【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明は、配列表の第1配列及び配列表の第2配列で構成される群から選択されるアミノ酸配列からなるペプチド;又は配列表の第1配列及び配列表の第2配列中の、3番目のシステインと26番目のシステインアミノ酸との間にジスルフィド結合で連結された環状ペプチドで構成される群から選択されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含むワクチン組成物を提供する。
【0017】
本発明の一具現例において、前記ペプチドワクチン組成物は、免疫刺激オリゴヌクレオチド及びリポソームに捕集されることが好ましいが、これに限定されない。
【0018】
本明細書において、「リポソーム(liposome)」という用語は、脂質二重膜を形成することによって製造される脂質運搬体を意味する。一般に、リポソームは、生体親和的であり、両親媒性を有しているので、内部の親水性物質を含んだまま、疎水性膜を通過することができる。リポソームの直径は、一般的に20〜2,000nmであるが、これに制限されず、製造方法及び運搬されるヌクレオチドの長さによって様々な大きさであってもよい。
【0019】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明のリポソームは、CHEMS及びDOPEの混合物である。本発明で使用するリポソーム内でのDOPE:CHEMSのモル比は、好ましくは7:3〜3:7であり、より好ましくは4.5:5.5〜5.5:4.5であり、最も好ましくは5.0:5.0である。
【0020】
本発明のリポソームの製造は、当業界で公知の様々な方法により行うことができるが、好ましくは、有機溶媒−混合方法又は界面剤−混合方法を用いる(米国特許登録第5,705,385号;米国特許出願第08/660,025号)。より好ましくは、リポソームは、DOPE及びCHEMSを混合し、これを窒素ガスと共に蒸発させて無溶媒(solventfree)脂質フィルムを作った後、アルコール溶液中で溶解させ、最終的に水溶性ヌクレオチド混合物と混合する過程により製造する。
【0021】
本発明のリポソームの製造を有機溶媒の混合により行う場合、これに用いられる有機溶媒は、クロロホルム、メタノール、エタノール、n−プロパノール又はブタノールを含む。好ましくは、前記有機溶媒はエタノールである。
【0022】
本明細書において、「捕集(encapsulation)」という用語は、効率的なインビボ運搬のために、運搬される物質を相対的に安定したシェル内に封入する(enclosure)ことを意味する。
【0023】
本明細書において、「免疫刺激(immunostimulatory)」という用語は、初期免疫反応を誘導するか、又は抗原に対する既存の免疫反応を測定可能レベルに増加させることを意味する。
【0024】
本発明で利用できる免疫刺激オリゴヌクレオチドは、当業界で公知のいかなる免疫刺激オリゴヌクレオチドも含む。例えば、前記免疫刺激オリゴヌクレオチドは、ヘアピン二次構造を形成するパリンドローム、CpGモチーフ、CpTモチーフ又は多重Gドメインを含むオリゴヌクレオチド、又は他の公知のISS(immunostimulatory sequence)であってもよい。例えば、本発明で利用される免疫刺激オリゴヌクレオチドは、米国特許出願公開第20080045473号、WO2006/063152又はWO1998/18810に開示された免疫刺激オリゴヌクレオチドを含む。前記CpGモチーフを含む免疫刺激オリゴヌクレオチドの具体的な例は、WO2006/080596に開示の本発明者らによって開発されたCpGオリゴヌクレオチドを含む。
【0025】
本発明で有効成分として用いられる免疫刺激オリゴヌクレオチドは、天然(natural−occurring)ヌクレオチド、骨格(backbone)変形されたヌクレオチド(例えば、ペプチド核酸(PNA)(M.Egholm,et al.,Nature,365:566−568(1993))、ホスホロチオエートDNA、ホスホロジチオエートDNA、ホスホロアミデートDNA、アミド連結されたDNA、MMI連結されたDNA、2’−O−メチルRNA、α−DNA及びメチルホスホネートDNA、糖変形されたヌクレオチド(例えば、2’−O−メチルRNA、2’−フルオロRNA、2’−アミノRNA、2’−O−アルキルDNA、2’−O−アリルDNA、2’−O−アルキニルDNA、ヘキソースDNA、ピラノシルRNA及びアンヒドロヘキシトールDNA)、及び塩基変形されたヌクレオチド(例えば、C−5置
【0026】
換されたピリミジン(置換基は、フルオロ−、ブロモ−、クロロ−、ヨード−、メチル−、エチル−、ビニル−、ホルミル−、エチニル−、プロピニル−、アルキニル−、チアゾリル−、イミダゾリル−及びピリジル−を含む)、C−7置換基を有する7−デアザプリン(置換基は、フルオロ−、ブロモ−、クロロ−、ヨード−、メチル−、エチル−、ビニル−、ホルミル−、アルキニル−、アルケニル−、チアゾリル−、イミダゾリル−、ピリジル−を含む)、イノシン及びジアミノプリン)を含む。好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドは天然ヌクレオチドである。
【0027】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の免疫刺激オリゴヌクレオチドは、ホスホロジエステル骨格又はホスホロチオエート骨格を有する。
【0028】
本発明で用いられる免疫刺激オリゴヌクレオチドの長さは、特に制限されないが、好ましくは、8〜100ヌクレオチド長であり、より好ましくは15〜50ヌクレオチド長であり、最も好ましくは、約13〜25ヌクレオチド長である。好ましくは、本発明の免疫刺激オリゴヌクレオチドは、配列表の第23配列のオリゴヌクレオチドである。
【0029】
本明細書において、「エピトープ(epitope)」という用語は、抗体と相互作用する抗原の部位を意味する。より詳しくは、エピトープは、免疫グロブリン(immunoglobulin)又はT細胞受容体に特異的に結合できるタンパク質決定部位(determinant)を意味する。また、本発明のエピトープは、免疫反応を増加させることができる分子又は物質を含む。例えば、本発明のエピトープは、ペプチド、これらのペプチドをエンコードする核酸及び糖タンパク質を含むが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本明細書において、「ペプチド(peptide)」という用語は、アミノ酸残基間のペプチド結合によって形成された線形の分子を意味し、本明細書において、「ペプチドエピトープ(peptide epitope)」という用語は、B細胞及び/又はT細胞の特異的反応を誘導できるエピトープを含むペプチドを意味する。
【0031】
本発明の組成物には、その他の薬物又は他の免疫補助剤が含まれて追加的な免疫刺激効果を提供することができる。免疫補強剤の種類は、当分野に公知である(Vaccine Design−The Subunit and Adjuvant Approach,1995,Pharmaceutical Biotechnology,Volume 6,Eds.Powell,M.F.,and Newman,M.J.,Plenum Press,New York and London,ISBN 0−306−44867−X)。好ましくは、本発明の組成物に含まれる免疫補強剤は、アルミニウム塩又はカルシウム塩(例えば、ヒドロキシド又はホスフェート)を含む。
【0032】
好ましい免疫補強剤の具体例は、次の通りである:アルミニウム塩又はカルシウム塩(ヒドロキシド又はホスフェート)、水中油(oil−in−water)エマルション(WO95/17210、EP0 399 843)又はリポソームのような微粒性キャリア(WO96/33739)、南アメリカの樹木であるキラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)由来の免疫学的に抗原補強剤活性を有するサポニン画分(例えば、Quil A)、3 De−O−アシル化されたモノホスホリル脂質A、ムラミルジペプチド、3DMPL(3−O−デアシル化されたモノホスホリル脂質A)を含むが、これに限定されるものではない。
【0033】
本発明のワクチン組成物は、様々な状態又は疾患の治療に適用することができ、前記状態又は疾患の例は、大腸癌、肝癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、肝癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵臓癌、膀胱癌、結腸癌、子宮頸癌、脳癌、前立腺癌、骨癌、皮膚癌、甲状腺癌、副甲状腺癌及び尿管癌のような癌に適用することができる。
【0034】
本発明の薬学的組成物に含まれる薬学的に許容される担体は、製剤時に一般的に用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の薬学的組成物は、前記成分以外に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適した薬学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0035】
本発明の薬学的組成物は、経口又は非経口で投与することができるが、好ましくは非経口投与であり、非経口投与の場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮投与などで投与することができる。
【0036】
本発明の薬学的組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって多様に処方することができる。一方、本発明の薬学的組成物の経口投与量は、好ましくは、1日当たり0.001〜10,000mg/kg(体重)である。
【0037】
本発明の薬学的組成物は、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって、単位用量形態で製造されるか、又は多用量容器内に入れて製造されてもよい。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、又はエキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0038】
また、本発明は、配列表の第1配列及び配列表の第2配列で構成される群から選択されるアミノ酸配列からなるペプチド;又は配列表の第1配列及び配列表の第2配列中の、3番目のシステインと26番目のシステインアミノ酸との間にジスルフィド結合で連結された環状ペプチドで構成される群から選択されるアミノ酸配列からなるペプチドに対する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0039】
本発明の一具現例において、前記抗体は、配列表の第3配列又は第4配列からなるCDRH1、配列表の第5配列又は第6配列からなるCDRH2、及び配列表の第7配列又は第8配列からなるCDRH3の重鎖CDR(complementarity determining region)アミノ酸配列を有する重鎖可変領域;及び配列表の第9配列又は第10配列からなるCDRL1、配列表の第11配列又は第12配列からなるCDRL2、及び配列表の第13配列又は第14配列からなるCDRL3の軽鎖CDRアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0040】
本発明において、本発明者らは、TM4SF5のEC2(extracellular domain 2)に該当する環状ペプチドを考案し、環状hTM4SF5ペプチド及びMB−ODN 4531(O)をphosphatidyl−β−oleoyl−γ−palmitoyl ethanolamine(DOPE):cholesterol hemisuccinate(CHEMS)複合体にカプセル化し、免疫化後、マウスから環状ペプチド−特異的な抗体を産生した。転移モデルとして、マウスにマウス大腸癌細胞株CT−26の静脈内注射により肺で腫瘍を誘導した。ペプチドワクチンで免疫化されたマウスにおいて生存率は増加し、転移された肺結節の数及び肺腫瘍の成長は減少した。これは、そのペプチドワクチンの抗転移効果を示唆した。本発明者らは、抗原として、TM4SF5の環状ペプチド類似構造モチーフを使用し、低いオフレート(off rate)を有するTM4SF5タンパク質を認知するモノクローナル抗体を成功裏に分離した。また、本発明者らは、ヒト化された抗体を製造し、インビトロ及びインビボでその反応性を評価した。重要なことに、本発明者らは、本発明のヒト化されたanti−TM4SF5抗体の肝癌及び大腸癌の形成及び成長に対する阻害効果を見出した。また、静脈内注射されたそのヒト化されたanti−TM4SF5抗体は、マウス転移モデルに大腸癌細胞の静脈内注射によって確立された肺転移を阻害した。
【0041】
したがって、本発明の主な内容は、
i)TM4SF5が肝癌及び大腸癌などに発現されて癌の成長に影響を与え、
ii)TM4SF5のextracellular domain 2(EC2)に該当する環状ペプチドを合成して環状ペプチド−CpG−DNA−リポソーム複合体を製造してマウスに免疫すると、環状ペプチドに対する抗体が生成され、
iii)環状ペプチド−CpG−DNA−リポソーム複合体をワクチンとして用い、大腸癌(CT−26細胞を利用)の転移に対するワクチン効能を検証し、
iv)環状ペプチド−CpG−DNA−リポソーム複合体を免疫したマウスの脾臓細胞を融合したモノクローナル抗体を製造し、
v)マウスanti−TM4SF5モノクローナル抗体に基づいてヒト化されたanti−TM4SF5抗体を製造し、
vi)ヒト化されたanti−TM4SF5抗体の肝癌、大腸癌の抑制効能及び大腸癌の転移抑制効能を評価することに関する。
【0042】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0043】
抗TM4SF5ヒト化された抗体及びその抗原結合断片
【0044】
本発明の抗体は、TM4SF5に対して特異的結合能を有する。
【0045】
本明細書において、TM4SF5に言及しながら使用される「抗体」という用語は、TM4SF5に対する特異抗体であって、TM4SF5の特定のエピトープに対して特異的に結合するものを指し、完全な抗体の形態だけでなく、抗体分子の抗原結合断片(抗体断片)を含む。
【0046】
「ヒト化」という用語は、抗体が全体的又は部分的に非ヒト起源のもの、例えば、関心のある抗原でマウスを免疫化させて取得されたマウス抗体、又はそのようなマウス抗体に基づくキメラ抗体である場合、特に、重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域及び不変ドメインにある特定のアミノ酸を置換させることで、ヒトにおいて免疫反応を回避又は最小化できるという事実を指す。すべての抗体は、論議されている抗体の「ヒト化(humanness)」のレベルとある程度関連するヒト抗−抗体反応を誘導する可能性を有するものと知られている。たとえ、免疫原性、そして、これによって特定の抗体のヒト抗−抗体反応を精密に予測することはできないが、非ヒト抗体は、ヒト抗体よりも免疫原性が高い傾向がある。外来(一般的にげっ歯類)不変領域がヒト起源の配列で置換されたキメラ抗体は、完全な外来起源の抗体よりも一般的に免疫原性が低いことが示されており、治療用抗体での趨勢は、ヒト化又は完全なヒト抗体を目指している。キメラ抗体又は非ヒト起源のその他の抗体の場合、その結果として、これらをヒト化させてヒト抗−抗体反応の危険性を減少させることが好ましい。
【0047】
抗体配列をヒト化する多くの方法は当分野で公知である;参照:例えば、Almagro & Fransson(2008) Front Biosci.13:1619−1633によって概観される。通常使用される一つの方法は、例えば、マウス由来のキメラ抗体の場合、マウス可変領域遺伝子に対するヒト生殖細胞遺伝子対応部を同定し、マウスCDR配列をこのようなフレームワークにグラフトすることを含むCDRグラフティングである。CDRグラフティングは、カバットCDRの定義に基づき得るが、より最近の刊行物(Magdelaine−Beuzelin et al.(2007) Crit Rev.Oncol Hematol.64:210−225)は、IMGT(登録商標)の定義(the international ImMunoGeneTics information system(登録商標),www.imgt.org)がヒト化の結果を向上させ得ることを提案している(Lefranc et al.(2003),IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V−like domains,Dev.Comp Immunol.27,55−77参照)。CDRグラフティングは、CDRグラフトされた非ヒト抗体の結合特異性及び親和性、並びにこれによって生物学的活性を減少させることができるので、復帰突然変異(しばしば「フレームワーク復旧」と呼ばれる)を、典型的にフレームワーク領域でCDRグラフトされた抗体の選択された位置に導入させて、親抗体の結合特異性及び親和性を再確立させることができる。可能な復帰突然変異のための位置の確認は、文献及び抗体データベースで利用可能な情報を用いて行うことができる。復帰突然変異の候補であるアミノ酸残基は、典型的に抗体分子の表面に位置したものである反面、埋もれている又は低いレベルの表面露出を有する残基は、一般的に変更されないはずである。CDRグラフティング及び復帰突然変異に代わるヒト化技法は、非ヒト起源の表面露出されていない残基を維持する一方、表面残基をヒト残基に変更させるリサーフェイシング(resurfacing)である。
【0048】
特定の場合に、標的エピトープに対する結合親和性を向上させるために、1つ以上のCDRアミノ酸残基を変更させることがまた好ましいことがある。これは、「親和性成熟化」として知られており、例えば、抗体のヒト化が減少された結合特異性又は親和性をもたらし、復帰突然変異単独で結合特異性又は親和性を十分に向上させることができない状況で、任意にヒト化と共に行われ得る。様々な親和性成熟化方法、例えば、文献[Burks et al.(1997)PNAS USA,vol.94,pp.412−417]に記載された試験管内スキャニング飽和突然変異発生方法、及び文献[Wu et al.(1998)PNAS USA,vol.95,pp.6037−6042]の段階式試験管内親和性成熟化方法が当分野で公知である。
【0049】
完全な抗体は、2個の全長の軽鎖及び2個の全長の重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合で連結されている。重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びイプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとして、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変領域は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する。
【0050】
抗体分子の抗原結合断片又は抗体断片とは、抗原結合機能を保持している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどを含む。抗体断片のうちFabは、軽鎖及び重鎖の可変領域、軽鎖の不変領域、及び重鎖の1番目の不変領域(CH1)を有する構造で、1個の抗原結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に1つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点でFabと差がある。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合して生成される。Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のみを有している最小の抗体片であって、Fv断片を生成する組換え技術は、PCT国際公開特許出願WO88/10649、WO88/106630、WO88/07085、WO88/07086及びWO88/09344に開示されている。二重鎖Fv(two−chain Fv)は、非共有結合で重鎖可変領域と軽鎖可変領域が連結されており、単鎖Fv(single−chain Fv)は、一般的にペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と単鎖の可変領域とが共有結合で連結されるか、又はC末端で直接連結されているので、二重鎖Fvと同様にダイマーのような構造をなすことができる。このような抗体断片は、タンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全体抗体をパパインで制限切断すると、Fabが得られ、ペブシンで切断すると、F(ab’)2断片が得られる)、遺伝子組換え技術により作製することもできる。
【0051】
本発明の一具現例によれば、本発明において抗体は、Fabの形態であるか、又は完全な抗体の形態である。また、重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)又はイプシロン(ε)のいずれか一つのアイソタイプから選択され得る。一つの特定例において、不変領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ2(IgG2)、ガンマ3(IgG3)又はガンマ4(IgG4)であり、他の特定例において、不変領域はIgG2aアイソタイプである。軽鎖不変領域は、カッパ又はラムダタイプであってもよい。一つの特定例において、前記軽鎖不変領域はカッパタイプである。
【0052】
本明細書で使用される用語、「重鎖」は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVH及び3個の不変領域ドメインCH1、CH2及びCH3を含む全長重鎖及びその断片をいずれも意味する。また、本明細書で使用される用語、「軽鎖」は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVL及び不変領域ドメインCLを含む全長軽鎖及びその断片をいずれも意味する。
【0053】
本明細書において、用語「CDR(complementarity determining region)」は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の高可変領域(hypervariable region)のアミノ酸配列を意味する(Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,4th Ed.,U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987))。重鎖(CDRH1、CDRH2及びCDRH3)及び軽鎖(CDRL1、CDRL2及びCDRL3)には、それぞれ3個のCDRsが含まれている。CDRは、抗体が抗原又はエピトープに結合する場合に主要な接触残基を提供する。
【0054】
本発明の抗体又は抗体断片は、TM4SF5を特異的に認識できる範囲内で、添付の配列表に記載されたアミノ酸配列の変異体を含むことができる。例えば、抗体の結合親和度及び/又はその他の生物学的特性をさらに改善するために、抗体のアミノ酸配列に追加的な変化を与えることができる。このような変形は、例えば、抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む。このようなアミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいてなされる。アミノ酸側鎖置換体の大きさ、形状及び種類に対する分析によって、アルギニン、リジン及びヒスチジンは、いずれも正電荷を帯びた残基であり;アラニン、グリシン及びセリンは、類似の大きさを有し;フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、類似の形状を有するということが分かる。したがって、このような考慮事項に基づいて、アルギニン、リジン及びヒスチジン;アラニン、グリシン及びセリン;そして、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、生物学的に機能均等物であると言える。
【0055】
変異を導入する場合、アミノ酸の疎水性インデックス(hydropathic index)が考慮され得る。それぞれのアミノ酸は、疎水性及び電荷によって疎水性インデックスが付与されている:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);及びアルギニン(−4.5)。
【0056】
タンパク質の相互的な生物学的機能(interactive biological function)を付与するに当たり、疎水性アミノ酸インデックスは非常に重要である。類似の生物学的活性を保持するためには、類似の疎水性インデックスを有するアミノ酸で置換しなければならないということは公知の事実である。疎水性インデックスを参照して変異を導入させる場合、一つの特定例では±2以内、他の特定例では±1以内、更に他の特定例では±0.5以内の疎水性インデックスの差を示すアミノ酸間で置換を行う。
【0057】
一方、類似の親水性値(hydrophilicity value)を有するアミノ酸間の置換が、均等な生物学的活性を有するタンパク質をもたらすということもよく知られている。米国特許第4,554,101号に開示されたように、次の親水性値がそれぞれのアミノ酸残基に付与されている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。親水性値を参照して変異を導入させる場合、一つの特定例では±2以内、他の特定例では±1以内、更に他の特定例では±0.5以内の親水性値の差を示すアミノ酸間で置換を行う。
【0058】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質におけるアミノ酸交換は、当該分野で公知である(H.Neurath,R.L.Hill,The Proteins,Academic Press,New York,1979)。最も一般的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、及びAsp/Gly間の交換である。
【0059】
上述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すれば、本発明の抗体又はそれをコードする核酸分子は、配列表に記載された配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むものと解釈される。前記の実質的な同一性は、前記の本発明の配列と任意の他の配列とを最大限対応するようにアラインし、当業界で通常用いられるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合に、少なくとも61%の相同性、一つの特定例によれば、70%の相同性、他の特定例によれば、80%の相同性、更に他の特定例によれば、90%の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント方法は当業界で公知である。アラインメントに対する様々な方法及びアルゴリズムは、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.(1981)2:482 Needleman and Wunsch,J.Mol.Bio.(1970)48:443;Pearson and Lipman,Methods in Mol.Biol.(1988)24:307−31;Higgins and Sharp,Gene(1988)73:237−44;Higgins and Sharp,CABIOS(1989)5:151−3;Corpet et al.Nuc.Acids Res.(1988)16:10881−90;Huang et al.Comp.Appl.BioSci.(1992)8:155−65及びPearson et al.Meth.Mol.Biol.(1994)24:307−31に開示されている。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al.J.Mol.Biol.(1990)215:403−10)は、NBCIなどでアクセス可能であり、インターネット上でblastp、blasm、blastx、tblastn及びtblastxのような配列分析プログラムと連動して利用することができる。BLSATは、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/でアクセス可能である。このプログラムを用いた配列相同性比較方法は、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.htmlで確認することができる。
【0060】
本発明の一具現例によれば、本発明の抗体は、配列表の第15配列又は第16配列のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0061】
本発明の一具現例によれば、本発明の抗体は、配列表の第17配列又は第18配列のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0062】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖Fvs(scFV)、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fvs(sdFV)、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、そして、前記抗体のエピトープ結合断片などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0063】
本発明によれば、本発明の抗体は、様々な形態の抗体として製造され得る。例えば、下記の実施例に記載されるように、本発明の抗体は、Fab抗体として製造され得、また、Fab抗体に得た軽鎖及び重鎖可変領域を用いてヒト由来の不変領域と組み換えることによって完全な(whole)形態の抗体を提供することもできる。
【0064】
本発明の一具現例によれば、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同じ抗体集団から取得した単一分子組成の抗体分子を意味し、モノクローナル抗体は、特定のエピトープに対して単一結合特異性及び親和度を示す。
【0065】
本発明の抗体は、腫瘍特異抗原として知られたTM4SF5タンパク質に結合してその活性を減少/抑制/除去させることによって癌を治療することができる。
【0066】
核酸分子及び組換えベクター
【0067】
本発明の他の態様によれば、本発明は、前記抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域をコードする核酸分子を提供する。
【0068】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は、前記TM4SF5に対する抗体又はその抗原結合断片の軽鎖可変領域をコードする核酸分子を提供する。
【0069】
本明細書で使用される用語、「核酸分子」は、DNA(gDNA及びcDNA)、そして、RNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸分子において基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドだけでなく、糖又は塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む(Scheit,Nucleotide Analogs,John Wiley,New York(1980);Uhlman及びPeyman,Chemical Reviews,(1990)90:543−584)。本発明の重鎖及び軽鎖可変領域をコードする核酸分子の配列は変形可能である。前記変形は、ヌクレオチドの追加、欠失、又は非保存的置換又は保存的置換を含む。
【0070】
本発明の一具現例によれば、前記重鎖可変領域をコードする核酸分子は、配列表の第19配列又は第20配列のヌクレオチドを含み、前記軽鎖可変領域をコードする核酸分子は、配列表の第21配列又は第22配列のヌクレオチドを含む。
【0071】
本発明の核酸分子は、前記のヌクレオチド配列に対して実質的な同一性を示すヌクレオチド配列も含むものと解釈される。前記の実質的な同一性は、前記の本発明のヌクレオチド配列と任意の他の配列とを最大限対応するようにアラインし、当業界で通常用いられるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合に、少なくとも80%の相同性、一つの特定例では、少なくとも90%の相同性、他の特定例では、少なくとも95%の相同性を示すヌクレオチド配列を意味する。
【0072】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は、(a)本発明の重鎖可変領域をコードする核酸分子;及び(b)本発明の軽鎖可変領域をコードする核酸分子を含む組換えベクターを提供する。
【0073】
本明細書で使用される用語、「ベクター」は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段であって、プラスミドベクター;コスミドベクター;そして、バクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、及びアデノ関連ウイルスベクターのようなウイルスベクターなどを含む。
【0074】
本発明の一具現例によれば、本発明のベクターにおいて軽鎖可変領域をコードする核酸分子及び重鎖可変領域をコードする核酸分子は、プロモーターと作動的に結合(operatively linked)されている。
【0075】
本明細書で使用される用語、「作動的に結合された」は、核酸発現調節配列(例:プロモーター、シグナル配列、又は転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸配列との間の機能的な結合を意味し、これによって、前記調節配列は、前記他の核酸配列の転写及び/又は解読を調節するようになる。
【0076】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組換えベクターは、(a)配列表の第25配列の重鎖可変領域をコードする核酸分子;及び(b)配列表の第26配列の軽鎖可変領域をコードする核酸分子を含む。
【0077】
本発明の組換えベクターシステムは、当業界で公知の様々な方法により構築することができ、これについての具体的な方法は、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)に開示されており、この文献は、本明細書に参照として組み込まれる。
【0078】
本発明のベクターは、典型的にクローニングのためのベクター又は発現のためのベクターとして構築され得る。また、本発明のベクターは、原核細胞又は真核細胞を宿主として構築され得る。例えば、本発明のベクターが発現ベクターであり、原核細胞を宿主とする場合には、転写を進行させることができる強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーター及びT7プロモーターなど)、解読の開始のためのリボソーム結合部位及び転写/解読終結配列を含むことが一般的である。宿主細胞として、E.coli(例えば、HB101、BL21、DH5αなど)が用いられる場合、E.coliトリプトファン生合成経路のプロモーター及びオペレーター部位(Yanofsky,C.J.Bacteriol.158:1018−1024(1984))、そして、ファージλの左向きプロモーター(pLλプロモーター、Herskowitz,I.and Hagen,D.Ann.Rev.Genet.14:399−445(1980))が調節部位として用いられ得る。宿主細胞としてバチルス菌が用いられる場合、バチルス・チューリンゲンシスの毒素タンパク質遺伝子のプロモーター(Appl.Environ.Microbiol.64:3932−3938(1998);Mol.Gen.Genet.250:734−741(1996))、又はバチルス菌で発現可能ないかなるプロモーターでも調節部位として用いられ得る。
【0079】
一方、本発明の組換えベクターは、当業界でたびたび使用されるプラスミド(例:pCL、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズ及びpUC19など)、ファージ(例:λgt4・λB、λ−Charon、λΔz1及びM13など)又はウイルス(例:SV40など)を操作して作製することができる。
【0080】
一方、本発明のベクターが発現ベクターであり、真核細胞を宿主とする場合には、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例:メタロチオネインプロモーター、β−アクチンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーター及びヒト筋肉クレアチンプロモーター)又は哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例:アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バーウイルス(EBV)のプロモーター及びラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーター)が用いられ得、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般的に有する。
【0081】
本発明の組換えベクターは、それから発現される抗体の精製を容易にするために、他の配列と融合されてもよい。融合される配列は、例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(Pharmacia,USA);マルトース結合タンパク質(NEB,USA);FLAG(IBI,USA);6x His(hexahistidine;Quiagen,USA)、Pre−S1、c−Mycのようなタグ配列;OmpA、PelBのような先導配列などがある。また、本発明のベクターによって発現されるタンパク質が抗体であるため、精製のための追加的な配列がなくても、発現された抗体はタンパク質Aカラムなどにより容易に精製することができる。
【0082】
一方、本発明の組換えベクターは、選択標識として、当業界で通常用いられる抗生剤耐性遺伝子を含み、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネテシン、ネオマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。
【0083】
本発明の抗体を発現するベクターは、軽鎖と重鎖が一つのベクターで同時に発現されるベクターシステム、又は軽鎖と重鎖をそれぞれ別途のベクターで発現させるシステムがいずれも可能である。後者の場合、2つのベクターは、同時形質転換(co−transfomation)及び標的形質転換(targeted transformation)により宿主細胞に導入される。同時形質転換は、軽鎖及び重鎖をコードするそれぞれのベクターDNAを同時に宿主細胞に導入した後、軽鎖及び重鎖の両方を発現する細胞を選別する方法である。標的形質転換は、軽鎖(又は重鎖)を含むベクターで形質転換された細胞を選別し、軽鎖を発現する選別された細胞を重鎖(又は軽鎖)を含むベクターで再び形質転換して、軽鎖及び重鎖の両方を発現する細胞を最終的に選別する方法である。下記の実施例では、軽鎖(VL及びCL)と重鎖(VH及びCH1)が1つのベクターで同時に発現されるベクターシステムを用いて抗体を製造した。
【0084】
形質転換体
【0085】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は、本発明の組換えベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
【0086】
本発明のベクターを安定かつ連続してクローニング及び発現させることができる宿主細胞は、当業界で公知のいかなる宿主細胞も利用可能であり、例えば、エシェリキアコリ(Escherichia coli)、バチルス・スブチリス及びバチルス・チューリンゲンシスのようなバチルス属菌株、ストレプトミセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida))、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)又はスタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカス・カルノーサス(Staphylocus carnosus))のような原核宿主細胞を含むが、これに制限されるものではない。
【0087】
前記ベクターの適した真核細胞宿主細胞は、アスペルギルス属(Aspergillus species)のような真菌、ピキアパストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセスセレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)及びニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)のような酵母、その他の下等真核細胞、昆虫由来の細胞のような高等真核生物の細胞、そして、植物又は哺乳動由来の細胞を用いることができる。
【0088】
本明細書において、宿主細胞への「形質転換」及び/又は「形質感染」は、核酸を有機体、細胞、組織又は器官に導入するいかなる方法も含まれ、当分野で公知なように、宿主細胞に応じて適した標準技術を選択して行うことができる。このような方法には、電気穿孔法(electroporation)、原形質融合、リン酸カルシウム(CaPO4)沈殿、塩化カルシウム(CaCl2)沈殿、シリコンカーバイド繊維を用いた撹拌、アグロバクテリア媒介された形質転換、PEG、デキストランサルフェート、リポフェクタミン、及び乾燥/抑制媒介された形質転換方法などが含まれるが、これに制限されない。
【0089】
抗TM4SF5抗体の変異体又はその抗原結合断片の製造方法
【0090】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は、(a)本発明の組換えベクターで形質転換された宿主細胞を培養するステップ;及び(b)前記宿主細胞で抗TM4SF5抗体又はその抗原結合断片を発現させるステップを含む抗TM4SF5抗体又はその抗原結合断片の製造方法を提供する。
【0091】
前記抗体の製造において、形質転換された宿主細胞の培養は、当業界において周知の適当な培地及び培養条件によって行われ得る。このような培養過程は、当業者であれば、選択される菌株に応じて容易に調整して用いることができる。このような様々な培養方法は、様々な文献(例えば、James M.Lee,Biochemical Engineering,Prentice−Hall International Editions,138−176)に開示されている。細胞の培養は、細胞の成長方式によって懸濁培養と付着培養、培養方法によって回分式、流加式及び連続培養式の方法に区分される。培養に使用される培地は、特定の菌株の要求条件を適切に満足させなければならない。
【0092】
動物細胞の培養において、前記培地は、様々な炭素源、窒素源及び微量元素成分を含む。使用可能な炭素源の例は、ブドウ糖、蔗糖、乳糖、果糖、マルトース、澱粉及びセルロースのような炭水化物、大豆油、ひまわり油、ヒマシ油及びココナッツ油のような脂肪、パルミチン酸、ステアリン酸及びリノール酸のような脂肪酸、グリセロール及びエタノールのようなアルコール、そして、酢酸のような有機酸を含む。これらの炭素源は、単独又は組み合わせて使用することができる。使用可能な窒素源の例は、ペプトン、酵母抽出物、肉汁、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液(CSL)及び大豆麦のような有機窒素源、及びヨウ素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムのような無機窒素源を含む。これらの窒素源は、単独又は組み合わせて使用することができる。前記培地には、リン源として、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム及び対応するナトリウム含有塩が含まれ得る。また、硫酸マグネシウム又は硫酸鉄のような金属塩を含むことができる。その他に、アミノ酸、ビタミン、及び適切な前駆体などが含まれ得る。
【0093】
培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸及び硫酸のような化合物を培養物に適切な方式で添加して、培養物のpHを調整することができる。また、培養中には、脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を使用して気泡の生成を抑制することができる。また、培養物の好気状態を維持するために、培養物内に酸素又は酸素含有気体(例えば、空気)を注入する。培養物の温度は、通常、20℃〜45℃、好ましくは25℃〜40℃である。
【0094】
形質転換された宿主細胞を培養して取得した抗体は、精製していない状態で使用することができ、追加で様々な通常の方法、例えば、透析、塩沈澱及びクロマトグラフィーなどを用いて高純度に精製して使用することができる。その中でも、クロマトグラフィーを用いる方法が最も多く使用され、カラムの種類及び順序は、抗体の特性、培養方法などに応じて、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどから選択することができる。
【0095】
癌の予防又は治療用薬学的組成物
【0096】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は、(a)本発明のTM4SF5に対する抗体又はその抗原結合断片の薬学的有効量;及び(b)薬学的に許容される担体を含む癌の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0097】
前記抗体は、TM4SF5に高い親和度で結合して、TM4SF5を発現する癌の成長、浸潤及び転移を抑制することができるので、抗体単独又は通常の薬学的に許容される担体と共に癌の予防及び治療に使用可能である。
【0098】
本明細書で使用される用語、「予防」は、本発明の組成物の投与で癌を抑制させたり、進行を遅延させたりするあらゆる行為を意味し、「治療」は、癌の増殖の抑制、癌の軽減又は癌の除去を意味する。
【0099】
本発明の一具現例によれば、本発明の組成物に適用される疾患である癌は、TM4SF5を発現する癌であり、このような癌の例としては、肝癌、大腸癌、膵臓癌、肺癌、胃癌、直腸癌、軟部組織肉腫(soft−tissue sarcoma)、結腸癌、十二指腸乳頭部上皮癌(carcinoma of the papilla vateri)、非内分泌肺腫瘍(nonendocrine lung tumor)及び気管支類癌腫(bronchial carcinoid tumor)などを挙げることができる。
【0100】
本発明の薬学的組成物に含まれる薬学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の薬学的組成物は、前記成分以外に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適した薬学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0101】
本発明の薬学的組成物は、経口又は非経口で投与することができ、非経口投与の場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与及び直腸内投与などで投与することができる。経口投与時に、タンパク質又はペプチドは消化されるため、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングしたり、胃での分解から保護されるように剤形化したりしなければならない。また、薬学的組成物は、活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置によって投与され得る。
【0102】
本発明の薬学的組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって多様であり、通常の熟練した医師は、所望の治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。本発明の一具現例によれば、本発明の薬学的組成物の1日投与量は、0.0001〜100mg/kgである。本明細書において用語、「薬学的有効量」は、癌を予防又は治療するのに十分な量を意味する。
【0103】
本発明の薬学的組成物は、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって、単位用量形態で製造されるか、又は多用量容器内に入れて製造されてもよい。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、又はエキス剤、散剤、坐剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0104】
本発明の組成物は、個別治療剤として投与するか、又は他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次又は同時に投与することができる。
【0105】
抗体は、抗体−治療剤結合体の形態で生体内に投入して癌の治療に用いることができる。治療剤は、化学治療剤、放射性核種、免疫治療剤、サイトカイン、ケモカイン、毒素、生物作用剤及び酵素阻害物質などを含む。本発明の抗体又はその断片とカップリングさせるのに好ましい機能性分子は、化学物質、サイトカイン又はケモカインである。前記化学物質は抗癌剤であり、例えば、アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール、アクロナイシン、アドゼレシン、アラノシン、アルデスロイキン、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アモナファイド、アンプリジェン、アムサクリン、アンドロゲン、アングイジン、アフィジコリングリシネート、アサレイ、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、バチルス・カルメット−ゲラン(BCG)、ベーカーズアンチフォール、β−2−デオキシチオグアノシン、ビスアントレンHCl、ブレオマイシンサルフェート、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、BWA773U82、BW 502U83/HCl、BW 7U85メシレート、セラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、クロロキノキサリンスルホンアミド、クロロゾトシン、クロモマイシンA3、シスプラチン、クラドリビン、コルチコステロイド、コリネバクテリウムパルブム、CPT−11、クリスナトール、シクロシチジン、シクロホスファミド、シタラビン、シテムベナ、ダビスマレアート、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、デアザウリジン、デクスラゾキサン、ジアンヒドロガラクチトール、ジアジクオン、ジブロモズルシトール、ジデムニンB、ジエチルジチオカルバメート、ジグリコアルデヒド、ジヒドロ−5−アザシチジン、ドキソルビシン、エチノマイシン、エダトレキセート、エデルフォシン、エフロルニチン、エリオット溶液、エルサミトルシン、エピルビシン、エソルビシン、リン酸エストラムスチン、エストロゲン、エタニダゾール、エチオホス、エトポシド、ファドラゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボン酢酸、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、5’−フルオロウラシル、FluosolTM、フルタミド、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、酢酸ゴセレリン、ヘプスルファム、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ホモハリントニン、硫酸ヒドラジン、4−ヒドロキシアンドロステンジオン、ヒドロキシウレア、イダルビシンHCl、イホスファミド、4−イポメアノール、イプロプラチン、イソトレチノイン、ロイコボリンカルシウム、酢酸リュープロリド、レバミソール、リポソームダウノルビシン、リポソーム捕集ドキソルビシン、ロムスチン、ロニダミン、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、メルファラン、メノガリル、メルバロン、6−メルカプトプリン、メスナ、バチルス・カルメット−ゲランのメタノール抽出物、メトトレキサート、N−メチルホルムアミド、ミフェプリストン、ミトグアゾン、マイトマイシンC、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、モノサイト/マクロファージコロニー刺激因子、ナビロン、ナフォキシジン、ネオカルチノスタチン、酢酸オクトレオチド、オルマプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パラ、ペントスタチン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ピラルビシン、ピリトレキシム、塩酸ピロキサントロン、PIXY−321、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プレドニムスチン、プロカルバジン、プロゲスチン、ピラゾフリン、ラゾキサン、サルグラモスチム、セムスチン、スピロゲルマニウム、スピロムスチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌール、スラミンナトリウム、タモキシフェン、タキソテール、テガフール、テニポシド、テレフタルアミジン、テロキシロン、チオグアニン、チオテパ、チミジンインジェクション、チアゾフリン、トポテカン、トレミフェン、トレチノイン、塩酸トリフルオペラジン、トリフルリジン、トリメトレキサート、TNF(tumor necrosis factor)、ウラシルマスタード、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンゾリジン、Yoshi 864、ゾルビシン、シトシンアラビノシド、エトポシド、メルファラン、タキソテール、タキソール、及びこれらの混合物であるが、これに限定されない。
【0106】
癌診断用組成物
【0107】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は、前記本発明の抗体又はその抗原結合断片を含む癌診断用キットを提供する。
【0108】
本発明の抗体は、生物学的試料に適用されて癌の発症の有無を診断することができる。
【0109】
本明細書で使用される用語、「生物学的試料」とは、組織、細胞、全血、血清、血漿、組織剖検試料(脳、皮膚、リンパ節、脊髄など)、細胞培養上澄液、破裂した真核細胞及び細菌発現系などを挙げることができるが、これに制限されるものではない。これらの生物学的試料を操作した、又は操作していない状態で、本発明の抗体と反応させて癌の発症の有無を確認することができる。
【0110】
前記の抗原−抗体複合体の形成は、比色法(colormetric method)、電気化学法(electrochemical method)、蛍光法(fluorimetric method)、発光法(luminometry)、粒子計数法(particle counting method)、肉眼測定法(visual assessment)又は閃光計数法(scintillation counting method)により検出することができる。本明細書上の「検出」は、抗原−抗体複合体を検出するためのものであって、様々な標識体を使用して行うことができる。標識体の具体例としては、酵素、蛍光物、リガンド、発光物、微小粒子又は放射性同位元素を含む。
【0111】
検出標識体として使用される酵素としては、アセチルコリンエステラーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ及びβ−ラクタマーゼなどを含み、蛍光物としては、フルオレセイン、Eu3+、Eu3+キレート又はクリプタートなどを含み、リガンドとしては、ビオチン誘導体などを含み、発光物としては、アクリジニウムエステル及びイソルミノール誘導体などを含み、微小粒子としては、金コロイド及び着色されたラテックスなどを含み、放射性同位元素としては、57Co、3H、125I及び125I−ボルトン(Bolton)ハンター(Hunter)試薬などを含む。
【0112】
本発明の一具現例によれば、抗原−抗体複合体を酵素免疫吸着法(ELISA)を用いて検出することができる。酵素免疫吸着法には、固体支持体に付着した抗原を認知する標識された抗体を用いる直接ELISA、固体支持体に付着した抗原を認知する抗体の複合体において捕獲抗体を認知する標識された2次抗体を用いる間接ELISA、固体支持体に付着した抗体と抗原の複合体において抗原を認知する標識された別の抗体を用いる直接的サンドイッチELISA、固体支持体に付着した抗体と抗原の複合体において抗原を認知する別の抗体と反応させた後、この抗体を認知する標識された2次抗体を用いる間接的サンドイッチELISAなどの様々なELISA方法を含む。本発明の抗体は、検出標識を有することができ、検出標識を有さない場合は、本発明の抗体を捕獲し得、検出標識を有する他の抗体を処理して確認することができる。