特表2019-531838(P2019-531838A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-531838活動レベル・ペーシングのためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-531838(P2019-531838A)
(43)【公表日】2019年11月7日
(54)【発明の名称】活動レベル・ペーシングのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/365 20060101AFI20191011BHJP
【FI】
   A61N1/365
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2019-522830(P2019-522830)
(86)(22)【出願日】2017年10月30日
(85)【翻訳文提出日】2019年5月31日
(86)【国際出願番号】US2017059063
(87)【国際公開番号】WO2018081721
(87)【国際公開日】20180503
(31)【優先権主張番号】62/415,132
(32)【優先日】2016年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヒュールスカンプ、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ケーン、マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ユッファー、ランス エリック
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053KK02
(57)【要約】
患者の心臓をペーシングするためのシステム、デバイス、および方法が開示される。例示的な方法は、患者の心臓に対して固設された植込み型医療デバイスのモーション・センサを使用して患者のモーション・レベルを決定することと、患者のモーション・レベルに少なくとも一部は基づいてペーシング・レートを設定することとを含んでよい。患者のモーション・レベルは、たとえば、現在の心拍動中にモーション・センサによって感知されたモーション・レベルを、1つまたは複数の以前の心拍動と関連付けられたモーション・レベルと比較することによって決定されてよい。内因的に開始された心拍動とペースにより開始された心拍動との間で移行する心拍動中に、モーション・レベル測定値においてノイズが発生することがある。そのようなノイズの影響を減少させる助けとなるために、種々の技術が、モーション・レベル測定値に適用されてよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓内に植え込み可能な植込み型医療デバイス(IMD)であって、
モーション・センサを含む2つ以上のセンサと、
前記2つ以上のセンサに動作可能に結合されたコントローラと
を備えており、前記コントローラは、
前記センサのうちの1つまたは複数を使用して複数の心拍動を識別するように構成されており、前記複数の心拍動の各々が収縮期と拡張期とを有し、
前記複数の心拍動のうちの2つ以上の各々を内因的に開始された心拍動またはペースにより開始された心拍動と識別するように構成されており、
内因的に開始された心拍動の場合、前記モーション・センサを使用して前記IMDのモーション・レベルを識別し、前記IMDの前記識別されたモーション・レベルを、1つまたは複数の以前の内因的に開始された心拍動に対して識別された前記IMDのモーション・レベルと比較し、前記比較に少なくとも一部は基づいて前記患者のモーション・レベルを識別するように構成されており、
ペースにより開始された心拍動の場合、前記モーション・センサを使用して前記IMDのモーション・レベルを識別し、前記IMDの前記識別されたモーション・レベルを、1つまたは複数の以前のペースにより開始された心拍動に対して識別された前記IMDのモーション・レベルと比較し、前記比較に少なくとも一部は基づいて前記患者の前記モーション・レベルを識別するように構成されており、
前記患者の前記識別されたモーション・レベルに少なくとも一部は基づいてペーシング・レート・パラメータを設定するように構成されている、
植込み型医療デバイス(IMD)。
【請求項2】
ペースにより開始された心拍動にすぐに続く内因的に開始された心拍動の場合、前記コントローラは、その心拍動に基づいて前記患者の前記モーション・レベルを識別しないように構成される、請求項1に記載のIMD。
【請求項3】
内因的に開始された心拍動にすぐに続くペースにより開始された心拍動の場合、前記コントローラは、その心拍動に基づいて前記患者の前記モーション・レベルを更新しないように構成される、請求項1または2に記載のIMD。
【請求項4】
内因的に開始された心拍動の場合、前記コントローラは、
すぐ先行する心拍動が内因的に開始された心拍動であった場合、前記IMDの前記識別されたモーション・レベルを、前記すぐ先行する心拍動に対して以前に識別された前記IMDの前記モーション・レベルと比較するように構成されており、
前記すぐ先行する心拍動がペースにより開始された心拍動であった場合、前記内因的に開始された心拍動の前記収縮期中に前記モーション・センサを使用して前記IMDの前記モーション・レベルを識別しない、または前記IMDの前記識別されたモーション・レベルを無視する、のどちらかであるように構成されている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のIMD。
【請求項5】
ペースにより開始された心拍動の場合、前記コントローラは、
すぐ先行する心拍動がペースにより開始された心拍動であった場合、前記IMDの前記識別されたモーション・レベルを、前記すぐ先行する心拍動に対して以前に識別された前記IMDの前記モーション・レベルと比較するように構成されており、
前記すぐ先行する心拍動が内因的に開始された心拍動であった場合、前記ペースにより開始された心拍動の前記収縮期中に前記モーション・センサを使用して前記IMDのモーション・レベルを識別しない、または前記IMDの前記識別されたモーション・レベルを無視する、のどちらかであるように構成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のIMD。
【請求項6】
前記コントローラは、
内因的に開始された心拍動の場合、前記IMDの前記識別されたモーション・レベルを、2つ以上の以前の内因的に開始された心拍動に対して識別された前記IMDの前記モーション・レベルの平均である前記IMDの平均モーション・レベルと比較するように構成されており、
ペースにより開始された心拍動の場合、前記IMDの前記識別されたモーション・レベルを、2つ以上の以前のペースにより開始された心拍動に対して識別された前記IMDの前記モーション・レベルの平均である前記IMDの平均モーション・レベルと比較するように構成されている、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のIMD。
【請求項7】
内因的に開始された心拍動の場合、前記IMDの前記平均モーション・レベルは重み付き平均であり、
ペースにより開始された心拍動の場合、前記IMDの前記平均モーション・レベルは重み付き平均である、
請求項6に記載のIMD。
【請求項8】
前記2つ以上の以前の内因的に開始された心拍動および前記2つ以上以前のペースにより開始された心拍動がすべて、所定の時間の量を遡る動く時間窓に収まる、請求項6または7に記載のIMD。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記患者の心臓の現在の心拍数を識別するように構成されており、
前記識別された現在の心拍数に少なくとも一部は基づいて、現在の心拍動を2つ以上の心拍数範囲のうちの1つに対応すると識別するように構成されており、
内因的に開始された心拍動の場合、前記IMDの前記識別されたモーション・レベルを、同じ心拍数範囲に対応すると識別されている1つまたは複数の以前の内因的に開始された心拍動に対して識別された前記IMDのモーション・レベルと比較し、前記比較に少なくとも一部は基づいて前記患者のモーション・レベルを識別するように構成されており、
ペースにより開始された心拍動の場合、前記IMDの前記識別されたモーション・レベルを、同じ心拍数範囲に対応すると識別されている1つまたは複数の以前のペースにより開始された心拍動に対して識別された前記IMDのモーション・レベルと比較し、前記比較に少なくとも一部は基づいて前記患者のモーション・レベルを識別するように構成されている、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のIMD。
【請求項10】
前記コントローラは、
前記複数の心拍動の各々を、内因的に開始された心拍動、ペースにより開始された心拍動、または融合心拍動と識別するように構成されており、
融合心拍動の場合、その心拍動に基づいて前記患者の前記モーション・レベルを識別しないように構成されている、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のIMD。
【請求項11】
前記モーション・センサが3軸加速度計を備え、前記2つ以上のセンサのうちの別のものが、前記患者の心臓の電気信号を感知するように構成された回路構成に接続された2つ以上の電極を備える、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のIMD。
【請求項12】
前記IMDがリードレス・心臓・ペースメーカである、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のIMD。
【請求項13】
患者の心臓内に植え込まれたモーション・センサを使用して前記患者の活動レベルを識別するための方法であって、
複数の心拍動を識別することであって、前記複数の心拍動の各々が収縮期と拡張期とを有することと、
前記複数の心拍動のうちの2つ以上の各々を内因的に開始された心拍動またはペースにより開始された心拍動と識別することと、
内因的に開始された心拍動の場合、前記モーション・センサを使用してIMDのモーション・レベルを識別し、前記IMDの前記識別されたモーション・レベルを、1つまたは複数の以前の内因的に開始された心拍動に対して識別された前記IMDのモーション・レベルと比較し、前記比較に少なくとも一部は基づいて前記患者の前記活動レベルを識別することと、
ペースにより開始された心拍動の場合、前記モーション・センサを使用して前記IMDのモーション・レベルを識別し、前記IMDの前記識別されたモーション・レベルを、1つまたは複数の以前のペースにより開始された心拍動に対して識別された前記IMDのモーション・レベルと比較し、前記比較に少なくとも一部は基づいて前記患者の前記活動レベルを識別することと
を備える方法。
【請求項14】
ペースにより開始された心拍動にすぐに続く内因的に開始された心拍動の場合、その心拍動に基づいて前記患者の前記活動レベルを識別せず、
内因的に開始された心拍動にすぐに続くペースにより開始された心拍動の場合、その心拍動に基づいて前記患者の前記活動レベルを識別しない
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者の心臓をペーシング・レートでペーシングすることをさらに備え、前記ペーシング・レートが、前記患者の前記識別された活動レベルに少なくとも一部は基づく、
請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ペーシング療法を患者に送達するためのシステム、デバイス、および方法に関し、より詳細には、患者の活動レベルに基づいてペーシング療法を変調するためのシステム、デバイス、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーシング機器は、十分な量の血液を患者の身体に対して送達する心臓の能力の減少をもたらす種々の心臓疾患に苦しむ患者を治療するために使用されることができる。これらの心臓疾患は、急速な、不規則な、および/または非効率的な心臓収縮に至ることがある。これらの疾患のいくらかを緩和する助けとなるために、種々のデバイス(たとえば、ペースメーカ、除細動器など)が、患者の身体内に埋め込まれることができる。そのようなデバイスは、心臓をモニタし、電気刺激を心臓に提供して、心臓がより正常な、効率的な、および/または安全な様式で動作するのを助け得る。いくつかのケースでは、そのようなデバイスは、患者の活動レベルに基づいて送達されたペーシング療法を変調することがあり、これは、心拍応答ペーシングと呼ばれることもある。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、一般に、ペーシング療法を患者に送達するためのシステム、デバイス、および方法に関し、より詳細には、患者の活動レベルに基づいてペーシング療法を変調するためのシステム、デバイス、および方法に関する。
【0004】
例示的な一実施形態では、患者の心臓内に植え込み可能な植込み型医療デバイス(IMD)は、モーション・センサを含む2つ以上のセンサと、この2つ以上のセンサに動作可能に結合されたコントローラとを備えることがある。コントローラは、センサのうちの1つまたは複数を使用して複数の心拍動を識別することがあり、複数の心拍動の各々は、収縮期と、拡張期とを有する。コントローラは、複数の心拍動のうちの2つ以上の各々を内因的に開始された心拍動またはペースにより開始された心拍動とさらに識別することがある。次いで、内因的に開始された心拍動の場合、コントローラは、内因的に開始された心拍動の収縮期中にモーション・センサ(たとえば加速度計)を使用してIMDのモーション・レベルを識別し、IMDの識別されたモーション・レベルを、1つまたは複数の以前の内因的に開始された心拍動に対して識別されたIMDのモーション・レベルと比較することがあり、この比較に少なくとも一部は基づいて、患者のモーション・レベルをさらに識別することがある。ペースにより開始された心拍動の場合、コントローラは、ペースにより内因的に開始された心拍動の収縮期中にモーション・センサを使用してIMDのモーション・レベルを識別し、IMDの識別されたモーション・レベルを、1つまたは複数の以前のペースにより開始された心拍動に対して識別されたIMDのモーション・レベルと比較することがあり、この比較に少なくとも一部は基づいて、患者のモーション・レベルを識別することがある。患者の識別されたモーション・レベルに少なくとも一部は基づいて、コントローラは、IMDに対するペーシング・レート・パラメータを設定することがある。
【0005】
加えて、または第1の例示的な実施形態の代替的に、ペースにより開始された心拍動にすぐに続く内因的に開始された心拍動の場合、コントローラは、その心拍動に基づいて患者のモーション・レベルを識別しないように構成されることがある。
【0006】
加えて、または代替的に、第1の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかにおいて、内因的に開始された心拍動にすぐに続くペースにより開始された心拍動の場合、コントローラは、その心拍動に基づいて患者のモーション・レベルを更新しないように構成されることがある。
【0007】
加えて、または代替的に、第1の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかにおいて、内因的に開始された心拍動の場合、コントローラは、すぐ先行する心拍動が内因的に開始された心拍動であった場合、IMDの識別されたモーション・レベルを、すぐ先行する心拍動に対して以前に識別されたIMDのモーション・レベルと比較し、すぐ先行する心拍動がペースにより開始された心拍動であった場合、内因的に開始された心拍動の収縮期中にモーション・センサを使用してIMDのモーション・レベルを識別しない、またはIMDの識別されたモーション・レベルを無視する、のどちらかであるように構成されることがある。
【0008】
加えて、または代替的に、第1の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかにおいて、ペースにより開始された心拍動の場合、コントローラは、すぐ先行する心拍動がペースにより開始された心拍動であった場合、IMDの識別されたモーション・レベルを、すぐ先行する心拍動に対して以前に識別されたIMDのモーション・レベルと比較し、すぐ先行する心拍動が内因的に開始された心拍動であった場合、ペースにより開始された心拍動の収縮期中にモーション・センサを使用してIMDのモーション・レベルを識別しない、またはIMDの識別されたモーション・レベルを無視する、のどちらかであるように構成されることがある。
【0009】
加えて、または代替的に、第1の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかにおいて、コントローラは、内因的に開始された心拍動の場合、IMDの識別されたモーション・レベルを、2つ以上の以前の内因的に開始された心拍動に対して識別されたIMDのモーション・レベルの平均であるIMDの平均モーション・レベルと比較し、ペースにより開始された心拍動の場合、IMDの識別されたモーション・レベルを、2つ以上の以前のペースにより開始された心拍動に対して識別されたIMDのモーション・レベルの平均であるIMDの平均モーション・レベルと比較するように構成されることがある。
【0010】
加えて、または代替的に、第1の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかにおいて、内因的に開始された心拍動の場合、IMDの平均モーション・レベルは重み付き平均であり、ペースにより開始された心拍動の場合、IMDの平均モーション・レベルは重み付き平均である。
【0011】
加えて、または代替的に、第1の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかにおいて、2つ以上の以前の内因的に開始された心拍動および2つ以上の以前のペースにより開始された心拍動はすべて、所定の時間の量を遡る動く時間窓に収まる。
【0012】
加えて、または代替的に、第1の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかにおいて、コントローラは、患者の心臓の現在の心拍数を識別し、この識別された現在の心拍数に少なくとも一部は基づいて、現在の心拍動を2つ以上の心拍数範囲のうちの1つに対応すると識別するように構成されることがある。さらに、内因的に開始された心拍動の場合、コントローラは、IMDの前記識別されたモーション・レベルを、同じ心拍数範囲に対応すると識別されている1つまたは複数の以前の内因的に開始された心拍動に対して識別されたIMDのモーション・レベルと比較し、この比較に少なくとも一部は基づいて患者のモーション・レベルを識別することがある。ペースにより開始された心拍動の場合、コントローラは、IMDの識別されたモーション・レベルを、同じ心拍数範囲に対応すると識別されている1つまたは複数の以前のペースにより開始された心拍動に対して識別されたIMDのモーション・レベルと比較し、この比較に少なくとも一部は基づいて患者のモーション・レベルを識別することがある。
【0013】
加えて、または代替的に、第1の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかにおいて、コントローラは、複数の心拍動の各々を、内因的に開始された心拍動、ペースにより開始された心拍動、または融合心拍動と識別し、融合心拍動の場合、その心拍動に基づいて患者のモーション・レベルを識別しないように構成されることがある。
【0014】
加えて、または代替的に、第1の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかにおいて、モーション・センサは3軸加速度計を備え、2つ以上のセンサのうちの別のものは、患者の心臓の電気信号を感知するように構成された2つ以上の電極を備える。
【0015】
加えて、または代替的に、第1の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかにおいて、IMDは、リードレス・心臓(cardiac)・ペースメーカである。
別の例示的な実施形態では、患者の心臓内に植え込まれたモーション・センサを使用して患者の活動レベルを識別するための方法は、複数の心拍動を識別することであって、この複数の心拍動の各々は、収縮期と、拡張期とを有する、識別することと、複数の心拍動のうちの2つ以上の各々を内因的に開始された心拍動またはペースにより開始された心拍動と識別することとを含む。内因的に開始された心拍動の場合、方法は、内因的に開始された心拍動の収縮期中にモーション・センサを使用してIMDのモーション・レベルを識別することと、IMDの識別されたモーション・レベルを、1つまたは複数の以前の内因的に開始された心拍動に対して識別されたIMDのモーション・レベルと比較することと、この比較に少なくとも一部は基づいて、患者の活動レベルを識別することとを含む。ペースにより開始された心拍動の場合、方法は、ペースにより開始された心拍動の収縮期中にモーション・センサを使用してIMDのモーション・レベルを識別することと、IMDの識別されたモーション・レベルを、1つまたは複数の以前のペースにより開始された心拍動に対して識別されたIMDのモーション・レベルと比較することと、この比較に少なくとも一部は基づいて、患者の活動レベルを識別することとを含む。
【0016】
加えて、または代替的に、第2の例示的実施形態は、ペースにより開始された心拍動にすぐに続く内因的に開始された心拍動の場合、その心拍動に基づいて患者の活動レベルを識別しないことをさらに含むことがある。
【0017】
第2の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかに対して加えて、または代替的に、内因的に開始された心拍動にすぐに続くペースにより開始された心拍動の場合、その心拍動に基づいて患者の活動レベルを識別しない。
【0018】
第2の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかに対して加えて、または代替的に、患者の心臓をペーシング・レートでペーシングすること、このペーシング・レートは、患者の前記識別された活動レベルに少なくとも一部は基づく。
【0019】
さらに別の例示的な実施形態では、患者の心臓内に植え込み可能なリードレス・心臓・ペースメーカ(LCP)は、ハウジングと、このハウジングに対して固設された2つ以上の電極であって、患者心臓の電気信号を感知するように構成された2つ以上の電極と、ハウジングの内部に置かれた加速度計と、ハウジングの内部に置かれ、2つ以上の電極および加速度計に動作可能に結合された回路構成とを備える。この回路構成は、2つ以上の電極を使用して複数の心拍動を識別することがあり、この複数の心拍動の各々は、収縮期と、拡張期とを有し、回路構成は、複数の心拍動のうちの2つ以上の各々を、内因的に開始された心拍動またはペースにより開始された心拍動とさらに識別することがある。内因的に開始された心拍動の場合、回路構成は、内因的に開始された心拍動の収縮期中に加速度計を使用してLCPのモーション・レベルを識別し、LCPの識別されたモーション・レベルを、1つまたは複数の以前の内因的に開始された心拍動に対しては識別されているが以前のペースにより開始された心拍動のいずれに対しては識別されていないLCPのモーション・レベルと比較し、この比較に少なくとも一部は基づいて患者の活動レベルを識別することがある。次いで、回路構成は、患者の識別された活動レベルに少なくとも一部は基づくペーシング・レートで、患者の心臓をペースすることがある。
【0020】
第3の例示的な実施形態に加えて、またはその代替的に、ペースにより開始された心拍動にすぐに続く内因的に開始された心拍動の場合、回路構成は、その心拍動に基づいて患者の活動レベルを識別しないように構成されることがある。
【0021】
第3の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかに加えて、または代替的に、ペースにより開始された心拍動の場合、回路構成は、ペースにより開始された心拍動の収縮期中に加速度計を使用してLCPのモーション・レベルを識別し、LCPの識別されたモーション・レベルを、1つまたは複数の以前のペースにより開始された心拍動に対しては識別されているが以前の内因的に開始された心拍動のいずれに対しては識別されていないLCPのモーション・レベルと比較し、この比較に少なくとも一部は基づいて患者の活動レベルを識別するようにさらに構成されることがある。
【0022】
第3の例示的な実施形態に関する上記の実施形態のいずれかに加えて、または代替的に、回路構成は、内因的に開始された心拍動の場合、LCPの識別されたモーション・レベルを、2つ以上の以前の内因的に開始された心拍動に対して識別されたLCPのモーション・レベルの平均であるLCPの平均モーション・レベルと比較し、ペースにより開始された心拍動の場合、回路構成は、LCPDの識別されたモーション・レベルを、2つ以上の以前のペースにより開始された心拍動に対して識別されたLCPのモーション・レベルの平均であるLCPの平均モーション・レベルと比較するように構成されることがあり、2つ以上の以前の内因的に開始された心拍動および前記2つ以上以前のペーシングにより開始された心拍動はすべて、所定の時間の量を遡る動く時間窓に収まる。
【0023】
上記の要約は、本開示の各実施形態またはあらゆる実装形態について説明することを意図したものではない。利点および功績は、本開示のより完全な理解とともに、添付の図面とともに取り上げられる以下の説明および特許請求の範囲を参照することによって、明らかになり、諒解されるであろう。
【0024】
本開示は、添付の図面とともに種々の例示的な実施形態の以下の説明を考慮して、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示の一実施形態による例示的なリードレス・心臓・ペースメーカ(LCP)の概略ブロック図。
図2図1のLCPとともに使用され得る別の例示的な医療デバイスの概略ブロック図。
図3】複数のLCPおよび/または互いと通信する他のデバイスを含む典型的な医療システムの概略図。
図4】本開示の別の実施形態による、LCPと別の医療デバイスとを含むシステムの概略図。
図5】内因的に開始された心拍動とペースにより開始された心拍動の両方の場合の心臓電気信号および例示的なモーション・センサ信号トレーシングを図示するグラフ。
図6】LCPに対するペーシング・レート・パラメータを設定するための例示的な技術の概略流れ図。
図7】LCPに対するペーシング・レート・パラメータを設定するための例示的な技術の概略流れ図。
図8】心拍数範囲分類を利用してLCPに対するペーシング・レート・パラメータを設定するための例示的な技術の概略流れ図。
図9】オフセットを利用してLCPに対するペーシング・レート・パラメータを設定するための例示的な技術の概略流れ図。
図10】較正窓を利用してLCPに対するペーシング・レート・パラメータを設定するための例示的な技術の概略流れ図。
図11A】複数の心拍動に対する例示的な平均化された未加工の加速度計データのグラフ。
図11B】複数の心拍動に対する例示的な平均化された未加工の加速度計データのグラフ。
図11C】複数の心拍動に対する例示的な平均化された未加工の加速度計データのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、種々の修正形態および代替形式に従うが、その細目は、図面において実施形態として図示されており、詳しく説明される。しかしながら、意図は、本開示の態様を、説明される特別な例示的な実施形態に限定することではないことが理解されるべきである。逆に、意図は、本開示の趣旨および範囲に収まるすべての修正形態、均等物、および代替形態を包含することである。
【0027】
以下の説明は、図面を参照しながら読まれるべきであり、これらの図面において、異なる図面における類似の要素は、同じ番号が付けられる。説明および図面は、必ずしも一定の縮尺でなく、例示的な実施形態を示し、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0028】
本開示は、患者のモーション・レベルによりペーシング・パルスの送達を修正するためのシステム、デバイス、および方法について説明する。たとえば、本開示のデバイスは、患者のモーション・レベルを決定するように構成されることがある。次いで、デバイスは、決定されたモーション・レベルによりペーシング・パルスの送達のレートを調整することがある。一例として、デバイスは、より高い患者モーションの期間中にペーシング・パルスの送達レートを基準にして、より低い患者モーションの期間中にペーシング・パルスの送達レートを遅らせることがある。
【0029】
図1は、心臓上または心臓の腔内に植え込まれ得、生理学的信号およびパラメータを感知し、1つまたは複数のタイプの電気刺激療法を患者の心臓に送達するように動作し得る例示的なリードレス・心臓・ペースメーカ(LCP)などの、植込み型医療デバイス(IMD)の概念的な概略ブロック図である。例となる電気刺激療法は、徐脈ペーシング、心拍応答ペーシング療法、心臓再同期療法(CRT)、抗頻拍ペーシング(ATP)療法、および/または同種のものを含んでよい。開示される概念は、他のIMD、ならびに/または、限定するものではないが、リードをもつペースメーカ、除細動器、および/もしくは他の植込み型デバイスもしくは非植込み型デバイスを含む他のデバイスにおいて実装されてよい。
【0030】
図1で見られるように、LCP100は、LCP100内に収容されたまたはハウジング120上で直接的にすべての構成要素をもつ小型デバイスであってよい。いくつかの例では、LCP100は、通信モジュール102と、パルス発生器モジュール104と、電気的感知モジュール106(たとえば、1つまたは複数の電気センサを含む)と、機械的感知モジュール108(たとえば、1つまたは複数の機械的センサを含む)、処理モジュール110(たとえば、メモリと1つまたは複数のプロセッサとを含むコントローラ)と、エネルギー貯蔵モジュール112と、電極114、114’とを含んでよい。回路構成を介して、電極114、114’は、通信モジュール102、パルス発生器モジュール104、電気的感知モジュール106、機械的感知モジュール108、処理モジュール110、および/もしくはエネルギー貯蔵モジュール112の一部であってよく、ならびに/またはそれらと通信する(たとえば、これに動作可能に結合される)ことができる。
【0031】
図1に示されるように、LCP100は、電極114を含んでよく、電極114は、ハウジング120に対して固設され、LCP100を囲む組織および/または血液に電気的に露出されることができる。電極114は、一般に、LCP100および周囲組織および/もしくは血液に、ならびに/またはこれから、電気信号を伝導することがある。そのような電気信号は、いくつかの例を挙げれば、通信信号、電気刺激パルス、および内因性心臓電気信号を含んでよい。内因性心臓電気信号は、心臓によって生成される電気信号を含んでよく、心電図(ECG)によって表されてよい。電極は、複数の心拍動の各々を感知することが可能であるセンサと考慮されてよい。
【0032】
電極114は、人体内での植込みに対して安全であることが知られている種々の金属または合金などの1つまたは複数の生体適合性導電材料を含むことがある。いくつかの例では、電極114は、一般に、LCP100のどちらかの端の上に配置されることがあり、モジュール102、104、106、108、および110のうちの1つまたは複数と電気通信することがある。電極114(たとえば、2つ以上の電極114)がハウジング120に直接的に固設される実施形態では、絶縁材料は、電極114を隣接する電極、ハウジング120、および/またはLCP100の他の部品から電気的に絶縁することがある。いくつかの例では、電極114のうちのいくつかまたはすべては、ハウジング120から離隔され、接続ワイヤを通じてハウジング120および/またはLCP100の他の構成要素に接続されることがある。そのような事例では、電極114は、ハウジング120から離れて延びる最後部(図示せず)の上に留置されることがある。
【0033】
図1に図示されるように、いくつかの実施形態では、LCP100は、電極114’を含むことがある。電極114’は、電極114に加えられてもよいし、電極114のうちの1つまたは複数と置き換えてもよい。電極114’は、電極114’がLCP100の側面上に配置されることを除いて、電極114に類似してもよい。いくつかのケースでは、電極114’は、LCP100が通信信号および/もしくは電気刺激パルスを送達し得、ならびに/または、内因性心臓電気信号、通信信号、および/もしくは電気刺激パルスを感知し得る、電極の数を増加させることがある。
【0034】
電極114および/または114’は、さまざまなサイズおよび/または形状のいずれかを仮定してよく、さまざまな間隔のいずれかで離隔されてよい。たとえば、電極114は、2から20ミリメートル(mm)の外径を有することがある。他の実施形態では、電極114および/または114’は、2、3、5、7ミリメートル(mm)の直径、または他の任意の適した直径、寸法、および/もしくは形状を有することがある。電極114および/または114’のための例となる長さは、たとえば、1、3、5、10ミリメートル(mm)、または他の任意の適した長さを含んでよい。本明細書で使用されるように、長さは、ハウジング120の外表面から離れて延びる電極114および/または114’の寸法である。いくつかの例では、電極114および/または114’のうちの少なくともいくつかは、20、30、40、50ミリメートル(mm)の距離、または他の任意の適した間隔によって、互いから離隔されることがある。単一のデバイスの電極114および/または114’は、互いに関して異なるサイズを有してよく、デバイス上の電極の間隔および/または長さは、均一であってもよいし、均一でなくてもよい。
【0035】
図示される実施形態では、通信モジュール102は、電極114および/または114’に電気的に結合されることがあり、センサ、プログラマ、他の医療デバイス、および/または同種のものなどの他のデバイスと通信するために、通信パルスを患者の組織に送達するように構成されることがある。通信信号は、本明細書で使用されるように、単独で、または1つまたは複数の他の変調信号とともに、のどちらかで、情報を別のデバイスに伝達する任意の変調信号であってよい。いくつかの実施形態では、通信信号は、心臓の捕捉をもたらさないが依然として情報を伝達する閾値下信号に限定されることがある。通信信号は、患者の身体の外部または内部のどちらかに設置された別のデバイスに送達されることがある。いくつかの例では、通信は、種々の時間の量によって分離される別個の通信パルスという形をとることがある。これらのケースのうちのいくつかでは、継続的なパルス間のタイミングは、情報を伝達し得る。通信モジュール102は、加えて、他のデバイスによって送達された通信信号に対して感知するように構成されることがあり、他のデバイスは、患者の身体の外部に設置されてもよいし、内部に設置されてもよい。
【0036】
通信モジュール102は、1つまたは複数の所望の機能を達成する助けとなるために通信することがある。いくつかの例となる機能としては、感知されたデータを送達すること、通信されたデータを不整脈などのイベントの発生を決定するために使用すること、電気刺激療法の送達を協調させること、および/または他の機能がある。いくつかのケースでは、LCP100は、通信信号を使用して、未加工の情報、処理された情報、メッセージおよび/もしくはコマンド、ならびに/または他のデータを通信することがある。未加工の情報としては、感知された電気信号(たとえば感知されたECG)、結合されたセンサから収集された信号、および同種のものなどの情報があることがある。いくつかの実施形態では、処理された情報としては、1つまたは複数の信号処理技術を使用してフィルタリングされた信号があり得る。処理された情報としては、決定された心拍数、決定された心拍動のタイミング、他の決定されたイベントのタイミング、閾値クロッシング(crossing)の決定、モニタされる時間期間の満了、加速度計信号、活動レベル・パラメータ、血液−酸素パラメータ、血圧パラメータ、心音パラメータ、および同種のものなどの、LCP100および/または別のデバイスによって決定されるパラメータおよび/またはイベントもあり得る。メッセージおよび/またはコマンドとしては、アクションをとるように別のデバイスに指示する命令または同種のもの、送信側デバイスの差し迫ったアクションの通知、受信側デバイスから読み取るための要求、受信側デバイスにデータを書き込むための要求、情報メッセージ、および/または他のメッセージコマンドがあり得る。
【0037】
少なくともいくつかの実施形態では、通信モジュール102(またはLCP100)は、通信モジュール102が通信パルスを送達するどの電極114および/または114’を選択するために、電極114および/または114’のうちの1つまたは複数を通信モジュール102に選択的に接続するためのスイッチング回路構成をさらに含むことがある。通信モジュール102が、伝導された信号、無線周波数(RF)信号、光信号、音響信号、誘導結合、および/または他の任意の適した通信方法を介して他のデバイスと通信していることがあることが企図されている。
【0038】
通信モジュール102が電気通信信号を生成する場合、通信モジュール102は、通信信号を生成し送達するのを支援するための1つまたは複数のコンデンサ素子および/または他の電荷貯蔵デバイスを含むことがある。図示される実施形態では、通信モジュール102は、エネルギー貯蔵モジュール112内に貯蔵されたエネルギーを使用して、通信信号を生成することがある。少なくともいくつかの例では、通信モジュール102は、エネルギー貯蔵モジュール112に接続されたスイッチング回路を含むことがあり、スイッチング回路構成を用いて、通信信号を生成するためにエネルギー貯蔵モジュール112を電極114/114’のうちの1つまたは複数に接続することがある。
【0039】
図1に図示されるように、パルス発生器モジュール104は、電極114および/または114’のうちの1つまたは複数に電気的に接続されることがある。パルス発生器モジュール104は、1つまたは複数の電気刺激療法を成し遂げるために、電気刺激パルスを生成して、電気刺激パルスを電極114および/または114’のうちの1つまたは複数を介して患者の組織に送達するように構成されることがある。本明細書で使用される電気刺激パルスは、任意のタイプの病気または異常の治療の目的で患者の組織に送達され得る電気信号を包括することが意味される。たとえば、心臓病を治療するために使用されるとき、パルス発生器モジュール104は、患者の心臓を捕捉する、すなわち、送達された電気刺激パルスに応答して心臓を収縮させるために、電気刺激ペーシング・パルスを生成することがある。これらのケースのうちのいくつかでは、LCP100は、たとえば心拍適合ペーシングにおいて、パルス発生器モジュール104が電気刺激パルスを生成するレートを変化させることがある。他の実施形態では、電気刺激パルスとしては、心臓にショックを与えて細動から脱するまたは正常な心調律になるための除細動/カルディオバージョン・パルスがあり得る。さらに他の実施形態では、電気刺激パルスとしては、抗頻拍ペーシング(ATP)パルスがあり得る。これらは、いくつかの例に過ぎないことを理解されたい。他の不具合を治療するために使用されるとき、パルス発生器モジュール104は、神経刺激療法または同種のものに適した電気刺激パルスを生成することがある。
【0040】
パルス発生器モジュール104は、適切な電気刺激パルスを生成し送達するのを支援するための1つまたは複数のコンデンサ素子および/または他の電荷貯蔵デバイスを含むことがある。少なくともいくつかの実施形態では、パルス発生器モジュール104は、エネルギー貯蔵モジュール112内に貯蔵されたエネルギーを使用して、電気刺激パルスを生成することがある。いくつかの特別な実施形態では、パルス発生器モジュール104は、エネルギー貯蔵モジュール112に接続されたスイッチング回路を含むことがあり、電気刺激パルスを生成するためにエネルギー貯蔵モジュール112を電極114/114’のうちの1つまたは複数に接続することがある。
【0041】
LCP100は、電気的感知モジュール106を含むことがある。電気的感知モジュール106は、電極114および/または114’から電気的感知モジュール106に伝導された内因性心臓電気信号を感知するように構成されることがある。たとえば、電気的感知モジュール106は、1つまたは複数の電極114および/または114’に電気的に接続されることがあり、電気的感知モジュール106は、センサ増幅器または同種のものを介して電極114および/または114’を通じて伝導された心臓電気信号を受信するように構成されることがある。いくつかの実施形態では、心臓電気信号は、LCP100が植え込まれた腔からの局部的な情報を表すことがある。たとえば、LCP100が心臓の心室内に植え込まれる場合、電極114および/または114’を通じてLCP100によって感知された心臓電気信号は、心室心臓電気信号を表すことがある。電気的感知モジュール106は、いくつかのケースでは、複数の心拍動の各々を内因的に開始された心拍動またはペースにより開始された心拍動と識別するように構成されることがある。
【0042】
さらに、LCP100は、機械的感知モジュール108を含むことがある。機械的感知モジュール108は、2軸加速度計もしくは3軸加速度計などの多軸加速度計を含む加速度計、2軸ジャイロスコープもしくは3軸ジャイロスコープなどの多軸ジャイロスコープを含むジャイロスコープ、血圧センサ、心音センサ、圧電センサ、血液−酸素センサ、ならびに/または心臓および/もしくは患者の1つもしくは複数の生理学的パラメータを測定する他のセンサなどの、種々のセンサを含んでもよいし、これに電気的に接続されてもよい。機械的感知モジュール108は、存在するとき、種々の生理学的パラメータを指し示すセンサから信号を収集することがある。
【0043】
電気的感知モジュール106と機械的感知モジュール108の両方は、処理モジュール110に接続されることがあり、感知された心臓電気信号および/または生理学的信号を表す信号を処理モジュール110に提供することがある。図1に関して別々の感知モジュールと説明されているが、いくつかの実施形態では、電気的感知モジュール106および機械的感知モジュール108は、単一のモジュールへと組み合わされることがある。少なくともいくつかの例では、LCP100は、電気的感知モジュール106および機械的感知モジュール108のうちの1つのみを含むことがある。いくつかのケースでは、処理モジュール110、電気的感知モジュール106、機械的感知モジュール108、通信モジュール102、パルス発生器モジュール104、および/またはエネルギー貯蔵モジュールの任意の組み合わせが、LCP100のコントローラと考慮されることがある。
【0044】
処理モジュール110は、LCP100の動作を指示するように構成されることがあり、いくつかの実施形態では、コントローラと称されることがある。たとえば、処理モジュール110は、電気的感知モジュール106からの心臓電気信号および/または機械的感知モジュール108からの生理学的信号を受信するように構成されることがある。受信された信号に基づいて、処理モジュール110は、たとえば、患者の活動レベルに基づいてペーシングのレートを調整することがある(たとえば、心拍適合ペーシング)。そのように提供されるとき、処理モジュール110は、心拍数の増加(たとえば、代謝需要の増加による)およびパルス発生器モジュール104が電気刺激パルスを生成するレートの増加の必要性を指し示すことがある、患者の1つまたは複数の生理学的パラメータをモニタすることがある。LCP100の機械的感知モジュール108のモーション・センサ(たとえば加速度計)によって検出されるモーションは、患者の活動レベルだけでなく拍動している心臓のモーションも含むので、モーション・センサを使用して患者の活動レベルを決定することは、難しい場合がある。図6〜10は、LCP内のモーション・センサ(たとえば加速度計)を使用した心拍応答ペーシングを支援するための例示的な方法について説明する。
【0045】
いくつかのケースでは、処理モジュール110は、不整脈の発生およびタイプならびにLCP100が除去されたかどうかなどの他の決定を決定することがある。処理モジュール110は、通信モジュール102から情報をさらに受信することがある。いくつかの実施形態では、処理モジュール110は、加えて、そのような受信された情報を使用して、不整脈の発生およびタイプならびに/またはLCP100が除去されたかなどの他の決定を決定することがある。依然としていくつかの追加の実施形態では、LCP100は、電気的感知モジュール106および/または機械的感知モジュール108から受信された信号の代わりに、受信された情報を使用することがある−たとえば、受信された情報が、電気的感知モジュール106および/もしくは機械的感知モジュール108から受信された信号よりも正確であると思われる場合、または電気的感知モジュール106および/もしくは機械的感知モジュール108が使用不可能になったまたはLCP100から省かれた場合。
【0046】
不整脈の発生を決定した後、処理モジュール110は、決定された不整脈を治療するために、1つまたは複数の電気刺激療法により電気刺激パルスを生成するようにパルス発生器モジュール104を制御することがある。たとえば、処理モジュール110は、1つまたは複数の電気刺激療法を成し遂げるために、異なる順序で変化するパラメータをもつペーシング・パルスを生成するように、パルス発生器モジュール104を制御することがある。一例として、徐脈ペーシング療法を送達するようにパルス発生器モジュール104を制御するうえで、処理モジュール110は、患者の心臓が所定の閾値よりも下に低下するのを防止する助けとなるために、定期的なインターバルで患者の心臓を捕捉するように設計されたペーシング・パルスを送達するように、パルス発生器モジュール104を制御することがある。
【0047】
ATP療法の場合、処理モジュール110は、内因性心臓電気信号に応答するのではなく、送達されたペーシング・パルスに応答して、心臓を強制的に拍動させようとして、患者の内因性心拍数よりも速いレートでペーシング・パルスを送達するように、パルス発生器モジュール104を制御することがある。心臓がペーシング・パルスに続いていると、処理モジュール110は、送達されるペーシング・パルスのレートをより安全なレベルまで減少させるようにパルス発生器モジュール104を制御することがある。心臓再同期療法(CRT)では、処理モジュール110は、心臓をより効率的に収縮させるために、別のデバイスと協調してペーシング・パルスを送達するように、パルス発生器モジュール104を制御することがある。パルス発生器モジュール104が除細動/カルディオバージョン療法のために除細動および/またはカルディオバージョン・パルスを生成することが可能であるケースでは、処理モジュール110は、そのような除細動および/またはカルディオバージョン・パルスを生成するようにパルス発生器モジュール104を制御することがある。いくつかのケースでは、処理モジュール110は、上記で説明されたそれらの例とは異なる電気刺激療法を提供するために、電気刺激パルスを生成するように、パルス発生器モジュール104を制御することがある。
【0048】
異なる順序で異なるタイプの電気刺激パルスを生成するようにパルス発生器モジュール104を制御することの他に、いくつかの実施形態では、処理モジュール110はまた、変化するパルス・パラメータをもつ種々の電気刺激パルスを生成するようにパルス発生器モジュール104を制御することがある。たとえば、各電気刺激パルスは、パルス幅と、パルス振幅とを有することがある。処理モジュール110は、特定のパルス幅とパルス振幅とをもつ種々の電気刺激パルスを生成するようにパルス発生器モジュール104を制御することがある。たとえば、処理モジュール110は、電気刺激パルスが効果的に心臓を捕捉していない場合、パルス発生器モジュール104に電気刺激パルスのパルス幅および/またはパルス振幅を調整させることがある。種々の電気刺激パルスの特定のパラメータのそのような制御は、LCP100が電気刺激療法のより効果的な送達を提供するのを助けることがある。
【0049】
いくつかの実施形態では、処理モジュール110は、情報を他のデバイスに送信するように通信モジュール102をさらに制御することがある。たとえば、処理モジュール110は、デバイスのシステムの他のデバイスと通信するために1つまたは複数の通信信号を生成するように通信モジュール102を制御することがある。たとえば、処理モジュール110は、特別なパルス系列内の通信信号を生成するように通信モジュール102を制御することがあり、特定の系列は、異なる情報を伝達する。通信モジュール102はまた、処理モジュール110による潜在的なアクションのための通信信号を受信することがある。
【0050】
さらなる実施形態では、処理モジュール110は、通信モジュール102およびパルス発生器モジュール104が通信信号および/または電気刺激パルスを患者の組織に送達するスイッチング回路構成を制御することがある。上記で説明されたように、通信モジュール102とパルス発生器モジュール104の両方は、1つまたは複数の電極114および/114’を通信モジュール102および/またはパルス発生器モジュール104に接続するための回路構成を含むことがあり、そのため、それらのモジュールは、通信信号および電気刺激パルスを患者の組織に送達し得る。通信モジュール102および/またはパルス発生器モジュール104が通信信号および電気刺激パルスを送達する1つまたは複数の電極の特定の組み合わせは、通信信号の受信および/または電気刺激パルスの効果に影響することがある。通信モジュール102およびパルス発生器モジュール104の各々がスイッチング回路構成を含むことがあることが説明されたが、いくつかの実施形態では、LCP100は、通信モジュール102、パルス発生器モジュール104、ならびに電極114および/または114’に接続された、単一のスイッチング・モジュールを有することがある。そのような実施形態では、処理モジュール110は、適切な場合にはモジュール102/104と電極114/114’を接続するようにスイッチング・モジュールを制御することがある。
【0051】
いくつかの実施形態では、処理モジュール110は、超大規模集積(VLSI)チップまたは特定用途向け集積回路(ASIC)などのあらかじめプログラムされたチップを含むことがある。そのような実施形態では、チップは、LCP100の動作を制御するために、制御論理を用いてあらかじめプログラムされてよい。あらかじめプログラムされたチップを使用することによって、処理モジュール110は、基本機能を維持することを可能にしながら、他のプログラム可能な回路よりも小さい電力を使用し、それによって、LCP100のバッテリー寿命を潜在的に増加させ得る。他の事例では、処理モジュール110は、プログラム可能なマイクロプロセッサまたは同種のものを含むことがある。そのようなプログラム可能なマイクロプロセッサは、製造後に使用者がLCP100の制御論理を調整することを可能にし、それによって、あらかじめプログラムされたチップを使用するときよりも大きなLCP100の柔軟性を可能にし得る。依然として他の実施形態では、処理モジュール110は、単一の構成要素でないことがある。たとえば、処理モジュール110は、種々の説明される機能を実行するために、LCP100内の異種の(disparate)場所において位置付けられた複数の構成要素を含むことがある。たとえば、ある種の機能は、処理モジュール110の1つの構成要素内で実行されることがあるが、他の機能は、処理モジュール110の別々の構成要素内で実行される。
【0052】
処理モジュール110は、追加の実施形態では、メモリ回路を含むことがあり、処理モジュール110は、メモリ回路上に情報を記憶し、メモリ回路から情報を読み取ることができる。他の実施形態では、LCP100は、処理モジュール110と通信する別々のメモリ回路(図示せず)を含むことがあり、したがって、処理モジュール110は、この別々のメモリ回路から情報を読み取り、この別々のメモリ回路に情報を書き込むことができる。メモリ回路は、処理モジュール110の一部であろうと処理モジュール110と別々であろうと、揮発性メモリであってもよいし、不揮発性メモリであってもよいし、揮発性メモリと不揮発性メモリの組み合わせであってもよい。
【0053】
エネルギー貯蔵モジュール112は、LCP100に対して、その動作のために、電源を提供することがある。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵モジュール112は、再充電不能リチウム・ベース・バッテリーであることがある。他の実施形態では、再充電不能バッテリーは、他の適した材料から作られてよい。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵モジュール112は、充電可能バッテリーを含むことがある。依然として他の実施形態では、エネルギー貯蔵モジュール112は、コンデンサまたは超コンデンサなどの他のタイプのエネルギー貯蔵デバイスを含むことがある。
【0054】
患者の身体の内部にLCP100を植え込むために、オペレータ(たとえば、医師、臨床医など)は、LCP100を患者の心臓の心臓組織に固定することがある。固定を容易にするために、LCP100は、1つまたは複数のアンカー116を含むことがある。1つまたは複数のアンカー116は、図1では概略的に図示されている。1つまたは複数のアンカー116は、任意の数の固定機構またはアンカリング機構を含んでよい。たとえば、1つまたは複数のアンカー116は、1つまたは複数のピン、ステープル、ねじ山、ねじ、らせん状のもの、タイン(tine)、および/または同種のものを含んでよい。いくつかの実施形態では、図示されていないが、1つまたは複数のアンカー116は、その外表面上にアンカー部材の少なくとも部分的な長さに沿って延び得るねじ山を含むことがある。ねじ山は、心臓組織内にアンカー部材を固定するのを助けるために、心臓組織とアンカーとの間の摩擦を提供し得る。いくつかのケースでは、1つまたは複数のアンカー116は、心臓組織にねじ込まれることが可能であるコルク抜きに似た形状を有するアンカー部材を含むことがある。他の実施形態では、アンカー116は、周囲の心臓組織との係合を容易にするために、逆とげ、スパイク、または同種のものなどの他の構造を含むことがある。
【0055】
いくつかの例では、LCP100は、患者の心臓上または患者の心臓の腔内に植え込まれるように構成されることがある。たとえば、LCP100は、患者の心臓の左心房、右心房、左心室、または右心室のいずれかの中に植え込まれてよい。特定の腔の中に植え込まれることによって、LCP100は、他のデバイスがそのような分解能で感知することが可能でないことがある特定の腔から発するまたは出る心臓電気信号を感知することが可能であることがある。LCP100が、患者の心臓上に植え込まれるように構成される場合、LCP100は、心臓の腔のうちの1つの上に、またはそれに隣接して、植え込まれるように構成されてもよいし、内因的に生成された心臓電気信号が一般にたどる経路上に、またはそれに隣接して、植え込まれるように構成されてもよい。これらの例では、LCP100は、局所的な内因性心臓電気信号を感知し、局所的な電気刺激療法を送達するための強化された能力も有することがある。LCP100が加速度計を含む実施形態では、LCP100は、加えて、LCP100が取り付けられた心臓壁のモーションを感知することが可能であることがある。
【0056】
図2は、別のデバイスすなわち医療デバイス(MD)200の一実施形態を示し、MD200は、生理学的信号およびパラメータを感知し、1つまたは複数のタイプの電気刺激療法を患者の組織に送達するように動作し得る。図示される実施形態では、MD200は、通信モジュール202と、パルス発生器モジュール204と、電気的感知モジュール206と、機械的感知モジュール208と、処理モジュール210と、エネルギー貯蔵モジュール218とを含むことがある。モジュール202、204、206、208、および210の各々は、1つまたは複数の様式で、LCP100のモジュール102、104、106、108、および110に類似してもよく、ならびに/またはこれらと異なってもよい。加えて、エネルギー貯蔵モジュール218は、1つまたは複数の様式で、LCP100のエネルギー貯蔵モジュール112に類似してもよく、および/またはこれと異なってもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、MD200は、ハウジング220内でLCP100の体積よりも大きな体積を有することがある。そのような実施形態では、MD200は、より大きなエネルギー貯蔵モジュール218および/またはLCP100の処理モジュール110よりも複雑な動作を扱うことが可能であるより大きな処理モジュール210を含むことがある。
【0057】
MD200は、図1に図示されるなどの、別のリードレス・デバイスであってよいが、いくつかの事例では、MD200は、リード212などのリードを含むことがある。リード212は、電極214とハウジング220内に設置された1つまたは複数のモジュールとの間で電気信号を伝導する電気ワイヤを含むことがある。いくつかのケースでは、リード212は、MD200のハウジング220に接続され、これから離れて延びることがある。いくつかの実施形態では、リード212は、患者の心臓上に植え込まれてもよいし、この中に植え込まれてもよいし、これに隣接して植え込まれてもよい。リード212は、リード212上の種々の場所においてハウジング220から種々の距離のところに位置付けられた1つまたは複数の電極214を含むことがある。いくつかのリード212は、単一の電極214のみを含むことがあるが、他のリード212は、複数の電極214を含むことがある。一般に、電極214は、リード212が患者の中に植え込まれるとき、電極214のうちの1つまたは複数が所望の機能を実行するために位置付けられるように、リード212上に位置付けられてよい。いくつかのケースでは、電極214のうちの1つまたは複数が、患者の心臓組織と接触することがある。他のケースでは、電極214のうちの1つまたは複数は、皮下であるが患者の心臓に隣接して位置付けられることがある。
【0058】
MD200は、リード212上に配置されない1つまたは複数の電極214も含んでよい。たとえば、1つまたは複数の電極214は、ハウジング220に対して直接的に接続されてよい。
【0059】
電極214は、内因的に生成された電気心臓信号をリード212に伝導し得る。リード212は、今度は、受信された電気心臓信号をMD200のモジュール202、204、206、および208のうちの1つまたは複数に伝導し得る。
【0060】
いくつかのケースでは、MD200が、電気刺激信号を生成することがあり、リード212が、生成された電気刺激信号を電極214に伝導することがある。次いで、電極214は、電気刺激信号を患者の心臓組織に(直接的に、または間接的に、のどちらかで)伝導することがある。
【0061】
リード212は、いくつかの実施形態では、加えて、加速度計、血圧センサ、心音センサ、血液−酸素センサ、ならびに/または心臓および/もしくは患者の1つもしくは複数の生理学的パラメータを測定するように構成された他のセンサなどの、1つまたは複数のセンサを含むことがある。そのような実施形態では、機械的感知モジュール208は、リード212と電気通信することがあり、そのようなセンサから生成された信号を受信することがある。
【0062】
必須ではないが、いくつかの実施形態では、MD200は、植込み型医療デバイスであることがある。そのような実施形態では、MD200のハウジング220は、たとえば、患者の経胸壁領域内に植え込まれてよい。ハウジング220は、一般に、人体内の植込みに対して安全であるいくつかの知られている材料のいずれかを含んでよく、植え込まれるとき、患者の身体の流体および組織からMD200の種々の構成要素を気密に封止し得る。そのような実施形態では、リード212は、患者の心臓内、患者の心臓に隣接して、患者の脊柱に隣接して、または他の任意の所望の場所などの、患者の中の1つまたは複数の種々の場所において植え込まれてよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、MD200は、植込み型心臓・ペースメーカ(ICP)であることがある。これらの実施形態では、MD200は、患者の心臓の上またはその中に植え込まれた1つまたは複数のリード、たとえばリード212を有することがある。1つまたは複数のリード212は、患者の心臓の心臓組織および/または血液と接触する1つまたは複数の電極214を含んでよい。MD200は、内因的に生成された心臓電気信号を感知し、たとえば、感知された信号の分析に基づいて1つまたは複数の心臓不整脈を決定するように構成されることがある。MD200は、心臓内に植え込まれたリード212を介して、CRT、ATP療法、徐脈療法、および/または他の療法タイプを送達するように構成されることがある。いくつかの実施形態では、MD200は、加えて、除細動/カルディオバージョン療法を提供するように構成されることがある。
【0064】
いくつかの例では、MD200は、植込み型カルディオバータ除細動器(ICD)であることがある。そのような実施形態では、MD200は、患者の心臓内に植え込まれた1つまたは複数のリードを含むことがある。MD200はまた、電気心臓信号を感知し、感知された電気心臓信号に基づいて頻脈性不整脈の発生を決定し、頻脈性不整脈の発生の決定に応答して(たとえば、除細動および/またはカルディオバージョン・パルスを患者の心臓に送達することによって)除細動および/またはカルディオバージョン療法を送達するように構成されてよい。他の実施形態では、MD200は、皮下植込み型カルディオバータ除細動器(SICD)であることがある。MD200がSICDである実施形態では、リード212のうちの1つは、皮下に植え込まれたリードであってよい。MD200がSICDである少なくともいくつかの実施形態では、MD200は、皮下であるが胸腔の外側に植え込まれた単一のリードのみを含んでよいが、これは、必須ではない。
【0065】
いくつかの実施形態では、MD200は、植込み型医療デバイスでないことがある。そうではなく、MD200は、患者の身体の外部にあるデバイスであることがあり、電極214は、患者の身体上に留置された皮膚電極であることがある。そのような実施形態では、MD200は、表面電気信号(たとえば、心臓によって生成された電気心臓信号、または患者の身体内に植え込まれたデバイスによって生成され、身体を通じて皮膚に伝導された電気信号)を感知することが可能であることがある。MD200は、皮膚電極214を介して、たとえば除細動療法を含む種々のタイプの電気刺激療法を送達するようにさらに構成されることがある。
【0066】
図3は、医療デバイス・システムと、この医療デバイス・システムの複数の医療デバイス100a、100b、306、および/または310が通信し得る通信経路の一実施形態を例示する。図示される実施形態では、医療デバイス・システム300は、第1のLCP100aと、第2のLCP100bと、外部医療デバイス306と、他のセンサ/デバイス310とを含むことがある。
【0067】
外部デバイス306は、MD200に関して上述したように、患者の身体の外部に配置されたデバイスであってよい。少なくともいくつかの例では、外部デバイス306は、以下でより詳しく説明されるように、デバイス・プログラマなどの外部サポート・デバイスを表すことがある。
【0068】
他のセンサ/デバイス310は、ICP、ICD、およびSICDなどの、以前にMD200に関して説明されたデバイスのいずれかであってよい。他のセンサ/デバイス310は、加速度計、血圧センサ、または同種のものなどの、患者についての情報を収集する種々の診断センサも含んでよい。いくつかのケースでは、他のセンサ/デバイス310は、システム300の1つまたは複数のデバイスをプログラムするために使用され得る外部プログラマ・デバイスを含んでよい。
【0069】
システム300の種々のデバイスは、通信経路308を介して通信し得る。たとえば、LCP100aおよび/または100bは、内因性心臓電気信号を感知することがあり、そのような信号を、通信経路308を介してシステム300の1つまたは複数の他のデバイス100a/100b、306、および310に通信することがある。一実施形態では、デバイス100a/100bのうちの1つまたは複数は、そのような信号を受信し、受信された信号に基づいて、不整脈の発生を決定することがある。いくつかのケースでは、1つまたは複数のデバイス100a/100bは、そのような決定をシステム300の1つまたは複数の他のデバイス306および310に通信することがある。いくつかのケースでは、システム300のデバイス100a/100b、306、および310のうちの1つまたは複数は、適した電気刺激を患者の心臓に送達することなどによって、通信された不整脈の決定に基づいてアクションをとることがある。システム300のデバイス100a/100b、306、および310のうちの1つまたは複数は、加えて、通信経路308を介してコマンド・メッセージまたは応答メッセージを通信することがある。コマンド・メッセージは、受信側デバイスに、特別なアクションをとらせることがあるが、応答メッセージは、要求された情報を含んでもよいし、受信側デバイスが、実際に、通信されたメッセージもしくはデータを受信したという確認を含んでもよい。
【0070】
システム300の種々のデバイスが、RF信号、誘導結合、光信号、音響信号、または通信に適した他の任意の信号を使用して、経路308を介して通信することがあることが企図されている。加えて、少なくともいくつかの実施形態では、システム300の種々のデバイスは、複数の信号タイプを使用して経路308を介して通信することがある。たとえば、他のセンサ/デバイス310は、第1の信号タイプ(たとえばRF通信)を使用して、外部デバイス306と通信することがあるが、第2の信号タイプ(たとえば、伝導された通信)を使用してLCP100a/100bと通信することがある。さらに、いくつかの実施形態では、デバイス間の通信が限定されることがある。たとえば、上記で説明されたように、いくつかの実施形態では、LCP100a/100bは、他のセンサ/デバイス310を通じて外部デバイス306のみと通信することがあるが、LCP100a/100bは、他のセンサ/デバイス310に信号を送信することがあり、他のセンサ/デバイス310は、受信された信号を外部デバイス306に中継する。
【0071】
いくつかのケースでは、システム300の種々のデバイスは、伝導された通信信号を使用して経路308を介して通信することがある。したがって、システム300のデバイスは、そのような伝導された通信を可能にする構成要素を有することがある。たとえば、システム300のデバイスは、伝導された通信信号(たとえば、本明細書に電気通信パルスと参照されることもある電流パルスおよび/または電圧パルスを用いて中断された電圧波形および/または電流波形)を、送出側デバイスの1つまたは複数の電極を介して患者の身体へと送るように構成されることがあり、伝導された通信信号を、受信側デバイスの1つまたは複数の電極を介して受信することがある。患者の身体は、伝導された通信信号をシステム300内の送出側デバイスの1つまたは複数の電極から受信側デバイスの電極に「伝導」し得る。そのような実施形態では、送達された伝導された通信信号は、ペーシング・パルスと異なってもよいし、除細動および/またはカルディオバージョン・パルスと異なってもよい、他の電気刺激療法信号と異なってもよい。たとえば、システム300のデバイスは、閾値下である振幅/パルス幅で電気通信パルスを送達することがある。すなわち、通信パルスは、心臓を捕捉しないように設計された振幅/パルス幅を有する。いくつかのケースでは、送達される電気通信パルスの振幅/パルス幅は、心臓の捕捉閾値を上回ることがあるが、所望される場合、心臓の不応期中に送達されてよく、および/または、ペーシング・パルスに組み込まれてもよいし、この上へ変調されてもよい。
【0072】
加えて、正常な電気刺激療法パルスとは違って、電気通信パルスは、情報を受信側デバイスに伝達する特定の系列内で送達されることがある。たとえば、送達される電気通信パルスは、通信された情報を符号化するのに適した任意の様式で変調されてよい。いくつかのケースでは、通信パルスは、パルス幅変調および/または振幅変調されてよい。代替的に、または加えて、パルス間の時間は、所望の情報を符号化するために変調されることがある。いくつかのケースでは、あらかじめ規定された通信パルスの系列は、対応するシンボル(たとえば、論理「1」シンボル、論理「0」シンボル、ATP療法トリガ・シンボルなど)を表すことがある。いくつかのケースでは、伝導される通信パルスは、電圧パルス、電流パルス、二相性電圧パルス、二相性電流パルス、または所望される他の任意の適した電気パルスであってよい。
【0073】
図4は、例示的な医療デバイス・システム400を示す。たとえば、システム400は、患者の中に植え込まれ、生理学的信号を感知し、心臓不整脈の発生を決定し、検出された心臓不整脈を治療するために電気刺激を送達するように構成された複数のデバイスを含んでよい。いくつかの実施形態では、システム400のデバイスは、システム400の1つまたは複数のデバイスの除去の発生を決定するように構成されることがある。図4では、LCP100は、心臓410の右心室の内側に固定されて図示されており、パルス発生器406は、1つまたは複数の電極408a〜408cを有するリード412に結合されて図示されている。いくつかのケースでは、パルス発生器406は、皮下植込み型カルディオバータ除細動器(SICD)の一部であることがあり、1つまたは複数の電極408a〜408cは、心臓に隣接して皮下に位置付けられることがある。LCP100は、通信経路308などを介して、SICDと通信してよい。図4に示されるLCP100、パルス発生器406、リード412、および電極408a〜cの場所は、典型的であるに過ぎない。システム400の他の実施形態では、LCP100は、所望されるように、心臓の左心室内に位置付けられてもよいし、右心房に位置付けられてもよいし、左心房に位置付けられてもよい。依然として他の実施形態では、LCP100は、心臓410に隣接しての外部に植え込まれることがあり、または心臓410から遠隔に植え込まれることすらある。
【0074】
医療デバイス・システム400は、外部サポート・デバイス420も含んでよい。外部サポート・デバイス420は、デバイス識別、デバイス・プログラミングならびに/もしくは本明細書において説明される通信技術のうちの1つまたは複数を使用したデバイス間でのリアルタイム・データおよび/もしくは記憶されたデータの転送、またはシステム400の1つもしくは複数のデバイスとの通信に関与する他の機能などの機能を実行するために使用されることができる。一例として、外部サポート・デバイス420とパルス発生器406との間の通信は、ワイヤレス・モードを介して実行されることができ、パルス発生器406とLCP100との間の通信は、伝導された通信モードを介して実行されることができる。いくつかの実施形態では、LCP100と外部サポート・デバイス420との間の通信は、パルス発生器406を通じて通信情報を送信することによって達成される。しかしながら、他の実施形態では、LCP100と外部サポート・デバイス420との間の通信は、通信モジュールを介することがある。
【0075】
図4は、本明細書で開示される技術により動作するように構成され得る医療デバイス・システムの例示的な一実施形態のみを例示する。他の例となる医療デバイス・システムは、追加の医療デバイスおよび/または構成を含んでもよいし、異なる医療デバイスおよび/または構成を含んでもよい。たとえば、本明細書で開示される技術により動作するのに適した他の医療デバイス・システムは、心臓内に植え込まれた追加のLCPを含むことがある。別の例となる医療デバイス・システムは、パルス発生器406などの他のデバイスをもつまたはもたない複数のLCPを含んでよく、少なくとも1つのLCPは、除細動療法を送達することが可能である。依然として別の例となるは、経静脈的ペースメーカとともに植え込まれた1つまたは複数のLCPを含むことがあり、植え込まれたSICDをもってもよいし、もたなくてもよい。さらに他の実施形態では、医療デバイス、リード、および/または電極の構成または留置は、図4に示された構成または留置とは異なってよい。したがって、図4に示されるシステム400とは異なる数多くの他の医療デバイス・システムは、本明細書で開示される技術により動作してよいことが認識されるべきである。したがって、図4に示される実施形態は、決して限定的とみなされるべきではない。
【0076】
いくつかの実施形態では、LCP100は、1つまたは複数のモードで動作するように構成されることがある。各モードにおいて、LCP100は、やや異なる様式で動作することがある。たとえば、第1のモードでは、LCP100は、ある種の信号を感知するおよび/または感知された信号からある種のパラメータを決定するように構成されることがある。第2のモードでは、LCP100は、第1のモードとは異なる少なくともいくつかの信号を感知するおよび/または異なる少なくともいくつかのパラメータを決定するように構成されることがある。少なくとも1つのモードでは、LCP100は、患者のモーション・レベルを決定し、決定された患者のモーション・レベルに基づいて電気刺激療法の送達を変調するように構成されることがある。説明を簡単にするために、LCP100が患者のモーション・レベルを決定し、決定された患者のモーション・レベルに基づいて電気刺激療法の送達を変調するように構成されることを含むモードは、モーション感知モードと呼ばれることがある。他のモードとしては、1つまたは複数のプログラミングおよび/または療法モードがあり得、LCP100が同時に複数のモードで携わられることが可能であることがある。
【0077】
いくつかの実施形態では、LCP100は、LCP100がペースメーカとして動作し、患者に固有の心拍数を駆動するために電気刺激パルスなどの電気刺激療法を心臓に送達する療法モードを含むことがある。LCP100は、患者にとって異なる心拍数を駆動するためにLCP100が電気刺激療法を送達するレートを変調するように構成されることがある。たとえば、LCP100は、本明細書において説明されるように、レート適合様式で電気刺激を送達するように構成されることがある。これらの実施形態のうちの少なくともいくつかでは、LCP100は、モーション感知モードを含むことがあり、これは、特定療法モードであってもよいし、療法モードを修正してもよい。モーション感知モードでは、LCP100は、決定された患者のモーション・レベルに基づいて、電気刺激療法の送達のレートを変調することがある。
【0078】
いくつかのケースでは、LCP100は、LCP100内のモーション・センサ(たとえば加速度計)を使用して患者のモーション・レベルを決定することがある。モーション・センサによって検出されるモーションは、患者の活動レベルだけでなく、拍動している心臓のモーションも含むので、LCP100内のモーション・センサ(たとえば加速度計)を使用して患者の活動レベルを決定することは、難しい場合がある。さらに、拍動している心臓のモーション・レベルは、内因的に開始された心拍動ではペースにより開始された心拍動とは異なることがある。
【0079】
順次的な心拍動が、内因的に開始された心拍動からペースにより開始された心臓に切り換わるもしくは移行する、および/またはペースにより開始された心拍動から内因的に開始された心拍動に切り換わるもしくは移行するとき、患者のモーション・レベル(たとえば活動レベル)内に、あるレベルのノイズが存在することがあることが分かっている。患者のモーション・レベル(たとえば活動レベル)に少なくとも一部は基づいてペーシング療法(たとえば、電気刺激療法)を調整するとき、そのようなノイズは、それが必要とされないとき、患者の心拍数の上昇をもたらすことがあり、および/またはそれが必要とされるとき、患者の心拍数の上昇をもたらさないことがある。心拍動が内因的に開始された心拍動とペースにより開始された心拍動との間で移行しているときのLCP100内のモーション・センサによるモーション・レベル測定値内のノイズは、図5のトレースにおいて例示されている。図5は、LCP100が患者の心臓の壁に取り付けられるときの、LCP100のモーション・センサ(たとえば加速度計)からのいくつかの信号トレースを図示するグラフ450を示す。グラフ450のx軸は、時間tである。電気信号452は、LCP100の電極によって感知された例示的な心臓電気信号(たとえば、心拍動を示す)である。モーション信号454は、2つの連続した内因的に開始された心拍動を仮定してLCP100の機械的感知モジュール108の加速度計によって感知された例となる信号である。モーション信号456は、2つの連続したペースにより開始された心拍動を仮定してLCP100の機械的感知モジュール108の加速度計によって感知された例となる信号である。モーション信号454、456は、LCP100のモーション・レベル測定値を例示する。トレーシング458は、経時的に相対振幅を図示するためにプロットされた例となるモーション信号454および456を図示する。図5における例となる信号トレースは、患者が比較的静的な位置にいる場合は、LCP100を使用して得られることがある(たとえば、ほとんどないまたはまったくない患者活動)。
【0080】
図5における線A−Aは、機械的感知モジュール108からの(たとえば、そのモーション・センサからの)読み取り値が得られ得る時間を表す。いくつかのケースでは、線A−Aと関連付けられた時間が、電気信号452において識別された心拍動を基準としたものであることがある。一例では、線A−Aは、心拍動が検出された後の、50ミリ秒(ms)、100ms、150ms、200ms、250ms、300ms、および/またはこれらの間の他の時間期間、300msよりも長い、または50msよりも短いなど、所定の時間に設定されてよい。いくつかのケースでは、心臓周期の収縮期および拡張期のうちの1つの間に、機械的感知モジュール108から一貫して測定値を得ることが望ましいことがある。たとえば、測定値は、患者の心臓が収縮期にある間(たとえば、心臓が収縮している間)に機械的感知モジュール108から得られることがあり、心臓の加速度は、実質的に一定であることがある。一例では、心拍動が開始されてから200msまたは約200ms後において機械的感知モジュール108から測定値を得ることは、心臓周期の収縮期中および心臓が実質的な一定の加速度である(たとえば、図5では一定の収縮および比較的平坦である)間、測定をもたらすことができる。
【0081】
図5におけるトレース458から見られ得るように、モーション信号454と456は、線A−Aにおいて異なる値を有する。線A−Aにおけるモーション信号454と456の間のこの差は、順次的な心拍動が内因性調律およびペース調律のうちの同じものによって開始されるとき、機械的感知モジュール108から得られた測定値における「ノイズ」のグラフィカル表現であると考慮され得る。本明細書における技術は、患者のモーション・レベルに応答してペーシング療法を修正すべきかどうかを決定するとき、この「ノイズ」を補正する助けとなるために、個々におよび/または組み合わせて利用されてよい。
【0082】
心拍適合ペーシングでは、LCP100(たとえば、IMD)のためのモーション・レベルは、あらゆる心拍動のために決定されることがある。次いで、LCP100が植え込まれた患者のモーション・レベル(たとえば、活動レベル)は、現在の心拍動に対するLCP100のモーション・レベルを1つまたは複数の以前の心拍動と関連付けられた1つまたは複数のモーション・レベルと比較することによって、識別されることがある。差は、患者の活動レベルに起因することがある。しかしながら、心拍動が、異なる調律(たとえば、内因性調律およびペース調律)によって開始される心拍動間で移行するとき、患者の活動レベルの増大を不正確に指し示すことがあるLCP100のモーション・レベルの、期待されるよりも大きな変更をもたらし、心臓のペーシング・レートを不必要に上げる前述の「ノイズ」が、発生することがある。
【0083】
図6は、患者の識別されたモーション・レベルに少なくとも一部は基づいて患者の心臓内に植え込まれたLCP100のペース・レート・パラメータを設定するための例示的な方法500を示す。例示的な方法500では、複数の心拍動が、たとえば、植え込まれたLCP100の電気的感知モジュール106によって、識別され得る502。LCP100の処理モジュール110、または他の処理モジュール(たとえば、LCPにおいてまたはそれから遠隔に設置された)は、識別された心拍動が内因的に開始されたかペースにより開始されたかを識別し得る504。処理モジュール110は、心拍動の電気信号452のモルフォロジ、モーション信号454、456のモルフォロジを分析すること、および/または他の任意の適切な技術を使用することによって、内因的に開始された心拍動、ペースにより開始された心拍動、および融合拍動を区別し得る。いくつかのケースでは、電気信号452は、どの電気信号テンプレートに電気信号452が最もぴったりと合致するかを識別するために、内因的に開始された心拍動のための電気信号テンプレート、ペースにより開始された心拍動のための電気信号テンプレート、および融合拍動のための電気信号テンプレートと比較されることがある。同じく、モーション信号は、どのモーション信号テンプレートにモーション信号が最もぴったりと合致するかを識別するために、内因的に開始された心拍動のためのモーション信号テンプレート、ペースにより開始された心拍動のためのモーション信号テンプレート、および融合拍動のためのモーション信号テンプレートと比較されることがある。これらは、例に過ぎない。
【0084】
内因的に開始された心拍動の場合、処理モジュール110は、LCP100(たとえば、IMD)の機械的感知モジュール108(たとえば、そのモーション・センサから)からモーション・レベル測定値を識別し506、現在の内因的に開始された心拍動に対するLCP100の識別されたモーション・レベルを1つまたは複数の以前の内因的に開始された心拍動に対するLCP100のモーション・レベルと比較し得る508。モーション・レベル測定値は、心臓周期の収縮期中に得られることがあるが、これは、必須ではない。比較に少なくとも一部は基づいて、処理モジュール110、または他の処理モジュールは、LCP100が植え込まれた患者のモーション・レベルを識別し得る510。患者の識別されたモーション・レベルに少なくとも一部は基づいて、処理モジュール110、または他の処理モジュールは、LCP100に対するペーシング・レート・パラメータを設定し得る518。
【0085】
ペースにより開始された心拍動の場合、処理モジュール110は、LCP100(たとえば、IMD)に対して機械的感知モジュール108からモーション・レベル測定値を識別し512、現在のペースにより開始された心拍動を1つまたは複数の以前のペースにより開始された心拍動に対するLCP100のモーション・レベルに対するLCP100の識別されたモーション・レベルと比較し得る514。比較に少なくとも一部は基づいて、処理モジュール110、または他の処理モジュールは、LCP100が植え込まれた患者のモーション・レベルを識別し得る516。患者の識別されたモーション・レベルに少なくとも一部は基づいて、処理モジュール110、または他の処理モジュールは、LCP100に対するペーシング・レート・パラメータを設定し得る518。
【0086】
いくつかのケースでは、上記で心拍適合ペーシングに関して論じられたように、現在の心拍動に対するLCP100の識別されたモーション・レベルを以前の心拍動に対するLCP100のモーション・レベルと比較することは、比較されたモーション・レベル間の差を決定することを含むことがある。次いで、この差に基づいて、LCP100の処理モジュール110は、患者のモーション・レベル(たとえば、活動レベル)を設定または更新し、したがって、LCP100のためのペーシング・レート・パラメータを設定または更新し得る。一例では、患者のモーション・レベルの値は、現在の心拍動に対応するモーション・レベルと以前の心拍動に対応するモーション・レベルとの間の差の絶対値であってよいが、他の関係も企図されている。異なる心拍動と関連付けられたLCP100のモーション・レベルを比較し、患者のモーション・レベルを決定するための、この一般的なプロセスは、他のプロセスとともに、本明細書において論じられる種々の技術において利用されてよい。
【0087】
現在の心拍動に対するLCP100(たとえば、IMD)のモーション・レベルを直前の心拍動に対するLCP100のモーション・レベルと比較すること508、514と代替的に、またはこれに加えて、処理モジュール110は、現在の心拍動に対するLCP100のモーション・レベルを、現在の心拍動と同じ調律(たとえば、内因性調律またはペース調律)によって開始されたN個の以前の心拍動(たとえば、2つ以上の以前の心拍動)に対するLCP100のモーション・レベルの平均と比較することがある。N個の以前の心拍動に対するLCP100のモーション・レベルの平均は、単純平均、重み付き平均(たとえば、1つまたは複数の以前の心拍動と関連付けられたモーション・レベルが、心拍動と関連付けられた別のモーション・レベルよりも大きく重み付けされる場合)、および/またはモーション・レベルの1つもしくは複数の他の平均であってよい。他の事例では、LCP100のモーション・レベルが、以前の心拍動と関連付けられたLCP100のモーション・レベルに関連する1つまたは複数の他の統計分析と比較されることがある。次いで、この比較は、患者のモーション・レベルを決定するために使用される、および/またはLCP100のためのペーシング・レートを設定するために使用されることがある。
【0088】
N個の以前の心拍動の数は、現在の心拍動から所定の時間の量または所定の数の拍動を遡る、スライドするまたは動く時間窓によって決定されてよい。一例では、現在の心拍動の前に所定の時間の量tがあることがあり、その時間t中に7つの心拍動が発生する。これらの7つの心拍動のうち、4つは、内因的に開始された心拍動であることがあり、3つは、ペースにより開始された心拍動であることがある。したがって、現在の心拍動が、内因的に開始された心拍動である場合、現在の心拍動と関連付けられたモーション・レベルは、時間tの間の4つの内因的に開始された心拍動と関連付けられた4つのモーション・レベルの平均と比較されてよい。現在の心拍動が、ペースにより開始された心拍動である場合、現在の心拍動と関連付けられたモーション・レベルは、時間tの間の3つのペースにより開始された心拍動と関連付けられた3つのモーション・レベルの平均と比較されてよい。所定の時間tは、1秒よりも短い任意の時間であってもよいし、1秒から3分の間の任意の時間であってもよいし、1秒から2分の間の任意の時間であってもよいし、1秒から1分の間の任意の時間であってもよいし、3分よりも長い任意の時間であってもよい。
【0089】
スライドするまたは動く窓内で発生する心拍動が、現在の心拍動と同じ調律タイプ(たとえば、内因性またはペース)によって開始されなかった場合、現在の心拍動と関連付けられたLCP100のモーション・レベルは、心拍動と関連付けられたモーション・レベルと比較されなくてもよいし、1つまたは複数の他のアクションがとられてもよい。そのような事例では、患者のモーション・レベルが更新されなくてよく、LCP100のためのペース・レートは、更新されなくてもよいし、現在の心拍動に応答して再設定されてもよい。
【0090】
スライドするまたは動く窓は、現在の心拍動と同じ様式で開始された以前の心拍動と関連付けられたモーション・レベルを平均化することに関して論じられているが、スライドするまたは動く窓は、他の環境において、および/または窓内のモーション・レベルを平均化することなく、利用されてよい。たとえば、処理モジュール110は、LCP100のモーション・レベルを、スライドするまたは動く窓内の1つの以前のおよび同様に開始された心拍動と関連付けられたLCP100のモーション・レベルと比較することがある。すなわち、スライドするまたは動く窓の外側にある以前の同様に開始された心拍動と関連付けられたすべてのモーション・レベルは、廃棄されることがあり、現在の心拍動と関連付けられたモーション・レベルは、窓内の最新の同様に開始された心拍動と関連付けられたモーション・レベルと比較されることがある。加えてまたは代替的に、以前の同様に開始された心拍動がスライドするまたは動く窓内にない場合、第2の、すなわちさらなるスライドするまたは動く窓(たとえば、第1のスライドするまたは動く窓よりも長い継続時間を有する)が利用されることがある。そのようなケースでは、第2の、すなわちさらなるスライドするまたは動く窓における以前の同様に開始された心拍動と関連付けられたモーション・レベルの平均は、現在の心臓のモーション・レベルと比較されることがあるが、これは、必須ではない。
【0091】
いくつかのケースでは、LCP100は、最新の心拍動と関連付けられた患者のモーション・レベルに少なくとも一部は基づいてペーシング・レートを設定することをスキップし、代わりに、最新の心拍動に対して以前に確立されたペーシング・レートを維持することがある。たとえば、例示的な方法500に関して論じられたように、最新の心拍動が、内因的に開始された心拍動またはペースにより開始された心拍動と識別され、同じタイプの調律によって開始された心拍動の直接的に後である(たとえば、その後すぐにまたは順次続く)場合、LCP100は、最新の心拍動と関連付けられた患者のモーション・レベルに少なくとも一部は基づいてペーシング・レートを設定することがある。しかしながら、例では、最新の心拍動が、直前の心拍動とは異なるタイプの調律によって開始される場合、LCP100は、以前に確立されたペース・レートを維持し、最新の心拍動を本質的に無視することがある。
【0092】
図7は、現在の心拍動に基づいて、患者(たとえば活動レベル)のモーション・レベルを更新するべきかどうか、したがって、設定されたペーシング・レートを更新するべきかどうかを決定するための例示的な方法600を示す。例示的な方法600は、LCPの処理モジュール110によって行われてよく、個々に使用されてもよいし、本明細書において説明される他の技術およびプロセスと組み合わせて使用されてもよい。
【0093】
図7に図示されるように、例示的な方法600は、現在識別されている心拍動が、内因性調律またはペース調律のうちの、直前の心拍動と同じものによって開始されたかどうかを決定すること602を含んでよい。現在識別されている心拍動が、内因性調律またはペース調律のうちの、直前の心拍動と同じものによって開始されていない場合、LCP100は、現在の心拍動に対する患者のモーション・レベルを更新することをスキップしてよい604。いくつかのケースでは、患者のモーション・レベルを更新しないこと604は、現在の心拍動に対するLCP100のモーション・レベルを識別しないこと、または現在の心拍動に対するLCP100の識別されたモーション・レベルを無視することのどちらかを含んでよい。その結果、患者に対して以前に設定されたペーシング・レートが維持されてよい606。いくつかのケースでは、患者に対して以前に設定されたペーシング・レートを維持する606代わりに、処理モジュール110は、患者のモーション・レベル以外の1つまたは複数のパラメータに基づいてペーシング・レートを変更する1つまたは複数の工程をとってよい。
【0094】
例示的な方法600では、現在識別されている心拍動が、内因性調律またはペース調律のうちの、直前の心拍動と同じものによって開始された場合、LCP100は、患者のモーション・レベルを更新してよい608。一例では、患者のモーション・レベルは、機械的感知モジュール108(たとえば、加速度計信号から)からLCP100のモーション・レベルを識別し、LCP100の識別されたモーション・レベルを直前の心拍動に対するLCP100のモーション・レベルと比較して、この比較に少なくとも一部は基づいて患者のモーション・レベルを決定することによって、処理モジュール110または他の処理モジュールによって更新されてよいが、これは必須ではなく、他の技術が利用されてもよい。患者のモーション・レベルが更新されると、LCP100は、患者の更新されたモーション・レベルに少なくとも一部は基づいて、ペーシング・レートを更新(たとえば、設定)してよい610。
【0095】
いくつかの例では、融合により開始された心拍動が発生することがある。融合により開始された心拍動は、心臓のペース調律と内因性調律が、同じまたは同じに近い時間において発生し、融合心拍動を引き起こす心拍動である。現在識別されている心拍動が、融合により開始された心拍動である場合、LCP100は、現在の心拍動に対する患者のモーション・レベルを更新することをスキップしてよい。いくつかのケースでは、患者のモーション・レベルを更新または識別しないことは、現在の心拍動に対するLCP100のモーション・レベルを識別しないこと、または現在の心拍動に対するLCP100の識別されたモーション・レベルを無視することのどちらかを含んでよい。その結果、患者に対して以前に設定されたペーシング・レートが維持されてよい。いくつかのケースでは、患者に対して以前に設定されたペーシング・レートを維持する代わりに、処理モジュール110は、患者のモーション・レベル以外の1つまたは複数のパラメータに基づいてペース・レートを変更する1つまたは複数の工程をとってよい。
【0096】
図8は、LCP100の処理モジュール110によって遂行されてよく、個々に使用されてもよいし、本明細書において説明される他の技術およびプロセスと組み合わせて使用されてもよい、例示的な方法700を示す。例示的な方法700では、患者の現在の心拍数が識別されてよく702、識別された心拍数に少なくとも一部は基づいて、現在の心拍動は、2つ以上の心拍数範囲のうちの特別な心拍数範囲に対応するとして識別されてよい704。心拍数範囲は、任意の様式で決定されてよい。一例では、第1の心拍数範囲は、患者に対する安静時活動レベルを指し示すことがあり、第2の心拍数範囲は、患者に対する活動的な活動レベル(たとえば歩行)を指し示すことがあり、第3の心拍数範囲は、患者の激しい活動レベル(たとえばランニング)を指し示すことがある。加えて、いくつかのケースでは、各心拍数範囲に対応すると識別された心拍動は、内因的に開始された、またはペースにより開始された、のどちらかであるとさらに分類されることがある。内因的に開始されたまたはペースにより開始された現在の心拍動の場合、LCP100のモーション・レベルが識別されてよく706、モーション・レベルは、対応する心拍数範囲内の1つまたは複数の同様に開始された心拍動に対するLCP100のモーション・レベルと比較されてよい708。次いで、患者のモーション・レベルは、比較に少なくとも一部は基づいて識別されてよい710。
【0097】
いくつかのケースでは、現在の心拍動が同じ内因性調律またはペース調律によって開始されないとき現在の心拍動のモーション・レベルを無視するのではなく、オフセットが適用されることが企図されている。オフセットは、直前の心拍動と同じ内因性調律またはペース調律によって開始されていない現在の心拍動から生まれる現在の心拍動に対して得られたモーション・レベル測定値における「ノイズ」を補正するために適用されてよい(たとえば、図5の線A−Aにおけるモーション信号454とモーション信号456の間のオフセットを確かめる)。内因性調律からペース調律に、およびその逆に移行する心拍動にすら対して患者のモーション・レベルを決定するためにオフセットを使用するための例示的な方法800が、図9に示されている。
【0098】
例示的な方法800は、複数の心拍動を識別すること802と、識別された心拍動のうちの2つ以上の各々を内因的に開始された心拍動またはペースにより開始された心拍動と識別すること804とを含む。次いで、LCP100の処理モジュール110は、現在の心拍動が、直前の心拍動の内因性調律またはペース調律のうちの同じものによって開始されたかどうかを決定してよい806。例示的な方法800では、現在の心拍動が、直前の心拍動の内因性調律またはペース調律のうちの同じものによって開始された場合、処理モジュール110は、機械的感知モジュール108のモーション・センサ(たとえば加速度計)を使用してLCP100(たとえば、IMD)のモーション・レベルを識別し808、LCP100の識別されたモーション・レベルを、1つまたは複数の以前の、同様に開始された(たとえば、内因的に開始された、またはペースにより開始された、のどちらか)心拍動に対応するLCP100のモーション・レベルと比較してよい810。いくつかのケースでは、上記で論じられたのと同様に、機械的感知モジュール108のモーション・センサからの測定値に対応するモーション・レベルは、心臓周期の収縮期中に得られることがあるが、これは、必須ではない。比較810に少なくとも一部は基づいて、処理モジュール110は、患者のモーション・レベルを識別し812、患者の識別されたモーション・レベルに少なくとも一部は基づいてLCP100に対するペーシング・レート・パラメータを設定してよい822。
【0099】
例示的な方法800では、現在の心拍動が、直前の心拍動の内因性調律またはペース調律のうちの別のものによって開始された場合、処理モジュール110は、機械的感知モジュール108のモーション・センサ(たとえば加速度計)を使用してLCP100(たとえば、IMD)のモーション・レベルを識別し814、この識別されたモーション・レベルにオフセットを適用してよい816。一例では、オフセットは、図5の線A−Aにおけるモーション信号454とモーション信号456との間のオフセットを表すことがある。次いで、オフセットが適用された現在の心拍動に対するLCP100の識別されたモーション・レベルが、直前の心拍動に対応するLCP100のモーション・レベルと比較されてよい818。いくつかのケースでは、上記で論じられたものと同様に、機械的感知モジュール108のモーション・センサからの測定値に対応するモーション・レベルは、心臓周期の収縮期中に得られることがあるが、これは、必須ではない。比較818に少なくとも一部は基づいて、処理モジュール110は、患者のモーション・レベルを識別し820、患者の識別されたモーション・レベルに少なくとも一部は基づいてLCP100に対するペーシング・レート・パラメータを設定してよい。
【0100】
オフセットを決定するための1つの例示的な方法が、図10に示されている。図10の例示的な方法900は、異なる調律(たとえば、内因性調律またはペース調律)によって開始された心拍動からの移行時に現在の心拍動のモーション・レベルに適用されることになるオフセットを決定するために利用されてよい。オフセットを決定するために、LCP100の処理モジュール110または他の処理モジュールは、較正窓を識別してよい902。いくつかのケースでは、較正窓は、N個のペースにより開始された心拍動が発生し、N個の内因的に開始された心拍動が発生する時間期間または窓を包含することがある。例示的な方法900は、機械的感知モジュール108のモーション・センサを使用してN個のペースにより開始された心拍動に対してLCP100(たとえば、IMD)のモーション・レベルを識別すること904と、機械的感知モジュール108のモーション・センサを使用してN個の内因的に開始された心拍動に対してLCP100のモーション・レベルを識別する906こととを含んでよい。Nは、1つの心拍動であってもよいし、2つの心拍動であってもよいし、より大きい数の心拍動であってもよい。特別な調律タイプ(たとえば、内因性またはペース)に対するN個の心拍動は、連続した心拍動であってもよいし、他の調律タイプによって開始される1つまたは複数の心拍動によって分離されてもよい。いくつかのケースでは、N個の連続した、ペースにより開始された心拍動を取得するために、現在の内因性心拍数よりも上の特別なレベル(たとえば、現在の内因性心拍数を毎分5〜30拍上回る、現在の内因性心拍数を毎分10〜20拍上回る、および/または現在内因性心拍数よりも上の異なるレベル)にペーシング・レートを上げることが必要なことがある。いくつかのケースでは、N個の連続した内因的に開始された心拍動を取得するために、現在の内因性心拍数を下回る特別なレベル(たとえば、現在の内因性心拍数を毎分5〜10拍下回る、および/または現在の内因性心拍数を下回る異なるレベル)にペーシング・レートを下げることが必要なことがある。いくつかのケースでは、N個の心拍動の各々に対する機械的感知モジュール108のモーション・センサによって得られた測定値は、心臓周期の収縮期中に得られることがあるが、これは、必須ではない。
【0101】
N個のペースにより開始された心拍動に対して識別されたモーション・レベルから、処理モジュール110は、ベースライン・ペース・モーション・レベルを識別し得る。同様に、N個の内因的に開始された心拍動に対して識別されたモーション・レベルから、処理モジュール110は、ベースライン内因性モーション・レベルを識別し得る。ベースライン・ペース・モーション・レベルおよびベースライン内因性モーション・レベルに少なくとも一部は基づいて、処理モジュール110は、直前の心拍動を開始した調律と異なる調律によって開始された心拍動と関連付けられたモーション・レベルに適用され得るオフセットを決定し得る。
【0102】
ベースライン・ペース・モーション・レベルおよび/またはベースライン内因性モーション・レベルは、任意の様式で識別されてよい。一例では、N個のペースにより開始された心拍動と関連付けられたLCP100のモーション・レベルは、ベースライン・ペース・モーション・レベルを取得するために平均化されることがある。同様に、N個の内因性の開始された心拍動と関連付けられた例では、LCP100のモーション・レベルは、ベースライン内因性モーション・レベルを取得するために平均化されることがある。心拍動と関連付けられたモーション・レベルの平均化に加えてまたはその代替として、他の分析が、識別されたモーション・レベルに対して実行されてよい。たとえば、より古い心拍動に対して検出されたモーション・レベルは、より最近の心拍動の検出されたモーション・レベルよりも少なく重み付けされてよい。
【0103】
図11A図11Cは、N個のペースにより開始された心拍動およびN個の内因的に開始された心拍動の各々に対して、LCP100の、3軸加速度計などのモーション・センサによって生成された、異なる軸すなわちx軸、y軸、およびz軸からのモーション・レベル信号の平均を表すグラフ960a、960b、960cをそれぞれ示し、LCP100は、患者の心臓の壁に取り付けられている。グラフ960a〜960cにおいて破線で示される信号962は、それぞれの軸上での、N個のペースにより開始された心拍動に対する加速度計大きさ信号(たとえば、ベースライン・モーション・レベル信号)の平均を表す。実線で表される信号964は、N個の内因的に開始された心拍動に対する加速度計大きさ信号(たとえば、ベースライン・モーション・レベル信号)の平均を表す。
【0104】
図11A図11Cにおいて示される例では、オフセットは、各グラフにおいて所定の時間における信号962と964との間の差を決定することによって選択され、所定の時間における最も大きい差をオフセットとして使用することができる。代替的に、所定の時間における最も小さい差が、オフセットとして利用されることがある。代替的に、各軸の差は、オフセットを決定するために平均化されることがある。さらに別の例では、1つまたは複数の他の分析が、オフセットを決定するために実行されることがある。図11A図11Cの例において図示されるように、あらかじめ決定された時間は、線A−Aにおいて、心拍動が識別された200ms後であることがある。例では、200msにおいて、信号962および964は、x軸上で175単位(図11A)、y軸上で125単位(図11B)、およびz軸上で125単位(図11C)の差を有する。この例では、処理モジュール110または他のモジュールは、x軸の差が、心拍動が開始されたときから200msにおける信号962と964との間の最も大きい差であるので、x軸の差をオフセットとして選択してよい。
【0105】
上記で論じられた較正窓は、所定の時間期間により識別されることがあり、LCP100の外部にあるデバイスからの信号または他の信号に応じて始まることがある。代替的に、または加えて、較正窓は、N個の連続した、ペースにより開始された心拍動の後および/またはN個の連続した内因的に開始された心拍動の後に、LCP100または他のデバイスによって識別されることがあり、ここで、Nは、同じ数のペースにより開始された心拍動および内因的に開始された心拍動であってもよいし、異なる数のペースにより開始された心拍動および内因的に開始された心拍動であってもよい。
【0106】
いくつかのケースでは、較正窓は、患者活動レベルに基づいて選択されることがある。一例では、較正窓は、LCP100が植え込まれた患者が活動を実行していないまたは低い活動レベルにある間に、発生するように選択されることがある。例示的に、活動なしまたは低い活動レベルとしては、患者が座っている、横たわっている、立位にある、特別なポーズをしている、および/または1つもしくは複数の静的なもしくは実質的に静的な位置にいる、があり得る。
【0107】
いくつかのケースでは、較正窓が、オフセット決定プロセス(たとえば、方法900など)をスタートするために自動的に開始されることがある。たとえば、LCP100は、患者がいつ特別な位置または姿勢にあるかを検出することがあり、較正窓を自動的に開始することがある。いくつかのケースでは、LCP100は、患者のモーション・レベルまたは活動レベルが、所定の時間の長さにわたってモーションまたは活動の閾値レベルを越えた(たとえば、これよりも下に低下したまたは超えた)ことを検出し、次いで、較正窓を開始することがある。さらに、およびいくつかのケースでは、LCP100は、LCP100が、患者が特別な位置または姿勢にあることを検出したことに加えて、外部デバイスとの通信を検出した場合のみ、較正窓を自動的に開始することがあるが、これは、必須ではない。代替的にまたは加えて、LCP100は、LCP100がある種の時刻を検出した場合のみ、較正窓を自動的に開始することがある。そのような自動的な較正窓の開始は、条件を変更する原因であるようにLCP100がオフセットを経時的に更新することを可能にすることがある。
【0108】
いくつかのケースでは、LCP100は、LCP100が植え込まれている患者の1つまたは複数の位置または姿勢(たとえば、N個の位置または姿勢)を検出するように構成されることがある。これは、LCP100が、1)患者の異なる位置または姿勢に対するオフセットのライブラリを作成する、および2)患者が対応する位置または姿勢にあるとき、異なる位置または姿勢に対するオフセットを適用することを可能にし得る。患者の各姿勢または位置に対して、処理モジュール110または他の処理モジュールは、較正窓を識別することがある。各較正窓の間、処理モジュール110または他の処理モジュールは、N個の内因的に開始された心拍動に対して機械的感知モジュール108のモーション・センサを使用してLCP100(たとえば、IMD)のモーション・レベルを識別し、N個のペースにより開始された心拍動に対してモーション・センサを使用してLCP100のモーション・レベルを識別することがあり、それぞれのN個の心拍動は、2つ以上の心拍動であってよく、連続した心拍動であってもよいし、連続した心拍動でなくてもよい。さらに、モーション・センサからの測定値が、心臓周期の収縮期中に得られることがあるが、これは、必須ではない。
【0109】
ペースにより開始された心拍動に対してLCP100の識別されたモーション・レベルに基づいて、処理モジュール110または他の処理モジュールは、識別された患者姿勢または位置に対してベースライン・ペース・モーション・レベルを識別することがある。同様に、内因性の開始された心拍動に対してLCP100の識別されたモーション・レベルに基づいて、処理モジュール110または他の処理モジュールは、識別された患者姿勢または位置に対してベースライン内因性モーション・レベルを識別することがある。次いで、上記で方法900に関して論じられたものに類似した様式で、処理モジュールは、識別された姿勢または位置に対してベースライン内因性モーション・レベルおよびベースライン・ペース・モーション・レベルに少なくとも一部は基づいて、患者の識別された姿勢または位置に対するオフセットを決定することがある。
【0110】
次いで、種々の患者姿勢または位置に対応するオフセットが、LCP100のメモリ(たとえば、処理モジュール110のメモリまたは他のメモリ)内および/またはLCP100の外部にあるメモリ内のライブラリ内に保存されることがある。次いで、直前の調律と異なる調律(たとえば、内因性調律またはペース調律)によって開始された心拍動が識別されたとき、LCP100は、患者の姿勢または位置を識別し、モーション・レベルを直前の心拍動に対するLCP100のモーション・レベルと比較する前またはその後に、姿勢または位置固有のオフセットを現在の心拍動に対するLCP100のモーション・レベルに適用することがある。
【0111】
当業者は、本開示が、本明細書において説明および企図された特定の実施形態以外のいろいろな形式で明らかにされ得ることを認識するであろう。たとえば、本明細書において説明されるように、種々の実施形態は、種々の機能を実行すると説明される1つまたは複数のモジュールを含む。しかしながら、他の実施形態は、説明される機能を本明細書において説明されるモジュールよりも多くのモジュールにわたって分割する追加モジュールを含むことがある。加えて、他の実施形態が、説明された機能を、より少ないモジュールへと統合することがある。
【0112】
種々の特徴が、すべてよりも少ない実施形態に関して説明されてきたが、本開示は、それらの特徴が任意の実施形態に対して含まれ得ることを企図している。さらに、本明細書において説明される実施形態は、種々の説明された特徴のいくつかの組み合わせを省略した可能性があるが、本開示は、各説明された特徴の任意の組み合わせを含む実施形態を企図する。したがって、形式および詳細における逸脱は、添付の特許請求の範囲において説明される本開示の範囲および趣旨から逸脱することなく、なされてよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
【国際調査報告】