(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-532464(P2019-532464A)
(43)【公表日】2019年11月7日
(54)【発明の名称】光拡散機能を付与した封止層組成物及びこれを用いて製造された有機発光素子
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20191011BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20191011BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20191011BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20191011BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20191011BHJP
【FI】
H05B33/04
H05B33/02
H05B33/14 A
B41M5/00 120
C09D11/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-511695(P2019-511695)
(86)(22)【出願日】2017年9月19日
(85)【翻訳文提出日】2019年2月27日
(86)【国際出願番号】KR2017010237
(87)【国際公開番号】WO2018062750
(87)【国際公開日】20180405
(31)【優先権主張番号】10-2016-0127052
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0142025
(32)【優先日】2016年10月28日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ミ ヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソク キ
(72)【発明者】
【氏名】ユン,キョン クン
【テーマコード(参考)】
2H186
3K107
4J039
【Fターム(参考)】
2H186AA15
2H186AA17
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2H186AB11
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4J039EA06
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4J039FA01
4J039GA24
(57)【要約】
本発明は、光拡散機能を付与したインクジェット用封止材組成物およびこれを用いて製造された有機発光素子に関するもので、水分または酸素を効果的に遮断し、別途の層がなくても光拡散効果も満足することができ、分散性に優れて常温保管安定性に優れるうえ、インクジェットプリンタのヘッドノズルの目詰まりを防止することができるインクジェット用封止材組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機粒子を光拡散剤として含み、溶剤を含まない、光拡散機能が付与されたインクジェット用封止材組成物。
【請求項2】
前記有機粒子は、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリメチルメタクリレートよりなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機粒子を10乃至40重量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機粒子は、平均粒径が2乃至5μmであり、形状が半球状である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記有機粒子は、直径が3μmであり、形状が半球状であり、封止材組成物の全重量に対して10乃至20重量%含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物が有機発光素子の有機層上にコーティングおよび硬化された、有機発光素子用封止膜。
【請求項7】
前記有機発光素子用封止膜が5乃至15μmの厚さを有する、請求項6に記載の有機発光素子用封止膜。
【請求項8】
前記有機発光素子用封止膜は、厚さ15μmで測定した光透過率が90%以上であり、拡散率(haze)が80%以上であることを特徴とする、請求項6に記載の有機発光素子用封止膜。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の封止膜を含む有機発光素子。
【請求項10】
前記封止膜以外に別途の光拡散層を含まないことを特徴とする、請求項9に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止層組成物及びこれを含む有機発光ダイオードに関し、より詳細には、有機発光ダイオードの厚さを薄くし、且つ工程時間を短縮するための、光拡散層の除去および、それに伴う封止層の特定の組成に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)は、有機化合物を用いて自己発光させる、次世代のディスプレイ素子であって、反応速度が非常に速く、自己発光であるので、色味を低下させるバックライトが不要であるなどの様々な利点のために、大型テレビからモバイル機器まで広く用いられている。
【0003】
有機発光ダイオードディスプレイ素子は、透明な基板上に作製され、陽極膜、有機薄膜、陰極膜の断面構造を持つ。一般には、陽極電極としてはITOを使用し、陰極としてはAl金属膜を使用する。電極同士の間には、正孔注入層、輸送層、発光層、電子輸送層および注入層などの有機薄膜層が形成されている。
【0004】
OLEDに含まれている有機材料および金属電極などは、酸素および水分などの外部的な要因によって、非常に容易に酸化して素子の発光特性が低下するという問題点がある。よって、外部からの酸素または水分などの浸透を効果的に遮断するための封止(encapsulation)技術が非常に重要であり、これについての様々な技術が提示されている。
【0005】
一方、OLED素子から、有機物内で生成された光が素子の外に出てくるためには、屈折率の大きいITOを通過しなければならず、単純なOLED構造では、有機物内で生成された光が素子の外に抜け出てくる割合が約20%程度に過ぎない。よって、高効率と長寿命を実現するために光抽出膜が必要であり、OLEDの外部光抽出膜としては、LCDのバックライトに使用されるMLA(マイクロレンズアレイ)に関する研究が進められており、内部光抽出膜としては、マイクロキャビティの利用や回折格子の利用、フォトニック結晶(Photonic crystal)の利用、光散乱層の利用、回折格子の利用、高低屈折率積層基板の利用、凹凸構造物の利用などの様々な方法が提案されている。
【0006】
直接コーティング方法ではない、溶剤タイプの組成(一般にはLCDに適用)では、バインダー樹脂、硬化剤、光拡散剤および溶剤などで構成される光拡散層組成物に対して、無機ビーズを充填した後、インペラー攪拌機を用いてサンドミル加工し、次いで直ちに基材膜上に光拡散層を形成させ、乾燥オーブンで乾燥させた後、UV、熱および水分を膜の表面に加えて光拡散層を形成する。こうして製造した膜と拡散板を挿入するため、トータルの厚さは100μm程度と厚くなる。これに対し、OLEDは、直接コーティング方式を用いて厚さを10μm以下に減らすことができるが、OLED素子に直接コーティングするため、溶剤があれば、発光材料は寿命を失って発光体としての役割を果たせなくなる。
【0007】
したがって、韓国公開特許第10−2015−0010596号、韓国公開特許第10−2003−0082067号などに開示された従来の溶剤タイプの組成物をOLED素子に直接コーティング(direct coating)する場合、素子に溶剤が浸透して損傷(damage)を与えるという問題点がある。
【0008】
一方、韓国公開特許第10−2013−0126408号などのように溶剤を含有していない組成に無機粒子を分散した光拡散組成は、無機粒子の比重が高いので、粒子が沈んでしまうという問題点がある。このような理由のために、ロット(lot)別のコーティング後の拡散率(haze)にバラツキが生じ、インクジェット印刷方式でコーティングする際に、無機粒子同士が凝集すれば、ノズルが詰まってしまうという問題が生じる。
【0009】
また、溶剤を含有していない組成に無機粒子を分散した光拡散組成は、OLED素子に直接コーティングすることができるが、光硬化後に無機粒子がエンボス加工の如く表面に出ているので、上層に平坦化層を必要とするのであり、このような場合、工程時間が増加し、パネルの厚さが増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2015−0010596号
【特許文献2】韓国公開特許第10−2003−0082067号
【特許文献3】韓国公開特許第10−2013−0126408号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するためのもので、その目的は、直接コーティング方式を適用する際に素子に溶剤が浸透することを防止するために、無溶剤タイプの封止層組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、常温保管の安定性に優れ、インクジェットプリンタのヘッドノズルが詰まる問題が解決されたインクジェット用封止層組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、無機粒子を分散した光拡散組成の光硬化後に平坦化層が必要であってパネルの厚さが増加するということを解決するために、良好に分散される光拡散剤を含む封止層組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、有機粒子を光拡散剤として含むのであって、溶剤を含まない、光拡散機能が付与されたインクジェット用封止材組成物に関する。
【0015】
本発明に係る、光拡散機能が付与されたインクジェット用封止材組成物において、前記有機粒子は、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリメチルメタクリレートよりなる群から選択される1種以上であり得る。
【0016】
本発明に係る光拡散機能が付与されたインクジェット用封止材組成物において、前記有機粒子は10乃至40重量%含まれ得る。
【0017】
本発明に係る光拡散機能が付与されたインクジェット用封止材組成物において、前記有機粒子は、平均粒径が2乃至5μmであり、形状が半球状であり得る。
【0018】
本発明の他の実施例によれば、本発明は、前記光拡散機能が付与されたインクジェット用封止材組成物が、有機発光素子の有機層上にコーティングおよび硬化された、有機発光素子用封止膜に関する。
【0019】
前記有機発光素子用封止膜は、厚さが5乃至15μmであり得る。
【0020】
前記有機発光素子用封止膜は、厚さ15μmで測定した光透過率が90%以上であり、拡散率が80%以上であり得る。
【0021】
本発明の別の実施例によれば、本発明は、前記有機発光素子用封止膜を含む有機発光素子を提供する。
【0022】
本発明に係る前記有機発光素子は、封止膜以外に別途の光拡散層を含まなくてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来の溶剤タイプのLCD用光拡散組成をOLED素子に直接コーティング(Direct Coating)する場合、溶剤除去のための高温工程で有機化合物が損傷する問題、および、素子に溶剤(Solvent)が浸透してダメージ(Damage)を与える問題があったが、これを溶剤なしに特定の組成で混合して製造することにより、発光有機化合物に損傷を与えることなく直接コーティングが可能であって工程時間を短縮するという効果がある。
【0024】
特に、本発明によれば、素子に直接コーティングが可能であってコーティング層の厚さを自由に調節することができ、封止層全体の厚さを薄型化することができ、製品デザインの自由度を高めることができるという効果がある。
【0025】
また、封止層上に光拡散板を別途形成しなくても、光拡散機能と封止材の役割を同時に行うことができる膜を形成することにより、さらなる薄型化および工程時間短縮の効果がある。
【0026】
本発明によれば、特定成分の特定組成への混合によって、常温保管の安定性に優れるという効果があり、直接コーティング方式に必要なインクジェットプリンタのヘッドノズルの詰まりを防止するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】有機素子にインクジェット方式で直接(Direct)コーティングして封止層を形成し露光することを示す模式図である。
【
図2】球状ポリスチレンの粒度の分散状態の様子を、粒度分析器で分析した結果を示す図である。
【
図3】走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した、形状および粒子サイズを異ならせたポリスチレンを示す図である。
【
図4】走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した、球状ポリスチレン(Polystyrene)の形状および粒子サイズを示す図である。
【
図5】封止材組成物を入れる前のインクジェットプリンタヘッドのノズルを示す図である。
【
図6】無機粒子がノズルの入口を塞いで凝集することで目詰まり現象が生じることを示す図である。
【
図7】シリカ粒子を光拡散剤として添加した封止液をインクジェットプリンタに入れてコーティングしたものを示す図である。
【
図8】ポリスチレン粒子を光拡散剤として添加した封止液をインクジェットプリンタに入れてコーティングしたものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明をより具体的に説明する。また、本発明を説明するにあたり、関連した公知の汎用的な機能または構成についての詳細な説明は省略する。
【0029】
本明細書において、%は、特別な記載がない限り、重量%を意味する。
【0030】
本発明は、有機粒子を光拡散剤として含むが、溶剤を含まない、光拡散機能が付与されたインクジェット用封止材組成物に関する。
【0031】
OLEDに封止材組成物を直接コーティングする場合には、
図1に示すように、インクジェットプリンタを使用するため、無機粒子を光拡散剤として用いて無溶剤タイプの封止層組成物を製造する場合、無機粒子同士の凝集現象が発生して、組成物を10日以上保管することができず、
図6に示すように、インクジェットノズルが詰まってしまう現象が発生するおそれがある。
【0032】
本発明は、光拡散剤として有機粒子を用いるため、アクリル系のモノマーおよびオリゴマーからなる封止材への分散性が良く、有機粒子の柔らかで滑らかな特性のため、インクジェットノズルが詰まってしまう現象を減少させることができる。
【0033】
前記有機粒子は、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリメチルメタクリレートよりなる群から選択される1種以上であり、好ましくはポリスチレンであり得る。
【0034】
前記有機粒子は、光拡散機能が付与されたインクジェット用封止材組成物100重量部に対して、10乃至40重量部、好ましくは10乃至20重量部含まれ得る。
【0035】
有機粒子は、粒子の個数が少なくなっても、無機粒子に比べて透過度および拡散率が高いため、少ない量でも無機粒子と同様の光拡散機能を実現することができる。
【0036】
前記有機粒子が10重量部未満で含まれる場合、拡散率が低いため、光拡散機能を果たすことができず、前記有機粒子が40重量部を超過して含まれる場合、透過度が低くて不透明になることにより、前面発光(Topview)方式の発光素子に適用することは難しくなる。
【0037】
前記有機粒子(ビーズ)は、平均直径が2乃至5μmであり、形状が半球状(hemishperical)である。
【0038】
本発明の半球状有機粒子(ビーズ)は、形態上の特徴として、比表面積が広くなって散乱(scattering)効果が極大化される可能性があるため、光透過度と拡散率が著しく増加して有機発光素子への適用時に光拡散機能を増加させることができるという利点がある。
【0039】
球状の有機粒子は、光を照射すると、表面にて光が拡散するのに対し、半球状の有機粒子は、光が底面で一度屈折して反対側に透過するので、球状の有機粒子よりも光拡散機能を増加させることができる。
【0040】
また、半球状の粒子は、その直径が球状の半分であって、光学特性を維持した状態でコーティング層の薄層化が可能となる。
【0041】
しかも、半球状の場合、分散が容易であって溶剤なしにアクリレートモノマーのみからなっている封止材組成物に良好に分散して容易に沈まないため、常温保管の安定性に優れる。
【0042】
本発明者らは、光拡散機能を増加させながらも封止層組成物内での分散性およびインクジェット用組成物としての分散安定性を高めるために、有機粒子のサイズおよび形状を異ならせた様々な実験を通じて研究した結果、最も好ましい有機粒子のサイズおよび形状を見出して本発明を完成したのである。
【0043】
前記有機粒子(ビーズ)のサイズは2乃至5μmであり得るが、さらに好ましくは2乃至3μmであり、最も好ましくは2μmであり得る。
【0044】
平均直径が2μm未満である場合には、粘度が増加してインクジェット装備への適用が難しく、平均直径が5μmを超える場合には、インクジェットプリンタのノズルが詰まってしまうという問題点があり得る。
【0045】
有機粒子の形状が球状である場合は、含有量を増加させてこそ所望の拡散率および透過度を得ることができ、有機粒子の形状がシワの寄った球状である場合は、粘度増加率が高いためインクジェット工程への適用問題があって好ましくないのであり、シワの寄った半球状の形状は、比表面積が広いために粘度が増加して、インクジェット工程への適用の問題があり、本発明の光拡散剤としての有機粒子(ビーズ)は、半球状であることが最も好ましい。
【0046】
前記有機粒子のサイズおよび形状を制御して光拡散機能を高めるための機能性ビーズは、アクリル系のモノマー、ポリスチレンモノマー、架橋剤、開始剤、共溶媒を溶媒に投入して重合反応させた後、これを洗浄、乾燥して製造する。
【0047】
本発明の他の実施例によれば、本発明は、前記光拡散機能が付与されたインクジェット用封止材組成物が有機発光素子の有機層上にコーティングおよび硬化された有機発光素子用封止膜に関するものである。
【0048】
前記有機発光素子用封止膜の厚さは、5乃至15μm、好ましくは5乃至10μmであり得る。
【0049】
封止膜の厚さが5μm未満と薄い場合には、ビーズの粒子サイズの分だけに相当する厚さとなって表面が滑らかでなく、粒子が半分程度見えるようになって凸凹(でこぼこ)となる問題があり、封止膜の厚さが15μmを超過する場合には、拡散率が増加するという問題がある。
【0050】
前記有機発光素子用封止膜は、厚さ15μmで測定した光透過率が90%以上であり、拡散率が80%以上であり得る。
【0051】
本発明の有機発光素子用封止膜は、LCD(液晶ディスプレイ)の光拡散材料とは異なり、封止材の機能も含まれていなければならないため、光透過度が90%以上となる特徴を持たなければならない。光透過率が90%未満である場合には、透明でないため、前面(Top)発光には問題がある。
【0052】
本発明の別の実施例によれば、本発明は、前記有機発光素子用封止膜を含む有機発光素子を提供する。
【0053】
本発明に係る前記有機発光素子は、封止膜以外に別途の光拡散層を含まなくてもよい。
【0054】
前記封止膜は、光拡散剤として有機粒子を用いた封止材組成物を、素子に直接コーティングした後、硬化させたものなので、表面への粒子の露出の程度が少なくて、上層に平坦化層が別途必要とされないため、工程時間が短縮され、パネルの厚さが減少するという効果がある。
【0055】
以下、本発明による実施例および本発明によらない比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
比較例:無機粒子を用いた封止材組成物の製造
比較例1および2は、下記表1の組成で混合して封止材組成物を製造した。
【0058】
1)単官能基アクリレートモノマー1:ドデカノールジメタクリレート(Dodecanol dimethacrylate)
2)単官能基アクリレートモノマー2:ベンジルアクリレート(Benzyl Acrylate)
3)単官能基アクリレートモノマー3:ラウリルアクリレート(Lauryl Acrylate)
4)多官能基アクリレートモノマー4:トリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylolpropane triacrylate)
5)単官能基アクリレートモノマー5:(3−フェノキシフェニル)メチルエステル((3−Phenoxyphenyl)methyl ester)
6)光硬化開始剤:ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド(diphenyl(2,4,6−trimethylbenzoyl)phosphine oxide)
7)酸化防止剤1:ペンタエリトリトールテトラキス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)(Pentaerythritol tetrakis(3,5−di−tert−butyl−4−hydroxyhydrocinnamate))、(株)BASF
8)酸化防止剤2:トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(tris(nonylphenyl)phosphite)(TNPP)
9)シランカップリング剤:ビニルトリメトキシシラン(Vinyltrimethoxy silane)
10)分散剤1:ポリエーテルホスフェイト界面活性剤(polyether phosphate surfactant)(Solseperse 41000、(株)Lubrizol)
11)分散剤2:シルセスキオキサン(silsesquioxane)(Solseperse 81000、(株)Lubrizol))
12)無機粒子:シリカ(Silica)(SiO
2、3μm、2.1乃至2.6g/cm
3)、積水化学工業株式会社
13)有機粒子:ポリスチレン(3μm、0.96乃至1.04g/cm
3)
【0059】
実施例1乃至4.有機粒子の使用により光拡散機能が向上した封止材組成物の製造
【0060】
実施例1.
無機粒子の代わりに有機粒子を用いると光拡散機能が増大されることを確認するために、比較例1で無機粒子として添加したシリカ(Silica)(3μm、2.1乃至2.6g/cm
3)の代わりに、有機粒子であるポリスチレン(Polystyrene)(3μm、0.96乃至1.04g/cm
3)を10wt%添加し、その他の組成は比較例と同様にして混合することにより、封止材組成物を製造した。
【0061】
実施例2.
有機粒子であるポリスチレン(Polystyrene)を20wt%添加する以外は、実施例1と同様にして、光拡散機能が付与された封止材を製造した。
【0062】
実施例3.
実施例3は、硬化膜の強度を増加させるために、多官能基アクリレートモノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylolpropane triacrylate)を使用し、これと共に単官能基アクリレートモノマーとして(3−フェノキシフェニル)メチルエステル)((3−phenoxyphenyl)methylester)を使用した以外は、実施例1と同様にして、光拡散機能が付与された封止材を製造した。
【0063】
実施例4.
実施例4は、硬化膜の強度を増加させるために、多官能基アクリレートモノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylolpropane triacrylate)を使用し、これと共に単官能基アクリレートモノマーとして(3−フェノキシフェニル)メチルエステル((3−phenoxyphenyl)methylester)を使用した以外は、実施例2と同様にして、光拡散機能が付与された封止材を製造した。
【0064】
実施例5乃至8.ポリスチレンの粒子サイズおよび形状による透過度、拡散率の確認
ポリスチレンの粒子サイズおよび形状によって光拡散機能が変わるか否かを確認するために、ポリスチレン粒子を表2の如く4つのグループに製造し、粒子の平均直径を3μmにした以外は、実施例2と同様にして、光拡散機能が付与された封止材組成物を製造した(
図3)。
【0066】
製造例.機能化されたポリスチレン粒子の製造方法
1)半球状のポリスチレン粒子を製造するために、まず、エチレングリコールジメタクリレートモノマー8%にポリスチレンモノマー43%を入れ、トリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylolpropane triacrylate)4%を入れ、アイソパーM(ISOPAR M)45%を入れる。よくブレンドして、この溶液の30%をビーカーに入れる。
2)前記1)溶液を攪拌(stirrer)している際に、開始剤であるAIBNを0.25%入れ、DIW(脱イオン水)を70%入れる。
3)DIWを入れた前記溶液をホモジナイザー装備に入れ、物理的によくブレンドされうるようにミックスする。
4)反応器に入れ、窒素雰囲気中、80℃で5時間撹拌する。
5)濾紙に入れてフィルタリングする。
6)DIWでよく洗浄した後、70度のオーブンで乾燥させて半球状のポリスチレン(Polystrene)を得ることができる。
【0067】
実験例1.透過率の評価
実施例1乃至8および比較例1乃至2の光拡散機能が付与された封止材組成物を
図1の如くガラス基板に塗布し、スピンコーティングして光硬化した後、基板を用いてLabsphere社製のEvolution 600 UV−VIS meterを用いて200乃至400nmの波長帯の光透過度を測定した。
【0068】
実験例2.拡散率の評価
実施例1乃至8および比較例1乃至2の光拡散機能が付与された封止材組成物をガラス基板に塗布し、スピンコーティングして光硬化した後、基板を用いて日本電色工業(Nippon Denshoku)社製のHaze meter NDH 2000装備を用いて拡散率(Hz)を測定した。前記拡散率の単位は%であって、数値が高いほど白濁が高いという意味であり、数値が低いほど透明であるという意味である。
【0069】
下記表3において、TT、Hzそれぞれの計算式は、下記式1によって計算した。
【0071】
結果・考察
<有機粒子の使用による光拡散機能向上効果の確認>
表3は、無機粒子または有機粒子の使用による透過率および拡散率を測定した結果である。
【0073】
本発明の光拡散機能が付与された封止材は、一般なLCD(液晶ディスプレイ)の光拡散材料とは異なり、封止材の機能も含まれていなければならないので、透過度が90%以上であることが好ましい。
【0074】
前記表3に示すように、比較例1および2は、透過度と拡散率が低いため、光拡散機能が付与された封止材材料として適さず、実施例3および4は、拡散率が低いため、光拡散材料として適さないことが分かる。
【0075】
<有機粒子の形状による光拡散機能の確認>
下記表4は有機粒子の形状による透過度および拡散率を測定した結果である。半球状に近いほど拡散率と透過度が大きくなることが分かる。これは、半球状に近いほど比表面積が広くなって散乱(scattering)効果が極大化できるためであると判断される。光拡散機能は、実施例7で最も効果が良く、実施例8では光透過度および拡散率値が再び低くなった。
【0077】
実験例3.有機粒子を含んで光拡散機能が付与された封止材組成物の向上した分散性およびコーティング性の確認
有機粒子を光拡散剤として用いた封止材組成物がどれほどよくインクジェットノズルから吐出されるか、コーティング性がスムーズで良好であるかを確認するために、O
2プラズマ(O
2 Plasma)処理されたベア(裸)ガラス(Bare Glass)上に、比較例2のシリカ分散組成物と実施例2のポリスチレン分散組成物を用いて、
図1の如くインクジェットプリンタでコーティングした。
【0078】
DPI(Dot per inch)は、印刷とディスプレイ解像度の測定単位であり、特に1平方インチのスペースの中に作られた点や画素の数を意味する。DPI数を上げるほど、コーティング膜の厚さを増加させることができる。
【0079】
図7は、無機粒子であるシリカ分散封止材組成物を入れてインクジェットプリンタでコーティングしたイメージであって、400×400、400×600、400×800に行くほどコーティング性が良くないことを確認することができる。光学顕微鏡上でも、粒子が凸凹に凝集していることを見てとることができる。
【0080】
図8は、有機粒子であるポリスチレンを20%含む、実施例2の組成を入れてインクジェットプリンタでコーティングしたときの様子である。400×400DPIの場合は、粒子が見えるが、600、800DPIに行くほど滑らかであることを確認することができる。
【0081】
実験例4.封止材としての効果の確認実験
有機粒子の使用により光拡散機能が向上した組成物が、封止材としての機能性も依然として優れることを確認するために、ドーリーテスト(Dolly test)を行った。
【0082】
恒温恒湿機(水分85%、温度85℃)内で、直径20mmのドーリー(Dolly)に接着剤を塗り、前記比較例1、比較例2及び実施例1乃至4の組成物でコーティングおよび硬化された基板の表面に付着させた。その後、接着剤を100℃で10分硬化した後、ドリーテスター(ASTM4541)で持ち上げた。この際、封止材がむしり取られるようになったときの力を測定し、容易に剥離されると、水分や温度に脆弱であって封止材としての機能性が劣ると評価した。0は容易に剥離されて測定されないことを意味し、力(psi)の強さが大きいほど付着力が良好であるため、封止材としての機能性が良好であることを意味する。
【0084】
上述したように、本発明の好適な実施例を参照して説明したが、当該技術分野における当業者であれば、下記の請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱することなく、本発明を多様に修正及び変更させることができることが理解できるだろう。
【国際調査報告】