【実施例】
【0113】
例
本明細書で開示される局面は、続く非限定例によってさらに記載される。
【0114】
材料および方法
動物
6〜8週齢の雌Balb/cマウスをMonash Animal Services(Monash University, Clayton, Victoria, Australia)から得て、制御された環境下で、12時間明/12時間暗照明周期で、水および実験餌(Barastock Stockfeeds, Pakenham, Victoria, Australia)への自由アクセスで飼育した。全てのマウスは、任意の実験前に4〜5日の順化期間を与えた。
【0115】
慢性AADの誘発
慢性AADにおけるMSC、AECおよびRLX(セレラキシン)の個々対組み合わされた効果を評価するために、オボアルブミン(OVA)誘発AADの慢性モデルをマウスにおいて確立した(n=36)。0日および14日後にマウスを、500μlの0.9%w/v正常生理食塩水溶液(Baxter Health Care, NSW, Australia)中の10μgのV等級ニワトリ卵OVA(Sigma-Aldrich, MO, USA)および400μgの硫酸アルミニウムカリウムアジュバント(alum、AJAX Chemicals, NSW, Australia)の2回の腹腔内注射で感作させた。次に、それらへエアゾール化OVA(0.9%w/v正常生理食塩水中の2.5%w/v)への全身吸入曝露(吸入投与)を、21〜63日の間、30分間、週3回、超音波噴霧装置(Omron NE-U07、Omron, Kyoto, Japan)を用いて負荷した。対照マウス(n=6)に500μlの0.9%w/v生理食塩水の腹腔内注射を付与し、OVAの代わりに0.9%w/v生理食塩水を噴霧した。
【0116】
幹細胞および/またはRLXの鼻腔内処置
64日(慢性AADモデルの誘発完了の1日後)に、マウスをイソフルラン(Baxter Health Care, NSW, Australia)で軽く麻酔し、適切な処置の鼻腔内投与を行いながら、半横臥位(semisupine position)で保持した。続く処置を2週の期間にわたって64〜77日からマウスへ投与した。OVA単独:マウス(n=6)は、2週の処置期間にわたって64および71日に自動ピペットを用いて50μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、MSCおよびAECのための媒体)(鼻孔あたり25μL)を受け、損傷対照群として使用した。
【0117】
RLX単独:マウス(n=6)は、50μL(鼻孔あたり25μL)の0.8mg/mL(0.5mg/kg/日と等価)のRLX溶液(Corthera Inc, San Carlos, CA, USA、Novartis Pharma AG, Basel, Switzerlandの子会社)を、鼻腔内送達(Royce et al.(2014)上記、Royce et al. (2015) Stem Cell Res. 15:495-505)を介して2週の処置期間にわたって毎日受けた(64〜77日から)。
【0118】
MSC単独:MSC(Tulane Center for Stem Cell Research and Regenerative Medicineから、New Orleans, LA, USA、n=3〜4名の健常ドナーからプールする)を以前に記載されたとおり特徴づけおよび培養し(Wise et al.(2014) am. J. Phyisol. Renal Physiol.306:F1222-F1235)、概略された試験について3〜6回継代の間で用いた。投与の前に、1×10
6個のMSCを50μLのPBS中に再懸濁し、マウス(n=6)へ週1回、鼻孔あたり25μLで64および71日の2週の処置期間に鼻腔内投与した(Royce et al.(2015)上記)。
【0119】
AEC単独:AEC(胎盤期由来、2〜3の別個ドナーからプールし、および以前に特徴づけられている[Murphy et al.(2010) Curr. Prot. Stem Cell Biol, chapter 1, Unit 1E6])を得て、10%v/vFBSを含有するDulbecco変法Eagle培地(DMEM)/F−12培地中で使用前に一晩再構成し(液体窒素中で保存されているところから1回解凍)、マウスのMSC処置について上で詳述したとおり、1x10
6個のAECを50μLのPBSに再懸濁し、64および71日にマウスの第四の部分群(n=6)へ投与した。
【0120】
併用処置:2つのさらなる部分群のマウス(n=6/群)は、2週の処置期間にわたってMSCおよびRLX、またはAECおよびRLXのいずれかの鼻腔内投与(各処置について上で記載した通り)を受けた。RLXを、各場合においてMSCまたはAECの投与前およそ15〜20分に投与した。
【0121】
侵襲的プレチスモグラフィー
78日(PBSまたは詳述された様々な処置の最終的な鼻腔内投与の24時間後)に、マウスをケタミン10mg/kgおよびキシラジン2mg/kgBW(0.9%w/v生理食塩水中)の腹腔内注射で麻酔した。次に、気管切開術を行い、麻酔したマウスをBuxco Fine Pointeプレチスモグラフ(Buxco, Research Systems, Wilmington, NC, USA)のチャンバーの中に置いた。次に、各マウスの気道抵抗を、気管支収縮を誘起するために5回服用にわたり、3.125〜50mg/mlで気管内送達される、増大用量の噴霧されたアセチル−β−メチルコリンクロリド(メタコリン、Sigma Aldrich, MO, USA)に応じて測定した(AHRにおける変化を反映)。各服用後の最大抵抗よりベースライン抵抗(PBS単独)を引くことにより計算された気道抵抗における変化を、査定されたメタコリンの各用量に対してプロットした。
【0122】
気管支肺胞洗浄(BAL)および組織収集
侵襲的プレチスモグラフィーに続き、BAL液を、氷冷PBSを用いた3×0.5mL洗浄液をプールすることによって収集し、−80℃の300μLの5%v/vFBS中に保存した。次に、肺組織を単離し、4つの別個の葉へと分割する前に、冷PBS中ですすいだ。最大の葉を、10%v/v中性緩衝ホルムアルデヒド中で一晩固定し、切断し、およびパラフィン蝋中に包埋するために、加工した。残りの3つの葉を様々な他のアッセイのために、液体窒素中で瞬間凍結させた。
【0123】
肺組織病理
各マウス由来の最大の葉をいったん加工およびパラフィン包埋し、各組織ブロックを連続切片にし(3μm厚)、帯電させたMikro Glassスライド(Grale Scientific, Ringwood, Victoria, Australia)に置き、様々な組織学的染色または免疫組織化学へ供した。炎症スコアを評価するために、各マウスからの1枚のスライド(合計42)は、Mayerのヘマトキシリンおよびエオジン(Amber Scientific, Midvale, Western Australia, Australia)(H&E)染色を経た。同様に、上皮厚および上皮下コラーゲン沈着を評価するために、もう一つのスライドセットは、マッソントリクローム染色を経た。杯細胞化生を評価するために、三つ目のスライドセットは、アルシアンブルー過ヨウ素酸シッフ(ABPAS)染色を経た。H&E、マッソントリクローム染色およびABPAS染色した切片を以下に詳述するように形態計測学的に解析した。
【0124】
免疫組織化学(IHC)および免疫蛍光(IF)
TGF−β1(ポリクローナル抗体、sc−146、Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA、1:1000希釈を使用)、α−平滑筋アクチン(α−SMA、筋線維芽細胞分化のマーカー、モノクローナル抗体M0851、DAKO Antibodies, Glostrup, Denmark、1:200希釈を使用)、および胸腺間質リンホポエチン(TSLP、上皮損傷についてのマーカー、ポリクローナル抗体ABT330、EMD Millipore Corp`. Temecula, CA, USA、1:1000希釈を使用)を検出するために、IHCを使用した。任意の一次抗体の非存在下のEnVisionキットへ曝露される陰性対照も含めたのに対し、一次抗体染色は、DAKO EnVision抗ウサギまたは抗マウスキットおよび3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)色素原を用いて検出した。次に、すべてのスライドをヘマトキシリンで対比染色した。
【0125】
チャンバースライド上で培養したAECおよびヒト腎線維芽細胞(RF、陽性対照として使用、Kolling Institute of Medical Research, University of Sydney, NSW, Australiaにより提供)に、RXFP1を検出するよう実行したとき(RXFP1に対するポリクローナル抗体HPA027067、Sigma-Aldrich, Castle Hill, NSW, Australia、1:200希釈を使用)。一次抗体を、ヤギ抗ウサギAlexa Fluor(登録商標)555二次抗体(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を用いて検出した。核は4’6−ジアミンジオン−2−フェニルインドール(DAPI)を用いて可視化したが、アイソタイプ(陰性)対照も含めた。
【0126】
IF染色したスライドを、HyD共焦点顕微鏡(Leica SP8 Confical Invert, Monash Micro Imaging, Clayton Victoria, Australia)を用いて撮像したのに対し、すべてのIHC染色したスライドは、形態計測学的解析のためにScanScope AT Turbo(Aperio, CA, USA)を用い、Monash Histology Services, Clayton, Victoria, Australiaによって、を走査した。
【0127】
形態計測学的解析
マッソントリクローム、ABPAS、およびIHC染色したスライドは、続くように形態計測学的解析を経た。スライド1枚あたり5気道(直径150〜300μm)を無作為に選別し、Aperio ImageScopeソフトウェア(Aperio, CA, USA)を用いて解析した。マッソントリクローム染色をしたスライドは、半定量的気管支周囲炎症評点化を経て、そこで、実験者を盲検にし、以前に記載されたとおり、個々の気道を0(気道の周りに検出可能な炎症はない)から4(広範かつ大規模な炎症細胞凝集体、プールされた大きさ〜約0.6mm
2)まで評点化した(Royce et al.(2015)上記)。マッソントリクローム染色をしたスライドは、上皮および上皮下コラーゲン層(青色に染色)の厚さを測定することによって、上皮厚および上皮下コラーゲンについての解析も経て、μm
2/基底膜(BM)長μmとして表した。
【0128】
ABPAS、α−SMA、およびTSLP染色したスライドを、BM長100μmあたりの陽性染色した杯細胞、α−SMA陽性細胞、およびTSLP陽性細胞の数を計数することによって、杯細胞化生、筋線維芽細胞数および損傷した上皮細胞についてそれぞれ解析した。TGF−β1染色スライドを、気道上皮内で強い陽性染色した画素を評価するためのアルゴリズムを実行することによって、TGF−β1タンパク質発現について解析した。結果を、上皮の総面積(mm
2)あたりの強い陽性画素の数として表し、次に、生理食塩水で処置した対照群のものを1として表してそれと比較した。
【0129】
ヒドロキシプロリンアッセイ
各マウス由来の2番目に大きな肺葉を、精製されたトランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン(Sigma-Aldrich)の標準曲線から決定されるヒドロキシプロリン含有量の測定のために、以前記載したとおり加工した(Royce et al.(2009)上記、Royce et al.(2014)上記、Royce et al. (2015)上記)。ヒドロキシプロリン値に、6.94の因子(たいていの哺乳類組織におけるコラーゲンのアミノ酸組成の〜14.4%を表すヒドロキシプロリンに基づく)を乗じて(Gallop and Paz (1975) Physiol. Revs. 55:418-487)、総コラーゲン含有量を外挿し、これを次に、それぞれ対応する組織の乾燥重量で割り、コラーゲン濃度百分率を求めた。
【0130】
統計解析
すべての統計解析は、GraphPad Prism v6.0(GraphPad Software Inc., CA, USA)を用いて実行し、平均±SEMとして表した。AHR結果をBonferroniのポストホック検定を用いる二元配置ANOVAによって解析した。残りのデータを、群間多重比較のためのNeuman-Keulsのポストホック検定を用いる一元配置ANOVAを介して解析した。それぞれのケースにおいて、データを0.05よりも低いp値で有意とみなした。
【0131】
上皮損傷を組み込む慢性アレルギー性気道疾患(AAD)の誘発
次は、例9と特に関連する。上皮損傷を組み込む慢性AADのオボアルブミン(OVA)誘発モデルをマウスにおいて確立した(n=56)。マウスを、上に記載したとおり、10μgのV等級のニワトリ卵OVA(Sigma-Aldrich, MO, USA)および400μgの硫酸アルミニウムカリウムアジュバント(alum、AJAX Chemicals, NSW, Australia)の2回の腹腔内(IP)注射で0および14日に感作した。次に、それらを、エアゾール化OVA(0.9%w/v正常生理食塩水中2.5%w/v)へ、30分間、週3回、21〜63日間ので、超音波噴霧装置(Omron NE-U07、Omron, Kyoto, Japan)を用い、全身吸入曝露(吸入投与)によって負荷した。次に、マウスは、Clara細胞特異的細胞毒であるナフタレン(NA、200mg/体重kg、Sigma-Aldrich, St Louis, MO, USA)の単回IP注射を64日(最後のOVA噴霧期間後の1日、OVA+NA群)に受け、さらに3日間放置した(気道上皮損傷を誘発させおよび悪化させるために)。しかしながら、対照マウス(n=8)について、それらに、OVAの代わりに0.9%w/v生理食塩水500μLのIP注射を付与し、0.9%w/vの生理食塩水を噴霧し、それらにNAの代わりに、トウモロコシ油(CO、NAのための媒体)を注射した。
【0132】
68日(慢性OVA/NA誘発AADモデルの誘導の完了後1日)に、hAEC、エキソソームおよび/またはRLXの鼻腔内処置に関し、マウスをイソフルラン(Baxter Health Care, NSW, Australia)で軽く麻酔し、適切な処置の鼻腔内投与を行っている間に半横臥位で保持した。続く処置を68〜74日から、毎日または週1回、マウスへ投与した。
【0133】
OVA/NA単独(損傷対照群):マウスの部分群(n=8)は、68〜74日から自動ピペットを用いて、50μLのリン酸塩類溶液(PBS、AECおよびAEC由来エキソソームのための媒体、鼻孔あたり25μL)を毎日受けた。
【0134】
RLX:マウスの別個の部分群(n=8)は、50μL(鼻孔あたり25μL)の0.8mg/mL(0.5mg/kg/日と等価)のRLX溶液(Corthera Inc, San Carlos, CA, USA、Novartis Pharma AG, Basel, Switzerlandの子会社)を68〜74日から毎日受けた。
【0135】
AEC+RLX:AEC(1×10
6個/マウス)+RLX(0.8mg/ml)の鼻腔内投与がOVA誘発気道炎症を低減し、OVA誘発気道線維症および気道過敏性を抑止することが以前に示されているので(Royce et al. (2016) Clinical Science 130:3151-65)、併用療法をOVA/NA損傷マウスの第三部分群へ適用して、陽性対照群として使用した。凍結したAEC(胎盤期由来、2〜3の別個のドナーからプールした)を37℃の水浴中で解凍し、次に、PBS中で再懸濁した。1×10
6個のAECを50μLのPBS中で再懸濁し、68日にマウスの別個の部分群(n=8)へ投与した。RLX(0.8mg/ml)を上に詳述したとおり、68〜74日から毎日投与した(50μl/マウス)。
【0136】
AEC由来エキソソーム:OVA/NA損傷マウスの第四および第五の部分群(部分群あたりn=8)に5μgまたは25μgのいずれかのAEC由来エキソソームをそれぞれ含有する50μLのPBSを各々投与した。エキソソームを68日にのみ鼻腔内投与した。
【0137】
AEC由来エキソソーム+RLX:OVA/NA損傷マウスの第六および第七の部分群(部分群あたりn=8)に5μgまたは25μgのいずれかのAEC由来エキソソームをそれぞれ68日にのみ各々投与した。これらのマウスは、上で詳述したとおり、68〜74日からRLX(0.8mg/ml)の毎日の鼻腔内投与も毎日受けた。
【0138】
上で記載したように侵襲的プレチスモグラフィーを75匹のマウスに実行した。
【0139】
組織収集、肺組織学、免疫組織化学(IHC)、形態計測学的解析、ヒドロキシプロリンアッセイおよび統計解析は、上で記載したとおりであった。
【0140】
ブレオマイシン誘発肺線維症の誘導
次は、例10と関連する。肺線維症のブレオマイシン(BLM)誘発モデルをマウス(n=49)において確立した。0および7日にマウスへ50μlの生理食塩水中の20μgのブレオマイシン硫酸塩(Hospira, Melbourne, Victoria, Australia)を鼻腔内(IN)投与した。しかしながら、対照マウス(n=7)については、0および7日にそれらへ、BLMの代わりに0.9%w/vの生理食塩水のIN投与(マウスあたり50μL)を付与した。次に、すべてのマウスは、さらに2週間未処置のまま放置した(21日まで)。
【0141】
22日(BLM誘発肺線維症モデルの誘導の完了後1日)、マウスにイソフルラン(Baxter Health Care, NSW, Australia)で軽く麻酔し、適切な処置のIN投与を行いながら、半横臥位で保持した。続く処置を毎日または週1回マウスへ、22〜28日から投与した。
【0142】
BLM単独(損傷対照群):マウスの部分群(n=7)は、22〜28日後から自動ピペットを用いて、50μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、ピルフェニドン、AECおよびAEC由来エキソソームのための媒体、鼻孔あたり25μL)を毎日受けた。
【0143】
ピルフェニドン:マウスの別個の部分群(n=7)は、日あたり1mgのピルフェニドン(Tocris Bioscience, Noble Park, Victoria, Australia)(50mg/kg/日と等価)を1日2回の強制経口によって、22〜28日から受けた。
【0144】
AEC+組換えヒトリラキシン(RLX):慢性AADモデルにより、第三群のBLM損傷マウスは、AEC(1×10
6個/マウス)+RLX(0.8mg/ml)の鼻腔内投与を受けた。凍結したAEC(胎盤期由来、2〜3の別個のドナーからプールした)を37℃の水浴中で解凍し、次に、PBS中で再懸濁した。1×10
6個のAECを50μLのPBS中で再懸濁し、22日にマウスの別個の部分群(n=7)へ投与した。RLX(0.8mg/ml)を22〜28日から毎日IN投与した(50μl/マウス)。
【0145】
AEC由来エキソソーム:BLM損傷マウスの第四および第五部分群(部分群あたりn=7)に、5μgまたは25μgのいずれかのAEC由来エキソソームをそれぞれ含有する50μLのPBSを各々投与した。エキソソームを22日にのみIN投与した。
【0146】
AEC由来エキソソーム+RLX:BLM損傷マウスの第六および第七部分群(部分群あたりn=7)に5μgまたは25μgのいずれかのAEC由来エキソソームをそれぞれ含有する50μLのPBSを各々、22日にのみ投与した。これらのマウスは、上に詳述したとおり、22〜28日からRLXの毎日のIN投与(0.8mg/ml)も受けた。
【0147】
侵襲的プレチスモグラフィー、組織収集、肺組織学、形態計測学的解析および統計学は、上で記載したとおりである。
【0148】
例1
AEC上のRXFP1の発現
AECおよびヒト腎線維芽細胞(RF、陽性対照)は、免疫蛍光によってRXFP1について陽性に染色し、核をDAPIで対比染色した(
図1)。AECおよびRFの両方、RXFP1についての強い細胞質染色を有した。染色は、一次抗体がアイソタイプ対照と置換された陰性対照細胞にはなかった。
【0149】
例2
気道炎症(AI)へのRLX、MSC、AECおよび併用処置の効果
マッソントリクローム染色した画像からの気管支周囲炎症スコア(
図2Aおよび2B)およびBAL液由来の好酸球浸潤(
図2C)をALの目安として用いた。OVA処置したマウスの気管支周囲炎症スコア(1.70±0.60)は、生理食塩水対照のそれと比較して有意に上昇した(0.15±0.40、P<0.001対生理食塩水群、
図2B)。これは、AADの慢性モデルがOVA処置したマウスにおいて確立されたことを確認した。MSC単独(1.30±0.20、P<0.05対OVA群、P<0.001対生理食塩水群)は、気管支周囲炎症をわずかだけだが有意に低減したのに対し、動物のRLX処置は、炎症スコアにおけるOVA誘発増大に有意に影響しなかった(1.55±0.83、P<0.001対生理食塩水群)(
図2B)。比較において、AEC単独(1.05±0.28)、MSC+RLX(1.00±0.40)およびAEC+RLX(0.90±0.70)は、AEC+RLX(P<0.001対OVA群、P<0.01対OVA+RLX群、P<0.05対OVA+MSC群)で観察された最大の効果で、OVA誘発炎症スコアを〜40〜50%有意に低減することができた。しかしながら、AEC単独も併用処置のどちらも、生理食塩水処置した対照においてみられるものまで気管支周囲炎症を低減することはできなかった(すべてP<0.01対生理食塩水群、
図2B)。
【0150】
OVA処置したマウスは、生理食塩水処置した対照由来のもの(1.06×10
5±0.25×10
5個/BAL液mL、P<0.01対生理食塩水群、
図2C)と比較して、好酸球の数も有意に増大した(2.85+0.45/BAL液mL)。RLX(1.60×10
5±0.47×10
5/BAL液mL)およびMSC単独(1.79×10
5±0.21×10
5/BAL液mL)の両方は、好酸球の浸潤を部分的に、しかし同様の程度まで有意に低下させたが(P<0.05対OVA単独両方)、生理食塩水処置対照において測定されるものと相違しないレベルまでであった(
図2C)。比較において、AEC単独(7.37×10
4±1.46×10
4/BAL液mL)、およびMSC+RLX(8.19×10
4±3.79×10
4/BAL液mL)またはAEC+RLX(5.92×10
4±1.05×10
4/BAL液mL)の併用された効果は、好酸球浸潤を完全に抑止し、再び生理食塩水処置対照において測定されるものともはや相違しないレベルまでであった(
図2C)。
【0151】
例3
上皮厚および損傷へのRLX、MSC、AECおよび併用処置の効果
OVA処置したマウスの上皮厚(21.2±0.60μm
2)は、生理食塩水処置した対照のものと比較して有意に増大した(16.89±0.76μm
2、P<0.01対生理食塩水群、
図2D)。この値は、生理食塩水処置した対照マウスから測定されたものとは統計的に異ならなかったが、MSC単独を用いた処置(19.23±0.73μm
2)は、上皮厚におけるOVA誘発増大を低減させる傾向を誘導したに過ぎなかった。比較において、RLX単独(18.19±0.74μm
2、p<0.05対OVA単独)、AEC単独(16.90±0.39μm
2)、MSC+RLX(17.75±0.87μm
2)およびAEC+RLX(18.21±2.19μm
2)はすべて、生理食塩水処置した対照マウスにおいてみられるものまでに上皮厚におけるOVA誘発増大を標準化した(すべてP<0.05対OVA単独群、生理食塩水群との差なし、
図2D)。
【0152】
TSLPを上皮損傷のマーカーとして使用し、気道上皮内のTSLP陽性細胞の数(4.61±0.53)は、生理食塩水処置した対応物におけるものと比較して、OVA処置したマウスにおいて有意に高かった(1.00±0.30、P<0.001対生理食塩水群)。MSC単独(4.50±0.42)は、TSLP発現におけるOVA誘発増大を低減させることはできなかった。しかしながら、RLX単独(3.14±0.34)、AEC単独(3.50±0.19)およびMSC+RLX(3.53±0.28)またはAEC+RLX(3.30±0.27)の併用効果はすべて、OVA単独群におけるものと比較してTSLP発現レベルを有意に低減させた(すべてP<0.05対OVA単独群)が、生理食塩水処置した対照マウスにおいて測定されたレベルまでではない(すべてP<0.01対生理食塩水群)[
図3]。特筆すべきことに、RLX単独は、MSC単独の効果と比較してTSLP発現レベルも低減させた(P<0.05対OVA+MSC群、
図3)。
【0153】
例4
杯細胞化生へのRLX、MSC、AECおよび併用処置の効果
杯細胞化生をABP AS染色した肺切片から解析し、生理食塩水処置した対応物から測定されたものと比較して、OVA処置したマウス(4.83±0.20)において有意に増大した(1.62±0.32、P<0.001対生理食塩水群、
図4)。RLX単独(5.08±0.25)、MSC単独(5.23±0.47)、AEC単独(5.00±0.16)またはMSC+RLX(5.06±0.41)はいずれも、杯細胞数におけるOVA誘発増大に影響しなかった(すべてP<0.001対生理食塩水群)。比較において、AEC+RLXの併用効果だけが(4.39±0.28)、杯細胞数におけるOVA誘発増大を有意に低減させたが(P<0.05対OVA単独群、OVA+RLX、OVA+MSC、OVA+AEC、およびOVA+MSC+RLX群、
図4)、生理食塩水処置した対照から測定されたレベルへ十分に戻らなかった(P<0.01対生理食塩水群)。
【0154】
例5
気道線維症へのRLX、MSC、AECおよび併用処置の効果
気道線維症を、マッソントリクローム染色をした肺切片からの上皮下コラーゲン沈着(
図2E)および総肺コラーゲン濃度のヒドロキシプロリン解析を解析することによって測定した(
図5)。上皮下コラーゲンは(基底膜長と比較)、生理食塩水処置した対照から測定されたものと比較してOVA処置したマウス(26.26±1.37μm)において有意に増大した(8.07±0.58μm、P<0.001対生理食塩水群、
図2E)。RLX単独(18.27±2.26μm)、MSC単独(19.67±1.17μm)またはAEC単独(17.87±2.150μm)は、上皮下コラーゲン沈着におけるOVA誘発の異常な増大を同様の程度まで有意に低減させた(〜35〜45%まで、すべてP<0.01対OVA単独群、
図2E)。上皮下コラーゲン沈着において、OVA誘発は、MSC+RLXの併用された効果によって標準化し(11.12±0.93μm)(P<0.001対OVA群、生理食塩水群との差なし)、いずれの療法単独よりも大きな程度までであったのに対し(P<0.05対RLX単独またはAEC単独、P<0.01対MSC単独、
図2E)、AEC+RLXで処置したマウスは、OVA誘発マウスにおいて測定されたもの(〜70%まで、P<0.001対OVA群、P<0.05対生理食塩水群)と比較して上皮下コラーゲン沈着のさらなる低減を有した(13.72±1.25μm)。
【0155】
同様の知見は,総肺コラーゲン濃度の測定結果で観察され、生理食塩水処置した対照から得られた対応する測定結果(2.84±0.11%、P<0.001対生理食塩水群)と比較して、OVA処置したマウス(3.82±0.10%)において有意に増大し、RLX単独(3.08±0.23%、P<0.01対OVA単独群)またはAEC単独(3.26±0.14%、P<0.05対OVA単独群)によって有意に低減したが、MSC単独ではしなかった(3.52±0.12%)(
図5)。驚くべきことに、MSC+RLX(2.75±0.11%、P<0.001対OVA単独群)またはAEC+RLX(2.90±0.04%、P<0.01対OVA単独群)の併用された効果は、肺コラーゲン濃度におけるOVA誘発増大を完全に回復し、生理食塩水処置した対照動物において測定されるレベルまで戻った(
図5)。MSC+RLXまたはAEC+RLXの併用された効果は、MSC単独である、より大きな程度まで総肺コラーゲン濃度も低減させた(両方P<0.01対OVA+MSC群、
図5)。
【0156】
例6
気道上皮TGF−β1発現へのRLX、MSC,AECおよび併用処置の効果
RLXおよびMSCまたはAECの併用された効果がOVA誘発上皮下コラーゲン沈着および総肺コラーゲン沈着を標準化することができたことにより起こり得る機序を明瞭にするために、気道上皮TGF−β1染色における変化を評価した(
図6Aおよび6B)。上皮TGF−β1発現は、生理食塩水処置した対照におけるものと相対的に比較して、OVA処置したマウス(10.65±0.81)において有意に増大した(1.00±0.47、P<0.01対生理食塩水群、
図6B)。RLX単独(5.85±1.42)は、しかし、MSC単独(8.15±1.78)はではないが、別個の研究において既に実証したように(Royce et al.(2015)上記)、異常な上皮TGF−β1発現レベルにおけるOVA誘発上大を部分的だが、有意に低減させることができた。その一方で、AEC単独(3.04±0.44)およびMSC+RLX(1.47±0.45)またはAEC+RLX(2.63±0.060)の併用効果は、生理食塩水処置した対照において測定されるレベルとはもはや異ならない程度まで(すべてP<0.001対OVA単独群、生理食塩水群との差なし)、およびMSC単独の効果よりも大きな程度まで(すべてP<0.05対OVA+MSC群、
図6)、気道上皮TGF−β1発現を顕著に低減させることができた。
【0157】
例7
上皮下筋線維芽細胞の蓄積へのRLX、MSC、AECおよび併用処置の効果
マウスのOVA処置は、生理食塩水処置した対応物から測定されたもの(0.44±0.13)と比較して、気道の上皮下層におけるBM長100μmあたりのα−SMA染色した、有意に増大した多くの筋線維芽細胞(1.72±0.07)をも生じた(p<0.001対生理食塩水群、
図6Cおよび6D)。MSC+RLX(0.88±0.12)またはAEC+RLX(0.63±0.12)の併用された効果は、生理食塩水処置した対照動物において測定されたものとはもはや異ならない数まで上皮下筋線維芽細胞数をさらに低減したのに対し(両方P<0.001対OVA単独群、生理食塩水群とは差なし、
図6D)、RLX単独(1.08±0.10)、MSC単独(1.06±0.10)またはAEC単独(1.13±0.19)を含むすべての個々の処置は、上皮下筋線維芽細胞数におけるOVA誘発増大を同様の程度まで有意に低減した(〜45〜50%まで、すべてP<0.01対OVA単独群、すべてP<0.05対生理食塩水群)。
【0158】
例8
AHRへのRLX、MSC、AECおよび併用処置の効果
侵襲的プレチスモグラフィーを介してAHRを評価し、生理食塩水対象において測定したものと比較してOVA処置したマウスにおいて有意に増大した(
図7)。AHRは、RLX単独(〜50%まで、P<0.001対OVA群、P<0.01対生理食塩水群)またはAEC単独(〜35〜40%まで、P<0.05対OVA群、P<0.001対生理食塩水群)によって部分的だが有意に低下したが、MSC単独(P<0.001対生理食塩水群)はせず、これらの処置が気道/肺線維症を回復させるときにいかに有効であるかと相関した。比較において、MSC+RLXまたはAEC+RLXの併用された効果は、AHRを、生理食塩水処置対照マウスから測定されるものとはもはや有意に異ならないレベルまでさらに低減した(両方P<0.001対OVA単独群、生理食塩水群との差なし、
図7)。MSC+RLXまたはAEC+RLXの併用された効果は、MSC単独よりも有意に大きな程度までAHRも低減した(両方P<0.01対OVA+MSC群、
図7)。
【0159】
例9
上皮損傷を組み込む慢性アレルギー性気道疾患/喘息モデル
図8〜15において提示されるデータは、リラキシンの存在が、上皮損傷を組み込む慢性アレルギー性気道疾患/喘息モデルの動物モデルにおいてエキソソームの治療可能性を増強することを明確に示す。この動物モデルは、例1の直前の節において記載される。結果は、エキソソーム/リラキシンの組み合わせが、炎症スコア、杯細胞化生、上皮損傷、上皮厚および上皮下ECM厚、コラーゲン濃度、上皮TGF−β1発現レベル、上皮下筋線維芽細胞密度を有意に低減させ気道過敏性を改善することを示す。まとめると、これらの結果は、リラキシンがAECおよびエキソソームの治療可能性を増強することを示すものと一致する(例2〜8)。
【0160】
各群の試験由来のヘマトキシリンおよびエオジン染色した肺切片は、気管壁内での炎症性細胞浸潤の程度を実証した。5気道/マウスからの平均±S.E.M気管支周囲炎症スコア(切片を0(視認可能な炎症なし)から4(重度の炎症)までの尺度で炎症性細胞凝集体の数および分布に基づいて評点化した)を
図8に示す。
【0161】
各群の試験由来のアルシアンブルー過ヨウ素酸シッフ染色した肺切片は、杯細胞化生の程度を実証した。5気道/マウスからの平均±S.E.M杯細胞計数(基底膜(BM)長100mmあたりの杯細胞の数として表される)を
図9に示す。
【0162】
免疫組織化学的に染色された肺切片は、試験した各群由来の胸腺間質リンホポエチン(TSLP、上皮損傷のマーカー)を示した。5気道/マウスからの平均±S.E.MTSLP染色した細胞の計数(基底膜(BM)長100μmあたり)を
図10に示す。
【0163】
マッソントリクローム染色をした肺切片は、試験した各群由来の上皮厚および上皮下細胞外マトリックス(ECM/青色染色)厚の程度を実証した。5気道/マウスからの平均±S.E.M(A)上皮厚(μm
2、基底膜(BM)長と比較)および(B)上皮下ECM厚(μm、BM長と比較、線維症の目安)を
図11に示す。
【0164】
群あたりn7〜8動物からの平均±S.E.M総肺コラーゲン濃度(%肺コラーゲン含有量/組織乾燥重量−線維症の目安)を
図12に示す。
【0165】
免疫組織化学染色した肺切片は、試験した各群からの上皮TGF−β1発現レベルを示した。群あたりn=7〜8動物で、5気道/マウスからの平均±S.E.M TGF−β1染色の(解析した面積あたりの%染色として表す)。*p<0.05、**P<0.01、***P<0.001対生理食塩水/トウモロコシ油で処置した非損傷対照群を
図13に示す。
【0166】
免疫組織化学染色した肺切片は上皮下筋線維芽細胞密度を示した。5気道/マウス由来の上皮下領域(基底膜(BM)長100μmあたり)におけるα−平滑筋アクチンで染色した筋線維芽細胞の平均±S.E.M数を
図14に示す。
【0167】
気道過敏性(AHR)への様々な群の効果を
図15に示す。気道抵抗(AHRにおける変化を反映)を、噴霧化したメタコリン(気管支収縮薬)の増大する用量に応じて侵襲的プレチスモグラフィーを介して評価した。
図15における結果をベースラインからの抵抗変化として表す。メタコリン精巣の各用量に対する気道抵抗(群あたりn=5動物)の平均±S.E.Mを示す。hAEC+組換えヒトリラキシン(RLX)またはRLX単独の効果を比較のために含めた。
【0168】
例10
ブレオマイシン間質性線維症モデル
試験した各群からのマッソントリクローム染色をした肺切片の代表的画像は、間質性肺細胞外マトリックス/コラーゲン沈着(線維症)の程度を実証した。群あたりn=7動物からの5視野/マウスからの視野あたりの平均±S.E.M間質性線維症(%)を
図16に示す。
【0169】
試験した各群由来のマッソントリクローム染色をした肺切片の代表的画像は、上皮下細胞外マトリックス(ECM)沈着の程度(線維症のもう一つ目安として)を実証した。5気道/マウス、群あたりn=7動物からの平均±S.E.M上皮下ECM厚(μm、BM長と比較)を
図17に示す。
【0170】
ブレオマイシンモデルからの線維症データは、すべての処置が(ピルフェニドンを含む)、間質性線維症において増大したブレオマイシン誘発を標準化するのに対し、RLX+エキソソーム(EXO)またはRLX+hAECのみが上皮下ECM/コラーゲン沈着におけるブレオマイシン誘発増大もその上標準化することができることを示した(
図17)。比較において、5μgのエキソソーム単独は、上皮下コラーゲン沈着を回復するときに部分的な効果を有しているにすぎなかったが、ピルフェニドンは何ら効果を有していなかった。傾向は、同様に、25μgのEXO+RLXが最適な保護を提供し、生理食塩水処置した対照マウスにおいて測定されるものまで間質性および上皮下の両方のコラーゲン沈着を回復することを示している。データは、特発性肺線維症などの肺線維症の処置を支持する。
【0171】
例11
ブレオマイシン誘発性肺炎症の回復
ブレオマイシンモデルからの炎症スコアは(
図18)、エキソソーム単独またはピルフェニドン単独が、ブレオマイシン誘発肺炎症を部分的に低減させるに過ぎないが、エキソソーム+リラキシンの併用された効果が、ブレオマイシン誘発肺炎症を十分に回復することができることを示す。ヘマトキシリンおよびエオジン染色した肺切片は、気管壁を用いて炎症性細胞浸潤の程度を実証した。
【0172】
ブレオマイシンモデル(BLMモデル)は間質性および低い程度の気管支周囲炎症を提示するが、AADモデルは主として、気管支周囲炎症を提示する。データは、AEC+リラキシンがBLM誘発肺炎症を制限することができなかったという結論を支持し、このことは、AECがエキソソームを産生する制限された時間を有し、身体から一掃される前に効果を導くという事実により記載されてよい。データは、エキソソーム新生が起こる前に、エキソソームが標的細胞へのそれらの効果を、細胞準備刺激ステップおよびその後のラグを迂回することによって直接発揮することができることも示す。BLM誘発肺炎症は、エキソソーム+リラキシンの併用された効果によって、生理食塩水処置した非損傷対照群において測定されるものと有意に異なっていないレベルまで最適に低減した。
【0173】
例12
治療プロトコールの開発
先行例は、AECの治療効果をMSCのそれと、慢性OVA誘発AADの状況において抗線維化剤(RLX)の非存在および存在下で比較する。結果は、1)AEC単独が、MSC単独の効果と比較して、AI(気管支周囲炎症スコアおよび好酸球計数における変化によって評価されるとおり)、AWR(上皮損傷/上皮厚、総肺コラーゲン濃度、および上皮TGF−β1発現における変化によって評価されるとおり)、およびAHRにおける慢性AAD誘発増大に対する大きな保護を実証したことを示す。しかしながら、AEC処置単独は、モデルと関係した構造的および機能的変化を十分に回復させることはできなかった。2)RLXの存在は、MSCおよびAECによって提示される保護を増強することができ、それにより好酸球計数、上皮厚、コラーゲン沈着、上皮TGF−β1発現レベル、上皮下筋線維芽細胞蓄積、およびAHRは、生理食塩水処置した対照マウスにおいて測定されるものへ戻す両方の併用処置群においてすべて標準化された。併用処置の優れた抗線維症効果は、個々の処置の効果と比較して、異常なTGF−β1発現および筋線維芽細胞分化を回復する、それらの大きな能力によって説明されるように見えた。ゆえに、本発明にしたがって、RLXをAECと組み合わせることは、AWR(気道/肺線維症を含む)のいくつかの局面、および慢性AADの状況において、AHRにおけるAWR誘発変化を効果的に回復する。
【0174】
査定したすべての処置は、好酸球の浸潤を顕著に低減または標準化することができたが、RLX単独およびMSC単独は、概して、気管支周囲炎症を回復する上でほとんど効果的ではなかった。比較において、AEC単独は、最も効果的な抗炎症効果を実証し、生理食塩水処置した対照において測定されるものともはや異ならないレベルまで好酸球計数も顕著に低減した。興味深いことに、AECおよびRLXの併用された効果は、気管支周囲炎症スコアを、RLX単独またはMSC単独よりも大きな程度までさらに低減した。慢性AADモデルにおいて、MSCの気管内移植は、BAL液内での好酸球、好中球および単球の浸潤を低下することが示された(Ge et al. (2013)上記)。AECの効果は、慢性AADの状況においてこれまで検討されていなかった。RLX単独は、AADの慢性マウスモデルにおける単球(Royce et al. (2009)上記、Royce et al. (2014)上記)およびリンパ球(Royce et al. (2009)上記、Royce et al. (2014)上記)ならびに他のモデル(Samuel et al. (2011) Lab. Invest. 91:675-690)におけるマクロファージの浸潤の低減において効果的ではなかった。RLXとAECとの併用された効果は、他の処置と比較して幅広い抗炎症効果を有する。
【0175】
これらの様々な炎症細胞もTh2 CD4
+細胞の浸潤も、AWRを包含する様々な構造変化とも関連する。喘息の間、損傷および修復の反復される周期は、肺機能の不可逆的喪失に寄与する、気道における異常な構造変化の原因となる(Hirota and Martin (2013) Chest 144:1026-1032)。現在例において、上皮の肥厚化、杯細胞化生、気道コラーゲンの沈着(線維症)も上皮TGF−β1発現および上皮下筋線維芽細胞蓄積をも介してAWRを評価した。
【0176】
上皮の肥厚化は、気道の狭窄に寄与しており、ゆえに、気道抵抗が増大し、喘息誘発呼吸困難の増大を生じる(Hogg (1997) APMIS 105:745-745)。上皮の肥厚化は、OVA処置マウスにおいて悪化し、MSC単独の処置によって有意に影響されなかった。これは、慢性AADモデルにおける上皮の肥厚化を抑止するために、鼻腔内(Royce et al. (2015)上記)または静脈内(i.v.)[Firinci et al. (2011) Int. Immunopharmacol. 11:1120-1126]送達されたMSCの能力のなさを実証する先行結果と一致する。対照的に、RLX単独は、上皮の肥厚化を低減させることができ、このことは、全身(Royce et al (2009)上記)または鼻腔内に(Royce et al. (2014)上記)、RLXを用いて処置した慢性AAD損傷マウスを使用する先行知見と一致する。同じく、AEC単独およびRLXとの組み合わせにおけるAECは、上皮の肥厚化において増大したOVA誘発を標準化することが見出された。これらの知見は、異常な上皮の肥厚化および気道/肺への上皮損傷の後から起こる関連した線維症を標準化することができる処置が、AAD誘発AWRおよびAHRへのAWRの寄与から、より保護しやすいことを示唆してよい。実際に、別の近年の研究は、単独、または上皮修復因子(トレフォイル因子−2;TFF2)ともしくはTFF2およびコルチコステロイドであるデキサメタゾンとの組み合わせにおけるRLXの能力が、上皮厚および肺コラーゲン濃度(線維症の土台)の両方を有意に低減させるこれらの処置の能力により、動的肺コンプライアンスのOVA誘発喪失を完全に回復することができることを実証した[Patel et al. (2016) Br. J. Pharmacol. doi:10.1111/bph.13494]。
【0177】
上皮の肥厚化と関係して、本発明は、喘息様症状の様々な刺激に応じて気道上皮細胞(IL−25およびIL−33とともに)によって顕著に産生されおよび分泌される肺損傷のマーカー(TSLP)を査定する(Bartemes and Kita (2012) Clin. Immunol. 143:222-235)。興味深いことに、上皮の肥厚化を有意に回復することができたすべての処置は、気道上皮TSLP発現におけるOVA誘発増大も部分的に低減することも見出された。これらの知見は、RLXまたはAEC単独の投与、および査定される併用処置が上皮組織の修復を部分的に誘導することができたことを含意する。この研究の知見と一致して、RLX単独およびMSCとの組み合わせにおけるRLXは、腎疾患/腎線維症の尿管閉塞誘発モデルにおける上皮腎損傷分子(KIM−1)発現を有意に抑制することも見出された(Huuskes et al. (2015)上記)。これは、これらの療法の抗アポトーシスおよび/または血管新生効果によってよい(Samuel et al. (2011)上記、Linthout et al. (2011) Curr. Pharmaceut. Des. 17:3341-3347)。
【0178】
過剰なECM構成要素、特にコラーゲンの沈着は、喘息個体における気道の上皮下および外膜の内部で生じ、線維症の発症に寄与する(Gillis and Lutchen (1999) J. Appl. Physiol. 86:2011-2012)。現在例において、上皮下および総コラーゲン含有量も、コラーゲン代謝回転の2つのマーカー、すなわち、TGF−β1およびα−SMA(筋線維芽細胞分化のマーカー)も調査することにより、線維症を査定した。MSC単独は、上皮下コラーゲンレベルを部分的に低減することができたが、総肺コラーゲン濃度レベルを低減させる傾向を実証したに過ぎず、このことは、先行研究(Royce et al. (2014)上記、Royce et al. (2014)上記)と幾分不一致であり、これらの細胞の効果が患者および/またはバッチ間に依存的であってよいことを示唆する。比較において、RLXまたはAEC単独のいずれかが上皮下コラーゲンおよび総肺コラーゲンの両方におけるOVA誘発増大を有意にできたが、全体的に回復することはできなかった。これは、RLX単独が、慢性AADと関連した気道/肺線維症を低減できることを示した先行研究(Royce et al. (2009)上記、Royce et al. (2014)上記、Royce et al. (2015)上記)、およびAEC単独(Moodley et al. (2010)上記、Murphy et al. (2011)上記)がブレオマイシン誘発損傷に続く間質性肺線維症を低減できることを示すものと一致している。より印象的なことに、両併用処置は、気道/肺線維症におけるOVA誘発増大をさらに低減、および実際、標準化することができた。これはまた、MSCおよびRLXの組み合わせを用いて片側尿管閉塞によって誘発される両方の腎線維症を低減するという先行知見と一致している(Huuskes et al. (2015)上記)。
【0179】
現在例において、慢性AADの状況におけるMSCによって実証された限定された抗線維症効能は、上皮下筋線維芽細胞の蓄積を中等度に低減するのに対し、気道上皮TGF−β1発現レベルに影響する能力の欠失と関連することが見出された。RLXまたはAEC単独によって実証される抗線維症効能は、気道上皮TGF−β1発現レベルおよび上皮下筋線維芽細胞の蓄積の両方を有意に低減する能力と、ならびに気道/肺におけるRLX(Unemori et al. (1996)上記、Tozzi et al. (2005)上記、Patel et al. (2016)上記)およびAEC(Moodley et al. (2010)上記、Moodley et al. (2013) PLoS ONE8;e69299)の両方の一般的なTGF−β1抑制効果と一致した。測定される異常な上皮下および総肺コラーゲン沈着における慢性AAD誘発増大の標準化がない場合、上皮下筋線維芽細胞の分化を顕著に低下させ、顕著な回復をもたらすかもしれなかったのに対し、さらに有意なのは、両方の併用療法の増強された抗線維症効能が、慢性AAD誘発上皮TGF−β1発現レベルにおける異常な上昇を両方とも標準化する能力を生じた。これらの知見は、喘息と関連するAWRおよび関係AHRを処置するために、これらの移植された細胞が生存し、それらの治療効果/修復効果を発揮することができるより好ましい環境を創出することにより、および/またはこれらの生存性、増殖および遊走を直接促進することによってのいずれかで、RLXがRXFP1を発現する複数の幹細胞タイプと組み合わせ得ること示唆する。
【0180】
AIおよびAWRの両方は、AHRの発症に寄与する(Ober and Hoffjan (2006) Genes Immun. 7:95-100、Kariyawasam et al. (2007) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 175:896-904)。AHRの程度は、喘息の重症度とも関係する(Bourlet et al. (1997) Chest 112:45-52、Holgate et al. (2004) Proc. Am. Thorac. Soc. 1:93-98)。先行研究は、ECM構成要素の沈着によるBM厚の増大(上皮下線維症)が、AHRにおける増大(Milanese et al. (2001) J. Appl. Physiol. 91:1035-1040)と同時に、気道の伸張性における低下と相関することを実証した(Ward et al. (2001) Am. J. Respir. Crit. Care Med.164:1718-1721)。現研究において、侵襲的プレチスモグラフィーを用いて気道抵抗を測定して、AHRを査定した。併用処置のいずれかが、気道上皮厚、上皮TGF−β1発現レベルおよび総肺コラーゲン濃度を標準化する能力に基づいて、生理食塩水処置した対照マウスから測定されるレベルまでAHRを完全に回復し得るので、AHRにおけるOVA誘発増大は、調査した処置の各々が気道/肺線維症をいかに有効に回復したかと一致して比例して低減した。これらの知見は、上皮厚および/または損傷も、コラーゲン濃度においても慢性AAD誘発の異常な増大を抑制することができた他の療法がメタコリン誘発AHRを標準化する鍵であることも実証した出版研究(Patel et al. (2016)上記)と一致する。しかしながら、これらの処置が気道/肺線維症を低減させる程度は、それらがAHRをいかに有効に回復することができるかとより相関があるように思われた。
【0181】
本発明は、RLXをAECまたはエキソソームと組み合わせることがAIを有意に低減し、慢性AADと関連した気道の上皮の肥厚化、気道上皮のTGF−β1発現レベル、気道/肺線維症およびAHRを完全に抑制することができたという知見の一部に前提とする。ゆえに、この併用療法は、特にコルチコステロイド療法に耐性のある患者に、気道疾患病原性の3つの中心的な構成要素(AI、AWRおよびAHR)を処置するための新規な手段を与える。RLXとの組み合わせにおけるAECは、AIおよびAWRをさらに低減させ、ならびに喘息と関連したAHRを改善することにおいて効果的であった。
【0182】
したがって、治療プロトコールは、療法を必要とする対象への投与を含み、
(A)(i)AEC、または
(ii)羊膜エキソソーム、および
(B)リラキシンまたはその組換えもしくは誘導体形態などの抗線維化剤である、前記治療プロトコールである。
【0183】
態様において、治療プロトコールは、羊膜エキソソームおよびリラキシンまたはその組換え形態もしくは誘導体形態などの抗線維化剤の療法を必要とする対象への投与を含む。
【0184】
投与は、鼻腔内、呼吸、気管内、鼻咽頭、静脈内、腹腔内、胸腔内、皮下、皮内、筋肉内、眼内、髄腔内または直腸内経路などの任意の簡便な経路による。抗線維化剤が介して作用する受容体(例えば、リラキシンのためのRXFP1)の活性化因子またはアゴニストの添加も支援してよい。療法は、AI、AWRおよび/またはAHRの任意またはすべてを軽減して線維症を低減するよう提案される。AECまたはエキソソームおよび抗線維化剤は、共投与または別個もしくは連続して、いずれかの順序でまたは共に合剤にされてよい。
【0185】
本例で教示されるように、AECまたはエキソソームとリラキシンとの組み合わせは、間葉系幹細胞(MSC)とリラキシンとの組み合わせよりもより有効であることが見出される。AECまたはエキソソームおよびリラキシンは、マウスモデルにおいて上皮厚を標準化し、線維症を部分的に回復も、気道過敏性を軽減もする。リラキシンなどの抗線維化剤が、AECベースの療法が採用され得る改良された環境を提供し、リラキシン−2受容体であるRXFP1を発現するAECの治療および再生能を増強することが本明細書で提案される。AECの治療利益が羊膜エキソソームへ適用されることがさらに提案される。これに関し、羊膜エキソソームは、羊水もしくは胎盤組織から単離されてよく、または不死化したAEC株を含むAEC株から単離されてよい。これは、その後単離され、本治療プロトコールにおいて使用されるAEC株から羊膜エキソソームを発生させるためのバイオリアクターの使用を含む。それにもかかわらず、本発明は、気道疾患を処置するための、MSCとリラキシンなどの抗線維化剤との使用に広がる。
【0186】
当業者は、本明細書で記載される開示が、具体的に記載されたもの以外の改変および修正を受けやすいことを認識するであろう。本開示が、かかる改変および修正をすべて熟慮することが理解されるべきである。開示は、個々にまたはまとめて、本明細書で参照または示されるステップ、特徴、組成物および化合物のすべて、およびステップまたは特徴または組成物または化合物の任意の2または3以上のすべておよび任意の組み合わせも可能にする。
【0187】
参考文献一覧
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】