(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-531202(P2019-531202A)
(43)【公表日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】回転可能アセンブリ、マシニングバーアセンブリ、およびその方法
(51)【国際特許分類】
B23B 29/02 20060101AFI20191004BHJP
F16F 15/126 20060101ALI20191004BHJP
B23B 27/00 20060101ALI20191004BHJP
B23C 9/00 20060101ALI20191004BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20191004BHJP
【FI】
B23B29/02 A
F16F15/126 A
B23B27/00 C
B23C9/00 Z
B23Q11/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-532914(P2019-532914)
(86)(22)【出願日】2016年8月31日
(85)【翻訳文提出日】2019年4月19日
(86)【国際出願番号】SE2016050820
(87)【国際公開番号】WO2018044216
(87)【国際公開日】20180308
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】519068515
【氏名又は名称】エムエーキュー アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】チーリン フー
(72)【発明者】
【氏名】コーネル−ミハイ ニコレスク
(72)【発明者】
【氏名】アミル ラシッド
【テーマコード(参考)】
3C011
3C022
3C046
【Fターム(参考)】
3C011AA06
3C022QQ03
3C046AA05
3C046BB02
3C046KK02
(57)【要約】
回転軸線(28)の周りに回転させる回転可能支持体に固定されるように適合された1つの端部(12)を有する回転可能アセンブリ(10)。回転可能アセンブリ(10)は空洞(56)を有する本体(18)と、空洞(56)の内部に配置され、本体(18)に対して、回転軸線(28)に実質的に垂直な半径方向(30)に移動可能な制振質量(38)と、制振質量(38)を本体(18)に対して支持するように配置され、制振質量(38)の振動移動を、本体(18)に対して半径方向(30)に減衰させるように配置された、制振構造(36)と、を備え、制振構造(36)は複数の弾力要素(40)を備え、各弾力要素(40)は平坦な外観を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線(28)の周りに回転させる回転可能支持体に固定されるように適合された1つの端部(12)を有する回転可能アセンブリ(10)であって、
該回転可能アセンブリ(10)は、
空洞(56)を有する本体(18)と、
前記空洞(56)の内部に配置され、前記本体(18)に対して、前記回転軸線(28)に実質的に垂直な半径方向(30)に移動可能な制振質量(38)と、
該制振質量(38)を前記本体(18)に対して支持するように配置され、前記制振質量(38)の振動移動を、前記本体(18)に対して前記半径方向(30)に減衰させるように配置された、制振構造(36)と、を備え、
該制振構造(36)は複数の弾力要素(40)を備え、
各弾力要素(40)は平坦な外観を有する、回転可能アセンブリ(10)。
【請求項2】
各弾力要素(40)の半径方向(30)の幅は、前記弾力要素(40)の前記回転軸線(28)に沿う厚さの少なくとも30倍、好ましくは少なくとも50倍、例えば少なくとも100倍である、請求項1に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項3】
前記複数の弾力要素(40)のうちの1つまたは複数は前記半径方向(30)に変化する広がりを有する、請求項1または2に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項4】
前記複数の弾力要素(40)のうちの前記1つまたは複数は、前記回転軸線(28)に沿って見たとき、楕円形、三角形、または多角形の外観を有する、請求項3に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項5】
前記制振構造(36)は様々な半径方向(30)に様々な剛性を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項6】
前記弾力要素(40)は周波数依存弾性率を有する材料を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項7】
前記回転可能アセンブリ(10)は、前記制振構造(36)の前記半径方向(30)の剛性を、それぞれ減少または増加させるために、少なくとも1つの弾力要素(40)を前記制振構造(36)に追加または前記制振構造(36)から除去することができるように構成された、請求項1から6のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項8】
前記制振構造(36)は複数の金属プレート(42)を備え、該金属プレート(42)および前記弾力要素(40)は交互に配置された、請求項1から7のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項9】
前記制振質量(38)と前記本体(18)とを分離するように配置された少なくとも1つの補助支持構造(70、76)をさらに備え、各補助支持構造(70、76)は、前記回転軸線(28)に沿ってまたは前記半径方向(30)に交互に配置された弾性材料層(72、78)および金属材料層(74、80)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項10】
前記制振構造(36)を前記回転軸線(28)に沿って圧縮および圧縮解除するように配置されたクランプ機構をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項11】
クランプ機構はウォームギヤ(44)を備える、請求項9に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項12】
前記制振質量(38)に加えて、少なくとも1つの追加の制振質量(66)をさらに備え、各制振質量(38、66)は固有の重量を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項13】
前記制振構造(36)に加えて、少なくとも1つの追加の制振構造(68)をさらに備え、前記制振質量(38、66)および前記制振構造(68)は交互に配置された、請求項12に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項14】
回転軸線(28)の周りに回転させる回転可能支持体に固定されるように適合された1つの端部(12)を有する回転可能アセンブリ(10)であって、
該回転可能アセンブリ(10)は、
空洞(56)を有する本体(18)と、
カッタ(26)を保持する工具ヘッド(20)と、
前記空洞(56)の内部に配置された制振質量(38)であって、該制振質量(38)と前記本体(18)との間に半径方向(30)に、前記回転軸線(28)に実質的に垂直な間隙が確立される、制振質量(38)と、
冷却剤を前記工具ヘッド(20)に供給する冷却剤供給構造(62)と、を備え、
該冷却剤供給構造(62)は前記間隙によって部分的に構成された、回転可能アセンブリ(10)。
【請求項15】
前記回転可能アセンブリ(10)はマシニングバーアセンブリであり、前記本体(18)はマシニングバー本体である、請求項1から14のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項16】
回転軸線(28)の周りに回転させる回転可能支持体に固定されるように適合された1つの端部(12)を有するマシニングバーアセンブリ(10)であって、
該マシニングバーアセンブリ(10)は、
マシニングバー本体(18)と、
工具ヘッド(20)と、
該工具ヘッド(20)と前記マシニングバー本体(18)との間の制振構造(24)と、を備え、
該制振構造(24)は、前記マシニングバーアセンブリ(10)の第2またはそれ以上の振動モードの、前記工具ヘッド(20)に最も近い波節領域に配置された、マシニングバーアセンブリ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、回転可能アセンブリ、マシニングバーアセンブリ、およびその方法に関する。特に、本体の空洞内の制振構造によって支持された制振質量を備える回転可能アセンブリ、本体の空洞内の制振質量および冷却剤供給構造体を備える回転可能アセンブリ、ならびにマシニングバー本体、工具ヘッド、および工具ヘッドとマシニングバー本体との間の制振構造を備えるマシニングバーアセンブリ、が提供される。
【背景技術】
【0002】
機械部品および機械構造の回転中の振動は、それらの寿命および性能に悪影響を及ぼし得る。回転構造の振動を抑制するための既知の解決策の1つは、同調質量ダンパを設けて、回転構造の振動エネルギーを付加質量に伝えることである。それにより、回転構造の代わりに付加質量が振動し、回転構造は作業中に安定に保持され得る。工作機械は、長い張り出し工具構造において同調質量ダンパを使用する典型的な用途である。工作機械は通常、片持ち構造として実現され、その剛性は、直径に対する張り出し長さの比が大きくなるにつれて実質的に減少する。
【0003】
米国特許第8020474(B2)号明細書(特許文献1参照)は、振動を減衰させる工具ホルダを開示している。工具ホルダは、製造機械内に工具ホルダを配置させるように意図した軸と、カッタを配置させるように意図したヘッドと、粘弾性材料とを含み、カッタは粘弾性材料を介してのみ製造機械と接触するように配置される。粘弾性材料は、シャフトの表面に取り付けられた支持体材料上に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8020474(B2)号明細書
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、振動減衰が改善された回転可能アセンブリを提供することである。
【0006】
本開示のさらなる目的は、時間の経過にわたって信頼性の高い振動減衰を有する、回転可能アセンブリを提供することである。
【0007】
本開示のまたさらなる目的は、振動を低減するための単純な構造を有する、回転可能アセンブリを提供することである。
【0008】
本開示のまたさらなる目的は、低価格の設計を有する、回転可能アセンブリを提供することである。
【0009】
本開示のまたさらなる目的は、保守および/または調整、例えばチューニングの必要性が少ない、回転可能アセンブリを提供することである。
【0010】
本開示のまたさらなる目的は、保守および/または調整が単純な回転可能アセンブリを提供することである。
【0011】
本開示のまたさらなる目的は、寿命の長い回転可能アセンブリを提供することである。
【0012】
本開示のまたさらなる目的は、その第1振動モードだけでなく、その第2およびそれ以上の振動モードにおいても、効率的に制振される回転可能アセンブリを提供することである。
【0013】
一態様によれば、回転軸線の周りに回転させる回転可能支持体に固定されるように適合された一端を有する回転可能アセンブリが提供され、回転可能アセンブリは空洞を有する本体を備え、制振質量が空洞内部に配置され、本体に対して、回転軸線に実質的に垂直な半径方向に移動可能であり、制振構造が、制振質量を本体に対して支持するように配置され、制振質量の振動移動を、本体に対して半径方向に減衰させるように配置され、制振構造は複数の弾力要素を備え、各弾力要素は平坦な外観を有する。
【0014】
制振構造は、弾力要素を備えるが制振質量を備えない積層体によって構成されてもよい。従って、制振構造は複数の弾力要素を備える薄板構造によって構成されてもよい。
【0015】
弾力要素の接合領域内での気泡形成を回避するために、弾力要素は真空環境中で組み立てて積層体にしてもよい。その上、弾力要素は、回転可能アセンブリの回転軸線と実質的に同心に配置されてもよい。
【0016】
本開示の全体にわたって、制振構造は代替として、制振質量用の剛性要素と呼ぶ場合がある。制振構造および制振質量は一括して、同調質量ダンパと呼ぶ場合がある。
【0017】
一変形例によると、回転可能アセンブリは制振質量を1つだけ備える。制振質量は、単一の剛性材料片、例えば金属によって構成されてもよい。
【0018】
制振質量は、本体に対して2つの制振構造によって、例えば回転軸線に沿って制振質量の各側を1つずつで支持されてもよい。各制振質量は、本体の空洞内に配置されてもよい。制振質量は、本開示による1つ以上の制振構造によってのみ、本体に対して支持されてもよい。
【0019】
制振質量は、重心が第2振動モードまたはそれ以上の振動モードの波腹領域に位置するように配置されてもよい。例えば、制振質量は、その重心が、回転可能支持体に固定されるように適合された回転可能アセンブリの端部に最も近い、第2振動モードの波腹領域、すなわち回転可能アセンブリの回転軸線に沿った、この端部から自由端(例えば工具ヘッドの端部)までの距離の約40%から50%に配置されるように位置決めされ得る。
【0020】
各弾力要素の半径方向の幅は、弾力要素の回転軸線に沿った厚さの少なくとも30倍、好ましくは少なくとも50倍、例えば少なくとも100倍であってもよい。これは各弾力要素に特に平坦な外観を提供する。各弾力要素の厚さは1mm未満であってもよい。
【0021】
複数の弾力要素のうちの1つまたは複数は、半径方向に変化する広がりを有してもよい。例えば、1つの弾力要素は、1つまたは複数の半径方向に回転軸線から第1の距離だけ延び、1つ以上の他の半径方向に回転軸線から第1の距離とは異なる第2の距離だけ延びてもよい。各弾力要素は、回転軸線に垂直な線に関して対称、または非対称のいずれかであってもよい。複数の弾力要素のうちの1つまたは複数が半径方向に変化する広がりを有し、かつ同様の形状を有する場合、弾力要素を回転軸線の周りの様々な回転方向に配置して、制振構造の様々な半径方向に様々な剛性を提供することができる。半径方向に変化する広がりを有する1つまたは複数の弾力要素は、無負荷状態において半径方向に変化する広がりを有してもよい。
【0022】
複数の弾力要素のうちの1つまたは複数は、回転軸線に沿って見たとき、楕円形、三角形、または多角形の外観を有してもよい。代替としてまたは加えて、複数の弾力要素のうちの1つまたは複数は、回転軸線に対して不規則な外周形状を有してもよい。
【0023】
一変形例によれば、弾力要素のうちの1つまたは複数は回転軸線に沿って見たときに楕円形を有し、楕円形の短軸の長さは楕円形の長軸の長さの70%から90%である。
【0024】
制振構造は、様々な半径方向に様々な剛性を有してもよい。そのような剛性の差は、複数の弾力要素のうちの1つまたは複数の半径方向の延長部を変化させることによって実現することができる。代替としてまたは加えて、そのような剛性の差は、弾力要素のうちの1つまたは複数の厚さを変化させることによって、例えば、厚さを増加または減少させた円形扇形、または剛性を増加または減少させた材料の円形扇形を有する、1つまたは複数の円形弾力要素を設けることによって実現することができる。
【0025】
様々な半径方向に様々な剛性を有する制振構造を提供することによって、制振質量の共振周波数も様々な半径方向において異なる。このようにして、制振構造および制振質量は、制振質量の様々な半径方向で変化する共振周波数が、回転可能アセンブリの様々な方向での様々な振動周波数と一致するように構成することができる。換言すれば、この解決策は、回転軸線に対して非対称である回転可能アセンブリに使用することができる。
【0026】
本開示の全体にわたって、各弾力要素は弾性プレートによって構成されてもよい。例えば、弾力要素は、粘弾性材料、ゴム、複合材料またはポリマーを含んでもよく、またはそれらによって構成されてもよい。
【0027】
弾力要素は、周波数依存弾性率を有する材料を含んでもよい。従って、制振質量および弾力要素は、制振質量の共振周波数が周波数範囲にわたって本体の周波数と一致するように構成することができる。
【0028】
従って、本体の少なくともいくつかの振動周波数において、本体の振動周波数の増加/減少は、周波数依存弾性率ゆえの弾力要素の剛性の増加/減少によって補償される。回転可能アセンブリの振動周波数が増加すると、それにより弾力要素の弾性率(または剪断弾性係数)が増加し、それにより制振質量の共振周波数が増加して、増加した回転可能アセンブリの振動周波数と一致する。逆もまた同様である。このようにして、制振構造は自己同調効果を生み出す。すなわち、制振構造は、制振構造の圧縮予荷重を変える必要なしに制振質量の共振周波数を自動的に変化させる。従って、制振構造は、制振質量の広範囲の共振周波数をもたらすことができる。
【0029】
3M(登録商標)112’粘弾性ポリマーは、周波数依存弾性率を有する材料の一例である。
【0030】
代替としてまたは加えて、弾力要素は温度依存の弾性率を有する材料を含んでもよい。従って、弾力要素の弾性率は、弾力要素の温度を制御して、制振質量の共振周波数を調整して回転可能アセンブリの振動周波数と一致させることによって制御することができる。この温度制御は、弾力要素への冷却剤供給を制御することにより、すなわち専用の冷却剤の供給、または既存の冷却剤の供給、例えばマシニングバーアセンブリの工具ヘッドへの冷却剤の供給のいずれかを制御することにより行うことができる。
【0031】
従って、本開示はまた、温度依存の弾性率を有する弾力要素の温度を制御し、それによって制振質量の共振周波数を制御して、回転可能アセンブリの振動周波数と一致させる方法を提供する。
【0032】
回転可能アセンブリは、少なくとも1つの弾力要素を制振構造に追加または制振構造から除去し、それによって制振構造の半径方向の剛性を、それぞれ減少または増加させることができるように構成することができる。
【0033】
制振構造は、複数の金属プレートを備えてもよく、金属プレートおよび弾力要素は交互に配置されている。金属プレートはアルミニウム製または鋼鉄製であってもよい。
【0034】
回転可能アセンブリはさらに、制振質量と本体とを分離するように配置された少なくとも1つの補助支持構造を備え、各補助支持構造は、回転軸線に沿ってまたは半径方向に交互に配置された弾性材料層および金属材料層を含む。
【0035】
回転軸線に沿った各弾力要素の幅は、1mm未満、例えば0.05mmから0.3mm、例えば約0.1mmであってもよい。回転軸線に沿った各金属プレートの幅は、各弾力要素の幅の約2倍、すなわち、2mm未満、例えば0.1mmから0.6mm、例えば約0.2mmであってもよい。
【0036】
回転可能アセンブリはさらに、制振構造を回転軸線に沿って圧縮および圧縮解除するように構成されたクランプ機構を備えてもよい。クランプ機構は、制振構造に弾力要素を追加するか、または制振構造から弾力要素を除去するために開けることができてもよい。
【0037】
クランプ機構はウォームギヤを含んでもよい。ウォームギヤは、ウォームねじおよびウォームホイールを備えてもよい。ウォームねじは回転可能アセンブリの回転軸線に実質的な垂直方向に向いていてもよく、ウォームホイールは回転可能アセンブリの回転軸線と実質的に同心であってもよい。従って、ウォームねじは作業者によって(例えば、ねじ回しによって)ねじ込まれて、ウォームホイールを回転させて、例えば圧縮プレートを介して制振構造を圧縮させることができる。
【0038】
回転可能アセンブリはさらに、クランプ機構と制振構造との間に圧縮プレートを備えてもよい。圧縮プレートは、回転軸線上に整列され、かつ回転軸線に実質的な垂直であり、それにより、クランプ機構からの荷重がクランプ機構と圧縮プレートとの間の接触領域にわたって均等に分配されてもよい。圧縮プレートはまた、制振構造に荷重を実質的に均等に分配する。
【0039】
圧縮プレートは、少なくとも制振構造の外側構成要素(例えば、金属プレート)の外形に一致する凹部またはポケットを備えてもよく、それにより、この構成要素(および場合により制振構造体のさらなる構成要素)を凹部内に収容することができる。
【0040】
さらに、例えば圧縮プレートをプラグ部材に対して回転係止させることによって、圧縮プレートを本体に対して回転係止させることができる。
【0041】
回転可能アセンブリはさらに、制振質量に加えて、少なくとも1つの追加の制振質量を備えてもよく、各制振質量は固有の重量を有する。
【0042】
回転可能アセンブリはさらに、制振構造に加えて、少なくとも1つの追加の制振構造を備えてもよく、制振質量および制振構造は交互に配置されている。各追加の制振構造は、本開示による複数の弾力要素を備えてもよく、すなわち各弾力要素は平坦な外観を有する。
【0043】
さらなる一態様によれば、回転軸線の周りに回転させる回転可能支持体に固定されるように適合された一端を有する回転可能アセンブリが提供され、回転可能アセンブリは、空洞を有する本体と、カッタを保持する工具ヘッドと、空洞内部に配置された制振質量であって、制振質量と本体との間に半径方向に、回転軸線に実質的な垂直に間隙が確立されるような、制振質量と、冷却剤とを工具ヘッドに供給する冷却剤供給構造と、を備え、冷却剤供給構造は部分的に間隙によって構成されている。従って、冷却剤は、工具ヘッド(および/または弾力要素)を冷却するために使用するととともに、本体および制振質量の振動を減衰させる粘性流体として機能させることができる。
【0044】
本開示による回転可能アセンブリは、マシニングバーアセンブリによって構成されてもよく、本開示による本体は、マシニングバー本体によって構成されてもよい。しかし、代替の回転可能アセンブリおよび本体も考えることができる。例えば、回転可能アセンブリは、他の工作機械構造体(例えば、穿孔、フライス削り、または研削用)によって、または工作物を機械加工するための使用に制限されない機械的構造体によって構成することができる。
【0045】
さらなる一態様によれば、回転軸線の周りに回転させる回転可能支持体に固定されるように適合された一端を有するマシニングバーアセンブリが提供され、マシニングバーアセンブリは、マシニングバー本体、工具ヘッド、および工具ヘッドとマシニングバー本体との間の制振構造を備え、制振構造は、マシニングバーアセンブリの第2またはそれ以上の振動モードの、工具ヘッドに最も近い波節領域に配置される。マシニングバーアセンブリは、長い張り出し工具および短い張り出し工具の両方で構成されてもよい。
【0046】
本開示の全体にわたって、マシニングバーアセンブリはボーリングバーアセンブリによって構成されてもよく、マシニングバー本体はボーリングバー本体によって構成されてもよい。
【0047】
片持ち構造の第1振動モードでは、構造体はその固定端に1つの波節(構造体が動かない場所)と、その自由端に1つの波腹(構造体が最大変位を受ける場所)とを含む。第2振動モードでは、構造体は2つの波節と2つの波腹とを含む。第3振動モードでは、振動物体は3つの波節と3つの波腹などを含む。
【0048】
振動構造体内のひずみは通常、波節で最も高く、変位は波腹で最大である。さらに、運動エネルギーは波腹領域に集中し、位置エネルギーは波節領域に集中している。
【0049】
例えば、制振構造は、マシニングバーアセンブリの第2振動モード、第3振動モード、またはそれ以上の振動ノードの、工具ヘッドに最も近い波節領域に配置され得る。工具ヘッドに最も近い第2振動モードの波節領域は、回転軸線に沿って工具ヘッドから、マシニングバーアセンブリの長さの約25%に位置してもよい。工具ヘッドに最も近い第3振動モードの波節領域は、回転軸線に沿って工具ヘッドから、マシニングバーアセンブリの長さの約20%に位置してもよい。第4振動モードの波節領域は、回転軸線に沿って工具ヘッドなどから、マシニングバーアセンブリの長さの約14%に位置してもよい。
【0050】
本開示の全体にわたって、実質的に垂直/平行な関係は、完全に垂直/平行な関係、ならびに完全に垂直/平行な関係からの最大5%、例えば最大2%のずれを含む。同様に、本明細書で使用する場合、実質的に対応する距離は、完全に対応する距離、ならびに完全に対応する距離からの最大5%、例えば最大2%のずれを含む。
【0051】
本開示のさらなる詳細、利点および態様は、図面と併せて以下の実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】ボーリングバーアセンブリの形態の回転可能アセンブリの斜視図を概略的に表す。
【
図2】
図1のボーリングバーアセンブリの分解斜視図を概略的に表す。
【
図3a】
図1のセクションA−Aに沿ったボーリングバーアセンブリの側断面図を概略的に表す。
【
図3b】
図1のセクションB−Bに沿ったボーリングバーアセンブリの側断面図を概略的に表す。
【
図4a】
図1のボーリングバーアセンブリの部分的な側断面図を概略的に表す。
【
図4b】
図1のボーリングバーアセンブリの部分的な側面図を概略的に表す。
【
図5a】
図1のボーリングバーアセンブリの部分的な断面図を概略的に表す。
【
図5b】
図1のボーリングバーアセンブリの部分的な断面図を概略的に表す。
【
図5c】
図1のボーリングバーアセンブリの部分的な断面図を概略的に表す。
【
図6b】
図6aの制振構造の側面図を概略的に表す。
【
図7】ボーリングバーアセンブリの振動モード周波数の半径方向への変動の一例を示すダイアグラムである。
【
図8a】制振質量および2つの制振構造の斜視図を概略的に表す。
【
図8b】
図8aの制振質量の正面図を概略的に表す。
【
図9a】圧縮プレートおよび金属プレートの正面図を概略的に表す。
【
図9b】
図9aの圧縮プレートおよび金属プレートの断面図を概略的に表す。
【
図9c】
図9aおよび
図9bの圧縮プレートおよび金属プレートの背面図を概略的に表す。
【
図11】複数の制振質量および複数の制振構造を交互に配置した斜視図を概略的に表す。
【
図12】制振構造において、弾力要素の最も適切な材料および弾力要素の数を選択する方法を示すダイアグラムである。
【
図13】ポリマーの弾性率を周波数に対して示すグラフである。
【
図14a】2つの制振構造および2つの補助支持構造によって支持された制振質量の変形例。
【
図15a】2つの制振構造および2つの補助支持構造によって支持された制振質量のさらなる変形例の斜視図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下では、本体の空洞内の制振構造によって支持された制振質量を備える回転可能アセンブリ、本体の空洞内の制振質量および冷却剤供給構造体を備える回転可能アセンブリ、ならびにマシニングバー本体、工具ヘッド、および工具ヘッドとマシニングバー本体との間の制振構造を備えるマシニングバーアセンブリ、について説明する。同一のまたは類似の構造的フィーチャを表すために、同一の参照番号が使用される。
【0054】
図1は回転可能アセンブリ10の斜視図を概略的に表す。この例では、回転可能アセンブリは、ボーリングバーアセンブリ10の形態のマシニングバーアセンブリによって構成される。
【0055】
この例のボーリングバーアセンブリ10は、回転可能支持体(図示せず)に固定する端部部品12によって構成される端部12を備える。ボーリングバーアセンブリ10はさらに、末端係止部14、プラグ部材16、およびボーリングバー本体によって構成される中空円筒本体18を備える。ボーリングバー本体18はマシニングバー本体の一種である。
【0056】
末端係止部14およびプラグ部材16は、例えばねじ(図示せず)を用いて本体18にしっかりと固定される。末端係止部14の末端部は、端部12の開口部の中に挿入され、末端係止部14は、ねじまたは油圧拡張クランパを用いて端部12に固定連結される。
【0057】
工具ヘッド20は、この例では3つのねじ22を用いて、プラグ部材16に剛性的に連結される。工具ヘッド20は、制振構造24を介してプラグ部材16に連結される。工具ヘッド20はカッタ26を保持し、ボーリングバーアセンブリ10をその回転軸線28の周りに回転させたときに工作物(図示せず)を機械加工する。ボーリングバーアセンブリ10における振動問題は、カッタ26の寿命を大幅に短縮させ得る。
【0058】
図1はさらに、回転軸線28に実質的に垂直な半径方向30を示す。作業中に、ボーリングバーアセンブリ10の振動移動は実質的に半径方向30に生じる。
【0059】
制振構造24は弾力要素32および金属プレート34を備える。この例では、弾力要素32は粘弾性材料でできている。制振構造24はボーリングバーアセンブリ10の波節領域に配置される。制振構造24は、ボーリングバーアセンブリ10の第1振動モード以外の、より高い周波数での振動を効果的に抑制する。
【0060】
図2は
図1のボーリングバーアセンブリ10の分解斜視図を概略的に表す。ボーリングバーアセンブリ10はさらに、ボーリングバー本体18の空洞56内に設けられた制振質量38の各端部を支持する2つの制振構造36を備える。
【0061】
各制振構造36は平坦な外観の複数の弾力要素40を備える。制振構造36の弾力要素40は薄板構造を構成する。この例では、制振構造36はまた、制振構造36の薄板構造内に金属プレート42を備える。弾力要素40の薄板構造は、剪断運動、すなわち制振構造36の半径方向30への運動を促進する。
【0062】
図1および
図2はさらに、ボーリングバーアセンブリ10が、ウォームねじ46およびウォームホイール48を有するウォームギヤ44、ならびに後述する圧縮プレート50を備えることを示す。
【0063】
厚いゴムリングが圧縮されていた従来技術の解決策では、クリープ変形が発生し剛性が低下する可能性がある。これにより、同調質量ダンパの周波数が工具の周波数と不一致になることをもたらす。
【0064】
本開示による各弾力要素40の平坦な外観ゆえに、弾力要素40内のクリープ変形のリスクは低減される。従って、弾力要素40の剛性は、より良好に維持され得る。その結果、回転可能アセンブリ10の操作は、より高い信頼性を有する。
【0065】
制振構造36の剪断方向(すなわち半径方向30)への剛性は、制振構造36に弾力要素40を追加するか、または制振構造36から弾力要素40を除去することによって調整することができる。制振構造36内の弾力要素40の数が多いと、剪断方向により低い剛性をもたらし、逆もまた同様である。弾力要素40の積層体を備える制振構造36は、アセンブリをより正確にすることを促進し、かつアセンブリをより正確にする。
【0066】
弾力要素40に周波数依存材料を使用する場合、すなわち弾力要素40の弾性率が振動周波数に依存して変化する場合、自己同調効果を実現することができる。すなわち、弾力要素40の振動周波数の変化が弾力要素40の弾性率を変え、それにより制振質量38の共振周波数が変化する。
【0067】
ウォームねじ46を回転させることにより、ウォームホイール48はプラグ部材16の内部を軸線方向に移動して、圧縮プレート50を回転軸線28に沿って押す。ウォームねじ46を反対方向に回転させることにより、ウォームホイール48は回転軸線28に沿って反対方向に(工具ヘッド20が配置されているボーリングバーアセンブリ10の自由端に向かって)移動する。この回転は、ウォームねじ46がプラグ部材16から完全に外れるまで継続することができ、さらに、金属プレート42および/または弾力要素40を制振構造36に追加するか、または制振構造36から取り除くことができる。
【0068】
圧縮力を制振構造36に加えると、圧縮力は本質的に、金属プレート42表面と弾力要素40との間の接触圧力の増加に変換され、弾力要素40の形状の変化には変換されない。制振構造36の剛性の調整(本開示に記載される自己同調に加えて)は、主に弾力要素40の数を変えることによって、かつ2次的には圧縮プレート50から制振構造36上に加わる圧縮予荷重を調整することによって実現される。
【0069】
第2の制振構造36(
図2の右側)上への圧縮予荷重は末端係止部14を用いて調整される。末端係止部14はまた、右側(
図2において)の制振構造36の最も外側の構成要素、例えば金属プレート42の外側輪郭と一致する凹部を含む。
【0070】
この例では、圧縮プレート50は一端に六角形部分を含んで、プラグ部材16に対する回転軸線28の周りの回転係止が確立される。圧縮プレート50とプラグ部材16との間の回転係止を実現するための、他の構造および方法ももちろん可能である。圧縮プレート50は、回転軸線28に沿ってプラグ部材16に対して移動することが可能である。
【0071】
同調質量制振工具の工具部分は、依然として高い利益率を持ちながら販売量が少ないニッチ市場である。従来技術の工具の不利な点のいくつかは、油圧シーリングを必要とする構造の複雑さによる製造コストの高さ、ならびに、正しい調整を見つけることと、機械の作業者に調整過程を習得させる教育をすることを専門家に依頼する場合の個人的なコストである。
【0072】
いくつかの先行技術文献は、質量を支持するゴムまたはエラストマー製の対称形の支持要素について記載している。支持要素を圧縮して、その断面、形状および/または接触面積を変えて、剛性を調整することができる。しかし、工作機械は通常、回転軸線に対して非対称である。従って、ある特定の半径方向に対して同調質量ダンパの共振周波数が正しく同調されても、他の半径方向においては共振周波数を誤って同調する結果となる可能性がある。加えて、工作機械は、非常に不安定な動作条件下で使用される場合が多く、かつ自由条件下で測定したときに、測定したモード周波数の±20%の範囲内の周波数で振動する可能性がある。振動周波数が絶えず変化しているので、それが同調質量ダンパによる解決策が回転工具にあまり使われない1つの理由である。
【0073】
従来技術の同調質量ダンパは通常、最も弾性的なモード(すなわち、第1振動モード)の振動を減衰させるように調整されている。
【0074】
従って、より高い振動モードは通常、最も顕著な問題となり、それによって高周波数振動(例えば、>1000Hz)および高加速振動ゆえに、切削インサートの工具寿命が実質的に制限される。
【0075】
図3aは、
図1のセクションA−Aに沿ったボーリングバーアセンブリ10の側断面図を概略的に表し、
図3bは、
図1のセクションB−Bに沿ったボーリングバーアセンブリ10の側断面図を概略的に表す。
【0076】
図3aで分かるように、制振質量38とボーリングバー本体18との間に間隙が形成されている。冷却チャネル52が制振質量38内に設けられる。冷却チャネル52は、末端係止部14内の冷却チャネル54と空洞56との間に、および圧縮プレート50内の冷却チャネル58と空洞56との間に、流体連通を確立する。圧縮プレート50内の冷却チャネル58は、プラグ部材16内の冷却チャネル60と流体連通しており、冷却チャネル60から冷却剤をカッタ26に導いて冷却することができる。
【0077】
末端係止部14の冷却チャネル54、制振質量38内の冷却チャネル52、圧縮プレート50内の冷却チャネル58、およびプラグ部材16内の冷却チャネル60は、冷却剤を工具ヘッド20に供給する冷却剤供給構造62を構成している。この例では、制振質量38の冷却チャネル52は約45°に傾斜しており、制振質量38の対応する端部に配置されている。
【0078】
制振質量38とボーリングバー本体18との間の間隙内に冷却剤が導かれるゆえに、冷却剤は、工具ヘッド20(および/または弾力要素40)を冷却するために使用し、かつボーリングバー本体18および制振質量38の振動を減衰させる粘性流体として機能させることができる。空洞56内の冷却剤圧力は約6バール、または6バール未満であってもよい。
【0079】
さらに、冷却剤供給構造62内の冷却剤の流れを制御することによって、弾力要素40の温度を制御することができる。弾力要素40が、温度依存弾性率を有する材料を含む場合、冷却剤温度を変動させることにより、同調質量ダンパ(制振構造36および制振質量38)の共振周波数を制御して、回転可能ボーリングバー10の振動周波数と一致させることもできる。
【0080】
冷却剤供給構造62の構成をさらに、
図4aから
図5cに示す。
図4aは、
図1のボーリングバーアセンブリ10の部分的な側断面図を概略的に表す。
図4bは、
図1のボーリングバーアセンブリ10の部分的な側面図を概略的に表す。
図5aは、
図1のボーリングバーアセンブリ10の部分的な断面図を概略的に表す。
図5bは、
図1のボーリングバーアセンブリ10の部分的な断面図を概略的に表す。
図5cは、
図1のボーリングバーアセンブリ10の部分的な断面図を概略的に表す。
【0081】
図6aは、制振構造36の正面図を概略的に表し、
図6bは、
図6aの制振構造36の側面図を概略的に表し、
図6cは、
図6aおよび
図6bの制振構造36の分解斜視図を概略的に表す。
【0082】
図6aから
図5cの例では、制振構造36は、4つの円形弾力要素40の積層体、および積層体として構成された3つの中間円形金属プレート42によって構成されていることが分かる。2つの保持リング64を
図6cに示し、それを使用して弾力要素40と金属プレート42を一緒にまとめてもよい。
図6aから
図6cによる制振構造36を、回転軸線28に関して対称形のボーリングバーアセンブリ10と共に使用することができる。
【0083】
しかし、多くの回転構造は通常、回転軸線の周りに非対称であり、それにより様々な半径方向にわたって様々な第1モード振動周波数がもたらされる。例えば、工作機械は、工作機械の回転軸線に垂直な平面内の方向に依存して、種々の第1モード振動周波数を有する。非対称の工作機械が、強力に圧縮されたエラストマーまたはゴム片を使用することによって制振される従来技術の解決法では、同調質量ダンパの半径方向の共振周波数は同じである。従って、同調質量ダンパは一方向に対してのみ最適化され、他の方向には最適化されていない。その結果、同調質量ダンパは工作機械の振動を打ち消す代わりに、工作機械に振動を加え得る。
【0084】
図7は、ボーリングバーアセンブリ10の半径方向30における、すなわちボーリングバーアセンブリ10の回転軸線28に垂直な平面内における、振動モード周波数の変動の一例を示すダイアグラムである。
図7の実施例では、下向きの半径方向30に対して30度の方向において、ボーリングバーアセンブリ10の振動周波数は480Hzであり、一方、ボーリングバーアセンブリ10の最大振動周波数は520Hzに近いことが分かる。
【0085】
円形の制振構造(
図6aから
図6cに示すような)では、制振質量の共振周波数は全ての半径方向において同じである。従って、そのような制振構造は、非対称な工作機械の振動を、いくつかの半径方向において相殺するだけである。他の半径方向では、制振構造の制振は劣り、工作機械に振動を加えることさえある。しかし、工作機械がその回転軸線に対して対称形である場合、対称形の制振構造を使用することができる。
【0086】
図8aは、制振質量38、および弾力要素40を備える2つの制振構造36の斜視図を概略的に表す。
図8bは、
図8aの制振質量38の正面図を概略的に表す。
【0087】
図8aおよび
図8bでは、各制振構造36は楕円形の弾力要素40の積層体を備える。この制振構造36では、制振質量38の共振周波数は様々な半径方向30で変化する。それによって、非対称な回転可能アセンブリ10(回転軸線28に対して非対称な)の振動をキャンセルすることができる。
【0088】
図8aおよび
図8bの楕円形状は、半径方向30に変化する広がりを有する形状の単なる一例である。代替の形状は、例えば三角形および長方形の形状を含む。
【0089】
図9aは、圧縮プレート50および金属プレート42の正面図を概略的に表す。
図9bは、
図9aの圧縮プレート50および金属プレート42の断面図を概略的に表す。
図9cは、
図9aおよび
図9bの圧縮プレート50および金属プレート42の背面図を概略的に表す。
【0090】
図9aから
図9cにおいて、圧縮プレート50が、六角形部分とは反対側の端部に楕円形の凹部を備えることが分かる。楕円形の凹部は、制振構造36の最も外側の楕円形の金属プレート42を収容するように構成されている。
【0091】
図10は、ウォームギヤ44の斜視図を概略的に表す。ウォームギヤ44は、潤滑剤の有無にかかわらず、接触面の間の摩擦係数よりも小さい接線方向の値を有する進み角を有する歯車を利用することができる。ウォームギヤ44は、圧縮予荷重を弾力要素40に与えるための小型の配置を構成する。ウォームギヤ44はまた、高いトルク伝達比および自己係止効果を提供する。すなわち、ウォームギヤ44は圧縮予荷重によるずれに抵抗する。制振構造36上への圧縮予荷重とウォームねじ46の回転数との間の対応を示すために、目盛りを設けてもよい。
【0092】
図11は、複数の制振質量38、66および複数の制振構造36、68を交互に配置した斜視図を概略的に表す。
図11の3つの制振質量38、66の各々は固有の重量を有する。錘は、第1振動モードだけでなく、より高い振動モードにおいても回転可能アセンブリ10の振動を相殺するように選択することができる。従って、制振構造36、24と連結された、いくつかの制振質量38、66を使用する場合、ボーリングバーアセンブリ10の制振性能を、より広い周波数帯域にわたって改善することができる。
【0093】
図12は、制振構造において、弾力要素の最も適切な材料および弾力要素の数を選択する方法を示すダイアグラムである。
【0094】
図13は、3M(登録商標)112’粘弾性ポリマーの弾性率を周波数に対して示すグラフである。
【0095】
弾性率と周波数との間の関係は、高次多項式で表すことができる。弾性率と周波数との間の多項式の関係が2より大きく、かつ数学的条件に合致する場合、弾力要素の周波数依存弾性率ゆえに、ボーリングバーアセンブリの振動周波数の増加/減少が、制振構造の剛性の増加/減少によって補償される周波数が存在する。
【0096】
図13のような弾性率と周波数との間の関係を表す一手法は、多項式関数を使用することである:
E(f)=...Df
3+Cf
2+Bf+A
【0097】
推定振動周波数がf
nであり、周波数の推定変動がΔf
nであると仮定すると、制振質量の共振周波数は弾力要素の粘弾性材料の弾性率の平方根に比例し、
【0098】
【数1】
数式(1)
と表すことができる。ここで、
【0099】
【数2】
は、弾力要素の形状と構造によって決定される剛性係数である。mは制振質量の質量である。
【0100】
推定f
nにおいて、制振質量の共振周波数は、
【0103】
【数4】
数式(3)
と推定できる。
【0105】
【数6】
で置換すると、数式(3)は、
【0106】
【数7】
数式(4)
と書き換えることができる。
【0107】
f
nはf
nに比例するように表すことができ、Δf
n=αf
nと書き換えることができ、式は、
【0108】
【数8】
数式(5)
と書くことができる。
【0109】
その時、ボーリングバーアセンブリの周波数変化Δf
nが、制振質量に対して同じ量の周波数変化Δf
mを誘発して2つの周波数を再び一致させる周波数を見つけることは数学的問題である。
【0110】
例えば、推定周波数変化が±5%である場合、数式(5)のf
nの解は、
図13の例の材料を使用して弾力要素を構成すると約4530Hzである。4530Hzでボーリングバーアセンブリの周波数が226Hz(5%)変化すると、例の粘弾性ポリマーはその弾性率を変化させて制振質量の共振周波数を変化させることになり、その時、ボーリングバーアセンブリ10の変化した振動周波数に一致することになる。ボーリングバーアセンブリが他の周波数で振動する可能性が非常に高い場合には、弾力要素を、その自己同調効果に合わせて構成するのに最適な弾性材料を見つけることが推奨される。
【0111】
図14aは、前述のような2つの制振構造36によって支持された制振質量38の変形例の斜視図を概略的に示す。しかし、
図14aでは、制振質量38は、制振構造36によってだけでなく、2つの補助支持構造70によっても支持されている。
図14aから
図14dの変形例では、各補助支持構造70は、弾性材料層72および金属材料層74を備える。
【0112】
弾性材料層72および金属材料層74は半径方向30に交互に配置されている。従って、弾性材料層72および金属材料層74は、制振質量38の回転軸線28と実質的に平行である。
【0113】
図15aは、前述のような2つの制振構造36によって、およびさらに2つの補助支持構造76によって支持された制振質量38のさらなる変形例の斜視図を概略的に示す。
図15aから
図15dでは、補助支持構造76は、弾性材料層78および金属材料層80を備える。
【0114】
弾性材料層78および金属材料層80は、制振質量38の回転軸線28に沿って交互に配置されている。従って、弾性材料層78および金属材料層80は、半径方向30に実質的に平行である。
【0115】
図14aから
図14d、および
図15aから
図15dの両方の変形例において、弾性材料層72、78が制振質量38を本体18から分離している。特に
図14aから
図14dに示す変形例では、この分離は金属材料層74と弾性材料層72との間に小さな不一致を設けることによって達成される。その時、制振質量38は弾性材料層72とのみ物理的に接触している。
【0116】
さらなる変形例では、
図15aおよび
図15dにおける弾性材料層78および金属材料層80の配置は変更してもよい。さらなる変形例では、補助支持構造70、76はリング要素で作製されている。各リング要素は、1層の弾性材料および1層の金属材料を備えてもよい。これらリング要素は、1層の弾性材料および1層の金属材料を有してもよい。これらリング要素は、種々の内径および外径を有することができ、制振質量38を支持する積層体を形成するように組み立てることができる。曲げ以外の振動モード形状が優位を占める場合、これらアセンブリは特に有益である。本開示を例示的な実施形態を参照して説明してきたが、本発明は上述したものに限定されないことが理解されよう。例えば、部品の寸法は必要に応じて変えることができることが理解されよう。従って、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定され得ることを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2018年9月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線(28)の周りに回転させる回転可能支持体に固定されるように適合された1つの端部(12)を有する回転可能アセンブリ(10)であって、
該回転可能アセンブリ(10)は、
空洞(56)を有する本体(18)と、
前記空洞(56)の内部に配置され、前記本体(18)に対して、前記回転軸線(28)に実質的に垂直な半径方向(30)に移動可能な制振質量(38)と、
該制振質量(38)を前記本体(18)に対して支持するように配置され、前記制振質量(38)の振動移動を、前記本体(18)に対して前記半径方向(30)に減衰させるように配置された、制振構造(36)と、を備え、
該制振構造(36)は複数の弾力要素(40)を備え、
各弾力要素(40)は平坦な外観を有し、
前記弾力要素(40)は周波数依存弾性率を有する材料を含み、
前記回転可能アセンブリ(10)は、該回転可能アセンブリ(10)の推定周波数が4530Hzから±5%変化すると、前記弾力要素(40)の前記弾性率が変化して前記回転可能アセンブリ(10)の変化した振動周波数に一致するよう構成されている、回転可能アセンブリ(10)。
【請求項2】
各弾力要素(40)の半径方向(30)の幅は、前記弾力要素(40)の前記回転軸線(28)に沿う厚さの少なくとも30倍、好ましくは少なくとも50倍、例えば少なくとも100倍である、請求項1に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項3】
前記複数の弾力要素(40)のうちの1つまたは複数は前記半径方向(30)に変化する広がりを有する、請求項1または2に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項4】
前記複数の弾力要素(40)のうちの前記1つまたは複数は、前記回転軸線(28)に沿って見たとき、楕円形、三角形、または多角形の外観を有する、請求項3に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項5】
前記制振構造(36)は様々な半径方向(30)に様々な剛性を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項6】
前記弾力要素(40)は粘弾性材料を含むか、または粘弾性材料からなり、前記制振質量(38)の前記共振周波数は弾力要素(40)の粘弾性材料の弾性率の平方根に比例する、請求項1から5のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項7】
前記制振質量(38)の前記共振周波数は、
【数1】
と表すことができる、請求項1から6のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。ここで、
【数2】
は、弾力要素(40)の形状と構造によって決定される剛性係数であり、mは制振質量(38)の質量であり、Eは弾力要素(40)の弾性率であり、fは回転可能アセンブリ(10)の振動周波数である。
【請求項8】
前記回転可能アセンブリ(10)は、前記制振構造(36)の前記半径方向(30)の剛性を、それぞれ減少または増加させるために、少なくとも1つの弾力要素(40)を前記制振構造(36)に追加または前記制振構造(36)から除去することができるように構成された、請求項1から7のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項9】
前記制振構造(36)は複数の金属プレート(42)を備え、該金属プレート(42)および前記弾力要素(40)は交互に配置された、請求項1から8のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項10】
前記制振質量(38)と前記本体(18)とを分離するように配置された少なくとも1つの補助支持構造(70、76)をさらに備え、各補助支持構造(70、76)は、前記回転軸線(28)に沿ってまたは前記半径方向(30)に交互に配置された弾性材料層(72、78)および金属材料層(74、80)を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項11】
前記制振構造(36)を前記回転軸線(28)に沿って圧縮および圧縮解除するように配置されたクランプ機構をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項12】
クランプ機構はウォームギヤ(44)を備える、請求項11に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項13】
前記制振質量(38)に加えて、少なくとも1つの追加の制振質量(66)をさらに備え、各制振質量(38、66)は固有の重量を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項14】
前記制振構造(36)に加えて、少なくとも1つの追加の制振構造(68)をさらに備え、前記制振質量(38、66)および前記制振構造(68)は交互に配置された、請求項13に記載の回転可能アセンブリ(10)。
【請求項15】
前記回転可能アセンブリ(10)はマシニングバーアセンブリであり、前記本体(18)はマシニングバー本体である、請求項1から14のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【国際調査報告】