特表2019-528849(P2019-528849A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-528849(P2019-528849A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(54)【発明の名称】フローカニューレ付き血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/10 20060101AFI20190920BHJP
   A61M 1/12 20060101ALI20190920BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20190920BHJP
【FI】
   A61M1/10 100
   A61M1/12
   A61M25/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-512265(P2019-512265)
(86)(22)【出願日】2017年8月31日
(85)【翻訳文提出日】2019年4月22日
(86)【国際出願番号】EP2017071890
(87)【国際公開番号】WO2018041963
(87)【国際公開日】20180308
(31)【優先権主張番号】16186860.9
(32)【優先日】2016年9月1日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】スパニア ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】アボウルホーセン ワリド
【テーマコード(参考)】
4C077
4C267
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD01
4C077DD21
4C077EE01
4C077KK25
4C077KK30
4C077PP14
4C077PP18
4C267AA04
4C267BB33
4C267CC19
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267HH20
(57)【要約】
患者の心臓をサポートするための血液ポンプ1は、遠位端部10と遠位端部10の向かい側の近位端部11とを有するフローカニューレ4を含み、フローカニューレ4の遠位端部10は、患者の心臓または血管に、血液ポンプ1と患者の心臓および血管との間にそれぞれ流体連通を確立する目的で、連結されるように構成される。フローカニューレ4は、前記遠位端部10を有する遠位部分5と、前記近位端部11を有する近位部分6と、を含む。フローカニューレ4は、遠位部分5および近位部分6に取り付けられる中間部分7をさらに含み、中間部分7は、遠位部分5および近位部分6よりも小さめの力でのその捩りを可能にする。中間部分7は、それを捩ることによって完全に閉塞されるように構成される。中間部分7の少なくとも一部分は、単独で、または遠位部分5との組合せでのどちらかで、患者の心臓または血管に恒久的に取り付けられるように適合される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓をサポートするための血液ポンプ(1)用のフローカニューレ(4;14;24)であって、前記フローカニューレ(4;14;24)は、遠位端部(10)と、前記フローカニューレ(4;14;24)の長手軸に沿って前記遠位端部(10)の向かい側の近位端部(11)と、を含み、前記フローカニューレ(4;14;24)の前記遠位端部(10)は、前記患者の心臓または血管に、前記血液ポンプ(1)と前記患者の心臓および血管との間にそれぞれ流体連通を確立する目的で、連結されるように構成され、前記フローカニューレ(4;14;24)は、前記遠位端部(10)を有する遠位部分(5;15;25)と、前記近位端部(11)を有する近位部分(6;16;26)と、を含み、前記フローカニューレ(4;14;24)は、前記遠位部分(5;15;25)および前記近位部分(6;16;26)の少なくとも一方に取り付けられる中間部分(7;17;27)をさらに含み、前記中間部分(7;17;27)は、前記遠位部分(5;15;25)および前記近位部分(6;16;26)の少なくとも一方よりも小さめの力でのその捩りを可能にし、前記中間部分(7;17;27)は、その捩りによって完全に閉塞されるように構成され、前記中間部分(7;17;27)の少なくとも一部分は、単独で、または前記遠位部分(5;15;25)との組合せでのどちらかで、前記患者の心臓または血管に恒久的に取り付けられるように適合される、ことを特徴とするフローカニューレ。
【請求項2】
請求項1に記載のフローカニューレであって、前記フローカニューレ(4;14;24)の前記中間部分(7;17;27)は、遠位端部(8;18;28)および近位端部(9;19;29)を有し、前記中間部分(7;17;27)の前記遠位端部(8;18;28)は、前記フローカニューレ(4;14;24)の前記遠位部分(5;15;25)に取り付けられまたは配置され、前記中間部分(7;17;27)の前記近位端部(9;19;29)は、前記フローカニューレ(4;14;24)の前記近位部分(6;16;26)に取り付けられまたは配置される、ことを特徴とするフローカニューレ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフローカニューレであって、前記中間部分(7;17;27)は、前記遠位部分(5;15;25)および前記近位部分(6;16;26)の少なくとも一方に、好ましくは、前記フローカニューレ(4;14;24)の前記遠位および近位部分(5,6;15,16;25,26)の双方に、液密の様式で、前記遠位部分(5;15;25)および前記近位部分(6;16;26)間の血液の流れを導く目的で、取り付けられる、ことを特徴とするフローカニューレ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のフローカニューレであって、前記中間部分(7;27)は、前記フローカニューレ(4;24)の前記遠位および近位部分(5,6;25,26)に取り付けられまたは配置され、それにより、前記フローカニューレ(4;24)の前記遠位および近位部分(5,6;25,26)の少なくとも一方に、好ましくは、その個々に、少なくとも部分的にオーバーラップするようにされる、ことを特徴とするフローカニューレ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のフローカニューレであって、前記フローカニューレ(4)の前記遠位部分(5)および前記近位部分(6)は、相互に解除可能に連結される、ことを特徴とするフローカニューレ。
【請求項6】
請求項5に記載のフローカニューレであって、前記中間部分(7)は、前記フローカニューレ(4)の前記遠位および近位部分(5,6)が相互に連結されるときに、軸方向にギャザー処理される、ことを特徴とするフローカニューレ。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載のフローカニューレであって、前記中間部分(27)は、その遠位端部(28)に取付け部材(30)を含み、前記取付け部材(30)は、前記患者の心臓に取り付けられるように構成され、好ましくは前記中間部分(27)の近位端部(29)は、前記近位部分(26)に取り付けられ、さらに好ましくは前記遠位部分(25)および前記近位部分(26)は、一体的に形成される、ことを特徴とするフローカニューレ。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載のフローカニューレであって、前記中間部分(17)は、前記フローカニューレ(14)の前記遠位部分(15)および前記近位部分(16)に取り付けられ、それによって、前記遠位部分(15)および前記近位部分(16)は、相互から軸方向に離間され、前記中間部分(17)は、前記遠位部分(15)および前記近位部分(16)間に配設されるようにされる、ことを特徴とするフローカニューレ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のフローカニューレであって、前記中間部分(7;17;27)は、可撓性チューブ状部材である、ことを特徴とするフローカニューレ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のフローカニューレであって、前記中間部分(7;17;27)は、前記長手軸の方向に伸展可能である、ことを特徴とするフローカニューレ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のフローカニューレであって、前記中間部分(7;27)は、壁厚さが、約5μm〜約1,000μm、好ましくは、約150μm未満、より好ましくは、約50μm未満、さらに好ましくは、約30μmである、ことを特徴とするフローカニューレ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のフローカニューレであって、前記中間部分(7;27)は、チューブ状ポリマフィルム、好ましくは、組織内殖を誘導するポリマ材料、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートを含み、あるいは、前記中間部分(17)は、ポリマチューブ、好ましくは、シリコーンチューブまたはポリウレタンチューブを含む、ことを特徴とするフローカニューレ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項のフローカニューレ(4;14;24)を含む、ことを特徴とする、患者の心臓をサポートするための血液ポンプ(1)。
【請求項14】
請求項13に記載の血液ポンプであって、前記血液ポンプは、サイズ決めされて、前記患者の胸腔の中に配置されるように構成される、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか1項のフローカニューレ(4;14;24)あるいは請求項13または14の血液ポンプと、前記フローカニューレ(4;14;24)を完全に閉塞する目的で、サイズ決めされて、前記フローカニューレ(4;14;24)の前記中間部分(7;17;27)のまわりに配置されるように構成される少なくとも1つのクリップ(13)と、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項16】
血液ポンプ(1)を患者から取り外すための方法であって、前記血液ポンプ(1)は、フローカニューレ(4;14;24)を介して前記患者の心臓または血管と流体連通し、前記フローカニューレ(4;14;24)は、遠位端部(10)と、前記フローカニューレ(4;14;24)の長手軸に沿って前記遠位端部(10)の向かい側の近位端部(11)と、を含み、前記フローカニューレ(4;14;24)の前記遠位端部(10)は、前記患者の心臓または血管に、前記血液ポンプ(1)と前記患者の心臓および血管との間にそれぞれ前記流体連通を確立する目的で、連結され、前記フローカニューレ(4;14;24)は、前記遠位端部(10)を有する遠位部分(5;15;25)と、前記近位端部(11)を有する近位部分(6;16;26)と、を含み、前記フローカニューレ(4;14;24)は、前記遠位部分(5;15;25)および前記近位部分(6;16;26)の少なくとも一方に取り付けられる中間部分(7;17;27)をさらに含み、前記方法は、前記フローカニューレ(4;14;24)を通る血液の流れを停止させるために、完全に閉塞されるように前記中間部分(7;17;27)を捩るステップを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記フローカニューレ(4;14;24)を明確に閉塞する目的で、クリップ(13)を前記捩った中間部分(7;17;27)のまわりに取り付けるステップをさらに含む、ことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16または17に記載の方法であって、前記中間部分(7;17;27)を前記クリップ(13)に対して近位の場所で分離することによって前記フローカニューレ(4;14:24)の前記近位部分(6;16;26)を取り外すステップをさらに含み、前記中間部分(7;17;27)の少なくとも一部分は、単独で、または前記遠位部分(5;15;25)との組合せでのどちらかで、前記患者の心臓または血管に恒久的に取り付けられたままである、ことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項16から18のいずれか1項に記載の方法であって、前記中間部分を捩る前に、前記近位および遠位部分を分離して前記近位および遠位部分を相互から軸方向に引き離すステップをさらに含む、ことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項16から19のいずれか1項に記載の方法であって、前記中間部分(7;17;27)を捩る前に展開または伸展するステップをさらに含む、ことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項16から20のいずれか1項に記載の方法であって、最小侵襲手術で実行される、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の心臓をサポートするための血液ポンプ用のフローカニューレに関する。フローカニューレは、血液ポンプを患者の心臓や血管に連結するように構成される。フローカニューレは、血液ポンプを取り外した後で心臓または血管に連結された部分が患者の胸郭の内部に残るように分離される場合がある。本発明は、さらに血液ポンプを患者から取り外す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液ポンプは、カテーテルを用いて大動脈などの患者の血管の中に挿入されることがあり、あるいは、胸腔の中にまたは患者の身体の外側にさえ配置されることがある。適用例によっては、特に、血液ポンプが血管内に配置されない場合には、血管または心臓、例えば、左心室、に対する直接連結を確立することが必要になり得る。血液ポンプのフローカニューレは、心臓の開口の中に挿入されて、血液ポンプと患者の心臓の間の流体連通を確立するために心臓の壁に固定される。血液ポンプからの外出流は、その後に、血液を左心室から直接大動脈にポンプ送りするために、大動脈に連結されることがある。
【0003】
例えば、心臓が回復したという理由で、血液ポンプがもはや必要とされない場合、血液ポンプは、取り外される。しかしながら、フローカニューレの心臓からの完全な取り外しでは、開胸手術が通常必要になるであろうし、危険な出血のハイリスクを伴うであろうし、心臓の開口が閉じられねばならないであろう。それ故に、フローカニューレは、通常分離、例えば、切断され、それにより、心臓に連結された部分は、患者の胸郭の内部に残るようにされる。クリップ、クランプまたは同様のものが、フローカニューレの残っている部分を閉じるために使用される。しかしながら、フローカニューレは、合併症の発生の場合に取り扱いを容易にするために、患者の皮膚下の近くで通常切断される。こうして、フローカニューレの残っている部分は、通常比較的に長く、クランプは、かさばることがある。これは、周囲の組織に影響を及ぼすことがあり、また、刺激をあるいは炎症すら引き起こすことがある。それ以外には、比較的堅いことがあり比較的大きな直径を有することのあるフローカニューレが、密にクランプすることができず、それにより、血液が患者の胸郭の中に漏れる、というリスクがあることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、血液ポンプ用のフローカニューレを提供することであって、このフローカニューレは、血液の流れを停止させるために閉塞すること、および、引き続き分離することが、共に好ましくは最小侵襲手順によって実行でき、さらに好ましいことには、周囲の組織と共に患者の内部に残るフローカニューレの部分の干渉は、低減することができるものであり、ならびに、そういったフローカニューレを備えた血液ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明に従って、フローカニューレ、および、独立請求項の特徴を有する方法によって、達成される。本発明の好適な実施形態およびさらなる発展は、それに従属する請求項に特定されている。
【0006】
本発明によれば、患者の心臓をサポートするための血液ポンプ用のフローカニューレは、遠位端部と、フローカニューレの長手軸に沿って遠位端部の向かい側の近位端部と、を含む。フローカニューレの遠位端部は、患者の心臓または血管に、血液ポンプと患者の心臓および血管との間にそれぞれ流体連通を確立する目的で、連結されるように構成される。フローカニューレは、前記遠位端部を有する遠位部分と、前記近位端部を有する近位部分と、を含む。フローカニューレは、遠位部分および近位部分の少なくとも一方に取り付けられる中間部分をさらに含む。中間部分は、遠位部分および近位部分の少なくとも一方よりも小さめの力での、そのクランピングおよび捩りの少なくとも一方、特に、捩りを可能にする。中間部分は、その捩りによって完全に閉塞されるように構成される。本開示の全体にわたって、用語「遠位」は、使用者、例えば、外科医から離れて心臓に向かう方向を指し、用語「近位」は、使用者に向かう方向を指す。
【0007】
中間部分の少なくとも一部分は、単独で、または遠位部分との組合せでのどちらかで、患者の心臓または血管に恒久的に取り付けられるように適合される。換言すると、中間部分の前記部分は、単独で、または遠位部分との組合せでのどちらかで、血液ポンプの取り外し後に患者の身体の内部に残るように適合される。逆に、好ましくは少なくとも近位部分、出来る限り近位部分および遠位部分は、中間部分の残っている部分と組み合わせて、患者の身体から取り外されるように適合される。フローカニューレの小さな部分だけが患者の中に置かれてくるので、引き起こされる刺激や炎症は僅かである。
【0008】
複数の部分、特に、近位部分、遠位部分および中間部分の形で設計されるフローカニューレは、血液ポンプの取り外し中のフローカニューレの改善された分離を可能にし、患者の身体の中に残るであろう部分は、引き起こす周囲組織との干渉が少ない。フローカニューレは、最小侵襲手術で中間部分を捩ることによって容易に閉塞することができる。特に、中間部分は、捩られて、完全に閉塞してフローカニューレを通る血液の流れが停止するように構成される。中間部分の捩りは、近位部分を遠位部分に対して捩ることによって、引き起こすことができ、その理由は、中間部分の捩りが必要とする力が、少なくとも遠位部分の、好ましくは、遠位および近位部分の双方の、捩りよりも小さいからである。
【0009】
中間部分は、捩るかクランプする、あるいは、クランプと捩りの双方に関して、必要とする力が小さいので、容易かつ堅固に閉塞することができる。遠位部分を閉塞するのに必要であろうクランプまたはクリップと比較して小さめのクランプまたはクリップは、フローカニューレの中間部分を閉塞するのに十分である。中間部分の捩りは、フローカニューレの一時的な閉塞を可能にし、その後に、クランプやクリップによって、あるいは、ケーブル、ワイヤまたは同様のものなどの他の適切な手段によって、最終的に閉じられることがある。中間部分を操作するのに要する力がより小さいので、フローカニューレを閉塞して近位部分を取り外す手順は、最小侵襲で行うことができ、患者が負うリスクはより小さい。その上、中間部分を捩ることに代えて、あるいは、それに加えて、ループまたはカッティングワイヤが使用される場合があり、中間部分のまわりにループ掛けされて、ループまたはカッティングワイヤを密に引くことによってそれをクランプする。用語「クリップ」または「クランプ」は、フローカニューレ、特に、中間部分の捩った部分、のまわりに配置されて、フローカニューレが切断され得るかそうでなければ分離され得るように、堅固に最終的にそれを閉じる部片を指す。クリップまたはクランプは、最小侵襲手順で適用される場合がある。それと対照的に、公知のカニューレは、血液の流れを止めるために、はさみ様の外科用クランプのようなかさばる機器を必要とすることがある。これは、開胸手術だけで実行され得る。
【0010】
フローカニューレの遠位および近位部分は、例えば、雌雄コネクタ、ねじ、バヨネットマウント、迅速カップリング、磁石または同様のものなどの解除式コネクタによって、解除可能に相互に連結されることがある。代替的に、フローカニューレの遠位および近位部分は、所定のブレイクライン、例えば、周方向ノッチ、を介して連結されることがある。こうして、近位部分および遠位部分は、小さい力で分離でき、その間、中間部分は、近位部分および遠位部分の双方に取り付けられたままである。
【0011】
しかしながら、解除可能に連結されるが、近位部分および遠位部分の不慮の分離は、回避されるべきである。したがって、所定のブレイクラインが設けられる場合には、所定のブレイクラインは、低い破断力に耐えるための最小の抵抗を有するべきである。特に、止血剤または他のクランプやカッティングツールなどの機器が近位部分および遠位部分を分離するために必要であるように、所定のブレイクラインを設計することは、有利なことがある。例えば、カバーによって、所定のブレイクラインを防護することが可能であることもある、すなわち、開封帯または同様のものが設けられることがある。1つ以上、例えば、2、3、4、5、または6個の防護フィラメントは、近位部分および遠位部分を互いに保持する目的で、近位部分および遠位部分にそれぞれ取り付けられて設けられることがある。防護フィラメントは、中間部分の外側に配置、例えば、フローカニューレの周囲のまわりに一様に離間されることがある。それらは、近位部分および遠位部分を相互から分離するのを可能にする目的で、切断されるかまたはそうでなければ分離されることがある。
【0012】
相互から分離されるとき、近位部分および遠位部分は、相互に対して軸方向に移動可能であることがあり、それは、中間部分を軸方向に圧縮または伸展することによって、または、中間部分を捩ることによって、達成されることがあり、近位部分および遠位部分を相互により近づかせる。代替的に、遠位および近位部分は、一体的に形成されて、分離されないことを意図していることがある。例えば、遠位および近位部分は、単一のチューブ状部材を形成することがあり、中間部分は、ジャケットのようにチューブ状部材の上に配置される。
【0013】
より具体的には、フローカニューレの中間部分は、遠位端部および近位端部を有することがあり、中間部分の遠位端部は、フローカニューレの遠位部分に取り付けられ、中間部分の近位端部は、フローカニューレの近位部分に取り付けられる。その結果、フローカニューレが完全な分離の準備をしている間、血液がフローカニューレから漏れず、その理由は、近位部分および遠位部分が分離したときでさえ中間部分が近位部分および遠位部分間のギャップを架橋するからである。したがって、中間部分が、少なくとも遠位部分に、好ましくは、近位部分および遠位部分の双方に、液密の様式で、遠位部分および近位部分間の血液の流れを導く目的で、取り付けられることが好ましいことが理解されよう。例えば、中間部分は、接着、溶着、クランプ、結合、またはその他の方法で取り付けられ得る。中間部分の両端部が近位部分および遠位部分にそれぞれ取り付けられないすなわち堅固に固定されない実施形態では、それぞれの自由端部は、それぞれの端部部分の上またはまわりに少なくとも配設されることがある。
【0014】
実施形態では、中間部分は、フローカニューレの遠位および近位部分の少なくとも一方、好ましくは個々に少なくとも部分的にオーバーラップするように、フローカニューレの遠位および近位部分に取り付けられる。それが意味することは、血液ポンプの動作中にフローカニューレの近位部分および遠位部分が相互に連結されるとき、中間部分が、近位部分および遠位部分と完全にオーバーラップする場合に、フローカニューレを通る血液の流れと接触しない、ということである。こうして、中間部分は、長期の血液曝露に適していないであろう種々の材料で作ることができる。さらに、中間部分は、極めて薄い材料で作ることができ、血液ポンプの全動作中に血液の流れを導かなければならなかった場合に破れるリスクを負うことができる。フローカニューレの分離中だけ、中間部分は、より詳細に下で説明するように、血液の流れに直接接触するであろう。こうして、特に、しかしながら、本実施形態だけでなく、中間部分は、壁厚さが約150μmより小さく、好ましくは、約30μmのことがあり、また、ポリエチレンテレフタレート(例えば、Dacron(登録商標))、ポリウレタン、またはePTFEなどのチューブ状のポリマフィルムを含むことがある。例えば、壁厚さは、ポリウレタンでは約5μmから約100μm、ePTFEでは約300μmから約1,000μmの範囲にわたり得る。薄いポリマフィルムは、特に、上で説明するように、捩ること、それによって、フローカニューレを完全に閉塞することに適している。
【0015】
中間部分は、ギャザー処理されことがあり、特に、フローカニューレの遠位部分および近位部分が相互に連結されるときに軸方向にギャザー処理される。中間部分は、ベローズのような様式で動くことがある、すなわち、ジグザグの様式で折り重なることがあり、あるいは、単純に軸方向に圧縮されることがある。近位部分および遠位部分が連結されるときに中間部分がギャザー処理されまたは圧縮される場合、中間部分は、近位部分および遠位部分がそれを引っ張ることなく相互から離れて行くときに折り重ねが解除されまたは圧縮解除される。換言すると、張力は、近位部分および遠位部分が離隔されるとき、中間部分に存在しない。これは、中間部分に張力を保持する必要なく、容易なクランプ、必要に応じて、中間部分の捩りを可能にし、それは最小侵襲手順にとって有益である。しかしながら、任意の実施形態では、中間部分は長手軸の方向に伸展可能であることがある。
【0016】
それを除いて、任意の実施形態では、中間部分は、近位部分および遠位部分の軸方向の動きに干渉しないようにサイズ決めおよび寸法決めされる、すなわち、中間部分は、近位部分および遠位部分に関して過度に密ではない。例えば、僅かなギャップは、中間部分と、近位部分および遠位部分の少なくとも一方好ましくは両方、との間に設けられることがある。中間部分が近位部分および遠位部分に取り付けられることがあるので、中間部分は、僅かにテーパ付けされる、すなわち、その端部と比較して中間では僅かに大きな直径を有することがある。
【0017】
特に、遠位および近位部分が一体的に形成される他の実施形態では、中間部分は、例えば、縫合することによって、特に恒久的に、患者の心臓に取り付けられるように構成されるディスクなどの取付け部材をその遠位端部に含むことがある。中間部分の近位端部は、近位部分に取り付けることが好ましい。この実施形態では、フローカニューレの近位部分および遠位部分は分離されないで、単一の部片として心臓の外に引き出されるであろう。近位部分および遠位部分を引くことによって、中間部分は、上で説明したように伸展または展開されて、捩られおよびクランプされる。中間部分は、切断され、それにより、取付け部材だけは、中間部分の一部分と共に、患者の中に残されて患者の心臓の開口を閉じるようにされる。近位部分および遠位部分は、完全に取り外される。近位部分および遠位部分の不慮の引っ込みを回避する目的で、上で述べたそれらと同様の防護フィラメントが設けられて、取付け部材および近位部分に固定される。
【0018】
取付け部材は、フェルトまたは同様のものなどの、心臓の組織への取付け部材の縫合を可能にする材料で作られることが好ましい。1つの実施形態では、取付け部材は、径方向に延びるセクションを、例えば、3、4、5または6個、セクション間にギャップを備えて、含むことがある。中間部分を捩ると、セクションは、周方向に相互により近づき、それにより、下にある心臓組織は、開口まわりに周方向に捩られて圧縮され、それによって、特に、近位部分および遠位部分が心臓から引っ込んだときに、心臓組織の開口が狭まることになる。これは、フローカニューレが取り外された後の創部サイズを減少させる。創部は、その後に、圧縮された取付け部材と、患者の内部に残る中間部分の一部と、によって閉じられる。
【0019】
さらに他の実施形態では、中間部分は、遠位および近位部分に取り付けられ、それにより、遠位および近位部分は、相互から軸方向に離間され、中間部分は、遠位および近位部分間に配設されるようにされ得る。換言すると、近位部分および遠位部分は、相互に直接連結されずに、中間部分を介して連結される。この実施形態では、中間部分は、血液ポンプの動作中に近位部分および遠位部分間の血液の流れを導く。こうして、特に、この実施形態では、中間部分は、長期の血液曝露に適している、ポリマチューブ、好ましくは、シリコーンチューブまたはポリウレタンチューブ、を含むことがある。
【0020】
上で説明した実施形態のいずれにおいても、中間部分は、可撓性チューブ状部材であることが好ましい。フローカニューレの近位部分および遠位部分もまた、チューブ状部材であることが好ましい。有利なことには、フローカニューレの遠位部分は、出来る限り短く、いずれの場合でも、長手方向にフローカニューレの近位部分よりも短く、遠位部分の長さは、近位部分の長さの、好ましくは、50%よりも短く、より好ましくは、25%よりも短く、最も好ましくは、15%よりも短い。例えば、遠位部分は、長さが0.5cm〜3cm、例えば、1cmであることがあり、近位部分は、長さが5cm〜9cm、例えば、7cmであることがある。フローカニューレは、直径が約2〜15mm、好ましくは、約6〜8mmであることがある。
【0021】
血液ポンプは、サイズ決めされて、患者の胸腔の中に配置されるように構成されることが好ましい。これは、血液ポンプが患者の身体に完全に植え込まれる、例えば、患者の心臓および大動脈に連結される、という適用例を可能にする。他の実施形態では、血液ポンプは、体外に配置されるように構成されるポンプデバイスを含むことがあり、フローカニューレは、患者の皮膚を通して延びる。
【0022】
システムは、上で説明したような血液ポンプと、フローカニューレを完全に閉塞する目的でサイズ決めされて中間部分のまわりに配置されるように構成される少なくとも1つのクリップまたはクランプと、を含むことがある。特に、クリップまたはクランプは、近位部材および遠位部材が相互から離間されるとき中間部分のまわりに配置されるためにサイズ決めおよび形状決めされることがある。クリップまたはクランプが中間部分のまわりに配置された後、フローカニューレの近位部分は、例えば、より詳細に下で説明するように中間部分を切断することによって、取り外される場合がある。
【0023】
上で説明したような血液ポンプを用いる、特に、血液ポンプを患者から取り外す、例示的な方法は、以下のステップを含む。フローカニューレの近位および遠位部分が、例えば、解除式コネクタまたは所定のブレイクラインを用いて、連結される場合、近位および遠位部分は、分離されて相互から軸方向に離される。中間部分は、その後に展開または伸展することがあるが、近位部分および遠位部分に連結されたままである。中間部分は、その後にフローカニューレを閉塞してフローカニューレを通る血液の流れを止める目的で閉塞される。必要に応じてまたは適用例で示されれば、中間部分は、先ず一時的な閉塞を取得する目的で捩られることがある。同時に、中間部分を捩ることによって、その直径が減少して、小さいクリップを使用することを可能にする。捩られたまたは捩られていない中間部分は、その後に、フローカニューレを完全に明確に閉塞する目的でクランプ、クリップまたは同様のものによってクランプされる。フローカニューレの近位部分は、その後に、例えば、中間部分をクリップに関して近位の場所で切断することによって、取り外される場合がある。遠位部分は、中間部分の一部およびクリップと共に、患者の内部に残る。この手順は、最小侵襲で実行することができる。患者の内部に残っている部品は、周囲の組織との干渉を低減または回避する目的で小さくてかさばらない。刺激や炎症は、低減または回避することができる。
【0024】
他の例示的な実施形態では、近位部分および遠位部分は、単一の部片を形成しており、分離されないであろう。中間部分は、その遠位端部に患者の心臓に堅固に取り付けられる取付け部材を有し、その一方、中間部分の近位端部は、フローカニューレの近位部分に取り付けられる。いったんフローカニューレが取り外されると、近位部分および遠位部分を含んでいる単一の部片は、心臓の外に引き出され、それにより、中間部分は、展開および/または伸展するようにされる。それは、心臓の外に十分に遠くに引き出され、捩りおよびクランプをすることおよび続いて中間部分を切断することができる。中間部分の遠位部だけが、取付け部材と共に、患者の内部に残る。これは、患者の中に放置される材料のサイズをさらに減少させることができ、心筋のパンチ開口の治癒を改善することができる。
【0025】
前述の要約、ならびに、好適な実施形態の以下詳細な説明は、添付の図面に関連して読んだときにより良く理解されるであろう。本開示を例証する目的で、参照が図面について行われる。しかしながら、本開示の範囲は、図面に開示した特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】血液ポンプがそれに取り付けられる患者の心臓を示す図である。
図2a】フローカニューレの実施形態を示す図である。
図2b】フローカニューレの実施形態を示す図である。
図3a】使用中の図2a、2bのフローカニューレを示す図である。
図3b】使用中の図2a、2bのフローカニューレを示す図である。
図3c】使用中の図2a、2bのフローカニューレを示す図である。
図3d】使用中の図2a、2bのフローカニューレを示す図である。
図3e】使用中の図2a、2bのフローカニューレを示す図である。
図4a】使用中の他の実施形態に係るフローカニューレを示す図である。
図4b】使用中の他の実施形態に係るフローカニューレを示す図である。
図4c】使用中の他の実施形態に係るフローカニューレを示す図である。
図4d】使用中の他の実施形態に係るフローカニューレを示す図である。
図5a】使用中の他の実施形態に係るフローカニューレを示す図である。
図5b】使用中の他の実施形態に係るフローカニューレを示す図である。
図5c】使用中の他の実施形態に係るフローカニューレを示す図である。
図5d】使用中の他の実施形態に係るフローカニューレを示す図である。
図5e】使用中の他の実施形態に係るフローカニューレを示す図である。
図6】1つの実施形態に係る中間部分を示す図である。
図7】他の実施形態に係る中間部分を示す図である。
図8a】使用中の取付け部材を概略的に示す図である。
図8b】使用中の取付け部材を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1を参照すると、血液ポンプ1は、患者の心臓Hの中に挿入されて例証されている。血液ポンプ1は、胸腔の中に配置されて、フローカニューレ4を用いて心臓Hの左心室LVに直接連結され、フローカニューレは、本出願において、インフローカニューレであるが、その理由は、血液が、フローカニューレ4の中に吸引され、ポンプケーシング20の中のインペラ(図示せず)を用いて入口2を通してポンプケーシング20の中に運ばれ、さらには大動脈AOに取り付けられるアウトフローカニューレ3を通して血液ポンプ1の外に運ばれるからである。フローカニューレ4は、より詳細に下で説明するように、心臓Hの壁に固定される遠位部分5と、ポンプケーシング20の入口2に連結される近位部分6と、遠位部分5および近位部分6に取り付けられる中間部分7とを有する。血液ポンプ1は、患者の心臓Hをサポートする。いったん血液ポンプ1が取り外されるべきであれば、フローカニューレ4は分離され、フローカニューレ4の残りの遠位部分は、閉じられて、胸腔の中に放置される。
【0028】
フローカニューレ4は、図2aおよび2bにより詳細に例証される。図2aは、近位および遠位部分5、6間の連結部12を例証する目的で組立てされていない図を示す。近位および遠位部分5、6は、例えば、周辺ノッチ(拡大切抜きを参照)によって、または、ねじ、雌雄コネクタ、バヨネットマウント等々などの任意の他の解除式コネクタによって形成されることのある、例えば、所定のブレイクラインを用いて相互に解除可能に連結される。フローカニューレ4は、図1に例証するような患者の心臓Hの中に挿入される遠位端部10と、ポンプケーシング20に取り付けられる対向する近位端部11とを有する。遠位端部10は、心臓Hの中への挿入を容易にするためにスロープ化やテーパ化されることがある。
【0029】
中間部分7は、遠位部分5に取り付けられる遠位端部8と、図2bに示すような近位部分6に取り付けられる近位端部9とを有する。このように、中間部分7は、遠位部分5および近位部分6の双方にオーバーラップする。中間部分7が、遠位および近位部分5、6に、それらの一方だけにオーバーラップするように、取り付けられ得ることが理解されよう。中間部分7は、遠位および近位部分5、6上にギャザー処理される。遠位および近位部分5、6が図2aに示すように連結されるので、中間部分7は、血液ポンプ1の動作中にフローカニューレ4を流れる血液に対して接触を持たない。
【0030】
図3a〜3eを参照すると、例えば、図2bのフローカニューレ4を含む、図1の血液ポンプ1の取り外し中に、フローカニューレを患者の身体から取り外す例示的な方法が説明される。血液ポンプ1が遠心血液ポンプとして示されているが、フローカニューレ4が、他の医療デバイス、特に、アキシャル血液ポンプや混合タイプ(遠心/アキシャル)血液ポンプなどの他のタイプの血液ポンプ、と組み合わせて使用される場合があることが理解されよう。図3aは、図2bと実質上同じ図であり、血液ポンプ1の動作中のフローカニューレ4を示す。血液ポンプ1の動作が停止した後では、フローカニューレ4は、近位部分6を患者から取り外すために分離されねばならない。図3bに例証するように、近位部分6は、例えば、フローカニューレ4を所定のブレイクラインで割ることによって行われることがある解除式コネクタ12を連結解除することによって、遠位部分5から分離される。ねじ付き連結部などの他の連結機構は、使用されることがあるが、図3bには、簡略化のために示していない。遠位部分5は患者の心臓Hに取り付けられたままであるが、近位部分6は、遠位部分5から軸方向に離される。中間部分7は、遠位および近位部分5、6間の作成ギャップを展開、または、伸展して架橋する。したがって、中間部分7は、液密の様式で近位および遠位部分5、6に取り付けられる。
【0031】
中間部分7が薄いポリマフィルムで作られるので、フローカニューレ4を通る血液の流れを停止させるために、図3cに示すように、フローカニューレ4を一時的に完全に閉塞するように、容易に捩ることができる。次いで、クリップ13は、最終閉塞のために捩った中間部分7(図3d)のまわりに配置され、中間部分7は、例えば、カッティング(図3e)によって分離される。残りの部分は、胸腔の中に多くのスペースを必要とせず、深刻な刺激や炎症を引き起こすことなく胸腔の中に残る場合がある。
【0032】
図4a〜4dを参照すると、他の実施形態に係る血液ポンプの取り外し中の例示的な方法が説明される。図3a〜3eの実施形態と対照的に、フローカニューレ14は、遠位および近位部分15、16にオーバーラップしないが、それらの間に配設されて、近位部分15に対して近位端部18で連結され、遠位部分16に対して遠位端部19で連結される中間部分17を含む。こうして、中間部分17は、フローカニューレ14を通って流れる血液に接触し、シリコンやポリウレタンなどの長期間の血液曝露に適した材料で作られることが好ましい。中間部分17は、先の実施形態の中間部分7ほど薄くないが、遠位および近位部分15、16よりも柔軟であって、少なくとも遠位部分15におけるものよりも小さめの力での、クランプを、妥当な場合には、その捩りを、可能にする。
【0033】
図4bに示すように、中間部分17は、捩られて、フローカニューレ14の一時的な完全な閉塞を作り出して、フローカニューレ14を通る血液の流れを停止させる。このステップが省略されることがあり、クリップ13(図4c)が、フローカニューレ14の完全な閉塞を作り出すために、捩ったかまたは捩っていない中間部分17の上に配置される場合があることが理解されよう。先の実施形態のように、中間部分17は、その後に、近位部分16を患者から取り外すために分離され、その一方、遠位部分15は、患者の心臓H(図4d)に取り付けられたままである。
【0034】
図5a〜5eを参照すると、さらに他の実施形態に係る血液ポンプの取り外し中の例示的な方法が説明される。フローカニューレ24は、取付け部材30を含むジャケットのような中間部分27を含み、取付け部材30は、図6および7により詳細に示されているその近位端部28の向かい側の遠位端部29において円盤、板またはシートの形式であり得る。取付け部材30は、患者の心臓Hに直接取り付けられ、例えば、縫合され、心臓Hに恒久的に取り付けられたままであるように構成される。取付け部材30を除いて、中間部分27は、例えば、材料および剛性の特徴に関して、図3a〜3eの実施形態の中間部分7と実質上同様である。フローカニューレ24は、近位部分26と、一体的に形成される遠位部分25とを有するチューブを含む。先の実施形態と対照的に、近位部分26および遠位部分25は、分離されずに単一部片として形成されるであろう。中間部分27は、チューブの上に配置されており、近位端部28を備えた近位部分26に特に連結されることがある。中間部分27が摩擦嵌合によって近位部分26に取り付けられる場合、十分であることがあるが、堅固かつ液密な取付けが好ましいことがある。
【0035】
血液ポンプの動作中、フェルト材料または同様のもので作られることのある取付け部材30は、心臓Hに固定され、例えば、縫合され、近位部分25は、心臓Hの中に延びる(図5a)。血液ポンプが取り外されるべきとき、近位部分26および遠位部分25を含むチューブは、図5bに示すように心臓Hの外に引き出される。円盤30が心臓Hに堅固に固定され、中間部分27の近位端部28が近位部分26に取り付けられるので、中間部分27は、図5bに示すように展開または伸展するであろう。中間部分27および近位部分26間の任意の固定が適切で、この動き、例えば、恒久的な固定または十分に強い摩擦嵌合を可能にするであろうことが理解されよう。中間部分27の近位端部28が、近位部分26に沿って摺動することが可能であり得る。
【0036】
チューブが誤って心臓の外に引き出されるのを防止する目的で、図5aに示すように、防護フィラメント31が設けられて、チューブおよび取付け部材30に取り付く。それらは、図5bに示すように、チューブを引っ込めることを可能にする目的で、切断されるかまたはそうでなければ分離される。患者の身体の内部に残る防護フィラメント31の部分は、出来るだけ短く保持される。2つ以上、例えば、2、3、4、5、または6個の防護フィラメント31が設けられることがある。
【0037】
先の実施形態のように、中間部分27は、捩られて、それを一時的に閉じて(図5c)、フローカニューレ24を通る血液の流れを停止させる。これは、近位部分26を捩ることによって行われ、近位部分26に対する中間部分27の十分な固定を必要とする。中間部分27は、その後にクリップ13によってクランプされる(図5d)。最後に、中間部分27は、切断され、それにより、遠位部分25および近位部分26を中間部分27の切断部と共に含むチューブ全体は、患者から取り外されるようにされる。中間部分27の遠位部を備えた取付け部材30だけが、患者の内部で心臓Hに取り付けられたままであり、心臓Hの開口を閉じている。フローカニューレ24の小さな部分だけが患者の内部に残っているので、周囲組織の刺激や炎症のリスクは、低減することができる。
【0038】
図6および7に示すように、取付け部材30は、異なった実施形態に従って設計されることがある。取付け部材は、患者の心臓に対する取付け部材の縫合を可能にする材料で作られるかまたはそれを含むことが好ましい。適切な材料は、フェルトかまたは同様のものであることがある。取付け部材30は、図6に示すような円盤、シートまたは同様のものであることがあり、丸、円形、矩形、多角形または同様のものなどの任意の適切な形状を想定することがある。例えば、外科医は、取付け部材30の縁部を切断することによってサイズおよび形状を適合させることがある。
【0039】
図7に示すような他の実施形態では、取付け部材30は、それぞれのギャップ33によって分離された複数の、例えば、3、4、5または6個のセクション32を含むことがある。セクション32は、中間部分27から径方向に延びる。図5c〜5eならびに図8aおよび8bを再度参照すると、連続的な円盤またはシートの代わりにセクション32を提供することの利点は、中間部分27の捩り中に、セクション32が相互により近づいて、それによって、図8bの矢印によって示されるように、心臓組織のパンチ穴が捩られて狭まり、創部サイズが減少する、ということである。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図6
図7
図8a
図8b
【国際調査報告】