特表2019-520960(P2019-520960A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンデコ テクノロジーズ アーゲーの特許一覧

<>
  • 特表2019520960-調理容器 図000003
  • 特表2019520960-調理容器 図000004
  • 特表2019520960-調理容器 図000005
  • 特表2019520960-調理容器 図000006
  • 特表2019520960-調理容器 図000007
  • 特表2019520960-調理容器 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-520960(P2019-520960A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(54)【発明の名称】調理容器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20190704BHJP
【FI】
   A47J27/00 107
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-516287(P2019-516287)
(86)(22)【出願日】2017年6月6日
(85)【翻訳文提出日】2019年1月29日
(86)【国際出願番号】IB2017000715
(87)【国際公開番号】WO2017212330
(87)【国際公開日】20171214
(31)【優先権主張番号】00718/16
(32)【優先日】2016年6月6日
(33)【優先権主張国】CH
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】518432159
【氏名又は名称】コンデコ テクノロジーズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】CONDECO TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】マラヴィッチ,ドゥスコ
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA09
4B055BA22
4B055BA29
4B055BA80
4B055CA01
4B055CB18
4B055DB14
(57)【要約】
本発明は、互いの内側に一定の距離を置いて配設された内側本体および外側本体、ならびに平担なベース領域および壁領域を含む2重壁式調理器具に関する。2つの本体間でベース領域内に底板が配設されている。2つの本体は、真空気密式に互いに連結されており、これらの本体間には真空が存在する。好ましい実施形態において、外側本体のベース領域は、凹部を有し、この凹部内に追加の底板が真空気密式に挿入される。製造は、真空チャンバ内で行なわれるか、または後続して真空が生成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間に一定の距離を置いて互いの内外に配設されかつ共に平担な底面部分と壁部分とを有する内側本体および外側本体、ならびに2つの本体の底面部分の間に配設された底板を伴う2重壁式調理容器において、2つの本体が互いに真空気密式に連結されていることおよび間に真空が存在することを特徴とする、2重壁式調理容器。
【請求項2】
底板が多層化されていることを特徴とする、請求項1に記載の調理容器。
【請求項3】
底板と外側本体の底面部分との間に一定の距離が存在することを特徴とする、請求項1に記載の調理容器。
【請求項4】
外側本体の底面部分が凹部を有し、この凹部内に追加の底板が真空気密式に挿入されることを特徴とする、請求項1に記載の調理容器。
【請求項5】
追加の底板が高い比電気抵抗を有する材料からなることを特徴とする、請求項4に記載の調理容器。
【請求項6】
壁部分内には、熱源内の制御ユニットに対して温度信号を伝送するために温度センサおよび伝送用デバイスが配設されていることを特徴とする、請求項1に記載の調理容器。
【請求項7】
本体の一方または両方が、多層式に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の調理容器。
【請求項8】
真空側の層が高い熱伝導率を有する材料からなることを特徴とする、請求項7に記載の調理容器。
【請求項9】
本体と底板との組立てが真空チャンバ内で行なわれることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載の調理容器の製造方法。
【請求項10】
本体と底板の組立ての後、中間空間内に真空が生成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の調理容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に係る調理容器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、高級鋼で製造された大部分の調理器具は、いわゆるサンドイッチベースが具備されている。そのために適用される技術は専ら、はんだ付けまたはいわゆるビーティングにより達成される材料ボンディングを含む。両方の場合において、しっかりした結合を生成する目的で極めて高い温度が達成されなければならない。通常、サンドイッチベースは、上述の手順の1つによって互いに連結されるアルミニウムディスクおよびいわゆるカプセルからなる。換言すると、接触表面はいわゆる媒介によって連結されている。はんだ付けの場合、この媒介は適切なはんだであり、いわゆるビーティングの場合、それは、2つの材料を共に保持する原子結合力である。今日、サンドイッチベースを得るためには、比較的高いエネルギ消費量が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、より優れたベース構造を伴う調理容器およびその製造方法を見出すという課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、この課題は、請求項1、7および8の特徴によって解決される。
【0005】
以下では、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明に係る調理容器の概略的断面図である。
図2】代案の一実施形態の概略的断面図である。
図3】温度制御用の手段を伴う一実施形態である。
図4】さらなる代案の一実施形態の概略的断面図である。
図5】温度制御用の手段を伴うさらなる一実施形態である。
図6】電磁シールドを伴う一実施形態である。
図7a図6に示されたシールドの詳細な変形形態である。
図7b図6に示されたシールドの詳細な変形形態である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に係る調理容器の最も重要な特徴は、調理容器の底面と調理容器の壁を同時に実現することにおける真空の役割にある。真空の効果により、調理容器の底面の全ての構成要素は共に保持される。それと同時に、真空は調理容器の2重壁内で作用する。こうして生成された底面は、調理容器の内部内、例えば水への熱輸送のために極めて高い効率を示す。一方、2重壁は、極めて高い断熱効率をもたらす。すなわち、周囲空気に対する調理容器の熱放散は、いわゆる魔法びんの場合とほぼ等しい技術的熱条件が達成される程度にまで最小化される。真空効果が同時であるため、本発明に係る調理容器は、コストおよび製造に関して極めて魅力的なものとなっている。
【0008】
調理容器のさらなる特性は、調理中の温度誘導型制御を導くことができるという点にある。適切な温度センサを伴う小型化された電子機器は、熱源に連結された調整器に対する測定値の無線伝送を伴って調理容器の壁の中に配設され得る。現在の技術は、制御を提供することができない。それは単純なステアリングを使用し、調理プロセスをできるだけうまくシミュレートしようと試みる。少なくとも、制御によって、調理すべき製品内の温度レベルが与えられ、このレベルに到達した後はこのレベルが保持されるという点において、制御とステアリングとの間の違いを想像することはできる。ステアリングは、人間の補助がなければ機能しない解決法である。調理プロセスを維持しなければならない場合には、例えば1と10の間でパワーステップを変動させることによって、最適で有用であるものを選択する。外部からの影響が発生する毎に、選択されたレベルを適応させる必要がある。調理は今日、つねに、適切とみなされた条件に対する近似によって特徴付けされる。調理における誤った手順はことごとく直ちに不利な影響を及ぼし、過度の熱すなわち蒸気にはお金がかかり、調理をエネルギの観点から見てかなり非効率的なものにする。これは、制御の可能性によって置換され得ると考えられる。エネルギ効率の良い調理は、温度誘導型制御によってのみ可能である。
【0009】
本発明に係る調理容器を製造するためには、製造順序を配列し直す必要がある。従来の作業の製造ステップは、以下のように配列されている。すなわち、深絞り、面取り、清浄、底面連結準備、底面連結、底面連結のチェックおよび必要な場合の補正、機械的処理(研削および研磨)、取っ手の取付け、清浄および包装。これらの技術的ステップは全て本発明に係る調理容器の製造において使用されるが、その順序は幾分か変動および削減されている。
【0010】
本発明に係る調理容器を製造するためには、2つの未加工本体を、一方はより小さい直径で、もう一方はより広い直径で深絞りしなければならない。その後に、面取りと清浄ステップが続く。これらの製造ステップは、順序に関しては不変のままである。次のステップは、調理容器の組立てである。より広い外側本体内に1枚以上の円形ディスクが配置される。その後、小さい方の内側本体の挿入が続く。次のステップは、本体の連結である。これは好ましくは、真空チャンバ内で、2つの本体の注入用リムの後続する溶接を用いて行なわれる。目的は、2つの本体間の空間内に真空を生成することにある。真空チャンバからの取出しおよび大気圧中への進入の時点で、底面部分は互いに対し押圧され、こうして全ての接触表面の良好な連結が達成されることになる。容器の壁は、押圧力の影響により結果としてもたらされる機械的変形に耐えるのに充分な強度を有する。概して、容器の壁は、互いに接触しないはずである。しかしながら、万一接触した場合でも、調理容器の品質が低下することはない。ここで使用される真空とは、それぞれの技術的分野において低い真空として定義される。数ミリバールを超えるような真空は不要である。
【0011】
残りの製造ステップは、従来の製造の場合と同様に続く。
【0012】
図1に示されているように、本発明に係る調理容器は、内側本体1および外側本体2という2つの本体で構成されており、ここで「本体」なる用語は、ポットの形をした深絞りされた未加工本体を意味する。2つの本体間の中間空間3全体の中に真空が存在する。好ましくは、本体の直径は、有効な規格に対応しているべきである。これにより、深絞り用工具の投資コストが回避されると考えられる。
【0013】
本発明に係る調理容器によると、注入用リム5のみが、例えば溶接によって互いに材料ボンディングで連結され、中間空間3内には、真空が存在する。材料ボンディング型連結の性質には、二次的な重要性しかない。本体1と2の間の中間空間3内で充分な真空に到達した後、注入用リムは互いに連結されてよい。この目的で、レーザ溶接、電子ビーム溶接、電気抵抗溶接、はんだ付け、電磁パルス溶接およびさらに多くの材料ボンディング型連結方法など、さまざまな方法が利用可能である。これら全てのボンディング方法から、溶接後は、2重壁の空間3内の真空が失われず、非常に長い時間持続することが期待されるはずである。電磁パルス溶接などの連結方法が、このボンディング方法のエネルギーコストが1セント未満であるため、コスト上の理由から好ましくは使用されるべきである。
【0014】
底面領域において、表面は真空に起因して互いに対し押圧される。底面4内に存在する1枚以上の円形底面ディスク6は、2つの本体の底面領域に対し材料ボンディングされていないため、加熱の帰結として、半径方向に自由に移動することができる。この事実は、全ての構成要素が互いに固定的に連結される、すなわち材料ボンディングされる場合に比べ、底面4の変形が全体として少なくなるという効果に著しく寄与する。2重壁内の真空によって、調理容器の熱損失が確実に削減される。
【0015】
技術的およびコスト関連の側面から考慮すると、底面内の連結は、従来の方法に比べて実質的により単純でありかつ著しくより廉価である。このステップは、純粋に低温手順であることから、後続する機械的処理も同様により廉価である。表面処理は、研磨のみに削減される。焼き戻しに起因する着色した底面4の入念な研削は、時代遅れである。ほぼ500℃の高温の容器底面が水浴中で衝撃冷却されると、薄い硬質層が生成され、これはさらに入念に除去されなければならない。本発明に係る解決法では、底面のこの入念な機械的処理は、時代遅れである。
【0016】
以上で説明した本発明に係る調理容器は、誘導、輻射、ハロゲン、大量調理用プレート、ガスさらには直火を含めた全ての熱源に適する。この意味において、これを汎用調理容器と呼ぶことができる。技術的分野では、これをオール熱源対応調理容器と呼んでいる。
【0017】
全ての観点から見て、本発明に係る解決法は、従来の底面を有するものに比べてエネルギ効率が高い。詳細には、底面構成のための現在のかなり高いコストは削減される。例えばレーザなどを用いた比較的小さい真空チャンバは、底面4を実現するために必要なエネルギがはるかに少ない。2重壁内の真空をさらに準備する必要がないという点を過少評価してはならない。真空は、底面4の実現と空間3内での真空の存在を同時に可能にする。こうして真空を用いて、1つの製造ステップで2つの問題が解決され、その結果、時間およびコストに関する利点がもたらされる。
【0018】
真空チャンバ内で組立てる代りに、組立て後に中間空間内に真空を生成することも可能である。この目的で、壁の1つの場所に穴が具備され、これを通って空気が吸引され、次にこの穴は真空安全的に閉鎖される。
【0019】
真空による底面連結のため、多種多様な材料を使用することが可能であり、従来は材料ボンディングできない材料でさえ使用することが可能である。これらの材料には、さまざまな複合材料、グラファイトおよびグラファイト複合材、適切なセラミック、ならびに、或る理由から材料ボンディングできないさまざまな金属が包含される。
【0020】
好ましくは、このような材料は、調理容器の内部内への優れた熱輸送を可能にする円形底面ディスク6として使用される。
【0021】
高温に起因して底板が溶融し得る、例えばアルミニウムなどの極端な場合において、調理容器の構造、すなわち外側本体は、溶融材料が外部に到達するのを防ぐ。こうして、事故などによる後続する損傷の可能性は大幅に減少する。
【0022】
本発明に係る解決法の利点は、例えば製造時間の短縮または製造コストの低減など、製造現場のみにとどまらず、その用途特異的特性にもある。この調理容器は、従来の調理容器に比べてエネルギ効率が高い。それは、輻射加熱で使用された場合、ガラス−セラミックの温度がより低く、予調理時間がより短いことによって認められる。誘導の場合には、騒音が少なく、人間に有害であるものとして知られている輻射線散乱の発生がはるかに少ない。底板用として適切な材料、例えばアルミニウム、銅、グラファイトおよび他の材料を選択することによって、熱源の性質の如何に関わらず、非常に優れた温度分布を達成することができる。
【0023】
本発明に係る調理容器は同様に、新規のいわゆる伝導調理システムと組合せて使用することもできる。この目的で、好ましくは、底面における卓越した温度分布を達成するために、銅または銅合金の底板が使用されなければならない。
【0024】
本発明に係る解決法の構造的構成は、外側本体2および内側本体1の両方のためのさまざまな材料の使用を可能にする。これらの材料は、深絞りに適切なものでなければならない。内側本体1用の材料については、外側本体とは違い、さらに栄養適合性が必要とされる。これは、調理容器について有効なEN12983−2規格を満たすための重要な前提条件である。内側本体1については、好ましくは、精錬鋼、アルミニウム、チタンなどが使用される。外側本体2用の材料としては、精錬鋼、アルミニウム、チタン、銅および銅合金、ガラス、適切なセラミック材料およびプラスチック、ならびに適切な複合材料が使用される。
【0025】
異なる材料でできた本体が注入用リムにおいて材料ボンディングされ得ない場合、これらの本体を別の方法で連結しなければならない。この連結の性質は、真空が長時間維持されるかぎり、二次的なものである。
【0026】
図2に示された実施形態においては、底面中間空間7が、底板6の下方に具備されており、底面中間空間内にも真空が存在している。底面領域内の真空の存在により、より高温の内側本体1とより低温の外側本体2との間の熱交換は防止される。誘導熱が、誘導に適した内側本体1内で発生するにつれて、底面中間空間7も同様に真空下で存在していることから、この熱は外向きに流れることができない。エネルギの意味において、これは極めて有益であり、調理容器のエネルギ効率を極めて高くする。しかしながら、この調理容器は、オール熱源対応ではなく、誘導のみに適している。誘導が市場での存在感を増していることを考えると、これは不利なことではない。
【0027】
図2に係る発明力ある調理容器、すなわち誘導でのみ使用可能な調理容器は、図1に係るオール熱源対応バージョンに比べて、さらに一層高いエネルギ効率およびより短い予調理時間を達成する。その背後にある物理現象は、容易に理解できる。すなわち、ガラスセラミックはさほど高温にならず、底面の熱損失はより小さくなる。誘導的に生成される熱量は、ほぼ排他的に調理容器内の「対象物」(調理すべき製品、水、油など)へと流れ、必要とされていないところには流れない。
【0028】
底面領域4内の空間7が断熱材料で満たされている場合に、類似の効果が達成される。
【0029】
図3は、熱源として誘導を用いる調理システムの温度誘導型制御のための内蔵型電子機器およびセンサユニットを伴う、本発明に係る調理容器を概略的に示している。本発明に係る調理容器の先に説明した2つのバージョンは、調理プロセスの温度誘導型制御のために適切である。制御に必要とされる電子機器8は、調理容器の容器壁内、好ましくはより低温の外部壁に配設されている。調理すべき製品または水などの有効温度を可能なかぎり正確に検出するために、内側本体に対し温度センサ10が直接連結されている。通常、センサは、2重壁内の電子機器8に測定値を伝送するPt抵抗器、熱素子などの市販の熱センサであり、これらの電子機器が今度はこれらの測定値を無線で調理器具の電子機器に伝送する。信号の測定、評価および伝送に必要とされるエネルギは、誘導調理器具11内のマイクロコイルによって提供される。
【0030】
制御により、特に実際の調理段階中の調理のエネルギ効率は、極めて高い。調理容器の中味の温度を低下させることなく、調理容器が周囲に伝達するのと同じだけの熱しか調理容器に提供されない。このことは、調理プロセスの制御がもつ利点を明確に示している。
【0031】
図4に示された実施形態において、外側本体2には、追加の下位底板12が中に挿入される凹部が具備されている。この底板は、例えばシリコンゴム製のシールなどにより、外側本体に真空気密式に連結される。この追加の底板は、深絞り後に挿入される。この底板については、高い比電気抵抗を有する材料、すなわち例えばセラミックおよびその複合材、ガラスセラミック、ガラス、プラスチックなどが適している。
【0032】
誘導調理器具上において、この構造は、電場が底面領域内で閉じることを防ぐので、外側本体が加熱されない。
【0033】
下位底板が好ましくは高いIR光透過性を有する材料からなる場合、調理容器は同様に輻射加熱でも使用可能である。下位底板の低い吸収作用に起因して、これは最小限しか加熱されず、一方、IR放射線の主要部分は上位底板6内で熱に変換され、調理すべき製品に直ちに伝達される。
【0034】
IR光透過性材料としては、好ましくは高い透過性を有するガラスセラミックが考慮される。この材料はさらに、高い安定性、高い温度耐久性および非常に高い温度衝撃安定性を有する。これと共に、調理容器に期待される多くの要件を満たすことができる。
【0035】
上位および下位底板の間には、スペーサ13が具備される。これらのスペーサは、真空の効果が存在するように2つの底板の間で接触を保つのに役立つ。スペーサは、例えば、下位底板の表面上の突起で構成されていてよい。典型的な底面構成の寸法は、以下の通りである。すなわち、上位底板6については、誘導を用いた加熱のために、0.5mmの厚みで充分であると思われる。しかしながら、好ましくは、2〜3mmの厚みが使用される。下位底板12については、好ましくは、同様に3mmの厚みが適している。2つの底板間の距離は、好ましくは1mmである。これらの寸法の変動も同様に可能である。
【0036】
図5に示されている実施形態には同様に、図3に示された実施形態の制御要素が具備されている外側本体の凹部内に挿入された下位底板12も具備されている。
【0037】
2つの本体は、同様に多層化されており、そのため、層は好ましくは異なる材料からなる。層は、互いに材料ボンディングされていなくてよい。
【0038】
内側本体が調理すべき製品の側の精錬鋼層と真空側のアルミニウムなどの熱伝導が良好な材料の追加層とで構成されている場合には、これは底面領域内で、改善された輻射方向熱分配、および壁領域内で、外部に向かうすなわち真空または外側本体の方向のより低い熱放散という効果を有する。
【0039】
外側本体については、そのシールド効果に起因して、オーステナイト製外側層の加熱が防止または削減されることから、真空側の良好な熱伝導を有する追加層が同様に有利である。特に底面領域と壁領域の間の湾曲の領域においては、誘導調理中の過度の加熱がこうして回避される。
【0040】
対応する実施形態が図6および7に示されている。これまでに説明されてきた要素に加えて、内側本体と外側本体の間には電磁シールド14が提供されている。このシールドは、好ましくはアルミニウムからなる。アルミニウムのような類似の特性を有する他の材料も同様に使用可能である。
【0041】
2つの本体と同様、シールドも同様に、底面領域および壁領域を伴うポットの形状を有する。しかしながら、シールドの円筒形壁領域15は、壁の高さ全体の一部、例えば半分にわたって延在しているにすぎない。この実施形態の底面領域は、外側本体と接触する外側環状部分16と、底板6を含みその平担な部分が内側本体と底板との間に位置付けされるようにへこんでいて底板6に対応している内側底面部分17とを有するように形成されている。
【0042】
シールドの最も重要な機能は、外側本体の底面部分と垂直部分の間の領域内での外側本体の加熱を回避する目的で、電磁場の効果を無くすることにある。中間空間内、すなわち2つの容器本体間の空間内の真空は、無限に高い電気抵抗を有するため、電場は閉じて内部の全てを加熱していると考えられる(ジュールの法則)。この熱量は、内側本体に対する伝達が極めて不良で、調理容器に非常に高い温度および損傷をひき起こすと考えられる。これは、外側本体の内側表面におけるシールドによって防止される。
【0043】
したがって、2つの部分が接触状態にあるということが重要な前提条件である。外側本体とシールドの間には、有意な間隙が全く存在してはならない。そうでなければ、外側本体は、シールドが無いかのように加熱されることになる。
【0044】
電磁シールドは同様に、図7bに示されているように環状に、すなわち底面領域16無しで構成されていてよい。ただし、調理容器の内部における電磁場の効果に関しては、底面部分を伴うバージョンが好ましい。電磁場と調理すべき製品との間の直接的接触は回避されるべきである。シールドが底面部分無しで構成されている場合、調理容器の内部における電磁場の分布を防止するための他の措置もそれ自体公知である。
【0045】
シールドのさらなる利点は、それが底板のセンタリングに役立つと同時に、外側本体および内側本体の底面部分を底板と完全な表面接触状態に保つということにある。
【符号の説明】
【0046】
1 内側本体
2 外側本体
3 中間空間
4 底面
5 注入用リム
6 円形底面ディスク
7 底面中間空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6-7】
【国際調査報告】