特表2019-533009(P2019-533009A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-533009非病原性の細菌を含む組成物並びに真菌性、細菌性及びウィルス性疾患から植物及び動物宿主を保護する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-533009(P2019-533009A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】非病原性の細菌を含む組成物並びに真菌性、細菌性及びウィルス性疾患から植物及び動物宿主を保護する方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 63/02 20060101AFI20191018BHJP
   A01N 31/06 20060101ALI20191018BHJP
   A01N 31/16 20060101ALI20191018BHJP
   A01N 35/06 20060101ALI20191018BHJP
   A01N 43/16 20060101ALI20191018BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20191018BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20191018BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20191018BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20191018BHJP
【FI】
   A01N63/02 E
   A01N31/06
   A01N31/16
   A01N35/06
   A01N43/16 A
   A01N43/16 C
   A01N25/00
   A01N63/02 P
   A01N25/02
   A01P3/00
   A01P1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2019-536006(P2019-536006)
(86)(22)【出願日】2017年9月13日
(85)【翻訳文提出日】2019年5月10日
(86)【国際出願番号】IL2017051038
(87)【国際公開番号】WO2018051344
(87)【国際公開日】20180322
(31)【優先権主張番号】62/394,229
(32)【優先日】2016年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519089532
【氏名又は名称】グレイス・ブリーディング・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アビドブ,アミット
(72)【発明者】
【氏名】バラザニ,アブネル
(72)【発明者】
【氏名】ゼイルカ,モル
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA04
4H011BA01
4H011BB03
4H011BB08
4H011BC03
4H011BC04
4H011DA13
4H011DC05
(57)【要約】
本発明は、真菌性、細菌性及び/又はウィルス性病原体による植物又は動物宿主種の感染を予防及び/又は処理する方法に関し、前記方法は、1種以上の非病原性細菌及び1種以上の活性化剤の混合物を準備するステップ、及び前記混合物を前記宿主種に施すステップを含む。本発明はまた、非病原性の細菌及び1種以上の活性化剤の混合物を含む組成物も包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真菌性、細菌性及び/又はウィルス性病原体による植物又は動物宿主種の感染を予防及び/又は処理する方法であって、
a)1種以上の非病原性細菌及び1種以上の活性化剤の混合物を準備するステップ;及び
b)ステップ(a)の混合物を前記宿主種に施すステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
真菌性、細菌性及び/又はウィルス性病原体による植物又は動物宿主種の感染を予防及び/又は処理する方法であって、
a)(i)1種以上の非病原性細菌を含む組成物;及び
(ii)1種以上の活性化剤を含む組成物
を別々に準備するステップ;並びに
b)組成物(i)及び(ii)の各々を前記宿主種に別々に施すステップ
を含む、前記方法。
【請求項3】
非病原性の細菌が、枯草菌(Bacillus subtilis)及びプロバイオティック細菌からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
非病原性の細菌が、枯草菌(Bacillus subtilis)種の細菌である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
枯草菌(Bacillus subtilis)の株が、QST 713株である
、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
非病原性の細菌が、プロバイオティック細菌の1つ以上の種である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
プロバイオティック細菌が、L.ラムノサス(L.rhamnosus)、L.カゼイ(L.Casei)、L.プランタルム(L.Plantarum)、L.ヘルベティカス(L.helveticus) (アシドフィルス(acidophilus))、B.ロングム(B.Longum)、B.ブレヴェ(B.breve)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus Acidilactici)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
宿主種に施される第1の組成物が、非病原性の細菌を含む組成物である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
宿主種に施される第1の組成物が、1種以上の活性化剤を含む組成物である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
非病原性の細菌を含む組成物及び1種以上の活性化剤を含む組成物が、ほぼ同時に宿主種に施される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
1種以上の活性化剤が、抗炎症活性を有する物質である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
1種以上の活性化剤が、NO及び/又はTNF−αの生産を阻害することができる物質である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
活性化剤が、各々、NO生産の阻害に対する1.5mg/ml未満のIC50及び/又はTNF−α生産の阻害に対する2.5mg/ml未満のIC50を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
活性化剤が、各々、NO生産の阻害に対する0.1mg/ml未満のIC50及び/又はTNF−α生産の阻害に対する0.2mg/ml未満のIC50を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
活性化剤が、各々、NO生産の阻害に対する0.05mg/ml未満のIC50及び/又はTNF−α生産の阻害に対する0.1mg/ml未満のIC50を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
1種以上の活性化剤が、スクラレオール、ナリンギン、ノートカトン、ステビオールグリコシド及びカンナビジオールからなる群から選択される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
1種以上の活性化剤が、シオン(Aster tataricus)、ハマスゲ(Cyperus rotundus)及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
宿主種が、植物種である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
宿主種が、動物種である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
動物種が、家畜又は農業動物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
動物種が、農業上重要な昆虫種、特にミツバチである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
1種以上の非病原性細菌、1種以上の活性化剤及び/又はこれらの組合せが、葉への施用によって植物に施される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
1種以上の非病原性細菌、1種以上の活性化剤及び/又はこれらの組合せが、植物が成長している培地にこれらの物質を加えることによって前記植物に施される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
非病原性の細菌、1種以上の活性化剤及び/又はこれらの組合せが、これらの物質で被覆された顆粒の形態で施される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
顆粒が、さらに放出制御ポリマーを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
非病原性の細菌、1種以上の活性化剤及び/又はこれらの組合せが、植物種の種子を蒔く前に前記種子をこれらの物質で被覆することによって施される、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
被覆された種子が、さらに放出制御ポリマーを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
非病原性の細菌及び1種以上の活性化剤の混合物を含む組成物であって、前記1種以上の活性化剤が抗炎症活性を有する物質である、組成物。
【請求項29】
活性化剤が、各々、NO生産の阻害に対する1.5mg/ml未満のIC50及び/又はTNF−α生産の阻害に対する2.5mg/ml未満のIC50を有する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
活性化剤が、各々、NO生産の阻害に対する0.1mg/ml未満のIC50及び/又はTNF−α生産の阻害に対する0.2mg/ml未満のIC50を有する、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
活性化剤が、各々、NO生産の阻害に対する0.05mg/ml未満のIC50及び/又はTNF−α生産の阻害に対する0.1mg/ml未満のIC50を有する、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
さらに、安定剤、溶剤、金属イオン封鎖剤、乳化剤及び放出制御剤からなる群から選択される1種以上の追加の作用物質を含む、請求項28〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
1種以上の活性化剤が、スクラレオール、ナリンギン、ノートカトン、ステビオールグリコシド及びカンナビジオールからなる群から選択される、請求項28〜32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
非病原性の細菌が、枯草菌(Bacillus subtilis)及びプロバイオティック細菌からなる群から選択される、請求項28〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
非病原性の細菌が、枯草菌(Bacillus subtilis)種の細菌である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
枯草菌(Bacillus subtilis)の株が、QST 713株である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
非病原性の細菌が、プロバイオティック細菌の1つ以上の種である、請求項34に記載の組成物。
【請求項38】
プロバイオティック細菌が、L.ラムノサス(L.rhamnosus)、L.カゼイ(L.Casei)、L.プランタルム(L.Plantarum)、L.ヘルベティカス(L.helveticus) (アシドフィルス(acidophilus))、B.ロングム(B.Longum)、B.ブレヴェ(B.breve)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus Acidilactici)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
スクラレオール、ナリンギン、ノートカトン、ステビオールグリコシド及びカンナビジオールからなる群から選択される、枯草菌(Bacillus subtilis)の活性化を引き起こすことができる1種以上の作用物質の混合物を含む組成物。
【請求項40】
農業上又は園芸上重要な植物の収量を増大する方法であって、
a)1種以上の非病原性細菌及び1種以上の活性化剤の混合物を準備するステップ;及び
b)ステップ(a)の混合物を宿主種に施すステップ
によって、収量を増大する方法。
【請求項41】
農業上又は園芸上重要な植物の収量を増大する方法であって、
a)(i)1種以上の非病原性細菌を含む組成物;及び
(ii)1種以上の活性化剤を含む組成物
を別々に準備し;
b)組成物(i)及び(ii)の各々を宿主種に別々に施す
ことによって、収量を増大する方法。
【請求項42】
農業上重要な動物からの生産物の収量を増大する方法であって、
a)1種以上の非病原性細菌及び1種以上の活性化剤の混合物を準備するステップ;及び
b)ステップ(a)の混合物を宿主種に施すステップ
によって、生産物の収量を増大する方法。
【請求項43】
農業上重要な動物からの生産物の収量を増大する方法であって、
a)(i)1種以上の非病原性細菌を含む組成物;及び
(ii)1種以上の活性化剤を含む組成物
を別々に準備し;
b)組成物(i)及び(ii)の各々を宿主種に別々に施す
ことによって、生産物の収量を増大する方法。
【請求項44】
真菌性、細菌性及び/又はウィルス性病原体により引き起こされるダメージに耐える植物又は動物宿主種の能力を増大する方法であって、
a)非病原性の細菌及び1種以上の活性化剤の混合物を準備するステップ;及び
b)ステップ(a)の混合物を植物又は動物宿主種に施すステップ
を含む、前記方法。
【請求項45】
真菌性、細菌性及び/又はウィルス性病原体により引き起こされるダメージに耐える植物又は動物宿主種の能力を増大する方法であって、
a)(i)1種以上の非病原性細菌を含む組成物;及び
(ii)1種以上の活性化剤を含む組成物
を別々に準備し;
b)組成物(i)及び(ii)の各々を前記宿主種に別々に施すステップを含む、前記方法。
【請求項46】
請求項3〜27のいずれか1項に記載の技術的特徴を含む、請求項40〜45のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある範囲のいろいろな生物宿主での微生物疾患の予防及び/又は処理における、1種以上の活性化剤と組み合わせた非病原性の細菌種の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
農業上及び園芸上興味のある植物及びその他の宿主種を細菌及び真菌の攻撃から保護するための非病原性の土壌細菌の使用は当技術分野で周知である。かかる系で使用される非病原性の細菌種の一例は枯草菌(Bacillus subtilis)である。
【0003】
枯草菌(Bacillus subtilis)を含む殺真菌性及び殺細菌性の製品、並びに農業上重要な植物の微生物疾患からの保護におけるかかる製品の使用について記載しているいくつかの先行技術の刊行物がある。しかしながら、これらの製品は大部分が低レベルの活性を有しており、その結果主に慣習的な化学物質の活性を増大するための補助に使用されている。さらに、有機栽培植物の保護のために(すなわち、より強力な化学物質の使用が許容されないような状況で)唯一の作用物質としてのかかる製品の使用について記載した文献もある。
【0004】
このように、枯草菌(Bacillus subtilis)を用いた有害微生物の生物的防除の用途は宿主細胞に対するその低い毒性の故に極めて有利であるが、その比較的低レベルの活性のためにこのアプローチは農業及び園芸においてより大規模な商業的規模でより広く採用されるのが妨げられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、枯草菌(Bacillus subtilis)のような非病原性細菌の使用に基づく系の低い宿主毒性と、微生物の攻撃に抵抗する宿主種の能力を増強する上での大きく増大した有効性とを併せもつ、商業上重要な植物及び動物種の保護のための満たされていないニーズがある。
【0006】
本発明はこのニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、主に、真菌性、細菌性及び/又はウィルス性病原体により引き起こされるダメージに耐える植物又は動物宿主種の能力を増大する方法に関する。その最も一般的な形態において、この方法は、
a)非病原性の細菌及び1種以上の活性化剤の混合物を準備するステップ;及び
b)ステップ(a)の混合物を植物又は動物宿主種に施すステップ
を含む。
【0008】
場合により、上記ステップ(a)で述べた2つの成分(すなわち、非病原性の細菌及び活性化剤)は別々に施してもよい。その結果として、かかる場合、真菌性、細菌性及び/又はウィルス性病原体により引き起こされるダメージに耐える植物又は動物宿主種の能力を増大する方法は、
a)(i)1種以上の非病原性細菌を含む組成物;及び
(ii)1種以上の活性化剤を含む組成物
を別々に準備するステップ;並びに
b)組成物(i)及び(ii)の各々を前記宿主種に別々に施すステップ
を含む。
【0009】
理論に縛られることは望まないが、本発明の方法及び組成物で見られる保護効果は、直接の抗菌活性、(例えば、宿主の免疫反応を高めることによる)微生物感染に対する宿主種の抵抗性の増強、又は両方の機序の組合せに起因し得ることに注意すべきである。その結果として、上述の語句「真菌性、細菌性及び/又はウィルス性病原体により引き起こされるダメージに耐える能力」は、微生物病原体の存在下での宿主種の増強された生存、大きさ及び健康(及び、関連のある場合には、農業又は園芸産物の増大した収量)の1つ以上の観点から、これらのパラメーターの増強に関わる実際の機序に関わらず、理解されるべきである。同様に、用語「真菌性、細菌性及び/又はウィルス性病原体により引き起こされるダメージ」は、宿主種の細胞若しくは組織内の、又は前記宿主種にごく接近した微生物病原体の存在と直接又は間接的に関連する、前記宿主種に対するあらゆる有害な影響と理解されるべきである。これらの有害な影響としては、(限定されることはないが)宿主種の成長、大きさ又は生殖能力の障害、宿主種の1つ以上の臓器に対する致命的及び致命的でない損傷、宿主種により産生される農業上重要な産物(例えば果実、野菜、豆類、乳、蜂蜜等)の低下した収量がある。
【0010】
本発明との関連で、用語「活性化剤」は、非病原性細菌と共に混合物中に存在しても、又はそれとは別に送達されても、前記非病原性細菌細胞の処置された植物又は動物宿主種に対する有益な効果を増強することができる物質を意味するために使用されている。この増強は、場合によっては、非病原性細菌と活性化剤との相乗的な相互作用の結果であり得る。あるいは、活性化剤及び非病原性細菌は、各々が単独で使用されたとき宿主に対して何らかの意義のある有益な効果をもっていなくてもよいが、これら2種類の物質が一緒に又は連続して施されたとき宿主種において有意な抗菌性、免疫賦活性及び/又はその他の有益な効果を生じ得る。
【0011】
本発明者は、意外なことに、本発明の方法で使用するのに適した活性化剤の多くが、共通の特徴、すなわち、一般的に植物種よりも高等動物種に関連する(腫瘍壊死因子アルファ[TNF−α]のような)炎症性メディエイターを阻害する能力を共有するということを見出した。このように、本発明の1つの好ましい実施形態において、1種以上の活性化剤は抗炎症活性を有する物質である。
【0012】
1つの局面において、本発明は、真菌性、細菌性及び/又はウィルス性病原体による植物又は動物宿主種の感染症を予防及び/又は処理する方法に関し、前記方法は、
a)非病原性の細菌及び1種以上の活性化剤の混合物を準備するステップ;及び
b)ステップ(a)の混合物を前記宿主種に施すステップ
を含む。
【0013】
本発明のこの局面の代わりの実施形態において、非病原性の細菌及び活性化剤は上記に既に説明したように別々に施してもよい。
【0014】
さらなる局面において、本発明はまた、農業上又は園芸上重要な植物の収量又は農業上重要な動物からの生産物(例えば乳又は蜂蜜)の収量を増大する方法であって、
a)非病原性の細菌及び1種以上の活性化剤の混合物を準備するステップ;及び
b)ステップ(a)の混合物を前記宿主種に施すステップ
によって、生産物の収量を増大する方法にも関する。
【0015】
本発明のこの局面の代わりの実施形態において、非病原性の細菌及び活性化剤は既に説明したように別々に施してもよい。
【0016】
本発明のさまざまな方法のいくつかの実施において、非病原性の細菌及び活性化剤は別々に、すなわち、交互に施してもよいことが上に開示された。かかる実施において、施される第1の組成物は、非病原性の細菌を含む組成物であっても、又は1種以上の活性化剤を含む組成物であってもよい。非病原性の細菌及び活性化剤が別々に施されるタイプの特定の他の実施形態において、これらは両方ともほぼ同時に宿主種に施される。
【0017】
別の局面において、本発明はまた、非病原性の細菌及び1種以上の活性化剤の混合物を含む組成物も提供し、前記1種以上の活性化剤は以下でさらに詳細に述べるように抗炎症活性を有する物質である。
【0018】
非病原性細菌の多くの異なる種及び菌株を、本明細書に記載されている活性化剤と組み合わせて使用することができる(又は、代わりに、別々に連続して施してもよい)。これに関連して、用語「非病原性」は、選択された種が、その細菌を含有する本発明の組成物が施される宿主種に対して有毒又はその他有害な影響を全く又はほとんどもたないことを示すために使用されている。
【0019】
本明細書に規定されている方法及び組成物の1つの好ましい実施形態において、非病原性の細菌は枯草菌(Bacillus subtilis)及びプロバイオティック細菌からなる群から選択される。
【0020】
1つの好ましい実施形態において、非病原性の細菌種は枯草菌(Bacillus subtilis)である。この種のいくつかの異なる株が使用され得る。しかし、1つの極めて好ましい実施形態において、使用する株はQST 713である。
【0021】
別の好ましい実施形態において、非病原性の細菌はプロバイオティック細菌の1種以上の種から選択される。この点に関して、用語「プロバイオティック細菌」は、現在の目的から、意図された宿主において消費又はその他施されたとき健康上の利益を提供すると考えられる生きている微生物を意味すると理解されることに留意されたい。多くのかかるプロバイオティック細菌が公知であり、それらの多くがビフィズス菌(Bifidobacterium)属(例えば、B.ロングム(B.longum)及びB.ブレヴェ(B.breve))又はラクトバチルス(Lactobacillus)属(例えば、L.ラムノサス(L.rhamnosus)、L.カゼイ(L.casei)、L.ヘルベティカス(L.helveticus)など)の種である。1つの好ましい実施形態において、本発明の組成物及び方法に使用されるプロバイオティック細菌は、L.ラムノサス(L.rhamnosus)、L.カゼイ(L.casei)、L.プランタルム(L.Plantarum)、L.ヘルベティカス(L.helveticus)(アシドフィルス(acidophilus))、B.ロングム(B.Longum)、B.ブレヴェ(B.breve)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus Acidilactici)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0022】
本発明のさらなる実施形態及び利点は説明が進むにつれて明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、抗細菌及び抗真菌効果の増強に関する枯草菌(B.subtilis)に対する活性化剤としての植物化学物質の使用可能性の初期スクリーニングの結果をグラフで示す。
図2図2は、3又は4種の異なる活性化剤の組合せの、これらと枯草菌(B.subtilis)との組合せを含有する組成物の殺真菌及び殺細菌活性に関する枯草菌(B.subtilis)活性化に対する結果を示す。
図3図3は、活性化剤を異なる濃度で使用した以外は図2に示したものと同様な研究の結果を示す。
図4図4は、枯草菌(B.subtilis)の異なる製剤を使用した以外は図1に示した結果を得るのに使用したものと同様な組成物を用いた殺真菌及び殺細菌活性の結果を示す。
図5図5は、活性化剤を異なる濃度で使用した以外は図5の結果を得るのに使用したものと同様な組成物を用いて得られた殺真菌及び殺細菌結果を示す。
図6図6は、2つの植物シオン(Aster tataricus)及びハマスゲ(Cyperus rotundus)の抽出物と枯草菌(B.subtilis)の組合せの殺真菌及び殺細菌効果を示す結果を示す。
図7図7は、2つの植物抽出物を異なる濃度で使用した以外は図6の結果を生成したものと同様な研究の結果を示す。
図8-1】図8は、活性化剤と枯草菌(B.subtilis)のいろいろな組合せをキュウリ実生に接種するとキュウリ植物を真菌及び細菌感染症の両方から保護することができるということを示す。
図8-2】図8は、活性化剤と枯草菌(B.subtilis)のいろいろな組合せをキュウリ実生に接種するとキュウリ植物を真菌及び細菌感染症の両方から保護することができるということを示す。
図9図9は、活性化剤と枯草菌(B.subtilis)のいろいろな組合せをトマト実生に接種するとトマト植物を微生物感染症から保護することができるということを示す結果を示す。
図10-1】図10は、本発明の組成物で処理した後トマトモザイクウィルスに感染したトマト植物の増大した生存を示す結果を示す。
図10-2】図10は、本発明の組成物で処理した後のトマトモザイクウィルスに感染したトマト植物の増大した生存を示す結果を示す。
図11図11は、本発明の組成物をコショウ(pepper)植物実生に接種した後のコショウ植物における微生物感染症に対する前記組成物の保護効果を示す。
図12図12は、本発明の組成物の接種後のトウモロコシにおける微生物感染症に対する前記組成物の保護効果を示す。
図13図13は、本発明の組成物による実生の接種後のコムギにおける微生物感染症に対する前記組成物の保護効果を示す結果を示す。
図14図14は、本発明の組成物をイネ実生に接種した後のイネ植物における微生物感染症に対する前記組成物の保護効果を示す。
図15図15は、本発明の組成物による処理後のヒヨコマメ植物における微生物感染症に対する保護を示す野外研究の結果を示す。
図16図16は、本発明の組成物による処理後のソブリヌス菌(Streptococcus sobrinus)(ヒトにおける虫歯の発生に関する重要な細菌種)のほとんど完全な排除を示すインビトロの結果を示す。
図17図17は、本発明の組成物による処理後のラクトバチルス(Lactobacilli)(ヒトにおける虫歯の発生に関する重要な種)のほとんど完全な排除を示すインビトロの結果を示す。
図18図18は、カンキツグリーニング病菌(Candidatus liberibacter)による感染後の成長するニンジン及びニンジン植物の葉に対する本発明の組成物の効果の野外研究において使用した異なる処理群への畑の分割を示すトライアルマップ(trial map)である。
図19図19は、カンキツグリーニング病菌(Candidatus liberibacter)により引き起こされた葉の損傷を有するニンジン植物のパーセンテージを低減する上での本発明の組成物の有益な効果をグラフで描いたものである。
図20図20は、カンキツグリーニング病菌(Candidatus liberibacter)により引き起こされた損傷を有するニンジンの平均数を低減する上での本発明の組成物の有益な効果をグラフで描いたものである。
図21図21は、未処理コントロールと比較したとき、本発明の組成物でハチを処理した後ハチの巣内に存在するハチ幼虫の増大した数を示すデータを示す。
図22図22は、未処理コントロールと比較したとき、本発明の組成物でハチを処理した後ハチの巣内に存在する成虫のハチの増大した数を示すデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
既に説明したように、本発明者は、意外なことに、(枯草菌(B.subtilis)又はプロバイオティック種のような非病原性の細菌と組み合わせて)本発明の方法に使用するのに適した活性化剤の多くが、より一般的には高等動物種に関連する(腫瘍壊死因子アルファ[TNF−α]のような)炎症性メディエイターを阻害する能力を共有することを見出した。したがって、本発明の1つの好ましい実施形態において、1種以上の活性化剤は抗炎症活性を有する物質である。
【0025】
既に述べたように、本発明の活性化剤に関連する上述の抗炎症活性は、少なくとも部分的に、TNF−α及び/又は一酸化窒素(NO)のような1種以上の重要な炎症性メディエイターの阻害によって媒介されることが本発明者により見出された。その結果として、本発明の1つの好ましい実施形態において、上述の方法で使用される1種以上の活性化剤はNO及び/又はTNF−αの生産を阻害することができる物質である。
【0026】
本発明のさらに好ましい実施形態において、活性化剤は各々、NO生産の阻害に対する1.5mg/ml未満のIC50及び/又はTNF−α生産の阻害に対する2.5mg/ml未満のIC50を有する。
【0027】
もう1つ別の好ましい実施形態において、個々の活性化剤の各々は(単独で使用しても、又は他のかかる作用物質と組み合わせて使用しても)NO生産の阻害に対する0.1mg/ml未満のIC50及び/又はTNF−α生産の阻害に対する0.2mg/ml未満のIC50を有する。
【0028】
さらに別の好ましい実施形態において、個々の活性化剤の各々は(単独で使用しても、又は他のかかる作用物質と組み合わせて使用しても)NO生産の阻害に対する0.05mg/ml未満のIC50及び/又はTNF−α生産の阻害に対する0.1mg/ml未満のIC50を有する。
【0029】
アンタゴニスト及びその他の生物学的及び薬理学的に活性な分子の効能を比較する手段としてのIC50値(すなわち、メディエイター、アゴニスト又は他の生物学的に活性な分子の最大の阻害の50%を引き起こす作用物質の濃度)の使用は当分野の熟練した技術者に周知であることに留意されたい。簡潔にいうと、IC50値は、特定の炎症性メディエイターの阻害のようなパラメーターに対する用量反応曲線をプロットし、前記曲線から前記値を引き出すことによって得ることができる。
【0030】
もう1つ別の好ましい実施形態において、活性化剤はスクラレオール、ナリンギン、ノートカトン、ステビオールグリコシド及びカンナビジオール並びにこれらの組合せからなる群から選択される。
【0031】
さらに好ましい実施形態において、活性化剤(上に開示された質的及び量的な抗炎症特性を有するものを含む)は、植物材料(例えば、未精製植物抽出物、例えば全植物水性抽出物、部分的に精製又は分画した抽出物、精製した抽出物及び前記抽出物中に存在する活性分子の合成アナログ)に由来する。
【0032】
本発明のこの局面の1つの好ましい実施形態において、植物由来活性化剤はシオン(Aster tataricus)、ハマスゲ(Cyperus rotundus)及びこれらの組合せからなる群から選択される薬草抽出物である。
【0033】
1つの好ましい実施形態において、宿主種は植物種、例えば(限定されることはないが)野菜、豆類、穀類、熱帯種(例えばバナナ)、亜熱帯種(例えば柑橘類)、その他の高木及び低木、園芸上重要な顕花植物、などである。
【0034】
別の好ましい実施形態において、宿主種は動物種、特に限定されることはないがミツバチ(Apis mellifera.L)を始めとするハチのさまざまな種のような農業上重要な昆虫種である。もう1つ別の好ましい実施形態において、処理される動物種は、ヒト被験者及び非ヒト種の両方を含む哺乳類である。後者に関しては、多くの家畜動物、又は農業上重要な動物が本発明の組成物及び方法で処理され得る。1つの好ましい実施形態において、処理される哺乳類の対象はウシ又はヒツジである。
【0035】
1つの好ましい実施形態において、非病原性の細菌種は枯草菌(Bacillus subtilis)である。
【0036】
本発明の方法を実施するには枯草菌(Bacillus subtilis)の多くの異なる株を使用できるが、1つの好ましい実施形態において、使用される株はQST 713株である。この株はSerenade(R)ASO及びCease(R)を含めてさまざまな異なる製剤として商業的に得ることができる。
【0037】
もう1つ別の好ましい実施形態において、非病原性の細菌はプロバイオティック細菌の1つ以上の種から選択される。上記に既に説明したように、プロバイオティック細菌の多くの異なる種(例えば、限定されることはないが、ラクトバチルス(Lactobacillus)及びビフィズス菌(Bifidobacterium)属の種)が本発明の方法を実施するのに使用され得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、上述の活性化剤の1〜5種が方法のステップ(a)で使用される混合物を製造するのに使用される。1つの好ましい実施形態において、前記活性化剤の5種全てが使用される。
【0039】
もう1つ別の特に好ましい実施形態において、5種の活性化剤は次の百分率範囲で混合物中に存在する。
【0040】
【表1】
【0041】
好ましくは、混合物中の枯草菌(Bacillus subtilis)細胞及び活性化剤の百分率組成は次の通りである。
【0042】
枯草菌(Bacillus subtilis)(Serenade) 0.1%〜10%(より好ましくは0.5%〜5%)
活性化剤 0.01%〜10%(より好ましくは0.05%〜5%)。
【0043】
本明細書に開示され、特許請求の範囲に記載されている方法の、宿主種が植物である実施形態において、ステップ(a)の混合物を宿主生物と接触させるための多くの異なる手段が前記方法のステップ(b)で使用され得る。これらの手段には、(限定されることはないが)施肥潅漑、噴霧、乳剤、制御放出膜又は基材、及びこれらの組合せがある。
【0044】
いくつかの好ましい実施形態において、1種以上の非病原性細菌、1種以上の活性化剤及び/又はこれらの組合せは葉へ施すことによって植物に施される。これは、例えば、伝統的な手段を用いてこれらの物質を噴霧することによって達成できる。
【0045】
他の好ましい実施形態において、1種以上の非病原性細菌、1種以上の活性化剤及び/又はこれらの組合せは、植物が成長している培地にこれらの物質を加えることによって前記植物に施される。これは、非病原性の細菌及び/又は活性化剤で被覆されているか、あるいは浸漬又は他の任意の手段によりこれらの物質を内部構造中に吸収させてある顆粒又はその他の基材(例えば吸収繊維、ペレット、ビーズ等)を製造することによって達成することができる。1つの特に好ましい実施形態において、使用される送達形態は送達される物質で被覆されている複数の顆粒(例えばパーライト顆粒)を含む。通常(いつもではないが)、これらの顆粒はさらに放出制御ポリマーを含んでいてもよく、これは通常外部コーティングとして顆粒表面上に存在する。
【0046】
さらに好ましい実施形態において、非病原性の細菌、1種以上の活性化剤及び/又はこれらの組合せは植物種の種子を蒔く前に前記種子をこれらの物質で被覆することによって施される。かかる被覆された種子はさらに1種以上の放出制御ポリマーを通常(必ずではないが)外部コーティングの形態で含んでいてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は非病原性の細菌と活性化剤を別々に施すことを含む。かかる別々の施用もまた、本明細書に記載されている前記非病原性の細菌及び活性化剤の混合物に対して使用される施用経路のいずれかによって達成することができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、ステップ(a)の混合物は数時間〜約180日の期間連続的に処理される宿主生物に施される。
【0049】
乳剤法を使用するとき、処理期間は通常数時間であり、約10日後第2の処理を施し得る。
【0050】
制御放出膜又は基材を使用するとき、処理は約180日かかる。制御放出基材はいくつかの異なる種類のものでよい。1つの好ましい実施形態において、この基材は、当技術分野で熟練した技術者に周知のようにパーライト顆粒のような顆粒に形成される。制御放出基材の他の選択肢としては、その乾燥重量に対して1:15を超える吸水度を有するさまざまなペレット、ビーズ、ミクロビーズ、繊維がある。所望の制御放出特性を達成するために、基材は(農業、農薬及び薬学分野で周知のように)ワックス、エトセル、他の放出制御ポリマー及び植物油で被覆され得る。
【0051】
本発明の方法を使用して動物を処理する場合、本発明の組成物は局所使用のためにゲル又はクリームの形態で製剤化することができる。あるいは、組成物は、動物に日々すでに施されている固体又は液体の動物飼料に添加することができるように製剤化してもよい。最後に、動物宿主種への経口又は非経口の投与が意図される他の剤形が当分野で熟練した技術者に周知であり、すべて本発明の範囲内に含まれる。
【0052】
本発明はまた、非病原性の細菌及び1種以上の活性化剤の混合物を含み、前記1種以上の活性化剤が抗炎症活性を有する物質である組成物を提供する。好ましくは、かかる抗炎症性物質は抗炎症性メディエイターである一酸化窒素(NO)及び/又はTNF−αの生産又は放出を阻害することができる。
【0053】
この局面の1つの好ましい実施形態において、前記活性化剤は各々NO生産の阻害に対する1.5mg/ml未満のIC50及び/又はTNF−α生産の阻害に対する2.5mg/ml未満のIC50を有する。
【0054】
もう1つ別の好ましい実施形態において、前記活性化剤は各々、NO生産の阻害に対する0.1mg/ml未満のIC50及び/又はTNF−α生産の阻害に対する0.2mg/ml未満のIC50を有する。
【0055】
さらに好ましい実施形態において、前記活性化剤は各々、NO生産の阻害に対する0.05mg/ml未満のIC50及び/又はTNF−α生産の阻害に対する0.1mg/ml未満のIC50を有する。
【0056】
この局面の1つの好ましい実施形態において、本発明は、枯草菌(Bacillus subtilis)と、スクラレオール、ナリンギン、ノートカトン、ステビオールグリコシド及びカンナビジオールからなる群から選択される1種以上の活性化剤との混合物を含む植物保護又は動物保護組成物に関する。
【0057】
1つの好ましい実施形態において、上に開示された組成物のいずれも、浸透剤、安定剤、溶剤、金属イオン封鎖剤、乳化剤及び放出制御(例えば徐放)剤を始めとする1種以上の追加の成分をさらに含んでいてもよい。
【0058】
適切な浸透剤、すなわち極性の非プロトン性溶剤の例はDMSO、DMSO−d、ジメチルホルムアミド(DUF)である。
【0059】
適切な非イオン性の界面活性剤の例にはTriton X−100、Tergitol 15−S−3、15−S−5、15−S−7がある。
【0060】
適切な金属イオン封鎖剤の例にはリン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、塩化カルシウム、グルコン酸カリウムがある。
【0061】
乳化剤の例にはpolyaldo10−6−0、E−471、E−475、及びE−476がある。
【0062】
制御放出剤の例には、ジシクロペンタジエン及びアマニ油又は大豆油アルキドを含むコーティング(例えば、登録商標「Osmocote(R)」で販売され、イスラエルのICL Specialty Fertilizersにより流通され、米国特許第4,657,576号に開示されている市販のコーティング組成物)、並びに日本のSekisui Specialty Chemicalsから入手できるポリマーE603がある。
【0063】
もちろん、上に掲げた追加の成分は単に例示のために挙げたものであり、多くの他の異なる添加剤及び賦形剤も本明細書に開示されている組成物に含まれ得る。
【0064】
本発明の好ましい実施形態のいくつかにおいて、活性化剤の混合物は親水性及び疎水性の物質の両方を含むことに留意されたい。結果として、多くの場合、2つの別々の成分:すなわち、水に溶解したより多くの水溶性の物質を含有する水性の部分と、脂肪酸、中鎖トリグリセリド、エタノール、他の溶媒及びこれらの組合せに溶解したより少ない水溶性の物質を含有する疎水性の部分との乳化した混合物として組成物を製造することが必要である。
【0065】
本発明の上に開示された組成物の1つの好ましい実施形態において、非病原性の細菌は枯草菌(Bacillus subtilis)及びプロバイオティック細菌からなる群から選択される。
【0066】
1つの極めて好ましい実施形態において、非病原性の細菌は枯草菌(Bacillus subtilis)種の細菌である。この種の多くの異なる株が使用できるが、1つの好ましい実施形態において組成物はQST 713株を含む。
【0067】
もう1つ別の極めて好ましい実施形態において、組成物中の非病原性の細菌はプロバイオティック細菌の1つ以上の種である。この実施形態の1つの実施において、プロバイオティック細菌はL.ラムノサス(L.rhamnosus)、L.カゼイ(L.Casei)、L.プランタルム(L.Plantarum)、L.ヘルベティカス(L.helveticus)(アシドフィルス(acidophilus))、B.ロングム(B.Longum)、B.ブレヴェ(B.breve)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus Acidilactici)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0068】
さらなる局面において、本発明はまた、スクラレオール、ナリンギン、ノートカトン、ステビオールグリコシド及びカンナビジオール、並びにこれらの組合せからなる群から選択される、枯草菌(Bacillus subtilis)の活性化を引き起こすことができる作用物質の混合物も提供する。
【0069】
本発明の方法及び組成物のさらなる利点は、(例えば、枯草菌(B.subtilis)及びプロバイオティック細菌のような)非病原性の細菌と活性化剤との混合物が、それで処理された植物の活力に対して、特に実生の発達の早期段階で、及ぼし得る正の影響である。その結果として、もう1つ別の局面において、本発明は、
農業上又は園芸上重要な植物の収量を増大する方法であって、
a)1種以上の非病原性細菌と1種以上の活性化剤との混合物を準備するステップ;及び
b)ステップ(a)の混合物を前記宿主種に施すステップ
によって、収量を増大する方法に関する。
【0070】
この局面のもう1つ別の実施形態において、本発明はまた、農業上又は園芸上重要な植物の収量を増大する方法であって、
a)(i)1種以上の非病原性細菌を含む組成物;及び
(ii)1種以上の活性化剤を含む組成物
を別々に準備し、
b)組成物(i)及び(ii)の各々を前記宿主種に別々に施す
ことによって、収量を増大する方法も提供する。
【0071】
同様に、本発明はまた、農業上重要な動物からの生産物(例えば、乳、蜂蜜等)の収量を増大する方法であって、
a)(i)1種以上の非病原性細菌を含む組成物;及び
(ii)1種以上の活性化剤を含む組成物
を別々に準備し;
b)組成物(i)及び(ii)の各々を前記宿主種に別々に施す
ことによって、収量を増大する方法も包含する。
【0072】
この方法の変形において(本発明の他の方法に関連して上に開示したように)、非病原性の細菌と1種以上の活性化剤を含む組成物とを別々に宿主種に施してもよい。
【0073】
農業産物の収量を増大するための、及び植物又は宿主種の微生物により誘発されるダメージに耐える能力を増大するための上に定義された方法は、各々、微生物病原体による植物又は動物宿主種の感染症を予防及び/又は処理する方法に関連してすでに開示し記載した技術的特徴のいずれかを含み得る。
【0074】
別の局面において、本発明は、真菌、細菌及び/又はウィルス性病原体により動物種で引き起こされる感染症の予防又は処理に使用するための1種以上の非病原性細菌及び1種以上の活性化剤の混合物に関する。
【0075】
もう1つ別の局面において、本発明はまた、真菌、細菌及び/又はウィルス性病原体により植物又は動物宿主種で引き起こされる感染症の処理及び/又は予防のための、1種以上の非病原性細菌と1種以上の活性化剤との混合物の使用にも関する。
【0076】
さまざまな処理の方法に関連して上で開示され記載された技術的特徴はすべて、直前に開示された非病原性の細菌と活性化剤の混合物の使用に等しく当てはまる。
【0077】
以下、非限定的な実施例及び添付の図面を参照して本発明をさらに例証する。
【実施例】
【0078】
材料及び方法
1.非病原性細菌
a)枯草菌(Bacillus subtilis)
実施例1〜18として本明細書に報告される研究のために、市販のQST 713株を使用した。この株はBayer Corporationから2つの異なる製剤:1)Serenade(R)ASO;及び2)Cease(R)として入手した。以下に挙げる実施例のほとんどで、Serenade(R)ASOを枯草菌(Bacillus subtilis)の起源として使用した。しかし、実施例3及び11では、Cease(R)をSerenade(R)の代わりに使用した。
【0079】
b)プロバイオティック細菌
実施例19及び20として本明細書に報告される研究のために、「Jarro Dophilus」として知られている市販のプロバイオティック混合物を使用して本発明の組成物を調製した。このプロバイオティック混合物のさらなる詳細は以下の実施例19に見られる。
【0080】
2.活性化剤
数多くの候補分子の初期スクリーニングの後、次の植物化学物質を本研究の最初の部分で活性化剤として使用するために選択した:
1.スクラレオール − クラリセージ(Salvia sclarea)から抽出されたジテルペンアルコール
【0081】
【化1】
【0082】
2.ナリンギン − グレープフルーツの皮から抽出されたフラバノン−7−O−グリコシド
【0083】
【化2】
【0084】
3.ノートカトン − セスキテルペン − オレンジの皮から抽出
【0085】
【化3】
【0086】
4.ステビオールグリコシド − ステビア(Stevia rebaudiana)から抽出
【0087】
【化4】
【0088】
5.CBD − カンナビジオール − 大麻から抽出
【0089】
【化5】
【0090】
5種以下のこれらの物質の組合せの枯草菌(B.subtilis)に対する活性化剤としての初期試験の後、以下の実施例4及び5に記載するように追加の薬草物質の効能も検討した。
【0091】
[実施例1]
枯草菌(Bacillus subtilis)に対する活性化剤としての使用可能性のための植物化学物質の初期スクリーニング
序:
キュウリ(Cucumis sativus L)実生は発芽過程中実生を攻撃する真菌及び細菌病原体に極めて感染しやすく、したがって枯草菌(Bacillus subtilis)及びその活性化を引き起こすことができる植物化学物質をスクリーニングし較正するためにモデル植物として選択した。
【0092】
材料及び方法:
1.植物化学物質のスクリーニング:
潜在的な植物化学物質を、ペトリ皿中の30ccのグルコース50%V/V基質、10ccの真菌病原体カクテル及び10ccの細菌病原体カクテルの混合物に加えた。真菌カクテルは、灰色かび病(Botrytis cinerea)、紋枯病菌(Rhizoctonia solani)、ピシウム属菌(Pythium spp.)及びトマトの発酵に使用される非病原性菌類を含有していた。細菌カクテルは、トマトかいよう病菌(Clavibacter michiganensis)、カンキツかいよう病菌(Xanthomonas campestris)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)及びトマトの発酵に使用される非病原性細菌を含有していた。
【0093】
およそ1000の潜在的な植物化学物質を、枯草菌(Bacillus subtilis)を活性化する能力に関して、各々の試験に対するコロニー形成インデックス(0=コロニーなし;5=最大のコロニーサイズ)を計算することによってスクリーニングした。試験したおよそ1000の植物化学物質から、枯草菌(Bacillus subtilis)に対する活性化剤としての優れた性能に基づいて、実施例の欄の序で掲げた5種の植物化学物質を選択した。
【0094】
以下に報告される研究で使用される宿主生物の各々に対して、上に掲げた5種の選択された活性化剤の最適な組合せ及び濃度を決定した。選択された組合せは、予備的な研究において、所望の保護効果を生成することができる可能な最低の濃度を有することが判明したものであった。このようにして、これらの作用物質の宿主生物への施用中の可能な副作用及び環境汚染を回避した。
【0095】
同時に、植物化学物質を、細菌及び真菌病原体のカクテルを排除する能力に関してスクリーニングした。さまざまな処理間の比較の目的で、真菌及び細菌の排除インデックスを計算した(0=最大の排除、5=排除なし)。
【0096】
上に述べたグルコース基質並びに真菌及び細菌カクテルを5種全ての活性化剤植物化学物質並びに浸透剤(DMSO)及び溶剤(Triton)と共に含有する試験混合物を、4つの異なる濃度:すなわち濃度1、2、3及び4で使用した。各々の場合において、同量のグルコース基質並びに真菌及び細菌カクテル30mlを混合物に加えた。同様に、DMSO(0.5%v/v)及びTriton(0.02%v/v)の濃度は全ての混合物で同じであった。しかし、枯草菌(Bacillus subtilis)及び5種の活性化剤の各々の濃度(v/v%)は表Iに記載するように各々の試験混合物で異なっていた。
【0097】
【表2】
【0098】
5種の活性化剤のいくつか又は全ての異なる組合せを含有するさまざまな異なる試験混合物を下記表IIに挙げる処理のリストに従ってこの研究に使用した。各々の場合、活性化剤、枯草菌(Bacillus subtilis)及び基質は表Iに示した濃度で使用した。例えば、濃度1で試験したとき活性化剤を含有する試験混合物中のスクラレオールの濃度は0.1%であったが、濃度2で試験したときスクラレオールは0.2%の濃度で存在していた、などである。
【0099】
【表3】
【0100】
結果:
予備的な結果は、最適な抗真菌及び抗細菌活性は濃度2及び濃度3(上記表I参照)の試験混合物で得られたことを示していた。枯草菌(Bacillus subtilis)のコロニー発生は濃度3を用いて最適であったので、これが残りの研究で使用するために選択された濃度であった。試験した濃度3で真菌排除、細菌排除及び枯草菌(Bacillus subtilis)活性化(コロニーサイズ)に関して得られた結果をそれぞれ図1のグラフの前列、中央及び後列に要約して示す。上記表IIに要約した11の異なる処理に、グラフのX軸に沿ってT1〜T11と名前を付けて示す。
【0101】
すでに説明したように、抗真菌、抗細菌及び活性化特性を評価するために使用した3つの半定量的なインデックスは次の通り:
真菌インデックス:0(発生なし)〜5(最大の発生)
細菌インデックス:0(発生なし)〜5(最大の発生)
B.sインデックス(コロニー形成インデックス):0(発生なし)〜5(最大の発生)。
【0102】
図1から分かるように、最良の結果、すなわち枯草菌(Bacillus subtilis)活性化及び病原体排除の両方は(上記表IIに示されているように)5種の活性化剤全ての組合せを使用した処理11を用いて得られた。
【0103】
追加の実験(16の異なる作用物質混合物を試験した)の結果を次の表に示す:
【0104】
【表4】
【0105】
混合物12〜16で得られた結果は特に興味深い:これらの混合物は枯草菌(B.subtilis)を全く含有せず、この試験系での病原菌に対する活性の完全な欠如は、明らかに、活性化剤単独が(5種全ての活性化剤の混合物を含む場合、すなわち表IIaの試験混合物12でも)不活性であることを示している。このように、所望の抗菌効果を得るためには活性化剤と枯草菌(B.subtilis)(又は別の非病原性の細菌種)の両方の存在が必要とされる。さらに、この特定の効果、すなわち、活性化剤単独、すなわち枯草菌(B.subtilis)又は他の非病原性の細菌の不在下での活性の欠如は以下に報告する研究の全てで見られた(データは示さない)ことに留意されたい。
【0106】
[実施例2]
活性化剤組成物の変更による、枯草菌(Bacillus subtilis)の活性化並びに前記組成物の殺真菌及び殺細菌活性に対する効果
第2群の研究は、5種全ての成分の組合せから1つの植物化学物質を削除することか又は混合物中の1つ若しくは2つの成分の濃度を選択的に変更することの効果を試験することを目的とした。
【0107】
材料及び方法:
実施例1と同様
さまざまな試験混合物を濃度3又は濃度4(上記実施例1に規定した通り)で使用した。これらの試験混合物の各々の組成を次の2つの表に要約して示す:
【0108】
【表5】
【0109】
【表6】
【0110】
結果:
図2に見ることができるように、濃度3で使用した3又は4種の活性化剤を含有する全ての試験混合物が、培地のみ及び培地+枯草菌(Bacillus subtilis)のコントロール(それぞれ混合物1及び2)と比較したとき、真菌及び細菌インデックスの有意な低減(それぞれ上及び中央のグラフ)並びに枯草菌(Bacillus subtilis)活性化インデックスの有意な増大(下のグラフ)を引き起こした。
【0111】
同様に、図3に示されているように、濃度4で使用した3又は4種の活性化剤を含有する全ての試験混合物が、培地のみ及び培地+枯草菌(Bacillus subtilis)のコントロール(それぞれ混合物1及び2)と比較したとき、真菌及び細菌インデックスの有意な低減(それぞれ上及び中央のグラフ)並びに枯草菌(Bacillus subtilis)活性化インデックスの有意な増大(下のグラフ)を引き起こした。
【0112】
また、図2で観察できるように、ノートカトン及びステビア成分が両方とも高まった濃度(すなわち濃度4、一方他の全ての成分は濃度3;すなわち試験混合物8)である5成分の活性化剤混合物は3つの全てのインデックスで最大の活性を有する。
【0113】
また、図3は、ナリンギン濃度が濃度3に低下し、他の全ての成分が濃度4である4成分活性化剤混合物(番号7)が、3つの全てのインデックスにより測定したこのデータセットで最大の活性を有することを示している。
【0114】
これらのデータは、最大の5種より少ない活性化剤を含有する混合物を使用して真菌又は細菌の攻撃から宿主生物を保護することができるということを示している。加えて、これらの結果はまた、混合物の最適化が混合物中の1種以上の個々の活性化剤の濃度を操作することによって得ることができることも示している。
【0115】
[実施例3]
異なる枯草菌(Bacillus subtilis)製剤と組み合わせたさまざまな活性化剤組成物の殺真菌及び殺細菌活性
この研究では、上記実施例2で行った実験を、異なる枯草菌(B.subtilis)製剤を用いて繰り返した。
【0116】
材料及び方法:
実施例1と同様。
【0117】
さまざまな試験混合物を濃度3又は濃度4(上記実施例1で規定した通り)で使用した。これらの試験混合物の各々の組成は上記実施例2の表III及びIVに要約して示した。
【0118】
結果:
この研究は実施例2で得られた結果を裏付ける。すなわち、図4(濃度3)及び図5(濃度4)で見られるように、3、4又は5種の活性化剤を濃度3で含有する全ての試験混合物は、真菌及び細菌インデックスの顕著な低減(それぞれ上及び中央のグラフ)を引き起こした。また、枯草菌(Bacillus subtilis)活性化インデックスの有意な増大(下のグラフ)も引き起こした。
【0119】
(実施例2でSerenade(R)製剤を用いて報告された研究の場合と同様に)、濃度3で、ノートカトン及びステビア成分が両方とも高まった濃度(すなわち濃度4、一方他の全ての成分は濃度3;すなわち試験混合物8)である5成分の活性化剤混合物が3つすべてのインデックスで最大の活性を有することは特に注目すべきである(図4)。同様に、図5に示されているように、ナリンギン濃度が濃度3に低下し、他の全ての成分が濃度4である4成分の活性化剤混合物(番号7)は、3つすべてのインデックスで測定したこのデータセットで最大の活性を示した。
【0120】
Cease(R)枯草菌(Bacillus subtilis)製剤で得られたこれらの結果はSerenade(R)製剤で得られた知見(上記実施例2)を裏付けており、観察された効果がいずれか1つの特定の枯草菌(Bacillus subtilis)製剤に特有のものではないことを示している。
【0121】
[実施例4]
本発明で使用した作用物質の抗炎症活性
上記実施例1〜3で報告された枯草菌(Bacillus subtilis)と5種の活性化剤のいくつか又は全てとの組合せで得られた結果の後、殺細菌、殺真菌及び枯草菌(B.subtilis)活性化能に加えて共通の機能特性を探すために前記作用物質を検討した。
【0122】
一連の予備的な研究の後、本発明者は、意外なことに、上に記載した研究で試験した5種の活性化剤の各々が極めて強力な抗炎症活性も共有することを見出した。
【0123】
これをさらに検討するために、先の実施例で使用した活性化剤の3つを、別々に、互いに組み合わせて、そして枯草菌(Bacillus subtilis)と組み合わせて、培養したマクロファージ株で2つの重要な炎症性阻害剤:一酸化窒素(NO)及びTNF−αのインビトロ生産を阻害する能力に関して試験した。加えて、マクロファージの生存能力を、抗炎症性アッセイを実施した時NO及びTNF−αの阻害に対応する適当なIC50値で測定した。
【0124】
方法:
RAW 264.7マクロファージ細胞株:
RAW 264.7マクロファージを、標準の増殖培地(5%FBS、抗生物質及びグルタミンを補充したDMEM)を用いて平底フラスコで増殖させた。細胞を当技術分野で周知の標準の手順に従って維持した。細胞がコンフルエンスに達した後、機械的な手段を用いてフラスコから取り出し、次いで遠心により濃縮し、少量の新鮮な培養培地に再懸濁した。細胞濃度を増殖培地で調節して、96ウェルプレートの各々のウェルに約75,000細胞を加えることができるようにした。25μg/mLのLPS及び10U/mlのIFN−γ DMEMの組合せをマクロファージの活性化に使用した。活性化の1時間前にさまざまな試験物質をウェルに加えた。次に、細胞をさらに24時間インキュベートした後、炎症性メディエイター生産及び細胞生存能力をアッセイした。
【0125】
細胞生存能力の決定:
100μLの10%Alamar Blue溶液を各々のウェルに加え、37℃で1〜2時間インキュベートすることによって生存能力のAlamar Blueアッセイを行った。蛍光を測定し(励起545nm、発光595nm)、未処理コントロール細胞の値に対する百分率として表した。
【0126】
Griessアッセイによる一酸化窒素生産の決定:
さまざまな処理に付したマクロファージによるNOの生産を、Griess試薬(等容量の1%スルファニルアミド及び0.1%ナフチルエチレンジアミン(napthyethylene−diamine)、5%HCl中)を用いてアッセイした。各々の試験ウェルの上清70μLを新鮮な96ウェルプレートに移し、70μLのGriess試薬と混合し、生成したすみれ色を540nmで測定した。
【0127】
ELISAによるTNF−αの決定:
サンドイッチELISAを使用してTNF−α濃度を決定した。一次抗体はPBS中0.5μg/mLの濃度で使用した。希釈剤(0.05%Tween−20、0.1%BSA、PBS中)中TNF−α標準0〜1000pg/mLの連続希釈を内部標準として使用した。TNF−αはビオチニル化された第二抗体及び検出試薬としてのTMBとのアビジンペルオキシダーゼコンジュゲートを用いて検出した。発色を655nmでモニターし、5分毎に読み取った。25分後、0.5M硫酸を用いて反応を停止させ、吸光度を450nmで測定した。
【0128】
試験した作用物質:
上に記載した方法を使用して、スクラレオール、ナリンギン及びステビオール、及びそれらの互いの並びに枯草菌(Bacillus subtilis)との組合せの、NO及びTNF−α生産、並びに細胞生存能力に対する効果を決定した。抗炎症活性の結果を、NO及びTNF−α生産の阻害に対するIC50値として、下記表Vに細胞生存能力の結果と共に示す。加えて、科学文献(A.S. Ravipati et al. (2012) BMC Complementary and Alternative Medicine, 12:173 ″Antioxidant and anti−inflammatory activities of selected Chinese medicinal plants and their relation with antioxidant content″)から得られた、2つの追加の植物種、すなわち、シオン(Aster tataricus)及びハマスゲ(Cyperus rotundus)の水性抽出物に関する同等な結果を表の最後に示す。これら2つの種の抽出物は、本発明者により、枯草菌(B.subtilis)と組み合わせたその殺真菌及び殺細菌効果に関して研究された。これらの研究の結果は以下の実施例5に示す。
【0129】
結果:
さまざまな作用物質で処理した培養マクロファージの抗炎症性及び生存能力アッセイに対して得られた結果を以下の表Vに示す。
【0130】
【表7】
【0131】
試験した処理剤のいずれもマクロファージの生存能力に対して有意な副作用をもっていなかったようである。よって、これらの作用物質により引き起こされた2つの炎症性メディエイターの生産のいかなる阻害も一般的な細胞毒性の影響の結果ではなかった。
【0132】
この表から、別々に使用したとき、3つの作用物質スクラレオール、ナリンギン及びステビオールのNO阻害に対するIC50がそれぞれ0.04、0.04及び0.02であることに留意するべきである。また、互いに組み合わせて使用したとき、前記組合せはさらにより強力であり、NO阻害に対するIC50は枯草菌(B.subtilis)の不在下で0.004、枯草菌(B.subtilis)の存在下で0.001である。これらの結果をA.S.Ravipatiら(2012)による上述の論文に公表された44の選択された植物抽出物のNO阻害に対する同等なIC50値と比較すると、スクラレオール、ナリンギン及びステビオールの値は前記論文の値の範囲(0.03〜1.49)の下の方にあり、1つの場合(ステビオール)にはその範囲の最下限を超えることが分かる。同様に、スクラレオール、ナリンギン及びステビオールの平均値を論文に報告された44の植物に対する値と比較すると、前者(0.03)が前記公表された値から引き出された平均(0.26)よりずっと低いことが注目され得る。
【0133】
また、別々に試験したときスクラレオール、ナリンギン及びステビオールによるTNF−αの阻害に関しても、A.S.Ravipatiら(2012)により公表された44の植物抽出物に対する結果(範囲=0.07〜2.5;平均=1.04)と比較して、それぞれ0.08、0.09及び0.08のIC50値(範囲=0.08〜0.09;平均=0.083)であり、同様な結論が引き出され得る。
【0134】
このように、上記実施例1〜3で選択し試験した3つの作用物質は、いずれも抗炎症活性を有しており、NO及びTNF−α阻害に関して、漢方薬に一般に使用される44種の薬草抽出物の組(A.S.Ravipatiら(2012))のほとんどより強力である(すなわち、より低いIC50を有する)と結論することができる。
【0135】
さらに、興味のあることに、表Vから、効力がより弱い抗炎症性の植物抽出物(例えばシオン(Aster tataricus)、ハマスゲ(Cyperus rotundus)、キキョウ(Platycodon grandiflorus)及びタイリントキソウ(Pleione bulbocadioides))の場合であっても、前記抽出物はまた(以下の実施例5に示されるように)抗真菌及び抗細菌活性に関して枯草菌(Bacillus subtilis)に対する活性化剤として有効であることに注意するべきである。
【0136】
[実施例5]
2つの異なる植物抽出物と枯草菌(Bacillus subtilis)の組合せの殺真菌及び殺細菌活性
抗炎症特性を有する2つの植物シオン(Aster tataricus)及びハマスゲ(Cyperus rotundus)の抽出物が枯草菌(Bacillus subtilis)の殺真菌及び殺細菌活性に対する強力な効果を有する可能性を検討した。
【0137】
方法:
抗真菌及び抗細菌特性をアッセイするために上記実施例1で使用したのと同じ方法をこの研究で枯草菌(Bacillus subtilis)とシオン(Aster tataricus)及びハマスゲ(Cyperus rotundus)の水性抽出物との組合せに応用した。下記表VIに要約するように、2つの異なる濃度の抽出物及び枯草菌(B.subtilis)懸濁液を使用した。
【0138】
【表8】
【0139】
抽出物と枯草菌(B.subtilis)懸濁液のさまざまな組合せを調製し、表VIIに示すスキームに従って試験した。これらの組合せの全てを濃度3及び濃度4の両方で試験した。
【0140】
【表9】
【0141】
結果:
図6は、表VIIの組合せを濃度3で用いて得られた結果をグラフで示す。上のグラフから分かるように、試験した組合せの全てが殺真菌活性を示し、この点に関して最も有効な組合せが組合せ5、すなわち枯草菌(B.subtilis)とハマスゲ(Cyperus rotundus)の抽出物の組合せであった。図7の上のグラフに示されているように、同様な結果が濃度4で得られる。しかしながら、この場合は枯草菌(B.subtilis)とシオン(Aster tataricus)の組合せも同様な結果を生じた。殺細菌活性に関しては、図6の中央のグラフが示すように、濃度3で、試験した全ての組合せのうち枯草菌(B.subtilis)とハマスゲ(Cyperus rotundus)の組合せが細菌細胞の数の最も大きい低減を引き起こす。しかし、濃度4のデータに関しては、図7の中央のグラフに示されている殺細菌性研究の結果は、上で述べた濃度4の殺真菌データの場合と同様に、枯草菌(B.subtilis)と二成分の植物抽出物の両方の組合せが最も大きい殺細菌効果を生じたことを示している。
【0142】
最後に、枯草菌(B.subtilis)の活性化に関しては、図6及び図7の両方の下のグラフから明らかなように、二成分の植物抽出物と枯草菌(B.subtilis)の組合せの各々が最大の効果を示す。
【0143】
この予備的な研究から、抗炎症特性を有する2つの植物の水性抽出物は枯草菌(Bacillus subtilis)の活性化剤として機能し、その抗細菌及び抗真菌活性を増大させると結論できる。
【0144】
[実施例6]
キュウリ実生の接種
方法:
活性化剤、枯草菌(Bacillus subtilis)及び追加の成分(上記実施例1の表I及びIIに記載した細菌及び/又は真菌カクテルを含む)の各々の混合物10ccを関連のペトリ皿からサンプリングし、播種10時間後の発芽キュウリ種子の4つの複製物(replicate)に注入した。
【0145】
処理の5日後半定量的接種インデックス(0=健康、5=死)を用いて各々の植物の健康状態を評価した。
【0146】
結果
この研究の結果を図8にグラフで示す。ここで、4つの別々のグラフは(上から下に)活性化剤を濃度1、2、3及び4で用いて得られたデータを要約して示す。
【0147】
図8の最初の(上の)グラフから分かるように、処理プロトコルのいずれも、最低の濃度(濃度1)で使用したとき、植物を微生物感染から保護することができなかった(全ての処理に対して接種インデックス5)。
【0148】
図8の第2のグラフが示しているように、このシリーズで次に高い濃度(濃度2)では、活性化剤混合物6〜11は全てキュウリ植物を真菌及び細菌の感染症から完全に保護する。図8の第3のグラフに示されているように、作用物質を濃度3で使用したときも同様な結果が見られた。
【0149】
最も高い濃度(濃度4;図8の最後のグラフ)では、活性化混合物5〜11で保護効果が見られる。
【0150】
要約すると、多成分活性化剤混合物の全て、並びに1つの活性化剤のみを含有する混合物のいくつかが、濃度2〜4で使用したときインビボでキュウリ植物を保護するのに有効であった。この研究で得られた半定量的なデータはさまざまな処理に付された植物の外観と非常に良く相関している。
【0151】
[実施例7]
トマト実生の接種
方法:
上記実施例6と同様にして、枯草菌(Bacillus subtilis)及びさまざまな組合せの活性化性植物化学物質を含有する試験混合物をトマト実生に接種した。しかし、使用したさまざまな試験混合物の組成及び濃度は実施例6と異なっており、次の2つの表に要約して示す(濃度は全て%v/vである):
【0152】
【表10】
【0153】
加えて、混合物は全て浸透剤(DMSO)を濃度0.5%v/vで、溶剤(Triton)を濃度0.02%v/vで含有していた。
【0154】
【表11】
【0155】
結果
この接種研究の結果を図9にグラフで要約して示す。この図から分かるように、濃度2(上のグラフ)では、試験混合物6のみがトマト植物のほぼ最大の保護を生じた。しかし、濃度3及び4(それぞれ中央及び下のグラフ)では、両方の処理6及び7で最大の保護が得られた。
【0156】
[実施例8]
トマト植物−野外研究
序:
イスラエルでトマトが成長する主要な地方は国の南西部である。一昨年、この地方はトマトモザイクウィルス(ToMV)の新しい攻撃性の株にひどく感染した。このウィルスが植物に感染し、商業的収量は通常の収量レベルの半分未満に低下した。残念ながら、遺伝的に耐性がある品種はまだ存在していなかった。現在開示されている方法がToMVに感染したトマト植物の生存率を増大できるかどうか評価するために前記方法を用いて野外研究を実施した。
【0157】
方法:
先の生育期にウィルスがひどく感染したトマトのネットハウスで枯草菌(Bacillus subtilis)及び活性化性植物化学物質の試験を実施した。
【0158】
使用した処理混合物は上記実施例1に記載したものと同じで、濃度2で使用した。
【0159】
使用した実施方法は次の通り:
a)噴霧;
b)噴霧及び施肥潅漑;
c)施肥潅漑;
d)未処理コントロール。
【0160】
トマト植物を南向き又は北向きの区画に定植し、各々14日毎に6、5及び4回処理した。
【0161】
結果
この研究の結果を図10にグラフで示す。この図の最初の3つのグラフは北向きの区画で成長する植物に関し、一方次の組の3つのグラフは南向きの区画で成長する植物の結果を示す。
【0162】
この図から分かるように、6回処理及び5回処理の方法(上から第1及び第2のグラフ)では両方とも、施肥潅漑(各々の組のバー5及び6)又は施肥潅漑及び噴霧の組合せ(バー3及び4)により組成物を施したとき(低下した接種インデックスにより示されるように)良好な結果が得られた。
【0163】
また、これらの結果から、これらの処理及び実施方法に対して、南向きの列のトマト植物の方が北向きの区画のものよりも反応することも分かる。
【0164】
[実施例9]
コショウ植物実生
方法:
上記実施例7に記載したトマト実生に接種するための方法と同じ方法を使用してコショウ植物実生に対する本発明の組成物の活性を試験した。処理プロトコルも、上記表V及びVIに記載されている、実施例7に使用したのと同じであった。
【0165】
結果:
コショウ植物実生の処理の結果を図11に要約して示す。上のグラフは濃度2で使用した活性化混合物の結果を示し、中央のグラフは濃度3で使用した混合物に関し、下のグラフは濃度4の混合物の結果を示す。
【0166】
これらのグラフから分かるように、濃度2で、活性化混合物5及び6は実生に対して完全な保護を示した。しかし、濃度3及び4では、活性化混合物5及び6による完全な保護に加えて、活性化混合物4がほぼ完全な保護を示した。
【0167】
[実施例10]
トウモロコシ実生接種
方法:
上記実施例7及び9に記載したトマト及びコショウ実生に接種したのと同じ方法を使用して、実施例1の表I及びIIに規定されている活性化剤混合物(4つの異なる濃度)をトウモロコシ(Zea mays ssp. Mays)に接種した。この研究に使用した処理プロトコルと先の実施例に記載したものとの唯一の違いは、使用した細菌及び真菌カクテルの組成に関連する。すなわち、この研究で、真菌カクテルはピシウム属菌(Pythium spp.)、リゾクトニア属の種(Rizoctonia spp.)及びペニシリウム・オキサリクム(Penicilium oxalicum)を含んでいたが、細菌カクテルは黒脚病菌(Erwinia chrysanthemi)、エルウィニア・ディソルベンス(Erwinia dissolvens)及びエンテロバクター・ディソルベンス(Enterobacter dissolvens)を含有していた。
【0168】
結果:
この接種研究の結果を図12にグラフを用いて要約して示すが、4つのグラフは濃度1、2、3及び4(降順)で使用した11の活性化混合物に対する結果を示す。
【0169】
これらのグラフから分かるように、真菌及び細菌の感染に対する最良の保護が濃度2、3及び4で使用したときの活性化混合物11で得られた。
【0170】
[実施例11]
コムギ実生
方法:
上記実施例7及び9に記載した、トマト及びコショウ実生に接種したのと同じ方法を使用して実施例1の表I及びIIに規定した活性化剤混合物(4つの異なる濃度)をコムギ実生(Triticum aestivum)に接種した。この研究で使用した処理プロトコルと先の実施例に記載したものとの唯一の違いは使用した細菌及び真菌カクテルの組成に関する。すなわち、この研究では、真菌カクテルはリゾクトニア・ソラニ(Rizoctonia solani)、ピシウム・グラミニコラ(Pythium graminicola)、及びピシウム・ミリオチルム(Pythium myriotylum)を含んでおり、細菌カクテルはシュードモナス・シリガエ(Pseudomonas syrigae)、カンキツかいよう病菌(Xanthomonas campestris)、及びタマネギ腐敗病菌(Erwinia rhapontici)を含有していた。
【0171】
結果:
この接種研究の結果を図13にグラフにより要約して示すが、4つのグラフは濃度1、2、3及び4(降順)で使用した11の活性化混合物に対する結果を示す。
【0172】
これらのグラフから分かるように、真菌及び細菌の感染に対する最良の保護は濃度2、3及び4で使用したときの活性化混合物11、並びに濃度3及び4で使用したときの活性化混合物10で得られた。
【0173】
[実施例12]
イネ実生
方法:
上記実施例7及び9に記載したトマト及びコショウ実生に接種したのと同じ方法を使用して、実施例1の表I及びIIに規定した活性化剤混合物(4つの異なる濃度)をイネ実生(Oryza sativa)に接種した。この研究で使用した処理プロトコルと先の実施例に記載したものとの唯一の違いは使用した細菌及び真菌カクテルの組成に関する。すなわち、この研究では、真菌カクテルはピシウム・スピノスム(Pythium spinosum)、リゾクトニア・ソラニ(Rizoctonia solani)、ピシウム・ディソトクム(Pythium dissotocum)を含んでおり、細菌カクテルはイネ白葉枯病菌(Xanthomonas campestris pv. Oryzae)及び黒脚病菌(Erwinia chrisantemi)を含有していた。
【0174】
結果:
この接種研究の結果を図14にグラフを用いて要約して示すが、4つのグラフは濃度1、2、3及び4(降順)で使用した11の活性化混合物の結果を示す。
【0175】
これらのグラフから分かるように、真菌及び細菌の感染に対する最良の保護は、試験した4つの全ての濃度の活性化混合物11で、濃度3及び4で使用したときの混合物10で、濃度3及び4の混合物9で、そして濃度4使用したときのみの活性化混合物8で得られた。
【0176】
[実施例13]
ヒヨコマメ−野外研究
方法:
野外試験は2015年10月9日イスラエルのNahalalで重粘土に播種した。
【0177】
イスラエルのヒヨコマメ(Cicer arietinum L)の通常の播種期は、主として2つの主要な病原体アスコキタ・ラビエイ(Ascochyta rabiei)及びフザリウム・オキシスポルムf.sp.シセロ(Fusarium oxysporum f. sp. cicero)のため、2月の初めである。
【0178】
存在する品種はこれらの病原体に対して軽度の耐性を有しているが、イスラエルの冬を越すことができない。
【0179】
この試験用に選んだ畑は過去フザリウム(Fusarium)のひどい被害を受けたことがあった。
【0180】
2016年2月16日以前畑を処理しなかったので、畑全体にわたって2つの病原体の両方の重い症状が観察された。
【0181】
2016年2月16日、最初の処理を施した。
【0182】
4つのヒヨコマメ品種1、11、12、及び13を試験に含め、各々の品種の植物を3つの異なるプロトコル、すなわち、2つの異なる処理プロトコル(赤色及び青色プロトコル;下記表X参照)及び未処理コントロールプロトコルの1つに供した。
【0183】
【表12】
【0184】
次のいろいろな施用手順を使用して処理及びコントロールプロトコルにより植物を処理した。
1.2016年2月16日、1回の噴霧
2.2016年2月16日、1回の施肥潅漑
3.2016年2月16日、1回の噴霧+施肥潅漑
4.2016年2月16日及び2016年3月1日、2回の噴霧+施肥潅漑。
【0185】
さまざまな処理の成功又はその他を、各々の処理地域の収量を測定し、次いでその重量をKg/ドゥナム(1000m)に外挿することによって決定した。
【0186】
結果
さまざまな処理の結果を図15にグラフで要約して示す。この図から分かるように、ヒヨコマメの品種13は両方の活性化混合物処理(青色及び赤色プロトコル)に対して、処理を施した方法に関わらず試験した他の品種よりずっと大きな程度で反応した。すなわち、青色プロトコル及び最良の施用経路での品種13の外挿収量は684kgである。
【0187】
この収量はコントロールより4.2倍大きく、イスラエルで期待される最良の商業的収量レベルの2倍を超えることに注意されたい。
【0188】
青色プロトコルによる処理では、4ヵ月早く播種し、これらの収量結果を得ることが可能であった。
【0189】
注目するべきことに、プロトコルによる処理の頻度をチェックしたところ、最良の結果は処理の頻度が極めて集約的であったときに得られることが明らかになって来た。これは、本発明の組成物は、徐放及び/又は制御放出膜を介して施用して一定のレベルの前記組成物に宿主種を曝露するのが有利であり得ることを示唆している。この可能性をさらに検討したが、その結果は以下に示す(実施例18)。
【0190】
[実施例14]
ヒト被験者における虫歯に関連する細菌病原体のインビトロ研究
序:
この予備的な研究では、ヒト被験者において虫歯の発生に関係するとされている2つの細菌種に対する本発明の組成物の効果をインビトロで試験した:
1.ソブリヌス菌(Streptococcus sobrinus)
2.ラクトバチルス(Lactobacilli)。
【0191】
口腔内にあるとき、これらの細菌はその栄養を主に摂取したショ糖から引き出す。よって、本インビトロ研究のため、ショ糖も増殖基質として使用した。
【0192】
方法:
さまざまな処理間の比較の目的で接種インデックスを計算した(0=最大の排除、5=排除なし)。
【0193】
50%v/vショ糖に懸濁した、30mlの試験する細菌を5種全ての活性化性植物化学物質並びに浸透剤(DMSO)及び溶剤(Triton)と共に含有する試験混合物を、4つの異なる濃度:濃度1、2、3及び4で使用した。各々の場合に、同量の細菌懸濁液30mlを混合物に加えた。同様に、DMSO(0.5%v/v)及びTriton(0.02%v/v)の濃度は全ての混合物で同じであった。しかし、枯草菌(Bacillus subtilis)及び5種の活性化剤の各々の濃度(v/v%)は、上記実施例1の表Iに記載したように各々の試験混合物で異なっていた。
【0194】
5種の活性化剤のいくつか又は全ての異なる組合せを含有するさまざまな試験混合物を下記表XIに挙げるリストの処理に従ってこの研究に使用した。
【0195】
【表13】
【0196】
結果:
試験細菌ソブリヌス菌(Streptococcus sobrinus)で得られた結果を図16に示し、ラクトバチルス(Lactobacilli)で得られた対応する結果を図17に示す。
【0197】
使用する濃度に関わらず活性化混合物6を使用したときに(ソブリヌス菌(Streptococcus sobrinus)及びラクトバチルス(Lactobacilli)の両方で)細菌のほぼ完全な排除が見られる。加えて、混合物5を濃度2、3又は4で使用したときにほぼ最大の排除が観察される。この後者の結果は、混合物5中に存在しない植物化学物質CBDがこの研究で試験した2つのう蝕原性細菌種のいずれかに感染させたときに観察された保護効果を得るのに本質的ではないことを示唆しているであろう。しかし、5種全ての植物化学物質を含有する(すなわちCBDを含む)混合物6はより一貫した結果を保証することが可能である。
【0198】
[実施例15]
カンキツグリーニング病菌(Candidatus liberibacter)による感染症に対してニンジンを保護するための本発明の組成物を用いた予備的な野外試験
序:
カンキツグリーニング病菌(Candidatus liberibacter)はリゾビウム科(hizobiaceae family)のグラム陰性菌の属である。今までのところこれらの細菌を培養維持することは可能ではなく、その検出及び定量化は通常特異的プライマーによるその16SrRNA遺伝子のPCR増幅を用いて達成される。属のメンバーは主としてキジラミにより伝染する植物病原体である。
【0199】
これらの細菌はニンジン及び柑橘類(グリーニング病)に感染することができ、その際に重要な商業的ダメージを引き起こし得る。
【0200】
この研究の目的は、枯草菌(B.subtilis)と活性化剤の組合せを含む本発明の組成物が全生育期間中ニンジン植物を保護することができるかどうか検討することであった。
【0201】
材料及び方法:
パーライト顆粒を、枯草菌(B.subtilis)と活性化剤の組合せを含有する製剤に浸し、次いで徐放性ポリマーで被覆した。
【0202】
顆粒を蒔き溝の底に蒔き、播種後、植物及びニンジンをカンキツグリーニング病菌(Candidatus liberibacter)による感染症の症状の発生に関してモニターした。
【0203】
試験プロトコルの詳細は次の通り:
1.播種は2017年2月8日193cmの床に付き3つの三つ組列で行った。
2.試験区域を完全な発芽までAgrinet網で覆った。
3.潅漑はミニスプリンクラーを用いて4qm/dで行った。
a)発芽中は70%ペンマン(penman)を毎日。
b)発芽後は90%ペンマンを4日毎。
4.肥料:試験の月2及び3の間:窒素10単位。
5.殺菌剤:10日毎、Polar(Amiran K Ltd., Nairobi、ケニア)、Shavit(Adama Ltd.、イスラエル)、及びAmi−oz.)を用いたうどん粉病(Oidium and Oidiopsis)白カビに対する処理
6.除草剤:
a)発芽前
b)葉が閉じる前(Before the foliage closes)。
7.ニンジンハエ媒介生物であるニンジンサビバエ(Psila rosae)に対する処理は作物に行わなかった。
【0204】
使用したトライアルマップを図18に示す。このフィールドマップに示されているように、2つの異なる処理(T1及びT2)及びコントロール群を使用した。各々の試験処理は以下の2つの異なる種類のパーライト顆粒の施用からなっていた。
a)活性化剤の乳化した混合物に浸した顆粒、この混合物は表XIIに示す活性化剤を含んでいた:
【0205】
【表14】
【0206】
次いで、浸した顆粒を乾燥し、(噴霧により)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)制御放出ポリマーで被覆する。2つの異なる処理(T1及びT2)は調製した顆粒のポリマー濃度の点で異なる:
T1:10%(w/w)
T2:20%(w/w)
【0207】
b)枯草菌(B.subtilis)(500mlの水中に混合した1.25gのSerenade(R)粉末)に浸した顆粒。乾燥した後、顆粒を上に記載した活性化剤を含有する顆粒と同じ制御放出ポリマーで噴霧被覆する。使用した2つの処理方法の各々で、枯草菌(B.subtilis)顆粒は次のポリマー濃度を有していた:
T1:5%(w/w)
T2:10%(w/w)
【0208】
各々の処理列に、活性化剤を含有する顆粒を20個、及び枯草菌(B.subtilis)を含有する20の顆粒(それぞれ上記(a)及び(b))を各々の1mの列に3つずつ加えた(すなわち各顆粒タイプを20×3=60個)。
【0209】
野外研究で使用したさまざまな処理を表XIIIに要約して示す:
【0210】
【表15】
【0211】
コントロール列は処理物質(活性化剤又は枯草菌(B.subtilis))も制御放出コーティングも含有しないパーライト顆粒で処理した。
【0212】
結果:
植物の葉と発育中のニンジンの両方の状態を試験期間中ずっとモニターした。
【0213】
葉:
播種の5ヵ月後、3つの群(コントロール、処理T1、処理T2)の各々において、カンキツグリーニング病菌(Candidatus liberibacter)の存在により悪影響を受けた植物の百分率を評価し、平均の結果を計算し、図19に示す。この図から分かるように、処理方法T2は悪影響を受けた葉をもつ植物の百分率の顕著な低下を引き起こした(コントロール植物の40.6%に対してT2群は26.1%)。この差は統計的に有意であることが判明した(p<0.05)。
【0214】
ニンジン:
カンキツグリーニング病菌(Candidatus liberibacter)感染の存在により悪影響を受けたニンジンの平均数を、3つの群の各々について計算した。図20から分かるように、影響を受けたニンジンの平均数は、T1及びT2方法の両方でコントロール群と比較して有意に低下した。
【0215】
結論:
この予備的な研究は、本発明の組成物を含有する顆粒状の製剤で成長中のニンジン植物を処理すると、カンキツグリーニング病菌(Candidatus liberibacter)感染により引き起こされた損傷を含有する植物及びニンジンの両方の数を有意に低下させることを立証している。
【0216】
[実施例16]
ミツバチの生存に対する本発明の組成物の効果の予備的な研究
序:
近年、ミツバチ(主としてセイヨウミツバチ(Apis mellifera)種)の数の劇的な減少が観察されている。農業及び園芸に関するミツバチの重要性のため、この現象(峰群崩壊症候群として知られる)は、その活動分野に厳しい結果をもたらしている。峰群崩壊症候群は、コロニーの多数の働きバチの消失により特徴付けられ、通常女王と残りの未成熟のハチの面倒を見る小数だけの看護バチと共に女王が置き去りにされる。峰群崩壊症候群の正確な原因はまだ最終的に知られていないが、ことによると(ウィルス性感染症の媒介生物として行動する)ミツバチヘギイタダニ(Varroa)のようなダニによる寄生を伴うかもしれないウィルス及び/又は菌類の感染が主要な役割を果たしている可能性がある。例えば、ミツバチヘギイタダニ(Varroa)のような破壊(destructor)ダニはミツバチコロニーに対して極めて破壊的であり、これは少なくとも部分的に、媒介され得るチヂレバネウィルス及び急性ミツバチ麻痺ウィルスを始めとするウィルスに起因することが知られている。イスラエル急性麻痺ウィルスを含めて他のウィルスもこの現象に関係している。また、ノゼマ微胞子虫(Nosema apis)及びノゼマ原虫(Nosema ceranae)のようなある種の真菌種が、峰群崩壊症候群に至る発病過程に関係している可能性があることを示す証拠もある。最後に、少なくとも1つの主要な研究によって、ウィルス性(イリドウィルス6型)及び真菌性(ノゼマ原虫(N.ceranae))の作用物質の組合せがこの現象の発症に関与している可能性があることが判明している。
【0217】
本研究において、本発明者らは、広いスペクトルの抗菌活性を有する本発明の抗菌性組成物が、ミツバチの喪失を阻止又は予防することができるのではないかと仮定した。
【0218】
方法:
この研究は、スペイン、Extremadura地方のCaminomoriscoに設置した7対のハチの巣を用いて行った。各対の1つの巣(「巣番号−A」と名付けた)を本発明の組成物で処理した。他の巣(「巣番号−B」と名付けた)は、前記組成物で処理しなかったがミツバチの巣に日常的に施される日常の慣習的維持管理処理をし続けたのでコントロールとして働かせた。
【0219】
試験巣(「A」)を処理するのに使用した組成物は次の成分を含む:
a)油相
スクラレオール98% 8.00g
ノートカトン98% 16.00g
CBD 3% 16.00g
ALDO MO、HLB=2 30.61g
MCT 68.00g
エタノール 12.25g
b)水相
Tween 80 170.10g
ナリンギン98% 8.00g
ステビア6% 14.00g
水 657.04g
(2つの相の総重量:1000g)
【0220】
2つの相を互いに混合してエマルションを形成した。
【0221】
次いで300gのエマルションを、20mlの水に懸濁した20gの枯草菌(B.subtilis)製剤Serenade(R)と共に混合した。次にさらに80mlの水を加えて、400mlの処理溶液を得た。次いでこの処理溶液を2つのロット:すなわちハチの処理用の300ml、及び幼虫の処理用の100mlに分割した。
【0222】
300mlの前記溶液をハチ飼料製剤(850mlの蜂蜜と混合した300mlの蒸留水)に加えることによって、処理溶液を巣「A」の成虫のハチに施した。
【0223】
100mlの前記溶液を幼虫飼料製剤(80gの蜂蜜中に混合した480gの花粉)に加えることによって、処理溶液を巣「A」のハチ幼虫に施した。
【0224】
各々のハチの巣は10個のトレイを含有し、各々のトレイはウェル列を備えており、そのいくつかは成虫のハチを含有し、他はハチ幼虫を含有していた。試験の初め、次にその後14、28、42及び62日目に、巣の中のハチ集団に対する処理の影響を解明するために、これらのトレイ内の成虫のハチ及び幼虫の数を評価して集団インデックスを得た。
【0225】
結果:
1対の巣(他の理由からコロニーの全てが死んだ5A及び5B)を除いて、成虫のハチ及び幼虫の数に関するデータが7対の巣から得られた。結果を図21(幼虫)及び22(成虫のハチ)に要約して示す。これらの図から分かるように、本発明の組成物による処理では(巣「A」)、未処理コントロールのハチの巣(巣「B」)よりも多数の幼虫及び成虫のハチの両方の生存が見られた。
【0226】
したがって、本発明の枯草菌(B.subtilis)及び活性化剤の混合物は、ミツバチ集団の低減を予防するか又は逆転させるのに有効であると結論できる。
【0227】
[実施例17]
牛乳中の体細胞数に対する本発明の組成物の効果
序:
牛乳の高い体細胞数は、酪農業で感染症の可能性の指標として使用されており、食品製造において消費及び使用のためのミルクとして不適格とされる。したがって高い体細胞数は牛乳生産業者にとってミルクを捨てる必要が生じる結果として直接金銭的損失を招き得る。加えて、生産者は罰金を払わなければならないこともあり得る。また、いくつかの地方では、高い体細胞数の2つの報告の結果、卸業者が影響を受けた生産者からのさらなるミルクの供給の受け取りを拒絶することがある。
【0228】
方法:
乳中に既に高まったレベルの体細胞が存在すると確認された6頭のウシを各々次の局所ゲル製剤の1つで処理した:
1.市販のクリーム製剤(イスラエルAradのSea of Spaにより製造された、コムギクリームオイルで富化されたBio Spa)中に5%水中油エマルションを含有するゲル(2頭のウシ)。
2.市販のAloe−Veraクリーム中に5%水中油エマルションを含有するゲル(2頭のウシ)。
3.製剤(1)に対するクリームのみのコントロール(1頭のウシ)。
4.製剤(2)に対するクリームのみのコントロール(1頭のウシ)。
【0229】
本発明の組成物を含有するエマルションは、別々の油相及び水相として調製し、次いでこれらを合わせた。エマルションの組成を次の表に示す:
【0230】
【表16】
【0231】
0.5gのSerenade(R)粉末を99.5gの上記エマルションに加えて処理乳剤を作り、次いでこれを上に記載した2つのクリーム製剤の各々に5%の濃度で加えた。
【0232】
処理は、搾乳の直後に5mlのゲルでウシの乳首を覆うことによって行った。
【0233】
ウシは一日二回搾乳しクリーム製剤で処理した。
【0234】
試験開始前並びに15日及び21日後分析のために体細胞サンプルを集めた。
【0235】
結果:
試験に含ませた6頭のウシの各々の乳中の体細胞の数を表XVに示す:
【0236】
【表17】
【0237】
これらの結果は、本発明の組成物で処理した4頭のウシの3頭から採った乳サンプル中の体細胞の数の劇的な減少を明らかに示している。この減少は試験の開始から21日目に特に明白であった。本発明の組成物で処理したウシの1頭では(ウシ番号989)、結果は他の3つの試験サンプルと同じような劇的な変化を示さなかったが、それでも体細胞数の有意な減少がある(出発値の約25%)。
【0238】
これらの結果が示しているように、農業で使用される畜牛及びその他の乳を生産する動物において、予防の局所処理として本発明の組成物を用いて乳中の体細胞の数を制御することができる。
【0239】
[実施例18]
野外研究:本発明の組成物によるヒヨコマメ種子の直接被覆
序:
イスラエルでのヒヨコマメ(Cicer arietinum L)の通常の播種期は、主として2つの土壌伝染性の真菌病原体アスコキタ・ラビエイ(Ascochyta rabiei)及びフザリウム・オキシスポルムf.sp.シセロ(フザリウム(Fusarium) oxysporum f. sp. cicero)に直面する問題のため2月初めである。現存するヒヨコマメの品種はこれらの病原体が存在する結果としてイスラエルの冬を越すことができない。
【0240】
この研究の目的は、本発明の組成物によるヒヨコマメ種子の直接被覆のヒヨコマメ植物の生存率に対する影響を検討することであった。
【0241】
方法:
ヒヨコマメを乳剤A(本発明の組成物−下記参照)で被覆し、その後制御放出ポリマー(E603、Sekisui Specialty Chemicals、日本)で被覆した。
【0242】
乳剤Aは次の成分から調製した:
Serenade(R) 0.021グラム
スクラレオール 0.034グラム
ナリンギン 0.034グラム
ノートカトン 0.034グラム
ステビア 0.003グラム
CBD 0.001グラム
Twin 80 0.723グラム
Polyaldo 0.130グラム
MCT 0.289グラム
ETOH 0.052グラム
水 2.929グラム
【0243】
次に、ヒヨコマメ種子(品種13、平均重量0.5g/種子)の3つの異なるロットを調製した:
ロットA:流動床塗工機を用いて、7000のヒヨコマメを1.25gの乳剤A(水で40mlに希釈)で被覆した。続いて、乳剤被覆した種子を425gのポリマーE603で被覆した。
ロットB:使用した乳剤A(水で40mlに希釈する前)の量が2.5gであった以外はロットAと同様に7000のヒヨコマメを処理した。乳剤被覆した種子をロットAと全く同じ制御放出ポリマーで被覆した。
コントロール:3000のヒヨコマメを被覆しないままとし、他にいかなる処理もしなかった。
【0244】
重粘土を含有し、イスラエルのNahalalに位置する試験区画(総面積1000平方メートル)に、2016年9月15日、上に記載した3つの異なるロットに割り当てて合計17000の品種13の種子(種子当たり平均重量0.5g)を蒔いた。この畑は、過去の経験からフザリウム(Fusarium)にひどく汚染されたことが知られていた。
【0245】
結果:
さまざまな処理の成功その他は、各々の処理区域のヒヨコマメの収量を測定し、次にその重量をKg/ドゥナム(1000m)に外挿することによって決定した。さまざまな処理の結果を次の表に要約して示す:
【0246】
【表18】
【0247】
これらの結果から分かるように、本発明の組成物及び放出制御コーティングで被覆された種子を含有するロット(すなわちロットA及びB)の両方で、未処理コントロールと比較して増大したヒヨコマメの収量が得られた。最大の収量増大は、ロットAの種子と比較して二倍の量の本発明の組成物で被覆したロットBの種子で見られた。
【0248】
これらの結果が示しているように、本発明の組成物による農業上の種子の直接被覆は、発育中の実生が病原体の土壌伝染性の微生物による感染に耐えることを可能にすることができる。この効果は用量依存的なようである。
【0249】
[実施例19]
プロバイオティック細菌の混合物と組み合わせたさまざまな活性化剤の殺真菌及び殺細菌活性
この研究では、プロバイオティック抗細菌種の混合物を1種以上の活性化剤と組み合わせて使用して、かかる種が前記活性化剤と組み合わせて、上で報告された細菌種が枯草菌(B.subtilis)であるときに本発明者により見られたのと同じ効果を有するかどうかを検討した。
【0250】
方法:
この研究では、活性化剤と組み合わせて使用する細菌混合物が、イスラエルでAltman Health Ltd.により流通させられている商業的プロバイオティック製品である「Jarro Dophilus」である。
【0251】
この製品の細菌含量は、表XVIIに示す通りである:
【0252】
【表19】
【0253】
濃度0.5%W/Wのこのプロバイオティック製品を、上に挙げた他の実施例で使用した枯草菌(B.subtilis)製剤の代わりに使用した。このプロバイオティック混合物と5種までの活性化剤との組合せを、上の実施例1に記載したようにして、先の実施例に記載したのと同じ濃度(濃度3及び4)で試験した。したがって、この研究と上記実施例1に報告したものとの唯一の違いは、枯草菌(B.subtilis)をプロバイオティック細菌の混合物に替えたことだけである。
【0254】
結果:
下記表XVIIIA−Cに見られるように、このプロバイオティック細菌の混合物を組成物の細菌成分として用いて得られた結果は、上記実施例1に報告された枯草菌(B.subtilis)を含有する混合物で得られたものと本質的に同じであった。これらの表に示す結果は、濃度4で使用した活性化剤を含有する組合せに対するものである。
【0255】
【表20】
【0256】
【表21】
【0257】
【表22】
【0258】
結論:この研究で使用したプロバイオティック細菌の混合物は、上で報告された抗菌活性の研究における枯草菌(B.subtilis)と同じように機能するように見え、したがって本発明の組成物及び方法において前記枯草菌(B.subtilis)と替えることができる。
【0259】
[実施例20]
プロバイオティック細菌の混合物と組み合わせたさまざまな活性化剤を用いたトウモロコシの実生の接種
この研究では、接種混合物(すなわち本発明の組成物)が枯草菌(B.subtilis)の代わりに実施例19に記載したプロバイオティック混合物「Jarro Dophilus」を含んでいた以外は上記実施例10に記載したのと同じようにしてトウモロコシの種子に接種した。
【0260】
結果:
次の表は、濃度4の活性化混合物で行った接種の結果を示す:
【0261】
【表23】
【0262】
これらの結果から分かるように、この研究で使用したプロバイオティック混合物は、表XIXに示されている活性化剤と組み合わせてトウモロコシ種子に施したとき、非病原性の細菌種が枯草菌(B.subtilis)であった組成物(実施例10)とほぼ同様に、かつ同じ程度に発育中のトウモロコシ実生を保護することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【国際調査報告】