特表2019-528239(P2019-528239A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-528239変形性関節症を診断するためのコムペプチドおよびそれに対する抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-528239(P2019-528239A)
(43)【公表日】2019年10月10日
(54)【発明の名称】変形性関節症を診断するためのコムペプチドおよびそれに対する抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20190913BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20190913BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20190913BHJP
【FI】
   C07K16/00ZNA
   C07K7/06
   G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-563724(P2018-563724)
(86)(22)【出願日】2017年6月15日
(85)【翻訳文提出日】2019年1月31日
(86)【国際出願番号】EP2017064667
(87)【国際公開番号】WO2017216289
(87)【国際公開日】20171221
(31)【優先権主張番号】1650855-8
(32)【優先日】2016年6月16日
(33)【優先権主張国】SE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518426619
【氏名又は名称】エスゲーピーティホー ライフ サイエンス アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】SGPTH LIFE SCIENCE AB
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】スキヨルデブランド、エバ
(72)【発明者】
【氏名】リンダル、アンダス
(72)【発明者】
【氏名】エクマン、スティナ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA13
4H045CA50
4H045DA75
4H045EA50
4H045FA71
(57)【要約】
N末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチド、およびこのペプチドに対する抗体が提供される。このペプチドは、人間および動物、特にウマの診断に使用することができる。特に、この抗体は、全身性低悪性度慢性炎症性疾患、例えば、変形性関節症、アテローム性動脈硬化症、神経変性疾患、または神経炎症性疾患の診断に使用可能である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチドに特異的に結合する抗体。
【請求項2】
診断における使用のための請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
請求項2に記載の抗体であって、前記抗体が使用される前記診断は、被験者の変形性関節症(osteoarthritis)、アテローム性動脈硬化症、神経変性疾患、または神経炎症性疾患の診断である、
ことを特徴とする抗体。
【請求項4】
請求項3に記載の抗体であって、前記抗体が使用される前記診断は、骨関節症(osteoarthrosis)の診断である、
ことを特徴とする抗体。
【請求項5】
請求項4に記載の抗体であって、前記骨関節症は、早期段階の変形性関節症である、
ことを特徴とする抗体。
【請求項6】
請求項3に記載の抗体であって、前記抗体が使用される前記診断は、アテローム性動脈硬化症の診断である、
ことを特徴とする抗体。
【請求項7】
請求項6に記載の抗体であって、前記アテローム性動脈硬化症は、頚動脈狭窄である、
ことを特徴とする抗体。
【請求項8】
請求項3に記載の抗体であって、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群から選択され、または、前記神経炎症性疾患は、多発性硬化症、パーキンソン病、ギランバレー症候群、重症筋無力症、視神経脊髄炎、自己免疫性脳炎、ナルコレプシーからなる群から選択される、
ことを特徴とする抗体。
【請求項9】
請求項3から8のいずれか1項に記載の抗体であって、前記抗体は、被験者からのサンプル中のN末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチドの量を検出するため使用される、
ことを特徴とする抗体。
【請求項10】
請求項9に記載の抗体であって、前記サンプルは、滑液、髄液、血清、血液、または血漿のサンプルである、
ことを特徴とする抗体。
【請求項11】
請求項1に記載の抗体の診断における使用。
【請求項12】
診断方法であって、
被験者からサンプルを分離し、
前記サンプル中の、N末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチドの存在または量を分析する、
ことを含むことを特徴とする診断方法。
【請求項13】
請求項1に記載の抗体を備えるキット。
【請求項14】
N末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチド。
【請求項15】
抗体を産生するためのN末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドおよびこのペプチドに対する抗体、および診断、特に、全身性炎症性疾患の診断、特に、変形性関節症(osteoarthritis)および心臓血管系疾患の診断、におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)は、全身性の低悪性度(low-grade)慢性炎症、およびそれに続く血管内の炎症性プラーク(plaques)の形成と関連し、西洋諸国における主要な死因の1つである。アテローム性動脈硬化症は、危険性の低い無症候段階から、プラークの発達、さらにこのプラークが、毛細血管を塞いで心臓麻痺または脳卒中(stroke)を引き起こす血栓症(thrombosis)を引き起こしかねない段階へと緩やかに進行する。
【0003】
進行期段階において、アテローム性動脈硬化症は、頻繁に、プラークにより引き起こされる頚動脈の内表面の狭窄である頚動脈狭窄(carotid artery stenosis)へ進行する。この段階において、血栓形成、および脳卒中を引き起こす塞栓(embolus)の放出のリスクは非常に高い。
【0004】
今日でも、アテローム性動脈硬化症がどのように危険な段階へ進行するかをモニターすることは不可能である。
【0005】
頚動脈狭窄は、通常、中程度の感度(sensitivity)および特異性(specificity)を有する超音波を使用して診断される。このため、アテローム性動脈硬化症が頚動脈狭窄へ進行することをモニターする方法へのニーズがある。
【0006】
変形性関節症(osteoarthritis)(OA)は、関節軟骨および下層の骨の破壊(breakdown) に起因する、低悪性度の慢性全身性炎症である。この疾患は、患部の関節における炎症および基質(matrix)タンパク質の解体(disorganization)の開始によりしばしば特徴付けられる早期段階から、下層の骨の損傷を伴うより重症段階へと進行する。その主な症状は、関節の痛みである。変形性関節症は、人口の約3.8%を罹患させるものであるため、主要な臨床上の問題である。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug)の鎮痛処方薬の50%はOAに関連していると見積もられている。
【0007】
関節痛はしばしば内科医にOAを疑わせるが、特に患者が高齢者である場合、今日でも早期段階のOAを診断することは困難である。今日の診断は、放射線学(radiology)を使用して、後期段階のOAに特有の不可逆的な構造上の損傷を同定することにしばしば基づく。X線やMRIは、しかしながら、構造上の損傷がまだ可視的でないため、早期段階のOAの診断に使用することはできない。また、X線およびMRI検査は、高価な設備、および放射線技師への予約を必要とする。
【0008】
ウマの変形性関節症は、馬主にとって大きな問題である。馬を所有する主要な理由は、それを使うことができることであり、しばしばそれで競争することである。OAは、ウマを使用することができなくなる最も頻度の高い理由であり、ウマ(競馬)産業における最も大きい唯一の経済的損失の主要因となる。
【0009】
ウマの早期段階のOAは、跛行(歩行困難)(lameness)、すなわち異常歩行または異常姿勢、として頻繁に現れる。跛行は、しばしば僅かであり得るが、跛行をモニターする改良された方法を持つことは有用であろう。これにより、馬主は、跛行により、馬をいつトレーニングや競争から休息させるかを知ることができるであろう。
【0010】
馬および人間のOAは、同様な機序により引き起こされる。人間と馬の双方において、OAは、数ヶ月および数年に亘る炎症により特徴付けられる早期段階から、広範な組織の損傷を伴う後期段階へと進行する(Goldring, M.B. and Otero M、 Current Opinion in Rheumatology (2011) 23(5):471)。
人間および馬におけるOAの疾患発症機序はまた、分子レベルで非常に良く似ている(Stenberg J, Ruetschi U, Skioldebrand E, Karrholm J, Lindahl A、 Proteome Sci. (2013) Oct 4;11(1):43) (Svala E, Lofgren M, Sihlbom C, Ruetschi U, Lindahl A, Ekman S, Skioldebrand E、 Connect Tissue Res. (2015);56(4):315−25)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
OAのための初期段階のマーカの欠如は、不可逆的な組織損傷としてそれが現れる前に疾患をコントロールするために使用可能な薬剤の開発を妨げる。OAを診断および病期分類する、より便宜な方法があるならば有用である。
【0012】
本発明は、これらおよび他の課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、N末端−SGPTH(セリン(Ser);グリシン(Gly);プロリン(Pro);トレオニン(Thr);ヒスチジン(His))のアミノ酸配列を備えるペプチドに特異的に結合する抗体が提供される。この抗体は診断に使用することができる。
こうして、本発明の第2の態様によれば、N末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチドに特異的に結合する抗体の、診断における使用が提供される。
【0014】
この診断は、全身性炎症、特に、例えば変形性関節症のような全身性低悪性度慢性炎症、特に、早期段階の変形性関節症またはアテローム性動脈硬化症、特に頚動脈狭窄、に関連する疾患の診断であってよい。この診断はまた、動脈硬化症(arteriosclerosis)の診断であってもよい。この診断はまた、例えば、アルツハイマー病、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経変性(neurodegenerative)疾患、または多発性硬化症、パーキンソン病、ギランバレー症候群、重症筋無力症、視神経脊髄炎、自己免疫性脳炎、ナルコレプシー(発作性睡眠)等の神経炎症性疾患の診断であってよい。
【0015】
この抗体は、被験者(subject)からのサンプル(試料)中の、N末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチドの量を検出するために使用されてよい。好適な実施形態において、このサンプルは、滑液(synovial fluid)、血液、血清、または血漿のサンプルである。
【0016】
本発明は、例えばアテローム性動脈硬化症およびOA等の全身性低悪性度慢性炎症疾患のための生物学的マーカを提供する。こうして、これらの疾患を、従来よりも便宜な方法でモニターすることができる。
【0017】
OAは、本発明の抗体を使用して滑液のサンプルをテストすることにより、その早期段階で発見することができる。これはいくつもの利点を持つ。これにより、OAを発見してモニターすることができ、OAの薬剤の開発を促進することができる。
【0018】
後期のアテローム性動脈硬化症は、本発明の抗体を使用して血液サンプルをテストすることにより、検出することができる。
【0019】
好適な実施形態において、被験者はヒト(人間)であり、疾患はアテローム性動脈硬化症であり、サンプルは血液サンプルである。
【0020】
好適な実施形態において、被験者はウマであり、疾患は変形性関節症(OA)、特に早期段階のOAまたは急性跛行(acute lameness)であり、サンプルは滑液サンプルである。
【0021】
第3の態様によれば、診断において使用するための、本発明の第1の態様に係る抗体が提供される。
【0022】
本発明の第4の態様によれば、診断のための方法が提供され、この方法は、被験者からサンプルを分離し、前記サンプルを分析して、前記サンプル中のN末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチドの存在または量を分析する、ことを含む。
【0023】
本発明の第5の態様によれば、上記の抗体を備える診断キットが提供される。
【0024】
本発明の第6の態様によれば、N末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチドが提供される。
【0025】
本発明の第7の態様によれば、抗体を産生するためのN末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチドの使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、対照(control)ペプチド(配列番号4)またはSGPTHEGVCのペプチド(配列番号3)の連続希釈法(段階希釈法)を使用してテストされた、抗N−SGPTH抗体の特異性を示す図である。
図2図2は、ウマからの滑液サンプル中のN末端−SGPTHの配列を備えるペプチドの濃度を示すグラフである(*=p<0.050、****=p<0.0001)。
図3図3は、ヒトからの血清中のN末端−SGPTHの配列を供えるペプチドの濃度を示すグラフである(***=p<0.001)。
図4図4は、N−SGPTHペプチドに対する抗体で染色されたウマからの関節軟骨のサンプル画像である。免疫組織学的に染色された切片は、それぞれ、健常なウマ(健常軟骨 図4)および関節軟骨の表在性フィブリル化を有するウマ(早期OA 図5)の関節軟骨である。ペプチドに対する抗体は、健常な軟骨においてネガティブ(陰性)に染色するが、早期OAにおいて、抗体はフィブリル化領域においてポジティブ(陽性)に染色する(矢印で示す)。
図5図5は、N−SGPTHペプチドに対する抗体で染色されたウマからの関節軟骨のサンプル画像である。免疫組織学的に染色された切片は、それぞれ、健常なウマ(健常軟骨 図4)および関節軟骨の表在性フィブリル化を有するウマ(早期OA 図5)の関節軟骨である。ペプチドに対する抗体は、健常な軟骨においてネガティブ(陰性)に染色するが、早期OAにおいて、抗体はフィブリル化領域においてポジティブ(陽性)に染色する(矢印で示す)。
図6図6は、N−SGPTHペプチドに対する抗体で染色されたヒト(人間)の患者のアテローム性動脈硬化症のプラークのサンプルの組織切片を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、N末端−SGPTHの配列(配列番号1)を備えるペプチド、このペプチドに対する抗体、およびこうした抗体の診断における使用、に関する。
【0028】
ペプチドは、N末端がSGPTHの配列を有する限り、5個から100個、好適には5個から30個、より好適には5個から20個のアミノ酸、より好適には5個から9個のアミノ酸の長さを有してよい。ペプチドのこの配列のセリン残基は、こうして、ペプチドのNH基を有する。
【0029】
ある実施形態において、ペプチドは、免疫付与(immunization)に使用可能な長さを有する。ペプチドの長さは、この場合、好適には、少なくとも9個の残基である。
【0030】
ペプチドは、単離(isolated)ペプチドであってよい。ペプチドは、例えば、滑液、血液、血漿または血清から単離されてよい。ペプチドはまた、当該技術分野で公知な方法を使用して合成することができる。この方法は、例えば、R.B. Merrifield (1963) “Solid Phase Peptide Synthesis. I. The Synthesis of a Tetrapeptide”、 J. Am. Chem. Soc. 85 (14): 2149−2154、および、Schnolzer, M. A., P.; Jones, A.; Alewood, D.; Kent,S.B.H.(2007) “In Situ Neutralization in Boc−chemistry Solid Phase Peptide Synthesis” Int. J. Peptide Res. Therap. 13 (1−2): 31−44である。ペプチドは単離ペプチドであってよい。
【0031】
ペプチドは、抗体の産生および単離に使用することができる。この抗体は、N末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチド、特に少なくとも9個のアミノ酸残基からなるペプチド、に特異的に結合する。「抗体」という用語はまた、Fab、Fab´、F(ab´)2、Fv、および一本鎖抗体を含む。ペプチドに対する抗体を産生する方法は、周知である。ペプチドは、ペプチドに結合する抗体をスクリーニングすること、および抗体を精製(purifying)するのに使用することができる。
【0032】
好適には、抗体は、ペプチドへの高い親和性を有する。親和性は、解離定数(dissociation constant)またはKdを使用して表すことができる。好適な結合親和性(結合親和力)は、解離定数(Kd)が、10−6M、より好適には5×10−7M、より好適には10−7M、より好適には5×10−8M、より好適には10−8M、より好適には5×10−9M、より好適には10−9M、より好適には5×10−10M、より好適には10−10M、より好適には5×10−11M、より好適には10−11M、より好適には5×10−12M、より好適には10−12M、より好適には5×10−13M、最も好適には10−13M、以下であるものを含む。好適には、抗体は、単離抗体である。抗体は、精製された抗体であってよい。
【0033】
好適には、抗体は、N末端−SGPTHの配列(配列番号1)を備えるペプチドに特異的に結合する。抗体を生成するには、SGPTHより長いペプチド、例えば、免疫性付与ペプチドSGPTHGGGC(配列番号2)、で免疫付与することが好適であり得る。
しかしながら、後続するスクリーニングステップは、免疫性付与に使用されたペプチドの他の残基が抗体結合に関与していない場合、N末端−SGPTHのエピトープ(抗原決定基)に特異的に結合する抗体を同定することができる。SGPTHGGGC(配列番号2)の免疫性付与ペプチドにおいて、C末端システインが、ペプチドをコンジュゲートする(conjugating)のに、例えば、抗体精製に使用される基質(matrix)に対して、使用されてよい。
【0034】
抗体は、哺乳類、例えば、マウス、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ等に由来するあらゆる抗体であってよく、これらのうちマウスが好適である。抗体のアイソタイプ(isotype)は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgY等のいずれかであってよい。
【0035】
抗体は、動物、例えば、当該技術分野で公知なようにウサギ、の免疫性付与(immunization)により産生されるポリクロナール抗体であってよい。しかしながら、好適には、抗体は、モノクローナル抗体である。好適には、モノクローナル抗体は、マウスまたはウサギのモノクローナル抗体である。ペプチドに対するモノクローナル抗体は、周知のハイブリドーマ(hybridoma)技術を使用して生成されてよい(KohlerおよびMilstein, Nature, 256, 495−497, 1975)。単一クローンは、限界希釈分析法、軟寒天法(soft agar assay)、蛍光活性化細胞選別装置を使用する方法等により、単離することができる。限界希釈分析法において、例えば、ハイブリドーマのコロニーは、培養前に、培地中で連続的に約1セル/ウェルに希釈されて、所望の抗体を産生するハイブリドーマを単離する。抗体は、キメラ(chimeric)抗体またはヒト化抗体であってよい。
【0036】
抗体クローンはまた、他の方法、例えば、ファージ(phage)ディスプレイ法を使用して生成することができる。
【0037】
抗体がマウス(murine)IgGである場合、抗体は、タンパク質Aコンジュゲート(conjugated)担体または抗マウス免疫グロブリンコンジュゲート担体を使用する親和性クロマトグラフィで精製することができる。
【0038】
抗体を産生、精製、および単離する方法、およびそれらの結合能を判断する方法は、周知である。詳細には、「Current Protocols in Immunology」および「Current Protocols in Molecular Biology」が参照される。
【0039】
抗体は、異なる手法で診断に使用することができる。抗体は、ヒトまたは動物であってよい被験者からのサンプル中のペプチドの存在、その量、またはその濃度を測定するために使用することができる。サンプルは、あらゆるタイプの生物学的サンプル、例えば、滑液、血漿、血清、髄液または尿、腹水、または組織切片であってよい。好適には、サンプルは液体サンプルである。好適な実施形態において、サンプルは、血清サンプル、血液サンプル、血漿サンプル、または滑液のサンプルである。よりさらに好適な実施形態において、サンプルは、滑液のサンプルである。
【0040】
抗体で、サンプル中のペプチドの濃度を計測する便宜な方法は、ELISAである。ELISA(Enzyme−linked immunosorbent assay)の設計および使用は、診断の分野において周知である。抗体はまた、例えば、免疫組織化学(immunohistochemistry)において使用することができる。例えば、冷凍された、パラフィン処理された、または固定化された組織の薄片を、抗体を使用して、病理学の分野で公知であるように、染色することができる。抗体はまた、ウェスタンブロット法(western blot)で使用されることができる。
【0041】
抗体は、多様な手法で検出することができる。頻繁に使用される方法は、検出可能な物体(マーカまたは標識)、例えば、酵素(HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)等)、蛍光色素分子、または放射性同位元素標識(radiolabel)、でコンジュゲートされた二次抗体を使用することである。例えば、一次抗体がマウス抗体である場合、二次抗体は、ヤギ抗マウス抗体であってよい。マーカの存在は、技術分野において公知な方法で検出することができる。すなわち、酵素は、色または光を生成する試薬で検出することができ、放射性標識は、シンチレータまたは写真用フィルムで検出することができ、蛍光色素分子は、蛍光検出器により検出することができ、または蛍光顕微鏡で見ることができる。
【0042】
代替的に、一次抗体(抗SGPTH抗体)は、マーカ/標識と直接コンジュゲートされてよい。
【0043】
抗体の好適な作用(working)濃度は、例えばELISAや免疫組織化学のような多様な手順で使用される場合、抗体の親和性に依存し、良好なシグナル・ノイズ比(SN比)を与える濃度を見つけるため、抗体の異なる濃度をテストすることにより決定することができる。一例として、1mg/ml濃度の抗体ストック(stock)は、好適な作用濃度をテストするため、1/100、1/200、1/1000、および1/5000で希釈されてよい。これらの手順における抗体の作用濃度は、通常、μg/mlの範囲、例えば1〜10μg/mlの範囲にある。抗体は、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)中で、可能であれば、例えばBSA(ウシ血清アルブミン)等の追加的タンパク質、および例えばアジ化ナトリウム等の防腐剤の使用とともに、希釈されるのが好適である。
【0044】
抗体は、被験者、特に、ヒトまたはウマ、の疾患の診断に使用することができる。例えば、サンプル中のペプチドの濃度は、標準方法、例えばELISAを使用して判断することができる。このように判定された濃度は、標準値(standard value)と比較されることができる。標準値からの偏差は、特定の疾患、またはその疾患の病期(ステージ)を示すことができる。
【0045】
診断は、全身性炎症、特に、全身性低悪性度慢性炎症に関連する疾患の診断であってよい。診断は、例えば、アルツハイマー病、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経変性疾患、または、多発性硬化症、パーキンソン病、ギランバレー症候群、重症筋無力症、視神経脊髄炎、自己免疫性脳炎、またはナルコレプシー等の神経炎症性疾患の診断であってよい。
【0046】
好適な実施形態において、診断される疾患は、特にヒトの、アテローム性動脈硬化症および頚動脈狭窄からなる群から選択される1つであってよい。特に、疾患は、頚動脈狭窄であってよい。そしてサンプルは、好適には、血液サンプル、血漿サンプル、または血清サンプルである。
【0047】
抗体は、ヒトのアテローム性動脈硬化症の進行を、特に、プラーク疾患から頚動脈狭窄への進行をモニターするのに使用されることができる。抗体は、プラークのみを有する患者を、頚動脈狭窄を有する患者から識別するのに使用されてよい。
ウサギポリクロナール抗血清(antisera)での現在の較正器(キャリブレータ)に基づいて、100ng/mlより上、より好適には600ng/mlより上、より好適には800ng/mlより上、より好適には1000ng/mlより上、より好適には1200ng/ml、最も好適には2000ng/mlより上の血清中のペプチド濃度は、ヒトの頚動脈狭窄を示し得る。適切なカットオフ(cut-off)は、標準実験および適切な対照群(controls)を使用することで確立することができる。
【0048】
抗体は、ヒトまたはウマのOAの診断に使用することができる。好適な実施形態において、滑液中のペプチドの高濃度は、早期OAを示し得る。ペプチドの低濃度は、OAがないか、または後期段階のOAを示し得る。抗体は、急性跛行/早期OAから慢性跛行/慢性OAへの進行を、特にウマにおいてモニターするのに使用されることができる。ウマにおいて、抗体は、急性跛行/早期OAおよび慢性跛行/慢性OAからなる群から選択される1つの条件を診断するのに使用されてよい。
【0049】
ウマにおいて、ウサギポリクロナール抗血清での現在の較正器(キャリブレータ)に基づいて、1μg/mlより上、より好適には20μg/mlより上、より好適には30μg/mlより上、より好適には40μg/mlより上、より好適には200μg/mlより上の滑液濃度におけるペプチド濃度は、早期跛行および従って早期OAを示し得る(兆候であり得る)。ウマのカットオフレベルは、標準実験および適切な対照群を使用することで確立することができる。
【0050】
抗体および必要な試薬は、サンプル中のペプチドを検出するキットに含まれてよい。このキットは、ELISA、例えば、競合(competitive)ELISAに基づいてよい。キットは、固定相(例えば、ウェルを備えるプレート)、二次抗体、マーカを検出するための緩衝器(buffer)および試薬を含んでよい。
【0051】
実施例1
ポリクロナール抗体
ウサギポリクロナール抗体を、N末端−SGPTHGGGC−C末端(配列番号2)の免疫ペプチドに対して作製した(raised)。N末端−SGPTHのペプチドは、ウマの滑液中のCOMP(軟骨オリゴマー基質タンパク質)タンパク質(トロンボスポンジン5)の開裂(cleavage)断片(フラグメント)として同定された。ヒトのタンパク質は、同じ配列を有する。抗原性ペプチドは、ウサギ血清からの抗体精製に使用された。ポリクロナール抗体は、実施例2から実施例6で使用された。
【0052】
実施例2
阻害ELISA(酸素結合免疫吸着測定法)、ウマおよびヒトのペプチドの検出
実施例1からの抗体を使用して、SGPTHEGVC(配列番号3)の配列を有するペプチドのため、阻害ELISAが展開(developed)された。ELISAは、実施例3(ウマ)および実施例4(ヒト)におけるように、実行された。抗体のこのペプチドへの結合は、ポリクロナール抗体がN−SGPTHに特異的であることを確認する。
また、抗体は、PPGYSGPTHEGVGMC(配列番号4)の配列を有する非開裂(uncleaved)対照ペプチドには結合しなかった。このペプチド(配列番号4)は、SGPTHを備えるが、N末端のN−SGPTHではないため(図1)、このことは、N末端がこの抗体のためのエピトープ(抗原決定基)の一部であることを示す。予測されたように、阻害ELISAにおいて、このSGPTHEGVC(配列番号3)ペプチドは、ペプチド濃度の増加に伴い、吸収信号の減少を示す。ELISAは、ヒトおよびウマの双方からの血清および滑液(SF)において検証された。これにより、抗体が、ヒトおよびウマからの血清および滑液に存在するペプチドを検出することが実証された。
【0053】
ウマの試験において、試験内(intra assay)検証の変動係数(CV)(%)は10.9であり、試験間(inter assay)検証のCV(%)は10.7であった(定量下限値は0.156μg/mlであった)。ヒトの血清サンプルでのCVは、ウマのデータと同様であった。血清および滑液サンプルはまた、冷凍後(−80°C)、解凍後、およびプロテアーゼ(protease)阻害剤とともにEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を添加した際の安定性に関してテストされた。
【0054】
実施例3
変形性関節症(osteoarthritis)のウマからの滑液中のペプチドの検出
滑液(SF)サンプルが、バイオバンクから収集された。使用された材料は、ウマからの手根中央(middle carpal)関節および蹴爪(球節)(fetlock)関節からの滑液を有する。
【0055】
ここにおけるサンプルの試験対象患者基準(選択基準)(inclusion criteria)は、A)利用可能な液体が100μlより多く、かつ以下の条件のうち1つである:B)早期OA/急性跛行の病歴(<4週間)、C)慢性OA/慢性跛行の病歴(>4週間)、D)跛行の病歴がなく、かつ正常形態(morphology)の関節(健常対照)、またはE)後期OAが現れた関節。
【0056】
バイオバンクIは、同じキャンパス(campus)で同じトレーナにより訓練された28頭の若いスタンダードブレッド(STB)(Standard-bred)の速歩馬(trotters)(13頭の雌子馬(fillies)および15頭の雄子馬(colts))を含んでいた。これらのウマは、その訓練を、平均年齢19.5ヶ月から開始し、平均年齢40ヶ月で終了した。すべてのウマは、臨床的に健常であり、6つの機会で試験された(訪問検査(visit)1、2、3、4、5、および6)。SFサンプリングにおいて、手根関節のX線写真およびシンチグラフィを含む屈曲(flexion)テストで、臨床的跛行試験が実行された。
バイオバンクIIは、1箇所の食肉処理場で安楽死させられたスタンダードブレッド(STB)およびスウェーデンの温血乗用馬(SWHs)からの左手根関節から成るものであった。左の手根骨間の関節からのSFは、検死後、即座にサンプル取得された。関節軟骨は、正常、または第3手根骨の近位(身体基部に近い)関節面の構造的OA損傷(病変)(lesions)を伴うもの、として特徴付けられた。
【0057】
バイオバンクIIIは、臨床的に歩行困難な(lame)ウマからのSFから成るものであった。ウマは、屈曲テストおよび関節内麻酔(anaesthesia)を含むルーティン(routine)の跛行試験の間に試験された。この試験はまた、麻酔前後での跛行を評価する跛行探知(locator)テストを含むものであった。SFは、臨床での跛行評価に依存して、異なる関節から収集された。このバンクは、関節内麻酔および跛行探知(ロケータ)を介して、特定の関節における規定の跛行を伴う関節からのSFからなるものであった。
【0058】
図2で使用された材料は、顕微鏡的に正常な関節軟骨を有するウマの健常対照群(n=8、バイオバンクII)、軽度から中程度の関節軟骨の構造的OA病変を有するウマの後期段階OA(n=8、バイオバンクII)、早期OA/急性跛行<4週間(n=9、バイオバンクIII)、および慢性OA/慢性跛行>4週間(n=9、バイオバンクIII)、のそれぞれの手根中央関節および蹴爪関節からのSFであり、および訓練中の若く健常な競走馬の健常対照群(n=7、バイオバンクI)の手根中央関節および蹴爪関節からのSFである。
【0059】
阻害ELISAは、SF中のペプチド濃度を計量して展開された。NUNCプレートは、0.1Mの炭酸緩衝剤で希釈された、pH9.6、および4℃で一晩培養された4.0μg/mlのペプチド(SGPTHEGVCの配列(配列番号3))で被覆された(coated)。0.6%のBSA(ウシ血清アルブミン)および0.8%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む10mMのPBS(リン酸緩衝食塩水)中の5.0μg/mLペプチド(SGPTHEGVGMA(配列番号5))の連続希釈法が、較正曲線(検量線)(範囲=5−0.078ug/mL)として使用された。SFサンプルは、0.84%のSDSを含むPBS中で1:20に希釈された。基準(standard)およびSFの複製は、96ウェルのSterilinプレート中で、25℃で一晩培養された。2日目、一次抗SGPTH抗体(1%のBSAおよび4%のTriton−X−100を含むPBS中で1:2000に希釈された)が、Sterilinプレートに添加され、このプレートは、25℃で1時間20分培養された。NUNCプレートは、1%のBSAおよび0.1%のTweenを含むPBSで、25℃で1時間、洗浄およびブロック(blocked)された。トータル100μLが、SterilinプレートからNUNCプレートへトランスファされ、25℃で1時間培養された。
培養の後、NUNCプレートは洗浄され、1%のBSAおよび0.1%のTweenを含むPBSで1:20,000に希釈された二次抗体(ヤギ抗ウサギIgG H&L [HRP])が添加された。このプレートは、25℃で1時間培養され、その後6回洗浄されて、25℃で約8分間、基板(substrate)で培養された(Substrate Reagent Pack DY999、R&D System、英国)。停止液(1M HSO)が添加され、および450nmでの吸光度が計測された(SpectraMaxPlus 384、MDS Analytical Technologies Ltd,英国)。
【0060】
健常対照群の関節、および慢性変形性関節症/慢性跛行および/または後期変形性関節症のウマからの関節と比較して、早期変形性関節症/急性跛行のウマからの滑液中のペプチドの濃度には、統計的に増加が見られた(図2)。
【0061】
データは、平均(mean)±SD(標準偏差)として表され、平均間の差異は、GraphPad Prism 6を使用した一方向ANOVA(分散分析)により評価された(GraphPad Software Inc、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)。グループ間の比較のため、テューキー(Tukey)多重比較テストが実行された。有意性のレベルは、p<0.05に設定された。
【0062】
実施例4
変形性関節症の患者からの血清中のペプチドの検出
患者の材料は、「症候性頚動脈狭窄における早期再発性脳卒中梗塞のリスク」(Stromberg S、 Nordanstig A、 Bentzel T、 Osterberg K、 Bergstrom GM、 Risk of early recurrent stroke symptomatic carotid stenosis、 Eur J Vase Endovasc Surg (2015); 49: 137−44)等であった。
【0063】
阻害ELISAは、血清中のペプチド濃度を計量して展開された。NUNCプレートは、0.1Mの炭酸緩衝剤で希釈された、pH9.6、および4℃で一晩培養された4.0μg/mLのペプチド(SGPTHEGVCの配列(配列番号3))で被覆された。0.6%のBSA(ウシ血清アルブミン)および0.8%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む10mM PBS(リン酸緩衝食塩水)中の1000ng/mLから15,6ng/mlペプチド(SGPTHQGVGLAの配列(配列番号6))の連続希釈法が、較正曲線(検量線)として使用された。血清サンプルは、0.84%のSDSを含むPBS中で1:4に希釈された。基準(standard)および血清の複製は、96ウェルのSterilinプレート中で、25℃で一晩培養された。2日目、一次抗SGPTH抗体(1%のBSAおよび4%のTriton−X−100を含むPBS中で1:6000に希釈された)が、Sterilinプレートに添加され、このプレートは、25℃で1時間20分培養された。NUNCプレートは、1%のBSAおよび0.1%のTweenを含むPBSで、25℃で1時間、洗浄およびブロック(blocked)された。トータル100μLが、SterilinプレートからNUNCプレートへトランスファされ、25℃で1時間培養された。
培養の後、NUNCプレートは洗浄され、1%のBSAおよび0.1%のTweenを含むPBSで1:20,000に希釈された二次抗体(ヤギ抗ウサギIgG H&L−HRP)が添加された。このプレートは、25℃で1時間培養され、その後6回洗浄されて、25℃で約21分間、基板で培養された(Substrate Reagent Pack DY999、R&D System、英国)。停止液(1M HSO)が添加され、および450nmでの吸光度が計測された(SpectraMaxPlus 384、MDS Analytical Technologies Ltd,英国)。
【0064】
頚動脈狭窄を持つ患者と比較して、頚動脈プラークを持つ患者からの血清中のペプチドの濃度には、統計的に増加が見られた(図3)。
統計は、実施例3にあるとおりであった。
【0065】
実施例5
ウマからの関節軟骨の免疫組織化学
健常のおよび早期OA関節軟骨のホルマリン固定したブロック(Formalin-fixed blocks)は、ペプチドのため免疫染色された(ウサギポリクロナール抗体)。ポリクロナール抗体は、1:800および1:1000でそれぞれ希釈されて使用された。つまり、試料(specimens)は、薄片に切り分けられ(sectioned)、載物ガラス(スライド)(slides)に搭載され、脱パラフィンされ(deparaffinized)、リン酸緩衝食塩水(PBS;0.01M、pH7.4)で再水和(rehydrated)および洗浄された。内因性ペルオキシダーゼ活性(endogenous peroxidase activity)は、PBS中で3%の過酸化水素で急冷された(quenched)。非特異性結合は、薄片を2%の正常ヤギ血清(DAKO、X0907、ウサギ抗体)中で培養することによりブロックされ、その後、乾燥され、および抗体とともに60分間室温(RT)で培養された。PBS中ですすがれた後、薄片は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)−コンジュゲート二次抗体(Dako Real EnVision Detection(登録商標) System、k5007、Ready−to−use kit)とともに30分間、室温(RT)で培養された。視覚化は、発色現像液(color developer)3,3−ジアミノベンジジン(DAB+ Cromogen Dako EnVision)、およびヘマトキシリン(haematoxylin)での対比染色を使用して実行された。ネガティブ(陰性)対照群として、一次抗体は、一次抗体と同一の希釈で、非免疫性ウサギ血清(Rabbit Immunoglobulin Fraction X0936、DAKO)で置き換えられた。
【0066】
薄片(sections)は、ニコン Eclipse E600顕微鏡およびNIS Elements Basic Researchソフトウエア バージョン3.22.11(Nikon Instruments Inc,メルヴィル、ニューヨーク、米国)を使用して、主観的に評価された。
健常なウマからの関節軟骨の免疫組織化学の載物ガラス(スライド)(健常軟骨、図4)、および関節軟骨の表在性フィブリル化(fibrillation)(軟骨表面上の損傷)を有する(早期OA)ウマからの関節軟骨の免疫組織化学のスライドは、明確に異なる染色パターンを示す(図5)。ペプチドに対する抗体は、健常軟骨中でわずかのみまたはネガティブ(陰性)に染色する。しかしながら、早期OAにおいて、抗体は、フィブリル化領域においてポジティブ(陽性)に染色する。
【0067】
実施例6
「Fagerberg B、 Ryndel M、 Kjelldahl J等 J Vase Res (2010); 47: 221−30」に記載される材料からの、ヒトのアテローム性動脈硬化症プラークの免疫組織化学
症候性頚動脈狭窄を有する患者からのサンプルは、動脈血管内膜切除術の前に、磁気共鳴血管造影法(MRA)で検査されてインヴィヴォ(生体内)(in-vivo)で最大の狭窄の場所を見つけ出した。最大狭窄の横行組織薄片が、免疫組織化学に使用され、これは実施例5として実行された。内壁(intima wall)中に染色の増加(矢印で示される)が見られ、これはN−SGPTHの配列を備えるペプチドの存在を示すものであった(図6)。
【0068】
これら実施例6および実施例4は、抗体がアテローム性動脈硬化症の診断に使用することができることを示す。さらに、実施例3および実施例5は、抗体が変形性関節症の診断に使用することができることを示す。変形性関節症およびアテローム性動脈硬化症の共通する特徴(denominator)は、全身性炎症である。我々は、抗体が、全身性炎症が存在する疾患、例えば、変形性関節症、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病や血管性認知症等の神経変性疾患、および多発性硬化症等の神経炎症疾患、の診断に使用可能であると結論する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2019528239000001.app
【手続補正書】
【提出日】2018年1月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチドに特異的に結合する抗体であって、前記抗体は前記N末端−SGPTHの配列に結合する、
ことを特徴とする抗体。
【請求項2】
診断における使用のための請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
請求項2に記載の抗体であって、前記抗体が使用される前記診断は、被験者の変形性関節症(osteoarthritis)、アテローム性動脈硬化症、神経変性疾患、または神経炎症性疾患の診断である、
ことを特徴とする抗体。
【請求項4】
請求項3に記載の抗体であって、前記抗体が使用される前記診断は、骨関節症(osteoarthrosis)の診断である、
ことを特徴とする抗体。
【請求項5】
請求項4に記載の抗体であって、前記骨関節症は、早期段階の変形性関節症である、
ことを特徴とする抗体。
【請求項6】
請求項3に記載の抗体であって、前記抗体が使用される前記診断は、アテローム性動脈硬化症の診断である、
ことを特徴とする抗体。
【請求項7】
請求項6に記載の抗体であって、前記アテローム性動脈硬化症は、頚動脈狭窄である、
ことを特徴とする抗体。
【請求項8】
請求項3に記載の抗体であって、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群から選択され、または、前記神経炎症性疾患は、多発性硬化症、パーキンソン病、ギランバレー症候群、重症筋無力症、視神経脊髄炎、自己免疫性脳炎、ナルコレプシーからなる群から選択される、
ことを特徴とする抗体。
【請求項9】
請求項3から8のいずれか1項に記載の抗体であって、前記抗体は、被験者からのサンプル中のN末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチドの量を検出するため使用される、
ことを特徴とする抗体。
【請求項10】
請求項9に記載の抗体であって、前記サンプルは、滑液、髄液、血清、血液、または血漿のサンプルである、
ことを特徴とする抗体。
【請求項11】
請求項1に記載の抗体の診断における使用。
【請求項12】
診断方法であって、
被験者からサンプルを分離し、
前記サンプル中の、N末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチドの存在または量を分析する、
ことを含むことを特徴とする診断方法。
【請求項13】
請求項1に記載の抗体を備えるキット。
【請求項14】
N末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチド。
【請求項15】
抗体を産生するためのN末端−SGPTHのアミノ酸配列を備えるペプチドの使用。
【国際調査報告】