特表2019-519903(P2019-519903A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-519903ハイレート型のコバルト酸リチウム正極材料及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-519903(P2019-519903A)
(43)【公表日】2019年7月11日
(54)【発明の名称】ハイレート型のコバルト酸リチウム正極材料及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20190621BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20190621BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20190621BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20190621BHJP
【FI】
   H01M4/525
   H01M4/36 A
   H01M4/505
   C01G51/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-516041(P2019-516041)
(86)(22)【出願日】2017年4月27日
(85)【翻訳文提出日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】CN2017082231
(87)【国際公開番号】WO2017206633
(87)【国際公開日】20171207
(31)【優先権主張番号】201610381625.6
(32)【優先日】2016年6月1日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】518427395
【氏名又は名称】湖南杉杉能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUNAN SHANSHAN ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】董 虹
(72)【発明者】
【氏名】胡 旭尭
(72)【発明者】
【氏名】蒋 湘康
(72)【発明者】
【氏名】譚 欣欣
(72)【発明者】
【氏名】李 旭
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB02
4G048AB03
4G048AC06
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4G048AD06
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5H050AA02
5H050AA07
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5H050HA07
5H050HA09
5H050HA10
5H050HA20
(57)【要約】
リチウムイオン電池の充放電中、コバルト酸リチウム正極材料のリチウムイオン伝導率が大幅に上昇し、材料のレート特性を向上できるハイレート型のコバルト酸リチウム正極材料及びその調製方法を提供する。
LiαM’γβ(M’はTi、Zr、Y、V、Nb、Mo、Sn、In、La及びWから選ばれる少なくとも1種で、1≦α≦4、1≦γ≦5、及び2≦β≦12である)の化学式で表される高速イオン伝導体により形成されるマルチチャンネルメッシュ構造を含み、主にコバルト酸リチウムからなり、一次粒子形態で、高速イオン伝導体と溶合し、二次粒子を形成するコバルト酸リチウムは、高速イオン伝導体の上記マルチチャンネルメッシュ構造に埋設される。該コバルト酸リチウム正極材料は、M’の水酸化物を含浸したコバルト酸化物をリチウム源と均一に混合した後、高温の空気雰囲気炉にて、焼成することにより調製する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト酸リチウム及び高速イオン伝導体を含むハイレート型コバルト酸リチウム正極材料であって、前記高速イオン伝導体により形成されるマルチチャンネルメッシュ構造を含み、且つ一次粒子形態で、高速イオン伝導体と溶合し、二次粒子を形成する前記コバルト酸リチウムは、高速イオン伝導体の前記マルチチャンネルメッシュ構造に埋設され、前記高速イオン伝導体は、LiαM’γβ(M’はTi、Zr、Y、V、Nb、Mo、Sn、In、La及びWから選ばれる少なくとも1種で、1≦α≦4、1≦γ≦5、及び2≦β≦12である)の化学式で表される、ことを特徴とするハイレート型コバルト酸リチウム正極材料。
【請求項2】
元素Mがドープされ、Li1+yCo1−x・ zLiαM’γβ(ただし、0≦x≦0.1、−0.01≦y≦0.01、0.005≦z≦0.01であり、MはMg、Al、Si、Sc、Ni、Mn、Ga及びGeから選ばれる少なくとも1種である)の化学式で表される、ことを特徴とする請求項1に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料。
【請求項3】
M’の水酸化物を含浸したコバルト酸化物をリチウム源と均一に混合した後、高温の空気雰囲気炉にて、焼成するステップを含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項4】
前記M’の水酸化物を含浸したコバルト酸化物は、M’を含有する有機化合物を分離機で無水エタノールに溶解して分散し、均一に撹拌した後、多孔質コバルト酸化物に添加し、0.5〜1.5時間撹拌した後、エタノールに対して体積比5〜20の水を含有するエタノール水溶液を加え、2〜5時間撹拌を続け、吸引濾過して、乾燥するステップにより調製する、ことを特徴とする請求項3に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項5】
前記M’を含有する有機化合物は、M’のアルコキシド、M’のアルキル化合物、M’のカルボニル化合物及びM’のカルボキシル化合物から選択される少なくとも1種であり、前記多孔質コバルト酸化物は、CoCO・aHO又はCoC・aHOで、0≦a≦9である前駆体を仮焼して得られ、平均孔径が100nm〜500nmで、空隙率が0.5%〜5%である、ことを特徴とする請求項4に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項6】
前記多孔質コバルト酸化物は、反応釜に沈殿剤溶液を入れ、pHを6〜14に制御し、不活性ガス雰囲気で撹拌しながら、並流方法により、反応釜にコバルト塩溶液、錯化剤溶液及び沈殿剤溶液を同時に加えて反応させ、撹拌反応中は、pHを6〜14に、反応釜の温度を0℃〜85℃に制御し、全てのコバルト塩溶液を添加した後、熟成し、濾過して得られる濾塊を、乾燥して前駆体を得、前記前駆体を空気雰囲気炉で仮焼した後、取り出して篩にかける、ステップで調製される、ことを特徴とする請求項5に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項7】
前記コバルト塩溶液はCoCl・bHO、CoSO・bHO及びCo(NO・bHOから選択される少なくとも一種を水に溶解させた溶液で、0≦b≦6であり、前記コバルト塩溶液に、Co2+の濃度が70〜200g/Lとなるように制御し、前記錯化剤溶液として、アンモニア又はアミノカルボキ酸塩を用い、前記沈殿剤として炭酸塩溶液、シュウ酸又はシュウ酸塩溶液を用いる、ことを特徴とする請求項6に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項8】
熟成時間は4〜8時間で、300℃〜500℃で2〜5時間焼成した後、700℃〜800℃で2〜5時間焼成する、ことを特徴とする請求項6に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項9】
前記リチウム源は、炭酸リチウム、水酸化リチウム及び酸化リチウムから選択される少なくとも1種であり、コバルト酸リチウム正極材料を調製するための原料として、Mの酸化物、水酸化物、カルボキシオキサイド、炭酸塩及び塩基性炭酸塩から選択される少なくとも1種を含有する添加剤を混合する、ことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項10】
850℃〜1000℃で6〜20時間を焼成する、ことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コバルト酸リチウム正極材料及びその調製方法に関し、特にハイレート型リチウムイオン電池用のコバルト酸リチウム正極材料及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高出力密度、高エネルギー密度と長寿命などの利点を有するため、移動端末/ITデバイス及びエネルギー貯蔵分野に広く応用されている。リチウムイオン電池産業は急速に発展しており、電子製品の開発に伴い、特に薄型、高電流放電及び安全性能を考慮したリチウムイオン電池の要求も高まっている。
【0003】
電子タバコ、電子模型(例えば、車、船、飛行機などの模型)、おもちゃ、コードレス・パワーツール等の市場が広がっている。これに伴い、充電時間が短く、放電電流が高く、安全性も高いリチウムイオン電池が必要となり、多くの小型電気製品もハイレート放電を求めるようになってきた。そのため、ハイパワー電気機器に適用可能なハイレート型リチウムイオン電池の開発が非常に重要となっている。容量と圧縮密度が高く、サイクル性能にも優れ、特にハイレート放電時の放電容量でも、プラットフォームでも高いコバルト酸リチウム正極材料は、電子タバコ、電子模型、おもちゃ、コードレス・パワーツール、小型電気製品等の電源として広く使用される。
【0004】
リチウムイオン電池は、正極、負極、電解液及び正極と負極の間に設置され、短絡を防止するためのセパレーターから構成される。上記リチウムイオン電池では充放電中、Liが正極及び負極材料に脱挿入されることにより、エネルギー交換が実現される。コバルト酸リチウム正極材料においては、リチウムがバルク相に挿入され、Liが正極材料の表面から上記正極材料のバルク相を経て、内部に拡散する必要があるため、リチウムイオンの拡散ルートが長くなり、それにより内部抵抗の増加が引き起こされるため、放電容量が低い。
【0005】
また、電源型リチウムイオン電池では、電力密度に対する要求がさらに高まっている。放電レートは、以前の10Cの放電から、20〜30Cの持続放電まで高まり、50〜60Cの放電まで要求される特殊な用途もある。リチウムイオン電池の充放電レートは電池の正極及び負極材料、並びにそれらの製造技術に依存する。従来技術で調製したコバルト酸リチウム正極材料では、上記電池のレート特性やサイクル特性、特に50〜60C放電時のレート特性やサイクル特性に対する要求を満たすことは難しい。そのため、電池メーカーの要求を満足するために、ハイレート放電時、高い容量とプラットフォームを有するだけでなく、良好なサイクル特性を保持できるハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の開発が求められるようになった。
【発明の概要】
【0006】
本発明が解決しようとする技術課題は、上記背景技術に提示した課題を克服可能なハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の提供し、さらに、製品のレート特性を効果的に向上させることができる迅速でかつ容易なハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法を提供することである。
【0007】
上記技術課題を解決するために、本発明では、主にハイレート型コバルト酸リチウム正極材料を含む技術態様を開示する。上記コバルト酸リチウム正極材料は、高速イオン伝導体LiαM’γβで形成したマルチチャンネルメッシュ構造を含み、一次粒子の形態で、上記高速イオン伝導体LiαM’γβと溶合し、二次粒子を形成するコバルト酸リチウムは、上記高速イオン伝導体LiαM’γβによる上記マルチチャンネルメッシュ構造に埋設される。LiαM’γβ中の元素M’は、Ti、Zr、Y、V、Nb、Mo、Sn、In、La及びWから選択される少なくとも1種であり、1≦α≦4、1≦γ≦5、2≦β≦12である。
【0008】
上記コバルト酸リチウム正極材料中には元素Mが添加(ドープ)され、上記ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料は、Li1+yCo1−x・zLiαM’γβ(ただし、0≦x≦0.1、−0.01≦y≦0.01、0.005 ≦ z ≦ 0.01で、Mは、Mg、Al、Si、Sc、Ni、Mn、Ga、及びGeから選択される少なくとも一種である)の化学式で表されることが好ましい。
【0009】
本発明に係るハイレート型コバルト酸リチウム正極材料では、高速イオン伝導体LiαM’γβはマルチチャンネルメッシュ構造を形成して独立な相となり、且つコバルト酸リチウム相が埋め込まれて、表面と内部が貫通する多次元チャンネル二相構造を形成する。
【0010】
また、本発明は、上記ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法を提供する。上記調製方法は、M’の水酸化物を含浸したコバルト酸化物を、リチウム源、元素Mを含有する添加剤(選択可能)と均一に混合した後(Li1+yCo1−x・ zLiαM’γβの割合で乾式混合する)、高温の空気雰囲気炉にて、焼成するステップを含む。
【0011】
上記ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の好ましい調製方法では、M’の水酸化物を含浸させた上記コバルト酸化物が主に以下のステップで調製される。M’を含有する有機化合物を分離機で無水エタノールに溶解し分散させ、十分均一になるように(0.5〜1時間)撹拌した後、多孔質コバルト酸化物(通常のコバルト酸化物とは区別する必要がある)を添加し、0.5〜1.5時間撹拌する。その後、エタノール水溶液(エタノール:水=1:5〜20(体積比))を加え、2〜5時間撹拌を続けた後、吸引濾過する。濾過して得られたケーキをオーブン(好ましい温度:50〜70℃)で乾燥して、M’の水酸化物を含浸させたコバルト酸化物を得る。本発明の好ましい操作では、M’の水酸化物は、M’を含有する有機化合物を加水分解した後に形成され、上記加水分解により、M’の水酸化物が多孔質コバルト酸化物の中に埋め込まれる。この構成を、ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の基礎とすることができる。
【0012】
上記ハイレート型のコバルト酸リチウム正極材料の調製方法において、M’を含有する有機化合物は、M’のアルコキシド、M’のアルキル化合物、M’のカルボニル化合物及びM’のカルボキシル化合物から選択される少なくとも1種であり、上記多孔質コバルト酸化物は、CoCO.aHO又はCoC・aHOで、かつ0 ≦ a ≦ 9である前駆体を仮焼して得られることがさらに好ましい。上記多孔質コバルト酸化物は、平均孔径が100nm〜500nmで、空孔率が0.5%〜5%であることが好ましい。
【0013】
上記ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法では、上記多孔質コバルト酸化物は主に以下のステップで調製されることがさらに好ましい。すなわち、反応釜に少量の沈殿剤溶液を入れ、pHを6〜14に制御して、不活性ガス雰囲気で強力撹拌しながら、並流方法により、反応釜にコバルト塩、錯化剤溶液及び沈殿剤溶液を同時に加えて反応させる。撹拌反応中は、pHを6〜14に持続的に制御して、反応釜の温度を0℃〜85℃として、全てのコバルト塩溶液を添加した後、熟成してから、濾過してケーキを得る。さらに、オーブン(100℃以上)で(3〜5時間)乾燥して前駆体を得、上記前駆体を空気雰囲気炉で仮焼(予焼結)し、取り出して篩にかけて、多孔質コバルト酸化物を得る。
【0014】
上記コバルト塩溶液は、CoCl・bHO、CoSO・bHO、Co(NO・bHOの少なくとも1種を水に溶解させた溶液で、0≦b≦6であることが好ましい。上記コバルト塩溶液に、Co2+の濃度が70〜200g/Lになるように制御して、上記錯化剤溶液としアンモニア又はアミノカルボキ酸塩を、上記沈殿剤として炭酸塩溶液、シュウ酸又はシュウ酸塩溶液を加える。沈殿剤溶液として、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウム溶液から選択される少なくとも1種である炭酸塩溶液を採用する場合、合成する上記前駆体の化学式はCoCO・aHOであることがさらに好ましい。また、沈殿剤溶液として、シュウ酸溶液、シュウ酸ナトリウム溶液、シュウ酸カルシウム溶液及びシュウ酸アンモニウム溶液から選択される少なくとも1種であるシュウ酸塩溶液を採用する場合、合成する上記前駆体の化学式はCoC・aHOであることがさらに好ましい。
【0015】
上記熟成時間は、4〜8時間であり、300℃〜500℃で2〜5時間仮焼した後、700℃〜800℃で2〜5時間焼成することが好ましい。
【0016】
上記リチウム源は、炭酸リチウム(LiCO)、水酸化リチウム(LiOH)及び酸化リチウム(LiO)から選択される少なくとも1種で、上記元素Mを含有する添加剤はMの酸化物、水酸化物、カルボキシオキサイド、炭酸塩及び塩基性炭酸塩から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
本発明の上記技術態様は主に以下の原理を基礎としている。先ず、M’の水酸化物を含浸させたコバルト酸化物を原料として、ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料を合成する焼成工程において、M’イオンの半径がCo3+よりもはるかに大きいため、コバルト酸リチウム結晶構造の中に固溶しにくい。そのため、リチウムイオンと反応してマルチチャンネルメッシュ構造LiαM’γβを形成する。そして、コバルト酸リチウム一次粒子は高速イオン伝導体LiαM’γβによるマルチチャンネルメッシュ構造中に埋設される。高速イオン伝導体と溶合して二次粒子を形成する(図1参照)。上記マルチチャンネルメッシュ構造の高速イオン伝導体LiαM’γβは多次元のリチウムイオン伝送チャンネルを形成し、充電中、リチウムイオンはバルク相から、該伝送チャンネルを経て、粒子の表面まで拡散され、導電剤を介し、最終的に、電解液に入る。一方、放電中、リチウムイオンは電解液から二次粒子の表面まで拡散し、粒子の上記マルチチャンネルメッシュ構造の高速イオン伝送チャンネルを介して、上記一次粒子の表面に伝送し、最終的に、コバルト酸リチウムのバルク相に入る。このように、本発明では、選択される所定の原料の特性により、最終的に調製されるコバルト酸リチウム正極材料の特性が決定され、それに応じてハイレート特性も決定される。本発明では、多孔質コバルト酸化物とM’を含有する有機化合物により上記原料を調製する好ましい実施様態を開示する。M’を含有する有機化合物を無水エタノールに十分に溶解させ、エタノール水溶液を加えた後、金属有機化合物は水の促進作用で溶解して(加水分解して)M’の水酸化物を形成し、多孔質コバルト酸化物粒子の内部の隙間と細孔に十分、均一に充填し、含浸したコバルト酸化物粒子の表面に連続膜を形成する。
本発明ではさらに好ましい多孔質コバルト酸化物の調製方法を開示する。所定の条件により、荒く多孔質のコバルト酸化物材料を調製することにより、後続の加水分解、含浸及び連続成膜を容易に実現することができる。
【0018】
従来技術において、コバルト酸リチウムの合成ステップにおいて、M’を含有する添加剤を添加する方法は多く知られている。しかし、M’イオンの半径がCo3+よりもはるかに大きいため、コバルト酸リチウム結晶構造中に固溶しにくい。そのため、粒子の表面に凝集して高速イオン伝導体フィルムを形成する。従来技術と比べ、本発明では、多孔質コバルト酸化物の含浸法を適用することにより、多孔質コバルト酸化物をコバルト源としてコバルト酸リチウムを合成する。そして、リチウムイオン電池の充放電中、上記コバルト酸リチウム粒子に含まれるマルチチャンネルメッシュ構造のLiαM’γβ相は、リチウムイオンを伝送する高速チャンネルとして、コバルト酸リチウム正極材料のリチウムイオン伝導率を大幅に上昇させ、材料のレート特性を向上できるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下、本発明の実施形態や従来技術に関する技術態様を更に詳細に説明するために、必要な図面を参照して説明する。これらの図面は一例として本発明を説明するものであり、当業者が、これらの図面に基づいて、創造的工程を経ることなく、他の構成を創造できることは明らかである。
図1】は、本発明のコバルト酸リチウム正極材料における充電工程のリチウムイオンの伝送ルートを示す模式図である。放電工程は矢印が逆となる。
図2】は、本発明の実施例1の多孔質コバルト酸化物の含浸前の状態を示すSEM観察写真である。
図3】は、本発明の実施例1の多孔質コバルト酸化物の含浸後の状態を示すSEM観察写真である。
図4】は、本発明の実施例1のコバルト酸化物正極材料(LCO−1)のSEM観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の理解のために、図面と好ましい実施形態を参照しながら、本発明をより詳細に説明するが、本発明の保護範囲はこれらの具体的実施形態に限定されるものではない。
【0021】
特に定義しない限り、以下で用いる専門用語は全て、当業者に通常理解される意味と同義である。本明細書で用いる専門用語は、具体的な実施形態を説明することを目的とし、本発明の保護範囲の限定を意図しない。
特に説明しない限り、本発明で用いる各種原材料、試薬、機器、装置などは全て、市販されているか、従来方法で調製し得るものである。
実施例1
【0022】
主にコバルト酸リチウムからなるハイレート型コバルト酸リチウム正極材料であって、高速イオン伝導体LiTiOで形成されるマルチチャンネルメッシュ構造を含み、それに、一次粒子形態で、高速イオン伝導体LiTiOと一つに溶けられ、且つ二次粒子を形成する上記コバルト酸リチウムは、高速イオン伝導体LiTiOの上記マルチチャンネルメッシュ構造に埋設される。本実施例において、コバルト酸リチウム正極材料の化学式は、Li0.99CoO・0.005LiTiOと表記することもでき、層状構造を有する。
本実施例において、上記ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法は以下のステップを含む。
【0023】
(1)Co2+の濃度が110g/LとなるようにCoCl溶液を調製する。また、濃縮アンモニアと蒸留水を1:10の体積比で混合して錯化剤アンモニア溶液を調製し、1.2mol/Lの炭酸水素ナトリウム溶液を沈殿剤溶液とする。
【0024】
(2)25Lの反応釜に、容積の1/3の沈殿剤溶液を入れ、pHを6.0〜8.0の範囲であることを監視し、不活性ガス雰囲気で強力撹拌しながら、並流方法により反応釜に上記CoCl溶液、アンモニア溶液及び炭酸水素ナトリウム溶液を同時に加えて反応させる。撹拌反応中は、pHを6.0〜8.0に、反応釜の温度を70℃〜80℃に制御し、全てのCoCl溶液を添加した後、4〜8時間熟成してから、濾過して濾塊(ケーキ)を得る。
(3)上記ステップ(2)で得られた濾塊を120℃のオーブン中で3時間乾燥して、炭酸コバルト(粒度:5.5μm)を得る。
【0025】
(4)上記ステップ(3)で得られた炭酸コバルトを400℃で3時間仮焼し、その後、750℃で3時間焼成して、粒度が5.0μmで、平均孔径が100nmで、空隙率が0.5%である多孔質コバルト酸化物を得る(番号:PC−1、図2参照)。
【0026】
(5)42gのオルトチタン酸テトラブチル溶液を、500gの無水エタノールに溶解させ、0.5時間撹拌する。ミキサーを強力撹拌した状態でステップ(4)にて得られた多孔質コバルト酸化物(PC−1)を3000g加え、0.5時間撹拌する。更にエタノール水溶液(エタノール:水=1:6(体積比))を添加し、3時間撹拌を続けた後、吸引濾過する。濾過して得られたケーキをオーブンで乾燥した後、Ti(OH)を含浸させ、コバルト酸化物を得る(番号;PC−2、図3参照)。
(6)920gの炭酸リチウムと上記ステップ(5)で得られたコバルト酸化物(PC−2)2000gを乾式で均一に混合して、混合物を得る。
【0027】
(7)上記ステップ(6)で得られた混合物を空気雰囲気炉にて、950℃の温度で、10時間焼成し、冷却した後、ユニバーサル粉砕機で、20秒粉砕して、粒度を5.5〜6.0μmとして、ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料を得る(番号:LCO−1、図4参照)。
実施例2
【0028】
主にコバルト酸リチウムからなるハイレート型コバルト酸リチウム正極材料であって、高速イオン伝導体LiTiOで形成されるマルチチャンネルメッシュ構造を含み、且つ一次粒子形態で、高速イオン伝導体LiTiOと溶合し、二次粒子を形成する上記コバルト酸リチウムは、高速イオン伝導体LiTiOの上記マルチチャンネルメッシュ構造に埋設される。本実施例において、コバルト酸リチウム正極材料の化学式は、Li1.00Co0.99Mg0.005Al0.0050.005LiTiOと表記することもでき、層状構造を有する。
本実施例において、上記ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法は主に以下のステップを含む。
(1)−(5)本実施例のステップ
(1)−(5)は、実施例1と同様である。
【0029】
(6)936gの炭酸リチウム、上記実施例1で得られたコバルト酸化物(PC−2)2000g、5gの酸化マグネシウムと6.5gのアルミナを乾式で均一に混合して、混合物を得る。
【0030】
(7)上記ステップ(6)で得られた混合物を空気雰囲気炉にて、1000°Cの温度で、10時間焼成して、冷却した後、ユニバーサル粉砕機で、20秒粉砕して、粒度を5.5〜6.0μmとして、ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料を得る(番号:LCO-2)。
比較例1
【0031】
化学式はLi0.99CoO・0.005LiTiOで、層状構造を有するコバルト酸リチウム正極材料であり、LiTiOは粒子表面に凝集して存在する。本比較例のコバルト酸リチウム正極材料を製造する方法は、具体的には以下のステップを含む。
(1)920gの炭酸リチウム、2000gのPC−1(実施例1で合成)及び10gの二酸化チタンを乾式で均一に混合して、混合物を得る。
【0032】
(2)上記ステップ(1)で得られた混合物を空気雰囲気炉にて、950°Cの温度で、10時間焼成し、冷却した後、ユニバーサル粉砕機で、20秒粉砕して、粒度を5.5〜6.0μmとして、コバルト酸リチウム正極材料を得る(番号:LCO-0)。
実施例3
【0033】
主にコバルト酸リチウムからなるハイレート型コバルト酸リチウム正極材料であって、高速イオン伝導体LiNbOで形成されるマルチチャンネルメッシュ構造を含み、且つ一次粒子形態で、高速イオン伝導体LiNbOと溶合し、二次粒子を形成する上記コバルト酸リチウムは、高速イオン伝導体LiNbOの上記マルチチャンネルメッシュ構造に埋設される。本実施例において、コバルト酸リチウム正極材料の化学式は、Li1.01CoO・0.01LiNbOで表記することができ、層状構造を有する。本実施例では、上記ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法は主に、以下のステップを含む。
【0034】
(1)Co2+の濃度が150g/LとなるようにCoSO溶液を調製する。また、濃縮アンモニアと蒸留水を1:10の体積比で混合して錯化剤溶液を調製し、1.5mol/Lのシュウ酸アンモニウム溶液を沈殿剤溶液とする。
【0035】
(2)25Lの反応釜に、容積の1/3の沈殿剤溶液を入れ、不活性ガス雰囲気で強力撹拌しながら、並流方法により、反応釜に上記CoSO4溶液、アンモニア及びシュウ酸アンモニウム溶液を同時に加えて反応させる。撹拌反応中は、pHを6.0〜7.0に、反応釜の温度を25℃に制御し、全てのCoSO4溶液を添加した後、4〜8時間熟成してから、濾過して濾塊(ケーキ)を得る。
(3)上記ステップ(2)で得られた濾塊を120℃のオーブン中で3時間乾燥して、シュウ酸コバルト(粒度:7.5μm)を得る。
【0036】
(4)上記ステップ(3)で得られたシュウ酸コバルトを300°Cで2時間焼成し、その後、700°Cで5時間焼成して、粒度が6.5μmで、平均孔径が500nmで、空隙率が5%である多孔質コバルト酸化物を得る(番号:PC−3)。
(5)120gのニオブ(V)ペンタエトキシドを、2000gの無水エタノールに溶解させ、0.5時間撹拌する。ミキサーを強力撹拌した状態でステップ(4)にて得られた多孔質コバルト酸化物(PC−3)を3000g加え、1.0時間撹拌する。更にエタノール水溶液(エタノール:水=1:20(体積比))を添加する。5時間撹拌を続けた後、吸引濾過する。濾過して得られたケーキをオーブンで乾燥した後、Nb(OH)5を含浸させ、コバルト酸化物を得る(番号:PC−4)。
(6)938gの炭酸リチウムと上記ステップ(5)で得られたコバルト酸化物(PC−4)2000gを乾式で均一に混合して、混合物を得る。
【0037】
(7)上記ステップ(6)で得られた混合物を空気雰囲気炉にて、900°Cの温度で、10時間焼成し、冷却した後、ユニバーサル粉砕機で、20秒粉砕して、粒度を6.5〜7.0μmとして、ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料を得る(番号:LCO−3)。
実施例4
【0038】
主にコバルト酸リチウムからなるハイレート型コバルト酸リチウム正極材料であって、高速イオン伝導体LiWO4で形成されるマルチチャンネルメッシュ構造を含み、且つ一次粒子形態で、高速イオン伝導体LiWO4と溶合し、二次粒子を形成する上記コバルト酸リチウムは、高速イオン伝導体LiWO4の上記マルチチャンネルメッシュ構造に埋設される。本実施例において、コバルト酸リチウム正極材料の化学式は、Li1.00CoO・0.008LiWO4と表記することもでき、層状構造を有する。
本実施例において、上記ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法は主に、以下のステップを含む。
【0039】
(1)Co2+の濃度が100g/LとなるようにCo(NO溶液を調製する。また、濃縮アンモニアと蒸留水を1:10の体積比で混合して錯化剤溶液を調製し、1.5mol/Lのシュウ酸アンモニウム溶液を沈殿剤溶液とする。
【0040】
(2)25Lの反応釜に、容積の1/3の沈殿剤溶液を入れ、不活性ガス雰囲気で強力撹拌しながら、並流方法により、反応釜に上記Co(NO溶液、アンモニア溶液及びシュウ酸アンモニウム溶液を同時に加えて反応させる。撹拌反応中は、pHを6.0〜7.0に、反応釜の温度を25℃に制御し、全てのCo(NO溶液を添加した後、4〜8時間熟成してから、濾過して濾塊(ケーキ)を得る。
(3)上記ステップ(2)で得られた濾塊を120℃のオーブン中で3時間乾燥して、シュウ酸コバルト(粒度:7.0μm)を得る。
【0041】
(4)上記ステップ(3)で得られたシュウ酸コバルトを500°Cで3時間焼成し、その後、800°Cで5時間焼成して、粒度が6.5μmで、平均孔径が200nmで、空隙率が1%である多孔質コバルト酸化物を得る(番号:PC−5)。
【0042】
(5)135gのタングステン(V)エトキシドを2500gの無水エタノールに溶解させ、0.5時間撹拌する。ミキサーを強力撹拌した状態で、ステップ(4)にて得られた多孔質コバルト酸化物(PC−5)を3000g加え、1.5時間撹拌する。更にエタノール水溶液(エタノール:水=1:15(体積比))を添加し、4時間撹拌を続けた後、吸引濾過する。濾過して得られたケーキをオーブンで乾燥した後、W(OH)を含浸させ、酸化物を得る(番号がPC−6)。
(6)928gの炭酸リチウムと上記ステップ(5)で得られたコバルト酸化物(PC−6)2000gを乾式で均一に混合して、混合物を得る。
【0043】
(7)上記ステップ(6)で得られた混合物を空気雰囲気炉にて、1000°Cの温度で、10時間焼成し、冷却した後、ユニバーサル粉砕機で20秒粉砕して、粒度を6.5〜7.0μmとして、ハイレート型コバルト酸リチウム正極材料を得る(番号:LCO−4)。
上記実施例1、2、3、4及び比較例1で得られた5種の試料の電気化学特性を評価した。評価方法は以下に示す。
【0044】
063048型角型電池の組み立て
活性材料、PVDFと導電性カーボンブラックを、95.4:2.5:2.1の質量比で混合し、NMPを加え、撹拌してスラリーを得た。上記スラリーをアルミホイルに塗布し、120℃で乾燥して正極板を作製した。負極板、セパレーター及び電解液を用いて、063048型の電池を組み立てた。室温で電池の充放電性能を評価した。定電流の後に定電圧で充電する場合、充電カットオフ電圧は4.2V及び4.35Vに設定した。定電流放電を採用する場合、カットオフ電圧は3.0Vに設定し、充電電流密度は0.5Cで、放電電流密度は0.2C/1C/10C/20C/50Cとした。
表1に、LCO−0、1、2、3及び4のレート特性を異なる電圧で評価した結果を示す。
*****
【0045】
本発明のコバルト酸リチウム正極材料における充電工程のリチウムイオンの伝送ルートを示す模式図である
図1は、本発明のコバルト酸リチウム正極材料における充電工程のリチウムイオンの伝送ルートを示す模式図である。実線は、本発明の実施例で調製される正極材料の粒子におけるリチウムイオンの伝送ルートを表し、点線は、比較例で調製される正極材料の粒子におけるリチウムイオンの伝送ルートを表す。オルトチタン酸テトラブチルを多孔質コバルト酸化物に含浸させる工程において、上記オルトチタン酸テトラブチルは、加水分解してTi(OH)になり、多孔質コバルト酸化物粒子内部の隙間と細孔に充填され、且つ含浸された粒子の表面に連続膜を形成する。コバルト酸リチウムを合成するための焼成工程において、Ti4+イオンの半径は、Co3+よりはるかに大きいため、コバルト酸リチウム結晶構造に固溶しにい。そのため、リチウムイオンと反応して、マルチチャンネルメッシュ構造であるLiTiO相を形成する。コバルト酸リチウムの一次粒子は、高速イオン伝導体マルチチャンネルメッシュ構造中に埋設され、且つそれとひとつに溶解されて二次粒子を形成する。
【0046】
上記表1に示すように、オルトチタン酸テトラブチルを含浸したコバルト酸化物で調製したLCO−1、2、3及び4を4.2Vで評価すると、50C倍率での容量保持率とプラットフォームは比較例のLCO−0より著しく高いことがわかる。このことから、上記LCO−1、2、3及び4のマルチチャンネルメッシュ構造の高速イオン伝導体がリチウムイオンの伝送速度を大幅に高め、材料の放電容量とプラットフォームを効果的に向上させることが確認された。LCO−2では、4.35Vでの検出時、50C倍率での容量保持率とプラットフォームが、実施例のLCO−1、LCO−3及びLCO−4より著しく高い。このことから、Mg及びAlのドーピングにより、材料の構造安定性が効果的に改善され、4.35Vの高電圧においても優れたレート特性が発揮されることがわかった。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2019年5月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト酸リチウム及び高速イオン伝導体を含むハイレート型コバルト酸リチウム正極材料であって、前記高速イオン伝導体により形成されるマルチチャンネルメッシュ構造を含み、且つ一次粒子形態で、高速イオン伝導体と溶合し、二次粒子を形成する前記コバルト酸リチウムは、高速イオン伝導体の前記マルチチャンネルメッシュ構造に埋設され、前記高速イオン伝導体は、LiαM’γβ(M’はTi、Zr、Y、V、Nb、Mo、Sn、In、La及びWから選ばれる少なくとも1種で、1≦α≦4、1≦γ≦5、及び2≦β≦12である)の化学式で表される、ことを特徴とするハイレート型コバルト酸リチウム正極材料。
【請求項2】
元素Mがドープされ、Li1+yCo1−x・ zLiαM’γβ(ただし、0≦x≦0.1、−0.01≦y≦0.01、0.005≦z≦0.01であり、MはMg、Al、Si、Sc、Ni、Mn、Ga及びGeから選ばれる少なくとも1種である)の化学式で表される、ことを特徴とする請求項1に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料。
【請求項3】
M’の水酸化物を含浸したコバルト酸化物をリチウム源と均一に混合した後、高温の空気雰囲気炉にて、焼成するステップを含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項4】
前記M’の水酸化物を含浸したコバルト酸化物は、M’を含有する有機化合物を分離機で無水エタノールに溶解して分散し、均一に撹拌した後、多孔質コバルト酸化物に添加し、0.5〜1.5時間撹拌した後、エタノールに対して体積比5〜20の水を含有するエタノール水溶液を加え、2〜5時間撹拌を続け、吸引濾過して、乾燥するステップにより調製する、ことを特徴とする請求項3に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項5】
前記M’を含有する有機化合物は、M’のアルコキシド、M’のアルキル化合物、M’のカルボニル化合物及びM’のカルボキシル化合物から選択される少なくとも1種であり、前記多孔質コバルト酸化物は、CoCO・aHO又はCoC・aHOで、0≦a≦9である前駆体を仮焼して得られ、平均孔径は100nm〜500nmで、空隙率は0.5%〜5%である、ことを特徴とする請求項4に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項6】
前記多孔質のコバルト酸化物は、反応釜に沈殿剤溶液を入れ、pHを6〜14に制御し、不活性ガス雰囲気で撹拌しながら、並流方法により、反応釜にコバルト塩溶液、錯化剤溶液及び沈殿剤溶液を同時に加えて反応させ、撹拌反応中は、pHを6〜14に、反応釜の温度を0℃〜85℃に制御し、全てのコバルト塩溶液を添加した後、熟成し、濾過して得られる濾塊を、乾燥して前駆体を得、前記前駆体を空気雰囲気炉で仮焼した後、取り出して篩にかける、ステップで調製される、ことを特徴とする請求項5に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項7】
前記コバルト塩溶液はCoCl・bHO、CoSO・bHO及びCo(NO・bHOから選択される少なくとも一種を水に溶解させた溶液で、0≦b≦6であり、前記コバルト塩溶液に、Co2+の濃度が70〜200g/Lとなるように制御し、前記錯化剤溶液として、アンモニア又はアミノカルボキ酸塩を用い、前記沈殿剤として炭酸塩溶液、シュウ酸又はシュウ酸塩溶液を用いる、ことを特徴とする請求項6に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項8】
熟成時間は4〜8時間で、300℃〜500℃で2〜5時間焼成した後、700℃〜800℃で2〜5時間焼成する、ことを特徴とする請求項6に記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項9】
前記リチウム源は、炭酸リチウム、水酸化リチウム及び酸化リチウムから選択される少なくとも1種であり、コバルト酸リチウム正極材料を調製するための原料として、Mの酸化物、水酸化物、カルボキシオキサイド、炭酸塩及び塩基性炭酸塩から選択される少なくとも1種を含有する添加剤を混合する、ことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【請求項10】
850℃〜1000℃で6〜20時間を焼成する、ことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のハイレート型コバルト酸リチウム正極材料の調製方法。
【国際調査報告】