(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-520903(P2019-520903A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(54)【発明の名称】経心尖除去装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20190704BHJP
A61B 18/24 20060101ALI20190704BHJP
A61B 18/02 20060101ALI20190704BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B18/24
A61B18/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-567159(P2018-567159)
(86)(22)【出願日】2017年6月20日
(85)【翻訳文提出日】2019年2月15日
(86)【国際出願番号】US2017038309
(87)【国際公開番号】WO2017223073
(87)【国際公開日】20171228
(31)【優先権主張番号】62/352,235
(32)【優先日】2016年6月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】510250892
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ マイアミ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MIAMI
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルド エム.ディー.デ マーチェナ
【テーマコード(参考)】
4C026
4C160
【Fターム(参考)】
4C026AA02
4C026FF17
4C160JJ01
4C160KK03
4C160KK16
4C160KK37
4C160MM33
(57)【要約】
除去又は改変のために僧帽弁クリップ又は僧帽弁の前尖などの心臓組織を捕捉するためにカテーテル処置において展開できる経心尖除去装置及びその使用方法を開示する。除去装置は、ガイドカテーテルを使用して僧帽弁付近で展開されるように構成された送達カテーテルを含む。送達カテーテルは、遠位端にスネアヘッドを有し、スネアヘッドは、送達カテーテルがガイドカテーテルを通過して移動するとき折畳み状態となり、僧帽弁クリップ又は前尖を捕捉するために展開状態となる。スネアヘッドは、事前配置された僧帽弁クリップを取り囲む組織又は前尖を切除するように構成された1つ又は複数の切除用送達カテーテルを有する。本開示の範囲内にあるいくつかの実施形態において、除去装置は、僧帽弁の中へ新しい経カテーテル弁を留置するための留置機構を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドカテーテルを使用して僧帽弁付近で展開されるように構成された送達カテーテルと、
前記送達カテーテルの遠位端のスネアヘッドであって、前記スネアヘッドが、(i)前記ガイドカテーテルを通過して前記送達カテーテルを移動するための折畳み状態と(ii)前記僧帽弁の少なくとも一部分を束縛するために前記僧帽弁に事前配置された僧帽弁クリップを捕捉するため又は前記僧帽弁の前尖の改変又は除去のために捕捉するための展開状態とを有する、スネアヘッドと、
前記送達カテーテルの近位端に接続されかつ前記折畳み状態と前記展開状態との間の前記スネアヘッドの移行を制御するように構成されたスネアヘッドコントローラと、
を備え、
前記スネアヘッドが、少なくとも部分的に前記事前配置された僧帽弁クリップ又は前記前尖を取り囲むためのスネアバスケットを有し、かつ前記事前配置された僧帽弁クリップを取り囲む組織又は前記前尖を切除するように構成された1つ又は複数の切除用送達カテーテルを有し、
前記スネアヘッドコントローラが、前記展開状態において前記スネアバスケットの位置及び/又はサイズを制御するように構成され、前記スネアヘッドコントローラが、前記展開状態において前記組織への切除源送達を制御するように構成される、
経心尖除去装置。
【請求項2】
更に、前記送達カテーテルを展開するために使用される前記ガイドカテーテルを備える、請求項1に記載の経心尖除去装置。
【請求項3】
前記1つまたは複数の切除用送達カテーテルの各々の近位端が、前記僧帽弁クリップの除去又は前記前尖の除去又は改変を可能にするために、前記僧帽弁クリップに隣接する組織又は前尖を切除するための高周波エネルギーを供給するための電極を備える、請求項1又は2に記載の経心尖除去装置。
【請求項4】
更に、
電極と電気的に連絡する電源と、
スイッチであって、前記スイッチが、前記電源から前記電極への電流の流れを交互に許容し停止する、スイッチと、
を備える、請求項1〜3のいずれかに記載の経心尖除去装置。
【請求項5】
前記1つ又は複数の切除用送達カテーテルの各々の近位端が、前記僧帽弁クリップの除去又は前記前尖の除去又は改変を可能にするために、前記僧帽弁クリップに隣接する組織又は前尖を切除するためのレーザー切除信号を送るために配置された光ファイバを備える、請求項1〜4のいずれかに記載の経心尖除去装置。
【請求項6】
更に、切除源を備え、前記切除源が高周波源、レーザー源及び寒剤熱源の1つである、請求項1〜5のいずれかに記載の経心尖除去装置。
【請求項7】
更に、除去された僧帽弁クリップを置換するために経カテーテル弁を前記僧帽弁の中へ留置するための留置機構を備える、請求項1〜6のいずれかに記載の経心尖僧帽弁クリップ除去装置。
【請求項8】
前記切除源が250〜500kHzの範囲の高周波信号である、請求項6に記載の経心尖除去装置。
【請求項9】
前記スイッチが遠隔的に制御される、請求項4〜8のいずれかに記載の経心尖除去装置。
【請求項10】
前記電源がバッテリである、請求項4〜9のいずれかに記載の経心尖除去装置。
【請求項11】
前記留置機構が前記送達カテーテルを備え、前記送達カテーテルが、前記経カテーテル弁を収容しかつ弁置換モードにおいて前記除去された僧帽弁クリップを置換するために前記僧帽弁の中へ前記経カテーテル弁を送達するように構成される、請求項7〜10のいずれかに記載の経心尖除去装置。
【請求項12】
前記スネアバスケットが、医療用プラスチック及び医療用金属の少なくとも1つを含む、請求項1〜11のいずれかに記載の経心尖除去装置。
【請求項13】
前記スネアヘッドが形状記憶材料を含む、請求項1〜12のいずれか記載の経心尖除去装置。
【請求項14】
前記形状記憶材料がニチノールである、請求項13に記載の経心尖除去装置。
【請求項15】
更に、前記スネアヘッドを前記展開状態から前記折畳み状態へ強制的に戻すように構成された前記送達カテーテルの近位端の引込み漏斗を備える、請求項1〜14のいずれかに記載の経心尖除去装置。
【請求項16】
前記スネアヘッドが、前記スネアヘッドが前記折畳み状態のとき圧縮されかつ前記スネアヘッドが前記展開状態のとき静止するバネを備え、前記バネが、前記スネアバスケットが前記展開状態ではない限り前記スネアバスケット内で圧縮されるように構成される、請求項1〜15のいずれかに記載の経心尖除去装置。
【請求項17】
前記スネアバスケットが、第1バスケット側と第2バスケット側とを備える、請求項1〜16のいずれかに記載の経心尖除去装置。
【請求項18】
前記僧帽弁クリップ又は前記前尖の周りでの前記スネアバスケットの閉鎖を容易にするために前記スネアバスケットに磁石が設置される、請求項1〜17のいずれかに記載の経心尖除去装置。
【請求項19】
前記スネアバスケットが、前記僧帽弁クリップ又は前記前尖の周りで前記スネアバスケットを縛るためのコードを備える、請求項1〜17のいずれかに記載の経心尖除去装置。
【請求項20】
前記スネアヘッドが、閉鎖状態と開放状態との間で移動可能でありかつ前記スネアヘッドコントローラによって制御される把握ツールを備える、請求項1〜19のいずれかに記載の経心尖除去装置。
【請求項21】
前記把握ツールが、チューブ内部の位置と前記チューブ外部の位置との間で前記スネアヘッドコントローラによって制御可能に移動できる、請求項20に記載の経心尖除去装置。
【請求項22】
僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法であって、
左心室の中へその後左心房の中へ挿入するためのガイドカテーテルを提供することと、
前記左心室の中へ挿入するための送達カテーテルを提供することと、
(i)前記ガイドカテーテルを通過して前記送達カテーテルを移動するための折畳み状態と、(ii)前記僧帽弁の少なくとも一部分を束縛するために前記僧帽弁に事前配置された僧帽弁クリップ又は前記僧帽弁の前尖を捕捉するための展開状態と、を有するスネアヘッドを提供することと、
前記折畳み状態と前記展開状態との間の前記スネアヘッドの移行を制御するためにスネアヘッドコントローラを提供することと、
前記事前配置された僧帽弁クリップを少なくとも部分的に取り囲むために前記スネアヘッドにスネアバスケットを設置することと、
前記事前配置された僧帽弁クリップを取り囲む組織又は前記前尖を切除するように構成された1つ又は複数の切除用送達カテーテルを前記スネアヘッドに設置することと、
前記展開状態において前記スネアバスケットの位置及び/又はサイズを制御しかつ前記展開状態において前記組織への切除源送達を制御するように前記スネアヘッドコントローラを構成することと、
を含む、僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項23】
除去された僧帽弁クリップを置換するために前記僧帽弁の中へ経カテーテル弁を留置するための留置機構を提供する、請求項22に記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項24】
前記僧帽弁クリップの除去を可能にするために前記僧帽弁クリップに隣接する組織又は前記前尖を切除するための高周波エネルギーを供給するために前記1つ又は複数の切除用送達カテーテルの各々の近位端に電極を設置する、請求項22又は23に記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項25】
前記電極と電気的に連絡する電源を提供する、請求項24に記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項26】
スイッチを提供することであって、前記スイッチが、前記電源から前記電極への電流の流れを交互に許容し停止する、請求項25に記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項27】
前記1つ又は複数の切除用送達カテーテルの各々の近位端に、前記僧帽弁クリップの除去又は前記前尖の除去又は改変を可能にするために前記僧帽弁クリップに隣接する組織又は前記前尖を切除するためのレーザー切除信号を送るために配置された光ファイバを設置する、請求項22〜26のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項28】
切除源を提供することであって、前記切除源が、高周波源、レーザー源及び寒剤熱源の1つである、請求項22〜27のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項29】
前記切除源として250〜500kHzの範囲の高周波信号を与える、請求項28に記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項30】
前記スイッチの遠隔制御を提供する、請求項26〜29のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項31】
電源としてバッテリを提供する、請求項25〜30のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項32】
前記留置機構として前記送達カテーテルを提供する、請求項23〜31のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項33】
前記スネアバスケットにおいて医療用プラスチック及び医療用金属の少なくとも1つを提供する、請求項22〜32のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項34】
前記スネアヘッドにおいて形状記憶材料を提供する、請求項22〜33のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項35】
前記形状記憶材料としてニチノールを提供する、請求項34に記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項36】
前記スネアヘッドを前記展開状態から前記折畳み状態へ強制的に戻すように構成された前記送達カテーテルの近位端の引込み漏斗を提供する、請求項22〜35のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項37】
前記スネアヘッドが前記折畳み状態のとき圧縮されかつ前記スネアヘッドが前記展開状態のとき静止するバネを提供することであって、前記バネが、前記スネアバスケットが前記展開状態ではない限り前記スネアバスケット内で圧縮されるように構成される、請求項22〜36のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項38】
前記左心房から肺静脈の中へ挿入するためにガイドカテーテルを提供する、請求項22〜37のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項39】
前記スネアバスケットの第1バスケット側及び第2バスケット側を提供する、請求項22〜38のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項40】
前記僧帽弁クリップ又は前記前尖の周りでの前記スネアヘッドの閉鎖を容易にするために前記スネアバスケットに磁石を設置する、請求項22〜39のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項41】
前記僧帽弁クリップ又は前記前尖の周りで前記スネアバスケットを縛るために前記スネアバスケット用のコードを提供する、請求項22〜39のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項42】
前記スネアヘッドに閉鎖状態と開放状態との間で移動可能な把握ツールを設置する、請求項22〜41のいずれかに記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【請求項43】
その中へ前記把握ツールを移動できるチューブを提供する、請求項42に記載の僧帽弁クリップを除去する又は前記僧帽弁の前尖を除去又は改変する経心尖方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2016年6月20日に提出された「経心尖除去装置」(Transapical Removal Device)と題する米国仮特許出願第62/352235号の優先的利益が主張され、その内容全体が、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、概略的に経心尖除去装置、特に僧帽弁クリップ又は僧帽弁の前尖を除去するための経心尖除去装置に関する。
【背景技術】
【0003】
僧帽弁逆流は、心臓の僧帽弁がしっかりと閉鎖しないときに、一部の血液が大動脈弁を通過して流れずに僧帽弁を通過して心房へ逆流して漏れるときに生じる。僧帽弁逆流は、成人人口の約1.7%に存在し、その発生率は、年齢の上昇に伴って上昇して、75歳以上の成人の9%超が軽症又は重症の僧帽弁逆流を患っている。血液は、僧帽弁逆流を患う人においては、血液は効率良く心臓を流れない又はその他の部分へ流れないので、症状には、息切れ及び疲労並びに心雑音、動悸及び脚及び足首のむくみがある。重症の僧帽弁逆流は、心不全、心房細動及び肺高血圧症を引き起こす可能性がある。治療しないまま放置した場合、僧帽弁逆流の1年死亡率は57%である。
【0004】
僧帽弁逆流を治療するために、投薬、開胸手術及びカテーテル処置を含めた多様な治療の選択肢が開発されてきた。1つのカテーテル処置は、僧帽弁の機能を改良するために僧帽弁の弁尖を一緒にクリップ留めすることを含む。アレルギー反応、クリップの移動又は感染症など特定の状況において、僧帽弁クリップの除去が必要である。残念ながら、僧帽弁クリップ留置後、僧帽弁クリップは、外科的にしか除去できず、将来の経皮的僧帽弁置換の可能性がなくなって、将来の罹患率及び死亡率を高める。僧帽弁クリップは、開胸手術を必要としないカテーテル処置によって除去できると好ましい。更に、僧帽弁逆流を患う患者の一部は、経カテーテル僧帽弁置換手術を受け、その後、左心室流出路(LVOT)閉塞を生じる。僧帽弁前尖は、多くの患者のLVOT閉塞の病因において大きな役割を果たすものとして特定されている。僧帽弁クリップを除去するためのカテーテル処置は、LVOT閉塞などの将来の合併症を防止するために経カテーテル僧帽弁置換への第1段階として僧帽弁前尖を切除、除去又は修復できることが好ましい。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、除去又は改変のために僧帽弁クリップ又は僧帽弁の前尖などの心臓組織を捕捉するためにカテーテル処置において展開できる経心尖除去装置並びに前記経心尖除去装置の使用方法の複数の実施形態に関する。除去装置は、ガイドカテーテルを使用して僧帽弁付近に展開されるように構成された送達カテーテルを含む。いくつかの実施形態において、ガイドカテーテルは、送達カテーテルを展開するために使用できる。
【0006】
送達カテーテルは、遠位端にスネアヘッドを有する。スネアヘッドは、送達カテーテルがガイドカテーテルに沿って移動するとき折畳み状態となり、僧帽弁クリップ又は前尖を捕捉するために展開状態となる。スネアヘッドコントローラは、折畳み状態と展開状態との間のスネアヘッドの移行を制御する。スネアヘッドは、事前配置された僧帽弁クリップ又は前尖を少なくとも部分的に取り囲むためのスネアバスケットを有する。スネアバスケットは、例えば、医療用プラスチック、医療用金属又はその両方で作ることができる。スネアバスケットは、折畳み状態から展開状態への移行を助けるニチノールなどの形状記憶材料で作ることができる。いくつかの実施形態において、スネアヘッドは、スネアヘッドが折畳み状態のとき圧縮されかつスネアヘッドが展開状態のとき静止するバネを備えることができ、バネは、スネアバスケットが展開状態でない限りスネアバスケット内で圧縮されるように構成される。スネアヘッドを展開状態から折畳み状態へ強制的に戻すために、送達カテーテルの近位端に引込み漏斗を設置できる。いくつかの実施形態において、事前配置された僧帽弁クリップ又は前尖の周りでスネアバスケットを閉鎖し易くするために、スネアバスケットに磁石を設置できる。別の実施形態において、スネアバスケットは、事前配置された僧帽弁クリップ又は前尖の周りでスネアバスケットを縛るためのコードを備えることができる。
【0007】
いくつかの実施形態において、スネアバスケットは、楕円形を有する1部式バスケットとすることができる。別の実施形態において、スネアバスケットは、第1バスケット側と第2バスケット側を有する2部式バスケットとすることができる。2部式バスケットは、第1バスケット側と第2バスケット側がその間に在る僧帽弁クリップ、組織又はその他の要素を固定するように配列される閉鎖状態と、第1バスケット側と第2バスケット側が相互に分離される開放状態とを持つことができる。
【0008】
スネアヘッドは、事前配置された僧帽弁クリップを取り囲む組織又は前尖を切除するように構成された1つ又は複数の切除用送達カテーテルを有する。本開示の範囲内にあるいくつかの実施形態において、各切除用送達カテーテルは、僧帽弁クリップに隣接する組織又は前尖を切除して僧帽弁クリップの除去又は前尖の除去又は改変を可能にするために、高周波エネルギーを供給するための電極を備える。電極と連絡するバッテリなどの電源を設置でき、スイッチが、電源から電極への電流の流れを交互に許容し停止できる。スイッチは、遠隔的に制御できる。本開示の範囲内にある別の実施形態において、各切除用送達カテーテルは、僧帽弁クリップに隣接する組織又は前尖を切除して僧帽弁クリップの除去又は前尖の除去又は改変を可能にするために、レーザー切除信号を送達するように配置された光ファイバを含む。経心尖除去装置は、高周波源、レーザー源又は寒剤熱源(cryo-thermal source)などの切除源を含むことができる。切除源が高周波源である場合、高周波信号は、250〜500kHzの範囲とすることができる。スネアヘッドは、送達カテーテルの近位端に接続されたスネアヘッドコントローラによって制御される。スネアヘッドコントローラは、展開状態中のスネアバスケットの位置及び/又はサイズを制御するように及び展開状態中の組織への切除源送達を制御するように構成される。
【0009】
本開示の範囲内にあるいくつかの実施形態において、経心尖除去装置は、閉鎖状態と開放状態との間で移動可能でありかつスネアヘッドコントローラによって制御される把握ツールを備える。把握ツールは、必要に応じて組織又は僧帽弁クリップを操作できるように構成される。把握ツールは、チューブ内部の位置とチューブ外部の位置との間でスネアヘッドコントローラによって制御可能に移動でき、スネアヘッドコントローラは、これらの位置の間で把握ツールの移動を制御できる。チューブは、スネアヘッドに接続されるか又はこれと一体とすることができる。
【0010】
本開示の範囲内にあるいくつかの実施形態において、除去装置は、除去された僧帽弁クリップを置換するために経カテーテル弁を僧帽弁の中へ留置するための留置機構を含む。留置機構は、経カテーテルを収容して、除去された僧帽弁を置換するために弁置換モードにおいて経カテーテル弁を僧帽弁の中へ送達するように構成される、送達カテーテルを備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】スネアヘッドが展開状態のときの、本開示の経心尖除去装置の第1実施形態の上面図である。
【
図1B】スネアヘッドが折畳み状態のときの、
図1Aの経心尖除去装置の第1実施形態の上面図である。
【
図2A】スネアヘッドが折畳み状態でありかつスネアヘッドの把握ツールが閉鎖状態のときの、本開示の経心尖除去装置の第2実施形態の側面斜視図である。
【
図2B】スネアヘッドが展開状態でありかつスネアヘッドの把握ツールが閉鎖状態のときの、
図2Aの経心尖除去装置の第2実施形態の側面斜視図である。
【
図2C】スネアヘッドが展開状態でありかつスネアヘッドの把握ツールが開放状態のときの、
図2A及び2Bの経心尖除去装置の第2実施形態の側面斜視図である。
【
図3A】スネアヘッドが折畳み状態のときの本開示の経心尖除去装置の第3実施形態の側面斜視図である。
【
図3B】スネアヘッドが展開状態でありかつスネアヘッドのスネアバスケットが閉鎖状態のときの、
図3Aの経心尖除去装置の第3実施形態の側面斜視図である。
【
図3C】スネアヘッドが展開状態であり、スネアヘッドのスネアバスケットが開放状態であり、かつスネアヘッドの引込み可能把握ツールが閉鎖状態のときの、
図3A及び3Bの経心尖除去装置の第3実施形態の側面斜視図である。
【
図4】僧帽弁に僧帽弁クリップを持つ患者の心臓を示し、本開示の経心尖除去装置は左心室を穿刺するために使用されている。
【
図5】
図4の患者の心臓を示しており、本開示の経心尖除去装置のガイドワイヤは、左心室の穿刺部を通過して左心室へ、更に上へ向かって左心房の中へ挿入されている。
【
図6】
図4及び5の患者の心臓を示しており、本開示の経心尖除去装置のガイドワイヤは肺静脈の中へ挿入されている。
【
図7】
図4〜6の患者の心臓を示しており、本開示の経心尖除去装置の送達カテーテルは、ガイドワイヤに被せて左心室の中へ挿入される。
【
図8】
図4〜7の患者の心臓を示しており、スネアヘッドは送達カテーテルから展開される。
【
図9】
図4〜8の患者の心臓を示しており、スネアヘッドは、僧帽弁クリップを取り囲めるように開放される。
【
図10】
図4〜9の患者の心臓を示しており、スネアヘッドは僧帽弁クリップの周りで閉鎖され、僧帽弁クリップを取り囲む組織は切除され、僧帽弁クリップはスネアヘッドの中に捕捉される。
【
図11】
図4〜11の患者の心臓を示しており、僧帽弁クリップを捕捉した後にスネアヘッドは折畳み状態にある。
【
図12】
図4〜11の患者の心臓を示しており、新しい経カテーテル弁は送達カテーテルを介して僧帽弁の中へ留置される。
【
図13】経心尖除去装置102を使用する方法の実施形態例を実現する際に使用される様々な構成要素を示すブロック
図100の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1A及び1Bは、本開示の経心尖除去装置2の第1実施形態を示す。経心尖除去装置2は、送達カテーテル4と、スネアヘッド6と、スネアバスケット8と、バネ52と、電極12を持つ切除用送達カテーテル10と、を含む。電源42及び切除源48は、電極12と連絡し、スイッチ44は、電源42から電極12への電流の流れを交互に許容し停止する。
図1Aにおいて、スネアヘッド6及びスネアバスケット8は、送達カテーテル4の外部において展開状態であり、僧帽弁クリップ14は、スネアバスケット8の側面によって取り囲まれる。切除用送達カテーテル10の電極12は、僧帽弁クリップ14を捕捉するために、切除対象の心臓の組織と整列される。例えば、組織は、僧帽弁の組織を切除するためにカテーテル10を介して高周波信号などの切除信号を与えるために切除源48を起動するための制御信号が与えられたとき、切除できる。
図1Bは、切除が行われ、僧帽弁クリップ14がスネアバスケット8によって捕捉された後の経心尖除去装置を示す。スネアヘッド6は、このとき折畳み状態にあり、例えば送達カテーテル4を介して引き込めることによって、心臓から除去できる。折畳み状態と展開状態との間のスネアヘッド6の移行は、送達カテーテル4の近位端に接続されたスネアヘッドコントローラ40によって制御される。引込み漏斗40が、スネアヘッドを折畳み状態へ強制的に戻すために設置される。バネ52は、スネアヘッド6が折畳み状態のとき圧縮され、スネアヘッド6が展開状態のとき静止する。このようなカテーテル式除去法のために、スネアヘッド6は、クリップをスネアヘッドの展開前の初期サイズのサイズまで又はこれに近いサイズまでクリップを潰すために捕捉された僧帽弁クリップ14に圧力を加えることができる。これによって、より容易にカテーテル4を介してクリップ14を除去できる。いくつかの事例において、僧帽弁クリップ14に付着し送達カテーテル10によって切除された組織を補うために、僅かに大きい直径の送達カテーテル4(オリジナルの僧帽弁クリップ送達カテーテルと比べて)が望ましい可能性がある。
【0013】
図2A〜2Cは、本開示の経心尖除去装置2の第2実施形態を示す。
図1A及び1Bに関連して論じた要素に加えて、経心尖除去装置2の第2実施形態は、スネアヘッドコントローラ40によって制御可能な把握ツール30を含む。把握ツール30は、閉鎖状態(
図2A及び2B)と開放状態(
図2C)との間で移動可能であり、必要に応じて組織又は僧帽弁クリップを操作できるように構成される。把握ツール30は、チューブ32内部の位置とチューブ32外部の位置との間で制御可能に移動できるように、引込み可能とすることができる。
図2A〜2Cに示す経心尖除去装置2のスネアバスケット8は、閉鎖したスネアバスケット8を縛るために、任意に把握ツール30を使用して、コード38を引っ張ることによって閉鎖される。
【0014】
図3A〜3Cは、本開示の経心尖除去装置2の第3実施形態を示す。経心尖除去装置2の第3実施形態は、第1及び第2実施形態に関連して開示した要素を含む。経心尖除去装置2の第3実施形態において、スネアヘッド6は、第1バスケット側9aと第2バスケット側9bとを有する2部式スネアバスケット8を有する。経心尖除去装置2の第3実施形態は、経心尖除去装置2が、折畳み状態(
図3A)、第1バスケット側9aと第2バスケット側9bがその間に僧帽弁クリップ、組織又はその他の要素を固定するように配列される展開・閉鎖状態(
図3B)及び相互に対して角度を成すように回転させるなどによって第1バスケット側9aと第2バスケット側9bが相互に分離している展開・開放状態(
図3C)の間で移動できるようにする。第1バスケット側9aと第2バスケット側9bは、相互に引き寄せてスネアバスケット8の閉鎖状態への移動を容易にする磁石36が配置される。第3実施形態において、心臓組織の切除は、光ファイバ46によって行われる。
【0015】
図4〜12は、僧帽弁クリップ14を除去する経心尖方法を示す。この方法は、僧帽弁の前尖を除去又は改変するためにも使用できる。
図4において、僧帽弁の少なくとも一部分を束縛するために僧帽弁22に事前配置された僧帽弁クリップ14が、患者の心臓16の中に示されている。経心尖除去装置2は、心臓16の左心室を穿刺するために使用される。
図5に示すように、その後、ガイドカテーテル20が、左心室へ、更に僧帽弁22を通過して左心房24の中へ挿入される。
図6に示すように、ガイドカテーテル20は、肺静脈34の中へ挿入できる。
図7に示すように、ガイドカテーテル20を使用して、送達カテーテル4が左心室18へ挿入される。
図8に示すように、スネアヘッド6は、送達カテーテル4を通過して移動できるようにする折畳み状態から僧帽弁クリップを捕捉できるようにする展開状態へ展開される。スネアヘッドコントローラ(図示せず)は、折畳み状態と展開状態との間のスネアヘッドの移行を制御する。
図9に示すように、スネアヘッド6は、事前配置された僧帽弁クリップ14を少なくとも部分的に取り囲むように開くスネアバスケット8を有する。スネアバスケットは、医療用プラスチック、医療用金属又はその両方を含むことができる。本開示の範囲内にあるいくつかの実施形態において、スネアヘッド6は、スネアヘッド6の展開を助けるためにニチノールなどの形状記憶材料から作ることができる。
図1A及び1Bに示す実施形態など、本開示の範囲内にある他の実施形態において、スネアヘッド6は、スネアヘッド6が折畳み状態のとき圧縮されかつスネアヘッド6が展開状態のとき静止するバネを含むことができる。バネは、スネアバスケット8が展開状態でない限り、スネアバスケット8内で圧縮されるように構成される。
図10に示すように、スネアバスケット8は、その後、僧帽弁クリップ14の周りで閉鎖する。いくつかの実施形態において、スネアヘッド6は、スネアヘッドバスケット8を閉鎖させる磁石36(
図3B及び3C)を含むことができる。
【0016】
スネアバスケットが僧帽弁クリップ14の周りで閉鎖されると、切除用送達カテーテル10へ切除信号が与えられて、僧帽弁クリップ14を取り囲む組織へ送られる。本開示の範囲内にあるいくつかの実施形態において、切除用送達カテーテル10は、各々、組織を切除するための高周波エネルギーを供給するために近位端に設置された電極12を有する。高周波信号は、250〜500kHzの範囲とすることができる。バッテリなどの電源42(
図1A及び1B)は、電極12と連絡でき、電源から電極への電流の流れを交互に許容し停止するスイッチ44が設置できる。スイッチは、遠隔的に制御できる。本開示の範囲内にある他の実施形態において、僧帽弁クリップ14に隣接する組織を切除するためのレーザー切除信号を送るために、各切除用送達カテーテル10の近位端に光ファイバ46(
図3C)が配置される。別の実施形態において、切除源を、寒剤熱源とすることができる。
【0017】
スネアヘッドコントローラは、展開状態においてスネアバスケット8の位置及び/又はサイズを制御し、また展開状態において組織への切除源送達を制御する。僧帽弁クリップ14は、スネアヘッド6のスネアバスケット8によって捕捉される。
図11に示すように、スネアヘッド6は、折畳み状態となり、送達カテーテル4の中へ引き込まれる。本開示の範囲内にあるいくつかの実施形態において、引込み漏斗(
図1A及び1B)は、折畳み状態から展開状態へスネアヘッド6を強制的に戻すのを助けるために送達カテーテル4の近位端に設置できる。機能的僧帽弁22を与えるために、新しい経カテーテル弁28を留置機構26によって留置できる。留置機構は、
図12に示す実施形態において、送達カテーテル4を含む。
【0018】
図4〜12に示す経心尖除去装置2を使用する方法は、僧帽弁クリップ14の除去のためのものであるが、経心尖除去装置2は、他の目的例えば前尖の除去又は改変などのために使用できる。当業者は、上に論じるのと実質的に同じステップをこれらの目的のために使用できることが分かるはずである。
図4〜12において図示するスネアバスケット8は、2部式スネアバスケットを持つが、1部式バスケット又は2つ超の側を持つ多部式バスケットを使用できる。更に、スネアバスケット8は、多様な形状で構成できる。例えば、スネアバスケット8は、組立体が対象物から完全に引き抜かれたとき捕捉された組織及び/又はクリップをスライド式に除去できるように、遠位端及び近位端を開放端とすることができる。他の実施例において、スネアバスケット8は、連続的であるか又は遠位及び近位端において密封できる。いくつかの実施例において、スネアバスケット8は、前尖の除去又は改変を容易にする平坦な形体を持つことができる。更に別の実施例において、切除用送達カテーテル10は、前尖の一部分例えば中央部だけを切除できるようにスネアバスケット8に固定できる。
【0019】
図13は、本明細書において論じる経心尖除去装置を使用する方法の実施形態例を実現する際に使用される各種構成要素を示すブロック図例100である。経心尖除去装置は、切除特徴部115とセンサ116とを含むことができる送達カテーテル103を介して患者122体内へ挿入できる。除去装置は、システム102の各種要素に作動可能に接続されたスネアヘッドコントローラ104を有する制御システム102によって制御される。制御システム102は、治療地点におけるポータブルマシンなどの独立型経心尖除去システムとすることができる。他の実施例において、制御システム102は、切除ポンプ、カテーテルセンサ/スイッチ制御システムなどを有する既存の切除制御システムなどの既存の制御システムに組み入れることができる。図示しないが、制御システム102は、カテーテル送達、スネアヘッド展開及び切除特徴部の全体的又は部分的機械作動を与えるためのフットコントローラ及びハンドコントローラなどの機械的制御装置を含むことができる。制御システム102のある部分は、電子的部分であるか機械的部分であるかに関係なく、スネアヘッドのため除去装置の送達カテーテルのための制御ハンドル、センサ及び/又はカテーテル制御に分散できることが分かるはずである。
【0020】
図示する実施例において、制御システム102は、他の医療装置及び医療データベースから収集した履歴データなど、コントローラ104及び/又は外部データ源からの履歴データなどの収集データを保存するためのデータベース114(入力/出力(I/O)回路112に接続されたリンク122を介して)を含む。即ち、図示しないが、付加的なデータベースを既知の様式でスネアヘッドコントローラ104にリンクできることが分かるはずである。
【0021】
スネアヘッドコントローラ104は、プログラムメモリ106と、プロセッサ108(マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサと呼ぶことができる)と、ランダムアクセスメモリ(RAM)110と、入力/出力回路112(その全てがアドレス/データバス120を介して相互に接続される)とを含む。図には1つしかマイクロプロセッサ108を示さないが、スネアヘッドコントローラ104は、複数のマイクロプロセッサ108を含むことができる。同様に、コントローラ104のメモリは、複数のRAM110及び複数のプログラムメモリ106を含むことができる。図においてI/O回路112は単一ブロックとして示すが、I/O回路112は多数の異なるタイプのI/O回路を含むことができることが分かるはずである。RAM110及びプログラムメモリ106は、例えば半導体メモリ、磁気可読メモリ及び/又は光学可読メモリとして実現できる。リンク124は、I/O回路112を介してコントローラ104をセンサ116に作動可能に接続できる。
【0022】
プログラムメモリ105及び/又はRAM110は、マイクロプロセッサ108によって実行される様々なアプリケーション(即ち、機械可読命令)を保存できる。例えば、オペレーティングシステム130は、概略的に、制御システム102の作動を制御し、本明細書において説明する除去プロセスを実現するために制御システム102へのユーザーインターフェイスを与える。プログラムメモリ106及び/又はRAM110は、テスト装置102の固有の機能にアクセスするための多様なサブルーチン132も保存できる。例えば、限定的ではなく、サブルーチン132は、特に、僧帽弁組織の切除を制御するためのサブルーチン、僧帽弁へ送達するための第1折畳み状態から僧帽弁クリップを捕捉するための展開状態へ、その後捕捉された僧帽弁クリップを除去するための第2折畳み状態へのスネアヘッドの起動を制御するためのサブルーチン、並びに、例えばソフトウェアキーボード機能を実現しコンピュータシステム102の中のその他のハードウェアとの間のインターフェイスとなる他のサブルーチンなどを含むことができる。プログラムメモリ106及び/又はRAM110は、更に、経心尖除去装置の構成及び/又は作動に関するデータ及び/又は1つ又は複数のサブルーチン132のオペレーションに関連するデータを保存できる。コントローラ104に加えて、制御システム102は、他のハードウェアリソースを含むことができる。
【0023】
制御システム102は、又、ビジュアルディスプレイ126及び入力装置128(例えば、キーパッド、キーボードなど)などの各種の入力/出力ハードウェアも含むことができる。1つの実施形態において、ディスプレイ126は接触式であり、ソフトウェアルーチン132の1つとしてソフトウェアキーボードルーチンと協働してユーザー入力を受け入れることができる。テスト装置が多数の既知のネットワーク装置及び技法を介して(例えば、病院又は診療所のイントラネット、インターネットなどのコミュータネットワークを介して)より広域の医療分析ネットワークまたは治療ネットワーク(図示せず)と通信すると有利であろう。例えば、制御システム102は、医療記録データベース、病院管理処理システム、健康管理専門家端末(例えば、ドクターステーション、ナースステーション)、患者監視システム、自動投薬システムに接続できる。したがって、開示する実施形態は、自動化閉鎖ループシステムの一部として又は決定支援システムの一部として使用できる。
【0024】
本明細書全体を通じて、複数の実施例は、単一実施例として説明する構成要素、作動又は構造体を実現できる。1つまたは複数の方法の個別の作動を別個の作動として例示し説明するが、個別の作動の1つ又はそれ以上を同時に実施でき、作動が例示される順番で実施されることは要求されない。構成例において別個の構成要素として提示する構造及び機能は、組み合わされた構造又は構成要素として実現できる。同様に、単一構成要素として提示する構造及び機能は、別個の構成要素として実現できる。これらの及びその他の変形、修正、付加及び改良は、本明細書の内容の範囲内にある。
【0025】
更に、特定の実施形態は、ロジック又は多数のルーチン、サブルーチン、アプリケーションまたは命令を含むものとして、本明細書において説明される。これらは、ソフトウェア(例えば、非一時的、機械可読媒体に組み込まれたコード)又はハードウェアを構成できる。ハードウェアにおいて、ルーチンなどは、特定オペレーションを実施できる有形ユニットであり、特定の様式で構成又は配列できる。実施形態例において、1つ又は複数のコンピュータシステム(例えば、独立型、クライアントまたはサーバーコンピュータシステム)又はコンピュータシステムの1つ又は複数のハードウェアモジュール(例えば、プロセッサ又はプロセッサのグループ)は、本明細書において説明するように特定オペレーションを実施するために作動するハードウェアモジュールとしてソフトウェア(例えば、アプリケーション又はアプリケーション部分)によって構成できる。
【0026】
様々な実施形態において、ハードウェアモジュールは、機械的に又は電子的に実現できる。例えば、ハードウェアモジュールは、特定のオペレーションを実施するために(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は特定用途集積回路(ASIC)などの特殊目的プロセッサとして)永久的に構成される専用回路又はロジックを備えることができる。ハードウェアモジュールは、又、特定のオペレーションを実施するためにソフトウェアによって一時的に構成されるプログラマブルロジック又は回路(例えば、汎用プロセッサ又は他のプログラマブルプロセッサ内に含まれる)を備えることもできる。専用の永久的構成の回路において又は一時的に構成される回路(例えば、ソフトウェアによって構成される回路)において機械的にハードウェアモジュールを実現するかの決定は、コストと時間に応じて下すことができる。
【0027】
したがって、「ハードウェアモジュール」は、特定の様式で作動するように又は本明細書において説明する特定のオペレーションを実施するために物理的に構成される、永久的に構成される(例えば、有線で)又は一時的に構成される実体である有形体を包括するものと解釈すべきである。ハードウェアモジュールが一時的に構成される(例えば、プログラムされる)実施形態においては、ハードウェアモジュールの各々が、任意の1時点において構成又はインスタンス生成される(instantiated)必要はない。例えば、ハードウェアモジュールがソフトウェアを使用して構成された汎用プロセッサを備える場合、汎用プロセッサは、異なるときにそれぞれ異なるハードウェアモジュールとして構成できる。したがって、ソフトウェアは、例えば1時点で特定のハードウェアモジュールを組み立てるために及び別の時点で別のハードウェアを組み立てるためにプロセッサを構成できる。
【0028】
ハードウェアモジュールは、他のハードウェアモジュールへ情報を提供しかつ他のハードウェアから情報を受け取ることができる。したがって、説明するハードウェアモジュールは、通信上結合されたものとみなすことができる。このようなハードウェアモジュールが複数同時に存在する場合、通信は、ハードウェアを接続する信号伝送(例えば、適切な回路及びバスを介して)によって得られる。複数のハードウェアモジュールが異なる時点で構成又はインスタンス生成される実施形態の場合、ハードウェアモジュール間の通信は、例えば、複数のハードウェアモジュールがアクセスできるメモリ構造への情報の保存及び検索によって得られる。例えば、1つのハードウェアモジュールは、1つのオペレーションを実施し、このモジュールが通信上結合されるメモリ装置にこのオペレーションの出力を保存できる。別のハードウェアモジュールは、その後に、保存された出力を検索して処理するためにメモリ装置にアクセスできる。ハードウェアモジュールは、入力または出力装置との通信を開始でき、リソースに対して操作できる(例えば情報の収集)。
【0029】
本明細書において説明する方法例の様々なオペレーションは、少なくとも部分的に、関連するオペレーションを実施するために一時的に構成される(例えば、ソフトウェアによって)又は永久的に構成される1つ又は複数のプロセッサによって実施できる。一時的に構成されるか永久的に構成されるかにかかわらず、プロセッサは、1つ又はそれ以上のオペレーション又は機能を実施するために作動するプロセッサ実行モジュールを構成できる。本明細書において言及するモジュールは、いくつかの実施形態例において、プロセッサ実行モジュールを含むことができる。
【0030】
同様に、本明細書において説明する方法又はルーチンは、少なくとも部分的にプロセッサ実行とすることができる。例えば、方法のオペレーションの少なくともいくつかは、1つ又は複数のプロセッサ又はプロセッサ実行ハードウェアモジュールによって実施できる。オペレーションの特定のものの実施は、単に1つのマシンに常駐するプロセッサだけでなく多数のマシンに亘って配備された1つ又は複数のプロセッサの間で分散できる。いくつかの実施形態例において、プロセッサ(1つ又は複数)は、単一ロケーションに(例えば、家庭環境に、オフィス環境に又はサーバーファームとして)配置できるが、他の実施形態において、プロセッサは、多数のロケーションに亘って分散できる。
【0031】
オペレーションの特定のものの実施は、単一マシン内に常駐するものだけでなく多数のマシンに亘って配置された1つ又は複数のプロセッサの間で分散できる。いくつかの実施形態例において、1つ又は複数のプロセッサ又はプロセッサ実行モジュールは、単一の地理的ロケーション(例えば、家庭環境、オフィス環境又はサーバーファーム)に配置できる。他の実施形態例において、1つ又は複数のプロセッサ又はプロセッサ実行モジュールは、多数の地理的ロケーションの間で分散できる。
【0032】
特に明確に述べない限り、「処理(processing)」、「コンピュータ処理(computing)」、「計算(calculating)」、「測定(determining)」、「提示(presenting)」、「表示(displaying)」又はこれと同種の用語を使用する本明細書の論述は、1つ又は複数のメモリ(例えば、揮発性メモリ、非揮発性メモリ又はこれらの組合せ)、レジスタ又は情報を受け取り、保存、伝送又は表示するその他の機械要素内の物理的(例えば、電子、磁気又は光学的)量として表されたデータを操作又は変換する機械(例えば、コンピュータ)の行為又はプロセスを指す。
【0033】
いくつかの実施形態は、「結合する(couple)」及び「接続する(connect)」及びその派生語を使用して説明できる。例えば、いくつかの実施形態は、2つ又はそれ以上の要素が直接物理的に又は電気的に接触することを示すために「結合する」を使用して説明できる。但し、「結合する」は、2つ又はそれ以上の要素が相互に直接接触しないが、相互に協働する又は相互作用することも意味できる。実施形態は、限定されない。
【0034】
この詳細な説明は、あらゆる可能な実施形態を説明することは不可能ではないとしても実際的ではないので、実施例として解釈されるべきであり、あらゆる可能な実施形態を説明するものではない。現在のテクノロジー又は本出願の提出日後に開発されたテクノロジーを使用して、多数の代替的実施形態を実行できる。
【0035】
本明細書において使用する場合、「1つの実施形態(one arrangement)」又は「実施形態(an arrangement)」は、その実施形態に関連して説明する特定の要素、特徴、構造又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。明細書の様々な場所における「1つの実施形態において」と言う表現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すものではない。
【0036】
本明細書において使用する場合、「備える(comprise)」、「含む(include)」、「有する(have)」又はその派生語は、非排他的包含をカバーするものとする。例えば、一群の要素を備えるプロセス、方法、品目又は装置は、必ずしもこれらの要素に限定されず、明確に列記されない又は前記のプロセス、方法、品目又は装置に付随的な他の要素を含む可能性がある。更に、特に明確に述べない限り、「又は(or)」は、包含的orであり、排他的orではない。例えば、条件A又はBは、下記のいずれか1つによって満たされる。即ち、Aは真(有)であり、Bは偽(無)である。Aは偽(無)でありBは真(有)である。AもBも真(有)である。
【0037】
更に、単数冠詞の使用は、本明細書において実施形態の要素及び構成要素を説明するために採用される。これは単に便宜上であって、概略的説明のためのものである。この詳細な説明及び以下の請求項において、1つ又は少なくとも1つを含むものとして解釈すべきであり、単数は、単数ではないことが明白でない限り複数も含む。
【0038】
本発明は、具体的な実施例を参照して説明するが、この実施例は単に例示的であり、本発明を限定するものではなく、当業者には、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、開示する実施形態に変更、付加及び/又は削除を加えることができることが明らかであろう。
【0039】
以上の説明は、本発明をより良く理解するためであり、本発明の範囲内にある修正は当業者には明らかなので、上記説明から不要な限定を認めるべきではない。
【国際調査報告】