(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
植物細胞のゲノムを所定の部位で、ヌクレオチド誘導型DNA改変性ポリペプチド、例えば、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ、ガイドポリヌクレオチド、及びDNA切断を修復するための供与体分子を使用して、標的化様式で改変する改善された方法及び手段が提供される。
前記エンドヌクレアーゼをコードする前記キメラ遺伝子、前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする前記少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び前記少なくとも1つの供与体ポリヌクレオチドが1つのT-DNAベクター上に位置する、請求項1又は2に記載の方法。
前記エンドヌクレアーゼをコードする前記キメラ遺伝子、前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする前記少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び前記少なくとも1つの供与体ポリヌクレオチドが、1つのT-DNA分子上に(1組のT-DNA境界間に)位置する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする前記キメラ遺伝子が、2つ以上のガイドポリヌクレオチド配列をコードする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
前記RGENをコードする前記キメラ遺伝子が、配列番号5のヌクレオチド28からヌクレオチド4164までのヌクレオチド配列を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
前記改変により前記植物細胞に付与された前記選択可能な表現型が、前記改変を含む植物細胞を直接選択するために使用できる、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
前記選択マーカー遺伝子により前記植物細胞に付与された選択可能な表現型が、前記改変を含む植物細胞を選択するために使用できる、請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法。
前記供与体DNA分子が、目的のDNA分子に隣接する1つ又は2つの隣接するヌクレオチド配列を含み、前記隣接するヌクレオチド配列(複数可)が、前記予め選択された部位の上流及び/又は下流のゲノムDNAと十分な相同性を有し、前記上流及び/又は下流のDNA領域との組換えを可能にする、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
前記目的のポリヌクレオチドが目的の1つ以上の発現可能な遺伝子を含み、前記目的の発現可能な遺伝子が、除草剤耐性遺伝子、昆虫抵抗性遺伝子、疾患抵抗性遺伝子、非生物的ストレス抵抗性遺伝子、油生合成、炭水化物生合成に関与する酵素、繊維強度又は繊維長さに関与する酵素、二次代謝物の生合成に関与する酵素からなる群から、任意選択で選択される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
前記改変を含むが、前記RGENをコードする前記キメラ遺伝子、前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする前記少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び前記選択マーカー遺伝子は含まない子孫植物を選択するさらなるステップを含む、請求項22又は23に記載の方法。
請求項1〜21のいずれか一項に記載の、RGENをコードするキメラ遺伝子、少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び少なくとも1つの供与体ポリヌクレオチドを含む細菌であって、前記細菌は前記RGENをコードする前記キメラ遺伝子、前記ガイドポリヌクレオチドをコードする前記キメラ遺伝子、及び前記供与体ポリヌクレオチドを、植物細胞(の核ゲノム)に移入又は導入することができ、前記RGEN及び前記ガイドポリヌクレオチドは、前記植物細胞中で発現したときに、RGENがDNA切断を植物細胞の(核)ゲノム中の予め選択された部位に導入することを可能にする複合体を形成することができ、前記供与体ポリヌクレオチドは前記DNA切断の修復のための鋳型として使用される、細菌。
前記RGENをコードする前記キメラ遺伝子、前記ガイドポリヌクレオチドをコードする前記キメラ遺伝子、及び前記供与体ポリヌクレオチドが、1つのベクター上に、任意選択で1つのT-DNA分子上に(一対のT-DNA境界間に)位置する、請求項27又は28に記載の細菌。
請求項1〜21のいずれか一項に記載の、RGENをコードするキメラ遺伝子、少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び少なくとも1つの供与体ポリヌクレオチドを、任意選択で1つのT-DNA分子上に(一対のT-DNA境界間に)含む(T-DNA)ベクター。
選択マーカー遺伝子を、任意選択で前記1つのT-DNA分子上に(一対のT-DNA境界間に)さらに含む、請求項27〜29のいずれか一項に記載の細菌、又は請求項30に記載のベクター。
植物細胞中の内因性EPSPS遺伝子を改変する、又は改変されたEPSPS遺伝子を有する植物細胞を作製する、又はゲノム編集(構成要素)の有効性を試験する方法であって:
a. 前記細胞中で、前記植物の内因性EPSPS遺伝子中の配列を認識する部位指向性DNA改変性ポリペプチドを発現させる、及び/又は前記植物細胞中に、前記内因性EPSPS遺伝子を改変するための鋳型として使用することができる供与体ポリヌクレオチドを導入するステップ、
b. 前記植物細胞を、1種以上のEPSPS阻害剤を含む培地で培養することにより、前記EPSPS阻害剤に対する前記植物細胞の耐性を評価するステップ、並びに任意選択で
c. 前記EPSPS阻害剤に対する向上した耐性を有する植物細胞を選択するステップ
を含む方法。
前記RGDMPがRGENであり、前記RGEN及び前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドは、RGENがDNA切断を、前記予め選択された部位に又はその付近に導入することを可能にする複合体を形成することができるものである、請求項35又は36に記載の方法。
前記RGEN及び前記ガイドポリヌクレオチドと一緒に、目的のポリヌクレオチドを含む供与体ポリヌクレオチドが、前記植物細胞中に導入されて、前記供与体ポリヌクレオチドが、前記DNA切断の修復のための鋳型として使用され、それにより前記目的のポリヌクレオチドを前記予め選択された部位に組み込んで、前記予め選択された部位における前記ゲノムの改変を生じさせる、請求項37に記載の方法。
請求項36〜38のいずれか一項に記載の、NGDMPをコードするキメラ遺伝子、少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び少なくとも1つの(植物で発現可能な)選択マーカー遺伝子を含む細菌であって、前記細菌は前記NGDMPをコードする前記キメラ遺伝子、前記ガイドポリヌクレオチドをコードする前記キメラ遺伝子、及び前記選択マーカー遺伝子を、植物細胞(の核ゲノム)中に移入又は導入することができ、前記NGDMP及び前記ガイドポリヌクレオチドは、前記植物細胞中で発現したときに、NGDMPが植物細胞の(核)ゲノムを改変することを可能にする複合体を形成することができるものである、細菌。
前記NGDMPをコードする前記キメラ遺伝子、前記ガイドポリヌクレオチドをコードする前記キメラ遺伝子、及び前記選択マーカー遺伝子が、1つのベクター上に、任意選択で1つのT-DNA分子上に(一対のT-DNA境界間に)位置する、請求項39又は40に記載の細菌。
請求項36〜41のいずれか一項に記載の、NGDMPをコードするキメラ遺伝子、ガイドポリヌクレオチドをコードするキメラ遺伝子、及び選択マーカー遺伝子を、任意選択で1つのT-DNA分子上に(一対のT-DNA境界間に)含む(T-DNA)ベクター。
【背景技術】
【0002】
植物ゲノムなどのゲノムに、外来DNAの組込み位置の制御を含めて、標的化改変を導入する必要性が、重要性を増してきており、数通りの方法がこの必要性を満たすために開発されている(総説については、Kumar and Fladung, 2001, Trends in Plant Science, 6, pp155-159を参照されたい)。これらの方法は、ほとんどは、二本鎖切断誘導性(DSBI)酵素の発現により、標的化位置に二本鎖DNA切断を最初に導入することに依存する。
【0003】
l-Scelなどの希少切断エンドヌクレアーゼによる二本鎖DNA切断(DSB)の誘導による修復若しくは供与体DNA及び/又は標的座位の活性化は、相同組換えの頻度を数桁オーダーで増大させることが示された(Puchta et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 93, pp5055-5060、Chilton and Que, Plant Physiol., 2003、D'Halluin et al. 2008 Plant Biotechnol. J. 6, 93-102)。
【0004】
WO 2005/049842には、「二本鎖切断」誘導性(DSBI)希少切断酵素、及び改良l-Scelをコードするヌクレオチド配列を使用して、植物への標的化DNA挿入を改善する方法及び手段が記載されている。
【0005】
WO 2006/105946には、相同組換えによる植物細胞及び植物における目的のDNA配列への標的DNA配列の厳密な交換のための方法が記載されており、その方法により、遺伝子置換事象の一過性選択のために相同組換え相で使用される選択マーカー又はスクリーニング可能マーカーは、その後、除去ステップ中にインビトロ培養に頼らず、またフットプリントを残さずに、そこに記載されたDSBI希少切断エンドヌクレアーゼの小胞子特異的発現による選択されたDNAの除去方法を使用して除去することができる。
【0006】
WO 2008/037436には、WO 2006/105946の方法及び手段の変形が記載されており、該方法及び手段では、二本鎖切断誘導性希少切断エンドヌクレアーゼにより誘導される選択されたDNA断片の除去ステップは、生殖細胞系列特異的プロモーターの制御下にある。該方法の他の実施形態は、修復DNAの1つの末端における非相同性末端連結及び他の末端における相同組換えに依存していた。WO 08/148559には、WO 2008/037436の方法の変形、すなわち、相同組換えによる植物細胞などの真核生物細胞における目的のDNA配列への標的DNA配列の厳密な交換のための方法が記載されており、その方法により、遺伝子置換事象の一過性選択のために相同組換え相中に使用される選択マーカー又はスクリーニング可能マーカーは、その後、ダイレクトリピートの2つのヌクレオチド配列に隣接する選択されたDNAの除去方法を使用して、フットプリントを残さずに、除去することができる。
【0007】
それに加えて、希少切断エンドヌクレアーゼの設計により酵素の基質又は配列特異性を変更することを可能にし、その結果天然の希少切断エンドヌクレアーゼのいずれかに対する認識部位の存在に依存することなく、目的の座位に二本鎖切断を誘導することを可能にする方法が記載されている。簡単に説明すると、キメラ制限酵素は、特定のヌクレオチド配列を認識するように設計された亜鉛フィンガードメインと、Foklなどの天然の制限酵素由来の非特異的DNA開裂ドメインとの間のハイブリッドを使用して作製することができる。そのような方法は、例えば、WO 03/080809、W094/18313又はWO 95/09233及びIsalan et al., 2001, Nature Biotechnology 19, 656-660、Liu et al. 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94, 5525-5530に記載されている。バリアントのライブラリーからの選択によってカスタムメイドのメガヌクレアーゼを製造する別の方法が、WO 2004/067736に記載されている。配列特異性及びDNA結合親和性が変更されたカスタムメイドのメガヌクレアーゼ又は設計変更メガヌクレアーゼも、WO 2007/047859に記載された合理的設計により得ることができる。さらに、WO 10/079430及びW011/072246には、カスタマイズできるDNA結合特異性を有する転写活性化因子様エフェクター(TALE)タンパク質の設計、及びどのようにしてこれらを、基本的に任意のDNA配列に対する配列特異性を有するキメラ制限酵素、すなわち、TALEヌクレアーゼ(TALEN)を作製するために、ヌクレアーゼドメイン(例えばFOKI)と融合することができるかが記載されている。
【0008】
Bedell et al., 2012 (Nature 491: p114-118)及びChen et al., 2011 (Nature Methods 8: p753-755)には、哺乳動物細胞における、それぞれTALEN及びZFNを使用するオリゴ媒介ゲノム編集が記載されている。
【0009】
Elliot et al (1998, Mol Cel Biol 18: p93-101)には、相同性媒介DSB修復アッセイが記載されており、そのアッセイでは、突然変異の組込み頻度が、開裂部位からの距離に反比例することが見出された。
【0010】
W011/154158及びW011/154159には、キメラ遺伝子を含むトランスジェニック植物の植物ゲノムを、標的化様式で改変する方法及び手段が記載されており、ここで、キメラ遺伝子は、植物分子生物学で一般的に使用されるDNA要素、及び植物分子生物学で一般的に使用されるそのような要素を切断する設計変更メガヌクレアーゼを有する。
【0011】
WO 2013026740には、方法及び手段は、標的化様式で、二本鎖DNA切断誘導性酵素を使用する既存のエリート事象に密接して、植物のゲノムを改変することが記載されている。
【0012】
WO 2014161821には、改善された方法及び手段が、標的化様式で、真核生物細胞のゲノムを、所定の部位で、TALENなどの二本鎖切断誘導性酵素及び二本鎖切断を修復するための供与体分子を使用して改変するために提供されることが開示されている。
【0013】
最近、Crispr/Casと呼ばれている新しいゲノム編集方法が見出された(Jinek et al., 2012, Science、Gasiunas et al., 2012, PNAS、Cong et al., 2013, Science、Mali et al., 2016, Science、Cho et al., 2013, Nature Biotechnology、Shan et al., 2013, Nature Biotechnology、Nekrasov et al., 2013, Nature Biotechnology、Feng et al., 2013, Cell Res)。
【0014】
WO 2014144155には、Clustered Regularly Interspersed Short Palindromic Repeats(クラスター化規則的散在短パリンドローム反復)/CRISPR関連(CRISPR/Cas)システムを使用する遺伝子標的化のための材料及び方法が開示されている。
【0015】
WO 2014186686には、標的核酸配列において植物のゲノムを改変する方法が開示されている。さらに、植物のゲノム中の標的核酸配列へと融合タンパク質を標的化させる方法が提供される。植物、改変植物及び植物細胞中のCasシステムの構成要素を試験する方法、融合タンパク質、並びにそのような融合タンパク質をコードする核酸分子も提供される。
【0016】
WO 2014194190には、CRISPR(クラスター規則的間隔短パリンドローム反復)関連ヌクレアーゼを使用する、植物ゲノムにおける特異的遺伝子標的化のための及びDNA配列の精密な編集のための組成物及び方法が開示されている。非トランスジェニックな遺伝的に改変された作物を、これらの組成物及び方法を使用して作製することができる。
【0017】
WO 2015/026883には、植物又は植物細胞のゲノムにおける標的配列のゲノム改変のための組成物及び方法、並びに細胞又は生物のゲノムにおけるヌクレオチド配列のゲノム改変のためにガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼのシステムを使用する、遺伝子編集のための、及び/又は目的のポリヌクレオチドを細胞若しくは生物のゲノム中に挿入するか若しくはそれから欠失させるための組成物及び方法、育種方法、並びに2つの構成要素であるRNAガイド及びCasエンドヌクレアーゼのシステムを利用して植物を選択する方法、並びに細胞のゲノムにおけるヌクレオチド配列を編集するための組成物及び方法が開示されている。
【0018】
WO 2015/026885には、細胞のゲノム中の標的配列のゲノム改変のための組成物及び方法、並びに細胞のゲノム中でヌクレオチド配列を編集するための組成物及び方法、並びに育種方法、及び2つの構成要素であるRNAポリヌクレオチド及びCasエンドヌクレアーゼのシステムを利用して植物を選択する方法も開示されている。
【0019】
WO 2015/026886には、植物ゲノム部位指向性改変のための方法が開示されている。具体的には、RNAにより導入された植物ゲノム部位指向性改変のための方法が提供される。
【0020】
WO 2015/048707には、植物にジェミニウイルス抵抗性を付与するための材料及び方法、特に、CRISPR/Casシステムを使用してジェミニウイルスに対する抵抗性を植物に付与するための材料及び方法が開示されている。
【0021】
WO 2015117041には、そこに開示された1つ以上の遺伝子改変媒介法を使用して、真核生物系で優性形質を生じさせる方法が開示されている。該技術の態様は、モロコシ植物におけるSbCSE及び/又はSbCAD2遺伝子の発現又は活性をサイレンシングする方法にさらに向けられている。
【0022】
WO 2015131101には、植物におけるCRISPR/Cas媒介標的化遺伝子改変のために有用な新規なトウモロコシ、トマト、及びダイズU6、U3、U2、U5、及び7SLのsnRNAプロモーターが開示されている。該開示は、U6、U3、U2、U5、及び7SLプロモーターを、植物における標的化遺伝子改変のCRISPR/Casシステムで機能するsgRNAポリヌクレオチドの発現を駆動するのに使用するための方法も提供する。該開示は、ゲノムの開裂部位に平滑末端DNA断片を挿入することによりゲノムを改変する方法も提供する。
【0023】
WO 2015139008には、DNA配列に標的化変化を作製するための方法及び組成物が開示されている。
【0024】
WO 2015171894には、標的遺伝子に突然変異を有する改変された植物を選択する方法及び該方法により作製された植物が開示されている。具体的には、該開示は、ゲノム編集タンパク質をコードする組換え発現カセットを親植物の分裂組織の又は生殖細胞系列の細胞中に導入し(ここで該ゲノム編集タンパク質は特異的に標的遺伝子を認識する)、該親植物を異種交配又は自家交配させて、それにより複数の子孫種子を生産し、そして完全(intact)植物レベルで選択され得る表現型を発現する子孫種子から成長した子孫植物を選択することを含む方法を提供する。
【0025】
WO 2015189693には、多重化を容易にし、安定な形質転換を防げ、及び複数植物種にまたがって適用可能な、ウイルス媒介ゲノム編集プラットホームが開示されている。タバコ茎えそウイルス(TRV)のRNA2ゲノムが、ガイドRNA分子を担持しそれをCas9エンドヌクレアーゼを過剰発現する植物中に全身送達するように遺伝子操作された。
【0026】
WO 2016007948には、植物又は植物細胞のゲノムにおける標的配列の農学的形質改変のための組成物及び方法が開示されている。
【0027】
WO 2016084084には、機能的2b配列が欠けているタバコ茎えそウイルス(TRV)配列、及び目的のゲノムの標的配列における配列特異的開裂を媒介する単一ガイドRNA(sgRNA)をコードする核酸配列を含む、核酸構築物が開示されている。該構築物を含む植物細胞及び遺伝子編集における該構築物の使用も提供される。
【0028】
WO 2016106121には、植物細胞のゲノム中の標的部位を改変するための方法及び組成物であってその改変が導入遺伝子及び突然変異の組込みを包含する、方法及び組成物、並びに、改変された標的部位を含む細胞を同定し濃縮するための方法及び組成物が開示されている。
【0029】
WO 2016061481には、1つのポリヌクレオチド構築物(合成遺伝子)から多数の小RNAを作製し、RNA誘導型複合ゲノム編集、改変、発現阻害、及び他のRNAに基づく技術を容易にする材料及び方法が開示されている。
【0030】
WO 2016116032には、植物で、遺伝子の一過性発現により部位特異的改変を実施する方法であって、目的の植物の細胞又は組織中で標的断片に特異的な配列特異的ヌクレアーゼを一過性で発現させるステップを含む方法が開示されており、該方法において、該配列特異的ヌクレアーゼは標的部位に特異的であり、該標的部位は該ヌクレアーゼにより開裂されて、それにより標的部位の部位特異的改変が、植物のDNA修復を通じて達成される。
【0031】
Endo et al 2016 (Plant Physiology, February 2016, vol. 170, pp. 667-677)は、形質転換の有効性を増強し、かつ供与体がその後導入されたときにCas9の十分な発現を可能にするための、最初にCas9構築物を、任意選択でgRNAと共に送達し、続いて第2のステップで供与体分子を任意選択でgRNAと共に送達するアグロバクテリウムを用いた逐次送達を教示している。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明者らは、RGEN発現カセット(例えばCas9用)、ガイドポリヌクレオチドをコードするキメラ遺伝子、及び誘導されたDNA切断を修復するための供与体DNAを含む単一のアグロバクテリウム株を用いて、植物を形質転換させたときに、精密な遺伝子編集事象の回収性が、驚くべきことに、直接送達法を使用して3種の構成要素を別個のベクター上で一緒に提供する場合よりも高かったことを見出した。このために、胚形成カルス又はイネの未成熟胚を、3種の構成要素を1つのT-DNAベクター上に、より具体的には、単一の対のT-DNA境界間に(すなわち、1つのT-DNA分子上に)含むアグロバクテリウム株を用いて、形質転換した。増大した除草剤耐性をもたらす突然変異(TIPS突然変異)をイネ内因性EPSPS遺伝子に導入する供与体DNAで形質転換したときに、このことは、グリホセート耐性事象の回収を、直接送達(約0.2〜1.6%)と比較して約10%まで増大させる結果となった。したがって、このアグロバクテリウム法は、驚くべきことに、同時に導入されたときでさえ、Cas9の十分な発現を生じさせ、供与体DNAの効率的な組込みを可能にした。粒子衝撃によるDNA送達と比較したアグロバクテリウム媒介DNA送達時のより多い数の細胞中へのDNA導入の結果として、アグロバクテリウム媒介DNA送達により、粒子衝撃と比較して、より高い頻度の標的化細胞が生ずると考えられる。共送達された選択マーカー遺伝子により提供された耐性に基づいて事象を選択したときに、耐性事象の殆ど半分(43%)までも所望の改変を含有すると思われることがさらに見出された。これは、意図された改変自体を選択することが困難な事象も回収する可能性を明らかに増大させる。アグロバクテリウム媒介形質転換(又は同様な細菌のシステム)は、衝撃に適しない植物種又は変種のために使用することができるという利点をさらに有する。直接送達法のうちでは、粒子流入銃衝撃が、最良の結果を生じた。EPSPSを標的とすることにより、直接グリホセート選択は、成功した編集の読み出しとして使用することができ、したがってゲノム編集の構成要素、例えば、配列特異的エンドヌクレアーゼ(例えばメガヌクレアーゼ、ZFN、TALEN、RGEN等)、ガイドポリヌクレオチド及び供与体構築物を評価及び比較するための有用なアッセイシステムを提供することがさらに見出された。
【0062】
WO 2015026883は、Cas9カセットをすでに含有している植物を、gRNAカセットを含む植物と交配するか、又はCas9カセットをすでに含有している植物に、gRNAカセット及び任意選択で供与体構築物を提供することを教示しており、それにより、ガイド及び供与体ポリヌクレオチドを導入する時点でRGENをすでに発現させることの重要性を示している。WO 2015026883は、直接送達(粒子銃衝撃)による、かつ共形質転換されたmoPAT選択マーカー遺伝子によって生ずる編集事象の富化に対するビアラホス選択(間接選択)を使用するトウモロコシにおけるEPSPS編集をさらに教示している。3282個の胚から開始した長い選択・培養期間の後、390のT0植物が作製され、そのうち72%は突然変異したEPSPSを含有した。しかしながら、改変EPSPS事象の大部分は、NHEJによって生じ、一方、改変事象のごく一部が、組換え鋳型(供与体核酸)由来の意図されたTIPS突然変異を含有したに過ぎなかった。
【0063】
WO 2015/026886には、トウモロコシのEPSPS編集が記載されており、そこでは、粒子衝撃をmoPAT選択マーカー遺伝子と一緒に使用して、組換え鋳型が、sgRNA発現カセット及びCas9発現ベクターと共送達され、初期選択がビアラホスで行われた。
【0064】
WO 2015131101には、PEG形質転換及び衝撃を使用する3種の構成要素の共送達が記載された。WO 2016007948には、粒子衝撃によるgRNA構築物、ポリヌクレオチド改変鋳型、Cas9カセットの共送達が開示されている。
【0065】
Endo et al 2016 (Plant Physiology, February 2016, vol. 170, pp.667-677)は、形質転換効率を増強し、かつ供与体がその後導入されたときにCas9の十分な発現を可能にするための、アグロバクテリウムを用いて最初にCas9構築物を、任意選択でgRNAと共に送達し、続いて第2のステップで供与体分子を任意選択でgRNAと共に送達する逐次送達を教示している。
【0066】
したがって、先行技術には、直接送達法により、gRNA構築物、RGEN構築物及び供与体ポリヌクレオチドを同時に送達すること、又は少なくともRGEN構築物のみを先行送達して、続いて後で供与体ポリヌクレオチドを送達することが開示されている。
【0067】
したがって、第1の態様で、本発明は、植物細胞の(核)ゲノムを予め選択された部位で改変するか、又はその(核)ゲノム中の予め選択された部位での改変(すなわち、標的化改変)を含む植物細胞を作製する方法であって:
a. 前記植物細胞にRNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)及び少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドを導入するステップであり、ここで前記RGEN及び前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドは、RGENが前記予め選択された部位で若しくはその付近で、DNA切断(二本鎖DNA切断、又は1つ以上のニック又は単鎖切断)を導入するか、又は、ストランドの置換(例えば、触媒的に不活性ヌクレアーゼによる)を誘導することを可能にする複合体を形成することができるものである、ステップ、
b. 目的のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つの供与体ポリヌクレオチドを、前記細胞に導入するステップ、
c. 前記供与体ポリヌクレオチドが、前記DNA切断の修復のための鋳型として使用され、それにより前記目的のポリヌクレオチドを前記予め選択された部位に組み込んで、前記予め選択された部位で前記ゲノムの改変を生じさせる、植物細胞を選択するステップであり、前記改変は、
i. 少なくとも1つのヌクレオチド、すなわち1つ以上のヌクレオチドの、置換、
ii. 少なくとも1つのヌクレオチド、すなわち1つ以上のヌクレオチドの、欠失、
iii. 少なくとも1つのヌクレオチド、すなわち1つ以上のヌクレオチドの、挿入、又は
iv. i.〜iii.の任意の組合せ
から選択される、ステップ
を含み、
前記細胞を、前記RGENをコードするキメラ遺伝子、前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び前記少なくとも1つの供与体ポリヌクレオチドを含む少なくとも1種の細菌と接触させることにより、前記RGEN、前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチド、及び前記少なくとも1つの供与体ポリヌクレオチドが、前記植物細胞中に導入されることを特徴とする方法に関する。
【0068】
本明細書において使用されるRNA誘導型ヌクレアーゼ又はエンドヌクレアーゼは、(エンド)ヌクレアーゼ活性を有する、RNA誘導型DNA改変性ポリペプチドである。
【0069】
RGENは、典型的には、外来核酸に対する防御のための広範なクラスの細菌のシステムであるCRISPRシステムに由来する。CRISPRシステムは、広い範囲の真正細菌の及び古細菌の生物で見出される。CRISPRシステムは、タイプI、II、III及びVのサブタイプを含む(例えば、2007025097、WO 2013098244、WO 2014022702、WO 2014093479、WO 2015155686、EP 3009511、US 2016208243を参照されたい)。野生型のタイプIIのCRISPR/Casシステムは、外来核酸を認識して切断するガイド及び活性化RNAとの複合体の状態で、RNA誘導型ヌクレアーゼ、例えばCas9を利用する(Jinek et al., 2012、前出)。
【0070】
Cas9ホモログは、以下の分類群:放線菌門(Actinobacteria)、アクウィフェクス門(Aquificae)、バクテロイデス-クロロビウム門(Bacteroidetes-Chlorobi)、クラミジア-ウェルコミクロビウム門(Chlamydiae-Verrucomicrobia)、クロロフレクサス門(Chlroflexi)、シアノバクテリア門(Cyanobacteria)、フィルミクテス門(Firmicutes)、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)、スピロヘータ門(Spirochaetes)、及びテルモトガ門(Thermotogae)の細菌を含むが、これらに限定されない広範囲の真正細菌で見出される。典型的なCas9タンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)のCas9タンパク質である。さらなるCas9タンパク質、それらのホモログ及びバリアント並びにゲノム編集で使用する方法は、例えば、Chylinksi, et al., RNA Biol.2013 May 1; 10 (5): 726-737、Nat. Rev. Microbiol.2011 June; 9 (6): 467-477、Hou, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Sep 24; 110 (39):15644-9、Sampson et al., Nature. 2013 May 9、497 (7448):254-7、及びJinek, et al., Science. 2012 Aug 17; 337 (6096):816-21、WO2013142578、WO2013176772、WO2014065596、WO2014089290、WO2014093709、WO2014093622、WO2014093655、WO2014093701、WO2014093712、WO2014093635、WO2014093595、WO2014093694、WO2014093661、WO2014093718、WO2014093709、WO2014099750、WO2014113493、WO2014190181、WO2015006294、WO2015071474、WO2015077318、WO2015089406、WO2015103153、WO201621973、WO201633298、WO201649258(全て参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0071】
さらにRNA誘導型ヌクレアーゼは、例えばCpf1 (Cas12aとしても知られている)並びにそのホモログ及びバリアントを含む(例えば、全て参照により本明細書に組み込まれる、Zetsche et al., Cell, volume 163, Issue 3, p759-771, 22 October 2015、EP 3009511、US 2016208243、Kleinstiver et al., Nat Biotechnol. 2016 Aug; 34 (8):869-74、Gao et al., Cell Res. 2016 Aug; 26 (8):901-13、Hur et al., 2016 Nat Biotech、Kim et al., 2016 Nat Biotech、Yamano et al., Cell. Apr 21、2016、WO 2016166340、WO 2016205711、さらに広くは、WO 2017064546、WO 2017141173、WO 201795111に記載されている)。
【0072】
さらに、さらなるRNA誘導型ヌクレアーゼは、例えば、C2c1及びC2c3 (それぞれCas12b及びCas12cとしても知られている。Shmakov et al., Mol Cell. 2015 Nov 5; 60 (3): 385-97、EP 3009511、WO 2016205749)、Csm1 (WO 2017141173)、CasX及びCasY (Burnstein et al., Nature vol. 542、2017)、並びに追加のクラス2のcrisprシステム由来のさらなるヌクレアーゼ(Schmakov et al., Nature Reviews Microbiology 15, 169-182、2017) (全て参照により本明細書に組み込まれる)を含む。
【0073】
さらなるRNA誘導型ヌクレアーゼは、例えばWO 2015157534に記載されたようにアルゴナウテース(Argonaut)様タンパク質を含むことができる。
【0074】
さらなるRNA誘導型ヌクレアーゼ及び他のRNA誘導型ポリペプチドが、WO 2013088446に記載されている。
【0075】
一実施形態において、RGENは、RNA誘導型ニッキング酵素(ニッカーゼ)、又は、各々二本鎖DNAの一方の鎖だけに予め選択された部位で若しくはその付近で切断を導入する一対のRNA誘導型ニッキング酵素でもあり得る。一対のニッカーゼのうち、一方の酵素がDNAの一方の鎖に予め選択された部位で又はその付近で切断を導入し、他方の酵素はDNAの他方の鎖に予め選択された部位で若しくはその付近で切断を導入する。この2つの一本鎖切断は、両方の鎖上の同じヌクレオチド位置に導入されて、平滑末端を有する二本鎖DNA切断を生じてもよいが、2つの単鎖切断は、各鎖中の異なるヌクレオチド位置に導入されて、切断部位に5'又は3'オーバーハングを生じる(「粘着性末端」又は「ずれた切断(staggered cut)」)のでもよい。一実施形態において、ニッカーゼを指向する2つのガイドポリヌクレオチドは、例えばWO 201628682に記載されているように、3'オーバーハングを有する切断を生成するそのような方法で選択される。ニッキングによる突然変異体及びそれらの使用は、例えば上の文献に、具体的に、WO 2014191518、WO 2014204725、WO 201628682に記載されている。DNAの2つの鎖の一方だけに切断(すなわち、一本鎖DNA切断)を導入した単一ニッキング突然変異体も、供与体ポリヌクレオチドによる相同性指向性修復(HDR)を強化することができる(Richardson et al. 2016, Nature Biotechnology 34, 339-344、US 62/262,189)。
【0076】
ヌクレアーゼ又はニッカーゼとの代替物として、dCas9などの上記ヌクレアーゼの、ヌクレアーゼ不全(「無効(dead)」すなわち、触媒的に不活性とも称される)バリアントも、供与体ポリヌクレオチドの標的化挿入を増大させるために使用することができる(例えば、Richardson et al. 2016、Nature Biotechnology 34, 339-344、US 62/262,189に記載されている)。そのようなバリアントは、DNAを切断する又はニッキングする能力を欠くが、DNAに標的化されてDNAと結合することはできる(例えば、WO 2013176772、EP 3009511を参照されたい)。これらの「無効」ヌクレアーゼは、2つの鎖のうち一方に結合し(「DNA融解」)、それにより供与体ポリヌクレオチドが、他の「遊離の」DNA鎖とアニールすることを可能にすることにより、供与体ポリヌクレオチドとの組換えを増強することで、鎖の置換を誘導すると考えられる。
【0077】
ニッキング突然変異体は、種々のRGENについて記載されており、触媒的ドメイン、例えば、RuvC様ドメイン(例えばCpf1)のHNH及びRuvCドメイン(例えばCas9)において1つ以上の突然変異を含む。例えば、SpCas9は、RuvC中のD10Aの突然変異によりニッカーゼに変換されて、HNHヌクレアーゼドメイン中の863AはSpCas9をDNAニッカーゼに変換することができるが、一方、両方のヌクレアーゼドメインの不活性化は、触媒的に不活性なタンパク質を生ずる(Jinek et al., 2012(前出)、Gasiunas et al., 2012, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109, E2579-E2586)。Cpf1では、D917A及びE1006A突然変異が、FnCpf1のDNA開裂活性を完全に不活性化し、それに対してD1255Aは、核酸分解活性を大きく低下させることが見出された(Zetsche et al., 2015、前出)。他のRGEN (例えばCas9又はCpf1)バリアントの対応する残基は、最適アラインメントにより決定することができる。
【0078】
本発明で使用される、RGENをコードするキメラ遺伝子は、典型的には、以下の作動的に連結された構成要素: RGENをコードするDNA領域(RGENコード領域)、(植物で発現可能な)プロモーター、並びに任意選択で、植物で機能性のポリアデニル化及び転写ターミネーター(3'末端領域)を含む。そのようなプロモーターは、構成的プロモーターであり得るが、RGENの発現が望まれる場合に応じて、誘導性プロモーター(例えば、ストレス誘導性プロモーター、乾燥誘導性プロモーター、ホルモン誘導性プロモーター、化学的誘導性プロモーター、その他)、組織特異的プロモーター、発達調節プロモーターなどの他のプロモーターも使用することができる。
【0079】
植物で発現可能な構成的プロモーターは、大部分の細胞型において高レベルの発現を(時空間的に独立の様式で)指令することができるプロモーターである。植物で発現可能な構成的プロモーターの例は、細菌起源のプロモーター、例えば、アグロバクテリウム由来のオクトピンシンターゼ(OCS)及びノパリンシンターゼ(NOS)プロモーターだけでなく、ウイルス起源のプロモーター、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S転写物(Hapster et al., 1988, Mol. Gen. Genet. 212: 182-190)又は19S RNA遺伝子(Odell et al., 1985, Nature. 6; 313 (6005):810-2、米国特許第5,352,605号、WO 84/02913、Benfey et al., 1989、EMBO J. 8:2195-2202)のプロモーター、増強型2x35Sプロモーター(Kay et al., 1987, Science 236:1299-1302、 Datla et al. (1993), Plant Sci 94:139-149)、キャッサバ維管束モザイクウイルス(CsVMV、WO 97/48819、US 7,053,205)、2xCsVMV (WO 2004/053135)のプロモーター、シルコウィルスプロモーター(AU689311)、サトウキビ杆状バドナウイルス(ScBV)プロモーター(Samac et al., 2004, Transgenic Res. 13 (4): 349-61)、ゴマノハグサモザイクウイルス(FMV)プロモーター(Sanger et al., 1990, Plant Mol Biol. 14 (3): 433-43)、ジモグリツメクサウイルスプロモーターNo4又はNo7 (WO 96/06932)並びにUS 5,164,316、US 5,196,525、US 5,322,938、US 5,359,142及びUS 5,424,200に記載されている増強型35Sプロモーターも含む。植物起源のプロモーターの中で、トウモロコシ及びヒマワリ由来の植物リブロース-ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(ルビスコ)小サブユニットプロモーター(US 4,962,028、W099/25842)、シロイヌナズナヒストンH4遺伝子のプロモーター(Chaboute et al., 1987)、トウモロコシ、イネ及びサトウキビのユビキチンプロモーター(Holtorf et al., 1995, Plant Mol. Biol. 29: 637-649、US 5,510,474)、イネアクチン1プロモーター(Act-1、US 5,641,876)、EP 0507698A1に記載されているヒストンプロモーター、トウモロコシアルコールデヒドロゲナーゼ1プロモーター(Adh-1)(http: //www. patentlens. net/daisy/promoters/242. htmlより)のプロモーターについて言及されている。クリサンセマム(Chrysanthemum)由来の小サブユニットプロモーターも、その使用がそれぞれのターミネーターの使用と組み合わされれば、使用され得る(Outchkourov et al., Planta, 216: 1003-1012、2003)。
【0080】
さらなる植物で発現可能なプロモーターは、環境の、ホルモンの、化学的、発達のシグナルに応答して、及び組織若しくは細胞若しくは生殖細胞系列に、又は発生段階に特異的な様式で、遺伝子発現を調節する植物遺伝子プロモーターであり得る。プロモーターの選択は、目的の表現型に大きく基づいて、組織などの要因(例えば、種子、果実、根、花粉、維管束組織、花、心皮、その他)、誘導能(例えば、創傷、熱、低温、乾燥、光、病原体、その他に応答)、タイミング、発達段階等により決定される。
【0081】
本発明を実施するために使用することができる追加のプロモーターは、ストレスに応答して発現を惹起するプロモーター、例えば、乾燥、低温、塩ストレス、又はABAへの曝露に応答して活性化されるRD29プロモーター(Yamaguchi-Shinozaki et al., 2004, Plant Cell, vol. 6, 251-264、WO 12/101118)だけでなく、熱(例えば、Ainley et al. (1993) Plant Mol.Biol. 22: 13-23を参照されたい)、光(例えば、マメrbcS-3Aプロモーター、Kuhlemeier et al. (1989) Plant Cell 1: 471-478、及びトウモロコシrbcSプロモーター、Schaffher and Sheen (1991) Plant Cell 3: 997-1012)、創傷(例えば、wunl, Siebertz et al. (1989) Plant Cell 1: 961-968)、病原体(例えば、Buchel et al. (1999) Plant Mol. Biol, 40: 387-396に記載されているPR-Iプロモーター、及びManners et al. (1998) Plant Mol. Biol. 38: 1071-1080に記載されているPDF1.2プロモーター)、及びジャスモン酸メチル又はサリチル酸などの化学物質(例えば、Gatz (1997)Annu. Rev. Plant. Physiol. Plant Mol.Biol.48: 89-108を参照されたい)に応答して誘導されるプロモーターである。それに加えて、発現のタイミングは、老化期(例えば、Gan and Amasino (1995) Science 270: 1986-1988を参照されたい)や後期種子発生(例えば、Odell et al. (1994) Plant. Physiol. 106: 447-458を参照されたい)に作用するものなどのプロモーターを使用することにより制御することができる。
【0082】
塩誘導性プロモーター、例えば、イネ在来種Pokkali (PKN)の塩誘導性NHX1プロモーター(Jahan et al., 6th International Rice Genetics symposium, 2009、ポスター要旨P4-37)、テルンギエラ・ハロフィラ(Thellungiella halophila)由来の液胞H+-ピロホスファターゼの塩誘導性プロモーター(TsVP1) (Sun et al., BMC Plant Biology 2010, 10: 90)、リン脂質ヒドロペルオキシドイソ型gpx1をコードするキトルス・シネンシス(Citrus sinensis)遺伝子の塩誘導性プロモーター(Avsian-Kretchmer et al., Plant Physiology July 2004 vol. 135, p1685-1696)なども使用することができる。
【0083】
組織特異的及び/又は発達段階特異的プロモーター、例えば、その組織内の発達段階のある時間枠内でだけ転写を促進することができるプロモーターを使用することができる。例えば、アラビドプシス(Arabidopsis)LEAFY遺伝子プロモーターを特性解析しているBlazquez (1998) Plant Cell 10: 791-800を参照されたい。シロイヌナズナ(A. thaliana)の花分裂組織特定遺伝子APIのプロモーター領域中の保存配列モチーフを認識する転写因子SPL3を記載しているCardon (1997) Plant J 12: 367-77、及び分裂組織プロモーターelF4を記載しているMandel (1995) Plant Molecular Biology, vol. 29, pp995-1004も参照されたい。特定の組織の生活環を通じて活性な組織特異的プロモーターが使用され得る。一態様において、本発明の核酸は、主としてワタ繊維細胞においてのみ活性なプロモーターに作動的に連結されており、一態様においては、本発明の核酸は、例えば、前出のRinehart (1996)により記載されているもののように、主としてワタ繊維細胞の伸長段階の間に活性なプロモーターに作動的に連結されている。該核酸は、ワタ繊維細胞で優先的に発現されるようにFbl2A遺伝子のプロモーターに作動的に連結されていてもよい(同箇所参照)。トランスジェニックワタ植物の作製のためのワタ繊維特異的プロモーター及び方法を記載しているJohn (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 5769-5773、John, et al.,米国特許第5,608,148号及び第5,602,321号も参照されたい。根特異的プロモーターも、本発明の核酸を発現させるために使用してもよい。根特異的プロモーターの例は、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子由来のプロモーター(DeLisle (1990) Int. Rev. Cytol. 123: 39-60)並びに米国特許第5,618,988号、第5,837,848号及び第5,905,186号に記載されているものなどのプロモーターを含む。本発明の核酸を発現させるために使用することができる他のプロモーターには、例えば、胚珠特異的、胚特異的、胚乳特異的、外皮特異的、種皮特異的プロモーター、又はそれらの何らかの組合せ;葉特異的プロモーター(例えば、トウモロコシにおける葉特異的プロモーターを記載しているBusk (1997) Plant J. 11: 1285-1295を参照されたい);アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)由来のORF13プロモーター(根において高活性を示す。例えば、Hansen (1997)(前出)を参照されたい);トウモロコシ花粉特異的プロモーター(例えば、Guerrero (1990) Mol. Gen. Genet. 224: 161-168を参照されたい);果実登熟、老化、及び落葉の際に活性なトマトプロモーター、例えばPCT/EP 12/065608に記載されている孔辺細胞優先プロモーター、及び程度は低いが使用され得る、花のプロモーター(例えば、Blume (1997) Plant J. 12: 731-746を参照されたい);ジャガイモSK2遺伝子由来の雌蕊特異的プロモーター(例えば、Ficker (1997) Plant Mol.Biol.35: 425-431を参照されたい);トランスジェニックアルファルファの栄養期茎頂及び花茎頂の表皮組織で活性であり、そのために、活発に成長中のシュート又は繊維の表皮層へと外来遺伝子の発現を標的化するための有用なツールとなる、マメ由来のBlec4遺伝子;胚珠特異的BELI遺伝子(例えば、Reiser (1995) Cell 83: 735-742、Gen Bank No.U39944を参照されたい);並びに/又は、植物プロモーター領域が分裂組織及び/又は急速に分裂中の細胞において高レベルの転写を付与することができることを記載しているKleeの米国特許第5,589,583号中のプロモーターが含まれる。本発明により使用され得るさらなる組織特異的プロモーターには、種子特異的プロモーター(米国特許第5,773,697号に記載されている、ナピン(napin)、ファセオリン(phaseolin)又はDC3プロモーターなど)、果実登熟時に活性な果実特異的プロモーター(例えば、dru 1プロモーター(米国特許第5,783,393号)、又は2Al 1プロモーター(例えば、米国特許第4,943,674号を参照されたい)及びトマトポリガラクツロナーゼプロモーター(例えば、Bird et al. (1988) Plant Mol.Biol.11: 651-662を参照されたい)、花特異的プロモーター(例えば、Kaiser et al. (1995) Plant Mol.Biol.28: 231-243を参照されたい)、例えばBaerson et al. (1994 Plant Mol.Biol.26: 1947-1959に記載されている花粉活性プロモーター、例えば、PTA29、PTA26及びPTAI 3 (例えば、米国特許第5,792,929号を参照されたい)、維管束組織で活性なプロモーター(例えば、Ringli and Keller (1998) Plant Mol.Biol.37: 977-988を参照されたい)、心皮(例えば、Ohl et al. (1990) Plant Cell 2:を参照されたい)、花粉及び胚珠(例えば、Baerson et al. (1993) Plant Mol.Biol.22: 255-267を参照されたい)が含まれる。代替的実施形態では、オーキシンなどの植物ホルモンに曝露されたときに誘導可能な植物プロモーターが、本発明を実施するために使用される核酸を発現させるために使用される。例えば、本発明は、ダイズ(Glycine max L.)中のオーキシン応答要素Elプロモーター断片(AuxRE)(Liu (1997) Plant. Physiol. 115: 397-407);オーキシン応答性のアラビドプシスGST6プロモーター(サリチル酸及び過酸化水素にも応答性)(Chen (1996) Plant J. 10: 955-966);タバコ由来のオーキシン誘導性parCプロモーター(Sakai (1996) 37: 906-913);植物ビオチン応答要素(Streit (1997) Mol. Plant Microbe Interact. 10: 933-937);及び、ストレスホルモンアブシシン酸(ABA)に応答性のプロモーター(Sheen (1996) Science 274: 1900-1902)を使用することができる。使用され得るさらなるホルモン誘導性プロモーターには、オーキシン誘導性プロモーター(van der Kop et al. (1999) Plant Mol.Biol.39: 979-990又はBaumann et al., (1999) Plant Cell11: 323-334に記載されているものなど)、サイトカイニン誘導性プロモーター(例えば、Guevara-Garcia (1998) Plant Mol.Biol.38: 743-753を参照されたい)、ジベレリンに応答性のプロモーター(例えば、Shi et al. (1998) Plant Mol.Biol.38: 1053-1060、Willmott et al. (1998) Plant Molec.Biol.38: 817-825を参照されたい)等が含まれる。
【0084】
他のプロモーターは、植物に適用できる化学物質薬剤、例えば除草剤又は抗生物質などに曝露されたときに誘導可能な植物プロモーターであってもよい。例えば、ベンゼンスルホンアミド除草剤毒性緩和剤(safener)により活性化されるトウモロコシln2-2プロモーターを使用することができる(De Veylder (1997) Plant Cell Physiol. 38: 568-577)。異なる除草剤毒性緩和剤の適用は、根、排水組織、及び茎頂分裂組織における発現を含む、異なる遺伝子発現パターンを誘導する。コード配列は、例えばアベナ・サティバL.(Avena sativa L.)(エンバク)アルギニンデカルボキシラーゼ遺伝子(Masgrau (1997) Plant J. 11: 465-473)を含むトランスジェニックタバコ植物について記載された、テトラサイクリン誘導性プロモーター、又は、サリチル酸応答性要素 (Stange (1997) Plant J. 11: 1315-1324)の制御下にあり得る。化学的に(例えば、ホルモン又は殺虫剤により)誘導されるプロモーター、すなわち、農場でトランスジェニック植物に適用され得る化学物質に応答性のプロモーターを使用して、本発明のポリペプチドの発現を、植物の特定の発達段階で誘導することができる。米国特許第6,784,340号及びZuo et al. (2000、PlantJ. 24: 265-273)に記載されているエストロゲン誘導性発現システムは、本発明を実施するために使用される核酸の発現を駆動するためにも使用することができる。
【0085】
代替的実施形態では、宿主の範囲が標的植物種、例えば、トウモロコシ、イネ、オオムギ、コムギ、ジャガイモ又は他の作物に限定される、作物の任意の発達段階で誘導性のプロモーターを使用することができる。
【0086】
代替的実施形態では、組織特異的な植物プロモーターは、特定の標的組織において作動的に連結された配列の発現を駆動し得る。代替的実施形態では、標的組織又は細胞型で優先的に発現を駆動するが、他の組織でも同様にある程度の発現を生ずる組織特異的プロモーターが使用される。
【0087】
代替的実施形態では、例えば、組合せで機能的プロモーターを生ずることになるhttp: //arabidopsis. med. ohio-state. edu/AtcisDB/binding sites. html.に記載されたようなプロモーター要素を使用することもできる。
【0088】
RGENなどのRNA誘導型タンパク質は、ガイドRNAなどのガイドポリヌクレオチドにより、特定の標的核酸、例えばDNAに標的化される。本明細書において使用されるガイドポリヌクレオチドは、RGENなどのRNA誘導型タンパク質を、特定の標的配列に向かわせることができるポリヌクレオチドである。好ましいガイドポリヌクレオチドは、ガイドRNAすなわちgRNAである。「標的配列」とは、ガイド配列が、標的とするように設計されている、例えば相補性を有する配列を指す。当業者は、ある一定のRGENと共に使用されるガイドポリヌクレオチドの要件、及び、上で引用した文献にも記載されているように、ある一定のRGENを使用するときの標的配列のためのある一定の要件(例えば特異的プロトスペーサー隣接するモチーフ「PAM」)を熟知しているであろう。同様に、当業者ならば、標的配列内におけるそれぞれのRGENの開裂部位の位置を熟知しているであろう。
【0089】
本明細書において使用される少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドとは、1つ以上のガイドポリヌクレオチドを指す。実際、多重化、すなわち、複数の部位を同時に標的とすることを可能にするように、2つ以上のガイドポリヌクレオチドを発現するための構築物が、植物細胞に提供され得る。そのような方法は、例えば、Xie et al. (PNAS、March 17、2015, vol. 112、No.11, p3570-3575)、WO 2016061481、WO 2015099850、Char et al., (Plant Biotechnology Journal, 5 Sept 2016) (参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。ガイドRNAの組成及び構造(潜在的にトレーサー及びPAM領域を含む)は、当技術分野で十分記述されており、本明細書に記載されるガイドポリヌクレオチドは、当技術分野で記載されているものに対応する。
【0090】
前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチド(ガイドRNA)をコードするキメラ遺伝子は、以下の作動的に連結された要素、すなわち、RNAの発現のために適したプロモーター、gRNAをコードするDNA領域、及び任意選択でRNAの発現のために適した終結領域('3末端領域又はターミネーター)を含む。そのようなプロモーターは、典型的にはDNAポリメラーゼIII (pol III)プロモーターであるが、pol IIプロモーターも使用することができる(WO 2015099850)。植物で発現可能なpol IIIプロモーターは、本発明によるガイドRNAの発現のために特に適しており、例えば、Jiang W. et al., 2013、WO 2014186686、WO 2014194190、WO 2015026883、WO 2015026885、WO 2015026886、WO 2015131101、WO 2015171894、WO 2016007948に記載されている、植物機能性pol IIIターミネーターがそうである。
【0091】
本明細書において使用される供与体ポリヌクレオチドは、開裂部位又はその近傍における予め選択された部位で、すなわち、DNA切断の部位で、ゲノムDNAの改変のための鋳型として使用されるポリヌクレオチド(例えば一本鎖又は二本鎖DNA分子又はRNA分子)を指し、したがって組換え鋳型とも称される。本明細書において使用される、「ゲノムDNAの改変のための鋳型として使用」とは、供与体ポリヌクレオチド(の一部)が予め選択された部位にコピーされるか又は組み込まれることを意味する。これは、供与体ポリヌクレオチド中の相同性配列と予め選択された部位の近傍における配列との間の相同組換えにより可能であり、又は任意選択で供与体ポリヌクレオチドの2つの末端の一方における非相同性末端結合(NHEJ)と組合せてもよく、それにより予め選択された部位における、目的のポリヌクレオチドの取り込みが生ずる。相同組換えによる組込みは、供与体ポリヌクレオチドと標的ゲノムとの、ヌクレオチドレベルまでの精密な連結を可能にするが、それに対してNHEJは、供与体ポリヌクレオチドとゲノムDNAとの間の連結点に小さい挿入/欠失が生ずることもある。
【0092】
本明細書において使用される目的のポリヌクレオチドとは、標的ゲノム中へのコピー又は組込みの際、精密な又は厳密な編集事象又は標的化挿入事象とも称される、意図された標的化改変を生ずる供与体ポリヌクレオチドの配列を指す。改変は、生じた配列が元のゲノム配列と少なくとも1つのヌクレオチドで異なる限り、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、又は任意のそれらの組合せであり得る。したがって、改変は、少なくとも1つのヌクレオチド変化であり得るが、置換、挿入若しくは欠失又はそれらの組合せなどの複数のヌクレオチド変化であってもよく、それにより、配列決定、PCR分析、制限分析などの当技術分野において周知の技法による改変の同定が可能になる。
【0093】
本明細書において使用される「予め選択された部位」又は「所定の部位」とは、その位置で1つ以上のヌクレオチドを挿入、置換及び/又は欠失させることが望まれる、ゲノム(例えば核ゲノム)中の特定のヌクレオチド配列を示す。これは、例えば、以前に導入された外来DNA若しくは導入遺伝子中の、又はそれと連結された内因性座位又は特定のヌクレオチド配列であり得る。予め選択された部位は、そこで(その後ろに)1つ以上のヌクレオチドを挿入することが意図された特定のヌクレオチド位置であり得る。予め選択された部位は、交換(置換)又は欠失されることになる1つ以上のヌクレオチドの配列も含むことができる。
【0094】
DNA切断を誘導する部位の位置に関して、本明細書において使用される「前記予め選択された部位で又はその付近で」とは、予め選択された部位と重複する切断部位、又は予め選択された部位、すなわち、標的化改変が起こる部位からさらに離れて(近く又は近傍に)位置する切断部位を指す。これは、予め選択された部位から、例えば、1bp、2bp、3bp、4bp、5bp、6bp、7bp、8bp、9bp、10bp、15bp、20bp、25bp、30bp、40bp、50bpであり得るが、例えばWO 2014161821に記載されているように、例えば100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、1kb、2kb又は5kbでもあり得る。
【0095】
本発明による細菌は、細菌内に含まれるDNAの植物細胞のゲノム中への安定な移入を指令することができる、好ましくは非病原性又は武装解除型(disarmed; 癌遺伝子を含有しない)の任意の細菌であり得る。そのような細菌は、1つ以上のプラスミド、例えば、腫瘍誘発性プラスミド(Tiプラスミド)又は根誘導性プラスミド(Riプラスミド)を担持し、そのいわゆるトランスファーDNA(T-DNA)が、植物細胞中に移入されて、形質転換後に植物ゲノム中に組み込まれる。リゾビウム(Rhizobiales)目のある種の土壌細菌は、この能力を有し、例えば、リゾビウム科(Rhizobiaceae)(例えばリゾビウム属種(Rhizobium spp)、シノリゾビウム属種(Sinorhizobium spp)、アグロバクテリウム属種(Agrobacterium spp));フィロバクテリウム科(Phyllobacteriaceae)(例えばメソリゾビウム属種(Mesorhizobium spp)、フィロバクテリウム属種(Phyllobacterium spp.);ブルセラ科(Brucellaceae)(例えばオクロバクテリウム属種(Ochrobactrum spp.));ブラディリゾビウム科(Bradyrhizobiaceae)(例えばブラディリゾビウム属種(Bradyrhizobium spp.))、及びキサントバクテリア科(Xanthobacteraceae)(例えばアゾリゾビウム科属種(Azorhizobium spp.))、アグロバクテリウム属種(Agrobacterium spp.)、リゾビウム属種(Rhizobium spp.)、シノリゾビウム属種(Sinorhizobium spp)、メソリゾビウム属種(Mesorhizobium spp.)、フィロバクテリウム属種(Phyllobacterium spp.)、オクロバクテリウム属種(Ochrobactrum spp.)及びブラディリゾビウム属種(Bradyrhizobium spp)などであり、その例は、オクロバクテリウム属種(Ochrobactrum sp.)、リゾビウム属種(Rhizobium sp.)、メソリゾビウム・ロチ(Mesorhizobium loti)、シノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)を含む。根粒菌の例は、R.レグミノサルムbv.トリフォリイ(R. leguminosarum bv. trifolii)、R.レグミノサルムbv.ファセオリ(R. leguminosarum bv. phaseoli)及びリゾビウム・レグミノサルムbv.ビシアエ(Rhizobium leguminosarum, bv. viciae) (米国特許第7,888,552号)を含む。
【0096】
植物細胞を形質転換でき、DNAの植物ゲノム中への組み込みを誘導する、本発明を実施するために使用することができる他の細菌は、アゾバクター属(好気性)、ミカヅキモ属(Closterium)(厳密に嫌気性)、クレブシエラ属(Klebsiella)(場合により好気性)、及びロドスピリルム属(Rhodospirilllum)(嫌気性、光合成に活性)の細菌である。Tiプラスミドの移入は、数種類のリゾビウム科(Rhizobiaceae)のメンバー、例えば、リゾビウム・トリフォリイ(Rhizobium trifolii)、リゾビウム・レグミノサルム(Rhizobium leguminosarum)及びフィロバクテリウム・ミルシナセアルム(Phyllobacterium myrsinacearum)に腫瘍誘導能を付与することも見出されたが、それに対して、リゾビウム属種(Rhizobium sp.)NGR234、シノリゾビウム・メリロッテイ(Sinorhizobium meliloti)及びメソリゾビウム・ロッティ(Mesorhizobium loti)は、実際、多数の多様な植物への遺伝子移入を媒介するように改変することができた(Broothaerts et al., 2005, Nature, 433: 629-633)。
【0097】
アグロバクテリウム等による植物細胞へのT-DNA移入機構は、論文などで十分実証されている(例えば、Tzfira and Citovsky (2006) Curr. opin. Biotechnol. 17: 147-154、Gelvin (2003) MicroBiol.Molec.Biol.Rev. 67: 16-37、Gelvin (2009) Plant. Physiol. 150: 1665-1676を参照されたい)。簡単に説明すると、T-DNAは、典型的には、右境界(RB)及び左境界(LB)といわれる2つの境界領域により範囲が定められている。境界は、ビルレンスタンパク質VirD2によりニッキングされて、その5'末端への40VirD2の共有結合を有する移入された単鎖DNA(「T-ストランド」)を生ずる。アグロバクテリウムVirE2タンパク質も含むタンパク質-DNA複合体は、いわゆるタイプ4分泌システム(T4SS、ビルレンスタンパク質及びssDNA輸送体の両方)によりアグロバクテリウムの細胞から出て、植物細胞に移入され、アグロバクテリウムビルレンスタンパク質及び植物因子の両方の助けで植物のゲノムに組み込まれる。vir遺伝子は、通常一連のオペロンとしてTi又はRiプラスミド上に見出される。種々のTi及びRiプラスミドは、vir遺伝子の相補体中とは若干異なり、例えば、virFは常に存在するとは限らない。DNAを植物細胞に導入するための、アグロバクテリウム媒介ベクターの使用は、当技術分野で周知である。例えば、Fraley et al., (1985; Biotechnology 3: 629-635)、Rogers et al., (1987; Methods Enzymol 153: 253-277)及び米国特許第5,563,055号を参照されたい。
【0098】
左境界(LB)は、T-DNA移入のために厳密に必要とされることはなく、LBを欠くがRBを含有するT-DNAを含有する癌遺伝子は高度に毒性であるが、LBを含有するがRBを含有しないそのようなT-DNAは、完全に無毒性であった(Jen et al., 1986, J Bacteriol 166: 491-499)。したがって、本明細書において使用されるT-DNAは、細菌により植物細胞に移入可能なDNA分子を指し、それは、DNA切断の修復のために使用されるDNA(修復DNA)に加えて、少なくとも1つのT-DNA境界、好ましくは少なくとも右のT-DNA境界を含む。しかしながら、望ましくないベクター要素の組み込みを防止するためには、左及び右境界は、これらがT-DNA分子の末端を定義するので、両方共含まれるべきであり、すなわち目的のDNAに隣接するべきである。
【0099】
左境界が右境界(ref)よりも「読み過ごし(read through)」易いことが記載されている。したがって、1つのベクター中の2つのDNAが単一のT-DNA分子として処理される可能性を低減するために、2つのT-DNAを、2つのT-DNAが互いに最も近くに位置するベクター上では、2つの左境界が互いに向かい合う(頭-頭、RB-LB、LB-RB)ことのないように配向させることができる。したがって、一実施形態において、ベクター上における2つのT-DNAの配向は、2つのT-DNAが互いに最も近くに位置するベクター上では、2つの右境界が互いに向かい合う(T-DNAは、尾-尾配向にある: LB-RB、RB-LB)ようになっている。より好ましい実施形態では、ベクター上における2つのT-DNAの配向は、同じ方向にあり、その結果、1つのT-DNAの左境界が他のT-DNAの右境界と向かい合う、すなわち2つのT-DNAが頭-尾配向(LB-LB、RB-LB)にある。
【0100】
本発明のために使用することができるアグロバクテリウム属に属する細菌の例には、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)、アグロバクテリウム・ルビ(Agrobacterium rubi)、アグロバクテリウム・ビチス(Argobacterium vitis)が含まれるが、これらに限定されない。使用されるアグロバクテリウム属種は、野生型(例えば、毒性)であるか又は武装解除型(disarmed)株であり得る。アグロバクテリウムの好適株は、野生型株(例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンスなど)又は1つ以上の遺伝子が形質転換効率を増大させるために突然変異された株、例えば、それらのvir遺伝子の発現及び/又は誘導が、突然変異体又はキメラvirA又はvirG遺伝子の存在によって変更されたアグロバクテリウム株(例えばChen and Winans, 1991, J. Bacteriol. 173: 1139-1144、及びScheeren-Groot et al., 1994, J. Bacteriol. 176: 6418-6246)、余分なvirG遺伝子コピー、例えば、好ましくは、米国特許第6,483,013号に記載されているように複数コピーのプラスミドと連結された、pTiBo542に由来するスーパーvirG遺伝子を含む、アグロバクテリウム株などを含む。他の好適な株には: A.ツメファシエンスGV3101 (pMP90)) (Konc and Schell、1986, Mol Gen Genet. 204: 383-396)、LBA4404 (Hoekema et al., Nature 303: 179-180 (1983))、EHA101 (Hood et al., J. Bac. 168: 1291-1301 (1986))、EHA105 (Hood et al., Trans Res. 2: 208-218 (1993))、AGL1 (Lazo et al., Bio Technology 2: 963-967 (1991))が含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
アグロバクテリウム媒介植物形質転換のために、植物細胞中に挿入されるべきDNAは、特別のプラスミド中に、例えば、中間体(シャトル)ベクター中又はバイナリーベクター中のいずれかにクローニングすることができる。中間体ベクターは、アグロバクテリウム細胞中で独立に複製することはできないが、一般的な大腸菌の分子クローニング株中で操作及び複製され得る。そのような中間体ベクターは、右及び左T-DNA境界反復領域により通常は枠決めされる配列を含み、その配列は、形質転換された植物細胞の選択のために機能する選択マーカー遺伝子、クローニングリンカー、クローニングポリリンカー、又は植物細胞に形質転換される予定の遺伝子のための導入部位として機能し得る他の配列を含むことができる。したがって、植物に移入されることが望まれる遺伝子のクローニング及び操作は、大腸菌(E. coli)中で標準的な方法により、シャトルベクターをクローニングベクターとして使用して容易に実施することができる。最終的に操作されたシャトルベクターは、その後、さらなる作業のために、アグロバクテリウム植物形質転換株に導入され得る。中間体シャトルベクターは、ヘルパープラスミドにより(細菌のコンジュゲート化により)、電気穿孔により、化学的に媒介される直接DNA形質転換により、又は他の知られた方法により、アグロバクテリウムに移入され得る。シャトルベクターは、Ti若しくはRiプラスミド又はそれらの誘導体と中間体プラスミドとの間で相同的である配列に基づく相同組換えにより、Ti若しくはRiプラスミド又はそれらの誘導体に組み込まれ得る。この相同組換え(すなわち、プラスミド組込み)事象は、それにより、変更されたシャトルベクターを、アグロバクテリウム中で、共成分プラスミドのTi又はRiプラスミド部分により提供される複製起点(origin)及び他のプラスミド維持機能と共に安定に維持する手段を提供する。Ti又はRiプラスミドは、T-DNAの移入のために必要なvir遺伝子を含むvir領域も含む。vir領域を担持するプラスミドは、通常、右及び左T-DNA境界反復配列を含むT-DNA領域が欠失している突然変異Ti又はRiプラスミド(ヘルパープラスミド)である。機能的vir遺伝子を有し、全ての又は実質的に全てのT-領域及び関連する要素を欠くそのようなpTi由来プラスミドを、本明細書では、説明的にヘルパープラスミドと称する。
【0102】
植物の形質転換のためのT-DNAベクターは、いわゆるスーパーバイナリーシステムを使用して調製することもできる。これはシャトルベクター/相同組換えシステムの特化された例である(Komari et al: Methods in Molecular Biology (2006)、(K. Wang, ed.) No.343: Agrobacterium Protocols (2nd Edition,, vol. 1)HUMANA PRESS Inc., Totowa, NJ, pp. 15-41、及びKomori et al, (2007) Plant. Physiol. 145: 1155-1160により総説されている)。スーパーバイナリーシステムで使用されるアグロバクテリウム・ツメファシエンス宿主株はLBA4404(pSBI)である。株LBA4404(pSBI)は2つの独立に複製するプラスミド、pAL4404及びpSBIを担持する。pAL4404は、vir遺伝子の完全なセット(TiプラスミドpTiACH5由来)を含有するが、T-DNA領域を有しない(したがってT-DNAの左及び右境界反復配列を有しない)Ti-プラスミド由来ヘルパープラスミドである。プラスミドpSBIはpTiBo542に由来するvir遺伝子の追加の部分セットを供給し、この部分的vir遺伝子のセットはvirBオペロン及びvirCオペロン、並びに遺伝子virG及びvirDIを含む。スーパーバイナリーシステムで使用されるシャトルベクターの一例はpSBI Iであり、それは、植物細胞に形質転換される予定の遺伝子の導入部位として役立つクローニングポリリンカーを、右及び左T-DNA境界反復領域に隣接して含有する。シャトルベクターpSBI 1は、アグロバクテリウム中で独立に複製できないが、pSBI及びpSBIIに存在する共通配列間の相同組換えによってpSBIに組み込まれた場合に、共成分プラスミドとして安定に維持される。したがって、改変されたpSBIIベクター上でLBA4404(pSBI)中に導入された完全に改変されたT-DNA領域は、2つの異なるアグロバクテリウムのTiプラスミド供給源(pTiACH5及びpTiBo542)に由来するVirタンパク質により、生産的に作用されて植物細胞に移入される。スーパーバイナリーシステムは、単子葉植物種の形質転換に特に有用であることが証明されている。Hiei et al, (1994) Plant J. (6: 271-282及びIshida et al, (1996)Nat. Biotechnol, 14: 745-750を参照されたい。
【0103】
T-DNAベクターが、上で記載された2成分相同組換えシステムの代わりに、本明細書に後で記載される従来のクローニング技法によっても調製することができることは明らかであろう。
【0104】
本発明により、RGENをコードするキメラ遺伝子は、植物で発現可能なプロモーター(好ましくは、DNAポリメラーゼII「pol II」プロモーター)、例えば、RGENをコードするDNA領域、任意選択で、植物細胞中で機能的な3'末端領域と作動的に連結された、上で記載されたプロモーターを含む。さらなる要素は、RGENの発現を最適化するために、キメラ遺伝子中で作動的に連結され得る。エンハンサー又はイントロンなどのさらなる要素は、キメラ遺伝子中で作動的に連結されてRGENの発現を最適化することができる。キメラ遺伝子は、プロモーターと組合せて、プロモーターとコード配列の間に位置する他の調節配列、例えば転写活性化因子(「エンハンサー」)、例えば、特許出願WO 87/07644に記載されたタバコモザイクウイルス(TMV)の、又は例えば、Carrington & Freed, 1990、J. Virol. 64: 1590-1597により記載されているタバコエッチウイルス(TEV)の翻訳活性化因子も含むことができる。
【0105】
組み込まれ得るイントロンの例には、イネアクチン1遺伝子(US 5,641,876を参照されたい)、イネアクチン2遺伝子、トウモロコシスクロースシンターゼ遺伝子(Clancy及びHannah、2002、Plant. Physiol. 130 (2): 918-29)、トウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ-1 (Adh-1)及びブロンズ(Bronze)-1遺伝子(Callis et al. 1987 Genes Dev. 1 (10): 1183-200、Mascarenhas et al. 1990、Plant Mol Biol .15 (6): 913-20)、トウモロコシ熱ショックタンパク質70遺伝子(US 5,593,874を参照されたい)、トウモロコシ萎縮1遺伝子、ジャガイモ(Solanum tuberosum)感光性1遺伝子、並びにツクバネアサガオ(Petunia hybrida)熱ショックタンパク質70遺伝子(US 5,659,122を参照されたい)、アルファルファ由来の置換ヒストンH3遺伝子(Keleman et al. 2002 Transgenic Res. 11 (1): 69-72)並びにシロイヌナズナのいずれかの置換ヒストンH3 (ヒストンH3.3様)遺伝子(Chaubet-Gigot et al., 2001、Plant Mol Biol.45 (1): 17-30)由来の5'イントロンが含まれる。
【0106】
他の好適な調節配列は5'UTRを含む。本明細書において使用される5'UTRは、リーダー配列ともいわれて、転写開始部位とコード領域の開始コドンとの間に位置するメッセンジャーRNA (mRNA)の特定の領域である。それはmRNAの安定性及び翻訳効率に関与する。例えば、35S転写開始部位の下流のペチュニアクロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子の5'非翻訳リーダーは、レポーター遺伝子発現の定常状態レベルを増大させるために利用することができる(Harpster et al., 1988, Mol Gen Genet. 212 (1): 182-90)。WO 95/006742には、導入遺伝子発現を増大させるための、熱ショックタンパク質をコードする遺伝子由来の5'非翻訳リーダー配列の使用が記載されている。
【0107】
キメラ遺伝子は、3'末端領域、すなわち、植物細胞中で作動し得る転写終結又はポリアデニル化配列も含むことができる。転写終結又はポリアデニル化配列として、細菌起源の任意の対応する配列、例えば、ウイルス起源のアグロバクテリウム・ツメファシエンスのnosターミネーター、例えばCaMV35Sターミネーター、又は植物起源の、例えば、特許出願公開第EP0633317A1号に記載されたヒストンターミネーターを使用することができる。ポリアデニル化領域は、天然遺伝子、種々の他の植物遺伝子、又はT-DNAに由来することができる。付加されるべき3'末端配列は、例えば、ノパリンシンターゼ又はオクトピンシンターゼ遺伝子、又はあるいは別の植物遺伝子に由来してもよい。
【0108】
本発明により、少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードするキメラ遺伝子は、ガイドポリヌクレオチド(gRNA)をコードするDNA領域と作動的に連結された植物で発現可能なプロモーター(DNAポリメラーゼIII「pol III」プロモーター)を含む。エンハンサー又はイントロンなどのさらなる要素は、キメラ遺伝子中で作動的に連結されてガイドポリヌクレオチドの発現を最適化することができる。
【0109】
前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードするキメラ遺伝子は、多重化、すなわち、複数のDNA配列を同時に標的とすることを可能にするように、開裂配列により連結された2つ以上のガイドポリヌクレオチド配列(gRNA)をコードすることもできる。これは、例えば、WO 2015099850 (Csy4開裂部位)、WO 20160614811 (tRNA開裂配列)及びWO 2014204724に記載されている。
【0110】
一実施形態において、前記RGENをコードする前記キメラ遺伝子、前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする前記少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び前記少なくとも1つの供与体ポリヌクレオチドが、1つのT-DNAベクター上に位置する。そのようなT-DNAベクターは、(少なくとも)3種の構成要素、すなわち、前記RGENをコードするキメラ遺伝子、前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び供与体ポリヌクレオチドを一緒に担持する1つ以上のT-DNA分子を含むことができる。例えば、全ての(少なくとも)3種の構成要素は、前記1つのT-DNAベクター中で別個のT-DNAに位置することができ、各構成要素には一対のT-DNA境界(左及び右)が隣接する。別の例では、前記RGENをコードするキメラ遺伝子及び前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする少なくとも1つのキメラ遺伝子は、一緒に1つのT-DNA分子上(1組の左及び右T-DNA境界の間)に位置することができ、ガイドポリヌクレオチドは別のT-DNA分子上(別の組の左及び右T-DNA境界の間)に位置することができた。特定の例では、前記RGENをコードする前記キメラ遺伝子、前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び前記少なくとも1つの供与体ポリヌクレオチドが、一緒に、1つのT-DNA分子上に位置し、すなわち、全てが単一の組のT-DNA境界(左及び右境界)の間に位置する。
【0111】
特定の実施形態で、RGENのコード領域は、植物で発現するために最適化される。それは、粒状植物種、例えばイネ又はコムギでの発現にも最適化され得る。Cas9を含むRGENの植物最適化コード領域は、とりわけ、Shan et al. Nature Protocols, 9, 2395-2410、WO 2015026883、WO 2015026885、WO 2015026886に記載されている。
【0112】
一実施形態において、前記RGENをコードする前記キメラ遺伝子は、ヌクレオチド28位からヌクレオチド4164位までの配列番号5のヌクレオチド配列を含む。
【0113】
一実施形態において、RGENは、配列番号6のアミノ酸10〜1388に対する少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は100%の配列同一性を有し、配列番号6の24位に対応するアミノ酸位置におけるDからEへの置換を含むアミノ酸配列を含むことができる。
【0114】
RGENは、少なくとも1つ、例えば2つの核局在化シグナル(NLS)を含むことが好ましい。NLSは、それがRGENの機能性に干渉しない限り、原則として上記ポリペプチド中のどこにでも存在することができるが、N末端及び/又はC末端に又はその付近に位置することが好ましい。
【0115】
本発明による方法のさらなる実施形態において、上記細菌は、前記植物細胞中に導入されて発現された選択マーカー又はスクリーニング可能マーカー遺伝子をさらに含む。本明細書において使用される「選択マーカー又はスクリーニング可能マーカー」は、当技術分野におけるそれらの通常の意味を有し、植物で発現可能なホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、グリホセートオキシダーゼ、グリホセート耐性EPSP酵素、ニトリラーゼ遺伝子、突然変異体アセトラクテートシンターゼ又はアセトヒドロキシ酸シンターゼ遺伝子、β-グルクロニダーゼ(GUS)、R-座位遺伝子、緑色dit蛍光タンパク質等を含むが、これらに限定されない。選択マーカー又はスクリーニング可能マーカー遺伝子は、植物細胞又は植物で発現される場合、前記植物細胞又は植物に選択可能な又はスクリーニング可能な表現型を付与することができる。前記選択マーカー遺伝子は、別のT-DNA分子上に存在してもよいが、1つのT-DNA上で1つ以上の又は全ての他の(少なくとも)3種の構成要素と組み合わせることも可能である。
【0116】
1種の細菌を使用する選択マーカー又はスクリーニング可能マーカー遺伝子と他の構成要素とのそのような共送達(例えば1つのT-DNAベクター上で又はさらには1つのT-DNA上で)は、意図された改変が為される事象の回収を大きく増大させる。共導入された選択マーカーに基づいて選択する場合(すなわち第1選択として)、選択マーカー遺伝子により付与された耐性を示す事象の殆ど半分が実際に所望の改変を含有したことが、現在見出されている。
【0117】
別の実施形態において、RGENをコードするキメラ遺伝子、前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び少なくとも1つの供与体ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されたように、1種の細菌を使用して送達されるが、それに対して、選択マーカー又はスクリーニング可能マーカー遺伝子は、別々に植物細胞に、例えば、前記選択マーカー遺伝子を含む別の細菌との共培養により、又は別の送達技法(例えば直接送達)により導入される。
【0118】
あるいは(又はそれに加えて)、目的のポリヌクレオチドの組込み時に植物細胞のゲノムで為される改変は、前記植物細胞に選択可能な又はスクリーニング可能な表現型を付与する。
【0119】
本明細書において使用される選択可能な又はスクリーニング可能な表現型は、植物細胞又は植物に付与された特性であり、その特性は、前記植物細胞又は植物を、前記特性を有しない他の植物細胞又は植物から識別及び/又は選抜及び/又は富化することを可能にする。これは例えば、視覚的マーカー(例えば色又は蛍光性マーカー)であり、又は選択剤(例えば除草剤、抗生物質)などのある条件下での選択的利点であり得る。
【0120】
便利なことに、選択可能な又はスクリーニング可能な表現型は、除草剤耐性、例えばEPSPS阻害除草剤、例えばグリホセートに対する耐性であり得る。この目的のために、供与体ポリヌクレオチド及び目的のポリヌクレオチドは、植物細胞のゲノム中に存在する自然の(native)EPSPS遺伝子に、グリホセートなどの除草剤に対する耐性を強化する突然変異を導入するように設計することができる。特定の例は、例えば、Li et al., 2016、Nature Plantsに記載されたTIPS突然変異である。同様に、供与体ポリヌクレオチドは、改変時に選択を可能にする他の植物内因性遺伝子を改変するように設計することができる。例えば、ALS/AHAS、ACCase、HPPDなどの内因性遺伝子は、対応する除草剤に対する耐性をモジュレート(増大)するように改変され得る(当技術分野において周知である)。あるいは、選択マーカー遺伝子の完全なコード配列を特定のゲノム座位に導入することができ、それにより上記配列は、既存の調節要素を使用するようにゲノム位置を選択することにより、例えば既存の遺伝子(内因性遺伝子であり得が導入遺伝子であることもできる)のコード配列を選択可マーカー若しくはスクリーニング可能マーカー遺伝子のコード配列によって置換することにより、又は調節配列とコード配列を含む全体遺伝子を導入することにより、必要な調節要素(プロモーター、ターミネーターなど)の制御下に置かれる。
【0121】
選択可能な又はスクリーニング可能な表現型は、例えば、改変されたEPSPS遺伝子の場合には、グリホセートに対する(強化された)耐性であることができ、改変されたALS/AHAS遺伝子の場合には、例えば、イミダゾリノン、ピリミジニルチオベンゾエート、スルホニルアミノカルボニルチアゾリノン、スルホニルウレア及び/又はトリアゾロピリミジンに対する(強化された)耐性であることができ、改変されたACCase遺伝子の場合には、例えば、アリールオキシフェノキシプロピオネート(FOP)、シクロヘキサンジオン(DIM)、及びフェニルピラゾリン(DEN)に対する(強化された)耐性であることができ、改変されたHPPD遺伝子その他の場合には、例えば、ピラゾロン、トリケトン、及びジケトニトリル(例えばメソトリオン、イソオキサフルトール、トプラメゾン、ピラスルフトール及びテンボトリオン)に対する(強化された)耐性であり得る。
【0122】
別の実施形態では、標的化改変により前記植物細胞に付与された選択可能な表現型は、標的化ゲノム改変により耐性が付与された選択化合物に基づく直接選択のために、すなわち、共に形質転換された選択マーカー遺伝子(例えばバール遺伝子)に基づく最初の選択を必要とせずに、使用することができる。これは非常に早い段階で標的化改変のスクリーニングを可能にして、意図された改変の存在を確認する第2の選択又はスクリーニングステップの必要性を低下させる。
【0123】
アグロバクテリウム又は任意の他の細菌を使用する植物細胞の形質転換は、プロトプラスト共培養、外植片接種、フローラルディッピング(floral dipping)及び真空浸透(vacuum infiltration)によって生じ得る。そのような技術は、例えば、米国特許第5,177,010号、米国特許第5,104,310号、欧州特許出願第0131624B1号、欧州特許出願第120516号、欧州特許出願第159418B1号、欧州特許出願第176112号、米国特許第5,149,645号、米国特許第5,469,976号、米国特許第5,464,763号、米国特許第4,940,838号、米国特許第4,693,976号、欧州特許出願第116718号、欧州特許出願第290799号、欧州特許出願第320500号、欧州特許出願第604662号、欧州特許出願第627752号、欧州特許出願第0267159号、欧州特許出願第0292435号、米国特許第5,231,019号、米国特許第5,463,174号、米国特許第4,762,785号、米国特許第5,004,863号、及び米国特許第5,159,135号に記載されている。植物細胞の形質転換のためのベクターを含有するT-DNAの使用は、集中的に研究されて、欧州特許出願第120516号、An et al, (1985, EMBOJ. 4: 277-284)、Fraley et al, (1986, Crit. Rev. Plant Sci.4: 1-46)、及びLee and Gelvin (2008, Plant. Physiol. 146: 325-332)に詳細に記載されている。
【0124】
本発明により形質転換され得る種々の組織外植片は、胚軸、子葉、未成熟接合胚、葉、葯、花弁、胚珠、根、及び分裂組織、幹細胞及び葉柄由来の外植片を含む。カルス組織も、本発明により形質転換することができる。本明細書において使用される用語「カルス」は、主として胚形成細胞の組織解体塊及び植物組織培養の結果として生成された細胞クラスターを指す。砕けやすいカルスは、シュート及び根を形成し、最終的には、植物全体を再生する能力を有する砕けやすい組織を有するカルスを指す。凝縮カルスもシュート及び根を形成する能力を有することができる。カルスは、上記のように種々の組織の外植片から再生/誘導され得る。
【0125】
一実施形態において、本発明によりゲノムが改変された植物細胞は、未成熟胚又は胚形成カルスに含まれ、すなわち、該細胞は、下で記載されるように、未成熟胚(未成熟胚細胞)又は胚形成カルス(胚形成カルス細胞)の細胞である。
【0126】
目的のポリヌクレオチドの組み込みを導くために、供与体DNA分子は、十分な長さ並びに予め選択された部位の上流及び/又は下流のゲノムDNAとの配列同一性を有する、1箇所の又は2箇所の相同性領域を含んでもよく、それにより、予め選択された部位に隣接する上流及び/又は下流のDNA領域との組換えを可能にする。これは、目的のDNAの挿入のよりよい制御を可能にする。実際、相同組換えによる組込みは、目的のDNAの、植物の核ゲノムへのヌクレオチドレベルまでの精密な連結を可能にするであろう。
【0127】
組換えのための十分な相同性を有するために、相同性領域は、長さが様々であってもよく、少なくとも約10ヌクレオチドの長さであるべきである。しかしながら、隣接する領域は、実際的に可能な長さであってよい(例えば、完全細菌人工染色体(BAC)などの最大約100〜150kbまで)。好ましくは、隣接する領域は、約10ヌクレオチド(nt)、15ヌクレオチド(nt)、20ヌクレオチド(nt)、25ヌクレオチド(nt)、50ヌクレオチド(nt)、100ヌクレオチド(nt)、200ヌクレオチド(nt)、500ヌクレオチド(nt)、750ヌクレオチド(nt)、1000ヌクレオチド(nt)、1500ヌクレオチド(nt)、2000ヌクレオチド(nt)、2500ヌクレオチド(nt)、5000ヌクレオチド(nt)、又はさらにそれより長いであろう。その上、相同性領域は、予め選択された部位に隣接するDNA領域と同一である必要はなく、予め選択された部位に隣接するDNA領域と約80%〜約100%の間の配列同一性、好ましくは約95%〜約100%の配列同一性を有していてもよい。隣接する領域が長いほど、相同性に対する必要性は厳しくなくなる。さらに、配列同一性は、DSBの近傍で実際に可能なだけ高いことが好ましい。さらに、予め選択された部位において、隣接するDNA配列のDNA配列を変えることなく、標的DNA配列の交換を達成するために、隣接するDNA配列は、好ましくは、予め選択された部位又は交換されるべき標的DNA配列に隣接する上流及び下流DNA領域と同一であるべきである。
【0128】
供与体ポリヌクレオチド(目的のポリヌクレオチド)は、植物で発現可能な1つ以上の目的の遺伝子又は植物で発現可能な1つ以上の遺伝子の部分を含むことができる。そのような植物で発現可能な目的の遺伝子は、下でさらに記載されるように、例えば、除草剤耐性遺伝子、昆虫抵抗性遺伝子、疾患抵抗性遺伝子、非生物的ストレス抵抗性遺伝子、油生合成、炭水化物生合成に関与する酵素、繊維強度又は繊維長さに関与する酵素、二次代謝物の生合成に関与する酵素であり得る。
【0129】
供与体ポリヌクレオチド(目的のポリヌクレオチド)は、選択マーカー又はスクリーニング可能マーカーも含むことができ、それは、挿入後に除去されてもされなくてもよく、例えば、WO 06/105946、WO 08/037436又はWO 08/148559に記載されているように、潜在的に正確に標的化された事象の同定を容易にする。この選択マーカー又はスクリーニング可能マーカー遺伝子は、植物細胞に別に移入され得るどのような他のマーカー遺伝子とも異なることが好ましい。
【0130】
2つ以上のアグロバクテリウム株も、多重化のために同時に送達されることが可能であることは明らかであろう、Char et al., (Plant Biotechnology Journal, 5 Sept 2016)を参照されたい。
【0131】
さらなるステップで、標的化改変を含む、このように作製されて選択された植物細胞は、植物へと成長させることができる。標的化改変を含むそのような植物は、その後別の植物と交配することができる。次に、意図された改変を含むが、例えば、前記RGENをコードする前記キメラ遺伝子及び/又は前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする前記少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び/又は供与体ポリヌクレオチドの非標的化挿入を含まないそれらの子孫植物が選択され得る。別の植物との交配は自家交配であることもできる。標的化改変を含むそのような植物は、本明細書の別のところで記載されるように、植物製品を製造するために使用することもできる。
【0132】
発明のこの態様の方法は細菌性形質転換に適した任意の植物細胞又は植物に適用され得ることは認識されるであろう。一例で、植物細胞又は植物はイネ種(Oryza)、例えばイネ(Oryza sativa)である。
【0133】
(核)ゲノム中に意図された改変(挿入、置換及び/又は欠失)を含むことを特徴とする、本発明の方法により作製された植物細胞、植物の部分及び植物、例えば、果実、種子、胚、生殖組織、分裂組織領域、カルス組織、葉、根、シュート、花、繊維、維管束組織、配偶体、胞子体、花粉及び小胞子などを提供することも本発明の目的である。配偶子、種子、胚、接合体又は体細胞のいずれか、伝統的育種方法によって作製されたDNA改変事象を含む植物の子孫又は雑種も、本発明の範囲内に含まれる。そのような植物は、予め選択された部位に挿入されたか若しくはそれを置き換えた目的のポリヌクレオチドを含有することができるか又は特定のDNA配列の欠失(単一ヌクレオチドでさえ)を有してもよく、この意図された改変の存在によってのみそれらの創始植物と異なるであろう。
【0134】
第2の態様において、本発明は、上の方法で使用するために適した細菌を提供する。そのような細菌は、RGENをコードするキメラ遺伝子、少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び少なくとも1つの供与体ポリヌクレオチドを含む細菌であって、前記RGENをコードする前記キメラ遺伝子、前記ガイドポリヌクレオチドをコードする前記キメラ遺伝子、及び前記供与体ポリヌクレオチドを植物細胞(の核ゲノム)に移入することができ、前記RGEN及び前記ガイドポリヌクレオチドは、前記植物細胞中で発現したときに、RGENがDNA切断を植物細胞の(核)ゲノム中の予め選択された部位に導入することを可能にする複合体を形成することができ、前記供与体ポリヌクレオチドは前記DNA切断の修復のための鋳型として使用することができ、全て上の第1の態様の任意の実施形態に記載されている、細菌である。
【0135】
本明細書に記載された、RGENをコードするキメラ遺伝子、少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び少なくとも1つの供与体ポリヌクレオチドを含む(T-DNA)ベクターも提供される。さらなる実施形態において、前記ベクターは、本明細書に記載されたスクリーニング可能マーカー遺伝子又は選択マーカー遺伝子も含む。好ましくは、前記構成要素は、1つのT-DNA分子上に(一対のT-DNA境界間に)に位置する。
【0136】
第3の態様において、本発明は、配列番号6の24位に対応するアミノ酸位置でのDからEへの置換を含む、上の態様に記載された、Cas9ポリペプチドなどの単離されたRGENポリペプチドを提供した。一例で、単離されたRGENポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸10位からアミノ酸1388位までに対し、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は100%の配列同一性を有する。
【0137】
上で記載されたRGENをコードする単離された核酸も本発明の範囲内に含まれて、例えば前記核酸は、配列番号5のヌクレオチド28位からヌクレオチド4164位までのヌクレオチド配列、又は上の単離されたRGENポリペプチドをコードするが、配列番号5に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25ヌクレオチド(nt)の差を有するそれらのバリアントを含んでいた。
【0138】
別の実施形態において、上で記載された、異種プロモーターに作動的に連結された単離された核酸を含むキメラ遺伝子が提供される。
【0139】
上で記載された単離されたポリペプチド、単離された核酸又はキメラ遺伝子を含む細菌細胞又は植物細胞などの宿主細胞がさらに提供される。
【0140】
第4の態様においては、植物細胞中の内因性EPSPS遺伝子を改変する、又は改変されたEPSPS遺伝子を有する植物細胞を作製する方法であって、
a. 前記細胞中で、前記植物の内因性EPSPS遺伝子における配列を認識する部位指向性のDNA改変性ポリペプチドを発現させる、及び/又は前記植物細胞中に、前記内因性EPSPS遺伝子を改変するための鋳型として使用することができる供与体ポリヌクレオチドを導入するステップ、
b. 前記植物細胞を、1種以上のEPSPS阻害剤を含む培地で培養することにより、前記EPSPS阻害剤(複数可)に対する前記植物細胞の耐性を評価するステップ、並びに任意選択で
c. 前記少なくとも1種のEPSPS阻害剤に対する向上した耐性(改変前の前記植物細胞と比較して)を有する植物細胞を選択するステップ
を含む方法が提供される。
【0141】
EPSPS阻害剤(例えばグリホセート)に基づく直接選択、すなわち、EPSPS阻害剤は、第1の選択剤として使用されて、方法の有効性その他の容易な読み出しを可能にする。したがって、この方法は、ゲノム改変構成要素(ゲノム編集構成要素)、例えば、供与体ポリヌクレオチド、ガイドポリヌクレオチド、部位特異的ヌクレアーゼ、例えばメガヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TAL-エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、RGEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ又は突然変異を導入することができる他の部位指向性(spite-directed)若しくは配列特異的DNA改変酵素(例えばデアミナーゼ)、並びにそのような構成要素(例えばプロモーターなど) の発現のために使用される要素、及び例えば効率、事象の純度の点で成果に影響し得る他のパラメーター、例えば、送達方法/機構、例えば粒子衝撃、細菌性形質転換、(リボ核)タンパク質トランスフェクション、種々の構成要素を送達するタイミングその他に関して評価するために便利に使用することができる。向上した耐性を有する植物細胞を選択することによっても、改変されたEPSPS遺伝子を有する細胞を選択することができる。したがって、この方法は、改変されたEPSPS遺伝子を有する植物細胞、例えばEPSPS阻害除草剤に対する改変された(例えば増大したか又は低下した)耐性を有する植物細胞の作製も可能にする。
【0142】
一実施形態において、改変されたEPSPS遺伝子を有する植物細胞の選択、すなわち、EPSPS阻害剤を含む培地における培養は、形質転換直後の非選択培地で細胞をまず培養した数日後(例えば1、2、3, 4又は5日後)に行われる。EPSPS阻害剤は、グリホセートであり得る。培地は、グリホセートを、約50〜250mg/L、例えば約100〜200mg/L、例えば約150mg/Lの濃度で含むことができる。
【0143】
一実施形態において、供与体ポリヌクレオチドは、TIPS突然変異を含む、すなわち、前記内因性EPSPS遺伝子を改変するための鋳型として使用されたときに、TIPS突然変異の前記EPSPS遺伝子への導入を生じさせる。代替的実施形態では、供与体ポリヌクレオチドは、TIPV又はTIPL突然変異を含むことができる。
【0144】
別の実施形態において、植物細胞はイネ植物細胞である。
【0145】
さらなる実施形態において、(機能的)選択マーカー遺伝子は植物細胞に導入されず、すなわち、該方法は別個の(機能的)選択マーカー遺伝子の導入を排除する。
【0146】
植物細胞中の部位指向性DNA改変性ポリペプチドの発現は、当技術分野で利用可能な任意の方法、例えば、アグロバクテリウム媒介形質転換、直接送達方法、例えば衝撃又はウイルス送達等によって、植物細胞に該ポリペプチドをコードする植物で発現可能な遺伝子を提供することにより、便利に達成することができる。あるいは、植物細胞に、ポリペプチドを直接、任意選択で、当技術分野で記載されているガイドポリヌクレオチド(例えばWO 2014065596を参照されたい)と共に提供することができる。
【0147】
第5の態様においては、本発明は、予め選択された部位で、植物細胞の(核)ゲノムを改変する方法又は(核)ゲノム中の予め選択された部位に改変を有する植物細胞を作製する方法であって
a. 前記細胞中に、ヌクレオチド誘導型DNA改変性ポリペプチド(NGDMP)及びガイドポリヌクレオチドを導入/発現するステップであり、前記NGDMP及び前記ガイドポリヌクレオチドは、NGDMPが植物細胞のゲノムを予め選択された部位で改変することを可能にする複合体を形成することができるものである、ステップ、
b. 前記ゲノムが前記予め選択された部位で改変された植物細胞を選択するステップ
を含み、
前記NGDMP、前記ガイドポリヌクレオチドは、粒子流入銃を使用して、前記植物細胞に導入されることを特徴とする方法を提供する。
【0148】
本明細書において使用される粒子流入銃とは、例えばVain、P、Keen、N. Murillo、J. et al. Plant Cell Tiss organ Cult (1993) 33: 237により記載されたように、直接ヘリウムスチーム中で、DNAをコートした金粒子の加速を可能にするデバイスを指す。
【0149】
別の態様では、植物細胞の(核)ゲノムを、予め選択された部位で改変する方法又は改変されたゲノムを有する植物細胞を作製する方法であって:
a. 前記細胞に、ヌクレオチド誘導型DNA改変性ポリペプチド(NGDMP)及びガイドポリヌクレオチドを導入するステップであり、前記NGDMP及び前記ガイドポリヌクレオチドは、NGDMPが植物細胞のゲノムを予め選択された部位で改変することを可能にする複合体を形成することができるものである、ステップ、
b. 前記細胞中に、少なくとも1つの(植物で発現可能な)選択マーカー遺伝子を導入するステップ、
c. 前記選択マーカー遺伝子を含む1つ以上の植物細胞を選択するステップ(すなわち、前記選択マーカー遺伝子により付与された選択可能な表現型を有する1つ以上の植物細胞を選択するステップ)、
d. 前記ゲノムが前記予め選択された部位で改変された植物細胞を(前記1つ以上の植物細胞から)選択するステップ
を含み、
前記植物細胞を、前記RGENをコードするキメラ遺伝子、前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び前記選択マーカー遺伝子を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む少なくとも1種の細菌と接触させることにより、前記植物細胞中に前記NGDMP、前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチド、及び前記少なくとも1つの選択マーカー遺伝子が導入されることを特徴とする方法が提供される。
【0150】
ヌクレオチド誘導型DNA改変性ポリペプチド(NGDMP)は、ヌクレオチド誘導型エンドヌクレアーゼ、例えば上で記載されたRGEN、又はDNA誘導型エンドヌクレアーゼ(例えばW02014189628、W02015140347、Nature Biotechnology 34、768-773, 2016)、又は他のヌクレオチド誘導型(例えば、RNA誘導型又はDNA誘導型)DNA改変性ポリペプチド、例えば、WO 2013176772、WO 2013088446、WO 2014099750に記載された後成的な変更因子(例えばメチラーゼ)、デアミナーゼ(塩基編集)であり得る。
【0151】
したがって、本明細書において使用される「改変する」又は「改変された」は、例えば、開裂及びそれに続く修復のため又は塩基編集による、予め選択された部位におけるヌクレオチド配列の変化を指すことができる。それは、後成的状態における変化、例えば近くの遺伝子の発現に影響し得る予め選択された部位における又はその周辺における例えばDNAのメチル化、染色質構造、ヒストンの改変を指すことができる。
【0152】
したがって、一実施形態において、前記RGDMPはRGENであり、前記RGENと前記少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドとは、RGENが前記予め選択された部位に又はその付近にDNA切断を導入することを可能にする複合体を形成することができる。
【0153】
前記RGEN及び前記ガイドポリヌクレオチドと一緒に、目的のポリヌクレオチドを含む供与体ポリヌクレオチドを前記植物細胞に導入することができ、前記供与体ポリヌクレオチドは、前記DNA切断の修復のための鋳型として使用され、それにより前記目的のポリヌクレオチドを前記予め選択された部位に組み込んで、前記予め選択された部位における前記ゲノムの改変を生じさせる。
【0154】
本発明は、NGDMPをコードするキメラ遺伝子、少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドをコードする少なくとも1つのキメラ遺伝子、及び少なくとも1つの(植物で発現可能な)選択マーカー遺伝子を含む細菌であって、その細菌は前記NGDMPをコードする前記キメラ遺伝子、前記ガイドポリヌクレオチドをコードする前記キメラ遺伝子、及び前記選択マーカー遺伝子を、植物細胞(の核ゲノム)中に移入又は導入することができ、前記NGDMP及び前記ガイドポリヌクレオチドは、前記植物細胞中で発現したときに、NGDMPが植物細胞の(核)ゲノムを改変することを可能にする複合体を形成することができるものである、細菌をさらに提供する。
【0155】
該細菌は、上に記載されたように、細菌内に含有されるDNAの植物細胞のゲノム中への安定な移入を指令することができる任意の細菌であり得る。アグロバクテリウム・ツメファシエンスが特に好適である。
【0156】
一例で、NGDMPをコードするキメラ遺伝子、ガイドポリヌクレオチドをコードするキメラ遺伝子、及び選択マーカー遺伝子は、1つのベクター上に、好ましくは1つのT-DNA分子上に(一対のT-DNA境界間に)位置する。
【0157】
細菌は、本明細書に記載された供与体ポリヌクレオチドを、例えば、RGENにより誘導されたDNA切断の修復のためにさらに含むことができる。好ましい実施形態では、供与体ポリヌクレオチドは、同じT-DNA上に位置する。
【0158】
本明細書に記載されたNGDMPをコードするキメラ遺伝子、ガイドポリヌクレオチドをコードするキメラ遺伝子、及び選択マーカー遺伝子を、好ましくは、1つのT-DNA分子上に(一対のT-DNA境界間に)含む(T-DNA)ベクターも記載されている。ベクターは、供与体ヌクレオチドを、好ましくは同じT-DNA上に含むこともできる。
【0159】
供与体ポリヌクレオチドにより、本発明による方法は、発現産物をコードする遺伝子(目的の遺伝子)を含む核酸分子、特定のヌクレオチド配列のシグネチャー、例えばその後の同定のためのシグネチャーを有するヌクレオチド配列を含む核酸分子、又は例えば、予め選択された部位付近に位置する遺伝子の発現をモジュレートするための(誘導可能な)エンハンサー若しくはサイレンサーを含むか若しくは改変する核酸分子を含む、目的の任意の核酸分子の挿入を可能にすることは明らかであろう。
【0160】
除草剤耐性遺伝子は、酵素5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ(EPSPS)をコードする遺伝子を含む。そのようなEPSPS遺伝子の例は、細菌ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)のAroA遺伝子(突然変異体CT7)(Comai et al., 1983, Science 221, 370-371)、細菌アグロバクテリウム属種のCP4遺伝子(Barry et al., 1992, Curr. Topics Plant. Physiol. 7, 139-145)、ペチュニアEPSPS (Shah et al., 1986、Science 233, 478-481)、トマトEPSPS(Gasser et al., 1988、J.Biol.Chem.263、4280-4289)、又はシコクビエ(Eleusine)EPSPS (WO 01/66704)をコードする遺伝子である。それは、例えば、EP0837944、WO 00/66746、WO 00/66747又はWO 02/26995に記載されている突然変異EPSPSであることもできる。グリホセート耐性植物は、米国特許第5,776,760号及び第5,463,175号に記載されているグリホセートオキシド-レダクターゼ酵素をコードする遺伝子の発現により得ることもできる。グリホセート耐性植物は、例えばWO 02/36782、WO 03/092360、WO 05/012515及びWO 07/024782に記載されているグリホセートアセチルトランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子を発現させることにより得ることもできる。グリホセート耐性植物は、例えばWO 01/024615又はWO 03/013226に記載されている上記の遺伝子の天然に生ずる突然変異を含有する植物を選択することにより得ることもできる。グリホセート耐性を付与するEPSPS遺伝子は、例えば、米国特許出願第11/517,991号、第10/739,610号、第12/139,408号、第12/352,532号、第11/312,866号、第11/315,678号、第12/421,292号、第11/400,598号、第11/651,752号、第11/681,285号、第11/605,824号、第12/468,205号、第11/760,570号、第11/762,526号、第11/769,327号、第11/769,255号、第11/943801号又は第12/362,774号に記載されている。グリホセート耐性を付与する他の遺伝子、例えばデカルボキシラーゼ遺伝子は、例えば米国特許出願第11/588,811号、第11/185,342号、第12/364,724号、第11/185,560号又は第12/423,926号に記載されている。
【0161】
他の除草剤耐性遺伝子は、除草剤を無毒化する酵素又は、例えば、米国特許出願第11/760,602号に記載されている、阻害に耐性である突然変異体グルタミンシンターゼ酵素をコードすることができる。1つのそのような有効な無毒化酵素は、ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(ストレプトマイセス種由来のbar又はpatタンパク質など)をコードする酵素である。ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼは、例えば、米国特許第5,561,236号、第5,648,477号、第5,646,024号、第5,273,894号、第5,637,489号、第5,276,268号、第5,739,082号、第5,908,810及び第7,112,665号に記載されている。
【0162】
除草剤耐性遺伝子は、酵素ヒドロキシフェニルピルベートジオキシゲナーゼ(HPPD)を阻害する除草剤に対する耐性を付与することもできる。ヒドロキシフェニルピルベートジオキシゲナーゼは、パラ-ヒドロキシフェニルピルベート(HPP)がホモゲンチセートに変換される反応を触媒する酵素である。HPPD阻害剤に対する植物の耐性は、天然に生ずる耐性のHPPD酵素をコードする遺伝子、又はWO 96/38567、WO 99/24585、及びWO 99/24586、WO 2009/144079、WO 2002/046387、若しくはUS 6,768,044に記載されている突然変異若しくはキメラHPPD酵素をコードする遺伝子を用いて形質転換することができる。HPPD阻害剤に対する耐性は、HPPD阻害剤による自然のHPPD酵素の阻害にも拘わらず、ホモゲンチセートの生成を可能にするある種の酵素をコードする遺伝子を用いて植物を形質転換させることにより得ることもできる。そのような植物及び遺伝子は、WO 99/34008及びWO 02/36787に記載されている。HPPD阻害剤に対する植物の耐性は、WO 2004/024928に記載されているHPPD耐性酵素をコードする遺伝子に加えて、プレフェネートデヒドロゲナーゼ(PDH)活性を有する酵素をコードする遺伝子を用いて植物を形質転換させることにより改善することもできる。さらに、植物は、それらのゲノムに、HPPD阻害剤を代謝又は分解することができる酵素、例えばWO 2007/103567及びWO 2008/150473に示されたCYP450酵素などをコードする遺伝子を追加することにより、HPPD阻害除草剤に対してより耐性にすることができる。
【0163】
さらになお除草剤耐性遺伝子は、例えばTranel and Wright (2002, Weed Science 50: 700-712)だけでなく、米国特許第5,605,011号、第5,378,824号、第5,141,870号、及び第5,013,659号にも記載されたALS酵素バリアント(アセトヒドロキシ酸シンターゼ、AHASとしても知られている)をコードする。スルホニルウレア耐性植物及びイミダゾリノン耐性植物の作製は、米国特許第5,605,011号、第5,013,659号、第5,141,870号、第5,767,361号、第5,731,180号、第5,304,732号、第4,761,373号、第5,331,107号、第5,928,937号、及び第5,378,824号、並びに国際公開WO 96/33270に記載されている。他のイミダゾリノン耐性遺伝子も、例えば、WO 2004/040012、WO 2004/106529、WO 2005/020673、WO 2005/093093、WO 2006/007373、WO 2006/015376、WO 2006/024351、及びWO 2006/060634に記載されている。さらにスルホニルウレア耐性遺伝子及びイミダゾリノン耐性遺伝子は、例えばWO 07/024782に記載されている。
【0164】
昆虫抵抗性遺伝子は:
1) バチルス・チューリンゲンシス由来の殺虫性結晶タンパク質又はそれらの殺虫性部分、例えば、Crickmore et al. (1998、Microbiology and Molecular Biology Reviews, 62: 807-813)によりリストにされ、バチルス・チューリンゲンシス毒素名でCrickmore et al. (2005)により、オンライン:http://www.lifesci.sussex.ac.uk/Home/Neil_Crickmore/Bt/)で更新された殺虫性結晶タンパク質、又はそれらの殺虫性部分、例えば、Cryタンパク質クラスのCry1Ab、Cry1Ac、Cry1B、Cry1C、Cry1D、Cry1F、Cry2Ab、Cry3Aa、若しくはCry3Bbのタンパク質又はそれらの殺虫性部分(例えばEP 1999141及びWO 2007/107302)、又は例えば、米国特許出願第12/249,016号に記載されている合成遺伝子によりコードされるそのようなタンパク質、あるいは
2) バチルス・チューリンゲンシス由来の第2の他の結晶タンパク質若しくはそれらの部分の存在下で殺虫性である、バチルス・チューリンゲンシス由来の結晶タンパク質又はそれらの部分、例えば、Cry34及びCry35結晶タンパク質で構成された2成分毒素(Moellenbeck et al. 2001, Nat. Biotechnol. 19: 668-72、Schnepf et al. 2006, Applied Environm. Microbiol. 71, 1765-1774) 又はCry1A若しくはCry1Fタンパク質とCry2Aa若しくはCry2Ab若しくはCry2Aeタンパク質(米国特許出願第12/214,022号)とで構成された2成分毒素、あるいは
3) バチルス・チューリンゲンシス由来の異なる殺虫性結晶タンパク質の部分を含むハイブリッド殺虫性タンパク質、例えば、上の1)のタンパク質のハイブリッド又は上の2)のタンパク質のハイブリッド、例えば、トウモロコシ事象MON89034 (WO 2007/027777)により作製されたCry1A.105タンパク質、あるいは
4) 標的昆虫種に対するより高い殺虫活性を得るように、及び/又は作用される標的昆虫種の範囲を拡大するように、及び/又はクローニング若しくは形質転換時に、コード化DNAに導入された変化のために、幾つかの特に1〜10個のアミノ酸が別のアミノ酸に置換された、上の1)〜3)のいずれか1つのタンパク質、例えば、トウモロコシ事象MON863若しくはMON88017におけるCry3Bb1タンパク質、又はトウモロコシ事象MIR604におけるCry3Aタンパク質など、あるいは
5) バチルス・チューリンゲンシス若しくはバチルス・セレウス(Bacillus cereus)由来の殺虫性分泌タンパク質、又はそれらの殺虫性部分、例えば、http://www.lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/vip.htmlでリストに挙げられた植物性の殺虫性(VIP)タンパク質、例えば、VIP3Aaタンパク質クラスのタンパク質、あるいは
6) バチルス・チューリンゲンシス又はB.セレウス由来の第2の分泌タンパク質の存在下で殺虫性である、バチルス・チューリンゲンシス又はバチルス・セレウス由来の分泌タンパク質、例えば、VIP1A及びVIP2Aタンパク質から構成された2成分毒素など(WO 94/21795)、あるいは
7) バチルス・チューリンゲンシス又はバチルス・セレウス由来の異なる分泌タンパク質からの部分を含むハイブリッド殺虫性タンパク質、例えば、上の1)におけるタンパク質のハイブリッド又は上の2)におけるタンパク質のハイブリッドなど、あるいは
8) 標的昆虫種に対するより高い殺虫活性を得るように、及び/又は作用される標的昆虫種の範囲を拡大するように、及び/又はクローニング若しくは形質転換時に、コード化DNAに導入された変化のために(それでもなお殺虫性タンパク質をコードする)、幾つかの特に1〜10個のアミノ酸が別のアミノ酸に置換された、上の5)〜7)のいずれか1つのタンパク質、例えばワタ事象COT102におけるVIP3Aaタンパク質など、あるいは
9) バチルス・チューリンゲンシス由来の結晶タンパク質の存在下で殺虫性であるバチルス・チューリンゲンシス又はバチルス・セレウス由来の分泌タンパク質、例えば、VIP3とCry1A若しくはCry1Fとで構成された2成分毒素、又はVIP3タンパク質とCry2Aa若しくはCry2Ab若しくはCry2Aeタンパク質とで構成された2成分毒素(米国特許出願第12/214,022号)、
10) 標的昆虫種に対するより高い殺虫活性を得るように、及び/又は作用される標的昆虫種の範囲を拡大するように、及び/又はクローニング若しくは形質転換時に、コード化DNAに導入された変化のために(それでもなお殺虫性タンパク質をコードする)、幾つかの特に1〜10個のアミノ酸が別のアミノ酸により置換された、上の9)のタンパク質、
をコードするコード配列を含むことができる。
【0165】
本明細書において使用される「昆虫抵抗性遺伝子」は、例えば、WO 2007/080126、WO 2006/129204、WO 2007/074405、WO 2007/080127及びWO 2007/035650に記載されているように、発現したときに、植物の害虫により摂取されたときにこの害虫の成長を阻害する二本鎖RNAを生成する配列を含む導入遺伝子をさらに含む。
【0166】
非生物的ストレス耐性遺伝子は、
1) WO 00/04173、WO /2006/045633に記載されているように、植物細胞又は植物におけるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)遺伝子の発現及び/又は活性を低下させることができる導入遺伝子、
2) 例えば、WO 2004/090140に記載されているように、植物又は植物細胞のPARGをコードする遺伝子の発現及び/又は活性を低下させることができる導入遺伝子、
3) 例えば、PCT/EP 07/002433、EP 1999263、又はWO 2007/107326に記載されているように、ニコチンアミダーゼ、ニコチネートホスホリボシルトランスフェラーゼ、ニコチン酸モノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドシンターゼ又はニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼを含むニコチンアミドアデニンジヌクレオチドサルベージ合成経路の植物の機能的酵素をコードする導入遺伝子
を含む。
【0167】
炭水化物生合成に関与する酵素は、例えば、EP 0571427、WO 95/04826、EP 0719338、WO 96/15248、WO 96/19581、WO 96/27674、WO 97/11188、WO 97/26362、WO 97/32985、WO 97/42328、WO 97/44472、WO 97/45545、WO 98/27212、WO 98/40503、W099/58688、WO 99/58690、WO 99/58654、WO 00/08184、WO 00/08185、WO 00/08175、WO 00/28052、WO 00/77229、WO 01/12782、WO 01/12826、WO 02/101059、WO 03/071860、WO 2004/056999、WO 2005/030942、WO 2005/030941、WO 2005/095632、WO 2005/095617、WO 2005/095619、WO 2005/095618、WO 2005/123927、WO 2006/018319、WO 2006/103107、WO 2006/108702、WO 2007/009823、WO 00/22140、WO 2006/063862、WO 2006/072603、WO 02/034923、WO 01/14569、WO 02/79410、WO 03/33540、WO 2004/078983、WO 01/19975、WO 95/26407、WO 96/34968、WO 98/20145、WO 99/12950、WO 99/66050、WO 99/53072、US 6,734,341、WO 00/11192、WO 98/22604、WO 98/32326、WO 01/98509、WO 01/98509、WO 2005/002359、US 5,824,790、US 6,013,861、WO 94/04693、WO 94/09144、WO 94/11520、WO 95/35026若しくはWO 97/20936に記載されている酵素、又は、EP 0663956、WO 96/01904、WO 96/21023、WO 98/39460、及びWO 99/24593で開示されたポリフルクトース、特にイヌリン及びレバン-タイプのものの産生、WO 95/31553、US 2002031826、US 6,284,479、US 5,712,107、WO 97/47806、WO 97/47807、WO 97/47808及びWO 00/14249で開示されたα-1,4-グルカンの産生、WO 00/73422で開示されたα-1,6分岐α-1, 4-グルカンの産生、例えばWO 00/47727、WO 00/73422、US 5,908,975及びEP 0728213で開示されたアルテルナン(alternan)の産生、例えば、WO 2006/032538、WO 2007/039314、WO 2007/039315、WO 2007/039316、JP 2006304779、及びWO 2005/012529で開示されたヒアルロナンの産生に関与する酵素を含む。
【0168】
植物(被子植物(Angiospermae)又は裸子植物(Gymnospermae))は、例えばワタ、アブラナ、セイヨウアブラナ(oilseed rape)、ダイズ、野菜、ジャガイモ、レムナ属種(Lemna spp.)、タバコ属種(Nicotiana spp)、アラビドプシス、アルファルファ、オオムギ、マメ、トウモロコシ、ワタ、アマ、キビ、エンドウ、セイヨウアブラナ(rape)、イネ、ライムギ、ベニバナ、モロコシ、ダイズ、ヒマワリ、タバコ、芝草、コムギ、アスパラガス、ビート及び糖ビート、ブロッコリ、キャベツ、ニンジン、カリフラワー、セロリ、キウリ、ナス、レタス、タマネギ、セイヨウアブラナ(oilseed rape)、コショウ、ジャガイモ、カボチャ(pumpkin)、二十日大根、ホウレンソウ、カボチャ(squash)、サトウキビ、トマト、ズッキーニ、アーモンド、リンゴ、アンズ、バナナ、ブラックベリー、ブルーベリー、カカオ、サクランボ、ココナツ、クランベリー、ナツメヤシ、ブドウ、グレープフルーツ、グアバ、キーウィ、レモン、ライム、マンゴー、メロン、ネクタリン、オレンジ、パパイヤ、パッションフルーツ、モモ、ピーナツ、セイヨウナシ、パイナップル、ピスタチオ、スモモ、ラズベリー、イチゴ、タンジェリン、クルミ及びスイカを含む。
【0169】
一実施形態において、ゲノムにおける特異的改変(挿入、置換及び/又は欠失)を含むことを特徴とする、本発明の方法により生成した植物細胞、植物の部分及び植物、例えば、果実、種子、胚、生殖組織、分裂組織領域、カルス組織、葉、根、シュート、花、繊維、維管束組織、配偶体、胞子体、花粉及び小胞子なども提供される。配偶子、種子、胚、接合体又は体細胞のいずれかの、伝統的育種方法により作製されるDNA改変事象を含む植物の子孫又は雑種も、本発明の範囲内に含まれる。そのような植物は、標的配列に挿入されたか若しくはそれに代わる目的の核酸分子を含むことができ、又は欠失した(単一のヌクレオチドでも)特異的DNA配列を有することもでき、元の植物細胞又は改変前の植物と比較して、この異種DNA若しくはDNA配列の存在又は特異的に欠失した配列の不在(すなわち、意図された改変)によってのみそれらの創始植物と異なるであろう。
【0170】
特定の実施形態で、本明細書に記載されている植物細胞は、非増殖性植物細胞、又は植物に再生され得ない植物細胞、又は水、二酸化炭素、及び無機塩などの無機物から、光合成により炭水化物及びタンパク質を合成することによりその生命を維持することができない植物細胞である。
【0171】
本発明は、上の方法により生成した植物を、別の植物と又は自分自身と交配させるステップ、及び任意選択で種子を収穫するステップを含む、ゲノムの所定の部位に改変を含む植物を作製する方法をさらに提供する。
【0172】
本発明は、上の方法により生成した植物の集団を提供するステップ、及び種子を収穫するステップを含む、飼料、食物又は繊維を生産する方法をさらに提供する。
【0173】
本発明による植物及び種子は、化学的化合物で、例えばそのような化学的物質に対する耐性を有するならば、さらに処理されてもよい。
【0174】
したがって、本発明は、植物又は前記植物が育てられる培養基に化学物質を適用するステップを含む、上の方法により生成させた植物を育てる方法も提供する。
【0175】
上の方法によって発生させた植物に化学的化合物を適用するステップを含む、農地で植物を育てる方法がさらに提供される。
【0176】
上に記載された化学物質などの化学的化合物を、上に記載された方法により生成した植物の種子に適用するステップを含む、処理された種子を生産する方法も提供される。
【0177】
さらなる実施形態において、この方法(標的化改変を含む)により得られた植物は、植物製品を得るために使用することができる。したがって、本明細書に記載された方法により得られた植物又はそれらの部分を得ること、及びそれらから植物製品を生産することを含む、植物製品を生産する方法も提供される。
【0178】
本明細書において使用される植物製品は、食物製品(食物の原料であってもよい)、飼料製品(飼料の原料であってもよい)又は工業的製品であることができ、食物又は飼料は、例えば、油、食料、粒子、デンプン、小麦粉又はタンパク質であることができ、工業的製品は、バイオ燃料、繊維、工業的化学物質、医薬品又は栄養補助食品であり得る。動物飼料は収穫された粒子、枯草、麦藁又はサイレージであり得る。本発明により得られた植物は、例えば、農地で育てる場合、直接動物飼料として使用することもできる。
【0179】
例えばダイズ植物の場合に、植物製品は、ダイズ食料、破砕された種子、小麦粉、又はフレーク、又はダイズ油、ダイズタンパク質、レシチン、豆乳、豆腐、マーガリン、バイオディーゼル、バイオ複合材、接着剤、溶媒、潤滑剤、クリーナー、フォーム、塗料、インク、ロウソク、又はダイズ-油若しくはダイズタンパク質含有食物又は飼料製品であり得る。
【0180】
例えば、コムギ植物又は他の穀類植物の場合に、食物製品の例には、小麦粉、デンプン、パン種の入った又はパン種の入っていないパン、パスタ、ヌードル、動物飼料、朝食用シリアル、スナック食品、ケーキ、モルト、ペストリー、セイタン及び小麦粉に基づくソースを含有する食物が含まれる。
【0181】
ワタ、アマ、ジュート、麻、ラミー、サイザル麻、マニラ麻、パイナップル、ココナツなどの繊維植物の場合に、植物製品は、繊維、紡績糸、布帛であることもあるが、油、食料、ケーキであることもできる。
【0182】
トマト植物の場合には、製品は、サラダ、サンドイッチ、トマトジュース、トマトスライス、トマトソース、トマトペースト、トマトスープ、トマトケチャップ及びトマトを含むパスタ、ピザ、サルサなどの任意の他の食物製品であってもよい。
【0183】
そのような植物製品は、標的化改変を含む核酸又はそれらの部分、例えば、標的化改変に特徴的な又は特異的なアンプリコンを生ずる核酸を含むような製品を含むこともできる。
【0184】
幾つかの実施形態において、供与体ポリヌクレオチド及び例えばガイドポリヌクレオチド、ヌクレアーゼ、ニッキング酵素又は他のDNA改変性ポリペプチドをコードする核酸分子を含む、本発明を実施するために使用される核酸分子は、意図された宿主細胞に適した任意の手段、例えばウイルス性送達、細菌性送達(例えばアグロバクテリウム)、ポリエチレングリコール(PEG)媒介形質転換、電気穿孔、真空浸透、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティクス、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン又は脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、及びカルシウム媒介送達によって、細胞中に導入することができる(一過性に又は安定にのいずれかで)。
【0185】
植物の形質転換は、核酸分子を、安定な又は一過性の配列の発現を生じさせる様式で、植物に導入することを意味する。単子葉植物及び双子葉植物の両方の植物細胞の形質転換及び再生は、現在一般的であり、最も適した形質転換技法の選択は、実務者により決定されるであろう。方法の選択は、形質転換されるべき植物のタイプで変わり、当業者は、与えられた植物のタイプのための特定の方法の適切さを認識するであろう。適した方法は、植物プロトプラストの電気穿孔、リポソーム媒介形質転換、ポリエチレングリコール(PEG)媒介形質転換、ウイルスを使用する形質転換、植物細胞のマイクロインジェクション、植物細胞のミクロ発射体衝撃、真空浸透、及びアグロバクテリウム媒介形質転換を含むことができるが、これらに限定されない。
【0186】
形質転換された植物細胞は、植物全体に再生され得る。そのような再生技法は、組織培養成長培地中におけるある種の植物ホルモンの操作に依存し、典型的には、所望のヌクレオチド配列と一緒に導入された殺生物剤及び/又は除草剤マーカーに依存する。培養されたプロトプラストからの植物の再生は、Evans et al., Protoplasts Isolation and Culture, Handbook of Plant Cell Culture, pp. 124-176, MacMillilan Publishing Company, New York, 1983、及びBinding, Regeneration of Plants, Plant Protoplasts, pp.21-73, CRC Press, Boca Raton, 1985に記載されている。再生は、植物カルス、外植片、器官、又はそれらの部分から得ることもできる。そのような再生技法は、Klee (1987) Ann. Rev. of Plant Phys. 38: 467-486に一般的に記載されている。未成熟胚などのトランスジェニック組織から植物全体を得るために、それらは制御された環境条件下で、栄養素及びホルモンを含有する一連の培地中で、組織培養として知られている方法で成長することができる。植物全体が生成して種子を産生したら、子孫の評価が始まる。
【0187】
核酸分子は、遺伝子浸透(introgression)により植物中に導入することもできる。遺伝子浸透は、植物のゲノム中への核酸の天然の手段により、すなわち、本明細書に記載されたキメラ遺伝子を含む植物を、前記キメラ遺伝子を含まない植物と交配させることにより組み込むことを意味する。子孫にはキメラ遺伝子を含むものを選択することができる。
【0188】
本発明の目的のために、2つの関連するヌクレオチド又はアミノ酸配列の「配列同一性」は、パーセンテージとして表現され、2つの最適にアラインメントされた配列における同一の残基を有する位置の数(×100)を、比較される位置の数によって除算した値を指す。ギャップ、すなわち、アラインメント中で、ある残基が一方の配列には存在するが他方には存在しない位置は、非同一の残基を有する位置とみなされる。2つの配列のアラインメントは、Needleman及びWunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch 1970)によって実施される。上のコンピューター援用の配列アラインメントは、Wisconsin Packageのバージョン10.1(Genetics Computer Group、Madison、ウィスコンシン州、米国)のパーツであるGAPなどの標準ソフトウェアプログラムを使用して、ギャップ創出ペナルティー50及びギャップ延長ペナルティー3でデフォルトの得点マトリックスを使用して、便利に実施することができる。
【0189】
本明細書において使用されるキメラ遺伝子は、遺伝子の発現を可能にするために作動的に連結された異種要素で作られている遺伝子を指し、それによりその組合せは、普通天然には見出されない。したがって、用語「異種」は、異なる出所に由来する2つ以上の核酸又はタンパク質配列の間の関係を指す。例えば、プロモーターは、コード配列などの作動的に連結された核酸配列に関して、そのような組合せが普通天然に見出されないならば、異種である。それに加えて、特定の配列は、それが挿入された細胞又は生物に関して「異種」であり得る(すなわち、その特定の細胞又は生物では天然には生じない)。
【0190】
「作動的に連結され」という表現は、キメラ遺伝子の前記要素がそれらの機能が連繋してコード配列の発現を可能にするような様式で互いに連結されていること、すなわち、それらが機能的に連結されていることを意味する。例として、プロモーターは、別のヌクレオチド配列の転写及び最終的に発現を確実にすることができる場合に、前記他のヌクレオチド配列と機能的に連結されている。2種のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、例えば一過性のペプチドをコードする核酸配列及び第2のタンパク質をコードする核酸配列は、それらが、第1の及び第2のタンパク質又はポリペプチドの融合タンパク質が形成され得るように接続されていれば、互いに機能的に又は作動的に連結されている。
【0191】
遺伝子、例えばキメラ遺伝子は、それが発現産物の形成をもたらす場合に、発現され得るといわれる。発現産物は、そのような産物をコードする核酸、DNA又はRNA、例えば、本明細書に記載されている第2の核酸の転写及び任意選択で翻訳から生ずる中間又は最終産物を表す。転写プロセスにおいて、調節領域、特にプロモーターの制御下のDNA配列は、RNA分子に転写される。RNA分子は、それがペプチド又はタンパク質に翻訳可能な場合に、それ自体で発現産物を形成するか又は中間産物であるかのいずれかを形成し得る。遺伝子は、遺伝子の発現の最終産物としてのRNAが、例えば、別の核酸又はタンパク質と相互作用することができる場合に、発現産物としてRNA分子をコードするといわれる。RNAの発現産物の例には、阻害RNA、例えばセンスRNA(共抑制)、アンチセンスRNA、リボザイム、miRNA又はsiRNA、mRNA、rRNA及びtRNAが含まれる。遺伝子は、遺伝子の発現の最終産物がタンパク質又はペプチドである場合に、発現産物としてタンパク質をコードするといわれる。
【0192】
植物で発現可能なキメラ遺伝子は、植物(細胞)で発現する能力を有するキメラ遺伝子である。そのようなキメラ遺伝子は、植物で発現可能なプロモーター及び任意選択で、植物細胞中で機能的な3'末端領域を含有する。
【0193】
さらなる作動的に連結された要素(例えば、エンハンサー、イントロン)は、本発明によるキメラ遺伝子中に含まれ、作動的に連結されたコード配列の発現を強化することができる。
【0194】
本明細書において使用される核酸又はヌクレオチドは、DNA及びRNAの両方を指す。DNAは、cDNA及びゲノムDNAも含む。核酸分子は単鎖又は二本鎖であってよく、化学的に合成される又はインビトロで若しくはさらにインビボにおいて生物学的発現により作製することができる。
【0195】
RNA分子のヌクレオチド配列が対応するDNA分子のヌクレオチド配列を参照することにより規定される場合にはいつでも、ヌクレオチド配列におけるチミン(T)は、ウラシル(U)により置換されるべきであることは明らかであろう。参照がRNA又はDNA分子のどちらに対して為されるかは、適用の文脈から明らかであろう。
【0196】
本明細書において使用される「を含む」は、述べられた特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を特定して、1つ以上の特徴、整数、ステップ若しくは構成要素、又はそれらの群の存在又は追加を参照するが排除しないと解釈されるべきである。したがって、例えば、ヌクレオチド又はアミノ酸の配列を含む核酸又はタンパク質は、実際に挙げられたよりも多くのヌクレオチド又はアミノ酸を含む、すなわち、より大きい核酸又はタンパク質に埋め込まれていることもある。機能的に又は構造的に規定されたDNA領域を含むキメラ遺伝子は、追加のDNA領域その他を含むこともある。
【0197】
特に断らない限り、実施例において、全ての組換えDNA技法は、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY、及びVolumes 1 and 2 of Ausubel et al. (1994) Current Protocols in Molecular Biology, Current Protocols, USAに記載されている標準プロトコルに従って実施される。植物分子の研究における標準的な材料及び方法は、BIOS Scientific Publications Ltd (UK)及びBlackwell Scientific Publications、UKにより共同出版されたR.D.D.CrayによるPlant Molecular Biology Labfax (1993)に記載されている。標準的分子生物学技法についての他の参考文献としては、Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Volumes I and II of Brown (1998) Molecular Biology LabFax, Second Edition, Academic Press (UK)がある。ポリメラーゼ連鎖反応の標準的材料及び方法は、Dieffenbach and Dveksler (1995) PCR Primer: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press、及びMcPherson at al. (2000) PCR - Basics: From Background to Bench, First Edition, Springer Verlag、ドイツに見出すことができる。
【0198】
本明細書で参照又は引用された全ての特許、特許出願、及び公開又は公表は(インターネットによる公開を含む)、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0199】
配列番号1〜配列番号6の6つの配列を含有する61キロバイト(Microsoft Windows(登録商標)で測定されたサイズ)である「BCS16-2019_ST25.txt」と命名されたファイルに含有される配列表は、電子的提出により出願されて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0200】
本発明は、本明細書に記載された実施例を参照してさらに説明されるが、しかしながら、本発明はそのような実施例に限定されないことが理解されるべきである。
配列表
【0201】
説明及び実施例を通して、以下の配列を参照する:
配列番号1: Cas9ベクターpKVA790/pBay00201のヌクレオチド配列
配列番号2: gRNAベクターpKVA766のヌクレオチド配列
配列番号3: TIPS修復ベクターpKVA761のヌクレオチド配列
配列番号4: T-DNAベクターpBay00461のヌクレオチド配列
配列番号5: pKVA790/pBay00201及びpBay00461に存在する植物最適化Cas9のコード配列
配列番号6: 配列番号5の植物コドン最適化Cas9のアミノ酸配列
【実施例】
【0202】
[実施例1]
ベクター構築
標準的分子生物学技法を使用して、以下の作動的に連結された要素を含有する以下のベクターを作製した。
【0203】
・ RGEN(Cas9)発現ベクターpKVA790(配列番号1):
○ pubiZm(ヌクレオチド(nt)431〜2427):トウモロコシ(Zea mays)のユビキチン-1遺伝子のプロモーター領域を含む配列(Christensen et al., 1992)。
・ 5'UTR(ヌクレオチド(nt)1261〜2427):トウモロコシ(Zea mays)のユビキチン-1遺伝子のリーダー配列を含む配列(Christensen et al., 1992)、イントロンを含有する。
・ イントロン(ヌクレオチド(nt)1481〜2427):トウモロコシ(Zea mays)のユビキチン-1遺伝子の第1のイントロンを含有する配列(Christensen et al., 1992)
○ Cas9Sp-3Pb (ヌクレオチド(nt)2430〜6635):ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes) (Li et al., 2013)の改変エンドヌクレアーゼCAS9遺伝子のコード配列(CDS)。アミノ酸24位でDの代わりにEを含み、イネ又はコムギのコドン使用にさらに適合化。
・ NLSsv40(ヌクレオチド(nt)2439〜2456):サルウイルス40のラージT-抗原遺伝子に由来する核局在化シグナル(Kalderon et al., 1984)
・ NLSnuplXI(ヌクレオチド(nt)6594〜6632):アフリカツメガエル(Xenopus laevis)のヌクレオプラスミン遺伝子の核局在化シグナル(Dingwall et al., 2187)
○ 3'nos-N3 (ヌクレオチド(nt)6646〜6904):pTiT37のT-DNA由来のノパリンシンターゼ遺伝子の3'非翻訳領域を含む配列(Depicker et al., 1982)。
【0204】
・ ガイドRNA発現ベクターpKVA766(配列番号2):
○ P-u6-3.1(ヌクレオチド(nt)534〜1049; 相補体):イネ(Oryza sativa)のU6遺伝子のPol IIIのプロモーター領域(Jiang W. et al., 2013)。
○ sgR-1.22(ヌクレオチド(nt)429〜533; 相補体):エンドヌクレアーゼCAS9媒介DNA開裂のための合成ガイドRNAをコードする配列(Li et al., 2013)、イネ(Oryza sativa)のepsps遺伝子を標的とする。
・ 部位TS3(ヌクレオチド(nt)429〜448; 相補体):sgRNA標的化配列
・ sgR22(ヌクレオチド(nt)429〜533; 相補体):エンドヌクレアーゼCAS9媒介DNA開裂のための合成ガイドRNAをコードする配列(Li et al., 2013)、イネ(Oryza sativa)のEPSPS遺伝子を標的とする
・ sgRNA(ヌクレオチド(nt)449〜525; 相補体):ガイドRNAの足場配列
・ Tpolll(ヌクレオチド(nt)526〜533; 相補体):RNAポリメラーゼIIIの停止シグナル
【0205】
・ TIPS突然変異のための修復DNAベクターpKVA761(配列番号3):
○ epspsOs-2Ga-4(ヌクレオチド(nt)404〜1403):イネ(Oryza sativa)種の改変EPSPSタンパク質をコードする、イネ(Oryza sativa)の改変5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ遺伝子のゲノムコード配列の断片(未発表)
・ エクソン(ヌクレオチド(nt)717〜961):
・ TIPS領域(ヌクレオチド(nt)888〜926)
・ T169I(ヌクレオチド(nt)909〜911)
・ P173S(ヌクレオチド(nt)921〜923)
・ エクソン(ヌクレオチド(nt)1041〜1194)
【0206】
・ Cas9、gRNA及びTIPS修復DNA pTKVA869/pBay00461を含むT-DNAベクター(配列番号4):
○ RB(ヌクレオチド(nt)1〜25):アグロバクテリウム・ツメファシエンスのT-DNA由来の右境界反復配列(Zambryski、1988)。
Cas9キメラ遺伝子:
○ pubiZm(ヌクレオチド(nt)143〜2139):トウモロコシ(Zea mays)のユビキチン-1遺伝子のプロモーター領域を含む配列(Christensen et al., 1992)。
・ 5'ubiZmイントロン1(ヌクレオチド(nt)1130〜2139):トウモロコシ(Zea mays)のユビキチン-1遺伝子の第1のイントロンを含有する配列(Christensen et al., 1992)
○ Cas9Sp-3Pb(ヌクレオチド(nt)2142〜6347):ストレプトコッカス・ピオゲネスの改変エンドヌクレアーゼCAS9遺伝子のコード配列(CDS)(Li et al., 2013)、イネのコドン使用に適合化。
・ NLSsv40(ヌクレオチド(nt)2151〜2168):サルウイルス40のラージT-抗原遺伝子に由来する核局在化シグナル(Kalderon et al., 1984)
・ NLSnuplXI(ヌクレオチド(nt)6306〜6344):アフリカツメガエルのヌクレオプラスミン遺伝子の核局在化シグナル(Dingwall et al., 2187)
○ 3'nos-N3(ヌクレオチド(nt)6646〜6904): pTiT37のT-DNA由来のノパリンシンターゼ遺伝子の3'非翻訳領域を含む配列(Depicker et al., 1982)。
gRNAキメラ遺伝子
○ P-u6-3.1(ヌクレオチド(nt)6630〜7145):イネ(Oryza sativa)のu6遺伝子のプロモーター領域(Jiang W. et al., 2013)。
○ ガイドRNA(ヌクレオチド(nt)7146〜7250):エンドヌクレアーゼCAS9媒介DNA開裂のための合成ガイドRNAをコードする配列(Li et al., 2013)であり、イネのepsps遺伝子を標的とする。
・ 部位TS3(ヌクレオチド(nt)7146〜7165):sgRNA標的化配列
・ sgR22(ヌクレオチド(nt)7146〜7250):エンドヌクレアーゼCAS9媒介DNA開裂のための合成ガイドRNAをコードする配列(Li et al., 2013)でありイネ(Oryza sativa)のEPSPS遺伝子を標的とする。
・ sgRNA(ヌクレオチド(nt)7166〜7242):ガイドRNAの足場配列
・ Tpolll(ヌクレオチド(nt)7243〜7250):RNAポリメラーゼIIIの停止シグナル
TIPS突然変異を有するEPSPSに対する修復DNA
○ epspsOs-2Ga-4(ヌクレオチド(nt)404〜1403):イネ(Oryza sativa)種の改変EPSPSタンパク質をコードする、イネ(Oryza sativa)の改変5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ遺伝子のゲノムコード配列の断片(未発表)
・ エクソン(ヌクレオチド(nt)7570〜7814):
・ TIPS領域(ヌクレオチド(nt)7741〜7779)
・ T169I(ヌクレオチド(nt)7762〜7764)
・ P173S(ヌクレオチド(nt)7774〜7776)
・ エクソン(ヌクレオチド(nt)7894〜8047)
Bar選択マーカー遺伝子
○ P35S3(ヌクレオチド(nt)8650〜9435):カリフラワーモザイクウイルス35S転写物のプロモーター領域を含む配列(Odell et al., 1985)。
○ Barコード配列(ヌクレオチド(nt)9438〜9989):ストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)のホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子のコード配列(Thompson et al., 1987)。
○ 3'nos(ヌクレオチド(nt)10009〜10269):pTiT37のT-DNA由来のノパリンシンターゼ遺伝子の3'非翻訳領域を含む配列(Depicker et al., 1982)。
○ LB(ヌクレオチド(nt)10464〜10488):アグロバクテリウム・ツメファシエンスのT-DNA由来の左境界反復配列(Zambryski, 1988)。
【0207】
[実施例2]
培地
RSK-500 = SK-1m塩(Khanna & Raina、1998)、Khannaビタミン(Khanna & Raina、1998)、L-プロリン1.16g/L、CuSO4.5H2O 2.5mg/L、2.4-D 2mg/L、マルトース20g/L、ソルビトール30g/L、MES 0.5g/L、アガロース6g/L、pH5.8
【0208】
RSK-600 = RSK500培地であるが、1mg/L2.4-D及び0.5mg/L BAPを含む。
【0209】
RSK-100 = SK-1m塩(Khanna & Raina、1998)、Khannaビタミン(Khanna & Raina、1998)、L-プロリン1.16g/L、2.4-D 2mg/L、スクロース30g/L、MES 0.5g/L、アガロース6g/L、pH 5.8
【0210】
RSK-201 = SK-1m塩Duchefa(Khanna & Raina、1998)、Khannaビタミン(Khanna & Raina、1998)、L-プロリン1.16g/L、L-グルタミン0.8765g/L、L-アルギニン0.174g/L、グリシン7.5mg/L、L-アスパラギン酸0.288g/L、カゼイン加水分解物300mg/L、2.4-D 2mg/L、スクロース20g/L、マンニトール55g/L、ソルビトール55g/L、MES 0.5g/L、アガロース6g/L、pH5.8
【0211】
MSR4 = MS培地、L-プロリン0.552g/L、L-グルタミン0.8765g/L、L-アルギニン0.174g/L、グリシン7.5mg/L、L-アスパラギン酸0.288g/L、カイネチン1mg/L、NAA 0.5mg/L、マルトース30g/L、ソルビトール10g/L、MES 0.5g/L、アガロース6g/L、pH5.8
【0212】
MSR2 = MS培地、L-プロリン0.552g/L、カゼイン加水分解物300mg/L、NAA 0.5mg/L、スクロース30g/L、MES 0.5g/L、アガロース6g/L、pH5.8
【0213】
AAM = AA培地(Hiei et al., 1994)、L-グルタミン0.8765g/L、L-アルギニン0.174g/L、グリシン7.5mg/L、L-アスパラギン酸0.288g/L、カザミノ酸500mg/L、スクロース68.5g/L、グルコース36g/L、pH5.2
【0214】
SKAS-1m予備誘導培地 = SK-1m塩Duchefa(Khanna & Raina, 1998)、Khannaビタミン(Khanna & Raina, 1998)、L-プロリン1.16g/L、L-グルタミン0.8765g/L、L-アルギニン0.174g/L、グリシン7.5mg/L、L-アスパラギン酸0.288g/L、カゼイン加水分解物300mg/L、2.4-D 2mg/L、アセトシリンゴン200μM、スクロース30g/L、グルコース10g/L、アガロース6g/L、pH5.2
【0215】
SKAS-1m共培養培地 = SK-1m塩Duchefa(Khanna & Raina、1998)、Khannaビタミン(Khanna & Raina, 1998)、2.4-D 2mg/L、アセトシリンゴン200μM、スクロース30g/L、グルコース10g/L、アガロース6g/L、pH5.2
【0216】
MS/2 = 1/2濃度のMS塩、スクロース30g/L、アガロース4.5g/Lを含むMS培地、pH5.8
【0217】
引用文献
Khanna & Raina, Plant Cell, Tissue and organ Culture, 52: 145-153, 1998
Hiei et al, Plant J., 6: 271-282, 1994
【0218】
[実施例3]
胚形成カルスを使用する粒子衝撃媒介型編集
成熟種子に由来する胚形成カルスを、粒子衝撃のための出発材料として使用した。この点に関して、滅菌された種子を、胚形成カルスの誘導のために、約3〜4週間、RSK100培養基において25〜30℃の間の温度の暗所でインキュベートした。
【0219】
RSK100における3〜4週間のインキュベーションの後、胚形成カルスをRSK100プレートから選択して、RSK600上で、25〜30℃の間の温度で明16時間/暗8時間の光周期下において2〜3日の間継代培養する。
【0220】
衝撃の日に、活発に成長する胚形成片をRSK600プレートから選択して、より小さい切片に切ってRSK201上に移して、事前原形質分離のために2〜3時間置く。事前原形質分離の後、ECをバイオリスティクPDS-100/He粒子送達システム(Bio-Rad)、又は粒子流入銃(PIG)システム(Grayel)のいずれかを使用して衝撃を当てた。Bioradのシステムについて、粒子衝撃パラメーターは以下のようであった:金粒子の直径0.3〜3μm、標的距離9cm、衝撃圧9301.5kPa、ギャップ距離6.4mm、及びマクロキャリア飛行距離11mm。各プラスミドDNA(Cas9、gRNA、修復DNA)について、1撃当たり0.125pmolのDNAを使用した。Grayelシステムでは、粒子衝撃パラメーターは以下のようであり:金粒子の直径0.6μm、標的距離17cm、衝撃圧500kPa、そして各プラスミドDNA(Cas9、gRNA、修復DNA)について、1撃当たり1.25μgのDNAを使用した。
【0221】
衝撃の後、カルス片を非選択的RSK500カルス誘導培地に移して、2〜3日の間25〜30℃の間の温度で明16時間/暗8時間の光周期下に置く。非選択的培養基上でのこの期間の後、カルス片を、選択剤として150mg/Lグリホセートを補足したRSK500培地に移して、明16時間/暗8時間の光周期下に25〜30℃の間の温度で再びインキュベートする。
【0222】
約3〜4週間の後、150mg/Lグリホセートを含む選択的RSK500培地上で胚形成カルスの増殖を示すカルス片を、同じ培養基で継代培養する。各継代培養は、「純粋な」グリホセート耐性胚形成カルス系統が得られるまで、活発に成長する胚形成カルス片を大幅に切断することを含むべきである。次に「純粋な」活発に成長するグリホセート耐性の胚形成カルス系統をRSK600培養基+150mg/Lグリホセートに移す。RSK600培地における約1ヵ月のインキュベーションの後、カルス片を、25〜30℃の非選択的再生培地MSR4に移して、明16時間/暗8時間の光周期下に置く。シュートを再生しているカルスをさらなる生育のためにMSR2培地に移してもよい。再生しているシュートを温室に移す前に、さらに伸ばすためにMS/2培養基に移す。
【0223】
結果
胚形成カルスを上に記載されたプラスミドpKVA790(Cas9)+pKVA761(修復DNA)+pKVA766(gRNA)で形質転換した。これは、PIGのデバイスを使用して約500カルス当たり1〜8GlyT事象の回収(0.2〜1.6%)を生じ、Bioradのデバイスを使用して約500カルス当たり0〜1GlyT事象の回収を生じた(0〜0.2%)。標的領域全域にわたる増幅PCR産物の制限消化(Pvul)を第1の分子スクリーニングとして行い、Pvul部位を生成するサイレント突然変異が供与体DNA中のTIPS突然変異の付近に導入されてTIPS epsps編集事象の同定のための分子スクリーニングを容易にしたことから、自然のepsps遺伝子におけるTIPS突然変異の導入が確認された。Biorad銃により得られた2つのglyTカルス事象の増幅PCR産物のPvul消化は、2つの単一対立遺伝子TIPS編集事象を明らかにした。これらの2つの事象から得られたクローニングされたPCR産物の配列決定により、これらは一方の対立遺伝子にTIPS突然変異及び他方の対立遺伝子中の標的部位に6bpの欠失を有する二対立遺伝子の突然変異事象であることが示された(
図2を参照されたい)。
PIGにより得られた53のglyTカルス事象の増幅PCR産物のPvul消化により、38の単一対立遺伝子TIPS編集事象、14の二対立遺伝子TIPS編集事象及びTIPS突然変異がない1つの事象が明らかにしている。13の二対立遺伝子事象に関する配列決定分析により両方の対立遺伝子におけるTIPS突然変異の存在が確認された。PIGにより得られた8つの単一対立遺伝子編集事象から得られたクローニングされたPCR産物の配列決定により、これらは一方の対立遺伝子にTIPS突然変異及び他方の対立遺伝子に非特異的突然変異(挿入又は欠失)を有する二対立遺伝子突然変異事象であることが示された。
【0224】
[実施例4]
未成熟胚を使用するアグロバクテリウム媒介編集
方法
新しく単離された未成熟胚を、アセチルサリチル酸25mg/Lを補足した固体SKAS-1m予備誘導培地に移して、25〜30℃の間の温度で暗所に3〜4日間置く。予備誘導の後、未成熟胚をアグロバクテリウム感染培地(AAM+300μM AS中、2×10
9細菌/ml)に10〜15分間浸漬し、その後SKAS-1m共培養培地に移して約25℃で暗所に3〜4日間置く。
【0225】
共培養後、子葉鞘を胚から除去して、胚を250mg/Lのチカルシリンを補足した非選択的RSK500カルス誘導培地に移して、2〜3日の間25〜30℃の間の温度で明16時間/暗8時間の光周期下に置く。
【0226】
非選択的培養基におけるこの期間の後、胚を、今回は選択剤として150mg/Lグリホセートを補足した同じRSK500培地+250mg/Lチカルシリンに移して、再び25〜30℃の間の温度で明16時間/暗8時間の光周期下においてインキュベートする。
【0227】
3〜4週間の後、250mg/Lチカルシリン及び150mg/Lグリホセートを含む選択的RSK500培地で胚形成カルスの増殖を示す胚を、同じ培養基で継代培養する。各継代培養は、「純粋な」グリホセート耐性胚形成カルス系統が得られるまで、活発に成長する胚形成カルス片を大幅に切断することを含むべきである。次に、「純粋な」活発に成長するグリホセート耐性胚形成カルス系統を、250mg/Lチカルシリン及び150mg/Lグリホセートを含む選択的RSK600培地に移す。RSK600培地における約1ヵ月のインキュベーションの後、カルス片を、100mg/Lのチカルシリンを含む非選択的再生培地MSR4に移して25〜30℃の間の温度で明16時間/暗8時間の光周期下に置く。シュートを再生しているカルスを、さらなる生育のために、100mg/Lチカルシリンを含むMSR2培地に移してもよい。再生しているシュートを、温室に移す前にさらに伸ばすためにMS/2培養基に移す。
【0228】
結果
実施例3に記載された同じ構成要素、すなわち、pKVA790のCas9 + pKVA761の修復DNA + pKVA766のgRNA (gRNA)を、1つのT-DNAベクターpTKVA869/pBay00461中にクローニングして、アグロバクテリウム株ACH5C3 (GV400)に形質転換し、その後それを上に記載された未成熟胚を形質転換するために使用した。
【0229】
この結果は約10%のGlyTカルス事象の回収であった(77のglyTカルス事象/750の共培養未成熟胚のもの)。75のglyTカルス事象の増幅PCR産物のPvul消化により、58の単一対立遺伝子TIPS epsps編集事象、15の二対立遺伝子TIPS編集事象及びTIPS突然変異がない1つの事象を明らかにしている。2つの二対立遺伝子TIPS編集事象のPCR産物の配列決定分析により、両方の対立遺伝子におけるTIPS突然変異の存在が確認された。6つの単一対立遺伝子TIPS編集事象からのクローニングされたPCR産物の配列決定分析により、これらは、一方の対立遺伝子にTIPS突然変異及び他方の対立遺伝子に非特異的突然変異(欠失又は挿入)を有する二対立遺伝子突然変異事象であったことが示された。
【0230】
[実施例5]
胚形成カルスを使用するアグロバクテリウム媒介編集
成熟種子に由来する胚形成カルスを共培養のための出発材料として使用した。この点に関して、滅菌された種子を、胚形成カルスの誘導のために、RSK100培養基で約3〜4週間25〜30℃の間の温度の暗所でインキュベートした。
【0231】
RSK100における3〜4週間のインキュベーションの後、胚形成カルスをRSK100プレートから選択して、RSK600で2〜3日の間25〜30℃の間の温度で明16時間/暗8時間の光周期下において継代培養する。
【0232】
共培養開始の日に、活発に成長する胚形成片をRSK600プレートから選択して、アグロバクテリウム感染培地中に(AAM+300μM AS中、4×10
9細菌/ml)10〜15分間浸漬し、その後SKAS-1m共培養培地に移して暗所に約25℃で3〜4日間置く。
【0233】
共培養後、カルス片を非選択的RSK500カルス誘導培地+250mg/Lチカルシリンに移して、2〜3日の間、明16時間/暗8時間の光周期下で25〜30℃の間の温度に置く。非選択的培養基上におけるこの期間の後、カルス片を今回は選択剤として150mg/Lグリホセートを補足した同じRSK500培地+250mg/Lチカルシリンに移して、明16時間/暗8時間光周期下において25〜30℃の間の温度で再びインキュベートする。
【0234】
約3〜4週間の後、150mg/Lグリホセートを含む選択的RSK500培地+250mg/Lチカルシリンにおいて胚形成カルスの増殖を示すカルス片を、大幅な切断の後に同じ培養基で継代培養する。各継代培養は、「純粋な」グリホセート耐性胚形成カルス系統が得られるまで、活発に成長する胚形成カルス片を徹底的に切ることを含むべきである。次に、「純粋な」活発に成長するグリホセート耐性胚形成カルス系統を、選択的RSK600培養基+250mg/Lチカルシリン及び150mg/lグリホセートに移す。RSK600培地における約1ヵ月のインキュベーションの後、カルス片を100mg/Lチカルシリンを含む再生培地MSR4培地に移して明16時間/暗8時間の光周期下で25〜30℃の間の温度に置く。シュートを再生しているものを、さらなる生育のために、100mg/Lチカルシリンを含むMSR2培地に移してもよい。再生しているシュートを、温室に移す前に、さらに伸ばすために、MS/2培養基に移す。
【0235】
結果
実施例3に記載された同じ構成要素、すなわち、pKVA790のCas9 + pKVA761の修復DNA + pKVA766のgRNA (gRNA)を、1つのT-DNAベクターpTKVA869/pBay00461中にクローニングして、アグロバクテリウム株GA00182に形質転換し、その後それを、上に記載されたように胚形成カルスを形質転換するために使用した。
【0236】
この結果は、10〜18のglyT事象の回収/約500の共培養カルス片(2〜4%)であった。10のglyTカルス事象の増幅PCR産物のPvul消化により、9つの単一対立遺伝子TIPS epsps編集事象及び1つの二対立遺伝子TIPS編集事象が明らかになった。
【0237】
[実施例6]
未成熟胚及び間接選択を使用するアグロバクテリウム媒介編集
方法
新しく単離された未成熟胚を、アセチルサリチル酸25mg/Lを補足した固体SKAS-1m予備誘導培地に移して3〜4日間25〜30℃の間の温度で暗所に置いた。予備誘導の後、未成熟胚をアグロバクテリウム感染培地(AAM+300μM AS中、2×10
9細菌/ml)に10〜15分間浸漬し、その後SKAS-1m共培養培地に移して約25℃で3〜4日間、暗所に置いた。
【0238】
共培養後、子葉鞘を胚から除去して、胚を、250mg/Lチカルシリンを補足した非選択的RSK500カルス誘導培地に移して、2〜3日の間25〜30℃の間の温度で明16時間/暗8時間の光周期下に置いた。
【0239】
非選択的培養基上における3日の後、胚を、今回は選択剤として5mg/Lホスフィノトリシン(PPT)を補足した同じRSK500培地+250mg/Lチカルシリンに移して、明16時間/暗8時間の光周期下において25〜30℃の間の温度で再びインキュベートした。
【0240】
3〜4週間の後、250mg/Lチカルシリン及び5mg/L PPTを含む選択的RSK500培地上で胚形成カルスの増殖を示す胚を、より小さい切片に切って、5mg/L PPTを含む同じ培養基上で継代培養した。3週間後にPPT上の増殖しているカルス部分を、250mg/Lチカルシリン及び5mg/L PPTを含む選択的RSK500培地で、再び継代培養した。
【0241】
結果
実施例1に記載されたbar選択マーカーに加えて、3構成要素T-DNAベクターpBay00461/pTKVA869を含む、実施例4に記載されたアグロバクテリウム株ACH5C3(GV400)を、上に記載されたように使用して未成熟胚を形質転換して、PPT選択に供した。
【0242】
プレート培養された最初の178個の未成熟胚(IE)から、95個のIEがPPT耐性カルスを生成した。これらの活発に成長するPPT耐性胚形成カルス系統から、複数の部分を、TIPS突然変異にまたがる1つのプライマー及び供与体DNAの相同性の領域の外側のepsps遺伝子中の1つのプライマーを用いたTIPSのPCRを実施するために収穫した。95個の応答性IEのうち44個(46.3%)で、1つ以上のカルス部分がTIPS特異的なPCR増幅産物を生じた。
【0243】
応答性IEのサブセットから、TIPSのPCRのためのサンプリング後に残ったECが小片に切り刻まれており、グリホセート耐性事象が150mg/Lグリホセートにおける選択により未だ回収可能であった。
【0244】
このことは、1つのアグロバクテリウム株を使用する選択マーカー遺伝子の共送達及びそれに続く対応する選択剤による選択により、修復DNA媒介編集事象の回収が、編集自体に対する「直接」の選択なしで可能になる(実施例4及び5に記載されているように)ことを示す。
【0245】
一方は修復DNAに加えてgRNA-及びCas9-発現カセットを含有し、他方は、選択マーカー遺伝子(bar)を含む、2種のアグロバクテリウム株を用いて共培養したときに、上に記載されたPPT選択の後、最初の135のプレート培養された未成熟胚のうち、3種のgly
R事象が回収された。