【実施例】
【0130】
以下の実施例は、本開示の一部の態様をさらに記載するために含まれるものであり、本発明の範囲を限定するように使用されてはならない。
(実施例1)
分析物濃度測定のためのナノ粒子トランスデューサの動作原理
【0131】
一実施例では、グルコースオキシダーゼのグルコース酵素反応および酸素拡散を考慮するモデルにより、典型的な試料構成における酸素濃度の空間的および時間的な変化をシミュレーションする。
図1A〜
図1Hは、グルコースオキシダーゼで触媒した反応によるO
2変調シグナルを使用したグルコースの検出のための例証的なナノ粒子トランスデューサに関するシミュレーションしたO
2枯渇動態および分布プロファイルを例示する。グルコースオキシダーゼ(GOx)を含有する典型的なキュベット(1cm×1cm×3cm)を使用して、グルコースにより誘導される酸素消費量をモデリングする。簡潔に述べると、閉鎖システム(酸素拡散なし)では、GOxおよびグルコースの存在下の酸素消費動態は次のように表すことができる。
a([O
2]−[O
2]
0)+b(ln[O
2]−ln[O
2]
0=−(t−t
0))
式中、[O
2]
0は、反応が開始する直前のt
0時間における空気飽和溶液中の[O
2]に対応する。パラメータaおよびbは、GOx濃度、所与のグルコース濃度に関する酵素反応速度定数から計算することができる。この式は、グルコースが酸素と比べて過剰に存在する場合に有効であり、このことは、生理的グルコース濃度(典型的には約mMの範囲)が空気飽和溶液中の酸素濃度(約250μM)および組織中の酸素濃度(<100μM)よりも大幅に高いため、概して真実である。上記の式に基づき、GOx(5nM)および可変濃度のグルコースを含有する閉鎖キュベットにおける酸素濃度の動態変化が
図1Aに示されている。図に見ることができるように、酵素反応が生じると初期の酸素濃度(約250μM、空気飽和溶液)が低下し、その後、異なるグルコース濃度により誘導された相違が区別された。溶液中の酸素の利用可能性制限(酸素供給および拡散のない閉鎖システム)のために、酸素は最終的には、グルコース含量の異なる溶液間で同様の平衡レベルまで枯渇した。
【0132】
酸素拡散は、開放キュベット構成および皮下組織におけるグルコースの定量に関連する。シミュレーションを簡略化するために、キュベットのZ軸を一連の薄層に離散させ、酸素を頂部の開口部からのみ拡散するものとしてモデリングした。各層における時間的酸素濃度は、Fickの法則に左右される酸素の消費および拡散の組合せ効果によってシミュレーションした。最終的には酸素の消費と拡散との間の平衡を確立し、
図1Bに示されるように、実質的な反応時間の後に平坦な濃度曲線を得た。
図1Cは、開放キュベット構成のZ軸に沿った、5nMのGOxおよび20mMのグルコースを含むシステムでの時間的および空間的な酸素分布の3−Dプロット、ならびに酵素反応時間に依存する各層における時間的進化を例示する。500秒の時点において、グルコース濃度は、酸素マッピングにより、特にキュベットの底部分において十分に区別された。
図1Dは、500秒の時点でのグルコース濃度の異なる開放キュベットにおける酸素分布プロファイルを例示する。この結果は、生体液中のグルコース濃度が、酸素トランスデューサの助けにより、蛍光光度計の開放キュベット構成で効果的かつ効率的に測定されうることを示す。
【0133】
組織中酸素濃度(<100μM)が空気飽和溶液中の濃度(約250μM)よりも大幅に低い、皮下組織中の球状試料に関する酸素マッピングのさらなるシミュレーションを提供する。in vivoのリアルタイムでのグルコースモニタリングの要件を満たすため、50nM濃度のGOxを供給して急速な応答時間を達成した。予想したとおり、この試料の中心における時間的酸素変化は、低いGOx濃度のものと比較して短い応答時間をもたらした。
図1Eは、閉鎖した組織酸素環境における、これらのO
2枯渇動態を例示する。実際の移植における3D球状物体の薄層に似せて円形の縁から内部へと酸素を拡散させた。
図1Fは、酸素拡散ありの組織におけるO
2枯渇動態を例示する。酸素拡散の存在下での時間的進化が、比較的短い時間で明確に異なる酸素分布曲線をもたらすグルコース酵素反応を示したことを示す。
図1Gは、20秒の時点における酸素拡散ありの円形構成の2−Dマッピングを例示する。2Dマッピングによりさらに示されるように、酸素プロファイルは異なるグルコースレベルで明確に区別されており、酸素トランスデューサによる皮下グルコース測定の実現可能性が高いことを示している。ある程度の酸素拡散がグルコースの定量において酸素拡散なしの場合と比較して大幅に高い感度をもたらしたことは注目に値する。この差違は、20秒の時点における酸素拡散ありおよびなしでのグルコースの定量のための酸素枯渇の感度を例示する
図1Hに示されている。実践的実験において酸素またはグルコースの拡散を調節するには、多孔質ゲルまたは異なる封入層を有する他のマトリックスへのトランスデューサの包埋など、いくつかの方策を用いることができる。
(実施例2)
分析物濃度測定のためのナノ粒子トランスデューサの生成
【0134】
この実施例では、グルコースの検出のための例証的なシステムにおけるナノ粒子トランスデューサの生成および特徴付けを行った。再沈殿方法を使用して半導体ポリマードットの水分散を行った。典型的な調製物では、それぞれ、半導体ポリマーPDHF、機能性ポリマーPSMA、およびリン光色素PtOEPを、不活性雰囲気下で一晩にわたり撹拌することにより無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解させて、1mg/mLのストック溶液を作製した。3つの溶液をTHF中に希釈および混合して、PDHF濃度100μg/mL、PtOEP濃度10μg/mL、およびPSMA濃度10μg/mLの溶液混合物を生成した。2mL分量の溶液混合物をバスソニケータ内の10mLのMilli−Q水に直ちに添加すると同時に混合物を超音波処理し、続いてさらに100秒間の超音波処理を行った。窒素ストリッピングによりTHFを除去し、90℃のホットプレート上で溶液を5mLに濃縮した後に、0.2ミクロンフィルタを通して濾過した。ナノ粒子形成中、PSMA分子の無水マレイン酸単位が水性環境で加水分解し、Pdot上にカルボキシル基が発生した。リン光色素分子は、それらの疎水性の性質のため、Pdotの内部に封入された。Pdot分散液は透き通っており、数か月にわたり凝集の兆候がなく安定であった。
【0135】
グルコースにより誘導された酸素濃度の増減は、酸素応答性トランスデューサを使用することによって光学シグナルに変換することができる。
図2A〜
図2Dは、Pdot−GOxアセンブリを含むナノ粒子トランスデューサの調製および特徴付けを例示する。このPdotトランスデューサは、酸素感受性リン光色素(白金(II)オクタエチルポルフィン、PtOEP)を含む発色団をドーピングした蛍光半導体ポリマー[ポリ(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)、PDHF]を含む。このデザインでは、コンジュゲートポリマーPDHFは、エネルギーをPtOEP色素に移動させる光ハーベスターの機能を果たし、酸素濃度に対して高い感受性のある高輝度のリン光をもたらした。
【0136】
図2Aは、in vivoでのグルコースモニタリングのためのPdot−GOxバイオコンジュゲートの形成の概略表現である。
図2Aに示されるように、酸素感受性Pdotには、表面カルボキシル基の官能基をもたせた。Pdotのカルボキシル基と酵素中のアミン基との間のEDC触媒反応を使用し、PdotをGOxでコーティングした。Pdot表面のカルボキシル基とGOx酵素のアミン基との間のEDC触媒反応を利用することにより、バイオコンジュゲーションを行った。このバイオコンジュゲーション反応では、80μLの濃HEPES緩衝液(1M、pH6.5)を4mLの官能化Pdot溶液(MilliQ水中50μg/mL)に添加し、pH6.5の20mM HEPES緩衝液中のPdot溶液をもたらした。次いで、100μLのグルコースオキシダーゼ(20mM pH=6.5 HEPES中10μM)を溶液に添加し、ボルテックスで十分に混合した。80μLの新しく調製したEDC溶液(MilliQ水中5mg/mL)を溶液に添加し、上記の混合物を室温で4時間にわたり回転式振盪機上に置いた。最後に、結果として得られたPdotバイオコンジュゲートを、Sephacryl HR−300ゲル媒体を使用したゲル濾過により、遊離生体分子から分離した。GOxのPdotに対する比を変えると、異なるダイナミックレンジのPdot−GOxセンサを生成することができる。
【0137】
動的光散乱法測定は、バイオコンジュゲーション後のPdotの流体力学直径が、
図2Bに例示されるように、24nmから32nmに増加した一方で、Pdot−GOxの表面ゼータ電位は、
図2Cに示されるように、−31mVから−20mVに変化したことを示した。粒径および表面電位の両方の測定により、コンジュゲーションの成功および粒子表面上のGOxの存在が裏付けられた。透過型電子顕微鏡法(TEM)は、Pdot−GOxナノ粒子が球状であり単分散であったことを示した。
図2Dは、カルボキシルPdot(左)およびPdot−GOx(右)の代表的なTEM画像を例示する。
【0138】
Pdot−GOxバイオコンジュゲートはまた、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液中で30日超にわたる優れたコロイド安定性を呈した。
図3Aは、30日間にわたるPdot−GOxトランスデューサのコロイド安定性を例示する。in vivoでのグルコースモニタリングの目的のため、このPdot−GOxコンジュゲートは、少量の移植センサ材料からのシグナルでさえも容易に検出することを可能にする、類いまれな輝度および高い感度を有した。このPdotトランスデューサは、長期の経皮検出のために十分なルミネセンスシグナルをもたらすと同時に、移植型センサの生体適合性要件も満たす。
【0139】
蛍光分光法は、生体液中のグルコース検出のためのPdot−GOxアセンブリの高い感度、優れた選択性、および調整可能なダイナミックレンジを示した。Pdotトランスデューサは、PDHFからの380nmにおける優位な吸収およびPtOEPからの648nmにおける主要なリン光ピークを呈した。
図3Bは、Pdot−GOxセンサのUV可視(vis)吸収スペクトルおよびフォトルミネセンススペクトルを示す。赤色発光はUV励起から良好に分離され、これは発光シグナルを裸眼でモニタリングするのに優れた利点である。
図3Cは、PDHFの蛍光発光とリン光色素PtOEPの吸収との間のスペクトルの重複を例示する。この重複は発色団同士の間のエネルギー移動をもたらし、PDHFドナーにより吸収されたUV光をPtOEPアクセプターにポンピングすることが可能になる。
図3Dは、380nmの励起波長を有するドープなしのPDHF PdotおよびPtOEPドープPdotの発光スペクトルを例示する。PDHFドナーからPtOEPアクセプターへと生じる効率的なフェルスター共鳴エネルギー移動のため、PDHFポリマーの青色蛍光は著しく消光された。
(実施例3)
ナノ粒子トランスデューサの特徴付け
【0140】
この実施例では、Pdot−GOxナノ粒子トランスデューサの分光学的および物理的な特性を測定した。動的光散乱法(DLS)および透過型電子顕微鏡法(TEM)により、Pdotの粒径および形態の特徴付けを行った。動的光散乱法は、Malvern Nano ZS機器を用い、1cmの使い捨てポリスチレンキュベットを使用して25℃で行った。同じMalvern Nano ZS機器でゼータ電位測定を実施した。TEM測定のための試料は、Pdots分散液を銅グリッド上に滴下流延することによって調製した。試料を室温で乾燥させ、次いで、120kVで動作するHitachi H−600顕微鏡を使用してTEM画像を得た。1cmのガラスキュベットを使用し、Schimadzu UV−2550走査分光光度計を用いて、UV可視吸収スペクトルを記録した。Hitachi F−4500蛍光分光光度計を使用して蛍光スペクトルを得た。380nmの励起波長で、キュベットにグルコースを加えた10分後に、異なるグルコース濃度におけるPdot−GOxの蛍光スペクトルを測定した。赤色発光の青色発光に対する強度比(I
648/I
428)を計算して、感度曲線をプロットした。
【0141】
図4Aは、異なるグルコース濃度におけるPdot−GOxトランスデューサの発光スペクトルを示す。これらの曲線は、グルコース0mMから20mMまで2ずつ変動する;648nmのピークにおいて、これらの曲線は、最も低い濃度から最も高い濃度まで強度順に並んでおり、20mMが最も強力である。Pdot−GOxバイオコンジュゲートは、グルコース濃度に対して感受性のある高輝度の赤色リン光を示したが、弱い青色蛍光は一定のままであった。一定の青色蛍光および感受性のある赤色リン光は、レシオメトリックな検知に役立った。これは、細胞および組織のグルコースレベルの定量的決定などの用途に有用である。
図4Bは、グルコース濃度の関数としてのPdot−GOxトランスデューサのレシオメトリックな較正プロット(I
648/I
428)を示す。
図4Bに示されるように、648nmにおける発光の、428nmにおける発光に対する比は、血中グルコース約4mM〜約18mMの生理学的に適切な範囲内のグルコース濃度との直線関係を示した。曲線の直線部分の傾きとして感度を定義することにより、Pdot−GOxセンサは1mM当たり20%の強度変化を示し、そのためこれは最も高感度の蛍光グルコースセンサのうちに入った。加えて、Pdot−GOxアセンブリのダイナミックレンジは、バイオコンジュゲーション反応におけるGOxのPdotに対するモル比を変えることによって調整することができる。
【0142】
図4Cは、水性懸濁液中のグルコースに対するPdot−GOxの応答曲線を例示する。水性環境におけるPdot−GOxプラットフォームは、数分以内に急速なグルコース応答を呈した。センサの応答は、キュベット内でPdot−GOx溶液にグルコースを添加した後に一般的な蛍光光度計によって測定した。センサの応答時間は、キセノンランプを備えた蛍光分光光度計(Hitachi F−4500、日本)を用い、HEPES緩衝液(pH=6.5)中で25℃において、1cmのガラスキュベットを使用して測定した。応答曲線は全て、380nmの励起波長を用いて取得した。30μLのグルコース溶液を3mLのPdot−GOx懸濁液に添加することにより、時間の関数としての648nmにおけるPdot−GOx(10μg/mL)の蛍光強度を記録した。グルコースが励起体積に拡散するには時間がかかることに留意すると、648nmにおける発光強度は10分以内に一定値まで増加してプラトーに達し、数分以内のセンサの急速な応答を示している。Pdot−GOxセンサの選択性を評価するために、様々な炭水化物種(10mM)を添加した10分後に380nmの励起を用いてPdot−GOxの蛍光スペクトルを測定した。応答時間は主にグルコース拡散および酵素反応によって決定した。
【0143】
Pdot−GOxセンサは、GOx酵素の特異的な触媒反応のために、異なる炭水化物誘導体などの可能性のある干渉基質に対する優れた選択性を示す。
図4Dは、Pdot−GOxトランスデューサの、干渉する可能性のある炭水化物と比べたグルコースに対する選択性を例示する。高い選択性は、in vivoグルコースモニタリングにおいて、例えばボロン酸認識に基づくグルコース検知色素と比較して、優れた利点をもたらす。さらに、グルコースを測定のためにPdot−GOx溶液に添加し、各サイクル後に脱塩カラムによって除去した可逆的測定により、動作安定性を評価した。センサの応答は、10回を超える反復測定を行っても変化なしのままであった。急速かつ可逆的な応答は、連続的なグルコースの測定を可能にし、グルコースセンサへの簡単な組み込みを可能にした。25℃および4℃における2か月の貯蔵後、センサはその初期応答の95%超を保持した。これらの結果は、Pdot−GOxバイオコンジュゲートの優れた動作安定性および貯蔵安定性を示した。
(実施例4)
低い分析物濃度に対して感受性のあるナノ粒子トランスデューサ
【0144】
この実施例では、選択された感度を有するナノ粒子トランスデューサを記載し、特に、低分析範囲における分析物感度を有するナノ粒子トランスデューサを提供する。
図5Aおよび
図5Bは、低い濃度における検知のための、酵素で密にコーティングされたナノ粒子の使用を例示する。
図5Aは、様々なグルコース濃度における、GOxで密にコーティングされたPdotの発光スペクトルを例示し、
図5Bは、低分析範囲内のPdot−GOxのレシオメトリックな較正プロット(I
648/I
428)を示す。
図5Aおよび
図5Bに示されるように、GOxで密にコーティングされたPdotは、比較的低い分析範囲(1〜4mM)で高い感度(1mM当たり25%)を示し、これは、低血糖症におけるグルコースモニタリングに有用でありうる。
(実施例5)
ナノ粒子トランスデューサの生体適合性
【0145】
この実施例では、本明細書に記載されるナノ粒子トランスデューサの細胞株に対する生体適合性を裏付ける実験を記載する。生体適合性は、例えばPdot−GOxナノ粒子などのナノ粒子トランスデューサをin vivoグルコースモニタリングのための移植型センサとして使用することができるかどうかを決定する、重要な因子である。HeLa細胞における細胞生存率アッセイを使用して、Pdot−GOxナノ粒子の細胞傷害性を評価した。HeLa細胞株は、細胞毒性研究および細胞内グルコースイメージングのために使用した。細胞培養には、10%のウシ胎仔血清(FBS)、50U/mLのペニシリン、および50μg/mLのストレプトマイシンを補充したフェノールレッドを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Life Technologies Gibco、USA)を使用した。細胞は、インキュベータ(Thermo scientific、USA)内で、37℃の空気/CO
2(95:5)の雰囲気において、T75細胞培養フラスコ(NEST、Wuxi China)内で維持した。細胞は、実験前にコンフルエンスに達するまで前培養した。
【0146】
細胞傷害性研究のため、24時間にわたり96ウェルプレートに細胞を播種し(ウェル1つ当たり100μL中7000個の細胞)、次いで、それぞれPdot、GOx、CAT(カタラーゼ)、およびPdot−GOx(+CAT)(異なる最終濃度)を細胞培養培地に添加した。様々な材料と共に細胞を24時間インキュベートした後に、MTT(20μL、5mg/mL、BioSharp、Hefei China)を3時間にわたって添加した。培地を除去し、DMSO(150μL)(Sigma−Aldrich、Shanghai China)を各ウェルに加え、室温で10分間にわたり穏やかに振盪して、形成した沈殿物を全て溶解させた。マイクロプレートリーダー(BioTek Cytation3、USA)を使用することにより、490nmにおける吸光度を測定した。細胞生存率は、Pdot−GOx溶液と共にインキュベートした細胞の吸光度の、培養培地のみと共にインキュベートした細胞の吸光度に対する比によって表した。
【0147】
図6A〜
図6Dは、Pdot−GOxトランスデューサを含む様々な材料で処置したHeLa細胞の細胞生存率を例示する。
図6A、
図6B、および
図6Cは、それぞれ、様々な濃度のPdot−GOxトランスデューサ、GOx、およびカタラーゼで処置した細胞の、24時間の細胞生存率を示す。
図6Aはまた、HeLa細胞と同じプロトコールに供したMCF−7細胞およびGES−1細胞の24時間の細胞生存率を例示し、生存率が細胞株に依存しないことを示している。
図6Bにより示されるように、GOx単独は、過酸化水素の発生に起因して細胞死を誘導した。しかしながら、
図6Dに示されるように、カタラーゼの存在下では、Pdot−GOxナノ粒子(<10μg/mL)は、24時間のインキュベーション後の細胞と生体適合性がある。この濃度範囲において、Pdot−GOxセンサは、エンドサイトーシスを介して細胞内に進入することができた。HeLa細胞は、糖不含培養培地中で12時間にわたり、Pdot−GOxナノ粒子と共にインキュベートした。
【0148】
細胞内グルコース検知のため、ポリ−L−リシンでコーティングされた22mmのガラス底培養皿(NEST、Wuxi China)に1.5×10
4個のHela細胞を播き、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で一晩(37℃、5%のCO
2)増殖させた。次いで、これらの細胞を、Pdot−GOx(10μg/mL)およびカタラーゼ(CAT、250kDa、Sigma−Aldrich、Shanghai China)(300nM)を含有する糖不含DMEM中で12時間にわたり培養した。4時間のインキュベーションのため、細胞培養物にグルコースをさらに補充した(25mM)。次いで、細胞を温PBS緩衝液で3回洗浄してから蛍光顕微鏡で見た。
【0149】
0.45NAのLUCPLFLN 20X対物レンズを備えた倒立蛍光顕微鏡(Olympus IX71、日本)で蛍光画像を取得した。水銀ランプから帯域通過フィルタ(Semrock FF01−377/50−25、Rochester、NY USA)によりフィルタリングした励起光を生成した。蛍光シグナルを帯域通過フィルタ(Semrock FF01−655/40−25、Rochester、NY USA)によりフィルタリングし、Andor iXon3フレーム転送EMCCD(Andor、UK)でイメージングした。
【0150】
図7A〜
図7Cは、HeLa細胞における細胞内グルコース検知を例示する。
図7Aは、Pdot−GOxインキュベーションをしていない対照群としてのHeLa細胞を示し、
図7Bは、24時間にわたりPdot−GOxナノ粒子と共に糖不含培地でインキュベートした細胞を示す。
図7に示されるように、蛍光イメージングは、細胞によるPdot−GOxナノ粒子の明らかな内部移行を示した。次いで、培養細胞の培地にグルコースを補充した。
図7Cは、24時間にわたりPdot−GOxと共にインキュベートし、4時間にわたりグルコースを補充した細胞を示す。グルコースを与えなかった細胞と比較すると、細胞内発光は大幅に増強されており、Pdot−GOxセンサによる細胞内グルコースの検出の成功が示された。
(実施例6)
in vivoマウスモデルにおける生体適合性
【0151】
この実施例では、本明細書に記載されるナノ粒子トランスデューサの、in vivoで連続的な分析物のモニタリングに使用するための生体適合性を裏付ける、マウス対象を使用した実験を記載する。全ての動物実験において、体重およそ25gで8週齢のBALB/c雄マウス(Vital River Laboratories(VRL)、Beijing China)を用いた。実験群のサイズは各処置につき3頭の動物を含み、結果の十分な再現と動物数の低減を両立させている。イメージングした動物は全て分析に含めた。動物は、in vivoグルコースモニタリングのため、イメージングの前に8時間にわたって絶食させた。各マウスに100μLの抱水クロラール(10重量%)を腹腔内注射して麻酔した。その後、連続的なin vivoグルコースモニタリングのため、マウスの背面に200μLのPdot−GOx(50μg/mL)を皮下注射した。
【0152】
類まれな輝度のため、ミクログラム範囲のPdotトランスデューサが経皮的に検出可能であった;濃度の異なる3つの移植部位が、小動物イメージングシステムを用いて明らかに区別された。Andor iKon−Mフレーム転送CCD(Andor iKon−M 934、UK)およびキセノン光源(Asahi Spectra MAX−303、日本)を備えたカスタム製の小動物イメージングシステムを用いて蛍光動物イメージングを取得した。麻酔投与の25分後、543nmの励起および655nmの発光を用い、5秒の露光時間を使用することにより、蛍光イメージングを行った。イメージング直後、メスを使用してマウスの尾の最大1cmを素早く除去して尾から血液試料を収集し、標準的なグルコース計(Accu−Chek、Roche Diagnostics)を使用することにより血中グルコース濃度を測定した。その後、マウスの腹腔内を200μLの滅菌グルコース溶液(1M)で処置して血中グルコース濃度を上昇させた。15分後、100μLの滅菌インスリン食塩水溶液(0.5U/mL、Wanbang Biopharmaceuticals、Xuzhou China)を腹腔内注射して血中グルコース濃度を低下させた。このプロセスの間、我々は、血中グルコース濃度が正常な範囲に戻るまで5分毎に蛍光画像をキャプチャし、血中グルコース濃度を測定した。対照群の動物については、グルコースおよびインスリンの同時投与の代わりに同じ用量の滅菌食塩水をマウスに注射した。蛍光イメージングは同じ手順に従って行った。グルコースモニタリング実験後、過剰用量の麻酔を注射することによって動物を安楽死させた。
【0153】
図8Aおよび
図8Bは、Pdot−GOxトランスデューサを皮下注射したマウスの蛍光イメージングを例示する。
図8Aは、異なる濃度でPdot−GOxトランスデューサを注射した3つの部位の蛍光イメージングを例示し、
図8Bは、Pdot−GOxを注射した3つの異なる部位の蛍光強度を示す。事実、0.25μg(50μg/mLの5μL)のPdot−GOxは、UVランプ励起下で皮膚層および毛を通して裸眼でも視認可能であった。
図9は、ナノ粒子トランスデューサを皮下注射したマウスの室内光(上)およびUV(下)のもとでの画像を示し、ナノ粒子トランスデューサの蛍光が明らかに視認可能である。移植の材料を微小な量で使用することができるのは、移植部位における炎症を低減させ、移植型センサの生体適合性要件を満たすのに役立つ。
【0154】
生きたマウスの血中グルコースの増減に対するPdot−GOxアセンブリのin vivo応答が、動物全身の生体光イメージングにより明示された。グルコースの腹腔内注射により、マウスの血中グルコースレベルを高血糖範囲内である約20mMまで上昇させた。次いで、インスリン注射を用いて、正常血糖範囲内である約10mMまで血中グルコースレベルを低下させた。比較のため、切断した尾の血液試料を使用し、市販のグルコース計で5分毎に血中グルコース濃度を測定した。始点として、生きたマウスに移植されたPdot−GOxセンサの蛍光画像を麻酔投与後25分目にキャプチャした。その後、マウスの腹腔内を200μLの滅菌グルコース溶液(1M)で処置して血中グルコースレベルを上昇させた。15分後、100μLの滅菌インスリン食塩水(0.5U/mL)を腹腔内投与して血中グルコースレベルを低下させた。
【0155】
プロセス全体の間、蛍光画像を5分毎にキャプチャして、血中グルコース濃度の変化をモニタリングした。
図10Aおよび
図10Bは、それぞれ、グルコース/インスリン処置ありおよびなしのマウスの蛍光画像を示す。イメージング結果により示されるように、蛍光シグナルはグルコース投与直後に増加し、インスリンの注射後に元のレベルまで低下した。対照的に、グルコース/インスリンなしのマウスからの蛍光は変化なしのままである。
図10Cは、グルコースおよびインスリンを投与した3頭のマウスの血中グルコース濃度の関数として、Pdot−GOxセンサの平均ルミネセンス強度および標準偏差を示す。図に明らかに示されているように、ルミネセンス強度(円)は血中グルコースレベル(四角)と密接に相関し、血中グルコース増減による濃度変化に常に沿っていた。グルコース注射を与えなかったマウスについては、
図10Dに示されるように、ルミネセンス強度およびグルコース濃度の両方が比較的一定の状態を保った。これらの観察は、血中グルコース濃度の変化を経皮的にモニタリングするのに十分なシグナルおよび感度をもたらした、Pdot−GOxセンサの優秀なin vivo応答を明白に裏付けた。
(実施例7)
ナノ粒子トランスデューサの薬物動態および安定性
【0156】
皮下注射後のPdot−GOxナノ粒子の薬物動態およびin vivo分布を評価した。
図11は、長期のグルコースモニタリングおよびin vivo分布を例示する。マウスはセンサ移植の30日後に屠殺した。体内分布研究のため、グルコースモニタリング実験後のマウスを過剰用量の麻酔によって安楽死させた。臓器および組織(心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、大腿筋、および移植部位付近の皮膚組織)を蛍光イメージング分析のために摘除した。最後に、切り出した臓器および組織を組織学および蛍光分析のためにホルマリンに入れた。
【0157】
摘除した臓器および組織を10%緩衝ホルマリン中で一晩かけて固定した。組織は、一連の段階的なエタノール浴によって脱水し、キシレンを使用して透徹し、次いでワックスを浸透させる。次いで、浸透した組織をワックスブロックに包埋する。次いで、ミクロトームを使用して組織を5μmの切片に切り、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色する。組織学的切片を光学顕微鏡下で観察した。皮下投与後の主要臓器および組織内におけるセンサ分布を査定するため、分析のために蛍光イメージングも用いた。UV励起フィルタ(375nm)および赤色発光フィルタ(655nm)を備えた蛍光顕微鏡を用い、H&E染色なしの組織切片の蛍光画像をキャプチャした。皮下組織および様々な臓器を生体光イメージングのために摘除した。
【0158】
図11Aは、Pdot−GOxトランスデューサ(下)または滅菌リン酸緩衝食塩水(上)を皮下注射したマウスから切り出した臓器および皮膚組織の蛍光画像を示す。画像により示されるように、強い蛍光は皮下組織からしか観察されず、Pdot−GOxが1か月もの間にわたって移植部位に留まったことを示している。この時点において、
図11Bに示されるように、対照動物と比較して、肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓、および筋肉を含む様々な臓器において、有意差は観察されなかった。
【0159】
組織切片のさらなる顕微鏡検査は、生体光イメージング結果と一致して、これらの臓器から検出可能なルミネセンスを示さなかった。
図12は、ナノ粒子トランスデューサ注射30日後のマウスの組織切片の組織化学的分析を示す。in vivo分布研究は、Pdot−GOxナノ粒子が主に皮下移植部位内に捕捉され、末梢血に進入しなかったことを示した。注射される溶液中の水分子は末梢組織により急速に吸収され、ほとんど拡散しない安定なナノ粒子アセンブリをもたらしうる。この観察は、基質上のPdot凝集物が有機溶媒中であっても低い溶解性を有するという結論と一致する。
【0160】
移植部位におけるPdot−GOxアセンブリは、連続的グルコースモニタの開発における主要な目標であった、長期間にわたる高感度のグルコース検出を示した。生体光イメージングは、選定された時間間隔で、すなわちPdot−GOxセンサの注射後7日、15日、および30日に行った。
図13A〜
図13Cは、ナノ粒子トランスデューサの注射後7日目(
図13A)、15日目(
図13B)、および30日目(
図13C)における生きたマウスの蛍光イメージングを示す。
【0161】
移植されたPdot−GOxアセンブリは、蛍光(円)がグルコース(四角)に近接して沿っている
図11Cおよび
図11Dにそれぞれ示されるように、7日間および15日間にわたって目立った劣化の兆候がなく優れた応答を呈した。
図11Eに示されるように、30日後、センサのルミネセンス強度は依然として血中グルコースレベルと密接に相関し、濃度変化に常に沿っており、上下サイクルにおけるグルコースの変動に対する比較的小さな強度変化から感度がわずかに減少したのみであった。このわずかな劣化は、Pdot表面上の酵素の触媒活性の減少に起因する可能性が高い。
図11Fは、Pdot−GOxを注射したマウス(右)およびPBSを注射した対照群(左)から切り出した臓器切片のヘマトキシリンおよびエオシンによる染色を例示する。対照群と比較すると、目立った臓器損傷も炎症も観察されなかった。組織学的分析は、主要臓器および組織における毒性作用を明らかにせず、Pdot材料との生体適合性を示した。
(実施例8)
携帯型デバイスを用いたグルコース濃度モニタリングのためのナノ粒子トランスデューサ
【0162】
この実施例に例示されるように、ナノ粒子トランスデューサにより、洗練されたイメージング機器類がなくともin vivoグルコース濃度の定量的測定が可能になる。皮下に移植されたPdot−GOxアセンブリのグルコース応答を検出するために、携帯型の光ファイバーベースの微小分光計を使用した。
図14Aは、Pdot−GOxを皮下注射したマウスのUV光(385nm)下での写真を示す。in vivoイメージングに使用したものと同じプロトコールのもとで、経皮蛍光シグナルを収集することにより、移植されたPdot−GOxセンサの発光スペクトルを測定した。
図14Bは、生きたマウスに移植されたPdot−GOxトランスデューサの、グルコースおよびインスリン注射後の強度比の変化(480nmに対して650nm)を示す挿入図とあわせて、385nmで励起した、生きたマウスに移植されたPdot−GOxトランスデューサの蛍光発光スペクトルの動態変化を例示する。
図14Bに示されるように、650nmにおける発光強度は、グルコースおよびインスリンの作用に起因するグルコースレベルの増減を明らかに反映した。最も高いピークは10分時点であり、その後の各10分間隔は、グルコースレベルがインスリンにより低下するのに伴ってなだらかに低下している(0分時点の測定を除く)。0分および40分におけるスペクトルおよびグルコースレベルはほぼ等しく、最も低い強度曲線は60分時点の測定に対応する。480nmにおける青色発光は一定の状態を保ち、レシオメトリックな測定のための内部基準として使用することができる。
図14Cは、グルコースおよびインスリン注射後の、生きたマウスに移植されたPdot−GOxセンサの強度比の変化(480nmに対して650nm)を示す。これらの結果もまた、切断した尾の血液試料を使用してグルコース計により測定した血中グルコースの上昇および低下に密接に従う。コンパクトな携帯型の微小分光計を用いた迅速かつ定量的な測定は、スマートフォンとのシステム統合またはウェアラブルデバイスの開発のために特に望ましい。
(実施例9)
ナノ粒子トランスデューサのためのさらなる発色団および酵素の例
【0163】
この実施例は、代替的な発色団構成を使用したいくつかのさらなるナノ粒子トランスデューサを例示する。記載されている実施例は網羅的ではなく、本明細書に記載される技術を使用して形成することのできる幅広い構造を例示するに過ぎない。グルコースの検出のための例証的な酵素としてGOxを提示するが、他の分析物のモニタリングのために代替的な酵素を用意してもよい;例えば、代替的な分析物を酸化することにより酸素を消費して関連する発色団の蛍光に変化をもたらす酵素とGOx酵素を交換することによって、本明細書に記載されるグルコース感受性を代替的な分析物に置き換えてもよい。このように、酵素が分析物との酸素消費反応を触媒する場合、任意の分析物の検出のための酸素消費酵素と組み合わせれば、いずれの酸素感受性発色団もトランスデューサ蛍光シグナルをもたらすために使用することができる。
【0164】
図15A〜
図15Dは、グルコースの検出のためのPdot−GOxトランスデューサにおける、do−PFO、10%のPdOEP、および10%のPSMAを含む発色団を有するナノ粒子トランスデューサからの蛍光発光を示す。
図15Aは、複数のグルコース濃度に対する発光スペクトルを示す。
図15Bは、0mM〜約20mMの濃度範囲に対するグルコースを検出する前記トランスデューサの較正プロットを示し、その範囲全体にわたるレシオメトリックな応答曲線を示している。
図15Cは、測定されたグルコース濃度に実質的に重なる発光曲線を示すin vivoのマウス応答データを示す。
図15Dは、グルコースを与えたマウス(上の画像)およびグルコースを与えていない対照群(下の画像)の時間データを含む画像を示す。
図15Cは、測定されたグルコース濃度に実質的に重なる発光曲線を示すin vivoのマウス応答データを示す。
図15Dは、グルコースを与えたマウス(上の画像)およびグルコースを与えていない対照群(下の画像)の時間データを含む画像を示す。
【0165】
図16Aおよび
図16Bは、グルコースの検出のためのPdot−GOxトランスデューサにおける、PSMA、1%のPdOEP、および0.1%のクマリン1を含む発色団を有するナノ粒子トランスデューサからの蛍光発光を示す。
図16Aは、複数のグルコース濃度に対する発光スペクトルを示す。
図16Bは、0〜約20mMの濃度範囲に対するグルコースを検出する前記トランスデューサの較正プロットを示し、レシオメトリックな応答曲線を示している。
【0166】
図17Aおよび
図17Bは、グルコースの検出のためのPdot−GOxトランスデューサにおける、PSMA、1%のPtOEPK、および0.1%のナイルレッドを含む発色団を有するナノ粒子トランスデューサからの蛍光発光を示す。
図17Aは、複数のグルコース濃度に対する発光スペクトルを示す。
図17Bは、0〜約20mMの濃度範囲に対するグルコースを検出する前記トランスデューサの較正プロットを示し、レシオメトリックな応答曲線を示している。
(実施例10)
反応性分析物の検出のためのナノ粒子センサ
【0167】
本開示のさらなる態様では、触媒酵素を必要とすることなく反応性分析物の検出を可能にするナノ粒子センサが提供される。ナノ粒子センサは、例えば、酸素感受性発色団を含むPdotなどのナノ粒子を供給することによって、アスコルビン酸を検出するために用いることができる。アスコルビン酸は還元剤であるため、自発的に反応して酸素を消費する。したがって、前記センサは、例えば、アスコルビン酸が薬学的分量で存在するとき、アスコルビン酸の存在を検出するために使用することができる。
【0168】
図18Aおよび
図18Bは、アスコルビン酸の検出のためのPdotナノ粒子センサにおける、PDHF、10%のPtOEP、および10%のPSMAを含む発色団を有する例証的なナノ粒子センサからの蛍光発光を示す。
図18Aは、複数のアスコルビン酸濃度に対する発光スペクトルを示す。
図18Bは、約2mM〜約20mMの濃度範囲に対するアスコルビン酸を検出する前記センサの較正プロットを示し、その範囲全体にわたるレシオメトリックな応答曲線を示している。
【0169】
図19Aおよび
図19Bは、ナノ粒子センサを使用した、生きたマウスにおけるin vivoでの連続的なアスコルビン酸のモニタリングを例示する。
図19Aは、異なる濃度のアスコルビン酸を投与した、生きたマウスに注射したナノ粒子センサの蛍光強度を例示する。
図19Bは、Pdotセンサを注射された生きたマウスにおける、変動するアスコルビン酸濃度のin vivo蛍光イメージングを示す。
【0170】
図20Aおよび
図20Bは、小型光学検出システムによるアスコルビン酸血中濃度のモニタリングを例示する。
図20Aは、385nmで励起した、生きたマウスに注射されたPdotの蛍光発光スペクトルの、アスコルビン酸の血中濃度に対する動態変化を示す。
図20Bは、アスコルビン酸の静脈内投与後のその血中濃度に対する蛍光強度の応答を時間の関数として示す。したがって、酸素感受性発色団を含むナノ粒子センサを用いたアスコルビン酸のin vivo検出が明示された。
(実施例11)
ナノ粒子トランスデューサを使用した対象のグルコースモニタリングのためのウェアラブルデバイス
【0171】
本明細書に記載されるナノ粒子トランスデューサの長期安定性、高い信頼性、および急速な可逆的応答は、in vivoグルコースモニタリングのためのPdot−GOxトランスデューサの使用を可能にする。この実施例では、記載されるin vivo試験において明示されるように、Pdot−GOxトランスデューサを真皮下に注射し、経皮UV照射を用い、発せられた蛍光を検出して血中グルコースレベルを連続的に決定するプローブによる、連続的な経皮モニタリングができるようにする。Pdot−GOxトランスデューサの蛍光発光に対して感度の高い光学センサと、ナノ粒子の蛍光のためのエネルギーを供給する波長の光を供給する照射源とを備える、ウェアラブルデバイスが提供される。光学センサは、対象の皮膚を通して伝達される蛍光を検出して、血中グルコースの連続的な経皮モニタリングを可能にするように適合されている。光学センサは、デバイス内に配置されたプロセッサおよびメモリに連結している。メモリは命令を含み、命令が実行されると、プロセッサは、光学センサを使用して、グルコースの存在および光源からの照射に応答して複数のPdot−GOxトランスデューサにより発せられた蛍光を測定する。本デバイスは、電力を供給するためのバッテリーをさらに備える。
(実施例12)
人工膵臓のためのグルコースセンサとしてのナノ粒子トランスデューサ
【0172】
この実施例では、Pdot−GOxトランスデューサを人工膵臓内でグルコースセンサとして用い、測定されたグルコースが高ければインスリンの分注を、または測定されたグルコースが低ければインスリン分注の停止をトリガするフィードバックループを提供する。本デバイスは、グルコースが所定の閾値を上回るかまたは下回るのに応答してトリガされるアラーム機能を備える。人工膵臓は、グルコース感受性ナノ粒子トランスデューサと、UV光を供給する照射源と、ナノ粒子発光波長における蛍光を検出するように適合された光学検出器とを備える、移植型デバイスである。このデバイスは、本明細書に記載されるものと同様の較正曲線を使用して、測定された蛍光から血中グルコースレベルを決定するための、また、貯蔵チャンバからインスリンポンプを介した患者へのインスリンの分注を制御するためのプロセッサをさらに備える。必要に応じて、患者の外部にある供給源から貯蔵チャンバへの補給を行ってよい。検出器、プロセッサ、およびポンプは、血中グルコースレベルを所定範囲内に維持するためのフィードバックループを提供し、グルコースレベルが所定範囲外になるとアラームがトリガされうる。所定範囲は、血糖制御の強化または緩和ができるようにユーザにより調節可能である。このデバイスは、較正目的でグルコースレベルを時間の関数としてログするため、ならびにグルコースレベル履歴をユーザに提供するための、メモリも備える。このデバイスは、モバイルデバイスとの、かつ/またはコンピュータネットワーク上での、任意選択の無線通信を可能にする、トランスミッタをさらに備える。
(実施例13)
ナノ粒子トランスデューサを含むコンタクトレンズ
【0173】
この実施例では、対象の眼にレンズを装着した対象の涙液中の分析物を検出するためのナノ粒子トランスデューサを含むコンタクトレンズが提供される。対象により装着されると、眼の涙液がレンズを透過して、ナノ粒子トランスデューサが涙液に接触する。レンズは、グルコースの検出のために上述のように構成された、グルコースオキシダーゼおよび発色団を含むナノ粒子トランスデューサを含む。トランスデューサは、装着者の視力矯正をもたらす形状をした、コンタクトレンズの実質的に透明な膜に包埋されている。対象にはスキャナが提供され、このスキャナは、眼の上に置くことができ、ナノ粒子トランスデューサの蛍光を誘導するための照射を供給し、誘導された蛍光を検出するための検出器を備える。ナノ粒子トランスデューサは、分析物の濃度に応答して変動する強度の光を発し、これにより、対象の涙液中の分析物濃度の測定が行われる。涙液中の分析物の濃度は血液中の分析物の濃度と相関する;したがって、この測定により、血液中の分析物濃度の測定が行われる。スキャナは、糖尿病性網膜症などの状態の検出のための網膜走査を行うこともできる。
(実施例14)
汗の測定から血中グルコースレベルを検出するためのデバイス
【0174】
この実施例では、対象の汗中のグルコースの検出に基づく血中グルコースレベルの測定のためのデバイスが提供される。ウェアラブルバンドと、複数のナノ粒子トランスデューサと、照射源と、光学センサとを備えるデバイスが提供される。ナノ粒子トランスデューサは、グルコースの検出のために上述のように構成された、グルコースオキシダーゼおよび発色団を含む。ナノ粒子トランスデューサは、対象により装着されるとナノ粒子トランスデューサが対象の皮膚に接触するように、デバイスの表面上に配置されている。皮膚上には汗が典型的に存在するため、ナノ粒子トランスデューサはしたがって対象の汗に接触することができる。対象の汗は、血液中のグルコースに比例して変動するグルコースを含有する;したがって、汗のグルコース濃度の測定により、血中グルコースレベルの決定が可能になる。
【0175】
デバイスの照射源は、蛍光を誘導するために、対象の皮膚に接触しているナノ粒子トランスデューサに照射を供給するように位置決めされている。ナノ粒子トランスデューサは、接触した皮膚上の汗の薄膜におけるグルコースの濃度に基づいて変動する蛍光を生成する。この蛍光は、プロセッサに連結した光学センサによって検出される。プロセッサは、光学センサにより検出された蛍光に基づいて汗中のグルコース濃度を決定する。プロセッサは次いで、汗中のグルコース濃度に基づいて血中グルコース濃度を決定する。
(実施例15)
生成物反応要素(H
2O
2)の検出に基づくナノ粒子トランスデューサ
【0176】
この実施例では、生成物反応要素を検出するためのナノ粒子トランスデューサを生成し、流体構成成分の検出のための例証的なシステムで特徴付けを行った。再沈殿方法を使用してナノ粒子の水分散液を形成した。1つの調製物では、それぞれ、機能性ポリマーPSMAおよび過酸化水素感受性色素を、不活性雰囲気下で一晩にわたり撹拌することにより無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解させて、1mg/mLのストック溶液を作製した。これらの溶液をTHF中に希釈および混合して溶液混合物を生成し、これをさらにバスソニケータ内のMilli−Q水に直ちに添加すると同時に混合物を超音波処理した。窒素ストリッピングによりTHFを除去し、90℃のホットプレート上で溶液を5mLに濃縮した後に、0.2ミクロンフィルタを通して濾過した。ナノ粒子形成中、PSMA分子の無水マレイン酸単位が水性環境で加水分解し、Pdot上にカルボキシル基が発生した。H
2O
2感受性色素分子は、ナノ粒子の内部に封入されたか、またはポリマーと会合した。過酸化水素(H
2O
2)は細胞呼吸の副産物であり、多くの酵素触媒反応中に発生しうる。例えばH
2O
2濃度は、グルコースオキシダーゼが触媒するグルコース酸化反応に影響されうる。グルコースにより誘導された過酸化水素濃度の変化は、H
2O
2応答性Pdotトランスデューサを使用することによって光学シグナルに変換することができる。
図21は、ナノ粒子−GOxアセンブリを含むH
2O
2ベースのナノ粒子トランスデューサのスペクトル応答を示す。グルコースを添加すると、GOxが触媒したグルコース酸化反応により発生したH
2O
2の存在に起因して明らかな蛍光増加が観察された。したがって、ナノ粒子−GOxアセンブリは、アセンブリに結合した酵素により触媒される分析物の反応の生成物によって媒介される蛍光に基づいて分析物(この実施例ではグルコース)を検出するためのナノ粒子トランスデューサとして機能する。
【0177】
イオンまたは金属イオンベースのPdotトランスデューサ、pHベースのPdotトランスデューサ、および熱ベースのPdotトランスデューサをはじめとする、他のナノ粒子またはPdotトランスデューサも同様に上述のように調製することができる。金属イオンは、多くの酵素の生物学的機能において重要な役割を果たす。イオンは、電子ドナーもしくはアクセプター、Lewis酸、または構造制御因子として機能しうる。イオンは、触媒プロセスに直接的に関与する。例えば、カルボキシペプチダーゼA、肝アルコールデヒドロゲナーゼ、アスパラギン酸トランスカルバモイラーゼ、およびアルカリホスファターゼは、金属酵素中の金属イオンの異なる役割を示し、一方で亜鉛イオンは、正常な増殖および発達を維持するためのヌクレオチドポリメラーゼにおいて本質的な役割を果たす。したがって、イオン濃度を変化させる反応を触媒する酵素を組み込むことにより、分析物濃度と共に変動する蛍光を発生させる、分析物の検出のためのナノ粒子トランスデューサを構築するために、イオン感受性Pdotを使用することができる。同様に、プロトンドナーおよびアクセプター、例えば酸および塩基は、酵素触媒作用においてプロトンを供与および受容しうる。例えば、セリンプロテアーゼ触媒機構の最初のステップには、活性部位のヒスチジンがセリン残基からプロトンを受容することが関与する。したがって、pHを変化させる反応を触媒する酵素を組み込むことにより、分析物濃度と共に変動する蛍光を発生させる、分析物の検出のためのナノ粒子トランスデューサを構築するために、pH感受性Pdotを使用することができる。
【0178】
本発明の好ましい態様を本明細書に示し記載したが、このような態様は単なる例として提供されていることが当業者には明らかであろう。当業者には、本発明から逸脱することなく、多数の変化形態、変更形態、および置換形態が想起されるであろう。本発明の実践に当たり、本明細書に記載される本発明の態様の様々な代替形態が用いられうることを理解されたい。続く請求項が本発明の範囲を定義すること、ならびに、これらの請求項およびそれらの均等物の範囲内にある方法および構造が本発明の範囲に含まれることが意図される。