特表2019-528064(P2019-528064A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-528064新型たばこ基体を有するエアロゾル発生物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-528064(P2019-528064A)
(43)【公表日】2019年10月10日
(54)【発明の名称】新型たばこ基体を有するエアロゾル発生物品
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/28 20060101AFI20190913BHJP
   A24B 15/12 20060101ALI20190913BHJP
   A24F 47/00 20060101ALI20190913BHJP
【FI】
   A24B15/28
   A24B15/12
   A24F47/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-508938(P2019-508938)
(86)(22)【出願日】2017年8月10日
(85)【翻訳文提出日】2019年2月15日
(86)【国際出願番号】EP2017070378
(87)【国際公開番号】WO2018033476
(87)【国際公開日】20180222
(31)【優先権主張番号】16184585.4
(32)【優先日】2016年8月17日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ラング ゲルハルト
【テーマコード(参考)】
4B043
4B162
【Fターム(参考)】
4B043BA68
4B043BB11
4B043BB17
4B043BB22
4B043BC06
4B043BC11
4B162AA03
4B162AA22
4B162AB12
4B162AB28
4B162AC50
(57)【要約】
加熱式エアロゾル発生物品(10)は、たばこおよび金属系硫化物捕捉剤化合物を含むエアロゾル形成基体(20)を含み、エアロゾル形成基体(20)中の硫化物捕捉剤化合物の金属成分の量は、エアロゾル形成基体(20)の総乾燥質量に基づき少なくとも0.05重量パーセントである。硫化物捕捉剤化合物は遷移金属系である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこを含むエアロゾル形成基体と、遷移金属系の硫化物捕捉剤化合物とを含み、前記エアロゾル形成基体中の前記硫化物捕捉剤化合物の前記遷移金属成分の量が、前記エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、少なくとも0.05重量パーセントである、加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項2】
前記エアロゾル形成基体が、遷移金属塩、遷移金属錯体、遷移酸化金属、またはその組み合わせから構成される群から選択される硫化物捕捉剤化合物を含む、請求項1に記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項3】
前記硫化物捕捉剤化合物が亜鉛系または銅系である、請求項1または2に記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項4】
前記硫化物捕捉剤化合物の前記遷移金属成分の量が、前記エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、0.05パーセント〜5重量パーセントである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項5】
前記硫化物捕捉剤化合物の前記遷移金属成分の量が、前記エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、0.25パーセント〜2.5重量パーセントである、請求項5に記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項6】
前記硫化物捕捉剤化合物の前記遷移金属成分の量が、前記エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、少なくとも0.1重量パーセントである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項7】
前記エアロゾル形成基体中の前記硫化物捕捉剤化合物が、前記エアロゾル形成基体中に前記硫化物捕捉剤化合物を含まない同等のエアロゾル発生物品と比較して、予熱試験中に硫化水素の少なくとも50重量パーセントの低減を提供する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の加熱式エアロゾル発生物品。
【請求項8】
エアロゾル発生システムであって、
発熱体を備えるエアロゾル発生装置と、
前記エアロゾル発生装置で使用する加熱式エアロゾル発生物品であって、前記加熱式エアロゾル発生物品が、たばこおよび遷移金属系の硫化物捕捉剤化合物を含むエアロゾル形成たばこ基体を含み、前記エアロゾル形成基体中の前記硫化物捕捉剤化合物の前記金属成分の量が、前記エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき少なくとも0.05重量パーセントである、加熱式エアロゾル発生物品とを含む、エアロゾル発生システム。
【請求項9】
前記エアロゾル形成基体が、たばこおよび遷移金属系の硫化物捕捉剤化合物を含み、前記エアロゾル形成基体中の前記硫化物捕捉剤化合物の前記遷移金属成分の量が、前記エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、少なくとも0.05重量パーセントであり、前記エアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品中で、前記エアロゾル形成基体中の前記硫化物捕捉剤化合物が、前記エアロゾル形成基体中に前記硫化物捕捉剤化合物を含まない同等のエアロゾル発生物品と比較して、予熱試験中に硫化水素の少なくとも50重量パーセントの低減を提供する、加熱式エアロゾル発生物品用のエアロゾル形成基体。
【請求項10】
加熱式エアロゾル発生物品の製造方法であって、前記方法が、
たばこ粒子状材料を供給する工程と、
前記たばこ粒子状材料からスラリーを形成する工程と、
遷移金属系の硫化物捕捉剤化合物を前記たばこ粒子状材料の前記スラリーに組み込む工程と、
前記たばこ粒子状材料および前記金属系硫化物捕捉剤化合物を含む前記スラリーからたばこシートを形成する工程と、
前記たばこシートをプラグへと形成してエアロゾル形成基体を提供する工程と、
前記エアロゾル形成基体を一つ以上の構成要素と組み合わせて、エアロゾル発生物品を形成する工程とを含む、方法。
【請求項11】
セルロース繊維がさらに前記スラリーに組み込まれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エアロゾル発生物品の加熱中に放出される硫化水素のレベルを低減する目的での、加熱式エアロゾル発生物品の前記エアロゾル形成基体中での遷移金属系の硫化物捕捉剤化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新型たばこ基体を組み込んだエアロゾル発生物品と、こうしたエアロゾル発生物品を含むエアロゾル発生装置とに関連する。
【背景技術】
【0002】
たばこが燃焼するよりはむしろ加熱される多くの喫煙物品が、当技術分野において提唱されてきた。こうした加熱式喫煙物品の一つの目的は、従来の紙巻たばこにおけるたばこの燃焼および熱分解性分解によって生成されるタイプの周知の有害な煙成分を減少させることである。
【0003】
典型的に、こうした加熱式喫煙物品においてエアロゾルは、熱源の中、熱源の周囲、または熱源の下流に位置していてもよい物理的に分離されたエアロゾル形成基体または材料に、熱源からの熱を伝達することによって生成される。喫煙中、揮発性化合物は、熱源からの熱伝達によってエアロゾル形成基体から放出され、喫煙物品を通して引き出された空気中に混入される。放出された化合物が冷えるにつれて、これらは凝縮して使用者によって吸入されるエアロゾルを形成する。
【0004】
多くの先行技術の文書で、加熱式喫煙物品を消費または喫煙するためのエアロゾル発生装置が開示されている。こうした装置には、例えばエアロゾル発生装置の一つ以上の電気発熱体から加熱式喫煙物品のエアロゾル形成基体への熱伝達によってエアロゾルが生成される電気加熱式エアロゾル発生装置が含まれる。こうした電気式喫煙システムの一つの利点は、副流煙を著しく低減しつつ、使用者が喫煙を選択的に一時停止および再開できるようにすることである。
【0005】
電気加熱式エアロゾル発生装置の使用中、発熱体に供給された電力は、実質的に一貫したエアロゾル送達を経時的に消費者に提供する特定の加熱プロファイルを達成するために制御される。加熱プロファイルの第一の段階中(本明細書では「予熱段階」と呼ばれる)、電力が発熱体に提供されて、発熱体を周囲温度から第一の温度(エアロゾル形成基体からエアロゾルが発生する温度)に上げる。消費者は装置の起動後、最初に吸煙するまでかなりの時間待つことを望まないので、多くの装置において、装置の起動後できるだけ早く、望ましい成分を有するエアロゾルを発生することが望ましい。この理由から、発熱体をできるだけ迅速に第一の温度に上げるために、第一の段階において電力が発熱体に供給されてもよい。予熱段階に続いて、加熱プロファイルは第二の加熱段階に移行し、この第二の加熱段階において、電力が発熱体に供給されて、発熱体を第二の温度(典型的には第一の温度より低い温度)で保持し、消費者がエアロゾル発生物品を吸煙する時の消費者への一貫したエアロゾル送達を達成する。
【0006】
予熱段階中にエアロゾル形成基体が加熱されるにつれて、エアロゾル形成基体からある特定の化合物が放出され、これは望ましくない悪臭を生成し、消費者がこれに気付く場合があることが見いだされている。この悪臭を生じる主な化合物のうちの一つは、不快な硫黄臭を有する硫化水素であると特定された。メタンチオールおよび硫化カルボニルなどの他の化合物も悪臭の一因となりうるが、典型的に程度はより低い。
【0007】
予熱段階中の悪臭を低減するための新しい手段を有するエアロゾル発生物品を提供することが望ましいことになる。エアロゾル発生物品の構造の著しい修正なしに組み込むことができる、悪臭を低減するための手段を有するエアロゾル発生物品を提供することが特に望ましいことになる。消費者の喫煙体験への影響が最小限にしつつ組み込むことができる、悪臭を低減するためのこうした手段を提供することがさらに望ましいことになる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第一の態様によると、たばこを含むエアロゾル形成基体と金属系硫化物捕捉剤化合物とを含むエアロゾル発生物品が提供されている。エアロゾル形成基体中の硫化物捕捉剤化合物の金属成分の量は、エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、少なくとも0.05重量パーセントである。
【0009】
本発明の第二の態様によると、発熱体を備えるエアロゾル発生装置と、エアロゾル発生装置で使用するエアロゾル発生物品とを備えるエアロゾル発生システムが提供されており、エアロゾル発生物品は、たばこを含むエアロゾル形成基体と金属系硫化物捕捉剤化合物とを含む。エアロゾル形成基体中の硫化物捕捉剤化合物の金属成分の量は、エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、少なくとも0.05重量パーセントである。
【0010】
本発明の第三の態様によると、エアロゾル発生物品用のエアロゾル形成基体が提供されており、エアロゾル形成基体は、たばこおよび金属系硫化物捕捉剤化合物を含む。エアロゾル形成基体中の硫化物捕捉剤化合物の金属成分の量は、エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、少なくとも0.05重量パーセントである。
【0011】
本発明の第四の態様によると、エアロゾル発生物品の加熱中に放出される硫化水素の量を低減するために、加熱式エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体中の遷移金属系の硫化物捕捉剤化合物の使用が提供されている。
【0012】
本発明の一態様または一実施形態に関して以下に説明される特徴は、その他の態様および実施形態にも適用されてもよい。例えば、本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体に関連して説明した特徴は典型的に、本発明によるエアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体と、本発明によるエアロゾル形成基体とにも適用される。
【0013】
本明細書で使用される「加熱式エアロゾル発生物品」という用語は、加熱された時にエアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出するエアロゾル形成基体を含む、加熱非燃焼式物品を指す。本発明による喫煙物品のエアロゾル形成基体から生成されるエアロゾルは、見えても、または見えなくてもよく、ベイパー(例えば、室温で通常、液体または固体である物質の、気体の状態の微粉)、ならびに気体および凝縮されたベイパーの液体の液滴を含んでもよい。
【0014】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」という用語は、エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体と相互作用してエアロゾルを発生する装置を指す。
【0015】
本明細書で使用される「上流」および「下流」という用語は、使用者がエアロゾル発生物品の使用中に、エアロゾル発生物品を吸う方向に関してエアロゾル発生物品の要素または要素の部分の相対的な位置を記述するために使用される。
【0016】
本明細書で使用される「硫化物捕捉剤化合物」という用語は、硫化水素などの硫化物化合物と化学的に反応して、これらを揮発性がより低い形態へと変換する潜在的可能性を有する化合物を指す。ある特定の硫化物捕捉剤化合物は、例えばメタンチオールなどのメルカプタン類を含む他の硫黄化合物を低減するように追加的に作用する場合がある。
【0017】
本発明によるエアロゾル発生物品は、上述の予熱段階中にエアロゾル形成基体から放出される硫化水素を少なくともある比率で除去するように作用する硫化物捕捉剤化合物をエアロゾル形成基体に組み込む。これによって硫化水素が消費者に到達するのを防止し、その結果予熱中の悪臭を効果的に低減または除去することができる。
【0018】
エアロゾル形成基体中にたばこ材料とともに硫化物捕捉剤化合物を提供することによって、硫化物捕捉剤化合物は有利なことに、予熱中にエアロゾル形成基体から放出される硫化物化合物と接触するように位置付けられる。
【0019】
硫化物捕捉剤化合物は有利なことにエアロゾル発生物品の組立の前に、たばこ材料と組み合わせてエアロゾル形成基体を形成することができるので、エアロゾル発生物品の構築および製造は実質的に影響を受けない。
【0020】
上記に画定されるように、本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体は、金属系の硫化物捕捉剤化合物を組み込む。これは、硫化物捕捉剤化合物が主な成分の一つとして金属を含むことを意味する。ラッパーは、金属塩、金属錯体、酸化金属、またはこれらの組み合わせから成る群から選択される硫化物捕捉剤化合物を含むことが好ましい。
【0021】
硫化物捕捉剤化合物は遷移金属系であることが好ましい。「遷移金属」という用語は本明細書において、周期律表のdブロック内の金属を指すために使用される。遷移金属は、亜鉛、鉄、および銅から成る群から選択されることが好ましい。特に好ましい実施形態において、硫化物捕捉剤化合物は亜鉛系である。
【0022】
硫化物捕捉剤化合物が金属塩である実施形態において、金属に応じて、当業者によって選択することができる任意の適切な塩が使用されてもよい。例えば、金属塩は、炭酸塩、塩化物、硫酸塩、水酸化物、硝酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、または臭化物であってもよい。
【0023】
硫化物捕捉剤化合物が金属錯体である実施形態において、金属に応じて当業者が選択できる任意の適切な錯体が使用されてもよい。例えば、金属錯体はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその共役塩基との錯体などのキレート錯体であってもよい。
【0024】
適切な亜鉛系の硫化物捕捉剤化合物としては、炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、亜鉛キレート(亜鉛EDTAなど)、および臭化亜鉛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
適切な鉄系の硫化物捕捉剤化合物としては、硫酸鉄が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
適切な銅系の硫化物捕捉剤化合物としては、炭酸第二銅、硫酸第二銅、硝酸銅、塩化第二銅、およびクロロフィルまたはクロロフィリンの銅複合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
適切なスズ系の捕捉剤化合物としては、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、および臭化第一スズが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明によると、エアロゾル形成基体は、硫化物捕捉剤化合物の金属成分を少なくとも0.05重量パーセント組み込む。エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、硫化物捕捉剤化合物の金属成分を少なくとも約0.1重量パーセント組み込むことが好ましく、少なくとも約0.2重量パーセント組み込むことがより好ましく、少なくとも約0.25重量パーセント組み込むことがより好ましい。これはエアロゾル形成基体中の金属成分の重量基準の「濃度」に効果的に対応する。別の方法として、または追加的に、エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、硫化物捕捉剤化合物の金属成分を約5重量パーセント未満組み込むことが好ましく、約3重量パーセント未満組み込むことがより好ましく、少なくとも約2.5重量パーセント未満組み込むことが最も好ましい。エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、硫化物捕捉剤化合物の金属成分を約0.05パーセント〜約5重量パーセント組み込むことが好ましく、約0.01〜約5重量パーセント組み込むことが好ましく、約0.2パーセント〜約3重量パーセント組み込むことがより好ましく、約0.25パーセント〜約2.5重量パーセント組み込むことがより好ましい。
【0029】
本発明による単一のエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体は、硫化物捕捉剤化合物の金属成分を合計量約0.1ミリグラム〜約15ミリグラム組み込むことが好ましく、合計量約0.5ミリグラム〜約8ミリグラム組み込むことがより好ましい。これらの値は、およそ275ミリグラムの乾燥質量を有するエアロゾル形成基体に基づいている。
【0030】
硫化物捕捉剤化合物は、エアロゾル形成基体中に硫化物捕捉剤化合物がない同等のエアロゾル発生物品と比較して、予熱試験中に硫化水素の少なくとも30重量パーセントの低減を達成するために十分な量で組み込まれることが好ましく、少なくとも50重量パーセントの低減を達成するために十分な量で組み込まれることがより好ましく、少なくとも70重量パーセントの低減を達成するために十分な量で組み込まれることが最も好ましい。こうした比較の目的のために、下記に画定される予熱試験において、エアロゾル形成基体中に硫化物捕捉剤化合物を有するエアロゾル発生物品と硫化物捕捉剤化合物を有しないエアロゾル発生物品との両方が予熱された。
【0031】
予熱試験において、エアロゾル発生物品は、エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体を加熱するための発熱体を備えるエアロゾル発生装置の中へと挿入される。通常の使用中のエアロゾル発生物品の予熱段階をシミュレートするために、発熱体は摂氏350度で30秒間加熱され、その後スイッチがオフになるようにプログラムされる。エアロゾル発生物品から放出された気相成分が収集されるように、エアロゾル発生物品は加熱中、密封されたガラスバイアルの中に定置される。バイアル内に収集された気相成分のサンプルは、その後取り出され、そして液体クロマトグラフィー−質量分析法を使用して硫化水素の濃度が判定された。予熱試験のために適切なエアロゾル発生装置は、市販のPhilip Morris International製のiQOS(登録商標)の加熱非燃焼式装置である。
【0032】
硫化物捕捉剤化合物は、エアロゾル形成基体から使用者へのニコチン送達に対する影響が最小限であることが好ましい。
【0033】
硫化物捕捉剤化合物は、さまざまな異なるやり方でエアロゾル形成基体中に組み込まれてもよい。例えば、硫化物捕捉剤化合物は、たばこ材料から既に形成済みのエアロゾル形成基体に噴霧する、振りかける、まぶす、またはその他の方法で塗布されうる。別の方法として、エアロゾル形成基体を形成する前に、硫化物捕捉剤は、エアロゾル形成基体またはエアロゾル形成基体の一部分を作製するために使用される一つ以上の成分と混合されてもよい。特定の実施形態において、硫化物捕捉剤化合物は、エアロゾル形成基体またはエアロゾル形成基体の一部分を作製するために使用される液体組成物中に溶解もしくは懸濁されてもよい。
【0034】
本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体は、たばこを含む。エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であることが好ましい。エアロゾル形成基体は固体成分と液体成分の両方を含んでもよい。
【0035】
エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例には、グリセリンおよびプロピレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、約5パーセント〜約30重量パーセントのエアロゾル形成体含有量を有することが好ましい。好ましい一つの実施形態において、エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、約20重量パーセントのエアロゾル形成体含有量を有する。
【0036】
エアロゾル形成基体が固体基体である場合、固体基体は、例えば粉末、顆粒、ペレット、断片、ストランド、細片またはシートのうちの一つ以上を含みうる。固体基体は、薬草の葉、たばこ葉、たばこの茎、膨化たばこおよび均質化したたばこのうちの一つ以上を含みうる。
【0037】
固体エアロゾル形成基体は、紙またはその他のラッパーによって取り囲まれたエアロゾル発生材料を含むプラグの形態であってもよい。
【0038】
随意に、固体エアロゾル形成基体は、たばこまたは非たばこ揮発性風味化合物を含んでもよく、これは固体エアロゾル形成基体の加熱に応じて放出される。固体エアロゾル形成基体はまた、例えば追加的なたばこまたは非たばこ揮発性風味化合物を含むカプセルも含有してもよく、こうしたカプセルは固体エアロゾル形成基体の加熱中に溶けてもよい。
【0039】
随意に、固体エアロゾル形成基体は、熱的に安定な担体上に提供されてもまたはその中に包埋されてもよい。担体は、粉末、顆粒、ペレット、断片、より糸、細片またはシートの形態を取ってもよい。固体エアロゾル形成基体は、例えばシート、発泡体、ゲルまたはスラリーの形態で担体の表面上に堆積されてもよい。固体エアロゾル形成基体は、担体の全表面上に堆積されてもよく、または別の方法として、使用中に均一でない風味送達を提供するために、あるパターンで堆積されてもよい。
【0040】
エアロゾル形成基体は、均質化したたばこ材料を含むことが好ましい。本明細書で使用される「均質化したたばこ材料」という用語は、粒子状のたばこを凝集することによって形成される材料を意味する。
【0041】
エアロゾル形成基体は、均質化したたばこ材料のシートの集合体を含んでもよい。本明細書で使用される「シート」という用語は、その厚さより実質的に大きい幅および長さを有する薄層状の要素を意味する。本明細書で使用される「集められた」という用語は、巻き込まれ、折り畳まれ、または別途喫煙物品の長軸方向軸に対して実質的に横断方向に圧縮され、または収縮したシートを意味する。均質化したたばこ材料のシートは捲縮されてもよい。本明細書で使用される「捲縮」という用語は、複数の実質的に平行した隆起またはしわを有するシートを意味する。エアロゾル発生物品が組み立てられた時に、実質的に平行した隆起またはしわは、エアロゾル発生物品の長軸方向軸に沿って、または平行に延びることが好ましい。
【0042】
本発明によるエアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体は、本発明の方法を参照しながら以下に説明する通り、製造プロセス中に硫化物捕捉剤化合物を均質化したたばこスラリーに組み込むことによって製造されることが好ましい。
【0043】
本発明による硫化物捕捉剤化合物を含むエアロゾル形成基体は、任意の適切なサイズまたは形状を有しうる。エアロゾル形成基体は実質的に細長いことが好ましい。例えば、エアロゾル形成基体は実質的に円筒状であってもよい。
【0044】
エアロゾル形成基体の長さは約7mm〜約15mmであってもよい。エアロゾル形成基体の長さは約10mmであることが好ましい。別の方法として、エアロゾル形成基体の長さは約12mmであってもよい。本明細書で使用される「長さ」という用語は、エアロゾル発生物品の長軸方向の寸法を指す。
【0045】
エアロゾル形成基体は、基体を含むエアロゾル発生物品の外径にほぼ等しい外径を有することが好ましい。エアロゾル形成基体の外径は約5mm〜約12mmであることが好ましい。例えば、エアロゾル形成基体の外径は約7.2mmであってもよい。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、エアロゾル発生物品は、発熱体を備えるエアロゾル発生装置との併用のために適合されている。こうした実施形態において、エアロゾル形成基体は、喫煙中にエアロゾル発生物品が挿入されるエアロゾル発生装置の発熱体によって貫通されるように適合されることが好ましい。エアロゾル形成基体の上流にフロントプラグが提供される場合、フロントプラグは発熱体によって貫通されるように適合されてもよい。
【0047】
本発明の代替的な実施形態において、エアロゾル発生物品は、分離されたエアロゾル発生装置を必要としないように、エアロゾル形成基体と隣接する熱源を組み込んでもよい。
【0048】
本発明によるエアロゾル発生物品はエアロゾル形成基体のすぐ下流に位置する支持要素をさらに備え、これによってエアロゾル形成基体と支持要素が軸方向で相互に隣接することが好ましい。支持要素は、エアロゾル形成基体を貫通するように構成された発熱体を有する装置の中へとエアロゾル発生物品を挿入する時に必要とされる場合など、挿入力を必要とする、エアロゾル発生物品の上流端が装置の中へと挿入される時のエアロゾル形成基体の下流の動きを防止することが好ましい。
【0049】
エアロゾル形成基体は、エアロゾル発生物品の上流端に位置することが好ましい。別の方法として、フロントプラグがエアロゾル形成基体の上流に組み込まれてもよい。
【0050】
本発明によるエアロゾル発生物品は、支持要素の下流に位置するエアロゾル冷却要素をさらに含んでもよい。本明細書で使用される「エアロゾル冷却要素」という用語は、大きい表面積と低い引き出し抵抗とを有する要素を記述する。使用時に、エアロゾル形成基体から放出された揮発性化合物によって形成されたエアロゾルは、使用者によって吸入される前にエアロゾル冷却要素を通り過ぎ、かつエアロゾル冷却要素によって冷却される。フィルターおよびその他のマウスピースの高い引き出し抵抗とは対照的に、エアロゾル冷却要素は低い引き出し抵抗を有する。エアロゾル発生物品内のチャンバーおよび空洞はまた、エアロゾル冷却要素であると見なされない。
【0051】
別の方法として、または追加的に、本発明によるエアロゾル発生物品は、エアロゾル発生物品の下流端に位置するマウスピースをさらに含んでもよい。マウスピースはフィルターを含んでもよい。フィルターは、一つ以上の適切な濾過材料で形成されてもよい。多くのこのような濾過材料は当該技術分野で周知である。一実施形態において、マウスピースは酢酸セルローストウで形成されるフィルターを備えてもよい。
【0052】
エアロゾル形成基体および存在するエアロゾル発生物品のその他の任意の要素は、外側ラッパーによって囲まれてもよい。外側ラッパーは任意の適切な材料または材料の組み合わせから形成されてもよい。一実施形態において、外側ラッパーは紙巻たばこ用紙である。
【0053】
適切なエアロゾル形成基体、支持要素、エアロゾル冷却要素、およびマウスピースは、国際特許公開公報第2013/098405号に記述されている。
【0054】
本発明によるエアロゾル発生システムは、上記に詳細に記述される通り、喫煙中にエアロゾル発生物品の上流端を受け入れるように適合されたエアロゾル発生装置と組み合わせたエアロゾル発生物品を含む。エアロゾル発生装置は、使用中にエアロゾルを生成するためにエアロゾル形成基体を加熱するように適合された発熱体を備える。エアロゾル発生物品がエアロゾル発生装置の中へと挿入された時に、発熱体はエアロゾル形成基体を貫通するように適合されることが好ましい。
【0055】
エアロゾル発生装置は、ハウジングと、発熱体に接続された電力供給源と、電源から発熱体への電力の供給を制御するように構成された制御要素とを追加的に備えることが好ましい。これは、加熱を制御して上述の予熱段階を含む加熱プロファイルを生成する制御要素である。
【0056】
本発明のエアロゾル発生システムで使用する適切なエアロゾル発生装置は、国際特許公開公報第2013/098405号に記述されている。
【0057】
本発明は、上述のようなエアロゾル発生物品の製造方法へとさらに拡張される。方法は、たばこ粒子状材料を供給する工程と、たばこ粒子状材料を含むスラリーを形成する工程と、金属系硫化物捕捉剤化合物をたばこ粒子状材料のスラリーに組み込む工程と、たばこ粒子状材料および金属系硫化物捕捉剤化合物を含むスラリーからたばこシートを形成する工程と、たばこシートをプラグへと形成してエアロゾル形成基体を提供する工程と、エアロゾル形成基体を一つ以上の構成要素と組み合わせてエアロゾル発生物品を形成する工程とを含む。
【0058】
本発明による方法は、上述の通り、たばこ粒子状材料から形成される均質化したたばこ材料からエアロゾル形成基体を製造することが好ましい。
【0059】
たばこシートは、上述の通り、集められてプラグにされることが好ましい。特定の好ましい実施形態において、たばこシートは捲縮されている。
【0060】
典型的に、スラリーは、たばこ粒子状材料、硫化物捕捉剤化合物およびその他の任意の添加物を水と組み合わせることによって形成される。硫化物捕捉剤化合物は、スラリーに材料を追加する前に、たばこ粒子状材料と組み合わされてもよい。別の方法として、硫化物捕捉剤化合物は、たばこ粒子状材料とは別個に、水に追加されてもよい。
【0061】
スラリーは、約15パーセント〜約25重量パーセントのたばこ粒子状材料を含むことが好ましく、およそ20パーセントであることがより好ましい。たばこ粒子状材料は、一つ以上のたばこ種のたばこ粉末の混合物を含むことが好ましい。たばこ粉末は任意の適切な平均粉末サイズを有しうる。例えば、たばこ粉末は約0.03mm〜約0.12mmの範囲の平均粉末サイズを有してもよい。
【0062】
スラリーはセルロース繊維をさらに含むことが好ましい。セルロース繊維は任意の適切な量で存在しうる。例えば、セルロース繊維は乾燥質量で約1パーセント〜約3パーセントの範囲で存在してもよい。セルロース繊維は任意の適切なサイズを有しうる。例えば、セルロース繊維は約0.2mm〜約4mmの平均サイズを有しうる。
【0063】
別の方法として、または追加的に、スラリーは結合剤をさらに含むことが好ましい。結合剤は、任意の適切な量で存在しうる。例えば、結合剤は乾燥質量で約1パーセント〜約5パーセントの範囲で存在してもよい。適切な任意の結合剤が使用されうる。適切な結合剤の例としては、エチルセルロース、アセチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはその他の適切なセルロース誘導体、ペクチン、グアーガム、キャロブビーンカーネルミール、寒天、アルギン酸ナトリウムまたはその他の適切なアルギン酸塩およびその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
たばこ粒子状材料、硫化物捕捉剤化合物およびその他の随意的な成分がスラリー中に組み込まれると、スラリーは、従来的な方法および装置を使用してたばこシートを形成するために使用されうる。
【0065】
ここで、例証としてのみであるが、以下の添付図面を参照しながらさらに本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1図1は本発明の実施形態によるエアロゾル発生物品の概略断面図を示す。
図2図2は、エアロゾル発生装置と、図1に図示した実施形態によるエアロゾル発生物品とを備えるエアロゾル発生システムの概略断面図である。
図3図3は、図2の電気加熱式エアロゾル発生装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1に示すエアロゾル発生物品10は、同軸に整列して配置された四つの要素、すなわちエアロゾル形成基体20、支持要素30、エアロゾル冷却要素40、およびマウスピース50を含む。四つの要素の各々は対応するプラグラップ(図示せず)によって囲まれている。これらの四つの要素は連続的に配置され、また外側ラッパー60によって囲まれて、エアロゾル発生物品10を形成する。エアロゾル発生10は、使用者が使用中に自分の口の中に挿入する近位端または口側端70と、口側端70に対してエアロゾル発生物品10の反対側の端に位置する遠位端80とを有する。
【0068】
使用時に空気は、使用者によってエアロゾル発生物品を介して遠位端80から口側端70に引き出される。エアロゾル発生物品の遠位端80はまた、エアロゾル発生物品10の上流端として記述されてもよく、エアロゾル発生物品10の口側端70はまた、エアロゾル発生物品10の下流端として記述されてもよい。口側端70と遠位端80の間に位置するエアロゾル発生物品10の要素を、口側端70の上流にあると記述することができ、または別の方法として、遠位端80の下流にあると記述することができる。
【0069】
エアロゾル形成基体20は、エアロゾル発生物品10の最遠の遠位端または上流端に位置する。図1に図示した実施形態において、エアロゾル形成基体20は、ラッパーによって囲まれた、捲縮した均質化したたばこ材料シートの集合体を含む。均質化したたばこ材料の捲縮したシートはエアロゾル形成体としてグリセリンを含む。エアロゾル形成基体20はまた、エアロゾル形成基体20の総乾燥質量に基づき、少なくとも0.05重量パーセントの硫化物捕捉剤化合物を含む。適切な硫化物捕捉剤化合物は下記の表2に提供されている。
【0070】
支持要素30はエアロゾル形成基体20のすぐ下流に位置し、エアロゾル形成基体20に隣接する。図1に示す実施形態において、支持要素は中空のセルロースアセテートチューブである。支持要素30は、エアロゾル発生装置の発熱体によって貫通されることができるように、エアロゾル発生物品10の最遠の遠位端80にエアロゾル形成基体20を位置させる。下記にさらに記述するように、支持要素30は、エアロゾル発生装置の発熱体がエアロゾル形成基体20の中へと挿入される時に、エアロゾル形成基体20がエアロゾル冷却要素40に向かってエアロゾル発生物品10内で下流に押し込まれるのを防止するように作用する。支持要素30はまた、エアロゾル発生物品10のエアロゾル冷却要素40がエアロゾル形成基体20から間隙を介するためのスペーサーになる。
【0071】
エアロゾル冷却要素40は支持要素30のすぐ下流に位置し、支持要素30に隣接する。使用時、エアロゾル形成基体20から放出される揮発性物質は、エアロゾル発生物品10の口側端70に向かって、エアロゾル冷却要素40に沿って通過する。揮発性物質は、エアロゾル冷却要素40内で冷却されて、使用者が吸入するエアロゾルを形成してもよい。図1に図示した実施形態において、エアロゾル冷却要素は、ラッパー90によって囲まれたポリ乳酸の捲縮したシートの集合体を含む。ポリ乳酸の捲縮したシートの集合体は、エアロゾル冷却要素40の長さに沿って延びる複数の長軸方向経路を画定する。
【0072】
マウスピース50はエアロゾル冷却要素40のすぐ下流に位置し、エアロゾル冷却要素40に隣接する。図1に図示した実施形態において、マウスピース50は低濾過効率の従来の酢酸セルローストウフィルターを含む。
【0073】
エアロゾル発生物品10を組み立てるために、上述の四つの要素は外側ラッパー60内で整列され、しっかりと巻かれる。図1に図示した実施形態において、外側ラッパー60は従来の紙巻たばこ用紙である。図1に示す通り、穿孔の随意の列は、エアロゾル発生物品10の支持要素30を取り囲む外側ラッパー60の領域において提供される。エアロゾル発生物品10の外側ラッパー60の遠位端部分は、チッピングペーパーの帯によって取り囲まれる(図示せず)。
【0074】
図1に図示したエアロゾル発生物品10は、使用者によって消費されるために発熱体を含むエアロゾル発生装置と係合するように設計されている。使用時に、エアロゾル発生装置の発熱体は、エアロゾルを形成するのに十分な温度までエアロゾル発生物品10のエアロゾル形成基体20を加熱し、このエアロゾルがエアロゾル発生物品10を介して下流に引き出され、使用者によって吸入される。
【0075】
予熱段階中、エアロゾル形成基体中の硫化物捕捉剤化合物は、エアロゾル形成基体中のたばこから発せられる硫化水素のレベルを低減するように作用する。上記に画定された通りの予熱試験において、類似した構造であるが、硫化物捕捉剤化合物を含まない従来的なエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品と比較して、少なくとも30パーセントの低減が達成された。多くの硫化物捕捉剤化合物の場合で、硫化水素の量を最大70パーセントまで低減させることができる。硫化水素の量のこうした低減は、硫化水素由来の悪臭が最少化されることを意味し、これは消費者によって全く気付かれない場合がある。
【0076】
図2は、上述し図1に図示した実施形態によるエアロゾル発生装置110およびエアロゾル発生物品10を含むエアロゾル発生システム100の部分を図示する。
【0077】
エアロゾル発生装置110は発熱体120を含む。図2に示す通り、発熱体120は、エアロゾル発生装置110のエアロゾル発生物品受け入れチャンバー内に取り付けられている。使用時に使用者は、図2に示す通り発熱体120がエアロゾル発生物品10のエアロゾル形成基体20の中に直接挿入されるように、エアロゾル発生装置110のエアロゾル発生物品受け入れチャンバーの中にエアロゾル発生物品10を挿入する。図2に示した実施形態において、エアロゾル発生装置110の発熱体120は、ヒーターブレードである。
【0078】
エアロゾル発生装置110は、発熱体120を起動させることを可能にする電源および電子機器を含む(図3に示す)。このような起動は手動で行われてもよく、またはエアロゾル発生装置110のエアロゾル発生物品受け入れチャンバーの中に挿入されるエアロゾル発生物品10での使用者の吸い込みに応答して自動的に起こりうる。複数の開口部は、エアロゾル発生装置に提供されて空気がエアロゾル発生物品10に流れるのを可能にする(気流の方向は、図2に矢印によって図示されている)。
【0079】
エアロゾル発生物品10の支持要素40は、エアロゾル形成基体20の中へのエアロゾル発生装置110の発熱体120の挿入中に、エアロゾル発生物品10が経験する貫通力に抵抗する。これによって、エアロゾル発生物品10の支持要素40は、エアロゾル形成基体20の中へのエアロゾル発生装置110の発熱体120の挿入中に、エアロゾル発生物品10内のエアロゾル形成基体20の下流への移動に抵抗する。
【0080】
内部発熱体120がエアロゾル発生物品10のエアロゾル形成基体20の中に挿入され、発熱体120が起動されると、エアロゾル発生物品10のエアロゾル形成基体20は、エアロゾル発生装置110の発熱体120によっておよそ摂氏375度の温度に加熱される。この温度で揮発性化合物は、エアロゾル発生物品10のエアロゾル形成基体20から発生される。使用者がエアロゾル発生物品10の口側端70で吸い込むにつれ、エアロゾル形成基体20から発生された揮発性化合物は、エアロゾル発生物品10を介して下流に引き出されて凝縮し、エアロゾル発生物品10のマウスピース50を通って使用者の口の中に引き出されたエアロゾルを形成する。
【0081】
エアロゾルがエアロゾル冷却要素40を下流へと通過するにつれ、エアロゾルの温度は、エアロゾルからエアロゾル冷却要素40への熱エネルギーの伝達のため低下する。エアロゾルがエアロゾル冷却要素40に入る時、その温度はおよそ摂氏60度である。エアロゾル冷却要素40内での冷却のため、エアロゾルがエアロゾル冷却要素を出る時のエアロゾルの温度は、およそ摂氏40度である。
【0082】
図3において、エアロゾル発生装置110の構成要素は、簡略化された方法で示されている。特に、エアロゾル発生装置110の構成要素は、図3におけるスケールで描かれていない。実施形態の理解に関連しない構成要素は省略して図3を簡略化した。
【0083】
図3に示す通り、エアロゾル発生装置110はハウジング130を含む。発熱体120は、ハウジング130内のエアロゾル発生物品受け入れチャンバー内に取り付けられている。エアロゾル発生物品10(図3に破線で示す)は、発熱体120がエアロゾル発生物品10のエアロゾル形成基体20の中に直接挿入されるように、エアロゾル発生装置110のハウジング130内のエアロゾル発生物品受け入れチャンバーの中に挿入される。
【0084】
ハウジング130内には、電気エネルギー供給源140、例えば再充電可能なリチウムイオン電池がある。コントローラ150は、発熱体120、電気エネルギー供給源140、およびユーザーインタフェース160(例えばボタンまたはディスプレイ)に接続される。コントローラ150は、その温度を調節するために発熱体120に供給される電力を制御する。
【実施例】
【0085】
下の表2に示したそれぞれの硫化物捕捉剤化合物について、硫化物捕捉剤化合物は示された濃度で、図1に示す組成を有するたばこスラリーに組み込まれた。従来的な技法を使用して、たばこシートはたばこスラリーから形成され、そのたばこシートはエアロゾル形成基体に形成された。次に、図1を参照して上述したエアロゾル発生物品が組み立てられた。各々のエアロゾル発生物品は、上記に定義された予熱試験に供された。
【0086】
硫化水素およびメタンチオールの低減の割合は、硫化物捕捉剤化合物がエアロゾル形成基体に追加されていない対照サンプルに対して相対的に測定された。
【0087】
下記の結果から、各々の化合物について、対照サンプルに対して相対的に50パーセントを超える硫化水素の低減が観察されたことが分かる。多くの場合において、70パーセントを超える低減が観察された。メタンチオールの有意な低減も観察された。
【表1】
【表2】
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2019年3月5日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこを含むエアロゾル形成基体と、遷移金属系の硫化物捕捉剤化合物とを含み、前記エアロゾル形成基体中の前記硫化物捕捉剤化合物の前記遷移金属成分の量が、前記エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、少なくとも0.05重量パーセントである、非燃焼・加熱式物品。
【請求項2】
前記エアロゾル形成基体が、遷移金属塩、遷移金属錯体、遷移酸化金属、またはその組み合わせから構成される群から選択される硫化物捕捉剤化合物を含む、請求項1に記載の非燃焼・加熱式物品。
【請求項3】
前記硫化物捕捉剤化合物が亜鉛系または銅系である、請求項1または2に記載の非燃焼・加熱式物品。
【請求項4】
前記硫化物捕捉剤化合物の前記遷移金属成分の量が、前記エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、0.05パーセント〜5重量パーセントである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の非燃焼・加熱式物品。
【請求項5】
前記硫化物捕捉剤化合物の前記遷移金属成分の量が、前記エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、0.25パーセント〜2.5重量パーセントである、請求項5に記載の非燃焼・加熱式物品。
【請求項6】
前記硫化物捕捉剤化合物の前記遷移金属成分の量が、前記エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、少なくとも0.1重量パーセントである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の非燃焼・加熱式物品。
【請求項7】
前記エアロゾル形成基体中の前記硫化物捕捉剤化合物が、前記エアロゾル形成基体中に前記硫化物捕捉剤化合物を含まない同等のエアロゾル発生物品と比較して、予熱試験中に硫化水素の少なくとも50重量パーセントの低減を提供し、予熱試験において、発熱体が摂氏350度で30秒間加熱されてからオフになるようにプログラムされる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の非燃焼・加熱式物品。
【請求項8】
エアロゾル発生システムであって、
発熱体を備えるエアロゾル発生装置と、
前記エアロゾル発生装置で使用する非燃焼・加熱式物品であって、前記非燃焼・加熱式物品が、たばこおよび遷移金属系の硫化物捕捉剤化合物を含むエアロゾル形成たばこ基体を含み、前記エアロゾル形成基体中の前記硫化物捕捉剤化合物の前記金属成分の量が、前記エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき少なくとも0.05重量パーセントである、非燃焼・加熱式物品とを含む、エアロゾル発生システム。
【請求項9】
前記エアロゾル形成基体が、たばこおよび遷移金属系の硫化物捕捉剤化合物を含み、前記エアロゾル形成基体中の前記硫化物捕捉剤化合物の前記遷移金属成分の量が、前記エアロゾル形成基体の総乾燥質量に基づき、少なくとも0.05重量パーセントであり、前記エアロゾル形成基体を含む非燃焼・加熱式物品中で、前記エアロゾル形成基体中の前記硫化物捕捉剤化合物が、前記エアロゾル形成基体中に前記硫化物捕捉剤化合物を含まない同等の非燃焼・加熱式物品と比較して、予熱試験中に硫化水素の少なくとも50重量パーセントの低減を提供し、予熱試験において、発熱体が摂氏350度で30秒間加熱されてからオフになるようにプログラムされる、非燃焼・加熱式物品用のエアロゾル形成基体。
【請求項10】
非燃焼・加熱式物品の製造方法であって、前記方法が、
たばこ粒子状材料を供給する工程と、
前記たばこ粒子状材料からスラリーを形成する工程と、
遷移金属系の硫化物捕捉剤化合物を前記たばこ粒子状材料の前記スラリーに組み込む工程と、
前記たばこ粒子状材料および前記金属系硫化物捕捉剤化合物を含む前記スラリーからたばこシートを形成する工程と、
前記たばこシートをプラグへと形成してエアロゾル形成基体を提供する工程と、
前記エアロゾル形成基体を一つ以上の構成要素と組み合わせて、非燃焼・加熱式物品を形成する工程とを含む、方法。
【請求項11】
セルロース繊維がさらに前記スラリーに組み込まれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非燃焼・加熱式物品の加熱中に放出される硫化水素のレベルを低減する目的での、非燃焼・加熱式物品の前記エアロゾル形成基体中での遷移金属系の硫化物捕捉剤化合物の使用。
【国際調査報告】