特表2019-532960(P2019-532960A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2019-532960エソメプラゾール含有複合カプセル剤及びその製造方法
<>
  • 特表2019532960-エソメプラゾール含有複合カプセル剤及びその製造方法 図000014
  • 特表2019532960-エソメプラゾール含有複合カプセル剤及びその製造方法 図000015
  • 特表2019532960-エソメプラゾール含有複合カプセル剤及びその製造方法 図000016
  • 特表2019532960-エソメプラゾール含有複合カプセル剤及びその製造方法 図000017
  • 特表2019532960-エソメプラゾール含有複合カプセル剤及びその製造方法 図000018
  • 特表2019532960-エソメプラゾール含有複合カプセル剤及びその製造方法 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-532960(P2019-532960A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】エソメプラゾール含有複合カプセル剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20191018BHJP
   A61K 9/64 20060101ALI20191018BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20191018BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20191018BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20191018BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20191018BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20191018BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20191018BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20191018BHJP
   A61K 9/58 20060101ALI20191018BHJP
   A61K 9/62 20060101ALI20191018BHJP
【FI】
   A61K31/4439
   A61K9/64
   A61K47/32
   A61K47/38
   A61K47/42
   A61K47/36
   A61K9/20
   A61P1/04
   A61P1/00
   A61K9/58
   A61K9/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-519729(P2019-519729)
(86)(22)【出願日】2017年10月19日
(85)【翻訳文提出日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】KR2017011571
(87)【国際公開番号】WO2018080104
(87)【国際公開日】20180503
(31)【優先権主張番号】10-2016-0142156
(32)【優先日】2016年10月28日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】クォン、 テク クワン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、 スン フン
(72)【発明者】
【氏名】イム、 ホ テク
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ヨン イル
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ジェ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ウ、 ジョン ス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA45
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC16
4C076EE11H
4C076EE16H
4C076EE32H
4C076EE38H
4C076EE42H
4C076FF25
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA36
4C086MA37
4C086NA05
4C086NA12
4C086ZA66
4C086ZA68
(57)【要約】
活性成分として、エソメプラゾール、または薬学的に許容可能なその塩を含むコア、コア上に形成された内皮コーティング層、及び内皮コーティング層上に形成された第1腸溶性コーティング層を含む第1溶出部と、活性成分として、エソメプラゾール、または薬学的に許容可能なその塩を含むコア、コア上に形成された内皮コーティング層、及び内皮コーティング層上に形成された第2腸溶性コーティング層を含む第2溶出部と、を含む複合カプセル剤であり、第1腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーLDを、内皮コーティング層が形成されたコアの5〜50%(w/w)で含み、第2腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーS及びメタクリル酸コポリマーLの1.5:1〜3.5:1(w/w)混合物を、内皮コーティング層が形成されたコアの15〜40%(w/w)で含む複合カプセル剤、及びその製造方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として、エソメプラゾール、または薬学的に許容可能なその塩を含むコア、前記コア上に形成された内皮コーティング層、及び前記内皮コーティング層上に形成された第1腸溶性コーティング層を含む第1溶出部と、
活性成分として、エソメプラゾール、または薬学的に許容可能なその塩を含むコア、前記コア上に形成された内皮コーティング層、及び前記内皮コーティング層上に形成された第2腸溶性コーティング層を含む第2溶出部と、を含む複合カプセル剤であり、
前記第1腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーLDを、内皮コーティング層が形成されたコアの約5〜50%(w/w)で含み、
前記第2腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーS及びメタクリル酸コポリマーLの約1.5:1〜3.5:1(w/w)混合物を、内皮コーティング層が形成されたコアの約15〜40%(w/w)で含むものである複合カプセル剤。
【請求項2】
前記第2腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーS及びメタクリル酸コポリマーLの約2:1〜3:1(w/w)混合物を、内皮コーティング層が形成されたコアの約20〜35%(w/w)で含むものであることを特徴とする請求項1に記載の複合カプセル剤。
【請求項3】
前記内皮コーティング層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、低置換のヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)、澱粉、ゼラチン、エチルセルロース(EC)、及びそれらの任意の組み合わせによって構成された群のうちから選択された1以上のコーティング基剤を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の複合カプセル剤。
【請求項4】
前記内皮コーティング層は、内皮コーティング層が形成されたコア中に、約3〜5%(w/w)で含有されるものであることを特徴とする請求項1に記載の複合カプセル剤。
【請求項5】
前記第1溶出部及び第2溶出部は、エソメプラゾール、または薬学的に許容可能なその塩を、遊離塩基として、それぞれ約2:1〜1:2の重量比で含むものであることを特徴とする請求項1に記載の複合カプセル剤。
【請求項6】
前記第1溶出部及び第2溶出部のコアは、それぞれ独立して、ペレット、ミニ錠剤または錠剤を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の複合カプセル剤。
【請求項7】
前記第1溶出部及び第2溶出部のコアは、いずれもミニ錠剤であることを特徴とする請求項1に記載の複合カプセル剤。
【請求項8】
前記コアは、希釈剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤、安定化剤、及びそれらの任意の組み合わせのうちから選択された1種以上の薬剤学的添加剤を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の複合カプセル剤。
【請求項9】
米国薬典(USP)第2法パドル法により、回転数100rpm、37±0.5℃で、0.1N HCl水溶液中での120分間溶出試験後、連続して、pH6.7〜6.9である人工腸液での240分間溶出試験時、
0.1N HClにおいて、120分間耐酸性を有しながら、
人工腸液において、60分間約55%以下の活性成分が溶出され、240分間約95%以上の活性成分が溶出されるものであることを特徴とする請求項1に記載の複合カプセル剤。
【請求項10】
前記エソメプラゾールの薬学的に許容可能な塩は、エソメプラゾールマグネシウム塩またはエソメプラゾールストロンチウム塩であるあることを特徴とする請求項1に記載の複合カプセル剤。
【請求項11】
前記複合カプセル剤のカプセル基剤は、ゼラチン、ヒプロメロース、プルラン、ポリビニルアルコール、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載の複合カプセル剤。
【請求項12】
前記複合カプセル剤は、胃食道逆流性疾患、胃炎、十二指腸炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍及び消化性潰瘍によって構成された群のうちから選択された胃酸過多分泌関連疾患の予防または治療用であることを特徴とする請求項1に記載の複合カプセル剤。
【請求項13】
前記複合カプセル剤は、1日1回1個の単位剤形を投与することを特徴とする請求項1に記載の複合カプセル剤。
【請求項14】
エソメプラゾール、または薬学的に許容されるその塩、及び薬剤学的添加剤含むコアを製造する段階と、
前記コアに内皮コーティング層をコーティングする段階と、
前記内皮コーティング層上に、第1腸溶性コーティング層をコーティングし、第1溶出部を得る段階と、
別途に、前記内皮コーティング層上に、第2腸溶性コーティング層をコーティングし、第2溶出部を得る段階と、
前記得られた第1溶出部及び第2溶出部を共にカプセル剤に充填し、複合カプセル剤を製造する段階と、を含む、請求項1〜13のうちいずれか1項に記載の複合カプセル剤の製造方法であり、
前記第1腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーLDを、内皮コーティング層が形成されたコアの約5〜50%(w/w)で含み、
前記第2腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーS及びメタクリル酸コポリマーLの約1.5:1〜3.5:1(w/w)混合物を、内皮コーティング層が形成されたコアの約15〜40%(w/w)で含むものである複合カプセル剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エソメプラゾール含有複合カプセル剤及びその製造方法に係り、さらに具体的には、腸溶性を示し、胃で活性成分が溶出されず、腸において二重放出特性を示し、延長された時間の間、活性成分の放出がなされ、薬効が持続するエソメプラゾール含有複合カプセル剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エソメプラゾール(esomeprazole;(S)−5−メトキシ−2−[(4−メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル)メチルスルフィニル]−3H−ベンゾイミダゾール)は、オメプラゾール(omeprazole)の2個の光学異性体のうち、安全性及び有効性にすぐれるとされている(S)−光学異性体であり、プロトンポンプ抑制剤(PPI:proton pump inhibitor)の一種である。
【0003】
エソメプラゾールは、プロトンポンプ抑制剤として、酸分泌経路の最後の段階において、胃酸分泌を調節することにより、ヒトを含む哺乳動物において、胃酸分泌を抑制する効果があり、それにより、逆流性食道炎などの胃食道逆流性疾患、胃炎、十二指腸炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍及び消化性潰瘍のような、胃酸過多分泌と係わる疾患の予防及び治療のためにも使用されると広く知られている。
【0004】
エソメプラゾールを含むプロトンポンプ抑制剤は、酸性条件で分解されたり変形されたりしやすい。従って、腸溶性コーティング層の導入により、胃において、胃酸に対する露出を防止し、薬物分解を防止し、腸で溶出されて吸収されるための腸溶性剤形の開発がなされてきた。
【0005】
また、従来、エソメプラゾール製剤は、服用後、長続き時間が短く、12時間以上経過すれば、胃酸が分泌され、胃腸内pHが落ち、胸焼けのような症状が観察されるというような問題が見い出されもした。そのような現象を防ぐために、医薬の投与頻度を増やすことができるが、医薬の投与頻度を増やす場合、患者の服薬順応性が低くなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、耐酸性を有しながら、さらに持続的に薬効を示すことができるエソメプラゾール含有経口剤形の開発が必要である。
【0007】
本発明の一様相は、耐酸性を有し、胃腸内で分解されず、腸において二重放出特性を示し、持続的な薬効を示すことができるエソメプラゾール含有複合カプセル剤を提供することである。
【0008】
本発明の他の一様相は、前記エソメプラゾール含有複合カプセル剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一様相は、
活性成分として、エソメプラゾール(esomeprazole)、または薬学的に許容可能なその塩を含むコア、前記コア上に形成された内皮コーティング層、及び前記内皮コーティング層上に形成された第1腸溶性コーティング層を含む第1溶出部;及び
活性成分として、エソメプラゾール、または薬学的に許容可能なその塩を含むコア、前記コア上に形成された内皮コーティング層、及び前記内皮コーティング層上に形成された第2腸溶性コーティング層を含む第2溶出部を含む複合カプセル剤であり、
前記第1腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーLDを、内皮コーティング層が形成されたコアの5〜50%(w/w)で含み、
前記第2腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーS及びメタクリル酸コポリマーLの1.5:1〜3.5:1(w/w)混合物を、内皮コーティング層が形成されたコアの15〜40%(w/w)で含むものである複合カプセル剤を提供する。
【0010】
本発明の他の様相は、
エソメプラゾール、または薬学的に許容されるその塩、及び薬剤学的添加剤含むコアを製造する段階と、
前記コアに内皮コーティング層をコーティングする段階と、
前記内皮コーティング層上に、第1腸溶性コーティング層をコーティングし、第1溶出部を得る段階と、
別途に、前記内皮コーティング層上に、第2腸溶性コーティング層をコーティングし、第2溶出部を得る段階と、
前記得られた第1溶出部及び第2溶出部を共にカプセル剤に充填し、複合カプセル剤を形成する段階と、を含む、請求項1〜13のうちいずれか一項に記載の複合カプセル剤の製造方法であり、
前記第1腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーLDを、内皮コーティング層が形成されたコアの5〜50%(w/w)で含み、
前記第2腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーS及びメタクリル酸コポリマーLの1.5:1〜3.5:1(w/w)混合物を、内皮コーティング層が形成されたコアの15〜40%(w/w)で含むものである複合カプセル剤の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一様相によるエソメプラゾール含有複合カプセル剤は、耐酸性を有し、胃液に露出されて分解される心配がないだけではなく、腸内に達したとき、速放出が可能な第1溶出部、及び遅延放出が可能な第2溶出部をいずれも含むことにより、長期間持続的な薬効発現が可能である。従って、前記エソメプラゾール含有複合カプセル剤は、1日1回の投与時にも、投薬12時間後に胸焼けが表れる副作用なしに、持続的な薬効発現がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一具体例による、第1溶出部のコア(赤色)及び第2溶出部のコア(青色)は、いずれもミニ錠剤である複合カプセル剤の模式図である。
図2】実施例1〜3の第1腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤の溶出試験結果を示したグラフである。
図3】比較例1,2の第1腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤の溶出試験結果を示したグラフである。
図4】実施例4〜7の第2腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤の溶出試験測定結果を示したグラフである。
図5】比較例3〜8の第2腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤の溶出試験測定結果を示したグラフである。
図6】実施例8,9及び比較例9の複合カプセル剤の溶出試験測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明で使用される全ての技術用語は、取り立てて定義されない以上、本発明の関連分野において、当業者が一般的に理解するような意味で使用される。また、本明細書には、望ましい方法や試料が記載されるが、それと類似していたり、同等であったりするものなども、本発明の範疇に含まれる。また、本明細書に記載された数値は、明示せずとも、「およぼ」の意味を含むものであると見なす。本明細書に参考文献として記載される全ての刊行物の内容は、全体が本明細書に参照として統合される。
【0015】
本発明は一様相において、
活性成分として、エソメプラゾール(esomeprazole)、または薬学的に許容可能なその塩を含むコア、前記コア上に形成された内皮コーティング層、及び前記内皮コーティング層上に形成された第1腸溶性コーティング層を含む第1溶出部と、
活性成分として、エソメプラゾール、または薬学的に許容可能なその塩を含むコア、前記コア上に形成された内皮コーティング層、及び前記内皮コーティング層上に形成された第2腸溶性コーティング層を含む第2溶出部と、を含む複合カプセル剤であり、
前記第1腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーLDを、内皮コーティング層が形成されたコアの5〜50%(w/w)で含み、
前記第2腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーS及びメタクリル酸コポリマーLの1.5:1〜3.5:1(w/w)混合物を、内皮コーティング層が形成されたコアの15〜40%(w/w)で含むものである複合カプセル剤を提供する。
【0016】
前記エソメプラゾールの薬学的に許容されるその塩は、当該技術分野で一般的に使用される任意の薬学的に許容される塩であり、例えば、マグネシウム(Mg)塩、ストロンチウム(Sr)塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などの金属塩、またはアムモニウム塩が使用されもするが、それらに限定されるものではない。一具体例において、前記薬学的に許容されるその塩は、エソメプラゾールのマグネシウム塩またはストロンチウム塩が使用されてもよい。
【0017】
また、前記エソメプラゾール、または薬学的に許容されるその塩は、無水物または水和物の形態でも利用される。
【0018】
前記エソメプラゾール、またはその薬学的に許容されるその塩を含むコアは、カプセルに含まれる任意の固形製剤でもあり、例えば、ペレット、ミニ錠剤、錠剤、及びそれらの任意の組み合わせによって構成された群のうちからも選択される。一具体例において、前記コアは、ミニ錠剤、さらに具体的には、球形に近いミニ錠剤の形態を有することができ、従って、前記第1溶出部及び/または第2溶出部は、多重投与単位錠剤(MUST:multi-unit spheroidal tablets)として、前記複合カプセル剤内にも充填される。一具体例において、前記第1溶出部のコア、及び第2溶出部のコアは、いずれもミニ錠剤の形態を有し、いずれもMUSTとして、前記複合カプセル内に充填された形態でもある(図1)。
【0019】
前記ミニ錠剤は、直径が1mm〜4mmでもあり、さらに具体的には、1.5mm〜3mmでもある。前記ミニ錠剤は、カプセル内部空間に、第1溶出部及び第2溶出部として、それぞれ最小4個以上、さらに具体的には、4個〜40個の独立層に区分されるミニ錠剤が充填される。前記ミニ錠剤は、当該技術分野に公知された通常の方法によっても製造される。
【0020】
前記コアは、活性成分であるエソメプラゾール、またはその薬学的に許容されるその塩と共に、当該技術分野において、コアの製造に一般的に使用される任意の薬剤学的添加剤が適切な含量で含まれてもよい。例えば、前記コアは、希釈剤(diluents)、結合剤(binder)、崩壊剤(disintegrant)、潤滑剤(lubricants)、界面活性剤、抗酸化剤(anti-oxidants)、防腐剤、安定化剤、及びそれらの任意の組み合わせによって構成された群のうちから選択された1種以上の添加剤が追加して含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0021】
前記希釈剤としては、マンニトール、微結晶セルロース、ラクトース、セルロース及びその誘導体、2塩基性リン酸カルシウムまたは3塩基性リン酸カルシウム、エリトリトール、低置換のヒドロキシプロピルセルロース、プレゼラチン化(pregelatinized)澱粉、ソルビトール、キシリトール、及びそれらの任意の組み合わせによって構成された群のうちから選択された1種以上が使用されもするが、それらに限定されるのではなく、一具体例において、マンニトール及び/または微結晶セルロースが使用されてもよい。
【0022】
前記結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、コポビドン(ビニルピロリドンのその他ビニル誘導体との共重合物)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、プレゼラチン化澱粉、低置換のヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)、及びそれらの任意の組み合わせによって構成された群のうちから選択された1種以上が使用されもするが、それらに限定されるのではなく、一具体例において、ヒドロキシプロピルセルロースが使用されてもよい。
【0023】
前記崩壊剤としては、クロスカメロースナトリウム、とうもろこし澱粉、クロスポビドン、低置換のヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)、プレゼラチン化澱粉、及びそれらの任意の組み合わせによって構成された群のうちから選択された1種以上が使用されもするが、それらに限定されるのではなく、一具体例において、クロスカメロースナトリウムが使用されてもよい。
【0024】
前記潤滑剤としては、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ポリエチレングリコール、ベヘン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水素化ヒマシ油、及びそれらの任意の組み合わせによって構成された群のうちから選択された1紙上が使用されもするが、それらに限定されるのではなく、一具体例において、フマル酸ステアリルナトリウムが使用されてもよい。
【0025】
前記コア上に形成された内皮コーティング層は、前記コアと腸溶性コーティング層との相互作用を遮断することができるが、前記複合カプセル剤の投与後、腸溶性コーティング層の崩壊時、コア内の活性成分放出を阻害しない任意の親水性高分子をコーティング基剤として含んでもよい。前記内皮コーティング層のコーティング基剤は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、低置換のヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)、澱粉、ゼラチン、エチルセルロース(EC)、及びそれらの任意の組み合わせによって構成された群のうちから選択された1以上のコーティング基剤でもある。一具体例において、前記内皮コーティング層は、コーティング基剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んでもよい。
【0026】
本明細書において、前記内皮コーティング層が形成されたコアを、内皮コーティングコアと称したりもする。前記内皮コーティング層の含量は、当業者が適切に選択することができるが、一具体例において、内皮コーティングコアに対して、約3〜5重量%にも含有される。
【0027】
前記複合カプセル剤は、第1溶出部及び第2溶出部がいずれも腸溶性コーティング層を含むので、強酸性の胃内で耐酸性を確保することができ、胃を経て腸に達するときには、活性成分が、第1溶出部から一次放出が迅速になされ、遅延された時間後、順次に第2溶出部から二次放出がなされる。従って、前記複合カプセル剤は、胃において、薬物分解を回避し、腸に達するとき、迅速な薬物の溶出がなされ、迅速な薬効を示すことができ、薬物の二重放出により、長期間薬効が持続される。
【0028】
前記第1溶出部に含まれる腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーLDを含んでもよい。メタクリル酸コポリマーLDは、メタクリル酸とエチルアクリレートとが、約1:1の比率で含まれた陰イオン共重合体(anionic copolymer)であり、溶液状態で存在し、商品名オイドラギットL30 D−55(Eudragit L30 D−55)で市販中の物質である。IUPAC名称は、poly(methacylic acid−co−ethyl acrylate)1:1である。
【0029】
前記第2溶出部に含まれる腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーSとメタクリル酸コポリマーLとの1.5:1〜3.5:1(w/w)、さらに具体的には、2:1〜3:1(w/w)の比率の混合物を含んでもよい。
【0030】
該メタクリル酸コポリマーSは、メタクリル酸とメチルメタアクリレートとが約1:2の比率で含まれた陰イオン性共重合体であり、商品名オイドラギットS−100(Eudragit S−100)で市販中の物質であり、IUPAC名称は、poly(methacylic acid−co−methyl methacrylate)1:2である。
【0031】
該メタクリル酸コポリマーLは、メタクリル酸とメチルメタアクリレートとが、約1:1の比率で含まれた陰イオン性共重合体であり、商品名オイドラギットL−100(Eudragit L−100)で市販中の物質である。IUPAC名称は、poly(methacylic acid−co−methyl methacrylate)1:1である。
【0032】
前記第1腸溶性コーティング層のコーティング基剤であるメタクリル酸コポリマーLDは、内皮コーティングコアに対して、固形分として5〜50%(w/w)、さらに具体的には、8〜30%(w/w)で含有されもする。内皮コーティングコアに対して、固形分として5%(w/w)未満である場合、迅速な溶出率を示すことができるが、0.1N HCl水溶液で耐酸性を確保し難く、経口投与時、胃腸内の酸性環境において、PPI系特性上、活性成分の分解がなされ、薬効を示し難くなってしまう。また、内皮コーティングコアに対して、固形分として50%(w/w)超過にコーティングされる場合、0.1N HCl水溶液において、十分な耐酸性を有することができるが、胃を通過した後、腸において活性成分の溶出が過度に遅くなり、生体内において、薬物吸収が遅延され、薬効が遅く示される恐れがある。
【0033】
前記第2腸溶性コーティング層のコーティング基剤であるメタクリル酸コポリマーSとメタクリル酸コポリマーLとの比は、1.5:1〜3.5:1(w/w)、さらに具体的には、2:1〜3:1(w/w)の比率でもある。前述の比率より低い場合、相対的に低いpHに溶解されるメタクリル酸コポリマーLの比率が相対的に高くなるために、胃を経て腸に達するときに迅速な放出がなされ、二重放出特性を示し難くもなる。また、前述の比率より高い場合、相対的に不溶性成分であるメタトリル酸コポリマーSの比率が上昇し、薬物放出が過度に遅延され、従って、薬物の完全な放出がなされないまま排泄され、生体利用率の低くなる恐れもある。
【0034】
前述のメタクリル酸コポリマーSとメタクリル酸コポリマーLとの混合物は、固形分として、内皮コーティングコアに対して、15〜40%(w/w)、さらに具体的には、20〜35%(w/w)の含量で含まれてもよい。前記含量に達していない場合、第2溶出部が目的とする溶出遅延が確保されずに腸に達するとき、迅速な溶出がなされ、二重放出特性を確保し難くなる。また、前記含量を超える場合、腸溶性コーティング層が厚くなり、二次溶出部の薬物放出が過度に遅延され、従って、薬物の完全放出がなされないまま排泄され、生体利用率が低くなる恐れがある。
【0035】
前記複合カプセル剤は、活性成分を、第1溶出部内及び第2溶出部内に適切な比率範囲で分離して含み、所望溶出特性により、当業者が、適切な比率を選択することができる。一具体例において、前記複合カプセル剤は、前記第1溶出部及び第2溶出部が、エソメプラゾール、または薬学的に許容可能なその塩を遊離塩基として、それぞれ2:1〜1:2の重量比で含んでもよい。
【0036】
前記複合カプセル剤を構成するカプセルは、硬質カプセルでもあり、当該技術分野において、一般的に使用される任意の硬質カプセルでもある。前記硬質カプセルの基剤は、例えば、ゼラチン、ヒプロメロース、プルラン(NP capsTM(Capsugel社)など)、ポリビニルアルコール、及びそれらの任意の組み合わせのうちからも選択されるが、それらに限定されるものではない。
【0037】
前記硬質カプセルは、当該技術分野に使用される一般的なサイズのカプセルでもある。カプセルの大きさにより、多様な号数のカプセルサイズが商用されているが、00号カプセル(カプセルキャップ径8.5mm、カプセル長23.3mm)のように、大サイズのカプセルは、高齢者や子供のように、体格が小さい患者らが服用するのに不便であるという短所があり、また体積増大による携帯便宜性も、劣化してしまう。一具体例において、前記複合カプセル剤は、カプセル中に充填される錠剤または顆粒の質量限界(mass limit)を考慮し、0号,1号,2号,3号または4号カプセルを使用することができ、さらに具体的には、1号,2号または3号カプセルを使用することができる。
【0038】
前記複合カプセル剤は、強酸性環境である胃においては、活性成分の放出がほとんど起こらず、腸に達するとき、pH5.5以下範囲の腸内において、第1溶出部から活性成分の一次放出が迅速に進められ、pH6.5〜7.0範囲の腸内において、二次溶出部から活性成分の二次放出が進められる。
【0039】
前記複合カプセル剤は、溶出試験時、0.1N HCl水溶液中に2時間放置し、pH6.7〜6.9の人工腸液に移動させて(transfer)溶出試験を行う場合、最初の2時間、放出がほとんど起こらず、人工腸液において溶出が開始され、溶出試験開始後150分で、一次溶出部の活性成分の90%(w/w)以上が放出される第1溶出部からの一次溶出、溶出試験開始後180分の遅延時間が経過した後、二次溶出部から活性成分の溶出が開始され、360分で溶出が完了する(99%以上)二次放出がなされる。前記180分の遅延時間の間には、二次溶出部の活性成分の5%以下、望ましくは2%以下の溶出がなされる。
【0040】
一具体例において、前記複合カプセル剤は、
米国薬典(USP)第2法パドル法により、回転数100rpm、37±0.5℃で、0.1N HCl水溶液中での120分間溶出試験後、連続してpH6.7〜6.9である人工腸液に移動させ、240分間溶出試験の時、
0.1N HClにおいて、120分間耐酸性を有しながら、
人工腸液中において、60分間55%以下の活性成分が溶出され、240分間95%以上の活性成分が溶出される(試験例4参照)。
【0041】
従って、前記複合カプセル剤は、胃において活性成分の分解が起こらず、腸において二重放出がなされ、十分な生体利用率及び持続時間を有することができるので、投与頻度を減らしながら効果的に使用される。
【0042】
前記複合カプセル剤は、活性成分として、エソメプラゾール、または薬学的に許容されるその塩を含むので、その活性成分が効果的であると公知されているか、あるいは将来に新らに明かかにされる任意の適応症治療または適応症予防のためにも使用される。従って、一具体例において、前記複合カプセル剤は、胃食道逆流性疾患、胃炎、十二指腸炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍及び消化性潰瘍から構成された群のうちから選択された胃酸過多分泌関連疾患の予防または治療のためにも使用される。
【0043】
一具体例において、前記複合カプセル剤は、1日1回投与することができる。
【0044】
本発明は、他の一様相において、
エソメプラゾール、または薬学的に許容されるその塩、及び薬剤学的添加剤含むコアを製造する段階と、
前記コアに、内皮コーティング層をコーティングする段階と、
前記内皮コーティング層上に、第1腸溶性コーティング層をコーティングし、第1溶出部を得る段階と、
別途に、前記内皮コーティング層上に、第2腸溶性コーティング層をコーティングし、第2溶出部を得る段階と、
前記得られた第1溶出部及び第2溶出部を共にカプセル剤に充填し、複合カプセル剤を形成する段階と、を含む、請求項1〜13のうちいずれか1項に記載の複合カプセル剤の製造方法であり、
前記第1腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーLDを、内皮コーティング層が形成されたコアの5〜50%(w/w)で含み、
前記第2腸溶性コーティング層は、コーティング基剤として、メタクリル酸コポリマーS及びメタクリル酸コポリマーLの1.5:1〜3.5:1(w/w)混合物を、内皮コーティング層が形成されたコアの15〜40%(w/w)で含むものである、前記本発明の一様相による複合カプセル剤の製造方法を提供する。
【0045】
本様相による経口用固形製剤の製造方法の詳細は、前記本発明の一様相による経口用固形製剤についての説明がそのまま適用され、具体的な製造方法の詳細は、当業者が、当該技術分野に公知された任意の製造方法を適切に利用することができるであろう。
【0046】
前記複合カプセル剤の第1溶出部及び第2溶出部のコアが、ミニ錠剤(MUST)または錠剤である場合、直接圧縮法または間接圧縮法によって製造することができ、前記間接圧縮法は、乾式顆粒または湿式顆粒を利用して製造することができる。
【0047】
一具体例において、前記コアの製造方法は、
(a)エソメプラゾール、または薬学的に許容されるその塩を希釈剤と混合する段階と、
前記段階(a)の混合物に、崩壊剤、結合剤及び潤滑剤を添加して混合する段階と、
(c)前記段階(b)の混合物を乾式顆粒化した後、打錠し、ミニ錠剤または錠剤を得る段階と、を含む方法によっても製造される。
【0048】
前記ミニ錠剤または錠剤に対して、前記内皮コーティング層、第1腸溶性コーティング層、及び第2腸溶性コーティング層をコーティングする段階は、ミニ錠剤または錠剤をコーティングする任意のコーティング方法が適用され、例えば、流動層コーティング機を利用してコーティングすることができる。
【0049】
以下、本発明について、下記実施例に基づいて詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の範囲は、それらに限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
製造例1:エソメプラゾールマグネシウム塩含有コア及び内皮コーティング層の形成
下記表1の組成で、エソメプラゾールマグネシウム塩とマンニトールとを混合した後、30メッシュ円形シーブでシービングした。その混合物を、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース及びフマル酸ステアリルナトリウムと共に、空のブレンダに入れて15分間混合し、最終混合物を製造した。最終混合物をローラコンパクタ(roller compactor)に投入し、乾式顆粒化させて得られた顆粒を、20メッシュ円形シーブでシービングした。
【0051】
その後、直径が2.0mmであるMUSTパンチで、硬度約1〜2kpであり、1錠当たり重量が7.5mgであるミニ錠剤10錠を打錠し、MUSTを形成した。
【0052】
【表1】
【0053】
前記製造されたミニ錠剤を、流動層コーティング機で、記表2の組成のコーティング液でコーティングし、1錠当たり重量が7.88mgである内皮コーティングミニ錠剤を獲得した。
【0054】
【表2】
【0055】
製造例2:実施例1〜3、及び比較例1,2
第1腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤の製造
流動層顆粒機で下記表3の組成によって前記内皮コーティングミニ錠剤をコーティングして、実施例1〜3及び比較例1,2の第1腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤を製造した。実施例1〜実施例3は、第1腸溶性コーティング基剤であるオイドラギットL30 D−55を内皮コーティングミニ錠剤に対して、5〜50%(w/w)にコーティングし、比較例1及び2は、それぞれ4%(w/w)及び51%(w/w)にコーティングした。
【0056】
【表3】
【0057】
製造例3:実施例4〜7及び比較例3〜8
第2腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤の製造
流動層顆粒機で、下記表4及び5の組成により、前記製造例1の内皮コーティングミニ錠剤をコーティングし、実施例4〜7及び比較例3〜8の第2腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤を製造した。
【0058】
実施例4及び5は、オイドラギットS−100及びオイドラギットL−100の2:1混合物を、内皮コーティングミニ錠剤に対して、25〜35%(w/w)にコーティングし、実施例6及び7は、オイドラギットS−100及びオイドラギットL−100の3:1混合物を、内皮コーティングミニ錠剤に対して、20〜30%(w/w)にコーティングした。
【0059】
【表4】
【0060】
比較例3及び4は、オイドラギットS−100及びオイドラギットL−100の2:1混合物を、内皮コーティングミニ錠剤に対して、それぞれ10.15及び40.61%(w/w)にコーティングし、比較例5及び6は、オイドラギットS−100及びオイドラギットL−100の3:1混合物を、内皮コーティングミニ錠剤に対して、それぞれ10.15及び40.61%(w/w)コーティングし、比較例7及び8は、オイドラギットS−100及びオイドラギットL−100の6:1混合物を、内皮コーティングミニ錠剤に対して、それぞれ10.15及び20.30%(w/w)含量にコーティングした。
【0061】
【表5】
【0062】
製造例4:実施例8,9及び比較例9
第1腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤及び第2腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤を含む複合カプセル剤の製造
前記実施例1の第1腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤10錠と、実施例4の第2腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤10錠とを共に、主基剤がゼラチンであるゼラチン硬質カプセル2号に充填し、実施例8の複合カプセル剤(エソメプラゾールとして、40mg含有)を製造した。同一方法でもって、実施例1及び実施例7のミニ錠剤を充填し、実施例9の複合カプセル剤を製造した。また、同一方法でもって、実施例1及び比較例3のミニ錠剤を充填し、比較例9の複合カプセル剤を製造した。
【0063】
製造例5:カプセル種類による複合カプセル剤の製造
硬質カプセルの主基剤がヒプロメロースであるヒプロメロースカプセルに充填することを除いては、前記前記製造例4と同一方法で、複合カプセル剤を製造した。また、硬質カプセルの主基剤がプルランであるプルランカプセルに充填することを除いては、前記製造例4と同一方法で、複合カプセル剤を製造した。
【0064】
試験例1:第1腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤の溶出率試験
実施例1〜3及び比較例1,2の第1腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤を利用し、下記条件下で、経時的なエソメプラゾールマグネシウム塩の溶出率を測定した。
−溶出条件
溶出液:0.01N HCl300mL(2時間)→人工腸液1,000mL(pH6.8)
装置:USPパドル法、100rpm
温度:37℃
溶出率測定時間:60,120,125,130,135,150,165,180分
−分析条件
使用機器:HPLC(Hitachi 5000series、日本)
検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:302nm)
カラム:内径約4.0mm、長さ約10cmであるステインレス鋼管に、粒径5μmの液体クロマトグラフ用シリカゲルが充填されたカラム
移動相−リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3):アセトニトリル:錠剤数=50:35:15
流速:1.0mL/分
カラム温度:30℃
【0065】
実施例1〜3の溶出率測定結果を、下記表6及び図2に示した。
【0066】
【表6】
【0067】
前記表6及び図2から分かるように、実施例1〜3のミニ錠剤は、0.1N HClにおいて、2時間耐酸性を有し、その後、人工腸液(pH6.8)において、30分(溶出試験開始後150分)で、90%以上の溶出率を示し、速放性を有するということが分かった。
【0068】
比較例1及び2の溶出率測定結果を下記表7及び図3に示した。
【0069】
【表7】
【0070】
前記表7及び図3から分かるように、第1腸溶性コーティング層として、オイドラギットL30 D−55を、内皮コーティングミニ錠剤に対して、4%(w/w)コーティングした比較例1は、内皮コーティングミニ錠剤に対する低いコーティング比率により、十分な耐酸性を有し難く、0.1N HClにおいて、120分時点で、10%放出が進められた。また、比較例1のミニ錠剤は、酸性環境で分解が起こるエソメプラゾール薬物特性により、最終溶出率が100%にならなかった。
【0071】
また、第1腸溶性コーティング層として、オイドラギットL30 D−55を内皮コーティングミニ錠剤に対して、51%(w/w)コーティングした比較例2は、十分な耐酸性を確保したが、150分で85%の溶出率を示した。従って、エソメプラゾールの吸収が遅くなり、薬効発現時間が遅延する可能性がある。
【0072】
試験例2:第1腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤の耐酸性試験
実施例1〜3及び比較例1,2の第1腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤を利用し、下記記載の耐酸性条件下で2時間放置した後、エソメプラゾールマグネシウム塩の含量でもって耐酸性を測定した。10個のミニ錠剤を使用して試験した。その結果を下記表8に示した。
−耐酸性条件
試験液:0.01N HCl
装置:USPパドル法、100rpm
温度:37℃
時間:2時間放置
−分析条件
使用機器:HPLC(Hitachi 5000series、日本)
検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:302nm)
カラム:内径約4.0mm、長さ約10cmであるステインレス鋼管に粒径5μmの液体クロマトグラフ用シリカゲルが充填されたカラム
移動相−リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3):アセトニトリル:錠剤数=50:35:15
流速:1.0mL/分
カラム温度:30℃
【0073】
【表8】
【0074】
前記表8に示された実施例1〜3及び比較例1,2の0.1N HClでの耐酸性試験結果、コーティング層の比率が低い比較例1は、エソメプラゾールマグネシウム塩含量において、約10.0%の差を見せたが、比較例1を除いた残りサンプルにおいては、耐酸性試験後、本来の活性成分含量と類似した含量を有するということが分かった。
【0075】
試験例3:第2腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤の溶出率試験
実施例4〜7及び比較例3〜8の第2腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤を利用し、下記記載の条件下で、経時的なエソメプラゾールマグネシウム塩の溶出率を測定した。
−溶出条件
溶出液:0.1N HCl300mL→人工腸液1,000mL(pH6.8)
装置:USPパドル法、100rpm
温度:37℃
溶出時間:60,120,150,180,210,240,300,360分
−分析条件
使用機器:HPLC(Hitachi 5000series、日本)
検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:302nm)
カラム:内径約4.0mm、長さ約10cmであるステインレス鋼管に粒径5μmの液体クロマトグラフ用シリカゲルが充填されたカラム
移動相−リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3):アセトニトリル:錠剤数=50:35:15
流速:1.0mL/分
カラム温度:30℃
実施例4〜7の第2腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤の溶出率測定結果を、表9及び図4に示した。
【0076】
【表9】
【0077】
前記表9及び図4の結果によれば、実施例4〜7は0.1N HClにおいて、2時間溶出がなされず、耐酸性が確保され、その後、人工腸液(pH6.8)において、60分以上の薬物の放出遅延がなされ、いったん薬物放出が始まってからは、迅速な放出が示された。
【0078】
オイドラギットS及びオイドラギットLの比率により、若干の差があることはあるが、0.1N HClにおいて、120分間耐酸性確保後、人工腸液において、60分間は、エソメプラゾールマグネシウム塩がほとんど放出されず、人工腸液において60分が経過した時点から、急速に放出が始まり、360分経過時点では、99%以上のエソメプラゾールマグネシウム塩が放出される非常にすぐれた放出特性を示すということを確認することができた。剤形の特性上、360分時点において、90%以上の溶出率が確保されない場合、薬物溶出がなされないまま排泄される可能性があるので、前記実施例4〜7は、十分な放出がなされると確認された。
【0079】
また、比較例3〜8の第2腸溶性コーティング層形成ミニ錠剤の溶出率測定結果を、下記表10及び図5に示した。
【0080】
【表10】
【0081】
前記表10及び図5の結果によれば、比較例3,5,7のミニ錠剤の場合、低い重量比率の第2腸溶性コーティング層により、0.1N HClにおいて、2時間耐酸性確保が困難であった。比較例4,6,8のミニ錠剤の場合、高い重量比率の第2腸溶性コーティング層により、耐酸性が確保されただけではなく、人工腸液の中においても、薬物の放出が過度に遅延される様相を示し、そのようなミニ錠剤は、6時間経過時においても、薬物放出が90%以上なされないと分かり、薬物放出が十分になされないで排泄される恐れがある。
【0082】
試験例4:複合カプセル剤の溶出率試験
実施例8,9及び比較例9の複合カプセル剤を利用し、下記記載の条件下において、経時的なエソメプラゾールマグネシウム塩の溶出率を測定した。
−溶出条件
溶出液:0.1N HCl300mL→人工腸液1,000mL(pH6.8)
装置:USPパドル法、100rpm
温度:37℃
溶出時間:60,120,125,130,135,150,165,180,210,240,300,360分
−分析条件
使用機器:HPLC(Hitachi 5000series、日本)
検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:302nm)
カラム:内径約4.0mm、長さ約10cmであるステインレス鋼管に粒径5μmの液体クロマトグラフ用シリカゲルが充填されたカラム
移動相−リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3):アセトニトリル:錠剤数=50:35:15
流速:1.0mL/分
カラム温度:30℃
【0083】
前記溶出率測定結果を下記表11及び図6に示した。
【0084】
【表11】
【0085】
前記表11及び図6の結果によれば、第1腸溶性コーティング層を含むミニ錠剤、及び第2腸溶性コーティング層を含むミニ錠剤を、1:1比率で混合して製造した複合カプセル剤である実施例8,9は、0.1N HClにおいて、2時間耐酸性が確保された後、人工腸液における一次放出後、二次放出開始前、約45分以上放出が遅延されるということが分かり、図6のグラフによれば、そのような二重放出特性が明確に確認された。従って、実施例8,9の複合カプセル剤は、人工腸液での二重放出特性により、溶出試験開始後6時間まで薬物放出が持続的に示された。
【0086】
しかし、比較例9のミニ錠剤は、0.1N HClにおいて、2時間耐酸性が確保されることはされたば、一次放出後、二次放開始前、放出遅延現象なしに、薬物放出がすぐになされ、溶出試験3時間経過時、ほとんでの薬物(98%以上)の放出が完了するということが分かった。
【0087】
以上、本発明について、その望ましい実施例を中心に説明した。本発明が属する技術分野で当業者であるならば、本発明が、本発明の本質的な特性から外れない範囲で変形された形態に具現されるということを理解することができるであろう。従って、前述のところで開示された実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮されなければならない。本発明の範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にある全ての差異は、本発明に含まれたものであると解釈されなければならないのである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】