(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-528088(P2019-528088A)
(43)【公表日】2019年10月10日
(54)【発明の名称】子牛の肥育におけるヒト乳オリゴ糖の使用
(51)【国際特許分類】
A23K 50/10 20160101AFI20190913BHJP
A61K 31/702 20060101ALI20190913BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20190913BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20190913BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20190913BHJP
A23K 20/163 20160101ALI20190913BHJP
A61P 1/04 20060101ALN20190913BHJP
A23L 33/125 20160101ALN20190913BHJP
【FI】
A23K50/10
A61K31/702
A61P31/04 171
A61P31/12 171
A61P1/12 171
A23K20/163
A61P1/04
A23L33/125
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-532188(P2019-532188)
(86)(22)【出願日】2017年8月29日
(85)【翻訳文提出日】2019年3月14日
(86)【国際出願番号】EP2017071606
(87)【国際公開番号】WO2018041803
(87)【国際公開日】20180308
(31)【優先権主張番号】16186533.2
(32)【優先日】2016年8月31日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519068788
【氏名又は名称】オリゴサイエンス バイオテクノロジー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ペラチャ,マクス
(72)【発明者】
【氏名】ウェンホフ,サブリナ
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
2B005BA01
2B005BA04
2B150AA02
2B150AA04
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2B150AC01
2B150AC37
2B150AE19
2B150AE37
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2B150DH04
2B150DH14
4B018LB07
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4B018MD85
4C086AA01
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4C086ZA66
4C086ZA73
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC61
(57)【要約】
本発明は、子牛などの生産動物に給餌するためのヒト乳オリゴ糖の使用に関する。本発明はさらに、ヒト乳オリゴ糖を含有する代用乳組成物に関する。本発明のさらなる主題は、1以上のヒト乳オリゴ糖の有効量を投与することによって、若い生産動物、特に子牛、の胃腸疾患、特に胃腸感染症を予防及び治療するための方法である。本発明の文脈において、前記1以上のヒト乳オリゴ糖として特に有用なものは、2’−フコシルラクトース(2−FL)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのヒト乳オリゴ糖を含有する代用乳組成物。
【請求項2】
前記オリゴ糖が2’−フコシルラクトースである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
当該組成物の全重量に基づいて0.5〜10.0重量%の量で前記ヒト乳オリゴ糖を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
当該組成物の全重量に基づいて1.0〜5.0重量%の量で前記ヒト乳オリゴ糖を含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
当該組成物の全重量に基づいて4.0重量%の量で前記ヒト乳オリゴ糖を含有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒト乳オリゴ糖が細菌培養で調製された合成オリゴ糖である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
生産動物への給餌における1以上のヒト乳オリゴ糖の使用。
【請求項8】
前記ヒト乳オリゴ糖が子牛の肥育(mast)に使用される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記ヒトオリゴ糖が2’−フコシルラクトースである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
生産動物の胃腸疾患の予防における使用のためのヒト乳オリゴ糖又はヒト乳オリゴ糖の組成物。
【請求項11】
前記生産動物が子牛である、請求項10に記載の使用のためのヒト乳オリゴ糖。
【請求項12】
当該オリゴ糖が2’−フコシルラクトースである、請求項11に記載の使用のためのヒト乳オリゴ糖。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の代用乳組成物を生産動物に給餌するステップを含む、生産動物に給餌するための方法。
【請求項14】
前記動物が子牛である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子牛などの生産動物(production animals)に給餌するためのヒト乳オリゴ糖の使用に関する。本発明はさらに、ヒト乳オリゴ糖を含有する代用乳組成物に関する。本発明のさらなる主題は、1以上のヒト乳オリゴ糖の有効量を投与することによって、若い生産動物、特に子牛、の胃腸疾患、特に胃腸感染症を予防及び治療するための方法である。本発明の文脈+において、前記1以上のヒト乳オリゴ糖として特に有用なものは、2’−フコシルラクトース(2−FL)である。
【背景技術】
【0002】
健康な子牛を育てることは、酪農を成功させるための基盤である。最適な農場経営及びケア、胃食道前庭の機能の早期開発及び経済的に賢明な飼育によって得られた健康な子牛は、子牛飼育の目的のいくつかである(Steinwunder et al. (2005) Milchviehfutterung, Tier− und Leistungsgerecht. Leopold Stocker Verlag, Graz; Drochner, W. (2008): Futterung der Rinder. in: Jeroch et al. (eds.) Ernahrung landwirtschaftlicher Nutztiere, 2nd ed. Eugen Ulmer KG, Stuttgart, pp. 385−467)。
【0003】
成功した飼育は、動物損失(lost)の最小化に関係しており、これは最も重大な問題と見なされている。ドイツでは、数年間、飼育損失は8〜14%の範囲であった(例えば、Roehrmoser (1995): Aufzucht des Rindes. in: Matzke et al. (eds.) Wirtschaftliche Milchviehhaltung und Rindermast. 3rd ed., Frankfurt am Main, Verlag Union Agrar, pp. 221−261を参照)。目標は、約5%の損失を達成することである。最適化された子牛の給餌がこの目標に貢献することがきる。例えば子牛の下痢を減らすために、いくつかの予防策が給餌に関連して提案されている(Schrag et al. (1984) Gesunde Kaelber − Gesunde Rinder. Die wichtigsten Krankheiten in Aufzucht und Mast. Erkennung, Vorbeuge, Behandlung. 3rd ed. Henbersberg, Schober Verlags−GmbH, pp 249−276)。これらの対策の焦点は、よく発達した腸内細菌叢と腸の健康である。腸の健康状態を改善し維持するために、代用乳(milk replacer)に含めるための様々なプレバイオティクスが提案されている(Dohms(2004)Aspekte der Darmgesundheit and Chancen fuer den Einsatz von Probiotika、4th ed.)。
【0004】
ヒト乳オリゴ糖(HMO)は、ヒト乳に豊富で特有の多様な非共役グリカンのファミリーである。例えばBode(2012)Glycobiology 22 (9), pp. 1147−1162においてレビューされる。
【0005】
WO−A−2012/158517は、ヒト乳オリゴ糖、特に幼児の糞便中に見られる細菌の増殖を促進するための2’−フコシルラクトース、の使用を開示している。この先行技術はまた、多様な哺乳動物の栄養補給のためのプレバイオティクスとしてヒト乳オリゴ糖を使用することを意図しているが、しかしながら、腸内細菌の増殖促進以外に、実験データは全く示されていないので、動物に給餌するためのヒト乳オリゴ糖の使用は推測的なままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根底にある技術的課題は、特にその子牛の飼料の改善を通して、若い生産動物、特に子牛、の向上した飼育を提供することである。
【0007】
上記の技術的問題に対する解決策は、本明細書に記載され、特許請求の範囲に定義されるような本発明の実施形態によって提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特に、本発明は、少なくとも1つのヒト乳オリゴ糖を含有する新規の代用乳組成物に関する。
【0009】
本発明によれば、「ヒト乳オリゴ糖」は少なくとも3つの炭水化物実体から個性される糖分子であり、この糖分子は女性のヒトの乳汁又はプレミルクに見出される。好ましくは、前記HMOは3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の糖実体から構成されるオリゴ糖であり、それによって4又はそれ以上の実体を含有するオリゴ糖は直鎖又は分岐鎖オリゴマーであり得る。HMOは、典型的には、単糖グルコース、ガラクトース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン(N-acetylcalactosamine)、フコース及びN−アセチルノイラミン酸から構成される。本発明における使用のためのほとんどのHMOは、二糖類ラクトース又はN−アセチルラクトサミンに基づいており、ラクトースに基づくものが特に好ましい。
【0010】
本発明の文脈における好ましいヒト乳オリゴ糖は、2’−フコイルラクトース(2−FL)、3’−フコシルラクトース(3−FL)、3’−シアリルラクトース(3−SL)、6’
−シアリルラクトース(6−SL)、ラクト−N−テトラオース(LNT)、ラクト−N−ネオテトラオース(LNnT)、ラクト−N−ヘキサオース(LNH)、イソ−ラクト−N−オクタオース、イソ−ラクト−−N−ネオオクタオース、パラ−ラクト−N−オクタオース、ラクト−N−フコペンタオースI(LNFP I)、ラクト−N−フコペンタオースII(LNFP II)、ラクト−N−フコペンタオースIII(LNFP III)、ラクト−N−フコペンタオースV(LNFP V)、LS−四糖a(LST a)、LS−四糖(zetrasaccharide)b(LST b)、LS−四糖(zetrasaccharide)c(LST c)及びジシアリルラクト−N−テトラオース(DSLNT)を包含するが、これらに限定されない。
【0011】
本発明での使用に特に好ましいHMOは、ヒト乳三糖3−FL及び2−FLである。最近、2−FLのバイオテクノロジー生産が提供され(WO−A−2010/070104参照)、それによりこの基本的なHMOが工業規模で利用可能になっている(Jennewein Biotechnologie GmbH, Rheinbreitbach, Germany)。したがって、前記代用乳組成物中の前記HMOは、好ましくは、特にWO−A−2010/070104に教示されているように遺伝的に改変された細菌を用いて細菌培養で調製された合成物、特に前述のような合成2−FL、であり、2−FLに基づく高級HMOが本発明の文脈において一般的に好ましく、2−FLは本発明の実施にとって最も好ましいHMOである。
【0012】
本発明はまた、1より多い特定のHMOを含む代用乳組成物にも関する。それによって、上記HMOのうちの2以上の混合物が好ましい。特に好ましいのはHMOの混合物である。それによって、前記混合物の前記HMOの一方が、第3、第4、第5等の更なるHMOと一緒に、2−FL及び3−FLの両方を含む。本発明のこの文脈において最も好ましいのは、2−FLと3−FLとの組み合わせである。
【0013】
本発明の代用乳組成物は、もちろん、HMOに加えて他の糖を含有することができる。この文脈において、ラクトース及びN−アセチルラクトサミンが好ましいさらなるオリゴ糖として挙げられるべきである。
【0014】
「代用乳」(milk replacer)又は「代用乳組成物」は、好ましくはウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、シカ及びウマ、特に乳幼児及び若齢の生産動物から選択される、生産動物に給餌するための栄養組成物を意味する。本発明による用語「代用乳」及び「代用乳組成物」はまた、欧州議会及び理事会の規則(EC)No.767/2009の第3条(2)による定義も含む。これによれば、「代用乳」は、「乳汁を補完するものとして、又はその代用品として、又は若い動物に給餌するために、又は若い動物、例えば屠殺が意図される子牛、子羊又は子ヤギなど、に給餌するために乾燥形態で又は所定量の液体で希釈して投与する配合飼料」を意味する。
【0015】
したがって、本発明の代用乳組成物は、典型的には、基本的な(basic)代用乳組成物と共に上記のような1以上のHMOを含有する。本発明による代用乳組成物という用語は、乾燥形態の組成物、ならびに前記乾燥組成物を水で再構成することによって典型的に得られるその液体形態を含む。本発明の代用乳組成物を提供するための基本的な栄養組成物は当技術分野において公知である(子牛代用乳の概説については、例えば、オンラインで:
https://www.aphis.usda.gov/animaLheaIth/nahms/dairy/downIoads/bamn/BAGuideMilkRepl.pdf
入手可能な、Bovine Alliance on Management and Nutrition (BAMN), 2008, A GUIDE TO CALF MILK REPLACERS;及びKamphues et al. (2004) Supplemente zu Vorlesungen und Uebungen in der Tierernaehrung, Hannover, Verlag M. & H. Schaper Alfredを参照)。
【0016】
したがって、本発明による代用乳組成物は、一般に、場合により水性液体(ここで、成分は、水性塩基中に懸濁液、エマルション及び/又は溶液の形態で存在してもよい)中に再構成された、少なくともタンパク質及び脂肪源を、典型的にはさらなる成分、例えば炭水化物、繊維、ビタミン、ミネラルサプリメントなど、及びさらなる添加剤、例えば医薬、乳化剤、増粘剤、微量元素、酸化防止剤及び香味剤など、と混合して含む。
【0017】
代用乳組成物は通常、それらのタンパク質及び/又は脂肪成分の供給源に従って分類される。特に子牛の給餌に使用するための代用乳組成物のための典型的なタンパク質源は、スキムミルク粉末、ホエー粉末、及び植物タンパク質源、例えば大豆タンパク質、大豆粉、小麦グルテン又は小麦単離物など、を包含する。代用乳の脂肪成分は、動物性脂肪又は植物性油由来のものであり得る。
【0018】
タンパク質レベル及び脂肪レベルは両方とも、本発明における使用のための代用乳組成物の重要な特徴である。子牛代用乳中の好ましいタンパク質レベルは、典型的には約18〜約22%(w/w)、最も好ましくは約20%(w/w)の範囲であり、そして脂肪レベルは好ましくは約10〜約28%の範囲である。約18〜約23%(w/w)の脂肪がより好ましい。原料のレベルはまた給餌される動物の種類によって異なる。例えば、繁殖子牛については、脂肪レベルは典型的には約13〜約20%(w/w)の範囲であり、一方、代用乳組成物中の脂肪含有量は、子牛を肥育するためには約23%(w/w)まで上昇させるべきである。子牛は屠殺を意図していた。代用乳組成物の製造に関して特に考慮すべきことは炭水化物対タンパク質の比でもある。例えば、純粋な乾燥ホエーは、約70%(w/w)のラクトース含有量を有し、そしてタンパク質含有量は約12%(w/w)である。本発明を実施するために、炭水化物(HMO含有量を除く)、特にラクトース、グルコース及びサッカロース、の含有量は、結腸の誤発酵を招く高い通過率を防ぐために、好ましくは、50%(w/w)の値を超えてはならない。
【0019】
本発明における使用のための典型的な基本的な代用乳組成物は、約22%(w/w)以上の粗タンパク質、約20%(w/w)以上の粗脂肪、約0.15(w/w)以下の粗繊維、カルシウム、約0.75%(w/w)〜約1.75%(w/w)の量、少なくとも約0.7%(w/w)のリン、少なくとも約20000lU/lbのビタミンA、少なくとも約5000lU/lbのビタミンD3、及び約100lU/lbのビタミンEを含有する。
【0020】
本発明による代用乳組成物は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、約0.5〜10.0%(w/w)、好ましくは約1〜5%(w/w)、最も好ましくは4%(w/w)、の量でHMO(2−FLのような単一タイプのHMO、又は2つ以上の異なるHMOの混合物であり得る)を含有する。
【0021】
本発明はまた、生産動物、特に若い生産動物、例えば子牛、子羊、子ヤギ及び子馬など、の給餌のためのHMO(HMOのうち1つ以上)の使用にも関する。前記HMOは、子牛の肥育に特に有用である。
【0022】
本発明はまた、生産動物、とくに若い生産動物、例えば子牛、子羊、子ヤギ及び子馬など、給餌するための方法に関する。当該方法は、本発明の代用乳組成物を前記生産動物に給餌するステップを含む。本発明の前記給餌方法は、特に子牛の肥育に関して、前記生産動物による飼料摂取量及び前記生産動物の能力パラメータを改善する。本明細書に教示されるように、HMOを代用乳組成物中の成分として使用することの特別な利点は、給餌された生産動物、特に子牛、子羊、子ヤギ及び子馬、の全体的な状態の改善である。その結果、本発明による代用乳を与えた動物の能力パラメータは改善される。本発明の代用乳組成物は、特に、胃腸疾患、例えば下痢を引き起こす細菌性又はウイルス性の腸感染症など、を予防することによって、動物損失を減少させる。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、前記HMOは、好ましい腸内細菌の増殖を改善し、それによって病原性細菌の相対数を減少させると同時に、腸内受容体に対する、病原性物質、例えば病原性腸内細菌及びウイルス、の結合を防止又は少なくとも妨げると考えられる。HMOはまた、動物の腸内細菌叢を改善し、粘膜免疫を調節し、そしてアトピー状態に対する動物の耐性を強化するとも考えられている。
【0023】
本発明の文脈において、HMOは、生産動物、例えば子牛、子羊、子ヤギ及び子馬など、の健康状態を改善するのに特に有用である。特に、HMO(上記のように、単独で投与することも、又はHMOの混合物として提供することもできる)は、予防及び治療に使用され、且つ、前記生産動物における、胃腸疾患、特に細菌性及びウイルス性胃腸疾患、例えば下痢、の発生を少なくとも減少させる(又はそのような疾患の期間を少なくとも短縮する)。HMOはまた、生産動物、好ましくは上で定義されたものにおいて、アトピー性疾患、すなわち身体に外来の物質に対する過敏症に関連する状態、を予防及び治療するのに有用である。さらに、HMOは、生産動物、特に前述のものの、粘膜免疫を改善するのに有用である。本発明によれば、HMOはまた、生産動物、例えば子牛、子羊、子ヤギ及び子馬など、の腸内細菌叢を改善する。HMOは、単独で又は組成物の形態で、好ましくは経口投与形態で投与することができ、それはまた本明細書で定義されるような代用乳組成物の形態をとることもできる。医薬組成物はまた、いずれの給餌組成物とは別に与えられる錠剤又はカプセル剤の形態をとることもできる。したがって、本発明はまた、生産動物、好ましくは上で概説したような若い生産動物における、胃腸疾患、例えば胃腸系における細菌感染症及びウイルス感染症、を予防又は治療するための方法も対象とする。当該方法は、少なくとも1つのHMO、又は2つ以上のHMOを含有する組成物の安全かつ有効な量を前記生産動物に投与するステップを含む。本発明はさらに、上記の状態を予防又は治療するための医薬を製造するための、少なくとも1つのHMO、又は2つ以上のHMOを含む組成物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の非限定的な実施例によって本発明をさらに説明する。
【0025】
実施例
実施例1: HMOを含有する代用乳を使用した繁殖子牛の給餌
材料及び方法: 60頭の子牛(Deutsche Holstein)を同数の雄(15/30)及び雌(15/30)の動物で2つの群(コントロール群及び実験群、各30)に分ける。子牛の平均年齢は7日である。両群の各動物は単一飼育にされている。14日齢で、子牛は2つのグループに分けられ、それぞれのグループは異なるが、それ以外は同一の厩舎に入れられる。動物に自動給水ディスペンサーを介して代用乳組成物を給餌する。動物はウォーターディスペンサーから自由に水を飲むことができる。加えて、1日当たり150gの干し草を各動物に与える。以降8週目からは、濃厚飼料は、自動化されたディスペンサーを経由して与えられる。HMOを除く両方の群は、同じ代用乳組成物を与えられる。実験群には、基本的な母代用乳組成物 + 4%(w/w)2−FLを与える。コントロール群には、HMOの代わりに追加の4%(w/w)のホエー粉末を与える。1リットルの液体代用乳組成物は、125gのドライ代用乳濃縮物を含有する。
【0026】
次の表は、給餌計画を示す。
【表1】
【0028】
データ収集: 一匹の動物を認識する自動ディスペンサーによる給餌、各個体による食物摂取量の測定;乾草と飼料濃縮物のデータは計量によって収集される;各動物の毎日の体重測定;自動給餌ディスペンサーでの体温の舌下測定、比較と管理のために週1回の直腸測定;健康状態の管理及び医薬品の使用;腸内細菌によるコロニー形成に関する糞便の毎週の分析。
【0029】
飼料分析、代用乳、干し草及び飼料濃縮物の分析。
【0030】
実施例2: HMOを含有する代用乳を使用した肥育牛の給餌
材料と方法: 品種Fleckviehの子牛60頭を、それぞれ子牛30頭ずつ2つのグループ(コントロール/実験用)に分けた。両群とも同量の雄(15/30)と雌(15/30)の子牛。動物の平均年齢は14日である(生体重50〜60kg)。各群の動物は厩舎に入れられ、両方の厩舎は同一である。動物に自動給水ディスペンサーを介して代用乳組成物を給餌する。動物は自由に水を飲むことができる。加えて、1日当たり300gの干し草を各動物に与える。HMOを除く両方の群は、同じ代用乳組成物を与えられる。実験群には、基本的な母代用乳組成物 + 4%(w/w)2−FLを与える。コントr−る群には、HMOの代わりに追加の4%(w/w)のホエー粉末を与える。実験の開始時に、1リットルの液体飼料組成物は125gのドライ代用乳濃縮物を含有する。実験の終わりに、液体供給組成物の濃度を1リットル当たり250gに増加させる。
【0031】
給餌計画は以下の通りある。
【表2】
【0032】
実験期間: 実験は約14日齢で始まり、約230〜240kg(実験の第22週目)の重量で屠殺されて終わる。約140日間の継続期間になる。
【0033】
データ収集: 一匹の動物を認識する自動ディスペンサーによる給餌、各個体による食物摂取量の測定;乾草と飼料濃縮物のデータは計量によって収集される;各動物の毎日の体重測定;自動給餌ディスペンサーでの体温の舌下測定、比較とコントロールのために週1回の直腸測定;健康状態の管理及び医薬品の使用;腸内細菌によるコロニー形成に関する糞便の毎週の分析。屠殺後、各動物の体を評価する。
【国際調査報告】