(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-521308(P2019-521308A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(54)【発明の名称】フィード・エフルエント熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/22 20060101AFI20190704BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20190704BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20190704BHJP
【FI】
F28F9/22
F28D7/16 A
F28F9/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-502645(P2019-502645)
(86)(22)【出願日】2017年7月19日
(85)【翻訳文提出日】2019年3月18日
(86)【国際出願番号】US2017042945
(87)【国際公開番号】WO2018017773
(87)【国際公開日】20180125
(31)【優先権主張番号】62/364,112
(32)【優先日】2016年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】391011227
【氏名又は名称】ルマス テクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリニョーネ、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ジッブ、リチャード
【テーマコード(参考)】
3L065
3L103
【Fターム(参考)】
3L065DA04
3L103AA37
3L103BB26
3L103CC26
3L103DD10
3L103DD42
(57)【要約】
とりわけ、熱交換器及び内部チャンバの長手方向軸を画定する細長い円筒形の胴体を含む、多管式熱交換器が開示される。胴体は、供給ガスが内部チャンバを出入りできるように外壁に形成された少なくとも1つの供給ガス入口と供給ガス出口とを有する。少なくとも1つの管板が細長い胴体の一端部に備えられ、複数の円形バッフルが胴体の内部チャンバ内で長手方向に離間し、内部チャンバ内の供給ガス流の方向を変える。熱交換器は、排ガスを入口プレナムから胴体の内部チャンバを通して出口プレナムまで横断させる複数の管を有する管束も含む。また、シュラウド分配器が、供給ガス入口から少なくとも1つの管板に近接する内部チャンバへと供給ガス流を方向付けるように構成、配置される。シュラウド分配器は、供給ガス流を分配するようにその一端部に形成された少なくとも1つの傾斜切れ込みを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器及び内部チャンバの長手方向軸を画定し、供給ガスが前記内部チャンバを出入りできるように外壁に形成された少なくとも1つの供給ガス入口と少なくとも1つの供給ガス出口とを有する、細長い円筒形の胴体と、
前記細長い胴体の一端部に備えられた少なくとも1つの管板と、
前記胴体の前記内部チャンバ内で長手方向に離間し、前記内部チャンバ内の供給ガス流の方向を変える複数の円形バッフルと、
排ガスを入口プレナムから前記胴体の前記内部チャンバを通して出口プレナムまで横断させる複数の管を備える管束と、
前記供給ガス入口から前記少なくとも1つの管板に近接する前記内部チャンバ内へと供給ガス流を方向付けるように構成、配置され、供給ガス流を分配するようにその一端部に形成された少なくとも1つの傾斜切れ込みを有する第1のシュラウド分配器とを備える、多管式熱交換器。
【請求項2】
前記胴体の前記外壁に2つの供給ガス入口と2つの供給ガス出口とが形成される、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第1のシュラウド分配器が、前記供給ガス流を分配するようにその一端部に形成された2つの傾斜切れ込みを有する、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記少なくとも1つのシュラウド分配器が少なくとも1つの円形バッフルを含む、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記シュラウド分配器が、中央窓領域を有したドーナツ型バッフルを含む、請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記シュラウド分配器が、円周封止要素を有したシールド型バッフルを更に含む、請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記少なくとも1つのシュラウド分配器の前記一端部に形成された前記少なくとも1つの傾斜切れ込みが、10度〜30度の傾斜を付けて形成される、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記内部チャンバから前記供給ガス出口へと供給ガス流を方向付けるように構成、配置され、その一端部に形成された少なくとも1つの傾斜切れ込みを有する第2のシュラウド分配器を更に含む、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記複数のバッフルが、交互に配置されるシールド型バッフル及びウイング型バッフルの両方を含む、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項10】
円周封止材が前記複数のバッフルのそれぞれに対応して設けられる、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記円周封止材が、前記バッフルと前記胴体との間に延在する弾性要素を含む、請求項10に記載の熱交換器。
【請求項12】
前記弾性要素が前記バッフルの両側に設けられる、請求項11に記載の熱交換器。
【請求項13】
前記複数の円形バッフルが、直径方向に対向する2つの窓をバッフルプレートに切り込むことで形成されるシールド型バッフルを少なくとも1つ含む、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項14】
前記複数の円形バッフルが、単一の窓をバッフルプレートに切り込むことで形成されるウイング型バッフルを少なくとも1つ含む、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項15】
前記複数の円形バッフルが、円形窓をバッフルプレートに切り込むことで形成されるドーナツ型バッフルを含む、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項16】
熱交換器及び内部チャンバの長手方向軸を画定し、供給ガスが前記内部チャンバを出入りできるように外壁に形成された少なくとも1つの供給ガス入口と供給ガス出口とを有する、細長い円筒形の胴体と、
前記細長い胴体の一端部に備えられた少なくとも1つの管板と、
前記胴体の前記内部チャンバ内で長手方向に離間し、前記内部チャンバ内の供給ガス流の方向を変える複数の円形バッフルであって、それぞれが円周封止材を含んだシールド型バッフルとウイング型バッフルとを含む複数のバッフルと、
排ガスを入口プレナムから前記胴体の前記内部チャンバを通して出口プレナムまで横断させる複数の管を備える管束と、
前記供給ガス入口から前記少なくとも1つの管板に近接する前記内部チャンバへと供給ガス流を方向付けるように構成、配置され、供給ガス流を分配するようにその一端部に形成された少なくとも1つの傾斜切れ込みを有する第1のシュラウド分配器とを備える、多管式熱交換器。
【請求項17】
前記第1のシュラウド分配器が、前記供給ガス流を分配するようにその一端部に形成された2つの傾斜切れ込みを有する、請求項16に記載の熱交換器。
【請求項18】
前記少なくとも1つのシュラウド分配器が少なくとも1つの円形バッフルを含む、請求項16に記載の熱交換器。
【請求項19】
前記シュラウド分配器が、中央窓領域を有したドーナツ型バッフルを含む、請求項18に記載の熱交換器。
【請求項20】
前記シュラウド分配器が、円周封止要素を有したシールド型バッフルを更に含む、請求項19に記載の熱交換器。
【請求項21】
前記少なくとも1つのシュラウド分配器の前記一端部に形成された前記少なくとも1つの傾斜切れ込みが、10度〜30度の傾斜を付けて形成される、請求項16に記載の熱交換器。
【請求項22】
前記内部チャンバから前記供給ガス出口へと供給ガス流を方向付けるように構成、配置され、その一端部に形成された少なくとも1つの傾斜切れ込みを有する第2のシュラウド分配器を更に含む、請求項16に記載の熱交換器。
【請求項23】
前記複数のシールド型バッフルとウイング型バッフルとが交互に配置される、請求項16に記載の熱交換器。
【請求項24】
前記円周封止材が、前記バッフルと前記胴体との間に延在する弾性要素を含む、請求項16に記載の熱交換器。
【請求項25】
前記弾性要素が前記バッフルの両側に設けられる、請求項24に記載の熱交換器。
【請求項26】
直径方向に対向する2つの窓をバッフルプレートに切り込むことで前記シールド型バッフルが形成される、請求項16に記載の熱交換器。
【請求項27】
単一の窓をバッフルプレートに切り込むことで前記ウイング型バッフルが形成される、請求項16に記載の熱交換器。
【請求項28】
円形窓をバッフルプレートに切り込むことで前記ドーナツ型バッフルが形成される、請求項16に記載の熱交換器。
【請求項29】
熱交換器及び内部チャンバの長手方向軸を画定し、供給ガスが前記内部チャンバを出入りできるように外壁に形成された少なくとも1つの供給ガス入口と供給ガス出口とを有する、細長い円筒形の胴体と、
前記細長い胴体の一端部に備えられた少なくとも1つの管板と、
前記胴体の前記内部チャンバ内で長手方向に離間し、前記内部チャンバ内の供給ガス流の方向を変える複数の円形バッフルであって、前記バッフルと前記胴体との間に延在する弾性円周封止材を含む複数のバッフルと、
排ガスを入口プレナムから前記胴体の前記内部チャンバを通して出口プレナムまで横断させる複数の管を含んだ管束と、
前記供給ガス入口から前記少なくとも1つの管板に近接する前記内部チャンバへと供給ガス流を方向付けるように構成、配置され、供給ガス流を分配するようにその一端部に形成された少なくとも1つの傾斜切れ込みを有する第1のシュラウド分配器とを備える、多管式熱交換器。
【請求項30】
弾性要素が前記バッフルの両側に設けられる、請求項24に記載の熱交換器。
【請求項31】
前記弾性要素がステンレス鋼製である、請求項24に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年7月19日付で出願された、フィード・エフルエント熱交換器と題する米国仮出願第62/364,112号に対する優先権を主張し、この出願の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は熱交換器に関し、より具体的には、熱交換効率が改善された多管式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0003】
石油化学製品の製造プロセスの多くは、反応を起こす前に供給ガスを高温まで加熱する必要がある。例えば、エチルベンゼンの脱水素化によるスチレンモノマーの形成や、プロパン又はブタンの脱水素化によるブテン又はブタジエンの形成が挙げられる。供給ガスが必要とする温度とするには、相当量の燃料を加熱炉で燃焼させなければならない。反応器排出物における余分な熱は蒸気として回収されることもある。しかし、多くの場合、このような燃料から蒸気へのエネルギー変換は最も経済的な選択肢ではないため、可能な限り多くの熱をフィード・エフルエント熱交換器内で回収して、プロセスで消費される燃料の量を最小限に抑えることが望ましい。
【0004】
従来の熱交換器に関する方法及びシステムは、概して、それらの本来の目的に対して申し分のないものと考えられてきた。しかし、当該技術分野では、改善されて熱効率がより高い多管式熱交換器を提供するシステム及び方法が未だ求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,215,745号明細書
【発明の概要】
【0006】
本開示は、熱交換効率が改善された熱交換器構造に関する。本開示の第1の実施例は、とりわけ、熱交換器及び内部チャンバの長手方向軸を画定する細長い円筒形の胴体を含む、多管式熱交換器である。胴体は、供給ガスが内部チャンバを出入りできるように外壁に形成された少なくとも1つの供給ガス入口と少なくとも1つの供給ガス出口とを有する。幾つかの構造では、胴体は2つ以上の供給ガス入口と2つ以上の供給ガス出口とを含む。
【0007】
少なくとも1つの管板が細長い胴体の一端部に備えられ、複数の円形バッフルが胴体の内部チャンバ内で長手方向に離間し、内部チャンバ内の供給ガス流の方向を変える。幾つかの構造では、円周封止材が複数のバッフルのそれぞれに対応して配置される。
【0008】
排ガスを入口プレナムから胴体の内部チャンバを通して出口プレナムまで横断させる複数の管を含んだ管束が設けられる。熱交換器は、供給ガス入口から少なくとも1つの管板に近接する内部チャンバ内へと供給ガス流を方向付けるように構成、配置される第1のシュラウド分配器を更に含む。第1のシュラウド分配器は、供給ガス流を分配するようにその一端部に形成された傾斜切れ込みを少なくとも1つ有する。
【0009】
本発明の幾つかの実施例では、胴体の外壁に2つの供給ガス入口と2つの供給ガス出口とが形成される。好適には、こうした構造では、第1のシュラウド分配器は、供給ガス流を分配するようにその一端部に形成された2つの傾斜切れ込みを有する。幾つかの構造では、傾斜切れ込みは180度離間して位置付けられる。
【0010】
少なくとも1つのシュラウド分配器は少なくとも1つの円形バッフルを含んでもよいものとする。好適な実施例では、シュラウド分配器は、中央窓領域を有したドーナツ型バッフルを含む。幾つかの構造では、シュラウド分配器は、円周封止要素を有したシールド型バッフルを更に含む。
【0011】
少なくとも1つのシュラウド分配器の一端部に形成された少なくとも1つの傾斜切れ込みは、10度〜30度の傾斜を付けて形成されるとする。
【0012】
好適な構造では、熱交換器は、内部チャンバから供給ガス出口へと供給ガス流を方向付けるように構成、配置され且つその一端部に形成された少なくとも1つの傾斜切れ込みを有する第2のシュラウド分配器を更に含む。
【0013】
本発明の実施例では、複数のバッフルは、交互に配置されるシールド型バッフル及びウイング型バッフルの両方を含むこととする。
【0014】
好適には、複数の円形バッフルのそれぞれに対応して配置される円周封止材のそれぞれは、バッフルと胴体との間に延在する弾性要素を含む。弾性要素は、バッフルの片側又はバッフルの両側に設けてもよいこととする。
【0015】
幾つかの実施例では、複数の円形バッフルは、直径方向に対向する2つの窓をバッフルプレートに切り込むことで形成されるシールド型バッフルを少なくとも1つ含む。また、複数の円形バッフルは、単一の窓をバッフルプレートに切り込むことで形成されるウイング型バッフルを少なくとも1つ含んでもよい。また、複数の円形バッフルは、円形窓をバッフルプレートに切り込むことで形成されるドーナツ型バッフルを含んでもよい。
【0016】
更に、本開示は、他の要素の中でも特に、熱交換器及び内部チャンバの長手方向軸を画定する細長い円筒形の胴体を含む、多管式熱交換器に関する。胴体は、供給ガスが内部チャンバを出入りできるように外壁に形成された少なくとも1つの供給ガス入口と供給ガス出口とを有する。少なくとも1つの管板が細長い胴体の一端部に備えられ、複数の円形バッフルが胴体の内部チャンバ内で長手方向に離間し、内部チャンバ内の供給ガス流の方向を変え、複数のバッフルは、それぞれが円周封止材を含んだシールド型バッフルとウイング型バッフルとを含む。熱交換器は、排ガスを入口プレナムから胴体の内部チャンバを通して出口プレナムまで横断させる複数の管を含んだ管束を更に含む。また、第1のシュラウド分配器が、供給ガス入口から少なくとも1つの管板に近接する内部チャンバへと供給ガス流を方向付けるように構成、配置され、供給ガス流を分配するようにその一端部に形成された少なくとも1つの傾斜切れ込みを有する。
【0017】
ここで、第1のシュラウド分配器は、供給ガス流を分配するように180度離間して位置付けられてその一端部に形成される2つの傾斜切れ込みを有することとする。幾つかの構造では、少なくとも1つのシュラウド分配器は少なくとも1つの円形バッフルを含む。また、シュラウド分配器は、中央窓領域を有したドーナツ型バッフルを含んでもよい。また、シュラウド分配器は、円周封止要素を有したシールド型バッフルを更に含んでもよい。
【0018】
少なくとも1つのシュラウド分配器の一端部に形成された少なくとも1つの傾斜切れ込みは、10度〜30度の傾斜を付けて形成されてもよいこととする。
【0019】
幾つかの好適な実施例では、熱交換器は、内部チャンバから供給ガス出口へと供給ガス流を方向付けるように構成、配置され且つその一端部に形成された少なくとも1つの傾斜切れ込みを有する第2のシュラウド分配器を更に含む。
【0020】
好適には、複数のシールド型バッフルとウイング型バッフルとが交互に配置される。
【0021】
複数のバッフルのそれぞれに対応して配置される円周封止材は、バッフルと胴体との間に延在する弾性要素を含むこととする。幾つかの構造では、弾性要素はバッフルの両側に設けられる。
【0022】
シールド型バッフルは、直径方向に対向する2つの窓をバッフルプレートに切り込むことで形成されてもよい。ウイング型バッフルは、単一の窓をバッフルプレートに切り込むことで形成されてもよい。また、ドーナツ型バッフルは、円形窓をバッフルプレートに切り込むことで形成される。
【0023】
更に、本開示は、とりわけ、熱交換器及び内部チャンバの長手方向軸を画定する細長い円筒形の胴体を含む、多管式熱交換器に関する。胴体は、供給ガスが内部チャンバを出入りできるように外壁に形成された少なくとも1つの供給ガス入口と供給ガス出口とを有する。少なくとも1つの管板が細長い胴体の一端部に備えられる。複数の円形バッフルが胴体の内部チャンバ内で長手方向に離間し、内部チャンバ内の供給ガス流の方向を変え、複数のバッフルは、バッフルと胴体との間に延在する弾性円周封止材を含む。熱交換器は、排ガスを入口プレナムから胴体の内部チャンバを通して出口プレナムまで横断させる複数の管を含んだ管束を更に含む。また、熱交換器は、供給ガス入口から少なくとも1つの管板に近接する内部チャンバへと供給ガス流を方向付けるように構成、配置され且つ供給ガス流を分配するようにその一端部に形成された少なくとも1つの傾斜切れ込みを有する第1のシュラウド分配器を含む。
【0024】
好適には、弾性要素はバッフルの両側に設けられる。弾性要素は、ステンレス304といったステンレス鋼から作られてもよいこととする。
【0025】
本主題の開示の装置及び方法をどのように製造し利用するかを、本主題の開示に関する当業者が過度の実験をすることなく容易に理解できるようにするため、以下、本明細書において、本開示の好適な実施例を所定の図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】本発明の一実施例に基づいて構成された、傾斜した切れ込みとドーナツ型バッフルとを有した例示的なシュラウド型分配器の立面図を示す。
【
図2A】円形バッフルから2つの窓が切り出された、本開示に基づいて構成された例示的なシールドバッフルの概略図を示す。
【
図2B】円形バッフルから1つの窓が切り出された、本開示に基づいて構成された例示的なウイングバッフルの概略図を示す。
【
図2C】円形バッフルから一部が円形に取り除かれてドーナツ型バッフルを形成する、本開示に基づいて構成された更にもう1つの例示的な円形バッフルの概略図を示す。
【
図3】本開示の一実施例に基づいて構成された、例示的な熱交換器の配置の概略図を示す。
【
図4】本開示の更なる実施例に基づいて構成された、例示的な熱交換器の四半分の断面図を示す。
【
図5】熱交換器バッフルと共に使用される、円周(例えばEストリーム)又は弾性の封止材構造の断面図を示す。
【
図6A】既存の熱交換器の胴側入口における例示的な温度分布形状の概略図である。
【
図6B】
図6Aよりも縮尺を縮小した、本開示に基づいて構成された熱交換器の胴側入口における例示的な温度分布形状の概略図である。
【
図7A】既存の熱交換器の胴側出口における例示的な温度分布形状の概略図である。
【
図7B】本開示に基づいて構成された熱交換器の胴側出口における例示的な温度分布形状の概略図である(局所縮小図)。
【
図7C】本開示に基づいて構成された熱交換器の胴側出口における例示的な温度分布形状の概略図である(同じ縮尺のディスク)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付の図面は必ずしも縮尺通りでなく、本発明の基本原理を示すことができる様々な好適な特性を何らかの形で簡易的に表すものであることを理解されたい。具体的な寸法、配向、配置及び形状といった、本明細書に開示される本発明の具体的な設計特性は、特定の対象用途及び使用環境によってある程度特定されよう。
【0028】
本主題の開示の上記の態様及び他の態様は、当業者には、図面と連携する以下の本発明の詳細な説明から更に容易に明らかとなろう。
【0029】
ここで図面を参照するが、本主題の開示における同様の構造特性又は態様は、同様の参照符号によって同一視される。開示された実施例は、本発明の幾つかの態様を実現できる方法の単なる一例であり、本発明を実施しうる方法全ての包括的な一欄を表すものではないことが理解されよう。また、実際、本明細書に記載のシステム、装置及び方法を多様且つ代替可能な形態で実施してもよいことが理解されよう。また、図面は必ずしも縮尺通りでなく、特定の構成要素の詳細を示すために幾つかの特性が誇張されたり縮小されたりすることもある。
【0030】
本開示が不明瞭になることを防ぐため、既知の構成要素、材料又は方法は必ずしも事細かく説明されない。本明細書に開示される具体的な構造及び機能の詳細のいずれも限定としては解釈されず、単に請求項の根拠として、そして本発明を様々な形で採用するように当業者に教示するための典型的な根拠として解釈される。
【0031】
特に明示又は明記しない限り、「右」、「左」、「上側」、「下側」、「上方」、「下方」等の方向を示す語は、本実施例の1つ目の図面に示すような本発明の特定の実施例の配向に相関するようになっている。
【0032】
一般的に、熱交換器は極めて高い効率を有するべきである。通常、熱交換「効率」と呼ばれる必要とされる効率は、冷却流体から加熱流体へと伝達される熱として、熱回収の最大限の割合として定義される。追加の制約や必要条件がある場合もある。例えば、プロパン又はプロパン−ブタン混合物を脱水素化するCatofin(登録商標)プロセスでは、ガスの圧力損失を可能な限り減らして高選択性を維持するように、圧力が低下した状態で反応を起こす必要がある。
【0033】
多管式熱交換器は、大きな温度差が生じることによる構成要素の熱膨張を許容するように構成できるため、上記のような用途に望ましい。例示的な多管式構造は、一端に固定管板、他端に流動ヘッド管板を含む。一方で、多管式熱交換器は、管及びバッフルの周囲の流体漏洩によって、胴側への流体の分配が不十分となることがある。この不均等分配によって、望ましくない影響が2つ生じる。1つ目は、冷たい流体が加熱された流体と混合することにより熱効率が制限されてしまうことであり、2つ目は、管板の温度を均一にできず、たわみや座屈及びその後の管の損傷を招きうることである。たわみや座屈を防ぐためには、管板を比較的均一な温度に維持する必要がある入口領域及び出口領域における均等な分配が特に重要となる。同様に、熱膨張差による損傷を確実に防ぐためには、個別の管又は管のまとまりを、熱交換器の異なる箇所でも比較的均一な温度に維持する必要がある。
【0034】
本明細書の実施例に記載のフィード・エフルエント熱交換器は、20℃〜100℃の低温供給物が胴側に供給され、高温排出物(例えば400℃〜600℃)が管側に供給される、多管式構造のガス−ガス熱交換器であってもよい。より一般には、一方又は両方の流体の一度の交換における温度変化が200℃より大きく、好適には300℃より大きい熱交換器に適用される。
【0035】
Catofin(登録商標)プロセスで使用されるフィード・エフルエント熱交換器の例では、高温排ガスが管側に割り当てられて、圧力を著しく低下できるようになっている。しかし、著しい圧力低下には、胴側の流体の均一な分配を要する大量の管も必要とされ、熱交換器の設計において特に困難な問題となる。
【0036】
Catofinフィード・エフルエント熱交換器構造に適用される本開示の実施例は、脱水素化プロセスにおいて反応器排出物に対する反応器供給物(通常、プロパン、ブタン又はこれらの混合物)を加熱するのに使用される高い効率のガス−ガス管状フィード・エフルエント熱交換器を示し、この交換器は、極めて高い効率(90%以上)及び、例えば6キロパスカル(kPa)以下の、排ガスの著しい圧力低下を実現する。
【0037】
フィード・エフルエント熱交換器の適用において利用される既存のバッフル技術には、従来のセグメント型バッフルである、単一セグメント型、二セグメント型又はNTIW型といったバッフルが含まれる。他の従来のバッフル技術には、管束上を摺動するディスク型バッフル及びドーナツ型バッフルが含まれる。
【0038】
多管式熱変換器で用いられる、変換器の入口における従来の流れ分配方法は、ロッド又はプレートといった衝突装置によって流れを制御することを含む。しかし、こうした設計は振動に起因する管の損傷を防ぐことはできるが、大型の胴体IDを用いる場合は入口領域及び出口領域の使用が改善されない上、流れ分配が性能に極めて重要となる高効率の熱交換器には適していない。また、熱変形や局所応力を回避するように、管板から胴体接続部まで高い動作温度を均一な温度としなければならない場合、従来のロッド又はプレート型の衝突装置では、ノズル付近の束領域とノズルに対して90度に位置する領域との間に局所的且つ大きな温度勾配を引き起こしやすいため、不十分である。
【0039】
既存の環状分配器の設計は、胴体の外側の環状部を含み、この環状部は外周全体にわたる均一な分配を確保できない。また、こうした構造によって、特に大型の胴体ID及び高圧力の交換器の機械設計がより複雑なものとなる。
【0040】
有利には、以下に詳細に説明するように、本明細書に開示する幾つかの熱交換器の実施例は、それぞれから窓部が切り出された円形バッフルを使用して、全てのバッフルにおける胴体内部と管束との間の軸流を防止するようになっている。また、本明細書に開示する幾つかの実施例では、バッフルと胴体との間の環状間隙内に円周封止アセンブリが設置されて、集中応力の局所領域を作りうる機械的な途切れの発生を抑制する。
【0041】
本明細書の実施例は、胴側の流体の流れの全てが管板上で均一に導かれて、管板の温度差異が最小限となるようになっている熱交換器設計を提供する。また、本明細書の実施例で用いられるバッフルの配置では、全てのバッフルに円周封止を施すことで、窓領域内の管束と胴体との間及びバッフルと胴体との間から流体が漏洩して管束を迂回してしまうことが防止される。流体が管束を迂回するのを防止することで(例えば90%を超える)高い効率が達成され維持されるが、驚くべきことに、この組み合わせによって、直径3メートルの大型の胴体に対しても90%より高い伝熱効率及び15℃未満の管板上の温度差異を実現する、特に有効な設計を提供できることが明らかとなった。先行技術では、管束を迂回して入口から出口に流れる流体がより冷たいことで、管板の外周面を冷却して熱応力を引き起こしやすいことから、解決策が90%未満の効率及び約100℃の管板温度差異に限られている。このため、これら先行技術の解決策はCatofin(登録商標)プロセスのようなプロセスで用いるには不十分である。本明細書に記載の円周封止バッフル設計では上記の迂回が防止されるため、機械的故障を招きうる熱応力が抑制される。有利には、本明細書に記載の熱交換器の実施例は、より高い(90%を超える)熱回収を可能にすると共に、熱応力及びその後の管の故障の原因となりうる、熱交換器全体の温度差異を抑制する。
【0042】
ここで開示される熱交換器での温度分布は、管板全体の温度差異が15℃未満であることから、他の方法と比べて極めて均一である。この想定外の優れた性能は、流体の流路に関係なく、胴側入口ノズルと束の中心との間の流れ抵抗の均等化によるものであり、全てのバッフルに設けることができる円周封止によって更に向上する。本明細書で使用される「円周封止」は、(管と胴体との間の軸流を遮る)バッフル窓構造と、バッフルと胴体との間の軸流を遮る「Eストリーム封止」との組み合わせを指す。
【実施例1】
【0043】
ここで図面を参照する。
図1Aは、本発明の一実施例に基づいて構成された、熱交換器100で使用されるシュラウド型分配器20の例示的な実施例を示す。
図1Bは、熱交換器100の一端部のA−A線に沿った断面図を提供する。熱交換器100は、胴側流体用の2つの入口ノズル52と2つの出口ノズル54とを有する多管式熱交換器であり、胴側流体は管側流体によって加熱できる。当業者には、本開示の発明に関する態様を様々な熱交換器設計に適用でき、これらがフィード・エフルエント熱交換器に限定されないことが容易に理解されよう。例えば、熱交換器は単一の胴側入口及び単一の胴側出口を含んでもよい。また、熱交換器はU字型の管束を有してもよい。
【0044】
Catofin(登録商標)フィード・エフルエント熱交換器の場合、胴側流体が供給物であり、管側流体が高温の反応器排出物である。フィード・エフルエント熱交換器は、利用可能な熱エネルギーの少なくとも90%を排ガスから供給ガスに伝導させることを目的とする。反応の選択性を維持するために、管側の圧力は著しく低下させる必要がある。このために大量の管が存在し、その結果、胴側流速が比較的低くなって良好な流れ分配をもたらさない。同様に、90%を超える高い効率が求められることから、冷たい供給ガスの多くが管を迂回して出口で温かいガスと混合してしまうと、冷たいガスと温かいガスとの混合による熱力学上の非効率性に起因して所要の効率が実現できなくなるため、良好な分配は必要不可欠である。
【0045】
本明細書の実施例では、円形プレートから窓領域が切り出された二セグメント型のバッフルを使用し、好適には、全てのバッフルに円周封止が設けられる。
【0046】
図2A〜
図2Cは、本明細書に開示する熱交換器の実施例で使用できる例示的な円形バッフルを示す。
図2Aは、第1の円形バッフルである、2つのセグメント窓65がプレートの上部及び下部(又はプレートの配向に応じた対向部分)から切り出されたシールドバッフル64を示す。セグメント窓65は、
図2Aに示すような半円形状でもよいし、用途に応じた他の形状でもよい。胴体の間隙に対してバッフルを封止するように、
図2Aに示すシールドバッフルの周囲に円周封止80が使用される。
【0047】
図2Bは、第2の円形バッフルである、円形バッフルの中央から単一のセグメント窓67が切り出されたウイングバッフル66を示す。単一のセグメント窓67は、長方形、楕円形又は他の任意の形状であってもよい。この場合、円形バッフルの周囲に円周封止80が施される。
【0048】
図2Cは、第3の円形バッフルである、中央から単一の円形部61が切り出されたドーナツバッフル60を示す。Eストリーム漏洩を回避するために、このバッフル構造にも円周封止80が使用される。Eストリーム漏洩は、バッフルと胴体との間から漏洩する流れを指す。幾つかの実施例では、
図2Cのドーナツ型バッフル60は、非円形の孔を有したり、孔が中心から外れて位置したりしていてもよい。例えば、孔は、一部が取り除かれた状態で円形状に切り出されてもよい。
【0049】
図3は、本明細書に開示する本発明の実施例に係る例示的な熱交換器を示す。
図3に示すように、熱交換器100では2対の円形バッフルを使用でき、第1の対は、上部及び下部から切り出された2つのセグメント窓65を有する、
図2Aに示すようなシールドバッフル64であり、第2の対は、円形バッフルの中央から切り出された単一のセグメント窓67を有する、
図2Bに示すようなウイング型バッフル66であってもよい。これら2種類のバッフルは熱交換器に沿って交互に配置されてもよく、バッフルにくり抜かれた孔を通る管を支持する。
図2Cに示すようなドーナツ型バッフル60である第3のバッフルは、熱交換器100のいずれかの端部において管板90に近接する位置で使用されてもよい。
【0050】
本明細書に記載の熱交換器100は、シュラウド分配器20(例えば円筒形シュラウド)も含む。シュラウド分配器20は、
図1Aに示すような直径方向に対向する2つの傾斜切れ込み部22を有するのが最も好ましい。シュラウド分配器20は管束の周囲に配置され、ドーナツシールドバッフル64から出口/入口ノズル54/52と管板90との間の地点まで延在してもよい。円筒形シュラウド20から傾斜部22が切り出されて、束の中心から入口52までの流れ抵抗が流体の流路に関係なく同等となるようになっている。入口ノズル52からドーナツバッフル60の中心までの流れ抵抗が、入口ノズル52と管束の中心との間の全ての流路において均等となるように、角度βが約10度〜30度であってもよい。例えば、βは約10度、11度、12度、13度、14度、15度、16度、17度、18度、19度、20度、21度、22度、23度、24度、25度、26度、27度、28度、29度又は約30度であってもよい。
図3に開示する実施例では、熱交換器100は、胴体の出口端部に備えられる第2のシュラウド分配器20を含む。この分配器は、入口端部に配置されたシュラウドと同じように構成されてもよく、同様に流れ抵抗も、管束の中心から出口ノズル54までの全ての流路において均等である。熱交換器100は、本発明の範囲から逸脱することなく、単一の入口又は出口シュラウドを有して構成されてもよいことが理解されよう。
【0051】
図1Aに示すように、ドーナツ型バッフル60及びシールド型バッフル64は、シュラウド20を支持するように使用されてもよい。
【0052】
なお、熱交換器100には従来のバッフルが設けられてもよい。しかし、熱交換器100の効率及び機械的完全性は、シュラウド分配器20を、本明細書に開示するバッフル構造及び配置や、全てのバッフル位置における円周封止と組み合わせて使用する場合に向上する。
【0053】
図4は、本開示の実施例に基づいて構成された熱交換器の四半分の断面図を示す。図示のように、熱交換器200は、一端におけるドーナツバッフル60と、
図2A〜
図2Cに示し上述した交互の窓切り出しバッフル64/64と、管束92と、シュラウドと、「Eストリーム封止材95」とを含んでもよい。当業者には、1つ以上の二セグメント型バッフルの代わりにディスク・ドーナツ型バッフルといった異なる種類のバッフルを使用してもよいことが容易に理解されよう。二セグメント型バッフル又は他の種類のバッフルの組み合わせは特に検討される。
【0054】
図1B、
図2及び
図5に示す全ての設計特性を共に利用することで、熱交換器の全長に亘る最適な流れ分配を達成でき、管束の周囲の温度勾配に起因する機械的応力を軽減できる。
図2A及び
図2Bに示す特殊な形状の二セグメント型バッフルは、必要とされる管の支持及び熱性能の要求に合う他の種類のバッフルに置き換えられてもよい。どの形状のバッフルが選択されても、その形状は二セグメント型バッフルに対しても有効な同様の指示に従うべきであり、すなわち、バッフルから窓が切り出されて、管以外の領域の軸線上の漏洩を阻止し、バッフルの全周囲に円周封止を施してEストリーム漏洩をボックできるようにするべきである。胴体の隙間に対して水密なバッフルの製造が可能である場合や、想定されるEストリーム漏洩が僅かである場合には、円周封止を省略してもよい場合もある。
【0055】
シュラウド分配器20は、入口及び出口の両方における流れ分配を、360度の周囲全体に亘って可能な限り均等にするように設計される。
図7Bに示す最適な分配が得られるように全方向における水圧耐性を均等化して、最適な流れ分配が実現される。胴体の直径が小さく流量が少ない熱交換器の場合は、単一の入口/出口ノズルを使用してもよい。最長の流路はノズルに対して180度であり、2つの入口/出口ノズルの場合のように90度ではない。流れの均等化は、分配器の複数の窓がノズルから最長の流路に向かうに従いより大きくなるように切り出すか、傾斜をつけて分配器を切ることで実現できる。
【0056】
図5は、本明細書の実施例で使用される弾性封止材構造80aの断面図を提供する。本明細書のバッフル60/64/66に施される円周封止80は、バッフルと胴体との間に弾性のインタフェースを使用することで改善されてもよい。弾性封止材80aは、例えばステンレス鋼304又は同様の材料を使用して、単一又は複数の材料層のいずれかから作られてもよい。一例として、長手方向のバッフルを封止するのに用いられる円周封止は、ドイツ、オーバーハウゼンのKempchen&Co.GmbH社製のT4と同様でもよいし、特許文献1に示す長手方向の封止と同様でもよい。
図5ではバッフル60/64/66の両側に設けられた円周封止要素81aを示すが、封止要素81aは片側のバッフルだけに設けられてもよい。また、束を挿入する際の損傷を回避するために、円周ストリップ81aは挿入方向と逆側に設置されるべきであり、胴体の隙間に対するバッフルは最小限の大きさとするべきである(例えば、半TEMA公差が好ましい)。ストリップの半径「R」は、高い弾性を有し且つ束の挿入の際にストリップ81aが永久変形するのを回避するように構成されるものとする。
【0057】
高回収フィード・エフルエント熱交換器は、当該産業では一般には存在しない大型の多管式熱交換器を特徴とする。最もよく使用される設計ソフトウェア(HTRI(登録商標))ではこの設備の性能を確実に予測することができず、バッフルと胴体との間の空間における流体の漏洩が正しく示されないことにより、熱性能を過大予測してしまうことが多い。そのため、こうした設備の設計に対してHTRI(登録商標)を使用した結果、(90%を超える)極めて高い効率が予測されるにも関わらず実際には達成されないために、性能がひどく低くなってしまうことがある。本明細書の実施例は、熱効率を数%から約90%以上まで増加させ、管板面の温度差異を約15℃未満まで減少できることを示すCFDシミュレーションを用いて検証されている。
【0058】
従来の熱交換器設計では、流体の流れ抵抗がより低いために管と胴体との間の流れの流路がより短く、流れの形状が不均等且つ非対称となる。その結果、管板の温度は極めて不均等となり、温度勾配に起因する効率の不足及び大きな機械的応力の原因となる。本設計では、シュラウド分配器によって、一端部領域を通過する流体のほとんどが均一且つ対称的に管板を流れて、管板の温度が全体に亘って均一になるようになっている。全てのバッフルにおける円周封止と傾斜したドーナツ型分配器との組み合わせは、この最適な流れパターンを実現するのに望ましい。
【0059】
図7Aは、既存の熱交換器システム(上部管板)の入口における温度分布形状を示す。
図7B及び
図7Cは、本明細書に説明するように設計及び実現された熱交換器の入口(上部管板)における温度分布を示す。
図7Bは、
図7Aよりも縮尺を縮小した状態で、入口における温度分布を示す。
【0060】
図8Aは、既存の熱交換器の胴側出口における例示的な温度分布形状の概略図である。
図8B(局所縮小図)及び
図8C(同じ縮尺のディスク)は、本開示に基づいて構成された熱交換器の胴側出口における例示的な温度分布形状の概略図である。
【0061】
記載の例の場合に示すように、管板上の温度差は、先行技術の熱交換器における〜100℃から、本発明の熱交換器における〜15℃まで減少する。
【0062】
なお、本明細書の実施例はCatofinプロセスの設備に関して説明したが、高い熱回収及び高い効率が望まれ且つ胴側流体が高温のガスである任意のプロセスに対しても様々な実施例の適用が可能であるという点も検討される。例えば、Catadiene、SMARTスチレンモノマー製造、又はLNGといった他のプロセス等が想定される。
【0063】
上述され図示された本開示の方法及びシステムによって多管式熱交換器が提供される。好適な実施例を参照して、本主題の開示の装置及び方法を示し説明してきたが、当業者には、主題の開示の範囲から逸脱することなく変更及び/又は修正が行われてもよいことが容易に理解されよう。
【国際調査報告】