(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-524876(P2019-524876A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(54)【発明の名称】水可溶化されたウルソデオキシコール酸を含有する炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/575 20060101AFI20190809BHJP
A61K 31/718 20060101ALI20190809BHJP
A61K 31/7004 20060101ALI20190809BHJP
A61K 31/721 20060101ALI20190809BHJP
A61K 31/732 20060101ALI20190809BHJP
A61K 31/736 20060101ALI20190809BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20190809BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20190809BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20190809BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20190809BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20190809BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20190809BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20190809BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20190809BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20190809BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20190809BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20190809BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20190809BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20190809BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20190809BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20190809BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20190809BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20190809BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20190809BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20190809BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20190809BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20190809BHJP
【FI】
A61K31/575
A61K31/718
A61K31/7004
A61K31/721
A61K31/732
A61K31/736
A61P17/00
A61P17/04
A61P17/06
A61P29/00
A61P37/08
A61P43/00 121
A61K9/14
A61K9/06
A61K9/70
A61K9/12
A61K9/10
A61K8/02
A61K8/06
A61K8/63
A61K8/60
A61K8/73
A61Q19/00
A61Q19/10
A61Q5/12
A61Q5/02
A61Q1/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2019-520351(P2019-520351)
(86)(22)【出願日】2017年9月28日
(85)【翻訳文提出日】2018年12月21日
(86)【国際出願番号】KR2017010893
(87)【国際公開番号】WO2018062922
(87)【国際公開日】20180405
(31)【優先権主張番号】10-2016-0126872
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0125571
(32)【優先日】2017年9月27日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】518456122
【氏名又は名称】ユーズ バイオファーム インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヨン ホ
(72)【発明者】
【氏名】コ フィ ジン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA16
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC03
4C076CC04
4C076CC18
4C076CC20
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF13
4C076FF16
4C076FF43
4C076FF57
4C083AA122
4C083AA162
4C083AB032
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC342
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC542
4C083AC582
4C083AC662
4C083AD022
4C083AD052
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD212
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD351
4C083AD371
4C083AD392
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD662
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC23
4C083CC24
4C083CC38
4C083CC39
4C083DD08
4C083DD12
4C083DD22
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE14
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA11
4C086EA01
4C086EA20
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA43
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、水可溶化されたウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid、UDCA)を含有する炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物を提供する。
本発明によれば、アトピー性皮膚疾患、ニキビ、乾癬、じんま疹、炎症性皮膚炎、脂漏性皮膚炎及び接触皮膚炎などの炎症性皮膚疾患及び重症掻痒症を効果的に緩和または治療することができる。したがって、本明細書に開示の水可溶化されたウルソデオキシコール酸を含む組成物は、薬学、食品または化粧品の組成物として有用に用いることができ、特に皮膚外用剤として用いられてその効果を示すことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid、UDCA);、
(b)水可溶性澱粉転化物;及び
(c)水を有効成分で含み、
全てのpH値に対して透明な(clear)水溶液状態である炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物。
【請求項2】
前記UDCAは、水可溶性UDCA、水可溶性UDCA誘導体、UDCA塩、及びアミンとコンジュゲートされたUDCAから選択されるUDCAであって、水可溶化されたことを特徴とする請求項1に記載の炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物。
【請求項3】
前記UDCAは、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)及びグリコウルソデオキシコール酸(GUDCA)から選択される1種以上のUDCAであって、水可溶化されたことを特徴とする請求項1に記載の炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物。
【請求項4】
前記UDCAは、組成物の総重量に対して0.01〜6重量部含まれることを特徴とする請求項1に記載の炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物。
【請求項5】
前記水可溶性澱粉転化物は、マルトデキストリンであり、
前記マルトデキストリンは、組成物の総重量に対して1.0〜70重量部含まれることを特徴とする請求項1に記載の炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物。
【請求項6】
前記pH値は、3〜9であり、
前記水可溶性澱粉転化物は、マルトデキストリンであり、
前記UDCAに対するマルトデキストリンの最小重量比が、1:16−1:30であることを特徴とする請求項1に記載の炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物。
【請求項7】
前記pH値は、6〜9であり、
前記水可溶性澱粉転化物は、マルトデキストリンであり、
前記UDCAに対するマルトデキストリンの最小重量比が、1:13−1:30であることを特徴とする請求項1に記載の炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物。
【請求項8】
水可溶性澱粉転化物は、マルトデキストリン、デキストリン、液体グルコース、コーンシロップ固形粉、可溶性澱粉、デキストラン、グアーガム、ペクチン及び可溶性非澱粉多糖類のうちの1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物。
【請求項9】
前記炎症性皮膚疾患は、アトピー性皮膚疾患(atopic dermatosis)、ニキビ(acne)、乾癬(psoriasis)、炎症性皮膚炎(inflammatory skin disease)、脂漏性皮膚炎(seborrheic dermatitis)及び接触皮膚炎(contact dermatitis)から選択される請求項1に記載の炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物。
【請求項10】
前記重症掻痒症は、皮膚のかゆみが睡眠及び日常生活に支障を与えて正常な活動ができなくなる場合を含む請求項1に記載の炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物。
【請求項11】
前記UDCAは、有効量で含まれ、前記有効量とは、皮膚の炎症疾患または重症掻痒症を予防するか、既に生じた疾患を緩和乃至治療できる量である請求項1に記載の炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の治療用組成物を乾燥して粉末形態に製剤化した、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物。
【請求項13】
前記粉末をpH7以下で水と混合して製剤化した請求項12に記載の炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の治療用組成物を有効成分で含む炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用皮膚外用剤。
【請求項15】
前記皮膚外用剤は、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ及び噴霧剤の剤形を有する請求項14に記載の炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用皮膚外用剤。
【請求項16】
1週以上及び1日1回以上用いられることを特徴とする請求項14に記載の炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または改善用皮膚外用剤。
【請求項17】
請求項1から13のうちのいずれか1項に記載の治療用組成物を有効成分で含む、やけどまたは炎症性皮膚疾患による症状を緩和することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項18】
前記皮膚外用剤は、炎症性皮膚疾患によるかゆみ、角質形成、及び皮膚発赤のうちの1つ以上の症状を緩和することを特徴とする請求項17に記載の皮膚外用剤。
【請求項19】
前記皮膚外用剤は、化粧品である請求項17に記載の皮膚外用剤。
【請求項20】
前記化粧品は、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、アイクリーム、栄養クリーム、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーエッセンス、シャンプー、リンス、ボディー洗浄剤、エッセンスまたはパックである請求項19に記載の皮膚外用剤。
【請求項21】
前記皮膚外用剤のpHは、3〜9であることを特徴とする請求項19に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水可溶化されたウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid、UDCA)を含有する炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物{COMPOSITION CONTAINING WATER−SOLUBILIZED URSODEOXYCHOLIC ACID FOR PREVENTING OR TREATING INFLAMMATORY SKIN DISEASE OR SERIOUS PRURITUS}に関する。より詳細には、本発明は、アトピー性皮膚疾患、ニキビ(acne)、乾癬、じんま疹、炎症性皮膚炎、脂漏性皮膚炎及び接触皮膚炎などの典型的な炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療効果に優れた薬学組成物及び炎症性皮膚疾患による症状を緩和する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚疾患、ニキビ、乾癬、じんま疹、アレルギー性接触皮膚炎あるいは刺激性接触皮膚炎及び脂漏性皮膚炎は、非常に典型的な炎症性皮膚疾患であって、局所的炎症による浮腫や角質の過形成、そして耐えがたい掻痒症を伴う。
【0003】
近年、産業化及び西欧型食生活などの生活環境の変化により、過敏性または炎症性皮膚疾患の発病率が大きく増加しており、炎症性皮膚疾患を経験する人の場合は、長い治療期間及びそれに伴う高い費用に耐えなければならず、さらに該疾患により外的な活動に消極的になり、ひどい場合は、肥満、鬱病などに至ることになる。最も幅広く知られている炎症性皮膚疾患としては、アトピー性皮膚疾患、ニキビ及び乾癬などがある。
【0004】
アトピー皮膚炎は、長く持続する慢性皮膚炎であって生後2〜3ヶ月から現われ、かゆみのひどい湿疹病変が皮膚に生じ、症状が現われると、その部位を掻いたり、擦ったりするようになり、その結果、皮膚症状がさらに悪化することが特徴である。
【0005】
アトピー皮膚炎患者は、全世界的に増加する傾向にあり、1970年代までは、6歳以下子供の約3%にアトピーが発生していると報告されたが、最近では子供の約20%のみならず、大人にも約1〜3%程度発生していると推定している。また、アトピー皮膚炎は耐えがたいかゆみを誘発し、これにより不眠症、情緒障害、学習障害、環境適応能力の減少、社会的活動力の減少などを誘発することがある。また、ひどいかゆみや湿疹を伴うことがあり、これは、皮膚を清潔に管理していないとか、または伝染性皮膚疾患を有していると誤認され、対人関係にも支障をもたらすことがあり、特に思春期患者の場合は、自我形成にも悪い影響を与えることになる。アトピー皮膚炎の原因は、いまだに正確な原因は不明であり、基本的な治療薬剤としては、局所ステロイド剤を使用しているが、長く使用すると、塗った部位にあかぎれができたり、毛が多くなったり、皮膚萎縮や、毛細血管の拡張、ステロイド性ニキビなどの副作用が生ずる短所があった(出典:国家健康情報ポータル http://health.mw.go.kr/)。
【0006】
一方、ニキビ(acne)は、顔、首、胸、背中、肩などに詰まった毛孔(開放面皰と閉鎖面皰)、できもの、深いおでき(嚢腫または結節)などが発生する炎症性皮膚疾患であって、主に思春期から始まり、男性は15〜19歳、女性は14〜16歳の間によく発生する。このうちの約80%の患者においては、20歳中盤までニキビの病変が徐徐に消えるが、時々30〜40歳以後まで持続する場合もあり、これを大人ニキビという。顔、体、特に胸、背中に炎症性、非炎証性病変が現われる。15−34歳人口の8%がニキビ疾患を有すると報告されている(出典:国家健康情報ポータルhttp://health.mw.go.kr/)。
【0007】
ニキビは生命を脅威する病気ではないが患者に心理的な負担を与え、重症のニキビの場合は深刻で適宜治療をしないと、永久的な傷あとを残すことがあり、美容的に問題になってきた。ニキビの正確な原因は明らかではないが、多くの原因が複合的に作用していると知られている(出典:国家健康情報ポータルhttp://health.mw.go.kr/)。ニキビ治療は、一般的に症状の重症度に応じて治療方法が異なり、大きくは、塗り薬、飲み薬、外科的治療に分けられる(出典:国家健康情報ポータルhttp://health.mw.go.kr/)。塗り薬としては、クリンダマイシン(clindamycin)やエリスロマイシン(erythromycin)などの抗生剤、抗菌作用、角質除去とともに皮脂排出がよくできるようにするトレチノイン(tretnoin)やアダパレン(adapalene)などのビタミンA誘導体、強力な抗菌効果とともに若干の抗炎症作用や面皰溶解作用のあるベンゾイルパーオキシド(benzoyl peroxide)などが挙げられる。最近では、これら成分の2つ以上を混合した複合剤などがよく用いられている。しかし現在まで、ニキビに副作用のほとんどない、効果的治療剤の開発は些細な実情である。
【0008】
また、乾癬(psoriasis)は、境界明瞭な銀白色の鱗屑(squama)により覆われている紅斑性皮膚病変が特徴であって、主にヒジ、膝、尻、頭皮など刺激を多く受ける部位に発生する。小さい丘疹から板状、膿疱性、剥脱性乾癬、乾癬関節炎など様々な臨床様相を示す。悪化と好転が場合によって繰り返される慢性炎症性皮膚疾患である。乾癬の原因は、まだ明らかになっていない。乾癬の治療としては、様々な方法があるが、薬を塗る局所治療法、光を当てる光治療法、薬を飲む全身治療法、最近開発されている生物学的製剤治療法などが代表的である(出典:大韓乾癬学会、http://kspder.or.kr)。しかし、乾癬はまだ完治が難しいと知られている疾患である。
【0009】
現在炎症性皮膚疾患の市場は、約30億ドルに推定されているが、明らかな治療剤がないため、様々な民間療法、生物学的製剤などが用いられており、医学的には、コルチコステロイド(corticosteroid)が経口用、局所型軟膏剤、鼻腔噴霧など広範囲に用いられているが、これらの深刻な副作用のため、使用に多くの制限があった。また、様々な生物学的製剤は高価であり、制限された投与方法のため、汎用的な使用には大きな制限があった。
【0010】
炎症性皮膚疾患改善用皮膚外用剤に関連した登録特許(韓国登録番号:10−1645355)には、アリウムフーケリ抽出物を用いて炎症性サイトカインの発現抑制効果、抗菌効果、抗酸化効果、保湿効果、及び皮膚障壁効果を測定し、その効能を評価したアトピー皮膚改善用皮膚外用剤が記載されている。
【0011】
本発明における炎症性皮膚疾患の緩和及び治療剤として使用しようとするウルソデオキシコール酸(UDCA)は、in vitro試験により、抗炎症作用、抗酸化作用、細胞及び細胞膜保護作用、消炎作用、免疫調節作用、ミトコンドリア保護作用及び細胞自滅抑制作用などを有することが知られており、炎症性皮膚疾患の治療に優れた効能を発揮することになる。
【0012】
しかし、上記の炎症性皮膚疾患及び重症掻痒症改善及び治療用皮膚外用剤として用いられるためには、ウルソデオキシコール酸が有している大きな短所である皮膚発赤物(skin irritant)として分類されていることや、皮膚不透過性の問題を解決する必要がある。
【0013】
上記短所を解決し、治療効果を出すために本発明者らは、先ず、ウルソデオキシコール酸を皮膚塗布剤の水相層原料である水に高濃度でよく溶かす必要があった。これは、新薬開発において薬物代謝及び薬動学特性を高めるために補完及び変更する必要のある主な因子が新薬候補物質の水に対する低い溶解度及びこれによる低い透過度が問題になるからである。
【0014】
ウルソデオキシコール酸は水に高濃度で充分に溶解された形態で存在しなければならないが、分子特性上ウルソデオキシコール酸は、置換体のない疎水性面と、水酸基を含む親水性面とを共に有している平面の両性分子であり、胆汁酸(bile acid)の一種である異なる二つの水酸基を有した胆汁酸(dihydroxy−bile acids)のように陽性子形態(protonated form)に存在するので実質的に水にほとんど溶けない特性を有している。ウルソデオキシコール酸の水に対する溶解度は、最高値が53μM(20mg/L)であるほど低い。このように低い理由は、ウルソデオキシコール酸分子の結晶構造が非常に安定しているからである。これら胆汁酸の陰イオンは、水中で極めて狭い範囲の濃度で自己凝集(self−association)してミセル(micelles)を形成する。胆汁酸の陰イオン及び伴われる反対イオンのみで構成されたミセルを簡単なミセルといい、上記簡単な胆汁酸ミセルの主な特性は、混合ミセルの脂質二重層に変換できる能力を有することである。したがって胆汁酸やウルソデオキシコール酸は、分子の大きさの大きいミセル形態を形成するので、皮膚において独立的な単一分子(single molecule)としての薬理作用が困難となり、またミセルの分子の大きさのために人体皮膚によく透過されない製剤形態であるので、UDCAが有する多くの効果を奏するに大きい短所があった。このようにウルソデオキシコール酸は、その結晶構造上の物理化学的な特徴により、皮膚疾患の緩和または治療のための充分に効果的な量を皮膚に浸透させることが困難であった。
【0015】
また、上記結晶形ウルソデオキシコール酸(crystallineUDCA)の酸性度(acid dissociation constants)であるpKaは、5.0付近であって水中で酸性を示して、皮膚に塗布する場合は、皮膚発赤(skin irritation)を起こしたり、皮膚と接触時有害になったりすることがあって皮膚塗布剤としての開発に深刻な短所があった。すなわち、この結晶形ウルソデオキシコール酸は、その結晶構造の形状が極に尖った針状構造であって、皮膚に塗布する場合は皮膚の間や汗腺及び傷のある皮膚の中に入り込み、皮膚のpHが酸性状態(acidic condition)になり、酸性によく溶けず、洗い流れずに残ってしまい、続けて皮膚を刺激して皮膚発赤を起こすことになる。
【0016】
また、結晶形ウルソデオキシコール酸がエタノールまたは無水エタノールによく溶けるため、ウルソデオキシコール酸を溶媒(solvent)に溶かして炎症性皮膚疾患の治癒に効果的な濃度の皮膚外用剤の開発を考えてみることもできるが、ウルソデオキシコール酸の分子が親水性(hydrophilic)及び親油性(hydrophobic)を共に有する固有の化学的性質のため、エタノールなど油相部(親油性)原料に少し溶けても、皮膚塗布剤の製造時に乳化のために親水性原料を添加することになり、このとき、製造後にウルソデオキシコール酸分子同士が凝集して再びミセルあるいは沈殿物を形成することになる。すなわち、上記結晶形ウルソデオキシコール酸製剤は、たとえエタノールに溶けてしばらく皮膚塗布剤の油相部原料に一時的によく混合(mixed)されたように見えるが、油相部原料投入後に時間が経過するほど全体的に均一によく混合されたりまたは乳化されたりしない。すなわち、結晶形ウルソデオキシコール酸がたまには混合及び乳化されていても時間が経過すると再び自己同士が凝集して(self−association)ウルソデオキシコール酸のミセルや沈殿物を再び形成するので、皮膚塗布剤の製造用原料として用いるに不適合である。上記のように、ウルソデオキシコール酸(UDCA)は、その分子的特性上、水によく溶けず(53μM)、酸性を示しているので、皮膚に塗布する場合は、皮膚発赤(skin irritation)を起こし、また皮膚を透過できない致命的な短所があった。
【0017】
世界の多くの研究者らがウルソデオキシコール酸を、炎症を低める皮膚外用剤原料として使用できるように長い間に開発を試みたが、ウルソデオキシコール酸を水に高濃度で溶解させにくく、水に難溶性である結晶形ウルソデオキシコール酸製剤形態自体としては皮膚発赤物(skin irritant)に分類されているので、皮膚塗布剤原料として用いることができなかった。
【0018】
現在まで、水に0.15Mまで高濃度に溶解させたウルソデオキシコール酸を含む、炎症性皮膚疾患及び重症掻痒症改善及び治療用皮膚外用剤組成物として知られているものはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、皮膚透過が難しく、皮膚発赤を起こし、皮膚接触時に人体に有害な結晶形ウルソデオキシコール酸(crystallineUDCA)の皮膚透過度を画期的に高め、また皮膚発赤を起こさない皮膚外用剤として使用できるように、水(water)に清浄水溶液の形態に水可溶化させたウルソデオキシコール酸を炎症性皮膚疾患の改善及び治療用組成物として提供することである。
【0020】
本発明の目的は、親水性(hydrophilic)及び親油性(hydrophobic)を共に有する固有の化学的性質を有したウルソデオキシコール酸が、この化学的性質により発生する分子間の凝集現象を除去し、皮膚外用剤組成物の水相部(親油性)及び油相部(親水性)原料とよく混ざって、時間が経過しても沈殿物や凝集現象が起こらずに乳化(emulsification)がよくできるように水に清浄水溶液形態に水可溶化させたウルソデオキシコール酸組成物を提供することである。
【0021】
本発明の目的は、ウルソデオキシコール酸が皮膚外用剤を製造するための組成物の原料と乳化されても再び凝集したり、沈殿したりせず、単一分子(single molecule)として存在して人体皮膚細胞を高効率に通過し、薬理的作用を充分に発揮できる水可溶化されたウルソデオキシコール酸組成物を提供することである。
【0022】
本発明の目的は、皮膚透過度が高く、ひりひりするなどの不便感を低減しながら、高濃度でウルソデオキシコール酸を皮膚に塗布可能な清浄水溶液形態の水可溶化されたウルソデオキシコール酸及びマルトデキストリンを有効成分で含む炎症性皮膚疾患の予防または治療用組成物を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、皮膚塗布後に異物感及びひりひりするなどの不便感を低減した、上記組成物を有効成分で含む炎症性皮膚疾患の改善及び治療用皮膚外用剤を提供することである。
【0024】
本発明のまた他の目的は、炎症性皮膚疾患の症状を緩和する効果を有する、上記組成物を有効成分で含む皮膚外用剤を提供することである。
【0025】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の一側面によれば、(a)ウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid、UDCA);(b)水可溶性澱粉転化物;及び(c)水を有効成分で含み、全てのpH値に対して透明な(clear)水溶液状態である炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0027】
本発明の一実施例によれば、上記UDCAは、水可溶性UDCA、水可溶性UDCA誘導体、UDCA塩、及びアミンとコンジュゲートされたUDCAから選択されるUDCAであって、水可溶化されたことを特徴とする炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0028】
本発明の一実施例によれば、上記UDCAは、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)及びグリコウルソデオキシコール酸(GUDCA)から選択される1種以上のUDCAであって水可溶化されたことを特徴とする炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0029】
本発明の一実施例によれば、上記UDCAは、組成物の総重量に対して0.01〜6重量部含まれることを特徴とする、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0030】
本発明の一実施例によれば、上記水可溶性澱粉転化物はマルトデキストリンであって、上記マルトデキストリンは、組成物の総重量に対して1.0〜70重量部含まれることを特徴とする、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0031】
本発明の一実施例によれば、上記pH値は、3〜9であり、上記水可溶性澱粉転化物は、マルトデキストリンであり、上記UDCAに対するマルトデキストリンの最小重量比は、1:16−1:30であることを特徴とする、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0032】
本発明の一実施例によれば、上記pH値は、6〜9であり、上記水可溶性澱粉転化物は、マルトデキストリンであり、上記UDCAに対するマルトデキストリンの最小重量比は、1:13−1:30であることを特徴とする、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0033】
本発明の一実施例によれば、水可溶性澱粉転化物は、マルトデキストリン、デキストリン、液体グルコース、コーンシロップ固形粉、可溶性澱粉、デキストラン、グアーガム、ペクチン及び可溶性非澱粉多糖類のうちの1種以上であることを特徴とする、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0034】
本発明の一実施例によれば、上記炎症性皮膚疾患は、アトピー性皮膚疾患(atopic dermatosis)、ニキビ(acne)、乾癬(psoriasis)、炎症性皮膚炎(inflammatory skin disease)、脂漏性皮膚炎(seborrheic dermatitis)及び接触皮膚炎(contact dermatitis)から選択される、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0035】
本発明の一実施例によれば、上記重症掻痒症は、皮膚かゆみが睡眠及び日常生活に支障を与えて正常な活動が困難となる場合を含む、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0036】
本発明の一実施例によれば、上記UDCAが有効量で含まれる、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0037】
本発明の一実施例によれば、有効量は、皮膚の炎症疾患または重症掻痒症を予防することや、既に生じた疾患を緩和乃至治療できる量である、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0038】
本発明の他の側面によれば、上記記載の組成物を乾燥して粉末形態に製剤化した、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0039】
本発明の一実施例によれば、上記粉末をpH7以下で水と混合して製剤化した、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0040】
本発明のまた他の側面によれば、上記記載の組成物を有効成分で含む炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用皮膚外用剤が提供される。
【0041】
本発明の一実施例によれば、上記皮膚外用剤は、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ及び噴霧剤の剤形を有する、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用皮膚外用剤が提供される。
【0042】
本発明の一実施例によれば、1週以上、そして1日1回以上用いることを特徴とする炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または改善用皮膚外用剤が提供される。
【0043】
本発明の一実施例によれば、上記記載の組成物を有効成分で含む、やけどまたは炎症性皮膚疾患による症状を緩和することを特徴とする皮膚外用剤が提供される。
【0044】
本発明の一実施例によれば、上記皮膚外用剤は、炎症性皮膚疾患によるかゆみ、角質形成、及び皮膚発赤のうちの1種以上の症状を緩和することを特徴とする皮膚外用剤が提供される。
【0045】
本発明の一実施例によれば、上記皮膚外用剤は、化粧品である、皮膚外用剤が提供される。
【0046】
本発明の一実施例によれば、上記化粧品は、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、アイクリーム、栄養クリーム、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーエッセンス、シャンプー、リンス、ボディー洗浄剤、エッセンスまたはパックである、皮膚外用剤が提供される。
【0047】
本発明の一実施例によれば、上記皮膚外用剤のpHは、3〜9であることを特徴とする、皮膚外用剤が提供される。
【発明の効果】
【0048】
本発明の一実施例に係る炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物は、高濃度で水に水可溶化されたウルソデオキシコール酸製剤形態であるので、従来の結晶形ウルソデオキシコール酸が有した根本的な問題点である皮膚発赤(skin irritation)を解決することができる利点がある。
【0049】
本発明の一実施例に係る炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物は、皮膚透過度が高くて、従来の結晶形ウルソデオキシコール酸製剤では限界があって不可能であったウルソデオキシコール酸の皮膚細胞への大量伝達及び吸収が可能となることにより、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症に対する優れた予防または治療効果を達成することができる利点がある。
【0050】
本発明の一実施例に係る炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物は、皮膚透過度が高くて、少量でも炎症性皮膚疾患予防または治療効果を達成することができる利点がある。
【0051】
本発明の一実施例に係る皮膚外用剤を用いると、ウルソデオキシコール酸の異物感及びひりひりする不便感がほとんどなく、ウルソデオキシコール酸製剤の安定性を高めた炎症性皮膚疾患予防または治療用皮膚外用剤を提供することができる。
【0052】
本発明の一実施例に係る皮膚外用剤を用いて、ニキビを効果的に治療することができる利点がある。
【0053】
本発明の一実施例に係る皮膚外用剤を用いて、ニキビの原因中の1つである過度な皮脂分泌を抑制することができる利点がある。
【0054】
本発明の一実施例に係る皮膚外用剤を用いて、アトピーを効果的に治療することができる利点がある。
【0055】
本発明の一実施例に係る皮膚外用剤を用いて、乾癬を効果的に治療することができる利点がある。
【0056】
本発明の一実施例に係る皮膚外用剤を用いて、様々な炎症性皮膚疾患から現われる主な症状である炎症反応を効果的に抑制し治療することができる利点がある。
【0057】
本発明の一実施例に係る皮膚外用剤を用いて、従来の皮膚塗布剤の保湿効果をさらに高めることができる利点がある。
【0058】
本発明の一実施例に係る皮膚外用剤を用いて、やけどまたは炎症性皮膚疾患による症状を緩和することができる皮膚外用剤を提供することができる。
【0059】
したがって、本発明によれば、アトピー性皮膚疾患、ニキビ、乾癬、じんま疹、炎症性皮膚炎、脂漏性皮膚炎及び接触皮膚炎などの典型的な炎症性皮膚疾患の主な臨床様相である皮膚乾燥、かゆみ、局所的炎症による浮腫や角質の過形成、微生物感染などの各段階を予防、症状緩和、軽減及び治療効果が優れる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明の実施例3で製造されたウルソデオキシコール酸溶液のpH値に応じる清浄水溶液生成の可否を示す図である。
【
図2】本発明の実施例4で製造されたウルソデオキシコール酸溶液のpH値に応じる清浄水溶液生成の可否を示す図である。
【
図3】本発明の実施例5で製造されたウルソデオキシコール酸溶液のpH値に応じる清浄水溶液生成の可否を示す図である。
【
図4】本発明の実施例6で製造されたウルソデオキシコール酸溶液のpH値に応じる清浄水溶液生成の可否を示す図である。
【
図5】本発明の実施例7で製造されたウルソデオキシコール酸溶液のpH値に応じる清浄水溶液生成の可否を示す図である。
【
図6】本発明の一実施例に係る組成物のクリーム剤形及びパッチ剤形の皮膚透過度を比較して示した図である。
【
図7a】本発明の一実施例に係る組成物を使用前、2週使用後、4週使用後、及び8週使用後のニキビ等級の数値変化を示す図である。
【
図7b】本発明の一実施例に係る組成物を使用前、2週使用後、4週使用後、及び8週使用後のニキビ等級の数値改善率(%)を示す図である。
【
図8a】本発明の一実施例に係る組成物の使用前、2週使用後、4週使用後、及び8週使用後の皮脂量の変化を示す図である。
【
図8b】本発明の一実施例に係る組成物の使用前、2週使用後、4週使用後、及び8週使用後の皮脂量の改善率(%)を示す図である。
【
図9a】ニキビ性皮膚改善の適合性を判断するために実施例2による組成物をニキビ性皮膚に8週間塗布後の全顔撮影システムにより撮影した結果を示す図である。
【
図9b】ニキビ性皮膚改善の適合性を判断するために実施例2による組成物をニキビ性皮膚に8週間塗布後の全顔撮影システムにより撮影した結果を示す図である。
【
図10】本発明に係るクリーム(1)形態の組成物(製剤例1)を用いて評価した全体アトピー皮膚炎患者を対象にした品評結果を示す図である。
【
図11】本発明に係るクリーム(1)形態の組成物(製剤例1)を用いて評価された全体アトピー皮膚炎患者のうちのアトピー症状のひどい11人を対象にした品評結果を示す図である。
【
図12】本発明に係る乾癬皮膚への使用適合性を判断するための乾癬動物モデルにおける効力試験の全体的な実験方法を示す模式図であって、G1は、ヴァセリンローションを 1日から11日まで塗布した対照群を示し、G2は、5%イミキモド(IMQ)クリームを1日から8日まで塗布して乾癬を誘発させたグループを示し、G3は、5%イミキモド(IMQ)クリームを1日から8日まで塗布すると共に5日から11日までテストクリームも同時に塗布して乾癬症状の緩和あるいは治療効果をテストしたグループを示す。
【
図13a】本発明に係る乾癬動物モデルにおける効力試験の結果を示すものであって、10日目に各グループの皮膚での角質形成程度を写真で撮影したものである。
【
図13b】本発明に係る乾癬動物モデルにおける効力試験の結果を示すものであって、
図13aの乾癬症状を疾病活動指数(disease activity index、DAI)を指標にして数値で表示したグラフである。
【
図13c】本発明に係る乾癬動物モデルにおける効力試験の結果を示すものであって、乾癬誘発動物の皮膚での表皮過角化(hyperkeratosis)程度を測定して数値で表示した効果グラフである。
【
図14】本発明に係る急性皮膚炎動物モデルにおける様々な炎症性皮膚疾患の主要症状である炎症反応の抑制に対する水可溶化されたウルソデオキシコール酸の効力試験の結果を示すものであって、ホルボール12−ミリステート13−アセテート(TPA)により炎症が誘発された耳の厚さの変化を測定して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明のより容易な理解のために便宜上特定用語を本発明に定義する。本発明において他に定義しない限り、本発明で用いられる科学用語及び技術用語は当該技術分野の通常の知識を有する者により一般的に理解される意味を有する。また、文脈上特に指定しない限り、単数形態の用語はそれの複数形態も含み、複数形態の用語はそれの単数形態も含むことを理解しなければならない。
【0062】
本発明で用いる用語「治療」とは、本発明の組成物の投与により炎症性皮膚疾患の症状が好転または有利に変更される全ての行為を意味する。
【0063】
本発明で用いる用語「有効成分で含む」との意味は、炎症性皮膚疾患の予防または治療用組成物、皮膚外用剤組成物及び皮膚外用剤として効果を奏する程度、例えば、予防効果、治療効果、かゆみ緩和、アトピー緩和、保湿効果、緩和効果などを奏することができる程度で含まれることを意味する。
【0064】
本発明で用いる用語「緩和」、「軽減」、または「鎮静」とは、治療される状態に関連したパラメータ、例えば症状の程度を少なくとも低減させる全ての行為を意味する。
【0065】
本発明で用いる用語「コーンシロップ(corn syrub)」とは、コーンシロップと液体ブドウ糖を全て含むことができる。
【0066】
本発明で用いる用語「清浄水溶液」または「透明な(clear)水溶液」とは、目視上沈殿物が実質的にない溶液状態である透明な状態の水溶液を意味する。
【0067】
本発明の一側面によれば、(a)ウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid、UDCA);(b)水可溶性澱粉転化物;及び(c)水を有効成分で含み、全てのpH値に対して透明な(clear)水溶液状態である炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0068】
上記ウルソデオキシコール酸はマルトデキストリンとともに安定化して、結果的に純粋ウルソデオキシコール酸分子の水に対する溶解度が3、000倍以上増加することができる。上記のように、水に溶解されている水可溶化されたウルソデオキシコール酸(UDCA)は分子特性上両親媒性特性を有する非イオン性分子状態で水溶液に溶解されているため、濃度差による速い分散速度で細胞間、細胞内拡散はもちろん受動的機転により生体内吸収されるので、ウルソデオキシコール酸の吸収率は画期的に増加することができる。結論的に、水に60g/Lまで高濃度で溶けているウルソデオキシコール酸を主成分として含んでいる水可溶化されたウルソデオキシコール酸(UDCA)は、最も理想的な多機能性抗炎症薬であって皮膚塗布剤として適用するとき、各種炎症性皮膚疾患、掻痒症及びアレルギー性皮膚疾患を予防、緩和または治療することができる。
【0069】
UDCAは、非毒性親水性の胆汁酸であって経口投与が可能であり、人体内の総胆汁酸は約3%程度の低い濃度であるが、通常人間の胆汁にも存在し、アメリカのFDAより承認された薬物である。UDCAの薬理作用は炎症因子を生成するホスホリパーゼA2(phospholipase A2)とティーエヌエフ−アルファ(TNF−α)のmRNA発現量を調節するだけでなく炎症による細胞の損傷をともに抑制できる消炎剤として作用することができる。また、UDCAは、細胞保護作用、容量依存方式での細胞膜の安定化/保護、容量依存方式での抗細胞自滅効果、容量依存方式での細胞内グルココルチコイド水溶体の活性化による免疫調節効果、ティーエヌエフ−アルファ(TNF−α)の発現抑制及び酸化窒素合成酵素の誘導阻害による抗炎症効果などがある(文献:Hepatology Research 2008;38:123−131)。
【0070】
本発明の組成物は、これに限定されないが、上記組成物内のUDCAの溶解度は既存商用化されているUDCA製剤対比約3、000倍以上となることができ(0.15M対0.05mM)、UDCAのタウリンコンジュゲートされた代謝産物TUDCAに比べて、約300倍以上となることができる。陽性子化形態のUDCAの溶解度は、約0.05mMであり、TUDCAの溶解度は0.45mMであって、TUDCAが陽性子化された場合、比較的に低い溶解度を有するが、商用化されたUDCAの溶解度よりも約10倍高い(pH1〜8)。よって、本発明はUDCA及びTUDCAなどを含む。
【0071】
UDCAを経口投与時、約30〜60%は非イオン受動拡散(nonionic passive diffusion)により空腸及び回腸に沿って吸収され、結晶体形態のUDCA(crystalline structure of UDCA)は、不溶性であるため、結腸で少量(攝取用量の20%)のみが能動輸送機転により回腸に吸収される。UDCAが肝細胞により吸収されると、タウリン(taurine)及びグリシン(glycine)とコンジュゲートされることができ、このように形成されたTUDCA及びGUDCAは、人間が分泌した胆汁酸であって肝の1次通過浄化率(hepatic first−pass clearance)により排泄されるので、経口投与後のUDCAの血液内濃度は非常に低くて皮膚疾患治療のための有効量としては不足である。このため、炎症疾患の予防または治療用組成物を提供するためには、多量の投与量を必要とする。
【0072】
しかし、本発明の組成物は、既存の経口投与剤及びパウダー形態の製剤(胆汁が不完全に可溶化される既存剤形により達成可能な形態)に比べて、水溶液中UDCAの皮膚透過度が高く、本発明の剤形内でUDCAは全部溶解されるので、より低い用量の投与でも高い炎症性皮膚疾患の予防または治療効果を達成することができる。
【0073】
本発明に係る製法を用いて様々な濃度の胆汁酸(塩)及びそれに対応する最小量のDE(dextrose equivalent)は、15〜25を有する高分子量の水可溶性澱粉転化物[例えば、Maltrin M150(DE=15)、Maltrin M180(DE=18)、Maltrin M200(DE=20)、Maltrin M250(コーンシロップ成分:DE=25、液体グルコース)]または可溶性非澱粉多糖類(例えば、グアーガム、ペクチン、アラビアガム)を有する水溶液剤形を製造することができる。
【0074】
本発明の一実施例によれば、上記ウルソデオキシコール酸は、水可溶性ウルソデオキシコール酸、水可溶性ウルソデオキシコール酸誘導体、ウルソデオキシコール酸塩、及びアミンとコンジュゲートされたウルソデオキシコール酸から選択されるウルソデオキシコール酸であって水可溶化されることができる。ウルソデオキシコール酸の水可溶性金属塩、ウルソデオキシコール酸とシクロデキストリン及びこの誘導体間の包接化合物及び水可溶性O−スルホン化胆汁酸も水可溶性ウルソデオキシコール酸塩として含まれることができる。
【0075】
本発明の一実施例によれば、上記ウルソデオキシコール酸は、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)及びグリコウルソデオキシコール酸(GUDCA)から選択される1種以上のUDCAであって水可溶化されたことを特徴とする。
【0076】
本発明の一実施例によれば、上記ウルソデオキシコール酸は、組成物の総重量に対して0.01〜6重量部含まれることを特徴とする炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0077】
これに限定されないが、ウルソデオキシコール酸が組成物の総重量に対して0.01重量部未満であると、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療効果が微々たるものになることがあり、6重量部超過になると、清浄水溶液としての製造が困難となることがある。これに限定されないが、清浄水溶液にならず、白く濁って沈殿が生じる場合は皮膚塗布剤としての使用が困難となることがある。沈殿が生じると、ウルソデオキシコール酸が水に溶けずに結晶形UDCAとして存在することがあり、これを皮膚塗布剤として製造すると、結晶形UDCAにより皮膚発赤を起こす可能性が大きい。清浄水溶液に製造することは、皮膚塗布剤の製造時に皮膚発赤の問題を起こす結晶形UDCAを全て除去するためである。
【0078】
本発明の一実施例によれば、上記水可溶性澱粉転化物はマルトデキストリンであり、上記マルトデキストリンは、組成物の総重量に対して1.0〜70重量部含まれることを特徴とする、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0079】
これに限定されないが、マルトデキストリンが1.0重量部未満含まれると、UDCAを有効量で水に溶解させることができず、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療効果が微々たるものになることがあり、70重量部超過になると沈殿が生じてUDCAやマルトデキストリンが水溶液から析出され、これによる皮膚発赤が発生することがある。
【0080】
本発明の一実施例によれば、上記水可溶性澱粉化合物はマルトデキストリンであり、上記ウルソデオキシコール酸に対するマルトデキストリンの最小重量比は、1:30であってもよく、これに限定されないが、1:25、1:20、1:15、1:12、1:6であってもよい。上記組成物に用いられる高分子量の水可溶性澱粉転化物の量は、選択されたウルソデオキシコール酸の所望の濃度及び本願に記載のpH範囲で可溶性を有する量として定義することができる。上記マルトデキストリンの最小量は、タウロウルソデオキシコール酸及びグリコウルソデオキシコール酸の場合にも同様に適用することができる。
【0081】
本発明の一実施例によれば、上記pH値は3〜9であり、上記水可溶性澱粉転化物はマルトデキストリンであり、上記UDCAに対するマルトデキストリンの最小重量比は、1:16−1:30であることを特徴とする、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。これに限定されないが、上記UDCAに対するマルトデキストリンの最小重量比は、1:16−1:20、1:16−1:25、1:16−1:30、1:20−1:25、1:20−1:30、1:25−1:30であってもよい。
【0082】
これに限定されないが、pH値が3以上6未満で、UDCAに対するマルトデキストリンの最小重量比が1:1−1:15である場合は沈殿が生じて清浄水溶液にならない場合がある。
【0083】
本発明の一実施例によれば、上記pH値は6〜9であり、上記水可溶性澱粉転化物はマルトデキストリンであり、上記UDCAに対するマルトデキストリンの最小重量比が1:13−1:30であることを特徴とする、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0084】
本発明の上記水可溶性澱粉転化物は、各種pH条件下で澱粉の部分または不完全加水分解から直接得られた炭水化物を含む。非制限的な例としては、マルトデキストリン、デキストリン、液体ブドウ糖、コーンシロップ固形物(液体ブドウ糖の乾燥粉末)が挙げられる。上記コーンシロップ固形物は、Maltrin M200であり、マルトデキストリンは、Maltrin M700であってもよく、これに限定されないが、アメリカアイオワ州のマスカティン所在のGrain Processing Corporation社の商品名GPC(商標)で製造されたものであってもよい。
【0085】
澱粉転化物が重合体で構成された場合、この重合体は少なくとも1つの還元端部と少なくとも1つの非還元端部を有することができ、直鎖または分岐鎖であってもよい。また分子量は、約100質量単位以上、または106質量単位以上であってもよい。これに限定されないが、高分子量の水可溶性澱粉転化物は、分子量105質量単位以上を有することができる。
【0086】
本発明の一実施例によれば、可溶性非澱粉多糖類をさらに含むことができる。上記水可溶性非澱粉多糖類は各種加水分解または合成機転により各種pH条件下で得られる。非制限的な例としては、デキストラン、グアーガム、ペクチン、難消化性の可溶性繊維などが挙げられる。重合体で構成された場合、当該重合体は少なくとも1つの還元端部と少なくとも1つの非還元端部とを有する。上記重合体は、直鎖または分岐鎖であってもよい。本発明の多糖類の分子量は、約100質量単位以上、または106質量単位以上であってもよい。これに限定されないが、分子量は105質量単位以上が好ましい。上記組成物は、水可溶性澱粉転化物及び/または可溶性非澱粉多糖類の配合物を含む水性溶液の組成物が提供されることができる。
【0087】
本発明の一実施例によれば、組成物の沈殿を防止するために必要とされるウルソデオキシコール酸に対する液体ブドウ糖(例えば、コーンシロップ)の最小重量比は、約1:25(すなわち、水100ml中のウルソデオキシコール酸500mg当たり約12.5gであることができ、水200ml中のウルソデオキシコール酸1g当たり約25g)であってもよいが、これに限定されない。
【0088】
また、本発明の組成物の投与形態により、沈殿を防止するために必要な液体ブドウ糖の乾燥粉末(コーンシロップ固形物、例えば、Maltrin M200)の最小量は、水100ml中のウルソデオキシコール酸1g当たり約30gであってもよく、水200ml中のウルソデオキシコール酸2g当たり約60gであってもよいが、これに限定されない。
【0089】
本発明の一実施例に係る組成物の投与形態により、沈殿を防止するために必要な可溶性非澱粉多糖類の最小量は、水100ml中のウルソデオキシコール酸500mg当たりグアーガム約50gであってもよく、水100ml中のウルソデオキシコール酸500mg当たりペクチン80gであってもよい。ただし、高分子量水可溶性澱粉転化物または可溶性非澱粉多糖類の最小必要量は、主に濃度よりも溶液製剤におけるウルソデオキシコール酸の絶対量により決定されることができる。
【0090】
本発明の組成物は、食物繊維をさらに含むことができる。食物繊維の非制限的な例としては、グアーガム、ペクチン、オオバコ(psyllium)、エンバクゴム、豆繊維、エンバクふすま、トウモロコシ皮、セルロース及び小麦ふすまが挙げられるが、これに限定されない。
【0091】
本発明の組成物は、乳化剤及び懸濁剤をさらに含むことができる。乳化剤の非制限的な例としては、グアーガム、ペクチン、アカシア、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポビドン、トラガカントゴム、キサンタンガム及びソルビタンエステルが挙げられる。
【0092】
本発明の組成物は薬学的に許容可能な添加剤をさらに含むことができ、薬学的に許容可能な添加剤としては、澱粉、ゼラチン化澱粉、未結晶セルロース、乳糖、ポビドン、コロイダルシリコンジオキシド、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアガム、プレゼラチン化澱粉、トウモロコシ澱粉、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、澱粉グリコール酸ナトリウム、カルナバワックス、合成珪酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、白糖、デキストロース、ソルビトール及びタルクなどを用いることができる。本発明に係る薬学的に許容可能な添加剤は、上記組成物に対して0.1〜90重量部で含まれることが好ましいが、これに限定されない。
【0093】
また、本発明の組成物は、実際臨床投与時に皮膚外用剤剤形で投与することができ、製剤化する場合は、通常用いる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調剤することができる。
【0094】
本発明の一実施例によれば、上記水可溶化されたウルソデオキシコール酸組成物のpHは、3〜9であり、上記pH値では上記組成物が目視上沈殿することなく安定した清浄水溶液状態である炎症性皮膚疾患予防または治療用組成物を提供することができる。上記組成物は水中で可溶化されることができ、上記のpHでは沈殿せず水溶液状態であることができる。上記組成物内のウルソデオキシコール酸と水可溶性澱粉転化物を沈殿させない選択されたpH範囲は、約pH1〜約pH10であり、約pH3〜約pH9が好ましく、これに限定されないが、pH6〜9がより好ましく、pH6.5〜7.5がさらに好ましい。また、上記pHを維持するために必要な場合、酸、塩基及び緩衝剤を含むことができる。上記pH調整物質としては、これに限定されないが、HCl、H
3PO
4、H
2SO
4、HNO
3、CH
3COOH、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、リン酸塩、エデト酸(eidetic acid)及びアルカリ類が挙げられる。このpH調整物質の性質及び使用方式は、本分野においてよく知られている。上記pH範囲は、投与方法に応じて様々な剤形が製剤から溶液状態に維持され、皮膚に塗布され吸収されるに十分な水系で得られる任意の下位セット(subset)のpHレベルである。よって、上記組成物は、本願に係る組成物が皮膚のpHレベルにおいて沈殿されることなく溶液状態にある剤形として使用されることができる。本発明の一部の実施例に係るウルソデオキシコール酸は、酸性条件下で一般的に不溶性であるにもかかわらず遊離状態で酸性条件下で溶解されたままにあることになる。上記組成物が皮膚塗布剤の剤形に添加される場合は、可溶性が維持される形態の組成物がさらに含まれることができる。また、上記組成物は、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物を提供するために透明で安定した溶液を提供することができる。
【0095】
本発明の一実施例によれば、上記炎症性皮膚疾患としてアトピー性皮膚疾患、ニキビ、乾癬、じんま疹、炎症性皮膚炎、脂漏性皮膚炎及び接触皮膚炎から選択される炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供されることができる。
【0096】
じんま疹は、皮膚や粘膜に存在する血管の透過性が増加することにより一時的に血漿成分が組職内に蓄積され、皮膚が赤くなるか、白色で脹れ上がってひどいかゆみが伴われるありふれた皮膚疾患を意味し、皮膚上層部の部分的な浮腫により皮膚が脹れ上がり、ひどいかゆみやひりひりすることを伴う場合が多い。虫にかまれたときのように皮膚が脹れ上がることを膨疹と言うが、じんま疹には大きさが様々であり、赤色で取り囲まれた膨疹が特徴的に現れる。じんま疹に類似であり皮膚の深い所から脹れ上がることを血管浮腫と言うが、じんま疹や血管浮腫は、5人に1人の割合で一生に一度は経験するありふれた疾患である。また、じんま疹は、期間に応じて急性及び慢性じんま疹及び血管浮腫に分けられるが、急性じんま疹は、たいてい食べ物や薬物により発生され、数日から最大6週以内に好転するのが大部分であり、6週以上持続する場合を慢性じんま疹と定義する。じんま疹は、大部分その原因を分からない場合が多い。急性じんま疹の50%、慢性じんま疹の70%は、じんま疹の原因を調べることができず、全体じんま疹患者の一部でのみ原因を明らかにすることができると報告されている(ソウル大学校病院医学情報)。
【0097】
炎症性皮膚炎は、これに限定されないが、皮膚疾患のうち炎症による症状を主体にするが、寄生虫、微生物、アレルギーなどを原因として考えられないものを意味する(韓国農業用語辞書:農業振興庁)。
【0098】
脂漏性皮膚炎とは、長期間持続する湿疹の一種であって、主に皮脂腺の活動が増加して皮脂分泌が旺盛な頭皮や顔、その中でも、眉毛、鼻、唇周り、耳、わき、胸、鼠蹊部などに発生する慢性炎症性皮膚疾患であり、病気の発生に直・間接的に皮脂か関与するという理論、バクテリア及び酵母菌により発生するという理論、神経伝達物質の異常が関わっているという理論、季節的な変化または表皮増殖異常などによるものであるという理論など様々な理論が報告されているが、脂漏性皮膚炎の原因は、まだ明かになっていない。
【0099】
脂漏性皮膚炎は、生後3ヶ月未満の乳児や40〜70歳代に発生頻度が高く、乳児においては性別間の差はないが、大人においては男性にありがちで、脂性皮膚と関連がある。紅斑の上に生じた乾性あるいは脂気の黄色い鱗(鱗屑)が特徴であり、かゆみを伴うことがある。好転と悪化を繰り返しながら全身に現われることもあるが、一部位に限った発疹で現われることもある。頭皮には米ぬか状の表皮脱落が発生することがあり、これを頭垢という。顔における脂漏性皮膚炎は、頬、鼻、額に丘疹性(1cm未満の大きさ)発疹で現われることがある。剥がれやすい鱗や紅斑が眉毛で発見され、鱗下の皮膚は赤色を呈する。まぶたも黄赤色を呈し、微細な鱗で覆われている場合がある。耳にできた脂漏性皮膚炎は、ひどいかゆみを伴った鱗が生じ、耳の後部及び耳たぶの下の皮膚にも生じることがある。わき部位では発疹が両側性であり、乳首から始まって周辺の皮膚に広がるため、防臭剤によるアレルギー接触皮膚炎に類似の形状を示す。鼠蹊部位、臀部間のしわにも鱗が微細であり境界が明確ではなく、両側性及び対称性の傾向にある。皮膚が重なった部位には亀裂が発生することもある(ソウル大学校病院医学情報)。
【0100】
接触皮膚炎は、外部物質との接触により発生する全ての皮膚炎を言う。接触物質自体の刺激により発生する原発性接触皮膚炎と、接触物質に対するアレルギー反応のある人にのみ発生するアレルギー性接触皮膚炎とに区分される。接触皮膚炎は、原発性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎とに分けられるが、その症状は互いに類似しており、主に紅斑(丸くて赤い点)、浮腫などを伴う湿疹形態の病変を発生させる。一部においてはニキビ性病変、じんま疹性病変、多形紅斑、色素沈着、肉芽腫性病変なども発生することがある(ソウル大学校病院医学情報)。
【0101】
乾癬やアトピー性皮膚疾患の場合、皮膚が荒れる症状は角質化や角質層を形成する角質細胞(keratinocyte)が非正常的に増加することによって現われるが、本発明の組成物は、このような角質細胞の増殖速度を調節して、過増殖性皮膚疾患(hyperproliferative skin disorders)の緩和及び治療に用いることができる。
【0102】
本発明の一実施例によれば、上記重症掻痒症は、皮膚かゆみが睡眠及び日常生活に支障を与えて正常な活動が困難である場合を含む、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物が提供される。
【0103】
本発明の一実施例によれば、上記水可溶化されたウルソデオキシコール酸が有効量で含まれる、炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用組成物を提供することができる。
【0104】
本発明において、有効量とは皮膚の炎症皮膚疾患または重症掻痒症を予防することや既に生じた疾患を緩和及び治療することができる量を意味し、治療学的活性量を含む概念である。上記有効量は、製品化される形態、皮膚に適用する方法及び皮膚にとどまる時間などに応じて異なるが、例えば、上記組成物が皮膚疾患または重症掻痒症の改善及び治療用皮膚外用剤として製品化される場合、一日投与量はウルソデオキシコール酸を基準にして0.1〜100mg/kgであり、これに限定されないが、30〜80mg/kgが好ましく、50〜60mg/kgがより好ましく、1日に1〜6回塗布することができる。
【0105】
また、上記有効量は、皮膚塗布剤組成物全体に対して通常0.001〜1.5重量部であることができ、0.005〜1.0重量部が好ましく、0.01〜0.5重量部がより好ましい。
【0106】
本発明の一実施例によれば、上記組成物を乾燥して粉末形態に製剤化することができる。上記粉末形態の組成物は、保管や取り扱いが容易であり、所望の形態の剤形の組成物に製造することが容易であるとの利点がある。
【0107】
本発明の一実施例によれば、上記粉末をpH7以下で水と混合して液状形態に製造することができる。上記粉末形態の組成物は、水などの弱酸及び中性においても混合が可能であるので、所望の形態の剤形の組成物に製造することが容易であるとの利点がある。
【0108】
本発明の他の側面によれば、上記水可溶化されたウルソデオキシコール酸を有効成分で含む炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用皮膚外用剤が提供される。
【0109】
上記組成物を含有した皮膚外用剤組成物は、上記pHにてウルソデオキシコール酸分子どうしの凝集がない状態(micellesを形成しない状態)を維持し、上記化合物を凝集させない選択されたpH範囲は、約pH3〜約pH9が好ましく、これに限定されないが、pH4.5〜8がより好ましく、pH6〜7がさらに好ましい。また、上記pHを維持するために、必要によって酸、塩基及び緩衝剤を含むことができる。
【0110】
上記皮膚外用剤組成物は、Carbopol#941(1%)、EDTA−2Na、Nipagin M(M−P)、DL−panthenol、1、3−B.G、Nipasol M(P−P)、Vit.E.Acetate、Tween#60、Arlacel#60、Arlacel#165、GMS105、Kalcol6850、Stearic Acid、CEH、Macadamia Nut Oil、Lily 70、TCG−M、KF−96A、(6cs)、KF 995、DC200f100cs、T.E.A、Sepigel305、バチルス/豆/フォリックアシッド発酵抽出物、桑白皮抽出物、ヨモギ抽出物、グレープフルーツシード抽出物、ポーチュラカ抽出物、シーバックソーン実抽出物、カカオ抽出物、カモミール花抽出物、プロポリス抽出物、白キクラゲ抽出物、グアバ葉抽出物、緑茶抽出物、ウィッチヘ−ゼル抽出物、バラ花抽出物、ホワイトウィロー皮抽出物、蜜抽出物及びローヤルゼリー抽出物、マリンコラーゲンのうちの1種以上を含むことができ、防腐剤、香料、色素、精製水などを必要によって微量含むことができる。
【0111】
上記抽出物を用いると、抗菌、抗炎作用及び保湿力に優れ、例えば、白キクラゲ抽出物の場合は、水分保護膜を形成し、水分維持力の高い利点がある。また、ヨモギ抽出物の場合は、皮膚鎮静効果なども有することができる。また、上記抽出物を特定の組み合わせで組成物に添加するとシナジー効果も得ることができる。
【0112】
本発明に係る皮膚外用剤組成物において、水可溶化されたウルソデオキシコール酸の清浄水溶液に、さらに脂肪物質、有機溶媒、溶解剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(forming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、皮膚密閉剤、セラミド含有保湿剤、必須オイル、染料、顔料、香料、親水性または親油性活性剤、脂質小胞または皮膚塗布剤に通常的に用いられる任意の他の成分のように皮膚科学分野で通常的に用いられる補助剤を含むことができる。そして上記成分は、皮膚科学分野において一般的に用いられる量で使用されることができる。
【0113】
本発明の一実施例によれば、上記皮膚外用剤は、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ、粉末及び噴霧剤の剤形を有する組成物の中から選択される炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用皮膚外用剤が提供されることができる。
【0114】
本発明の皮膚外用剤は、当業界で通常製造されるいずれの剤形にも製造されることができ、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、せっけん、界面活性剤含有クレンジング、オイル、ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーに剤形化することができるが、これに限定されない。
【0115】
本発明の剤形が噴霧剤である場合は、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケートまたはポリアミドパウダーを用いることができ、特にスプレーの場合は、さらにクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルなどの推進剤を含むことができる。
【0116】
本発明の剤形が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が用いられるが、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1、3−ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0117】
本発明の剤形が懸濁液である場合は、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールなどの液状の希釈剤、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルなどの懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガまたはトラガントを用いることができる。
【0118】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合は、担体成分として脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリ二ウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体またはエトキシ化グリセロール脂肪酸エステルを用いることができる。
【0119】
上記水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液を含有する皮膚塗布剤組成物の剤形として好ましい様態はクリームである。上記クリームは、コールドクリーム、エモリエントクリーム(emollient cream)などのW/O型、及びシェービングクリーム、バニシングクリーム、ハンドクリーム、リンシングクリム(reansing cream)などのO/W型を含む。より好ましいクリームは、典型的に水とステアリン酸を含有するバニシングクリームである。通常患者や医師は、O/Wクリームが軟膏よりも洗い出しやすいので、軟膏剤よりもクリームを選好し、この観点から本発明の組成物の剤形として好ましいものはクリームである。
【0120】
上記水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液を含有する皮膚外用剤組成物の剤形として好ましい一様態は、ローションである。上記ローションは、懸濁剤、乳剤、液剤などと同じ方法で調剤され、これらも薬剤剤形分野の当業者には通常の技術に属する。本発明においてさらに好ましいものは、ホワイトローション(white lotion)であり、この製剤も剤形分野の当業者には通常の技術により製造することができる。
【0121】
上記水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液を含有する皮膚外用剤組成物の剤形のまた他の好ましい一様態は、擦剤である。上記擦剤は、油性擦剤及びエタノール性擦剤のいずれにも製造可能である。好ましいものは、皮膚に刺激の少ない油性擦剤である。油性擦剤の場合は、アーモンドオイル、落花生油、綿実油などの不揮発性油、ウィンターグリーン(wintergreen)、テルペンチン(turpentine)などの揮発性油または不揮発性油などが配合される。
【0122】
また、各炎症性皮膚疾患及び重症掻痒症皮膚炎に対する緩和及び治療用量の範囲は、重症度及び剤形に応じて異なることができる。また、適用回数も患者の年齢、体重及び体質に応じて異なることができる。
【0123】
本発明の一実施例によれば、上記皮膚外用剤は、クリームの剤形を有する炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用皮膚外用剤が提供されることができる。
【0124】
上記クリーム剤形またはペーストやゲルである場合は、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛を用いることができる。
【0125】
本発明の剤形は、所望のpH範囲にかけて本発明の組成物に溶解状態にある薬学的材料を伝達するための担体、アジュバント(adjuvant)または増強剤(enhancer)として作用することができる。また、これに限定されないが、上記組成物は不完全な可溶性の非胆汁酸薬剤を含むことができる。
【0126】
本発明の一実施例によれば、1週以上及び1日1回以上用いられることを特徴とする炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または改善用皮膚外用剤が提供されることができる。
【0127】
本発明の実験例の実験結果及び
図7〜9によれば、ニキビ皮膚疾患を有した被実験者に本発明に係る皮膚外用剤を塗布した結果、2週後から明らかな効果が示されたことを確認できる。
【0128】
本発明のまた他の側面によれば、上記組成物はやけどまたは炎症性皮膚疾患による症状を緩和することを特徴とする皮膚外用剤が提供されることができる。
【0129】
本発明に係る組成物の投与方法及び投与用量は、年齢の異なる対象、追加にアレルギーまたは疾病状態を有した対象、及び症状の重症度が様々な対象を予防及び/または治療するために任意の尺度で設計することができ、方法及び投与用量は、時間に応じる変動に適合するようにすることができる。明白な変化及び変更によるこれらの等価物及び代用物は本発明の範囲内に含まれることができる。したがって、当業者であれば、単一の実施例、用途及び/または利点が他の実施例において排除されるように意図されたものではないことを理解しなければならない。
【0130】
本願は炎症性皮膚疾患の遺伝学、生化学及び細胞生物学の現行の認識に対する広範囲な情報を含むが、これからの研究はこれらの認識の側面が不正確であるか不完全なものであると明らかされる場合もあり得る。したがって当業者であれば、本発明の一部が取られたり、全部が取られたりしても特定モデルや作用機転に制限されないことを理解できよう。
【0131】
また、当業者はその他等価のまたは代替の組成物及び方法が使用できることを認識することができる。例えば、多数の化合物がウルソデオキシコール酸とともに投与できると説明したが、それ以外の他の化合物も含まれることができることは勿論である。
【0132】
また、他の薬剤の塗布は、本発明の水可溶化されたウルソデオキシコール酸組成物の投与と同時刻に行われたり、またはこれら二つは同一のまたは重複する時間周期(例えば、同時間、同日付けまたは同週)の間に簡単に投与されることができる。
【0133】
本発明の一実施例によれば、上記皮膚外用剤は化粧品であることができる。上記化粧品は、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、アイクリーム、栄養クリーム、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーエッセンス、シャンプー、リンス、ボディー洗浄剤、エッセンス及びパックであることができる。以外にもスキンローション、スキンソフナー、スキントナー、アストリンゼント、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、栄養エッセンス、せっけん、クレンジングクリーム、乳液、アイシャドウなどの剤形を有する化粧品の中から選択されることができるが、これに限定されない。
【0134】
本発明に係る化粧品としての剤形には、水可溶化されたUDCAに追加に脂肪物質、有機溶媒、溶解剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(forming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、皮膚密閉剤、セラミド含有保湿剤、必須オイル、染料、顔料、香料、親水性または親油性活性剤、脂質小胞または化粧品に通常的に用いられる任意の他の成分のように化粧品学または皮膚科学分野で通常的に用いられる補助剤を含むことができる。そして上記の成分は、皮膚科学分野で一般的に用いられる量で使用されることができる。
【0135】
本発明の一実施例によれば、上記皮膚外用剤のpHは、3〜9であることを特徴とする、皮膚外用剤が提供される。
【0136】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0137】
実施例1.水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液の製造
自然そのままのウルソデオキシコール酸(UDCA)及び低いブドウ糖当量を有する水可溶性澱粉を含む水可溶化されたウルソデオキシコール酸の透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0138】
具体的には、水酸化ナトリウムペレット6.7gを精製水400mlに溶解させた。 その後、ウルソデオキシコール酸60gを室温で撹拌しながら上記水酸化ナトリウム溶液に溶解させた。続けて、上記透明な溶液にマルトデキストリン360gを少しずつ添加し撹拌した。次に、高い処理量で超音波分解(750W、2OkHz)を行い、得られた透明な溶液に防腐剤を薬剤学的剤形に適した量で添加し、HClの滴加によりpHを調整した。精製水を添加して総1,000mlに調整した。必要によって、上記透明な溶液を適宜濾過装置により濾過した。この濾過は、原料からの不純物除去や滅菌のために重要であるが、溶液が既に透明であるので、粒状物を除去するためではない。表1に示すように、上記製造されたウルソデオキシコール酸溶液は、pH10.3、9.2、6.7において目視上沈殿なく清浄水溶液を形成したが、pH5.4では沈殿を形成した。
【0139】
実施例2.水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液の製造
自然そのままのウルソデオキシコール酸(UDCA)及び低いブドウ糖当量を有する水可溶性澱粉を含む水可溶化されたウルソデオキシコール酸の透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0140】
具体的には、ウルソデオキシコール酸60g当たり1つの高分子量水可溶性澱粉転化物としてのマルトデキストリン720gを用いたこと以外は、実施例1と同様に製造した。 表1に示すように、上記製造されたウルソデオキシコール酸溶液は、pH9.6、7.3、6.5、6.0において目視上沈殿なく清浄水溶液を形成したが、pH5.5では沈殿を形成した。
【0141】
実施例3.水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液の製造
自然そのままのウルソデオキシコール酸(UDCA)及び低いブドウ糖当量を有する水可溶性澱粉を含む水可溶化されたウルソデオキシコール酸の透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0142】
具体的には、ウルソデオキシコール酸50g当たり1つの高分子量水可溶性澱粉転化物としてのマルトデキストリン750gを用いたこと以外は実施例1と同様に製造した。このとき、水酸化ナトリウムペレット5.7gを精製水400mlに溶解させた後に用いた。表1に示すように、上記製造されたウルソデオキシコール酸溶液は、pH9.5、8.9、7.9、7.1、6.0において目視上沈殿なく清浄水溶液を形成した。しかし、pH5.5では沈殿を形成した。
図1は、各pH値においてのウルソデオキシコール酸溶液をテストチューブに入れ、清浄水溶液生成の可否を写真で示した図である。
【0143】
実施例4.水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液の製造
自然そのままのウルソデオキシコール酸(UDCA)及び低いブドウ糖当量を有する水可溶性澱粉を含む水可溶化されたウルソデオキシコール酸の透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0144】
具体的には、ウルソデオキシコール酸17.5g当たり1つの高分子量水可溶性澱粉転化物としてのマルトデキストリン350gを用いたこと以外は実施例1と同様に製造した。このとき、水酸化ナトリウムペレット2.0gを精製水400mlに溶解させた後に用いた。表1に示すように、上記製造されたウルソデオキシコール酸溶液は、pH9.4、7.1、6.1、5.5において目視上沈殿なく清浄水溶液を形成した。しかし、pH5.1では沈殿を形成した。
図2は、各pH値においてのウルソデオキシコール酸溶液をテストチューブに入れ、清浄水溶液生成の可否を写真で示した図である。
【0145】
実施例5.水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液の製造
自然そのままのウルソデオキシコール酸(UDCA)及び低いブドウ糖当量を有する水可溶性澱粉を含む水可溶化されたウルソデオキシコール酸の透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0146】
具体的には、ウルソデオキシコール酸14g当たり1つの高分子量水可溶性澱粉転化物としてのマルトデキストリン350gを用いたこと以外は実施例1と同様に製造した。
【0147】
このとき、水酸化ナトリウムペレット1.7gを精製水400mlに溶解させた後に用いた。表1に示すように、上記製造されたウルソデオキシコール酸溶液は、pH9.6、6.1、5.1において目視上沈殿なく清浄水溶液を形成した。しかし、pH4.0では沈殿を形成した。
図3は、各pH値においてのウルソデオキシコール酸溶液をテストチューブに入れ、清浄水溶液生成の可否を写真で示した図である。
【0148】
実施例6.水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液の製造
自然そのままのウルソデオキシコール酸(UDCA)及び低いブドウ糖当量を有する水可溶性澱粉を含む水可溶化されたウルソデオキシコール酸の透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0149】
具体的には、ウルソデオキシコール酸25g当たり1つの高分子量水可溶性澱粉転化物としてのマルトデキストリン750gを用いたこと以外は実施例1と同様に製造した。このとき、水酸化ナトリウムペレット2.8gを精製水400mlに溶解させた後に用いた。表1に示すように、上記製造されたウルソデオキシコール酸溶液は、pH9.0、8.0、7.0、6.0、5.1、4.1、2.9において目視上沈殿なく清浄水溶液を形成した。
図4は、各pH値においてのウルソデオキシコール酸溶液をテストチューブに入れ、清浄水溶液生成の可否を写真で示した図である。
【0150】
実施例7.水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液の製造
ウルソデオキシコール酸及びウルソデオキシコール酸誘導体を含有し、低いブドウ糖当量を有する水可溶性澱粉を含む水可溶化されたウルソデオキシコール酸の透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0151】
具体的には、水酸化ナトリウムペレット0.3gを精製水500mlに溶解させた。次に、ウルソデオキシコール酸1.0g、タウロウルソデオキシコール酸0.5g、グリコウルソデオキシコール酸0.5gを室温で撹拌しながら上記水酸化ナトリウム溶液に溶解させた。続けて、上記透明な溶液にマルトデキストリン60gを少しずつ添加し撹拌した。その後、高い処理量で超音波分解(750W、2OkHz)を実施しながら得られた透明な溶液に防腐剤を薬剤学的剤形に適した量で添加し、HClの滴加によりpHを調整した。精製水を添加して総1,000mlに調整した。表1に示すように、上記製造されたウルソデオキシコール酸溶液は、pH10.2、9.0、8.1、7.1、6.1、5.1、4.1、2.9において目視上沈殿なく清浄水溶液を形成した。
図5は、各pH値においての上記ウルソデオキシコール酸溶液をテストチューブに入れ、清浄水溶液生成の可否を写真で示した図である。
【0152】
【表1】
【0153】
実施例8.水可溶化されたウルソデオキシコール酸を含有した皮膚塗布剤の製造
実施例1〜7で製造された水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液の原液を原料として用いて炎症性皮膚疾患または重症掻痒症の予防または治療用皮膚塗布剤を製造した。上記皮膚塗布剤は、剤形によりクリーム、ローション、セラム、トナー、エッセンス及びパッチ形態に製造された。
【0154】
製剤例
製剤例1.クリーム(1)の皮膚塗布剤の製造
実施例6で製造された水可溶化されたウルソデオキシコール酸原液(pH7.0)を用いて皮膚透過度実験及びアトピー皮膚炎改善に対する人体試験用皮膚塗布剤を製造した。表2に、クリーム(1)組成物の成分を示した(単位:重量%)。上記組成物は、ポーチュラカ抽出物0.1〜5重量%、桑白皮抽出物0.1〜5重量%の抽出物を含むことができる。
【0155】
製造されたクリームにおいては、水可溶化されたウルソデオキシコール酸原液が皮膚塗布剤組成物の原料とよく混ざり合い、時間が経過しても凝集することなく油相と水相層とに相分離せずに乳化がよくできる特徴を示した。
【0156】
【表2】
【0157】
製剤例2.クリーム(2)の皮膚塗布剤の製造
実施例6で製造された水可溶化されたウルソデオキシコール酸原液(pH7.0)を用いて皮脂分泌抑制及びニキビ治療用皮膚塗布剤を製造した。表3に、クリーム(2)成分を示した(単位:重量%)。上記組成物は、ポーチュラカ抽出物0.005〜0.05重量%、緑茶抽出物0.0001〜0.001重量%、センテラアジアティカ抽出物0.5〜2重量%、カカオ抽出物0.01〜0.1重量%、カモミール花抽出物0.0001〜0.001重量%、アロエベラ葉汁0.005〜0.03重量%を含むことができる。
【0158】
製造されたクリーム(2)においては、水可溶化されたウルソデオキシコール酸原液が皮膚塗布剤組成物の原料とよく混ざり合い、時間が経過しても凝集することなく油相と水相層とに相分離せずに乳化(emulsification)がよくできる特徴を示した。
【0159】
【表3】
【0160】
製剤例3.クリーム(3)の皮膚塗布剤の製造
実施例6で製造された水可溶化されたウルソデオキシコール酸原液(pH7.0)を用いて乾癬治療用皮膚塗布剤のテストクリーム(test cream)を製造した。表4に、クリーム(3)の原料成分を示した(単位:重量%)。
【0161】
製造されたクリーム(3)においては、水可溶化されたウルソデオキシコール酸原液が皮膚塗布剤組成物の原料とよく混ざり合い、時間が経過しても凝集することなく油相と水相層とに相分離せずに乳化(emulsification)がよくできる特徴を示した。
【0162】
【表4】
【0163】
製剤例4.ハイドロゲルパッチの製造
実施例6で製造された水可溶化されたウルソデオキシコール酸原液(pH7.0)を用いて皮膚透過度を調べるためにハイドロゲルパッチ(hydro−gel patch)の皮膚塗布剤を製造した。表5に、ハイドロゲルパッチ原料成分を示した(単位:重量%)。
【0164】
製造されたハイドロゲルパッチは、水可溶化されたウルソデオキシコール酸原液が皮膚塗布剤組成物の原料とよく混ざり合い、ハイドロゲル内で時間が経過しても凝集することなく油相と水相層とに相分離せずに乳化及びハイドロゲルがよく形成された特徴を示した。
【0165】
【表5】
【0166】
製剤例5〜9.剤形毎の皮膚塗布剤の製造
実施例6で製造された水可溶化されたウルソデオキシコール酸原液(pH7.0)を用いて皮膚塗布剤として、ローション(製剤例5)、セラム(製剤例6)、エッセンス(製剤例7)、マスク(製剤例8)、トナー(製剤例9)を製造した。表6〜10に、それぞれの剤形毎の原料成分を示した(含量:重量%)。
【0167】
製剤例5の組成物は、バチルス/豆/フォリックアシッド発酵抽出物1〜10重量%、桑白皮抽出物0.5〜5重量%、ヨモギ抽出物0.1〜1重量%、グレープフルーツシード抽出物0.5〜1重量%を含むことができ、製剤例6は、蜜抽出物0.005〜0.01重量%、ローヤルゼリー抽出物0.0005〜0.01%、シーバックソーン実抽出物0.005〜0.1重量%、カカオ抽出物0.01〜0.1重量%、カモミール花抽出物0.0001〜0.001重量%を含むことができる。製剤例7の組成物は、ヨモギ抽出物0.1〜1重量%、グレープフルーツシード抽出物0.5〜1重量%、白キクラゲ抽出物1〜5重量%を含むことができる。製剤例8は、グアバ葉抽出物0.05〜1重量%、緑茶抽出物0.05〜1%、ポーチュラカ抽出物0.5〜1重量%、ウィッチヘ−ゼル抽出物0.05〜1重量%、バラ花抽出物0.05〜0.5重量%を含むことができ、製剤例9の組成物は、ヨモギ抽出物0.5〜1重量%、グレープフルーツシード抽出物0.5〜1重量%を含むことができる。
【0168】
製造された上記皮膚塗布剤の剤形においては、水可溶化されたウルソデオキシコール酸原液が皮膚塗布剤組成物の原料とよく混ざり合い、時間が経過しても凝集することなく油相と水相層とに相分離せずに乳化がよくできる特徴を示した。
【0169】
【表6】
【0170】
【表7】
【0171】
【表8】
【0172】
【表9】
【0173】
【表10】
【0174】
実験例1.In vitro人体皮膚透過度測定実験
結晶形ウルソデオキシコール酸の剤形を水可溶化されたウルソデオキシコール酸の剤形に製剤形態を変更したときのウルソデオキシコール酸の皮膚透過度が改善されるかどうかを調べるために、下記のようにOECDガイドラインに従い、フランツ拡散セル(Franz diffusion cell)を用いてin vitroでヒト死体皮膚を用いてウルソデオキシコール酸の皮膚透過度(skin absorption)を測定した。
【0175】
材料
皮膚:ヒト死体皮膚(human cadaver skin)の角質層(stratum cornium、80mm厚さ)
供給会社:ハンスバイオメド(株)(韓国)
サンプル面積:0.636cm
2
収容装置(receptor):PBS buffer(pH7.4)
分析対象物
ヒト死体皮膚を透過し溶出されたウルソデオキシコール酸(UDCA)
分析装置及び条件
ウルソデオキシコール酸の分析方法によるAgilent 1100 series HPLC
分析結果
図6は、本発明に係る水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液をクリーム(1)剤形の皮膚塗布剤(製剤例1)及びハイドロゲルパッチ皮膚塗布剤(製剤例4)を製造し、それぞれに対する皮膚透過度を測定したものである。実験結果によれば、皮膚塗布剤内の水可溶化されたウルソデオキシコール酸濃度を基準にして、特定面積(0.636 cm
2)に対してクリーム(1)皮膚塗布剤(製剤例1)の場合は、70.1%の皮膚透過度を示し、ハイドロゲルパッチ皮膚塗布剤(製剤例4)の場合は、59.2%の皮膚透過度を示した。これは、既存結晶形ウルソデオキシコール酸が皮膚をほとんど通過しない特性に比べて、水可溶化されたウルソデオキシコール酸は非常に高い収率で皮膚を通過するということを示す。
【0176】
実験例2.人体皮膚に対する無刺激効果の実験
結晶形ウルソデオキシコール酸を水可溶化されたウルソデオキシコール酸に製剤形態(剤形毎)を変更したときウルソデオキシコール酸による皮膚刺激の問題を解決できるかどうかを調べるために下記のように皮膚刺激に対する人体適用実験を実施した。
【0177】
剤形毎に製造された皮膚塗布剤を31人の被実験者を対象にして皮膚無刺激効果を実験した(試験機関:韓国皮膚科学臨床研究所)。
【0178】
実験物質名
クリーム(2) (製剤例2)
ローション (製剤例5)
セラム (製剤例6)
エッセンス (製剤例7)
マスク (製剤例8)
トナー (製剤例9)
実験方法
被実験者はフィンチャンバ(Finn chamber)を用いて皮膚貼布実験を実施した。被実験者の背中部位を70%エタノールで拭いて乾燥した後に実験物質20μlを直径8mmのフィンチャンバに滴下し、実験部位に付着して固定した。液体タイプのエッセンス皮膚塗布剤(製剤例6)の場合は、Filter paper discを直径8mmのフィンチャンバ内に載せた後に実験物質20μlを滴下し、実験部位に付着して固定した。貼布は24時間付着し、貼布除去後30分、24時間、48時間経過後に皮膚科専門医により、国際接触皮膚炎研究会(International Contact Dermatitis Research Group:ICDRG)の判定基準により刺激程度を観察した。
【0179】
実験結果
製剤例2及び製剤例5〜9を24時間皮膚に貼布し、貼布除去後30分、24時間、48時間経過後に実験部位に現われた皮膚反応を国際接触皮膚炎研究会の判定基準により刺激程度を分類し、結果判定表によって平均皮膚反応度(Mean score)を求めた。製剤例2及び製剤例5〜9はそれぞれ貼布除去後30分、24時間、48時間経過後に刺激が観察されなかった。平均皮膚反応度は0.00であって判定基準により無刺激と判定された。したがって、製剤例2及び製剤例5〜9は皮膚貼布実験による安定性評価に対する人体適用実験結果、全てが無刺激皮膚塗布剤に属すると判明された。
【0180】
結論
本発明に係る製剤例2及び製剤例5〜9は、皮膚貼布実験による安定性評価に対する人体適用実験結果全てが無刺激皮膚塗布剤群に属することが判明された。
【0181】
したがって、本発明により、結晶形ウルソデオキシコール酸の剤形を水可溶化されたウルソデオキシコール酸の剤形に製剤形態(剤形毎)を変更すると皮膚発赤物としての短所を解決することができた。
【0182】
実験例3.ニキビ緩和効果
ニキビの治療効果があるかどうかを確認するために、ニキビのある大人男女23人を対象にして8週間にわたって、上記エッセンス皮膚塗布剤(製剤例7)を塗布した。上記組成物は、1日2回洗顔後に同量を顔面部位に均一に塗布する方法で実験した(試験機関: 韓国皮膚科学臨床研究所)。
【0183】
評価方法
韓国皮膚科学臨床研究所の標準作業指針書(SOP)に従って行い、全ての手続きは信頼性保証業務担当者が点検した。上記実験は、ニキビ性皮膚に使用適合性評価:(1)Global Acne Grading System(GAGS)によるニキビ性皮膚に使用適合性目視評価、(2)セブメーター(Sebumeter)による皮脂改善の評価、(3)皮膚異常反応評価、及び(4)アンケート調査により検査した。
【0184】
ニキビ性皮膚に使用適合性評価
(1)Global Acne Grading System(GAGS)によるニキビ性皮膚への使用適合性目視評価
本実験では実験物質のニキビ性皮膚に対する使用適合性評価のために実験責任者がGAGSに従い目視評価を実施した(
図7aと
図7b、及び
図9aと
図9b)。GAGSは、顔と胸部と背中とを6区域(額、両頬、鼻、あご、胸部、背中の上部)に分け、それぞれの区域をニキビ病変の深刻性に応じて0−4点(0=nil、1=comedone、2=papule、3=pustule、4=nodule)に評価する。一区域に様々な病変が現われた場合は最も深刻な病変を基準にして評価する。ここで、導出された各区域の病変点数を基準にしてGAGSの計算公式を適用した総合算点数に応じて被実験者のニキビ等級(1−18点=mild、19−30点=moderate、31−38点=severe、39点以上=very severe)を分類する。実験物質の使用前に比べてニキビ等級scoreが減少するほどニキビ性皮膚への使用が適合であることを意味する。評価は、実験物質の使用前、2週使用後、4週使用後、8週使用後の時点で行われた。
【0185】
(2)セブメーターによる皮脂改善の評価
本実験では、実験物質のニキビ性皮膚に対する皮脂改善を評価するためにセブメーター(SKIN−O−MAT、Cosmomed GmbH、Germany)を適用した。皮脂量の測定は、同一の実験担当者が、全ての被実験者の左側小鼻部位に油分吸着テープの付着された探針用カセットを同一の圧力で30秒間接触して油分を吸着した後に本体に挿入して数値を導出した。セブメーターは、特殊な半透明脂質吸収テープを皮膚に付着した後に、テープに吸着された油分量を光学的反射原理(photometric reflection)を用いて分析し、測定単位は、μg/cm
2であり、最大値は350である。実験物質の使用前に比べて、測定値が減少するほど皮脂分泌が抑制されたことを意味する。機器測定は、実験物質の使用前、2週使用後、4週使用後、8週使用後の時点で行われた。
【0186】
統計分析方法
本実験の統計処理は、SPSS17.0 for Windowsプログラムを用いて分析した。被実験者のアンケート紙の分析のために平均、標準偏差、頻度、百分率を行い、様々な皮膚改善度に対する機器測定結果の有意な変化の可否を分析するためにpaired t−test分析を実施した。
【0187】
実験結果
<1>実験物質の使用前後のGlobal Acne Grading System(GAGS)によるニキビ性皮膚への使用適合性に対する目視評価結果
実験責任者がGAGSを用いて実験物質の使用前、2週使用後、4週使用後、8週使用後のニキビ性皮膚に対する使用適合性を評価した。実験責任者がGAGSを用いて顔面部位のニキビ性皮膚に使用適合性を目視評価した結果、ニキビ等級scoreが実験物質の使用前に比べて、2週使用後には7.19%、4週使用後には8.63%、8週使用後には8.99%が減少する変化を示した。また、実験物質の使用前に比べて、2週使用後、4週使用後、8週使用後は、統計的に有意になり(p<.05)、実験物質がニキビ性皮膚改善に優れた効果があることを分かる(
図7aと
図7b、及び
図9aと
図9b参照)。
【0188】
下記表11は、ニキビ等級数値(score)の変化を、表12は、ニキビ等級数値の改善率(%)を、表13は、ニキビ等級数値の統計分析をそれぞれ示したものである。
【0189】
【表11】
【0190】
【表12】
【0191】
【表13】
【0192】
<2>実験物質の使用前後の皮脂改善の評価結果
セブメーターを用いて、実験物質の使用前、2週使用後、4週使用後、8週使用後のニキビ性皮膚の皮脂改善を評価した結果は、次のとおりである(
図8aと
図8b参照)。
【0193】
セブメーターを用いて左側小鼻部位の皮脂改善度を分析した結果、皮脂量が実験物質の使用前に比べて、2週使用後は27.89%、4週使用後は46.97%、8週使用後は48.75%減少する変化を示した。また、実験物質の使用前に比べて、2週使用後、4週使用後、8週使用後は、統計的に有意になり(p<.001)、実験物質が皮脂分泌抑制に対しても優れた効果があることを分かる(表14〜表16参照)。
【0194】
【表14】
【0195】
【表15】
【0196】
【表16】
【0197】
(3)皮膚異常反応の評価
<1>皮膚異常反応の評価
被実験者からは、実験物質を用いた後にアレルギー性接触皮膚炎(allergic contact dermatitis)や刺激性接触皮膚炎(irritant contact dermatitis)に対する異常反応は観察されなかった。
【0198】
<2>被実験者のアンケート調査による皮膚異常反応の結果
実験担当者による異常反応評価とは別に、被実験者を対象にしてアンケート調査を行った結果、被実験者により報告された皮膚異常反応は、表17の通りであって、被実験者を対象にしたアンケート調査では特別な皮膚異常反応は観察されなかった。
【0199】
【表17】
【0200】
(4)被実験者の実験物質の使用前後に対するアンケート調査
<1>被実験者の一般的な皮膚状態特性の調査結果
選多型で被実験者の一般的な皮膚状態の特性をアンケート調査した。表18にその結果を示した。
【0201】
【表18】
【0202】
<2>被実験者の実験物質の使用前/後の皮膚状態の調査結果
表19は、選多型または二者択一型のアンケート紙により、被実験者の実験物質の使用前の皮膚状態をアンケート調査した結果である。
【0203】
【表19】
【0204】
<3>被実験者の実験物質の使用後における使用感の調査結果
満足/不満足の二者択一型により被実験者の実験物質に対する使用感をアンケート調査した結果は、次の通りである(表20参照)。
【0205】
【表20】
【0206】
<4>被実験者の実験物質の使用後の皮膚状態の調査結果
表21に、選多型で被実験者の実験物質の使用後における皮膚状態をアンケート調査した結果を示した。
【0207】
【表21】
【0208】
上記に示すように、水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液を含有した皮膚外用剤に対してニキビ性皮膚に対する使用適合性を評価した結果、実験物質の使用前に比べて統計的に有意な水準(p<.05)で、2週使用後は7.19%、4週使用後は8.63%、8週使用後は8.99%のニキビ等級score改善率を示し、皮脂(sebum)の場合は、統計的に有意な水準(p<.001)で、2週使用後は27.89%、4週使用後は46.97%、8週使用後は48.75%の皮脂改善率を示した。また、実験期間の間に被実験者からアレルギー性接触皮膚炎や刺激性接触皮膚炎に対する異常反応は観察されず、被実験者を対象にしたアンケート調査では特別な皮膚異常反応は観察されなかった。
【0209】
したがって、水可溶化されたウルソデオキシコール酸原液を含有した皮膚塗布剤は、皮膚刺激を起こさず、ニキビ治療及び皮脂改善の効果を示した。
【0210】
実験例4.アトピー皮膚炎緩和効果
アトピー皮膚炎緩和効果を確認するために、アトピー皮膚炎患者22人にクリーム(1)形態の皮膚塗布剤(製剤例1)を腕部位に塗布した。上記皮膚塗布剤は、1日2回少しずつ取って患部に塗布する方法で実験し、1週後にアトピー皮膚炎の緩和効果を確認した。
【0211】
実験概要
目的:水可溶化されたウルソデオキシコール酸を含有した皮膚塗布剤(製剤例1)のアトピー皮膚炎に対する効能、効果検証
方法:当該部位に塗布
期間:7日間品評実施
対象:アトピー皮膚炎を示す患者22人
表22に、実験に参加したアトピー皮膚炎患者のアトピー症状程度を示した(総22人中、アトピーがひどい患者及び普通が95%を占める)。
【0212】
【表22】
【0213】
結果
1)全体アトピー皮膚炎患者対象の場合:項目ごとに点数が高いほど良い評価である(最高点数5点、表23参照)。
【0214】
【表23】
【0215】
2)アトピー症状のひどい11人対象の場合:点数が高いほど良い評価である(最高点数5点、表24参照)。
【0216】
【表24】
【0217】
結果分析
全体アトピー皮膚炎患者を対象にした品評結果、アトピーケア製品の最も重要な品質要素である皮膚刺激面から高い点数(4.4点)を受け皮膚刺激がなく、アトピー改善効果は3.5点、かゆみ緩和効果は3.9点、全体満足度は4.0点で比較的高く示された(
図10)。また、アトピー症状のひどい11人の場合、かゆみ緩和効果は全体アトピー皮膚炎患者よりも0.3点ほど高く示された(
図11)。
【0218】
結論
水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液を含有する皮膚塗布剤に対して22人の品評結果、アトピーケアにおいて最も重要な要素であるかゆみ緩和、アトピー緩和を示し、アトピー皮膚炎に効果があることが確認された。また、アトピー皮膚炎症状のひどい11人の場合は、アトピー皮膚炎の緩和効果だけでなく、アトピーの重要な評価要素であるかゆみの緩和が高く示されて、水可溶化されたウルソデオキシコール酸を含有した皮膚塗布剤がアトピー皮膚炎に効果があることを確認した。(
図10及び
図11参照)。
【0219】
実験例5.乾癬症状の緩和及び治療効果
乾癬治療剤の新薬を開発するために、水可溶化されたウルソデオキシコール酸を含有する皮膚塗布剤の製造後に乾癬治療効果を動物モデルを用いて確認した。乾癬治療効果を確認するために、5%イミキモドクリーム(imiquimod cream)により乾癬皮膚炎症の誘発された乾癬様の動物モデルにクリーム形態の皮膚塗布剤を乾癬の誘発されたマウスの背部位に塗布した。下記実験物質は、1日3回適用し、1日から11日までの乾癬症状の緩和効果を確認した(試験機関:(株)キューベストコンサルティング付設医薬評価研究所)。
【0220】
実験概要
目的:水可溶化されたウルソデオキシコール酸を含有する皮膚塗布剤の乾癬に対する効能、効果検証
実験物質(Test Cream):実施例6で製造された水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液原液を用いて乾癬治療剤の新薬開発のための皮膚外用剤テストクリーム(3)を製造した。表4に、テストクリーム(3)の原料成分を示した(単位:重量%)。
【0221】
方法:乾癬病変部位に塗布した。5%イミキモドは、1日1回、1回基準62.5mgを除毛した背部位の皮膚に適用した。上記組成物の塗布剤は、誘発物質の適用約2時間前に皮膚に塗布した。
【0222】
期間:11日間実施
対象:G1群(雌マウス5匹)にはバセリンクリームを11日間塗布、G2群(雌マウス8匹)には5%イミキモドクリームを8日間塗布、G3群(雌マウス8匹)には5%イミキモドクリームを8日間塗布しながら上記Test Creamを5日目から11日目まで塗布した(
図12)。
【0223】
結果
1)臨床症状は、実験責任者が乾癬誘発部位を目視で確認し、表24の疾病活動指数(disease activity index、DAI)に基づいて、0〜4の数値で示した(表25及び
図13a)。
【0224】
【表25】
【0225】
2)バセリンクリームを11日間塗布した群(G1)は、疾病活動指数が0であり、5%イミキモドクリームを8日間塗布した群(G2)は、疾病活動指数が平均2.4である一方、5%イミキモドクリームを8日間塗布しながら5日目から11日目までTest Creamを塗布した群(G3)は、疾病活動指数が平均0.7であって、バセリンクリームのみを塗布した対照群(G1)の疾病活動指数値に略近接するほどに乾癬の症状を大きく緩和した(
図13b)。上記疾病活動指数は、統計学的に有意な結果であった(p<0.05〜p<0.001)。
【0226】
3)実験したマウスの皮膚組職の表皮過角化症(epidermal hyperkeratosis)の程度を観察したが、バセリンクリームを塗布した群(G1)に比べて 5%イミキモドクリームを8日間塗布した群(G2)では、約140%過角化がひどくなった一方、Test Creamを塗布した群(G3)では、114%の水準であって対照群と略同程度に示され、イミキモドにより誘発される表皮の過角化の症状を大きく低めた(表26及び
図13c参照)。
【0227】
【表26】
【0228】
結論
水可溶化されたウルソデオキシコール酸を含有する乾癬治療剤の新薬開発用皮膚塗布剤であるTest Creamは、マウスの乾癬皮膚に1日3回、7日間塗布したとき、抗乾癬の効力があることを示した。
【0229】
実験例6.皮膚炎症状の緩和及び治療効果
様々な炎症性皮膚疾患の主な症状である炎症反応の抑制効果を確認した(試験機関:韓国生命工学研究院実験動物資源センター)。
【0230】
先ず、炎症誘発物質であるティーピーエー(phorbol 12−myristate 13−acetate、TPA)を濃度15μg/mlになるように製造し、マウスの耳の裏面に20μlずつ塗布した。実験物質は炎症性皮膚疾患用新薬候補物質(YSB301)で製作した水可溶化されたウルソデオキシコール酸であってウルソデオキシコール酸含量が0.625%、1.25%、2.5%になるように製作し、TPA処理の30分前にあらかじめ同部位に20μlを塗布した。
【0231】
実験概要
目的:水可溶化されたウルソデオキシコール酸を含有する炎症性皮膚疾患用新薬候補物質(YSB301)の皮膚炎に対する効能、効果検証
実験物質:表27に示した通りであり、実施例6の水可溶化されたウルソデオキシコール酸清浄水溶液原液(pH7.0)を「炎症性皮膚疾患用新薬候補物質(YSB301)」と名付け、精製水で希釈してウルソデオキシコール酸濃度が0.625%、1.25%、2.5%(重量%)になるようにして使用し、運搬体の場合は、実施例6からウルソデオキシコール酸が除外された水溶液を言う。
【0232】
【表27】
【0233】
方法:炎症誘発物質であるTPA(15μg/ml)20μlをマウスの耳の裏面に塗布し、0hrから4hrまでの耳の厚さの増加程度を測定した。炎症性皮膚疾患用新薬候補物質(YSB301)と運搬体をマウスの耳に適用し、30分後に誘発物質であるTPAを20μlずつ皮膚に塗布した。
【0234】
期間:4時間実施
対象:何も処理していない雌マウス6匹、運搬体のみを塗布した後にTPAで炎症誘発させた雌マウス6匹、新薬候補物質(YSB301)を塗布した後にTPAで炎症誘発させた雌マウス18匹(3個群)。
【0235】
結果
図14に示すように、運搬体(vehicle)及び炎症性皮膚疾患用新薬候補物質(YSB301)を塗布し、TPAで炎症を誘発させたマウスの耳の厚さを測定した結果、運搬体対比ウルソデオキシコール酸濃度0.625%では31%、ウルソデオキシコール酸濃度1.25%では23.4%、ウルソデオキシコール酸濃度2.5%では31.2%に減少するほど統計学的に有意に炎症抑制効果が示された(p<0.05)。
【0236】
結論
水可溶化されたウルソデオキシコール酸を含有する塗布剤は、様々な炎症性皮膚疾患に主な症状である炎症を効果的に緩和することにより、アトピー、乾癬、湿疹などの様々な炎症性皮膚疾患の治療に効果的に用いられることができる。
【0237】
以上の説明により、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須的特徴を変更せずに他の具体的な形態に実施できることを理解できよう。これに関連して、上述の実施例はあらゆる面で例示的なものであって限定的なものではないことを理解しなければならない。本発明の範囲は上記詳細な説明よりも後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものとして解釈されなければならない。
【国際調査報告】