(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-532888(P2019-532888A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】2成分モルタル化合物とその使用
(51)【国際特許分類】
C04B 28/00 20060101AFI20191018BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20191018BHJP
C04B 24/28 20060101ALI20191018BHJP
C04B 24/40 20060101ALI20191018BHJP
【FI】
C04B28/00
C08G59/40
C04B24/28 A
C04B24/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-511338(P2019-511338)
(86)(22)【出願日】2017年7月20日
(85)【翻訳文提出日】2019年2月23日
(86)【国際出願番号】EP2017068356
(87)【国際公開番号】WO2018041465
(87)【国際公開日】20180308
(31)【優先権主張番号】16186195.0
(32)【優先日】2016年8月30日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】メーズット カクマク
(72)【発明者】
【氏名】メーメット−エーミン クムル
【テーマコード(参考)】
4G112
4J036
【Fターム(参考)】
4G112PB33
4G112PB41
4J036AA01
4J036AB00
4J036AD08
4J036AF06
4J036DD08
4J036FA03
4J036FA05
4J036JA01
4J036JA06
4J036JA15
(57)【要約】
付加反応により重合可能な少なくとも1つのエポキシ系樹脂を硬化性成分として含む少なくとも1つの樹脂成分(A)と、樹脂成分(A)の樹脂の硬化剤を含む硬化剤成分(B)と、を含む2成分モルタル化合物であって、少なくとも1つの成分が少なくとも1つのシロキサンを有し、この少なくとも1つのシロキサンはエポキシドとの付加反応が可能な、少なくとも1つの官能部を有するが、シリコン原子に結合する加水分解基、特にアルコキシ部を有しない、ことを特徴とする2成分モルタル化合物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加反応により重合可能な少なくとも1つのエポキシ系樹脂を硬化性成分として含む、少なくとも1つの樹脂成分(A)と、前記樹脂成分(A)の樹脂の硬化剤を含む硬化剤成分(B)と、を含む2成分モルタル化合物であって、少なくとも1つの前記成分は、エポキシドとの付加反応が可能な少なくとも1つの官能部を有するが、シリコン原子に結合する加水分解基を有しない、少なくとも1つのシロキサンを有する、ことを特徴とする2成分モルタル化合物。
【請求項2】
エポキシ基との付加反応が可能な前記官能部が末端部である、ことを特徴とする請求項1に記載の2成分モルタル化合物。
【請求項3】
前記官能部は、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、第2級アミノ、メルカプト、イソシアナト、アルケニル、(メタ)アクリロイル、アンヒドリド、及びエポキシ部から成る群、好ましくはエポキシ及びアミノ部から成る群から選択される、ことを特徴とする請求項2に記載の2成分モルタル化合物。
【請求項4】
前記シロキサンはR3Si−[O−Si(R1)2]n−O−SiR3構造を有し、
ここで、nは0又は1から1000までの自然数、好ましくは0から100、さらに好ましくは0又1から15までの自然数であり、
R及びR1はお互いに独立しており、ヘテロ原子を必要により含み、エポキシ基との付加反応が可能な少なくとも1つの部分を必要により含むC1−C20アルキル部又はアラルキル部をそれぞれ意味し、R1はC1−C4アルキル部から成る群から選択されることが好ましい、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の2成分モルタル化合物。
【請求項5】
前記シロキサンが、2つ又はそれ以上の同一又は異なるエポキシ基と付加反応が可能な官能性末端部、好ましくは2つの同一のエポキシ基と付加反応が可能な官能性末端部を有し、前記官能性末端部は好ましくはアミノ及びエポキシ部から成る群から選択されることが好ましい、ことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1つに記載の2成分モルタル化合物。
【請求項6】
前記シロキサンは、1,3−ビス(2−アミノエチルアミノエチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチル−ジシロキサン、トリス(グリシドキシプロピルジメチルシロキシ)フェニルシラン、3−メタクリロキシ−プロピルペンタメチルジシロキサン、ポリ(アクリロキシプロピルメチル)シロキサン、1,3−ビス(アクリロキシプロピルメチル)シロキサン、1,3−ビス(3−メタクリロキシプロピル)テトラキス−(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、1,3−ビス(3−メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、モノメタクリロキシプロピル−末端ポリジメチルシロキサン、ポリ[ジメチルシロキサン−共−(3−(モノメタクリルオキシ)プロピル)メチルシロキサン]、1,3,−ビス(4−メタクリロキシブチル)−テトラメチルジシロキサン、(メタクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコーポリマー、ドデカメチルペンタシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチル−3,5−ビス(トリメチルシラニルオキシ)テトラシロキサン、トリメチルシリル−末端ポリ(メチルヒドロシロキサン)、ビス(ヒドロキシアルキル)−末端ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ[ジ−メチルシロキサン−共−(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル)メチルシロキサン]、ジグリシジルエーテル−末端ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ[ジメチルシロキサン−共−[3−(2−(3−ヒドロキシ−エトキシ)エトキシ)プロピル]メチルシロキサン]、及びモノグリシジルエーテル−末端ポリ(ジメチルシロキサン)から成る群、特に好ましくは1,3−ビス(2−アミノエチルアミノエチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、及びトリス(グリシドキシプロピルジメチルシロキシ)フェニルシランから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の2成分モルタル化合物。
【請求項7】
前記シロキサンの比率は、前記2成分モルタル化合物の総重量に対し、0.5から20wt%、好ましくは1.5から10wt%、さらに好ましくは2から5wt%である、ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の2成分モルタル化合物。
【請求項8】
前記樹脂成分(A)及び/又は前記硬化剤成分(B)は、少なくとも1つの揺変剤をさらなる成分として含む、ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1つに記載の2成分モルタル化合物。
【請求項9】
前記樹脂成分(A)及び/又は前記硬化剤成分(B)は、少なくとも1つの無機充填剤をさらなる成分として含む、ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1つに記載の2成分モルタル化合物。
【請求項10】
前記化合物がケーシング、カートリッジ、又はフォイルバッグに存在し、前記樹脂成分(A)と前記硬化剤成分(B)は互いに分離された室に配置されている、ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1つに記載の2成分モルタル化合物。
【請求項11】
鉱物基板の掘削孔におけるねじ付きアンカーロッド、鉄筋、ねじ付きスリーブ、ねじ等の構造部品の化学的固定のための請求項1乃至10の何れか1つに記載の2成分モルタル化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加反応により重合可能な少なくとも1つのエポキシ系樹脂を硬化性成分として含む少なくとも1つの樹脂成分(A)と、硬化剤成分(B)と、を有する2成分モルタル化合物であって、硬化剤成分(B)は樹脂成分(A)の樹脂の硬化剤と、少なくとも1つの成分中に有機ケイ素化合物とを含む、2成分モルタル化合物に関する。本発明はさらに、鉱物基板に形成された掘削孔におけるねじ付きアンカーロッド、鉄筋、ねじ付きスリーブ、ねじ等の構造部品の化学的固定のための当該モルタル化合物の使用である。
【背景技術】
【0002】
コンクリート、自然岩、又は石膏等の鉱物基板(非留め付け材)におけるねじ付きアンカーロッド、鉄筋、ねじ付きスリーブ、ねじ等の構造部品のより安全な留め付けのため、最初に鉱物基板に留め付けする構造部品を受け入れるための掘削孔が適切な寸法で掘削される。そして、掘削屑が掘削孔から排除され、2成分モルタル化合物が、樹脂成分が硬化剤成分と混合された後に、掘削孔へと導入される。留め付けする構造部品は、モルタル化合物で充填された掘削孔に導入され、調整される。樹脂成分が硬化剤成分と反応してモルタル化合物が硬化した後、鉱物基板中で構造部品がしっかりと固まる。
【0003】
留め付けされる構造部品の耐荷重力はこのように複数の影響変数に依存し、この影響変数は内部変数及び外部変数として一般的に分類される。内部影響変数には、モルタル化合物の化学組成、それが製造されるプロセス、及びモルタル化合物の容器が含まれ、モルタル化合物は一般的に成分は2つの分離された容器に保管される。
【0004】
外部影響変数には、掘削孔の清掃方法、鉱物基板、例えば、コンクリートの品質、その湿り度及び温度、並びに掘削孔の形成方法等が含まれる。
【0005】
硬化モルタル化合物の機械的特性が、掘削孔の清掃の質及び鉱物基板の湿り度に大きく影響されることも知られている。湿潤状態にある掘削孔及び/又は掘削屑の除去が不十分な掘削孔は、硬化モルタル化合物の定格荷重の低下に見られる通り、性能が著しく低下する。
【0006】
特許文献1は、留め付け手段のモルタル止めに用いる、孔又は間隙における、1つ又はそれ以上のエポキシ系硬化性反応性樹脂をベースとするモルタル系留め付け材に関する。このモルタル系留め付け材は、エポキシ系反応性樹脂及び、如何なる状況下のシリコン結合加水分解性基の重合にも影響し得る反応基を必要により有する1つ又はそれ以上のシラン、を含む。ハロゲン、ケトキシメート、アミノ、アミノキシ、メルカプト、アシルオキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、及び特にアルキルオキシ基は、1つ又はそれ以上のシランにおいてシリコン結合加水分解性基として用いられる。
【0007】
これらの先行技術から既知のモルタル化合物により、湿潤状態の掘削孔の定格荷重の改善はすでに実現している。しかし、加水分解基、特にシリコン結合加水分解基を含む単量体シランは、使用中に加水分解により揮発性有機化合物(VOC)、例えば、アルコールを大量に放出するという欠点がある。
【0008】
硬化中に生成されるVOCの割合を減少させるため、特許文献2は、孔又は間隙における留め付け手段のモルタル止めのための、付加重合により硬化が可能な合成モルタル系留付け材の硬化剤組成物であって、分子毎に平均少なくとも1つの有機部を有するオリゴマーシロキサンを含む、硬化剤組成物を開示する。有機部は、付加反応中にイソシアネート又はエポキシ基と反応することができる1つ又はそれ以上の2級及び/又は1級アミノ及び/又はチオール基を含む。さらに、シロキサンは、シリコンに結合した1つ又はそれ以上の加水分解基を有する。これに加え、硬化剤組成物は、1つ又はそれ以上の一般的な添加剤を含んでよい。上述のシロキサンオリゴマーはアルコキシシランの構造要素から派生するため、VOC、特にアルコールの形態のものを加水分解中に放出する加水分解基を常に有する。特許文献2によると、VOCの割合は、オリゴマー化により最大50%削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2011/113533号
【特許文献2】独国特許出願公開第102015109125号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、既知の先行技術と比較して、乾燥及び湿潤状態の掘削孔で良好な接着性を有する2成分モルタル化合物であって、処理が容易であり、処理中のVOCの生成をさらに減少または完全に防ぐことができる、2成分モルタル化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、以下の請求項1の技術的特徴を有する2成分モルタル化合物により達成される。
【0012】
本発明に係るモルタル化合物の好ましい形態は従属項に記載されており、これらの形態は必要により組み合わせることが可能である。
【0013】
本発明はさらに、鉱物基板、好ましくはコンクリートの掘削孔におけるねじ付きアンカーロッド、鉄筋、ねじ付きスリーブ、ねじ等の構造部品の化学的固定のための当該化合物の使用である。
【0014】
本発明は、広義には、付加反応により重合可能な少なくとも1つのエポキシ系樹脂を硬化性成分として含む、少なくとも1つの樹脂成分(A)と、樹脂成分(A)の樹脂の硬化剤を含む硬化剤成分(B)とを有する2成分モルタル化合物からなる。このモルタル化合物は、少なくとも1つの成分が少なくとも1つのシロキサンを有し、この少なくとも1つのシロキサンはエポキシドとの付加反応が可能な少なくとも1つの官能部を有するが、シリコン原子に結合する加水分解基、特にアルコキシ部を有しない、ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る2成分モルタル化合物は、シリコン結合加水分解性基を有するシロキサンを含まないことが好ましい。ハロゲン原子、ケトキシメート、アミノ、アミノキシ、メルカプト、アシルオキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ(=アリールアルコキシ)又は特にアルキルオキシ(アルコキシ)部(構成成分)、例えば、ヘテロ原子を介してシリコン原子に結合された部(構成成分)は、シリコン結合加水分解性基と解される。
【0016】
本発明の理解、考え方においては、シロキサン単位から構成される化学化合物はシロキサンと解される。これらのシロキサン単位において、酸素結合の形成により満たされるオクテット(電子殻)を有さないシリコン原子は、有機部で飽和される。(ポリ)シランとは対照的に、シリコン原子はお互いに結合することはなく、以下の通り、隣接するシリコン原子との間に酸素原子が1つ介在する:Si−O−Si。
【0017】
シロキサン単位は、酸素上の自由原子価数によって、1つ乃至4つの置換基を有してよい。R
nSiO
(4−n)/2(n=0、1、2、3)、すなわち1つのシロキサン単位は、酸素上に残存する自由原子価数によって、1つ乃至4つの置換基を有してよい。よって、シロキサン単位は、1官能性、2官能性、3官能性、及び4官能性でよく、一般的に以下の通り表記される。[M]=R
3SiO
1/2、[D]=R
2SiO
2/2、[T]=RSiO
3/2、[Q]=SiO
4/2
【0018】
鎖状(ポリ)シロキサンは、一般式R
3Si−[O−SiR
2]
n−O−SiR
3に対応する[MD
nM]構造を有し、ここでRは水素原子又は有機基、例えば、アルキル基でよく、nは0又は自然数である。鎖状ポリシロキサンの1例は、ポリ(ジメチルシロキサン)である。
【0019】
分岐要素として3官能性又は4官能性シロキサン単位を有する分岐ポリシロキサンは[M
nD
mT
n]構造を有し、ここでn及びmは自然数である。これらの場合の分岐位置は、鎖又は環にある。環状ポリシロキサンは、2官能性シロキサン単位により形成される環で構成され、[D
n]構造を有する。ここで、nは3以上の自然数である。この基の架橋ポリシロキサンは分子鎖又は環を有し、分子鎖又は環は3官能性及び4官能性シロキサン単位により平面又は3次元網として連結される。
【0020】
シロキサン骨格は様々な炭化水素部を含んでよく、シリコンに結合した官能基及び有機官能基が存在してよい。しかし、本発明で用いられるシロキサンには、シリコンに結合した官能基は存在しない。そのため、本発明の理解、考え方による官能基又は官能部は常に、有機官能部、換言すると、炭素に結合した官能部である。
【0021】
本発明に係るシロキサンは余分なシリコン結合加水分解部を含むシラン又はシロキサンを使用又は既知の加水分解可能なシラン及びシロキサンと完全又は部分的に置換することできる。本発明に基づき使用されたシロキサンはモルタル表面を十分に疎水性とし、モルタルによる水揚げ又はモルタルと掘削孔の間の界面の水層へのアミン等の硬化剤の拡散を減少させることが予想される。これは、驚くべきことに、シリコン結合加水分解部がなくても、界面での化学モルタルの良好な硬化に繋がる。
【0022】
加水分解が可能なシリコン結合部がない本発明に係るシロキサンにより、掘削孔が劣悪な状態でのモルタル性能の改善が、ハンマ削孔とダイヤモンド削孔の両方により孔を掘削するための湿潤及び水飽和状態のコンクリートで、望ましくないVOCを形成することなく可能である。清掃された乾燥状態の掘削孔と部分的に清掃された状態及び/又は湿潤状態の掘削孔の両方で、本発明に係る2成分モルタル化合物を用いた構造部品の留め付けは高い定格荷重を実現する。この高い定格荷重は、シロキサンを含まない化合物又は時折シランを含む化合物と比較しても、VOCを形成することにより環境汚染を引き起こす先行技術のシラン又はシロキサンオリゴマーに依ることなく、その増加は大きい。
【0023】
好ましい形態において、この2成分モルタル化合物は、少なくとも1つのシロキサンを有し、少なくとも1つのシロキサンはエポキシ基との付加反応が可能な少なくとも1つの官能性末端部を有する。シロキサンは、2つ又はそれ以上の同一又は異なるエポキシ基と付加反応が可能な官能性末端部、特に好ましくは2つの同一のエポキシ基と付加反応が可能な官能性末端部を有することがさらに好ましい。本発明に係るシロキサンの官能化により、それらをポリマー構造に強力に取り込むことが可能になり、樹脂の硬化剤として必要により用いることができるようになるのは、官能部が、例えば、アミノ基の場合である。
【0024】
本発明の上述の形態の1つでエポキシ基と付加反応が可能な好ましい官能部は、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、第2級アミノ、メルカプト、イソシアナト、アルケニル、(メタ)アクリロイル、アンヒドリド、及びエポキシ部から成る群、好ましくはエポキシ及びアミノ部から成る群から選択される。
【0025】
本発明に係る2成分モルタル化合物のさらなる好ましい形態において、シロキサンはR
3Si−[O−Si(R
1)
2]
n−O−SiR
3構造を有する。
ここで、nは0又は1から1000までの自然数、好ましくは0又1から5までの自然数であり、
R及びR
1は互いに独立しており、ヘテロ原子を任意に含み、必要により置換され、及びエポキシ基との付加反応が可能な少なくとも1つの部分を必要により含むC
1−C
20アルキル部又はアラルキル部をそれぞれ意味する。R
1は、非置換型のC
1−C
4アルキル部、特にメチル部を意味することが好ましい。
【0026】
ヘテロ原子は、酸素原子であることが好ましい。R及びR
1部は、それぞれ炭素原子を介してシリコンに結合する。
【0027】
本発明のこの形態において、シロキサンは、好ましくは1つ、さらに好ましくは2つ又はそれ以上の置換型C
1−C
20アルキル又はアラルキル部を有し、置換基はトリアルキルシリル(例えば、トリメチルシリル)、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、第2級アミノ、メルカプト、イソシアナト、アルケニル、(メタ)アクリロイル、アンヒドリド、及びエポキシ部から成る群、好ましくはエポキシ、(メタ)アクリロイル、トリメチルシリル、及びアミノ部から成る群、特に好ましくは、エポキシ及びアミノ部から成る群から選択される。
【0028】
特に、シロキサンは、1,3−ビス(2−アミノエチルアミノエチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチル−ジシロキサン、トリス(グリシドキシプロピルジメチルシロキシ)フェニルシラン、3−メタクリロキシ−プロピルペンタメチルジシロキサン、ポリ(アクリロキシプロピルメチル)シロキサン、1,3−ビス(アクリロキシプロピルメチル)シロキサン、1,3−ビス(3−メタクリロキシプロピル)テトラキス−(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、1,3−ビス(3−メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、モノメタクリロキシプロピル−末端ポリジメチルシロキサン、ポリ[ジメチルシロキサン−共−(3−(モノメタクリルオキシ)プロピル)メチルシロキサン]、1,3,−ビス(4−メタクリロキシブチル)−テトラメチルジシロキサン、(メタクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコーポリマー、ドデカメチルペンタシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチル−3,5−ビス(トリメチルシラニルオキシ)テトラシロキサン、トリメチルシリル−末端ポリ(メチルヒドロシロキサン)、ビス(ヒドロキシアルキル)−末端ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ[ジ−メチルシロキサン−共−(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル)メチルシロキサン]、ジグリシジルエーテル−末端ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ[ジメチルシロキサン−共−[3−(2−(3−ヒドロキシ−エトキシ)エトキシ)プロピル]メチルシロキサン]、モノグリシジルエーテル−末端ポリ(ジメチルシロキサン)、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0029】
特に好ましい例は、1,3−ビス(2−アミノエチルアミノエチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチル−ジシロキサン、トリス(グリシドキシプロピルジメチルシロキシ)フェニルシラン、及びその混合物である。
【0030】
本発明の理解、考え方において、「2成分モルタル化合物」は硬化性樹脂成分と、樹脂成分の硬化剤成分から成るモルタル化合物と解され、これらの樹脂成分と硬化剤成分とは互いに分離されて保管され、保管中に硬化剤成分が樹脂成分と反応しないようにする。モルタル化合物の使用の直前に硬化剤成分を反応性樹脂と混合させて反応性樹脂の硬化を開始する。
【0031】
以下で用いる重量値は、別途の記載がない限り、個別要素の合計の重量(モルタル化合物の総重量)を100パーセントとして、それに対する重量パーセントと解される。
【0032】
本発明で用いられるシロキサンは、2成分モルタル系留め付け材の総重量に対し、0.5から10wt%、好ましくは0.5から8wt%、さらに好ましくは1.5から5wt%の重量比で、単体又は混合物として存在してよい。
【0033】
驚くべきことに、硬化モルタルのコンクリート表面への接着の改善及び建設分野で一般的に用いられる、例えば、ダボ、アンカー、ねじ、ボルト等の現場打ち留め付け手段の定格荷重の改善が、湿潤及び乾燥コンクリートでも、モルタル化合物におけるシロキサンの割合が低い状態ではすでに可能であることが判明した。
【0034】
本発明に係る2成分モルタル系留め付け材に含まれるエポキシ系樹脂成分は、好ましくはグリシジル化合物を基準に、1.5以上、特に2以上、例えば、2から10の平均グリシジル基官能性を有する少なくとも1つのエポキシ成分を含む。エポキシ成分は、必要によりさらなるグリシジルエーテルを反応性希釈剤として含んでよい。エポキシ成分のエポキシ樹脂は、好ましくは少なくとも2価アルコール若しくはノボラック、ビスフェノールF、若しくはビスフェノールA等の2価フェノールのポリグリシジルエーテル又はかかるエポキシドの混合物であり、かかるエーテル又は混合物は、例えば、対応する多価アルコールとエピクロルヒドリンの反応によって得られる。適切な例としては、例えば、平均モル質量がM
n≦2000g/molであるヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノール−A−エピクロルヒドリン樹脂及び/又はビスフェノール−F−エピクロルヒドリン樹脂がある。例えば、エポキシ樹脂のエポキシ当量は120から2000、好ましくは150から400、特に155から195、例えば、165から185でよい。
【0035】
芳香族基を含むエポキシドよりも粘度が低いトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル又はヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の上述のエポキシ化合物は、反応性希釈剤としても用いてよい。
【0036】
2成分系留め付け材の総質量に対し、エポキシ成分の比率は、好ましくは5から90wt%、特に好ましくは20から80wt%、30から70wt%、又は40から60wt%である。2つ又はそれ以上のエポキシ成分の混合物が可能である。適したエポキシ樹脂、反応性希釈剤、及び硬化剤は、マイケル・ドーンブッシュ、ウルリッチ・クライスト、及びロブ・レイジング著、「エポキシ樹脂」(ヴィンセンツ・ネットワークGmbH&Co KG(2015)、ISBN 13:9783866308770)の標準品の中にも見出せる。これらの化合物は、本明細書の一部とする。
【0037】
樹脂成分(A)のさらなる要素の例としては、急結剤(Beschleuniger)、揺変剤(Thixotropiermittel)、充填材、さらなる添加剤、及びこれらの混合物がある。
【0038】
急結剤の例として、第3級アミン、イミダゾール、若しくはトリス−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノール等の第3級アミノフェノール、有機ホスフィン、リン酸エステル等のルイス塩基若しくはルイス酸、又はこれらの2つ又はそれ以上の混合物を使用してよい。急結剤は、1つ又は両方の成分に、好ましくは硬化剤成分(B)に含まれてよい。急結剤は、0.001から15wt%の重量比で硬化剤成分に含まれることが好ましい。
【0039】
本発明の好ましい形態において、2成分モルタル化合物は少なくとも1つの揺変剤を樹脂成分(A)及び/又は硬化剤成分(B)に含んでよい。沈降シリカ又はフュームシリカ、ベントナイト、セルロース及び/又はカオリン等の一般的なレオロジー添加剤は、揺変剤として用いてよい。揺変剤は、モルタル化合物の総重量に対し、例えば、重量比0.5から30wt%、好ましくは2から20wt%加えてよい。
【0040】
最後に、本発明に係る2成分モルタル化合物は、少なくとも1つの無機充填剤を樹脂成分(A)及び/又は硬化剤成分(B)に含んでよい。特に、ポルトランドセメント又はアルミナセメント等のセメント並びにその他の水圧結合無機物質、石英、ガラス、鋼玉石、陶材、石器、重晶石、軽晶石、石膏、タルク及び/又は白墨及びこれらの混合物は充填材として使用される。無機充填剤は、砂、粉末、又は有形体、好ましくは繊維又はビーズの形態で加えてよい。充填材は、2成分系留め付け材の1つ又は両方の成分に存在してよい。充填材の比率は、モルタル化合物の総重量に対し、好ましくは0から90wt%、例えば、10から90wt%、好ましくは15から75wt%、さらに好ましくは20から50wt%である。
【0041】
さらに、可塑剤、非反応性希釈剤、柔軟剤、安定剤、レオロジー添加剤、湿潤剤、例えば、相互混合のためにより効率的な制御を行うために成分に異なる着色をするための染料又は顔料等の着色添加剤、及び前述の添加剤の混合物等、さらなる添加物を加えてよい。かかるさらなる添加剤は、モルタル化合物の総重量に対し、好ましくは合計で重量比0から40wt%加えてよい。
【0042】
硬化剤成分(B)の硬化剤は、エポキシドの硬化に一般的に用いられる少なくとも1つの化合物を含む。エポキシドの硬化及び重付加の反応相手として一般的に用いられる化合物は、特に2つ又はそれ以上の官能基を有し、アミノ、イミノ、メルカプト及びそれらの組み合わせから成る群から選択される化合物である。適切な例としては、アミン、チオール、アミノチオール、及びこれらの混合物であって、例えば、マイケル・ドーンブッシュ、ウルリッチ・クライスト、及びロブ・レイジング著、「エポキシ樹脂」(ヴィンセンツ・ネットワークGmbH&Co KG(2015)、ISBN 13:9783866308770)に記載されており、これらは本明細書の一部とする。特に好ましい硬化剤は、前述の著書に記載されているジアミン又はポリアミン及び/又はジチオール又はポリチオールである。
【0043】
エポキシドを硬化するために一般的に用いられる2つ又はそれ以上の上述の化合物の混合物を使用又は含めてもよい。
【0044】
エポキシドを硬化するために一般的に用いられる化合物は、2成分モルタル系留め付け材の総質量に対し、最大50wt%、好ましくは5から30wt%、特に好ましくは10から20wt%の比率で存在することが好ましい。
【0045】
硬化剤成分(B)の重量に対し、硬化剤の比率は1から100wt%、例えば、3から95wt%、好ましくは4から95wt%、さらに好ましくは5から90wt%、特に好ましくは10から80wt%でよい。
【0046】
本発明に係る2成分系留付け材の硬化剤成分(B)のさらなる成分は、ベンジルアルコール等の有機溶剤、樹脂成分(A)用の充填材等の充填材、さらに上述の添加剤以外の添加剤を含んでよい。
【0047】
本発明に係る2成分モルタル化合物は、互いに離れた2つ又はそれ以上の室を備えることを示すラベルが付いたケーシング、カートリッジ、又はフォイルバッグに保管することが好ましく、反応を抑制するためにモルタル化合物の樹脂成分(A)と硬化剤成分(B)は互いに分離されて保管されている。
【0048】
本発明に係る2成分モルタル化合物は、優位に樹脂成分(A)と硬化剤成分(B)の全組成を以下の通り有してよい:
30から60wt%の硬化性エポキシ樹脂と、
0.5から10wt%の少なくとも1つのシロキサンと、
0から5.0wt%の揺変剤と、
20から80wt%の無機充填剤と、
10から20wt%のエポキシドの硬化剤と、
0から40wt%のさらなる添加剤と
を含み、
総重量パーセントが100である。
【0049】
本発明によると、少なくとも1つのシロキサンはエポキシドとの付加反応が可能な少なくとも1つの官能部を有するが、シリコン原子に結合する加水分解基、特にアルコキシ部を有しない。
【0050】
実施に当たっては、分離された室から樹脂成分(A)と硬化剤成分(B)を完全に取り出し、適切な装置、例えば、静的混合器又は溶解機で混合する。次に樹脂成分(A)と硬化剤成分(B)の混合物を、既知の注入装置を用いてすでに清掃済みの掘削孔に導入する。次に留め付ける構造部品をモルタル化合物に挿入し、調整する。硬化剤成分(B)の硬化剤は重付加により樹脂成分(A)のエポキシドと反応し、モルタル化合物は状況に応じて2時間以内に硬化する。
【0051】
本発明に係る2成分モルタル化合物は、特に湿潤コンクリートに対して接着度が改善されている。さらに、湿潤状態及び/又は鉱物基板に形成された掘削孔の清掃が不十分な掘削孔の状態でも高い定格荷重が達成される。驚くべきことに、接着度の改善及び定格荷重の増加を、加水分解シラン又はシロキサンオリゴマーを使用せずに達成することができることが示された。加水分解シリコン結合基を有する従来のシランを有機官能部のみを有するシロキサンで置換する、本発明に係る手法は、モルタル表面を十分に疎水化し、モルタルによる水揚げ又はモルタルと掘削孔の間の界面の水層へのアミン等の硬化剤の拡散を、化学モルタルが界面でも良好に硬化される程度に減少させる、と推定する以外にない。同時にモルタル化合物の硬化中の揮発性有機化合物の生成に加え、環境汚染も大幅に減少する。
【0052】
そのため、本発明の技術的特徴の一つはまた、鉱物基板、好ましくはコンクリートの掘削孔における構造部品、特にねじ付きアンカーロッド、鉄筋、ねじ付きスリーブ、ねじの化学的固定のための本発明に係る2成分モルタル化合物の使用にある。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明のさらなる優位性は下記の実施例から明らかになるが、実施例は発明を限定するものと何ら解釈されるものではない。
【実施例】
【0054】
[実施例1乃至5]
最初に樹脂成分(A)を、表1に示す成分を混合して生成した。その際、成分は最初に手作業で予め撹拌し、次に高速混合機で10秒間1000rpm、続いて20秒間2500rpm、続いて15秒間1500rpmで混合した。
【0055】
硬化剤成分(B)を生成するため、表2に示す成分を混合した。その際、成分は手作業で予め撹拌し、次に高速混合機で10秒間1000rpm、続いて20秒間2500rpm、続いて15秒間1500rpmで混合した。
【0056】
そして樹脂成分(A)と硬化剤成分(B)を計算された比率で混合し、手作業で予め撹拌し、次に高速混合機で10秒間1500rpmで混合した。実施例1乃至5での成分(A)と(B)の混合比は、約3:1(w/w)であった。
【0057】
エピロックスM884(LEUNA−Harze GmbH)として市販される組成物が、実施例1乃至5でエポキシ樹脂として用いられた。アミン硬化剤は、ベルギーのオルネクス社のベッコポックスSEH2627として市販されている。
【0058】
表1及び表2で用いられるシロキサンの表記は、以下の意味を有する。
【0059】
エプシロックス1:1、3−ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン
エプシロックス2:トリス(グリシドキシプロピルジメチルシロキシ)フェニルシラン
アムシロックス:1、3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
[実施例6乃至10]
最初に樹脂成分(A)を表3に示す成分を混合して生成した。その際、成分は最初に手作業で予め撹拌し、次に高速混合機で10秒間1000rpm、続いて20秒間2500rpm、続いて15秒間1500rpmで混合した。
【0063】
硬化剤成分(B)を生成するため、表4に示す成分を混合した。その際、成分は手作業で予め撹拌し、次に高速混合機で10秒間1000rpm、続いて20秒間2500rpm、続いて15秒間1500rpmで混合する。
【0064】
そして樹脂成分(A)と硬化剤成分(B)を計算された比率で混合し、手作業で予め撹拌し、次に高速混合機で10秒間1500rpm混合した。実施例6乃至10での成分(A)と(B)の混合比は、約3:1(w/w)であった。
【0065】
アラルダイトBY20157(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社)として市販される組成物が、実施例6乃至10でエポキシ樹脂として用いられた。アミン硬化剤は、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社のアラデュール30446として市販されている。
【0066】
表3及び表4で用いられるシリコン化合物の表記は、以下の意味を有する。
【0067】
ダイナシラン:(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン
エプシロックス1:1、3−ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン
エプシロックス2:トリス(グリシドキシプロピルジメチルシロキシ)フェニルシラン
アムシロックス:1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
[実施例11]
引張試験による内部強度の検証
【0071】
ダイヤモンド切削コンクリートC20/25を、それぞれ湿潤及び乾燥状態で基板として用いた。両面粘着テープの環をスペーサとして有する金属板を、結合する基板に留め付けし、モルタル化合物で充填した。室温(20°C、1日)で硬化後、接着強度を付着試験機(プロセク社製造のDYNA Z)で測定した。
【0072】
結果を以下の表5に示す:
【0073】
【表5】
【0074】
試験結果から明らかな通り、本発明に係るモルタル化合物の接着強度は乾燥コンクリート、特に水飽和コンクリートで改善されている。同時に、シリコン結合加水分解基を有さないエポキシ官能性又はアミノ官能性シロキサンを使用した方が、エポキシ官能性又はアミノ官能性シロキサンを有さない比較例の化合物よりも望ましくないVOCの生成は阻害される(実施例1及び6)。
【0075】
[実施例12]
湿潤コンクリートの動定格荷重の判定
【0076】
実施例6乃至10の2成分モルタル化合物で達成される動定格荷重の判定のため、高強度M12ねじ付きアンカーバーを、直径14mm、掘削孔深72mmの掘削孔における本発明に係る2成分モルタル化合物により保持されるダボの形態で用いた。予め指定された室温での硬化時間後に、平均破壊荷重はねじ付きアンカーバーを近隣に位置する押さえ手段に対してその中心から引き抜いて測定し、5つのアンカーの平均破壊荷重を判定した。
【0077】
試験対象の掘削孔はダイヤモンドドリルで形成し、掘削孔は圧縮空気(6bar)で2度清掃し、ブラシがけして圧縮空気で2度吹き出しを行った。
【0078】
湿潤コンクリートの動定格荷重を測定するため、掘削孔を水で充填し、その後1日水を放置した。そして水を排除し、モルタル化合物を用いてアンカーバーを設置した。モルタル化合物を室温で(21±2°C)24時間硬化した。
【0079】
実施例6乃至10の動定格荷重は、以下の表6に示す。
【0080】
【表6】
【0081】
試験結果は、掘削孔が劣悪な状況で本発明に係るモルタル化合物のモルタル性能が顕著に改善することを示す。さらなる試験は、上述の状況での動定格荷重の改善が、1.5パーセントから4パーセントのシロキサンを含み、シリコン結合加水分解性基を含まないモルタル化合物でも達成されることを示している。
【国際調査報告】