(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-531118(P2019-531118A)
(43)【公表日】2019年10月31日
    (54)【発明の名称】血管痙縮の予防及び治療のためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N   1/05        20060101AFI20191004BHJP        
   A61F   2/844       20130101ALI20191004BHJP        
   A61F   2/86        20130101ALI20191004BHJP        
   A61N   1/36        20060101ALI20191004BHJP        
【FI】
   A61N1/05
   A61F2/844
   A61F2/86
   A61N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
      (21)【出願番号】特願2019-512651(P2019-512651)
(86)(22)【出願日】2017年9月7日
    (85)【翻訳文提出日】2019年3月22日
      (86)【国際出願番号】EP2017072451
    
      (87)【国際公開番号】WO2018046592
(87)【国際公開日】20180315
    
      (31)【優先権主張番号】102016116871.8
(32)【優先日】2016年9月8日
(33)【優先権主張国】DE
    (81)【指定国】
      AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
    
      
        
          (71)【出願人】
【識別番号】508140512
【氏名又は名称】フェノックス  ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PHENOX  GMBH
          (74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口  洋
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】ヘンケス,ハンス
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】ハンネス,ラルフ
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】モンシュタット,ヘルマン
              
            
        
      
    【テーマコード(参考)】
      4C053
      4C267
    【Fターム(参考)】
      4C053BB12
      4C053BB23
      4C053BB24
      4C053CC10
      4C053JJ21
      4C267AA42
      4C267AA47
      4C267AA53
      4C267AA56
      4C267BB02
      4C267BB03
      4C267BB04
      4C267BB11
      4C267BB12
      4C267BB26
      4C267BB39
      4C267BB40
      4C267BB42
      4C267BB45
      4C267BB62
      4C267BB63
      4C267CC08
      4C267CC11
      4C267DD10
      4C267EE01
      4C267EE20
      4C267GG21
    (57)【要約】
  本発明は、ヒト又は動物体の頭蓋内血管(6)への挿入用のステント構造体(2)を有するデバイスであって、前記ステント構造体(2)は、血管(6)の内壁と接触することができる拡張状態と、ステント構造体(2)がマイクロカテーテル(4)内部にあるときに血管(6)内を移動できる圧縮状態とをとり、前記ステント構造体(2)は挿入補助手段(3)に接続され、さらに前記ステント構造体(2)はマイクロカテーテル(4)から解放されると自動的にその拡張状態に移行することができ、前記ステント構造体(2)は電気伝導体(13)を有し、血管痙縮の予防又は治療を可能にするように神経線維の機能を一時的又は永久的に低減するために、血管(6)の血管壁中で延びる神経線維に前記電気伝導体を介して電気パルス、高周波パルス又は超音波パルスを印加することができる、デバイスに関する。
    
  【特許請求の範囲】
【請求項1】
  ヒト又は動物体の頭蓋内血管(6)への挿入用のステント構造体(2)を有するデバイスであって、前記ステント構造体(2)は、血管(6)の内壁と接触することができる拡張状態と、ステント構造体(2)がマイクロカテーテル(4)内部にあるときに血管(6)内を移動できる圧縮状態とをとり、前記ステント構造体(2)は挿入補助手段(3)に接続され、さらに前記ステント構造体(2)はマイクロカテーテル(4)から解放されると自動的にその拡張状態に移行することができ、
  前記ステント構造体(2)は電気伝導体(13)を有し、血管痙縮の予防又は治療を可能にするように神経線維の機能を一時的又は永久的に低減するために、血管(6)の血管壁中で延びる神経線維に前記電気伝導体を介して電気パルス、高周波パルス又は超音波パルスを印加することができる、デバイス。
【請求項2】
  前記ステント構造体(2)は、個々の相互連結したストラット(7)、又はメッシュ構造を形成する個々のワイヤからなる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
  前記ステント構造体(2)は近位から遠位へと延在する背骨を備え、該背骨から、電気伝導体(13)を有しかつ拡張状態でステント構造体(2)の周囲を形成するストラット(7)が延びる、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
  少なくとも一部のストラット(7)は、互いに平行に延びる複数の部分ストラットから構成される、請求項2又は3に記載のデバイス。
【請求項5】
  前記電気伝導体(13)は、ステント構造体(2)の近位端で合流し、かつ挿入補助手段(3)に接続される、請求項1から4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
  前記電気伝導体(13)は互いに電気的に絶縁されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
  電気伝導体(13)に接続された電気又は高周波(HF)電極(8)の対が、拡張状態にありかつ血管内に埋め込まれた電極(8)が間隙により離間されるような態様でステント構造体の周縁部に配置され、それによって間隙を横切る電極(8)への印加電流の流れが血管(6)の内壁に作用する、請求項1から6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
  前記電極(8)は放射線不透過性マーカー(12)を備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
  前記ステント構造体(2)は複数対の電極(8)を備える、請求項7又は8に記載のデバイス。
【請求項10】
  1対の電極(8)間の間隙は電気的絶縁材料で満たされている、請求項7から9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
  前記ステント構造体(2)は、デバイス(1)の長手方向に離間する複数の略環状の要素を含み、各要素は電気回路に属する2つの電気伝導体(13)を含み、該2つの電気伝導体(13)はそれぞれ1つの電極(8)において終端し、かつ2つの電極(8)は、デバイス(1)が拡張状態で血管(6)内に埋め込まれたときに間隙により互いに離れている、請求項7から10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
  電極(8)、電極(8)の対、及び/又は超音波送信機は、ステント構造体(2)の長手方向に見て、周囲上に互いにオフセットして配置される、請求項1から11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
  電気抵抗を測定する手段をさらに備える、請求項1から12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
  前記ステント構造体(2)はその内側に膜(11)を備える、請求項1から13のいずれか
【請求項15】
  血管痙縮を予防又は治療する方法であって、請求項1から14のいずれか1項に記載のデバイスのステント構造体(2)が、挿入補助手段によって血管(6)内の標的位置に運ばれ、さらに拡張され、前記標的位置で電気パルス、高周波パルス又は超音波パルスが血管(6)の血管壁中で延びる神経線維に印加される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、ヒト又は動物体の頭蓋内血管への挿入用のステント構造体を有する装置又はデバイスであって、前記ステント構造体は、血管の内壁と接触することができる拡張状態と、マイクロカテーテル内に位置するステント構造体を血管内で移動させることができる圧縮状態とをとり、ステント構造体は挿入補助手段に接続され、ステント構造体はマイクロカテーテルから解放されるとその拡張状態に自動的に移行することができる、装置又はデバイスに関する。デバイスは、血管痙縮を予防又は治療するために使用される。さらには、本発明は関連方法にも関する。
 
【背景技術】
【0002】
  血管の痙攣性収縮は血管痙縮として知られている。血管痙縮は、最早血液が十分な量で下流血管に供給されない(虚血の)危険を伴い、それによって潅流を絶たれる組織の壊死につながり得る。特に、脳領域において、かなりの頻度で動脈瘤の破裂の結果として、クモ膜下出血(SAH)の数日後に血管痙縮が生じ得る。クモ膜下出血の他の原因は頭部外傷、及び血管奇形又は腫瘍からの出血である。クモ膜下腔に侵入した血液は、そこに位置する血管の周りに打ち寄せ、血管痙縮の最も重要な誘発因子と考えられている。全SAH患者の約60%は、おおよそ出血後5〜20日の間に生じる、程度の差はあれ明白な血管痙縮を経験する。動脈血管がひどく収縮すると、それに従属する組織は供給不足となり、不可逆的な損傷を受ける(脳梗塞)。SAHを最初に生き残った全患者のおよそ15〜20%は、結果として身体障害をともなう永久的な神経障害を経験する。最初に生き残ったSAH患者のおよそ5%は、その後に脳血管痙縮の結果として死亡する。これに関して、血管痙縮は、動脈瘤の破裂及び/又はそこからの出血の後に或いは手術の結果として生じるこの領域における卒中或いはさらには死亡の主な原因の1つである。
【0003】
  通常、血管痙縮は、薬物療法、特にカルシウムチャネル遮断薬により治療され、或いは、血中のNOレベルを高める薬剤が用いられる。カルシウムチャネル遮断薬の例はニモジピンであり、それは血管痙縮を防止する目的でクモ膜下出血の後によく用いられる。しかしながら、そのような薬物療法に基づく治療は、重要な副作用に関連し、さらには、費用がかかりかつ時間もかかる。
【0004】
  血管痙縮の治療のための更なる可能性は、動脈血圧を上昇させかつ循環血液量を増加させる、バルーンの助けを借りて狭窄血管を広げる、星状神経節をブロックする、及び交感神経線維の外科的切除(交感神経遮断)などの強力な医療措置である。これら治療方法はその有効性において個々でばらつきがあり、非常に複雑となることがあり、またしばしば十分に長期間は有効とならない。確かに、大脳動脈の内壁における交感神経線維は脳血管痙縮の発症に本質的に関わるため、星状神経節のブロック並びに交感神経遮断術は有効と考えられるべきである。しかしながら、それでもなお、星状神経節のブロックはたった数時間しか持続せず、また交感神経遮断術は狭義の血管セグメントのみに限られ、その血管セグメントをこの目的のために外科的に準備しなければならないため、これら方法は脳血管痙縮を完全に予防及び治療するのには不十分である。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  従って、本発明の目的は、何らかの他の方法で血管痙縮を予防及び治療することを可能にする手段を提供することである。
 
【課題を解決するための手段】
【0006】
  本発明が提案するように、この目的は、ヒト又は動物体の頭蓋内血管への挿入用のステント構造体を有する装置/デバイスであって、前記ステント構造体は、血管の内壁と接触することができる拡張状態と、ステント構造体がマイクロカテーテル内にあるときにステント構造体が血管内を移動できる圧縮状態とをとり、前記ステント構造体は挿入補助手段に接続され、ステント構造体はマイクロカテーテルから解放されるとその拡張状態に自動的に移行することができ、ステント構造体は電気伝導体を有し、血管痙縮の予防又は治療を可能にするように神経線維の機能を一時的に又は永久的に低減するために、血管の血管壁中で延びる神経線維にその電気伝導体を介して電気パルス、高周波パルス又は超音波パルスを印加することができる、装置又/デバイスによって達成される。
【0007】
  従って、本発明は、脳に血液を供給する動脈の血管内除神経のためのステント構造体の使用に基づく。交感神経線維の除神経のための血管内処置は、腎動脈の除神経の分野で知られているが、これは、血圧を高める物質の放出を減らすために脳と腎臓との間の神経線維を遮断するのに役立つ。その上、この目的のために使用されるバルーンカテーテルは、頭蓋内領域での使用には適さない。
【0008】
  物理学的に、高周波(HF)信号、直流、交流又は超音波の形態でパルスを神経線維に印加することができる。一般に、徐神経は結局のところ血管壁の加熱に基づき、それは神経線維の機能の消失又は障害を引き起こす。高周波又は超音波パルスの使用は、特異的に神経線維が損傷しかつ血管壁全体は損傷されないように、エネルギー最大値が周囲の血管壁の深部で生じることを可能にする限りにおいて好ましい。ここで関連する神経線維は交感神経系の神経線維である。
【0009】
  神経線維への単一インパルスの印加は典型的には30〜120秒の期間持続し、それによって神経線維は50℃と80℃の間の範囲の温度まで加熱され得る。血管壁へのエネルギーの進入深さは、例えば、1mmと3mmの間の範囲である。HFパルスの場合、周波数は典型的には300〜4000kHzである。高周波とは、本発明の意味において、1kHz超の周波数を有する電磁波を意味し、1GHz超の周波数を有するマイクロ波も含まれる。
【0010】
  血管内人工器官としても知られているステントは、血管狭窄の治療によく用いられ、血管内腔を広げた状態に維持する目的でその狭窄位置に永久的に埋め込まれる。典型的には、ステントは管状構造を有し、間に開口を有するストラット(支柱)(strut)からなる表面を形成するようにレーザ切断により製造されるか、或いはそれらはワイヤの編組からなる。ステントをそれが拡張される留置部位までカテーテルによって動かすことができる:形状記憶材料でできている自己拡張型ステントの場合には、拡張及び血管内壁との接触が自動的に生じる。最終的な留置の後、ステントのみが標的部位に残る;カテーテル、ガイド又はプッシャワイヤ、及び他の補助手段は血管系から除かれる。高い表面密度を有する類似するデザインのインプラント、いわゆる分流器も、動脈瘤の閉塞に用いられ、それは動脈瘤のネック(根元部分)の前に留置される。しかしながら、ステント構造体の助けを借りて血管痙縮を予防又は治療することはまだ記載されていない。
【0011】
  本発明のデバイスは、出血により引き起こされる血管痙縮の予防及び治療のための脳血液供給動脈の血管内除神経に役立つ。デバイスは特に柔軟性であり、従って、頭蓋内の動脈に挿入することができる。デバイスは、脳の供給不足の危険性のないわずかな程度しか動脈血流を変化させない。デバイスは1回のみ使用でき、数日間治療すべき血管内に留まるか、或いは永久的に埋め込まれる。
【0012】
  本発明が提案するデバイスの効果は、罹患血管の血管壁中の神経線維の機能的低減又は遮断に基づく。これは、機能の一時的な低減から神経線維の永久的な破壊/消失までの範囲に及び得る。神経線維の機能を低減/遮断するために、デバイスから血管壁にエネルギーが移送され、よって、エネルギーの伝送が電気パルス、高周波パルス又は超音波パルスにより生じる。これらは、神経線維の少なくとも部分的な萎縮/硬化をもたらす。エネルギーは、電極又は超音波送信機によって血管壁に移送され、よって、電極/超音波送信機へのエネルギーの供給は、ステント構造体の一部である電気伝導体によってなされる。たいてい電気伝導体の端部を構成する電極は、伝導体本体よりも普通は拡大している。例えば、電気伝導体は、電極として働く円形又は四角の拡大端部セクションを備えていてよい。
【0013】
  ステント構造体は自己拡張型であり、すなわち、ステント構造体がその中で標的部位まで進められるマイクロカテーテルから解放された後、それが外部からの影響なしに自主的に拡張状態をとり、罹患血管壁の内壁にそれ自体を付着させる。さらに、圧縮状態から拡張状態への移行は可逆的であるべきであり、すなわち、特に使用後にマイクロカテーテル内にステント構造体を引っ込め、さらにはそのようにして血管系から取り除くことを可能にするために、ステント構造体を拡張状態から圧縮状態に戻すことを可能とすべきである。このタイプの自己拡張型ステント構造体は基本的に、例えば動脈硬化により引き起こされた血管狭窄の場合に永久的に血管を広げた状態に維持することを目的としたものなど、技術常識において周知である。自己拡張型ステント構造体の利点は、拡張に必要なバルーンなどの付加的手段を省けるため、特にフィリグリー(線条細工)とすることができることである。典型的には、自己拡張型ステント構造体は、形状記憶特性を有する材料、特にニッケル−チタン合金などの形状記憶材料でできている。これに関して、ニチノールがかなり頻繁に用いられる。しかしながら、形状記憶特性を有するポリマー、又は他の合金も考えられる。
【0014】
  典型的には、挿入補助手段はガイドワイヤとしても知られているプッシャワイヤである。そのようなプッシャワイヤは、血管系内に永久的に残存することが意図されているインプラントの留置と同様に用いられるが、そのようなインプラントの留置の場合にはプッシャワイヤは切断点を介してインプラントに接続され、その切断点は、機械的、熱的、電解的又は化学的な分離のために設計され得る。一方、本発明に従うデバイスは通常、血管壁にエネルギーを印加するために標的位置に一時的に移動されるだけである。挿入補助手段は、好ましくはステンレス鋼、ニチノール又はコバルト−クロム合金でできている。しかしながら、血管系内に永久的に留置するために設計されたステント構造体、すなわち、挿入補助手段とステント構造体との間に位置する分離点を有する構造体を有するデバイスも考えられる。一般に、ステント構造体は、その近位端で挿入補助手に接続されるが、挿入補助手段とステント構造体との間の他の接続も除外されない。
【0015】
  挿入補助手段又はプッシャワイヤは、好ましくは、ステント構造体の近位端に半径方向外側に取り付けられている。すなわち、挿入補助手段とステント構造体との間の接続は、ステント構造体の中心ではなく、血管の内壁又はその近くに偏心性に配置される。この態様では、血流は軽度にしか妨げられない。その上、挿入補助手段の偏心配置は、マイクロカテーテル内へのデバイスの引き戻しを容易にする。
【0016】
  通常、マイクロカテーテル内部に配置された本発明のデバイスを、留置部位、すなわち血管痙縮が発生している位置又は血管痙縮が発生しそうな場所に向かって移動させるやり方で治療を実施する。それに続き、マイクロカテーテルを近位方向に引っ込めて、ステント構造体を展開させ、そこでステント構造体は拡張し、血管の内壁に接触する。その後、血管壁中の神経線維にパルスを印加するが、それを数時間又は数日の長い期間にわたり繰り返し行ってもよい。最後に、ステント構造体を収容するために、マイクロカテーテルを再び遠位方向に移動させ、その後にデバイスと一緒にマイクロカテーテルを引っ込める。ここに記載する処置を連続的に数日繰り返してもよい。
【0017】
  用語「近位」及び「遠位」は、デバイスを挿入したときに担当医の方を向く部分を近位と称し、担当医から離れる方の部分を遠位と称すると理解されるべきである。典型的には、従って、デバイスはマイクロカテーテルの助けを借りて遠位方向に前に進められる。用語「軸」は、近位から遠位に延在するデバイスの長手方向軸を指すが、一方用語「半径」は、長手方向軸に対して垂直に延在するレベル/平面を意味する。
【0018】
  本発明が提案するデバイスを用いて行われる治療は、同時に、例えばニモジピンを用いるなど、薬物療法に基づく治療を伴っていてもよい。これは、血管痙縮の治療又は予防が想定される部位で動脈内に適用することができる。
【0019】
  基本的に、ステント構造体は、個々の相互連結したストラットからなり得る。そのようなステント構造体は、レーザ切断技術によって公知の方法で製造することができる。さらに、電解研磨によりステント構造体を加工してそれをより滑らかに及び丸くし、それによって損傷を少なくすることが好都合であると考えられる。これによって、細菌又は他の不純物が構造体に付着し得る危険性を低減することもできる。
【0020】
  或いは、ステント構造体は、編組 (braiding ) 形状の個々のワイヤからなるメッシュ様構造であってもよい。この場合、ワイヤは、典型的には、長手方向軸に沿って螺旋状に延び、交差する対向ワイヤが交点で互いの上下に延び、ワイヤの間に作られるハニカム様開口をもたらす。ワイヤの総数は好ましくは8と64の間の範囲である。メッシュ構造を形成するワイヤとして、金属でできた個々のワイヤを用いてよいが、ストランド、すなわち、好ましくは互いの周りに撚り合わせた、フィラメントを形成するように配列された小径のいくつかのワイヤを提供することも可能である。
【0021】
  特にレーザ切断技術により製造された相互連結したストラットを含むステント構造体の、ワイヤからなるメッシュ構造を超える利点は、拡張過程中にストラットを含むステント構造体がメッシュ構造よりも縦収縮する傾向が少ないことである。ステント構造体は縦収縮中に周囲の血管壁に付加的応力をもたらすため、縦収縮は最小限に保つべきである。特に血管痙縮は血管に作用する刺激によって引き起こされるため、あらゆる付加的応力が血管痙縮の治療で回避されなけれなならない。
【0022】
  ストラット又はワイヤは、円形、楕円形、正方形又は長方形の断面を有していてよく、正方形又は長方形の断面の場合には、エッジを丸めるのが好ましい。本質的に長方形の断面の支柱又はワイヤが用いられる場合、20と300μmの間、好ましくは20と70μmの間の、高さ及び幅のストラット/ワイヤを提供することが有利であることが分かっており、エッジが丸められた長方形の断面も本質的に長方形と見なされる。円形断面の場合、直径は20と300μmの間の範囲であるべきである。ストラットが用いられるか或いは編組ワイヤが用いられるかに関わらず、神経線維へのパルスの印加を実施することを可能にするために電気伝導体が設けられることが重要である。電気伝導体はストラット/ワイヤ自体であってよく、又は伝導体はストラット/ワイヤに接続されていてよく、又は伝導体はステント構造体の別個の構成要素であってもよい。
【0023】
  好ましい実施形態に従い、ステント構造体は近位から遠位へと延在する背骨(spine)を備え、ストラットがその背骨から延びかつ拡張状態においてステント構造体の周囲(circumference)を形成する。例えば、ステント構造体はヒトの背骨に類似し、その背骨から延びるストラットが肋骨に該当する。特に、背骨から延びるストラットは、拡張状態にあるときに概ね環を形成することができ、よって横断面で見たときに概ね円形の血管内壁とその周囲の全て又は大部分にわたり接触する。特に、2つのストラットが間隙を有する開放環を形成できる。ストラットと背骨の間の接続点はそれぞれが互いにオフセットされ得る;これによって、ストラットの電気伝導体が互いに接触して短絡を起こす危険性が低減される。
【0024】
  背骨から延びて開放環を形成するストラットは、2つ以上の部分ストラットから構成されてよく、すなわち、背骨から延びる2つ以上の部分ストラットが互いに平行に走って共通の端点で終端する。対向して配置される部分ストラット群により形成される端点の間には間隙が形成される。1つのストラットが2つの部分ストラットで構成されている場合、その実施形態は、その2つの部分ストラットが一緒に背骨に弧を形成し、その弧の頂点が前述の端点に該当するというように説明することもできる。
【0025】
  複数のストラットが共通の背骨から延びる実施形態に関係なく、ストラットは平行に延びる複数の部分ストラットで構成されていてよい。いくつかの狭い部分ストラットを含むステント構造体は、より広いストラットを有するステント構造体よりも、ステント構造体がマイクロカテーテルの外的制限から解放されたときにより確実に半径方向に展開することができる。
【0026】
  背骨から延びるストラットが背骨に対して形成する角度は直角であってよいが、直角からの逸脱、例えば近位又は遠位方向への多少の伸展があってもよい。ストラットと背骨との間の接続点で形成される角度は従って、ストラットが遠位方向及び近位方向のいずれの方向に向かっても、拡張状態で30°と90°の間の範囲であってよい。しかしながら、より典型的な実施形態では、ストラットは遠位方向に向かう。ストラットは、パルスを神経線維に伝送させるために電気伝導体を備えていてよい。背骨から延びる個々のストラットのみが電気伝導体を有していれば十分となり得る;しかしながら、全てのストラットに電気伝導体を備えさせることも可能である。さらには、背骨から延びるストラットの数は任意に選択してよいが、ストラットの最小数は1つである。
【0027】
  電気伝導体は、ステント構造体の近位端で合流すべきであり、また挿入補助手段に接続されるべきである。挿入補助手段の長さにわたり、通常は電気伝導体と電流源(典型的には本体の外部に位置する)との間の電気接続がある。これによって、電気又は他のインパルスを、外部制御下でステント構造体を通して確実に伝送させることができる。しかしながら、デバイス自体の一部である電源も原理的には考えられるが、この場合、そのような電源は頭蓋内血管に挿入できるように特に小型でなければならない。電気伝導体の数は、一対の電極/超音波送信機が用いられるか、或いは複数対の電極又は超音波送信機が用いられるかによって変動し得る。一方では、いくつかの電気伝導体の提供は、血管の内壁上の様々な場所におそらく同時にインパルスを印加することを可能にする点で有利に思われる。しかしながら、他方では、デバイス/装置全体が狭い内腔の頭蓋内血管を通って移動できるように十分に柔軟性を維持することを確保するように注意しなければならない。
【0028】
  個々の電気伝導体は、短絡を回避するために互いに電気的に絶縁されている必要がある。これは特に、ステント構造体を形成するストラット又はワイヤが互いに比較的近接して配置されている場合にそうである。それらが互いに密接している領域においてのみ、例えば電気伝導体が挿入補助手段に移行するステント構造体の近位端で、電気伝導体が電気的に絶縁されていれば十分となり得るが、原則的に、それを通してパルス印加がなされる電気伝導体の領域に適した箇所、すなわち一般に電極が配置される端部を除いて、電気伝導体は完全に絶縁されていることが好都合である。
【0029】
  電気伝導体が電気的に絶縁されているが、一部の場所にはそれら地点に又はそれら地点の間にパルスを伝送させることを可能にするために電気的絶縁が意図的に提供されない、実施形態を利用することも可能である。そのような実施形態は、編組を形成する個々のワイヤのメッシュ構造を含むステント構造体に特に適している。この場合、ステント構造体の拡張は、その少なくとも一部が電気伝導体の機能を同時に果たすことができるワイヤが血管の内壁と接触することをいわば自動的に確保し、それは絶縁体が省かれた電気伝導体の領域/場所にも当てはまる。そのようなステント構造体の1つの利点は、異なる径を有する異なる血管にそれを使用できることである。
【0030】
  さらには、電気又は高周波(HF)電極の対が、拡張状態にありかつ血管内に埋め込まれた電極が間隙により離間されるような態様でステント構造体の周縁部に配置され、それによってその間隙を横切る電極への印加電流の流れが血管の内壁に作用するデバイスが優先される。パルスは電気パルスであっても高周波パルスであってもよい。特に、その実施形態を、ステント構造体が近位から遠位へと延在する背骨を備え、電気伝導体を備えるストラットがその背骨から延びる前記実施形態と組み合わせてもよい。このようにして、ストラット対は背骨から延び、該当するストラット対の端部に電極が配置されていてよい。全体として小型のステント構造体を鑑みると、電極間の間隙ももちろん小さく、通常≦1mmになる。
【0031】
  また、電極が放射線(X線)不透過性マーキングを備えていれば有用と考えられる。このようにして、主治医は、要望通り電極がまだ少し離れているか、或いはそれらが互いに接触しているか、すなわち短絡を起こしているかを知ることができる。拡張状態でもストラットは血管の内壁によって及ぼされる半径方向力を受けるため、ステント構造体が圧縮される程度は血管の内径にも依存する。例えば、あるステント構造体は、十分大きな間隙が電極間に存在するため十分大きな血管で用いることができるが、より小さなサイズの血管では、ステント構造体がより大きな圧縮に曝されるせいで電極間の接触が生じる場合があり、その結果パルスの伝達が妨げられる。従って、異なるステント構造体が、異なる内径を有する血管で使用するために利用可能であるべきである。
【0032】
  別の考えられる実施形態は、電極間に配置される絶縁材料でできたブリッジを用意する。このやり方では、短絡が効果的に防止される。さらに絶縁材料がある程度の柔軟性を有する場合、ステント構造体は血管の内径に適合することができ、従って所定のステント構造体を異なるサイズの血管で使用できる。
【0033】
  電極がマーキングとして機能を果たす放射線不透過性コアを内側に有する場合特に好都合と考えられる。主治医がデバイスの配置及び展開を視認することを可能にするために、1つ以上の放射線不透過性マーカーをデバイス上の他の位置に配置してもよい。放射線不透過性マーカーは、例えば、白金、パラジウム、白金−イリジウム、タンタル、金、タングステン、又は放射線を通さない他の金属からなり得る。ステント構造体の端部、特に遠位端での適切な放射線不透過性マーカーが特に有用である。ステント構造体のストラット又はワイヤに、例えば金コーティングなどの放射線不透過性材料からなるコーティングを設けることも可能である。このコーティングは、例えば1〜6μmの厚さを有する。そのような金コーティングは、放射線不透過性マーカーに加えて、或いは放射線不透過性マーカーの代わりに用いることができる。
【0034】
  ステント構造体に、電気パルス又は高周波パルスを作り出すことができる電極のいくつかの対を設けることが好都合であると考えられる。このようにして、血管壁のいくつかの位置にインパルスを印加することができ、その印加又は伝達は同時に又は連続的に生じる。血管壁はしばしば、その除神経が治療の成功に重要であるいくつかの神経線維を含むため、これは重要である。
【0035】
  ステント構造体の長手方向に見た場合、電極、電極の対及び/又は超音波送信機(一般的に、パルス発生器)は、互いから円周方向にオフセットして配置され得る。すなわち、ステント構造体の異なるセグメントに近位から遠位まで配置される電極は、血管の内周に関して異なるセグメントに作用する。横断面図において、パルス発生器は、例えば、12:00時の位置にあってよく、3:00時の位置のパルス発生器、6:00時の位置のパルス発生器、及び9:00時の位置のパルス発生器もあってよい。そのような実施形態は、ステント構造体を回転させる必要なく、血管壁において長手方向に延びる異なる神経線維を処理することができるという利点をもたらす。必要な場合は、特定の電極対を血管壁の様々な円周位置に運んでそこでパルスに効力を発揮させるために、ステント構造体を遠位に進めたり近位に引っ込めたりすることができる。デバイス及び従ってステント構造体を進めたり引っ込めたりすることは比較的容易であるが、デバイスは一般に頭蓋内領域に相当距離にわたり進められ、それによってねじり力の発揮がかなり困難になるため、ステント構造体の回転を達成するのは困難であることから、これは重要である。
【0036】
  ステント構造体は、デバイスの長手方向に離間する複数の略環状の要素を含み、各要素は電気回路に属する2つの電気伝導体を含み、その2つの電気伝導体はそれぞれ1つの電極において終端し、かつその2つの電極は、デバイスが拡張状態で血管内に埋め込まれたときに間隙により互いに離れている実施形態が有利である。特に、その実施形態は、ストラットが、近位から遠位方向に延在する背骨から延びる前記の実施形態と組み合わせることができ、この場合、背骨から延びる1つのストラットは第1の電気伝導体と共に第1の方向に延在し、かつ背骨から延びる第2のストラットは第2の電気伝導体と共に第2の方向に延在する。このように、ステント構造体は、肋骨を有するヒトの背骨に類似し、その端部は間隙により離れている(隙間がある)。従って、この構造は、閉じた環ではなく開放環の形状を有する。前述したとおり、個々のストラット間の間隙は、異なるストラット対に関して互いにオフセットして配置され得る。電気的絶縁材料でその間隙を満たすことも可能である。
【0037】
  デバイス、好ましくはステント構造体が、電気抵抗を測定する手段、特にインピーダンスを測定する手段、すなわち交流抵抗の測定を備えていることが適切である。そのような抵抗測定は、異なる組織が異なる電気抵抗を有し得る限りにおいて重要である。特定の神経線維の除神経のために印加されるエネルギーの量を決定することを可能とするには、抵抗測定は有用と考えられる。そのように検出された抵抗値に基づきデータマトリックスを確立して、例えばどの規定電流−電圧信号を適切に用いて所望の効果(例えば特定温度を誘導する)を達成できるかを決定することができる。治療の後、別の抵抗測定を実施して治療の成功をチェックすることができる。
【0038】
  抵抗測定は、本発明が提案するデバイスに必ずしも一体化させる必要はなく、すなわち、抵抗測定のための別個のデバイスも考えられる。
【0039】
  ステント構造体は透過性であってよく、すなわち半径方向に開口を有し得るが、ステント構造体の内側、すなわち内腔側に膜を設けることも可能である。反内腔側では、しかしながらデバイスの表面は血管の内壁と直接接触する。この場合、膜は、血管内腔をステント構造体の通常金属性のワイヤ又はストラットから分離する働きをする。膜は、内腔方向に電気伝導体の多少の電気絶縁を作り出すこともできる。一方、ステント構造体が圧縮状態にあるとき、付加的な膜を備えると追加のスペースが必要となり、従ってそのようなステント構造体はより少ないコンパクト性で折り畳まれる。
【0040】
  普通、ステント構造体は近位端で開放デザインである。遠位端でも、ステント構造体は開いていてよいが、閉じたデザインもとり得る。両端で開いているステント構造体は、血流が極力妨げられず、よって下流の血管及びそれらが血液を供給する組織の供給不足を防ぐことができるという利点をもたらす。一方、遠位端に閉じた構造を提供するとより非外傷性である。開放構造への言及は、ステント構造体のそれぞれの端部にストラット又はワイヤが配置されず、ストラット/ワイヤがステント構造体の外周にわたり配置されるのみであることを意味する。閉じた端部の場合、しかしながらストラット又はワイヤはステント構造体の中心にも存在する。しかしながら、ストラット又はワイヤの間にまだ開口はあるため、閉じた遠位端でさえ完全には不浸透性ではなく、まだそれぞれの開口を通る血流を可能とする。
【0041】
  ステント構造体の抗血栓形成性コーティング(antithrombogeneous coating)は好都合と考えられる。構造体はある期間のあいだ血管内に留まり、その間、発生した血管痙縮のせいで既に収縮している血管内で形成され得る血栓の防止が不可欠であるため、そのようなコーティングをステント構造体全体に或いはその内側のみに塗布する。ステント構造体の外側を、血管弛緩を促進する物質、例えばニモジピンなどのカルシウムチャネル遮断薬でコーティングすることが好都合となり得る。
【0042】
  典型的には、自由に拡張した状態でのステント構造体の直径は、2と8mmの間の範囲であり、好ましくは4と6mmの間の範囲である。拡張状態でのステンレス構造体の全長は、一般に、合計で5〜50mmであり、好ましくは10と45mmの間にあり、さらに好ましくは20と40mmの間である。ストラットからなるステント構造体の場合、例えば25と70μmの間の壁厚を有するチューブから構造体を切り出すことができ;織り合されたワイヤからなるメッシュ構造の場合、好ましいワイヤの厚さは20〜70μmである。例えば、それを用いてデバイスを圧縮状態でその標的部位まで移動させることができるマイクロカテーテルは、0.4と0.9mmの間の内径を有する。
【0043】
  本発明が提案するデバイスに加えて、本発明は、血管痙縮の予防又は治療のための方法にも関する。その方法は本発明のデバイスのステント構造体を提供し、そのステント構造体は、挿入補助手段によって血管内の標的部位に運ばれ、さらにそこで拡張され、その拡張は一般にデバイスを収容するマイクロカテーテルを引っ込めることによって達成され、その引込めは近位方向に行われる。その後、電気パルス、高周波パルス又は超音波パルスが、血管の血管壁中で延びる神経線維に印加される。適切な場合は、パルスの印加を数回繰り返してもよい。個々のパルスを印加するこのプロセス中、ステント構造体を所定の位置に留め、遠位に進め、或いは近位に引っ込めて、要求に応じて異なる神経線維に作用させることができる。特に拡張されたステント構造体を進める場合に血管への損傷の危険性が高くなりすぎるため、一般にステント構造体はマイクロカテーテル内に位置しているときに動かされる。いずれにしても、血管痙縮の発生の原因要素となりうるため損傷又は過剰な刺激は避けるべきである。従って、ステント構造体を進め又は引っ込めて別の長手方向の位置に到達させるのは、最初にステント構造体をその圧縮状態に移行させるためにマイクロカテーテルを進めてステント構造体をマイクロカテーテル内に収容し、その後に、マイクロカテーテル(従ってマイクロカテーテル内に位置するステント構造体)を所望の位置に移動させ、そこで最終的にステント構造体がマイクロカテーテルから再度解放されるようなやり方でなされる。
【0044】
  例えば、数日間にわたり治療を続けるために、デバイス全体を血管系から一時的に取り除き、後で再挿入してもよい。しかしながら、無菌的な理由のため、普通は新たなデバイスを各処置に用いなければならない。一般に、解放されたステント構造体を覆ってマイクロカテーテルを遠位に押すと、ステント構造体は再度折り畳まり、マイクロカテーテルと一緒に近位方向に引っ込めることができるようになり、それによってデバイスが血管系から取り除かれる。
【0045】
  デバイスに関してなされた任意の及び全ての記載は、同様に方法にも適用すべきであり、逆も同じである。
【0046】
  添付の図面により本発明のさらなる説明を例示として提供する。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図2】
図1に示す本発明のデバイスのステント構造体
 
【
図5】いくつかの電気伝導体を有するステント構造体の一部
 
 
【発明を実施するための形態】
【0048】
  図1では、本発明に従うデバイス1が、血管6の内部に位置する側面図で示されている。デバイス1はステント構造体2を有し、ガイドワイヤの形態の挿入補助手段3を備える。ステント構造体2は、血管6内に埋め込まれたその拡張形態でここに示されている。ステント構造体2はマイクロカテーテル4内で近位(ここで左側)から遠位(ここで右側)へと進められる;マイクロカテーテル4を進める又はステント構造体2を引っ込めることにより、マイクロカテーテルと一緒に血管系から取り除くために構造体はマイクロカテーテル4内に収容され得る程度にしっかりと再度折り畳まる。マイクロカテーテル4自体はより大きな内腔を有する別のカテーテル5を通って案内される。
 
【0049】
  ステント構造体2はストラット7を備え、そのストラットは二つ一組になって本質的に環形状であり、血管6の内壁に接触して置かれることが意図されている。加えて、ストラット7は電気伝導体を備え、その電気伝導体はストラット7の端部に配置される電極8に電気的に接続される。ストラット7の各環に対して、互いを伴う電極8の対があり、小さな間隙がその電極間に設けられ、それを介してインパルス、例えば電気又はHFパルスが、周囲の組織に印加され得る。さらには、ストラット7により形成される個々の環に関して、電極8及び従って電極間の間隙は、血管の円周におけるそれらの位置に関して互いからオフセットされており、すなわち、ストラット7の異なる環は異なる半径方向位置にパルスを印加することが分かる。
 
【0050】
  図2は
図1に示されるステント構造体2の拡大図である。ストラット7はそれぞれ二つ一組になって開放環を形成し、電極8が各ストラット7の端部に配置される。長手方向に縦に並べて配置されるストラット7の個々の環について、電極8は互いからオフセットして配置される。血管壁の異なる半径方向領域及びその中を走る神経線維に作用することが意図される複数のパルスを同時に放射することができるが、その放射をオフセット時間で行ってもよい。ストラット7の特定の環について、パルス印加が行われる位置は、例えば長手方向にそのステント構造体2を適切に移動させることによって選択することもできる。
 
【0051】
  ストラット7は、ステント構造体2の長手方向に走る共通の背骨9から延びる。ここに示す構成において、背骨9の1つの半体はストラット7の第1の半体に力を供給する働きをし、一方で背骨9の第2の半体はストラット7の第2の半体に力を供給する働きをするように、背骨9自体が2つに分割されていてもよい。
 
【0052】
  図2に示されるステント構造体の部分断面図を
図3に示す;ストラット7がどのように背骨9に接続しているか、並びに、背骨9の2つの半体の間に、背骨9の2つの半体間で短絡が生じないことを確保する絶縁体10があることが分かる。
 
【0053】
  図4は、
図2に示されるステント構造体2に基本的に類似するが、内腔側(すなわちステント構造体内側)に膜11が配置され、その膜が血管6の実際の内腔をステント構造体2から分けて内腔方向に隔離(絶縁)を作り出す、ステント構造体2を示す。
 
【0054】
  図5では、長手方向に並べて配置され、それぞれ背骨9から延びるストラット7によって形成される2つの開放環が示されている。背骨は、電極8への電流供給を確保する伝導体A、B、C、Dを備える。一方は伝導体A、Bを介しかつ他方は伝導体C、Dを介する電力供給は、同時に行われても又は順次に行われてもよい。
 
【0055】
  図6は、電気伝導体13の端部を形成する電極8を示す。ここに示される実施形態において、電気出力は直接ストラット7を介して電極8に行われ、すなわち、ストラット7は電気伝導体13でもある。電極8を視認することを可能にするために、電極は内側に開口を有し、その中に放射線不透過性マーカー12が圧入される。放射線不透過性マーカー12は、例えば、白金又は白金合金からできていてよい。X線写真において、主治医は処置に必須であるパルスを放射する電極8がどのように配置されているかをすぐに確認する。さらに、医師は、電極8の間で短絡が生じていないことを確認することができる。
 
【0056】
  図7は、展開形態のステント構造体2を示し、すなわち、開放環を形成するストラット7は平面表面に押し付けられて、示されている二次元表示をもたらす。ストラット7は様々な長さであることが分かる。このようにして、血管内に挿入された後、電極8は最終的に血管の内壁にオフセットされた又は千鳥状の様式で配置され、よってインパルスが様々なセクション/セグメントに作用することを可能にする。
 
 
【符号の説明】
【0057】
    1    デバイス
    2    ステント構造体
    3    挿入補助手段
    4    マイクロカテーテル
    5    カテーテル
    6    血管
    7    ストラット
    8    電極
    9    背骨
    10  絶縁体
    11  膜
    12  放射線不透過性マーカー
    13  電気伝導体
    
 
【国際調査報告】