特表2019-529680(P2019-529680A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-529680ポリオレフィン系難燃性発泡体製造用樹脂組成物およびこれから形成された難燃性発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-529680(P2019-529680A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系難燃性発泡体製造用樹脂組成物およびこれから形成された難燃性発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20190920BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20190920BHJP
【FI】
   C08J9/16CES
   C08L23/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-534622(P2019-534622)
(86)(22)【出願日】2017年9月19日
(85)【翻訳文提出日】2019年3月6日
(86)【国際出願番号】KR2017010220
(87)【国際公開番号】WO2018052267
(87)【国際公開日】20180322
(31)【優先権主張番号】10-2016-0119487
(32)【優先日】2016年9月19日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】511123485
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヨン チン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ソン ファン
(72)【発明者】
【氏名】オム、セ ヨン
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074AA24
4F074AA25
4F074AA26
4F074AB01
4F074AC31
4F074AD13
4F074AD21
4F074AG10
4F074BA31
4F074BA32
4F074BA33
4F074BA36
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA39
4F074BA40
4F074CA31
4F074CA49
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA18
4F074DA22
4F074DA23
4F074DA24
4J002BB001
4J002BB031
4J002BB121
4J002BB151
4J002BB171
4J002BB181
4J002DH027
4J002DH057
4J002EA019
4J002EB006
4J002EB096
4J002EB136
4J002EB166
4J002ED076
4J002EU186
4J002EU198
4J002EW047
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD138
4J002FD329
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、ポリオレフィン系難燃性発泡体製造用樹脂組成物およびこれから形成された難燃性発泡体に関する。本発明による前記樹脂組成物は、発泡成形時、高い融着率と低い収縮率を示しながらも、優れた難燃性と防炎特性を有する発泡体の提供を可能にする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
94乃至97重量%のポリオレフィン樹脂および3乃至6重量%の難燃剤を含み;
前記難燃剤は、臭素系難燃剤、リン系難燃剤および窒素系難燃剤を1:0.6乃至30:0.6乃至20の重量比で含有する、ポリオレフィン系難燃性発泡体製造用樹脂組成物。
【請求項2】
前記難燃剤は、前記樹脂組成物全体重量に対して0.06乃至1.75重量%の臭素系難燃剤、0.5乃至3.25重量%のリン系難燃剤および0.5乃至2.25重量%の窒素系難燃剤からなる、請求項1に記載のポリオレフィン系難燃性発泡体製造用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、およびプロピレン−ブテン共重合体からなる群より選択された1種以上の樹脂である、請求項1に記載のポリオレフィン系難燃性発泡体製造用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂組成物の発泡成形物を含むポリオレフィン系難燃性発泡体。
【請求項5】
UL 94 HBF TestによるHF−1等級および大韓民国国民安全処告示第2015−1号の「防炎性能基準」第7条(合成樹脂板、合板などの防炎性能測定基準および方法)による15cm以下の炭化長さを有する、請求項4に記載のポリオレフィン系難燃性発泡体。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、前記発泡成形物をモールド成形により融着させて得たものであって、
前記発泡体の任意の切断面を観察した時、前記発泡成形物が互いに融着されている面積が前記任意の切断面の面積と対比して50乃至80%を示す、請求項4に記載のポリオレフィン系難燃性発泡体。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、前記発泡成形物をモールド成形により融着させて得たものであって、
前記発泡成形物に対するモールド成形直後50℃で6時間乾燥して得た発泡体の寸法を前記モールド成形に利用されたモールドの寸法と対比すると、2.5%以下の収縮率を示す、請求項4に記載のポリオレフィン系難燃性発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年9月19日付韓国特許出願第10−2016−0119487号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、難燃性を有するポリオレフィン系発泡体製造用樹脂組成物とこれから形成された難燃性発泡体に関する。
【背景技術】
【0003】
樹脂発泡体は、密度が低いながらも、適切な化学的、物理的および機械的特性の付与が可能であるため、自動車分野、建設分野、電子分野など多様な産業分野で幅広く使用されている。
【0004】
一般に樹脂発泡体に難燃性を付与するためには、樹脂発泡体を難燃性組成物でコーティングしたり、難燃剤を樹脂組成物にコンパウンディング(またはブレンディング)して発泡体を形成する方式が考慮され得る。
【0005】
前記コーティング方式は、少量の難燃剤を用いて樹脂発泡体に難燃性を付与することができるという点で相対的に有利であるが、樹脂発泡体の表面に形成された難燃性コーティング層が剥離されやすいため、安定した難燃性能の発現が難しいという限界がある。反面、前記コンパウンディング方式は、相対的に多量の難燃剤が要求されて樹脂発泡体の密度が増加するという点で不利であるが、安定的であり、長期的な難燃性能を発現することができるという長所を有する。
【0006】
前記コンパウンディング方式により難燃性を付与するに当たり、難燃剤は環境および人体有害性、燃焼特性、組成物の相溶性、工程効率などに敏感な影響を与えるため、難燃剤の厳しい使用が要求される。特に、難燃性発泡体の場合、発泡体としての低い密度と関連基準による難燃等級を同時に確保しながらも、樹脂発泡体の製造工程で適正水準の難燃性と発泡成形性を維持しなければならない。
【0007】
しかし、樹脂発泡体に付与することができる難燃性、密度、成形性などの諸般特性は、両立しにくいトレードオフ(trade−off)の関係にあり、適正水準で物性を妥協しなければならない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、発泡成形時、高い融着率と低い収縮率を示しながらも、難燃性と防炎特性に優れた発泡体の提供を可能にする樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
そして、本発明の目的は、前記樹脂組成物から形成された難燃性発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、94乃至97重量%のポリオレフィン樹脂および3乃至6重量%の難燃剤を含み;前記難燃剤は、臭素系難燃剤、リン系難燃剤および窒素系難燃剤を1:0.6乃至30:0.6乃至20の重量比で含有する、ポリオレフィン系難燃性発泡体製造用樹脂組成物が提供される。
【0011】
そして、本発明によれば、前記樹脂組成物の発泡成形物を含むポリオレフィン系難燃性発泡体が提供される。
【0012】
以下、発明の具現例による前記ポリオレフィン難燃性発泡体製造用樹脂組成物と前記ポリオレフィン系難燃性発泡体について詳細に説明する。
【0013】
本明細書に使用される専門用語は、単に特定の具現例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0014】
本明細書で使用される単数の形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0015】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、または成分の付加を除外させるものではない。
【0016】
一方、本発明者らの研究結果によれば、ポリオレフィン系樹脂を用いて発泡体を製造するに当たり、臭素系難燃剤、リン系難燃剤および窒素系難燃剤が特定の重量比で処方された難燃剤を適用する場合、発泡成形性に優れると共に、低い密度と優れた難燃性および防炎特性を同時に満たす発泡体の提供を可能にすることが確認された。
【0017】
[I.ポリオレフィン系難燃性発泡体用樹脂組成物]
発明の一具現例によれば、94乃至97重量%のポリオレフィン樹脂および3乃至6重量%の難燃剤を含み;前記難燃剤は、臭素系難燃剤、リン系難燃剤および窒素系難燃剤を1:0.6乃至30:0.6乃至20の重量比で含有する、ポリオレフィン系難燃性発泡体製造用樹脂組成物が提供される。
【0018】
本発明による前記樹脂組成物は、樹脂組成物に含まれる難燃剤の総含有量が6重量%以下に低いため、優れた発泡成形性の発現と発泡体に要求される低い密度の確保に有利である。
【0019】
特に、前記樹脂組成物に含まれる難燃剤の総含有量が低いにも拘らず、前記特定の重量比に調節された臭素系難燃剤、リン系難燃剤および窒素系難燃剤の組み合わせは、関連基準による優れた難燃等級と防炎特性を満たす難燃性発泡体の提供を可能にする。
【0020】
以下、前記樹脂組成物に含まれ得る各成分についてより具体的に説明する。
【0021】
まず、前記ポリオレフィン樹脂は、発泡体をなすベース樹脂であって、表面硬度が低く、柔軟性に優れ、被包装体の表面保護性能に優れて好適に用いられ得る。
【0022】
前記ポリオレフィン樹脂としては、本発明が属する技術分野における通常のものが特別な制限なしに適用され得る。発明の具現例によれば、前記ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、およびプロピレン−ブテン共重合体からなる群より選択された1種以上の樹脂であってもよい。
【0023】
前記ポリオレフィン樹脂としては、10,000乃至600,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有するものが好適に用いられ得る。
【0024】
具体的に、前記ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000g/mol以上、あるいは50,000g/mol以上、あるいは100,000g/mol以上;そして600,000g/mol以下、あるいは500,000g/mol以下、あるいは400,000g/mol以下、あるいは300,000g/mol以下であってもよい。
【0025】
発泡体に要求される基本的な機械的物性の発現のために、前記ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、10,000g/mol以上であることが好ましい。ただし、分子量が過度に大きい場合、組成物の相溶性と発泡成形性が低下することがあるため、前記ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は600,000g/mol以下であることが好ましい。
【0026】
前記ポリオレフィン樹脂は、樹脂組成物全体重量の60重量%以上、あるいは80重量%以上、あるいは90重量%以上、あるいは90乃至97重量%、あるいは94乃至97重量%で含まれてもよい。
【0027】
発泡体に要求される基本的な機械的物性の発現のために、前記ポリオレフィン樹脂は、樹脂組成物全体重量の60重量%以上、あるいは80重量%以上、あるいは90重量%以上、あるいは94重量%以上含まれることが好ましい。ただし、前記難燃剤の添加による難燃性の発現のために、前記ポリオレフィン樹脂は、樹脂組成物全体重量の97重量%以下含まれることが好ましい。
【0028】
一方、発明の具現例によれば、前記ポリオレフィン系難燃性発泡体製造用樹脂組成物には、臭素系難燃剤、リン系難燃剤および窒素系難燃剤からなる難燃剤が含まれる。
【0029】
特に、前記難燃剤としては、臭素系難燃剤:リン系難燃剤:窒素系難燃剤を1:0.6乃至30:0.6乃至20の重量比で含有することが好ましい。前記重量比の範囲は、臭素系難燃剤(1)の含有量を基準にリン系難燃剤(0.6乃至30)および窒素系難燃剤(0.6乃至20)の含有量範囲を順次に示したものである。
【0030】
非制限的な例として、前記難燃剤は、臭素系難燃剤、リン系難燃剤および窒素系難燃剤を1:0.6:0.6、あるいは1:0.6:20、あるいは1:0.67:0.67、あるいは1:1:1、あるいは1:2:1、あるいは1:2.5:1.25、あるいは1:2.5:2.5、あるいは1:5:10、あるいは1:30:0.6、あるいは1:30:20の重量比で含有することができる。
【0031】
前述した重量比範囲内に調節された臭素系難燃剤、リン系難燃剤および窒素系難燃剤を含む難燃剤は、少ない含有量でも樹脂組成物の発泡体に優れた難燃性を付与することができる。
【0032】
好ましくは、前記臭素系難燃剤、リン系難燃剤および窒素系難燃剤からなる難燃剤は、前記樹脂組成物全体重量に対して6重量%以下、あるいは3乃至6重量%で含まれてもよい。つまり、前述した重量比範囲内に調節された臭素系難燃剤、リン系難燃剤および窒素系難燃剤は、総含有量6重量%以下でも優れた難燃性の発現を可能にする。
【0033】
より好ましくは、前記難燃剤の含有量は、前記樹脂組成物全体重量に対して3重量%以上、あるいは3.5重量%以上であり;6重量%以下、あるいは5.5重量%以下、あるいは5.1重量%以下であってもよい。
【0034】
発明の具現例によれば、前記難燃剤は、前述した総含有量範囲内で、前記樹脂組成物全体重量に対して0.06乃至1.75重量%、あるいは0.1乃至1.75重量%、あるいは0.1乃至1.5重量%の臭素系難燃剤;0.5乃至3.25重量%、あるいは1乃至3.25重量%、あるいは1乃至3重量%のリン系難燃剤;そして0.5乃至2.25重量%、あるいは1乃至2.25重量%、あるいは1乃至2重量%の窒素系難燃剤を含むことができる。
【0035】
一方、前記臭素系難燃剤は、ハロゲン化難燃剤の一種で、含有量に比べて優れた難燃性を示すことができる。ただし、前記ハロゲン化難燃剤は、燃焼時にダイオキシン誘導体および水素酸のような有害ガスを発生させることがあり、その残留性と生物蓄積性により環境および人体に不利な影響を与えることがある。これと関連して、欧州連合のREACH規則やRoHS指針では、ハロゲン化難燃剤の使用量を厳格に制限している。したがって、前記臭素系難燃剤は、関連規則や指針による含有量範囲内に使用されることが好ましい。
【0036】
前記臭素系難燃剤の代表的な例としては、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンヒドロブロマイド(1,3,5−triazine−2,4,6−triamine hydrobromide;CAS # 29305−12−2)、ポリブロモジフェニルエーテル(polybrominated diphenyl ethers;PBDEs)、ポリブロモビフェニル(polybrominated biphenyls;PBBs)、テトラブロモビスフェノールA(tetrabromo bisphenol A;TBBP−A)、ヘキサブロモシクロドデカン(hexabromo cyclododecane;HBDC)などが挙げられる。ただし、前記例示された臭素系難燃剤は、関連規則や指針によりその使用が制限されたり禁止され得る。汎用性の側面から、前記臭素系難燃剤としては、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンヒドロブロマイド(1,3,5−triazine−2,4,6−triamine hydrobromide)が好適に用いられ得る。
【0037】
無機系難燃剤は、大部分無害な難燃メカニズムを示しているが、相対的に密度が高く、含有量に比べて劣悪な難燃性を示すため、軽量化が要求される発泡体に前記無機系難燃剤を過量適用することは適していない。特に、前記無機系難燃剤が過量適用されると、樹脂組成物の粘度が増加して工程効率が低下することがあり、微細化セルの発現で発泡体の構造維持に悪影響を招くことがある。
【0038】
前記リン系難燃剤は、無機系難燃剤より少ない含有量で難燃性能の発現が可能であり、他の難燃剤より煙の発生が少ないが、その単独使用だけでは難燃性発泡体粒子を製造するためのミニペレット(mini pellet)の形成が難しくなり得る。
【0039】
前記ミニペレットは、発泡粒子製造のための樹脂粒子の一種で、一般に押出加工を通じて形成されるペレットより粒子の大きさおよび1個当り重量が小さい(好ましくは1.2乃至1.5mg/個)。発泡粒子の製造時、均一な性能の発現が可能なミニペレットを得るためには混合物の分散度を高めることができる高剪断条件のミニペレット用押出設備を利用しなければならない。しかし、リン系難燃剤を単独使用する場合、高剪断が加えられる押出条件によりデグラデイション(degradation)が発生するなどミニペレットの製造に困難があり得る。
【0040】
そして、前記窒素系難燃剤は、樹脂組成物の成分と相対的に優れた混練性を示すが、含有量に比べて劣悪な難燃性を示す。
【0041】
このように、前記リン系難燃剤と窒素系難燃剤の単独使用では樹脂発泡体に付与することができる難燃性、密度、成形性などの諸般特性をバランスよく向上させにくい。したがって、前述した発明の具現例のように、ポリオレフィン系樹脂を用いて難燃性発泡体を製造するに当たり、臭素系難燃剤、リン系難燃剤および窒素系難燃剤が特定の重量比で処方された難燃剤を適用することが好ましい。
【0042】
前記リン系難燃剤と窒素系難燃剤としては、本発明が属する技術分野における通常のものが特別な制限なく用いられ得る。非制限的な例として、前記リン系難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム(ammonium polyphosphate;CAS # 68333−79−9)、リン酸(phosphoric acid;CAS # 7664−38−2)、ペンタエリスリトールホスフェート(pentaerythritol phosphate;CAS # 5301−78−0)などが好適に用いられ得る。また、非制限的な例として、前記窒素系難燃剤としては、メラミンシアヌレート(melamine cyanurate;CAS # 37640−57−6)が好適に用いられ得る。
【0043】
一方、前記ポリオレフィン系難燃性発泡体製造用樹脂組成物には、発泡に必要な成分が含まれてもよい。
【0044】
具体的に、発泡に必要な成分は、物理発泡剤や気泡調節剤が挙げられ、これら以外にも、必要に応じて核剤、染料、染料分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、セル安定剤、セル調節剤などの添加剤が含まれてもよい。
【0045】
そのうち、前記物理発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、二酸化炭素、酸素、窒素などが用いられ得る。このような発泡剤の含有量は、要求される発泡程度により調節され得る。ただし、発明の具現例による樹脂組成物は、優れた発泡性を有することによって、より低い圧力と発泡剤含有量下でも同等な倍率の達成が可能である。
【0046】
[II.ポリオレフィン系難燃性発泡体]
発明の他の一具現例によれば、前述した樹脂組成物の発泡成形物を含むポリオレフィン系難燃性発泡体が提供される。
【0047】
前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、ポリオレフィン樹脂94乃至97重量%および難燃剤3乃至6重量%を含み、特に前記難燃剤として臭素系難燃剤、リン系難燃剤および窒素系難燃剤を1:0.6乃至30:0.6乃至20の重量比で含有する樹脂組成物の発泡成形物から形成され得る。
【0048】
一実施例によれば、前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、前記樹脂組成物の発泡成形物(例えばビード)をモールド成形により融着させて得たものであってもよい。
【0049】
これによって、前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、高い融着率と低い収縮率を示しながらも、低い密度と優れた難燃性および防炎特性を有することができる。
【0050】
具体的に、前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、UL 94 HBF Test(Horizontal Burning Foamed Material Test)によるHF−1等級の優れた難燃特性を示すことができる。
【0051】
なお、前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、大韓民国国民安全処告示第2015−1号の「防炎性能基準」第7条(合成樹脂板、合板などの防炎性能測定基準および方法)による15cm以下、好ましくは10乃至15cm、より好ましくは12乃至15cmの炭化長さを満たす優れた防炎特性を示すことができる。
【0052】
一般にポリオレフィン系建築資材の場合、火に燃えにくい難燃特性(UL 94等級)だけが要求されるが、ポリオレフィン系包装材などの場合、前記UL 94等級の難燃特性と共に火が他の部分に拡大することを防ぐ防炎特性(炭化長さ)が必須要求される。このような観点で、優れた難燃特性と防炎特性を同時に満たす前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、建築資材、包装材など多様な分野に適用可能である。
【0053】
そして、前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、50%以上、または60%以上、または70%以上、または80%以上、または50乃至80%の高い融着率を示すことができる。一実施例によれば、前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、前記発泡成形物(例えばビード)をモールド成形により融着させて得たものであって、前記発泡体の任意の切断面を観察した時、前記発泡成形物が互いに融着されている面積が前記任意の切断面の面積と対比して50乃至80%を示すことができる。
【0054】
また、前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、2.5%以下、または2.4%以下、または2.3%以下、または2.2%以下、または2.1%以下の低い収縮率を示すことができる。一実施例によれば、前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、前記発泡成形物(例えばビード)をモールド成形により融着させて得たものであって、前記発泡成形物に対するモールド成形直後50℃で6時間乾燥して得た発泡体の寸法を前記モールド成形に利用されたモールドの寸法と対比すると、2.5%以下の収縮率を示すことができる。
【0055】
前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、本発明が属する技術分野における通常の発泡成形方法により得られ得る。例えば、前記ポリオレフィン系難燃性発泡体は、Tダイ、サーキュラーダイなどを装着した押出機を利用する押出発泡法により製造され得る。
【0056】
この時、発泡温度は、ポリオレフィン樹脂の結晶化温度以上に調節されてもよく、好ましくはポリオレフィン樹脂の結晶化温度より5乃至30℃高い温度に調節されてもよい。
【発明の効果】
【0057】
本発明による前記樹脂組成物は、発泡成形時、高い融着率と低い収縮率を示しながらも、優れた難燃性と防炎特性を満たす発泡体の提供を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。ただし、下記の実施例は、発明の例示として提示されたものに過ぎず、本発明をこれらだけに限定しようとする意図で提示されるものではない。
【0059】
[実施例および比較例]
下記表1乃至表3に示す成分を混合してポリオレフィン系難燃性発泡体製造用樹脂組成物を準備した。
【0060】
樹脂組成物の製造に使用された各成分は次のとおりである。
*PP:ポリプロピレン樹脂(重量平均分子量248,600g/mol)
*Br−FR:臭素系難燃剤(1,3,5−triazine−2,4,6−triamine hydrobromide)
*P−FR:リン系難燃剤(ammonium polyphosphate)
*N−FR:窒素系難燃剤(melamine cyanurate)
準備された樹脂組成物を下記表4乃至表6に示す温度と圧力条件下で押出発泡してポリオレフィン系ビードを得た。
【0061】
そして、前記ビードを用いて下記表7乃至表9に示す成形圧力下でモールド成形してポリオレフィン系発泡体の試片を得た。
【0062】
[試験例]
前記実施例および比較例によるビードと発泡体の試片に対して、次のような方法でそれぞれ物性を測定し、その結果を下記表4乃至表9に示した。
【0063】
(i)ビードの物性
1)外観状態
:ビードの表面を肉眼で観察して表面の空隙の有無と陥没または収縮の有無などを評価して、その状態が良好なビードの比率が90%以上である場合「O」、70%以上90%未満である場合「△」、70%未満である場合、「X」で表示する。
2)密度(g/L)
:23℃温度の水(体積V1)が入ったメスシリンダーに約200mlの発泡粒子群を採取して質量(W)を測定し、前記メスシリンダーに浸漬して体積を知っている押圧棒(V2)を利用して発泡粒子を沈めた後、全体体積(V3)を測定して、採取した発泡粒子の質量W(g)を発泡粒子群だけの体積(V3−V1−V2)(L)で割って密度を求める。
3)セルサイズ(μm)
:任意に選択された3個の発泡粒子を2等分に切断した断面を走査電子顕微鏡(SEM)を利用して20KV、30倍の倍率で観測したイメージを得た後、イメージ分析プログラム(Leica Application Suite)を通じて平均セルサイズを求める。
4)均一度
:ビードを肉眼で観察して大きさの均一な程度を均一(○)または不均一(X)で評価する。
【0064】
(ii)発泡体の物性
1)収縮率(%)
:前記モールド成形直後、前記発泡体を50℃で6時間乾燥する。乾燥された前記発泡体に対して定規を用いて発泡体の寸法(横、縦、高さ)を測定する。そして、測定された値をモールド成形に利用されたモールドの寸法(横、縦、高さ)と比較して収縮比率(%)を計算した。
2)融着率(%)
:前記発泡体の一側を切断した後、その切断面を顕微鏡で撮影する。前記切断面の全体面積を基準に、前記切断面で前記ビードが互いに融着されている部分の面積比率(%)を計算した。ここで、前記ビードの融着が良好になされた部分はビード表面が見えず、ビードが分かれたり割れた形態で観察される。融着が良好になされていない部分はビードの表面が露出されて肉眼で観察が可能である。
3)防炎特性−炭化長さ(cm)
:下記の大韓民国国民安全処告示第2015−1号の「防炎性能基準」第7条(合成樹脂板、合板などの防炎性能測定基準および方法)に基づき、横29cm、縦19cmの広さの試験片を燃焼試験装置の受け台に固定した後、65mmの長さの火炎の先端が試験片中央下端に接するように発生させて2分間加熱する条件下で火炎により炭化された部分の最大長さを測定する。
※第7条(合成樹脂板、合板などの防炎性能測定基準および方法)
合成樹脂板、合板、インテリアフィルム付着合板などの防炎性能測定基準および方法は、次の各号に適していなければならない。
1.燃焼試験装置は[別図1]の燃焼試験箱、[別図5]の試験体受け台、[別図3]の電気火炎発生装置および[別図7]のメッケルバーナーを使用する。
2.試験に使用する燃料は、KS M 2150(液化石油ガス)に適したものでなければならない。
3.試験体は1.6m以上の測定対象物品で任意に切り取った横29cm、縦19cmのもので、3個ずつ作る。
4.試験体の乾燥は(40±2)℃恒温乾燥機内で24時間乾燥した後、シリカゲルを入れたデシケーター内に2時間入れて置く。ただし、熱に影響を受けないものは(105±2)℃の恒温乾燥機内で1時間乾燥した後、シリカゲルを入れたデシケーター内に2時間入れて置くこととすることができる。
5.性能試験測定は、次の方法による。
イ.試験体は試験体受け台に固定すること。
ロ.バーナーの火炎の長さは65mmにすること。
ハ.火炎の先端が試験体中央下端に接するようにバーナーを設置すること。
ニ.加熱は各試験体に対して2分間実施すること。
4)難燃等級
:UL 94 HBF Test(Horizontal Burning Foamed Material Test)に基づいて火炎を加えた後の残炎時間(afterflame time)、個別残炎時間+残じん時間(after flame time plus Afterglow time for each individual specimen)、滴下による脱脂綿の発火(cotton ignition)、個別燃焼長さ(damaged length for each individual specimen)をそれぞれ測定し、その基準により三つの等級(HF−1>HF−2>HBF)を付与する。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
【表9】
【0074】
前記表4乃至表6を参照すると、実施例によるポリオレフィン系難燃性ビードは、比較例によるものと比べて相対的に密度が低いながらも、150μm以上のセルサイズを有し、優れた外観と均一度を示すことが確認される。
【0075】
そして、前記表7乃至表9を参照すると、実施例によるポリオレフィン系難燃性発泡体は、前記ビードを用いて形成されることによって、比較例によるものと比べて高い融着率と低い収縮率を示し、特に短い炭化の長さと高い難燃等級を示して難燃性と防炎特性に優れていることが確認された。
【国際調査報告】