(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-521134(P2019-521134A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(54)【発明の名称】性感染症用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/215 20060101AFI20190704BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20190704BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20190704BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20190704BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20190704BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20190704BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20190704BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20190704BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20190704BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20190704BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20190704BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20190704BHJP
【FI】
A61K31/215
A61P31/10
A61P31/04
A61K45/00
A61K31/375
A61K31/198
A61K47/10
A61K47/06
A61K47/44
A61K31/19
A61K35/747
A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-501480(P2019-501480)
(86)(22)【出願日】2017年7月10日
(85)【翻訳文提出日】2019年3月11日
(86)【国際出願番号】US2017041354
(87)【国際公開番号】WO2018013474
(87)【国際公開日】20180118
(31)【優先権主張番号】62/360,561
(32)【優先日】2016年7月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/375,082
(32)【優先日】2016年8月15日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518129260
【氏名又は名称】ヘネピン・ライフ・サイエンシーズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】HENNEPIN LIFE SCIENCES,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,マーニー,エル.
(72)【発明者】
【氏名】シュリーベルト,パトリック,エム.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4C076BB31
4C076CC31
4C076DD34
4C076DD38
4C076DD46
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4C087NA08
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4C087ZB38
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA01
4C206FA55
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA83
4C206NA08
4C206ZB35
4C206ZB38
(57)【要約】
開示されているのは、細菌感染の治療のための組成物および方法である。組成物は、モノラウリン酸グリセロールまたはその誘導体を含んでおり、局所的に、例えば、淋病またはジカの治療のために投与され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における性感染症の治療または予防方法であって、
上記性感染症は、細菌、真菌または原生生物によって生じるものであり、当該方法は、
有効量の、モノラウリン酸グリセロールおよびその誘導体ならびに1つ以上の薬学的に許容される添加剤(excipients)を含んでいる組成物を上記対象に投与することを包含する、方法。
【請求項2】
上記モノラウリン酸グリセロールは、0.0001〜100mg/kgの用量で対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機酸、キレート化剤、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原生生物剤またはこれらの組合せから選択される反応促進剤をさらに含んでいる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1つ以上の上記反応促進剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1つ以上の上記反応促進剤は、アスコルビン酸を含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
薬学的に許容される局所担体をさらに含んでいる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
上記薬学的に許容される局所担体は、プロピレングリコールを含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記薬学的に許容される局所担体は、ポリエチレングリコールを含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
上記薬学的に許容される局所担体は、ワセリンを含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
1つ以上の追加または第2の剤をモノラウリン酸グリセロールの投与の前、投与と同時、または投与の後に投与することをさらに包含する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
上記1つ以上の追加または第2の剤は、抗生物質である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記組成物を投与することは、局所適用によるものである、請求項1〜11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
上記組成物は、植物油をさらに含んでいる、請求項1〜12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
上記植物油は、パーム油、オリーブ油、コーン油、キャノーラ油、ココナッツ油、ダイズ油、小麦麦芽油またはこれらの組合せである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
微生物学的感染は、性的に感染されるものである、請求項1〜14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
上記性感染症は、淋病またはジカ(Zika)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記細菌感染は、ネイセリア(Neisseria)属によって生じる、請求項1〜15の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
上記ネイセリア属はNeisseria gonorrheaeの細菌微生物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記細菌感染は、フラビウイルス属によって生じる、請求項1〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
上記組成物は、
約73.55w/w%のプロピレングリコール;
約25w/w%のポリエチレングリコール400;
約1.25w/w%のヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;および
約1〜25w/w%の生理食塩水および/または水
を含んでいる、請求項1〜19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
上記組成物は、
反応促進剤と、
約73.55w/w%のプロピレングリコール;
約25w/w%のポリエチレングリコール400;
約1.25w/w%のヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;および
約1〜25w/w%の生理食塩水および/または水と、
を含んでいる、請求項1〜20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
上記1つ以上の追加または第2の剤は、細菌Lactobacillus属を含んでいる、請求項1〜21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
上記対象はヒトである、請求項1〜22の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願に対する相互参照〕
本願は、2016年6月11日に出願された米国特許仮出願番号第62/360,561号および2016年8月15日に出願された米国特許仮出願番号第62/375,082号の利益を主張し、各出願の開示は、参照によって本願明細書に援用される。
〔背景技術〕
性感染症(Sexually transmitted diseases (STDs))は、細菌、ウイルスまたは寄生虫によって生じ得る。例としては淋病、陰部ヘルペス、ヒト乳頭腫ウイルス感染、HIV/AIDS、クラミジアおよび梅毒が挙げられる。淋病は細菌Neisseria gonorrhoeaeによって生じる性感染症である。治療しないと淋病は男性、女性および乳児において、重篤な、時に一生の健康問題の要因となり得る。例えば、男性において、淋病は、副睾丸炎を合併し、稀な場合では、不妊の要因となる。女性では、骨盤内炎症疾患、慢性骨盤痛、子宮外妊娠、死産および卵管妊娠の主要な要因となる。感染した母親の乳児は、失明の原因になる新生児眼感染症の要因となり得る。淋病は、血液に拡散して、通常、皮膚炎−関節炎症候群、腱滑膜炎、およびより稀には、菌血症、髄膜炎または心内膜炎によって特徴づけられる汎発する淋菌感染の原因となり、生命にかかわり得る。また、淋病感染はHIVの感染を促進する。
【0002】
近年、ヒトにおけるジカ(Zika)ウイルス感染が増加している。ジカは、性的感染されることが示されている。ジカウイルスは、フラビウイルス属の節足動物媒介ウイルス(アルボウイルス)であり、エンベロープウイルスである。ウイルスは、非ヒトの霊長類および蚊から最初に単離された。ジカはAedes aegypti(ネッタイシマカ)のメスの蚊によって最初に拡散される。
〔発明の概要〕
開示されているのは、微生物感染を治療するための組成物および方法である。本発明の一局面で開示しているのは、対象における性感染症の治療または予防方法であって、当該性感染症は細菌、真菌または原生生物によって生じるものであり、当該方法は、有効量の、モノラウリン酸グリセロールおよびその誘導体ならびに1つ以上の薬学的に許容される添加剤(excipients)を含んでいる組成物を対象に投与することを包含する、方法である。
【0003】
本発明の一局面で開示しているのは、有効量の、モノラウリン酸グリセロールおよびその誘導体ならびに1つ以上の薬学的に許容される添加剤(excipients)を含んでいる、性感染症の治療における組成物の使用である。
〔発明を実施するための形態〕
開示されているのは組成物および当該組成物を用いた微生物感染の治療方法である。組成物は、モノラウリン酸グリセロール(glycerol monolaurate (GML))を含んでおり、例えば局所投与によって投与され得る。本明細書に記載されている組成物および方法は、一実施形態において、例えば、有効量のGMLまたはその誘導体の、対象(例えばヒト)の皮膚または粘膜表面への送達を促進することによって、局所的に、感染症を治療するために用いられる。組成物は、従来用いられている抗微生物化合物および抗ウイルス化合物の局所調合物と比較して、組成物の低刺激性による局所的な自己投与について、優れた患者のコンプライアンスをもたらす。
【0004】
本明細書に用いられるとき、「抗微生物の」とは、微生物の増殖または病原性の影響を予防、抑制または阻止することにおける効果を意味している。「微生物(Microorganism)」は任意の細菌、真菌または原生生物を意味するために本明細書に用いられる。
【0005】
本明細書に用いられる、「抗細菌性」または「抗真菌性」または「抗ウイルス性」または「抗原生生物性」は、細菌、真菌、ウイルスまたは原生生物の増殖の抑制または阻止を指しており、細菌、真菌、ウイルスまたは原生生物の死滅または細菌、真菌、ウイルスまたは原生生物それぞれの病原性の影響の低減または抑制を誘導することによる、
細菌性または真菌性またはウイルス性または原生生物性疾患の重症度の軽減または発症の可能性の低減を指している。
【0006】
本明細書に用いられる用語「有効量」は、有益な、または所望の抗微生物活性に影響するのに十分な量のことを指し、微生物を死滅させるまたは微生物の感染、増殖または毒性を抑制することを含むがこれらに限定されない。
【0007】
用語「治療する」「治療」「治療すること」は、有益なまたは所望の結果(例えば臨床結果)を得るための手法を指す。本願の目的として有益または所望の結果としては、微生物の増殖を抑制することまたは阻害すること、または微生物を死滅させること、微生物が細胞または対象に感染する過程のなかで1つ以上の過程を抑制すること、微生物感染によって生じる疾患または状態を抑制または改善すること、またはこれらの組合せが挙げられ得る。用語「治療する」「治療」「治療すること」は、感染の予防も指している。
【0008】
本明細書に用いられる「予防」は、感染または疾患の完全な予防、または感染または疾患の症状の発症の予防、感染または疾患またはその症状の発症における遅延、またはその後発症した感染または疾患またはその症状における重症度の軽減を意味し得る。
【0009】
本明細書に用いられる「対象」は、ヒトおよび他の動物を包含する。
【0010】
本明細書に用いられる「局所の」は任意の皮膚または粘膜表面への組成物の適用を指す。
【0011】
「皮膚表面」は、脊椎動物の体の保護的な外側の被覆を指し、一般的に表皮細胞の層および真皮細胞の層を含んでいる。本明細書に用いられる「粘膜表面」は、粘液を分泌する組織の裏打ちまたは体の空洞を指し、口腔、膣、直腸、胃腸、および鼻腔の表面が挙げられるがこれらに限定されない。
【0012】
本明細書に用いられる「薬学的に許容される局所担体」は、過度の毒性、刺激またはアレルギー反応なしに皮膚または粘膜表面に適用され得る物質、希釈剤またはビヒクルを指す。
【0013】
「薬学的に許容される添加剤」は、一般的に安全で非毒性、かつ生物学的でも望ましくないものでもない薬学的な組成物の調製において有効な添加剤を意味しており、脊椎動物への使用ならびにヒトの薬学的な使用のために許容される添加剤が挙げられる。本願において用いられる「薬学的に許容される添加剤」としては、1つおよび1つ以上のうち両方のそのような添加剤が挙げられる。
【0014】
本明細書に用いられる「スワブ」は、皮膚または粘膜表面への液体、ゲル、ワックス、クリームまたはローションの適用に好適な材料、皮膚または粘膜表面への液体、ゲル、ワックス、クリームまたはローションを適用する動作、または、皮膚または粘膜表面からの液体、ゲル、ワックス、クリーム、ローションまたは体液の収集の動作を指す。
【0015】
本明細書に用いられる用語「植物油」は、室温で液体の形態で存在する植物または種子から抽出した物質を意味している。
【0016】
本明細書に用いられる用語「反応促進剤」は、組成物に添加されたときに組成物の抗微生物学的特性を向上させる、または当該特性に貢献する効果を有する化合物、物質、液体、粉末または混合物を指す。
【0017】
本明細書に用いられるとき「セルロース誘導体」は、セルロースベースの化合物であり、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはセルロースアセテートが挙げられる。
【0018】
一実施形態において、本発明は、モノラウリン酸グリセロール(GML)またはその誘導体を含んでいる局所組成物を提供する。さらなる実施形態において、組成物は、植物油または非水性ゲルまたはこれらの組合せを含んでいる。ある辞し形態の非水性ゲルは、セルロース誘導体を含んでいる。本明細書に示される局所組成物は、一実施形態において、薬学的に許容される局所担体を含んでいる。
【0019】
一実施形態において、本明細書において提供される組成物は、モノグリセリドGMLを含んでいる。GMLは、グロセロールの脂肪酸エステルであり、化学式C
15H
30O
4のラウリン酸の誘導体である。GMLは、ラウリン酸グリセリルまたはモノラウリンとしても当技術分野において知られている。GMLは、母乳およびいくつかの植物中に天然に見いだされ、食物および化粧品添加物として用いられている。GMLおよび他のグリセリドは、米国食品医薬品局によるGenerally Recognized as Safe Substances中に列挙されている。GMLおよび関連化合物は以前に米国特許出願第10/579,108号(2004年11月10日出願)および第13/866,722号(2013年4月19日出願)および米国特許第8,796,332号(2005年8月2日出願)に開示されており、このそれぞれの開示は、全ての目的について参照によって本明細書に援用される。
【0020】
GMLは、RおよびS光学異性体を含む複数の形態、ならびに1位/3位および2位においてラウリン酸を有する形態において合成され得る。本明細書に提供される組成物は、ある実施形態において、GMLのR異性体である。別の実施形態において、本明細書に提供される組成物は、GMLのS異性体である。さらに別の実施形態において、異性体のラセミ混合物が組成物中に提供される。
【0021】
同様に、局所組成物は、1位/3位においてラウリン酸を有するGML、2位においてラウリン酸を有するGML、またはこれらの組合せを含み得る。それぞれの形態のRおよびS異性体およびそれらのラセミ混合物は、本願組成物との使用のために適用可能である。
【0022】
1位/3位においてラウリン酸を有するGMLの化学構造は、以下の通りである。
【0023】
【化1】
モノラウリン酸グリセロール(GML)1位/3位
2位においてラウリン酸を有するGMLの化学構造は、以下の通りである。
【0024】
【化2】
モノラウリン酸グリセロール(GML)2位
別の実施形態において、局所組成物は、GML誘導体、例えば、式I〜VIのうちの1つから選択される化合物を含む。そのような化合物としては、実施例の方法では、モノラウリン酸グリセロール、グリセロールモノカプリル酸、グリセロールモノカプリン酸、グリセロールモノミリスチン酸、グリセロールモノパルミチン酸およびドデシルグリセロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
【化3】
ここでXのそれぞれの発生は、独立して−O−または−S−であり、nは5〜20の整数である(全て含んでいる)。
【0026】
別の実施形態において、局所組成物は、少なくとも1つのGML誘導体を含んでおり、当該少なくとも1つのGML誘導体は、式Vまたは式VIいずれかの化合物である。そのような化合物の例としては、グリセロールジラウリン酸、グリセロールジカプリル酸、グリセロールジミリスチン酸、グリセロールトリラウリン酸およびグリセロールトリパルミチン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
【化4】
ここでXのそれぞれの発生は、独立して−O−または−S−であり、nそれぞれの発生は独立して5〜20の整数である(全て含んでいる)。
【0028】
一実施形態において、式I、II、IIIまたはIVの化合物は、本発明の局所組成物中に存在しており、少なくとも1つの−X−は−S−である。一実施形態において、−X−の1つの発生は−S−であり、残りの−X−の発生は−O−である。
【0029】
一実施形態において、式VまたはVIの化合物は、本発明の局所組成物中に存在しており、nのそれぞれの発生は10であり、少なくとも1つの−X−は−O−である。
【0030】
本明細書に提供される局所組成物は、一実施形態において、GMLおよびGML誘導体を含んでいる。例えば、一実施形態において、本明細書に提供される局所組成物は、GMLおよび式VIの化合物を含んでいる。さらなる実施形態において、nのそれぞれの発生は、10であり、少なくとも1つの−X−は−O−である。
【0031】
一実施形態において、局所組成物は、GMLまたはその誘導体を組成物の0.001%(w/v)〜約10%(w/v)含んでいる。さらなる実施形態において、GMLまたはその誘導体を組成物の0.005%(w/v)〜約5%(w/v)含んでいる。また、さらなる実施形態において、GMLまたはその誘導体を組成物の約0.01%(w/v)〜約1.0%(w/v)含んでいる。また、さらなる実施形態において、GMLまたはその誘導体を組成物の約0.05%(w/v)〜約0.5%(w/v)含んでいる。
【0032】
別の実施形態において、局所組成物は、GMLまたはその誘導体を約10μg/mL〜約100mg/mLの濃度で含んでいる。さらなる実施形態において、局所組成物は、GMLまたはその誘導体を約50μg/mL〜約50mg/mLの濃度で含んでいる。さらなる実施形態において、局所組成物は、GMLまたはその誘導体を約100μg/mL〜約10mg/mLの濃度で含んでいる。またさらなる実施形態において、局所組成物は、GMLまたはその誘導体を約500μg/mL〜約5mg/mLの濃度で含んでいる。
【0033】
一実施形態において、局所組成物は、GMLまたはその誘導体を約10μg/mL、約50μg/mL、約100μg/mL、約500μg/mL、約1mg/mL、約5mg/mL、約10mg/mL、約50mg/mLまたは約100mg/mLの濃度で含んでいる。有効量のGMLは約10μg/mL、約50μg/mL、約100μg/mL、約500μg/mL、約1mg/mL、約5mg/mL、約10mg/mL、約50mg/mLまたは約100mg/mLである。
【0034】
組成物中のGMLまたはその誘導体の量は、治療される指標/疾患ならびに治療される対象の性質に従って適合され得る。組成物中のGMLまたはその誘導体の量は、例えば、感染または疾病の性質、投与の部位、対象の病歴、対象の体重、年齢、性別、治療される表面領域および対象が任意の他の薬物治療を受けているかどうかに依存して異なり得る。
【0035】
上記で示されているように、一実施形態は、GMLまたはその誘導体を含む局所組成物に関する。一実施形態において、局所組成物は、少なくとも1つのグリコールを含んでいる。例えば、一実施形態において、局所組成物は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはそれらの組合せを含んでいる一実施形態において、ポリエチレングリコールは、約300〜約10,000の分子量(MW)の範囲を有する。さらなる実施形態において、ポリエチレングリコールは、約300〜約1,000の分子量の範囲を有する。また、さらなる実施形態において、ポリエチレングリコールは、約400の分子量を有する。
【0036】
一実施形態において、ポリエチレングリコールが局所組成物に存在している。さらなる実施形態においてポリエチレングリコールは、約400、約500または約1,000の分子量を有する。一実施形態において、ポリエチレングリコールは約15%〜約50%、約20%〜約40%または約25%〜約35%、例えば、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%の濃度(w/w)で局所組成物中に存在している。さらなる実施形態において、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールが局所組成物中に存在している。さらなる実施形態において、プロピレングリコールは、約70%〜約80%の濃度で存在しており、ポリエチレングリコールは、約20%〜約30%の濃度で存在している。またさらなる実施形態において、ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール400である。
【0037】
別の実施形態において、GMLまたはその誘導体を含んでいる局所組成物が提供されている。さらなる実施形態において、プロピレングリコールが組成物中に存在している。またさらなる実施形態において、プロピレングリコールは、約60%〜約80%、例えば、約60%、約65%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、または約80%の濃度で組成物中に存在している。
【0038】
いくつかの実施形態において、プロピレングリコールは、拡散して膣、子宮、卵管および尿道などの種々の生殖器官を被覆することを助けることができる。この効果的な拡散は、ネイセリア(Neisseria)属由来の細菌などの細菌および真菌、ウイルスおよび原生生物などの他の微生物の排除を促進させ得る。当業者は、例えば、Barnhart K、Pretorius ES、Stolpen A、Malamud D、2001 Distribution Of Topical Medication In The Human Vagina As Imaged By Magnetic Resonance Imaging、Fertil Steril 76:189-195; Barnhart KT、Stolpen A、Pretorius ES、Malamud D. 2001、Distribution Of A Spermicide Containing Nonoxynol-9 In The Vaginal Canal And The Upper Female Reproductive Tract、Hum Reprod 16:1151-1154; Pretorius ES、Timbers K、Malamud D、Barnhart K. 2002、Magnetic Resonance Imaging〜Determine The Distribution Of A Vaginal Gel: Before、During、And After Both Simulated And Real Intercourse、Contraception 66:443-451; and Mauck CK、Katz D、Sandefer EP、Nasution MD、Henderson M、Digenis GA、Su I、Page R、Barnhart K. 2008、Vaginal Distribution Of Replens And K-Y Jelly Using Three Imaging Techniques、Contraception 77:195-204において示されているように効果的な拡散を達成するであろう。いくつかの実施形態において、効果的な拡散によりフラビウイルス属由来などのウイルスの排除を促進し得る。
【0039】
一実施形態において、局所組成物は、少なくとも1つのセルロース誘導体を含んでいる。さらなる実施形態において、組成物は、1つのセルロース誘導体または2つのセルロース誘導体を含んでいる。一実施形態において、セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロースである。別の実施形態において、セルロース誘導体は、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシメチルセルロースである。さらに別の実施形態において、組成物は、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースの組合せを含んでいる。一実施形態において、セルロース誘導体は、約0.1%(w/w)〜約5.0%(w/w)の濃度で存在している。さらなる実施形態において、2つのセルロース誘導体が存在しており、それぞれは、約1.25%(w/w)の濃度で存在している。セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはセルロースアセテートが挙げられる。
【0040】
一実施形態において、本明細書に提供される局所組成物は、GMLまたはその誘導体、少なくともの1つのセルロース誘導体、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールを含んでいる。
【0041】
別の実施形態において、GMLまたはその誘導体を含んでいる局所組成物が提供される。さらなる実施形態において、組成物は、少なくとも1つの植物油、例えば上記した植物油の少なくとも1つ(例えば、パーム油、オリーブ油、コーン油)を含んでいる。
【0042】
好適な植物油としては、パーム油、オリーブ油、コーン油、キャノーラ油、ココナッツ油、ダイズ油、小麦麦芽油、ホホバ油、ヒマワリ油、ゴマ、ピーナッツ、綿実、ベニバナ、ダイズ、ナタネ、アーモンド、ブナの実、カシュー、ヘーゼルナッツ、マカダミア、モンゴンゴナッツ、ペカン、マツの実、ピスタチオ、クルミ、グレープフルーツ種子、レモン、オレンジ、ニガウリ、ヒョウタン、バッファローカボチャ、バターナッツ種子、エグシ種子、カボチャ種子、スイカ種子、アサイー、ブラックシード、クロフサスグリ種子、ボリジ種子、マツヨイグサ、亜麻仁、ユーカリ、アマランス、アプリコット、リンゴ種子、アルガン、アボカド、ババス、コリアンダー種子、ブドウ種子、マスタード、ケシの実、米糠、トウゴマまたはこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。混合物は、実施例の方法により、またこれに限定されることなく、オリーブ油およびダイズ油の組合せ、ココナッツ油および小麦麦芽油の組合せ、またはホホバ油、パーム油およびヒマシ油の組合せであり得る。植物油の混合物は2つ、3つ、4つまたはそれ以上の混合物であり得る。
【0043】
一実施形態において、植物油は、約0.1%(w/w)〜約10%(w/w)の濃度で組成物中に存在している。さらなる実施形態において、植物油は、約1%(w/w)〜約8%(w/w)の濃度で組成物中に存在している。さらなる実施形態において、植物油は、約1%(w/w)〜約6%(w/w)の濃度で組成物中に存在している。さらなる実施形態において、植物油は、約1%(w/w)〜約4%(w/w)の濃度で組成物中に存在している。一実施形態において、植物油は、約0.1%(w/w)、約0.5%(w/w) 約1.0%(w/w)、約1.25%(w/w)、約1.5%(w/w)、約1.75%(w/w)、または約2.0%(w/w)の濃度で組成物中に存在している。
【0044】
一実施形態において、本明細書に提供される局所組成物は、植物油および少なくとも1つのセルロース誘導体を含んでいる。例えば、一実施形態において、局所組成物は、ヒドロキシプロピルセルロースおよび植物油、またはヒドロキシエチルセルロースおよび植物油、またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび植物油の組合せを含んでいる。一実施形態において、セルロース誘導体および植物油(例えばパーム油およびコーン油)は、それぞれ同一の濃度(w/w)で存在している。さらなる実施形態において、セルロース誘導体および植物油は、約1%(w/w)〜約5%(w/w)の濃度で存在している。さらなる実施形態において、セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの組合せであり、それぞれは約1.25%(w/w)の濃度で組成物中に存在している。一実施形態において、組成物は植物油および2つのセルロース誘導体を含んでいる。さらなる実施形態において、2つのセルロース誘導体はヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースである、組成物中のセルロース誘導体の総濃度は、約1.25%(w/w)である。セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはセルロースアセテートが挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される組成物は、1つ以上の反応促進剤を含んでいる。さらなる実施形態において、反応促進剤は、有機酸、キレート化剤、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原生生物剤またはこれらの組合せである。またさらなる実施形態において、反応促進剤はEDTAである。
【0046】
反応促進剤は、一実施形態において、EDTAである。さらなる実施形態において、本明細書に提供されるGML組成物は、EDTAを約0.00005M、約0.0005M、約0.005または約0.05Mの濃度で含んでいる。別の実施形態において、キレート化剤は、約0.00005M〜約0.05M、約0.0005M〜約0.005M、または約0.005〜約0.05Mの濃度で組成物中に存在している。
【0047】
一実施形態において、局所組成物は、食物油および反応促進剤、例えば、パーム油およびEDTAの両方を含んでいる。別の実施形態において、反応促進剤は有機酸であり植物油との調合物において存在している。一実施形態において、本明細書に提供される局所組成物は反応促進剤および非水性ゲル(例えばセルロース誘導体を含んでいるゲル)を含んでいる。別の実施形態において、局所組成物はGMLまたはその誘導体、植物油、非水性ゲル(例えば1つ以上のセルロース誘導体を含んでいるゲル)および反応促進剤を含んでいる。
【0048】
一実施形態において、組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤を含んでいる。薬学的に許容される添加剤は当業者によく知られており、緩衝液(例えばリン酸緩衝液およびクエン酸緩衝液)アミノ酸、アルコール、タンパク質(血清アルブミンなど)、パラベン(例えばメチルパラベン)またはマンニトールが挙げられる。
【0049】
一実施形態において、組成物のpHは約3.5〜約7.0である。さらなる実施形態において、組成物のpHは約4.0〜約6.0である。また、さらなる実施形態において、組成物のpHは約4.0〜約4.5である。
【0050】
一実施形態において、本明細書に提供される組成物は、GMLまたはその誘導体および薬学的に許容される局所担体を含んでいる。一実施形態において、薬学的に許容される局所担体は、例えばパラフィン蝋またはワセリンなどの炭化水素の混合物である。ワセリンは、水に不溶性、疎水性、半固体の任意の炭化水素の混合物である。薬学的に許容される局所担体は本明細書に記載されている調合物の何れかに添加され得る。
【0051】
別の実施形態において組成物は、水性溶媒を含んでいる。水性溶媒を含んでいる組成物は、薬学的に許容される局所担体を含んでいてもいなくてもよい。一実施形態において、水性用溶媒が存在しており、水、生理食塩水、増殖培地(例えば微生物の培養培地または細胞培養培地)またはこれらの組合せである。さらなる実施形態において、水性溶媒および薬学的に許容される局所担体の両方が局所組成物中に存在している。さらなる実施形態において、局所組成物は少なくとも1つのセルロース誘導体を含んでいる。
【0052】
一実施形態において、組成物は、水性溶媒としてのTodd Hewitt培地などの細菌培養培地を含んでいる。一実施形態において、水性溶媒は、約1%(w/w)〜約25%(w/w)の濃度で存在している。さらなる実施形態において、水性溶媒は、組成物の約2%(w/w)〜5%(w/w)である。
【0053】
一実施形態において、組成物は、液体の組成物である。別の実施形態において、組成物はゲルである。別の実施形態において、組成物は固体、半固体、泡沫、ワックス、クリームまたはローションである。
【0054】
一実施形態において組成物は表1で示されている調合物の1つを含んでいる。
【0055】
一実施形態において、植物油はパーム、オリーブまたはコーンの植物油である。表1は開示された明細書に用いられる組成物成分および濃度の単なる例示であることに留意すべきである。
【0056】
【表1】
一実施形態において提供されているのは、それを必要とする対象における微生物感染の治療方法である。微生物感染は、一実施形態において、細菌感染、ウイルス感染、もしくは原生生物感染またはこれらの組合せである。一実施形態において、微生物感染は細菌によって生じる。別の実施形態において提供されているのは、それを必要とする対象におけるウイルス感染の治療方法である。一実施形態において、微生物感染は真菌によって生じる。一実施形態において、微生物感染は原生生物によって生じる。
【0057】
いくつかの実施形態において、微生物感染の治療方法は、性的に感染する微生物学的感染である。いくつかの実施形態において、性感染症は淋病またはジカまたは両方である。
【0058】
いくつかの実施形態において細菌感染は、ネイセリア属によって生じる。典型的な種としてはNeisseria gonorrheaeが挙げられる。いくつかの実施形態において、組成物は、Neisseria gonorrhoeaeによって生じる感染、および子宮頸部感染、尿道感染、直腸感染および咽喉感染、多剤耐性感染、ならびに非複合および複合感染が挙げられるがこれらに限定されない感染を治療するために用いられる。
【0059】
一実施形態において、微生物感染は、蚊の中腸上皮細胞、続いてその唾液腺細胞中で複製する細菌ジカウイルスによって生じる。5〜10日後、ジカウイルスは、蚊の唾液に見いだされ、それが続いてヒトに感染する。蚊の唾液がヒトの皮膚に接種された場合、ウイルスは、当該皮膚における上皮のケラチン生成細胞、皮膚の繊維芽細胞およびランゲルハンス細胞に感染し得る。ウイルスの病原性はリンパ節および血流に拡散し続けるという仮説が立てられている。フラビウイルスは、一般的に細胞質中で複製するが、ジカ抗原は感染した細胞の核において見られた。また、ジカウイルスはヒトにおいて性的に感染することが示されている。
【0060】
いくつかの実施形態において、微生物感染の治療方法は、性的に感染した微生物学的感染の治療方法である。いくつかの実施形態において、性感染症はトリコモナス症である。
【0061】
開示されているのは組成物、ウイルス感染(例えば本明細書に記載されているウイルスによって生じる)の治療方法である。組成物は、例えば局所投与によって投与され得るモノラウリン酸グリセロール(GML)を含んでいる。組成物および方法は、一実施形態において、局所的に、例えば有効量のGMLまたはその誘導体の、対象(例えばヒト)の皮膚または粘膜表面への促進された送達によって、ウイルス感染の治療のために用いられる。特定の実施形態において、ウイルス感染は以下の群:一本鎖RNAウイルス、フラビウイルス科のウイルス(例えばジカ)の1つ以上のメンバーであるウイルスによって生じ得る。特定の実施形態において、ウイルス感染はジカウイルスによって生じる。
【0062】
本明細書に記載されているGML局所組成物は、現状適用されている抗微生物組成物より低刺激であるので、それゆえ現在当技術分野で用いられている他の抗微生物組成物と比較してよりこの好ましい患者のコンプライアンスをもたらし得る。
【0063】
一実施形態において、方法は、本明細書に記載されているように、GMLまたはその誘導体を含む局所組成物を対象に投与することを包含している。一実施形態において方法は、GMLまたはその誘導体(例えば式I〜VIの化合物)、植物油、および薬学的に許容される局所担体を含んでいる、有効量の局所組成物を、対象に局所的に投与することを包含している。別の実施形態において、方法は、GML、非水性ゲルおよび薬学的に許容される局所担体を含んでいる、有効量の局所組成物を局所的に投与することを包含している。さらに別の実施形態において、方法は表1に示される化合物のうちの1つを対象に投与することを包含している。
【0064】
一実施形態において、微生物感染の治療方法は、有効量の、本明細書に記載したGML組成物の1つ以上を、対象の皮膚または粘膜表面の少なくとも1つに適用することを包含している。一実施形態において微生物感染の治療方法は、歯および歯茎、皮膚、鼻腔または膣の領域に局所的に投与される。
【0065】
いくつかの実施形態において、組成物は、ワイプ、スポンジ、スワブまたは他の材料に塗布または含ませられて、それぞれの材料を用いて対象の皮膚または粘膜表面に適用される。いくつかの実施形態において、材料は、ホルダー、例えば棒、ワイヤ、ロッドまたは塗布器具に装着される。さらなる実施形態において、ホルダーに装着された材料はその一端または両端において装着される。いくつかの実施形態において、ワイプ、スポンジ、または他の材料はあらかじめ組み込まれているか、組成物と共に包装されている。
【0066】
GMLは以下を包含するがこれらに限定されない、いくつかの機構のうちの1つ以上を通じた微生物感染を抑制する:直接的微生物毒性、脊椎動物細胞への感染微生物の侵入の抑制、微生物の増殖の抑制、毒素などの毒性因子の生産または活性の抑制、脊椎動物細胞の安定化、または抑制しなければ感染の工程を促進する、炎症または免疫刺激の伝達物質の誘導の抑制。
【0067】
バクテリアは環境変化および毒性因子の生産に応答し適応するために2成分制御系シグナル伝達を用いる。GMLは、GMLは細菌のシグナル伝達を、細菌の原形質膜との相互作用を通じて直接または間接的に妨害する。一実施形態において、GMLの殺菌効果は細菌の原形質膜における相互作用によって少なくとも部分的に仲介される。さらなる実施形態において、GMLは細菌の原形質膜との相互作用において検出され得るが、細胞質との相互作用においては検出され得ない。
【0068】
一実施形態において、細菌の膜の直接的GML仲介型の妨害は、膜中のシグナリングタンパク質の局在への干渉またはシグナリングタンパク質へのリガンド結合への干渉を含んでいる。一実施形態において、GMLは、2成分制御系伝達系における間接的な効果を有しており、当該効果はシグナリング機能を発揮するための膜貫通タンパク質の能力を干渉する、膜構造への改変、細菌の原形質膜ポテンシャルの消失、および膜を横断するpH勾配の変化から選択される。
【0069】
さらなる実施形態において、患者は組成物の局所適用に前に長期の抗生物質治療を受けている。
【0070】
いくつかの実施形態において、対象は、細菌感染を有する。本明細書に提供される局所組成物で治療可能な細菌感染としては、ネイセリア属(例えばNeisseria gonorrheae)によって生じる感染が挙げられる。
【0071】
細菌、ウイルスまたは真菌感染の同定および診断方法は当業者に一般的に知られている。本明細書に開示されている調合物が感染を治療するために有効であるかどうか評価するために、当業者に公知の方法が採用される。例えば、治療前および治療後の淋菌感染は膣細胞の顕微鏡試験によって評価され得る。
【0072】
ウイルス感染の同定及び診断方法も、当業者によって一般的に知られている。調合物が感染を治療するために有効であるかどうか評価するために、当業者に公知の方法が採用される。例えば、治療前および治療後のウイルス感染はウイルスの単離またはRNA検出によって評価され得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、GMLまたはGMLの誘導体とともに、第2のまたは追加の活性剤を投与することを包含している。追加の活性剤は、本明細書に記載されている組成物中に存在し得るか、別々に投与され得る。一実施形態において、1つ以上の追加の活性剤は、局所のGML組成物が投与される前または後に投与される。例えば、2つの活性剤は、連続的に局所的に投与されるか、異なる投与経路によって連続的に投与され得る。
【0074】
一実施形態において追加の(複数の)活性剤は組成物の投与の前、投与の間、投与後に投与される。別の実施形態において、追加の活性剤は、組成物と同じ経路によって、または異なる経路によって投与される。例えば追加の(複数の)活性剤は、一実施形態において、以下の投与経路のうちの1つによって投与される:局所、鼻腔内、皮内、静脈内、筋肉内、経口、経腟、直腸、眼内、眼(ophthalmic)、皮下。
【0075】
追加の活性剤の用量は、例えば感染または疾病の性質、投与の部位、対象の体重、年齢、性別および表面領域、同時の投薬治療、および医師の判断に依存する。
【0076】
追加の活性剤としては、例えば、抗生物質、抗ウイルス剤および抗真菌剤が挙げられる。抗生物質としては、アミノグリコシド、カルバセヘム、セファロスポリン、グリコペプチド、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルフルラミドおよびテトラサイクリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
抗生物質としては、アゾール類、ポリエン類またはエキノキャンディン(echinocanins)類、ヌクレオシドアナログ、アリールアミン、グリセオフルビン、トルナフテート、またはセレン化合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0078】
抗ウイルス剤としては、例えば、これらに限定されないが、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、アバカビル、エノフォビル、ラミブジン、エムトリシタビジン、ジドブジン、テノフォビル、エファビレンツ、ラルテグラビル、エンフビルチド、マラビロク、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、インターフェロン、オセルタムビルおよびザナミビルが挙げられる。
【0079】
一実施形態において、本発明は、モノラウリン酸グリセロール(GML)またはその誘導体および植物油を含んでいる組成物に関する。一実施形態において、植物油は、パーム、オリーブ、コーン、キャノーラ、ココナッツ、ダイズもしくは小麦またはこれらの組合せである。さらなる実施形態において、植物油は、約10%〜約99%、約20%〜約90%、約30%〜約80%,または約40%〜約70%の濃度で組成物中に存在している。一実施形態において、GMLまたはその誘導体および植物油を含んでいる組成物は、薬学的に許容される担体、例えばワセリンをさらに含んでいる。一実施形態において、GMLまたはその誘導体は約10μg/mL〜約100mg/mL、約50μg/mL〜約50mg/mL、約100μg/mL〜約10mg/mL、または約500μg/mL〜約5mg/mLの濃度で組成物中に存在している。別の実施形態において、GMLまたはその誘導体および植物油を含んでいる組成物は、セルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースの何れかまたはそれらの組合せをさらに含んでいる。さらなる実施形態において、組成物中のセルロース誘導体は1.25%w/wまでで存在している。
【0080】
別の実施形態において本発明は、GMLまたはその誘導体および非水性ゲルを含んでいる組成物に関する。一実施形態において、GMLまたはその誘導体および非水性ゲルを含んでいる組成物は約4.0〜約4.5のpHを有している。一実施形態において、非水性ゲルは、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはこれらの組合せを含んでいる。さらなる実施形態において、ポリエチレングリコールは、組成物中に約25%w/wで存在している。一実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースは、それぞれ約1.25%w/wの濃度で組成物中に両方とも存在している、
一実施形態において、非水性ゲルを含んでいるGML組成物は、約300〜約4000の分子量の範囲でポリエチレングリコールを含んでいる。さらなる実施形態において、ポリエチレンングリコールは、約400または約1000の分子量を有する。
【0081】
一実施形態において、非水性ゲルを含んでいるGML組成物は、局所担体、例えばワセリンを含んでいる。さらなる実施形態において、組成物は植物油を含んでいる。
【0082】
一実施形態において、本明細書に記載されている組成物は、総組成物の約0.001%(w/v)〜約10%(w/v)の濃度でGMLまたはその誘導体を含んでいる。さらなる実施形態において、GMLまたはその誘導体は、組成物の約0.005%(w/v)〜約5%(w/v)で存在している。さらなる実施形態において、GMLまたはその誘導体は、約0.01〜約1%で存在している。さらなる実施形態において、GMLまたはその誘導体は、組成物の約0.1%(w/v)〜約0.5%(w/v)で存在している。
【0083】
一実施形態においてGMLまたはその誘導体は、約10μg/mL〜約100mg/mLの濃度で組成物中に存在している。さらなる実施形態において、GMLまたはその誘導体は組成物の約50μg/mL〜約50mg/mLを含んでいる。さらなる実施形態において、GMLまたはその誘導体は約100μg/mL〜約10mg/mLを含んでいる。またさらなる実施形態において、GMLまたはその誘導体は約500μg/mL〜約5mg/mLを含んでいる。
【0084】
一実施形態において、本明細書に提供されるGML組成物は約65%(w/w)〜約80%(w/w)の濃度でポリエチレングリコールを含んでいる。別の実施形態において、ポリエチレングリコールは、約20%(w/w)〜約35%(w/w)の濃度で組成物中に存在している。一実施形態において、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールが局所組成物中に存在している。
【0085】
一実施形態において組成物はセルロース誘導体を含んでいる。さらなる実施形態において、組成物は、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースを含んでいる。さらなる実施形態においてセルロースは、約0.1%(w/w)〜約5.0%(w/w)の濃度で存在している。
【0086】
一実施形態において、GML組成物は、水性溶媒を含んでいる。さらなる実施形態において、水性溶媒は水、生理食塩水、培地またはそれらの組合せである。
【0087】
一実施形態において、薬学的に許容される局所担体用担体はワセリンである。
【0088】
一実施形態において、本明細書に提供されるGML組成物のpHは約4.0〜約5.5である。
【0089】
いくつかの実施形態において本明細書に提供される組成物は、1つ以上の反応促進剤を含んでいる。反応促進剤は乳酸、アスコルビン酸、クエン酸、ギ酸、安息香酸およびシュウ酸が挙げられるがこれらに限定されない有機酸であり得る。反応促進剤は、別の実施形態において、キレート化剤であり、ある実施形態において、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジメルカプロール、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸(DMPS)、αリポ酸(ALA)またはこれらの組合せから選択される。別の実施形態において反応促進剤は、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤またはこれらの組合せから選択される。
【0090】
さらなる実施形態において、反応促進剤は有機酸、キレート化剤、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤またはこれらの組合せである。さらなる実施形態において、反応促進剤はキレート化剤である。またさらなる実施形態において反応促進剤はEDTAである。
【0091】
別の実施形態において、本明細書に提供されるGML組成物は、抗微生物活性、抗ウイルス活性、および/または抗炎症活性を有する。
【0092】
したがって、一実施形態においてはそれを必要とする対象における微生物感染の治療方法である。一実施形態において、方法は、それを必要とする対象に、有効量の本明細書に提供されるGML組成物を局所的に投与することを包含している。
【0093】
一実施形態では、対象の性感染症の治療または予防の方法であって、当該性感染症は、細菌またはウイルスによって生じるものであり、組成物を対象に投与することを包含する方法は、有効量のモノラウリン酸グロセロールおよびその誘導体ならびに1つ以上の薬学的に許容される添加剤を含んでいる。
【0094】
一実施形態において、組成物は、GMLまたはその誘導体、植物油および薬学的に許容される局所担体を含んでいる。別の実施形態において、組成物は、GMLまたはその誘導体、非水性ゲルおよび薬学的に許容される局所担体を含んでいる。さらなる実施形態において、組成物は、GMLまたはその誘導体、植物油、非水性ゲルおよび薬学的に許容される局所担体を含んでいる。
【0095】
一実施形態において、本明細書に開示されている組成物は、スポンジ、ワイプまたはスワブを使用して局所的に適用される。
【0096】
別の実施形態において、本発明の方法は、抗真菌剤、抗ウイルス剤および抗生物質からなる群から選択される第2の活性剤を投与することを包含する。いくつかの実施形態において組成物は、細菌Lactobacillus属を含む1つ以上の追加または第2の剤を含んでいる。他の実施形態において、組成物は、Lactobacillus属由来の細菌を含んでいる。Lactobacillusは、ヒトの消化管、口腔および膣の微生物叢の一部であるグラム陽性桿菌である。Vaginal lactobacilliは、膣の乳酸の産生および酸性化を介した、または過酸化水素H2O2などの抗微生物産物の産生による、感染への耐性において重要な役割を担うと考えられている。優勢な膣のLactobacillus叢を有する女性は淋菌、クラミジア感染、トリコモナス症、細菌性膣症の発現率が50%低い。
【0097】
膣におけるH2O2産生乳酸菌の存在は、細菌性膣症、兆候性の酵母膣症およびNeisseria gonorrhea, Chlamydia trachomatisおよびTrichomonas vaginalisを含む性感染症病原菌の低減された発現率に関連している。インビトロの研究によって、H2O2産生乳酸菌は、膣の病原菌に対し、また、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対しても潜在的な殺菌特性および殺ウイルス特性を有している。
【0098】
一実施形態において、組成物としてはLactobacillus属由来の細菌を含み得る。この属の典型的な種としては、Lactobacillus crispatusおよびLactobacillus jenseniiが挙げられる。いくつかの実施形態において、Lactobacillus株はLactobacillus crispatusの全ての同定した性質を有しており、Lactobacillus crispatus CTV-05およびATCC番号PTA-10138で寄託されているLactobacillus crispatus SJ-3C株が挙げられる。
【0099】
本願を通じて引用されている、すべての、書類、特許、特許出願、公開、製造物の記載およびプロトコルは全ての目的についてこれらの全文において参照によって本明細書に援用されている。
【0100】
本願明細書に例示および説明された実施形態は、発明者に知られた最善の方法を当業者に教示することのみでなく、本発明を作製および使用することも意図している。本発明の上述した実施形態の改変および変更は、上記の教示の観点で当業者に認められるように、発明から外れることなく可能である。したがって、本願請求の範囲およびその同等物において、本発明は詳細に説明されているもの以外にも実施され得ることが理解される。
【手続補正書】
【提出日】2019年3月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における性感染症の治療または予防方法であって、
上記性感染症は、細菌、真菌または原生生物によって生じるものであり、当該方法は、
有効量の、モノラウリン酸グリセロールおよびその誘導体ならびに1つ以上の薬学的に許容される添加剤(excipients)を含んでいる組成物を上記対象に投与することを包含する、方法。
【請求項2】
上記モノラウリン酸グリセロールは、0.0001〜100mg/kgの用量で対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機酸、キレート化剤、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原生生物剤またはこれらの組合せから選択される反応促進剤をさらに含んでいる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1つ以上の上記反応促進剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはアスコルビン酸を含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
薬学的に許容される局所担体をさらに含んでいる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記薬学的に許容される局所担体は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはワセリンを含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の追加または第2の剤をモノラウリン酸グリセロールの投与の前、投与と同時、または投与の後に投与することをさらに包含する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
上記1つ以上の追加または第2の剤は、抗生物質または細菌Lactobacillus属を含んでいる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記組成物を投与することは、局所適用によるものである、請求項1〜8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
上記組成物は、植物油をさらに含んでいる、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
上記植物油は、パーム油、オリーブ油、コーン油、キャノーラ油、ココナッツ油、ダイズ油、小麦麦芽油またはこれらの組合せである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記性感染症は、淋病またはジカ(Zika)である、ネイセリア(Neisseria)属によって生じる、Neisseria gonorrheaeによって生じる、またはフラビウイルス属によって生じる、請求項1〜11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
上記組成物は、
約73.55w/w%のプロピレングリコール;
約25w/w%のポリエチレングリコール400;
約1.25w/w%のヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;および
約1〜25w/w%の生理食塩水および/または水
を含んでいる、請求項1〜12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
上記組成物は、
反応促進剤と、
約73.55w/w%のプロピレングリコール;
約25w/w%のポリエチレングリコール400;
約1.25w/w%のヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;および
約1〜25w/w%の生理食塩水および/または水と、
を含んでいる、請求項1〜13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
上記対象はヒトである、請求項1〜14の何れか一項に記載の方法。
【国際調査報告】