特表2019-532746(P2019-532746A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-532746(P2019-532746A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】視認機能を有する画像捕捉デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20191018BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20191018BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20191018BHJP
【FI】
   A61M5/168 514C
   A61M5/24
   A61M5/31 520
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-521801(P2019-521801)
(86)(22)【出願日】2017年10月30日
(85)【翻訳文提出日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2017077788
(87)【国際公開番号】WO2018078161
(87)【国際公開日】20180503
(31)【優先権主張番号】16196559.5
(32)【優先日】2016年10月31日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨースト クリステンセン, マルティン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066LL30
4C066PP04
4C066QQ52
4C066QQ72
4C066QQ73
4C066QQ78
4C066QQ82
4C066QQ84
(57)【要約】
捕捉開口部と、捕捉開口部の反対側に配置された視認開口部とを備えるハウジングを有する画像捕捉デバイス。画像捕捉デバイスは、捕捉開口部と位置合わせされて配置されたオブジェクトの少なくとも一部分の画像を捕捉するためのカメラと、捕捉開口部を覆うように配置されたビームスプリッタとを備え、ビームスプリッタは、観察されるオブジェクトから反射された光の第1の部分が、ビームスプリッタデバイスを通過することを可能にし、これによってユーザが、画像捕捉中にオブジェクトを効果的に見ることを可能にする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像捕捉デバイス(300、400)であって、
− ハウジング(301)であって、
− 第1の面(302)と、
− 前記第1の面に形成される捕捉開口部(370)と、
− 前記捕捉開口部の反対側に配置された視認開口部(340)と、
を備える、ハウジングと、
− メモリと、
− 前記捕捉開口部と位置合わせされて配置されたオブジェクトの少なくとも一部分の画像を捕捉するように適合された捕捉手段(325)であって、前記視認開口部と前記捕捉開口部との間の前記視認軸に対してオフセットされて配置されている、捕捉手段と、
− 捕捉された画像を処理し、データを前記メモリに記憶するように適合されたプロセッサ(310、410)と、
を備え、
前記捕捉デバイスは、前記視認開口部(340)を通じて視認可能な前記捕捉開口部(370)の少なくとも一部分を覆うように配置されたビームスプリッタデバイス(350)を更に備え、前記ビームスプリッタデバイスは、
− 前記捕捉開口部と位置合わせされて配置されたオブジェクトから反射された光の第1の部分が、前記ビームスプリッタデバイスを通過することを可能にし、これによってユーザが、前記ビームスプリッタデバイスによって覆われたオブジェクトの一部分を見ることを可能にし、
− 前記インジケータ部材から反射された光の第2の部分が、前記ビームスプリッタデバイスによって前記捕捉手段(325)に向けて反射されることを可能にする、
ように適合される、画像捕捉デバイス。
【請求項2】
前記捕捉手段は画像センサ(321)を備える、請求項1に記載の画像捕捉デバイス。
【請求項3】
前記ビームスプリッタデバイス(350)から受信された光を前記捕捉手段に向けるように配置されたミラー(360)を更に備える、請求項1または2に記載の画像捕捉デバイス。
【請求項4】
前記捕捉開口部(370)の近傍に配置され、前記視認開口部(340)を通じて視認可能なオブジェクトの少なくとも一部分を照明するように配置された光源(320)を更に備え、前記捕捉手段は、前記光源からの光範囲外にある光の少なくとも一部分をフィルタリング除去するように適合された光フィルタ(322)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の画像捕捉デバイス。
【請求項5】
前記光源はIR光源であり、前記光フィルタ(322)は、前記IR範囲外の光の少なくとも一部分をフィルタリング除去するように適合される、請求項4に記載の画像捕捉デバイス。
【請求項6】
前記ビームスプリッタデバイス(350)はダイクロイックタイプであり、主にIR光を反射し、可視光を透過するように適合される、請求項1から5のいずれか一項に記載の画像捕捉デバイス。
【請求項7】
前記プロセッサ(310、410)は、
− 捕捉された画像内の数値を認識し、
− 第1の認識された数値と、第2の認識された数値との間の差を表す計算された数値を求め、前記メモリに記憶する、
ように適合される、請求項1から6のいずれか一項に記載の画像捕捉デバイス。
【請求項8】
薬剤送達デバイス(100)に解放可能に付けられるように適合された、請求項1から6のいずれか一項に記載の画像捕捉デバイスであって、前記薬剤送達デバイスは、
− 薬剤リザーバ、または薬剤リザーバを受け入れる区画と、
− ユーザが吐出されることになる薬剤の用量の分量を設定することを可能にする用量設定部材(180)を備える薬剤吐出手段と、
− 用量設定および用量吐出中に、回転軸に対応して、前記ハウジングに対して回転するように適合されたインジケータ部材(170)であって、回転量はそれぞれ、設定用量、前記吐出手段によって容器から吐出されることになる残りの薬剤の分量に対応し、前記インジケータ部材は、用量の分量が設定されていないことに対応する初期回転位置を有する、インジケータ部材と、
− ユーザが前記インジケータ部材の一部分を観察することを可能にする開口部(102)を備えるハウジング(101)と、
− 前記インジケータ部材上に円周方向にまたは螺旋状に配置されたパターンであって、複数の印を含み、現在観察可能な印は、ユーザに、吐出されることになる薬剤の現在設定されている用量の分量のサイズを示す、パターンと、
を備え、前記画像捕捉デバイスは、薬剤送達デバイスのハウジングに取り付けられると、吐出用量の分量を決定するように適合され、前記画像捕捉デバイスは、
− 前記第1の面が前記薬剤送達ハウジングに面し、前記捕捉開口部(370)が前記ハウジング開口部(102)と位置合わせされて配置された状態で、前記画像捕捉デバイスを前記薬剤送達デバイスに所定の位置および向きで解放可能に取り付けるように適合された取付け手段を備え、
− 前記捕捉手段(325)は、前記インジケータ部材上の現在観察可能な印の少なくとも一部分の画像を捕捉するように適合され、
− 前記プロセッサ(310、410)は、前記インジケータ部材の第1の捕捉画像および第2の捕捉画像に基づいて、吐出用量の分量を決定し、記憶するように適合され、前記第1の画像は、用量の分量が設定されたときに捕捉され、前記第2の画像は、用量の分量が吐出されたときに捕捉される、画像捕捉デバイス。
【請求項9】
用量が設定されていることを検出するように適合された動きセンサ手段(325、485)を更に備える、請求項8に記載の画像捕捉デバイス。
【請求項10】
前記動きセンサ手段は、前記捕捉手段(325)によって捕捉された画像に基づいて動きを検出し、これによって前記インジケータ部材(170)の動きを検出するように適合される、請求項9に記載の画像捕捉デバイス。
【請求項11】
前記動きセンサ手段(481、485)は、前記用量設定部材(180)の動きを検出するように適合される、請求項10に記載の画像捕捉デバイス。
【請求項12】
前記プロセッサ(310、410)は、前記動きセンサ手段(481、485)によって検出された動きに部分的に基づいて、吐出されることになる用量の分量を決定するように適合される、請求項9から11のいずれか一項に記載の画像捕捉デバイス。
【請求項13】
− 用量設定状態と、前記薬剤吐出手段が設定用量を吐出するために解放される吐出状態との間で作動可能な解放部材(490)と、
− 前記解放部材の前記状態を検出するように適合された状態センサ手段(386)と、
を備える、請求項8から12のいずれか一項に記載の画像捕捉デバイス。
【請求項14】
(i)決定された用量の分量に関係するデータを表示するように適合されたディスプレイと、(ii)決定された用量の分量に関係するデータが外部デバイスに転送されることを可能にする通信手段と、のうちの少なくとも一方を備える、請求項8から13のいずれか一項に記載の画像捕捉デバイス。
【請求項15】
請求項8に記載の薬剤送達デバイスと組み合わされた請求項8から14のいずれか一項に記載の画像捕捉デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、画像の捕捉および観察の双方を可能にする構成に関する。特定の態様では、本発明は、データの生成、収集および記憶が関連する医療デバイスおよびアセンブリに関する。特定の実施形態では、本発明は、信頼性があり、使いやすく、かつ電力効率の良い方式で薬剤送達用量データを捕捉するためのデバイスおよびシステムに関する。
【0002】
本発明の開示は、例えばインスリンの送達による糖尿病治療で使用されるデバイス等の、回転駆動部材によって駆動されるねじ式ピストンロッドを備える薬剤送達デバイスについて主に言及しているが、これは本発明の例示的な使用にすぎない。
【背景技術】
【0003】
薬剤注射器具は、薬剤および生物学的製剤を自己投与しなければならない患者の生活を大幅に改善してきた。薬剤注射器具は、注射手段を備えたアンプルとほぼ変わらない単純な使い捨て器具を含む、多くの形態を取ることができ、または充填済みカートリッジと共に用いられるように適合された耐久性器具であることができる。薬剤注射器具の形態およびタイプにかかわらず、薬剤注射器具は、注射薬および生物学的製剤を患者が自己投与するのを支援するのに大きな助けとなることが証明されてきた。また、薬剤注射器具は、自己注射を行うことができない者に対して、介護者が注射剤を投与するのを大幅に支援する。
【0004】
適当な時間に適当な量で必要なインスリン注射を行うことは、糖尿病の管理には必須であり、すなわち、指定された投薬計画を順守することが重要である。医療従事者が処方された投薬パターンの有効性を判断できるようにするために、糖尿病患者は、各注射の量および時間の記録を取るように促される。しかしながら、そのような記録は通常、手書きのノートで取られ、記録された情報をデータ処理のために簡単にコンピュータにアップロードできない場合がある。更に、患者によって書き留められたイベントのみが記録されるので、記録された情報が患者の疾患の治療において何らかの価値を有する場合、ノートブックシステムは、患者が各注射を記録するのを忘れないことを必要とする。記録の欠落または間違いは、注射履歴が誤って描写されることにつながり、したがって、今後の投薬に関する医療従事者の意思決定に関する基礎が誤ったものになる。したがって、薬剤送達システムからの注射情報の記録を自動化するのが望ましい場合がある。
【0005】
例えば、US2009/0318865およびWO2010/052275に開示されているように、一部の注射デバイスはこの監視/取得機構をデバイス自体に統合しているが、今日のほとんどのデバイスはこの監視/取得機構を有していない。最も広く使用されているデバイスは、耐久性または充填済みの純粋な機械的デバイスである。後者のデバイスは、空になった後で廃棄されるものであり、安価なので、電子データ取得機能をデバイス自体に内蔵するのはコスト効率が良くない。この問題に対処して、所与の医療用デバイスの使用を示すデータをユーザが生成し、収集し、配布する助けとなる、多数の解決策が提案されてきた。
【0006】
例えば、WO2013/120776は、吐出用量の分量を決定し、記憶するために、ペン型の薬剤送達デバイスに解放可能に付けられるように適合された、電子補助デバイス(または「アドオンモジュール」)について記載している。デバイスはカメラを含み、薬剤送達デバイス上の用量窓を通じて見える回転スケールドラムから捕捉された画像に対し、光学式文字認識(OCR)を行い、それによって、薬剤送達デバイスにダイヤルされた薬剤の用量を決定するように構成される。デバイスが用量窓を覆う際、用量設定中にデータを捕捉するためにカメラも用いられ、これにより、現在のスケールドラム値が、用量設定中に電子制御ディスプレイ上に示されることが可能になる。ペンデバイスのための更なる外部アドオンデバイスがWO2013/004843に示されている。このデバイスは、用量設定中にユーザがスケールドラムを観察するのを可能にするカメラ構成を含む。WO2013/120778は、用量サイズの決定が、軸方向および回転方向の移動を検出するように適合されたセンサに基づく監視デバイスを開示している。
【発明の概要】
【0007】
上記を鑑みて、本発明の目的は、オブジェクトの効率的な捕捉および観察の双方を可能にするデバイス、アセンブリおよび方法を提供することである。更なる目的は、ユーザが取付け可能なアドオンモジュールを備える薬剤送達アセンブリのセキュアで容易でコスト効率の良い動作を可能にするデバイス、アセンブリおよび方法を提供することである。
【0008】
本発明の開示において、上記の目的の1つもしくは複数に対処する、または以下の開示および例示的な実施形態の説明から明らかとなる目的に対処する実施形態および態様を説明する。
【0009】
このため、本発明の第1の一般的態様では、第1の面と、第1の面に形成される捕捉開口部と、捕捉開口部の反対側に配置された視認開口部とを備えるハウジング(301)を備える画像捕捉デバイスが提供される。視認開口部は、通常、透明な部材を設けられるか、またはハウジングの透明な部分によって形成される。画像捕捉デバイスは、メモリと、捕捉開口部と位置合わせされて配置されたオブジェクトの少なくとも一部分の画像を捕捉するように適合された捕捉手段であって、視認開口部と捕捉開口部との間の視認軸に対してオフセットされて配置されている、捕捉手段と、捕捉された画像を処理し、データをメモリに記憶するように適合されたプロセッサとを更に備える。捕捉デバイスは、視認開口部を通じて視認可能な捕捉開口部の少なくとも一部分を覆うように配置されたビームスプリッタデバイスを更に備え、ビームスプリッタデバイスは、捕捉開口部と位置合わせされて配置されたオブジェクトから反射された光の第1の部分が、ビームスプリッタデバイスを通過することを可能にし、これによってユーザが、ビームスプリッタデバイスによって覆われたオブジェクトの一部分を見ることを可能にし、インジケータ部材から反射された光の第2の部分が、ビームスプリッタデバイスによって捕捉手段に向けて反射されることを可能にするように適合される。
【0010】
この配置によって、オブジェクトが人物によって見られること、および電子捕捉手段によって後続の記憶および/または処理のために捕捉されることの双方を効率的に可能にする画像捕捉デバイスが提供される。
【0011】
捕捉手段は、画像センサを備えることができ、また、ビームスプリッタデバイスから受信した光を捕捉手段に向けるように配置されたミラーを更に備えることができ、これにより、画像捕捉デバイスのコンポーネントをハウジング内に配置するときの設計の自由度を高めることが可能になる。代替的に、ビームスプリッタから反射される光は、捕捉手段に直接向けられてもよい。
【0012】
例示的な実施形態において、画像捕捉デバイスは、捕捉開口部の近傍に配置され、視認開口部を通じて視認可能なオブジェクトの少なくとも一部分を照明するように配置された光源を更に備え、捕捉手段は、光源からの光範囲外にある光の少なくとも一部分をフィルタリング除去するように適合された光フィルタを備える。光源は、IR光源の形態をとることができ、光フィルタは、IR範囲外の光の少なくとも一部分をフィルタリング除去するように適合することができる。ビームスプリッタデバイスは、ダイクロイックタイプとすることができ、主にIR光を反射し、可視光を透過するように適合することができる。
【0013】
代替的に、画像センサは、周囲の外部から供給された自然光または人工光を用いて動作するよう適合されてもよく、例えば、デバイスハウジングは、観察されるオブジェクトが外部から照明されることを可能にする窓部分を有することができる。
【0014】
更なる例示的な実施形態では、プロセッサは、捕捉された画像内の数値を認識し、第1の認識された数値と、第2の認識された数値との間の差を表す計算された数値を求め、メモリに記憶するように適合される。画像は、薬剤送達デバイスのスケールドラムから捕捉することができ、スケールドラムの観察される部分は、現在設定されている用量の分量の数値を表す印を含む。
【0015】
本発明の更なる態様では、上記で説明したタイプの画像捕捉デバイスは、薬剤送達デバイスに解放可能に付けられるように構成され、薬剤送達デバイスは、薬剤リザーバ、または薬剤リザーバを受け入れる区画と、ユーザが吐出されることになる薬剤の用量の分量を設定することを可能にする用量設定部材を備える薬剤吐出手段と、用量設定および用量吐出中に、回転軸に対応して、ハウジングに対して回転するように適合されたインジケータ部材であって、回転量はそれぞれ、設定用量、吐出手段によって容器から吐出されることになる残りの薬剤の分量に対応し、インジケータ部材は、用量の分量が設定されていないことに対応する初期回転位置を有する、インジケータ部材と、ユーザがインジケータ部材の一部分を観察することを可能にする開口部を備えるハウジングと、インジケータ部材上に円周方向にまたは螺旋状に配置されたパターンであって、複数の印を含み、現在観察可能な印は、ユーザに、吐出されることになる薬剤の現在設定されている用量の分量のサイズを示す、パターンとを備える。画像捕捉デバイスは、薬剤送達デバイスのハウジングに取り付けられると、吐出用量の分量を決定するように適合され、画像捕捉デバイスは、第1の面が薬剤送達ハウジングに面し、捕捉開口部がハウジング開口部と位置合わせされて配置された状態で、画像捕捉デバイスを薬剤送達デバイスに所定の位置および向きで解放可能に取り付けるように適合された取付け手段を備える。捕捉手段は、インジケータ部材上の現在観察可能な印の少なくとも一部分の画像を捕捉するように適合され、プロセッサは、インジケータ部材の第1の捕捉画像および第2の捕捉画像に基づいて、吐出用量の分量を決定し、記憶するように適合され、第1の画像は、用量の分量が設定されたときに捕捉され、第2の画像は、用量の分量が吐出されたときに捕捉される。
【0016】
動作中にスケールドラム窓を覆う「アドオン」アクセサリデバイスのための「仮想」ディスプレイを設ける結果として、必要とされる追加のディスプレイがデバイスのサイズおよびコストに加える分だけ複雑度が高くなる。更に、非常に正確性および信頼性が高い仮想ディスプレイを設けることが可能である場合があるが、ユーザは、必ずしもそうではないことを懸念する場合がある。これに応じて、上記の構成により、表示されたスケールドラム値からデータが捕捉されることを可能にするが、それでもなお、ユーザが通常通りに薬剤送達を操作し用いる、すなわち、吐出されることになる薬剤の用量を、スケールドラム値を直接用いて設定することを可能にする、薬剤送達デバイスのためのアドオンデバイスが提供される。
【0017】
アドオン画像捕捉デバイスは、用量が設定されていることを検出するように適合された動きセンサ手段を更に備えることができる。例示的な実施形態において、動きセンサ手段は、捕捉手段によって捕捉された画像に基づいて動きを検出し、これによってインジケータ部材の動きを検出するように適合される。代替的に、動きセンサ手段は、用量設定部材の動きを検出するように適合されてもよい。例えば、画像捕捉デバイスは、薬剤送達デバイスの用量設定部材に係合するように配置された、ユーザが操作する追加の用量設定部材を備えることができ、この用量設定部材は、動きセンサ構成の一部を形成する。動きセンサは、移動部材との機械的、光学的、磁気的または伝導性インタフェースに基づくことができる。
【0018】
検出された動き情報は、例えば、捕捉された画像に含まれる情報を処理するのに役立つ動きおよび位置データを供給することによって、吐出用量の分量をより効率的に決定するために、プロセッサによって用いることができる。
【0019】
画像捕捉デバイスは、用量設定状態と、薬剤吐出手段が設定用量を吐出するために解放される吐出状態との間で作動可能な解放部材と、解放部材の状態を検出するように適合された状態センサ手段とを更に備えることができる。例えば、画像捕捉デバイスは、薬剤送達デバイスの解放部材に係合するように配置された、ユーザが操作する追加の用量解放部材を備えることができ、このアドオン解放部材は、状態センサ構成の一部を形成する。状態センサは、移動部材との機械的、光学的、磁気的または伝導性インタフェースに基づくことができる。
【0020】
例示的な実施形態では、決定された用量の分量に関係するデータ、例えば、サイズ、および記憶された用量イベントのための対応する時間を表示するように適合された、電子制御ディスプレイを備える。代替的に、または加えて、画像捕捉デバイスは、決定された用量の分量に関係するデータが外部デバイスに転送されることを可能にする通信手段、例えば、データが転送され、スマートフォン上に表示されることを可能にするNFCまたはBluetooth(登録商標)等の無線送信手段を備えることができる。
【0021】
機械的取付けスイッチは、取付け面から突出し、薬剤送達デバイスに係合するように適合されたスイッチ部材を備えることができる。
【0022】
特定の実施形態では、画像捕捉デバイスは、薬剤送達デバイスに解放可能に付けられるように構成されたアドオンデバイスの形態で提供され、薬剤送達デバイスは、薬剤リザーバ、または薬剤リザーバを受け入れる区画と、ユーザが吐出されることになる薬剤の用量の分量を設定することを可能にする用量設定部材を備える薬剤吐出手段と、用量設定および用量吐出中に、回転軸に対応して、ハウジングに対して回転するように適合されたインジケータ部材であって、回転量はそれぞれ、設定用量、吐出手段によって容器から吐出されることになる残りの薬剤の分量に対応し、インジケータ部材は、用量の分量が設定されていないことに対応する初期回転位置を有する、インジケータ部材と、ユーザがインジケータ部材の一部分を観察することを可能にする開口部を備えるハウジングと、インジケータ部材上に円周方向または螺旋状に配置されたパターンであって、複数の印を含み、現在観察可能な印は、ユーザに、吐出されることになる薬剤の現在設定されている用量の分量のサイズを示す、パターンとを備える。アドオンデバイスは、薬剤送達デバイスのハウジングに取り付けられると、吐出用量の分量を決定するように適合される。アドオンデバイスは、アドオンデバイスを薬剤送達デバイスに所定の位置および向きで解放可能に取り付けるように適合された取付け手段と、メモリと、現在観察可能な印の少なくとも一部分の画像を捕捉するように適合された捕捉手段と、インジケータ部材の第1の捕捉画像および第2の捕捉画像に基づいて、吐出用量の分量を決定し、記憶するように適合されたプロセッサとを備え、第1の画像は、用量の分量が設定されたときに捕捉され、第2の画像は、用量の分量が吐出されたときに捕捉される。アドオンデバイスは、アドオンデバイスが薬剤送達デバイスに付けられているとき、ハウジング開口部を通じて視認可能なインジケータ部材の少なくとも一部分を覆うように配置されたビームスプリッタデバイスを更に備える。ビームスプリッタデバイスは、インジケータ部材から反射された光の第1の部分が、ビームスプリッタデバイスを通過することを可能にし、これによってユーザが、ビームスプリッタデバイスによって覆われたインジケータ部材の一部分を見ることを可能にし、インジケータ部材から反射された光の第2の部分が、ビームスプリッタデバイスによって捕捉手段に向けて反射されることを可能にする。
【0023】
本明細書で用いられるとき、用語「インスリン」は、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液等の制御された方式でカニューレまたは中空針等の送達手段を通過可能であり、血糖値制御効果を有する任意の薬物を含む流動性薬剤、例えば、ヒトインスリンおよびその類似体、ならびにGLP−1およびその類似体等の非インスリンを包含することを意味する。例示的実施形態の説明では、インスリンの使用に言及するが、記述されるモジュールは、他のタイプの薬剤、例えば成長ホルモンの記録を作成するのにも用いられ得る。
【0024】
以下において、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】ペン型薬剤送達デバイスを示す。
図1B】ペンキャップが除去された図1Aのペンデバイスを示す。
図2図1Aのペンデバイスの構成要素を分解図で示す。
図3】2つの状態にある吐出機構を断面図で示す。
図4】薬剤送達デバイスのハウジングにディスプレイが取り付けられた、アドオンデバイスの概略表現を示す。
図5】薬剤送達デバイスのハウジングにディスプレイが取り付けられていない、アドオン画像捕捉デバイスの概略表現を示す。
図6】薬剤送達デバイスのハウジングに取り付けられた更なるアドオンデバイスを部分的に示す。
図7】スケールドラムの基準表現を示す。
図8】スケールドラムからの画像捕捉を示す。
図9図8の画像部分の基準表現に対する相互相関を示す。
図10】基準表現の一致する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面において、類似の構造は、主に類似の参照符号によって識別される。
【0027】
以下において、「上側」および「下側」、「右側」および「左側」、「水平」および「垂直」等の用語または同様な関連する表現が用いられるとき、これらは、添付の図面のみに対して言及するものであり、必ずしも実際の使用状況に言及するものではない。示されている図は概略表現であり、そのため、様々な構造体の構成ならびにそれらの相対的寸法は例示的目的のみを果たすことが意図される。所与の構成要素に対して部材または要素という用語が使用されるとき、一般的には、説明される実施形態においてその構成要素が一体の構成要素であることを示すが、代替的に、説明される構成要素のうちの2つ以上が、例えば単一の射出成形部品として製造された一体の構成要素として提供される場合があるように、同じ部材または要素がいくつかの下位構成要素を含む場合もある。「アセンブリ」という用語は、説明される構成要素が所与の組立手順中に必ずしも一体のまたは機能的なアセンブリを提供するために組み立てられ得ることを意味するものではなく、単に、機能的により密接に関連があるとして共にグループ分けされた構成要素を説明するために使用される。
【0028】
本発明自体の実施形態の前に、充填済みの薬剤送達の例を説明するが、そのようなデバイスは、本発明の例示的な実施形態のための基礎を提供する。図1図3に示されるペン形状薬剤送達デバイス100は、「一般的な」薬剤送達デバイスを表し得るが、実際に示されるデバイスは、Novo Nordisk A/S、Bagsvaerd、Denmarkによって製造および販売されるFlexTouch(登録商標)充填済み薬剤送達ペンである。
【0029】
ペンデバイス100は、キャップ部品107と、その中に薬剤吐出機構が配置されるかまたは組み込まれるハウジング101を含む、近位本体または駆動アセンブリ部分および遠位カートリッジホルダ部分を有する主要部品と、を備え、遠位カートリッジホルダ部分内には、遠位針貫通可能隔壁を含む薬剤充填済みの透明なカートリッジ113が配置されて、近位部分に付けられた取り外し不可能なカートリッジホルダによって所定の位置に保持され、カートリッジホルダは、カートリッジの一部分を検査することを可能にする開口部と、針アセンブリを解放可能に取り付けることを可能にする遠位連結手段115と、を有する。カートリッジは、吐出機構の一部を形成するピストンロッドによって駆動されるピストンを備え、例えばインスリン、GLP−1、または成長ホルモン製剤を収容し得る。最近位の回転可能な用量設定部材180が、表示窓102に示される所望の薬剤の用量を手動で設定する機能を果たし、次にその用量は、ボタン190が作動されたときに吐出され得る。窓は、面取りされた縁部109および用量ポインタ109Pによって取り囲まれたハウジングにおける開口部の形態をとり、この窓は、螺旋状に回転可能なインジケータ部材170(スケールドラム)の一部分を観察することを可能にする。薬剤送達デバイスにおいて具現化される吐出機構のタイプに応じて、吐出機構は、示された実施形態におけるようなばねを含む場合があり、このばねは、用量設定中に引っ張られて、解放ボタンが作動されたときにピストンロッドを駆動するために解放される。代替的に、吐出機構は、例えばNovo Nordisk A/Sによって製造および販売されるFlexPen(登録商標)におけるように、投与部材および作動ボタンが、設定用量サイズに対応する用量設定中に近位に移動し、次に設定用量を吐出するためにユーザによって遠位に移動される場合に、完全に手動とされ得る。
【0030】
図1は、充填済みタイプの薬剤送達デバイス、すなわち、カートリッジが予め取り付けられて供給されてそのカートリッジが空になったときに廃棄される薬剤送達デバイスを示すが、代替的な実施形態では、薬剤送達デバイスは、例えば、カートリッジホルダがデバイス主要部分から取り外されるように適合される「背面装填式の」薬剤送達デバイスの形態で、または代替的に、デバイスの主要部品に取り外し不可能に付けられるカートリッジホルダにある遠位開口部を通してカートリッジが挿入される「前面装填式の」デバイスの形態で、装填されたカートリッジを交換することができるように設計されてもよい。
【0031】
本発明は、薬剤送達デバイスと相互作用するように適合される電子回路部に関するが、本発明をより良く理解するためにそのようなデバイスの例示的な実施形態を説明する。
【0032】
図2は、図1に示すペン形状薬剤送達デバイス100の分解図を示す。より具体的には、ペンが、窓開口部102を有する管状ハウジング101を備え、管状ハウジング101にカートリッジホルダ110が固定的に取り付けられ、薬剤が充填されたカートリッジ113がカートリッジホルダ内に配置されている。カートリッジホルダには、針アセンブリ116が解放可能に取り付けられることを可能にする遠位連結手段115と、キャップ107がカートリッジホルダと取り付けられた針アセンブリとを覆うように解放可能に取り付けられることを可能にする、2つの両側の突起111の形態をとる近位連結手段と、更に、ペンが例えばテーブルの上で転がることを防ぐ突起112とが設けられる。ハウジングの遠位端部内では、ナット要素125が固定的に取り付けられ、ナット要素は、中央ねじ式ボア26を備え、ハウジングの近位端部内では、中央開口部を有するばねベース部材108が固定的に取り付けられている。駆動システムは、2つの対向する長手方向の溝を有しかつナット要素のねじ式ボア内に受け入れられるねじ式ピストンロッド120と、ハウジング内で回転方向に配置されたリング形状のピストンロッド駆動要素130と、駆動要素と回転方向に係合したリング形状のクラッチ要素140とを備え(以下を参照)、その係合はクラッチ要素の軸方向の移動を可能にする。クラッチ要素には、ハウジングの内面の対応するスプライン104(図3Bを参照)と係合するように適合された外側スプライン要素141が設けられ、これによって、クラッチ要素が、スプラインが係合している回転方向に係止された近位位置と、スプラインが係合から外れる回転自在な遠位位置との間で移動することを可能にする。上述したように、両方の位置において、クラッチ要素は駆動要素に回転方向に係止される。駆動要素は、ピストンロッド上で溝に係合する2つの対向する突起131を有する中央ボアを備え、これにより、駆動要素の回転によりピストンロッドが回転し、したがって、ピストンロッドとナット要素との螺合に起因してピストンロッドが遠位に軸方向移動する。駆動要素は、ハウジングの内面に配置された対応するラチェット歯105に係合するように適合された一対の対向する円周方向に延びる可撓性ラチェットアーム135を更に備える。駆動要素およびクラッチ要素は、協働する連結構造を備え、協働する連結構造は、駆動要素およびクラッチ要素を一緒に回転方向に係止するが、クラッチ要素が軸方向に移動することを可能にし、これによりクラッチ要素を回転可能なその遠位位置に軸方向に移動させることができ、遠位位置ではクラッチ要素は回転可能にされ、それによってダイヤルシステム(以下を参照)から駆動システムに回転移動を伝達する。クラッチ要素と、駆動要素と、ハウジングとの間の相互作用について、図3Aおよび図3Bを参照してより詳細に示し説明する。
【0033】
ピストンロッド上で、内容物終了(EOC)部材128がねじ式に取り付けられ、遠位端部の上で、ワッシャー127が回転方向に取り付けられている。EOC部材は、リセットチューブ(以下を参照)との係合のために一対の対向する放射状突起129を備える。
【0034】
ダイヤルシステムは、ラチェットチューブ150と、リセットチューブ160と、用量数の列を形成する、外側の螺旋状に配置されたパターンを有するスケールドラム170と、吐出される薬剤の用量を設定するためのユーザが操作するダイヤル部材180と、解放ボタン190と、トルクばね155とを備える(図3を参照)。リセットチューブは、ラチェットチューブの内側で軸方向に係止されるように取り付けられるが、数度の回転が可能である(以下を参照)。リセットチューブは、その内面上に、2つの対向する長手方向の溝169を備えている。この溝169は、EOC部材の放射状の突起129と係合するように適合されており、それによって、EOCは、リセットチューブによって回転され得るが、軸方向へ移動することが可能である。クラッチ要素は、ラチェットチューブ150の外側遠位端部分上で軸方向に係止されて取り付けられ、これによって、ラチェットチューブがクラッチ要素を介して軸方向にハウジングと回転して係合したり係合から外れたりするように動くことができる。ダイヤル部材180は、軸方向に係止されて取り付けられているが、ハウジングの近位端部に回転自在に取り付けられており、ダイヤルリングは通常動作の下でリセットチューブに回転方向に係止され(以下を参照)、それによってダイヤルリングの回転に対応して、リセットチューブ、したがってラチェットチューブが回転する。解放ボタン190は、リセットチューブに対して軸方向に係止されるが、自由に回転する。戻しばね195は、ボタンおよびそれに取り付けられたリセットチューブに近位方向の力を提供する。スケールドラム170は、ラチェットチューブとハウジングとの間の環状空間内に配置され、ドラムは、協働する長手方向スプライン151、171を介してラチェットチューブに回転方向に係止され、協働するねじ構造103、173を介してハウジングの内面に回転方向に螺合し、それにより、ドラムがラチェットチューブによってハウジングに対して回転されると、数字の列がハウジング内のウィンドウ開口部102を通過する。トルクばねは、ラチェットチューブとリセットチューブとの間の環状空間内に配置され、その近位端部ではばねベース部材108に固定され、その遠位端部ではラチェットチューブに固定され、それによってラチェットチューブがダイヤル部材の回転によりハウジングに対して回転すると、ばねが歪む。可撓性ラチェットアーム152を有するラチェット機構が、ラチェットチューブとクラッチ要素との間に設けられ、クラッチ要素は内周歯構造142を備え、各歯は、用量が設定されたときにリセットチューブを介してユーザが回転する位置にラチェットチューブを保持するように、ラチェット止めを提供する。設定用量を減少させることを可能にするために、ラチェット解放機構162がリセットチューブに設けられ、ラチェットチューブに作用し、これにより、ダイヤル部材を反対方向に回すことによって設定用量を1回または複数回のラチェットきざみ幅(increment)だけ減少させることができ、リセットチューブがラチェットチューブに対して上述の数度だけ回転されると解放機構が作動される。
【0035】
吐出機構の様々な構成部品とそれらの機能的関係を説明したので、次に機構の動作を主に図3Aおよび図3Bを参照して説明する。
【0036】
ペン機構は、用量システムと、上述したようなダイヤルシステムという、2つの相互作用するシステムとみなすことができる。用量設定中、ダイヤル機構は回転し、ねじりばねが荷重される。用量機構はハウジングに係止され、移動することはできない。押しボタンが押し下げられると、用量機構はハウジングから解放され、ダイヤルシステムに係合することによって、ねじりばねが今度はダイヤルシステムを回転させて開始地点に戻し、それとともに用量システムを回転させる。
【0037】
用量機構の中央部品はピストンロッド120であり、プランジャの実際の変位はピストンロッドによって行われる。用量送達中、ピストンロッドは駆動要素130によって回転させられ、ハウジングに固定されたナット要素125とのねじ込み相互作用によって、ピストンロッドは遠位方向で前方に移動する。ゴム製ピストンとピストンロッドとの間には、回転するピストンロッドの軸方向軸受としての役割を果たすとともに、ゴム製ピストンに対する圧力を均一にする、ピストンワッシャー127が位置する。ピストンロッドは、ピストンロッド駆動要素がピストンロッドと係合する非円形断面を有するので、駆動要素はピストンロッドに回転方向に係止されるが、ピストンロッド軸に沿って自由に移動する。結果として、駆動要素の回転によってピストンの前方への直線移動がもたらされる。駆動要素には、駆動要素が(押しボタン端部から見て)時計方向で回転するのを防ぐ、小さいラチェットアーム134が設けられる。駆動要素との係合により、ピストンロッドは結果として前方にのみ移動することができる。用量送達中、駆動要素は反時計方向に回転し、ラチェットアーム135は、ラチェット歯105との係合による小さいクリック音を、例えば一単位のインスリンが吐出される毎に1クリック、ユーザに提供する。
【0038】
ダイヤルシステムに移ると、ダイヤル部材180を回すことによって用量が設定およびリセットされる。ダイヤルを回すと、リセットチューブ160、EOC部材128、ラチェットチューブ150、およびスケールドラム170が全てそれと一緒に回る。ラチェットチューブがトルクばね155の遠位端に接続されているので、ばねが荷重される。用量設定中、ラチェットのアーム152は、クラッチ要素の内側歯構造142との相互作用によってダイヤルされる各単位に対してダイヤルクリックを行う。図示される実施形態では、クラッチ要素には、ハウジングに対する360度の丸一回転に対して24回のクリック(きざみ幅)を提供する24個のラチェット止めが設けられる。ばねは、組立て中に予め荷重され、それによって機構が、許容可能な速度間隔内で小さい用量および大きい用量の両方を送達することができる。スケールドラムはラチェットチューブと回転方向に係合されるが、軸方向に移動可能であり、スケールドラムはハウジングと螺合されているので、ダイヤルシステムを回すとスケールドラムは螺旋パターンで移動し、設定用量に対応する数字がハウジングウィンドウ102に示される。
【0039】
ラチェットチューブとクラッチ要素140との間のラチェット152、142によって、ばねが部品を元に戻すことが防止される。リセット中、リセットチューブはラチェットアーム152を移動させ、それによってラチェットをクリック毎に解放し、記載する実施形態では、1クリックはインスリン一単位IUに対応する。より詳細には、ダイヤル部材を時計方向に回すと、リセットチューブは単純にラチェットチューブを回転させて、ラチェットのアームがクラッチ要素の歯構造142と自由に相互作用できるようになる。ダイヤル部材を反時計方向に回すと、リセットチューブはラチェットクリックアームと直接相互作用して、クリックアームをクラッチの歯から離れる方向でペンの中心に向かって押しやり、これにより、ラチェット上のクリックアームが、荷重されたばねによって生じるトルクによって「1クリック」後方に移動することができる。
【0040】
設定用量を送達するため、押しボタン190が、図3Bに示されるようにユーザによって遠位方向に押される。リセットチューブ160はダイヤル部材から切り離され、続いてクラッチ要素140がハウジングスプライン104を係脱する。ここで、ダイヤル機構は駆動要素130と共に「ゼロ」に戻り、これにより薬剤の用量が吐出される。薬剤送達中の任意のときに押しボタンを解放するかまたは押すことによって、用量を停止および開始することが可能である。5IU未満の用量は、通常は一時停止することができないが、それはゴム製ピストンが非常に急速に圧縮されることにより、ゴム製ピストンが圧縮され、その後、ピストンが元の寸法に戻るとインスリンが送達されるためである。
【0041】
EOC特徴によって、ユーザがカートリッジに残されているよりも大きい用量を設定することが防止される。EOC部材128はリセットチューブに回転方向に係止され、それによって、用量設定、リセット、および用量送達中にEOC部材を回転させ、その間、ピストンロッドのねじ山を辿って軸方向で前後に移動させることができる。EOC部材がピストンロッドの近位端に達すると、止めがもたらされ、これにより、ダイヤル部材を含む接続された部品全てが用量設定方向で更に回転することが防止され、すなわち、現在の設定用量はカートリッジ内の残りの薬剤内容量に対応する。
【0042】
スケールドラム170には、ハウジング内表面の対応する停止面を係合するように適合された遠位側停止面174が設けられ、これにより、スケールドラムの最大用量止めが提供されて、ダイヤル部材を含む接続された部品全てが用量設定方向に更に回転することが防止される。図示される実施形態では、最大用量は80IUに設定される。それに対応して、スケールドラムには、ばねベース部材の対応する停止面と係合するように適合された近位側停止面が設けられ、これにより、ダイヤル部材を含む接続された部品全てが用量吐出方向で更に回転することが防止され、それによって吐出機構全体に対して「ゼロ」止めがもたらされる。
【0043】
ダイヤル機構の何かが故障した場合に偶発的に過量投与されて、スケールドラムがそのゼロ位置を越えて移動するのを防ぐため、EOC部材は安全システムを提供する役割を果たす。より詳細には、カートリッジが満杯の初期状態では、EOC部材は、駆動要素と接触する軸方向最遠位位置に位置決めされる。所与の用量が吐出された後、EOC部材は再び駆動要素と接触して位置決めされる。それに対応して、EOC部材は、機構がゼロ位置を越えて用量を送達しようとした場合、駆動要素に対して係止される。機構の様々な部品の許容差および柔軟性により、EOCは短い距離を移動して、薬剤の少量の「過量」を、例えば3〜5IUのインスリンを吐出することが可能になる。
【0044】
吐出機構は、吐出用量の終りに明確なフィードバックを提供して、薬剤の全量が吐出されていることをユーザに通知する、用量終了(EOD)クリック特徴を更に備える。より詳細には、EOD機能は、ばねベースとスケールドラムとの相互作用によって作られる。スケールドラムがゼロに戻ると、ばねベース上の小さいクリックアーム106が、前進するスケールドラムによって後方に押しやられる。「ゼロ」の直前で、アームが解放され、アームはスケールドラムの座ぐり面に突き当たる。
【0045】
図示される機構には、ダイヤル部材を介してユーザによって加えられる過負荷から機構を保護するために、トルクリミッタが更に設けられる。この特徴は、上述したように互いに回転方向に係止される、ダイヤル部材とリセットチューブとの境界面によって提供される。より詳細には、ダイヤル部材は、リセットチューブの可撓性キャリア部分161上に配置された多数の対応する歯を係合する、円周方向の内側歯構造181を備える。リセットチューブの歯は、所与の指定された最大サイズの、例えば150〜300Nmmのトルクを伝達し、それを上回ると可撓性キャリア部分および歯が内側に曲がり、ダイヤル機構の残りを回転させずにダイヤル部材が回るようになる。したがって、ペン内部の機構は、トルクリミッタが歯を通して伝達するよりも高い負荷で応力をかけられる可能性がない。
【0046】
本発明自体に進む前に、ユーザが用量設定中にスケールドラム窓を観察することができない設計を有するアドオンデバイスの例が説明される。このデバイスには代わりに、現在ダイヤルされている用量のサイズを「仮想的に」示すように適合されたディスプレイが設けられている。
【0047】
より詳細には、図4は、上述したペン型の薬剤送達デバイス100のハウジング101に取り付けられた状態にあるアドオンデバイス(またはモジュール)200の概略表現を示す。アドオンデバイスは、吐出イベント、すなわち、薬剤用量の皮下注射中に薬剤送達デバイスから吐出される薬剤の分量を決定するように適合される。示される実施形態では、薬剤の吐出用量の決定は、吐出イベントの開始および終了時のスケールドラム位置の決定に基づく。スケールドラムの回転方向の位置を決定するために、表示窓102に見られるような用量数を捕捉して用いることができ、これによって、変更されていないペンデバイスが用いられることが可能になる。スケールドラム位置の実際の決定は、例えば、光学式文字認識(OCR)またはテンプレートマッチングを用いて行うことができる。後者の概念は、参照により本明細書に援用されるEP15202796.7に、より詳細に記載されている。代替的に、例えばWO2013/004843に開示されているように、スケールドラム上に専用コードパターンが提供されてもよい。
【0048】
アドオンデバイスはハウジング201を備え、このハウジング201内に、エネルギー源211によって電源供給される電子回路部210が配置される。電子回路部は、窓102に見られるスケールドラム170の少なくとも一部分を照明するように適合された光源220、スケールドラムから画像データを捕捉するように適合された捕捉デバイス(カメラデバイス)221、用量設定部材180と直接か間接かどちらかでインタフェースするように設計された低電力動き/位置センサアセンブリ235、ペンハウジング101に係合するように適合された取付けスイッチ230、ディスプレイ240、および1つまたは複数のボタン250の形態のユーザ入力手段に接続され、これらとインタラクトする。更に、用量設定および用量吐出中に吐出機構によって生成される特定の音を検出する音響センサが設けられてもよい。電子回路部210は通常、例えば、汎用マイクロプロセッサまたはASICの形態のコントローラ手段と、組み込まれるプログラムコードのためのストレージを提供するROM等の不揮発性プログラムメモリと、データ用のフラッシュメモリおよび/またはRAM等の書き込み可能メモリと、ディスプレイコントローラとを備える。電子回路部は、無線送信機/受信機、カードスロットまたは出力ポート、例えばUSBポート等のROMまたはフラッシュメモリに記憶された情報を除去または通信する1つまたは複数の手段も備えることができる。
【0049】
アドオンデバイスは、アドオンデバイスをペンハウジング上に解放可能に取り付け、しっかりと保持し、位置決めするように適合された取付け手段(図示せず)を更に備える。明らかであるように、アドオンデバイスは表示窓を覆い、このため、表示窓に示される現在の用量サイズが捕捉され、電子ディスプレイ240上に表示されなくてはならない。
【0050】
連結手段は、例えば、アドオンデバイスがペン本体上の適所に摺動することを可能にするボア、アドオンデバイスが垂直方向に取り付けられることを可能にする可撓性把持構造、またはユーザによって操作されなくてはならない係止手段、例えばヒンジ連結されたラッチ部材もしくは摺動部材の形態をとることができる。アドオンデバイスをペンハウジング上にしっかりと保持し、位置決めするために、アドオンデバイスには、ペン本体上の対応する位置決め構造に係合するように適合された位置決め手段を設けることができる。位置決め構造は、異なる目的で設けられた既存の構造、例えば窓開口部の形態をとってもよく、または特定の取付け構造、例えば、ペン本体に設けられる1つまたは複数のインデントの形態をとってもよい。
【0051】
スケールドラム位置、およびこのため用量サイズの決定は、画像捕捉、および捕捉された画像データの後続の処理に基づくため、アドオンデバイスは、薬剤送達デバイスにおけるその意図された動作位置に正しく位置決めされることが重要である。例えば確認「クリック」によって、ユーザが認識可能な係合をもたらすように設計された上記で説明した連結および位置決め手段に加えて、アドオンデバイス200には、取付けスイッチ230、例えば機械マイクロスイッチが設けられ、このスイッチは、アドオンデバイスがペンハウジング上に取り付けられるときにオフ状態からオン状態に作動される。
【0052】
上記で言及したように、アドオンデバイスには、用量設定中にディスプレイ240を制御するように設計された低電力動き/位置センサアセンブリ235が設けられる。このようにして、比較的電力を大量消費するカメラデバイスおよび光源は、用量設定中にディスプレイを制御するように動作する必要がないが、吐出用量に関する情報を捕捉するように取っておくことができ、これによってより長い電池寿命がもたらされる。センサアセンブリは、用量設定部材と直接インタラクトするように適合することもできるし、ペン用量設定部材に非回転方向に係合するように適合された追加部材を含み、センサ自体がこの追加部材の回転運動を検出することもできる。双方のタイプのセンサアセンブリの実施形態が、特許出願EP16171883.8に更に詳細に記載されている。
【0053】
吐出用量のサイズを決定するために用量吐出イベントの開始時および終了時にスケールドラム位置を捕捉するのに用いられる技術は、用量設定中に用いることもでき、捕捉されたデータは、用量設定中に電子ディスプレイを制御するのに用いられる。これについては、例えばWO2013/120776に開示されている。用量設定動作中の電力消費を低減するために、画像捕捉および処理手段は、異なる複数のモード、例えば、用量設定中にディスプレイを制御するための「単純な」低電力モード、および所与の用量が設定/吐出され、スケールドラムがこれ以上回転しないときに、設定用量のサイズを安全に決定するための「フル」高電力モードで動作することができる。
【0054】
明らかであるように、動作中にスケールドラム窓を覆うアドオンアクセサリデバイスのための仮想ディスプレイを設ける結果として、必要とされる追加のディスプレイがデバイスのサイズおよびコストを加える分だけ複雑度が高くなる。更に、非常に正確性および信頼性が高い仮想ディスプレイを設けることが可能である場合があるが、ユーザは、必ずしもそうではないことを懸念する場合がある。
【0055】
図5を参照して、これらの問題に対処する、本発明の例示的な実施形態を説明する。
【0056】
より詳細には、図5は、上記で説明したペン型の薬剤送達デバイス100のハウジング101上に取り付けられた状態にあるアドオンデバイス(またはモジュール)300の概略表現を示す。アドオンデバイスは、吐出イベント中、すなわち、薬剤用量の皮下注射中に薬剤送達デバイスから吐出されることになる薬剤の分量を決定するように適合される。示される実施形態では、吐出されることになる薬剤の用量の決定は、吐出イベントの開始時および終了時のスケールドラム位置の決定に基づく。
【0057】
アドオンデバイスは、取付け面としての役割を果たす第1の面302と、第1の面に形成される捕捉開口部370と、捕捉開口部の反対側に配置された視認開口部340とを有するハウジング301を備える。ハウジング内には、エネルギー源311によって電力供給される電子回路部310が配置される。電子回路部は、ペンウィンドウ102内に見られるスケールドラム170の少なくとも一部分を照明するように適合された光源320、およびスケールドラムから画像データを捕捉するように適合された捕捉デバイス(カメラデバイス)321を含む捕捉アセンブリ325に接続され、これらとインタラクトする。捕捉アセンブリは、光学レンズアセンブリ322および光学フィルタ323も含む。アドオンデバイスは、スケールドラム窓102の上方のダイクロイックビームスプリッタ(シースルーミラー)350と、ビームスプリッタからの光の向きを変更してカメラデバイスに向けるためのミラー360とを更に備え、これによって、カメラデバイスが、スケールドラム開口部から離れて位置し、依然として、ビームスプリッタの「ミラー側」を介してスケールドラムを「見る」ことが可能である。示される実施形態では、カメラデバイスは、追加のカメラミラーが必要とされるように位置決めされる。代替的に、カメラミラーは省かれてもよく、カメラデバイスはカメラミラーのために示された位置に対応して位置決めされてもよい。カメラはスケールドラムを捕捉するが、ユーザは、透明なハウジング窓340を介して、ビームスプリッタ350を透かして見ることができ、これによって、用量設定中にスケールドラムを直接観察することができる。この構成により、ユーザおよびカメラの双方が、スケールドラムを、本質的に垂直な視認方向において捕捉開口部370を通じて観察する。
【0058】
示される実施形態は、カメラデバイスが赤外(IR)光スペクトルで機能することを可能にするように最適化されている。より詳細には、IR光源320によって生成されたIR光は、窓開口部102に示されるスケールドラム部分170に向かって方向付けられ、そこからダイクロイックビームスプリッタ350の下面に向けて反射される。ダイクロイックビームスプリッタ350は、(人間の眼に対する)可視光が通過し、IR光をカメラミラー360に向けて反射することを可能にするように最適化されている。カメラアセンブリには、スケールドラム画像の焦点をカメラデバイス321上に合わせるための1つ以上のレンズと、光フィルタとを備えるレンズシステム323が設けられる。カメラアセンブリのIRフィルタと光源とは、ビームスプリッタの反射性の側面と光スペクトル単位で「ペアリングされている(paired)」。スペクトルは、IRスペクトル内、または代替的にIRスペクトル外にあり得るが、最適な性能のためには、カメラ、レンズ、光、およびビームスプリッタの反射性の側面のペアリングが重要である。
【0059】
図4の上記で説明した実施形態に関して、図5の実施形態における吐出されることになる薬剤の用量の決定は、吐出イベントの開始および終了時のスケールドラム位置の決定に基づく。
【0060】
所望のレベルのデバイス複雑度に依拠して、ユーザインタフェースの使いやすさを増減させることができ、すなわち、使いやすさの度合いが高いと、一般に、より高いレベルのデバイス複雑度を要し、使いやすさの度合いが低いと、一般に、より低いレベルのデバイス複雑度を要する。
【0061】
比較的単純なシステムでは、光学動き検出器システムは、上記で説明した捕捉システムに基づくことができ、捕捉された画像は、スケールドラムの動きを検出するために解析され、これにより、用量が設定されていることがシステムに示される。動きの停止が検出されるとき、これは所望の用量が設定されたことを示し、次に、この所望の用量を、捕捉されたスケールドラム画像の画像解析に基づいて決定することができる。その後動きが決定されるとき、これは、用量が吐出されていることを示す。動きの停止が検出されるとき、次にこれは用量が吐出されたことを示し、次に、スケールドラムの位置を決定することができ、例えば、スケールドラムの位置は、例えばゼロであり、所与の設定用量が完全に吐出されたことを示し、開始値および終了値に基づいて、吐出用量のサイズを計算することが可能になる。
【0062】
しかしながら、そのような単純なシステムには、複数の欠点が伴う。例えば、用量が設定され、スケールドラムの位置が捕捉されたとき、ユーザは、設定用量を低減することを望む場合がある。実際に、これは吐出イベントして解釈されるべきでない。これに応じて、そのような「単純な」システムの場合、光学センサは、スケールドラムが用量設定中または用量吐出中に動いているか否かを決定することができなくてはならない。例えば、動きセンサは、スケールドラムの回転速度、すなわち、用量設定中の、双方向における比較的遅い回転、および用量吐出中の比較的速い回転を検出するように設計することができる。ユーザが最初にスケールドラムを概ね用量値まで回転させ、次に設定用量を細かく調整する場合、そのような状況は、開始値、すなわちゼロに基づいて特定することができる。しかしながら、明らかであるように、そのようなシステムはほとんどの状況において良好に機能し得るが、完璧ではない。
【0063】
代替形態において、アドオンデバイスは、高い度合いの使いやすさを提供し、低いシステム複雑度に対しより焦点を当てないように設計され得る。
【0064】
図6を参照すると、アドオンモジュール400の第2の実施形態が部分的に示され、モジュールは、モジュールの一部として設けられる解放部材によって作動される状態スイッチを備える。より詳細には、アドオンモジュール400はハウジング401を備え、ハウジング401内には、電子回路部410、エネルギー源、光源およびカメラデバイス(図5の実施形態内のように)が配置される。アドオンモジュールハウジングは、ペンデバイスの概ね円筒形の近位ハウジング部分101を受け入れるように適合されたボアを形成し、ボアは、ペンデバイスに面するように適合された概ね円筒形の取付け面402によって画定される。視認/カメラ開口部は、取付け面に形成される。ボアとペンとの間に、ボアにペンを受け入れることを可能にする小さな隙間が設けられる。ペンデバイスに係合するように適合されたアドオンモジュール上の係止構造によって2つの構造間の堅い把持が提供され、堅い把持が固定される。係止構造は、ばね付勢され、アドオンモジュールがペンに取り付けられるときに適所にスナップするように適合され得る。代替的に、係止構造は、ユーザ操作による係止の形態をとり得る。アドオンモジュールは、取付け面から突出し、窓開口部縁の少なくとも一部分に係合し、それによってアドオンモジュールを開口部に対し軸方向および回転方向の双方において位置決めするように適合された位置決め構造403を備える、例えば、視認/カメラ開口部を少なくとも部分的に取り囲む突出リップ403構造の形態を取り、リップ構造は、窓開口部のエッジ部分に形状適合して係合するように適合され、それによって、2つのハウジング構造体間を、それによってカメラデバイスとスケールドラムとの間を、軸方向および回転方向の双方において正しく位置決めすることを確実にする。
【0065】
更に、アドオンモジュール400には、ユーザがアクセス可能なアドオンダイヤル部材480と、ユーザがアクセス可能なアドオン解放ボタン490と、円筒形の動き部材481を動き検出器485と併せて備える動きセンサアセンブリと、アドオンダイヤル部材に関連付けられた状態スイッチ(またはセンサ)486とが設けられる。示される実施形態では、アドオンダイヤル部材480およびアドオン解放ボタン490は、互いに軸方向に係止されて取り付けられ、組み合わされたアドオンダイヤルおよび解放部材が形成される。2つの部材はまた、互いに回転方向に係止されてもよい。明らかであるように、アドオンモジュールがペンデバイスに取り付けられるとき、ペン用量設定部材およびペン解放ボタンは、アドオンモジュールによって覆われる。
【0066】
アドオンモジュールは、位置決め構造403の近傍に配置された取付けスイッチアセンブリ430を更に備える。スイッチアセンブリ430は、電子回路部と通信し、ボア内に突出する、偏向した遠位の「オフ」位置と、引き込まれた近位の「オン」位置との間で動くように配置されたアクチュエータ要素を備えることができる。「オン」位置は、アドオンモジュールがペンに対応するペン本体に取り付けられたことを電子回路部に示す。
【0067】
図6の実施形態の動作原理に関して、円筒形の運動部材481は、アドオンデバイスがペンデバイスに取り付けられるときに用量設定部材180に軸方向に係合するように適合された内面を有し、合わせ面は、例えば、図1Aに示すようなFlexTouch(登録商標)ペンデバイスに設けられた軸方向に向けられた溝パターンに基づいて、非回転の係合を提供する。アドオンダイヤル部材480は、モジュールハウジング401に対し自由に回転可能に連結されるが、アドオンモジュールがペンデバイスに取り付けられるとき、動き部材481と、このため用量設定部材180と非回転に係合する。アドオンダイヤル部材480は、初期の最近位の位置と、作動した最遠位の位置との間でモジュールハウジングに対し軸方向に動かされるように配置される。動き部材481とアドオンダイヤル部材480との間に付勢ばね482が設けられ、組み合わされたアドオン部材がその最近位の位置に向かって付勢されることを確実にする。組み合わされたアドオン部材のアドオン解放ボタン部分490は、モジュールハウジングに対し軸方向に動かされるときに、ペンデバイス解放ボタン190に係合するように適合される。このようにして、アドオンダイヤル部材部分480によって用量が設定され、設定用量がアドオン解放ボタン部分490によって解放される。
【0068】
動き検知特徴に加えて、動きセンサアセンブリはウェイクアップスイッチ配置も提供する。ウェイクアップスイッチ配置は低電力のスリープモードを有するが、それでも、動き部材が初期用量設定中に回転されると、ウェイクアップ信号を提供する。動き部材481は、アドオンモジュールの取付け中に不可避的に移動するので、動きセンサ配置は、取付け中に電子機器をウェイクアップする取付けスイッチも提供することができる。
【0069】
示される実施形態において、状態スイッチアセンブリは、アドオンダイヤル部材480の遠位部分と摺動係合する1つまたは複数の接触部材486を備え、アドオンダイヤル部材480上に、円周コードリングが配置され、これにより、近位用量設定状態と、遠位用量解放状態との間のアドオン解放ボタン490の軸方向の移動を検出するように配置されたスイッチが提供される。
【0070】
動きおよび状態センサは、移動部材との、機械的、光学的、磁気的または伝導性インタフェースに基づくことができる。機械的設計の場合、動きセンサおよび状態スイッチの双方の接触部材が、組み合わされた接触アームアレイの形態で提供することができる可撓性接触アームの形態をとることができる。
【0071】
状態検知特徴に加えて、状態スイッチ配置はウェイクアップスイッチ配置も提供する。ウェイクアップスイッチ配置は、低電力のスリープモードを有するが、それでも、アドオン解放ボタンが作動されると、ウェイクアップ信号を提供する。この配置は、以下で説明するように、一定の動作条件中に関係し得る。
【0072】
様々な使用シナリオの説明に進む前に、例示的なシステムの更なる特徴を説明する。より詳細には、アドオンモジュール400にはメモリが設けられ、メモリ内に、カメラの使用によって決定されるスケールドラムの最後の回転方向の位置が記憶される。アドオンモジュールが新たなペンデバイスに取り付けられるとき、メモリはリセットされなくてはならないが、ユーザが初期取付け手順の一部として一定の動作を実行しなくてはならないことを回避するために、アドオンモジュールには、自動スケールドラム位置捕捉を設けることができる。より詳細には、アドオンモジュールがペンデバイスに新たに(または最初に)取り付けられたことが取付けスイッチ手段によって検出されると、カメラはスケールドラムの画像を捕捉し、この画像は、例えばテンプレートマッチングによって、スケールドラムの位置を決定するように処理され、「最終位置」メモリに記憶される。
【0073】
通常の使用中、ユーザは用量のダイヤルを開始し、これによってシステムがウェイクアップする。記憶された値は、必ずしもではないが、通常0である。用量設定中に「絶対」位置が決定されるため、システムは、設定用量が調整される、すなわち減少される状況に対処することもできる。
【0074】
システムが、動きが停止したことを検出すると、カメラは、画像を捕捉するように操作され、この画像は処理され、スケールドラムの位置が決定され、メモリが新たな最終位置値で更新される。ユーザは、用量を更に調整することを望む場合があり、この結果、動きが停止したことが検出されるときに、新たな画像が捕捉される。
【0075】
この時点において、システムはウェイク状態にあり、設定用量が解放されるのを待機しているが、例えば、活動なしで5分経過した後、システムはスリープモードに戻る場合がある。アドオン解放ボタンを作動させることによって設定用量が解放されるときにシステムをウェイクアップするために、状態スイッチからの入力を利用することができる。用量設定部材、このため動きセンサは、外部投薬中に移動していないので、システムをウェイクアップするための動きの活動入力が存在しない。代替的に、システムは、アドオン解放ボタンが近位用量設定位置に戻るときに最初にウェイクアップする場合がある。
【0076】
ユーザが用量吐出後または用量吐出中にアドオン解放ボタンを解放すると、状態スイッチはこの変化を検出し、スケールドラムの画像を捕捉するようにカメラデバイスを制御する。スケールドラム位置が用量終了ゼロ位置にあると決定される場合、設定用量が完全に吐出されたこと、および吐出用量がメモリに記憶された最終位置値に対応することを想定することができる。データは、ログエントリとしてモジュールメモリに記憶される。カメラが捕捉したスケールドラム位置が用量終了位置に対応しない場合、システムは、まず、設定用量の吐出が中断されたと想定し、更なる活動を待つ。活動が検出されない場合、システムは、所与の時間量の後、例えば5分後にタイムアウトし、吐出用量サイズを、設定用量の分量(最終位置値に対応する)と、残りの用量の分量(現在の位置の値に対応する)との差として計算する。計算された用量サイズは、ログエントリとして記憶される。以前の最終位置値は現在の位置値で上書きされる。
【0077】
この時点において、ユーザが残りの用量を吐出すると決める場合、システムはウェイクアップし、例えば、残りの用量の分量に完全にまたは部分的に対応する更なる吐出用量の分量を決定する。代替的に、ユーザは、アドオンダイヤル部材を初期ゼロ位置に向けてダイヤルすることによって、残りの用量を完全にまたは部分的にキャンセルすると決める場合がある。回転方向の動きが停止したことが検出されると、カメラは画像を捕捉するように操作される。状態スイッチが操作されていないので、新たに捕捉された位置値、例えば0が新たな最終位置としてメモリに記憶される。
【0078】
図5および図6の実施形態では、アドオンデバイスはディスプレイを備えていないが、所望の場合、決定された用量の分量、例えばサイズ、および記憶された用量イベントの対応する時点に関するデータを表示するように適合された電子制御ディスプレイをアドオンデバイスに設けてもよい。代替的に、または加えて、アドオンデバイスは、例えば、データがスマートフォンに転送され、スマートフォン上に表示されることを可能にする、NFCまたはBluetooth(登録商標)等の無線送信手段によって、決定された用量の分量に関係付けられたデータが外部デバイスに転送されることを可能にする通信手段を備えることができる。
【0079】
ペンデバイスの動作中に入力を提供することに加えて、上述の状態スイッチを用いて、例えば、記憶されたログエントリを示すために提供されたディスプレイを制御するように、および/またはアドオンデバイスと外部デバイスとの通信を制御するように、他の方法でアドオンモジュールを制御することもできる。
【0080】
明らかであるように、図6の実施形態のセンサセットアップによって、高度に使いやすいアドオンロギングデバイスが設けられる。
【0081】
上述のアドオンデバイスにおいて、スケールドラム位置は、スケールドラムの面画像全体の記憶された表現とのテンプレートマッチングによって決定することができる。
【0082】
これに対応して、図7は、フィルムからの連続画像の部分を連接することによって得られるスケールドラム全体のテンプレート画像215を示し、ここで、スケールドラムは位置80から位置0に動く。テンプレート画像は、特定の画像の位置をいつ決定するかの基準として用いられる。ピクセル位置(上記の図面における水平軸)は、ドラム位置に対応する(度、IUまたは他の単位)。例として、図8は、スケールドラム窓の画像216を示し、ここで、位置は10UIに対応し、長方形217は、位置検出に用いられるエリアを示す。次に、図9は、ピクセル位置の関数118として、基準115に対する長方形画像部分の相関を示す。ピークを探索することにより、図10に示すような基準画像からのカット119に対応するピクセル位置341における最良のマッチが明らかとなる。このピクセルオフセットにおける基準画像は、スケールドラムが位置9.8IUにあったときに取得された。
【0083】
探索手順を加速して時間を節減し、電力効率を高めるために、探索は有利には、最も可能性の高い値を表す位置において開始することができ、少なくとも最初は、その位置の周りの所与の限られた範囲のみを検討すればよい。このため、図6の実施形態の電子回路部には、インジケータの最も近時の既知の回転方向の位置に対応する基準位置値を記憶するように適合されたメモリが設けられ、プロセッサ手段は、(i)インジケータの捕捉された画像、および記憶された基準位置値に基づいてインジケータの現在の回転方向の位置を決定し、(ii)決定された現在の回転方向の位置を、新たな基準位置値としてメモリに記憶し、(iii)上述したようにカメラからの入力に基づいて吐出用量の分量を決定するように適合される。動き検出器485は、ディスプレイを制御するのに用いられないが、任意選択で、位置を検出する能力を設けられてもよく、検出された位置は、探索手順を最適化するのに用いられる。実際に、そのようなシステムは、出力がアドオンデバイスにおける内部プロセスを最適化するためにのみ用いられるため、より低い精度および信頼性基準を満たすように設計され得る。また、インジケータの回転方向の位置がOCRに基づく場合において、最も可能性の高い回転方向の位置が既知であるとき、これはOCRプロセスの効率および精度を改善するのに役立つ場合がある。
【0084】
例示的な実施形態の上記の説明において、画像捕捉デバイスは、この画像捕捉デバイスが取り付けられた薬剤送達デバイスから用量データを捕捉するように適合されたアドオンデバイスの形態で説明されたが、これは例示的な実施形態にすぎない。例えば、捕捉デバイスは、例えば品質管理において用いられる、検査および文書管理デバイスの形態をとることができる。そのような実施態様の場合、視認開口部に、ユーザが観察されたオブジェクトを詳細に調べることを可能にする拡大鏡を設けてもよく、捕捉およびメモリ手段は、同時に、後の索出または外部デバイスへの送信のために、観察されたオブジェクトのための文書管理を提供する。
【0085】
例示的な実施形態の上記の説明において、様々な構成要素について説明した機能を提供する様々な構造および手段が、本発明の概念が当業者に自明である程度まで説明された。様々な構成要素のための詳細な構築および仕様は、本発明の仕様の規定に沿って当業者により実施される通常の設計工程の対象と見なされる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】