(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-530152(P2019-530152A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(54)【発明の名称】対向する面にローラコンタクト体を有する電気コンタクトおよびかかるコンタクトを有するプラグ接続部
(51)【国際特許分類】
H01R 13/193 20060101AFI20190920BHJP
H01R 12/82 20110101ALI20190920BHJP
H01R 12/72 20110101ALI20190920BHJP
【FI】
H01R13/193
H01R12/82
H01R12/72
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-513899(P2019-513899)
(86)(22)【出願日】2017年9月14日
(85)【翻訳文提出日】2019年4月15日
(86)【国際出願番号】EP2017073160
(87)【国際公開番号】WO2018050757
(87)【国際公開日】20180322
(31)【優先権主張番号】102016217667.6
(32)【優先日】2016年9月15日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100121533
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 まどか
(72)【発明者】
【氏名】ベック,カール
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB20
5E223AB28
5E223AB34
5E223AB35
5E223AC21
5E223BA01
5E223BA04
5E223BA07
5E223BA08
5E223BB12
5E223CA15
5E223CB19
5E223CB68
5E223CD01
5E223CD02
5E223CD05
5E223DA33
5E223DB09
5E223DB23
5E223DB25
5E223EC02
5E223EC18
5E223EC32
5E223EC35
5E223EC44
5E223EC47
5E223EC63
5E223EC72
5E223EC78
5E223EC82
(57)【要約】
差し込み方向(6)に差し合わされる電気プラグ接続部(10)用の電気コンタクト(1)は、差し込み方向(6)に対して開口している、相補的コンタクトピン(8)用のレセプタクル(4)を備える。レセプタクル(4)は相補的コンタクトピン(8)に接触する接触表面(61)を備える。大きい接触力の下で容易に差し合わせ可能で長い寿命を有する差し込み接続部を創出するために、レセプタクル(4)の2つの対向する面(19a、19b)上にそれぞれ回転可能に保持されている、レセプタクル(4)内に突出し接触表面(61)の一部を形成している、導電性材料製のローラコンタクト体(20)が提供される。中でコンタクト(1)がピン形状のコンタクト(8)と差し合わされる電気プラグ接続部(10)において、コンタクト(1、8)の接触表面(61)は、回転可能な導電性材料のローラコンタクト体(20)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差し込み方向(6)で相補的コンタクトピン(8)用のレセプタクル(4)と差し合わされる電気プラグ接続部(10)用の電気コンタクト(1)であって、
前記レセプタクル(4)は、前記差し込み方向(6)に反対向きに開口しており、前記相補的コンタクトピン(8)に接触するための接触表面(61)を備え、
前記レセプタクル(4)内に突出し前記接触表面(61)の一部を形成している、導電性材料製の少なくとも1つのローラコンタクト体(20)が、それぞれ前記レセプタクル(4)の少なくとも2つの対向する面(19a、19b)上に回転可能に保持されていることを特徴とする、電気コンタクト(1)。
【請求項2】
前記ローラコンタクト体(20)は前記差し込み方向(6)に沿って移動可能なスライド(14)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項3】
前記スライド(14)の少なくとも一部分はハウジング(2)内に位置し、前記スライド(14)の移動の少なくとも一部の間、前記ハウジング(2)上で前記ローラコンタクト体(20)が転動することを特徴とする、請求項1または2に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項4】
前記スライド(14)は前記相補的コンタクトピン(8)用の少なくとも1つのドライバ(66)を備え、前記ドライバ(66)は前記レセプタクル(4)内へ突出していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項5】
前記スライド(14)の少なくとも1つの位置(70)では、前記ドライバ(66)は前記レセプタクル(4)の外で移動することを特徴とする、請求項4に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項6】
対向する前記ローラコンタクト体(20)は、前記スライド(14)の初期位置(16)での方が、前記スライド(14)が前記初期位置(16)から移動した位置(70)におけるよりも互いに離れていることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項7】
前記ローラコンタクト体(20)は、前記レセプタクル(4)を取り囲むハウジング(2)内に、回転可能であるが移動しないように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのローラコンタクト体(20)に対して作用する少なくとも1つの押圧ばね(58)を備えていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項9】
前記押圧ばね(58)および/または前記ハウジング(2)は、導体(85)または外側ハウジング(63)を取り付けるための固定部分(84)に、材料結合で接続されていることを特徴とする、請求項7または8に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項10】
前記ローラコンタクト体(20)は、前記ハウジング(2)と前記押圧ばね(58)との間に、前記差し込み方向(6)に対して横断方向に前記押圧ばね(58)の作用に抗して偏向可能に保持されていることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項11】
前記ハウジング(2)は、前記ローラコンタクト体(20)を保持する、内側にある内側部(78)と、外側にある外側部(80)と、を備え、前記内側部(78)および前記外側部(80)は、少なくとも1つの曲げられたおよび/または折り曲げた接続部分(82)によって材料結合で互いに接続されていること、ならびに、
前記少なくとも1つの押圧ばね(58)は、前記内側部(78)と前記外側部(80)との間に位置すること、を特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項12】
前記外側部(80)の表面におよび/または前記押圧ばね(58)の表面に、前記ローラコンタクト体(20)が通されて嵌合する少なくとも1つの挿入開口部(90)があることを特徴とする、請求項11に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項13】
スリーブ形状の第1のコンタクト(1)と前記第1のコンタクトと相補の関係にあるピン形状の第2のコンタクト(8)とを有する電気プラグ接続部(10)であって、
前記第1のコンタクト及び前記第2のコンタクト(1、8)は、差し込み方向(6)に差し合わせることができるように設計されており、かつ、接触表面(61、62)を備え、前記接触表面(61)のうちの1つは、導電性材料製の回転可能なローラコンタクト体(20)によって形成されていることを特徴とする、電気プラグ接続部(10)。
【請求項14】
前記ローラコンタクト体(20)は、前記差し込み方向(6)に沿って移動可能でありかつ前記第2のコンタクト(8)が挿入されている、スライド(14)上に保持されていることを特徴とする、請求項13に記載の電気プラグ接続部(10)。
【請求項15】
前記スライド(14)の第1の位置(69)では、前記ローラコンタクト体(20)は前記第2のコンタクト(8)および/または前記スライド(14)を取り囲んでいるハウジング(2)から離間されてあり、前記第1の位置(69)から前記差し込み方向(6)に離間された前記スライド(14)の第2の位置(70)では、前記ローラコンタクト体(20)は、前記第2のコンタクト(8)および前記ハウジング(2)を転動可能に接していることを特徴とする、請求項14に記載の電気プラグ接続部(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差し込み方向で相補的コンタクトピン用のレセプタクルと差し合わされる電気プラグ接続部用の電気コンタクトであって、当該レセプタクルは、差し込み方向に反対向きに開口しており、相補的コンタクトピンに接触するための接触表面を備える、電気コンタクトに関する。本発明はまた、第1のスリーブ形状のコンタクトと第1のコンタクトと相補の関係にある第2のピン形状のコンタクトとを有する電気プラグ接続部であって、これらのコンタクトはいずれも差し込み方向に差し合わせることができかつ接触表面を備える、電気プラグ接続部にも関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ピン形状またはタブ形状のコンタクトピンが挿入されるコンタクトスリーブの形態のコンタクトが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのようなコンタクトの場合、1つの目的は、安定した接触抵抗を実現することである。このためには、生じ得る腐食層または異物の層を突破してコンタクトの導電性材料間の直接接触を確立するために、接触表面間の大きい押圧圧力が必要とされる。しかしながら、そのような押圧圧力は大きい差し込み力を必要とし、このため、そのようなコンタクトは、大きい力を費やして差し合わせることしかできない。接触表面を介して高い電流が伝送されることになる場合、これらの接触表面は、接触抵抗を下げるために、可能な限り大きい表面積で重なり合うべきである。しかしながら、接触表面が大きい表面積で重なり合うと、差し合わせ中の摩擦抵抗が大きくなり、この結果、やはり同様により高い接触力が必要となる。
【0004】
これらの競合する要件を考慮して、本発明は、安定した小さい接触抵抗を可能にし、同時に差し込み力が小さくかつ長い寿命を有する、電気コンタクトを創出する、という目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、冒頭で述べた電気コンタクトに関する本発明に従って、レセプタクル内に突出し接触表面の一部を形成し、それぞれレセプタクルの少なくとも2つの対向する面上に回転可能に保持されている、導電性材料製の少なくとも1つのローラコンタクト体によって、達成される。
【0006】
冒頭で述べた電気プラグ接続部の場合、本発明によれば、回転可能なローラコンタクト体の接触表面のうちの1つが、導電性材料から形成されている。
【0007】
ローラコンタクト体は一方では、小さい接触力であっても押圧圧力が腐食層および異物の層を突破するのに十分な程度に大きくなるように、小さい支承表面を提供する。他方では、ローラコンタクト体は、必要な差し込み力がより小さくなるように、転動することができる。同時に、転動の結果、相補的コンタクトピンの接触表面からの材料の脱離が少なくなり、このため、非常に多数回の差し込みサイクル後であっても、電気コンタクト自体の損耗が非常に少ない。
【0008】
本発明は、それ自体各々有利であり任意の所望の方法で互いに組み合わせ可能な以下の設計によって、さらに改善することができる。
【0009】
例えば、ローラコンタクト体は好ましくは、相補的コンタクトピンの接触表面から流れていく電流を可能な限り少ない損失で引き渡すために、少なくとも30S/mの導電率を有する導電性材料から製造される。導電性材料は例えば、金属の金、銀、アルミニウム、および銅のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0010】
相補的コンタクトピンは、タブ形状またはピン形状のコンタクトであってもよい。タブ形状またはブレード形状のコンタクトの場合、ローラコンタクト体が載置される面は、好ましくはレセプタクルの平らな面である。
【0011】
ローラコンタクト体は、球体、円錐、切頭円錐、樽体、針、および/または円筒であってもよい。接触表面は好ましくは、差し込み力および損耗の量を可能な限り小さく抑えるために、ローラコンタクト体のみによって形成される。
【0012】
ローラコンタクト体は、差し込み方向に対して横断方向に配向された少なくとも1つの回転軸周りで、回転可能であってもよい。これらの転動する表面はそのような場合、挿入中に差し込み方向に沿って転動できるように、回転移動の結果、接触表面の領域内で少なくとも差し込み方向に沿って移動できるようになっていてもよい。接触表面の領域内での、対応する異なる向きの回転軸による、転動する表面の更なる移動の方向は、例えば振動負荷を受ける環境において、2つのコンタクトの間での均衡を保つ移動を可能にし得る。この場合、例えば、コンタクト間の、差し込み方向に対して横断方向への相対移動を可能にするために、回転軸を差し込み方向に沿って整列させてもよい。このことは、例えば振動負荷を受ける環境において有利である。ローラコンタクト体は、同時にいくつかの回転軸周りで回転できるように装着されてもよい。
この場合、球体のローラコンタクト体が、各方向に回転できるように保持され得る。
【0013】
更なる有利な設計によれば、ローラコンタクト体を、差し込み方向に沿って移動可能な少なくとも1つのスライドに取り付けてもよい。スライドは、ローラコンタクト体を保持するローラ支承ケージを形成してもよい。そのようなスライドによりコンタクトの組み立てがさらに容易になるが、その理由は、このスライド上にローラコンタクト体を事前に組み付けることができるからである。
【0014】
スライドは、2つの端部位置の間で、特に挿入されたコンタクトピンと一緒に、差し込み方向に沿って変位可能であってもよい。この場合、スライドの速さは、コンタクトピンの差し込み速さと異なっていてもよい。
【0015】
スライドは、コンタクトのレセプタクルを形成してもよく、この目的のためにスリーブ形状または箱形状の部分を有してもよい。レセプタクルは、差し込み方向に貫通して開口していてもよい。
【0016】
差し込み方向に対して横断方向におけるレセプタクルの内側断面の形態は、使用されることになる差し込みコンタクトの形態によって異なる。内側断面は丸形、特に円形であってもよく、または多角形、特に矩形であってもよい。
【0017】
差し合わされた状態では、コンタクトピンは、スライド上に、特にローラコンタクト体上に、少なくとも部分的に支持されてもよい。さらに、スライドはまた、支承サポートも形成してよい。
【0018】
差し合わされた状態では、コンタクトピンは、差し込み方向に沿った両側で、スライドの外に突出していてもよい。
【0019】
ローラコンタクト体が、差し込み方向に反対向きである半分にだけ、特に差し込み方向に反対向きであるスライドのレセプタクルの挿入開口部に配置されていれば、差し込み動作をさらに容易にすることができる。ローラコンタクト体は特に、レセプタクルの挿入開口部にあるスライドの端部に配置されてもよい。
【0020】
製造コストを低く抑え、かつ規定された電流経路をローラコンタクト体を介して提供するために、スライドは好ましくは、プラスチックなどの非導電性材料から、特に射出成形によって製造される。
【0021】
ハウジングは、ローラコンタクト体用の少なくとも1つの押圧ばねを形成してもよく、かつ/または、ハウジングとローラコンタクト体との間に押圧ばねがある。押圧ばねはローラコンタクト体に接しており、差し込み方向に対して横断方向に弾性であるものとして、レセプタクルから離れる方向およびこれに向かう方向に設計されている。コンタクトピンが完全に挿入されている状態では、少なくとも1つの押圧ばねは弾性的に偏向して、接触力を生み出している。
【0022】
ローラコンタクト体は隙間内に収容されてもよく、そこでローラコンタクト体は例えば嵌め合いで保持される。この目的のために、ローラコンタクト体は、これらにそれぞれ割り当てられた隙間に、単純に押し込まれてもよい。隙間は、ハウジングに、または、スライドがあるのであればそのようなスライドに、設けてもよい。
【0023】
スライドの少なくとも一部分は、ハウジング内に収容されてもよい。ハウジングは、保護材としての、および特にスライド用のガイドとしての、役割を果たす。ハウジングは、特に差し込み方向に沿って延在する、ローラコンタクト体用の溝形状の軌道を備えてもよい。軌道は、この軌道内を進むローラコンタクト体用の押圧ばねを形成するために、差し込み方向に対して横断方向において弾性あるものとして、レセプタクルから離れる方向およびこれに向かう方向に設計されていてもよい。更なる設計によれば、ハウジングは、ローラコンタクト体のない知られているコンタクトスリーブの場合のように、電流を流し去るための役割を果たす。この目的のために、ハウジングは、好ましくは導電性材料から、特に上述したような導電性材料から製造される。
【0024】
スライドは、レセプタクル内に突出している、コンタクトピン用の少なくとも1つのドライバを備えてもよい。そのようなドライバを、レセプタクルに挿入されるコンタクトピンによる挿入の移動の過程においてスライドを移動させる目的で使用してもよい。このことは特に、ローラコンタクト体がコンタクトピンだけに接し反対側の表面に当接することがない、すなわちコンタクトピンの表面上でのみ転動するときはいつでも、重要である。ドライバを、レセプタクルのローラコンタクト体が接している面上に位置付けてもよい。これらは例えば、コンタクトの平坦な面である。当然ながら、ドライバは狭い面上にも配置されてよく、または狭い面上にのみ配置されてもよい。
【0025】
更なる有利な設計では、スライドの少なくとも1つの解放位置で、ドライバはレセプタクルから外に出ていてもよい。ドライバがレセプタクルの外に出ている場合、レセプタクルは空いている状態である。このことにより、コンタクトピンをスライドに挿通することが可能になる。
【0026】
ドライバは特に、スライドの移動のうち、差し込み方向に位置するスライドの移動の端部位置まで、または、コンタクトの挿入開口部から遠隔にある端部位置まで及ぶ部分にわたって、レセプタクルの外に出ていてもよい。レセプタクルの外に出るために、ドライバは少なくとも1つの解放位置で、ハウジングの凹部に入ることができる。このことは、例えば、ドライバを弾性の舌片上に配置することによって達成される。この舌片は、少なくとも1つの解放位置の外で予張され、少なくとも1つの解放位置でばね力によって凹部に入る。少なくとも1つの解放位置の外の、少なくとも1つの駆動位置では、ドライバまたはこれを担う舌片は、ばね予張力の下でハウジングに接していてもよい。
【0027】
更なる有利な設計によれば、少なくとも1つの解放位置では、ローラコンタクト体は、コンタクトピンおよびコンタクトのハウジングの両方に接していてもよい。他方で、スライドの少なくとも1つの解放位置の外の、スライドの駆動位置では、ローラコンタクト体はコンタクトピンだけ、またはハウジングだけに接していてもよい。直前の設計の場合には、駆動位置では、コンタクトピンによってドライバを利用してスライドが移動されるとき、ローラコンタクト体はいかなる転動も起こさないことが保証される。他方で、最初の設計の場合、少なくとも1つの駆動位置の外では、ローラコンタクト体はコンタクトピン上およびハウジング上の両方で転動し、この結果、スライドはローラ支承ケージのように移動する。
スライドはこの場合コンタクトピンよりもゆっくりと移動するので、ローラコンタクト体の転動が決定付けるスライドの移動を妨げないように、ドライバは好ましくはレセプタクルの外に出る。
【0028】
別の設計では、ドライバはラッチング要素であってもよく、例えば、ラッチング突起またはラッチング凹部を備えてもよい。コンタクトのラッチング要素は、コンタクトピンの相補的ラッチング要素と一緒に機能する。ラッチング動作はこの場合、好ましくは、ローラコンタクト体がハウジング上およびコンタクトピン上の両方で転動するときにスライドおよびコンタクトピンの移動の速さが異なっている結果、自動的に行われる。コンタクトピンの速さの方が速い結果、その相補的ラッチング要素は、スライド上のラッチング要素を追い抜き、自動的にラッチングされる。
【0029】
ローラコンタクト体は、レセプタクルの挿入開口部の方向に位置するスライドの移動の端部位置にスライドが位置するスライドの初期位置での方が、スライドが初期位置から外れてレセプタクルの方向へ移動しているスライドの位置におけるよりも、差し込み方向に対して横断方向に対向する面上で互いに離れているようになっていてもよい。この設計の場合、差し込み動作の開始時には転動がまだ行われていないことが保証される。特に、ローラコンタクト体はこの場合、コンタクトピンがまだコンタクトに完全に挿入されていない、スライドの初期位置では、コンタクトピンから離間されて維持されてもよい。
【0030】
そのような離間は、例えばスライドが、差し込み方向に対して横断方向に弾性的に偏向可能でありかつ中にローラコンタクト体が位置する、アーム形状または舌片形状の領域を備える場合に、達成され得る。これらの領域は、これらが挿入開口部内で互いにばね力によって引き離されるように、または互いにばね力によって既に引き離されているように、特に設計されてもよい。
【0031】
更なる有利な設計では、レセプタクルは、差し込み方向に反対向きに挿入開口部に向かって広くなって、少なくとも1つの拡開した導入部(run−in)を形成していてもよい。特に、ハウジングは、差し込み方向に反対向きに広くなっていてもよい。
【0032】
ローラコンタクト体は、例えばこれらを保持するアーム形状または舌片形状の領域の形状形成の結果として、スライドによって、拡開した導入部に接して移動、特に押圧されてもよい。この結果、ローラコンタクト体は、拡開した導入部の領域内でコンタクトピンから引き離されている。
【0033】
スライドの移動開始時に、スライドがレセプタクルの挿入開口部に位置するその端部位置から外に移動するとき、ローラコンタクト体は、拡開した導入部のみに接して転動し得る。拡開した導入部の領域内に、ローラコンタクト体用の溝形状の軌道が設けられてもよい。ローラコンタクト体が拡開した導入部のみに接して転動する領域は、スライドの駆動位置の、ドライバがレセプタクル内に延びる領域と、一致してもよい。
【0034】
スライドの移動を、2つの部分、レセプタクルの挿入開口部に向かって配されたスライドの初期位置から離れる方に延びる、第1の部分と、挿入開口部から遠隔にある端部位置まで延びる、第2の部分と、に分けてもよい。第1の部分では、スライドはコンタクトピンと同じ速さで移動し、好ましくはコンタクトピンのみによって移動される。この第1の部分は、特に複数の駆動位置で構成されている。第2の部分では、スライドはコンタクトピンよりもゆっくりと移動し、好ましくはローラコンタクト体のみによって移動される。上述したように、このことは例えば、ローラコンタクト体が、第1の部分ではハウジングまたはコンタクトピンのいずれかにおいてのみ転動し、第2の領域ではコンタクトピンおよびハウジングの両方において転動することによって、実現される。
この手法により、コンタクトピンの挿入中のスライドの移動を少なくすることが可能になり、この結果コンパクトな構造形態が実現されるが、このことにより特にまた、既存のコンタクトおよびコンタクトピンの標準的な寸法を維持することも可能になる。第2の部分は好ましくは、複数の解放位置で構成されている。
【0035】
更なる有利な設計によれば、ローラコンタクト体は、レセプタクルを取り囲むハウジング内で、回転は可能であるが挿入方向に沿った並進移動はできないように構成される。そのような設計の場合、好ましくは差し込み方向に移動不可能なローラ支承ケージがある。特に、ローラコンタクト体は、レセプタクルまたは接触表面から離れる方に面している側で、ハウジングから離間されて維持される。この場合も、ハウジングは導電性材料から製造されてもよい。
【0036】
接触力を生み出しローラコンタクト体をコンタクトピンに対して押圧するために、一方側の少なくとも1つのローラコンタクト体とハウジングとの間に位置し、少なくとも1つのローラコンタクト体に対して作用する少なくとも1つの押圧ばねを提供してもよい。
【0037】
ハウジングを、導体を取り付けるための固定部分に、材料結合で接続してもよい。押圧ばねおよび/またはローラ支承ケージがハウジング内に移動しないように保持される場合、これらは、ハウジングの代わりにまたはハウジングに加えて、固定部分に、材料結合で接続されてもよい。固定部分は、導体を確実に圧着するための圧着部分として、または、導体を確実にはんだ付けするために、およびまたより大きいプラグのハウジング内にコンタクトを取り付けるために、設計されてもよい。
【0038】
コンタクトピンおよびコンタクトが差し合わされるときローラコンタクト体をコンタクトピンに対して押圧するために、ローラコンタクト体は、ハウジングの隙間と押圧ばねの隙間との間に、差し込み方向に対して横断方向に押圧ばねの作用に抗して偏向可能に保持されてもよい。
【0039】
別の設計では、ハウジング自体は、ローラ支承ケージまたはローラ支承ケージの一部を形成してもよい。この目的のために、ハウジングは、ローラコンタクト体の少なくとも一部分を収容する、内側にある内側部と、外側にある外側部と、を備えてもよい。内側部および外側部を、少なくとも1つの曲げられたおよび/または折り曲げた接続部分によって、互いに材料結合で、特に一体に、接続してもよい。少なくとも1つの押圧ばねは、内側部と外側部との間に位置し、この結果良好に保護されてもよい。接続部分はレセプタクルの開口部にあってもよく、同時に、レセプタクル用の、コンタクトピンの挿入をさらに容易にする広くなる導入部を形成してもよい。
【0040】
ローラコンタクト体の組み付けのために、ローラコンタクト体が通されて嵌合する挿入開口部が、外側部の表面におよび/または押圧ばねの表面にあってもよい。ローラコンタクト体を押圧ばねに挿通し、同時にそれらを押圧ばねによって保持できるようにするために、押圧ばねを外側部に対して変位させることによって、押圧ばねの挿入開口部および外側部の挿入開口部を互いに整列させること、および、好ましくはさらに内側部の保持開口部と整列させることができる。差し込み方向に沿って互いに離間されて維持される、押圧ばねとハウジングとの間のいくつかの変位位置において、外側部の異なる複数の挿入開口部を押圧ばねの挿入開口部と整列させることができ、このとき特に、押圧ばねは必然的に外側部よりも少ない挿入開口部を有している。外側部は、ローラ支承ケージの保持開口部または内側部の保持開口部ごとに、挿入開口部を有してもよい。
【0041】
ローラコンタクト体の組み付け後、押圧ばねをハウジングにラッチングしてもよい。ラッチング位置では、押圧ばねの挿入開口部は、外側部の挿入開口部または内側部の保持開口部と位置合わせされていない。
【0042】
押圧ばねは好ましくは、ローラコンタクト体との摩擦を可能な限り小さくするために、プラスチックから製造される。
【0043】
本発明を、添付の図面を参照し、例示的な実施形態に基づいて、以下に例示により説明する。機能および/または構造に関して互いに対応している要素については、添付の図面において常に同じ参照符号を使用する。簡潔にするために、特に断りのない限り、例示的な実施形態間の違いのみを検討する。
【0044】
上でなされた記述に基づいて、様々な例示的な実施形態の様々な特徴を、任意の所望の方法で互いに組み合わせることができる。特に、ある例示的な実施形態の特徴の技術的効果が、特定の用途の場合に重要ではなければ、この特徴を除外してもよい。逆に、別の例示的な実施形態などの更なる特徴と関連付けられた技術的効果が、特定の用途の場合に重要であれば、この特徴を例示的な実施形態に追加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明に係る電気コンタクトの概略斜視図である。
【
図2】相補的コンタクトピンを伴う、
図1のコンタクトの概略斜視図である。
【
図3】
図1の視線の方向IIIに対応する、
図1の電気コンタクトの詳細図である。
【
図4】
図1の視線の方向IVに対応する、挿入されたコンタクトピンを有する
図1電気コンタクトを通る断面の概略図である。
【
図5】本発明に係る電気コンタクトにコンタクトピンを挿入している間の、第1の位置の概略図である。
【
図6】本発明に係る電気コンタクトにコンタクトピンを挿入している間の、第2の位置の概略図である。
【
図7】本発明に係る電気コンタクトにコンタクトピンを挿入している間の、第3の位置の概略図である。
【
図8】本発明に係る電気コンタクトにコンタクトピンを挿入している間の、第4の位置の概略図である。
【
図10】コンタクトピンが第1の位置にある、本発明に係るコンタクトの更なる例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図12】さらに先の位置にある、
図10の例示的な実施形態の概略図である。
【
図14】さらに先の位置にある、
図10の例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図16】本発明に係るコンタクトのスライドの概略斜視図である。
【
図17】本発明に係るコンタクトの更なる例示的な実施形態の概略斜視図である。
【
図18】
図17の線XVIII−XVIIIに沿った概略断面図である。
【
図19】
図17の線XIX−XIXに沿った概略断面図である。
【
図20】
図17の例示的な実施形態の組み付けに関する連続的な組み付けステップのうちの1つの概略図である。
【
図21】
図17の例示的な実施形態の組み付けに関する連続的な組み付けステップのうちの1つの概略図である。
【
図22】
図17の例示的な実施形態の組み付けに関する連続的な組み付けステップのうちの1つの概略図である。
【
図23】
図17の例示的な実施形態の組み付けに関する連続的な組み付けステップのうちの1つの概略図である。
【
図24】
図17の例示的な実施形態の組み付けに関する連続的な組み付けステップのうちの1つの概略図である。
【
図25】
図17の例示的な実施形態の組み付けに関する連続的な組み付けステップのうちの1つの概略図である。
【
図26】
図17の例示的な実施形態の組み付けに関する連続的な組み付けステップのうちの1つの概略図である。
【
図27】
図17の例示的な実施形態の組み付けに関する連続的な組み付けステップのうちの1つの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
まず、本発明に係る電気コンタクト1の例示的な実施形態の構造および機能について説明する。電気コンタクト1は、レセプタクル4を囲い込むハウジング2を備える。レセプタクル4は、少なくとも差し込み方向6に反対向きに開口している。差し込み方向6において、例えばコンタクトピンの形態の相補的コンタクト8が、レセプタクル4に挿入される。相補的コンタクト8は、コンタクトピンとして、特に
図2に示すように、タブとして設計されてもよいが、ピンとして設計されてもよい(図示せず)。
【0047】
電気コンタクト1および相補的コンタクト8が1つになって、電気プラグ接続部10が形成される。
【0048】
図2では、ハウジング2の中まではっきりと見えるように、ハウジング2の上側半分が省略されている。わかるように、差し込み方向6において、ハウジング2は、その差し込み方向の前端部12aおよびその差し込み方向の後端部12bが開口していてもよい。レセプタクル4内にはスライド14がある。スライド14はスリーブ形状または箱形状で設計されており、ハウジング2と同軸に置かれている。ハウジング2は同様にレセプタクル4を取り囲む。スライド14は、ハウジング2内に、差し込み方向6に沿って前後に変位可能に収容されており、少なくとも差し込み方向6におけるその後端部15bが開口して、コンタクトピンを挿通できるようになっており、好ましくは前端部15aも開口している。
【0049】
図1および
図2では、スライド14は、初期位置16において、ハウジング2の後端部12bにある挿入開口部18に位置する。スライドの後端部15bは、挿入開口部18に接している。
【0050】
スライド14上では、レセプタクル4の対向する面19a、19b上に、ローラコンタクト体20が回転可能に保持されている。この目的のために、ローラコンタクト体20は、スライド14の隙間または凹部22に嵌め合いで挿入されている。スライド14はこの結果、ローラ支承ケージ21を形成する。ローラコンタクト体20は、レセプタクル4内に突出している。
【0051】
単なる例示として、面19a、19bは、レセプタクル4の平坦な面である。ローラコンタクト体はまた、レセプタクル4の狭い面上に配置されてもよい。
【0052】
ローラコンタクト体20は導電性材料、特に、少なくとも30S/mの導電率を有する材料から製造される。ローラコンタクト体20の材料は好ましくは、金、銀、アルミニウム、および銅の群からの少なくとも1種の金属を含有する。
【0053】
スライド14は好ましくは非導電性材料、例えばプラスチックから製造され、特に射出成形される。
【0054】
レセプタクル4の挿入開口部18において、電気コンタクト1は導入領域24を備え、これは差し込み方向6に対向して広くなる。導入領域24は例えば、ハウジングのスリーブ形状または箱形状の領域28から差し込み方向と反対の方向に突出しておりかつ差し込み方向6に対して傾斜している、2つのベーン26によって形成されてもよい。
【0055】
スライド14は、スライド14のスリーブ形状または箱形状の部分32から差し込み方向6と反対におよび/または差し込み方向6に突出している、ばね舌片またはばねアーム30を備えてもよい。ばね舌片またはばねアーム30の各々上の、挿入開口部18に面している端部34にまたはその近傍に、少なくとも1つのローラコンタクト体20を備えてもよい。
【0056】
ばね舌片またはばねアーム30は、力の加わっていない状態では互いに離れるように移動する傾向を有するように、予め成型されている。この結果、スライドがハウジング2の後端部12bに向かって差し込み方向6と反対に変位されるとき、ばね舌片またはばねアーム30の形態は、広くなる導入領域24に追従する。
【0057】
図2に示すように、コンタクトピン8は、狭い面38上に位置する少なくとも1つのラッチング要素36、例えばラッチング突起またはラッチング凹部を備えてもよい。
【0058】
スライド14が
図2に示す開口部18にある初期位置16からハウジングの前端部12aに向かって差し込み方向6に変位される場合、ローラコンタクト体20は導入領域24に沿って互いに向かって移動する。ローラコンタクト体20がハウジング2のスリーブ形状または箱形状の領域28内に達するとすぐに、これらの間の距離は、スライドが差し込み方向6にさらに移動する間、実質的に一定のままとなる。領域28内では、ローラコンタクト体20は、そのとき生じているばね舌片またはばねアーム30の弾性変形の結果、ハウジング2に対して押し付けられており、この結果、これらは、ハウジング2の内面または内側表面上で転動する。ローラコンタクト体20がハウジング2に対して押し付けられる押圧力は、この結果、対向するローラコンタクト体20の間の距離が次第に小さくなるにつれ大きくなる。
【0059】
スライド14は好ましくは、2つの停止部46、48によって決定される2つの端部位置42、44の間で、差し込み方向に沿って変位可能である。停止部46、48は、ハウジング上に配置されて、スライド上の案内要素50とともに機能してもよい。案内要素50は例えば、ハウジング2の溝またはスリット52内に突出している、リブ50であってもよい。溝52は、差し込み方向6に直線的に延在し、停止部46および48はこれらの溝の端部である。この配置構成を逆にして、溝またはスリット52をスライド上に位置付け、案内要素をハウジング上に位置付けることもできることは、言うまでもない。
【0060】
ハウジング2はまた、差し込み方向6に沿って延在しかつ表面上でローラコンタクト体20が転動する、溝形状の軌道54も備える。走行溝54は特に
図3に見ることができ、
図3ではハウジング2の一部が取り外されている。走行溝54を、差し込み方向6に対して横断方向に僅かに屈曲する、ハウジング舌片56上に形成してもよい。ハウジング舌片56は、差し込み方向に位置するその2つの端部において、または一方の端部のみにおいて、ハウジング2に接続されてもよい。ハウジング舌片56の降伏弾性コンプライアンス(イールディング コンプライアンス)の結果として、ハウジング舌片56は、ハウジング舌片56が偏向するとすぐにローラコンタクト体20をレセプタクル4内に押し込む、押圧ばね58として機能する。
コンタクトピン8がレセプタクル4に挿入され、スライド14が差し込み方向6に移動して、後端部12bの方向に位置する停止位置46から差し込み方向6に出ると、ローラコンタクト体20はコンタクトピン8に接するようになる。十分に大きい接触力60を生み出すために、ローラコンタクト体20は走行溝54に対して押し付けられ、このとき走行溝は弾性的に屈曲する。このことは
図4に示されている。
【0061】
レセプタクル4内へ突出しているローラコンタクト体20の外側表面は、電気コンタクト1の接触表面61を形成し、これは差し合わされた状態において、相補的コンタクト8の接触表面62と接触する(
図2も参照)。ローラコンタクト体20の表面が湾曲している結果、接触力60は小さい表面積に対して作用し、結果的に大きい表面圧力を及ぼす。
【0062】
差し込み動作について、
図5から
図9を参照して以下でより詳細に説明する。これらには、
図9が特に示しているように、走行溝54がスリット形状である変形形態が示されている。この設計の場合、降伏弾性コンプライアンスを利用して、走行溝54の縁部の降伏弾性コンプライアンスによって押圧力60を生み出す。
【0063】
図5から
図8には、中にハウジング2が収容されている、外側ハウジング63も示されている。
【0064】
図5では、スライド14は
図1および
図2に示すような初期位置16、すなわち後端位置42にある。ローラコンタクト体20は導入領域24内にあり、互いの距離は、この距離の方向におけるコンタクトピンの材料の厚さよりも大きく離間されている。初期位置では、ローラコンタクト体20はコンタクトピン8に触れていない。
【0065】
図5では、コンタクトピン8はちょうどスライド14に完全に挿入されたところであり、このときコンタクトピン8は、差し込み方向6に位置するその端部64において、スライド14の少なくとも1つのドライバ66に当接している。単なる例示として、
図5は、対向する面19a、19b上にある2つのドライバ66を示している。ドライバ66はレセプタクル4内へ突出しており、好ましくはスライド14の前端部15aに位置する。スライド14は、差し込み方向に対して横断方向においてコンタクトピン8を少なくとも2つの対向する面上で厳密に嵌合するように受け入れて中央に配置する、支承サポート68を備えてもよい。
【0066】
コンタクトピン8は、その後差し込み方向6にさらに押されると、ドライバ66を介してスライド14を、初期位置16から同様に差し込み方向6に移動させる。ローラコンタクト体20はこの結果、ハウジング2、特に走行溝54上で転動することができる。ばね舌片またはばねアーム30上のローラコンタクト体20はこれにより、コンタクトピン8に接することなく、導入領域24に沿って互いに向かって進む。以降駆動位置と呼ぶ、スライドのそのような位置69が、
図6に示されている。駆動位置69では、スライド14は差し込み方向6における初期位置の外に出ており、ローラコンタクト体20は、挿入の方向である差し込み方向6においてハウジング2の領域28への移行部に位置する、導入領域24の端部に位置する。スライド14およびコンタクトピン8は同じ速さで移動する。
【0067】
図7には、以降解放位置と呼ぶ、スライド14の位置70が示されているが、これは、スライド14の端部位置42と端部位置44との間あり、特に差し込み方向6において駆動位置69よりも先に、すなわちハウジングの前端部12aのより近くにある。ローラコンタクト体20は、接触力60の効果の下でコンタクトピン8の接触表面62上にある。同時に、ローラコンタクト体20は走行溝54に押し込まれており、走行溝54は差し込み方向6に対して横断方向へ弾性的に偏向されており、押圧力60を生み出す。それゆえ、ローラコンタクト体20はハウジング2上でおよびコンタクトピン8上で転動する。スライド14はその場合、直接コンタクトピン8によってそれ以上差し込み方向6に移動されることはないが、転動するローラコンタクト体20の動きによって移動される。スライド14のこの移動の速さは、コンタクトピン8がレセプタクル4に挿入される速さよりも低い。
コンタクトピン8はこの結果、スライド14を追い抜く。ドライバ66はレセプタクル4の外に移動しており、このためコンタクトピン8はドライバ66を越えて移動することができる。ドライバ66がレセプタクル4の外に出ることは、例えば、スライド14の解放位置70に達したときにドライバ66が中に入る、溝形状またはスリット形状の凹部71によって可能になる。この目的のために、ドライバ66をばね舌片72上に配置してもよい。
【0068】
ドライバ66がレセプタクル4の外に出ている位置はこの場合、ローラコンタクト体20がコンタクトピン8上およびハウジング2上の両方で転動するときの起点となる位置に対応している。このようにして、スライド14が、解放位置70へおよびさらに端部位置44へ、連続的に移動することが保証される。
【0069】
図7に示す位置から開始して、コンタクトピン8は次に、差し込み方向6にさらに移動することができる。コンタクトピン8はこの結果、ローラコンタクト体20および支承サポート68によって中央に配置され保持される。
【0070】
図10から
図15には、電気コンタクト1とコンタクトピン8の差し合わせの様々な段階が、
図5から
図9と比較して僅かに変更されている設計で示されている。簡潔にするために、先の実施形態との違いのみを検討する。
【0071】
図10から
図15の実施形態の場合、ドライバ66はラッチング機構74の一部であり、ラッチング機構74は、コンタクトピン上に特にラッチング要素36も備える(
図2も参照)。ドライバ66がコンタクトピン8の狭い面38に対向して配置されているのは、単なる例示である。ドライバ66は、コンタクトピン8の平坦な面76に同様に対向して、すなわち面19aおよび面19bの一方上に、配置されてもよい。ラッチング機構74を、
図5から
図9に示されている設計に追加して、特に使用してもよい。
【0072】
ラッチング機構74はスライドの初期位置16において係合し、ラッチング機構74によって確立される差し込み方向6での形状嵌めの結果、スライド14はコンタクトピン8によって差し込み方向6に移動される。初期位置16は
図10および
図11に示されている。
【0073】
ここでは突起として設計されている、ドライバ66およびラッチング要素36は、互いに接しており、この結果、コンタクトピン8の動きがスライド14に伝えられる。ローラコンタクト体20はコンタクトピン8から離間されて維持される。2つの突起が
図11に示すように互いに接している代わりに、スライドまたはコンタクトピン上に、他方の要素の対応する凹部内に係合するただ1つの突起がそれぞれあってもよいことは、言うまでもない。
【0074】
差し込み方向6への移動の過程で、ローラコンタクト体20は、コンタクトピン8およびハウジング2に接するようになる。このことは、差し込み方向6に位置する導入領域24の端部にローラコンタクト体20が達しているときに常に生じる。この位置において、コンタクトピン8はスライド14に追い抜き始めるが、その理由は、スライド14の速さがその場合に、ローラコンタクト体20の差し込み方向6への並進速さによって決まるからである。この並進速さは、スライド14の差し込み方向における速さよりも遅い。
【0075】
図14および
図15に示すように、コンタクトピン8の速さの方が速い結果、ラッチング機構74は、好ましくはスライド14の端部位置44よりも先でまたは端部位置44において、それ自体でラッチングされる。
【0076】
ラッチング機構74により、レセプタクル4内にコンタクトピン8が固止される。ラッチング機構74によって可能になる、差し込み方向6におけるコンタクトピンとスライドとの間の遊びは、特に振動負荷を受ける環境において、プラグ1とコンタクトピン8との間の相対移動の均衡を保つ目的で使用され得る。
【0077】
図1では、スライド14は、差し込み方向6に対して横断方向に延在する、ローラコンタクト体20の単一の列を備えている。ローラコンタクト体20の2つ以上の列、および/または、互いにずらして配置されているローラコンタクト体も使用できることは、言うまでもない。
図16は、例えば
図1のスライド14の代わりに使用できる、変更したスライドを示す。この設計の場合、ローラコンタクト体20が端部に保持されるばね舌片またはばねアーム30は、長さが異なっている。ローラコンタクト体20はこの結果、コンタクトピン8上に互いに差し込み方向6に離間されてあるが、このことは、コンタクトピン8に作用する傾斜モーメントをより良好に支持することにつながる。
【0078】
電気コンタクト1が移動可能なスライド14を備えるのは必須ではないが、このことを、以下の例示的な実施形態に基づいて、特にまず
図17から
図19に基づいて説明する。
【0079】
図17から
図19の電気コンタクト1は同様に、回転式に装着されているローラコンタクト体20を有し、これらはレセプタクル4に関して互いに対向して、面19a、19b上にある。
【0080】
ハウジング2はローラ支承ケージ21を取り囲んでおり、これは1つの部品として、または示されているように2つの部品として、形成されてもよい。ローラ支承ケージ21の内側部78はレセプタクル4に面している。ローラ支承ケージ21の外側部80は、ハウジング2と内側部78との間に配置されている。ローラコンタクト体20は、内側部78と外側部80との間に配置されている。外側部80は、押圧ばね58としての役割を果たす。先の例示的な実施形態の走行溝54と同じように、押圧ばね58は、差し込み方向6に対して横断方向に弾性的に偏向可能であり、このことにより、ローラコンタクト体20が挿入されたコンタクトピン8によってレセプタクル4から押圧ばね58の作用に抗して押されるときに、接触力60が生み出されるようになっている。
【0081】
内側部78を、曲げられたおよび/または折り曲げた接続部分82により、ハウジング2に材料結合で、特に一体に、接続してもよい。接続部分82は、差し込み方向6に反対向きに広くなる、傾斜した導入領域24を形成してもよい。
【0082】
電気コンタクト1の固定部分84は、導体85を固定するまたは差し込みコンタクト内に電気コンタクトを固定する役割を果たし得る。特に、電気コンタクト1は圧着コンタクト86として設計されてもよく、その場合固定部分84は、導体を圧着するための圧着部分を形成している。固定部分84はハウジング2とともに、および/または示されているように外側部80とともに、材料結合で、特に一体に、形成されてもよい。
【0083】
ローラコンタクト体20は、内側部78と外側部80との間で、嵌め合いにより回転可能であるように保持されている。最大の断面88はこの場合、内側部78と外側部80との間にある。ローラコンタクト体20は、内側部78および外側部80にある、差し込み方向6に対して横断方向に互いに位置合わせされている凹部内に置かれている。
【0084】
ハウジング2は、外側ハウジング63(図示せず)内に収容されてもよい。
【0085】
差し込み方向6へのコンタクトピン8の挿入中に、ローラコンタクト体20はその接触表面62上で転動し、この結果、差し込みに必要な差し込み力が軽減される。ローラコンタクト体20はこの場合、ローラ支承ケージ21によって保持されて移動しないままであり、隙間90内で回転するだけである。
【0087】
第1のステップでは、
図20によれば、ハウジング2は、内側部78上で差し込み方向6に押される。ハウジング2は挿入開口部90を有し、その数および位置は、内側部78のレセプタクルとしての挿入開口部90の数および位置に対応している。内側部78の表面にはいくつかの挿入開口部90があるが、これらはレセプタクル90の数またはローラコンタクト体20の数よりも少ない。それにも関わらず全てのローラコンタクト体20を押圧ばね58と内側部78との間に配置できるようにするために、組み付け目的で、押圧ばね58は、ハウジング2内でスライド14のように差し込み方向6に沿って変位可能である。様々な変位位置で、ハウジング2の異なる複数の挿入開口部90が押圧ばね58の挿入開口部90と位置合わせされ、このことにより、ローラコンタクト体20を、ハウジング2および押圧ばね58を通して、内側部78の凹部22に挿入できるようになっている。
次いで、この時点でハウジング2の挿入開口部90および押圧ばね58の挿入開口部90と位置合わせされている他のレセプタクル22に、ローラコンタクト体20を挿入するために、押圧ばね58は差し込み方向6に沿って再び変位される。既に組み付けられたローラコンタクト体20はこれにより、押圧ばね58の挿入開口部90に接合している溝54内で長手方向に転動する。このことを以下でさらに詳細に説明する。
【0088】
図21では、ハウジング2は差し込み方向6に押されて押圧ばね58を覆っており、この結果、2つの挿入開口部90が互いに位置合わせされている。
図22に示すように、ローラコンタクト体20は次いで、2つの位置合わせされた挿入開口部90に挿入され、これらは
図23が示すように、挿入開口部90と位置合わせされている凹部22内に収容されることになる。
【0089】
まだ空のレセプタクル22にローラコンタクト体20を装填するために、押圧ばね58およびハウジング2は、内側部78のまだ空の凹部22が押圧ばね58の挿入開口部90およびハウジング2の挿入開口部90と位置合わせされるまで、差し込み方向6に沿って互いに対して再び移動される。ハウジング2内での押圧ばね58の変位の結果、既に挿入されているローラコンタクト体20は、走行溝54上に支持されているので、その後押圧ばね58と内側部78との間に保持される。走行溝54はこの目的のために、ローラコンタクト体20の直径よりも小さいクリア幅(clear width)を有する。
【0090】
新しい変位位置において挿入開口部90がまだ空の凹部22と位置合わせされているとき、前の変位位置に関する前のステップで既に行われたように、ローラコンタクト体20は再び挿入開口部90に挿入される。このようにして、全ての凹部22にローラコンタクト体20を次々と装填することができる。その後、ラッチング機構74によって、ハウジング2の挿入開口部90が押圧ばね58の挿入開口部90ともはや位置合わせされておらず、かつ全てのローラコンタクト体20が押圧ばね58の走行溝54内にある、ハウジング2内の変位位置で、押圧ばね58を停止させることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 電気コンタクト
2 ハウジング
4 レセプタクル
6 差し込み方向
8 コンタクトピン
10 電気プラグ接続部
12a ハウジングの前端部
12b ハウジングの後端部
14 スライド
15a スライドの前端部
15b スライドの後端部
16 初期位置
18 挿入開口部
19a、19b レセプタクルの対向する面
20 ローラコンタクト体
21 ローラ支承ケージ
22 ローラコンタクト体用凹部
24 導入領域
26 ベーン
28 ハウジングのスリーブ形状または箱形状の領域
30 ばね舌片またはばねアーム
32 スライドのスリーブ形状または箱形状の部分
34 差し込み方向に反対向きのばね舌片またはばねアームの端部
36 ラッチング要素
38 狭い面
40 ハウジングの内面または内側表面
42 スライドの後端位置
44 スライドの前端位置
46 後方停止部
48 前方停止部
50 案内要素
52 溝またはスリット
54 走行溝
56 ハウジング舌片
58 押圧ばね
60 接触力
61 コンタクトの接触表面
62 相補的コンタクトの接触表面
63 外側ハウジング
64 端部
66 ドライバ
68 支承サポート
69 駆動位置
70 解放位置
71 凹部
72 ばね舌片
74 ラッチング機構
76 平坦面
78 内側部
80 外側部
82 接続部分
84 固定部分
85 導体
86 圧着コンタクト
88 ローラコンタクト体の最大直径
90 挿入開口部
【国際調査報告】