特表2019-531446(P2019-531446A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-531446タンクに加圧ガスを充填するための方法および装置
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  • 特表2019531446-タンクに加圧ガスを充填するための方法および装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-531446(P2019-531446A)
(43)【公表日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】タンクに加圧ガスを充填するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20191004BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20191004BHJP
【FI】
   F17C5/06
   F17C13/00 301Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-520051(P2019-520051)
(86)(22)【出願日】2017年10月16日
(85)【翻訳文提出日】2019年4月12日
(86)【国際出願番号】FR2017052835
(87)【国際公開番号】WO2018073520
(87)【国際公開日】20180426
(31)【優先権主張番号】1660131
(32)【優先日】2016年10月19日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ブルジョワ
(72)【発明者】
【氏名】フアド・アモウリ
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC04
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA12
3E172EA14
3E172JA08
3E172KA02
3E172KA11
(57)【要約】
少なくとも1つの弁(4)を設けられた移送管(3)を介して少なくとも1つの加圧ガス供給源(2)から加圧ガスをタンク(1)に目標圧力まで充填するための方法であって、タンク(1)は、所定の内側長さ(L)および所定の内径(D)を有し、移送管(3)の端部は、所定の注入直径(D1)を有する注入器(5)を形成し、前記方法は、加圧ガスを供給源(2)からタンクに所定の流量(Q)で移送するステップを含み、方法は、タンク(1)内で生じる熱を低減するように供給源(2)からタンク(1)へのガスの移送を制御するステップを含み、ガスの移送を制御するステップは、注入直径(D1)の大きさ調整および移送ガスの流量(Q)の大きさ調整の少なくとも1つを含み、制御ステップは、タンクの長さ(L)と直径(D)との間の比L/Dに応じて行われる、方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの弁(4)を設けられた移送管(3)を介してタンク(1)に接続された少なくとも1つの加圧ガス供給源(2)から加圧ガスを前記タンク(1)に目標圧力まで充填する方法であって、前記タンク(1)は、所定の内側長さ(L)および所定の内径(D)の円筒形の形状を有し、前記移送管(3)の端部は、前記タンクに接続され、所定の注入直径(D1)で前記タンクに開口する注入器(5)を形成し、前記方法は、前記加圧ガスを前記供給源(2)から前記タンクに所定の流量(Q)で移送するステップを含み、前記方法は、前記タンク(1)内で生じる熱を低減するように前記供給源(2)から前記タンク(1)へのガスの移送を調節または大きさ調整するステップを含む、方法において、前記ガス移送を調節/大きさ調整する前記ステップは、前記注入直径(D1)の大きさ調整、移送ガスの前記流量(Q)の大きさ調整のうちの少なくとも1つを含み、前記ガス移送を調節/大きさ調整する前記ステップは、前記タンクの前記長さ(L)と前記直径(D)との間の比L/Dに応じて行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記タンクの前記比L/Dを決定または計算するステップと、前記比L/Dを第1の所定の閾値(S1)と比較するステップとを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比(L/D)と前記第1の閾値(S1)との間の前記比較に応じて前記流量Qおよび/または前記注入直径(D1)を制御または大きさ調整することを含む、比(Q/D1)を調節するステップを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンクの前記長さ(L)と前記直径(D)との間の前記比L/Dが、好ましくは2〜4であり、好ましくは3に等しい前記第1の所定の閾値(S1)未満である場合、前記調節/大きさ調整ステップは、前記移送ガスの前記質量流量(Q)と前記注入直径(D1)の二乗との間の比(Q/D1)を第2の所定の閾値(S2)より上に維持することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記比(Q/D1)を第2の所定の閾値(S2)より上に維持することを含む前記調節/大きさ調整ステップは、移送ガスの前記流量(Q)の増加、前記注入直径(D1)の低減のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記ガスの移送を調節/大きさ調整する前記ステップは、前記タンク(1)の前記充填目標圧力に応じて実行されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の所定の閾値(S2)は、前記タンク(1)の前記充填目標圧力の関数であることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の閾値(S2)は、前記タンク(1)の前記充填目標圧力が増加すると増加することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガスは、水素であり、および前記タンク(1)の前記充填目標圧力が700〜900バールである場合、前記第2の閾値(S2)は、175〜225kg.m−2.s−1であり、好ましくは200kg.m−2.s−1に等しいことを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記タンクの前記長さ(L)と前記直径(D)との間の前記比(L/D)が前記第1の所定の閾値(S1)より大きい場合、前記調節/大きさ調整ステップは、前記比(Q/D1)を前記第2の所定の閾値(S2)より上および第3の所定の閾値(S3)より下に維持することを含むことを特徴とする、請求項5〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記比(Q/D1)を第2の所定の閾値(S2)より上および前記第3の所定の閾値(S3)より下に維持することを含む前記調節ステップは、移送ガスの前記流量(Q)の増加または減少、前記注入直径(D1)の増加または減少のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記タンク(1)の前記充填目標圧力が700〜900バールである場合、前記第3の閾値(S3)は、1200〜1600kg.m−2.s−1であり、好ましくは1400kg.m−2.s−1に等しいことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
タンク(1)に加圧ガスを目標圧力まで充填するための装置であって、加圧ガス供給源(2)と、少なくとも1つの弁(4)を設けられかつ前記タンク(1)に接続されるように意図される、前記供給源から前記ガスを移送するための管(3)であって、前記移送管(3)の端部は、前記タンクに接続され、所定の注入直径(D1)を有する注入器(5)を形成するように意図される、管(3)とを含み、前記少なくとも1つの弁(4)を制御する役割を果たす、前記充填を制御するための電子部材(6)を含み、前記電子制御部材(6)は、データを受信し、記憶し、かつ処理するように構成され、および特に充填される前記タンク(1)の寸法特性、すなわち前記タンクの長さ(L)および直径(D)またはそれらの間の比L/Dを受信または計算するように構成され、前記電子制御部材(6)は、前記比L/Dを少なくとも1つの閾値(S1)と比較し、かつそれに応じて前記注入直径(D1)、移送ガスの流量(Q)のうちの少なくとも1つの充填パラメータを前記比に応じて修正するか、または修正する必要性を信号で伝えるようにも構成される、装置。
【請求項14】
前記電子制御部材(6)は、前記注入されるガスの前記質量流量Qと前記注入直径D1の二乗との間の比Q/D1を第2の所定の閾値(S2)より上におよび/または所定の範囲(S2〜S3)に維持するために、前記流量Qおよび/または前記注入直径を確立または修正するように構成されることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに加圧ガスを充填するための方法および装置に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、少なくとも1つの弁を設けられた移送管を介してタンクに接続された少なくとも1つの加圧ガス供給源から加圧ガスをタンクに目標圧力まで充填するための方法であって、タンクは、所定の内側長さおよび所定の内径の円筒形の形状を有し、移送管の端部は、タンクに接続され、所定の注入直径でタンクに開口する注入器を形成し、方法は、加圧ガスを供給源からタンクに所定の流量で移送するステップを含み、方法は、タンク内で生じる熱を低減するように供給源からタンクへのガスの移送を調節するステップを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
加圧ガス、特に水素をタンクに急速に充填するとガスおよびタンクが加熱される。この加熱は、タンクを損傷しないように制御しなければならない(特に複合タンクの場合)。
【0004】
既知の解決策は、移送されるガスを冷却すること(例えば、米国特許第5,641,005号明細書を参照されたい)または充填流量を制御すること(例えば、仏国特許出願公開第2896028A1号明細書を参照されたい)を含む。例えば、充填条件に適合された充填速度の傾斜(例えば、周囲温度および目標圧力に応じた充填速度)を提供することが特に知られている。
【0005】
充填中のタンク内の加熱は、モデル化することが複雑な現象である(例えば、K.Barral、S.PregassameおよびP.Renaultによる論文、「Thermal effects of fast filling hydrogen compression in refueling stations」、第15回世界水素エネルギー会議、日本国横浜、2004年6月の議事録を参照されたい)。
【0006】
したがって、ガスおよびタンクの温度は、タンク内で非常に不均質であり得る。本発明者らは、タンクのいくつかの領域が、計算または測定されるタンクまたはガスの平均温度をはるかに上回る温度を有し得ることを特に実証した。
【0007】
この問題を解決するための既知の解決策は、流量と、したがって圧力の傾斜とを減らし、ガスの平均温度を下げることを含む。しかしながら、これは、充填時間を延ばし、かつ特定の場所における熱ピークを必ずしも排除しない。具体的には、特定の状況では、これは、加熱を増加させることさえある。すなわち、流量を低下させることにより、不均一性が高められ、したがってガスの最高温度が引き上げられ得る。
【0008】
別の解決策は、ガスの冷却を高めてガスの平均温度を下げることを含む。これは、設備のコストおよび提供されるガス(例えば、水素)のコストを著しく増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、上記の従来技術の欠点の全部または一部を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明に従い、他に上記の前提部で与えられた一般的定義に準拠する方法は、ガス移送を調節するステップが注入直径の大きさ調整、移送ガスの流量の大きさ調整のうちの少なくとも1つを含み、調節ステップがタンクの長さと直径との間の比L/Dに応じて行われることを本質的に特徴とする。
【0011】
したがって、本発明によれば、このガス移送の調節は、タンクの幾何学的形状に応じて適合され、タンク内の温度不均一性を低下することを可能にする。この不均一性を低下することにより、ガスまたはタンクによって達成される最高温度もそれに応じて低下される。
【0012】
本発明者らは、これにより、タンク内のガス温度の層状化および不均一性の現象を制限することが可能になることを特に見出した。
【0013】
これにより、向上した安全条件下でタンクを充填することが可能になる。これにより、タンク内のガスの最終温度を制御する他の手段を最適化することが潜在的に可能になり得る(例えば、ガスの冷却の減少など)。
【0014】
特に、本発明による方法は、場合により、温度(ガスの冷却、圧力上昇曲線等)を制御する他の手段に加えて適用され得る。
【0015】
さらに、本発明の実施形態は、以下の特徴の1つまたは複数を含むことができる:
− タンクの長さと直径との間の比L/Dが、2〜4であり、好ましくは3に等しい第1の所定の閾値未満である場合、調節ステップは、移送ガスの質量流量と注入直径の二乗との間の比(Q/D1)を第2の所定の閾値より上に維持することを含み、
− 比Q/D1を第2の所定の閾値より上に維持することを含む調節ステップは、移送ガスの流量の増加、注入直径の低減のうちの少なくとも1つを含み、
− ガス移送の調節ステップは、タンクの充填目標圧力に応じて実行され、
− 第2の所定の閾値は、タンクの充填目標圧力の関数であり、
− 第2の閾値は、タンクの充填目標圧力が増加すると増加し、
− ガスは、水素であり、およびタンクの充填目標圧力が700〜900バールである場合、第2の閾値は、175〜225kg.m−2.s−1であり、好ましくは200kg.m−2.s−1に等しく、
− タンクの長さと直径との間の比L/Dが第1の所定の閾値より大きい場合、調節ステップは、比Q/D1を第2の所定の閾値より上および第3の所定の閾値より下に維持することを含み、
− 比Q/D1を第2の所定の閾値より上および第3の所定の閾値より下に維持することを含む調節ステップは、移送ガスの流量の増加または減少、注入直径の増加または減少のうちの少なくとも1つを含み、
− タンクの充填目標圧力が700〜900バールである場合、第3の閾値は、1200〜1600kg.m−2.s−1であり、好ましくは1400kg.m−2.s−1に等しく、
− タンクの充填目標圧力が700〜900バールである場合、第3の閾値は、1200〜1600kg.m−2.s−1であり、好ましくは1400kg.m−2.s−1に等しく、
− ガス移送を調節するステップは、ガス移送の開始前または開始時に行われ、すなわち、注入直径の大きさ調整および/または移送ガスの流量の大きさ調整は、充填の開始前に固定され、
− ガスが水素であり、およびタンクの充填目標圧力が200〜300バールである場合、第2の閾値は、75〜100kg.m−2.s−1であり、好ましくは85kg.m−2.s−1に等しく、
− ガスが水素であり、およびタンクの充填目標圧力が300〜400バールである場合、第2の閾値は、100〜140kg.m−2.s−1であり、好ましくは120kg.m−2.s−1に等しく、
− ガスが水素であり、およびタンクの充填目標圧力が450〜600バールである場合、第2の閾値は、140〜175kg.m−2.s−1であり、好ましくは160kg.m−2.s−1に等しく、
− タンクは、注入器を介してその内側にガスを移送する間、水平に配置される。
【0016】
本発明は、タンクに加圧ガスを目標圧力まで充填するための装置であって、加圧ガス供給源と、少なくとも1つの弁を設けられかつタンクに接続されるように意図される、供給源からガスを移送するための管であって、移送管の端部は、タンクに接続され、所定の注入直径を有する注入器を形成するように意図される、管とを含み、少なくとも1つの弁を制御する役割を果たす、充填を制御するための電子部材を含み、電子制御部材は、データを受信し、記憶し、かつ処理するように構成され、および特に充填されるタンクの寸法特性、すなわちタンクの内側長さおよび内径またはそれらの間の比L/Dを受信するように構成され、電子制御部材は、比L/Dを少なくとも1つの閾値と比較し、かつそれに応じて注入直径、移送ガスの流量のうちの少なくとも1つの充填パラメータをその比に応じて修正するか、または修正する必要性を信号で伝えるようにも構成される、装置にも関する。
【0017】
本発明は、上記または下記の特徴の任意の組み合わせを含むいずれの代替の装置または方法にも関連し得る。
【0018】
さらなる特定の特徴および利点は、図面を参照する以下の記載を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による充填装置の構造および動作の例を示す概略部分側面図を示す。
図2】そのような充填方法の動作の例を概略的かつ部分的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、タンク1への加圧ガスの充填は、加圧ガス供給源2と、供給源2に接続され、かつ少なくとも1つの流量制御弁4を設けられたガス移送管3とを含む充填装置(またはステーション)によって実施できる。移送管3は、充填されるタンク1に接続されるように意図された少なくとも1つの端部を含む。
【0021】
従来、加圧ガス供給源2は、1つまたは複数の加圧ガスタンク、少なくとも1つの圧縮機、液化ガス供給源および気化器等のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0022】
タンク1に接続されるように意図された移送管3の端部は、所定の注入直径D1を有する注入器5を形成するかまたはそれを含む。装置は、充填装置の少なくとも1つの弁4および/または他の部材を制御する役割を果たす、充填を制御するための電子部材6をさらに含むことが好ましい。
【0023】
装置は、目標圧力、例えば250バール、または350バール、または500バール、または700バール以上、特に800または900バールまでタンク1に加圧ガスを充填するように構成されるかまたは使用される。
【0024】
装置は、特に円筒形タンク1を水平位置で(すなわち、それらの長手方向に沿って横たわった状態で)好ましくは充填するように意図される。
【0025】
タンク1は、所定の内側長さLおよび所定の内径Dの円筒形の形状を有する。
【0026】
移送管3の端部は、タンク1の長手方向端部に配置されたオリフィスに接続される。
【0027】
本発明によれば、供給源2およびタンク1の内部からの加圧ガスの移送は、所定の流量Q(特に質量流量)で行われる。
【0028】
本発明によれば、供給源2からタンク1へのガスの移送は、タンク1内で生じる加熱を減少させるように適合される。このガス移送の適合は、注入直径D1の大きさ調整、移送されるガスの流量Qの大きさ調整のうちの少なくとも1つを含み、およびこの修正は、タンク1の長さLと直径Dとの間の比L/Dに応じて行われる。
【0029】
したがって、比L/Dは、タンク1の2つのタイプ、例えばいわゆる「短い」タンク(第1の閾値S1未満のL/D)と、いわゆる「長い」タンク(第1の閾値S1より大きいL/D)とを区切ることができる。
【0030】
具体的には、本発明者らは、この幾何学的基準に従ってタンク1内のガスの温度不均一性を良好に低減するために、すなわち充填中の過度なホットポイントを低減するために、注入直径D1または移送ガスの流量Qを適合させることが可能であることを確認した。
【0031】
したがって、タンク1の長さLと直径Dとの間の比L/Dが、2〜4であり、好ましくは3に等しい第1の所定の閾値S1未満である場合(図2の参照番号11を参照されたい)、調節ステップは、好ましくは、移送ガスの質量流量Qと注入直径D1の二乗との間の比Q/D1を所定の第2の閾値S2より上に維持することを含む(図2の参考番号11を参照されたい)。この比Q/D1が第2の閾値S2より大きい場合、過熱の危険なしに充填Fを達成することができる(図2の参照番号12を参照されたい)。
【0032】
具体的には、比Q/D1=ρ.π.V/4であり、ここで、ρは、ガスの密度であり、Vは、注入器におけるガスの平均速度であり、πは、3.14159に等しい定数円周率である。
【0033】
ρは、その温度およびその圧力の関数としてガスごとに作表されている。換言すれば、所与の温度および圧力に関して、ガスの密度は、その性質に依存する。したがって、比Q/D1は、ガスの性質にも依存する。
【0034】
限界値S2は、充填終了条件下で5m/sに等しい速度値Vで計算され、限界値S3は、充填開始条件に対して100m/sの速度値で計算される。
【0035】
閾値S2およびS3は、タンク1の充填目標圧力に依存する(またはその関数である)ことが好ましく、またガスの性質にも依存することが好ましい。
【0036】
例えば水素を充填する場合、
− タンク1の充填目標圧力が200〜300バールである場合、第2の閾値S2は、75〜100kg.m−2.s−1であり、好ましくは85kg.m−2.s−1に等しく、
− タンク1の充填目標圧力が300〜400バールである場合、第2の閾値S2は、100〜140kg.m−2.s−1であり、好ましくは120kg.m−2.s−1に等しく、
− タンク1の充填目標圧力が450〜600バールである場合、第2の閾値S2は、140〜175kg.m−2.s−1であり、好ましくは160kg.m−2.s−1に等しく、
− タンク1の充填目標圧力が700〜900バールである場合、第2の閾値(S2)は、175〜225kg.m−2.s−1であり、好ましくは200kg.m−2.s−1に等しい。
【0037】
比Q/D1を第2の所定の閾値S2より上に維持することは、注入直径D1を適合させること(例えば、低減すること)により、および/または充填質量流量Qを適合させること(例えば、増大すること)により容易に達成可能である(図2の参照番号13を参照されたい)。これらの動作条件は、特に所定の圧力で充填されなければならないタンク1の幾何学的形状を考慮して充填前に固定され得、または充填前もしくは充填中に修正され得る。
【0038】
すなわち、タンク1の(既知の)形状および場合により目標圧力に応じて、注入直径D1および/または充填の傾斜(質量流量)は、上記の推奨を満たすように適合される(図2の参照番号13を参照されたい)。
【0039】
注入器5がタンク1の内部を距離L1にわたって貫通している場合、L/D<S1という表現は、好ましくは、注入ガスの実際の進行長さを考慮するために(L−L1)/D<S1として修正されることに留意されたい。
【0040】
第1の閾値S1が3に等しい場合、短いタンクについて(L−L1)<3Dが得られ、長いタンクについて(L−L1)>3Dが得られる(図1を参照されたい)。
【0041】
これらの短いタンクについて、本発明者らは、例えば、注入されたガス噴射が(使用される注入器のガス噴射の従来通りの角度および形状のため)タンクの壁に横方向に衝突しないため、水平方向の温度不均一性がほとんどまたは全くないことを実証した。
【0042】
一方、本発明者らは、この幾何学的構成において、タンク1内で乱流混合レジームまたは垂直層状レジームのいずれかが確立されることを見出した。乱流レジームでは、温度は、比較的非常に均一である(直径6mmの注入器の場合、内壁の平均温度と最高温度との間で3.5℃未満、または10mmの注入器直径の場合、5.5℃未満)。一方、垂直層状レジームでは、例えば最大25℃の範囲の温度勾配を観察することができる。
【0043】
本発明者らは、比Q/D1を第2の閾値S2より上に維持するための注入直径および/または流量の修正が垂直層化レジームを確立するリスクを最小限に抑えることを可能にすることを実証した。すなわち、この推奨によれば、温度の不均一性を最小限に抑える乱流混合レジームが確立される。これは、加熱を制限するために充填流量を減少させることを対照的に奨励した従来技術の推奨に反する。
【0044】
L/D比が第1の閾値S1より大きい場合、調節ステップは、好ましくは、比Q/D1を第2の所定の閾値S2より上および第3の所定の閾値S3より下に維持することを含む(図2の参照番号14を参照されたい)。
【0045】
前述のように、調節ステップは、移送されるガスの流量Qの増加または減少、注入直径D1の増加または減少のうちの少なくとも1つを含むことができる(図2の参照番号15を参照されたい)。この推奨が満たされると、過熱の危険性なしに充填Fを実行することができる(図2の参照番号16を参照されたい)。
【0046】
本発明者らは、上記の調節により、充填中に長いタンク内の気体レジームを制御することが可能になることを実証した。特に、本発明によれば、垂直方向および水平方向の層状レジームが減少する。すなわち、この調節を介して長いタンクの温度の不均一性が同様に低減する。
【0047】
したがって、長いタンクL/D>S1または(L−L1)/D>S1の場合、充填中の温度不均一性を低減することを可能にする比Q/D1範囲を定義することが可能である。
【0048】
前述のように、第3の所定の閾値S3は、好ましくは、タンク1の充填目標圧力に依存し(またはその関数であり)、好ましくはガスの性質にも依存する。
【0049】
例えば、水素を充填する場合、
− タンク1の充填目標圧力が200〜300バールである場合、第3の閾値S3は、600〜800kg.m−2.s−1であり、好ましくは715kg.m−2.s−1に等しく、
− タンク1の充填目標圧力が300〜400バールである場合、第3の閾値S3は、800〜1000kg.m−2.s−1であり、好ましくは900kg.m−2.s−1に等しく、
− タンク1の充填目標圧力が450〜600バールである場合、第3の閾値S3は、1000〜1300kg.m−2.s−1であり、好ましくは1150kg.m−2.s−1に等しく、
− タンク1の充填目標圧力が700〜900バールである場合、第3の閾値S3は、1300〜1500kg.m−2.s−1であり、好ましくは1400kg.m−2.s−1に等しい。
【0050】
したがって、好ましい実施形態では、タンクの充填が意図される場合、タンクの幾何学的形状(短いまたは長い)および充填目標圧力に応じて、比Q/D1は、上で定義された閾値より上(および場合によりS3について下)に維持される。これは、注入直径を予め決定することにより、および/または充填質量流量を適合させることにより達成される。これは、充填中のガスおよびタンクの温度の不均一性を低減することによって加熱の問題を軽減する。
【0051】
これらの動作条件に従うための計算は、比較的簡単であり、かつ充填ステーションの動作条件を事前に決定または適合させるために計算機またはコンピュータによって容易に実行することができる。
【0052】
例えば、0.01mの注入器直径および0.004kg/秒の流速質量を最初に備えた30リットルの容積を有する短いタンク(L−Li)/D<3に700バールで水素を充填する場合、比Q/D1の計算は、40kg.m−2.s−1の結果を与える。
【0053】
これは、少なくとも約200kg.m−2.s−1(またはさらには197kg.m−2.s−1)の推奨値より少ない。層状現象(ホットポイント)を回避または制限するために2つの方法が可能である。第1の方法によれば、注入直径D1を0.003mに減少させることが可能であり、したがって、これにより444kg.m−2.s−1に等しい比Q/D1を得ることが可能になる。第2の方法は、例えば、質量流量を最大0.4kg.s−1まで増大させることを含み得る。比Q/D1は、その後、400kg.m−2.s−1に変化する。この流量Qの増大は、不均一性を低下させるが、平均温度の上昇をもたらす可能性がある。この欠点を回避するために、上記の2つの方法を調整して組み合わせることができ(直径のより小さい増加および流量のより小さい増加)、例えば注入直径D1=0.005mおよび0.1kg.s−1に等しい流量Qである。これにより、400kg.m−2.s−1の比を達成することが可能になる。
【0054】
上記の例に関連する充填条件は、以下の通りであり得る:350バールで充填する場合には0℃のガス温度、500または700バールで充填する場合には−20℃、−40℃のガス温度。最終的な充填速度は、少なくとも5m/sであり得る。
【0055】
例えば、ステーションの一部を形成するかまたは前記ステーションから離れている、データを取得および処理するための電子記憶部材6が使用され得る。この電子部材6は、適切な場合、ステーションの少なくとも1つの要素、例えば移送管の少なくとも1つの弁4を制御する役割を果たし得る(例えば、移送される流量を調節するため)。
【0056】
本発明は、(水平円筒部分を生じる)充填中に水平に配置されたタンク1を充填するように特に適合される。さらに、本発明は、例えば、1.4〜6.6のL/D比を有するタンクを充填するように特に適合される。さらに、これらの対策は、3〜25mmの直径を有する注入器に特に良好に適用され得る。当然のことながら、必要に応じてより少ない利点を有するかまたは小さい適応(閾値等)を必要とする充填部分の他の幾何学的形状または構成(垂直のもの、異なるサイズ)も可能である。
【0057】
「ガス移送の調節」は、特に充填条件(特にD1および/またはQ)の(例えば、動的な)制御または所定の大きさ調整を意味する。
図1
図2
【国際調査報告】