(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-522065(P2019-522065A)
(43)【公表日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】改善された熱的特性および接着特性を有する接着剤配合物
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20190712BHJP
C09J 169/00 20060101ALI20190712BHJP
【FI】
C08L69/00
C09J169/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-558683(P2018-558683)
(86)(22)【出願日】2017年5月8日
(85)【翻訳文提出日】2019年1月8日
(86)【国際出願番号】EP2017060879
(87)【国際公開番号】WO2017194445
(87)【国際公開日】20171116
(31)【優先権主張番号】16382204.2
(32)【優先日】2016年5月9日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】510301493
【氏名又は名称】レプソル,ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】ソニア、セグラ、フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】ローラ、マリン、ペラーレス
(72)【発明者】
【氏名】カロリーナ、ルイス、オルタ
(72)【発明者】
【氏名】モニカ、ガルシア、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ボルハ、アランディリャ、コリアス
(72)【発明者】
【氏名】ホセ、ミゲル、マルティン、マルティネス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス、ヘスス、ヤニェス、パシオス
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J002CG01W
4J002CG01X
4J002FD010
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4J040LA01
4J040LA02
4J040LA08
4J040MB02
4J040MB03
(57)【要約】
本発明は、(a)5〜95重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(アルキレンカーボネート)と、(b)95〜5重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(アルキレンカーボネート)とを含んでなる組成物に関する。本発明はまた、その組成物を製造するための方法、ならびに改善された熱安定性および接着性を有する接着剤配合物を製造するためのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)5〜95重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(アルキレンカーボネート)と、
b)95〜5重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(アルキレンカーボネート)と
を含んでなる組成物であって、
前記ガラス転移温度および前記数平均分子量の値が、本明細書に記載の方法に従って測定される、前記組成物。
【請求項2】
成分a)と称される前記ポリ(アルキレンカーボネート)が、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(プロピレンおよびエチレンカーボネート)およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分a)と称される前記ポリ(アルキレンカーボネート)が、10〜30℃のTgを有する、請求項1〜2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
成分b)と称される前記ポリ(アルキレンカーボネート)が、ポリ(プロピレンカーボネート)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリ(プロピレンカーボネート)が、31〜50℃のTgを有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
a)10〜90重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(プロピレンカーボネート)と、
b)90〜10重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(プロピレンカーボネート)と
を含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
成分a)と称される前記ポリ(プロピレンカーボネート)が、20,000〜300,000Daの数平均分子量を有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
a)5〜25重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(エチレンカーボネート)と、
b)95〜75重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(プロピレンカーボネート)と
を含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリ(エチレンカーボネート)が、50,000〜300,000Daの数平均分子量を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
成分a)および成分b)と称される前記ポリ(アルキレンカーボネート)が、触媒の存在下でCO2をアルキレンオキシドと共重合させることにより得られる生成物である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
成分b)と称される前記ポリ(アルキレンカーボネート)において、カーボネート結合を介して連結された隣接モノマー単位が平均して約75%を超える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、均質な混合物が得られるまで、成分a)および成分b)と称される前記ポリ(アルキレンカーボネート)を混合することを含んでなる、方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、接着剤配合物。
【請求項14】
感圧接着剤またはホットメルト接着剤である、請求項13に記載の接着剤配合物。
【請求項15】
前記ホットメルト接着剤がオープンタイム制御接着剤である、請求項14に記載の接着剤配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された熱安定性および強化された接着性を有するだけでなく、塗布必要条件に応じて制御された開放堆積時間(open-time assembly)を有する、接着剤配合物、特に、ホットメルト接着剤の製造に好適な組成物に関し、具体的には、本発明は、異なるガラス転移温度を有するポリ(アルキレンカーボネート)の混合物を含んでなる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、室温で固体であり、圧力が加えられたときに実質的に総ての基材との接着を形成する熱可塑性組成物をベースにした特定のクラスの接着剤である。それらは、永久または再剥離貼付のいずれかに広く使用されている。ホットメルト接着剤は、接着技術の数多くの分野においてますます重要性を増してきている。ホットメルトの利点は、ホットメルトは、メルトから冷却することによって必要な接着強度を増進させ、それに従って、高速生産プロセスに好適であるという事実にある。
【0003】
ホットメルト接着剤の重要な必要条件は、溶融時、塗布時、および固化後の接着時のそれらの性質である。ホットメルト接着剤は熱を加える必要があるため、温度を上昇させる場合には、ポリマーの安定性が塗布時に低下する可能性があり、その結果として、形成される接着の強度が低下する。従って、接着剤の塗布温度で接着剤の接着特性が変化してはならず、塗布時の劣化を回避するためには、改善された熱安定性を有する接着剤配合物を見出すことが重要である。従って、広い温度範囲での熱安定性、耐熱性および接着性を有するホットメルト接着剤が特に必要とされる。
【0004】
この意味において、ポリ(アルキレンカーボネート)またはそれらの混合物は、熱安定性を強化させた先行技術で知られている。例えば、WO2014/042603では、ポリ(アルキレンカーボネート)の熱安定性は、ポリマー鎖中にエンドキャッピング剤を組み込むことによるだけでなく、1種以上の酸化防止剤を添加することによっても改善される。
【0005】
WO2013/034539には、−R
1−O−C(=O)−O−、−R
2−O−C(=O)−O−および−R
3−O−C(=O)−O−(式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ、C
4−、C
5−およびC
6−アルキル鎖である)から選択される少なくとも2つの異なる反復単位をそれらの構造中に含んでなる、180℃より高い分解温度を有するポリオールポリカーボネート混合物が開示されている。
【0006】
WO2012/091343には、イソシアネートとポリオールとの反応からポリマー鎖の末端にウレタン基を導入することによってポリ(プロピレンカーボネート)の熱安定性を改善するための方法が記載されている。
【0007】
US4,851,507は、CO
2とエポキシドの混合物、すなわち、プロピレンオキシドと、少なくとも4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレンオキシド、との共重合によって製造された熱可塑性ポリ(アルキレンカーボネート)に関する。この第2のエポキシドの組み込みは、得られるポリマーの分解温度を改善することを可能にする。
【0008】
WO2011/005664には、その合成中に使用された反応パラメーターによって得られる正確かつ特定の構造を有するポリ(プロピレンカーボネート)が記載されている。具体的には、それは少なくとも90%のカーボネート結合の百分率を有する。当該文献にはまた、異なる分子量を有する2種以上のポリ(プロピレンカーボネート)の混合物が記載されている。
【0009】
WO2010/028362およびWO2012/071505には、90%より高いカーボネート結合の百分率および20,000より小さい数平均分子量を有するポリ(プロピレンカーボネート)の製造が開示されている。
【0010】
ホットメルト接着剤の別の重要な特性は、それらのオープンタイムまたは開放堆積時間である。オープンタイムとは、一般的に、ホットメルト接着剤を第1の基材上に塗布した後、接着剤が依然として第2の基材に対して効果的な接着を生成することが可能な時間の量を指す。特定のホットメルトが示すオープンタイムの量は、一般的に、その塗布温度、冷却速度、結晶化速度、および最終的に起こる結晶化の量に依存する。
【0011】
所望のオープンタイムの量は用途ごとに異なる。包装用途は、一般的に、典型的には、5〜15秒のオープンタイムを有する迅硬化性接着剤を必要とする。パネル用材または家具などの大きな部品を組み立てるには、一般的に、大きな面積に接着剤を塗布するのに十分な時間を確保し、続いて、部品の位置決めおよび組立てを行うために、より長いオープンタイムが必要である。この組立ての間、接着剤層は、永続的接着を確実にするために柔軟性および粘着性を保持しなければならない。
【0012】
ポリアミド組成物をベースにしたオープンタイムが長い接着剤の多くの例がある(例えば、EP0334667、US5,672,677、EP0965627参照)。オープンタイムが長い接着剤の他の例には、二液型ポリウレタン組成物(WO02/062864)が含まれる。
【0013】
それらの総てのことにもかかわらず、改善された耐熱性および良好な接着性とともに、最終用途に応じて制御された開放堆積時間も有するホットメルト接着剤の必要性がある。実際、分解温度、ならびに接着性は、ホットメルト接着剤だけでなく、感圧接着剤などの他の接着剤配合物の開発における重要な因子である。
【0014】
しかしながら、上記文献中、接着剤として、特に、改善された熱安定性および増強された接着性とともに、制御された開放堆積時間を有するホットメルト接着剤としての用途のための他の異なる構造特性を有するポリ(アルキレンカーボネート)の混合物を記載する文献はない。
【発明の概要】
【0015】
発明の簡単な説明
本発明者は、異なるガラス転移温度(Tg)を有するポリ(アルキレンカーボネート)の混合物が、当該混合物の個々の成分と比較して、より良好な接着性および改善された熱安定性を提供することを見出した。これらの特性は、当該混合物を、接着剤配合物、特に、制御された開放堆積時間を有するホットメルト接着剤の製造に非常に有用なものとする。
【0016】
実施例部分から導き出されるように、当該混合物は、分解温度が著しく低いため、各成分の熱安定性を相乗的に改善する。さらに、当該混合物はまた、単離成分と比較して、著しく改善された接着性、特に、改善された剪断接着強さおよび帆布からの剥離強さを有する接着剤配合物も提供する。
【0017】
従って、本発明の第1の態様は、
a)5〜95重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(アルキレンカーボネート)と、
b)95〜5重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(アルキレンカーボネート)と
を含んでなる組成物であって、
前記ガラス転移温度および前記数平均分子量の値が、本明細書に記載の方法に従って測定される、前記組成物に関する。
【0018】
好ましい実施形態において、成分a)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)は、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(プロピレンおよびエチレンカーボネート)およびそれらの混合物から選択される。
【0019】
別の好ましい実施形態において、成分b)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)は、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)、ポリ(リモネンカーボネート)、ポリ(プロピレンおよびシクロヘキセンカーボネート)、ポリ(プロピレンおよびリモネンカーボネート)およびそれらの混合物から選択される。
【0020】
本発明の第2の態様は、上記で定義された組成物の製造方法であって、均質な混合物が得られるまで、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(アルキレンカーボネート)と、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(アルキレンカーボネート)とを混合することを含んでなる方法に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、上記組成物を含んでなる接着剤配合物に関する。好ましい実施形態において、当該接着剤配合物は、ホットメルト接着剤または感圧接着剤であり、より好ましくは、制御された開放堆積時間を有するホットメルト接着剤である。
【0022】
本発明の別の態様は、基材を接着するための上記接着剤配合物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明の文脈において、ガラス転移温度(Tg)の値は、以下の手順による示差走査熱量計(DSC)実験での2回目の加熱から得られた値を指す。非等温(−85〜200℃、10℃/分)実験は、窒素流下でDSC(TA Instruments)Q2000を使用し、窒素流下冷却器内で操作して実施される。温度および熱流量の較正は標準としてインジウムを用いて行われる。
【0024】
ポリアルキレンカーボネートの数平均分子量(Mn)の値は、偏向型RI検出器を備えたBruker 3800を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン標準に対して測定された値を指す。1mL/分の流速のテトラヒドロフランが室温で溶出剤として使用される。
【0025】
上述したように、本発明の第1の態様は、
a)5〜95重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(アルキレンカーボネート)と、
b)95〜5重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(アルキレンカーボネート)と
を含んでなる組成物に関する。
【0026】
成分a)
本発明の組成物の成分a)は、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(アルキレンカーボネート)である。
【0027】
ポリ(アルキレンカーボネート)(PAC)という用語には、エーテルおよびカーボネート単位を有するポリマーが含まれる(Encyclopedia of Polymer Science and Technology、Johnson Wiley and sons、第3巻)。本発明の組成物において成分a)として使用されるポリアルキレンカーボネートは、1種以上のエポキシドとCO
2との共重合によって製造される。PACは、当技術分野で公知であり、当業者は、例えば、それらの構造、分子的または物理的性質に留意し、広い範囲から選択することができる。
【0028】
本発明のある実施形態によれば、上記PACは、(実際に使用されていることによるかまたは理論上)(C
2−C
20)アルキレンオキシド、(C
1−C
20)アルキルオキシ、(C
6−C
20)アリールオキシ、(C
6−C
20)アリールアルキルオキシ、(C
4−C
20)シクロアルキルオキシド、(C
5−C
20)シクロアルキレンオキシドおよびそれらの混合物からなる群から選択される1種以上のエポキシドに由来する。エポキシド化合物は特に限定されないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、ペンテンオキシド、ヘキセンオキシド、オクテンオキシド、デセンオキシド、ドデセンオキシド、テトラデセンオキシド、ヘキサデセンオキシド、オクタデセンオキシド、ブタジエンモノオキシド、1,2−エポキシド−7−オクテン、エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、グリシジルメチルエーテル、グリシジルエチルエーテル、グリシジルノルマルプロピルエーテル、グリシジルsec−ブチルエーテル、グリシジルノルマルまたはイソペンチルエーテル、グリシジルノルマルヘキシルエーテル、グリシジルノルマルヘプチルエーテル、グリシジルノルマルオクチルまたは2−エチル−ヘキシルエーテル、グリシジルノルマルまたはイソノニルエーテル、グリシジルノルマルデシルエーテル、グリシジルノルマルドデシルエーテル、グリシジルノルマルテトラデシルエーテル、グリシジルノルマルヘキサデシルエーテル、グリシジルノルマルオクタデシルエーテル、グリシジルノルマルイコシルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシド、α−ピネンオキシド、2,3−エポキシドノルボネン、リモネンオキシド、ジエルドリン、2,3−エポキシドプロピルベンゼン、スチレンオキシド、フェニルプロピレンオキシド、スチルベンオキシド、クロロスチルベンオキシド、ジクロロスチルベンオキシド、1,2−エポキシ−3−フェノキシプロパン、ベンジルオキシメチルオキシラン、グリシジル−メチルフェニルエーテル、クロロフェニル−2,3−エポキシドプロピルエーテル、エポキシプロピルメトキシフェニルエーテル、ビフェニルグリシジルエーテル、グリシジルナフチルエーテル、グリシジル酢酸エステル、グリシジルプロピオネート、グリシジルブタノエート、グリシジルノルマルペンタノエート、グリシジルノルマルヘキサノエート、グリシジルヘプタノエート、グリシジルノルマルオクタノエート、グリシジル2−エチルヘキサノエート(glycidyl 2-ehtyl hexanoate)、グリシジルノルマルノナノエート、グリシジルノルマルデカノエート、グリシジルノルマルドデカノエート、グリシジルノルマルテトラデカノエート、グリシジルノルマルヘキサデカノエート、グリシジルノルマルオクタデカノエート、およびグリシジルイコサノエートからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0029】
本発明のある実施形態によれば、上記PACは、ポリ(エチレンカーボネート)(PEC)、ポリ(プロピレンカーボネート)(PPC−例えば、Luinstra G.A.;Borchardt E.,Adv.Polym.Sci.(2012)245:29−48およびLuinstra、G.A.,Polymer Reviews(2008)48:192−219参照)、ポリ(ブチレンカーボネート)、またはポリ(ヘキシレンカーボネート)など、C
2−C
6オキシラン、例えば、C
2、C
3またはC
4をベースにすることができる。環状脂肪族カーボネートとしては、例えば、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)、ポリ(ノルボルネンカーボネート)またはポリ(リモネンカーボネート)が含まれ得る。
【0030】
上記ポリ(アルキレンカーボネート)には、異なるポリ(アルキレンカーボネート)の混合物が含まれ得る。そのような混合物は、例えば、ポリ(プロピレンカーボネート)およびポリ(エチレンカーボネート)、またはポリ(プロピレンカーボネート)またはポリ(エチレンカーボネート)と、ポリ(ブチレンカーボネート)、ポリ(ヘキシレンカーボネート)、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)、ポリ(ノルボルネンカーボネート)またはポリ(リモネンカーボネート)などの他のポリ(アルキレンカーボネート)との混合物であり得る。上記ポリ(アルキレンカーボネート)には、CO
2と2種以上のエポキシド、より具体的には、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドとの共重合から生じるものも含まれる。本発明では、「アルキレンオキシド」、「エポキシド」または「オキシラン」は、総て同等と考えられる。
【0031】
上記PACの数平均分子量は、15,000Daより高くあるべきである。好ましい実施形態において、当該数平均分子量は、18,000Daより高く、より好ましくは20,000〜300,000Daである。
【0032】
上記ポリアルキレンカーボネートは、30℃以下、好ましくは10〜29℃、より好ましくは15〜29℃、さらに好ましくは15〜28℃、最も好ましくは15〜27℃のTgを有するべきである。この特徴は、それに対する所望の熱的特性および接着性を損なうために、成分a)と称される、本発明の組成物中に含まれるPACに必須である。
【0033】
好ましい実施形態において、成分a)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)は、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(プロピレンおよびエチレンカーボネート)およびそれらの混合物から選択される。
【0034】
特定の実施形態において、成分a)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)は、ポリ(プロピレンカーボネート)である。
【0035】
PPCとも称されるポリ(プロピレンカーボネート)は、触媒の存在下でCO
2をプロピレンオキシドと共重合させることにより得られる生成物である。当該反応は、以下の構造を有する第一次反復単位を含有する化合物を提供する。
【0037】
特定の実施形態において、上記ポリ(プロピレンカーボネート)は、遷移金属触媒、例えば、金属サレン触媒、例えば、コバルトサレン触媒またはグルタル酸亜鉛触媒などの存在下でのCO
2とプロピレンオキシドとの共重合によって得られる。好適な触媒および方法としては、例えば、WO2010/022388、WO2010/028362、WO2012/071505、US8,507,708、US4,789,727、Angew.Chem.Int.、2003、42、5484−5487;Angew.Chem.Int.、2004、43、6618−6639;およびMacromolecules、2010、43、7398−7401に記載されているものが挙げられる。
【0038】
別の特定の実施形態において、上記ポリ(プロピレンカーボネート)は、高い百分率のカーボネート結合を有することを特徴とする。好ましくは、上記ポリ(プロピレンカーボネート)において、カーボネート結合を介して連結された隣接モノマー単位が平均して約75%を超え、エーテル結合が約25%未満である。
【0039】
別の特定の実施形態において、成分a)と称されるポリ(プロピレンカーボネート)は、本発明の組成物中に、当該組成物の総重量に対して5%〜95%の重量割合で、より好ましくは10〜90重量%で含まれる。
【0040】
従って、特定の実施形態において、本発明の組成物は、
a)5〜95重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(プロピレンカーボネート)と、
b)95〜5重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(アルキレンカーボネート)と
を含んでなる。
【0041】
別の特定の実施形態において、本発明の組成物は、
a)10〜90重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(プロピレンカーボネート)と、
b)90〜10重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(アルキレンカーボネート)と
を含んでなる。
【0042】
成分a)と称されるポリ(プロピレンカーボネート)は、15,000Daより大きい数平均分子量を有するべきである。好ましい実施形態において、本発明の組成物の成分a)と称されるポリ(プロピレンカーボネート)の数平均分子量は、18,000Daより高く、より好ましくは、20,000〜300,000Daであり、さらに好ましくは、35,000〜200,000Daである。
【0043】
上記ポリ(プロピレンカーボネート)は、30℃以下、好ましくは10〜29℃、より好ましくは15〜29℃、さらに好ましくは15〜28℃、最も好ましくは15〜27℃のTgを有するべきである。
【0044】
別の特定の実施形態において、成分a)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)は、ポリ(エチレンカーボネート)である。
【0045】
PECとも称されるポリ(エチレンカーボネート)は、触媒の存在下でCO
2をエチレンオキシドと共重合させることにより得られる生成物である。当該反応は、以下の構造を有する第一次反復単位を含有する化合物を提供する。
【0047】
別の特定の実施形態において、上記ポリ(エチレンカーボネート)は、高い百分率のカーボネート結合を有することを特徴とする。好ましくは、上記ポリ(エチレンカーボネート)において、カーボネート結合を介して連結された隣接モノマー単位が平均して約75%を超え、エーテル結合が約25%未満である。より好ましくは、上記ポリ(エチレンカーボネート)において、カーボネート結合を介して連結された隣接モノマー単位が、平均して約80%を超え、さらに好ましくは85%を超え、最も好ましくは90%を超える。
【0048】
別の特定の実施形態において、上記ポリ(エチレンカーボネート)は、本発明の組成物中に、当該組成物の総重量に対して5%〜50%の重量割合で、より好ましくは5〜25重量%で含まれる。
【0049】
従って、特定の実施形態において、本発明の組成物は、
a)5〜50重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(エチレンカーボネート)と、
b)95〜50重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(アルキレンカーボネート)と
を含んでなる
【0050】
別の特定の実施形態において、本発明の組成物は、
a)5〜25重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(エチレンカーボネート)と、
b)95〜75重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(アルキレンカーボネート)と
を含んでなる
【0051】
上記ポリ(エチレンカーボネート)は、15,000Daより大きい数平均分子量を有するべきである。好ましい実施形態では、50,000〜300,000Da、より好ましくは50,000〜150,000Da、さらに好ましくは50,000〜100,000Daの数平均分子量を有する。
【0052】
上記ポリ(エチレンカーボネート)は、30℃以下、より好ましくは10〜29℃、さらに好ましくは15〜25℃のTgを有するべきである。
【0053】
成分b)
本発明の組成物の成分b)もまた、ポリ(アルキレンカーボネート)である。しかしながら、成分a)としてのポリ(アルキレンカーボネート)とは反対に、成分b)は、30℃より高いTgを有する。
【0054】
上記ポリ(アルキレンカーボネート)はまた、成分a)としてのポリ(アルキレンカーボネート)について上に記載したポリマーも指し、上記の手順に従って製造することもできる。
【0055】
しかしながら、本発明の組成物の成分b)として、上記ポリ(アルキレンカーボネート)は、30℃より高いガラス転移温度を有することを特徴とする。この特徴もまた、本発明の組成物に対する所望の熱的特性および接着性を損なうために必須である。
【0056】
成分b)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)にはまた、異なるポリ(アルキレンカーボネート)の混合物が含まれ得る。そのような混合物は、例えば、ポリ(プロピレンカーボネート)と、ポリ(ブチレンカーボネート)、ポリ(ヘキシレンカーボネート)、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)、ポリ(ノルボルネンカーボネート)またはポリ(リモネンカーボネート)などの他のポリ(アルキレンカーボネート)との混合物であり得る。上記ポリ(アルキレンカーボネート)にはまた、CO
2と2種以上のエポキシド、より具体的には、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシドおよびリモネンオキシドから選択されるエポキシドとの共重合から生じるものも含まれる。
【0057】
しかしながら、好ましい実施形態において、成分b)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)は、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)、ポリ(リモネンカーボネート)、ポリ(プロピレンおよびシクロヘキセンカーボネート)、ポリ(プロピレンおよびリモネンカーボネート)およびそれらの混合物から選択される。
【0058】
より好ましい実施形態において、成分b)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)は、ポリ(プロピレンカーボネート)である。
【0059】
上記ポリ(プロピレンカーボネート)は、成分a)のポリ(アルキレンカーボネート)がポリ(プロピレンカーボネート)であり、それを上記の手順に従って製造することもできる特定の場合について上記したものと同じ構造を有する。
【0060】
しかしながら、本発明の組成物の成分b)として、上記ポリ(プロピレンカーボネート)は、30℃より高いガラス転移温度を有することを特徴とする。
【0061】
特定の実施形態において、成分b)としてのポリ(プロピレンカーボネート)のガラス転移温度は、31〜50℃、より好ましくは32〜47℃、さらに好ましくは32〜45℃、最も好ましくは32〜40℃である。
【0062】
特定の実施形態において、成分b)としてのポリ(プロピレンカーボネート)は、20,000〜300,000Da、さらに好ましくは35,000〜200,000Daの数平均分子量を有する。好ましい実施形態において、本発明の組成物の成分b)と称されるポリ(プロピレンカーボネート)の数平均分子量は、70,000Daより高く、より好ましくは75,000〜250,000Daである。
【0063】
別の実施形態において、このポリ(プロピレンカーボネート)は、高い百分率のカーボネート結合を有することも特徴とする。好ましくは、当該ポリ(プロピレンカーボネート)において、カーボネート結合を介して連結された隣接モノマー単位が平均して約75%を超え、エーテル結合が約25%未満である。より好ましくは、当該ポリ(プロピレンカーボネート)において、カーボネート結合を介して連結された隣接モノマー単位が、平均して約80%を超え、さらに好ましくは85%を超え、最も好ましくは90%を超える。
【0064】
成分b)と称されるポリ(プロピレンカーボネート)は、本発明の組成物中に、5%〜95%の重量割合で含まれる。
【0065】
しかしながら、好ましい実施形態において、それは、本発明の組成物中に、当該組成物の総重量に対して10〜90重量%の重量割合で含まれる。
【0066】
別の好ましい実施形態において、それは、本発明の組成物中に、当該組成物の総重量に対して、25〜95重量%、より好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは75〜95重量%の重量割合で含まれる。
【0067】
従って、特定の実施形態において、本発明の組成物は、
a)5〜95重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(アルキレンカーボネート)と、
b)95〜5重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(プロピレンカーボネート)と
を含んでなる。
【0068】
最も好ましくは、本発明の組成物は、
a)5〜95重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(プロピレンカーボネート)と、
b)95〜5重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(プロピレンカーボネート)と
を含んでなる。
【0069】
別の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、
a)10〜90重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(プロピレンカーボネート)と、
b)90〜10重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(プロピレンカーボネート)と
を含んでなる。
【0070】
別の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、
a)5〜50重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(エチレンカーボネート)と、
b)95〜50重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(プロピレンカーボネート)と
を含んでなる。
【0071】
別の特定の実施形態において、本発明の組成物は、
a)5〜25重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(エチレンカーボネート)と、
b)95〜75重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(プロピレンカーボネート)と
を含んでなる。
【0072】
別の特定の実施形態において、成分b)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)は、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)である。このポリマーは、触媒の存在下でCO
2をシクロヘキセンオキシドと共重合させることにより得られる生成物である。
【0073】
上記反応は、以下の構造を有する第一次反復単位を含有する化合物を提供する。
【0075】
別の特定の実施形態において、成分b)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)は、ポリ(リモネンカーボネート)である。このポリマーは、触媒の存在下でCO
2をリモネンオキシドオキシド(limonene oxide oxide)と共重合させることにより得られる生成物である。
【0076】
上記反応は、以下の構造を有する第一次反復単位を含有する化合物を提供する。
【0078】
上記ポリ(シクロヘキセンカーボネート)および上記ポリ(リモネンカーボネート)は、30℃より高く、115〜140℃のTgを有することを特徴とする。
【0079】
成分a)およびb)およびそれらの混合物について、ガラス転移温度(Tg)は、10℃/分で−85℃〜200℃の非等温実験から2回目の加熱を行う示差走査熱量測定(DSC)から測定される。
【0080】
本発明の第2の態様とは、本発明の組成物の製造方法であって、成分a)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)と、成分b)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)とを混合することを含んでなる方法を指す。
【0081】
本発明の組成物の成分は、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第2版、第14巻、Polymer Blends chapter、9頁に記載されているような当技術分野の通常の方法に従って混合することができる。当業者に周知の手順には、ローラー混合することによってまたは押出機もしくは混練機などで配合することによって、混合成分の溶液を混合することが含まれる。
【0082】
一実施形態において、上記ポリ(アルキレンカーボネート)は、均質な混合物を得るために必要な時間の間、内部ミキサーまたはチャンバー、例えば、Haakeチャンバーなどで、それらのポリマーを溶融するのに十分な温度、例えば、20℃〜250℃、典型的には100℃〜200℃で混合される。
【0083】
本発明の別の実施形態において、本発明の組成物の成分は、好適な溶媒中で混合される。総ての成分を溶解することができる任意の溶媒が適当であり、揮発性であるものが好ましい(例えば、THF、ジクロロメタン、酢酸エチルまたはアセトン)。混合が完了した後、混合物を得るために溶媒を除去してよい。
【0084】
上記ポリ(アルキレンカーボネート)の各々は、5〜95重量%の重量割合で上記混合物に添加される。
【0085】
好ましい実施形態において、成分a)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)は、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(プロピレンおよびエチレンカーボネート)およびそれらの混合物から選択される。より好ましくは、上記ポリ(アルキレンカーボネート)はポリ(プロピレンカーボネート)またはポリ(エチレンカーボネート)である。
【0086】
特定の実施形態において、成分a)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)がポリ(プロピレンカーボネート)である場合、それは上記混合物に、当該混合物の総重量に対して、5%〜95%の重量割合、より好ましくは10〜90重量%で添加される。
【0087】
別の特定の実施形態において、成分a)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)がポリ(エチレンカーボネート)である場合、それは上記混合物に、当該混合物の総重量に対して、5%〜90%の重量割合、より好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは5〜25重量%で添加される。
【0088】
別の好ましい実施形態において、成分b)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)は、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)、ポリ(リモネンカーボネート)、ポリ(プロピレンおよびシクロヘキセンカーボネート)、ポリ(プロピレンおよびリモネンカーボネート)およびそれらの混合物から選択される。より好ましくは、上記ポリ(アルキレンカーボネート)はポリ(プロピレンカーボネート)である。
【0089】
特定の実施形態において、成分b)と称されるポリ(アルキレンカーボネート)がポリ(プロピレンカーボネート)である場合、それは上記混合物に、当該混合物の総重量に対して、5%〜95%の重量割合、より好ましくは10〜90重量%で添加される。
【0090】
別の特定の実施形態において、成分b)と称されるポリ(プロピレンカーボネート)は、上記混合物に、当該混合物の総重量に対して、10%〜95%の重量割合、より好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは75〜95重量%で添加される。
【0091】
両成分の得られた混合物は、単離成分と比較して、相乗的に改善された熱安定性を示す。さらに、上記成分の組合せは、それがまた各成分単独の特性と比較される場合にも、改善された接着性、特に、剪断接着強さならびに帆布からの剥離強さを提供する。これら総ての特徴により、本発明の組成物は、感圧接着剤またはホットメルト接着剤、特に、オープンタイム制御接着剤などの接着剤配合物の製造に非常に好適なものとなる。
【0092】
従って、本発明のさらなる態様は、上記組成物を含んでなる接着剤配合物に関する。すなわち、当該接着剤配合物は、
a)5〜95重量%の、30℃以下のガラス転移温度および15,000Daより大きい数平均分子量を有するポリ(アルキレンカーボネート)と、
b)95〜5重量%の、30℃より高いガラス転移温度を有するポリ(アルキレンカーボネート)と
を含んでなる組成物を含んでなる。
【0093】
本発明の接着剤配合物は室温で固体であるが、より高い温度では、基材表面上に容易に押し出しまたは塗布され得る粘着性のある粘稠な液体となり、当該表面上で漏出し、多孔質表面に多少浸透して、当該基材への接着のための良好な基礎を提供する。従って、本発明の接着剤配合物は、それが粘着性のある粘稠な液体であることが可能な温度、例えば、150〜180℃の温度で、基材上に塗布されるべきである。接着剤は、ブラシまたは押出ノズルによって塗布され得、基材に強く接着する結合力のある粘着性層に変化する基材表面上の堆積層を提供する。
【0094】
特定の実施形態において、上記接着剤配合物は、感圧接着剤またはホットメルト接着剤である。より具体的には、上記接着剤配合物はオープンタイム制御接着剤配合物である。オープンタイムという用語は、接着剤が第1の基材上に塗布された後、当該接着剤が依然として第2の基材に対して効果的な接着を生成することが可能であるのに必要な時間であると理解される。従って、オープンタイム制御接着剤配合物とは、層の形態で基材表面上に塗布される場合に、最終用途に応じて、制御された期間にわたって当該基材に接着する粘着性層に変換される接着剤配合物を指す。
【0095】
30℃より低いTgを有するポリ(アルキレンカーボネート)の割合が高くなるほど、接着時間は短くなることが観察された。従って、上記混合物中の成分の割合を単に変化させることによって接着剤のオープンタイムを制御することが可能である。
【0096】
改善された熱的特性および接着性を有する本発明の組成物を用いて、好適な接着剤を得ることができるが、上記接着剤配合物にはまた、接着性および/または加工特性ならびに使用特性、例えば、粘性または柔軟性、のレベルを高めるための他の成分および/または添加剤も含めることができる。
【0097】
特定の実施形態において、本発明の接着剤配合物は、粘着性付与樹脂をさらに含んでなる。
【0098】
粘着性付与樹脂は、本発明の接着剤配合物に、当該配合物の総重量に対して、0〜30重量%の範囲、より好ましくは15重量%まで、さらに好ましくは10重量%までの重量割合で組み込まれていてよい。
【0099】
粘着性付与樹脂という用語は、当技術分野で十分に認識されており、接着剤配合物に粘着性を付与する物質を含む。
【0100】
上記接着剤配合物の他の成分と適合する樹脂が好ましい。好適な樹脂の例としては、ロジン樹脂、炭化水素樹脂、テルペン樹脂およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0101】
特定の実施形態において、粘着性付与樹脂は、ロジン樹脂(コロフォニウム樹脂としても知られている)、ロジンエステル樹脂、完全または部分水素添加ロジン樹脂、完全または部分水素添加ロジンエステル樹脂、不均化ロジン樹脂、不均化ロジンエステル樹脂;芳香族、脂肪族または脂環式炭化水素樹脂またはそれらの誘導体;完全または部分水素添加された芳香族、脂肪族または脂環式炭化水素樹脂;テルペン樹脂、テルペンポリマーおよびコポリマー、テルペンフェノール樹脂およびそれらの水素添加誘導体から選択される。
【0102】
好ましい実施形態において、粘着性付与樹脂は、ロジン樹脂またはその誘導体である。好ましくは、それは、ロジン樹脂、完全または部分水素添加ロジン樹脂、不均化ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、完全または部分水素添加ロジンエステル樹脂および不均化ロジンエステル樹脂から選択される。さらに好ましくは、粘着性付与樹脂は水素添加ロジンエステル樹脂、例えば、水素添加ロジン樹脂のグリセロールエステルなどである。
【0103】
別の好ましい実施形態において、粘着性付与樹脂は、上記で定義した、ロジン樹脂またはその誘導体と、炭化水素樹脂またはその誘導体との混合物である。
【0104】
別の特定の実施形態において、本発明の接着剤配合物は、当該接着剤配合物の総重量に対して、0.1〜10重量%の少なくとも1種の可塑剤をさらに含んでなる。好ましくは、0.5〜7重量%、より好ましくは1〜5重量%の少なくとも1種の可塑剤を含んでなる。
【0105】
そのような可塑剤は、水を含まず、上記接着剤配合物の成分と適合するべきである。特定の実施形態において、少なくとも1種の可塑剤は、薬用ホワイト油、鉱油、植物油または動物油、脂肪族または芳香族カルボン酸のアルキルエステル、例えば、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、フタル酸エステル、クエン酸エステル、安息香酸エステル、メリット酸エステルおよび芳香族スルホン酸エステルなど、アルコール、グリコールまたは、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールを含むポリオールおよびそれらの混合物から選択される。
【0106】
可塑剤は、上記配合物に、所望のレオロジー特性、特に、粘性または柔軟性を提供しかつその系に存在し得る任意の触媒を分散させるのに十分な量で添加される。
【0107】
上記の成分に加えて、通常の助剤および/または添加剤もまた、上記接着剤配合物に添加することができる。
【0108】
特定の実施形態において、上記接着剤配合物は、当該接着剤配合物の総重量に対して、0〜5重量%の1種以上のさらなる添加剤を含んでなる。より具体的には0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%、より好ましくは0.05〜2重量%、さらに好ましくは0.05〜0.5重量%の1種以上のさらなる添加剤を含んでなる。
【0109】
そのような添加剤には、限定されるものではないが、酸化防止剤、潤滑剤、安定剤、着色剤、難燃剤、無機および/または有機充填剤および補強剤が含まれ得る。
【0110】
特定の実施形態において、本発明の接着剤配合物は、当該接着剤組成物の総重量に対して、0〜5重量%の少なくとも1種の酸化防止剤を含んでなる。より具体的には、それは、0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%、より好ましくは0.05〜2重量%、さらに好ましくは0.05〜0.5重量%の少なくとも1種の酸化防止剤を含んでなる。
【0111】
ある実施形態において、少なくとも1種の酸化防止剤は、ヒンダードフェノール、ホスファイトおよびそれらの混合物から選択される。好ましくは、それは、ヒンダードフェノールとホスファイトとの混合物である。
【0112】
ヒンダードフェノールは、当技術分野で周知であり、そのフェノール性ヒドロキシル基に極めて接近して立体的に嵩高い基、例えば、tert−ブチルなどを含有するフェノール化合物を指す。具体的には、それらは、そのフェノール性ヒドロキシル基に対してオルト位の少なくとも1つにおいてtert−ブチル基で置換されたフェノール化合物を特徴とし得る。特定の実施形態において、ヒンダードフェノールは、ヒドロキシル基に対して両方のオルト位にtert−ブチル基を有する。代表的なヒンダードフェノールとしては、ペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、n−オクタデシル−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ルネチレンビス(4−ルネエチル−6−tert−ブチルフェノール)(4,4'-rnethylenebis(4-rnethyl-6-tert-butylphenol))、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、6−(4−ヒドロキシフェノキシ)−2,4−ビス(n−オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチル−フェノキシ)−1,3,5−トリアジン、ジ−n−オクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−(n−オクチルチオ)エチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、およびソルビトールヘキサ−(3,3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネートが挙げられる。
【0113】
特定の実施形態において、ホスファイトは、芳香族に置換されたホスファイト、好ましくは、置換されたまたは非置換のトリフェニルホスファイトである。これらのホスファイトの例としては、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、およびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ホスファイトが挙げられる。
【0114】
特定の実施形態において、本発明の接着剤配合物は、0.05〜0.5重量%の、ヒンダードフェノール、芳香族に置換されたホスファイトおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の酸化防止剤を含んでなる。ある実施形態において、酸化防止剤は、ヒンダードフェノールと芳香族に置換されたホスファイトとの混合物、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)とトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ホスファイトとの混合物である。
【0115】
潤滑剤として、非反応性液体を使用して、感圧接着剤を軟化させるかまたは改善された加工のためにその粘性を低下させることができる。
【0116】
安息香酸エステル、フタル酸エステルまたはパラフィン油などの粘度調整剤もまた使用することができる。
【0117】
安定剤には、酸化安定剤、加水分解安定剤および/またはUV安定剤が含まれ得る。加水分解安定剤の例としては、オリゴマーおよび/またはポリマーの脂肪族または芳香族カルボジイミドが挙げられる。UV安定剤として、ヒドロキシベンゾトリアゾール、亜鉛ジブチルチオカルバメート、2,6−ジtertブチルカテコール、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒンダードアミンおよびホスファイトを使用して、上記接着剤配合物の光安定性を改善することができる。着色顔料もまた、この目的のために使用されている。
【0118】
本発明の接着剤配合物は、1種以上の好適な着色剤をさらに含んでなり得る。典型的な無機着色剤としては、限定されるものではないが、二酸化チタン、酸化鉄およびクロムオキシドが挙げられる。有機顔料には、アゾ/ジアゾ染料、フタロシアニンおよびジオキサジンならびにカーボンブラックが含まれ得る。
【0119】
本発明の接着剤配合物は、燃焼性を減少させるために1種以上の好適な難燃剤をさらに含んでなり得る。難燃剤の選択は、しばしば、上記配合物の意図された実用およびその用途に影響する付随する燃焼性試験のシナリオに依存する。そのような難燃剤の例としては、塩素化リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびメラミン粉末が挙げられる。
【0120】
本発明の接着剤配合物の任意選択の添加剤には、充填剤が含まれる。そのような充填剤は、当業者に周知であり、限定されるものではないが、カーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム、表面処理シリカ、酸化チタン、ヒュームシリカ、タルク、アルミニウム三水和物などが挙げられる。ある特定の実施形態において、補強用充填剤は、上記組成物の強度を高めかつ/または上記組成物にチキソトロピー特性を提供するのに十分な量で使用される。
【0121】
、
本発明の接着剤配合物において使用される他の任意選択の添加剤には、クレーが含まれる。好適なクレーとしては、限定されるものではないが、カオリン、表面処理カオリン、焼成カオリン、ケイ酸アルミニウムおよび表面処理無水ケイ酸アルミニウムが挙げられる。クレーは任意の形態で使用することができる。好ましくは、クレーは、粉砕粉末、噴霧乾燥ビーズまたは微粉砕粒子の形態である。
【0122】
本発明の接着剤配合物は、任意選択の添加剤としてワックスをさらに含み得る。有用なワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンおよびマクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、酸化フィッシャー・トロプシュワックス、Mwが3,000未満のポリエチレンおよびポリエチレンの副生成物、プロピレンワックス、ならびに官能基化ワックス、例えば、ヒドロキシステアラミドおよび脂肪アミドワックスなどが挙げられる。ホモジニアスワックスと称されることがある拘束幾何(例えば、メタロセン)触媒を用いて製造された超低分子量エチレン/α−オレフィン共重合体もまた好適である。添加されるワックスの量は、上記配合物の接着性に悪影響を及ぼすことなく粘性が所望の範囲に低下するように計算される。
【0123】
本発明の接着剤配合物は、薄いコーティングとして様々な基材に塗布することができる。十分な厚さ、好ましくは、0.05〜0.3mmの基材表面上に層を提供するために接着剤配合物を塗布した後、それは良好な接触接着性を有する柔らかい弾性の塊を形成する。さらに、一度基材表面上に塗布されると、接着は、即座ではなく、当該基材の正確な接着を可能にするために経時的に制御され得る。これは、例えば、大きな構造体または合わせ面に沿った表面の凸凹を有する構造体を接着しなければならない場合に特に有利である。
【0124】
特定の実施形態において、上記接着剤配合物は、感圧接着剤である。当該接着剤は、3ヶ月以上の期間にわたって高いレベルで残っている粘着性を示し、熱などの他の誘引を塗布することなく層に対して置かれた基材に軽い圧力を単純に塗布することによって、この期間中に良好な品質の接着を行うことができる。
【0125】
本発明のより具体的な実施形態において、上記感圧接着剤は、ホットメルト感圧接着剤である。より具体的には、接着剤が触れた瞬間基材に漏出し、その後、永久に粘着性のままである硬質材料を基材上に形成するように、接着剤を基材と接触させ、圧力および温度を加えることによって接着は形成される。
【0126】
本発明の接着剤配合物は、従来の方法、例えば、当該接着剤配合物の成分を混合することによって製造することができる。上記成分は、均質な混合物を得るために必要な時間の間、ミキサーまたはチャンバー、例えば、Haakeチャンバーなどで、それらのポリマーを溶融するのに十分な温度、例えば、20℃〜250℃の範囲、典型的には、100℃〜200℃の間で混合することができる。異なる添加剤は、もしあれば、本発明の組成物のポリ(アルキレンカーボネート)または成分a)およびb)を混合する前または後に添加することができる。
【0127】
このプロセスは押出機中で実施することができる。
【0128】
上記接着剤配合物はまた、例えば、THF、ジクロロメタン、酢酸エチルまたはアセトンなどの溶媒からの溶液流延により、溶液中の総ての成分の混合によってフィルムの形態で得ることができる。
【0129】
本発明の別の態様は、基材を接着するための上記接着剤配合物の使用に関する。これらの基材は可撓性であり得るし、あるいは、剛性であり得る。特定の実施形態において、接着される基材の1つは、薄く可撓性であり、好ましくは、フィルム、多層フィルム、紙、アルミニウム、または紙、アルミニウムおよびポリマーフィルムからの多層構造の形態である。
【0130】
本発明による接着剤配合物は、ガラス、金属、セラミック、木材、コートまたは非コート紙、板紙包装材料およびプラスチック、例えば、テレフタル酸ポリエチレン(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)およびセロファンなどのような基材を接着するために使用することができる。その場合、そのような固体基材に、フィルム、多層フィルムまたは紙などの薄い可撓性基材を接着剤でつけることができる。
【0131】
以下の実施例は、本発明を単に説明しているにすぎない。当業者は、本発明の機能を変更することなく実施することができる多くの変形例を明確に理解するであろう。
【実施例】
【0132】
Tgの測定および決定
ガラス転移温度(Tg)は、以下の手順による示差走査熱量計(DSC)実験での2回目の加熱から得た。非等温(−85〜200℃、10℃/分)実験は、窒素流下でDSC(TA Instruments)Q2000を使用し、窒素流下冷却器内で操作して実施した。温度および熱流量の較正は標準としてインジウムを用いて行った。
【0133】
数平均分子量(Mn)の測定
上記ポリマー組成物の製造において使用されるポリアルキレンカーボネートの数平均分子量(Mn)の値は、偏向型RI検出器を備えたBruker 3800を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン標準に対して決定した。1mL/分の流速のテトラヒドロフランを室温で溶出剤として使用した。
【0134】
実施例1.感圧接着剤の製造
ポリ(アルキレンカーボネート)(PAC)の混合物を含有する異なるポリマー組成物を以下に詳述する手順に従って製造した。
【0135】
30℃より高いTgを有するポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)を成分b)として使用して、異なるサンプルを製造した。上記PPCは以下の特性を有する。
【0136】
【表1】
【0137】
30℃より低いTgを有するポリ(アルキレンカーボネート)、ポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)またはポリ(エチレンカーボネート)(PEC)のいずれかを成分a)として使用して、異なるサンプルを製造した。それらは以下の特性を有する。
【0138】
【表2】
【0139】
PEC1およびPPC2は、Empower MaterialsによってQPAC25およびQPAC40として供給され;PPC6はTaiZhou BangFeng Plastic Co.、Ltdによって供給されたのに対し、PPC1、PPC3、PPC4およびPPC5は、Angew.Chem.Int.、2003、42、5484−5487;Angew.Chem.Int.、2004、43、6618−6639;Macromolecules、2010、43、7398−7401に記載の手順に従って製造された実験材料であった。
【0140】
上記ポリマー組成物は、以下の表3に記載した量のポリ(アルキレンカーボネート)を混合することによって製造した。
【0141】
各PACは、それぞれの場合に示された割合で使用した。それらは、均質混合物を得るのに十分な時間および温度で、典型的には、170℃および50rpmで8分間、Haake内部ミキサー中で混合した。ミキサーからのサンプルを、Collinポリマープレスを使用して170℃および100バールで3分間圧縮成形して、さらなる特徴付けのための四角いプレートを形成した。
【0142】
【表3】
【0143】
比較目的のために、本発明に含まれないポリマー組成物もまた、上記の表1および2に記載のPAC(a)およびPAC(b)から製造した。これらの比較ポリマー組成物は、以下の表4に記載した量のポリ(アルキレンカーボネート)を混合することによって、本発明のポリマー組成物について上記したのと同じ手順に従って製造した。
【0144】
【表4】
【0145】
実施例2.熱安定性および接着性の測定
熱重量測定
Mettler TGA装置を熱重量測定に使用した。非等温実験は、窒素雰囲気中、温度範囲30〜700℃、加熱速度5℃/分で行った。TGA値は、微分熱重量分析曲線(DTG)の最初の最大値からとる。
【0146】
表5は異なる試験サンプルの熱的特性の実験データを示す。
【0147】
【表5】
【0148】
これらの結果から導き出せるように、異なるガラス転移温度を有するポリ(アルキレンカーボネート)の混合物は、当該混合物から得られる分解温度が著しく高くなるため、各単離成分の熱安定性を相乗的に改善する。この効果は、30℃よりも高いまたは低い両方のガラス転移温度を有するポリ(アルキレンカーボネート)を有する組成物の場合には観察されない
【0149】
帆布からの剥離強さ試験
T−剥離ひずみ下での接着性を帆布−ホットメルト−帆布接着剤接着体で試験した。帆布は、ホットメルト接着剤で一般的に接着される厚紙およびエッジブックと同様のテクスチャーを有する多孔質材料である。
【0150】
帆布との接着剤での接着では、帆布の塗装されていない面を使用して、表面処理を行わずに30×150mmプローブを使用した。
【0151】
接着剤配合物は、スプレッダー(温度はBrookfiled Thermosel装置によって制御した)を使用して、接着する2つのプローブの一方の表面に180℃で塗布した。続いて、そのプローブを、0.88Mpaの圧力を10秒間加えることによって接着した。圧力は油圧プレスによって加えた。
【0152】
T−剥離試験は、接着剤での接着を行った1時間後に、ユニバーサル試験機Instron 4411(Instron Espana and Portugal、Cerdanyola、バルセロナ、スペイン)を使用して剥離速度10mm/分で行った。分離した表面の破損のタイプを視覚的に判定した。
【0153】
剪断接着強さ試験
接着剤配合物の接着性を評価するために、剪断接着強さ試験を行った。それを行うために、アルミニウム−ホットメルト−アルミニウム接着剤接着体を製造した。接着剤での接着を行う前に、接着するべき金属の表面を、当該表面の粗さを改善するためにナイロンたわし(Scotch Brite(登録商標))で表面を引っ掻くこと、続いて、表面汚染物質を除去するためにイソプロパノールでそれを洗浄すること、および溶媒を少なくとも30分間蒸発させることからなる機械的摩擦処理によって処理した。
【0154】
表面処理を行った後、接着するアルミニウムプローブの一方に接着剤の液滴を180℃で塗布し、続いて、もう一方のアルミニウムプローブを上に置き、その接着部に2kgの重り(圧力65.3KPに相当)を10秒間塗布した。接着剤を塗布する温度はBrookfield Thermosel装置によって制御した。接着部を室温で1時間冷却した。
【0155】
次いで、ユニバーサル試験機Instron 8516(Instron、バッキンガムシャー、イギリス)を使用してクランプ変位速度10mm/分で剪断接着強さ試験を行った。
【0156】
表6に示す結果は、5回の試行の平均に相当し、分離した表面の破損のタイプを視覚的に判定した。
【0157】
以下の表6は異なるサンプルの接着性の実験データを示す。
【0158】
【表6】
【0159】
実験結果からわかるように、本発明による組成物は、単離成分と比較して、著しく改善された接着性、特に、改善された剪断接着強さおよび帆布からの剥離強さを有する接着剤配合物を提供する。
【0160】
さらに、得られたデータによれば、オープンタイムは配合物毎に異なるので、最終用途に応じて、基材を接着するのに必要な時間を考慮して最も適当な接着剤配合物を選択することができる。
【0161】
実際、30℃より低いTgを有するポリ(アルキレンカーボネート)の割合が高くなるほど、接着時間は短くなることが観察された。従って、上記混合物中の成分の割合を単に変化させることによって接着剤のオープンタイムを制御することが可能である。
【国際調査報告】