(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-529944(P2019-529944A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(54)【発明の名称】ベータボルタ電池
(51)【国際特許分類】
G21H 1/06 20060101AFI20190920BHJP
H01L 31/043 20140101ALI20190920BHJP
H02S 10/00 20140101ALI20190920BHJP
【FI】
G21H1/06
H01L31/04 510
H02S10/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-527114(P2019-527114)
(86)(22)【出願日】2017年8月7日
(85)【翻訳文提出日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】RU2017000575
(87)【国際公開番号】WO2018026314
(87)【国際公開日】20180208
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519032756
【氏名又は名称】フェデラル ステイト ユニタリー エンタープライズ “マイニング アンド ケミカル コンバイン”
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガヴリーロフ ペトル ミハイロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】メルクーロフ イゴール アレクサンドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ドルーズ ドミトリー ヴィタリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】チホミーロフ デニス ヴァレリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】バラコフ ボリス ニコラエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】コズロフスキー アンドレイ ペトロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ペレトーキン アレクセイ セルゲイエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ジュラヴリョーフ コンスタンチン セルゲイエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ギリンスキー アレクサンドル ミハイロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ゼレンコフ パーベル ヴィクトロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】レレコフ アレクサンドル チモフェーイェヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】シドロフ ビクトル ゲンナージエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】コヴァリョフ イゴール ウラジーミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ボグダノフ セルゲイ ヴィクトロヴィチ
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA01
5F151BA11
5F151CB13
5F151CB18
5F151CB27
5F151DA03
5F151DA04
5F151FA06
5F151HA20
5F151JA01
(57)【要約】
【課題】ベータボルタ電池の比出力を増大させる。
【解決手段】ベータボルタ電池は、ケース19、カバー、半導体変換器2、絶縁要素および放射性同位元素5および導電性接点8を含み、これらは必要な出力電力を達成するために並列に(または)直列に接続された1または複数のパック3で構成される。パック3は、互いに逆極性に配向した変換器2から組み立てられ、それらの間に導電性の放射性同位元素5が配置されている。パック3どうしは、等間隔に配置された溝を備えた絶縁要素によって分離されている。反対側の溝には、各パックの極端の変換器2の導電性接点8およびレギュレーター31と同様にそれらの電気的接続の可能性を考慮して作られた導電性接点8が設けられている。半導体変換器2のn層上に堆積した高濃縮ニッケル63同位体は、放射性同位元素5として使用されている。
【選択図】
図1【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース並びにカバーと、
シリコン製のpn構造またはpin構造を有する半導体変換器と、
A3B5化合物と、
プロファイルドドーピングによる、アルミニウム、ガリウム、窒素およびリンの少なくとも1つの固溶体と、
絶縁および放射性同位元素と、
所望の電力を出力するように、並列および直列の少なくとも一方で接続された1または複数のパックを形成するように構成された導電性接点と、を備え、
半導体変換器は、半導体変換器の全幅にわたって空間電荷領域が拡大されており、
半導体変換器を、逆極性の表面どうしが対向するように、パックが組み立てられており、
逆極性の表面間に導電性の放射性同位体元素が配置されており、
外周に沿って等間隔に設けられた溝を有し、当該溝の総数がパックの総数の2倍以上である絶縁要素によってパックどうし分離されており、
反対側の溝には導電性接点が設けられており、
その一方が溝領域における絶縁要素の下面に運ばれ、他方が上面に運ばれ、
絶縁要素の導電性接点は、各パックの極端の半導体変換器の導電性接点とレギュレーターとが電気的に接続されるように、設計されている
ことを特徴とするベータボルタ電池。
【請求項2】
高度に濃縮されたニッケル−63が、放射性同位元素として使用され、
半導体変換器のn層上に堆積されている
ことを特徴とする請求項1に記載のベータボルタ電池。
【請求項3】
パックの最外部の半導体変換器の導電性接点が、銅などの導電性金属のn層またはp層に塗布することによって形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項4】
パックの最外部の半導体変換器の導電性接点が、ニッケルまたはニッケル63のn層またはp層の上に塗布することによって作られており、
最適厚さを有している
ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力および半導体技術に関し、特に、ベータボルタ効果を用いた半導体変換器に基づく電源の創出に関する。
【背景技術】
【0002】
ベータ放射線を電気に変換する半導体変換器が知られている(特許文献1を参照)。この変換器は、テクスチャード加工面を有する半導体ウェーハ、テクスチャード加工面に沿ったダイオード構造、および放射性ベータ放出物質の層を含む。テクスチャード加工面は、円形、矩形、または他の任意の形状の形をした一組の貫通チャネルとして作られ、放射性物質はチャネルの壁面および大部分の半導体表面を覆う。チャネルの壁面および半導体の表面は微小起伏を有し、チャネル間の距離は好ましくは100μm未満である。ニッケル63、トリチウム、またはその両方がベータエミッターとして使用される。テクスチャーは、フォトリソグラフィーまたはレーザーパルスを使用して事前に作成される。テクスチャード加工面を作製する方法の特徴を考慮に入れると、マイクロチャネルの表面を所与の精度で得ることが難しいので、塗布すべき放射性同位体の量を調整することは困難である。この場合、厳密に指定された電力の電源を得ることはできない。
【0003】
また、ケースと、絶縁ガスケットによって分離された正および負電極を有する蓋と、特定の順序でケース内に配置された要素1、2、3、4および5とを備える、高出力ベータボルタ電池も知られている(特許文献2を参照)。
【0004】
要素1は、バッテリー内の電流移動のために設けられた分割リングである。要素1はセラミック材料で作られ、その上に厚い金の層が堆積によって形成されて、要素の上部と下部との間に低抵抗経路を得る。要素2を収容するためのセラミック製の穴が設けられている。
【0005】
要素2は、ベータ放射線のエネルギーを電力に変換する半導体SiCをベースとするベータボルタ電池であり、半導体変換器である。半導体変換器の上下には、オーミック接触が蒸着法により形成されている。
【0006】
要素3は放射性同位体元素であり、詳しくは導電性要素とAlNからなる絶縁部分とを組み合わせた放射性同位体箔である。導電性要素は蒸着法によって形成され、要素の上部と下部との間に低抵抗経路を得るための厚い金層になっている。
【0007】
要素4は、AlNからなる絶縁要素であって、堆積方法によって形成される導電性要素とともに配設される。この導電性要素は、要素4の上部と下部との間に低抵抗経路を得るための厚い金層である。
【0008】
要素5は、直列接続された要素である。要素5は、放射性同位体箔、絶縁材料および導電性領域を含む。導電性領域は、側面領域における堆積によって形成され、要素5の上部と下部との間で低抵抗経路をなす厚い金層である。放射性同位体箔に最も近い導電性材料は、要素全体を貫通する導電性リングの形に作られ、それはまた要素の上部と下部との間の低抵抗経路としても働く。
【0009】
要素1、2、3および4は、並列回路を有する周知のベータボルト電池を作製するために使用される。絶縁要素4、その開口部に配置された要素2を有する要素1、放射性同位体源を有する要素3、およびカバーが順次ケース内に設置される。
【0010】
上記の要素のセットは、必要な出力電力に達するまで並列に接続された1つまたは複数のセットで構成できる。
【0011】
直列および並列回路を備えた公知のベータボルト電池を作成するために、要素1、2、3、4および5を用いる。パックをケースに組み立てる際には、以下の要素が1つずつ組み立てられる。まず絶縁要素4、次に開口部に要素2を配置した要素1、更に放射性同位体源および導電性リングを有する要素5、再び開口部に要素2を配置した要素1、その後、放射性同位体源を有する要素3を直列に取り付ける。
【0012】
この場合、元素1と2の各組み合わせの間に、放射性同位元素源および導電性リングを有する元素5が配設される。放射性同位元素源を有する元素3は、最上部の元素2の上に配置される。正極と負極を有するカバーが構造全体に取り付けられ、こうして組み立てが完成する。上記の要素のセットは、必要な出力電力に達するまで並列に接続された1つまたは複数のセットで構成できる。
【0013】
特許請求の範囲に記載されている中心放射性同位体層は、トリチウム、ニッケル−63、リン−33、またはプロメチウムのうちの1つまたは複数の放射性同位体を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】ロシア連邦特許2452060号、IPC H01L 31/04
【特許文献2】米国特許8487392号、IPC H01L 27/14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
出願人は、従来技術として公知のベータボルタ電池を選択する。
【0016】
公知のベータボルタ電池の欠点は、その出力電気パラメータ(電圧および電流)が組立て中の要素の数と電気的接続の種類(直列または並列)によって決定され、動作中に変更できないことである。
【0017】
さらに、並列接続されたベータボルト電池では、放射性同位元素源を有する要素3が、SiCをベースとする半導体変換器を有する要素2と絶縁要素4との間に配置されるとともに、第2の要素3が最上の要素2の上方に設置される。結果として、放射性同位元素3では、これらの要素のプレートの一方の側、特に、放射性同位体に隣接する半導体変換器に直接面する側からの放射の一部しか使用されないので、高価な放射性同位体の使用効率は低下する(ほぼ2倍)。
【0018】
直列および並列接続を有するベータボルタ電池において、放射性同位体要素5の両側が使用されるものの、要素3はやはり一方の側しか使用されない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一形態に係るベータボルタ電池を使用することによって得られる技術的結果は、放射性同位体元素が放射するエネルギーを半導体変換器によって最も完全に電気エネルギーに変換され、放射性同位体元素(例えば金属ニッケル−63またはプロメチウム−147)を半導体変換器間の電気接点として使用され、電池パックをレギュレーターに電気的に接続することができる、という事実から、その比出力を増大させることができることである。
【0020】
また、この技術的結果は、次の事実によって達成される。すなわち、ケース並びにカバーと、シリコン製のpnもしくはpin構造をベースとする半導体変換器と、A3B5化合物と、プロファイルドドーピングによるアルミニウム、ガリウム、窒素およびリンのいずれか(または全部)の固溶体と、絶縁性および放射性同位元素と、導電性接点と、が1または複数のパックを構成し、並列接続および(または)直列接続され、初期の電力を出力するベータボルタ電池において、プロファイルドドーピングされた半導体変換器が、当該半導体変換器の全幅にわたって空間電荷領域が増加するように作製されているという事実である。
【0021】
このパックは、互いに逆極性の面どうしを対向させた半導体変換器を当該逆極性の面どうしの間に導電性の放射性同位体が介在するように、組み立てられている。
【0022】
パックどうしは、外周全体に沿って等間隔に設けられた溝を有する絶縁要素によって分離されており、その数はベータボルタ電池のパック数の2倍以上である。
【0023】
反対側の溝には導電性接点が設けられており、その一方は溝領域内の絶縁要素の下面に導かれるとともに、第2の接点は上面に導かれており、絶縁要素の導電性接点は、それぞれ所定の接点に隣接している各パックのもっとも外側の半導体変換器の導電性接点と、レギュレーターとの双方に電気的に接続できるように、設計されている。
【0024】
実施の形態によっては、高濃縮ニッケル−63同位体が導電性放射性同位元素として使用される。
【0025】
実施の形態によっては、パック毎に最も外側の半導体変換器の導電性接点がn−層またはp−層の導電性金属、例えば、銅の上に堆積することによって作られる。
【0026】
実施の形態によっては、パック毎の最も外側の半導体変換器の導電性接点は、適当な厚さのニッケル−63のnp−層またはp−層に堆積することによって形成される。
【0027】
半導体変換器(以下、「変換器」という。)はプロファイルドーピングによって形成され、変換器のpn構造またはpin構造の全厚にわたって空間電荷面積が拡大されているため、β放射線のエネルギーが電気エネルギーへ最も完全に変換される。これは、電荷キャリアの再結合が低減され、変換器材料層におけるベータ粒子の吸収が抑制されることによって、ベータボルタ電池(以下、「電池」という。)の比出力が増大するからである。
【0028】
さらに、pn構造またはpin構造の全幅にわたってβ粒子エネルギーが電流に変換される空間電荷領域を拡幅すれば、変換器のp層に面する放射性同位元素からの放射線を使用することができるので、多層構造の「放射性同位元素変換器」の製造が可能になり、従ってバッテリーの比出力を増加させることができる。
【0029】
一組の変換器を、互いに逆極性の面どうしが対向し、対向する面どうしの間に導電性の放射性同位体が配置されるように組み立てれば、第1に放射性同位元素の両側から放出される放射線を使用して、それを電気エネルギーに変換することができする。第2に、導電性の放射性同位体を変換器どうしの電気接点として用いるので、変換器を直列に電気的に接続することができる。
【0030】
外周に沿って溝が等間隔に設けられており、溝の数がベータボルタ電池(以下、「電池」という。)のパック数の2倍に等しいか、または所定数を超える絶縁要素によってパックどうしを分離するので、また、導電性接点を有しているので、隣り合う溝の間で、絶縁要素どうしを互いに対して回転させる電池の組み立て工程において、導電性接点を有するすべての溝の上に接点を有していない空き溝(スロット)を設けて、その中に導電体を配置することによって、導電性接点をレギュレーターに電気的に接続することができる。
【0031】
導電性接点の1つを溝(スロット)領域で絶縁要素の下面に取り付けるとともに、2番目の導電性接点を上面に取り付けて、各パックの極端の変換器の絶縁要素に隣接する導電性接点に電気的に接続すれば、変換器の絶縁要素に下方から隣接する変換器のn層の負電荷を1つの接点へ移動させるとともに、絶縁要素の上方に存在している変換器のp層から正電荷を2番目の接点へ出力することができるので、絶縁要素の溝に対向して配置された導電性接点に電池パックの変換器を電気的に接続することができる。
【0032】
対向する溝内の導電性接点の絶縁要素、および接点上の空き溝(自由スロット)によれば、各電池パックをレギュレーターに電気的に接続することができる。
【0033】
変換器のn層上に塗布された導電性の放射性同位体元素として80%以上の濃縮度を有するニッケル−63を使用すれば、(1)電池の比電力を増加させることができ、(2)ニッケル−63を用いて1つの変換器のn層をそれに隣接する変換器のp層に電気的に接続することができる。
【0034】
パックの極端の変換器の導電性接点を銅などの導電性金属のn層またはp層に適用すれば、それらを絶縁要素の導電性接点に電気的に接続することができる。
【発明の効果】
【0035】
パックの極端の変換器で導電性接点をニッケル−63のn層またはp層に適用して、最適な厚さにするので、導電性の放射性同位体元素を用いて絶縁要素の導電性接点にこれらの接続することができる。導電性の放射性同位体元素はこれらの接点となり、電池の電力密度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】レギュレーターを組み込んだ電池を示す図である。
【
図2】
図1の符号Bで示す部分を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本実施の形態に係る電池1は、1つまたは複数のパック3を積み重ねるとともに、パックどうしを絶縁要素4で分離した変換器2からなる(
図1および
図2参照)。
図1は、3つのパックからなる電池を示す。パック3の変換器2は互いに逆極性の面を対向させ、対向する逆極性の面間に導電性の放射性同位元素5が配設されている。放射性同位元素5として、変換器2のn層上に堆積された高濃縮ニッケル−63放射性同位体が使用される。各パック3の上部6および下部7の変換器は接点8を備えている。接点8は、いずれも、銅のような導電性材料のn層またはp層上に塗布することによって形成されており、上部の変換器上の接点8はn層に塗布され、下部の変換器7ではp層に塗布される。
【0038】
絶縁要素4は、絶縁要素4の周囲に等間隔に配置された溝(スロット)9を有し、溝9の総数は、電池1の設計に応じて、電池1のパック3の数の少なくとも2倍以上である。絶縁要素5の対向する溝9(
図3参照)には接点10および11が設けられており、残りの溝9は空である。各接点10は、溝9の近傍で絶縁要素5の底面13に堆積された導電部12と、溝9内に直接配置されており、溝9に接続された導電部14とからなっている。各接点11は、反対側の溝9の領域で絶縁要素5の上面15に堆積された導電部12と、溝9に直接配置されており、溝9に接続された導電部14とからなっている。
【0039】
パック3の極端の変換器6および7の導電性接点が放射性同位体元素5、特に最適な厚さのニッケル−63のn層またはp層に適用されている場合、絶縁要素4、16および17の溝9内の接点11および10は、導電性部分12を用いて、放射性同位体元素4の電気接点に直接電気的に接続される。
【0040】
上部絶縁要素16上には、その下に配置されたセット3の上部変換器6に接続されている接点10のみが接続されており、下部絶縁要素17上には接点11のみが配置されている。接点11は、その上に配置されたパック3の下部半導体変換器7に接続されている。電池1を組み立て工程では、下部絶縁要素17の上に位置する各絶縁要素5および上部絶縁要素16は、溝9間の間隔に応じて互いに対して回転する。その結果、接点10および11のない空き溝9は、接点10および11を有するすべての溝の上に置かれる。各パック3は、その外面で、絶縁スリーブ18内に設置される。
【0041】
電池1はケース19内に配置され、そこでは下部負極20と上部正極21とが固定され、絶縁スペーサ22、23を介してケース19に収容されている。ケース19とパック3との間の空間は誘電マスチックまたは化合物24で満たされている。下部電極20、下部絶縁要素17の接点11、絶縁要素5の接点10および11、上部絶縁要素16の接点10および上部電極21は、導線25、26、27、28、29および30を用いて、ケース19内で上部絶縁要素16の上方に取り付けられたレギュレーター31に接続されている(
図4参照)。
【0042】
本実施の形態に係る電池1およびそのケース19、絶縁要素5、16および17ならびに半導体変換器2、6および7は断面正方形または断面長方形とすることができ、また、電池1の上部に電極20および21を配置することができる。
【0043】
電池1において電気エネルギーは以下ように生成される。
【0044】
放射性同位元素5の表面を離れたベータ粒子は、隣接する変換器2に落ちる。ベータ粒子はエネルギーが高いので、隣接する変換器2のp層もしくはn層が通り抜ける。空間電荷領域(SCR: Space Charge Region)に入ると、ベータ粒子はこの領域の原子と衝突する。SCRは、原子と電子との間の電気的結合が、変換器2のp層およびn層よりもはるかに弱いので、電子が原子から切り離されて、電子−正孔対が生成される。
【0045】
自由電子は、負電荷が増加した領域、すなわち変換器2のn層へと移動し始める。従って、SCR内の残りの電子は、結果として生じる電子の不在を埋め、そして負電荷領域に移動する傾向がある。このため電子が無くなった領域の原子は正電荷領域、すなわち変換器2のp層へ移動する。従って、変換器2のp層とn層との間には電位差、すなわち電圧が発生する。ベータ粒子はSCR領域での移動を継続し、すべてのエネルギーを失うまで電子−正孔対を生成する。
【0046】
変換器2は、互いに逆極性の表面が対向するようにしてパック3に組み立てられ、導電性の放射性同位元素5が対抗する逆極性の表面の間に配置されるので、パック3の変換器2は、結果として、電気的に直列に接続される。パック3毎に上部のコンバーター6と下部のコンバーター7から、導電性領域12を介して、溝9内に配置された絶縁要素4、16および17の接点11および10に接続された接点9を経由して、下部変換器7のn層からの負電荷は接点10に入り、上部変換器6のp層からの正電荷は接点11に入る。接点10および11から、負電荷および正電荷が導体26、27、28および29を介してレギュレーター31に供給され、レギュレーターから貫通導体25および30を経由して下部電極20および上部電極21に電圧が供給される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係るベータボルタ電池は、高い比出力を有する電源として有用である。
【符号の説明】
【0048】
1…電池
2…半導体変換器
3…パック
4…絶縁要素
5…放射性同位体元素
【国際調査報告】