特表2019-528710(P2019-528710A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニムの特許一覧

特表2019-528710エアロゾル発生システム、およびそれを制御する方法
<>
  • 特表2019528710-エアロゾル発生システム、およびそれを制御する方法 図000003
  • 特表2019528710-エアロゾル発生システム、およびそれを制御する方法 図000004
  • 特表2019528710-エアロゾル発生システム、およびそれを制御する方法 図000005
  • 特表2019528710-エアロゾル発生システム、およびそれを制御する方法 図000006
  • 特表2019528710-エアロゾル発生システム、およびそれを制御する方法 図000007
  • 特表2019528710-エアロゾル発生システム、およびそれを制御する方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-528710(P2019-528710A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(54)【発明の名称】エアロゾル発生システム、およびそれを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20190920BHJP
【FI】
   A24F47/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-513335(P2019-513335)
(86)(22)【出願日】2017年9月13日
(85)【翻訳文提出日】2019年3月8日
(86)【国際出願番号】EP2017073035
(87)【国際公開番号】WO2018050701
(87)【国際公開日】20180322
(31)【優先権主張番号】16188809.4
(32)【優先日】2016年9月14日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158551
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 貴明
(72)【発明者】
【氏名】クルバ ジェローム クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ オレク
(72)【発明者】
【氏名】ジノヴィク イハル ニコラエヴィチ
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA03
4B162AA05
4B162AA22
4B162AD06
4B162AD20
4B162AD23
4B162AD40
(57)【要約】
本発明は、エアロゾル発生システム(300)、およびそれを制御する方法に関する。エアロゾル発生システムは、エアロゾル発生物品(310)、発光材料、ヒーター(340)、およびエアロゾル発生装置(330)を備える。発光材料は温度依存性のリン光特性を示す。エアロゾル発生物品は、エアロゾル形成基体(314)を組み込む少なくとも一つの構成要素を含む。ヒーターは、発光材料と、エアロゾル形成基体を組み込む少なくとも一つの構成要素とを加熱するために配置・適合されている。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品を少なくとも部分的に受ける支持体(334)と、発光材料を照射し励起するための光源(343)と、発光材料の温度依存性のリン光特性を検出するための検出器(342)と、検出されたリン光特性に基づいてヒーターによる加熱を制御するように構成された電気ハードウェア(338)とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生システムであって、前記システムが、
エアロゾル形成基体を組み込む少なくとも一つの構成要素含むエアロゾル発生物品と、
温度依存性のリン光特性を有する発光材料と、
前記発光材料、および前記エアロゾル形成基体に組み込まれた前記少なくとも一つの構成要素を加熱するためのヒーターと、
エアロゾル発生装置であって、
前記エアロゾル発生物品を少なくとも部分的に受けるための支持体と、
前記発光材料を照射し励起するための光源と、
前記励起された発光材料の温度依存性のリン光特性を検出するための検出器と、
前記検出されたリン光特性に基づいて前記ヒーターによる加熱を制御するように構成された電気ハードウェアとを備える、エアロゾル発生システム。
【請求項2】
前記電気ハードウェアが、前記検出されたリン光特性および保存された基準リン光特性に基づいて加熱を制御するように構成されている、請求項1に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項3】
前記保存された基準リン光特性が前記エアロゾル形成基体と前記発光材料の間の温度差を考慮に入れる、請求項2に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項4】
前記保存された基準リン光特性が、前記検出されたリン光特性との比較のための少なくとも一つの閾値を含む、請求項2または3に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項5】
前記エアロゾル発生装置が、前記エアロゾル発生システムと併用可能な一式のエアロゾル発生物品からのそれぞれのエアロゾル発生物品について、個別の基準リン光特性を選択し適用するように適合されている、請求項2〜4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項6】
前記検出器が、前記発光材料の検出されたリン光特性に基づいて、前記エアロゾル発生システムと併用可能な一式のエアロゾル発生物品からの前記エアロゾル発生物品を識別するように適合されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項7】
前記発光材料が識別可能な分光学的特徴を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項8】
前記検出器が、前記発光材料の識別可能な分光学的特徴に基づいて、前記エアロゾル発生システムと併用可能な一式のエアロゾル発生物品から前記エアロゾル発生物品を識別するように適合されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項9】
前記エアロゾル発生装置が、エアロゾル発生物品が現時点で前記支持体によって受けられているかどうか、および受けられたエアロゾル発生物品が前記エアロゾル発生装置での使用に有効であるかどうかを、前記検出されたリン光特性に基づいて、好ましくは室温でチェックするように構成されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項10】
前記発光材料が前記エアロゾル発生物品に、または前記エアロゾル発生装置に組み込まれている、請求項1〜9のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項11】
前記光源が、前記発光材料を紫外光で照射・励起するように適合されているかどうか、または前記発光材料が励起されていて赤外光を放射するように適合されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項12】
エアロゾル形成基体を組み込む少なくとも一つの構成要素と、温度依存性のリン光特性を有するリン光性材料とを含むエアロゾル発生物品であって、前記エアロゾル発生物品が請求項1〜11のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システムで使用するために適合されている、エアロゾル発生物品。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システムを制御する方法であって、
前記エアロゾル発生システムの前記エアロゾル発生物品を前記エアロゾル発生システムの前記エアロゾル発生装置の前記支持体内に少なくとも部分的に受ける工程と、
前記受けられたエアロゾル発生物品の前記発光材料および前記エアロゾル形成基体を前記エアロゾル発生システムの前記ヒーターによって加熱する工程と、
前記エアロゾル発生装置の前記光源によって前記発光材料を照射し励起する工程と、
前記励起された発光材料の温度依存性のリン光特性を、前記エアロゾル発生装置の前記検出器によって検出する工程と、
前記エアロゾル発生装置の前記電気ハードウェアによって、前記検出されたリン光特性に基づいて、前記加熱を制御する工程とを含む、方法。
【請求項14】
前記検出する工程が、検出されたリン光特性に基づいて、または前記発光材料の識別可能な分光学的特徴に基づいて、前記エアロゾル発生システムで使用可能な一式のエアロゾル発生物品からの前記エアロゾル発生物品を識別する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記制御する工程が、前記エアロゾル形成基体と前記発光材料の間の温度差を考慮に入れることを含む、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアロゾル発生システム、およびエアロゾル発生システムを制御する方法に関する。特に本発明は、電気的に作動する喫煙システムなどの、手持ち式のエアロゾル発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のエアロゾル発生システムは、エアロゾル発生装置と、エアロゾル形成基体を組み込むエアロゾル発生物品とを備える。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品を受けるように、およびヒーターによってエアロゾル形成基体に熱を加えるように適合されている。エアロゾル形成基体を加熱することによって、例えばエアロゾル発生システムのユーザーによって吸入されうるエアロゾルが発生される。
【0003】
エアロゾル発生物品の部分、特にエアロゾル形成基体の望ましくない炭化、焦げ、燃焼は、望ましくない吸入成分の生成につながりうる。よって、エアロゾル形成基体の過熱が回避されなければならない。従って、加熱されたエアロゾル形成基体の正確な温度検出および温度制御が要求される。エアロゾル形成基体の温度の検出には、様々な技法が周知である。接触方式の技術は、電気抵抗などの温度センサーと物理的に接触しているエアロゾル形成基体の現在温度の検出に基づく。無接触方式の技術では、熱放射を検出するための赤外線検出器など、エアロゾル形成基体と物理的に接触しない温度センサーを採用する。接触方式の温度検出の精度は、温度センサーとエアロゾル形成基体の間の変動可能で予測不可能な接触状態に依存する。従って、無接触の温度検出は、交換可能なエアロゾル発生物品での使用が意図されるエアロゾル発生システムにとって都合が良い。ところが、無接触の温度検出の精度は、エアロゾル形成基体に対する放熱センサーの正確な位置合わせに依存する。放熱センサーがずれていると、例えば測定対象のエアロゾル形成基体の温度とは異なるヒーター表面温度が間違えて測定されると、精度は悪くなりうる。
【0004】
エアロゾル発生システム、および加熱されたエアロゾル形成基体の温度検出および温度制御の改善と信頼性を提供するエアロゾル発生システムを制御する方法が提供されることが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
これらの要望の少なくとも一つに対処するために、本発明の第一の態様によると、エアロゾル発生物品と、発光材料と、ヒーターと、エアロゾル発生装置とを備えるエアロゾル発生システムが提示されている。エアロゾル発生物品は、エアロゾル形成基体を組み込む少なくとも一つの構成要素を含む。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品を少なくとも部分的に受ける支持体を備える。支持体はくぼみとして構成されてもよい。エアロゾル発生システムのヒーターは、発光材料と、エアロゾル形成基体を組み込む少なくとも一つの構成要素とを加熱するように配置・適合されている。さらに、エアロゾル発生装置は、発光材料を照明し励起するための光源を備える。エアロゾル発生装置はまた、励起された発光材料の温度依存性のリン光特性を検出するための検出器を備える。その上、エアロゾル発生装置は、励起された発光材料の検出されたリン光特性に基づいて、ヒーターによる加熱を制御するように構成されている電気ハードウェアを備える。
【0006】
発光材料はエアロゾル発生物品の一部であってもよく、もしくは発光材料はエアロゾル発生装置の一部であってもよく、もしくは発光材料はエアロゾル発生システムの別個の構成要素であってもよい。ヒーターはエアロゾル発生物品の一部であってもよく、もしくはヒーターはエアロゾル発生装置の一部であってもよく、もしくはヒーターはエアロゾル発生システムの別個の構成要素であってもよい。ヒーターはエアロゾル発生装置の一部であること、および発光材料はエアロゾル発生物品の一部であること、もしくは発光材料はエアロゾル発生装置の一部であること、もしくは発光材料はエアロゾル発生システムの別個の構成要素であることが好ましい。
【0007】
エアロゾル形成基体および発光材料は、エアロゾル形成基体の現在温度が発光材料の温度から正確に導出できるように相互に配置されている。発光材料の温度は、その温度依存性のリン光特性を検出することによって決定される。この目的のために、発光材料はエアロゾル形成基体全体に、好ましくは均一に分散されうる。発光材料は追加的または代替的に、エアロゾル形成基体の外表面上に、または少なくとも一つの構成要素の外表面上に分散されうる。発光材料は、紙(ラッパー紙など)、フィルター、チッピングペーパー、たばこ、たばこラップ、コーティング、結合剤、定着剤、接着剤、インク、泡、中空アセテートチューブ、ラップ、およびラッカーを含むがこれに限定されない、エアロゾル発生物品の任意の成分に組み込まれうる。発光材料は、材料の製造中に追加することによって(例えば、乾燥前に紙スラリーまたは紙ペーストに追加することによって)、または少なくとも一つの構成要素に塗るまたは吹き付けることによって、少なくとも一つの構成要素に組み込まれうる。典型的に、発光材料は、ほんのわずかなナノグラム単位の量が成分中に組み込まれる。例えば、発光材料が表面に吹き付けられる場合、吹き付けられる溶液は、1ppm〜1000ppmの濃度の発光材料を組み込みうる。発光材料は、ヒーターの作動中にエアロゾル形成基体の最高温度が発生する場所に配置されることが好ましい。上述の通りに発光材料をエアロゾル発生物品に組み込む代わりに、または随意に、発光材料はエアロゾル発生装置内に配置されうる。
【0008】
発光材料は、エアロゾル形成基体または少なくとも一つの構成要素の製造中に分解しないように化学的に十分に安定していることが好ましい。こうして、発光材料は液体水に晒された時、水蒸気に晒された時、一般に使用されるその他の溶媒に晒された時、乾燥する時、材料が成分の形態に物理的に変形した時、温度の上昇に晒された時、および温度の低下に晒された時に、安定していることが好ましい。
【0009】
発光材料を組み込むエアロゾル発生物品の少なくとも一つの構成要素の材料は、材料の作製に使用されるスラリーに発光材料を成分として追加することによって製造されうる。その後、スラリーは(例えば成形によって)形成され、乾燥されて、紙またはラッパー材料などの材料を製造しうる。
【0010】
本明細書で発光材料に関連して使用される「ルミネッセンス」という用語は一般に、フォトルミネッセンスを意味する。フォトルミネッセンスは蛍光およびリン光を含む。照射および励起されている発光材料は、蛍光による光を放射する。励起された発光材料が励起後少なくとも10ナノ秒を超えて光を放射する場合、発光材料はリン光による光を放射する。
【0011】
本発明は、リン光性を有する発光材料の温度の検出に基づく。この発光材料は、励起波長を有する光によって照射されることによって励起可能である。励起に続いて、発光材料の照射または励起をしなくても、励起された発光材料は、一つ以上の放射波長を有する光を放射する、すなわち、そのリン光性によって残光を示す。放射光の放射波長(S)は、励起波長(S)よりも長くなる。発光材料のリン光性の性質、すなわちリン光特性は、発光材料の現在温度に依存する。温度依存性のリン光特性は、リン光性材料に固有の任意の温度依存性の性質に基づいて決定されうる。発光材料の温度依存性のリン光特性は、励起された発光材料によって放射された光の温度依存性強度に基づいて検出されてもよい。発光材料の温度依存性のリン光特性は、励起された発光材料の少なくとも二つの放射波長の温度依存性の強度比に基づいて検出されてもよい。発光材料の温度依存性のリン光特性は、放射光の温度依存性のスペクトルシフト、または放射光の温度依存性のスペクトル幅、またはそれらの組み合わせに基づいて検出されてもよい。温度依存性のリン光特性は、発光材料による励起波長(S)の温度依存性の吸収に基づいて検出されてもよい。温度依存性のリン光特性は、放射光が励起後に最大強度に達するまでの放射光の立ち上がり時間に基づいて検出されてもよい。温度依存性のリン光特性は、放射光の寿命または発光減衰率に基づいて検出されてもよい。
【0012】
発光減衰率は、時間経過に伴い、または残光の持続時間にわたり減少する放射光の輝度に基づいて検出されてもよい。発光材料の温度を上昇させる時、発光減衰率は増大し、すなわち放射光の輝度は時間経過に伴いより早く減少し、また残光の持続時間は短くなる。こうして、検出された発光減衰率は、発光材料の現在温度に対応する。発光減衰率は、いわゆる寿命に対する逆等価尺度であり、これは輝度がその元の値の1/e(e=オイラー数)に減少する時間である。温度依存性の発光減衰率を検出するには、例えば励起の終了後に所定期間が経過した後の輝度値を測定するなど、属性の単一の値を決定または測定することで十分でありうる。別の方法として、例えば放射光の輝度が所定の輝度値まで減少するまでの期間など、属性に関連した単一の値を決定または測定することで十分でありうる。単一の値は、励起の直後に発生する既知の輝度を模範的に表しうる属性の既知の値または期待される値に関するものでもよい。別の方法として、発光材料の現在温度を決定するために、複数の輝度値が測定されてもよい。
【0013】
エアロゾル発生システムの発光材料は、最高摂氏2000度の温度範囲内で検出器によって識別可能でありうる、温度依存性のリン光特性を有する。発光材料は、エアロゾル発生物品の推奨される低貯蔵温度から、ヒーターの意図される作動温度以上に至るまでの温度範囲内で少なくとも安定している。
【0014】
エアロゾル発生装置の光源は、発光材料を励起光で断続的に照射し励起するように構成されうる。別の方法として、光源は、可変強度の励起光で連続的に、または励起された発光材料によって放出された光の検出と同時に、発光材料を照射し励起するように構成されてもよい。励起光は、例えば長方形、正弦、三角形または鋸歯形状といった何らかの任意のパルス形状を有しうる。光源が発光材料を連続的にまたは同時に照射し励起する場合、励起光は、時間経過とともに変化する振幅を有するべきである。「連続的に」という用語は特に、発光材料の照射/励起、および放射光の検出を同時に行うことを意味する。よって、「連続的に」という用語は、例えばゼロの最小振幅を有する正弦波についてなど、照射光の強度が一時的にゼロになることを除外しない。こうした同時に起こる照明/励起および光の検出について、励起光と発光材料の放射光との間の温度依存性の位相の遅れは、温度依存性のリン光特性の検出について評価されることができる。
【0015】
光源が発光材料を連続的に照射し励起するように構成されている場合、エアロゾル発生装置の検出器は、干渉や雑音を回避するために、励起光に対して敏感であるべきではない。検出器は光センサーであり、励起された発光材料によって放出された光を受けるように適合されている。検出器は、励起された発光材料によって放出された光に対して敏感でなければならない。検出器は任意の標準的な光ダイオード(例えば、BPW34)を採用しうる。検出器の感度は摂氏2〜3度としうる。検出器は、発光材料の現在温度を反映する値、および発光材料の温度変化に従って変化する値を決定することができる。検出器は、エアロゾル発生物品について、無接点温度測定を可能にする。
【0016】
エアロゾル発生装置は電気ハードウェアをさらに備える。電気ハードウェアは、ヒーターによる加熱を制御するように適合されている。加熱は検出されたリン光特性に基づいて制御され、このリン光特性は検出器によって検出され、また発光材料の現在温度を表し、またエアロゾル形成基体の現在温度を示す。
【0017】
発光材料の温度依存性のリン光特性を評価することによってエアロゾル形成基体の温度を検出することは、エアロゾル発生システムのヒーターによって加熱されているエアロゾル形成基体の正確かつ信頼できる温度検出および温度制御を可能にする。
【0018】
電気ハードウェアは、検出されたリン光特性および保存された基準リン光特性に基づいて、加熱を制御するよう構成されていることが好ましい。基準リン光特性は、エアロゾル発生システム内に、好ましくはエアロゾル発生装置のメモリー内に保存される。基準リン光特性は、エアロゾル発生システム内のルックアップテーブルに保存されうる。基準リン光特性は、エアロゾル形成基体が、エアロゾルを発生するための適切な温度を有する時に、発光材料によって示される基準リン光性を表示しうる。電気ハードウェアは、検出されたリン光特性および基準リン光特性を処理するための電子的制御ユニットを備えうる。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品の加熱された構成要素(複数可)の温度を望ましい温度範囲に連続的に維持するための、連続的に検出されたリン光特性値に基づいて、ヒーターによる加熱を連続的に制御するように適合されていることが好ましい。
【0019】
エアロゾル発生システムは、電気エネルギーをエアロゾル発生システムの構成要素に供給するための、電池または蓄熱器などの電源を有する、電気的に作動するエアロゾル発生システムであることが好ましい。電源は、ヒーターによる加熱の制御を可能にするための電気ハードウェアに電力を供給しうる。その上、電源は、供給された電気エネルギーをヒーターが熱エネルギーに変換できるように、ヒーターに電力を提供しうる。
【0020】
エアロゾル発生物品は喫煙物品が好ましい。
【0021】
光源は、発光材料を励起するための紫外光を照射するように適合されることが好ましい。随意的または代替的に、光源は発光材料を励起させるための可視光を照射するように適合されうる。
【0022】
検出器は、励起された発光材料によって放出された光を検出するよう構成されている。発光材料は励起されていて不可視光を放射することが好ましい。不可視光は赤外光が好ましい。検出器は、励起された発光材料によって放射された赤外光を検出するように構成されていることが好ましい。
【0023】
エアロゾル発生物品は好ましくは、励起後に赤外光を放射する発光材料を備えうる。この発光材料は、エアロゾル形成基体内、例えば紙ラッパーによって囲まれたたばこ内に分散されていることが好ましい。たばこおよび紙は、低強度の赤外光に対してさえも少なくとも部分的に透明であるため、検出器は有利なことに、エアロゾル発生物品の外側に配置されうる。
【0024】
エアロゾル発生物品は好ましくは、励起後に可視光を放射する発光材料を含みうる この発光材料はエアロゾル発生物品の前面に堆積されうる。エアロゾル発生システムを使用するために、エアロゾル発生物品(例えば、たばこプラグ)の前面は、エアロゾル発生装置のくぼみ様の支持体内に挿入される。こうして、望ましくない光が検出器に到達するのを回避できる。エアロゾル発生物品の前面まで延びる誘導加熱のためのサセプタを組み込むエアロゾル発生物品については、サセプタ温度は非常に正確に検出されうる。前面にあるサセプタ端は、発光材料で覆われていることが好ましい。発光材料はまた、エアロゾル発生物品の一つ以上の側面に堆積されうる。エアロゾル発生物品の一つ以上の側面に隣接したエアロゾル発生装置内に、幾つかの光源および検出器が提供されてもよい。
【0025】
保存された基準リン光特性は、エアロゾル形成基体と発光材料の間の温度差を考慮に入れることが好ましい。こうして、発光材料はエアロゾル形成基体から離れて配置されうる。一般に生じる温度差は、実験室環境であらかじめ決定されてもよく、電気ハードウェアのルックアップテーブルに保存されてもよい。
【0026】
保存された基準リン光特性は、検出されたリン光特性との比較のために少なくとも一つの閾値を含む。検出されたリン光特性が、温度が高すぎることを示す単一の閾値を超える場合、加熱は停止される。検出されたリン光特性が、その単一の閾値を超えない場合、加熱は継続される。ヒーターのこの種類のデジタル制御には、ヒーターを少なくとも所定の期間にわたり起動または停止させる時間遅延要素が含まれることが好ましい。これによって、実施の低複雑性が達成される。複数の閾値を使用することは、ヒーターの加熱電力を徐々に調節し、そのためより正確な温度制御を可能にする。
【0027】
エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生システムで使用可能な一式のエアロゾル発生物品からのそれぞれのエアロゾル発生物品について、個別の基準リン光特性を選択し適用するように適合されることが好ましい。
【0028】
エアロゾル発生装置の検出器は、発光材料の検出されたリン光特性に基づいて、エアロゾル発生システムで使用可能な一式のエアロゾル発生物品からのエアロゾル発生物品を識別するように適合されていることが好ましい。
【0029】
発光材料は識別可能な分光学的特徴を有することが好ましい。分光学的特徴は、エアロゾル発生装置の検出器によって検出されてもよい。
【0030】
識別可能な分光学的特徴は、吸収において識別可能な分光学的特徴としうる。発光材料がエアロゾル発生装置の光源によって照らされる時、発光材料は特定の波長、または波長の組を吸収し、従ってその後で光センサーによって受信された光の波長は、エアロゾル発生装置が不在の波長に基づいて発光材料を決定することを可能にする。
【0031】
識別可能な分光学的特徴は、放射において識別可能な分光学的特徴としうる。放射における分光学的特徴は、発光材料が励起後にそのリン光性を示す時に識別されうる。放射における分光学的特徴はまた、励起中の発光材料の蛍光に基づいて識別されてもよい。
【0032】
エアロゾル発生装置の検出器は、発光材料の識別可能な分光学的特徴に基づいて、エアロゾル発生システムで使用可能な一式のエアロゾル発生物品からのエアロゾル発生物品を識別するように適合されていることが好ましい。分光学的特徴は、励起後に発光材料によって示される分光学的特徴、すなわちリン光、または励起中に発光材料によって示される分光学的特徴、すなわち蛍光の一つまたは両方でありうる。
【0033】
発光材料の吸収または放射における識別可能な分光学的特徴は、エアロゾル発生物品の種類またはエアロゾル形成基体の種類に関連付けられうる。識別された分光学的特徴に基づき、個別の基準リン光特性は、ヒーターによる加熱を制御するための一式の保存された基準リン光特性から選択されうる。
【0034】
発光材料は粉末の形態であることが好ましい。粉末は有利なことに、構成要素材料への組み込みを可能にする。
【0035】
発光材料は、希土、酸化アクチニド、セラミックのうち少なくとも一つから成ることが好ましい。希土類はランタニドが好ましい。さらに、Y3Al512:Dy(YAG:Dy)およびLa22S:Euのいずれも発光材料として使用されうる。その上、YAlO3:Ce(YAP)、ZnS:Ag、(Sr,Mg)2SiO4:Eu、CdWO4、ZnO:Zn、ZnO:Ga、Y22S:Sm、Mg4FGeO6:Mn、BaMg2Al1017:Eu(BAM)のうちいずれか一つが発光材料として使用されてもよい。
【0036】
エアロゾル発生装置は、検出されたリン光特性に基づき、発光材料を含むエアロゾル発生物品が現時点で支持によって受けられているかどうかをチェックするように構成されていることが好ましい。発光材料を含むエアロゾル発生物品がエアロゾル発生装置内に存在する場合、ヒーターを作動する前に、エアロゾル発生装置の室温または周囲温度で発光材料のリン光特性を評価できる。よって、エアロゾル発生システムは、エアロゾル発生物品内のエアロゾル発生物品の存在をチェックできる。エアロゾル発生物品の不在が検出された場合、電気ハードウェアは、エアロゾル発生装置の構成要素の考えられる燃焼を防止するためにヒーターによる加熱を阻害する。
【0037】
エアロゾル発生装置は、検出されたリン光特性に基づき、支持体によって現時点で受けられている発光材料を含むエアロゾル発生物品が、エアロゾル発生装置での使用に有効かどうかをチェックするように構成されていることが好ましい。発光材料のリン光特性は、エアロゾル発生装置の室温または周囲温度で評価できる。検出されたリン光特性が、要求されるまたは期待されるリン光特性から逸脱する場合、電気ハードウェアは、受けられたエアロゾル発生物品が使用に有効でないと決定し、エアロゾル発生システムのさらなる作動(特にヒーターによる加熱)を阻止する。これは偽造防止の一つの解決策を可能にする。
【0038】
エアロゾル発生システムのヒーターは、エアロゾル発生装置またはエアロゾル発生物品内に、またはエアロゾル発生装置およびエアロゾル発生物品の両方内に配置された一つ以上の構成要素を備えうる。
【0039】
エアロゾル発生物品の長さは、約30ミリメートル〜約120ミリメートル、例えば約45ミリメートルとしうる。エアロゾル発生物品の直径は、約4ミリメートル〜約15ミリメートル、例えば約7.2ミリメートルとしうる。エアロゾル形成基体の長さは、約3ミリメートル〜約30ミリメートルとしうる。
【0040】
エアロゾル形成基体は好ましくは、固体のエアロゾル形成基体でありうる。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放射される揮発性のたばこ風味化合物を含む、たばこ含有材料を含むことが好ましい。別の方法として、エアロゾル形成基体は、第EP−A−1 750 788号および第EP−A−1 439 876号の装置で使用されているものなど、非たばこ材料を含みうる。エアロゾル形成基体はエアロゾル形成体をさらに含むことが好ましい。適切なエアロゾル形成体の例は、グリセリンおよびプロピレングリコールである。潜在的に適切なエアロゾル形成体の追加的な例が、第EP−A−0 277 519号および第US−A−5 396 911号に説明されている。エアロゾル形成基体は固体基体であってもよい。固体基体は、例えば薬草の葉、たばこ葉、たばこの茎の破片、再構成たばこ、均質化したたばこ、押出成形たばこおよび膨化たばこのうちの一つ以上を含む、粉末、顆粒、ペレット、断片、スパゲッティ、細片またはシートのうちの一つ以上を含みうる。随意に、固体基体は、基体の加熱に伴い放射される追加的なたばこまたは非たばこ揮発性風味化合物を含みうる。
【0041】
随意に、固体基体は、熱的に安定な担体の上に提供されてもまたはその中に包埋されてもよい。担体は、粉末、顆粒、ペレット、断片、スパゲッティ、細片またはシートなどの形態を取ってもよい。別の方法として、担体は、その内表面上(第US−A−5 505 214号、第US−A−5 591 368号および第US−A−5 388 594号に開示されているものなど)に、またはその外側表面上に、またはその内表面および外表面の両方に堆積された固体基体の薄い層を有する管状の担体としうる。こうした管状の担体は、例えば紙、または紙様の材料、不織布炭素繊維マット、低質量の目の粗いメッシュ金属スクリーン、または穿孔された金属箔、またはその他の任意の熱的に安定した高分子マトリクスで形成されてもよい。固体基体は、例えばシート、泡、ゲルまたはスラリーの形態で担体の表面上に堆積されてもよい。固体基体は、担体の全表面上に堆積されてもよく、または別の方法として、使用中に均一でない風味送達を提供するために一定のパターンで堆積されてもよい。別の方法として、担体は、第EP−A−0 857 431号に説明されているものなど、たばこ成分が組み込まれた不織布繊維または繊維の束としうる。不織布繊維または繊維の束は、例えば炭素繊維、天然セルロース繊維、またはセルロース誘導体繊維を含みうる。
【0042】
エアロゾル形成基体は好ましくは、液体エアロゾル形成基体でありうる。エアロゾル形成基体は液体基体でもよく、またエアロゾル発生物品は液体基体を保持するための手段を備えうる。例えば、エアロゾル発生物品は、第EP−A−0 893 071号で説明されているものなど、容器を含みうる。別の方法としてまたは追加的に、第WO−A−2007/024130号、第WO−A−2007/066374号、第EP−A−1 736 062号、第WO−A−2007/131449号および第WO−A−2007/131450号で説明されている通り、エアロゾル発生物品は多孔性担体材料を含むことができ、その中に液体基体が吸収されうる。エアロゾル形成基体は別の方法として、その他の任意の種類の基体(例えば、ガス基体)、または様々な基体タイプの任意の組み合わせとしうる。発光材料は、例えば液体基体を保持するための容器を形成する材料内に液体基体を保持するための手段に組み込まれうる。別の方法としてまたは追加的に、存在する場合には、発光材料は多孔性担体材料内に組み込まれうる。
【0043】
エアロゾル発生物品は好ましくは、熱スティックとして構成されうる。熱スティックは、エアロゾル形成基体で充填される中空のラッパーを含む。ラッパーは管状であってもよい。誘導加熱のために、金属ブレードまたはシートが熱スティック内にサセプタとして含まれうる。サセプタはエアロゾル形成基体(例えば、たばこ)によって囲まれ、熱スティックの一方の端面で見ることができることが好ましい。サセプタは少なくとも、(エアロゾル発生装置によって受けられていない時に)見えるその端で、発光材料で被覆、噴霧または堆積されていることが好ましい。
【0044】
エアロゾル発生システムのヒーターは、誘導ヒーターとして構成されうる。誘導ヒーターは誘導発熱体およびサセプタを備えうる。誘導発熱体は、サセプタへの物理的接触なしに提供されることが好ましい。誘導発熱体は、時間的に変化する電磁場を放射するように適合されている。誘導発熱体は、エアロゾル発生装置の一部であることが好ましい。サセプタは、エアロゾル発生物品の一部であることが好ましい。サセプタは、少なくとも一つの金属ブレードまたはシートとして、エアロゾル形成基体によって少なくとも部分的に囲まれるように構成されてもよい。誘導発熱体は、変化する電磁場、例えば高周波またはマイクロ波の放射をサセプタに印加するように配置・適合されている。サセプタは、誘導発熱体から電磁場の電磁エネルギーの少なくとも一部を吸収し、その電磁エネルギーを熱エネルギーに変換するように適合されている。よって、サセプタは、誘導発熱体から電磁エネルギーを受けることによって加熱されていて、また加熱されたサセプタは、熱伝導によってエアロゾル形成基体および発光材料を加熱する。
【0045】
ヒーターは単一の赤外線発熱体を備えうる。
【0046】
ヒーターは抵抗発熱体を備えうる。抵抗発熱体はメッシュ発熱体として構成されてもよい。メッシュ発熱体は複数のワイヤーを備え、これは抵抗性の繊維などの単一タイプの繊維で作製されることができ、また毛細管作用のある繊維と導電性の繊維を含む複数のタイプの繊維で作製されることができる。メッシュ発熱体は、複数の導電性フィラメントを備えることが好ましい。複数の導電性フィラメントは、メッシュ発熱体のメッシュを構成する。メッシュは複数の導電性フィラメントに電力を加えることによって加熱される。導電性フィラメントは任意の適切な導電性材料を含んでもよい。
【0047】
ヒーターは、燃料ガスで駆動される発熱体を含みうる。発熱体への燃料ガスの供給は、電気ハードウェアによって調節されうる。
【0048】
少なくとも一つの発熱体は、単一の発熱体を備えうる。別の方法として、少なくとも一つの発熱体は一つ以上の発熱体を備えうる。発熱体(単一または複数)は、エアロゾル発生物品内のエアロゾル形成基体を最も効果的に加熱するように適切に配置されうる。
【0049】
少なくとも一つの発熱体は、電気抵抗性の材料を含むことが好ましい。適切な電気抵抗性の材料には例えば、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金、およびセラミック材料製・金属材料製の複合材料が挙げられるが、これに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含んでもよい。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープ炭化ケイ素が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル、および白金族の金属が挙げられる。適切な合金の例には、ステンレス鋼、ニッケル含有、コバルト含有、クロミウム含有、アルミニウム含有、チタン含有、ジルコニウム含有、ハフニウム含有、ニオビウム含有、モリブデン含有、タンタル含有、タングステン含有、スズ含有、ガリウム含有、マンガン含有、および鉄含有の合金、ならびにニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼系の超合金、Timetal(登録商標)、ならびに鉄系、マンガン系、アルミニウム系の合金が挙げられる。複合材料では、電気抵抗性の材料は、必要とされるエネルギー伝達の動態学および外部の物理化学的性質に応じて、随意に断熱材料に包埋、封入、または断熱材料で被覆されてもよく、もしくはその逆であってもよい。適切な化合物発熱体の例は、第US−A−5 498 855号、第WO−A−03/095688号および第US−A−5 514 630号に開示されている。
【0050】
少なくとも一つの発熱体は、赤外線発熱体、フォトニック供給源(例えば第US−A−5 934 289号に説明されているものなど)、または誘導加熱発熱体(例えば、第US−A−5 613 505号に説明されているものなど)を含みうる。
【0051】
少なくとも一つの発熱体は任意の適切な形態を取る場合がある。例えば、少なくとも一つの発熱体は、第US−A−5 388 594号、第US−A−5 591 368号および第US−A−5 505 214号に説明されているものなどの、加熱用ブレードの形態を取りうる。別の方法として、少なくとも一つの発熱体は、第EP A−1 128 741号に説明されている通り、異なる導電性部分、または第WO−A−2007/066374号に説明されている通り、電気抵抗性の金属チューブを有するケーシングまたは基体の形態を取ってもよい。別の方法として、第KR−A−100636287号および第JP−A−2006320286号に説明されている通り、エアロゾル形成基体の中心を貫通する一つ以上の加熱用の針または棒も適切である場合がある。別の方法として、少なくとも一つの発熱体は、ディスク型の(末端の)ヒーターまたはディスク型のヒーターと加熱用の針または棒とを組み合わせたものであってもよい。その他の代替物としては、第EP−A−1 736 065号に説明されているものなど、加熱用ワイヤーまたはフィラメント、例えばニッケルクロム(Ni−Cr)、プラチナ、タングステンまたは合金製のワイヤー、または加熱プレートが挙げられる。
【0052】
少なくとも一つの発熱体は伝導によってエアロゾル形成基体を加熱する場合がある。発熱体は基体と、または基体が堆積されている担体と、少なくとも部分的に接触してもよい。別の方法として、発熱体からの熱は熱伝導性要素の手段によって基体に伝導される場合がある。別の方法として、少なくとも一つの発熱体は、使用中に電気的に作動するエアロゾル発生システムを通して引き出された、入ってくる周囲空気に熱を伝達する場合があり、これが次に対流によってエアロゾル形成基体を加熱する。周囲空気は、第WO−A−2007/066374号に説明されている通り、エアロゾル形成基体を通過する前に加熱される場合がある。
【0053】
エアロゾル発生装置は、ユーザーが単一の手の指の間に持ちやすい、手持ち式のエアロゾル発生装置であることが好ましい。エアロゾル発生装置は、形状において実質的に円柱状でもよい。電気加熱式の喫煙システムは再使用可能であることが好ましい。各エアロゾル発生物品は使い捨てであることが好ましい。
【0054】
作動中、エアロゾル発生物品、およびそのエアロゾル形成基体は、くぼみ内に完全に受けられて、こうして電気的に作動するエアロゾル発生システム内に完全に含まれうる。その場合、ユーザーは、電気的に作動するエアロゾル発生システムのマウスピースで吸煙しうる。別の方法として、作動中にエアロゾル発生物品は、エアロゾル形成基体が電気的に作動するエアロゾル発生システム内に完全にまたは部分的に含まれるように、くぼみ内に部分的に受けられてもよい。その場合、ユーザーは物品を直接吸煙するか、または電気的に作動するエアロゾル発生システムのマウスピースで吸煙しうる。
【0055】
検出器がくぼみ内のエアロゾル発生物品を検出した時、電気的に作動するエアロゾル発生システムは起動するように配置されていることが好ましい。システムは、電気ハードウェアが電源と少なくとも一つの発熱体を接続する時に起動されうる。別の方法として、または追加的に、システムは、システムがスタンバイモードからアクティブモードに切り換わった時に起動されてもよい。別の方法として、または追加的に、エアロゾル発生物品がくぼみ内で検出された時にのみ少なくとも一つの発熱体が加熱されるように、システムはさらにスイッチを備えてもよく、またスイッチがオンになった時に起動されてもよい。システムを起動する工程は追加的に、または別の方法として、その他の工程を含みうる。
【0056】
電気ハードウェアは、ヒーターの作動を制御するためのプログラム可能なコントローラ、例えばマイクロコントローラを含むことが好ましい。一つの実施形態において、コントローラはソフトウェアによってプログラム可能でありうる。別の方法として、コントローラは、特定用途向け集積回路(ASIC)などの特定用途のハードウェアを含むことができ、これは特定用途のハードウェア内にある論理ブロックをカスタム化することによってプログラム可能でありうる。電気ハードウェアはプロセッサを含むことが好ましい。追加的に、電気ハードウェアは、特定の物品の加熱設定、ユーザーの嗜好、ユーザーの喫煙習慣またはその他の情報を格納するためのメモリーを備えうる。格納された情報は、喫煙システムで使用可能な特定の物品に応じて更新および置き換え可能であることが好ましい。また、情報はシステムからダウンロードされうる。
【0057】
一つの例示的な実施形態において、電気ハードウェアは、ユーザーが吸煙していることを示す空気の流れを検出するセンサーを備える。センサーはサーミスタを備えうる。センサーは電気機械装置であってもよい。別の方法として、センサーは、機械式装置、光学式装置、光学機械式装置および微小電気機械システム(MEMS)ベースのセンサーのうちのいずれであってもよい。その場合、電気ハードウェアは、ユーザーが吸煙をしていることをセンサーが感知した時に、少なくとも一つの発熱体に電流パルスを供給するように配置されうる。代替的な実施形態において、システムは、ユーザーが吸煙を開始するための手動操作可能なスイッチをさらに含む。
【0058】
電気ハードウェアは、検出器によって識別された特定の物品に基づき、少なくとも一つの発熱体のための加熱手順を確立するように配置されていることが好ましい。
【0059】
加熱手順は、発熱体の最高作動温度、吸煙一回当たりの最長加熱時間、吸煙と吸煙の間の最短時間、物品一つ当たりの最高吸煙回数、および物品の最長合計加熱時間のうちの一つ以上を含みうる。特定の物品でのエアロゾル形成基体では、特定の加熱条件で改善されたユーザー体験が要求される(またはそれを提供する)場合があるため、特定の物品に合わせた加熱手順を確立することは有利である。既に言及した通り、電気ハードウェアはプログラム可能であることが好ましく、その場合に様々な加熱手順が格納および更新されうる。
【0060】
本発明の第二の態様によると、エアロゾル形成基体を組み込む少なくとも一つの構成要素および温度依存性のリン光特性を有する発光材料を含むエアロゾル発生物品が提供されている。エアロゾル発生物品は、本発明の第一の態様によるエアロゾル発生システムで使用するために適合されている。
【0061】
本発明の第三の態様によると、本発明の第一の態様によるエアロゾル発生システムを操作および制御するための方法が提供されている。方法は、エアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品をエアロゾル発生システムのエアロゾル発生装置の支持体内に少なくとも部分的に受ける工程と、受けられたエアロゾル発生物品の発光材料およびエアロゾル形成基体をエアロゾル発生システムのヒーターによって加熱する工程と、エアロゾル発生装置の光源によって発光材料を照射し励起する工程と、励起された発光材料によって放出された光を検出することによって、励起された発光材料の温度依存性のリン光特性を(エアロゾル発生装置の検出器によって)検出する工程と、エアロゾル発生装置の電気ハードウェアによって、検出されたリン光特性に基づいて、加熱を制御する工程とを含む。
【0062】
検出する工程は、発光材料の検出されたリン光特性に基づいて、エアロゾル発生システムで使用可能な一式のエアロゾル発生物品からのエアロゾル発生物品を識別する工程を含むことが好ましい。
【0063】
検出する工程は、発光材料の識別可能な分光学的特徴に基づいて、エアロゾル発生システムで使用可能な一式のエアロゾル発生物品からのエアロゾル発生物品を識別する工程を含むことが好ましい。
【0064】
制御する工程は、エアロゾル形成基体と発光材料の間の温度差を考慮する工程を含むことが好ましい。
【0065】
方法は、エアロゾル発生物品が現時点で支持体によって受けられているかどうか、および受けられたエアロゾル発生物品がエアロゾル発生装置での使用に有効であるかどうかを、検出されたリン光特性に基づいて、好ましくは室温でチェックする工程をさらに含むことが好ましい。
【0066】
本発明の一態様の任意の特徴は、任意の適切な組み合わせで本発明のその他の態様にも適用されてもよい。特に、方法の態様は装置の態様に適用されてもよく、その逆もまた可能である。その上、一つの態様における任意の、または一部の、またはすべての特徴は、任意の適切な組み合わせにおいて、任意のその他の態様の任意の、または一部の、またはすべての特徴に適用されうる。
【0067】
当然ながら、本発明のいずれかの態様において説明および定義された様々な特徴の特定の組み合わせを独立して実施または供給または使用することができる。
【0068】
本発明を、添付図面を参照しながら、例証としてのみであるがさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1は、本発明によるエアロゾル発生物品を示す。
図2図2は、本発明によるエアロゾル発生システムを示す。
図3図3は、本発明による代替的なエアロゾル発生システムの概略図を示す。
図4図4は、本発明によるさらなる代替的なエアロゾル発生システムの概略図を示す。
図5図5は、励起後の時間経過に伴う発光材料の温度依存性ルミネッセンス減衰の曲線を示し、および発光減衰率の観点からのリン光特性を検出するための実施、および基準ルミネッセンス減衰特性の観点からの基準リン光特性に基づく加熱を制御するための実施を図示したものである。
図6図6は、正弦パルス形状の励起光で発光材料を照射・励起する場合における、温度依存性リン光特性の検出に基づく位相のずれを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、エアロゾル発生物品100を示す。物品100は、エアロゾル形成基体102、中空管状の移動要素104、マウスピース106、および外側ラッパー108を備える。外側ラッパー108は、励起後に光を放射する発光材料(点線で表示)を含む。発光材料は材料の製造中にラッパーに組み込まれる。
【0071】
この例においてラッパー材料は、スラリーが紙へと形成され乾燥される前に、発光材料を粉末の形態でラッパー紙材料スラリーに組み込むことによって製造される。別の方法として、発光材料は、吹き付け、印刷、塗布またはこれに類する方法によって、溶液中のラッパー材料に適用されうる。
【0072】
以下に説明する通り、電気的に作動するエアロゾル発生装置で使用するエアロゾル発生物品は、発光材料をラッパー内に組み込む。発光材料は識別可能な分光学的特徴を有する。
【0073】
ラッパー材料内に組み込まれた発光材料の使用は、エアロゾル発生基体の温度の無接触検出を可能にする。
【0074】
図2は、本発明による電気的に作動するエアロゾル発生システム200の模範的な一つの実施形態の斜視図を示す。電気的に作動するエアロゾル発生システム200は、前方ハウジング部分204および後方ハウジング部分206を有するハウジング202を備える喫煙システムである。前方ハウジング部分204は、喫煙物品などのエアロゾル発生物品を受ける能力のあるくぼみ様の支持体210を有する前方端部分208を含む。図2では、喫煙システム200は、紙巻たばこ100の形態の喫煙物品とともに示されている。この実施形態において、前方ハウジング部分204はまた、ディスプレイ212を含む。ディスプレイ212は詳細には図示されていないが、任意の適切なディスプレイ形態、例えば液晶表示ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイまたはプラズマ表示ディスプレイパネルを含みうる。さらに、ディスプレイは、任意の必要な情報、例えば喫煙物品またはクリーニング用物品に関連する情報を表示するように配置されうる。
【0075】
電気加熱式の喫煙システム200はまた、支持体210内またはそれに隣接して位置付けられた検出器(図2に図示せず)を含む。光源および検出器を備える検出ユニットは、支持体内のエアロゾル発生物品100の存在を検出可能であり、また温度依存性のリン光特性をエアロゾル発生物品100内に組み込まれた発光材料の発光減衰率として検出することが可能である。検出器は、室温でエアロゾル発生物品100内に含まれる発光材料のリン光特性を検出することによって、支持体内のエアロゾル発生物品100の存在を検出するように適合されている。発光材料を照射し励起するための光源が提供されている。検出器は、励起後に発光材料によって放射される光を受信・測定するための光センサーである。
【0076】
図3は、本発明によるエアロゾル発生システム300のさらなる例示的な実施形態の概略図を示す。エアロゾル発生システムは、エアロゾル発生装置310およびエアロゾル発生物品330を備える。エアロゾル発生システム300を作動させるために、エアロゾル発生物品310は、エアロゾル発生装置330のくぼみによって受けられる必要がある。エアロゾル発生物品310の一方の端の前面312はまず、くぼみに挿入される。エアロゾル発生物品310の他方の端は、マウスピース320として構成されている。
【0077】
エアロゾル発生システム300は、誘導ヒーターとして構成されている。誘導ヒーターは、相互に離れて配置された誘導発熱体340およびサセプタ316を備える。誘導発熱体340は、エアロゾル発生装置330の一部として提供されている。サセプタ316は、エアロゾル発生物品310の一部として提供されている。誘導発熱体340は、時間的に変化する電磁場をサセプタ316に適用するように適合されている。サセプタ316は、誘導発熱体340によって放射された電磁場に露出されることによって加熱されるように適合されている。
【0078】
エアロゾル発生物品310は、図1に示すエアロゾル発生物品100と同様に、エアロゾル形成基体314(例えば、たばこ)、中空の管状移動要素318、マウスピース320、および外側ラッパー322を備える。外側ラッパー322は、励起後に光を放射する発光材料(点線で表示)を含む。発光材料は、材料の製造中にラッパー322に組み込まれる。上述の通り、エアロゾル発生物品310はサセプタ316を備える。サセプタ316は、エアロゾル形成基体314によって囲まれた金属ブレードまたは金属シートとして構成されている。サセプタ316は、エアロゾル形成基体314によって少なくとも部分的に囲まれている。エアロゾル形成基体314および外側ラッパー322の発光材料は、熱伝導によるサセプタ316からの熱エネルギーを受け取るように配置されている。
【0079】
エアロゾル発生装置330は、エアロゾル発生物品310を受けるための、くぼみとして構成された、支持体を備える。エアロゾル発生装置330のくぼみは、エアロゾル発生装置330のハウジング332の開口部334を通してアクセス可能であり、エアロゾル発生物品310を保持するように構成されている。
【0080】
その上、エアロゾル発生装置330は、電源336(例えば、電池)、制御回路338として構成された電気ハードウェア、誘導発熱体340、および検出ユニット342を備える。電源336は、電気エネルギーを電力ライン337経由で制御回路338に供給するように適合されている。制御回路338は、誘導発熱体340の加熱作動を制御するために、ライン339を経由する誘導発熱体340への電気エネルギー供給を制御するように適合されている。誘導発熱体340は、電磁放射エネルギーが誘導発熱体340からサセプタ316に、それらの間の物理的接触なしに伝達されることができるように、エアロゾル発生物品310に隣接して配置されている。エアロゾル形成基体が、望ましい温度範囲内の温度に加熱される時、エアロゾルはマウスピース320を吸うユーザーに提供される。
【0081】
検出ユニット342は、光源343および光センサー344を備える。光源343は、光をラッパー322上に照射し、それによってラッパー322内に組み込まれた発光材料を励起するように適合されている。光センサー344は、ラッパー322内に組み込まれた励起された発光材料によって放出された光を検出するように適合されている。この実施形態において、光源343および光センサー344は交互に作動されうる。一つの実施形態において、ラッパー322内に組み込まれた発光材料は、励起後に赤外光を放射するように適合されている。光センサー344は、発光材料によって放射される赤外光を検出するように適合されている。別の実施形態において、ラッパー322に組み込まれた発光材料は、励起後に可視光を放射するように適合されている。光センサー344は、発光材料によって放射される可視光を検出するように適合されている。
【0082】
光センサー344の検出結果は、接続ライン341を経由して制御回路338に報告される。制御回路338は、光源343および光センサー344の作動を計画しうる。制御回路338は、制御回路338内に保存された基準リン光特性(すなわち基準ルミネッセンス減衰特性)に基づく検出結果からエアロゾル形成基体314の現在温度に関する情報を導出するように適合されている。励起された発光材料から放射された光に基づいてエアロゾル形成基体314の現在温度を導出するために、制御回路はエアロゾル形成基体314の現在温度と、ラッパー322に組み込まれた発光材料の現在温度との間のシステム固有の差異を考慮することができる。
【0083】
図4はエアロゾル発生システム400の略図を示す。図4に示すシステムは、図3に示すものと類似している。従って、図3および図4にある同じ参照符号は、同一または類似した構成要素を示す。エアロゾル発生システム400は、主に発光材料および検出ユニットの配置位置について、エアロゾル発生システム300と異なる。エアロゾル発生システム400において、発光材料はラッパー422(図3のラッパー322と比較して)内に必ずしも組み込まれない。エアロゾル発生システム400において、発光材料はサセプタ316の上に被覆、噴霧または堆積されている。サセプタ316は、エアロゾル発生物品410の前面312まで延びる。エアロゾル発生物品410がエアロゾル発生装置430によって受けられていない時、前面312にあるサセプタ316の端417は見える。エアロゾル発生システム400の検出ユニット342は、エアロゾル発生システム300の一つと同一である。ところが、エアロゾル発生システム400の検出ユニット342は、エアロゾル発生物品410の前面312に面して配置されている。この取り付け位置において、検出ユニット342の光源343は、サセプタ316の端417を照射し、それによってサセプタ316の端417に堆積された発光材料を励起するように適合されている。検出ユニット342の検出器344は、端417で励起された発光材料から放射される光を検出する。発光材料は励起後に可視光を放射することが好ましい。
【0084】
図5は、励起後の時間経過に伴う発光材料の温度依存性ルミネッセンス減衰の曲線を示し、および発光減衰率の観点からのリン光特性を検出するための実施、および基準ルミネッセンス減衰特性の観点からの基準リン光特性に基づく加熱を制御するための実施を図示したものである。曲線C1、CdおよびC2は、励起が時間t=0で止まった後での時間tにわたる同一の発光材料の温度依存性のルミネッセンス減衰の曲線(各曲線は個別の一定温度での減衰を表す)である。すべての曲線は、幾何学級数的なルミネッセンス減衰を表し、ここで時間t=0で励起が終了後、発光材料から放射される光の電流強度I(t)は、式I(t)=I0・exp(−t/タウ)に従い、式中タウは放射光の輝度がその元の値I0の1/eに減少するのに必要な温度依存性の時間である。曲線C1は、最も遅いルミネッセンス減衰を表し、低い温度でのルミネッセンス減衰を意味する。曲線C2は、最も速いルミネッセンス減衰を表し、高い温度でのルミネッセンス減衰を意味する。曲線Cdは、中程度のルミネッセンス減衰を表し、中程度の温度でのルミネッセンス減衰を意味する。
【0085】
提示されたエアロゾル発生システムがエアロゾル形成基体の温度を適切な温度範囲内に維持する場合、C1およびC2は、基準ルミネッセンス減衰特性、すなわち基準リン光特性を、ヒーターによる加熱を制御するための基礎としてセットアップしうる。この場合において、曲線C1は望ましい最低温度に関連付けられ、曲線C2は望ましい最高温度に関連付けられる。こうした基準ルミネッセンス減衰特性は、単純な閾値に基づく実施を可能にする。閾値は以下の通り、最小温度曲線C1および最大温度曲線C2から導出される。曲線C1およびC2は、校正環境に入る前に決定されており、エアロゾル形成基体の温度と発光材料の温度の間のシステム固有の差異を考慮に入れてもよい。
【0086】
一つの代替物によると、検出器は、励起の終了(t=0)から所定の時間tsが経過した後、励起された発光材料によって放出された光の強度Idを測定しうる。現在温度は、測定された強度IdがI1=C1(ts)(すなわちC1による時間tsに対応する強度)よりも低い場合、およびI2=C2(ts)(すなわちC2による時間tsに対応する強度)より高い場合に、適切な温度範囲内にある。閾値I1およびI2は、あらかじめ電気ハードウェア内に保存されていたものである。
【0087】
別の代替物によると、検出器は、I0から所定の強度Isまでの強度減衰に対応する時間tdを測定しうる。現在温度は、測定された時間tdがt1=C1(Is)(すなわちC1による強度Isに対応する強度)よりも低い場合、およびt2=C2(Is)(すなわちC2による強度Isに対応する強度)より高い場合に、適切な温度範囲内にある。閾値t1およびt2は、あらかじめ電気ハードウェア内に保存されていたものである。
【0088】
測定された強度Idまたは測定された時間tdが、それぞれ対応する値I2およびt2よりも低い場合、電気ハードウェアはヒーターによる加熱を中断する。測定された強度Idまたは測定された時間tdが、それぞれ対応する値I1およびt1を越える場合、電気ハードウェアはヒーターによる加熱を起動(再起動)する。
【0089】
上述の強度Idまたは時間tdの測定は、ルミネッセンス減衰率の観点からの温度依存性のリン光特性の検出に対応する。
【0090】
所定の時間tdまたは所定の強度Idに達するための時間は、10ナノ秒〜10ミリ秒の範囲内であることが好ましい。図5の数および比率は、例証のみを目的としており、本発明の範囲を限定するものとして解釈されないものとすることに注意願いたい。
【0091】
図6は、正弦形状の連続的励起光での発光材料の照射・励起の場合における、温度依存性リン光特性の検出を図示する。温度依存性のリン光特性のこの種の検出は、変動する強度の励起光で発光材料を連続的に照射し励起するように構成された光源を有するエアロゾル発生システム300および400(それぞれ図3および4に示す)の実施形態で使用されうる。曲線600は、時間経過に伴う、上述の実施形態の一つによるエアロゾル発生装置の光源からの励起光の連続的に変化する強度を図示する。曲線601および602は、発光材料の異なる温度について、曲線600による光によって励起された発光材料から放射された光のそれぞれの強度を示す。曲線601および602のうちどちらか一方でによって図示されている通り、発光材料によって放射された光の強度は、発光材料を曲線600による正弦波形で照射するのと同時に検出できる。曲線601は、曲線602と比較して、より高い温度を有する発光材料のリン光特性を表す。発光材料の温度は、正弦励起光の曲線600と、励起された発光材料によって放出された光の曲線601、602のどちらかとの間の位相のずれの決定に基づいて検出できる。位相のずれはリン光の寿命に対応する。同一の発光材料について、小さな位相のずれは発光材料の高い温度に対応し、大きな位相のずれは発光材料の低い温度に対応する。
【0092】
上述の例示的な実施形態は例証するが限定はしない。上記で考察した例示的な実施形態に照らすことによって、上記の例示的な実施形態と一貫したその他の実施形態も当業者に明らかとなろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】