(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-527562(P2019-527562A)
(43)【公表日】2019年10月3日
(54)【発明の名称】長時間作用性PCSK9特異的結合タンパク質及びその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20190906BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20190906BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20190906BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20190906BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20190906BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20190906BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20190906BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20190906BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20190906BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20190906BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20190906BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20190906BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20190906BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20190906BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20190906BHJP
【FI】
C12N15/13ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/40
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 P
A61P43/00
A61P3/00
A61P3/06
A61P9/00
G01N33/53 D
G01N33/536 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-517134(P2019-517134)
(86)(22)【出願日】2017年6月8日
(85)【翻訳文提出日】2019年1月9日
(86)【国際出願番号】CN2017087536
(87)【国際公開番号】WO2017211313
(87)【国際公開日】20171214
(31)【優先権主張番号】201610405036.7
(32)【優先日】2016年6月8日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518435932
【氏名又は名称】常州博嘉生物医▲薬▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】王 少雄
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB22
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA55
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、長時間作用性PCSK9特異的結合タンパク質及びその応用を提供する。本発明が、特有の相補性決定領域を含有するMV072タンパク質、すなわちプロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン9型(PCSK9)と特異的結合する結合タンパク質を提供し、それが、PCSK9と特異的に結合でき、かつ有効的にPCSK9の機能を障害でき、血漿におけるLDLコレステロールレベルを低下できる;さらに、前記結合タンパク質の、PCSK9機能に関連する、又はPCSK9機能に影響される疾患の治療における応用も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖可変領域と重鎖可変領域を有する結合タンパク質MV072であって、
その重鎖可変領域のCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:7に示された;
その重鎖可変領域のCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:8又はSEQ ID NO:13に示された;
その重鎖可変領域のCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:9又はSEQ ID NO:14に示された;
その軽鎖可変領域のCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:10に示された;
その軽鎖可変領域のCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11に示された;
その軽鎖可変領域のCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:12に示された
ことを特徴とするPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072。
【請求項2】
(a)その重鎖可変領域のCDR1、CDR2とCDR3のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9に示された;その軽鎖可変領域のCDR1、CDR2とCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12に示された;又は
(b)その重鎖可変領域のCDR1、CDR2とCDR3のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14に示された;その軽鎖可変領域のCDR1、CDR2とCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12に示された
ことを特徴とする請求項1に記載されたPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072。
【請求項3】
その重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2又はSEQ ID NO:24に示され、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4又はSEQ ID NO:26に示された;又は
その重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6又はSEQ ID NO:28に示され、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4又はSEQ ID NO:26に示された
ことを特徴とする請求項1また2に記載されたPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072。
【請求項4】
その重鎖可変領域が、さらにIgG1 Fcと連結することを特徴とする請求項1又は2に記載されたPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072。
【請求項5】
上記のIgG1 Fcは、QL変異又はYTE変異を有する変異体IgG1 Fcであることを特徴とする請求項4に記載されたPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072。
【請求項6】
重鎖可変領域と、IgG1 Fcと連結して得たアミノ酸配列は、SEQ ID NO:30又はSEQ ID NO:32に示されたことを特徴とする請求項5に記載されたPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072。
【請求項7】
請求項1〜6にいずれかに記載されたPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072をコードする核酸。
【請求項8】
請求項7に記載された核酸を含む発現ベクター。
【請求項9】
請求項8に記載された発現ベクターを含む、或いはそのゲノムに請求項7に記載された核酸が組み込まれた宿主細胞。
【請求項10】
請求項1〜6にいずれか記載されたPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072が、PCSK9発現又は活性障害に関連する疾患を診断、治療及び/又は予防する薬品の調製における応用。
【請求項11】
上記のPCSK9発現又は活性障害に関連する疾患は、高血清コレステロールレベルに関連する病症を含む;より好ましいのは、高コレステロール血症、冠状動脈心臓病、代謝症候群、急性冠動脈症候群を含む請求項10に記載された応用。
【請求項12】
有効量の請求項1〜6にいずれか記載されたPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072と;薬学的に許容される担体を含有することを特徴とする薬品組成物。
【請求項13】
キットに請求項1〜6にいずれか記載されたPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072;又は請求項12に記載された薬品組成物を含むことを特徴とするPCSK9発現又は活性障害に関連する疾患を治療及び/又は予防するためのキット。
【請求項14】
請求項1〜6にいずれか記載されたPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072、及び検出可能なマーカーを含む;より好ましくは、上記の検出可能なマーカーは、蛍光マーカー、発色マーカーを含むことを特徴とする免疫結合体。
【請求項15】
請求項1〜6にいずれか記載されたPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072;又は請求項14に記載された免疫結合体を含むことを特徴とするPCSK9レベルの検出に用いられる検出キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学分野に属し、具体的に、本発明は、プロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン9型(Proprotein convertase subtilisin kexin type 9、PCSK9)特異的結合タンパク質及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
心血管疾患は、人の死亡を引き起こす最大の死亡原因である。低比重リポタンパク質コレステロール(Low−density lipoprotein cholesterol、LDL−C)は、心血管疾患を引く要因の一つであることは、既に実証された。LDL−Cのそんな作用は、相対的に独立で、かつ有効的に制御できる作用であり、過去の20年には、スタチン(statins)系脂質降下薬の使用で、心血管疾患の発病率を成功的に低減した。
【0003】
しかしながら、スタチン系薬品による治療の方法は、いつも有効なものではなく、別の脂質降下の治療の方法に対する需要がある。一部の患者、特に家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolaemia FH)の患者は、しばしばスタチン系の薬品に対する感受性が低い。最高投与量のスタチン系薬品を使用しても、それらの患者は低いLDL−Cレベルを得にくい。また、スタチン系薬品は、筋肉痛及び横紋筋融解などの副作用を有し、一部の患者は、血中脂質レベルを制御するために、スタチン系薬品を使用できない、或いは非常に小さい投与量のスタチン薬品しか使用できない。プロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン9型(PCSK9)阻害剤は、こんな新しい種類の薬品であり、新しい血中LDL−C濃度を制御する選択肢を提供する。
【0004】
PCSK9は、セリンプロテアーゼであり、低比重リポタンパク質受容体(Low−density lipoprotein receptor、LDLR)のレベルの調整に関与する。生体外実験が、PCSK9を加えられたHepG2細胞には、細胞表面のLDLRレベルは、低下したことを実証した。マウス実験によって、PCSK9タンパク質レベルの向上が、肝臓におけるLDLRのタンパク質のレベルを低下できて、同時に、通常のマウスと比べて、PCSK9ノックアウトマウスにおけるLDLRレベルが、ある程度に向上したことを知られる。PCSK9がLDLRと直接に結合し、かつLDLRとともに貪食され、エンドサイトーシス途径に、PCSK9がLDLRと免疫蛍光を共発生することは示された。只今、PCSK9が、細胞外LDLRを分解することを証明する直接な証拠がない、それが、細胞外LDLRタンパク質のレベルを低下させるメカニズムは、まだ明確ではない。
【0005】
研究は、既に、PCSK9がLDLの産生を調節することに機能することを実証した。PCSK9の発現又はそのアップレギュレートは、増加したLDLコレステロールの血漿中レベルに関わり、PCSK9の発現に対する阻害又は欠損は、LDLコレステロールの低い血漿中レベルに関わる。
【0006】
したがって、PCSK9活性と、さまざまな治療状況におけるPCSK9が果たした相応な作用とを阻害又は拮抗する、治療によるPCSK9拮抗剤、特にPCSK9特異的結合のモノクローナル抗体の調製は、非常に重要なことである。只今、研究中のPCSK9阻害剤は、大体に、低分子干渉RNA(small interfering RNA、siRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotides、ASOs)、モノクローナル抗体及び、adnectin技術から得られた融合タンパク質のような新らしい技術の応用から得られた特異的結合の融合タンパク質を含む。只今、研究しているPCSK9阻害剤は、主にsiRNA類薬品とするRG7652(Alnylam Pharmaceuticals/The Medicines Company)、Adnectin技術による融合タンパク質とするBMS−962476 (BMS)、ASO類薬品とするALN−PCS02(Idera Pharmaceuticals)、抗体類薬品とするBococizumab(Pfizer/Rinat)、LGT−209(Novartis)などである。
【0007】
しかしながら、動物試験又は臨床研究には、一部のPCSK9モノクローナル抗体類阻害剤は、特異性と親和力にあまり理想的ではない、又は副作用を有するという問題があり、そして、さらに新しい抗PCSK9抗体を最適化と調製する需要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、新しいPCSK9特異的結合タンパク質MV072及びその応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つは、PCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072を提供し、当該結合タンパク質が、軽鎖可変領域と重鎖可変領域を有し、かつ
その重鎖可変領域のCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:7に示された;
その重鎖可変領域のCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:8又はSEQ ID NO:13に示された;
その重鎖可変領域のCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:9又はSEQ ID NO:14に示されたアミノ酸配列である;
その軽鎖可変領域のCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:10に示された;
その軽鎖可変領域のCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11に示された;
その軽鎖可変領域のCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:12に示された。
【0010】
本発明の好ましい例において、上記のPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072は:
(a)、その重鎖可変領域のCDR1、CDR2とCDR3のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9に示された;その軽鎖可変領域のCDR1、CDR2とCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12に示された;又は
(b)、その重鎖可変領域のCDR1、CDR2とCDR3のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14に示された;その軽鎖可変領域のCDR1、CDR2とCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12に示されたものから選べられたものである。
【0011】
別の好ましい例において、上記のPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072は、その重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2又はSEQ ID NO:24、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4又はSEQ ID NO:26に示された;又はその重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6又はSEQ ID NO:28、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4又はSEQ ID NO:26に示されたことを特徴とする。
【0012】
別の好ましい例において、上記のPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072には、その重鎖可変領域が、更にIgG1 Fcと連結する。
別の好ましい例において、上記のIgG1 Fcは、変異体IgG1 Fcであり、QL変異(SEQ ID NO:30の融合配列と対応する場合に、相応な変異はT255Q/M433L)を有し、又はYTE変異(SEQ ID NO:32の融合配列と対応する場合に、相応な変異はM257Y/S259T/T261E)有する。
【0013】
別の好ましい例において、重鎖可変領域とIgG1 Fcと連結して得るアミノ酸配列は、SEQ ID NO:30又はSEQ ID NO:32に示された。
別の好ましい例において、上記の結合タンパク質MV072は、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、Fv、dAb、Fd、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、二価一本鎖抗体、一本鎖ファージ抗体、二重特異性二本鎖抗体、三重鎖抗体、四重鎖抗体である。
【0014】
別の好ましい例において、上記の結合タンパク質MV072は、モノクローナル抗体である。
別の好ましい例において、上記の結合タンパク質MV072の重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、それぞれにSEQ ID NO:2とSEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列を有し、又はそれぞれにSEQ ID NO:6とSEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列を有し、その重鎖定常領域は、IgGl、IgG2a、IgG2bとIgG3から選べられた一つの重鎖タイプの定常領域である;かつその軽鎖定常領域は、κ鎖とλ鎖から選べられた一つの軽鎖タイプの定常領域である;
本発明のもう一つは、上記のPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072をコードする核酸を提供する。
【0015】
本発明のもう一つは、上記の核酸を含む発現ベクターを提供する。
本発明のもう一つは、上記の発現ベクターを含む、或いはそのゲノムに上記の核酸が組み込まれた宿主細胞を提供する。
【0016】
本発明のもう一つは、上記のPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072の、PCSK9発現又は活性障害に関連する疾患を診断、治療及び/又は予防する薬品の調製における応用を提供する。
【0017】
好ましい例において、上記のPCSK9発現又は活性障害に関連する疾患は、高血清コレステロールレベルに関連する病症を含むが、それらに限定されない;より好ましくは、高コレステロール血症、冠状動脈心臓病、代謝症候群、急性冠動脈症候群を含む。
【0018】
在本発明のもう一つは、有効量の上記のPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072と、薬学的に許容される担体を含む薬品組成物を提供する。
本発明のもう一つは、PCSK9発現又は活性障害に関連する疾患を治療及び/又は予防するためのキットを提供し、当該キットは、上記のPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072、又は上記の薬品組成物を含む。
【0019】
本発明のもう一つは、免疫抱合体を提供し、上記の免疫抱合体は、上記のPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072、及び検出可能なマーカーを含む;より好ましくは、上記の検出可能なマーカーは、蛍光マーカー、発色マーカーを含む。
【0020】
本発明のもう一つは、PCSK9レベルの検出に用いられる検出キットを提供し、当該検出キットは、上記のPCSK9特異的結合の結合タンパク質MV072、又は上記の免疫抱合体を含む。
【0021】
本文に開示された内容に基づき、当業者にとって、本発明の他の面は自明なものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、それぞれにヒトPCSK9抗原、マウスPCSK9抗原、カニクイザルPCSK9抗原に対するMV072結合タンパク質、すなわちモノクローナル抗体9M283、9M284の動力学的分析結果を示す図である。
【
図2】
図2は、MV072結合タンパク質、すなわちモノクローナル抗体9M283、9M284結合タンパク質が、細胞へのLDL吸収を低下する能力を測定する図である。
【
図3】
図3は、好ましい抗PCSK9抗体の、高脂血症アカゲザル血清LDLのレベルに対する反応を示す図である。群ごとに、7歳を超える雄と雌アカゲザル4匹があり、0日目に皮下注射で、示された投与量のPCSK9の好ましい抗体又は同等の体積の食塩水担体を投与する。示された時点に、血漿サンプルを採取し、血漿LDL量を測定し、0日目の血清LDL量と比較する。
【
図4】
図4は、実施例8の、異なるPCSK9モノクローナル抗体とFcRnの、それぞれにpH6.0とpH7.4におけるELISA結合実験を示す図である。
【
図5】
図5は、MV072結合タンパク質、すなわちモノクローナル抗体9M284と9M284QLの、それぞれにヒトPCSK9抗原に対する動力学的分析結果を示す図である。
【
図6】
図6は、MV072結合タンパク質、すなわちモノクローナル抗体9M284、9M284QLと9M284YTE結合タンパク質が、細胞へのLDL吸収を低下する能力を測定する図である。
【
図7】
図7は、MV072結合タンパク質、すなわちモノクローナル抗体9M284と9M284QLの、それぞれに異なるヒトPCSK9抗原変異体に対する動力学的分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明者が、広範かつ十分な研究で、特有の相補性決定領域(CDR領域)を含有し、プロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン9型(Proprotein convertase subtilisin kexin type 9、PCSK9)と特異的結合する結合タンパク質MV072を得、それが、PCSK9と特異的に結合でき、かつ有効的にPCSK9の機能を障害でき、血漿におけるLDLコレステロールレベルを低下し、PCSK9機能に関連する、又はPCSK9機能に影響される疾患の治療に用いられる。
【0024】
<結合タンパク質MV072>
本発明が、PCSK9と特異的に結合できる結合タンパク質MV072を提供できる。本発明の結合タンパク質MV072は、完整な免疫グロブリン分子であっても良く、抗原結合断片であっても良い、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab’)
2断片、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、ドメイン抗体、二価一本鎖抗体、一本鎖ファージ抗体、二重特異性二本鎖抗体、三重鎖抗体、四重鎖抗体等を含むが、それらに限定されない。
【0025】
CDR領域は、免疫学に、注目を集めるタンパク質の配列である。本発明の実施形態において、結合タンパク質は、本明細書に記載された二つ、三つ、四つ、五つ又は全ての六つのCDR領域を含んでもよい。好ましくは、本発明の結合タンパク質MV072が、本明細書に記載された少なくとも二つのCDRを含む。
【0026】
本発明のもう一つは、本明細書に記載された結合タンパク質MV072の機能的なバリアントを含む。バリアントが親の結合タンパク質と競合的にPCSK9と特異的結合できる場合に、当該バリアント分子を、本発明の結合タンパク質の機能的なバリアントと見なす。言い換えれば、上記の機能的なバリアントは、依然として、PCSK9又はその断片と結合できる。機能的なバリアントは、一次構造配列が基本的に類似するが、例えば親の結合タンパク質に発見されない生体外又は生体内化学及び/又は生物化学的に修飾された誘導体を有するものを含むが、それらに限定されない。こんな修飾は、アセチル化、アシル化、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有付着、脂質又は脂質誘導体の共有付着、架橋、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解処理、リン酸化などを含む。言い換えれば、親の結合タンパク質のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列における修飾は、上記のヌクレオチド配列がコードした、又は上記のアミノ酸配列を有する上記の結合タンパク質の結合特性を著しく影響又は変化しない、すなわち上記の結合タンパク質は、依然として、その標的を認識・結合できる。
【0027】
上記の機能的なバリアントは、ヌクレオチドとアミノ酸の置換、付加、と欠失を含む保存的な配列修飾を有しても良い。これらの修飾は、本分野の既知の標準技術(例えば標的変異とランダムPCR仲介の変異)から導入でき、かつ天然及び非天然ヌクレオチドとアミノ酸を含んでも良い。
【0028】
保存的なアミノ酸置換は、その中のアミノ酸残基を、類似する構造又は化学性質を有する別のアミノ酸残基に置き換える置換を含む。本分野において、類似する側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、既に限定された。それらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖のアミノ酸(例えばアスパラギン酸とグルタミン酸)、非電荷極性側鎖のアミノ酸(例えばアスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖のアミノ酸(例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、分岐側鎖のアミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香側鎖のアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン)を含む。当業者が、上記のファミリー以外の他のアミノ酸残基ファミリーの分類方式も使えることを知るはず。なお、バリアントは、非保存的なアミノ酸置換(例えばアミノ酸を異なる構造又は化学性質を有する別のアミノ酸残基に置き換える)を有しても良い。類似する小さい変異は、アミノ酸の欠失、又は挿入、又は両方を含んでもよい。本分野によく知られるコンピュータプログラムの使用で、どんなアミノ酸残基が、置換、挿入又は欠失されても免疫学活性を失わないかに関わる指導を発見・確定できる。
【0029】
機能的なバリアントは、アミノ末端又はカルボキシ末端又は両方で短縮されたアミノ酸配列を含んでも良い。親の結合タンパク質と比べて、本発明の機能的なバリアントは、同じまたは異なる、より高い又はより低い結合親和性を有しても良いが、依然として、PCSK9又はその断片と結合できる。例えば、親の結合タンパク質と比べて、本発明の機能的なバリアントは、PCSK9又はその断片に対して、増加又は低減された(好ましくは増加)結合親和性を有しても良い。好ましくは、可変領域(フレームワーク領域、高度可変領域又はCDR領域を含むが、それらに限定されない)のアミノ酸配列は修飾される。一般的に、軽鎖と重鎖可変領域は、三つのCDR、及びより保存的な領域、すなわちいわゆるフレームワーク領域(FR)を含む三つの高度可変領域を含む。高度可変領域は、CDR由来のアミノ酸残基と、高度可変リングのアミノ酸残基を含む。本発明の範囲内の機能的なバリアントと、本明細書に記載された親の結合タンパク質は、少なくとも約50%乃至約99%、好ましくは少なくとも約60%乃至約99%、より好ましくは少なくとも約70%乃至約99%、更に好ましくは少なくとも約80%乃至約99%、特に好ましくは少なくとも約90%乃至約99%、最も好ましくは少なくとも約95%乃至約99%、及び最も特に好ましくは少なくとも約97%乃至約99%のアミノ酸配列相同性を有する。当業者が既知したコンピュータアルゴリズム(例えばGap又はBestfit)は、アミノ酸配列を最適に配列して、アラインメントを行い、類似又は同じのアミノ酸残基を判明することに用いられる。機能的なバリアントは、本分野に既知された一般的な分子生物学方法の使用で、親の結合タンパク質又はその一部分を変えて得られる;上記の方法は、エラープローンPCR、オリゴヌクレオチド指定突然変異導入、部位特異的変異導入及び重鎖及び/又は軽鎖に対するシャフリングを含むが、それらに限定されない。
【0030】
本発明の好ましい形態として、上記の結合タンパク質MV072は、モノクローナル抗体である。抗体の抗原結合特性は、重鎖と軽鎖可変領域に位置する3つの特定の区域(相補性決定領域(CDR)という)で表現でき、上記のCDR領域が、可変領域を4つのフレームワーク領域(FR)に分け、4つのFRのアミノ酸配列は、比較的に保存的なもので、結合反応と直接に関与しない。それらのCDRが、リング状の構造に形成し、それらの間のFRに形成されたβシートを通じて、空間構造で互に近づき、重鎖におけるCDRと、相応する軽鎖におけるCDRとが、抗体の抗原結合サイトを構成する。本発明の抗PCSK9モノクローナル抗体のCDR領域は、新しいものであって、既存の抗PCSK9抗体と異なる。
【0031】
本発明のモノクローナル抗体は、全てヒト由来であって、低い免疫原性と高い安全性の特徴を有する。
本発明の好ましい形態として、本発明の結合タンパク質MV072は、IgG Fcと融合したタンパク質であっても良い。よりましくは、上記のIgG1 Fcは、変異体IgG1 Fcであって、T255Q/M433L変異又はM257Y/S259T/T261E変異を有する。発明者らが、酸性条件において、このように改造されて得た結合タンパク質と、抗体の回収と再利用を担当するFcRnとの結合は、著しく向上する(EC50値が著しく低下する)ことを見出した;これは、当該IgG1 Fc変異のMV072結合タンパク質は、生体内にエンドソーム(Endosome)に分解されにくいことを予測した;その生体内の半減期が、もっと長くなりつつ、MV072結合タンパク質と抗原との結合能を持ちつづける。
【0032】
本発明のもう一つは、本発明の少なくとも一種の結合タンパク質、その機能的なバリアント又は免疫抱合体をコードする核酸分子を提供する。こんな核酸分子は、クローンための中間体として用いられても良く、例えば、以上に記載された親和性成熟方法に用いられる。一つの好ましい実施形態において、上記の核酸分子は、分離又は精製されたものである。DNA分子の配列は、通常の技術、又はハイブリドーマ技術で得られる。
【0033】
関わる配列を得ると、組換え方法で、大量に関わる配列を得られる。通常に、それをベクターにクローン化され、細胞にトランスフェクションし、その後、通常の方法で、増殖した宿主細胞から、関わる配列を分離して得る。
【0034】
また、特に断片の長さが短い際に、人工合成の方法で、関わる配列を合成しても良い。通常に、まず複数の小さい断片を合成し、その後それらを連結し、長い配列の断片を得る。
【0035】
只今、もう完全の化学合成で、本発明の結合タンパク質MV072(又はその断片、又はその誘導体)をコードするDNA配列を得られる。その後、当該DNA配列を本分野に既知された既存の各DNA分子(又はベクター)と細胞に導入しても良い。また、化学合成で、変異を、本発明の結合タンパク質の配列に導入しても良い。
【0036】
本発明は、さらに、上記の適当なDNA配列及び適当なプロモーター又は制御配列を含むベクターに関する。これらのベクターは、タンパク質を発現できるように、適当な宿主細胞の形質転換に用いられる。好ましくは、本発明のベクターは、例えば、ウイルスプロモーターを含むプラスミド発現ベクターであり、かつ上記の発現ベクターには、それぞれに、抗PCSK9モノクローナル抗体重鎖可変領域(VH)と定常領域のIgG2(ヒト化IgG2由来の定常領域)融合配列、及び軽鎖可変領域VLと人体IgLambda (ヒト化Iglambda由来の定常領域)融合配列が挿入される。
【0037】
宿主細胞は、細菌細胞のような原核細胞であっても良く、または酵母細胞のような下等真核細胞であっても良く、または哺乳動物細胞のような高等真核細胞であっても良い。代表の例としては、大腸菌、ストレプトマイセス属のような細菌細胞;ネズミチフス菌;酵母のような真菌細胞;植物細胞;ショウジョウバエS2またはSf9のような昆虫細胞;CHO、COS7、NSOまたはBowesメラノーマ細胞のような動物細胞がある。本発明に好適な宿主細胞は、真核宿主細胞であって、特に、CHO細胞、293細胞のような哺乳動物細胞である。
【0038】
必要に応じて、その物理・化学・他の特性を利用し、様々な分離方法で、組換え結合タンパク質を分離や精製しても良い。それらの方法は、当業者がよく知られるものである。それらの方法の例は、通常のリフォールディング処理、タンパク質沈殿剤での処理(塩析方法)、遠心分離、浸透での細胞破壊、超音波処理、超遠心分離、モレキュラーシーブクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と他の各液体クロマトグラフィー技術及びそれらの方法の組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0039】
<薬品組成物〉
本発明の結合分子は、PCSK9発現又は活性障害に関連する疾患を診断、治療及び/又は予防する薬品組成物の調製に用いられる。
【0040】
上記の「PCSK9発現又は活性障害に関連する疾患」は、高血清コレステロールレベルに関連する病症を含む。好ましくは、上記の「PCSK9発現又は活性障害に関連する疾患」は、高コレステロール血症、冠状動脈心臓病、代謝症候群、急性冠動脈症候群及び関連病症を含むが、それらに限定されない。上記のPCSK9機能とは、PCSK9の関与が必要し、又はPCSK9に激化又は増強されたいずれかの活性及び機能を指す。上記のPCSK9モノクローナル抗体は、さらにPCSK9を検出と定量化し、様々な診断目的に用いられる。
【0041】
本発明の新発見に基づき、さらにPCSK9発現又は活性障害に関連する疾患を診断、治療及び/又は予防できる薬品組成物を提供し、それは、有効量の本発明に記載された結合分子、及び薬学的に許容される担体を含む。
【0042】
本明細書に用いられる用語「薬学的に許容される」とは、分子自身と、その組成物が、適当に動物又は人に投与される際に、副作用、アレルギーまたは他の有害反応を生じないことを意味する。本明細書に用いられる「薬学的に許容される担体」は、本発明の結合分子と調和でき、すなわち、通常の場合にそれと混ぜ合わせても、組成物の効果を大幅に低下することがない。
【0043】
薬学的に許容される担体又はその組分とするいくつかの物質の具体な例はラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびメチルセルロースなどのセルロース及びその誘導体;トラガカントゴム粉末;モルト;ゼラチン;タルク;ステアリン酸およびステアリン酸マグネシウムなどの固体潤滑剤;硫酸カルシウム;ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油およびココアバターなどの植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;アルギン酸;Tween(などの乳化剤;ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤;着色剤;調味剤;圧縮錠剤、安定剤;抗酸化剤;防腐剤;パイロジェンフリー水;等張食塩水;およびリン酸塩緩衝液などである。
【0044】
本発明の薬品組成物は、必要に応じて、各製剤に調製されても良く、かつ医師が患者のタイプ、年齢、体重、および大体な疾患状態、投与方式などの因子に従って決定した患者に有益な投与量で投与できる。投与方式は、例えば注射又は他の治療方式を採用しても良い。
【0045】
本発明の結合分子は、分離されない又は分離された形式で使用されても良い。また、本発明の結合分子は、単独で応用されても良く、又は少なくとも一つの本発明の結合分子(又はそのバリアント又は断片)の混合物に含まれる状態で応用されても良い。言い換えれば、上記の結合分子は、組み合わせて応用されてもよく、例えば、二つ又はそれ以上の本発明の結合分子、そのバリアント又は断片を含むの薬品組成物として応用されてもよい。例えば、異なる相補性活性を有する結合分子を、一つの治療方案に組み合わせて、所望の予防、治療又は診断作用を達成しても良いが、同じ活性を有する結合分子を一つの治療方案に組み合わせて、所望の予防、治療又は診断作用を達成しても良い。
【0046】
本発明の結合分子又は薬品の組み合わせは、ヒトに使用する前に、適切な動物モデル系で測定できる。こんな動物モデル系は、マウス、サルを含むが、それらに限定されない。
本発明の結合分子の適当な投与量の範囲は、例えば、0.001−100mg/kg体重、好ましくは、0.01−15mg/kg体重である。また、例えば、一回の注射で投与しても良く、時間の経過とともに投与量を複数回に分けて投与しても良く、又は治療状況の緊急性に応じて、比例して投与量を低減又は増加しても良い。本発明の分子と組成物は、好ましくは無菌なものである。それらの分子と組成物を無菌化する方法は、本分野によく知られることである。診断、予防及び/又は治療に使用する他の分子は、本発明の結合分子と類似する投与方案で投与されても良い。単独で他の分子を投与すると、本発明の一つ又は複数の結合分子又は薬品組成物を投与する前、同時又は後に、患者に他の分子を投与しても良い。通常に、人患者に対する精確な投与方案は、臨床実験にわたって選べられる。
【0047】
本発明に記載された結合分子は、臨床医が使用するために、適当なパッケージングに配置され、キットを製造しても良い。好ましくは、上記のキットには、投与方法を説明するための取扱説明書を含んでも良い。
【0048】
本発明は、さらに血清コレステロールレベルを低下させ、患者の高血清コレステロールレベルに関連する疾患を治療又は予防する方法を含み、上記の方法は、患者に、有効量の本発明の少なくとも一つのモノクローナル抗体を投与することを含む。好ましくは、本発明のモノクローナル抗体と、LDLRタンパク質の利用率を向上する薬品とを併用投与しても良い。上記のLDLRタンパク質の利用率を向上する薬品は、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチンを含むが、二つ以上の上記のLDLRタンパク質の利用率を向上する薬品を選択しても良い。
【0049】
〈免疫抱合体〉
一方、本発明は、免疫抱合体を含み、すなわち本明細書に記載された少なくとも一つの結合タンパク質を含みつつ、少なくとも一つの機能性分子(例えば検出可能の部分/物質の分子)も含む。上記の抗体と、上記の機能性分子とは、共有連結、カップリング、付着、架橋等の方式で、抱合体を構成できる。本発明の免疫抱合体は、一つ以上のマーカーを含んでも良い。上記のマーカーが、共有結合を通じて、本発明の結合タンパク質と直接に結合/抱合しても良い。又は、上記のマーカーは、一つ又は複数の連結化合物を通じて、上記の結合タンパク質と結合/抱合しても良い。マーカーと結合タンパク質との結合技術は、当業者によく知られるものである。本発明の免疫抱合体のマーカーは、治療剤であっても良い。
【0050】
上記の免疫抱合体は、本発明の抗体及び検出可能なマーカーを含んでも良い。上記の検出可能なマーカーは、蛍光マーカー、発色マーカー;酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、陽電子放出金属及び非放射性常磁性金属イオンを含むが、それらに限定されない。一つ以上のマーカーを含んでも良い。検出及び/又は分析及び/又は診断するための、抗体を標識するマーカーは、使用される特定な検出/分析/診断技術及び/又は方法(例えば、免疫組織化学的染色(組織)サンプル、フローサイトメトリーなど)に依存する。本分野に既知された検出/分析/診断技術及び/又は方法に好適なマーカーは、当業者によく知られるものである。
【0051】
また、本発明の人結合タンパク質又は免疫抱合体を、固体支持体に付着しても良く、特に、PCSK9タンパク質又はその断片の生体外免疫測定又は精製に使用しても良い。こんな固体支持体は、多孔性または非多孔性、平面状または非平面状にしてもよい。本発明の結合タンパク質は、精製の便利のために、マーカー配列と融合しても良い。上記のマーカー配列の例は、Hisタグ、ヘマグルチニン(HA)マーカー、mycマーカー又はflagマーカーを含むが、それらに限定されない。又は、一つの抗体は、別の一つの抗体を結合して、抗体のヘテロコンジュゲート(heteroconjugate)を形成しても良い。
【0052】
〈検出試剤とキット〉
本発明に記載された結合分子に基づき、便利、快速かつ正確に測定しようとするサンプルにおけるPCSK9レベルを検出する試剤又はキットを調製できる。
【0053】
本明細書に使わられたように、用語「測定しようとするサンプル」は、生物学由来の血液及び他の体液サンプル、生検組織サンプルや組織培養物のような固形組織サンプル、又はこれらから発生する細胞又はその後代を含む複数のサンプル種類を総括する。当該用語は、さらに、得られたから任意の方式で処理されたサンプルを含み、例えば、試剤でタンパク質又はポリヌクレオチドのような成分を処理、溶解、又は富化する。
【0054】
そして、本発明が、測定しようとするサンプルにおけるPCSK9レベルを検出するための検出キットを提供し、当該キットには、本発明のPCSK9結合分子、又はPCSK9結合分子と検出可能なマーカーとが構成する免疫抱合体を含む。
【0055】
本発明が提供したPCSK9結合分子を得た後に、特異性にPCSK9レベルを検出するための検出キットを、簡便に製造できる。
便利に検出するために、上記のキットには、本発明の結合分子を含み、又はPCSK9結合分子と検出可能なマーカーとが構成する免疫抱合体を含む以外に、さらに他の検出試剤又は補助試剤(発色剤、マーカー、二次抗体、抗‐抗体、増感剤など)を含んでも良く、上記の補助試剤は、例えばELISAキットに通常に使用された試剤であり、それらの試剤の特性及びそれらの調製方法は、いずれも当業者によく知られるものである。当業者が理解すべきのは、本発明の結合分子をPCSK9認識用試薬として利用する限り、各の変化形式の検出キットは、いずれも本発明に含まれる。
【0056】
また、上記のキットには、さらにその中に配置された試剤の使用方法を説明するための取扱説明書を含んでも良い。
本発明が提供した結合分子及び/又はキットを得た後に、複数の免疫学関連方法で、サンプルにおけるPCSK9又はその含有量を検出でき、そして測定しようとするサンプルのドナーに、PCSK9発現又は活性障害に関連する疾患が存在するか否かを確定する。
【0057】
以下、具体的な実施例を参照して、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の単なる例示であることが理解されるべく。以下の実施例における特定の条件を特定しない実験方法は、通常に、J.Sambrookら、Guide to Molecular Cloning、Third Edition、Science Press、2002に記載された通常条件に従って実施され、或いはメーカーが推奨する条件に従って実施される。
【実施例】
【0058】
〔実施例1〕
PCSK9モノクローナル抗体の最適化とスクリーニング
要件を満たすPCSK9抗体を探すために、発明者らが、大量の研究とスクリーニングで、全てヒト由来ファージライブラリーから、二つの優れた性能を有するモノクローナル抗体を得た。それらの可変ドメインの核酸配列及びアミノ酸配列は、以下のとおりである:
1、モノクローナル抗体9M284
重鎖可変領域ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1である。
重鎖可変領域アミノ酸配列は、SEQ ID NO:2である。
重鎖の各CDR領域アミノ酸配列:
HCDR1:AFTFDSFGMH(SEQ ID NO:7);
HCDR2:LLWSDGSGEYYADSAKG(SEQ ID NO:8);
HCDR3:AMGAIYYYYAMDV(SEQ ID NO:9)。
重鎖各CDR領域のヌクレオチド配列:
HCDR1:GCCTTCACCTTCGACAGCTTCGGCATGCAC(SEQ ID NO:15);
HCDR2:CTGCTTTGGAGCGACGGCTCCGGCGAGTACTACGCCGACTCCGCTAAGGGC(SEQ ID NO:16);
HCDR3:GCGATGGGCGCCATCTACTACTACTACGCCATGGACGTG(SEQ ID NO:17)。
軽鎖ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:3である。
軽鎖アミノ酸配列は、SEQ ID NO:4である。
軽鎖の各CDR領域アミノ酸配列:
LCDR1:TGTSSNIGNQFVS(SEQ ID NO:10);
LCDR2:EYNKRPS(SEQ ID NO:11);
LCDR3:GSWDSSLSGYV(SEQ ID NO:12)。
軽鎖の各CDR領域ヌクレオチド配列:
LCDR1:ACCGGCACCTCCTCCAACATCGGCAACCAATTCGTGTCC(SEQ ID NO:18);
LCDR2:GAGTACAACAAGCGGCCCTCC(SEQ ID NO:19);
LCDR3:GGCTCCTGGGACTCTTCCCTGTCCGGCTATGTG(SEQ ID NO:20)。
【0059】
2、モノクローナル抗体9M283
重鎖ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:5である。
重鎖アミノ酸配列は、SEQ ID NO:6である。
重鎖の各CDR領域アミノ酸配列:
HCDR1:AFTFDSFGMH(SEQ ID NO:7);
HCDR2:LLWSDGSDEYYADSAKG(SEQ ID NO:13);
HCDR3:ALGAIYSYYAMDV(SEQ ID NO:14)。
重鎖の各CDR領域ヌクレオチド配列:
HCDR1:GCCTTCACCTTCGACAGCTTCGGCATGCAC(SEQ ID NO:15);
HCDR2:CTGCTTTGGAGCGACGGCTCCGACGAGTACTACGCCGACTCCGCTAAGGGC(SEQ ID NO:21);
HCDR3:GCGTTGGGCGCGATCTACAGCTACTACGCCATGGACGTG(SEQ ID NO:22)。
【0060】
モノクローナル抗体9M283の軽鎖ヌクレオチドとアミノ酸配列は、9M284の軽鎖ヌクレオチドとアミノ酸配列と同じ、相応する各CDR領域も9M284と同じである。
【0061】
〔実施例2〕
トランスフェクションされた細胞でPCSK9モノクローナル抗体の調製
上記のモノクローナル抗体9M284の重鎖ヌクレオチド配列の両端に、HindIII/NotIサイトを添加し、pCDNA3.1+プラスミドの相応するサイトに挿入した;上記のモノクローナル抗体9M284の軽鎖ヌクレオチド配列の両端に、HindIII/NotIサイトを添加し、pCDNA3.1+プラスミドのの相応するサイトに挿入した。上記のモノクローナル抗体9M284を発現する組換えプラスミドを得た。
【0062】
上記のモノクローナル抗体9M283の重鎖ヌクレオチド配列の両端に、HindIII/NotIサイトを添加し、pCDNA3.1+プラスミドの相応するサイトに挿入した;上記のモノクローナル抗体9M283の軽鎖ヌクレオチド配列の両端に、HindIII/NotIサイトを添加し、pCDNA3.1+プラスミドのの相応するサイトに挿入した。上記のモノクローナル抗体9M283を発現する組換えプラスミドを得た。
【0063】
1、一過性トランスフェクション
リポフェクション法で、上記の組換えプラスミドを、懸濁しているHEK293細胞に一過性トランスフェクションした。
【0064】
Expi293 Expression培地には、37℃、CO
2 8%、120rpm回転速度の条件において、得たトランスフェクション細胞を培養した。
培養された大量のトランスフェクション細胞を、二次遠心分離処理(一回目遠心分離の条件は10min、1000g;二回目遠心分離の条件は30min、10000g)を経て、細胞と細胞破片を除去し、上清を得た。澄んだ上清を、Protein Aアフィニティークロマトグラフィーカラムにロードし、三回のリンス(リンス緩衝液は、順にPB 150mM NaCl pH6.5;20mM Na−citrate 1M NaCl pH5.5;20mM Na−citrate pH5.5である)で不純物を除去し、その後、pHリニア勾配溶離方式(開始緩衝液A:20mM Na−citrate pH5.5;標的緩衝液B:20mM Na−citrate pH3.0)で、標的抗体を分離、捕獲した。最後、限外濾過濃縮ステップで、標的抗体を、200mM HEPE、100mM NaCl、50mM NaOAc pH7.0緩衝液に置換した。
【0065】
2、9M284を安定に発現する細胞の電気トランスフェクション
構築された、9M284重鎖(SEQ ID NO:23、それが、SEQ ID NO:24のアミノ酸配列をコードし、リードペプチドを有しない)と、9M284軽鎖(SEQ ID NO:25、それが、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列をコードし、リードペプチドを有しない)を有するプラスミド(合計量20μgのプラスミドDNA)を、1.0×10
7宿主細胞CHO−K1細胞に混ぜた;当該細胞とプラスミドとの混合液をエレクトロポレーター(Gene Pulser II)に入れ、電圧300V、静電容量950μFの指数関数的減衰波で、細胞とプラスミドとの混合液に対して、電気ショックコトランスフェクションを行った。電気トランスフェクションされた細胞とDNAとの混合液を、2mL宿主細胞基礎培地(EX−CELL(登録商標) Advanced(商標) CHO Fed−batch Medium、Sigma、6mMのL−glutamine、Sigmaを含む)を含む6ウェルプレートに加え、細胞を二酸化炭素インキュベーターに入れ、37°Cで24h培養し、その後、培地を、選択的成長培地(EX−CELL(登録商標) Advanced(商標) CHO Fed−batch Medium、Sigma;Puromycin、20μg/mL、GIBCOと6mM L−glutamine、Sigmaを含む)に変更し、約3週間にわたって、細胞生存性が90%以上に回復するまで圧力スクリーニングを行い、重鎖と軽鎖が組み込まれたCHO−K1ゲノムを含むPool細胞系を得た。細胞生存性が90%以上まで回復した時点に、125 mL シェイクボトルにFed−batch培養を行い、培養体積は30 mLであり、開始細胞濃度は0.3×106/mLであった。3日目、5日目、7日目、9日目、11日目と13日目にフィード培地(Ex−CELL Advanced CHO feed 1 (グルコースを含む)、Sigma)を補充し、かつ細胞密度と生存性をサンプリングテストし、グルコース濃度が3g/Lまで低下した時点に、グルコースを6 g/Lまで添加し、生存性が70%以下になる時点に、培養を終了し、かつ抗体濃度を検出した。
【0066】
構築された、9M283重鎖(SEQ ID NO:27、それが、SEQ ID NO:28のアミノ酸配列をコードし、リードペプチドを有しない)と9M283軽鎖(SEQ ID NO:25、それが、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列をコードし、リードペプチドを有しない)を含むプラスミドで、同様に9M283を安定に発現する細胞を得た。
【0067】
3、9M284トランスフェクタントを安定に発現する半固体クローンとELISAスクリーニング
抗体濃度が比較に高いPool細胞を選択し、モノクローンのスクリーニングを行い、50−200個Pool細胞を含む細胞懸濁液を、10mL半固体培地(CloneMedia CHO Growth A (L−Glnを含む)、Molecular devices)と均一に混ぜた後に、100mmペトリ皿に播種し、37°C、5%CO2インキュベーターに14日培養し、中等大きさの細胞コロニーを選択し、200μL選択的培地を含む96ウェルプレートに転移し、4−5日培養し、細胞懸濁液を吹き付けて均一に混ぜて、2つの96ウェルプレートに平均に配って、かつそれぞれに新鮮な培地を、200μL培養体系まで補充し、その中、1つのプレートには、正常に液体交換・増幅を行い、液体交換・増幅際に、細胞懸濁液を吹き付けて均一に混ぜて、100μL培地を取って捨て、100μL新鮮な培地を補充し、これによって類推した;もう1つのプレートには、液体交換を行わないまま、10日連続に培養し、細胞の上清を採取し、ELISA検出を行った。OD値によって、細胞株を選択し、増幅とサブクローンスクリーニングを行った。最初のラウンドの半固体スクリーニングから得た好ましい細胞株を、0.5細胞/ウェルの密度で、96ウェルプレートに播種した。7日後、細胞を観察し、単一細胞クローンが、一定のスクリーニング規模に成長したまで、単一細胞集団だけ存在するウェルを、単一細胞ウェルとして選択した。96ウェルプレートの単一細胞ウェルにおける培養液(適切な希釈を行っても良い)を、コーティングされたELISAプレートに転移し、ELISAスクリーニング分析を行い、TOP 3単一細胞系までスクリーニングし、Fed−Batchで、発現量を確認した。
【0068】
〔実施例3〕
PCSK9モノクローナル抗体の生物的分析特性
1、キャピラリー電気泳動(CE−SDS)
LabChip GXIIシステムより、キャピラリー電気泳動を行い、抗体を分析した。結果として、還元と非還元条件において、本発明のPCSK9モノクローナル抗体サンプルのピーク純度百分比と分子量は、表1(非還元条件)と表2(還元条件)に示された。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
2、モレキュラーシーブ液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)
モノクローナル抗体を、0.2μmフィルターで濾過し(Thomson、カタログ番号25535−100)、その後、MAbPac SEC−1カラム(Thermo、カタログ番号07469620)にロードした。移動相緩衝液は、50 mMリン酸ナトリウム、300 mM 塩化ナトリウムであり、pH 6.2、流速は0.2 ml/minである。ピーク計算はChemStationソフトウェアを使用して統合された。本発明のPCSK9モノクローナル抗体の主ピークおよびマルチマーピークの百分比は、表3に示された。
【0072】
【表3】
【0073】
3、示差走査熱量測定法でタンパク質の安定性を評価
示差走査熱量測定法(DSC)は、追加する必要が有るサンプルと、基準物質との熱量の差を、温度の関数とする測量技術である。示差走査熱量測定法は、複数のタンパク質の特性(50%タンパク質が変性(TM)した際の温度/融解温度を含む)の測量に使用でき、これはタンパク質の安定性を評価する方法の一つである。
【0074】
検出された抗体を、1mg/mlの濃度でNano DSCサンプルルームに入れ、25℃から100℃まで1℃/minの速度で昇温した。実施する前に、精確な開始温度を確保するために、サンプルを検出する前に、予め15分間にスキャンした。サンプルデータには、緩衝液のみ含むサンプルの値を引いた;Nano DSCソフトウェアでTmを計算した。
【0075】
結果は、表4を参照。
【0076】
【表4】
【0077】
〔実施例4〕
抗体のPCSK9と結合する特性
PCSK9モノクローナル抗体の、人、マウス又はカニクイザルPCSK9と結合する能を、Octet Red96 システム(ForteBio)で表示した。抗ヒトIgG Fc(AHC)の動力学バイオセンサ(Fortebio、# 18−5063)を、pH 1.7のグリシンで予処理した後に、測定緩衝液に浸した。検出しようとするPCSK9モノクローナル抗体を、10μg/mlの濃度でAHCバイオセンサに120秒間固定した。その後、PCSK9モノクローナル抗体をロードしたAHCバイオセンサを、異なる濃度のヒトPCSK9抗原(GeneBank AX127530.1)、マウスPCSK9抗原(NCBI NM_153565.2)又はカニクイザルPCSK9抗原(NCBI NM_001112660.1)と緩衝液に浸した。緩衝液とロードされたバイオセンサの間の非特異的結合をテストするために、分析物カラムの最後希釈点には、検出緩衝液しか含まない。80〜120秒の間、抗原と抗体との結合を検出した、その後、120〜180秒の間、解離を発生した。検出緩衝液で、60秒間のベースラインを確定した。抗PCSK9のモノクローナル抗体の親和力曲線は、1:1に結合する動力学センシング単価結合モデルでフィッティングしたものである。
【0078】
動力学的分析は、
図1と表5に示された。
【0079】
【表5】
【0080】
〔実施例5〕
細胞LDL吸収の測定
ヒトHepG2細胞を、ウェルごとに5×10
4個細胞の濃度でブラック透明の96−ウェルプレート(Costar)における、10% FBSを補充したDMEM培地(Mediatech、Inc)に播種し、37℃(5% CO
2)で一夜インキュベートした。PCSK9と抗体の複合体を形成させるために、20 μg/mlのヒトPCSK9を、吸収緩衝液(10% FBSを含むDMEM)で希釈した各濃度の抗体又は単独の緩衝液(コントロール)と共に、室温において1時間インキュベートした。細胞上清を除去した後に、PCSK9/抗体混合物を添加し、そして最終濃度が8μg/mlになるように吸収緩衝液で希釈したDil−LDL(Invitrogen)を添加した。37℃(5% CO
2)で16〜18時間インキュベートした後、PBSで細胞を徹底に洗浄し、TECAN M1000で、554nm(励起)と571nm(発射)に、細胞蛍光シグナルを検出した。
【0081】
細胞吸収の測定結果は、
図2に示された。要するに、PCSK9モノクローナル抗体のIC50値を測定し、具体的に、6.12nM (9M283)と5.75nM (9M284) pMの値を得た(
図2)。
【0082】
上記の結果としては、本発明の抗原結合タンパク質が、優れた細胞へのLDL吸収を低下させる能力を有する。
【0083】
〔実施例6〕
PCSK9モノクローナル抗体が、高血脂アカゲザル体内の血中LDLレベルに対する影響
高脂血症アカゲザルにおいて、PCSK9モノクローナル抗体9M284が、非ヒト霊長類動物疾患モデルにおいて体内の血清LDLを低下する効果をテストした。4匹の7歳以上の、高脂血症を有するアカゲザルに、0日目、一回皮下注射の方式で、ベクター(PBS+0.01 % Tween20)又は3mg/kgの投与量の、好ましいPCSK9モノクローナル抗体9M284を注射した。それぞれに、0日目、1日目、3日目、5日目、7日目、9日目、11日目、14日目に、一晩中断食した後に、血清LDLの含有量を分析した。
【0084】
結果は、
図3を参照。一回注射された3mg/kg PCSK9モノクローナル抗体9M284は、全ての4匹の動物において、血清LDL(50%及び以上)の大幅低下を引き起こした。
【0085】
同様に、発明者らが、高脂血症アカゲザルにおいて、PCSK9モノクローナル抗体9M283の、体内血清LDLを低下する効果をテストした。結果として、PCSK9モノクローナル抗体9M283が、アカゲザルの血清LDLレベルを著しく低下できる。
そして、PCSK9抗体が、非ヒト霊長類動物疾患モデルの血清 LDLレベルを低下する。
【0086】
〔実施例7〕
Fcの改造で、PCSK9モノクローナル抗体9M284の生体内の半減期を延長
通常の遺伝子工学の改造方法で、9M284抗体のVH部分を、酵素消化より、それぞれに二つ又は三つの異なるアミノ酸変異を有するIgG1 Fc(野生型の配列は、例えばGenBank登録番号AAD38158.1)に連結した。
【0087】
その中、二つのアミノ酸変異を発生するのは、QL変異であり、QL変異のサイトが、SEQ ID NO:30の融合配列の255位(野生型Fcには、当該サイトはTであるが、変異した後はQ(T255Q)である)と433位(野生型Fcには、当該サイトはMであるが、変異した後はL(M433L)である)に対応する。
【0088】
その中、三つのアミノ酸変異を発生するのは、YTE変異であり、変異サイトが、SEQ ID NO:32の融合配列の257位(変異前はMであるが、変異した後はY(M257Y)である)、259位(変異前はSであるが、変異した後はT(S259T)である)、261位(変異前はTであるが、変異した後はE(T261E)である)に対応する。QLとYTEの変異が、pH6.0の酸性条件において、IgG Fcの、エンドソーム(Endosome)における新生児Fc受容体FcRnとの結合力を数倍に増強できるから、エンドソーム(pH酸性条件)において、抗体と、FcRnとの分離の程度は低下され、そして抗体が、再度に血液に放出・回収され(pH 7.4の正常生理条件において、抗体が、FcRnと結合しない)、半衰期を延長する効果を達成した。
【0089】
9M284 QLの重鎖配列は、例えばSEQ ID NO:29(ヌクレオチド)とSEQ ID NO:30(アミノ酸)である;
9M284YTEの重鎖配列は、例えばSEQ ID NO:31(ヌクレオチド)とSEQ ID NO:32(アミノ酸)である。
【0090】
〔実施例8〕
ELISAで、異なるFc変異体PCSK9モノクローナル抗体とFcRnとの結合を検出
コーティング液(15 mM Na
2CO
3、35 mM NaHCO
3、pH 9.6)を使用し、標的抗体を10 μg/mLまで希釈した後、100μL/ウェルの量で96ウェルELISAプレートに添加し、4℃に一夜インキュベートし、コーティングを行った。コーティング終了した後、pH 7.4のPBSTで、サンプルウェルを4回洗浄し、300μL/ウェルの4%スキムミルク(PBS、pH7.4)を添加し、25℃に2時間インキュベートし、ブロッキングを行った。ブロッキング終了した後、pH 7.4のPBSTで、サンプルウェルを4回洗浄し、PBST (pH 6.0/7.4)に溶解した0.4%スキムミルクでそれぞれに希釈したFcRn(開始濃度 20μg/mL、2倍勾配希釈、合わせて11個濃度勾配がある)を100 μL/ウェルで添加し、25℃に1.5時間インキュベートした。インキュベート終了した後、pH 6.0/7.4のPBSTでサンプルウェルを4回洗浄し、0.4%スキムミルク(pH 6.0/7.4)でそれぞれに1/500に希釈したanti−His−Tag−HRPを添加し、25℃に1時間インキュベートした。インキュベート終了した後、pH 6.0/7.4のPBSTでサンプルウェルを4回洗浄し、かつ100μL/ウェルのTMBを添加し、発色を行った(発色条件:25℃、10〜15分間)。発色終了した後、100μL/ウェルの1M H2SO4を添加し、発色反応を終了し、450 nmの吸光値を読んだ(650nmの吸光度値に基づく減算補正した)。
【0091】
結果は、表6に示されたように、pH 6.0の条件において、9M284QLと9M284YTEの変異体抗体の、FcRnとの結合EC50値は、9M284抗体のFcRnとの結合EC50値より2.8倍に小さい。
【0092】
【表6】
【0093】
〔実施例9〕
Fcを改造した長い半減期PCSK9モノクローナル抗体の親和力と細胞活性の検出
具体的な実験ステップは、実施例4と実施例5を参照し、
図5と表7に示されたように、9M284と比べて、改造された抗体9M284QLのFab領域(VHとVLを含む)は、変化しないから、長い半減期抗体9M284QLの、ヒトPCSK9タンパク質との親和力は、9M284と基本に一致する。親和力が変化しないから、長い半減期のFcを改造したPCSK9抗体9M284QL、9M284YTEと、一般的な半減期の抗体9M284の細胞活性LDL吸収実験の比較試験EC50も類似し、
図6と表8に示された。
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
〔実施例10〕
PCSK9モノクローナル候補抗体と異なるPCSK9変異タンパク質との結合能
ヒトPCSK9タンパク質は、異なる変異体があり、高血脂に関連するヒトPCSK9変異体は、多くの種類があると報道され、発明者らが、その中から、R218S、R306S、D374H、D374YのヒトPCSK9変異体タンパク質を選択し、本発明のPCSK9モノクローナル抗体と、異なる変異体PCSK9タンパク質と結合する能力を、Octet Red96システム(ForteBio)を使用し、以上に記載されたように表示した。動力学的分析は、
図7と表9に示されたように、R306S以外に、他のヒトPCSK9タンパク質変異体の、本発明のPCSK9モノクローナル抗体(正常IgGと長い半減期のIgG形式)との親和力は、いずれも天然ヒトPCSK9タンパク質と、同じオーダーの大きさであり、ただし、長い半減期のPCSK9モノクローナル抗体9M284−QLと、PCSK9 R218S タンパク質との結合能は、9M284抗体より3倍に高い。
【0097】
【表9】
【0098】
本出願に言及されている全ての参考文献は、参照として単独に引用されるように、本出願に引用されて、参照になる。理解すべきのは、本発明の上記の開示に基づき、当業者は、本発明を様々な変更または修正を行っても良い、これらの同等の形態も本出願に添付された請求の範囲に規定される範囲内に含まれる。
【国際調査報告】