒドロピラニル、ピラニル、オキシラニル、およびオキセタニルが挙げられる。「ヘテロシクロアルカンジイル」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、2つの結合点としての2つの炭素原子、2つの窒素原子、または1つの炭素原子および1つの窒素原子を有し、該原子は1つまたは複数の環構造の一部を形成し、環原子の少なくとも1つは窒素、酸素または硫黄であり、かつ二価基は炭素、水素、窒素、酸素および硫黄以外の原子からならない、二価の環基をいう。2つ以上の環が存在する場合、環は縮合されても、縮合されなくてもよい。非縮合環は下記の1つまたは複数を介して連結されうる: 共有結合、アルカンジイル、またはアルケンジイル基(炭素数の制限が許容する)。本明細書において用いられる場合、この用語は、環または環系に結合された1つまたは複数のアルキル基(炭素数の制限が許容する)の存在を除外しない。同様に、この用語は、得られる基が非芳香族のままであることを条件として、環または環系における1つまたは複数の二重結合の存在を除外しない。ヘテロシクロアルカンジイル基の非限定的な例としては、
[この文献は図面を表示できません]
が挙げられる。「N-ヘテロシクロアルキル」という用語は、結合点としての窒素原子を有するヘテロシクロアルキル基をいう。N-ピロリジニルはそのような基の一例である。これらの用語が「置換された」という修飾語とともに用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により置き換えられている。
【0103】
「アシル」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、Rが、それらの用語が上記で定義される通りの、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはヘテロアリールである、基-C(O)Rをいう。基-CHO、-C(O)CH
3 (アセチル, Ac)、-C(O)CH
2CH
3、-C(O)CH
2CH
2CH
3、-C(O)CH(CH
3)
2、-C(O)CH(CH
2)
2、-C(O)C
6H
5、-C(O)C
6H
4CH
3、-C(O)CH
2C
6H
5、-C(O)(イミダゾリル)はアシル基の非限定的な例である。「チオアシル」は、基-C(O)Rの酸素原子が硫黄原子で置き換えられていること以外は、同様の様式で定義され、-C(S)Rである。「アルデヒド」という用語は、水素原子の少なくとも1つが-CHO基で置き換えられている、上記で定義の、アルカンに対応する。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語とともに用いられる場合、1つまたは複数の水素原子(もしあれば、カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素原子に直接結合された水素原子を含む)は独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により置き換えられている。基-C(O)CH
2CF
3、-CO
2H (カルボキシル)、-CO
2CH
3 (メチルカルボキシル)、-CO
2CH
2CH
3、-C(O)NH
2 (カルバモイル)、および-CON(CH
3)
2は置換アシル基の非限定的な例である。
【0104】
「アルコキシ」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、Rが、その用語が上記で定義される通りのアルキルである、基-ORをいう。非限定的な例としては、-OCH
3 (メトキシ)、-OCH
2CH
3 (エトキシ)、-OCH
2CH
2CH
3、-OCH(CH
3)
2 (イソプロポキシ)、-OC(CH
3)
3 (tert-ブトキシ)、-OCH(CH
2)
2、-O-シクロペンチル、および-O-シクロヘキシルが挙げられる。「シクロアルコキシ」、「アルケニルオキシ」、「アルキニルオキシ」、「アリールオキシ」、「アラルコキシ」、「ヘテロアリールオキシ」、「ヘテロシクロアルコキシ」、および「アシルオキシ」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、Rがそれぞれシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、およびアシルである、-ORと定義される基をいう。「アルキルチオ」および「アシルチオ」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、Rがそれぞれアルキルおよびアシルである、基-SRをいう。「アルコール」という用語は、水素原子の少なくとも1つがヒドロキシ基で置き換えられている、上記で定義の、アルカンに対応する。「エーテル」という用語は、水素原子の少なくとも1つがアルコキシ基で置き換えられている、上記で定義の、アルカンに対応する。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語とともに用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により置き換えられている。
【0105】
「アルキルアミノ」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、Rが、その用語が上記で定義される通りのアルキルである、基-NHRをいう。非限定的な例としては、-NHCH
3および-NHCH
2CH
3が挙げられる。「ジアルキルアミノ」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、RおよびR'が同じまたは異なるアルキル基でありうるか、またはRおよびR'が一緒になって、アルカンジイルを表しうる、基-NRR'をいう。ジアルキルアミノ基の非限定的な例としては、-N(CH
3)
2および-N(CH
3)(CH
2CH
3)が挙げられる。「シクロアルキルアミノ」、「アルケニルアミノ」、「アルキニルアミノ」、「アリールアミノ」、「アラルキルアミノ」、「ヘテロアリールアミノ」、「ヘテロシクロアルキルアミノ」、「アルコキシアミノ」、および「アルキルスルホニルアミノ」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、Rがそれぞれシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、およびアルキルスルホニルである、-NHRと定義される基をいう。アリールアミノ基の非限定的な例は-NHC
6H
5である。「アミド」(アシルアミノ)という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、Rが、その用語が上記で定義される通りのアシルである、基-NHRをいう。アミド基の非限定的な例は-NHC(O)CH
3である。「アルキルイミノ」という用語は、「置換された」という修飾語なしで用いられる場合、Rが、その用語が上記で定義される通りのアルキルである、二価基=NRをいう。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語とともに用いられる場合、炭素原子に結合された1つまたは複数の水素原子は独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により置き換えられている。基NHC(O)OCH
3および-NHC(O)NHCH
3は置換アミド基の非限定的な例である。
【0106】
「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語の使用は、特許請求の範囲および/または本明細書において「含む(comprising)」という用語とともに用いられる場合、「1つ(one)」を意味しうるが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味とも一致する。
【0107】
本出願の全体を通して、「約」という用語は、値がその値をもとめるために用いている装置、方法の誤差の固有の変動、または試験対象の間に存在する変動を含むことを示すために用いられる。
【0108】
「含む(comprise)」、「有する(have)」および「含む(include)」という用語は、制限のない連結動詞である。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(includes)」および「含む(including)」のような、これらの動詞の1つまたは複数の任意の形式または時制も制限がない。例えば、1つまたは複数の段階を「含む(comprises)」、「有する(has)」または「含む(includes)」任意の方法は、それらの1つまたは複数の段階だけを有することに限定されることはなく、同様に他の列挙していない段階も網羅する。
【0109】
「有効」という用語は、その用語が本明細書および/または特許請求の範囲において用いられる場合、所望の、予想の、または所期の結果を達成するのに十分であることを意味する。「有効量」、「治療的有効量」または「薬学的有効量」は、患者または対象を化合物で処置するという文脈において用いられる場合、疾患を処置するために対象または患者に投与されたときに、疾患に対するそのような処置を行うのに十分な化合物の量を意味する。
【0110】
本明細書において用いられる場合、「IC
50」という用語は、得られる最大の応答の50%である阻害用量をいう。この定量的尺度は、所与の生物学的、生化学的または化学的プロセス(またはプロセスの成分、すなわち酵素、細胞、細胞受容体または微生物)を半分だけ阻害するために、どれだけの特定の薬物または他の物質(阻害剤)が必要とされるかを示す。
【0111】
第一の化合物の「異性体」は、各分子が第一の化合物と同じ構成原子を含むが、それらの原子の三次元の配置が異なる、別の化合物である。
【0112】
本明細書において用いられる場合、「患者」または「対象」という用語は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、またはそのトランスジェニック種のような、生きている哺乳類生物をいう。特定の態様において、患者または対象は霊長類である。ヒト対象の非限定的な例は、成人、少年、乳児および胎児である。
【0113】
本明細書において一般に用いられる場合、「薬学的に許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内で、妥当な損益比に相応の、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題または合併症なしに、ヒトおよび動物の組織、器官、および/または体液と接触して用いるのに適した、化合物、材料、組成物、および/または投与量形態をいう。
【0114】
「薬学的に許容される塩」は、上記で定義される通り、薬学的に許容され、かつ所望の薬理活性を保有する、本開示の化合物の塩を意味する。そのような塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸と; または1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、4,4'-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、酢酸、脂肪族モノ-およびジカルボン酸、脂肪族硫酸、芳香族硫酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヒドロキシナフトエ酸、乳酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、シュウ酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、フェニル-置換アルカン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、第三級ブチル酢酸、トリメチル酢酸などのような有機酸と形成される酸付加塩が含まれる。薬学的に許容される塩には、存在する酸性プロトンが無機または有機塩基と反応可能な場合に形成されうる、塩基付加塩も含まれる。許容される無機塩基には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウムおよび水酸化カルシウムが含まれる。許容される有機塩基には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどが含まれる。本開示の任意の塩の一部を形成している特定のアニオンまたはカチオンは、塩が全体として薬理学的に許容される限り、重要ではないことが理解されるべきである。薬学的に許容される塩ならびにそれらの調製法および使用法のさらなる例は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, and Use (P. H. Stahl & C. G. Wermuth eds., Verlag Helvetica Chimica Acta, 2002)に提示されている。
【0115】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」という用語は、化学物質を担持または輸送することに関与する、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル封入材料のような、薬学的に許容される材料、組成物または媒体を意味する。
【0116】
「予防」または「予防すること」には、(1) 疾患のリスクが高い、および/または素因を有しうるが、疾患の任意の、または全ての病態または総体症状をまだ経験または提示していない、対象または患者における疾患の発症を阻害すること、ならびに/または(2) 疾患のリスクが高い、および/または素因を有しうるが、疾患の任意の、または全ての病態または総体症状をまだ経験または提示していない、対象または患者における疾患の病態または総体症状の発症を遅延させることが含まれる。
【0117】
「立体異性体」または「光学異性体」は、同じ原子が同じ他の原子に結合しているが、それらの原子の三次元の配置が異なる、所与の化合物の異性体である。「鏡像異性体」は、左右の手のような、互いに鏡像である、所与の化合物の立体異性体である。「ジアステレオマー」は、鏡像異性体ではない、所与の化合物の立体異性体である。キラル分子は、立体中心またはステレオジェン中心ともいわれる、キラル中心を含み、これは任意の2つの基の交換が立体異性体につながるような基を担持する分子における任意の点であるが、必ずしも原子ではない。有機化合物において、キラル中心は典型的には炭素、リンまたは硫黄原子であるが、有機および無機化合物において他の原子が立体中心であることも可能である。分子は複数の立体中心を有し、多くの立体異性体を生じることもできる。その立体異性が四面体ステレオジェン中心(例えば、四面体炭素)による化合物において、仮説上可能な立体異性体の総数は2
nを越えず、nは四面体立体中心の数である。対称性を有する分子は多くの場合、可能な最大数よりも少ない立体異性体を有する。鏡像異性体の50:50混合物はラセミ混合物といわれる。あるいは、鏡像異性体の混合物は、1つの鏡像異性体が50%よりも多い量で存在するように、鏡像異性的に濃縮されうる。典型的には、鏡像異性体および/またはジアステレオマーは、当技術分野において公知の技術を用いて分割または分離することができる。立体化学が定義されていないキラリティーの任意の立体中心または軸について、キラリティーのその立体中心または軸はそのR型、S型、またはラセミおよび非ラセミ混合物を含む、RおよびS型の混合物として存在しうることが企図される。本明細書において用いられる場合、「他の立体異性体を実質的に含まない」という語句は、組成物が≦15%、より好ましくは≦10%、さらにより好ましくは≦5%、または最も好ましくは≦1%の別の立体異性体を含むことを意味する。
【0118】
「処置」または「処置すること」には、(1) 疾患の病態または総体症状を経験または提示している対象または患者における疾患を阻害する(例えば、病態および/または総体症状のさらなる発生を停止する)こと、(2) 疾患の病態または総体症状を経験または提示している対象または患者における疾患を改善する(例えば、病態および/または総体症状を逆転する)こと、および/または(3) 疾患の病態または総体症状を経験または提示している対象または患者における疾患の任意の測定可能な低減を行うことが含まれる。
【0119】
前述の定義は、参照により本明細書に組み入れられる任意の参照文献における任意の相反する定義に取って代わる。しかし、特定の用語が定義されているという事実は、定義されていない任意の用語が明確ではないことを示すと考えられるべきではない。むしろ、用いられる全ての用語は、当業者であれば本発明の範囲を理解し、本開示を実践しうるような用語で本開示を記述すると考えられる。
【0120】
B. アミノ脂質
いくつかの局面において、本開示は、2つまたはそれ以上の窒素原子およびスルホン酸またはスルホン酸誘導体、例えばスルホンアミドを含む1つまたは複数のアミノ脂質化合物を提供する。いくつかの態様において、アミノ脂質の1つのクラスは、窒素原子の少なくとも1つが生理学的pHでプロトン化されたアミンである2つまたはそれ以上の窒素原子、2つまたはそれ以上の脂質基、およびスルホンアミド基を含むカチオン性スルホンアミドアミノ脂質である。このクラスのアミノ脂質は、脂質基がアルキル、アルケニル、アルキニル基またはこれらの基の置換型を含むC6〜C24脂肪族基である2つまたはそれ以上の脂質基を含む。これらの脂質基は、エステル、アミドまたはエポキシドを通じてアミノ脂質基の残部と連結している。いくつかの態様において、脂質基は、C6〜C24アルキルまたは置換アルキル基である。
【0121】
他の態様において、本明細書において記述されるアミノ脂質の別のクラスは、窒素原子の少なくとも1つが第4級アンモニウム原子である2つまたはそれ以上の窒素原子、負に帯電した基、および2つまたはそれ以上の脂質基を含む両性イオンアミノ脂質である。負に帯電した基は、ホスホン酸基またはスルホン酸基でありうる。いくつかの態様において、負に帯電した基はスルホン酸基である。上記のように、脂質基は、アルキル、アルケニル、アルキニル基またはこれらの基の置換型を含むC6〜C24脂肪族基である。これらの脂質基は、エステル、アミドまたはエポキシドを通じてアミノ脂質基の残部と連結している。いくつかの態様において、脂質基は、C6〜C24アルキルまたは置換アルキル基である。
【0122】
いくつかの態様において、本組成物は約1:1〜約1500:1または約5:1〜約1000:1の化合物またはアミノ脂質対核酸の比を含む。比は、約100:1〜1000:1または約250:1〜約750:1、例えば約166:1、333:1または666:1の比でありうる。いくつかの態様において、比は、約1:1、5:1、25:1、50:1、75:1、100:1、200:1、300:1、350:1、400:1、500:1、600:1、650:1、700:1、750:1、800:1、900:1〜約1000:1、またはその中で導き出せる任意の範囲である。
【0123】
C. ヘルパー脂質
本開示のいくつかの局面において、1つまたは複数の脂質を本開示のアミノ脂質と混合してナノ粒子組成物を作出する。いくつかの態様において、アミノ脂質は、1、2、3、4、または5種類の異なる脂質と混合される。アミノ脂質は、単一のタイプの複数の異なる脂質と混合できることが企図される。いくつかの態様において、脂質は、ステロイドまたはステロイド誘導体でありうる。他の態様において、脂質はPEG脂質である。他の態様において、脂質はリン脂質である。他の態様において、ナノ粒子組成物は、ステロイドまたはステロイド誘導体、PEG脂質、リン脂質、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0124】
1. ステロイドおよびステロイド誘導体
本開示のいくつかの局面において、アミノ脂質を1つまたは複数のステロイドまたはステロイド誘導体と混合してナノ粒子組成物を作出する。いくつかの態様において、ステロイドまたはステロイド誘導体は、任意のステロイドまたはステロイド誘導体を含む。本明細書において用いられる場合、いくつかの態様において、「ステロイド」という用語は、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、オキソ基、アシル基、または2つまたはそれ以上の炭素原子間の二重結合を含む1つまたは複数の置換をさらに含みうる四環17炭素環構造を有する化合物のクラスである。1つの局面において、ステロイドの環構造は、下記の式に示されるように、3つの縮合シクロヘキシル環および縮合シクロペンチル環を含む:
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。いくつかの態様において、ステロイド誘導体は、1つまたは複数の非アルキル置換を有する上記の環構造を含む。いくつかの態様において、ステロイドまたはステロイド誘導体は、式が、
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のようにさらに定義される、ステロールである。本開示のいくつかの態様において、ステロイドまたはステロイド誘導体は、コレスタンまたはコレスタン誘導体である。コレスタンにおいて、環構造は、式:
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によってさらに定義される。上記のように、コレスタン誘導体は、上記環系の1つまたは複数の非アルキル置換を含む。いくつかの態様において、コレスタンまたはコレスタン誘導体は、コレステンまたはコレステン誘導体またはステロールまたはステロール誘導体である。他の態様において、コレスタンまたはコレスタン誘導体は、コレステン(cholestere)およびステロールまたはその誘導体の両方である。
【0125】
いくつかの態様において、本組成物は、約1:3〜約30:1または約1:1〜約20:1の化合物またはアミノ脂質対ステロイドまたはステロイド誘導体の比を含む。比は、約1.3:1の比など、約1:1〜6:1でありうる。いくつかの態様において、比は、約1:3、1:2、1:1、1.25:1、1.5:1、2:1、3:1、5:1、8:1、10:1、12.5:1、15:1、17.5:1、20:1、25:1〜約30:1またはその中で導き出せる任意の範囲である。
【0126】
2. PEGまたはPEG化脂質
本開示のいくつかの局面において、アミノ脂質(または化合物)は、ナノ粒子組成物を作出するために1つまたは複数のPEG化脂質(またはPEG脂質)と混合される。いくつかの態様において、本開示は、PEG基が結合した任意の脂質を用いることを含む。いくつかの態様において、PEG脂質は、グリセロール基に結合したPEG鎖をも含むジグリセリドである。他の態様において、PEG脂質は、PEG鎖でリンカー基に結合した1つまたは複数のC6〜C24長鎖アルキルまたはアルケニル基またはC6〜C24脂肪酸基を含む化合物である。PEG脂質のいくつかの非限定的な例としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジン酸、PEGセラミドコンジュゲート化PEG修飾ジアルキルアミンおよびPEG修飾1,2-ジアシルオキシプロパン-3-アミン、PEG修飾ジアシルグリセロールおよびジアルキルグリセロールが挙げられる。いくつかの態様においては、PEG修飾ジアステアロイルホスファチジルエタノールアミンまたはPEG修飾ジミリストイル-sn-グリセロール。いくつかの態様において、PEG修飾は、脂質のPEG成分の分子量によって測定される。いくつかの態様において、PEG修飾は、約100〜約5,000の分子量を有する。いくつかの態様において、分子量は、約200〜約500または約1,200〜約3,000である。本開示において使用されうる脂質のいくつかの非限定的な例は、米国特許第5,820,873号、WO 2010/141069、または米国特許第8,450,298号によって教示されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0127】
別の局面において、PEG脂質は下記式を有する:
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式中、 n
1は1〜100の整数であり、n
2およびn
3は各々独立して1〜29の整数から選択される。いくつかの態様において、n
1は5、10、15、20、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100、またはその中で導き出せる任意の範囲である。いくつかの態様において、n
1は約30〜約50である。いくつかの態様において、n
2は5〜23である。いくつかの態様において、n
2は11〜約17である。いくつかの態様において、n
3は5〜23である。いくつかの態様において、n
3は11〜約17である。
【0128】
いくつかの態様において、本組成物は、約1:1〜約150:1または約2.5:1〜約100:1の化合物またはアミノ脂質対PEG脂質の比を含む。比は、約7.5:1〜50:1、例えば約33.3:1の比でありうる。いくつかの態様において、比は、約5:1、10:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、120:1、140:1〜約150:1またはその中で導き出せる任意の範囲である。
【0129】
3. リン脂質
本開示のいくつかの局面において、アミノ脂質は、ナノ粒子組成物を作出するために1つまたは複数のリン脂質と混合される。いくつかの態様においては、リン酸基をも含む任意の脂質。いくつかの態様において、リン脂質は、1つまたは2つの長鎖C6〜C24アルキルまたはアルケニル基、グリセロールまたはスフィンゴシン、1つまたは2つのリン酸基、および任意で、有機小分子を含む構造である。いくつかの態様において、有機小分子は、アミノ酸、糖、またはコリンまたはエタノールアミンのような、アミノ置換アルコキシ基である。いくつかの態様において、リン脂質はホスファチジルコリンである。いくつかの態様において、リン脂質はジステアロイルホスファチジルコリンである。
【0130】
いくつかの態様において、本組成物は、約1:1〜約15:1または約1:1〜約9:1の化合物またはアミノ脂質対リン脂質の比を含む。比は、約2.5:1〜7.5:1、例えば約5:1の比でありうる。いくつかの態様において、比は、約1:1、2:1、3:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、12:1、14:1〜約15:1またはその中で導き出せる任意の範囲である。
【0131】
D. 核酸および核酸に基づく治療剤
1. 核酸
本開示のいくつかの局面において、ナノ粒子組成物は、1つまたは複数の核酸を含む。さらに、本開示は、本明細書において開示される特定の核酸に限定されないことが明らかなはずである。しかしながら、当業者は、ヒト以外の種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル、テナガザル、チンパンジー、類人猿、ヒヒ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコおよび他の種)由来の核酸を含む核酸のさまざまな他の供給源における関連した同族体を容易に同定することができるので、本開示は、核酸の任意の特定の供給源、配列、またはタイプに範囲が限定されない。本開示において用いられる核酸は、天然に存在する配列に基づく配列を含みうることが企図される。遺伝暗号の縮重を考慮すれば、天然配列のヌクレオチド配列と同一であるヌクレオチドの少なくとも約50%、一般的には少なくとも約60%、より一般的には約70%、最も一般的には約80%、好ましくは少なくとも約90%および最も好ましくは約95%を有する配列。別の態様において、核酸は、天然配列に対する相補配列であり、または75%、80%、85%、90%、95%および100%に相補的である。
【0132】
いくつかの局面において、核酸は、インビボにおいて存在する別の配列をサイレンシングするか、該別の配列に相補的であるか、または取って代わる配列である。長さが17塩基の配列は、ヒトゲノムにおいて一度だけ出現するはずであり、それゆえ、独自の標的配列を特定するのに十分である。より短いオリゴマーは作出することがそれだけ容易であり、インビボでの接近性を増加させるが、ハイブリダイゼーションの特異性の決定には多数の他の要因が関与する。オリゴヌクレオチドのその相補標的に対する結合親和性および配列特異性の両方が、長さの増加とともに増加する。8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100またはそれ以上の塩基対の例示的なオリゴヌクレオチドが用いられるが、他のものも企図されると考えられる。250、500、1000、1212、1500、2000、2500、3000またはそれ以上をコードするより長いポリヌクレオチドが同様に企図される。
【0133】
本明細書において用いられる核酸は、ゲノムDNAに由来してもよく、すなわち、特定の生物のゲノムから直接クローン化されてもよい。しかし、好ましい態様において、核酸は相補的DNA (cDNA)を含むであろう。天然のイントロンまたは別の遺伝子に由来するイントロンを加えたcDNAも企図される; そのように操作された分子は「ミニ遺伝子」といわれることもある。最低でも、本開示のこれらのおよび他の核酸は、例えば、ゲル電気泳動における分子量標準として使用されうる。
【0134】
「cDNA」という用語は、鋳型としてメッセンジャーRNA (mRNA)を用いて調製されたDNAをいうように意図される。ゲノムDNAまたはゲノム、非プロセッシングまたは部分的にプロセッシングされたRNA鋳型から重合されたDNAとは対照的に、cDNAを用いることの利点は、cDNAが主として、対応するタンパク質のコード配列を含むということである。最適な発現のために非コード領域が必要とされる場合、またはイントロンのような非コード領域がアンチセンス戦略において標的とされる場合のような、完全または部分ゲノム配列が好ましい場合がありうる。
【0135】
いくつかの態様において、核酸は、遺伝子または遺伝子産物の発現を阻害する1つまたは複数のアンチセンスセグメントを含む。アンチセンス方法論は、核酸が「相補的」配列と対になる傾向があるという事実を利用する。相補的とは、ポリヌクレオチドが、標準的なワトソン-クリック相補性規則にしたがって塩基対形成できるものであることを意味する。すなわち、より大きなプリンがより小さなピリミジンと塩基対を形成して、シトシンと対になったグアニン(G:C)、DNAの場合にはチミンと対になったアデニン(A:T)、またはRNAの場合にはウラシルと対になったアデニン(A:U)の組み合わせを形成するであろう。イノシン、5-メチルシトシン、6-メチルアデニン、ヒポキサンチンおよび他のものなどの、あまり一般的でない塩基をハイブリダイズする配列に含めることで、対形成は妨害されない。
【0136】
ポリヌクレオチドによる二本鎖(ds) DNAのターゲティングは三重らせん形成をもたらす; RNAのターゲティングは二重らせん形成をもたらすであろう。アンチセンスポリヌクレオチドは、標的細胞に導入されると、その標的ポリヌクレオチドに特異的に結合し、転写、RNAプロセッシング、輸送、翻訳および/または安定性を妨げる。アンチセンスRNA構築体、またはそのようなアンチセンスRNAをコードするDNAは、宿主細胞内で、インビトロまたはインビボのどちらかで、例えばヒト対象を含む宿主動物内で遺伝子転写または翻訳またはその両方を阻害するために利用されうる。
【0137】
アンチセンス構築体は、プロモーターおよび他の制御領域、エクソン、イントロンまたは遺伝子のエクソン-イントロン境界にさえも結合するようにデザインされうる。最も有効なアンチセンス構築体は、イントロン/エクソンスプライスジャンクションに相補的な領域を含むと考えられる。したがって、好ましい態様は、イントロン-エクソンスプライスジャンクションの50〜200塩基内の領域に対して相補性を有するアンチセンス構築体を含むことが提案される。いくつかのエクソン配列を、その標的選択性に重大な影響を及ぼすことなく構築体に含めることができることが観察されている。含まれるエクソン材料の量は、用いられる特定のエクソンおよびイントロン配列に依って変化するであろう。単に、インビトロで構築体を試験して、正常細胞機能が影響を受けるかどうか、または相補配列を有する関連遺伝子の発現が影響を受けるかどうかを決定することによって、あまりにも多くのエクソンDNAが含まれているかどうかを容易に試験することができる。
【0138】
上記のように、「相補的」または「アンチセンス」は、それらの全長にわたって実質的に相補的であり、かつ塩基ミスマッチがほとんどないポリヌクレオチド配列を意味する。例えば、長さが15塩基の配列は、位置番号13または14で相補的なヌクレオチドを有する場合、相補的と称されうる。当然のことながら、完全に相補的な配列は、その全長にわたって完全に相補的であり、かつ塩基のミスマッチを有しない配列であろう。相同性の程度がより低い他の配列も企図される。例えば、相同性の高い領域は限られているが、非相同領域も含むアンチセンス構築体(例えば、リボザイム; 以下参照)をデザインすることができる。これらの分子は、50%未満の相同性を有するが、適切な条件下で標的配列に結合するであろう。
【0139】
ゲノムDNAの一部をcDNAまたは合成配列と組み合わせてsiRNAを形成するか、または特異的構築体を作出することが有利でありうる。例えば、イントロンが最終的な構築体において所望される場合、ゲノムクローンを用いる必要がある。cDNA、siRNA、または合成されたポリヌクレオチドは、より好都合な制限部位を構築体の残りの部分に提供することができ、それゆえ、配列の残部に用いられる。他の態様は、ゲノム配列またはコーディング/非コーディング転写産物を標的とするために使用されうるdsRNAまたはssRNAを含む。
【0140】
他の態様において、ナノ粒子は、遺伝子治療において用いられる1つまたは複数の発現ベクターを含む核酸を含みうる。発現には、ベクターにおいて適切なシグナルが提供されることが必要とされ、これには宿主細胞における関心対象の遺伝子の発現を推進するウイルス源および哺乳動物源の両方由来のエンハンサー/プロモーターのような、さまざまな調節要素が含まれる。宿主細胞におけるメッセンジャーRNA安定性および翻訳可能性を最適化するようにデザインされた要素も定義される。薬物選択マーカーの発現をポリペプチドの発現に結びつける要素のように、産物を発現する永続的で安定な細胞クローンを樹立するためのいくつかの主要な薬物選択マーカーの使用条件も提供される。
【0141】
本出願を通して、「発現構築体」という用語は、核酸コード配列の一部または全部が転写されうる遺伝子産物をコードする核酸を含む任意のタイプの遺伝子構築体を含むことが意図される。転写産物はタンパク質に翻訳されてもよいが、そうである必要はない。特定の態様において、発現は、遺伝子の転写および遺伝子産物へのmRNAの翻訳の両方を含む。他の態様において、発現は、関心対象の遺伝子をコードする核酸の転写を含むだけである。
【0142】
「ベクター」という用語は、核酸配列が複製されうる細胞への導入のため核酸配列が挿入されうる担体核酸分子をいうように用いられる。核酸配列は「外因性」であることができ、これにより、それがベクターを導入する細胞に対して外来であること、またはその配列が細胞における配列と相同であるが、配列が通常見出されない宿主細胞核酸内の位置にあることが意味される。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、ならびに人工染色体(例えば、YAC)が含まれる。当業者は、参照によりともに本明細書に組み入れられる、Sambrook et al. (1989)およびAusubel et al. (1994)に記述されている標準的な組み換え技法によりベクターを構築するために知識を身に付けているであろう。
【0143】
「発現ベクター」という用語は、転写されうる遺伝子産物の少なくとも一部をコードする核酸配列を含むベクターをいう。ある場合には、RNA分子はその後、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドに翻訳される。他の場合には、これらの配列は、例えば、アンチセンス分子またはリボザイムの産生において翻訳されない。発現ベクターは、特定の宿主生物における機能的に連結されたコード配列の転写および場合によっては翻訳に必要な核酸配列をいう種々の「制御配列」を含むことができる。転写および翻訳を統べる制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、同様に他の機能を果たす核酸配列を含むことができ、以下に記述される。
【0144】
2. siRNA
上記のように、本開示は、遺伝子または遺伝子産物の発現および/または活性化を低減するための1つまたは複数の阻害性核酸の使用を企図する。阻害性核酸の例としては、siRNA (低分子干渉RNA)、短鎖ヘアピンRNA (shRNA)、二本鎖RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムのような、核酸配列を標的にした分子およびアプタマーのような遺伝子または遺伝子産物を標的にした分子が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0145】
阻害性核酸は、遺伝子の転写を阻害するか、または細胞内の遺伝子転写産物の翻訳を妨げうる。阻害性核酸は、16〜1000ヌクレオチド長、および特定の態様において18〜100ヌクレオチド長でありうる。
【0146】
阻害性核酸は当技術分野において周知である。例えば、siRNA、shRNAおよび二本鎖RNAは、米国特許第6,506,559号および同第6,573,099号に、ならびに米国特許出願公開第2003/0051263号、同第2003/0055020号、同第2004/0265839号、同第2002/0168707号、同第2003/0159161号、および同第2004/0064842号に記述されており、これらの全ては参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0147】
1998年にFireおよび同僚らによるRNAiの発見以来、生化学的機構は急速に特徴付けられている。二本鎖RNA (dsRNA)は、RNAase IIIファミリーのリボヌクレアーゼであるDicerによって切断される。このプロセスにより、約21ヌクレオチド長のsiRNAが得られる。これらのsiRNAは、標的mRNAに導かれる多タンパク質RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み入れられる。RISCは、相補領域の中央で標的mRNAを切断する。哺乳動物細胞では、短いRNA断片(およそ22ヌクレオチド)である関連マイクロRNA (miRNA)が見出される。miRNAは、不完全なヘアピンRNA構造を有するより長い(およそ70ヌクレオチド)前駆体のDicer媒介切断後に生成される。miRNAは、標的mRNAの翻訳抑制をもたらすmiRNA-タンパク質複合体(miRNP)に組み入れられる。
【0148】
RNAi効果を生じさせることができる核酸をデザインする際には、siRNAの性質、サイレンシング効果の持続性、および送達系の選択のような、考慮する必要のあるいくつかの要因がある。RNAi効果をもたらすために、生物に導入されるsiRNAは、典型的には、エクソン配列を含むであろう。さらに、RNAiプロセスは相同性に依存するので、相同であるが遺伝子特異的ではない配列間の交差干渉の可能性を最小にしながら、遺伝子特異性を最大とするように配列を注意深く選択しなければならない。特に、siRNAは、siRNAの配列とEphAヌクレオチド配列の一部との間で、80、85、90、95、98%あるいは100%超の同一性を示す。標的遺伝子と約80%未満の同一性の配列は実質的に有効性が低い。したがって、siRNAと阻害される遺伝子との間の同一性が高いほど、無関係の遺伝子の発現が影響を受ける可能性は低くなるであろう。
【0149】
さらに、siRNAのサイズは重要な考慮事項である。いくつかの態様において、本開示は、少なくとも約19〜25ヌクレオチドを含み、遺伝子発現を調節することができるsiRNA分子に関する。本開示の文脈において、siRNAは特に、500、200、100、50、25、または20ヌクレオチド長未満である。いくつかの態様において、siRNAは、約25ヌクレオチド〜約35ヌクレオチド長または約19ヌクレオチド〜約25ヌクレオチド長である。
【0150】
siRNA媒介遺伝子サイレンシングの有効性を改善するために、mRNA上の標的部位の選択のためのガイドラインが、siRNAの最適デザインのために開発されている(Soutschek et al., 2004; Wadhwa et al., 2004)。これらの戦略は、最大の遺伝子ノックダウンを達成するためにsiRNA配列を選択するための合理的なアプローチを可能にしうる。細胞および組織へのsiRNAの侵入を容易にするため、アデノウイルス、レンチウイルスおよびレトロウイルスのようなプラスミドおよびウイルスベクターを含む種々のベクターが用いられている(Wadhwa et al., 2004)。
【0151】
阻害性核酸内で、核酸の成分は、全体にわたって同じタイプまたは同種のものである必要はない(例えば、阻害性核酸は、ヌクレオチドおよび核酸またはヌクレオチド類似体を含みうる)。典型的には、阻害性核酸は二本鎖構造を形成する; 二本鎖構造は、部分的にまたは完全に相補的な2つの別個の核酸から生じうる。本開示の特定の態様において、阻害性核酸は、単一の核酸(ポリヌクレオチド)または核酸類似体のみを含み、それ自体で相補的になる(例えば、ヘアピンループを形成する)ことにより二本鎖構造を形成しうる。阻害性核酸の二本鎖構造は、その導出可能な全ての範囲を含めて、16〜500またはそれ以上の連続した核酸塩基を含みうる。阻害性核酸は、相補的核酸(これは同じ核酸の別の部分または別個の相補的核酸でありうる)とハイブリダイズして二本鎖構造を形成する17〜35個の連続核酸塩基、より詳細には18〜30個の連続核酸塩基、より詳細には19〜25核酸塩基、より詳細には20〜23個の連続核酸塩基、または20〜22個の連続核酸塩基、または21個の連続核酸塩を含みうる。
【0152】
siRNAは、商業的供給源、天然供給源から得ることができ、または当業者に周知のいくつかの技法のいずれかを用いて合成することができる。例えば、予めデザインされたsiRNAの商業的供給源にはInvitrogenのStealth(商標) Select技術(Carlsbad, CA)、Ambion(登録商標) (Austin, TX)、およびQiagen(登録商標) (Valencia, CA)が含まれる。本開示の組成物および方法に適用できる阻害性核酸は、遺伝子または遺伝子産物の検証された下方調節因子であることが任意の供給源によって見出された任意の核酸配列でありうる。
【0153】
いくつかの態様において、本開示は、遺伝子をコードする核酸の少なくとも10個、しかし30個以下の連続するヌクレオチドに実質的に相補的であり、かつ遺伝子または遺伝子産物の発現を低減させる少なくとも1つの鎖を有する、少なくとも19個のヌクレオチドの単離されたsiRNA分子を特徴とする。本開示の1つの態様において、siRNA分子は、遺伝子または遺伝子産物をコードするmRNAの少なくとも10個、しかし30個以下の連続するヌクレオチドに実質的に相補的な少なくとも1つの鎖を有する。
【0154】
1つの態様において、siRNA分子は、標的治療用タンパク質をコードする核酸配列のいずれかの少なくとも10個の連続するヌクレオチドと、少なくとも75、80、85、または90%相同であり、特に少なくとも95%、99%、または100%類似または同一であり、または前記の間の任意の割合そうである(例えば、本開示は75%およびそれ以上、80%およびそれ以上、85%およびそれ以上などを企図し、前記範囲はそれらの間の全ての整数を含むように意図される)。
【0155】
siRNAはまた、1つまたは複数のヌクレオチドの改変を含みうる。そのような改変は、19〜25ヌクレオチドRNAの末端または内部(RNAの1つまたは複数のヌクレオチドの位置)へのような、非ヌクレオチド材料の付加を含むことができる。特定の局面において、RNA分子は3'-ヒドロキシル基を含む。本開示のRNA分子中のヌクレオチドは、天然に存在しないヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含む、非標準ヌクレオチドを含むこともできる。二本鎖オリゴヌクレオチドは、修飾された骨格、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、または当技術分野において公知の他の修飾骨格を含み、または非天然ヌクレオシド間結合を含みうる。siRNAのさらなる修飾(例えば、2'-O-メチルリボヌクレオチド、2'-デオキシ-2'-フルオロリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、5-C-メチルヌクレオチド、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオチド間結合、および逆位デオキシ塩基性残基の組み入れ)は、米国特許出願公開第2004/0019001号および米国特許第6,673,611号(この各々は、参照によりその全体が組み入れられる)において見出すことができる。集合的に、そのような改変された全ての上記核酸またはRNAは、修飾siRNAといわれる。
【0156】
1つの態様において、siRNAは、特定の遺伝子産物の発現を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれ以上、または前記の間の任意の範囲だけ減少させることができる。
【0157】
3. tRNA
いくつかの局面において、本組成物はトランスファーRNA (tRNAとして知られる)を含む。本明細書において用いられる場合、トランスファーRNAまたはtRNAという用語は、特に明記しない限り、伝統的なtRNA分子および1つまたは複数の修飾を有するtRNA分子の両方をいう。トランスファーRNAは、長さが約70〜100ヌクレオチドのRNA重合体である。タンパク質合成中に、tRNAは、伸長中のペプチド鎖への付加のため、リボソームにアミノ酸を送達する。活性tRNAは、その合成中にtRNAに転写されうるか、または転写後プロセッシング中に後で付加されうる3' CCA尾部を有する。アミノ酸は3'末端リボースの2'または3'ヒドロキシル基に共有結合して、アミノアシル-tRNA (aa-tRNA)を形成する; アミノ酸は自発的に2'-OHから3'-OHへ、およびその逆に移動することができるが、しかしそれは3'-OH位からリボソームの位置で伸長中のタンパク質鎖に組み入れられる。折り畳まれたaa-tRNA分子の他端のループは、アンチコドンとして知られる3塩基の配列を含む。このアンチコドン配列がリボソーム結合メッセンジャーRNA (mRNA)中の3塩基コドン配列と塩基対合すると、aa-tRNAはリボソームに結合し、そのアミノ酸は新生タンパク質鎖に組み入れられる。特定のコドンと塩基対合する全てのtRNAは単一の特定のアミノ酸でアミノアシル化されているので、遺伝暗号の翻訳はtRNAによってもたらされる; mRNA中の61個の非終止コドンのそれぞれがその同族aa-tRNAの結合および伸長中のタンパク質重合体への単一の特定アミノ酸の付加を指令する。いくつかの態様において、tRNAは、aa-tRNAがmRNA上の異なるコドンと塩基対合するように、tRNAのアンチコドン領域中に変異を含みうる。特定の態様において、変異tRNAは、mRNAによってコードされるアミノ酸とは異なるアミノ酸を伸長中のタンパク質鎖に導入する。他の態様において、変異tRNAは、終止コドンと塩基対合し、タンパク質合成を終結させる代わりにアミノ酸を導入し、それによって新生ペプチドを伸長させ続けることを可能にする。いくつかの態様において、野生型または変異型のtRNAは、終止コドンを読み通し、タンパク質合成を終結させる代わりにアミノ酸を導入しうる。いくつかの態様において、tRNAは、3'末端CCAヌクレオチドが含まれる完全長tRNAを含みうる。他の態様において、3'-末端-A、-CAまたは-CCAを欠くtRNAは、インビボでCCA付加酵素によって全長になる。
【0158】
他の局面において、本組成物は、以下を含む1つまたは複数の修飾tRNA分子をさらに含みうる: アシル化tRNA; アルキル化tRNA; アデニン、シトシン、グアニン、またはウラシル以外の1つまたは複数の塩基を含むtRNA; 蛍光、親和性、反応性、スペクトルまたは他のプローブ部分の結合によって共有結合的に修飾されたtRNA; メチル化またはその他の方法で修飾された1つまたは複数のリボース部分を含むtRNA; 試薬の担体として、または蛍光、反応性、親和性、スペクトルまたは他のプローブとして機能する非天然アミノ酸を含む、20種の天然アミノ酸以外のアミノ酸でアミノアシル化されたaa-tRNA; あるいはこれらの組成物の任意の組み合わせ。修飾tRNA分子のいくつかの例は、Soll, et al., 1995; El Yacoubi, et al., 2012; Grosjean and Benne, et al., 1998; Hendrickson, et al., 2004; Ibba and Soll, 2000; Johnson, et al., 1995; Johnson, et al., 1982; Crowley, et al., 1994; Beier and Grimm, 2001; Torres, et al., 2014; およびBjork, et al., 1987により教示されており、これらの全てが参照により本明細書に組み入れられる。
【0159】
4. mRNA
いくつかの局面において、本発明の化合物および組成物は、細胞へのmRNAの送達において用いられうる。メッセンジャーRNAまたはmRNAは、遺伝暗号をDNAからリボソームに伝達する短いRNA鎖であるので、それは機能的タンパク質またはペプチドに翻訳されうる。本明細書において記述されるmRNAは、プロセッシングされていないか、またはプロセッシングを受けてポリ(A)尾部を付加しているか、インビボで編集されるか、または5'キャップが付加されていてもよい。本発明の組成物は、プロセッシングを受けていないもの、またはさらにプロセッシングされたものを含めて種々の異なるmRNAの送達において企図される。さらに、これらの核酸は治療的に用いられてもよく、インビボで、またはワクチン製剤中で抗体を産生するために用いられてもよい。
【0160】
5. CRISPR関連RNA
いくつかの局面において、本発明の化合物および組成物は、CRISPR遺伝子編集で用いるために核酸配列を送達するために用いられうる。本明細書において用いられうるCRISPR/CasヌクレアーゼまたはCRISPR/Casヌクレアーゼシステムは、ヌクレアーゼ機能性(例えば、2つのヌクレアーゼドメイン)により、DNA、およびCasタンパク質(例えば、Cas9)に配列特異的に結合する、非コードRNA分子(ガイド) RNA (sgRNA)を含むことができる。
【0161】
いくつかの局面において、CasヌクレアーゼおよびsgRNA (標的配列に特異的なcrRNAおよび固定されたtracrRNAの融合体を含む)が細胞に導入される。一般に、sgRNAの5'末端の標的部位は、相補的塩基対合を用い、標的部位、例えば遺伝子へとCasヌクレアーゼを標的指向させる。標的部位は、典型的にはNGGまたはNAGのような、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列のすぐ5'側のその位置に基づいて選択されうる。この点において、sgRNAは、標的DNA配列に対応するようにガイドRNAの最初の20ヌクレオチドを修飾することによって所望の配列に標的指向化される。一般に、CRISPRシステムは、標的配列の部位でのCRISPR複合体の形成を促進する要素によって特徴付けられる。典型的には、「標的配列」は一般に、標的配列とガイド配列との間のハイブリダイゼーションがCRISPR複合体の形成を促進する、相補性を有するようにガイド配列がデザインされている配列をいう。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性がある限り、完全な相補性は必ずしも必要ではない。一般に、ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズするために、および標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指令するために標的ポリヌクレオチド配列と十分な相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列である。いくつかの態様において、ガイド配列と対応するその標的配列との間の相補性の程度は、適当なアライメントアルゴリズムを用いて最適にアライメントされた場合、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%またはそれ以上であるか、または約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%またはそれ以上を超える。
【0162】
最適なアライメントは、配列をアライメントするための任意の適当なアルゴリズムの使用により判定されてもよく、その非限定的な例としては、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler Transformに基づくアルゴリズム(例えばBurrows Wheeler Aligner)、Clustal W、Clustal X、BLAT、Novoalign (Novocraft Technologies, ELAND (Illumina, San Diego, Calif.)、SOAP (soap.genomics.org.cnで利用可能)、およびMaq (maq.sourceforge.netで利用可能)が挙げられる。いくつかの態様において、本明細書において記述される組成物は、1つまたは複数の細胞にCRISPR核酸およびヌクレアーゼを送達するために用いられてもよく、または核酸のみの送達を指令するために用いられてもよいことが企図される。
【0163】
6. 修飾された核酸塩基
いくつかの態様において、本開示の核酸は、修飾された糖部分を含む1つまたは複数の修飾されたヌクレオシドを含む。1つまたは複数の糖修飾されたヌクレオシドを含むそのような化合物は、天然の糖部分を含むヌクレオシドのみを含むオリゴヌクレオチドと比べて、標的核酸との増大したヌクレアーゼ安定性または増加した結合親和性のような、望ましい特性を有しうる。いくつかの態様において、修飾された糖部分は置換された糖部分である。いくつかの態様において、修飾された糖部分は糖代用物である。そのような糖代用物は、置換された糖部分の置換に対応する1つまたは複数の置換を含みうる。
【0164】
いくつかの態様において、修飾された糖部分は、2'位および/または5'位の置換基を含むがこれらに限定されない、1つまたは複数の非架橋糖置換基を含む置換された糖部分である。2'-位に適した糖置換基の例としては、2'-F、2'-OCH
3 (「OMe」または「O-メチル」)、および2'-O(CH
2)
2OCH
3 (「MOE」)が挙げられるが、これらに限定されることはない。特定の態様において、2'位の糖置換基は、アリル、アミノ、アジド、チオ、O-アリル、O--C
1〜C
10アルキル、O--C
1〜C
10置換アルキル; OCF
3、O(CH
2)
2SCH
3、O(CH
2)
2--O--N(Rm)(Rn)、およびO--CH
2--C(=O)--N(Rm)(Rn)から選択され、各RmおよびRnは、独立して、Hまたは置換または非置換C
1〜C
10アルキルである。5'位の糖置換基の例としては、5'-メチル(RまたはS); 5'-ビニル、および5'-メトキシが挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの態様において、置換された糖は、2つ以上の非架橋糖置換基、例えば、T-F-5'-メチル糖部分を含む(例えば、さらなる5',2'-ビス置換糖部分およびヌクレオシドの場合、PCT国際出願WO 2008/101157を参照のこと)。
【0165】
2'-置換糖部分を含むヌクレオシドは2'-置換ヌクレオシドといわれる。いくつかの態様において、2'-置換ヌクレオシドは、ハロ、アリル、アミノ、アジド、SH、CN、OCN、CF
3、OCF
3、O、S、またはN(R
m)-アルキル; O、S、またはN(R
m)-アルケニル; O、SまたはN(R
m)-アルキニル; O-アルキレニル-O-アルキル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリール、O-アラルキル、O(CH
2)
2SCH
3、O(CH
2)
2--O--N(R
m)(R
n)またはO--CH
2--C(=O)--N(R
m)(R
n)から選択される2'-置換基を含み、各R
mおよびR
nは、独立して、H、アミノ保護基または置換または非置換C
1〜C
10アルキルである。これらの2'-置換基は、ヒドロキシル、アミノ、アルコキシ、カルボキシ、ベンジル、フェニル、ニトロ(NO
2)、チオール、チオアルコキシ(S-アルキル)、ハロゲン、アルキル、アリール、アルケニルおよびアルキニルから独立して選択される1つまたは複数の置換基でさらに置換することができる。
【0166】
いくつかの態様において、2'-置換ヌクレオシドは、F、NH
2、N
3、OCF
3、O--CH
3、O(CH
2)
3NH
2、CH
2-CH=CH
2、O--CH
2-CH=CH
2、OCH
2CH
2OCH
3、O(CH
2)
2SCH
3、O--(CH
2)
2--O--N(R
m)(R
n)、O(CH
2)
2O(CH
2)
2N(CH
3)
2、およびN-置換アセトアミド(O--CH
2--C(=O)--N(R
m)(R
n)から選択される2'-置換基を含み、各R
mおよびR
nは、独立して、H、アミノ保護基または置換または非置換C
1〜C
10アルキルである。
【0167】
いくつかの態様において、2'-置換ヌクレオシドは、F、OCF
3, O--CH
3, OCH
2CH
2OCH
3, O(CH
2)
2SCH
3, O(CH
2)
2--O--N(CH
3)
2, --O(CH
2)
2O(CH
2)
2N(CH
3)
2、およびO--CH
2--C(=O)--N(H)CH
3から選択される2'-置換基を含む糖部分を含む。
【0168】
いくつかの態様において、2'-置換ヌクレオシドは、F、O--CH
3、およびOCH
2CH
2OCH
3から選択される2'-置換基を含む糖部分を含む。
【0169】
特定の修飾糖部分は、二環式糖部分を生じる第二の環を形成する架橋糖置換基を含む。いくつかのそのような態様において、二環式糖部分は、4'および2'フラノース環原子の間の架橋を含む。そのような4'-2'糖置換基の例としては、--[C(R
a)(R
b)]
n--、--[C(R
a)(R
b)]
n--O--、--C(R
aR
b)--N(R)--O--または、--C(R
aR
b)--O--N(R)--; 4'-CH
2-2'、4'-(CH
2)
2-2'、4'-(CH
2)--O-2' (LNA); 4'-(CH
2)--S-2'; 4'-(CH
2)
2--O-2' (ENA); 4'-CH(CH
3)--O-2' (cEt)および4'-CH(CH
2OCH
3)--O-2'、ならびにそれらの類似体(例えば、米国特許第7,399,845号参照); 4'-C(CH
3)(CH
3)--O-2'およびその類似体(例えば、WO 2009/006478参照); 4'-CH
2--N(OCH
3)-2'およびその類似体(例えば、WO2008/150729参照); 4'-CH
2--O--N(CH
3)-2' (例えば、2004年9月2日付で公開されたUS2004/0171570を参照のこと); 4'-CH
2--O--N(R)-2'、および4'-CH
2--N(R)--O-2'-が挙げられるが、これらに限定されることはなく、式中、各Rは、独立して、H、保護基、またはC
1〜C
12アルキル; 4'-CH
2--N(R)--O-2'であり、式中、RはH、C
1〜C
12アルキル、または保護基(米国特許第7,427,672号参照); 4'-CH
2--C(H)(CH
3)-2' (例えば、Chattopadhyaya et al., J. Org. Chem., 2009, 74, 118-134を参照のこと); ならびに4'-CH
2--C(=CH
2)-2'およびその類似体(PCT国際出願WO 2008/154401を参照のこと)である。
【0170】
いくつかの態様において、そのような4'-2'架橋は独立して、--[C(R
a)(R
b)]
n--、--C(R
a)=C(R
b)--、--C(R
a)=N--、--C(=NR
a)--、--C(=O)--、--C(=S)--、--O--、--Si(R
a)
2--、--S(=O)
x--、および--N(R
a)--から独立して選択される1〜4個の連結基を含み; 式中、
xは0、1、または2であり;
nは1、2、3、または4であり;
各R
aおよびR
bは、独立して、H、保護基、ヒドロキシル、C
1〜C
12アルキル、置換されたC
1〜C
12アルキル、C
2〜C
12アルケニル、置換されたC
2〜C
12アルケニル、C
2〜C
12アルキニル、置換されたC
2〜C
12アルキニル、C
5〜C
20アリール、置換されたC
5〜C
20アリール、複素環基、置換された複素環基、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、C
5〜C
7脂環式基、置換されたC
5〜C
7脂環式基、ハロゲン、OJ
1、NJ
1J
2、SJ
1、N
3、COOJ
1、アシル(C(=O)--H)、置換されたアシル、CN、スルホニル(S(=O)
2-J
1)、またはスルホキシル(S(=O)-J
1)であり; ならびに
各J
1およびJ
2は、独立して、H、C
1〜C
12アルキル、置換されたC
1〜C
12アルキル、C
2〜C
12アルケニル、置換されたC
2〜C
12アルケニル、C
2〜C
12アルキニル、置換されたC
2〜C
12アルキニル、C
5〜C
20アリール、置換されたC
5〜C
20アリール、アシル(C(=O)--H)、置換されたアシル、複素環基、置換された複素環基、C
1〜C
12アミノアルキル、置換されたC
1〜C
12アミノアルキル、または保護基である。
【0171】
二環式糖部分を含むヌクレオシドは、二環式ヌクレオシドまたはBNAといわれる。二環式ヌクレオシドには、(A) α-L-メチレンオキシ(4'-CH
2--O-2') BNA、(B) β-D-メチレンオキシ(4'-CH
2--O-2') BNA (ロックド核酸またはLNAともいわれる)、(C) エチレンオキシ(4'-(CH
2)
2--O-2') BNA、(D) アミノオキシ(4'-CH
2--O--N(R)-2') BNA、(E) オキシアミノ(4'-CH
2--N(R)--O-2') BNA、(F) メチル(メチレンオキシ) (4'-CH(CH
3)--O-2') BNA (拘束エチルまたはcEtともいわれる)、(G) メチレン-チオ(4'-CH
2--S-2') BNA、(H) メチレン-アミノ(4'-CH2-N(R)-2') BNA、(I) メチル炭素環式(4'-CH
2--CH(CH
3)-2') BNA、(J) プロピレン炭素環式(4'-(CH
2)
3-2') BNA、および(K) メトキシ(エチレンオキシ) (4'-CH(CH
2OMe)-O-2') BNA (拘束MOEまたはcMOEともいわれる)が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0172】
さらなる二環式糖部分は、当技術分野において公知である、例えば: Singh et al., Chem. Commun., 1998, 4, 455-456; Koshkin et al., Tetrahedron, 1998, 54, 3607-3630; Wahlestedt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 2000, 97, 5633-5638; Kumar et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1998, 8, 2219-2222; Singh et al., J. Org. Chem., 1998, 63, 10035-10039; Srivastava et al., J. Am. Chem. Soc., 129(26) 8362-8379 (Jul. 4, 2007); Elayadi et al., Curr. Opinion Invens. Drugs, 2001, 2, 5561; Braasch et al., Chem. Biol., 2001, 8, 1-7; Orum et al., Curr. Opinion Mol. Ther., 2001, 3, 239-243; 米国特許第7,053,207号、同第6,268,490号、同第6,770,748号、同第6,794,499号、同第7,034,133号、同第6,525,191号、同第6,670,461号、および同第7,399,845号; WO 2004/106356、WO 1994/14226、WO 2005/021570、およびWO 2007/134181; 米国特許出願公開第2004/0171570号、同第2007/0287831号、および同第2008/0039618号; 米国特許出願第12/129,154号、同第60/989,574号、同第61/026,995号、同第61/026,998号、同第61/056,564号、同第61/086,231号、同第61/097,787号、および同第61/099,844号; ならびにPCT国際出願番号PCT/US2008/064591、PCT/US2008/066154、およびPCT/US2008/068922。
【0173】
いくつかの態様において、二環式糖部分およびそのような二環式糖部分を組み入れたヌクレオシドは、異性立体配置によってさらに定義される。例えば、4'-2'メチレン-オキシ架橋を含むヌクレオシドは、α-L配置またはβ-D配置にありうる。これまでに、α-L-メチレンオキシ(4'-CH
2--O-2')二環式ヌクレオシドは、アンチセンス活性を示すアンチセンスオリゴヌクレオチドに組み入れられている(Frieden et al., Nucleic Acids Research, 2003, 21, 6365-6372)。
【0174】
いくつかの態様において、置換された糖部分は、1つまたは複数の非架橋糖置換基および1つまたは複数の架橋糖置換基(例えば、5'-置換および4'-2'架橋糖; PCT国際出願WO 2007/134181、ここではLNAが、例えば、5'-メチルまたは5'-ビニル基で置換されている)を含む。
【0175】
いくつかの態様において、修飾された糖部分は糖代用物である。いくつかのそのような態様において、天然糖の酸素原子は、例えば、硫黄、炭素または窒素原子で置換される。いくつかのそのような態様において、そのような修飾された糖部分はまた、上記のように架橋および/または非架橋置換基を含む。例えば、特定の糖代用物は、4'-硫黄原子および置換を2'-位(例えば、公開された米国特許出願第2005/0130923号を参照のこと)および/または5'位に含む。さらなる例として、4'-2'架橋を有する炭素環式二環式ヌクレオシドが記述されている(例えば、Freier et al., Nucleic Acids Research, 1997, 25(22), 4429-4443およびAlbaek et al., J. Org. Chem., 2006, 71, 7731-7740を参照のこと)。
【0176】
いくつかの態様において、糖代用物は、5-原子以外の環を含む。例えば、いくつかの態様において、糖代用物は、6員テトラヒドロピランを含む。そのようなテトラヒドロピランは、さらに修飾されまたは置換されうる。そのような修飾されたテトラヒドロピランを含むヌクレオシドには、ヘキシトール核酸(HNA)、アニトール核酸(ANA)、マンニトール(manitol)核酸(MNA) (Leumann, C J. Bioorg. & Med. Chem. (2002) 10:841-854を参照のこと)、およびフルオロHNA (F-HNA)が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0177】
いくつかの態様において、q
1、q
2、q
3、q
4、q
5、q
6およびq
7がそれぞれHである式VIIの修飾されたTHPヌクレオシドが提供される。特定の態様において、q
1、q
2、q
3、q
4、q
5、q
6およびq
7の少なくとも1つはH以外である。いくつかの態様において、q
1、q
2、q
3、q
4、q
5、q
6およびq
7の少なくとも1つはメチルである。いくつかの態様において、R
1およびR
2の1つがFである式VIIのTHPヌクレオシドが提供される。特定の態様において、R
1はフルオロであり、かつR
2はHであり、R
1はメトキシであり、かつR
2はHであり、およびR
1はメトキシエトキシであり、かつR
2はHである。
【0178】
アンチセンス化合物への組み入れのためのヌクレオシドを修飾するために用いることができる多くの他のビシクロおよびトリシクロ糖代用物環系も当技術分野において公知である(例えば、総説: Leumann, J. C, Bioorganic & Medicinal Chemistry, 2002, 10, 841-854を参照のこと)。
【0179】
非限定的に、2'-F-5'-メチル置換ヌクレオシド(他の開示された5',2'-ビス置換ヌクレオシドの場合にはPCT国際出願WO 2008/101157を参照のこと)ならびにSでのリボシル環酸素原子の置換および2'位でのさらなる置換(米国特許出願第2005/0130923号参照)あるいは二環式核酸の5'置換(PCT国際出願WO 2007/134181を参照されたく、4'-CH
2--O-2'二環式ヌクレオシドは、5'の位置で5'-メチルまたは5'-ビニル基によりさらに置換されている)のような、修飾の組み合わせも提供される。また、炭素環式二環式ヌクレオシドの合成および調製はそのオリゴマー化および生化学的研究とともに記述されている(例えば、Srivastava et al., J. Am. Chem. Soc. 2007, 129(26), 8362-8379を参照のこと)。
【0180】
いくつかの態様において、本開示は、修飾されたヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチドを提供する。それらの修飾されたヌクレオチドは、修飾された糖、修飾された核酸塩基、および/または修飾された結合を含みうる。特定の修飾は、得られたオリゴヌクレオチドが所望の特徴を保有するように選択される。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のRNA様ヌクレオシドを含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のDNA様ヌクレオチドを含む。
【0181】
いくつかの態様において、本開示のヌクレオシドは、1つまたは複数の未修飾核酸塩基を含む。特定の態様において、本開示のヌクレオシドは、1つまたは複数の修飾核酸塩基を含む。
【0182】
いくつかの態様において、修飾された核酸塩基は、本明細書において定義される普遍的塩基、疎水性塩基、無差別(promiscuous)塩基、サイズ拡張塩基、およびフッ素化塩基、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンならびにN-2、N-6およびO-6置換プリン; 5-プロピニルシトシン; 5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルCH
3)ウラシルおよびシトシンならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6-アザ(azo)ウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルならびに他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニン、本明細書において定義される普遍的塩基、疎水性塩基、無差別(promiscuous)塩基、サイズ拡張塩基、およびフッ素化塩基から選択される。さらに修飾された核酸塩基には、フェノキサジンシチジン([5,4-b][1,4]ベンゾオキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾチアジン-2(3H)-オン)のような三環式ピリミジン、置換フェノキサジンシチジン(例えば、9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド[5,4-13][1,4]ベンゾオキサジン-2(3H)-オン)、カルバゾールシチジン(
2H-ピリミド[4,5-b]インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド[3',2':4,5]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-オン)のようなG-クランプが含まれる。修飾された核酸塩基はまた、プリンまたはピリミジン塩基が他の複素環で置換されたもの、例えば7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジンおよび2-ピリドンを含みうる。さらなる核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に開示されているもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, Kroschwitz, J. I., Ed., John Wiley & Sons, 1990, 858-859に開示されているもの; Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613により開示されているもの; およびSanghvi, Y. S., Chapter 15, Antisense Research and Applications, Crooke, S. T. and Lebleu, B., Eds., CRC Press, 1993, 273-288により開示されているものが含まれる。
【0183】
特定の上記の修飾された核酸塩基および他の修飾された核酸塩基の調製を教示する代表的な米国特許には、非限定的に、米国特許第3,687,808号; 同第4,845,205号; 同第5,130,302号; 同第5,134,066号; 同第5,175,273号; 同第5,367,066号; 同第5,432,272号; 同第5,457,187号; 同第5,459,255号; 同第5,484,908号; 同第5,502,177号; 同第5,525,711号; 同第5,552,540号; 同第5,587,469号; 同第5,594,121号; 同第5,596,091号; 同第5,614,617号; 同第5,645,985号; 同第5,681,941号; 同第5,750,692号; 同第5,763,588号; 同第5,830,653号および同第6,005,096号が含まれ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0184】
いくつかの態様において、本開示は、結合したヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチドを提供する。そのような態様において、ヌクレオシドは、任意のヌクレオシド間結合を用いてともに連結されうる。ヌクレオシド間連結基の2つの主なクラスは、リン原子の存在または非存在によって定義される。代表的なリン含有ヌクレオシド間結合には、ホスホジエステル(P=O)、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホラミデートおよびホスホロチオエート(P=S)が含まれるが、これらに限定されることはない。代表的な非リン含有ヌクレオシド間連結基には、メチレンメチルイミノ(--CH
2--N(CH
3)--O--CH
2--)、チオジエステル(--O--C(O)--S--)、チオノカルバメート(--O--C(O)(NH)--S--); シロキサン(--O--Si(H)
2--O--); およびN,N'-ジメチルヒドラジン(--CH
2--N(CH
3)--N(CH
3)--)が含まれるが、これらに限定されることはない。天然のホスホジエステル結合と比較して、修飾された結合は、オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性を変化させる、典型的には増加させるために用いることができる。いくつかの態様において、キラル原子を有するヌクレオシド間結合は、ラセミ混合物として、または別個の鏡像異性体として調製することができる。代表的なキラル結合には、アルキルホスホネートおよびホスホロチオエートが含まれるが、これらに限定されることはない。リン含有および非リン含有ヌクレオシド間結合の調製の方法は、当業者に周知である。
【0185】
本明細書において記述されるオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の不斉中心を含み、したがって絶対立体化学に関して、(R)または(S)、糖アノマーの場合のようなαまたはβ、またはアミノ酸などの場合のような(D)または(L)として定義されうる鏡像異性体、ジアステレオマー、および他の立体異性体配置を生じる。本明細書において提供されるアンチセンス化合物に含まれるのは、全てのそのような可能な異性体、ならびにそれらのラセミ体および光学的に純粋な形態である。
【0186】
中性のヌクレオシド間結合には、非限定的に、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、MMI (3'-CH
2--N(CH
3)--O-5')、アミド-3 (3'-CH
2--C(=O)--N(H)-5')、アミド-4 (3'-CH
2--N(H)--C(=O)-5')、ホルムアセタール(3'-O--CH
2--O-5')、およびチオホルムアセタール(3'-S--CH
2--O-5')が含まれる。さらなる中性のヌクレオシド間結合には、シロキサン(ジアルキルシロキサン)、カルボキシレートエステル、カルボキサミド、スルフィド、スルホネートエステルおよびアミドを含む非イオン結合が含まれる(例えば: Carbohydrate Modifications in Antisense Research; Y. S. Sanghvi and P. D. Cook, Eds., ACS Symposium Series 580; Chapters 3 and 4, 40-65を参照のこと)。さらなる中性のヌクレオシド間結合には、混合されたN、O、SおよびCH
2構成部分を含む非イオン結合が含まれる。
【0187】
オリゴヌクレオチド上の他の位置、特に3'末端ヌクレオチド上の糖の3'位および5'末端ヌクレオチドの5'位でさらなる修飾を行うこともできる。例えば、本開示のリガンド結合オリゴヌクレオチドの1つのさらなる修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取り込みを増強する1つまたは複数のさらなる非リガンド部分またはコンジュゲートをオリゴヌクレオチドに化学的に連結することを伴う。そのような部分には、コレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 6553)のような脂質部分、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4, 1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-5-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10, 111; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259, 327; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75, 49)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923)が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0188】
そのようなオリゴヌクレオチドコンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許には、米国特許第4,828,979号; 同第4,948,882号; 同第5,218,105号; 同第5,525,465号; 同第5,541,313号; 同第5,545,730号; 同第5,552,538号; 同第5,578,717号、同第5,580,731号; 同第5,580,731号; 同第5,591,584号; 同第5,109,124号; 同第5,118,802号; 同第5,138,045号; 同第5,414,077号; 同第5,486,603号; 同第5,512,439号; 同第5,578,718号; 同第5,608,046号; 同第4,587,044号; 同第4,605,735号; 同第4,667,025号; 同第4,762,779号; 同第4,789,737号; 同第4,824,941号; 同第4,835,263号; 同第4,876,335号; 同第4,904,582号; 同第4,958,013号; 同第5,082,830号; 同第5,112,963号; 同第5,214,136号; 同第5,082,830号; 同第5,112,963号; 同第5,214,136号; 同第5,245,022号; 同第5,254,469号; 同第5,258,506号; 同第5,262,536号; 同第5,272,250号; 同第5,292,873号; 同第5,317,098号; 同第5,371,241号、同第5,391,723号; 同第5,416,203号、同第5,451,463号; 同第5,510,475号; 同第5,512,667号; 同第5,514,785号; 同第5,565,552号; 同第5,567,810号; 同第5,574,142号; 同第5,585,481号; 同第5,587,371号; 同第5,595,726号; 同第5,597,696号; 同第5,599,923号; 同第5,599,928号および同第5,688,941号が含まれるが、これらに限定されることはなく、これらの各々は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0189】
E. キット
本開示はまた、キットを提供する。本明細書において開示される成分のいずれも、キットの形態で組み合わせることができる。いくつかの態様において、キットは、上記のまたは特許請求の範囲におけるポリエステル重合体または組成物を含む。
【0190】
キットは一般に、成分が配され、好ましくは、適当に分注されうる、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器を含む。キット中に2つ以上の成分がある場合、キットはまた、一般に、さらなる成分が別個に配されうる、第2、第3または他のさらなる容器を含む。しかしながら、成分のさまざまな組み合わせを容器に含めることができる。いくつかの態様において、核酸送達成分の全てが単一の容器中で組み合わされる。他の態様において、本化合物または組成物を有する核酸送達成分の一部または全部が別個の容器中で提供される。
【0191】
本開示のキットはまた、典型的には、商業的販売のために密閉してさまざまな容器を含むための包装を含む。そのような包装は、所望の容器が保持される厚紙または射出またはブロー成形プラスチック包装を含みうる。キットはまた、キット成分を利用するための説明書を含みうる。説明書は、実行可能なバリエーションを含みうる。
【実施例】
【0192】
F. 実施例
以下の実施例は、本開示の好ましい態様を実証するために含まれる。以下の実施例において開示される技法は、本開示の実践において良好に機能するように発明者によって発見された技法を表し、したがって、その実践のための好ましい様式を構成すると考えることができることが、当業者には理解されるべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示された特定の態様において多くの変更をなすことができ、それでもなお、同様のまたは類似の結果を得ることができることを認識すべきである。
【0193】
実施例1: 材料および器具
細胞培養:
Calu-6およびCalu-3細胞を、American Type Culture Collectionから入手し、5% FBS (Gemini Bio-Products)を補充したL-グルタミンおよび25 mM HEPESを有するRMP1 1640 (Corning)培地の中で培養した。IB3-1細胞は、Harvey Pollardから親切にも提供され、無血清LHC-8 (Invitrogen)培地中で培養された。HEK 293細胞をAmerican Type Culture Collectionから入手し、10% FBS (Gemini Bio-Products)を補充したDMEM (Invitrogen)の中で培養した。HeLa-Luc細胞およびA549-Luc細胞を、5% FBS (Sigma-Aldrich)を補充したフェノールレッド不含DMEM高グルコース培地(Hyclone)の中で培養した。IGROV1細胞を、5% FBSを補充した、重炭酸ナトリウムおよびL-グルタミンを有するRPMI 1640 (Sigma-Aldrich)の中で培養した。
【0194】
抗体および試薬:
p53 DO-1(#sc-126)およびGFP C2 (#sc-390394)抗体をSanta Cruz Biotechnology, Inc.から購入した。アクチン抗体(MAB1501)をEMD Milliporeから購入した。CFTR 596抗体をUNC Antibody Distribution Programから購入した。非アシル化大腸菌(E. coli) tRNA
Phe-Fl
8 (P05)をtRNA Probes, Inc.から購入した。RNAiMaxおよびLipofectamine 2000をInvitrogenから購入し、供給元の推奨プロトコルにしたがって使用した。G418 (sc-29065)をSanta Cruzから購入した。PTC124 (S6003)およびVX-770 (S1144)をSelleck Chemicalsから購入した。3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX) (I5879)およびフォルスコリン(F3917)をSigma-Aldrichから購入した。CFTR-Inh172をCFFT (Cystic Fibrosis Foundation Therapeutics, Inc)から入手した。
【0195】
CFTRのプラスミドおよび部位特異的突然変異誘発:
全長野生型CFTRの発現プラスミド(pBI-CFTR)をClontechから購入し、部位特異的突然変異誘発のための標準的なプロトコルを用いて突然変異誘発した(Sambrook et al., 1989)。PfuUltra High-Fidelity DNA Polymerase (Stratagene, Santa Clara, CA)を用いてPCR技法により部位特異的突然変異誘発を行った。全ての変異をDNA配列決定によって確認した。Sup-tRNA
Argは、Carla Oliveira (ポルト大学分子病理学および免疫学研究所(Institute of Molecular Pathology and Immunology of the University of Porto; IPATIMUP), Porto, Portugalからの寄贈品であった。
【0196】
成熟CFTRの定量法:
HEK293細胞を播種し(細胞9×10
5個)、CFTRプラスミドでトランスフェクトした。CFTRプラスミド2 μgおよびSup-tRNA
Arg 500 ngを、6ウェル形式でLipofectamine 2000 4 μlを用いて同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後にG418 (200 μg)またはPTC124 (40 μM)を培地に添加し、48時間そのままにした。IB3-1細胞を播種し、24時間後にG418 (0〜400 μG)またはPTC124 (0〜20 μM)を加えた。48時間後、細胞を2×サンプル緩衝液((Tris-HCL 250 mM, pH 6.8, 20%グリセロール, 2.5% SDS, 0.1%ブロモフェノールブルー)中で直接溶解した。細胞溶解物タンパク質を、トリス-グリシン緩衝系を用いて7%/10% step (wt/vol)ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によって分離し、ポリビニリデンフルオライドImmobilon膜(EMD Millipore)に転写した。ウエスタンブロット分析を、一次CFTR抗体(596) (University of North Carolina School of Medicine, Chapel Hill, NC)、アクチン抗体(EMD Millipore)、および二次抗体IRdye-680RD (Li-Cor)を用いて行い、Li-Cor Odyssey CLx (Li-Cor)を用いて画像化/定量化した。Prism 6 (Graphpad)を用いてデータをプロットした。
【0197】
HEK293細胞におけるCFTR依存性全細胞電流:
HEK293細胞を、CFTR成熟実験に用いたプラスミドでトランスフェクトした。CFTRプラスミド2 μgおよびSup-tRNA
Arg 500 ngを、6ウェル形式でLipofectamine 2000 4 μlを用いて同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、パッチクランプ技法の全細胞構成を用いてCl-電流を測定した。ピペット溶液は、145 mM NMDG+-Cl- , 1 mM MgCl2, 2 mM EGTA, 5 mM ATP, および10 mM HEPES (トリスでpH 7.3)を含有した。浴溶液は、145 mM NMDG+-Cl-, 1 mM MgCl
2, 1 mM CaCl
2, 10 mM HEPESおよび10 mMグルコース(トリスでpH 7.4)であった。電流をAxopatch 200Bパッチクランプ増幅器で記録し、2 kHzでデジタル化した。膜電位を0 mVの保持電位から200 msの場合には膜電位-40および+40 mVステップまでステッピングすることにより膜コンダクタンスを調べた。全細胞電流応答を、10 μMフォルスコリンに加えて100 μM IBMXおよび10 μM CFTRInh-172 (Inh-172)に応答して測定した。ピペットは、ピペット溶液で満たされ、シール抵抗が8 GUを超えると、3〜5 MΩの間の抵抗を有した。現記録および分析は、pClamp 9.2ソフトウェアで行い、Origin 8ソフトウェアで分析した。
【0198】
インビトロZALナノ粒子製剤化:
エタノール希釈法により脂質ナノ粒子を調製した。RNA (siRNA、tRNA、sgRNA、またはmRNAのいずれか)を酸性水性緩衝液(別段の指示がない限り、10 mMクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液pH3)中に希釈した。脂質混合物を、各成分のエタノールストック溶液からZAL、コレステロール、PEG-脂質、DSPC、およびまたはDOPEの適切なモル比で、エタノール中にて調製した。ピペットを介して、脂質希釈液を最終体積比1:3でRNA希釈液に添加し、ピペットによって素早く混合し、15〜20分間インキュベートした。このインキュベーション時間の後、粒子を、カルシウムおよびマグネシウム不含1×ダルベッコ改変PBS (Sigma-Aldrich)中で3倍希釈し、またはカルシウムおよびマグネシウム不含1×ダルベッコ改変PBS (Sigma-Aldrich)に対して透析した。透析をPur-A-Lyzer Midi透析チャンバ(Sigma-Aldrich)中でチャンバ当たりサンプル200 μLにつき1時間行った。
【0199】
ZAL siRNA送達ライブラリスクリーン:
エポキシドおよびアクリレート疎水性尾部で機能化されたZALのライブラリを、HeLa-Luc細胞におけるsiRNA送達効力についてスクリーニングした。乳白色96ウェルプレート組織培養プレートにおいて、HeLa細胞を、増殖培地(フェノールレッド不含DMEM, 5% FBS) 100 μL中に1ウェル当たり細胞10×10
3個の密度で播種し、終夜付着させた。アッセイの日に培地を新鮮増殖培地200 μLに交換した。粗ZAL生成物を、50:38.5 ZAL:コレステロールの処方脂質混合物を用いて調製し、ZAL中の疎水性尾部の数が製剤中のZAL:siRNAモル比を決めるようなZAL:siRNAはおよそ1000であって、これによりライブラリ全体で平均29.5 +/- 6.3の重量比で、最大のZALに対しての16:1 ZAL:siRNAおよび45:1 ZAL:siRNAのライブラリ全体での重量比範囲が得られた。ZAL NP製剤化をマルチチャネルピペットで、3:1の水性:EtOH v:v比にてZAL脂質混合物(20 μL)およびsiLuc希釈液(10 mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液, pH 5中13.33 ng/μL, 60 μL)の急速混合により96ウェルプレート中で行った。15〜20分のインキュベーション時間の後、製剤を12容量(240 μL)のPBS中に希釈した。ナノ粒子(40 μL)を1ウェルあたりsiRNA 100 ngの用量でHeLa-Luc細胞に加えた。ナノ粒子を細胞とともに24時間インキュベートし、その時間の後、細胞生存性およびルシフェラーゼ発現をONE-Glo + Tox Assayアッセイ細胞生存性およびルシフェラーゼアッセイ(Promega)で評価した。
【0200】
HeLa-Luc-Cas9細胞へのsgRNA送達:
選択ZALを、HeLa-Luc-Cas9細胞への単一ガイドRNA (sgRNA)の送達において評価した。乳白色96ウェルプレート組織培養プレートにおいて、HeLa-Luc-Cas9細胞を、増殖培地(フェノールレッド不含DMEM, 5% FBS) 100μL中に1ウェルあたり細胞5×10
3個の密度で播種し、終夜付着させ、その後にさらにDMEM 100 μLを補充した。示された脂質組成および重量比でインビトロナノ粒子製剤プロトコル(50:38.5 ZAL:コレステロールモル比を維持、5%から0.5%にPEG-脂質混合物を調整、および20:1 ZAL:sgRNAから5:1 ZAL:sgRNAに重量比を調整)を用いて、ZAL-sgRNAナノ粒子を製剤化した。CRISPR.mit.eduアルゴリズムを用いルシフェラーゼに対してデザインされた単一ガイドRNAを用いてルシフェラーゼ欠失を評価したが、陰性対照として非ターゲティング対照sgRNA (sgScr)を用いた。ナノ粒子を1ウェル当たりsgRNA 50 ngの用量で細胞に加え、細胞とともに24時間または48時間インキュベートした。製造業者のプロトコルにしたがってsgLucまたはsgScrを用いて製剤化したRNAiMax (Invitrogen)を陽性対照として用いた。24時間または48時間後、細胞生存性およびルシフェラーゼ発現を、ONE-Glo + Tox Assay細胞生存性およびルシフェラーゼアッセイ(Promega)で評価した。
【0201】
Cas9 mRNAおよびsgRNAの共送達 A549およびHeLa-Luc細胞:
Cas9 mRNA (Tri-Link biotechnologies)および単一ガイドRNA (sgRNA)のルシフェラーゼ発現がん細胞への共送達においてZA3 ZNPを評価した。乳白色96ウェルプレート組織培養プレートにおいて、A549-LucまたはHeLa-Luc細胞を、増殖培地(フェノールレッド不含DMEM, 5% FBS) 100μL中に1ウェルあたり細胞5×10
3個の密度で播種し、終夜付着させ、その後にさらにDMEM 100 μLを補充した。示された脂質組成および重量比でインビトロナノ粒子製剤プロトコル(50:38.5 ZAL:コレステロールモル比を維持、5%から0.5%にPEG-脂質混合物を調整、および20:1 ZAL:sgRNAから5:1 ZAL:sgRNAに重量比を調整)を用いて、ZAL-Cas9mRNAナノ粒子を製剤化した。
【0202】
同じナノ粒子(ここでsgRNAおよびCas9 mRNAが脂質混合物の添加前に酸性緩衝希釈液中に希釈された)中のsgRNAおよびCas9 mRNAを含めて、異なる投薬計画(reigment)を評価した。sgRNAおよびCas9 mRNAを異なるZAL粒子中に製剤化したが、しかし同時に添加したか、またはCas9 mRNAをsgRNAの添加の24時間前に添加した。陰性対照として、Cas9 mRNAの非存在下でのsgRNA送達も、試験した全てのZAL NPについて含めた。ナノ粒子を、1ウェル当たりCas9 mRNA 100 ngまたはsgRNA 50 ngの用量で細胞に添加し、細胞とともに48時間インキュベートした。陽性対照として、Lipofectamine 3000 (Invitrogen)を用いてCas9 mRNAを送達し、RNAiMax (Invitrogen)を製造業者のプロトコルにしたがって製剤化した。sgRNA送達の48時間後、細胞生存性およびルシフェラーゼ発現を、ONE-Glo + Tox Assay細胞生存性およびルシフェラーゼアッセイ(Promega)で評価した。
【0203】
CSALインビトロsiRNA送達効力:
乳白色96ウェルプレート組織培養プレートにおいて、HeLa-LucまたはA549-Luc細胞を、増殖培地(フェノールレッド不含DMEM, 5% FBS) 100 μL中に1ウェル当たり細胞10×10
3個の密度で播種し、終夜付着させた。アッセイの日に培地を新鮮増殖培地200 μLに交換した。CSAL生成物は、50:38.5:10:1.5のZAL:コレステロール:DSPC:PEG脂質の処方脂質混合物を用い、666:1、333:1および167:1のモル比CSAL:siRNAでスクリーニングした。ZAL NP製剤化をマルチチャネルピペットで、2:1の水性:EtOH v:v比にてCSAL脂質混合物(10 μL)およびsiLuc希釈液(10 mMリン酸クエン酸緩衝液, pH 3中40 ng/μL, 20 μL)の急速混合により96ウェルプレート中で行った。15〜20分のインキュベーション時間の後、製剤を12容量(120 μL)のPBS中に希釈した。ナノ粒子(18.75 μL)を1ウェルあたりsiRNA 100 ngの用量でHeLa-Luc細胞に加えた。ナノ粒子を細胞とともに24時間インキュベートし、その時間の後、細胞生存性およびルシフェラーゼ発現をONE-Glo + Tox Assay細胞生存性およびルシフェラーゼアッセイ(Promega)で評価し、未処置細胞に対して規準化した(N = 3または4 +/- 標準偏差)。
【0204】
siRNA取り込み試験:
細胞取り込み試験は、HeLa-Luc細胞およびA549-Luc細胞におけるインビトロ送達効力スクリーンと同じ処方でCSAL NPを用いて行った。細胞を8室のカバーガラススライド(Nunc)中に1ウェル当たり細胞30,000個の密度で播種し、24時間付着させた。ナノ粒子を34 nMの最終siRNA濃度で細胞に加えた。4時間または24時間のインキュベーション後、培地を吸引し、PBSで洗浄し、製造業者のプロトコルを用いて細胞膜染色を行った(Cell Mask Green, Molecular Probes)。細胞を4%パラホルムアルデヒド(15分RT)で固定し、5分2回PBSで洗浄し、細胞核をDAPI (Sigma-Aldrich)で染色し、PBSで洗浄した。Zeiss LSM 700顕微鏡を用いて共焦点顕微鏡法画像化を行い、ImageJ (NIH)を用いて画像を分析した。
【0205】
核酸結合実験:
Ribogreenアッセイ(Molecular Probes)を用いて核酸結合を評価した。要するに、インビトロまたはインビボ製剤プロトコルを用いてナノ粒子を調製した。ナノ粒子製剤(5 μL)を黒色96ウェル不透明マイクロプレート(Corning)に添加した。適切な核酸の標準曲線を、ナノ粒子と同じ培地中で用意した。Ribogreen試薬を1×PBS中に1:1000で希釈し、マルチチャネルピペットを介して各ウェルに50 μLを添加した。混合物をオービタルミキサ上で10分間撹拌し、プレートリーダー(λ
Ex 485 nm, λ
Em 535 nm)を用いて各ウェルの蛍光を読み取った。遊離核酸の量を、各ナノ粒子サンプルからのシグナルを核酸標準曲線に当てはめることによって判定し、結合した割合を以下の式によって判定した: 結合核酸の割合 = (全核酸投入量 - 遊離核酸)/全核酸投入量) (N = 3または4 +/- 標準偏差)。
【0206】
ZAL mRNA送達インビトロアッセイ:
ホタルルシフェラーゼmRNAを有するZALナノ粒子(Tri-Link Biotechnologies)を、上記のインビトロナノ粒子製剤法を用いて調製した。IGROV1細胞を、5% FBSを補充したRPMI 1640培地100 μL中に1ウェル当たり細胞5×10
3個の播種密度で乳白色96ウェル組織培養プレートに播種し、終夜付着させた。終夜インキュベーションの後、培地さらに100 μLをウェルに加えた。ZAL:mRNAナノ粒子を20:1、10:1、7.5:1および5:1のZAL:mRNA重量比、ならびに50:38.5のZAL:コレステロールの脂質混合物モル組成で調製したが、PEG脂質を重量比ごとに5%、2%、1%または0.5%のモル比で補充した。ZAL-mRNAナノ粒子を1ウェル当たりmRNA 100 ngの用量で細胞に添加し、示された時間(6時間から48時間に及ぶ)インキュベートし、その時間の後、細胞生存性およびルシフェラーゼ発現をONE-Glo + Tox Assay細胞生存性およびルシフェラーゼアッセイ(Promega)で評価し、未処置細胞に対して規準化した(N = 4 +/- 標準偏差)。
【0207】
インビボナノ粒子製剤化:
インビボナノ粒子製剤化を、NanoAssemblrマイクロ流体混合システム(Precision Nanosystems)を用いて行った。脂質をエタノールに溶解し、核酸(mRNAまたはsiRNA)を10 mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液pH 3中に希釈した。脂質混合物および核酸希釈物を1分当たり12 mLの全流速、ならびに各製剤化の始めにおよび終わりに0.1 mLの廃棄物収集で3:1の核酸:脂質混合物の体積比にて混ぜ合わせた。ナノ粒子をPur-A-Lyzer midi透析チャンバ(Sigma-Aldrich)内の1×PBSに対して各チャンバ内の容量200 μL当たり1時間透析し、1×PBS中に適切な核酸濃度まで希釈した。
【0208】
インビボsiRNAナノ粒子生体内分布:
全ての実験は、テキサス大学サウスウェスタン・メディカル・センター(The University of Texas Southwestern Medical Center)の施設動物ケアおよび使用委員会(Institutional Animal Care & Use Committee) (IACUC)により承認され、適用できる場合は地方、州および連邦規制と一致していた。CSALナノ粒子を、50:38.5:10:1.5のCSAL:コレステロール: DSPC: PEG脂質の脂質混合物モル比、および20:1〜45:1の全脂質:siRNA重量比に及ぶ重量比でインビボナノ粒子製剤法を用いて調製した。siRNA希釈のために、siRNAに50% Cy5.5標識siRNAをスパイクし、製剤化を通常通り行った。透析後、ナノ粒子を製剤10 μL当たり1 μgの濃度に希釈した。この製剤を、黒色6匹のマウスに尾静脈注射によって1 mg/kg siRNAの用量で注射した。2時間または24時間後、動物をイソフルラン下で麻酔し、頸椎脱臼によって殺処理し、臓器を切除した。臓器の蛍光画像化を、Cy5励起および発光フィルタセットを用いIVIS Luminaシステム(PerkinELmer)にて行い、画像をLiving Image分析ソフトウェア(PerkinElmer)を用いて処理した。
【0209】
インビボルシフェラーゼmRNA送達:
全ての実験は、テキサス大学サウスウェスタン・メディカル・センター(The University of Texas Southwestern Medical Center)の施設動物ケアおよび使用委員会(Institutional Animal Care & Use Committee) (IACUC)により承認され、適用できる場合は地方、州および連邦規制と一致していた。ZA3-Ep10 ZALを、脂質混合物中50 ZAL:38.5コレステロール:2または0.5 PEG脂質モル比、および7.5:1 ZAL:mRNA重量比でインビボ製剤形成により製剤化した。無胸腺Nude-Foxn1
nuマウス(Harlan Laboratories)に尾静脈注射または腹腔内注射を介して1 mg/kgの用量でZAL-mRNA NPを注射した。24時間および48時間後、ルシフェラーゼ発現を生きた動物の生物発光画像化によって評価した。動物をイソフルラン下で麻酔し、D-ルシフェリン一ナトリウム水和物(GoldBio)基質をIP注射した。10〜12分のインキュベーション後、ルシフェラーゼ活性をIVIS Luminaシステム(Perkin Elmer)にて画像化し、画像を、Living Image分析ソフトウェア(Perkin Elmer)を用いて処理した。エクスビボ画像化を切除後に全身器官に対して行い、組織をエクスビボルシフェラーゼ発現分析のためにドライアイス上で凍結した。
【0210】
A549異種移植片におけるインビボルシフェラーゼサイレンシング:
全ての実験は、テキサス大学サウスウェスタン・メディカル・センター(The University of Texas Southwestern Medical Center)の施設動物ケアおよび使用委員会(Institutional Animal Care & Use Committee) (IACUC)により承認され、適用できる場合は地方、州および連邦規制と一致していた。無胸腺Nude-Foxn1
nuマウス(Harlan Laboratories)の各後肢に、ホタルルシフェラーゼを発現するA549 (1:1 v:vのPBS: Matrigel (Corning) 100 μLに懸濁された細胞5×10
6個)を異種移植片で移植した。腫瘍が十分なサイズに達した後、同じ動物の各腫瘍に、50 CSAL: 38.5コレステロール: 10 DSPC: 1.5 PEG脂質の脂質モル比、および30:1の全脂質:siRNA重量比、および1 mg/kg siLucまたはsi対照の最終siRNA用量で、CSAL A3OAcC2Meのインビボ製剤化NP (腫瘍当たりおよそ50 μL)を注射した。24時間および48時間後、ルシフェラーゼ発現を生きた動物の生物発光画像化によって評価した。動物をイソフルラン下で麻酔し、D-ルシフェリン一ナトリウム水和物(GoldBio)基質をIP注射した。10〜12分のインキュベーション後、ルシフェラーゼ活性をIVIS Luminaシステム(PerkinElmer)にて画像化し、画像を、Living Image分析ソフトウェア(PerkinElmer)を用いて処理した。
【0211】
A549異種移植片におけるエクスビボルシフェラーゼ発現分析:
A3OAcC2Me siLucまたはsi対照の注射48時間後、マウスを頸椎脱臼により安楽死させ、A549異種移植片を切除し、ドライアイス上で凍結させた。腫瘍を天秤で秤量し、まっすぐなカミソリで細断し、プロテアーゼ阻害剤ミニ錠剤(Pierce)を補充した1×レポーター溶解緩衝液(Promega)の1:3の腫瘍質量:容量(mg:μL)で希釈し、氷上に置いた。組織をホモジナイズし、ルシフェラーゼ発現をルシフェラーゼアッセイシステムによって評価した。
【0212】
ナノ粒子特性の特徴付け:
He-Neレーザー(λ = 632 nm)を備えたZetasizer Nano ZS (Malvern)を用いて物理的特性を測定した。粒径を、173°後方散乱による動的光散乱(DLS) (5回測定, 3回×10秒, 自動減衰器設定)によって測定した。ゼータ電位を、ZAL NPの場合にはPBSまたはCSAL NPの場合にはクエン酸リン酸緩衝液pH 7.4中に希釈したサンプルにより、折り畳みキャピラリーセル(Malvern)中で測定した。
【0213】
tRNA取り込み試験:
細胞取り込み試験は、スクリーンから得た最高性能の材料を用いて行った。Calu6細胞を8室のカバーガラススライド(Nunc)中に1ウェル当たり細胞30,000個の密度で播種し、24時間付着させた。NP製剤を、インビトロナノ粒子製剤手順を用いて調製した。ナノ粒子を0.9 μg/ウェルの最終tRNA濃度で細胞に加えた。6時間のインキュベーション後、培地を吸引し、PBSで洗浄し、製造業者のプロトコルを用いて細胞膜染色を行った(Cell Mask Orange, Molecular Probes)。細胞を4%パラホルムアルデヒド(15分RT)で固定し、5分2回PBSで洗浄し、細胞核をDAPI (Sigma-Aldrich)で染色し、PBSで洗浄した。Zeiss LSM 700顕微鏡を用いて共焦点顕微鏡法画像化を行い、ImageJ (NIH)を用いて画像を分析した。
【0214】
Calu6細胞におけるナノ粒子担体スクリーン:
Calu6細胞を6ウェル形式で1ウェル当たり細胞500,000個の密度で播種し、終夜付着させた。プラスミドDNAの場合、製造業者の推奨プロトコルを用いてLipofectamine 2000 3 μlを用い1 μgをトランスフェクトした。tRNA
Arg/Op-RNAiMaxの場合、製造業者の推奨プロトコルを用いてRNAiMax 3 μlを用い4 μgをトランスフェクトした。粒子をOpti-MEM (Invitrogen)中に希釈した。G418 (50 μg)およびPTC124 (10 μl M)を培地に直接加えた。ナノ粒子は、以下のように製剤化された。重合体ストック(DMSO中15 g/L) 10 μLをtRNA希釈液(10 mMクエン酸緩衝液pH 4.2 490 μL中tRNA 5 μg)に加え、20分間インキュベートすることにより、30:1の重合体:tRNAの重量比を用いて機能性ポリエステル-tRNAポリプレックスを調製した。上記のインビトロナノ粒子製剤法を用いてデンドリマー、ZAL、およびCSALナノ粒子を調製した。別段の指示がない限り、50:38:10:2のデンドリマー:コレステロール:DSPC:PEG脂質の脂質混合物、および200:1のデンドリマー:tRNAモル比でデンドリマーを製剤化した。50:38.5のZAL:コレステロールの脂質混合物および25:1の総脂質:tRNA重量比でZAL-tRNA NPを製剤化した。CSAL-tRNA NPを20:1のCSAL:tRNA重量比で製剤化した。全てのナノ粒子について、1ウェル当たりtRNA 4 μgの用量に向けて培地2 mL中の細胞に各製剤400 μLを加えた。48時間後、細胞を2×サンプル緩衝液((Tris-HCL 250 mM, pH 6.8, 20%グリセロール, 2.5% SDS, 0.1%ブロモフェノールブルー)中で直接溶解した。細胞溶解物タンパク質を、トリス-グリシン緩衝系を用いた10% (wt/vol)のポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によって分離し、ポリビニリデンフルオライドImmobilon膜(EMD Millipore)に転写した。一次p53抗体(Santa Cruz Biotechnology, Inc)、アクチン抗体(EMD Millipore)、および二次抗体IRdye-680RD (Li-Cor)を用いてウエスタンブロット分析を行い、Li-Cor Odyssey CLx (Li-Cor)を用いて画像化/定量化した。
【0215】
実施例2: アミノ脂質の合成および特徴付け
カチオン性スルホンアミドアミノ脂質(CSAL)を、
図1に示されるように脂質基のための種々の機能的なサイドアームで、異なる頭部基、リンカーアミドを用いて調製した。カチオン性スルホンアミドアミノ脂質を調製するための例示的な合成経路を
図2に示す。CSAL A3OAcC2Meのいくつかの例示的な特徴付け情報を
図40に示す。別の合成方法を
図42に記述する。
【0216】
A1-OAc-Cn-Me/EtおよびA2-OAc-Cn-Me/Et CSALの合成:
撹拌棒を備えた20 mLのバイアル中で、塩化チオニル2 mLにA1-OAcプロパンスルホネート(100 mg, 0.136 mmol)またはA2-OAcプロパンスルホネート(を溶解した。バイアルを密封し、反応混合物を30分間85℃に加熱した。反応物を室温に冷却し、新たに蒸留したトルエン5 mLに希釈し、減圧下で濃縮した。粗スルホニルクロライド中間体を氷上で冷却し、これに乾燥アセトニトリル5 mLに溶解した適切なN,N-ジメチルジアミンまたはN,N-ジエチルジアミン(5当量)を加えた。反応混合物を氷上で15分間撹拌し、反応混合物を減圧下で濃縮した。粗生成物をDCM中5%のMeOHからDCM中20%のMeOH, 1%飽和NH
4OHの溶媒勾配によりシリカゲルで精製して、生成物を粘着性の黄色または褐色の固体として得た。
A1OAcC2Me 質量計算値 m/z 803.6654, 実測値 (MALDI-TOF ms) m/z 803.3930
A1OAcC3Me 質量計算値 m/z 817.6810, 実測値 (MALDI-TOF ms) m/z 817.5598
A1OAcC4Me 質量計算値 m/z 831.6967, 実測値 (MALDI-TOF ms) m/z 831.5186
A1OAcC2Et 質量計算値 m/z 831.6967, 実測値 (MALDI-TOF ms) m/z 831.80
A1OAcC3Et 質量計算値 m/z 845.7123, 実測値 (MALDI-TOF ms) m/z 846.51
A2OAcC2Me 質量計算値 m/z 831.6967, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 832.62
A2OAcC2Et 質量計算値 m/z 859.7280, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 860.66
【0217】
A3-OAc-C2Meの合成:
撹拌棒を備えた20 mLのバイアル中で、塩化チオニル2 mLにA3-OAcプロパンスルホネート(200 mg, 0.155 mmol)を溶解した。バイアルを密封し、反応混合物を30分間85℃に加熱した。反応物を室温に冷却し、新たに蒸留したトルエン5 mLに希釈し、減圧下で濃縮した。粗スルホニルクロライド中間体を氷上で冷却し、これに乾燥アセトニトリル5 mLに溶解した適切なN,N-ジメチルエチレンジアミン(0.775 mmol, 85 μL, 5当量)を加えた。反応混合物を氷上で15分間撹拌し、反応混合物を減圧下で濃縮した。粗生成物をDCM中5%のMeOHからDCM中20%のMeOH, 1%飽和NH
4OHの溶媒勾配によりシリカゲルで精製して、生成物を粘着性の褐色の固体(79.8 mg, 収率38.0%)として得た。質量計算値 m/z 1355.1567, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 1355.18。
【0218】
A1-OPiv-CnMe CSALの合成:
撹拌棒を備えた20 mLのバイアル中で、塩化チオニル2 mLにA1-OPivプロパンスルホネート(100 mg, 0.122 mmol)を溶解した。バイアルを密封し、反応混合物を30分間85℃に加熱した。反応物を室温に冷却し、新たに蒸留したトルエン5 mLに希釈し、減圧下で濃縮した。粗スルホニルクロライド中間体を氷上で冷却し、これに乾燥アセトニトリル5 mLに溶解した適切なN,N-ジメチルジアミン(5当量)を加えた。反応混合物を氷上で15分間撹拌し、反応混合物を減圧下で濃縮した。粗生成物をDCM中5%のメタノールから水中75%のDCM, 20%のメタノール, 5%の飽和水酸化アンモニウムの溶媒勾配によりシリカゲルで精製して、生成物を粘着性の黄色または褐色の固体として得た。
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A1OPivC2Me 質量計算値 m/z 887.7593, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 887.7920
A1OPivC3Me 質量計算値 m/z 901.7749, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 901.4854
A1OPivC4Me 質量計算値 m/z 915.7906, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 915.6368
【0219】
A1-Cl-CnMe CSALの合成:
撹拌棒を備えた20 mLのバイアル中で、塩化チオニル2 mLにA1-OHプロパンスルホネート(100 mg, 0.154 mmol)を溶解した。バイアルを密封し、反応混合物を1時間85℃に加熱した。反応物を室温に冷却し、新たに蒸留したトルエン5 mLに希釈し、減圧下で濃縮した。粗スルホニルクロライド中間体を氷上で冷却し、これに乾燥アセトニトリル5 mLに溶解した適切なN,N-ジメチルジアミン(5当量)を加えた。反応混合物を氷上で15分間撹拌し、反応混合物を減圧下で濃縮し、真空下で乾燥させた。
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A1ClC2Me 質量計算値 m/z 755.5765, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 755.7258
A1ClC3Me 質量計算値 m/z 769.5921, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 769.6628
A1ClC4Me 質量計算値 m/z 783.6078, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 783.7239
【0220】
A1OHC2Meの合成:
撹拌棒を備えた20 mLのバイアル中で、塩化チオニル2 mLにA1-OAcプロパンスルホネート(100 mg, 0.136 mmol)を溶解した。バイアルを密封し、反応混合物を30分間85℃に加熱した。反応物を室温に冷却し、新たに蒸留したトルエン5 mLに希釈し、減圧下で濃縮した。粗スルホニルクロライド中間体を氷上で冷却し、これに乾燥アセトニトリル5 mLに溶解した適切なN,N-ジメチル-エチレンジアミン(85.6 μL, 0.68 mmol, 5当量)を加えた。反応混合物を氷上で15分間撹拌し、反応混合物を減圧下で濃縮した。反応混合物をメタノール5 mLに再溶解し、炭酸カリウム(0.93 g, 0.68 mmol, 5当量)を加え、反応混合物を40℃で4日間撹拌した。反応後、混合物を冷却し、ろ過し、減圧下で濃縮した。濃縮物をアセトンに溶解し、さらなる沈殿物をろ過により除去して、粗生成物を黄色の粘着性固体として得た。生成物をシリカゲル(DCM中5%のメタノールからジクロロメタン中20%のメタノール, 2%の飽和水酸化アンモニウムで精製して、生成物を粘着性黄色固体(17.5 mg, 収率17.9%)として得た。質量計算値 m/z 719.6443, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 719.8963。
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【0221】
同様に、両性イオンアミノ脂質(ZAL)を
図9に示される出発成分から調製した。
図10に示されるように、両性イオン頭部基を合成し、出発材料および両性イオン頭部基についての適切な
1H NMRスペクトルを示す。両性イオン頭部基をポリアミンコアと反応させて、対応する
1H NMRスペクトルを有する
図11に示した化合物を得た。異なるポリアミンコアおよび両性イオン頭部基を有する化合物のいくつかを
図12に示す。これらの頭部基およびコアの反応を
図13に示し、3つの異なる脂質反応基についての適切な反応条件を
図14に示す。3つの化合物のLCMS分析を
図15A〜15Cに示す。
図36および37を含めていくつかのZALに対するいくつかの例示的な特徴付け情報。代替の合成方法を
図39および40に記述する。
【0222】
3-((2-アクリルアミドエチル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(SBAm)の合成:
撹拌棒、および滴下漏斗を備えた火炎乾燥500 mL丸底フラスコに窒素雰囲気下、乾燥THF 250 mL中N,N-ジメチルエテンジアミン(20 g, 226.9 mmol)およびトリエチルアミン(1当量, 227 mmol, 31.6 mL)を充填し、0℃に冷却した。塩化アクリロイル(0.9当量, 204.2 mmol, 16.6 mL)を乾燥THF 50 mL中に別々に溶解し、滴下漏斗を介して撹拌アミン溶液に滴下した。反応物を終夜室温まで加温させ、これにより、白色沈殿物を有する黄色溶液を得た。沈殿物をろ去し、ろ液を真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラム(DCM中20%のMeOH)によって精製した。生成物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮してジメチルアミノアクリルアミド中間体を橙色液体(9.36 g, 段階1の収率32.2%)として得た。
【0223】
撹拌子を備えた250 mL丸底フラスコ中で、ジメチルアミノアクリルアミド中間体(9.36 g, 65.8 mmol)をアセトン100 mLに溶解した。一度に、1,3-プロパンサルトン(1.1当量, 72.4 mmol, 8.85 g)を加えた。ニードルベント付きのゴム栓を設置し、反応混合物を終夜50℃に加熱して、オフホワイト色の固体沈殿物の形成をもたらした。沈殿物を真空ろ過によって収集し、多量のアセトンで洗浄し、終夜真空下で乾燥させて、SBAm生成物を淡黄色固体(14.77 g, 段階2の収率84.9%)として得た。質量計算値 m/z 264.11, 実測値 M
+1 (LCMS直接注入) m/z 265.1。
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【0224】
ライブラリ調製のためのアミノSBAm合成:
プロパンスルホネートアミド担持両性イオンアミン(アミノSBAm)の一般的合成
撹拌棒を備えた20 mLのバイアル中で、3-((2-アクリルアミドエチル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(SBAm, 1.5 g, 5.67 mmol, 1当量)を1 Mの濃度まで脱イオン水5.67 mLに溶解した。対応するアミン(28.35 mmol, 5当量)をピペットで一度に加え、バイアルを覆い、室温で終夜撹拌した。終夜反応の後、アミノSBAm反応混合物をいくつかの50 mLポリプロピレンコニカルチューブに移し、10超容量のアセトン中で沈殿させ、遠心分離(4000× g, 10分)により収集して、残存アミン出発物質を除去した。上清をデカントし、ペレットをアセトンで洗浄し、真空下で乾燥させてアミノSBAmを得た。
【0225】
ZA1: 淡黄色の粘着性固体(2.40 g, 収率93.6%)。質量計算値 m/z 452.31, 実測値 M
+1 (LCMS直接注入) m/z 453.3。
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【0226】
ZA2: 0.776 gのSBAmスケールで行われた反応。粘性黄色油(0.36 g, 収率24.8%)。質量計算値 m/z 536.41, 実測値 M
+1 (LCMS直接注入) m/z 537.4。
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【0227】
ZA3: 褐色の粘着性固体(2.61 g, 定量的収率)。質量計算値 m/z 410.58, 実測値 M
+1 (LCMS直接注入) m/z 411.3。
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【0228】
ZA4: 淡黄色の粘着性固体(2.01 g, 収率92.9%) 質量計算値 m/z 381.24, 実測値 M
+1 (LCMS直接注入) m/z 382.2。
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【0229】
ZA5: 粘着性の黄色固体(2.32 g, 収率84.1%)。質量計算値 m/z 409.27, 実測値 M
+1 (LCMS直接注入) m/z 410.2。
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【0230】
ZA6: 粘着性の黄色固体(2.71 g, 定量的収率)。質量計算値 m/z 464.31, 実測値 M
+1 (LCMS直接注入) m/z 465.3。
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【0231】
両性イオンアミノ脂質(ZAL)のアミノSBAmエポキシドおよびアクリレートライブラリの合成:
官能化された全て既述のアミノSBAmの両性イオンアミノ脂質(ZAL)ライブラリを、1,2-エポキシアルカンおよび疎水性アクリレートとの反応による疎水性尾部の導入によって調製した。エポキシド(1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、および1,2-エポキシオクタデカン)は、商業的に購入し、分子内の炭素原子の総数(Cn, 8〜18)を含むようにコード化された。疎水性アクリレートは、商業的に購入され(O12, O18)、または適切な第一級アルコールと塩化アクリロイルとの反応により合成され(O8, O10, O14, O16)、疎水性尾部内に炭素原子の数を含むように、しかしアクリレート部分を含まないようにコード化された。ライブラリを調製するため、撹拌棒を備えた4 mLのバイアル中で、両性イオンアミン(0.1ミリモルまたは0.05ミリモル)をはかりによって秤量し、エポキシドZALの場合iPrOH中、またはアクリレートZALの場合DMSO中1 Mの濃度に溶解した。適切な疎水性求電子試薬にN当量を加えたが、ここでNは、第一級および第二級アミンの第三級アミンへの完全な変換をもたらすアミン反応部位の数である。バイアルを密封し、反応物をエポキシドの場合75℃およびアクリレートの場合80℃で数日間撹拌した。反応後、反応物をアセトン中で沈殿させて両性イオンアミノ脂質を得た。
【0232】
ZA3の代替合成:
撹拌棒を備えた20 mLのバイアルに3-((2-アクリルアミドエチル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(SBAm, 0.8111 g, 3.068 mmol)を充填し、DMSO 3 mLに溶解した。シリンジを介して、トリス(2-アミノエチル)アミン(5当量, 15.32 mmol, 2.24 g)を加え、濁った黄色/褐色懸濁液を得た。反応混合物を密封し、80℃で終夜撹拌し、橙色の濁った懸濁液を得た。反応混合物をDMSO中でさらに希釈し、いくつかの50 mLコニカルチューブに移し、10容量の酢酸エチル中で沈殿させた。沈殿物を遠心分離(4,000× g, 10分)によって回収し、上清をデカントして粘着性の黄色/褐色物を得た。生成物をDMSO/EtOAc中で数回再沈殿させて残存トリス(2-アミノエチル)アミンを除去し、最後にMeOHに溶解して丸底フラスコに移し、減圧下で濃縮した。生成物を真空下で終夜乾燥させて残存溶媒を除去し、メタノールに再溶解し、酢酸エチル中で沈殿させ、真空下で乾燥させて橙色/褐色油状物(1.4058 g, 100%)としてZA3を得た。
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【0233】
ZA3-Ep10の合成:
撹拌棒を備えた20 mLのシンチレーションバイアルにZA3 (300 mg, 0.7307 mmol)およびiPrOH (730 μL, 1M SBAm)を充填し、RTで短時間撹拌して、黄色/褐色の懸濁液を得た。1,2-エポキシデカン(4.384 mmol, 685 mg, 6当量)を添加し、バイアルを密封し、およそ24時間75℃で終夜撹拌し、透明な黄色/褐色の溶液を得た。iPrOHを減圧下で除去して、黄色/褐色の油状物を得た。粗生成物をDCM中の最低限5%のMeOHに溶解し、CombiFlash(登録商標)システム(Teledyne Isco)を用いシリカゲルカラム(24 g)で精製を行った。生成物を溶出し、DCM中5%のMeOHからDCM中20%のMeOH, 2%飽和水酸化アンモニウムの溶媒勾配で分画し、生成物の溶出をELSDにより追跡した。生成物を含有する画分を減圧下で濃縮し、真空下で終夜乾燥して、生成物を粘着性の黄色固体(192.5 mg, 収率22.1%)として得た。質量計算値 m/z 1191.0246, 実測値 M
+1 (LCMS直接注入) m/z 1192.8。
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【0234】
プロパンスルホネートA1-OHの合成:
撹拌棒を備えた250 mL丸底フラスコ中で、1,1'-((3-(ジメチルアミノ)プロピル)アザンジイル)ビス(テトラデカン-2-オール) (6.37 g, 12.09 mmol)をアセトン50 mLに溶解し、続いて1,3-プロパンサルトン(2.21 g, 18.13 mmol, 1.5当量)を加えた。フラスコを覆い、50℃で終夜撹拌し、これによって白色の沈殿物の形成が起きた。白色沈殿物をろ過によって回収し、真空下で乾燥させて、プロパンスルホネート生成物を白色固体(7.46 g, 95.0%)として得た。質量計算値 m/z 648.5475, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 649.8078。
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【0235】
プロパンスルホネートA2-OHの合成:
撹拌棒を備えた20 mLのバイアル中で、A2-OH (0.5 g, 0.901 mmol)をアセトン4 mLに溶解し、続いて1,3-プロパンサルトン(165 mg, 1.35 mmol, 1.5当量)の添加を行った。バイアルを密封し、50℃で終夜撹拌した。終夜反応の後、さらに1.5当量の1,3-プロパンサルトンを加え、さらに1日撹拌した。反応混合物を濃縮し、最低限のジクロロメタンに溶解し、シリカゲル(DCM中10%のMeOHからDCM中10%のMeOH, 1%飽和NH
4OHの勾配)で精製して、生成物を粘着性の淡黄色固体(310 mg, 収率50.8%)として得た。質量計算値 m/z 676.5788, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 678.22
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【0236】
プロパンスルホネートA3-OHの合成:
プロパンスルホネートA2-OHと同じプロトコル 粘着性の淡黄色固体(2.864 g, 収率85.0%)。質量計算値 m/z 1116.0177, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 1117.34
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【0237】
プロパンスルホネートA1-OAcの合成:
撹拌棒を備えた20 mLのバイアル中で、プロパンスルホネートA1-OH (1.25 g, 1.93 mmol)をジクロロメタン5 mLに溶解し、続いて無水酢酸(10 mL, 過剰)の添加を行った。TLCにより出発物質の消費まで反応混合物を室温で3日間撹拌した。反応混合物をアセトンに希釈し、減圧下で濃縮して透明な油状物を形成させ、これは放置により無色の沈殿物を形成した。この沈殿物をろ過によって収集し、真空下で乾燥させて、生成物を無色結晶性固体(0.795 g, 収率56.3%)として得た。質量計算値 m/z 732.5686, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 733.8095
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【0238】
プロパンスルホネートA2-OAcの合成:
撹拌棒および還流冷却器を備えた100 mL丸底フラスコ中で、プロパンスルホネートA2-OH (0.28 g, .414 mmol)を無水酢酸(10 mL)に溶解した。反応物を100℃で18時間加熱し透明な橙色の溶液を得て、その後、反応物を真空中で濃縮し、シリカゲル(DCM中10%のMeOHからDCM中10%のMeOH, 1%飽和NH
4OHの勾配)で精製した。生成物を橙色の粘着性固体として単離した(211.1 mg, 収率67.0%)。質量計算値 m/z 760.5999, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 762.62
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【0239】
プロパンスルホネートA3-OAcの合成:
撹拌棒を備えた20 mLバイアルに、プロパンスルホネートA3-OH (0.752 g, 0.673 mmol)および無水酢酸(10 mL)を添加した。バイアルを密封し、反応混合物を100℃で23時間撹拌した。反応混合物をアセトンに希釈し、減圧下で濃縮して、粗生成物を橙色油状物(0.91 g, 定量的収率)として得た。粗生成物をさらに精製することなく用いた。質量計算値 m/z 1283.0516, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 1284.74
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【0240】
プロパンスルホネートA1-OPivの合成:
窒素雰囲気下、撹拌棒および還流冷却器を備えた乾燥50 mL丸底フラスコ中で、ジメチルホルムアミド(5 mL)中のA1-OHプロパンスルホネート(0.89 g, 1.37 mmol)を溶解し、続いてトリエチルアミン(0.96 mL, 6.86 mmol, 5当量)、4-ジメチルアミノピリジン(1.7 mg, 0.014 mmol, 0.1当量)およびピバル酸無水物(1.67 mL, 8.23 mmol, 6当量)の添加を行った。撹拌しながら90℃で14時間の反応の後、さらに6当量のピバル酸無水物、5当量のトリエチルアミン、および0.1当量のDMAPを加え、反応をさらに26時間続け、この時点で出発A1-OHプロパンスルホネートがTLCによって消失した。反応混合物をジクロロメタンに希釈し、減圧下で濃縮し、ジクロロメタン中10%のメタノールを用いたシリカゲルクロマトグラフィー(重力カラム)により精製して、生成物A1-OPivプロパンスルホネートを粘着性の褐色固体(0.585 g, 52.2%)として得た。質量計算値 m/z 817.6625, 実測値 M
+1 (MALDI-TOF ms) m/z 817.4124。
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【0241】
実施例3: 組成物の活性
CSAL (
図3)およびZAL (
図16)を、コレステロールのような1つまたは複数のヘルパー脂質の存在下でナノ粒子中に製剤化した。
図17に示されるように、コレステロールは、ナノ粒子をsiRNAに結合させるための重要な成分である。コレステロールを含まない組成物では、siRNA結合量が有意に低減された。CSALナノ粒子は、約100 nmの平均サイズを示す(
図4A)。さらに、頭部基の長さが増大した組成物は、siRNA結合が減少した(
図4B)。より高いCSALモル比は電荷の増大を生じ(
図4C)、溶液pHの低下は特にpH 3でより高い表面を生じた(
図4D)。
図5および6に示されるように、CSALはsiRNAの送達、したがってルシフェラーゼ活性の低減において活性を示した。さらに、CSAL含有ナノ粒子を同様に細胞生存性について試験した(
図5)。同様に、ZAL含有ナノ粒子もルシフェラーゼ活性について試験した。(
図18〜20Bを参照のこと)。CSALおよびZALの細胞イメージングを行って、組成物が細胞に局在するかどうかを判定した。
図7、21および24に示されるように、組成物は異なる細胞に局在した。tRNA送達を
図22に示したが、改変tRNAの送達として種々の異なる組成物は、ナンセンス変異を含むゲノムからのp53産生の回復をもたらした(
図22)。最後に、インビボでのCSALおよびZAL含有ナノ粒子の分布を判定した(
図8および23)。
【0242】
組成物を、mRNAおよびsgRNAのようなCRISPRプロセスに関連する核酸を送達する際の活性について試験した。これらの研究において用いられたナノ粒子の組成を以下の表1Aおよび1Bに示す。
【0243】
(表1A)両性イオンアミノ脂質ナノ粒子モル組成
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【0244】
(表1B)カチオン性スルホンアミドアミノ脂質ナノ粒子モル組成
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【0245】
ZA1Ep10 ZALを用いて、さまざまな濃度のPEG脂質を、IGROV1細胞へのルシフェラーゼmRNA送達を行うその能力について試験した。集団ごとに生成された発光の量をモニタリングすることにより、トランスフェクション後18時間、26時間および45時間の時点で発光を測定した。同じ粒子中でのmRNAおよびsgRNAの両方の添加またはこれらの化合物の逐次投与の効果を試験した(
図25)。異なる粒子の使用と比べて未処置細胞の量の低減を示した組成はmRNAおよびsgRNAであった。同様の試験をA549-Luc細胞で行った(
図26)。単一のZALによるナノ粒子組成物の効果を、HeLa-Luc細胞でルシフェラーゼに対して試験しており、
図27に示す。示されるように、ZALは、ルシフェラーゼ活性の用量依存的な低減をもたらす(
図28)。
【0246】
異なる量のPEG脂質によるZ120ナノ粒子の分布のエクスビボでの画像化を、静脈内および腹腔内によって投与された場合に分析した。BALB-c-Nuマウスに、1 mg/kg Luc mRNAを尾静脈注射によって注射した。次いでマウスを注射24時間後に画像化した。これらの画像を
図29に示す。ルシフェラーゼの送達と同様に、Z112を3 mg/kgの第VII因子とともに用いて第VII因子のインビボ送達を分析した。
【0247】
CSALを用いて、2つの異なる重量比および2つの異なるCSALで用量依存的活性が観察された(
図30)。蛍光標識された核酸を用いて、CSALナノ粒子の内部移行が、34 nM siRNAとの24時間のインキュベーション時間後にA549-luc細胞において観察された。これらの画像を
図31に示す。同様の画像化をBALB-cヌードマウスにおいて行い、体内でのナノ粒子の内部移行および特定臓器へのナノ粒子の局在を
図32に示されるように示した。本明細書において記述されるCSAL組成物内のサプレッサtRNAの結合を、粒径とともに
図33に示す。ゲル電気泳動は、サプレッサtRNA重合体を負荷した場合のCSALおよびZALの両方がp53発現を回復できることを示す(
図34)。1つまたは複数のサプレッサtRNA分子を負荷した場合に種々の異なるZALがCalu6細胞によって取り込まれることが示されている(
図35)。
【0248】
実施例4: ZALおよびCSALを用いたCRISPRヌクレオチドの送達
A. 方法および材料
i. 合成のための化学物質および試薬
全ての化学物質は、特に明記しない限り、Sigma-Aldrichから購入した。1,2-エポキシデカンはTCI Americaから購入した。1,2-エポキシオクタデカンはAlfa Aesarから購入した。疎水性アクリル酸オクチルアクリレート(Ac8)、アクリル酸デシル(Ac10)、アクリル酸テトラデシル(Ac14)、およびアクリル酸ヘキサデシル(Ac16)を以下に記述されるように合成した。有機溶媒はFisher Scientificから購入し、溶媒精製システム(Innovative Technology)で精製した。Lipid PEG2000を、既述(Zhou et al., 2016)のように、化学的に合成し、CDCl
3、メタノール-d4、およびDMSO-d6をCambridge Isotope Laboratoriesから購入した。
【0249】
ii. 生物学的アッセイのための核酸および他の試薬
全てのsiRNAをSigma-Aldrichから購入した。DNAオリゴヌクレオチドをIntegrated DNA Technologiesから購入した。ルシフェラーゼ、mCherry、およびCas9メッセンジャーRNA (mRNA)をTri-Link Biotechnologiesから購入した。Lipofectamine 3000およびOptiMEMをInvitrogenから購入した。単一ガイドRNAを、MEGAshortscript T7転写キット(Life Technologies)を用いたインビトロ転写(IVT)によって調製し、引き続き製造業者のプロトコルにしたがってMEGAclear Transcription Clean-Up Kit (Life Technologies)を用い精製を行った。Ribogreen試薬をLife Technologiesから購入した。ONE-Glo + ToxおよびCell Titer GlowをPromegaから購入した。RIPA緩衝液およびTRIzol試薬をThermo Scientificから購入した。QuickExtract DNA Extraction SolutionをEpicentreから購入した。iTaq Universal SYBR Green 2X Supermix (Bio-Rad)を用いてリアルタイムqPCRを行った。全ての抗体をCell Signalingから購入した。
【0250】
iii. 細胞培養
高グルコース、L-グルタミンを含有し、ピルビン酸塩またはフェノールレッドを含有しないダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)をHycloneから購入した。RPMI-1640をSigma Aldrichから購入した。ダルベッコ改変リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリプシン-EDTA (0.25%)およびウシ胎仔血清(FBS)をSigma-Aldrichから購入した。5% FBSを補充したDMEM中でHeLa-LucおよびA549-Luc細胞を培養した。5% FBSを補充したRPMI-1640中でIGROV1細胞を培養した。
【0251】
iv. 動物実験
全ての実験は、テキサス大学サウスウェスタン・メディカル・センター(The University of Texas Southwestern Medical Center)の施設動物ケアおよび使用委員会(Institutional Animal Care & Use Committee) (IACUC)により承認され、適用できる場合は地方、州および連邦規制と一致していた。C57BL/6および無胸腺ヌードFoxn1
nuマウスをEnvigoから購入した。NOD scidガンマ(NSG)マウスは、UT Southwestern動物育種コアから購入した。Rosa-CAG-LSL-tdTomatoマウスをThe Jackson Laboratory (ストック番号: 007909)から購入した。
【0252】
v. 方法
1Hおよび
13C NMRを、Varian 400 MHz分光計またはVarian 500 MHz分光計にて行った。MSをVoyager DE-Pro MALDI-TOFにて行った。LCMSを、UV-visおよび蒸発光散乱検出器(ELSD)を備えたAgilent LCMSシステムにて行った。フラッシュクロマトグラフィーを、UV-visおよび蒸発光散乱検出器(ELSD)を備えたTeledyne Isco CombiFlash Rf-200iクロマトグラフィーシステムにて行った。粒径およびゼータ電位を、Malvern Zetasizer Nano ZS (He-Neレーザー, λ = 632 nm)を用いた動的光散乱(DLS)によって測定した。RT qPCRをBio-Rad C1000 Touch Thermal Cycler (CFX384 Real-time System)にて行った。各反応を、iTaq Universal SYBR Green 2X Supermix (Bio-Rad)で行った。Zeiss LSM-700による共焦点レーザー走査顕微鏡法を用いて組織切片を画像化し、ImageJ (NIH)を用いて画像を処理した。BD FACSAria Fusion機(BD Biosciences)でフローサイトメトリーを行った。
【0253】
vi. インビボ研究のためのナノ粒子製剤化
ヘリンボーン高速混合機能を有する2チャネルマイクロ流体ミキサ(Precision Nanosystems NanoAssemblr)を用いて、インビボ研究用の両性イオンアミノ脂質(ZAL)ナノ粒子(ZNP)を調製した。脂質混合物(ZAL、コレステロール、およびPEG-脂質)のエタノール溶液を、水性:EtOH体積比3:1および流速12 mL/分で核酸の酸性水溶液と迅速に混ぜ合わせた。
【0254】
vii. 核酸配列
a. 低分子干渉RNA (siRNA)
dTはDNA塩基である。他は全てRNA塩基である。
siLuc (ルシフェラーゼに対するsiRNA)。
センス:
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アンチセンス:
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siCtrl (非ターゲティングsiRNA)
センス:
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アンチセンス:
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【0255】
単一ガイドRNA (sgRNA)。以前に報告されたように(Ran et al., 2013)、ガイドRNAをCRISPR.mit.eduプラットフォームを用いてデザインし、pSpCas9(BB)-2A-GFP (PX458)にクローニングした。
【0256】
(表2)sgRNA配列
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【0257】
(表3)BbsI sgRNAクローニングオリゴ
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*ガイド配列を太字で示した。
【0258】
(表4)T7鋳型PCRプライマー
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【0259】
(表5)SurveyorアッセイPCRプライマー
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【0260】
(表6)リアルタイムqPCRプライマー
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【0261】
viii. sgRNA調製
単一ガイドRNAをCRISPR.mit.eduプラットフォームを用いてデザインし、標準的なBbsIクローニングを用いてPX458プラスミドにクローニングした。T7転写鋳型をPCRによって増幅し、ゲル精製した。sgRNAを、MEGAshortscript T7転写キット(Life Technologies)を用いたインビトロ転写によって調製し、引き続き製造業者のプロトコルにしたがってMEGAclear Transcription Clean-Up Kit (Life Technologies)を用い精製を行った。
【0262】
ix. pDNAを用いたsgRNAのスクリーニング
sgRNAクローン化PX458プラスミドを用いて、sgRNAおよびCas9の両方をコードするプラスミドのトランスフェクションによるルシフェラーゼに対するsgRNAの効力を評価した。リポフェクトアミン(Lipofectamine) 3000 (LF3000, Invitrogen)を用いて、sgRNA-Cas9プラスミドを製造業者のプロトコルにしたがってトランスフェクトした。HeLa-Luc細胞を、1ウェル当たり細胞10,000個の密度で96ウェル乳白色組織培養プレートに播種した。1ウェル当たり100 ngのpDNAの用量で、LF3000 pDNA粒子を細胞に添加した。6時間後、培地を除去し、新鮮増殖培地200 μLに交換した。24、48および72時間後、ルシフェラーゼの相対発現を、One-Glo + Toxアッセイ(Promega)を用いて判定し、対照に対して規準化した。非ターゲティングsgRNA (sgScr)および非ガイドCas9プラスミドを対照として用いた。(N = 4 +/-標準偏差)。
【0263】
x. HeLa-Luc-Cas9細胞株調製
HeLa-Luc-Cas9安定細胞をレンチウイルス形質導入により調製した。親HeLa-Luc細胞(Zhou et al., 2016; Hao et al., 2015)を完全増殖培地中、24ウェルプレートに1ウェル当たり細胞70,000個の密度で播種し、終夜インキュベータ内で付着させた。培地を予め加温した偽粒子培地(DMEM, 3% FBS, 20 mM HEPES, 4 μg/mLポリブレン) 1 mLと交換した。Cas9-Blastレンチウイルス上清を氷上で解凍し、50〜100 μLを所望のウェルに添加した。細胞を室温で1時間1,000× gでスピン感染させ、終夜インキュベータに戻し、その後に偽粒子培地を完全増殖培地に交換した。スピン感染後48時間の全時間後に、選択圧をかけ(5および10 μg/ mLのブラストサイジンS)、細胞を維持し、拡張した。単細胞クローンを、フローサイトメトリーによる単細胞選別によって単離した。Cas9タンパク質発現を、単細胞選別前にはFLAGタグについておよび単細胞選別後にはCas9についてブロッティングにより親HeLa-Luc細胞と比べてウエスタンブロットにより確認した。
【0264】
xi. インビトロZALナノ粒子(ZNP)製剤化
エタノール希釈法によりZNPを調製した。RNA (siRNA、sgRNA、またはmRNAのいずれか)を酸性水性緩衝液(別段の指示がない限り、10 mMクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液p H3)中に希釈した。脂質混合物を、各成分のエタノールストック溶液からZAL、コレステロールおよびPEG-脂質の適切なモル比で、エタノール中にて調製した。ピペットを介して、脂質希釈液を最終体積比1:3でRNA希釈液に添加し、ピペットによって素早く混合し、15〜20分間インキュベートした。このインキュベーション時間の後、粒子を、カルシウムおよびマグネシウム不含1×ダルベッコ改変PBS (Sigma-Aldrich)中で3倍希釈し、またはカルシウムおよびマグネシウム不含1×ダルベッコ改変PBS (Sigma-Aldrich)に対して透析した。透析をPur-A-Lyzer Midi透析チャンバ(Sigma-Aldrich)中でチャンバ当たりサンプル200 μLにつき1時間行った。
【0265】
xii. ZAL siRNA送達ライブラリスクリーン
エポキシドおよびアクリレート疎水性尾部で機能化されたZALのライブラリを、HeLa-Luc細胞におけるsiRNA送達効力についてスクリーニングした。乳白色96ウェルプレート組織培養プレートにおいて、HeLa細胞を、増殖培地(フェノールレッド不含DMEM, 5% FBS) 100 μL中に1ウェル当たり細胞10×10
3個の密度で播種し、終夜付着させた。アッセイの日に培地を新鮮増殖培地200 μLに交換した。粗ZAL生成物を、50:38.5 (ZAL:コレステロール)の処方脂質混合物を用いて調製し、ZAL中の疎水性尾部の数が製剤中のZAL:siRNAモル比を決めるようなZAL:siRNA比はおよそ1000であって、これによりライブラリ全体で平均29.5 +/- 6.3の重量比で、16:1〜45:1 ZAL:siRNAのライブラリ全体での重量比範囲が得られた。ZAL NP製剤化をマルチチャネルピペットで、3:1の水性:EtOH v:v比にてZAL脂質混合物(20 μL)およびsiLuc希釈液(10 mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液, pH 5中13.33 ng/μL, 60 μL)の急速混合により96ウェルプレート中で行った。15〜20分のインキュベーション時間の後、製剤を12容量(240 μL)のPBS中に希釈した。ナノ粒子(40 μL)を1ウェルあたりsiRNA 100 ngの用量でHeLa-Luc細胞に加えた。ナノ粒子を細胞とともに24時間インキュベートし、その時間の後、細胞生存性およびルシフェラーゼ発現をONE-Glo + Tox Assayアッセイ細胞生存性およびルシフェラーゼアッセイ(Promega)で評価した。
【0266】
xiii. HeLa-Luc-Cas9細胞へのsgRNA送達
選択ZALを、HeLa-Luc-Cas9細胞への単一ガイドRNA (sgRNA)の送達において評価した。乳白色96ウェルプレート組織培養プレートにおいて、HeLa-Luc-Cas9細胞を、増殖培地(フェノールレッド不含DMEM, 5% FBS) 100μL中に1ウェルあたり細胞5×10
3個の密度で播種し、終夜付着させ、その後にさらにDMEM 100 μLを補充した。示された脂質組成および重量比でインビトロナノ粒子製剤プロトコル(50:38.5 (ZAL:コレステロールモル比)を維持、5%から0.5%にPEG-脂質混合物を調整、および20:1 ZAL:sgRNAから5:1 ZAL:sgRNAに重量比を調整)を用いて、sgRNAを封入しているZNPを製剤化した。非ターゲティング対照sgRNA (sg対照(sgCtrl))を陰性対照として用いた。ナノ粒子を適切な用量のsgRNAで細胞に加え、細胞とともに48時間インキュベートした。細胞生存性およびルシフェラーゼ発現を、ONE-Glo + Tox Assay (Promega)で評価し、未処置細胞に対して規準化した(N = 4 +/- 標準偏差)。
【0267】
xiv. sgRNAおよびsiRNA送達の動態アッセイ
siRNAおよびsgRNAによるサイレンシング/編集後のルシフェラーゼ発現の動態を、HeLa-Luc-Cas9細胞において判定した。48時間未満の時点の場合、sgRNAまたはsiRNAを封入しているZNPを、1ウェル当たり細胞5K個の密度で96ウェルプレート中のHeLa-Luc-Cas9細胞に送達した。0.5、1、2、4、11、20、30および44時間の時点の後、細胞生存性およびルシフェラーゼ発現を、One-Glow + Toxアッセイによって判定した。より長い時点の場合、細胞を6ウェルプレート中で処置した。2日の時点で始めて、細胞を吸引し、1×PBSで洗浄し、トリプシン200 μL中でトリプシン処理し、培地1800 μL中に再懸濁した。各細胞懸濁液1 mLを、DMEM 1 mLを含有する新たな6ウェルプレートに加え(計2 mL)、インキュベータに戻した。残りの細胞懸濁液のうち、50 μLを96ウェル乳白色プレート(1サンプル当たり10ウェル)に移入した。Cell-Titer Gloアッセイを用い未処置細胞に対し規準化して細胞生存性を判定し、一方で相対的ルシフェラーゼ発現を、One-Gloアッセイを用いて判定し、対照(si対照(siCtrl)またはsg対照(sgCtrl))に対して規準化した。データを測定5回の平均 +/- 標準偏差としてプロットした。
【0268】
xv. ルシフェラーゼmRNA送達インビトロアッセイ
mRNAを有するZNP (Tri-Link Biotechnologies)を、上記のインビトロナノ粒子製剤法を用いて調製した。IGROV1細胞を、5% FBSを補充したRPMI 1640培地100 μL中に1ウェル当たり細胞5×10
3個の播種密度で乳白色96ウェル組織培養プレートに播種し、終夜付着させた。終夜インキュベーションの後、培地さらに100 μLをウェルに加えた。ZAL:mRNAナノ粒子を20:1、10:1、7.5:1および5:1のZAL:mRNA重量比、ならびに50:38.5:nのZAL:コレステロール:PEG脂質の脂質混合物モル組成で調製したが、ここで、各重量比でn = 5、2、1および0.5である。ZAL-mRNAナノ粒子を適切なmRNA用量で細胞に添加し、示された時間(6時間から48時間に及ぶ)インキュベートし、その時間の後、細胞生存性およびルシフェラーゼ発現をONE-Glo + Tox Assay (Promega)で評価し、未処置細胞に対して規準化した(N = 4 +/- 標準偏差)。
【0269】
xvi. Cas9 mRNAおよびsgRNAのインビトロ共送達
Cas9 mRNA (Tri-Link biotechnologies)および単一ガイドRNA (sgRNA)のルシフェラーゼ発現がん細胞への共送達においてZNPを評価した。細胞を6ウェルプレートおよびDMEM 2 mL中、1ウェル当たり250,000個の密度で播種した。インビトロ製剤プロトコルを用いてZNPを製剤化した。単一粒子中での共送達のために、適切なZAL:全RNA重量比でZAL脂質混合物を添加する前に、Cas9 mRNAおよびsgRNAをpH 3で一緒に酸性緩衝液中で混ぜ合わせた。細胞を、Surveyorアッセイによる編集の評価前に、72時間ZNPとともにインキュベートした。陰性対照として、Cas9のみ(非ガイドCas9)、sgLucのみ、およびCas9に加えてsg対照を有するZNPを加えた。sgRNA用量は1ウェル当たり0.5 μgに固定したが、Cas9 mRNA用量は1ウェル当たり0.5 μg (1:1)から3 μg (6:1)に調整した。ZAL:全RNA比は7.5:1に固定した。段階的共送達は、Cas9 mRNA ZNPの添加、続いて24時間後に2:1のCas9 mRNA 対 sgRNAの合計比でのsgRNA ZNPの添加によって行った。さらに48時間のインキュベーション時間の後、細胞をSurveyorアッセイによる遺伝子編集によって評価した。
【0270】
xvii. 核酸結合実験
Ribogreenアッセイ(Molecular Probes)を用いて核酸結合を評価した。要するに、インビトロまたはインビボ製剤プロトコルを用いてナノ粒子を調製した。ナノ粒子製剤(5 μL)を黒色96ウェル不透明マイクロプレート(Corning)に添加した。適切な核酸の標準曲線を、ナノ粒子と同じ培地中で用意した。Ribogreen試薬を1×PBS中に1:1000で希釈し、マルチチャネルピペットを介して各ウェルに50 μLを添加した。混合物をオービタルミキサ上で5分間撹拌し、プレートリーダー(λ
Ex 485 nm, λ
Em 535 nm)を用いて各ウェルの蛍光を読み取った。遊離核酸の量を、各ナノ粒子サンプルからのシグナルを核酸標準曲線に当てはめることによって判定し、結合した割合を以下の式によって判定した: 結合核酸の割合 = (全核酸投入量 - 遊離核酸)/全核酸投入量) (N = 3または4 +/- 標準偏差)。
【0271】
xviii. インビボナノ粒子製剤化:
インビボナノ粒子製剤化を、NanoAssemblrマイクロ流体混合システム(Precision Nanosystems)を用いて行った。脂質をエタノールに溶解し、核酸を10 mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液pH 3中に希釈した。脂質混合物および核酸希釈物を1分当たり12 mLの全流速、ならびに各製剤化の開始時および終了時に0.1 mLの廃棄物収集で3:1の核酸:脂質混合物の体積比にて混ぜ合わせた。ナノ粒子をPur-A-Lyzer midi透析チャンバ(Sigma-Aldrich)内の1×PBSに対して各チャンバ内の容量200 μL当たり1時間透析し、1×PBS中に適切な核酸濃度まで希釈した。
【0272】
xix. インビボルシフェラーゼmRNA送達:
全ての実験は、テキサス大学サウスウェスタン・メディカル・センター(The University of Texas Southwestern Medical Center)の施設動物ケアおよび使用委員会(Institutional Animal Care & Use Committee) (IACUC)により承認され、適用できる場合は地方、州および連邦規制と一致していた。ZA3-Ep10を、脂質混合物中50 ZAL:38.5コレステロール:0.5、1または2 PEG脂質モル比、および7.5:1 ZAL:mRNA重量比でインビボ製剤形成により製剤化した。マウスに尾静脈注射または腹腔内注射を介して1 mg/kgの用量でZAL-mRNA NPを注射した。24時間および48時間後、ルシフェラーゼ発現を生きた動物の生物発光画像化によって評価した。動物をイソフルラン下で麻酔し、D-ルシフェリン一ナトリウム水和物(GoldBio)基質を首筋に皮下注射した。麻酔下で10〜12分のインキュベーション後、ルシフェラーゼ活性をIVIS Luminaシステム(Perkin Elmer)にて画像化し、画像を、Living Image分析ソフトウェア(Perkin Elmer)を用いて処理した。エクスビボ画像化を切除後に全身器官に対して行い、組織をエクスビボルシフェラーゼ発現分析のためにドライアイス上で凍結した。
【0273】
xx. ナノ粒子特性の特徴付け
He-Neレーザー(λ = 632 nm)を備えたZetasizer Nano ZS (Malvern)を用いて物理的特性を測定した。粒径を、173°後方散乱による動的光散乱(DLS) (5回測定, 3回×10秒, 自動減衰器設定)によって測定した。ゼータ電位を、ZAL NPの場合にはPBSまたはCSAL NPの場合にはクエン酸リン酸緩衝液pH 7.4中に希釈したサンプルにより、折り畳みキャピラリーセル(Malvern)中で測定した。
【0274】
xxi. Surveyorアッセイ
トランスフェクションされた細胞からのゲノムDNAを、製造業者のプロトコルにしたがってQuickExtract DNA Extraction Solution (Thermo Fisher Scientific)を用い単離した。次いで、標的領域をPCRによって増幅し、PCR産物をアガロースゲル(QIAquick Gel Extraction Kit, QIAgen)上でゲル精製した。Surveyor Mutation Detection Kit (IDT)を用いてSurveyorアッセイを行った: PCR産物を最初にハイブリダイズし、次いで産物の半分をヌクレアーゼSで切断した; 次いで未切断および切断DNAの両方を、4〜20%ポリアクリルアミドゲル(Biorad)上で泳動した。ゲルをSYBR Gold Nucleic Acid Gel Stain緩衝液(TBE緩衝液中1:10000希釈, Thermo Fisher Scientific)で染色し、UV光によって画像化した。
【0275】
xxii. ウエスタンブロット
細胞を冷RIPA緩衝液(Thermo Scientific)中で溶解し、溶解物を遠心分離によって清澄化し、上清中の全タンパク質をBCAアッセイ(Pierce)によって定量した。全タンパク質50 μgを4〜20%プレキャストポリアクリルアミドゲルに負荷し、ニトロセルロース膜(BioRad)に転写した。この膜をRTにて1時間5%無脂肪ミルク中でブロッキングし、その後、終夜4℃で一次抗体(Cas9抗体, 1:1000, Cell Signaling, 14697S; β-アクチン抗体, 1:2000, Cell Signaling, 4970)とともにインキュベートした。二次抗体をRTで1時間適用し(抗ウサギIgG, HRP結合抗体, Cell Signaling, 7074, 抗マウスIgG, HRP結合抗体, Cell Signaling, 7076)、その後、膜を発色させ、X線フィルム上で検出した。
【0276】
xxiii. リアルタイムRT-qPCR
細胞を6ウェルプレート中、示された時点についてCas9 mRNAおよび示された時点について0.5 μg/mL mRNAでトランスフェクトした。全RNAを製造業者のプロトコルにしたがってTRIzol試薬を用い抽出した。iScript Reverse Transcriptionキット(BioRad)を用いてRNAを逆転写し、リアルタイムqPCRをBio-Rad C1000 Touch Thermal Cycler (CFX384 Real-time System)にて実行した。各反応をiTaq Universal SYBR Green 2× Supermix (Bio-Rad)で行った。qPCRプログラムは以下の通りである:
1) 95℃ 3分間
2) 95℃ 10秒および55℃ 30秒 40サイクル
3) 95℃ 10秒
4) 65℃ 5秒
5) 95℃ 5秒
ヒトβ-アクチンを対照として用い、mRNAレベルをアクチン(倍率)に対して規準化し、2つの独立した実験の平均としてプロットした。
【0277】
xxiv. Cas9 mRNAおよびsgLoxPのインビボ送達
Cas9 mRNAおよびsgLoxpを封入しているZA3-Ep10 ZNPを、Nanoassemblrマイクロ流体混合装置を用いたインビボナノ粒子製剤プロトコルにしたがって調製した。脂質混合物は50 ZA3-Ep10:38.5コレステロール:0.5 PEG脂質のモル比を含み、粒子は7.5:1のZAL:全RNA重量比で製剤化された。Cas9 mRNA: sgLoxP重量比を4:1に維持した。Rosa 26-LSL-tdTomatoマウスに尾静脈注射により5 mg/kgの全RNA (4 mg/kg mRNA, 1 mg/kg sgRNA)で注射し、1週間モニターした。その後、それらを殺処理し、主要な臓器を未注射のRosa 26-LSL-tdTomatoマウスと比較して、蛍光発現用IVIS Luminaシステム(dsRedフィルタセット)を用いて画像化した。尾静脈注射(4日)によって静脈内に注射された肝特異的Creリコンビナーゼアデノ随伴ウイルス(Cre-AAV8)を陽性対照として用いた。
【0278】
xxv. 組織切片化
組織をRTで2時間 4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で固定し、次に4℃で終夜30%スクロース(PBS中)に変えた。その後、組織をCryo-gel (Leica Biosystems)に包埋し、ドライアイス中で凍結させた。ブロックを、8 μmの厚さでCryostat機(Leica Biosystems)を用い切片化した。切片を風乾し、PBS中0.25% Triton X-100 (Biorad) 5% FBS中でRTにて1時間インキュベートした。次に、スライドをDAPI (Vector Laboratories)でマウントし、カバーした。
【0279】
xxvi. 初代肝細胞単離
初代肝細胞を、2段階コラゲナーゼかん流によって単離した。肝かん流培地(Thermo Fisher Scientific, 17701038)、肝消化培地(Thermo Fisher Scientific, 17703034)および肝細胞洗浄培地(Thermo Fisher Scientific, 17704024)を用いた。
【0280】
xxvii. フローサイトメトリー
Tomato陽性集団の検出のために、初代肝細胞(2×10
6/mL)を単離し、死細胞排除のためにDAPI (Roche, 2 μg/mL)で染色した。細胞をBD FACSAria Fusion機(BD Biosciences)で分析した。Tomato陽性細胞をDAPI陰性(生細胞)集団において計数した。
【0281】
xxviii. 統計分析
GraphPad Prismのスチューデントt検定を用いて統計分析を行った。
【0282】
B. CRISPR核酸配列の送達
両性イオンアミノ脂質(ZAL)を、両性イオンスルホベタイン頭部基、アミンに富んだリンカー領域、およびさまざまな(assorted)疎水性尾部を含むように合理的に合成した(
図67)。2-(ジメチルアミノ)エチルアクリルアミドと1,3-プロパンサルトンとの開環反応によって両性イオン求電子前駆体(SBAm)を調製し、これはアセトン中でそのまま沈殿させて容易に単離された。異なるポリアミンのSBAmへの共役付加により、疎水性エポキシドおよびアクリレートと反応して6〜18個の炭素アルキル尾部およびアルコール/エステル基を付加し、ZAL-RNA相互作用を増強しうる一連の両性イオンアミンが得られた(実施例2参照)。ZNPが一般的にRNAを結合し送達しうることを検証するために、72員ライブラリを、ホタルルシフェラーゼを安定に発現するHeLa細胞(HeLa-Luc)へのsiRNA送達について最初にスクリーニングした(
図19)。これにより、ZA1、ZA3、およびZA6を含めて、重要なアミンコアの構造的同定が可能になった。興味深いことに、エポキシドに基づくZAL (ZA
x-Ep
n)も一般に、アクリレートに基づくZAL (ZA
x-Ac
n)よりも活性が高かった(
図18)。リード化合物を手にして、sgRNAおよびCas9 mRNAの送達に焦点を向けた。時間的に多段および同時の両方の共送達により、完全に外来性の遺伝子編集が可能になった。
【0283】
Cas9およびルシフェラーゼの両方を発現する安定な細胞株(HeLa-Luc-Cas9)を用い、ZALを、CRISPR/Cas9成分を送達するその能力について評価した。HeLa-Luc細胞のCas9レンチウイルス形質導入の後に、単一のHeLa-Luc-Cas9細胞クローンを単離した(
図43A〜43C)。ルシフェラーゼに対するsgRNAを、遺伝子の最初の3分の1を標的とする既報の方法にしたがってデザインおよび作出し(表2) (Ran et al., 2013)、pDNAトランスフェクションによって評価した(
図44)。ルシフェラーゼに対する最も活性なsgRNA (sgLuc5, 以降sgLuc)および対照sgRNAを、インビトロ転写によって合成した。次に、リードZNPにsgLucを負荷し、HeLa-Luc-Cas9細胞への送達について評価した。ルシフェラーゼおよび生存性(Hao et al., 2015; Zhou et al., 2016; Yan et al., 2016)を未処置細胞と比べて48時間(h)後に測定した。カチオン性および両性イオン官能基を組み合わせた化学的デザインから予想されるように、ZNPはヘルパーリン脂質の包含を必要としない(
図65A)。
【0284】
リードZALのうち、ZA3-Ep10はsgLucの送達に有効であることが見出された(
図45)。ルシフェラーゼDNAの編集により、ルシフェラーゼ発現の用量依存的減少がもたらされた(
図65B)。CRISPR/Cas編集は、挿入欠失を検出できるSurveyorヌクレアーゼアッセイ(Guschin et al., 2010)を用いて検証された(
図63C)。sgRNAが細胞中でのCas9ヌクレアーゼへの負荷および配列誘導型編集を行うために核への輸送を必要とすることを考えると、特にRNAi媒介遺伝子サイレンシングと比較して、このプロセスの動態の理解が求められていた。siLuc媒介mRNA分解は迅速なプロセスであり、発現は最初の4時間以内に40%減少した。ルシフェラーゼは20時間までに92%サイレンシングされ、約3日間、低いままであった。その後、タンパク質発現は着実に増加し、トランスフェクションの6日後にベースラインレベルに達した(
図63Bおよび
図46 (早期の時点))。対照的に、sgLucを介したDNA編集は、おそらくCas9へ負荷しPAMについてDNAをサーベイする必要があるため、速度論的にさらに遅かった。ルシフェラーゼ発現が40%減少するのに20時間かかり、最終的に2日後に95%減少し、無期限にそこにとどまった。低いルシフェラーゼ発現(5%)は、複数回の細胞分裂の後でさえも、恒久的なゲノム変化のためにアッセイ期間(9日)を通して持続し、編集細胞が非編集細胞と同じ割合で増殖したことを示唆していた(
図63Bおよび47)。
【0285】
ZA3-Ep10 ZNPがsgRNA (およそ100 nt)を効果的に送達できることを実証したので、次にはさらに長いmRNA (1,000〜4,500 nt)を送達するその能力を調べた。mCherry mRNA (およそ1,000 nt)またはルシフェラーゼmRNA (およそ2,000 nt)をコードするmRNAを、IGROV1ヒト卵巣がん細胞に送達した。明るいmCherry発現が見られ(
図63C)、ルシフェラーゼ発現が用量依存的であることが観察された(
図63D)。特に、高発現には低mRNA用量(600 pM未満)を必要とした。製剤中のPEG脂質モル比に対する依存性を示さなかったsgRNA (
図28および48)とは対照的に、mRNAの送達効力は、より高いPEG脂質比では減少した(
図49)が、ZNPサイズの変化はわずかしかなかった(
図50)。PEG化の最適化は、特にインビトロからインビボへの翻訳を考えると、各標的疾患、臓器、および細胞型について探索されるべき進行中の課題である(Whitehead et al., 2012)。この報告は、複数の細胞型およびマウス系統において異なる製剤を調べることによりそれらの懸念事項のいくつかを軽減することを試みる。デザイン仮説をさらに裏付けるものとして、製剤中へのDOPEのモル比を増加させることによる構造的に類似のカチオン性脂質の漸増は、sgRNAおよびmRNAの送達の改善を示したが、siRNAはさらなる両性イオン含量を必要としなかった(
図51)。さらに、ZA3-Ep10 ZNPの効力は全てのRNAカーゴにわたって一貫しており、リン脂質を補充したカチオン性類似体よりも優れていた。
【0286】
次に、複数のマウス系統へのZA3-Ep10 mRNA ZNPの静脈内(i.v.)投与によりインビボで、最適な製剤を評価した。無胸腺ヌードマウス(
図65E, 1 mg/kg)、C57BL/6マウス(
図65F, 4 mg/kg)、およびNOD scidガンマ(NSG)マウス(
図52, 1 mg/kg)におけるLuc mRNA送達後の生物発光画像化は、注射から24時間後に肝臓、肺および脾臓組織におけるルシフェラーゼの発現をもたらし、これをROI分析によって定量化した(
図53Aおよび53B)。高い肺シグナルに基づいて、肺細胞における共送達(ワンポット) CRISPR/Cas編集を探索した。
【0287】
Cas9 mRNAの長さが非常に長いため(およそ4,500 nt)、合成担体を用いた送達は特に困難である。注目すべきことに、A549肺がん細胞におけるCas9 mRNAのレベルは、ZA3-Ep10 Cas9 mRNA ZNPとのわずか4時間のインキュベーション後に非常に高いことが見出された(
図66A)。合成的に導入されたmRNAは、次の45時間にわたって4倍超のアクチンから0.7倍のアクチンまで減じた。mRNAの翻訳には時間がかかるので、タンパク質発現は4時間で低く、12時間までにかなり増加し、36時間までに最高であった(
図66Aおよび66B)。それは用量依存的でもあった(
図66C)。インビボでの有用性について、合成NP担体の使用はウイルス送達の懸念を軽減する。さらに、Cas9 mRNAの送達はCas9の一過性発現を可能にし、標的外のゲノム改変をもたらしうる持続性を最小にする。これは、外因性ヌクレアーゼをゲノムに組み入れることの重大な治療的危険性を減らすことができる。
【0288】
上記のように、mRNAおよびsgRNAの送達は動力学的に異なる。確かに、別々のZNPでの段階的送達が有効な治療法であることが分かった。Cas9タンパク質発現を可能にするための、24時間のmRNAのZNP送達、続いて別々のZNP中のsgRNA送達は、HeLa-Luc細胞およびA549-Luc細胞の両方において有効なインビトロ編集を可能にした(
図54および55)。しかし、インビボでの有用性を考慮すると、Cas9 mRNAおよびsgRNAは同じ細胞内に存在しなければならない。それゆえ、この方法は同じ個々の細胞への送達を保証するので、単一のNPからのmRNAおよびsgRNAの共送達はより高い編集効率を提供するものと推論された。種々の条件を探索し、Cas9 mRNAおよびsgRNAの両方を封入しているZNPによる標的遺伝子の効果的な編集には、Surveyorアッセイによって確認されるように、3:1 (wt)以上のmRNA:sgRNAの比が必要であり(
図66D)、一方で対照ZNPはいかなる編集も示さない(
図55)ことが分かった。
【0289】
インビボでの共送達を調べるために、全細胞中に存在するホモ接合Rosa26プロモーターLox-Stop-Lox tdTomato(tdTO)カセットを含む遺伝子操作マウスを利用した(Tabebordbar et al., 2016)。Cas9-mRNAおよびLoxPに対するsgRNAの共送達(Li et al., 2015)は、停止(Stop)カセットの欠失およびtdTO発現の誘導を可能にした(
図67A, 表2)。tdTOを発現させるためには同じ対立遺伝子に2つの切断を行う必要があるため、これは合成担体にとって困難なモデルである。4:1のmRNA:sgRNA重量比でCas9 mRNAおよびsgLoxpを封入しているZNPを、5 mg/kgのRNA用量で静脈内投与した(
図56〜58)。投与の1週間後、tdTOからの蛍光シグナルが全器官のエクスビボ画像化により肝臓および腎臓において検出された(
図67B)。共焦点蛍光顕微鏡法を用いた切片化臓器の詳細な検査により、肝臓、肺、および腎臓組織中のtdTO陽性細胞が示された(
図67C)。重要なことに、動物をsg対照ZNPで処置した場合にはtdTO陽性細胞は検出されず(
図59)、処置動物の体重の有意な変化は観察されなかった(
図60)。初代肝細胞をかん流肝臓から単離し、編集を定量化するためにtdTO細胞をフローサイトメトリーによって計数した(
図61)。編集をさらに確認するために、ZNP sgLoxP処置の2ヶ月後に組織を採取したところ、それは依然として肝臓および腎臓において強い蛍光シグナルを示した(
図62)。この原理証明データは、単一のZNPからのCas9 mRNAおよび標的指向化sgRNAの静脈内共送達がインビボでCRISPR/Cas編集を可能にしうることを示す。
【0290】
実施例5: ZALおよびCSALのさらなる修飾
ZALおよびCSALの合成のモジュール特性を考えると、分子の単一部分内の変化は、多種多様な構造類似体を得る能力を損なうことなく達成することができる。例えば、ZALおよびCSALの中心のカチオン性アミンは、異なる長さの鎖を得るために以下に示すように修飾することができる。
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【0291】
さらに、以下に示すように、中心アミンがアニオン性リン酸基で置換されている場合、ZALのアニオン性頭部基は、異なるアニオン性基で置換されてもよく、またはカチオン性頭部基に変換されてもよい。
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【0292】
これらの基の分析は、分子内の電荷の立体化学、両性イオンの同定および間隔を変えるであろう。これらの修飾アニオン性頭部基は、以下のスキームに記述されるように合成されうる。
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【0293】
さらに、エポキシ化された出発材料を用いた疎水性尾部の形成は、核酸配列とのさらなる相互作用を生成するためにさらに反応する第2級アルコール部位の存在をもたらす。可能な修飾のいくつかの非限定的な例としては、以下のスキームに示されるものが挙げられる。アセチル化ZALのNMRを
図68に示す。
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【0294】
さらに、アミンは、以下に示すものなどの分解性ジエステルで官能化することができる。このジエステルは、必然的に疎水性の基を提供するために、1つまたは複数のメルカプトアルキル基でさらに修飾することができる。
【0295】
さらに、分解性エステル基および第2級アルコールの両方の導入を可能にするために、グリシド酸エステルを調製した。
【0296】
種々のアクリレートでのこれらの化合物の形成を行い、
図69Aおよび69BにNMRによって示した。これらの修飾された構造的ZALおよびCSALを、RNAを結合するその能力および異なるRNA分子で形成されたナノ粒子の物理的特性について試験した。次いで、これらの粒子を、HeLa-Luc-Cas9細胞へのsgRNAおよびIGROV1細胞へのmRNAのその送達能力について試験した。さらなる類似体についての質量スペクトルおよびNMRデータをそれぞれ、
図70および71に示す。
【0297】
本明細書において開示および主張される組成物および方法の全ては、本開示に照らして過度の実験なしに作製および実行されることができる。本開示の組成物および方法は特定の態様に関して記述されているが、当業者には、本開示の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書において記述される、組成物および方法にならびに方法の段階においてまたは段階の順序において変形が適用されうることが明らかであろう。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連する特定の薬剤が、本明細書において記述される薬剤に代用されても、同じまたは同様の結果が達成されうることが明らかであろう。当業者には明らかなそのような同様の置換および修飾は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
【0298】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書において記載されたものに補足的な例示的な手順または他の詳細を提供する限り、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
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