特表2019-533057(P2019-533057A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-533057ガスバリア性に優れたポリアミド系複合樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-533057(P2019-533057A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】ガスバリア性に優れたポリアミド系複合樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/02 20060101AFI20191018BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20191018BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20191018BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20191018BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20191018BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20191018BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20191018BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20191018BHJP
【FI】
   C08L77/02
   C08L77/06
   C08K3/04
   C08L33/02
   C08L63/00 A
   C08K3/34
   C08L51/06
   C08J3/20 BCES
   C08J3/20CFG
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-521385(P2019-521385)
(86)(22)【出願日】2017年10月20日
(85)【翻訳文提出日】2019年4月22日
(86)【国際出願番号】KR2017011659
(87)【国際公開番号】WO2018084475
(87)【国際公開日】20180511
(31)【優先権主張番号】10-2016-0144150
(32)【優先日】2016年11月1日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】511009514
【氏名又は名称】シンイル ケミカル インダストリー カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】516079671
【氏名又は名称】コリア フュエル−テック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】ソ、クムスク
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、ドンリュル
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ボラム
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA16
4F070AB03
4F070AC04
4F070AC22
4F070AD06
4F070AE01
4F070AE06
4F070FA13
4F070FB06
4F070FC05
4J002BB09Z
4J002BH00Z
4J002CD00Z
4J002CL00W
4J002CL01W
4J002CL03X
4J002DA017
4J002DA038
4J002DJ036
4J002FA037
4J002FB086
4J002FD016
4J002FD069
4J002FD117
4J002FD118
4J002FD179
4J002FD339
4J002GG01
(57)【要約】
本発明は、ポリアミド系樹脂30〜80重量%、メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロン5〜59重量%、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物を含む熱可塑性オレフィンゴム10〜50重量%、クレイ0.5〜10重量%およびカーボンナノチューブ(CNT)0.01〜5重量%を含むポリアミド系複合樹脂組成物に関する。本発明によれば、ブロー成形が容易であり、低温衝撃および引張強度の機械的物性特性に優れていると同時に、気体遮断性を大きく向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系樹脂30〜80重量%、
メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロン5〜59重量%、
無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物を含む熱可塑性オレフィンゴム10〜50重量%、
クレイ0.5〜10重量%、および、
カーボンナノチューブ(carbon nanotube;CNT)0.01〜5重量%、を含み、
前記ポリアミド系樹脂は、相対粘度(relative viscosity;RV)が2.0〜3.4の範囲であることを特徴とする、
ポリアミド系複合樹脂組成物。
【請求項2】
導電性カーボンブラック0.01〜5重量%をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアミド系複合樹脂組成物。
【請求項3】
耐熱安定剤0.05〜2.0重量%、滑剤0.05〜3.0重量%および粘度増進剤0.05〜3.7重量%をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアミド系複合樹脂組成物。
【請求項4】
前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンは、メタ−キシレンジアミン6ナイロンを含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアミド系複合樹脂組成物。
【請求項5】
前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンは、芳香族ナイロンおよび非結晶性ナイロンの中から選ばれる1種以上をさらに含み、前記芳香族ナイロンおよび非結晶性ナイロンは、前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンに0.01〜30重量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド系複合樹脂組成物。
【請求項6】
前記クレイは、板状のモンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイトおよびバーミキュライトの中から選ばれる2種以上を混合して有機化前処理された混合クレイであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド系複合樹脂組成物。
【請求項7】
前記有機化前処理された混合クレイは、3乃至4次アンモニウムを含む有機物で前処理されたことを特徴とする請求項6に記載のポリアミド系複合樹脂組成物。
【請求項8】
前記有機物は、ビス(2−ヒドロキシ−エチル)メチルタローアンモニウム(bis(2−hydroxy−ethyl)methyl tallow ammonium)およびジメチル水素化−タローアンモニウム(dimethyl hydrogenated−tallow ammonium)の中から選ばれる1種以上のアンモニウムを含むことを特徴とする請求項7に記載のポリアミド系複合樹脂組成物。
【請求項9】
前記有機化前処理された混合クレイは、ホスホニウム、マレエート、スクシネート、アクリレート、ベンジリックハイドロジェン、ジメチルジステアリルアンモニウムおよびオキサゾリンの中から選ばれるいずれか一つ以上の官能基を含む有機物で前処理されたことを特徴とする請求項6に記載のポリアミド系複合樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリアミド系樹脂は、ポリアミド6を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアミド系複合樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリアミド系樹脂は、分子量を高めるために、マレイン酸系樹脂およびエポキシ系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂をさらに含有する樹脂であり、ポリアミド末端の−NH官能基とマレイン酸系またはエポキシ系を含む樹脂との押出反応を通じて分子量が調節されたものであり、前記マレイン酸系樹脂およびエポキシ系樹脂の中から選ばれる1種以上の樹脂は、前記ポリアミド系樹脂に0.01〜15重量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド系複合樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリアミド系樹脂は、気体遮断性を改善するために、芳香族系ナイロンを含有する樹脂であり、前記芳香族系ナイロンは、前記ポリアミド系樹脂に0.01〜15重量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド系複合樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系複合樹脂組成物に関し、より詳細には、ブロー成形が容易であり、低温衝撃および引張強度の機械的物性特性に優れていると同時に、気体遮断性を大きく向上させることができるポリアミド系複合樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、燃料注入管は、技術的改善の必要性が次第に高まっている。蒸発ガスに対する規制強化に対応する必要があり、COの規制に伴い、軽量素材使用の必要性が提起されており、バイオ燃料に対する親和性を満たす必要がある。
【0003】
プラスチック素材は、軽量素材として適しているが、バイオエタノールの添加によるガソリン燃料の構成変化によってアルコール気体に対する遮断性が問題点として強調されている。既存の燃料タンクの注入部の部品材料は、ナイロンとゴムを含んでいて、既存のガソリンに対する耐遮断性に優れているが、アルコールに対する耐遮断性は脆弱であるという短所がある。
【0004】
また、蒸発ガスに対する法規の強化によって遮断性に優れた素材の開発が要求されている。例えば、蒸発ガスは、韓国の場合、E0に対して10mg以下(F/Neck Ass’y 30mg)、ヨーロッパE10に対して100mg(EURO IV)、北米は、E10に対して2.5mg(EPA規定level III)の許容値で規制している。
【0005】
一方、ブローモールディング用樹脂として通常的に使用されるHDPE(high density polyethylene)は、燃料遮断性が68g.mm/m/dayと優れていないため、EVOH(ethylene vinyl alcohol copolymer)と多層構造を形成して使用され得る。しかしながら、多層構造を形成するためには、高価な多重押出機装備を使用しなければならず、ブロー押出性を満たす設計能力が必要であるという短所がある。
【0006】
上述した点を考慮して遮断性に優れたナイロン系樹脂を使用することができるが、ナイロン系樹脂のうちポリアミド6は、ガソリンに対する遮断性に優れているが、低温衝撃性を満たさないという短所がある。
【0007】
韓国特許登録第10−1002050号公報には、ポリオレフィン層と、遮断性樹脂/層状粘土化合物のナノ複合体連続相にポリオレフィン樹脂が分散した遮断性ナノ複合体ブレンド層を含む遮断性多層物品について開示されているが、ポリエチレン樹脂内にポリアミド分散層を製造するための特殊スクリューが必要であり、ブロー成形時にモルフォロジーを効率的に制御しにくいという短所がある。
【0008】
韓国特許公開第10−2011−0012430号公報には、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂を含む基礎樹脂と、オレフィン系オリゴマー、層状粘土化合物を含むポリアミド樹脂粘土複合体組成物に関して開示されているが、ポリアミド分散層の制御がブロー成形で非常に困難であり、ポリオレフィン樹脂内に多量の相溶化剤を添加しなければならないという短所とモルフォロジー制御の困難によってガスおよびガソリン遮断が低下するという短所がある。
【0009】
米国特許公開第2011−0217495号公報には、ポリアミド−6から構成される熱可塑性モールディング材料、ナノ充填剤、繊維状充填剤、衝撃調節剤およびポリアミド−66を含むブローモルディン素材に関して開示されているが、無機物(繊維状充填剤)の添加により衝撃低下と延伸応力の増加によって延伸性が低下して、ブロー成形性が難しいという短所がある。
【0010】
したがって、ブロー成形が容易であり、高衝撃、引張強度および気体遮断性を向上させることができる燃料タンクの注入部部品に適用可能な素材の開発が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国特許登録第10−1002050号公報
【特許文献2】韓国特許公開第10−2011−0012430号公報
【特許文献3】米国特許公開第2011−0217495号公報
【特許文献4】韓国特許登録第10−0998619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、ブロー成形が容易であり、低温衝撃および引張強度の機械的物性特性に優れたポリアミド系複合樹脂組成物を提供することにある。
【0013】
本発明が解決しようとする他の課題は、ガソリンだけでなく、ガソリンとアルコールが混合された混合燃料に対する気体遮断性を大きく向上させることができるポリアミド系複合樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ポリアミド系樹脂30〜80重量%、メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロン5〜59重量%、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物を含む熱可塑性オレフィンゴム10〜50重量%、クレイ0.5〜10重量%およびカーボンナノチューブ(CNT)0.01〜5重量%を含み、前記ポリアミド系樹脂は、相対粘度(RV)が2.0〜3.4の範囲であることを特徴とするポリアミド系複合樹脂組成物を提供する。
【0015】
前記ポリアミド系複合樹脂組成物は、導電性カーボンブラック0.01〜5重量%をさらに含むことができる。
【0016】
前記ポリアミド系複合樹脂組成物は、耐熱安定剤0.05〜2.0重量%、滑剤0.05〜3.0重量%および粘度増進剤0.05〜3.7重量%をさらに含むことができる。
【0017】
前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンは、メタ−キシレンジアミン6ナイロンを含むことができる。
【0018】
前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンは、芳香族ナイロンおよび非結晶性ナイロンの中から選ばれる1種以上をさらに含むことができ、前記芳香族ナイロンおよび非結晶性ナイロンは、前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンに0.01〜30重量%含有されていることが好ましい。
【0019】
前記クレイは、板状のモンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイトおよびバーミキュライトの中から選ばれる2種以上を混合して有機化前処理された混合クレイであることが好ましい。
【0020】
前記有機化前処理された混合クレイは、3乃至4次アンモニウムを含む有機物で前処理されたものであってもよい。前記有機物は、ビス(2−ヒドロキシ−エチル)メチルタローアンモニウム(bis(2−hydroxy−ethyl)methyl tallow ammonium)およびジメチル水素化−タローアンモニウム(dimethyl hydrogenated−tallow ammonium)の中から選ばれる1種以上のアンモニウムを含むことができる。
【0021】
前記有機化前処理された混合クレイは、ホスホニウム、マレエート、スクシネート、アクリレート、ベンジリックハイドロジェン、ジメチルジステアリルアンモニウムおよびオキサゾリンの中から選ばれるいずれか一つ以上の官能基を含む有機物で前処理されたものであってもよい。
【0022】
前記ポリアミド系樹脂は、ポリアミド6を含むことが好ましい。
【0023】
前記ポリアミド系樹脂は、分子量を高めるために、マレイン酸系樹脂およびエポキシ系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂をさらに含有する樹脂であってもよく、ポリアミド末端の−NH官能基とマレイン酸系またはエポキシ系を含む樹脂との押出反応を通じて分子量が調節されたものであり、前記マレイン酸系樹脂およびエポキシ系樹脂の中から選ばれる1種以上の樹脂は、前記ポリアミド系樹脂に0.01〜15重量%含有されていることが好ましい。
【0024】
前記ポリアミド系樹脂は、気体遮断性を改善するために、芳香族系ナイロンを含有する樹脂であってもよく、前記芳香族系ナイロンは、前記ポリアミド系樹脂に0.01〜15重量%含有されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によるポリアミド系複合樹脂組成物は、ブロー成形が容易であり、低温衝撃および引張強度の機械的物性特性に優れていると同時に、ガソリンだけでなく、ガソリンとアルコールが混合された混合燃料に対する気体遮断性を大きく向上させることができる。
【0026】
本発明によるポリアミド系複合樹脂組成物は、低温衝撃、引張強度などの機械的特性と気体遮断性が要求される燃料注入管用複合樹脂として使用が可能であるという長所がある。
【0027】
本発明の効果は、以上で言及した効果に限定されない。本発明の効果は、以下の説明で推論可能なすべての効果を含むものと理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1によって製造されたポリアミド系複合樹脂の透過電子顕微鏡(transmission electron microscope;TEM)写真である。
図2】実施例2によって製造されたポリアミド系複合樹脂の走査電子顕微鏡(scanning electron microscope;SEM)写真である。
図3】実施例2、3および比較例1によって製造されたポリアミド系複合樹脂を利用して製造された成形品の燃料残量透過度測定グラフである。
図4】気体遮断性の評価時に使用される燃料油の容器を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の好ましい実施例によるポリアミド系複合樹脂組成物は、ポリアミド(Polyamide)系樹脂30〜80重量%、メタ−キシレンジアミン(m−xylendiamine:MXD)系変性ナイロン5〜59重量%、無水マレイン酸(Maleic anhydride)がグラフト(Graft)されたエチレン−オクテン共重合体(Ethylene−octene copolymer)、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマー(Ethylene−propylene−diene−monomer)またはこれらの混合物を含む熱可塑性オレフィンゴム10〜50重量%、クレイ(clay)0.5〜10重量%およびカーボンナノチューブ(carbon nanotube;CNT)0.01〜5重量%を含み、前記ポリアミド系樹脂は、相対粘度(relative viscosity;RV)が2.0〜3.4の範囲である。
【0030】
[発明の実施のための形態]
本明細書において「含む」というのは、特別な記載がない限り、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0031】
本発明の好ましい実施例によるポリアミド系複合樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂30〜80重量%、メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロン5〜59重量%、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物を含む熱可塑性オレフィンゴム10〜50重量%、クレイ0.5〜10重量%およびカーボンナノチューブ(CNT)0.01〜5重量%を含み、前記ポリアミド系樹脂は、相対粘度(RV)が2.0〜3.4の範囲である。
【0032】
前記ポリアミド系複合樹脂組成物は、導電性カーボンブラック0.01〜5重量%をさらに含むことができる。
【0033】
前記ポリアミド系複合樹脂組成物は、耐熱安定剤0.05〜2.0重量%、滑剤0.05〜3.0重量%および粘度増進剤0.05〜3.7重量%をさらに含むことができる。
【0034】
前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンは、メタ−キシレンジアミン6ナイロンを含むことができる。
【0035】
前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンは、芳香族ナイロンおよび非結晶性ナイロンの中から選ばれる1種以上をさらに含むことができ、前記芳香族ナイロンおよび非結晶性ナイロンは、前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンに0.01〜30重量%含有されていることが好ましい。
【0036】
前記クレイは、板状のモンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイトおよびバーミキュライトの中から選ばれる2種以上を混合して有機化前処理された混合クレイであることが好ましい。
【0037】
前記有機化前処理された混合クレイは、3乃至4次アンモニウムを含む有機物で前処理されたものであってもよい。前記有機物は、ビス(2−ヒドロキシ−エチル)メチルタローアンモニウムおよびジメチル水素化−タローアンモニウムの中から選ばれる1種以上のアンモニウムを含むことができる。
【0038】
前記有機化前処理された混合クレイは、ホスホニウム、マレエート、スクシネート、アクリレート、ベンジリックハイドロジェン、ジメチルジステアリルアンモニウムおよびオキサゾリンの中から選ばれるいずれか一つ以上の官能基を含む有機物で前処理されたものであってもよい。
【0039】
前記ポリアミド系樹脂は、ポリアミド6を含むことが好ましい。
【0040】
前記ポリアミド系樹脂は、分子量を高めるために、マレイン酸系樹脂およびエポキシ系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂をさらに含有する樹脂であってもよく、ポリアミド末端の−NH官能基とマレイン酸系またはエポキシ系を含む樹脂との押出反応を通じて分子量が調節されたものであり、前記マレイン酸系樹脂およびエポキシ系樹脂の中から選ばれる1種以上の樹脂は、前記ポリアミド系樹脂に0.01〜15重量%含有されていることが好ましい。
【0041】
前記ポリアミド系樹脂は、気体遮断性を改善するために、芳香族系ナイロンを含有する樹脂であってもよく、前記芳香族系ナイロンは、前記ポリアミド系樹脂に0.01〜15重量%含有されていることが好ましい。
【0042】
以下では、本発明の好ましいシルシエによるポリアミド系複合樹脂組成物をより具体的に説明する。
【0043】
本発明の好ましい実施例によるポリアミド系複合樹脂組成物は、相対粘度(RV)が2.0〜3.4の範囲であるポリアミド系樹脂30〜80重量%、メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロン5〜59重量%、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物を含む熱可塑性オレフィンゴム10〜50重量%、クレイ0.5〜10重量%およびカーボンナノチューブ(CNT)0.01〜5重量%を含む。
【0044】
前記ポリアミド系複合樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂を含む。一般的なポリアミド樹脂は、ガラス転移温度(glass transition temperature)が47℃であり、溶融温度(melting temperature)は、220℃であり、化学式は、C11ONである。ポリアミドの非晶質の密度は、25℃で1.084g/cmであり、結晶質の密度は、25℃で1.23g/cmである。ポリアミドの反復単位(repeat unit)構造は、次の通りである。
【0045】
【0046】
前記ポリアミド系樹脂は、ポリアミド6(Polyamide 6)を含むことが好ましい。前記ポリアミド6は、ジアミンとジカルボン酸を含むナイロン6であって、特にガソリンに対する遮断性が5g.mm/m/dayと優れた方であり、機械的特性、耐化学性および耐熱性に優れた特性がある。前記ポリアミド6は、EMS社のGrivoly BRZ 350やRhodia社のTechnyl C544を使用することができる。
【0047】
前記ポリアミド系樹脂は、前記ポリアミド系複合樹脂組成物に30〜80重量%含有されることが好ましく、その含量が30重量%より少なければ、耐化学性および耐熱性改善効果が微弱になり得、80重量%より多ければ、常温衝撃性と低温衝撃性の低下とブロー成形性の低下が発生し得る。
【0048】
前記ポリアミド系樹脂の相対粘度(RV)は、2.0〜3.4の範囲であることが好ましい。前記ポリアミド系樹脂は、硫酸溶液でRV 2.0以上であるものを使用することが好ましい。RV2.0未満であるものを使用する場合、流動性の増加によって押出ブロー成形時にパリスン(Parison)で流動性の問題によってブロー成形が行われないことがあるためである。
【0049】
前記ポリアミド系樹脂は、分子量を高めるために、マレイン酸系樹脂およびエポキシ系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂をさらに含有することができる。前記マレイン酸系樹脂またはエポキシ系樹脂の添加は、ポリアミド末端の−NH官能基とマレイン酸系またはエポキシ系を含む樹脂との押出反応を通じて分子量を調節することができる。前記マレイン酸系樹脂およびエポキシ系樹脂の中から選ばれる1種以上の樹脂は、前記ポリアミド系樹脂に0.01〜15重量%含有されることが好ましい。前記マレイン酸系樹脂およびエポキシ系樹脂の中から選ばれる1種以上の樹脂の含量が0.01重量%未満の場合には、分子量調節効果が微弱であるので、粘度増進効果がないため、ブロー成形性が弱くなり、その含量が15重量%を超過すると、粘度増進効果が多すぎるため、ブロー成形が行われずに、成形性がかえって低下し得る。
【0050】
前記ポリアミド系樹脂は、気体遮断性に優れた芳香族系ナイロンを一部含有することができる。気体遮断性を改善するために、前記芳香族系ナイロンは、前記ポリアミド系樹脂に0.01〜15重量%含有されることが好ましい。前記芳香族系ナイロンの含量が0.01重量%未満の場合には、気体遮断性の改善効果が微弱になり得、前記芳香族系ナイロンの含量が15重量%を超過しても、気体遮断性の改善効果は、添加含量に比べてそれほど増加しないことがある。
【0051】
前記ポリアミド系複合樹脂組成物は、メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンを含む。前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンは、分散層を成す素材であって、275℃で測定したMI(Melting Index)が0.5である変性ナイロンであってもよく、前記ポリアミド系樹脂と混合時に、積層構造(laminar structure)形態の分散層を成して気体遮断性に優れた特性がある。このような分散層は、成形温度によって敏感に変化できるので、成形温度を275℃以下(例えば、220〜275℃)に調節することが必要である。
前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンは、メタ−キシレンジアミン6ナイロンであってもよく、芳香族ナイロンおよび非結晶性ナイロンの中から選ばれる1種以上をさらに含むことができる。前記芳香族ナイロンおよび非結晶性ナイロンは、前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンに0.01〜30重量%含有されていることが好ましい。前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンは、前記ポリアミド系複合樹脂組成物に5〜59重量%含有されることが好ましい。前記メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンの含量が5重量%より少なければ、ガソリンだけでなく、ガソリンとアルコールが混合された混合燃料に対する気体遮断性を高めるための積層構造を形成するのに脆弱であるので、気体遮断性の改善効果が微弱になり得、59重量%より多ければ、機械的特性が低下し得る。
【0052】
前記ポリアミド系複合樹脂組成物は、熱可塑性オレフィン(Thermoplastic olefin:TPO)ゴムを含む。前記熱可塑性オレフィン(TPO)ゴムは、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物を含む。無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物は、熱可塑性オレフィン(TPO)ゴムの一種である。
前記熱可塑性オレフィンゴムは、前記ポリアミド系樹脂の鎖と反応して分散性を向上させるために添加され得る。無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物は、既存のエチレン−プロピレン−ジエン−モノマー(EPDM)に比べて分散力を増加させて、孔隙のサイズを小さくする特性があるので、少ない含量で耐衝撃性を確保することができる利点があり、気体透過を防ぐ積層構造に妨害を与えないようにする長所がある。
【0053】
無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物を含む熱可塑性オレフィンゴムは、二軸圧縮機を利用して1〜10μmのサイズに分散させることができる。無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン−モノマーまたはこれらの混合物を含む熱可塑性オレフィンゴムは、前記ポリアミド系複合樹脂組成物に10〜50重量%含有されることが好ましい。具体的に前記含量が10重量%より少なければ、低温衝撃改善効果は微々たるものであり、50重量%より多ければ、耐衝撃性が良くなるが、耐衝撃性以外の物性が低下し得る。
【0054】
前記ポリアミド系複合樹脂組成物は、クレイを含む。前記クレイは、マトリックス樹脂の気体遮断性を補強する無機フィラーであって、そのサイズが0.1〜10nmの微細粒子であってもよい。前記クレイは、板状のモンモリロナイト(Montmorillonite)、ヘクトライト(hectorite)、サポナイト(saponite)またはバーミキュライト(vermiculite)であってもよく、より好ましくは、有機物で有機化前処理された板状のモンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バーミキュライトであってもよい。
【0055】
前記有機物は、3乃至4次アンモニウム(Ammonium)を含む有機物であってもよい。前記有機物は、ビス(2−ヒドロキシ−エチル)メチルタローアンモニウム(bis(2−hydroxy−ethyl)methyl tallow ammonium)およびジメチル水素化−タローアンモニウム(dimethyl hydrogenated−tallow ammonium)の中から選ばれる1種以上のアンモニウムを含むことができる。例えば、前記クレイとしてビス(2−ヒドロキシ−エチル)メチルタローアンモニウムで有機化処理されたモンモリロナイトを使用するか、ジメチル水素化−タローアンモニウムで有機化処理されたモンモリロナイトを使用することができる。
【0056】
前記有機物は、ホスホニウム(Phosphonium)、マレエート(Maleate)、スクシネート(Succinate)、アクリレート(Acrylate)、ベンジリックハイドロジェン(Benzylic hydrogen)、ジメチルジステアリルアンモニウム(Dimethyldistearyl ammonium)およびオキサゾリン(Oxazoline)の中から選ばれるいずれか一つの官能基を含む有機物であってもよい。
【0057】
前記クレイは、板状のモンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイトおよびバーミキュライトの中から選ばれる2種以上のクレイが混合された混合クレイであってもよく、より好ましくは前記クレイは、板状のモンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイトおよびバーミキュライトの中から選ばれる2種以上のクレイが混合されて有機化前処理された混合クレイであってもよい。前記有機化前処理された混合クレイは、クレイの製造時に2種以上のクレイを反応槽で混合した後、有機物で前処理して製造することができる。
【0058】
このような混合クレイは、単一のクレイより樹脂内で分散が向上して分散を助けるために、有機化前処理時に適正交換反応量より過度に処理される有機物の添加量を少なく使用することによって、ポリアミド系複合樹脂組成物において熱安定性を向上させて、ブロー成形時にガス発生の問題を解決することができる。
【0059】
前記クレイは、0.5〜10重量%を使用することができ、その含量が0.5重量%より少なければ、気体遮断性の改善効果は微々たるものであり、10重量%より多ければ、引張強度および曲げ強度の急激な上昇と伸び率の低下によって衝撃性能を低下させることができる。
【0060】
前記ポリアミド系複合樹脂組成物は、耐熱安定剤0.05〜2.0重量%をさらに含むことができる。前記耐熱安定剤は、長期耐熱特性を維持する機能を付与することができ、ソジウムハライド類、ポタシウムハライド類、リチウムハライド類のように元素周期律表のグループI金属ハライドや、第1銅(cuprous)ハライド類および第1銅のヨード化合物の中から選ばれる1種以上の物質を含むことができる。前記耐熱安定剤としてヒンダード(hindered)フェノール類、ヒドロキノン類および芳香族アミン類の中から選ばれる1種以上の物質を使用することもできる。前記耐熱安定剤の含量が0.05重量%より少なければ、長期耐熱特性の改善効果が微弱になり得、その含量が2.0重量%を超過しても、添加含量に比べて長期耐熱特性がそれほど増加しないことがある。
【0061】
前記ポリアミド系複合樹脂組成物は、滑剤0.05〜3.0重量%をさらに含むことができる。前記滑剤は、内部潤滑剤の役割をして射出加工時に円滑な流れを誘導することができ、ステアリン酸、ステアリルアルコールおよびステアルアミドよりなる群から選ばれる1種以上の物質を含むことができる。前記滑剤の含量が0.05重量%より少なければ、射出加工時に円滑な流れを誘導する機能が微弱になり得、その含量が3.0重量%を超過しても、添加含量に比べて潤滑特性がそれほど増加しないことがある。
【0062】
前記ポリアミド系複合樹脂組成物は、粘度増進剤0.05〜3.7重量%をさらに含むことができる。前記粘度増進剤は、押出温度でポリアミド系複合樹脂組成物の粘度を増加させて、ブローモールディングに接合した粘度を可能にする役割をすることができる。前記粘度増進剤は、ビニル系、エポキシ系、メタクリロキシ系、アミノ系、メルカプト系、アクリロキシ系、イソシアネート系、スチリル系およびアルコキシオリゴマー系の中から選ばれる1種以上であるものを使用することができる。前記粘度増進剤の含量が0.05重量%より少なければ、粘度増進効果が微弱になり得、3.7重量%より多ければ、ブローモールディング性が低下し得る。
【0063】
前記ポリアミド系複合樹脂組成物は、導電性カーボンブラック0.01〜5重量%をさらに含むことができる。前記導電性カーボンブラックは、カーボンブラックマスターバッチ(CB/MB)であってもよく、充填剤の役割をする。導電性カーボンブラックを添加するようになると、引張強度(tensile strength;TS)のような機械的特性と静電気防止のための帯電防止性能を向上させることができる。前記導電性カーボンブラックの含量が0.01重量%未満であれば、特性改善効果が微弱になり得、その含量が5%を超過しても、添加含量に比べて特性が増加しないことがある。
【0064】
前記ポリアミド系複合樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(CNT)0.01〜5重量%を含むことができる。カーボンナノチューブ(CNT)は、炭素原子からなる六角形のネットワークを丸く巻いた形態を有する。この際、巻いた角度によって先端部分がジグザグ形状と肘掛け椅子形状を有する。また、丸く巻かれた形態は、壁が一つの構造である単一壁(Single Wall)形態と、多数の壁を有する多重壁(Multi Wall)構造を取るようになり、その他にも、単一壁や多重壁が束からなる形態(Nano tube bundle)、チューブの内部に金属が存在する形態(Metal−atom−filled nano tube)等がある。
カーボンナノチューブを添加するようになると、曲げ弾性率(Flexural Modulus;FM)、曲げ強度(Flexural Strength;FS)、引張強度(tensile strength;TS)のような機械的特性と、熱変形温度(Heat Deflection Temperature;HDT)のような耐熱特性を向上させることができる。前記カーボンナノチューブの含量が0.01重量%未満であれば、特性改善効果が微弱になり得、その含量が5%を超過しても、添加含量に比べて特性が増加しないことがある。
【0065】
上述した本発明のポリアミド系複合樹脂組成物は、ブロー成形が容易であり、低温衝撃および引張強度の機械的物性特性に優れていると同時に、ガソリンだけでなく、ガソリンとアルコールが混合された混合燃料に対する気体遮断性が高い。
【0066】
以下では、本発明による実施例と比較例を具体的に提示し、下記に提示する実施例と比較例により本発明が限定されるものではない。
【0067】
<製造例>有機化前処理された混合クレイの製造
水に不純物を除去したモンモリロナイトとヘクトライトを1:1の重量比で添加し、60℃の条件で撹拌しつつ混合して、混合クレイ分散液を製造した。前記混合クレイ分散液を反応槽に入れ、pHを4〜5程度に調節した後に、60℃で溶かした3次アンモニウムであるジメチル水素化−タローアンモニウムを混合クレイ100g当たり90ミリ当量(milliequivalent)を添加し、撹拌しつつ、60℃の温度で20〜60分間交換反応させて有機化前処理された混合クレイを製造し、フィルター装置を利用して有機化前処理された混合クレイを選択的に分離した後、流動体乾燥器(fluid dryer)で乾燥した後、ミーリング装置を利用して粉砕して、10〜40μmの間のパウダー(powder)を得た。
【0068】
<実施例1〜3>および<比較例1〜7>
実施例1〜3および比較例1〜7について、下記表1に記載された成分比で混合した後、押出機(extruder)を利用してポリアミド系複合樹脂組成物を製造した。比較例は、実施例の特性と単純に比較するために提示するものであって、本発明の先行技術ではない。
【0069】
前記押出機は、韓国特許登録第10−0998619号公報に開示された連続式押出機(continuous extruder)を利用した。ポリアミド系樹脂、メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロン、熱可塑性オレフィン(TPO)ゴム、耐熱安定剤、滑剤、粘度増進剤および導電性カーボンブラックは、メインフィーダを介して投入し、Clay1とClay 2(前記製造例を通じて有機化前処理された混合クレイ)は、サイドフィーダを介して投入して製造した。これは、メインフィーダ(ホッパー)にクレイを投入する場合、クレイの凝集現象が発生し得るので、サイドフィーダ(サイドフィーディング(side feeding)注入口)やスプレー法で投入することが好ましい。押出機のスクリューは、分散性を向上させるために、無秩序混練が可能な装置を使用することができる。また、混練領域での押出温度は、275℃以下に維持することが好ましい。これは、押出温度が275℃より高まれば、ドメインのサイズが非常に微細になって、遮断性が低下し得る。混練したポリアミド系複合樹脂組成物は、カッターを介してペレット化した後、除湿乾燥器を利用して乾燥してポリアミド系複合樹脂を製造した。
【0070】
【表1】
【0071】
<実験例1>
前記実施例1〜3および比較例1〜7で製造されたポリアミド系複合樹脂を利用して製造された成形品の物性、加工性および気体遮断性などを調査するために、下記項目に対して測定した後、その結果を下記表2、表3および図1図2に示した。
【0072】
(1)引張強度(MPa):ASTM D638に基づいて50mm/minで測定した。
(2)曲げ弾性率(MPa):ASTM D790規定に基づいて3mm/minで測定した。
(3)IZOD衝撃強度(KJ/m):ASTM D256により1/4”ノッチ(Notched)条件で低温(−30℃)の温度条件について測定した。
(4)熱変形温度(℃):ASTM D648によって0.45MPaの表面圧力を加えて熱変形温度を測定した。
(5)ベンディング評価:ベンディング装置で往復10回曲げ評価に基づいて測定した。
(6)低温落下評価:低温区間−40℃で3時間放置後、30秒以内に1mの高さから自由落下してクラックが発生することを測定した。
(7)遮断性評価:SAE J2665法によって燃料油容器(図4)に装着して60℃で時間による重さの変化量を測定した。
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
前記表2および表3の結果によれば、メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンとクレイが添加されていない比較例1は、低温衝撃強度が129kJ/m水準と低いことが分かる。メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロンが添加されていない比較例2〜4の場合、特に低温衝撃強度および引張強度で低い物性を有することを確認することができ、ベンディングおよび気体遮断性の評価も良くないことが分かる。
【0076】
また、ポリアミド6およびMXD6を含み、かつ、クレイを添加しない比較例5〜6の場合、特に衝撃強度および熱変形温度でその数値が大きく低下したことを確認することができる。
【0077】
また、MXD6を少量含む比較例7の場合、引張強度および曲げ弾性率は、比較的優れているが、衝撃強度および熱変形温度で実施例1〜3に比べて若干低いことが分かった。
【0078】
これに対し、ポリアミド6、MXD6、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体および混合クレイを含む実施例1〜3の場合、特に引張強度および低温衝撃強度が大きく向上し、曲げ弾性率と熱変形温度においても優れていることが分かった。実施例1〜3の場合、気体遮断性の評価も高いことが分かり、これは、混合クレイがゴムとナイロン上に均一に分散することによって、気体遮断性がいずれも優れているものと判断される。
【0079】
図1は、実施例1によって製造されたポリアミド系複合樹脂の透過電子顕微鏡(transmission electron microscope;TEM)写真である。
【0080】
図1から明らかなように、ポリアミド系樹脂に有機化前処理された混合クレイが分散したことを確認することができた。
【0081】
図2は、実施例2によって製造されたポリアミド系複合樹脂の走査電子顕微鏡(scanning electron microscope;SEM)写真である。
【0082】
図2から明らかなように、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体(熱可塑性オレフィンゴム)にMXD6(メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロン)が均一に分散したことを確認することができた。
【0083】
<実験例2>
前記実施例2、3および比較例1によって製造されたポリアミド系複合樹脂を利用して製造された成形品の透過度を調査するために、E10燃料を注入した後、60℃のチャンバー温度でSAE J2665法により燃料残量透過度を測定した後、その結果を図3に示した。ここで、燃料残量透過度は、一般的に重量/厚さ/時間で表示しているが、図3のグラフでは、試験片の厚さを同一に使用して別途の厚さ表示をしなかった。
【0084】
図3は、実施例2、3および比較例1によって製造されたポリアミド系複合樹脂を利用して製造された成形品の燃料残量透過度測定グラフである。
【0085】
図3から明らかなように、比較例1に比べて、実施例2、3は、燃料残量透過度が格別に向上したことを確認することができた。これを通じて、ポリアミド6(ポリアミド系樹脂)にMXD6(メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロン)、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−オクテン共重合体(熱可塑性オレフィンゴム)およびクレイの添加によって積層構造の形態で層を均一に形成して、燃料透過度を向上させたものと判断される。
【0086】
以上説明したように、実施例1〜3によって製造されたポリアミド系複合樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂、メタ−キシレンジアミン(MXD)系変性ナイロン、熱可塑性オレフィンゴムおよびクレイを添加することによって、ブロー成形が容易であり、低温衝撃および引張強度の機械的物性特性に優れていると同時に、気体遮断性を大きく向上させることができる。
【0087】
以上、本発明の好ましい実施例により詳細に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によるポリアミド系複合樹脂組成物は、ブロー成形が容易であり、低温衝撃および引張強度の機械的物性特性に優れていると同時に、ガソリンだけでなく、ガソリンとアルコールが混合された混合燃料に対する気体遮断性を大きく向上させることができ、産業上の利用可能性がある。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】