特表2019-531807(P2019-531807A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オーリス ヘルス インコーポレイテッドの特許一覧

特表2019-531807プルワイヤを用いた内視鏡の自動較正
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-531807(P2019-531807A)
(43)【公表日】2019年11月7日
(54)【発明の名称】プルワイヤを用いた内視鏡の自動較正
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20191011BHJP
   A61B 1/005 20060101ALI20191011BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20191011BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20191011BHJP
【FI】
   A61B1/00 630
   A61B1/005 523
   A61B1/005 524
   A61B1/00 552
   A61B1/00 655
   G02B23/24 A
   G02B23/24 B
   A61B34/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2019-517239(P2019-517239)
(86)(22)【出願日】2017年9月28日
(85)【翻訳文提出日】2019年5月28日
(86)【国際出願番号】US2017054127
(87)【国際公開番号】WO2018064394
(87)【国際公開日】20180405
(31)【優先権主張番号】15/282,079
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518083032
【氏名又は名称】オーリス ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレイツェル,シャウンシー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ウマラネーニ,リッティク
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040BA21
2H040BA23
2H040DA19
2H040DA43
2H040DA51
2H040DA54
2H040GA02
4C161BB02
4C161CC06
4C161DD03
4C161FF12
4C161FF25
4C161FF32
4C161FF43
4C161GG13
4C161HH32
4C161HH47
4C161HH55
4C161JJ06
4C161JJ17
(57)【要約】
外科用ロボットシステムは、内視鏡などの管状の柔軟な外科用器具を自動的に較正する。外科用ロボットシステムは、内視鏡の非理想的な動きを補償することによって、内視鏡の動きを正確に具現化し、患者に対して外科的処置を実施しながら内視鏡を操作することができる。較正中、外科用ロボットシステムは内視鏡を目標位置に移動させ、内視鏡の実際の位置および/または向きを表すデータを受け取る。外科用ロボットシステムは、目標位置と実際の位置との間の不一致に少なくとも基づいて、ゲイン値を決定する。内視鏡は、シースおよびリーダと呼ばれる管状部品を含むことができる。外科用ロボットシステムの器具装置マニピュレータは、シースおよび/またはリーダに連結されたプルワイヤを作動させ、それによって内視鏡を関節運動させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゲイン値を決定する方法であって、各ゲイン値は内視鏡に関連する複数のプルワイヤのうちの1つに関連し、前記方法は、
複数の方向のうち各方向について、
外科用ロボットシステムを使用して前記複数のプルワイヤのうちの少なくとも1つを平行移動させることによって、前記内視鏡を静止位置から目標位置まで前記方向に移動させるための第1のコマンドを提供し、
前記第1のコマンドに応答して移動された前記内視鏡の実際の位置を示す前記方向に関する空間データを受け取り、
前記外科用ロボットシステムを使用して前記内視鏡を緩めて前記静止位置に戻すための第2のコマンドを提供することと、
前記複数の方向に関する前記空間データに基づいて、前記複数のプルワイヤのうちの少なくとも1つが1とは異なるゲイン値を有するように前記複数のゲイン値を決定することと、
前記複数のゲイン値を記憶することとを含む方法。
【請求項2】
前記複数の方向は少なくともピッチ方向およびヨー方向を含み、
前記複数のプルワイヤは少なくとも3つのプルワイヤを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内視鏡は、前記内視鏡の遠位端に連結された少なくとも1つの電磁センサ(EMセンサ)を含み、
前記方法は、前記電磁センサに近接して少なくとも1つの電磁場発生器を配置することをさらに含み、
前記空間データを受け取ることは、前記電磁センサにおいて、電磁場の強度が前記電磁センサを含む前記内視鏡の前記遠位端の前記実際の位置の関数である電磁場を検出することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記内視鏡は、前記内視鏡の遠位端に連結された1以上の空間センサを含み、前記1以上の空間センサが、加速度計またはジャイロスコープのうちの少なくとも1つを含み、
前記空間データを受け取ることは、前記1以上の空間センサによって、前記複数の方向のうちの少なくとも1つにおける動きを検出することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記内視鏡に近接して複数のカメラを配置することをさらに含み、前記複数のカメラのうちの第1のカメラが前記内視鏡の長手方向軸と平行であり、前記複数のカメラのうちの第2のカメラが前記第1のカメラと直交し、
前記空間データを受け取ることは、前記複数のカメラによって前記内視鏡の複数の画像フレームを撮像することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記内視鏡は、前記内視鏡の遠位端に連結された複数の基準マーカを含み、
前記方法は、
前記内視鏡に近接して複数の動作追跡カメラを配置することをさらに含み、
前記空間データを受け取ることは、前記複数の動作追跡カメラによって、各基準マーカの複数の画像フレームを撮像することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記内視鏡は、前記内視鏡の内部に埋め込まれた光ファイバを含み、
前記方法は、
前記内視鏡に近接してコンソールを配置することをさらに含み、前記コンソールが、前記光ファイバに連結され、前記光ファイバによって反射された光に基づいて反射スペクトルデータを生成し、
前記空間データを受け取ることは、前記反射スペクトルデータを分析することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記空間データを受け取ることは、
前記内視鏡に近接して透視撮像システムを配置することと、
患者の体内に前記内視鏡の遠位端を挿入することと、
前記透視撮像システムによって前記内視鏡の複数の透視画像を撮像することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記内視鏡は、カメラおよび作業チャネルを含み、前記カメラおよび前記作業チャネルが、前記複数のプルワイヤの各プルワイヤとそれぞれ非同心である、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記内視鏡は、リーダ管状部品を少なくとも部分的に半径方向に囲むシース管状部品を含み、前記シース管状部品が、前記複数のプルワイヤのうちの少なくとも2つのプルワイヤである第1の組を含み、前記リーダ管状部品が、前記複数のプルワイヤのうちの少なくとも2つのプルワイヤである第2の組を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のゲイン値を決定することは、前記シース管状部品に対する前記リーダ管状部品のロール角を受け取ることを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のゲイン値を決定することは、前記シース管状部品によって半径方向に囲まれた前記リーダ管状部品の長さを受け取ることを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記シース管状部品に対する前記リーダ管状部品のロール角および前記シース管状部品によって半径方向に囲まれた前記リーダ管状部品の長さのうちの少なくとも1つを修正するためのコマンドを提供することと、
前記複数の方向のうち各方向について、
前記外科用ロボットシステムを使用して前記複数のプルワイヤのうちの少なくとも1つを平行移動させることによって、前記内視鏡を前記静止位置から前記目標位置まで前記方向に移動させるための第3のコマンドを提供し、
前記第3のコマンドに応答して移動された前記内視鏡の前記実際の位置を示す前記方向に関する新しい空間データを受け取り、
前記外科用ロボットシステムを使用して前記内視鏡を緩めて前記静止位置に戻すための第4のコマンドを提供することと、
前記複数の方向に関する前記新しい空間データに基づいて、前記複数のプルワイヤのうちの少なくとも1つが1とは異なる新しいゲイン値を有するように、複数の新しいゲイン値を決定することと、
前記複数の新しいゲイン値を記憶することとをさらに含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも2つのプルワイヤである前記第1の組は、
ピッチ軸に沿って正方向に前記シース管状部品を移動させる第1のプルワイヤと、
前記ピッチ軸に沿って負方向に前記シース管状部品を移動させる第2のプルワイヤと、
ヨー軸に沿って正方向に前記シース管状部品を移動させる第3のプルワイヤと、
前記ヨー軸に沿って負方向に前記シース管状部品を移動させる第4のプルワイヤとを少なくとも含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも2つのプルワイヤである前記第2の組は、
前記ピッチ軸に沿って前記正方向に前記リーダ管状部品を移動させる第5のプルワイヤと、
前記ピッチ軸に沿って前記負方向に前記リーダ管状部品を移動させる第6のプルワイヤと、
前記ヨー軸に沿って前記正方向に前記リーダ管状部品を移動させる第7のプルワイヤと、
前記ヨー軸に沿って前記負方向に前記リーダ管状部品を移動させる第8のプルワイヤとを少なくとも含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記リーダ管状部品および前記シース管状部品は、それぞれ複数のセグメントを含み、各セグメントがヤング率に関連付けられ、
前記複数のゲイン値を決定することは、前記リーダ管状部品および前記シース管状部品のそれぞれの少なくとも1つのセグメントの前記ヤング率を受け取ることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
シース管状部品に連結された管状部品を含む内視鏡に関連する情報であって、前記シース管状部品に対する前記リーダ管状部品のロール角と、前記シース管状部品によって半径方向に囲まれた前記リーダ管状部品の長さとを示す情報を受け取ることと、
複数の方向のうち各方向について、
外科用ロボットシステムを使用して前記内視鏡の複数のプルワイヤのうちの少なくとも1つを平行移動させることによって、前記内視鏡を静止位置から目標位置まで前記方向に移動させるための第1のコマンドを提供し、
前記第1のコマンドに応答して移動された前記内視鏡の実際の位置を示す空間データを受け取り、
前記外科用ロボットシステムを使用して前記内視鏡を緩めて前記静止位置に戻すための第2のコマンドを提供することと、
前記ロール角と、前記長さと、各方向の前記空間データとに基づいて、各プルワイヤが複数のゲイン値のうちの1つに関連付けられるように、前記複数のゲイン値を決定することと、
前記複数のゲイン値を記憶することとを含む方法。
【請求項18】
前記シース管状部品に対する前記リーダ管状部品の前記ロール角および前記シース管状部品によって半径方向に囲まれた前記リーダ管状部品の前記長さのうちの少なくとも1つを修正するためのコマンドを提供することと、
前記複数の方向のうち各方向について、
前記外科用ロボットシステムを使用して前記複数のプルワイヤのうちの少なくとも1つを平行移動させることによって、前記内視鏡を前記静止位置から前記目標位置まで前記方向に移動させるための第3のコマンドを提供し、
前記第3のコマンドに応答して移動された前記内視鏡の前記実際の位置を示す前記方向に関する新しい空間データを受け取り、
前記外科用ロボットシステムを使用して前記内視鏡を緩めて前記静止位置に戻すための第4のコマンドを提供することと、
前記複数の方向に関する前記新しい空間データに基づいて、前記複数のプルワイヤのうちの少なくとも1つが1とは異なる新しいゲイン値を有するように、複数の新しいゲイン値を決定することと、
前記複数の新しいゲイン値を記憶することとを含む
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記シース管状部品は、前記複数のプルワイヤのうちの少なくとも2つのプルワイヤである第1の組を含み、
前記リーダ管状部品は、前記複数のプルワイヤのうちの少なくとも2つのプルワイヤである第2の組を含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
シース管状部品に連結された管状部品を含む内視鏡の複数のプルワイヤのうちの1つのプルワイヤにそれぞれ関連する複数のデフォルトゲイン値を検索することと、
外科用ロボットシステムを使用して患者の体内に前記内視鏡を挿入することと、
前記シース管状部品に対する前記リーダ管状部品のロール角と、前記シース管状部品によって半径方向に囲まれた前記リーダ管状部品の長さとを示す情報を受け取ることと、
前記外科用ロボットシステムを使用して前記複数のプルワイヤのうちの少なくとも1つを平行移動させることによって、前記内視鏡を移動させるためのコマンドを提供することと、
前記コマンドに応答して移動された前記内視鏡の実際の位置を示す空間データを受け取ることと、
前記複数のプルワイヤのうちの少なくとも1つについて、前記ロール角、前記長さおよび前記空間データに基づいて新しいゲイン値を決定することと、
前記新しいゲイン値を記憶することとを含む方法。
【請求項21】
前記新しいゲイン値に基づいて第2のコマンドを生成することと、
前記外科用ロボットシステムを使用して前記内視鏡を移動させるための前記第2のコマンドを提供することとをさらに含む、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記空間データを受け取ることは、
前記内視鏡に近接して透視撮像システムを配置することと、
前記透視撮像システムによって前記内視鏡の複数の透視画像を撮像することとを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記外科用ロボットシステムは、前記コマンドに応答して、ヨー方向およびピッチ方向の角度に前記内視鏡を曲げる、
請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願の主題は、2014年10月24日に出願され、「SYSTEM FOR ROBOTIC−ASSISTED ENDOLUMENAL SURGERY AND RELATED METHODS」と題された米国特許出願第14/523,760号に関連し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
この説明は、一般に、外科用ロボットに関し、特に、プルワイヤを用いて内視鏡を較正するための自動化プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
ロボット技術は様々な用途を有する。特に、ロボットアームは、人間が通常実行するであろう作業を完了するのを支援する。例えば、工場では、ロボットアームを使用して自動車および家電製品を製造する。さらに、科学施設では、ロボットアームを使用してマイクロプレートの搬送などの実験手順を自動化する。近年、外科的処置を実施するのを補助するために、医師がロボットアームを使用し始めている。例えば、医師は、ロボットアームを使用して内視鏡などの外科用器具を制御する。
【0004】
可動先端部を有する内視鏡は、低侵襲的方法で外科的処置を実施するのを支援する。肺または血管などの患者の遠隔部位に可動先端部を向けることができる。先端部の実際の位置が目標位置からずれていると、先端部の位置を修正するための追加の操作をすることになる場合がある。手動較正のための既存の技術は、先端部の動きを正確に具現化しない内視鏡先端部のわずかなたわみに左右されることがある。
【発明の概要】
【0005】
外科用ロボットシステムは、内視鏡などの管状の柔軟な外科用器具を自動的に較正する。外科用ロボットシステムは、内視鏡の非理想的な動きを補償することによって、内視鏡の動きを正確に具現化し、患者に対して外科的処置を実施しながら内視鏡を操作することができる。較正中、外科用ロボットシステムは、内視鏡を目標位置に移動させ、内視鏡の実際の位置を表す較正データを受け取る。外科用ロボットシステムは、空間センサによってとらえた較正データに基づいて、コマンドに応答して内視鏡が移動する実際の位置および/または向きを特定する。空間センサの例には、加速度計、ジャイロスコープ、電磁センサ、光ファイバ、カメラおよび透視撮像システムが挙げられる。外科用ロボットシステムは、目標位置と実際の位置との間の不一致に少なくとも基づいて、ゲイン値を決定する。外科用ロボットシステムは、外科的処置の前または最中に較正を実行することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、内視鏡は、シースおよびリーダと呼ばれる管状部品を含む。ゲイン値はまた、シースから延びるリーダの長さ、またはシースに対するリーダの相対ロール角に基づいてもよい。外科用ロボットシステムは、器具装置マニピュレータ(IDM)を使用してシースおよびリーダを動かす。例えば、IDMは、シースまたはリーダに連結されたプルワイヤを平行移動させ、それによって内視鏡を異なる軸、例えばピッチ、ヨーおよびロール軸に沿って移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態による外科用ロボットシステムを示す。
図2】一実施形態による外科用ロボットシステム用のコマンドコンソールを示す。
図3A】一実施形態による内視鏡の複数の動作段階(degrees of motion)を示す。
図3B】一実施形態による、シースおよびリーダ構成要素を含む内視鏡の上面図である。
図3C】一実施形態による内視鏡のシースの断面側面図である。
図3D】一実施形態による内視鏡のシースの螺旋部の等角図である。
図3E】一実施形態による内視鏡のシースの螺旋部の別の等角図である。
図3F】一実施形態による、螺旋部を有する内視鏡のシースの側面図である。
図3G】一実施形態による、図3Fに示す内視鏡のシースの別の図である。
図3H】一実施形態による内視鏡のリーダの断面側面図である。
図3I】一実施形態による、図3Hに示す内視鏡のリーダの遠位先端部の断面等角図である。
図4A】一実施形態による外科用ロボットシステムの器具装置マニピュレータの等角図である。
図4B】一実施形態による、図4Aに示す器具装置マニピュレータの分解等角図である。
図4C】一実施形態による、図4Aに示す器具装置マニピュレータの独立駆動機構の等角図である。
図4D】一実施形態による、図4Cに示す独立駆動機構の歪みゲージによって力がどのように測定され得るかを示す概念図を示す。
図5A】一実施形態による内視鏡内部のプルワイヤを示す。
図5B】一実施形態による、静止位置にある内視鏡の背面図を示す。
図5C】一実施形態による、図5Bに示す内視鏡の上面図を示す。
図5D】一実施形態による、図5Bに示す内視鏡の側面図を示す。
図5E】一実施形態による、屈曲位置にある図5Bに示す内視鏡の背面図を示す。
図5F】一実施形態による、図5Eに示す内視鏡の上面図を示す。
図5G】一実施形態による、図5Eに示す内視鏡の側面図を示す。
図5H】一実施形態による、非理想的なさらなるずれ(offset)を示す屈曲位置にある、図5Bに示す内視鏡の背面図を示す。
図5I】一実施形態による、図5Hに示す内視鏡の上面図を示す。
図5J】一実施形態による、静止位置にある図5Bに示す内視鏡の背面図を示す。
図5K】一実施形態による、図5Jに示す内視鏡の側面図を示す。
図5L】一実施形態による、非理想的なロール方向のさらなるずれを示す屈曲位置にある、図5Jに示す内視鏡の背面図を示す。
図5M】一実施形態による、図5Lに示す内視鏡の側面図を示す。
図6A】一実施形態による電磁追跡システムの図である。
図6B】一実施形態による、内視鏡に近接したカメラの図である。
図6C】一実施形態による、基準マーカを含む内視鏡に近接した動作追跡カメラの図である。
図6D】一実施形態による、形状感知光ファイバを有する内視鏡の図である。
図6E】一実施形態による、内視鏡に近接した透視撮像システムの図である。
図7A】一実施形態による、内視鏡のシースの外側に延びた内視鏡のリーダの長さを示す。
図7B】一実施形態による、内視鏡のシースに対する内視鏡のリーダの相対ロール角を示す。
図8A】一実施形態による、内視鏡の自動較正のためのプロセスのフローチャートである。
図8B】一実施形態による、延出長および相対ロール角に基づく内視鏡の自動較正のためのプロセスのフローチャートである。
図9】一実施形態による、内視鏡の術中自動較正のためのプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面は、例示のみを目的として本発明の実施形態を示す。当業者は、本明細書に記載の本発明の原理から逸脱することなく、本明細書に例示した構造および方法の代替的な実施形態を使用できることを以下の説明から容易に理解するであろう。
【0009】
本明細書に開示されている方法および装置は、2014年10月24日に出願され、米国特許出願公開第2015/0119637号明細書として公開され、「SYSTEM FOR ROBOTIC−ASSISTED ENDOLUMENAL SURGERY
AND RELATED METHODS」と題された米国特許出願第14/523,760号明細書(その全開示内容は、参照により先に組み込まれている)に記載されているような1つ以上の内視鏡構成要素または工程とともに使用するのに非常に適している。前述の出願は、本明細書に開示された実施形態による組合せに適したシステム構成要素、管腔内システム、仮想レール構成、機構チェンジャーインターフェース、器具装置マニピュレータ(IDM)、内視鏡用器具設計、制御コンソール、内視鏡、器具装置マニピュレータ、管腔内ナビゲーションおよび管腔内手順を記載している。
【0010】
I.外科用ロボットシステム
図1は、一実施形態による外科用ロボットシステム100を示す。外科用ロボットシステム100は、1つ以上のロボットアーム、例えばロボットアーム102に連結された基部101を含む。基部101はコマンドコンソールに通信可能に連結されており、これについては第II節「コマンドコンソール」の図2を参照してさらに説明される。基部101は、ロボットアーム102が患者に対して外科的処置を実行するためのアクセスを有するように配置することができ、医師などのユーザがコマンドコンソールで快適に外科用ロボットシステム100を制御することができる。いくつかの実施形態では、基部101は、患者を支持するための外科手術台またはベッドに連結されてもよい。明確にするために図1には示されていないが、基部101は、制御電子回路、空気圧、電源、光源などのサブシステムを含んでもよい。ロボットアーム102は、関節111で連結された複数のアームセグメント110を含み、これにより、ロボットアーム102に多自由度、例えば、7つのアームセグメントに対応する7つの自由度を提供する。基部101は、電源112と、空気圧113と、中央処理装置、データバス、制御回路およびメモリなどの構成要素を含む制御およびセンサ電子回路114と、ロボットアーム102を動かすためのモータなどの関連アクチュエータとを収容してもよい。基部101内の電子回路114はまた、コマンドコンソールから通信された制御信号を処理し送信してもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、基部101は、外科用ロボットシステム100を搬送するための車輪115を含む。外科用ロボットシステム100の可動性は、外科手術室内の空間的制約に適応するのを支援するとともに、外科用機器の適切な位置決めおよび移動を容易にする。さらに、この可動性は、ロボットアーム102が患者、医師、麻酔科医または他の機器と干渉しないように、ロボットアーム102を構成することを可能にする。処置中、ユーザはコマンドコンソールなどの制御装置を使用してロボットアーム102を制御してもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム102は、ブレーキとカウンターバランスとの組合せを使用してロボットアーム102の位置を維持するセットアップ関節を含む。カウンターバランスは、ガススプリングまたはコイルスプリングを含んでもよい。ブレーキ、例えばフェールセーフブレーキは、機械的および/または電気的構成要素を含んでもよい。さらに、ロボットアーム102は、重力支援受動支持型ロボットアームであってよい。
【0013】
各ロボットアーム102は、機構チェンジャーインターフェース(MCI)116を使用して器具装置マニピュレータ(IDM)117に連結されてもよい。IDM117は、取り外され、異なる種類のIDMと交換され得る。例えば、第1の種類のIDMは内視鏡を操作し、第2の種類のIDMは腹腔鏡を操作する。MCI116は、空気圧、電力、電気信号および光信号をロボットアーム102からIDM117に伝達するためのコネクタを含む。MCI116は、止めねじまたは基板コネクタとすることができる。IDM117は、直接駆動、ハーモニック駆動、ギヤ駆動、ベルトおよびプーリ、磁気駆動などを含む技術を使用して、内視鏡118などの外科用器具を操作する。MCI116は、IDM117の種類に基づいて交換可能であり、特定の種類の外科的処置用にカスタマイズすることができる。ロボットアーム102は、KUKA AG(登録商標)LBR5ロボットアームのように、関節レベルのトルク感知、および手首を遠位端に含むことができる。
【0014】
内視鏡118は、患者の解剖学的構造内に挿入されて解剖学的構造(例えば体組織)の画像を撮像する管状の柔軟な外科用器具である。具体的には、内視鏡118は、画像を撮像する1つ以上の撮像装置(例えば、カメラまたはセンサ)を含む。撮像装置は、光ファイバ、ファイバアレイまたはレンズなどの1つ以上の光学部品を含んでもよい。光学部品は、内視鏡118の先端部の動きが撮像装置によって撮像された画像に変化をもたらすように、内視鏡118の先端部とともに動く。内視鏡118は、第III節「内視鏡」の図3A〜Iを参照してさらに説明される。
【0015】
外科用ロボットシステム100のロボットアーム102は、細長い移動部材を使用して内視鏡118を操作する。細長い移動部材は、プルもしくはプッシュワイヤとも呼ばれるプルワイヤ、ケーブル、ファイバまたは可撓性シャフトを含んでもよい。例えば、ロボットアーム102は、内視鏡118に連結された複数のプルワイヤを作動させて内視鏡118の先端部を曲げる。プルワイヤは、ステンレス鋼、ケブラー、タングステン、炭素繊維などの金属材料および非金属材料の両方を含んでもよい。内視鏡118は、細長い移動部材によって加えられる力に応答して非理想的な動きを示す可能性がある。非理想的な動きは、内視鏡118の剛性および圧縮性の不完全性または変動、ならびに様々な細長い移動部材間の弛みまたは剛性のばらつきによるものであり得る。
【0016】
外科用ロボットシステム100は、コンピュータシステム120、例えば、コンピュータプロセッサを含む。コンピュータシステム120は、較正モジュール130、較正記憶装置140、コマンドモジュール150およびデータ処理モジュール160を含む。データ処理モジュール160は、外科用ロボットシステム100によって収集された較正データを処理することができる。較正モジュール130は、較正データに基づくゲイン値を用いて内視鏡118の非理想的な動きを特徴付けることができる。コンピュータシステム120およびそのモジュールは、第VII節「較正プロセスフロー」でさらに説明される。外科用ロボットシステム100は、ゲイン値の正確な値を決定することによって、内視鏡118をさらに正確に制御することができる。いくつかの実施形態では、コンピュータシステム120の一部または全部の機能は、外科用ロボットシステム100の外部で、例えば、外科用ロボットシステム100に通信可能に連結された別のコンピュータシステムまたはサーバ上で実行される。
【0017】
II.コマンドコンソール
図2は、一実施形態による外科用ロボットシステム100用のコマンドコンソール200を示す。コマンドコンソール200は、コンソール基部201、ディスプレイモジュール202、例えばモニタ、ならびに制御モジュール、例えばキーボード203およびジョイスティック204を含む。いくつかの実施形態では、コマンドモジュール200の機能のうちの1つ以上は、外科用ロボットシステム100の基部101、または外科用ロボッ
トシステム100に通信可能に連結された別のシステムに統合されてもよい。ユーザ205、例えば医師は、コマンドコンソール200を使用して人間工学的な位置から外科用ロボットシステム100を遠隔制御する。
【0018】
コンソール基部201は、例えば、図1に示す内視鏡118からのカメラ画像および追跡センサデータなどの信号を解釈および処理する役割を果たす中央処理装置、メモリ装置、データバスおよび関連データ通信ポートを含んでもよい。いくつかの実施形態では、コンソール基部201および基部101の両方が、負荷の最適配分のための信号処理を実行する。コンソール基部201はまた、制御モジュール203および204を介してユーザ205によって提供されたコマンドおよび命令を処理してもよい。制御モジュールは、図2に示すキーボード203およびジョイスティック204に加えて、他の装置、例えば、手のジェスチャおよび指のジェスチャをとらえるコンピュータマウス、トラックパッド、トラックボール、制御パッド、ビデオゲームコントローラおよびセンサ(例えば、モーションセンサまたはカメラ)を含んでもよい。
【0019】
ユーザ205は、速度モードまたは位置制御モードでコマンドコンソール200を使用して、内視鏡118などの外科用器具を制御することができる。速度モードでは、ユーザ205は、制御モジュールを用いた直接手動制御に基づいて、内視鏡118の遠位端のピッチおよびヨー運動を直接制御する。例えば、ジョイスティック204上の動きが、内視鏡118の遠位端でのヨーおよびピッチ運動にマッピングされてもよい。ジョイスティック204は、ユーザ205に触覚フィードバックを提供することができる。例えば、ジョイスティック204は振動して、内視鏡118が特定の方向にそれ以上平行移動または回転できないことを示す。コマンドコンソール200はまた、視覚フィードバック(例えばポップアップメッセージ)および/または音声フィードバック(例えばビープ音)を提供して、内視鏡118が最大の平行移動または回転に到達したことを示すことができる。
【0020】
位置制御モードでは、コマンドコンソール200は、患者の三次元(3D)マップおよび患者の所定のコンピュータモデルを使用して、外科用器具、例えば内視鏡118を制御する。コマンドコンソール200は、外科用ロボットシステム100のロボットアーム102に制御信号を送って、内視鏡118を目標位置まで操作する。3Dマップに依存しているため、位置制御モードでは患者の解剖学的構造の正確なマッピングが必要になる。
【0021】
いくつかの実施形態では、ユーザ205は、コマンドコンソール200を使用せずに、外科用ロボットシステム100のロボットアーム102を手動で操作することができる。外科手術室での設定中に、ユーザ205は、ロボットアーム102、内視鏡118および他の外科用機器を動かして、患者にアクセスしてもよい。外科用ロボットシステム100は、ユーザ205からの力フィードバックおよび慣性制御を利用して、ロボットアーム102および機器の適切な構成を決定してもよい。
【0022】
ディスプレイモジュール202は、電子モニタ、ゴーグルまたは眼鏡などの仮想現実視認装置、および/または他の表示装置手段を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ディスプレイモジュール202は、例えば、タッチスクリーンを有するタブレット装置として、制御モジュールと一体化される。さらに、ユーザ205は、一体型ディスプレイモジュール202および制御モジュールを使用して、データを見ることも外科用ロボットシステム100にコマンドを入力することもできる。
【0023】
ディスプレイモジュール202は、立体視装置、例えばバイザーまたはゴーグルを使用して3D画像を表示することができる。3D画像は、患者の解剖学的構造を示すコンピュータ3Dモデルである「エンドビュー(endo view)」(すなわち、内視鏡ビュー)を提供する。「エンドビュー」は、患者の体内の仮想環境および患者の体内の内視鏡
118の予測位置を提供する。ユーザ205は、「エンドビュー」モデルとカメラによって撮像された実際の画像とを比較して、内視鏡118が患者の体内で正しい(またはほぼ正しい)位置にあることを頭の中で判断し確認するのを補助する。「エンドビュー」は、内視鏡118の遠位端の周りの解剖学的構造、例えば、患者の腸または大腸の形状に関する情報を提供する。ディスプレイモジュール202は、内視鏡118の遠位端の周りの解剖学的構造の3Dモデルおよびコンピュータ断層撮影(CT)スキャンを同時に表示することができる。さらに、ディスプレイモジュール202は、3DモデルおよびCTスキャン上に内視鏡118の所定の最適な操作経路を重ね合わせてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、外科的処置の状態を示すのを支援するために、内視鏡118のモデルが3Dモデルとともに表示される。例えば、CTスキャンは、生検が必要となり得る解剖学的構造内の病変を特定する。動作中、ディスプレイモジュール202は、内視鏡118の現在位置に対応する、内視鏡118によって撮像された基準画像を示してもよい。ディスプレイモジュール202は、ユーザ設定および特定の外科的処置に応じて、内視鏡118のモデルの様々な像を自動的に表示してもよい。例えば、ディスプレイモジュール202は、内視鏡118が患者の手術領域に近づく操作ステップの間、内視鏡118の俯瞰透視像を示す。
【0025】
III.内視鏡
図3Aは、一実施形態による内視鏡118の複数の動作段階を示す。内視鏡118は、図1に示す内視鏡118の一実施形態である。図3Aに示すように、内視鏡118の先端部301は、長手方向軸306(ロール軸306とも呼ばれる)に対する曲がり角度がゼロになる向きに向けられている。外科用ロボットシステム100は、先端部301の様々な向きで画像を撮像するために、正のヨー軸302、負のヨー軸303、正のピッチ軸304、負のピッチ軸305またはロール軸306上に先端部301を曲げる。内視鏡118の先端部301または本体310は、長手方向軸306、x軸308またはy軸309においてで延ばすか、平行移動させてもよい。
【0026】
図3Bは、一実施形態による、シースおよびリーダ構成要素を含む内視鏡118の上面図である。内視鏡118は、内側に入れ子にされたか部分的に入れ子にされ、かつシース311管状部品と長手方向に整列したリーダ315管状部品を含む。シース311は、近位シース部312および遠位シース部313を含む。リーダ315は、シース311よりも小さい外径を有し、近位リーダ部316および遠位リーダ部317を含む。シース基部314およびリーダ基部318は、例えば、外科用ロボットシステム100のユーザからの制御信号に基づいて、それぞれ遠位シース部313および遠位リーダ部317を作動させる。シース基部314およびリーダ基部318は、例えば、図1に示すIDM117の一部である。湾曲部とも呼ばれることがある遠位リーダ部317の構造、構成、機能および使用法は、2014年3月7日に出願された米国特許出願第14/201,610号明細書および2014年9月5日に出願された米国特許出願第14/479,095号明細書に開示されており、それらの全内容は参照により組み込まれる。
【0027】
シース基部314およびリーダ基部318の両方は、シース311およびリーダ315に連結されたプルワイヤを制御するための駆動機構(例えば、第III.D節「器具装置マニピュレータ」の図4A〜Dを参照してさらに説明される独立駆動機構)を含む。例えば、シース基部314は、シース311に連結されたプルワイヤに引張荷重を発生させて遠位シース部313を曲げる。同様に、リーダ基部318は、リーダ315に連結されたプルワイヤに引張荷重を発生させて遠位リーダ部317を曲げる。また、シース基部314およびリーダ基部318の両方は、IDMからそれぞれシース311およびリーダ314に、空気圧、電力、電気信号または光信号をルーティングするためのカップリングを含んでもよい。プルワイヤは、シース311またはリーダ315内のプルワイヤの長さに沿
って鋼製コイルパイプを含んでもよく、これにより、軸方向の圧縮を荷重の起点、例えば、それぞれシース基部314またはリーダ基部318に戻す。
【0028】
内視鏡118は、シース311およびリーダ315に連結されたプルワイヤによって提供される多自由度のために、患者の解剖学的構造を容易に操作することができる。例えば、シース311および/またはリーダ315のいずれかに4つ以上のプルワイヤを使用して、8つ以上の自由度をもたらしてもよい。他の実施形態では、最大3つのプルワイヤを使用して、最大6つの自由度をもたらしてもよい。長手方向軸306に沿ってシース311およびリーダ315を360度まで回転させて、さらに多くの動作段階をもたらしてもよい。回転角度と多自由度とを組み合わせることによって、外科用ロボットシステム100のユーザに、内視鏡118の使い勝手が良く直感的な制御を提供する。
【0029】
III.A.内視鏡シース
図3Cは、一実施形態による内視鏡118のシース311の断面側面図である。シース311は、図3Bに示すリーダ315などの管状部品を収容する大きさのルーメン323を含む。シース311は、壁324の長さの内側で導管327および328を通って延びるプルワイヤ325および326を有する壁324を含む。導管は、螺旋部330と遠位非螺旋部329とを含む。プルワイヤ325を適切に引っ張り、螺旋部330の屈曲を最小限に抑えながら、遠位端320を正のy軸方向に圧縮してもよい。同様に、プルワイヤ326を適切に引っ張り、遠位端320を負のy軸方向に圧縮してもよい。いくつかの実施形態では、ルーメン323はシース311と同心ではない。
【0030】
プルワイヤ325および326は、必ずしもシース311の長さにわたって真っ直ぐに延びる必要はない。むしろ、プルワイヤ325および326は、螺旋部330に沿ってシース311の周りを螺旋状に延び、遠位非螺旋部329、およびシース311の他の任意の非螺旋部に沿って長手方向に真っ直ぐに(すなわち、長手方向軸306にほぼ平行に)延びる。螺旋部330は、シース311の長さに沿ったいずれかで始まり終端してもよい。さらに、螺旋部330の長さおよびピッチは、シース311の所望の特性、例えば、シース311の柔軟性と、螺旋部330での摩擦とに基づいて決定されてもよい。
【0031】
図3Cではプルワイヤ325および326は互いに対して180度の位置に配置されているが、シース311のプルワイヤは異なる角度に配置されてもよいことに留意されたい。例えば、シースの3つのプルワイヤは、それぞれ互いに対して120度の位置に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、プルワイヤは互いに対して等間隔に配置されておらず、すなわち角度のずれ(angle offset)は一定とならない。
【0032】
III.B.螺旋部
図3Dは、一実施形態による内視鏡118のシース311の螺旋部330の等角図である。図3Dは、遠位非螺旋部329と螺旋部330とを区別するために、1つのプルワイヤ325のみを示している。いくつかの実施形態では、螺旋部330は可変ピッチを有する。
【0033】
図3Eは、一実施形態による内視鏡118のシース311の螺旋部330の別の等角図である。図3Eは、遠位非螺旋部329および可変ピッチ螺旋部330に沿って延びる4つのプルワイヤ325、326、351および352を示す。
【0034】
内視鏡118のシース311およびリーダ315内の螺旋部330は、外科用ロボットシステム100および/またはユーザが、腸または大腸などの患者の解剖学的構造内の非線形経路を通って内視鏡118を操作するのを支援する。非線形経路で操作する場合、(シース311およびリーダ315の両方に)制御可能な遠位部分を依然として有しながら
、内視鏡118が柔軟性を維持することは有用である。さらに、内視鏡118に沿った望ましくない屈曲の量を減らすことは有利である。以前の内視鏡設計では、遠位部分を操作するためにプルワイヤを引っ張ると、内視鏡の長さに沿って、それぞれマッスリング(muscling)および曲線アライメント(curve alignment)と呼ばれ得る望ましくない屈曲およびトルク付与が発生していた。
【0035】
図3Fは、一実施形態による、螺旋部330を有する内視鏡118のシース311の側面図である。図3F図Gは、螺旋部330がどのようにマッスリングおよび曲線アライメントを実質的に軽減するのを支援するかを示す。プルワイヤ325は、螺旋部330の長さの周りに螺旋状に延びているため、長手方向軸306の周りの複数の方向に圧縮荷重335を半径方向かつ対称に分散させる。さらに、内視鏡118に加えられる曲げモーメントもまた、長手方向軸306の周りに対称に分散され、これにより、対向する圧縮力と引張力とを釣り合わせ、相殺する。曲げモーメントの分散は、最小限の正味の曲げ力および回転力のみを生じさせ、内視鏡118の低い潜在的エネルギー状態を作り出し、ひいてはマッスリングおよび曲線アライメントを排除または実質的に軽減する。
【0036】
螺旋部330のピッチは、螺旋部330の摩擦および剛性に影響を及ぼすことができる。例えば、螺旋部330は、さらに長い遠位非螺旋部329を実現するためにさらに短くてもよく、その結果、螺旋部330の摩擦および/または剛性が低下する。
【0037】
図3Gは、一実施形態による、図3Fに示す内視鏡118のシース311の別の図である。図3Gに示す遠位非螺旋部329は、図3Fに示す遠位非螺旋部329よりも大きな角度で曲がっている。
【0038】
III.C.内視鏡リーダ
図3Hは、一実施形態による内視鏡118のリーダ315の断面側面図である。リーダ315は、壁348の長さに沿ってそれぞれ導管341および342を通って延びる少なくとも1つの作業チャネル343ならびにプルワイヤ344および345を含む。プルワイヤ344および345ならびに導管341および342は、それぞれ図3Cのプルワイヤ325および326ならびに導管327および328と実質的に同じである。例えば、プルワイヤ344および345は、前述のシース311と同様に、リーダ315のマッスリングおよび曲線アライメントを軽減するのを支援する螺旋部を有してもよい。
【0039】
図3Iは、一実施形態による、図3Hに示す内視鏡118のリーダ315の遠位先端部の断面等角図である。リーダ315は、撮像装置349(例えば、電荷結合素子(CCD)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)カメラ、撮像ファイバ束など)、光源350(例えば、発光ダイオード(LED)、光ファイバなど)、少なくとも2つのプルワイヤ344および345、ならびに他の構成要素用の少なくとも1つの作業チャネル343を含む。例えば、他の構成要素には、カメラワイヤ、送気装置、吸引装置、電線、光ファイバ、超音波トランスデューサ、電磁(EM)感知構成要素および光コヒーレンストモグラフィ(OCT)感知構成要素が挙げられる。いくつかの実施形態では、リーダ315は、作業チャネル343に構成要素を挿入するためのポケット穴を含む。図3Iに示すように、プルワイヤ344および345は、撮像装置349または作業チャネル343と同心ではない。
【0040】
III.D.器具装置マニピュレータ
図4Aは、一実施形態による外科用ロボットシステム100の器具装置マニピュレータ117の等角図である。ロボットアーム102は、関節式インターフェース401を介してIDM117に連結される。IDM117は内視鏡118に連結される。関節式インターフェース401は、ロボットアーム102およびIDM117との間で空気圧、電力信
号、制御信号およびフィードバック信号を伝達してもよい。IDM117は、ギヤヘッド、モータ、ロータリーエンコーダ、電源回路および制御回路を含んでもよい。IDM117から制御信号を受信するための器具基部403が、内視鏡118の近位端に連結される。IDM117は、制御信号に基づいて出力軸を作動させることによって内視鏡118を操作する。出力シャフトについては、図4Bを参照して以下でさらに説明される。
【0041】
図4Bは、一実施形態による、図4Aに示す器具装置マニピュレータの分解等角図である。図4Bでは、内視鏡118は、出力シャフト405、406、407および408を見せるためにIDM117から取り外されている。
【0042】
図4Cは、一実施形態による、図4Aに示す器具装置マニピュレータ117の独立駆動機構の等角図である。独立駆動機構は、IDM117の出力シャフト405、406、407および408をそれぞれ回転させることによって、内視鏡のプルワイヤ421、422、423および424を(例えば、互いに独立して)締め付けるか緩めることができる。出力シャフト405、406、407および408が、角運動を介してそれぞれプルワイヤ421、422、423および424に力を伝達するのとまったく同じように、プルワイヤ421、422、423および424は出力シャフトに力を伝達する。IDM117および/または外科用ロボットシステム100は、センサ、例えば、以下でさらに説明される歪みゲージを使用して、伝達された力を測定することができる。
【0043】
図4Dは、一実施形態による、図4Cに示す独立駆動機構の歪みゲージ434によって力がどのように測定され得るかを示す概念図を示す。力431は、モータ437のモータマウント433に連結された出力シャフト405から離れる方向に向けられてもよい。したがって、力431は、モータマウント433の水平方向の変位をもたらす。さらに、モータマウント433に水平に連結された歪みゲージ434は、力431の方向に歪みを受ける。歪みは、歪みゲージ434の先端部435の水平方向の変位と歪みゲージ434の水平方向の全幅436との比として測定されてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、IDM117は、IDM117の向きを特定するために、追加のセンサ、例えば、傾斜計または加速度計を含む。外科用ロボットシステム100は、追加のセンサおよび/または歪みゲージ434からの測定値に基づいて、歪みゲージ434からの読取値を較正して重力荷重効果を把握することができる。例えば、IDM117がIDM117の水平側に配向されている場合、IDM117の特定の構成要素の重量によってモータマウント433に歪みが生じる可能性がある。したがって、歪みゲージ434は、重力荷重効果を把握せずに、出力シャフト上の歪みから生じなかった歪みを測定し得る。
【0045】
IV.非理想的な内視鏡の運動
図5Aは、一実施形態による内視鏡118内部のプルワイヤを示す。内視鏡118は、内視鏡の構成に応じて異なる数のプルワイヤを含んでもよいが、例として、以下の説明では、内視鏡118が、それぞれヨー510軸およびピッチ520軸に沿った移動方向に対応する4つのプルワイヤ421、422、423および423を含む構成を想定する。具体的には、プルワイヤ421、422、423および423を引っ張ることによって、内視鏡118をそれぞれ正のピッチ方向、正のヨー方向、負のピッチ方向および負のヨー方向に移動させる。図5Aに示すプルワイヤはそれぞれヨー510またはピッチ520方向に整列しているが、他の実施形態では、プルワイヤは必ずしもこれらの軸に沿って整列していなくてもよく、上記の軸は説明の便宜上任意に選択される。例えば、プルワイヤは、内視鏡118内の点540と整列(例えば交差)してもよい。したがって、プルワイヤを平行移動させると、内視鏡118がヨー510およびピッチ520の両方向に移動することになる。全体を通して説明される例示的な実施形態では、内視鏡118が静止位置にあ
る場合、プルワイヤはロール530軸とほぼ平行である。
【0046】
内視鏡118は、内視鏡118の遠位先端部に向かって連結された1つ以上の空間センサ550を含んでもよい。空間センサ550は、例えば、電磁(EM)センサ、加速度計、ジャイロスコープ、基準マーカおよび/または他の種類のセンサとすることができる。一実施形態では、空間センサ550は、内視鏡118の内部に埋め込まれ、かつ内視鏡118の長さに沿って延びる形状感知光ファイバである。空間センサ550は、例えば、リアルタイムで内視鏡118の位置および/または向きを示す空間データを提供してもよい。空間データはまた、内視鏡118の較正を支援するための較正データとして使用されてもよい。
【0047】
理想的な内視鏡では、内視鏡のプルワイヤを平行移動させることによって、内視鏡の先端部を正のピッチ方向に90度屈曲させるなど、内視鏡を目標位置または向きに正確に移動させる。しかし、実際には、内視鏡の不完全性のために、目標運動は必ずしも内視鏡の実際の運動と一致するわけではなく、内視鏡は非線形の動きを示すことがある。不完全性は様々な理由のために生じる可能性があり、その例には、製造上の欠陥(例えば、プルワイヤが運動軸と適切に整列していない)、プルワイヤの相違(例えば、他のプルワイヤよりも硬いか、他のプルワイヤと長さが異なる)または内視鏡材料の相違(例えば、ピッチ方向がヨー方向よりも容易に屈曲する)の結果が挙げられ得る。
【0048】
IV.A.ピッチ方向の非理想的なずれ
図5B図5Dは、静止位置にある内視鏡118の3つの図を示す。図5E図Gは、正のピッチ520方向に90度の目標曲がり角度まで関節運動するためのコマンドに応答して、内視鏡118が屈曲位置に移動した後の同じく3つの図を示す。図5E図Gに示すように、内視鏡118の実際の曲がり角度は、正のピッチ520方向の非理想的なずれを示す。
【0049】
図5Bは、一実施形態による、静止位置にある内視鏡118の背面図を示す。背面図では、観察者は内視鏡の近位端から見下ろしており、反対側の遠位端は患者の体内に挿入されている。内視鏡118の断面は、ヨー510軸およびピッチ520軸の起点に整列している。内視鏡118はロール530軸に平行であり、空間センサ550は内視鏡118の先端部に向かって連結されている。図5Cは、一実施形態による、図5Bに示す内視鏡118の上面図を示す。例示的な例として、外科的処置用の台の上に患者が水平に平らに横になっている。内視鏡118は患者の身体と平行になるように配置され、外科用ロボットシステム100は、平行構成を維持しながら、内視鏡118を体内に挿入する。上面図では、観察者は患者の身体の上から見下ろしている。図5Dは、一実施形態による、図5Bに示す内視鏡118の側面図を示す。
【0050】
図5Eは、一実施形態による、屈曲位置にある図5Bに示す内視鏡118の背面図を示す。図5Fは、一実施形態による、図5Eに示す内視鏡118の上面図を示す。図5Gは、一実施形態による、図5Eに示す内視鏡118の側面図を示す。内視鏡118の点線の輪郭は、コマンドに応答して内視鏡118が移動すべきであった目標屈曲位置を示し、例えば、内視鏡118の先端部がピッチ520軸と平行になるように正のピッチ方向に90度曲がると想定される。しかし、実際の曲がり角度は90度には及ばず、したがって、正のピッチ520方向に非理想的なずれが生じる。
【0051】
IV.B.ヨー方向の非理想的なずれ
図5Hは、一実施形態による、非理想的なさらなるずれ(offset)を示す屈曲位置にある、図5Bに示す内視鏡118の背面図を示す。具体的には、図5Hに示す内視鏡は、正のピッチ520方向の非理想的なずれに加えて、正のヨー510方向の非理想的な
さらなるずれを示す。したがって、内視鏡118の遠位端(例えば、先端部)は、図5Fに示す内視鏡の「真っ直ぐ」である遠位端とは対照的に、「湾曲」している。図5Hに示す内視鏡118は、2つの方向(正のピッチおよびヨー)に不完全性を有するが、他の実施形態では、内視鏡は任意の数の方向(例えば、負のピッチおよびヨー、ならびにロール)に不完全性を示し得る。
【0052】
図5Iは、一実施形態による、図5Hに示す内視鏡118の上面図を示す。
【0053】
IV.C.ロール方向の非理想的なずれ
図5J図5Kは、静止位置にある内視鏡118の2つの図を示す。ヨー510およびピッチ520方向に対する内視鏡118の整列を示すために、4つのマーカ560が内視鏡118上に示されている。静止位置では、各マーカはヨー510軸およびピッチ520軸と整列している。
【0054】
図5L図Mは、正のピッチ520方向に90度の目標曲がり角度まで関節運動するためのコマンドに応答して、内視鏡118が屈曲位置に移動した後の同じく2つの図を示す。図5L図Mに示すように、内視鏡118の実際の曲がり角度は、ロール530方向の非理想的なずれを示す(この例では、他の非理想的なずれはない)。内視鏡118の点線の輪郭は、コマンドに応答して内視鏡が移動すべきであった目標曲がり角度に曲がった位置を示し、例えば、内視鏡118の先端部がピッチ520軸と平行になるように90度曲がると想定される。実際屈曲位置では90度の曲がり角度を有するが、ロール530軸に沿った回転も有する。したがって、4つのマーカ560は、ヨー510軸およびピッチ520軸ともはや整列していない。図5Eに示す内視鏡と同様に、図5Lの内視鏡の遠位端は「真っ直ぐ」であり、「湾曲」していない。いくつかの実施形態では、内視鏡の近位端の回転は、内視鏡の遠位端の対応する回転を伴う(およびその逆も同様)。回転は等しくても異なっていてもよく、例えば、近位端の10度のロール方向のずれは、遠位端の20度のロール方向のずれを引き起こす。別の例として、近位端にロール方向のずれがなく、遠位端にゼロ以外のロール方向のずれがあってよい。
【0055】
図5Mは、一実施形態による、図5Lに示す内視鏡の側面図を示す。
【0056】
要約すると、図5B図Gは、正のピッチ方向の非理想的なずれを示し、図5H図Iは、正のピッチ方向に加えてヨー方向の非理想的なずれを示し、図5J図Mは、ロール方向の非理想的なずれを示す。他の実施形態では、内視鏡は、任意の数、または方向の組合せの非理想的なずれを示し得る。ずれの大きさは、異なる方向間で異なり得る。
【0057】
V.空間センサ
V.A.電磁センサ
図6Aは、一実施形態による電磁追跡システムの図である。内視鏡118の先端部に連結された空間センサ550は、内視鏡118に近接した1つ以上のEMF発生器600によって発生した電磁場(EMF)を検出する1つ以上のEMセンサ550を含む。検出されたEMFの強度は、内視鏡118の位置および/または向きの関数である。例えば、内視鏡118が1つよりも多いEMセンサ550を含む場合、第1のEMセンサはリーダ管状部品に連結され、第2のEMセンサは内視鏡118のシース管状部品に連結される。
【0058】
1つ以上のEMF発生器600が患者の体外に配置される。EMF発生器600は、EMセンサ550によって拾われるEM場を放出する。
【0059】
複数のEMF発生器600および/またはEMセンサ550が使用される場合、それらの放出/受信電磁場がコンピュータシステム120(または外科用ロボットシステム10
0の外部にある任意のコンピュータシステム)によって処理される際に信号が分離可能であるように、それらはいくつかの異なる方法で変調されてもよい。したがって、コンピュータシステム120は、複数の信号(送信および/または受信)をそれぞれ別個の入力として処理して、EMセンサ(単数または複数)550の位置に関する別個の三角測量位置、ひいては内視鏡118の位置を提供することができる。例えば、複数のEMF発生器600は、時間的にまたは周波数的に変調されてもよく、各信号が、場合により時間的に重複しているにもかかわらず、(例えば、フィルタリングおよびフーリエ変換などの信号処理技術を使用して)互いの信号から完全に分離可能であるように、直交変調を使用してもよい。さらに、複数のEMセンサ550および/またはEMF発生器600は、デカルト空間において、非ゼロ、非直交の角度で互いに対して配向されてもよく、その結果、EMセンサ(単数または複数)550の向きの変化によって、少なくとも1つのEMセンサ(単数または複数)550が、任意の瞬間に1つ以上のEMF発生器600から少なくともいくつかの信号を受信することになる。例えば、各EMF発生器600は、任意の軸に沿って、2つの他のEM発生器600の各々から(かつ同様に複数のEMセンサ550とともに)小さい角度(例えば7度)でずれてもよい。この構成では、3つすべての軸に沿って、また必要に応じて内視鏡118に沿った複数の点で正確なEMセンサ位置情報を確保するために、必要なだけ多くのEMF発生器またはEMセンサが使用されてもよい。
【0060】
V.B.カメラセンサ
図6Bは、一実施形態による、内視鏡118に近接したカメラの図である。カメラには、デジタルビデオカメラ、ステレオカメラ、高速度カメラ、ライトフィールドカメラなどの任意の種類の光学カメラが挙げられ得る。第1のカメラ610は内視鏡118の長手方向軸と平行である。第2のカメラ620は第1のカメラ610と直交している。カメラはそれぞれ少なくとも2次元で内視鏡の位置および/または向きを示す画像フレームを撮像するため、2つのカメラを互いに直交するように整列させることにより、外科用ロボットシステム100は少なくとも3次元(例えば、ピッチ、ヨーおよびロール軸に対応)で内視鏡に関する情報を受け取ることができる。他の実施形態では、3つ以上のカメラを用いて内視鏡118の画像を撮像してもよい。データ処理モジュール160は、撮像された画像フレームを使用する対象追跡画像処理技術を実装して、内視鏡118のリアルタイム3D位置を特定してもよい。例示的な技術には、相関に基づくマッチング方法、特徴に基づく方法およびオプティカルフローが挙げられる。
【0061】
図6Cは、一実施形態による、基準マーカを含む内視鏡118に近接したモーションカメラの図である。内視鏡118の遠位端に向かって連結された空間センサ550は基準マーカである。モーションカメラ630および640は、基準マーカの位置および動きを追跡する画像フレームを撮像する。図6Cには2つの基準マーカおよび2つのモーションカメラが示されているが、他の実施形態は、基準マーカを追跡するために任意の他の数の、内視鏡に連結された基準マーカおよび/またはモーションカメラを含んでもよい。
【0062】
図6Bのカメラとは対照的に、図6Cのモーションカメラは、基準マーカの動きを表すデータをとらえる。したがって、いくつかの実施形態では、データ処理モジュール160は、基準マーカを使用せずに他の光学カメラでとらえたデータを処理するよりも少ない演算リソースでモーションカメラデータを処理する。例えば、他の光学カメラは、内視鏡118の外観(例えば、色および大きさ)を表すデータをとらえる。しかし、モーションカメラは、各基準マーカのリアルタイム座標位置をとらえれば十分であり得、各基準マーカのリアルタイム座標位置は、データ処理モジュール160が、外科用ロボットシステム100からのコマンドに応答して、内視鏡118の様々な方向(例えば、ピッチ、ヨーおよびロール)の全体的な動きを特定するために使用するのに十分である。
【0063】
患者の体外の内視鏡の位置を特定するのにはカメラに基づくセンサの方が適している場
合があるが、内視鏡が体内にある場合に使用するのにはEMセンサの方が適している場合がある。いくつかの実施形態では、カメラデータを使用する画像処理技術は、例えば、体外で内視鏡を見ているユーザが画像処理技術の結果を検証することができるため、EMセンサに基づく技術よりも正確な、または解像度の高い位置および動きデータを提供する。対照的に、EMセンサは、内視鏡が患者の体内に配置されている場合であっても、EMF発生器によって発生されたEM場を依然として検出することができるという利点を有する。
【0064】
V.C.形状感知光ファイバ
図6Dは、一実施形態による、形状感知光ファイバを有する内視鏡118の図である。空間センサ550は、内視鏡118の内部に埋め込まれた形状感知光ファイバである。内視鏡118に近接して配置されたコンソール650は、形状感知光ファイバに連結される。コンソール650は、形状感知光ファイバを介して光を透過させ、形状感知光ファイバから反射された光を受光する。形状感知光ファイバは、ファイバブラッググレーティング(FBG)のセグメントを含んでもよい。FBGは光の特定の波長を反射し、他の波長を透過させる。コンソール650は、FBGによって反射された光の波長に基づいて、反射スペクトルデータを生成する。
【0065】
データ処理モジュール160は、反射スペクトルデータを分析して、二次元または三次元空間内の内視鏡118の位置および向きデータを生成することができる。具体的には、内視鏡118が屈曲するにつれて、内部に埋め込まれた形状感知光ファイバも屈曲する。FBGによって反射される光の特定の波長は、形状感知光ファイバの形状に基づいて変化する(例えば、「真っ直ぐな」内視鏡は「湾曲した」内視鏡とは異なる形状である)。したがって、データ処理モジュール160は、例えば、反射スペクトルデータの差を識別することによって、(例えば、外科用ロボットシステム100からのコマンドに応答して)内視鏡118が1つ以上の方向に何度屈曲したかを特定することができる。EMセンサと同様に、形状感知光ファイバは、形状感知光ファイバへの見通し線を必要としないため、患者の体内でのデータ収集に適している。
【0066】
V.D.透視撮像
図6Eは、一実施形態による、内視鏡118に近接した透視撮像システム660の図である。内視鏡118は、ロボットアーム102によって、外科的処置を受けている患者670に挿入される。透視撮像システム660は、発生器、検出器および撮像システム(図示せず)を含むCアームである。発生器は、Cアームの下端に連結され、患者670に向かって上方を向いている。検出器は、Cアームの上端に連結され、患者670に向かって下方を向いている。発生器は患者670に向けてX線波を放射する。X線波は患者670を透過し、検出器によって受信される。透視撮像システム660は、受信したX線波に基づいて、内視鏡118など、患者670の体内の身体部分または他の物体の画像を生成する。実際の内視鏡の画像を撮像する、第V.B.節「カメラセンサ」で説明した光学カメラとは対照的に、透視撮像システム660は、患者670の体内の物体の表現、例えば、反射X線に基づく内視鏡の形状の輪郭を含む画像を生成する。したがって、データ処理モジュール160は、例えば、外科用ロボットシステム100からのコマンドに応答して、オプティカルフローなどの前述と同様の画像処理技術を使用して内視鏡の位置および動きを特定することができる。
【0067】
VI.挿入およびロール方向のずれ
図7Aは、一実施形態による、内視鏡118のシース311の外側に延びた内視鏡118のリーダ315の長さ700を示す。長さ700が増大するにつれて、長さ700がシース311によって大きく囲まれなくなるため、リーダ315の遠位端の柔軟性が増大する。比較すると、シース311の材料の方が高い剛性を提供するため、シース311によ
って半径方向に囲まれたリーダ315の部分は柔軟性が低い。いくつかの実施形態では、内視鏡の物理的特性は延出長に基づいて変化することから、外科用ロボットシステム100は、内視鏡を移動させるために、延出を把握するコマンドを提供する必要がある。例えば、シースの外側のリーダの長さの方が長いため、内視鏡の遠位端は、延出が増加するにつれてさらに重くなり得る(および/またはさらに柔軟になり得る)。したがって、同じ屈曲動作を達成するために、外科用ロボットシステム100は、比較的短い延出長で内視鏡を移動させるためのコマンドと比較して、内視鏡のプルワイヤをさらに大きく平行移動させるコマンドを提供する必要がある場合がある。
【0068】
図7Bは、一実施形態による、内視鏡118のシース311に対する内視鏡118のリーダ315の相対ロール角710を示す。リーダ315および/またはシース311は、例えば、内視鏡118の材料の相違により、他の方向よりも特定の方向で柔軟性が高い場合がある。したがって、相対ロール角710に基づいて、内視鏡118の柔軟性は特定の方向で変化し得る。外科用ロボットシステム100はまた、上記のように延出長を把握することに加えて、内視鏡を移動させるためのコマンドを提供する際に相対ロール角を把握する必要がある場合がある。例えば、内視鏡を90度屈曲するようにコマンドを発すると、相対ロール角が5度の場合には実際には80度屈曲することがあるが、相対ロール角が−5度の場合には実際には100度屈曲することがある。
【0069】
VII.較正
VII.A.概要
外科用ロボットシステム100は、内視鏡の動きの不完全性を補償するゲイン値を決定するための較正プロセスを実行する。較正プロセス中、外科用ロボットシステム100は、1つ以上のコマンドに従って1つ以上のプルワイヤを平行移動させることによって、内視鏡を1つ以上の目標位置(または角度)に移動させる。外科用ロボットシステム100は、コマンドに応答して達成された内視鏡の実際の位置および向きを示す空間データを受け取るが、実際の位置は、内視鏡の不完全性のために目標位置とは異なる場合がある。外科用ロボットシステム100は、コマンド、達成されることが望まれる目標位置、および達成された実際の位置に基づいてゲイン値を決定する。外科用ロボットシステム100は、外科的処置の前に、例えば、品質保証のための製造ライン上で、または実験室もしくは臨床現場で、そのような較正プロセスを実行することができる。さらに、外科用ロボットシステム100は、患者に対して外科的処置を実行しながらそのような較正プロセスを実行することができる。
【0070】
簡単な例示的な例として、特定の内視鏡の材料は予想よりも硬い場合がある。較正プロセスが実行される場合、空間データは、内視鏡がピッチ方向に30度の実際の位置に曲がったのに対して、目標位置は60度であったことを示す。例示的な較正プロセスの一部として、外科用ロボットシステム100は、目標位置が実際の位置の値の2倍であるため、内視鏡に対する対応するゲイン値が10進値の2.0であると決定する。他の実施形態では、ゲイン値は、他のフォーマット、例えば、百分率、整数、度単位などを用いて表されてもよい。
【0071】
ゲイン値は、特定のプルワイヤ、内視鏡、運動方向(例えば、正のピッチ方向、負のヨー方向またはロール方向)および/または他の種類の要因に関連付けることができる。具体的には、上述の例は、内視鏡のあらゆる状態に対して2.0の一定のゲイン値を想定する平凡なシナリオである。しかし、実際には、ゲイン値は、独立してまたは組み合わせて、多数の要因に応じて決まるため、内視鏡を較正することはさらに複雑な問題である。例えば、ゲイン値は、正のピッチ方向で2.0、負のピッチ方向で3.0、正のヨー方向で1.5などであり得る。さらに、ゲイン値は、同じ内視鏡でも、第1のプルワイヤについては正のピッチ方向で2.0であり得るが、第2のプルワイヤについては2.2であり得
る。さらに、ゲイン値は、第1の内視鏡の第1のプルワイヤについては2.0であり得るが、第2の内視鏡の第1のプルワイヤについては2.5であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、較正モジュール130は、内視鏡のシースの外側に延びる(または内視鏡のシースによって半径方向に囲まれる)内視鏡のリーダの長さおよび/またはシースに対するリーダの相対ロール角を受け取る。較正モジュール130は、長さおよび/または相対ロール角にさらに基づいてゲイン値を決定する。内視鏡は内視鏡の特定の方向またはセグメントでは柔軟性が高い場合があるため、特定の長さまたは相対ロール角に対するゲイン値は、別の長さまたは相対ロール角に対するゲイン値とは異なる場合がある。
【0073】
一実施形態では、内視鏡(例えば、リーダおよび/またはシース)は、それぞれ異なる程度の剛性を有する複数のセグメントを含む。較正モジュール130は、少なくとも1つのセグメントのヤング率を受け取り、さらにこのヤング率に基づいてゲイン値を決定する。
【0074】
一実施形態では、完全な較正プロセスはいくつかのサブ較正プロセスを含む。例えば、外科用ロボットシステム100は、内視鏡を第1の方向の目標位置に移動させるためのコマンドを提供する。較正モジュール130は、目標位置とは異なり得る内視鏡の実際の位置を示す較正データを受け取る。外科用ロボットシステム100は、内視鏡を緩めて静止位置に戻し、他のいくつかの方向についてデータ収集プロセスを繰り返す。外科用ロボットシステム100はまた、シースの外側のさらに長い長さまでリーダを延ばすためのコマンドを提供し、いくつかの異なる延出長について較正データ収集プロセスを繰り返すことができる。同様に、外科用ロボットシステム100は、シースに対して相対ロール角までリーダを回転させるためのコマンドを提供し、いくつかの異なる相対ロール角について較正データ収集プロセスを繰り返すことができる。
【0075】
較正モジュール130は、サブ較正プロセスのそれぞれからの集約較正データセットに基づいてゲイン値を決定する。較正中に考慮する必要がある要因の潜在的な組合せの数から明らかなように、較正プロセスは、様々なテストの多数の入れ子ループを有するさらに複雑なプロセスになる可能性がある。したがって、例えば、テストする必要があるあらゆる要因を追跡するのを支援し、較正エラーまたは見落としの可能性を減らし、ユーザがテストごとに機械的タスクを手動で実行する必要性を排除するために、外科用ロボットシステム100を使用して較正を自動化することが有利である。
【0076】
いくつかの実施形態では、較正モジュール130は、較正記憶装置140内に、1つ以上の他の要因(例えば、内視鏡を移動させるための対応するコマンドに関する情報、移動方向、特定のプルワイヤの識別子、シースに対するリーダの長さおよび/または相対ロール角、または内視鏡の固有の識別子)とともに較正データおよび関連するゲイン値を記憶する。較正モジュール130は、複数の内視鏡からの情報を含む包括的較正データベースに、較正データ、ゲイン値および/または要因をアップロードしてもよい。
【0077】
VII.B.較正モデル
外科用ロボットシステム100は、1つ以上の種類のモデルを使用して、較正データに基づいて内視鏡を適切に移動させるためのコマンドを生成してもよい。具体的には、コマンドモジュール150は、モデルのうちの1つのパラメータに基づいて内視鏡の各プルワイヤのためのコマンドを生成し、ここでパラメータおよび関連するゲイン値が較正データに基づいて決定される。パラメータは、いくつかのモデルについてはゲイン値と同じであってよいが、他のモデルについては、外科用ロボットシステム100は、パラメータに基づいてゲイン値を決定してもよい。モデルは、内視鏡のリーダ、シース、またはリーダお
よびシースの両方に関連付けられてもよい。リーダおよびシースの両方に関連するモデルの実施形態は、リーダとシースとの間の相互作用、例えば、シースに対するリーダの延出長および相対ロール角を表すパラメータを把握する。
【0078】
一実施形態では、較正モジュール130は、ゲイン値の行列を用いて実装された経験的モデルを使用する。ゲイン値は、以前に完了した較正プロセスからの較正データに基づいて、一組の一次方程式を解くことによって経験的に決定される。較正モジュール130は、入力コマンドを表すベクトル(例えば、内視鏡の各プルワイヤに対する目標平行移動ならびに延出および相対ロール値を含む)にゲイン値の行列を乗算して、調整コマンドを表す出力ベクトル(例えば、プルワイヤのうちの1つ以上のための修正された平行移動を含む)を生成することができる。経験的モデルゲイン値は、内視鏡の屈曲に基づいてプルワイヤ特有の圧縮または拡張を補償してもよい。具体的には、特定のプルワイヤが内視鏡内を移動する距離は、内視鏡の湾曲に基づいて縮小または延長する可能性がある。いくつかの実施形態では、経験的モデルは、反対方向のワイヤ間の依存性を把握する。例えば、第1のワイヤは正のピッチ方向に対応し、第2のワイヤは負のピッチ方向に対応する。第2のワイヤを引っ張りながら第1のワイヤに弛みを設けることは、ともに、内視鏡を負のピッチ方向に屈曲させるという同じ運動に寄与する。
【0079】
一実施形態では、較正モジュール130は、物理学に基づくモデルを使用して、内視鏡が屈曲する際の内視鏡の有効な物理的特性を決定する。物理学に基づくモデルは、内視鏡の動きをさらに完全に捉える可能性を有する。比較として、平凡なモデルは、屈曲した内視鏡がその特定の長さにおける所与の曲げ剛性に従って、内視鏡の特定の長さ全体にわたって一様に屈曲し、内視鏡の残りの長さ全体にわたって真っ直ぐなままであると想定し得る。さらに、物理学に基づくモデルは、それぞれが関連する曲げ剛性を有する個々のセグメントに、内視鏡のリーダおよびシースを分解してもよい。物理学に基づくモデルはまた、プルワイヤの剛性、および任意の特定のセグメントの剛性に対するシースとリーダとの相互作用(例えば、延出長および相対ロール角)の影響を考慮する。
【0080】
物理学に基づくモデルでは、コンピュータシステム120は、逆固体力学(inverse solid mechanics)を使用して、外科用ロボットシステム100が1つ以上のプルワイヤを平行移動させて望ましい運動を達成すべき距離に、内視鏡を移動させるためのコマンド(例えば、ピッチ方向および/またはヨー方向に屈曲する角度を示す)を変換してもよい。さらに、ロボットシステム100は、物理学に基づくモデルを使用することによって、1つ以上のIDMを動かして、屈曲運動に連結された軸方向の変形の結果としての内視鏡の遠位先端部のあらゆる望ましくない運動を補償してもよい。
【0081】
一実施形態では、較正モジュール130は、モデルレス反転プロセス(model−less inversion process)を使用して内視鏡を移動させるためのコマンドを生成する。例えば、較正モジュール130は、ゲイン値および/またはパラメータの使用を必要としないルックアップテーブルを実装する。代わりに、ルックアップテーブルは、較正データに基づいて、以前に記録された入力値(例えば、内視鏡をピッチ方向およびヨー方向に移動させるためのコマンド)を出力値(例えば、内視鏡の各プルワイヤの平行移動)にマッピングする。正確な入力−出力マッピングが分からず、例えば、40度および45度のデータ点を使用して42度の屈曲を内挿することができる場合、ルックアップテーブルは、データ点間で(例えば、ドローネ三角形分割または他の多次元三角測量技術を介して解かれる)内挿するか、外挿してもよい。ルックアップテーブルを実行するためにコンピュータシステム120に必要とされる演算リソースの量を減らすために、較正モジュール130は、テイラー分解などの技法を使用するか、フーリエ表現を使用するデータセットを近似することによって、マッピングのデータセットのサイズを最小化することができる。
【0082】
VII.C.プロセスフロー例
図8Aは、一実施形態による、内視鏡の自動較正のためのプロセス800のフローチャートである。プロセス800は、いくつかの実施形態で図8Aに関連して説明されたものとは異なる工程またはそれ以外の追加の工程を含んでもよいか、図8Aに関連して説明された順序とは異なる順序で工程を実行してもよい。プロセス800は、特に、例えば、それぞれが90度離れており、正または負のピッチまたはヨー方向に対応する4つのプルワイヤを含む内視鏡の実施形態を較正するためのものである。もっとも、プロセス800は、任意の数のプルワイヤに一般化することができ、図8Bを参照してさらに説明され得る。コンピュータシステム120はプロセス800を自動化することができるため、ユーザは外科用ロボットシステム100を使用するために較正手順を手動で実行する必要がない。自動較正は、例えば、このプロセスが内視鏡を較正するのに必要な時間を短縮するため有利である。
【0083】
コマンドモジュール150は、内視鏡を第1の方向の目標位置に移動させるためのコマンドを提供する(804)。較正モジュール130は、コマンドに応答して移動した内視鏡の実際の位置および向きを示す空間データを受け取る(806)。空間データは、第V節「空間センサ」で前述したように、加速度計、ジャイロスコープ、基準マーカ、光ファイバケーブル、カメラまたは撮像システムなどの空間センサ(例えば、内視鏡に連結されるか、内視鏡に近接して配置される)から受け取ることができる。空間データは、1つ以上の移動方向での内視鏡(または内視鏡の一部)の位置および/または向きを表す。コマンドモジュール150は、内視鏡を緩めて静止位置に戻すためのコマンドを提供する(808)。
【0084】
コマンドモジュール150は、内視鏡を第2の方向の目標位置に移動させるためのコマンドを提供する(810)。較正モジュール130は空間データを受け取る(812)。コマンドモジュール150は、内視鏡を緩めて静止位置に戻すためのコマンドを提供する(814)。
【0085】
コマンドモジュール150は、内視鏡を第3の方向の目標位置に移動させるためのコマンドを提供する(816)。較正モジュール130は空間データを受け取る(818)。コマンドモジュール150は、内視鏡を緩めて静止位置に戻すためのコマンドを提供する(820)。
【0086】
コマンドモジュール150は、内視鏡を第4の方向の目標位置に移動させるためのコマンドを提供する(822)。較正モジュール130は空間データを受け取る(824)。コマンドモジュール150は、内視鏡を緩めて静止位置に戻すためのコマンドを提供する(826)。
【0087】
目標位置は、4つの方向のそれぞれに対して一定のままであり得る。いくつかの実施形態では、目標位置は様々な方向間で変化する。例えば、目標位置は、第1および第3の方向に対して90度であり、第2および第4の方向に対して45度である。第1、第2、第3および第4の方向は、任意の特定の順序で、正のピッチ方向、正のヨー方向、負のピッチ方向および負のヨー方向であり得る。他の実施形態では、コマンドは、正のピッチ方向および正のヨー方向の両方に60度など、2つ以上の方向に同時に目標位置に向かって内視鏡を移動させる。プロセス800は4つの方向を含むが、他の実施形態では、コンピュータシステム120は、他の任意の数の(さらに多いまたはさらに少ない)方向について工程804から808を繰り返すことができる。
【0088】
較正モジュール130は、1つ以上の方向に関する空間データに基づいて、内視鏡のプ
ルワイヤのゲイン値を決定する(828)。較正モジュール130は、各プルワイヤに関連するゲイン値を決定してもよい。ゲイン値のうちの少なくとも1つは、1とは異なる値を有し得る。1のゲイン値は、対応するプルワイヤが理想的な動きを示すこと、例えば、内視鏡の実際の運動が、対応するプルワイヤの平行移動に基づく目標運動と一致することを示す。いくつかの実施形態では、較正モジュール130は、プルワイヤのための(例えば、前の較正プロセスで決定された)デフォルトゲイン値を検索し、さらにそのデフォルトゲイン値に基づいてゲイン値を決定する。
【0089】
較正モジュール130は、較正記憶装置140にゲイン値を記憶する(830)。内視鏡は、ゲイン値を記憶するためのコンピュータ可読有形媒体、例えばフラッシュメモリまたはデータベースを含んでもよい。いくつかの実施形態では、コマンドモジュール150は、シースに対するリーダの長さおよび/または相対ロール角を修正するためのコマンドを提供し、外科用ロボットシステム100は、プロセス800の工程を繰り返して、修正された長さおよび/または相対ロール角に関連するゲイン値を決定する。
【0090】
図8Bは、一実施形態による、延出長および相対ロール角に基づく内視鏡の自動較正のためのプロセス840のフローチャートである。プロセス840は、いくつかの実施形態で図8Bに関連して説明されたものとは異なる工程またはそれ以外の追加の工程を含んでもよいか、図8Bに関連して説明された順序とは異なる順序で工程を実行してもよい。プロセス800とは対照的に、プロセス840は、任意の数の方向、ならびに内視鏡のシースに対するリーダの任意の数の延出長および相対ロール角に一般化される。例えば、内視鏡が互いに90度の間隔で離れた4つのプルワイヤを有する代わりに、内視鏡が、互いに120度の間隔で離れた3つのプルワイヤを含むか、異なる角度の間隔(例えば、時計の11時、2時および6時の針の位置)に配置される他の任意の構成にあってよい。
【0091】
外科用ロボットシステム100は、内視鏡をある延出長および/または相対ロール角まで移動させるためのコマンドを提供する(850)。外科用ロボットシステム100は、その延出長および/または相対ロール角で較正を実行する(860)。工程860では、コマンドモジュール150は、内視鏡をある方向の目標位置に移動させるためのコマンドを提供する(862)。較正モジュール130は、内視鏡の実際の位置および向きを示す空間データを受け取る(864)。コマンドモジュール150は、内視鏡を緩めて静止位置に戻すためのコマンドを提供する(866)。外科用ロボットシステム100は、一組の方向の各方向について工程862〜866を繰り返す。さらに、外科用ロボットシステム100は、一組の異なる延出長および/または相対ロール角の各延出長および/または相対ロール角(または延出長と相対ロール角との組合せ)ごとに工程850〜860を繰り返す。較正モジュール130は、各較正から受け取った空間データに基づいてゲイン値を決定する(870)。
【0092】
図9は、一実施形態による、内視鏡の術中自動較正のためのプロセス900のフローチャートである。プロセス900は、いくつかの実施形態で図9に関連して説明されたものとは異なる工程またはそれ以外の追加の工程を含んでもよく、または図9に関連して説明された順序とは異なる順序で工程を実行してもよい。いくつかの実施形態では、コマンドコンソール200は、第II節「コマンドコンソール」で前述した速度モードまたは位置制御モードでプロセス900を使用してもよい。
【0093】
較正モジュール130は、プルワイヤ、リーダおよびシースを含む内視鏡のためのデフォルトゲイン値を検索する(910)。各プルワイヤは、デフォルトゲイン値のうちの1つに関連付けられてもよい。外科用ロボットシステム100は、外科的処置、例えば、尿管鏡検査、経皮的腎切石術(PCNL)、大腸内視鏡検査、蛍光透視法、前立腺切除術、結腸切除術、胆嚢切除術、鼠径ヘルニア、および気管支鏡検査を受ける患者に内視鏡を挿
入する(920)。較正モジュール130は、シースに対するリーダの相対ロール角およびシースによって半径方向に囲まれたリーダの長さに関する情報を受け取る(930)。相対ロール角および長さに関する情報は、内視鏡を移動させるために提供された以前のコマンド、デフォルトの相対ロール角および長さ値、またはセンサ(例えば、内視鏡に連結された加速度計およびジャイロスコープ)によって生成されたデータに基づいてもよい。コマンドモジュール150は、プルワイヤのうちの少なくとも1つを平行移動させることによって内視鏡を移動させるためのコマンドを提供する(940)。
【0094】
較正モジュール130は、コマンドに応答して移動させられた内視鏡の空間データを受け取る(950)。一実施形態では、空間データは透視撮像システムから受け取られる。透視撮像システムは、患者の体内の内視鏡の画像を撮像することができ、それにより、外科用ロボットシステム100が外科的処置中にプロセス900を実行することが可能になる。較正モジュール130は、空間データ、対応するデフォルトゲイン値、延出長、相対ロール角および/またはコマンドに基づいて、新しいゲイン値を決定する(960)。較正モジュール130は、較正記憶装置140に新しいゲイン値を記憶する(970)。外科用ロボットシステム100は、プロセス900によって決定された新しいゲイン値に基づいて、追加のコマンドを生成することができる。例えば、内視鏡は第1のコマンドに応答して80度の実際の位置に移動する。ここで目標位置は実際には90度である。コマンドモジュール150は、新しいゲイン値に基づいて新しいコマンドを生成し、外科用ロボットシステム100を使用して内視鏡を移動させるための新しいコマンドを提供する。新しいコマンドは角度の不一致を補償するため(すなわち、80度は90度より10度足りない)、内視鏡は新しいコマンドに応答して90度の実際の位置に移動する。
【0095】
VIII.その他の考慮事項
この開示を読めば、当業者であれば、本明細書に開示された原理を通して、さらに追加の代替の構造的および機能的設計を認識するであろう。したがって、特定の実施形態および用途を例示し説明してきたが、開示された実施形態は、本明細書に開示された厳密な構造および構成要素に限定されないことを理解されたい。添付の特許請求の範囲に規定された精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された方法および装置の構成、動作および詳細に対して、当業者に明らかな様々な修正、変更および変形を実施することができる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「一実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(an embodiment)」への言及は、その実施形態に関連して説明された特定の要素、特徴、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所における「一実施形態では(in one embodiment)」という句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態に言及しているとは限らない。
【0097】
いくつかの実施形態は、「連結された(coupled)」および「接続された(connected)」という表現をそれらの派生語とともに使用して説明され得る。例えば、いくつかの実施形態は、2つ以上の要素が直接的に物理的または電気的に接触していることを示すために「連結された(coupled)」という用語を使用して説明され得る。しかし、「連結された(coupled)」という用語はまた、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、それでもなお互いに協働または相互作用することを意味し得る。別途明確に記載しない限り、実施形態はこの文脈に限定されない。
【0098】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」またはそれらの任意の他の変形は、
非排他的包含を網羅するように意図される。例えば、要素の列挙を含むプロセス、方法、物品または装置は必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明示的に列挙されていない他の要素またはそのようなプロセス、方法、物品もしくは装置に固有の他の要素を含み得る。さらに、相反する明示的な記載がない限り、「または(or)」は包括的な「または」を指し、排他的な「または」を指さない。例えば、条件AまたはBが、以下のいずれか1つによって満たされる。Aが真であり(または存在する)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)かつBが真である(または存在する)、AおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0099】
さらに、「a」または「an」の使用は、本明細書の実施形態の要素および構成要素を説明するために用いられる。これは、便宜上かつ本発明の一般的な意味を示すために行われているにすぎない。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含むように解釈されるべきであり、単数形は、別段の意味であることが明らかでない限り、複数形も含む。
【0100】
この説明のいくつかの部分は、情報に関する動作のアルゴリズムおよび記号表現に関して本発明の実施形態を説明する。これらのアルゴリズム的記述および表現は、データ処理分野の当業者によって、その作業の実体を他の当業者に効果的に伝えるために一般的に使用されている。これらの動作は、機能的に、計算的に、または論理的に説明されているが、コンピュータプログラムまたは同等の電気回路、マイクロコードなどによって実装されると理解される。さらに、一般性を失うことなく、モジュールとしてこれらの動作の配置に言及することは、時には便利であると証明されている。説明した動作およびそれらに関連するモジュールは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアまたはそれらの任意の組合せで具現化され得る。
【0101】
本明細書に記載の工程、動作またはプロセスのいずれも、単独でまたは他の装置と組み合わせて、1つ以上のハードウェアまたはソフトウェアモジュールを用いて実行または実装され得る。一実施形態では、ソフトウェアモジュールには、説明された工程、動作またはプロセスのいずれかまたはすべてを実行するために、コンピュータプロセッサによって実行され得るコンピュータプログラムコードを含むコンピュータ可読非一時的媒体を含むコンピュータプログラム製品が実装される。
【0102】
本発明の実施形態はまた、本明細書に記載のコンピューティングプロセスによって製造される製品にも関連し得る。そのような製品は、コンピューティングプロセスから生じる情報を含んでもよく、それらの情報は、非一時的な有形のコンピュータ可読記憶媒体上に記憶され、本明細書に記載のコンピュータプログラム製品またはその他のデータの組合せの任意の実施形態を含んでもよい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L
図5M
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
【国際調査報告】