(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-533059(P2019-533059A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】フルオロエラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20191018BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20191018BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20191018BHJP
C08K 5/21 20060101ALI20191018BHJP
C08K 5/405 20060101ALI20191018BHJP
C08K 5/3477 20060101ALI20191018BHJP
C08F 14/18 20060101ALI20191018BHJP
C08F 16/24 20060101ALI20191018BHJP
【FI】
C08L27/12
C08K5/14
C08L71/00 Z
C08K5/21
C08K5/405
C08K5/3477
C08F14/18
C08F16/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2019-521748(P2019-521748)
(86)(22)【出願日】2017年10月26日
(85)【翻訳文提出日】2019年6月14日
(86)【国際出願番号】EP2017077443
(87)【国際公開番号】WO2018078015
(87)【国際公開日】20180503
(31)【優先権主張番号】16196062.0
(32)【優先日】2016年10月27日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボスソロ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】マンゾーニ, クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】ファントーニ, マッテオ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BD121
4J002CH022
4J002CH052
4J002DA030
4J002EK036
4J002EK046
4J002EK056
4J002EK086
4J002ET016
4J002EU197
4J002EV127
4J002FD010
4J002FD146
4J002FD156
4J002FD157
4J002GJ02
4J002GM00
4J002GT00
4J100AC26Q
4J100AE39P
4J100CA04
4J100DA09
4J100EA07
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA20
4J100FA29
4J100GC07
4J100GC17
4J100GC25
4J100JA28
(57)【要約】
本発明は、向上した耐熱性および耐水蒸気性を有する硬化部品を提供することができる、一定のニトリル含有フルオロポリエーテル化合物を含む二重硬化フルオロエラストマー組成物、それを硬化させる方法、およびそれから得られる硬化物品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロエラストマー組成物[組成物(C)]であって、
− 少なくともニトリル基を有する少なくとも1種の硬化部位含有モノマー[モノマー(CSM)]に由来する繰り返し単位を、繰り返し単位の全モル数に対して0.1〜10.0モル%含み、かつヨウ素および/または臭素硬化部位を、フルオロエラストマー(A)の合計重量に対してIおよび/またはBr含有量が0.04〜10.0重量%となるような量で含む、少なくとも1種のフルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)];
− 少なくとも有機過酸化物[過酸化物(O)];
− 少なくとも1種の多価不飽和化合物[化合物(U)];
− 式:
TA−O−Rf−TA’ (I)
(式中:
− Rfは、少なくとも1つのカテナリーエーテル結合を有し、かつ少なくとも1つのフルオロカーボン部位を有する繰り返し単位を含む(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(Rf)]であり;
− 互いに等しいかまたは異なるTAおよびTA’は、エーテル性酸素原子を任意選択的に含み、かつ少なくともニトリル基を含む(ヒドロ)(フルオロ)カーボン基からなる群から選択される)の少なくとも1種のニトリル含有フルオロポリエーテル化合物[化合物(CN−PFPE)];ならびに
− 少なくとも1つの−NH−基を含むニトリル硬化助剤[薬剤(A)]を含む、フルオロエラストマー組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
化合物(CN−PFPE)が、式(II):
TB−O−R*f−TB’ (II)
(式中:
− R*fは、鎖(Rf)であり;
− 互いに等しいかまたは異なるTBおよびTB’の各々は、
式−CF2−CN、−CFZ*CH2−CN、および−CFZ*−CH2(OCH2CH2)k−CN(式中、kは0〜10の範囲であり、Z*はFまたはCF3である)のうちのいずれかの基TCN*からなる群から選択される)を満たし、好ましくは、化合物(CN−PFPE)が、式(III):
TC−O−(CF2CF2O)a’(CFYO)b’(CF2CFYO)c’(CF2O)d’(CF2(CF2)zCF2O)e’−TC’
(式中:
− YはC1〜C5パーフルオロ(オキシ)アルキル基であり;
− zは1または2であり;
− a’、b’、c’、d’、e’は0以上の整数であり;
− 互いに等しいかまたは異なるTCおよびTC’の各々は、式−CF2−CN、−CFZ*CH2−CN、および−CFZ*−CH2(OCH2CH2)k−CN(式中、Z*はFまたはCF3であり;kは0〜10の範囲である)のうちのいずれかの基TCN’’からなる群から選択される)を満たす、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
ニトリル硬化助剤[薬剤(A)]が、
(i)式(Ur):
(式中、Eは、OまたはSであり、好ましくは、Eは、Oであり、かつ互いに等しいかまたは異なるR
uの各々は、水素およびC
1〜C
6炭化水素基(特にC
1〜C
6アルキル基)からなる群から独立して選択される)
の(チオ)尿素化合物;
(ii)アンモニアまたは第一級アミンとアルデヒトとの環状付加生成物;
(iii)式(Ca):
(式中、Eは、酸素または硫黄であり;R
bは、C
1〜C
36炭化水素基であり、かつR
cは、HまたはC
1〜C
6アルキル基である)の(チオ)カルバマートからなる群から選択され;かつ薬剤(A)が、好ましくは
(Ag A−1)式:
の尿素
(Ag A−2)式:
のアセトアルデヒドアンモニア三量体
(Ag A−3)式:
のベンジルカルバマート
からなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
前記組成物(C)が、2つの炭素−炭素不飽和を含む化合物、3つの炭素−炭素不飽和を含む化合物、および4つまたは5つ以上の炭素−炭素不飽和を含む化合物から選択される少なくとも1種の多価不飽和化合物(U)を含み、
(j)2つの炭素−炭素不飽和を含む化合物(U)が、好ましくは、一般式:
(式中、互いに等しいかまたは異なるR
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、Hまたは基−R
OFまたは−OR
OFであり、R
OFは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり;Zは、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された、酸素原子を任意選択で含有する直鎖または分岐のC
1〜C
18炭化水素基(アルキレンまたはシクロアルキレン基を含む)、または1つ以上のカテナリーエーテル性結合を含む(パー)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基である)を有するビス−オレフィン[ビス−オレフィン(OF)]からなる群から選択され;
(jj)3つの炭素−炭素不飽和を含む化合物(U)が、好ましくは、
− 一般式:
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR
cyの各々は、独立して、H、または基−R
rcyもしくは−OR
rcyから選択され、R
rcyは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるJ
cyの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合または二価炭化水素基から選択される)の三置換シアヌラート化合物;
− 一般式:
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR
isocyの各々は、独立して、H、または基−R
risocyもしくは−OR
risocyから選択され、R
risocyは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるJ
isocyの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合または二価炭化水素基から選択される)の三置換イソシアヌラート化合物;
− 一般式:
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR
azの各々は、独立して、H、または基−R
razもしくは−OR
razから選択され、R
razは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるJ
azの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合または二価炭化水素基から選択される)の三置換トリアジン化合物;
− 一般式:
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR
phの各々は、独立して、H、または基−R
rphもしくは−OR
rphから選択され、R
rphは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるJ
phの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合または二価炭化水素基から選択される)の三置換亜リン酸塩化合物;
− 一般式:
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR
siの各々は、独立して、H、または基−R
rsiもしくは−OR
rsiから選択され、R
rsiは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR’
siの各々は、独立して、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキル基から選択され、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるJ
siの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合または二価炭化水素基から選択される)の三置換アルキルトリシロキサンであって;三置換アルキルトリシロキサン化合物は、とりわけ好ましい2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサンおよび2,4,6−トリビニルエチルトリシロキサンを含む三置換アルキルトリシロキサン;
− 一般式:
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR
anの各々は、独立して、H、または基−R
ranもしくは−OR
ranから選択され、R
ranは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるJ
anの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合または二価炭化水素基から選択される)のN,N−二置換アクリルアミド化合物
からなる群から選択され;
(jjj)4つ以上の炭素−炭素不飽和を含む化合物(U)が、好ましくは、式
のトリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン、ヘキサ−アリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラ−アリルテレフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラ−アリルマロンアミドからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項5】
前記化合物(U)が、(i)式(OF−1)、(OF−2)および(OF−3):
(式中、jは2〜10、好ましくは4〜8の整数であり、互いに等しいかまたは異なるR1、R2、R3、R4は、H、FまたはC
1〜5アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル基であり;好ましくは、R1、R2がHであり、かつjが4または6であり;(OF−1)タイプの好ましいビス−オレフィンは、H
2C=CH−(CF
2)
4−CH=CH
2またはH
2C=CH−(CF
2)
6−CH=CH
2である)
(OF−2)
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるAの各々は、独立して、F、Cl、およびHから選択され;互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるBの各々は、独立して、F、Cl、HおよびOR
Bから選択され、R
Bは、部分的に、実質的にまたは完全にフッ化もしくは塩素化されている場合があるC
1〜C
5の分岐もしくは直鎖のアルキル基であり;Eは、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択によりフッ素化された、2〜10個の炭素原子を有する二価の基であり;好ましくは、Eは、mが3〜5の整数である−(CF
2)
m−基であり;(OF−2)タイプの好ましいビス−オレフィンは、F
2C=CF−O−(CF
2)
5−O−CF=CF
2である)
(式中、E、AおよびBは、上で定義されたものと同じ意味を有し;互いに等しいかまたは異なるR5、R6、R7は、H、FまたはC
1〜5アルキルもしくはC
1〜5(パー)フルオロアルキル基である)を満たすものからなる群から、特に、(OF−1)タイプのビス−オレフィンから選択されるオレフィン(OF);ならびに(ii)三置換イソシアヌラート化合物、特に、トリアリルイソシアヌラートからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物(C)。
【請求項6】
フルオロエラストマー(A)が、上に詳述されたとおりのモノマー(CSM)に由来する繰り返し単位に加えて、少なくとも1種の(パー)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み、前記(パー)フッ素化モノマーが、
− テトラフルオロエチレン(TFE)およびヘキサフルオロプロペン(HFP)などの、C
2〜C
8パーフルオロオレフィン;
− C
2〜C
8水素含有フルオロオレフィン、例えば、フッ化ビニル;1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、ペンタフルオロプロピレンおよびヘキサフルオロイソブチレン;
− 式CH
2=CH−R
f0(式中、R
f0は、C
1〜C
6(パー)フルオロアルキルまたは1つ以上のエーテル基を有するC
1〜C
6(パー)フルオロオキシアルキルである)を満たす(パー)フルオロアルキルエチレン;
− クロロトリフルオロエチレン(CTFE)のようなクロロ−、および/またはブロモ−、および/またはヨード−C
2〜C
6フルオロオレフィン;
− 式CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1〜C
6フルオロ−またはパーフルオロアルキル、例えば、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7である)を満たすフルオロアルキルビニルエーテル;
− 式CH
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1〜C
6フルオロ−またはパーフルオロアルキル、例えば、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7である)を満たすヒドロフルオロアルキルビニルエーテル;
− 式CF
2=CFOX
0(式中、X
0は、1つ以上のエーテル基を有するC
1〜C
12オキシアルキルまたはC
1〜C
12(パー)フルオロオキシアルキルである)を満たすフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル;特に式CF
2=CFOCF
2OR
f2(式中、R
f2は、C
1〜C
6フルオロ−またはパーフルオロアルキル、例えば、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7または−C
2F
5−O−CF
3のような、1つ以上のエーテル基を有するC
1〜C
6(パー)フルオロオキシアルキルである)を満たす(パー)フルオロ−メトキシ−ビニルエーテル;
− 式CF
2=CFOY
0(式中、Y
0は、C
1〜C
12アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル、またはC
1〜C
12オキシアルキルもしくはC
1〜C
12(パー)フルオロオキシアルキルであり、前記Y
0基は、カルボン酸基またはスルホン酸基を、その酸、酸ハライドもしくは塩の形態で含む)を満たす官能性フルオロ−アルキルビニルエーテル;
− 式
(式中、互いに等しいかまたは異なる、R
f3、R
f4、R
f5、R
f6の各々は、独立して、フッ素原子、1つ以上の酸素原子を任意選択で含むC
1〜C
6フルオロ−またはパー(ハロ)フルオロアルキル、例えば−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−OCF
3、−OCF
2CF
2OCF
3である)の(パー)フルオロジオキソール
からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記フルオロエラストマー(A)が、
(1)VDF系コポリマー(ここで、VDFは、上に詳述されたとおりのモノマー(CSM)、および
(a)C
2〜C
8パーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP);
(b)水素含有C
2〜C
8オレフィン、例えば、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロイソブテン(HFIB)、式CH
2=CH−R
f(式中、R
fは、C
1〜C
6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン;
(c)ヨウ素、塩素および臭素の少なくとも1つを含む、C
2〜C
8フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d)式CF
2=CFOR
f(式中、R
fは、C
1〜C
6(パー)フルオロアルキル基、好ましくは、CF
3、C
2F
5、C
3F
7である)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF
2=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC
1〜C
12((パー)フルオロ)−オキシアルキル、例えば、パーフルオロ−2−プロポキシプロピル基である)の(パー)フルオロ−オキシ−アルキルビニルエーテル;
(f)式:
(式中、互いに等しいかまたは異なる、R
f3、R
f4、R
f5、R
f6の各々は、独立して、フッ素原子、および任意選択で1個または2個以上の酸素原子を含む、C
1〜C
6(パー)フルオロアルキル基、例えば、とりわけ−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−OCF
3、−OCF
2CF
2OCF
3からなる群から選択される)を有する(パー)フルオロジオキソール;好ましくはパーフルオロジオキソール;
(g)式:
CF
2=CFOCF
2OR
f2を有する(パー)フルオロ−メトキシ−ビニルエーテル(以下、MOVE)
(式中、R
f2は、C
1〜C
6(パー)フルオロアルキル;C
5〜C
6環状(パー)フルオロアルキル;および少なくとも1つのカテナリー酸素原子を含むC
2〜C
6(パー)フルオロオキシアルキルからなる群から選択され;R
f2は、好ましくは−CF
2CF
3(MOVE1);−CF
2CF
2OCF
3(MOVE2);または−CF
3(MOVE3)である);
(h)C
2〜C
8非フッ素化オレフィン(Ol)、例えばエチレンおよびプロピレン
からなる群から選択される少なくとも1つの追加のコモノマーと共重合されている);ならびに
(2)TFE系コポリマー(ここで、TFEは、上に詳述されたとおりのモノマー(CSM)、ならびに上に詳述されたとおりの(c)、(d)、(e)、(g)、(h)、および(i)からなる群から選択される少なくとも1つの追加のコモノマーと共重合されている)
からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物(C)。
【請求項8】
前記フルオロエラストマー(A)におけるヨウ素および/または臭素の含有量が、フルオロエラストマー(A)の全重量に対して、少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.06重量%、および/またはフルオロエラストマー(A)の全重量に対して、7重量%を超えない、より具体的には5重量%を超えない、またはさらに4重量%を超えない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項9】
フルオロエラストマー(A)が、末端基として含まれるヨウ素硬化部位を有し、かつ以下のモノマー組成(繰り返し単位の全モル数に対するモル%):
(i)テトラフルオロエチレン(TFE):50〜80%;(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE):15〜50%;モノマー(CMS):0.1〜10%;ビス−オレフィン(OF):0〜5%;
(ii)テトラフルオロエチレン(TFE):20〜70%;(パー)フルオロ−メトキシ−ビニルエーテル(MOVE):25〜75%;(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE):0〜50%;モノマー(CMS)0.1〜10%;ビス−オレフィン(OF):0〜5%
を有するものからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項10】
前記過酸化物(O)が、例えば、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシドを含むジ(アルキル/アリール)ペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド、ジコハク酸ペルオキシド、ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、デカノイルペルオキシドを含むジアシルペルオキシド;ジ−tert−ブチルペルベンゾアート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、1,1,3,3−テトラメチルエチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンを含む過カルボン酸およびエステル;とりわけジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボナート、ジ(2−フェノキシエチル)ペルオキシジカルボナート、ビス[1,3−ジメチル−3−(tert−ブチルペルオキシ)ブチル]カルボナート、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルカルボナート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナートを含むペルオキシカルボナートからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項11】
前記組成物(C)中の過酸化物(O)の量が、フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、0.1〜5phr、好ましくは0.2〜4phrである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物(C)を硬化させることを含む、造形物品の加工方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物(C)から得られる硬化物品であって、前記硬化物品が、O(正方形)−リング、パッキン、ガスケット、ダイヤフラム、軸シール、バルブステムシール、ピストンリング、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、およびオイルシールを含む、シーリング物品、配管および管類、特に、炭化水素流体および燃料の送達のための導管を含む、フレキシブルホースまたは他の品目からなる群から選択される、硬化物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年10月27日出願の欧州特許出願第16196062.0号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、向上した耐熱性および耐水蒸気性を有する硬化部品を提供することができるフルオロエラストマー組成物、それを硬化させる方法、およびそれから得られる硬化物品に関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロエラストマー、およびより具体的には、パーフルオロエラストマーは、高温および化学薬品による腐食に対して優れた耐性が要求される様々な用途において長い間使用されている。
【0004】
これらのフルオロエラストマーの架橋を可能にするために、フルオロエラストマーポリマー鎖中に少ない割合のニトリル基を含むモノマーを組み込むことが長い間知られており、とりわけ芳香族テトラアミン、ジ(アミノ(チオ)フェノール)、ならびにテトラアルキルおよびテトラアリール化合物を含む有機スズ化合物を含む様々な硬化剤の存在下でのその反応性は、高い熱安定性を持ち、かつ別の架橋化学反応によりもたらされる橋架け/架橋基の安定性より確かに高い、推定上のトリアジン型または同様の構造の架橋点を提供するものである。
【0005】
この分野では、米国特許第5545693号明細書(E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY)(1996年8月13日)は、水酸化トリフェニル錫の存在下で共硬化を得るための、ニトリル含有ポリパーフルオロエーテルを伴うニトリル基を含むパーフルオロエラストマーのブレンドを開示している。パーフルオロポリエーテルの添加が、それに由来する化合物の加工性および低温特性にとって場合により有益であると教示される。
【0006】
さらに、米国特許出願公開第2012009438号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES CO)(2012年1月12日)は、(i.)官能性のトリアジン形成架橋基、特に、ニトリル基を含むフルオロエラストマー、および(ii.)(−C
4F
8O−)、(−C
2F
4O−)もしくは(−CF
2O−)またはその組合せから選択される繰り返し単位を含み、さらに、フルオロエラストマーの官能基(例えば、ニトリル、アミジン、イミドイルアミン、イミダート、アミドラゾン、アミドキシム)との反応によりトリアジン単位をもたらす反応性基を含有する第2の化合物、特に、式NCCF
2O(CF
2O)
x(C
2F
4O)
yCF
2CN(式中、xおよびyは、互いに独立して2〜12の整数である)の化合物を含む硬化性フルオロエラストマー組成物が開示されている。硬化性化合物は通常、硬化触媒をさらに含み、これは、フルオロエラストマーおよびフルオロポリエーテル化合物がニトリル基を含む場合に、アミン基、アミジン基、イミダート基、アミドキシム基、アミドラゾン基を含む。それから硬化した化合物は、−60℃未満のガラス転移温度を有すると記載されており、したがって、それらの通常の使用温度領域を極めて低い温度へと広げることが可能になる。
【0007】
一般的に言って、ニトリル硬化部位を含有するフルオロエラストマーは、長い間フルオロエラストマーの熱安定性に関して認知されており、この分野では、過去に、例えば、硬化速度または製品性能などのさらなる向上のために二重硬化の手法がすでに探求されてきた。
【0008】
とりわけ、米国特許第5447993号明細書(1995年9月5日)は、より迅速な架橋速度を達成する一方で加硫物の良好な熱特性を維持するための、過酸化物、ジエンまたはトリエンであり得る助剤、およびニトリル基を用いて架橋の形成をもたらす触媒の併用によって硬化されるニトリル含有パーフルオロエラストマーを開示している。この文献によれば、1つは過酸化物および多価不飽和の助剤により引き起こされ、かつ他方はニトリル基の触媒された反応により引き起こされる、2つの別々の(化学的)硬化プロセスが起こると考えられている。
【0009】
この分野では、耐熱性および耐水蒸気性がさらに向上した硬化を達成することができる硬化性フルオロエラストマー組成物の探索が続けられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の第1目的は、フルオロエラストマー組成物[組成物(C)]であって、
− 少なくともニトリル基を有する少なくとも1種の硬化部位含有モノマー[モノマー(CSM)]に由来する繰り返し単位を、繰り返し単位の全モル数に対して0.1〜10.0モル%含み、かつヨウ素および/または臭素硬化部位を、フルオロエラストマー(A)の合計重量に対してIおよび/またはBr含有量が0.04〜10.0重量%となるような量で含む、少なくとも1種のフルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)];
− 少なくとも有機過酸化物[過酸化物(O)];
− 少なくとも1種の多価不飽和化合物[化合物(U)];
− 少なくとも1種の式:
T
A−O−R
f−T
A’ (I)
のニトリル含有フルオロポリエーテル化合物[化合物(CN−PFPE)]
(式中:
− R
fは、少なくとも1つのカテナリーエーテル結合を有し、かつ少なくとも1つのフルオロカーボン部位を有する繰り返し単位を含む(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(R
f)]であり;
− 互いに等しいかまたは異なるT
AおよびT
A’は、エーテル性酸素原子を任意選択的に含み、かつ少なくとも1つのニトリル基を含む(ヒドロ)(フルオロ)カーボン基からなる群から選択される);ならびに
− 少なくとも1つの−NH−基を含むニトリル硬化助剤[薬剤(A)]を含むフルオロエラストマー組成物[組成物(C)]である。
【0011】
本出願人は、驚くべきことに、(jj)−CN部分からのトリアジン形成を促進することができる好適なN−Hを含有する助剤と組み合わされた(j)ニトリル含有フルオロポリエーテル化合物、および(jjj)不飽和多価化合物を含む上述の二重硬化系を用いる場合、ニトリル硬化部位を含むヨウ素含有フルオロエラストマーが、1回の「ニトリル」硬化によって硬化される化合物に関する性能について特に大幅に向上した、耐熱性を兼ね備える大幅に向上した耐水蒸気性を付与するように、驚くほど有利な挙動で硬化され得ることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前述のように、組成物(C)は、上に詳述されたとおりの少なくとも1つの式(I)のニトリル含有フルオロポリエーテル化合物[化合物(CN−PFPE)]を含む。
【0013】
化合物(CN−PFPE)の(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(R
f)]は、好ましくは複数の繰り返し単位(R
1)を含む鎖であり、前記繰り返し単位は、一般式:−(CF
2)
k−CFZ−O−(式中、kは0〜3の整数であり、Zはフッ素原子およびC
1〜C
6パーフルオロ(オキシ)アルキル基の中から選択される)を有する。
【0014】
化合物(CN−PFPE)の鎖(R
f)は、より好ましくは次式を満たす:
−(CF
2CF
2O)
a’(CFYO)
b’(CF
2CFYO)
c’(CF
2O)
d’(CF
2(CF
2)
zCF
2O)
e’−
(式中、繰り返し単位は(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖に沿って統計的に分布しており、
− YはC
1〜C
5パーフルオロ(オキシ)アルキル基であり;
− zは1または2であり;
− a’、b’、c’、d’、e’は0以上の整数である)。
【0015】
最も好ましくは、化合物(CN−PFPE)の鎖(R
f)は次式を満たす:
−(CF
2CF
2O)
a’’(CF
2O)
b’’(CF
2(CF
2)
zCF
2O)
c’’−
(式中、
− zは1または2であり;
− a’’、b’’、c’’は0以上の整数である)。
【0016】
鎖(R
f)は、通常、500〜6000、好ましくは750〜5000、さらに好ましくは1000〜4500の数平均分子量を有するように選択される。
【0017】
通常、化合物(CN−PFPE)は式(II)を満たす:
T
B−O−R*
f−T
B’ (II)
(式中:
R*
fは上で詳述した鎖(R
f)であり;
互いに等しいかまたは異なるT
BおよびT
B’の各々は、
式−CFZ*CN、−CFZ*CH
2−CN、および−CFZ*−CH
2(OCH
2CH
2)
k−CN(式中、kは0〜10の範囲であり、Z*はFまたはCF
3である)のうちのいずれかの基T
CN*からなる群から選択される。
【0018】
化合物(CN−PFPE)は、好ましくは式(III)を満たす:
T
C−O−(CF
2CF
2O)
a’(CFYO)
b’(CF
2CFYO)
c’(CF
2O)
d’(CF
2(CF
2)
zCF
2O)
e’−T
C’
(式中:
− YはC
1〜C
5パーフルオロ(オキシ)アルキル基であり;
− zは1または2であり;
− a’、b’、c’、d’、e’は0以上の整数であり;
− 互いに等しいかまたは異なるT
CおよびT
C’の各々は、式−CFZ*−CN、−CFZ*CH
2−CN、および−CFZ*−CH
2(OCH
2CH
2)
k−CN(式中、Z*はFまたはCF
3であり;kは0〜10の範囲である)のうちのいずれかの基T
CN’’からなる群から選択される)。
【0019】
上で詳述した化合物(CN−PFPE)は、これらの合成方法および使用される前駆体の結果として、(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖の性質および長さのために異なる様々な化学的要素を含む化合物の混合物として、また場合により、両方の鎖末端が、−CN基を含まない(ヒドロ)(フルオロ)カーボン基である化合物、および一方の鎖末端が−CN基を含まない(ヒドロ)(フルオロ)カーボン基であり、かつ他方の鎖末端が−CN基を含む(ヒドロ)(フルオロ)カーボン基である化合物の可変断片を含む混合物として提供されてもよい。
【0020】
いわゆる「一」および「二」官能性の化合物の割合に関し、最も優れた結果は、化合物(CN−PFPE)が、大多数の、式中のT
AとT
A’の両方が上で詳述した基T
CNである上で詳述した式(I)[T
A−O−R
f−T
A’]の化合物と、少量の、式中のT
AとT
A’のうちの1つのみが基T
CNであり他方の基がニトリル基を含まず、かつ場合によりH、O、およびClのうちの1つまたは2つ以上を含むC
1〜C
24(ヒドロ)(フルオロ)カーボン基から一般に選択される上で詳述した式(I)[T
A−O−R
f−T
A’]の化合物[一官能性(mCN−PFPE)]と、からなる混合物としてもたらされた場合に得られたと概して理解される。
【0021】
二官能性化合物(CN−PFPE)および一官能性(mCN−PFPE)は分離されてもよいが、組成物(C)において使用される化合物(CN−PFPE)は、対応する一官能性(CN−PFPE)化合物との混合物の形態で提供され得る。
【0022】
化合物(CN−PFPE)が、前記化合物の混合物中で対応する一官能性(CN−PFPE)化合物との混合物として与えられる場合、化合物(CN−PFPE)と一官能性化合物(mCN−PFPE)の量は、通常は、基T
CNが化合物(CN−PFPE)および(mCN−PFPE)の全ての末端基の少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも90モル%に相当するような量である。
【0023】
さらに、全体として−CN基を含まないごく少量の副生成物は有害ではなく、経済的な目的のために化合物(CN−PFPE)との混合が許容される場合がある。化合物(CN−PFPE)と一官能性化合物(mCN−PFPE)との混合が許容される場合があるこれらの「非官能性」化合物の量は、通常は、−CN基を含まない末端基の合計量が、化合物(CN−PFPE)、一官能性化合物(mCN−PFPE)および非官能性副生成物との混合物の末端基の合計数に対して10モル%未満、好ましくは7モル%未満、より好ましくは5モル%未満となるような量である。
【0024】
通常、化合物(CN−PFPE)の非官能性副生成物は、式(IV)を満たし得る:
W−O−R
f−W’ (IV)
(式中:
R
fは上で詳述した鎖R
fであり;
互いに等しいかまたは異なるWおよびW’の各々は、
式−CF
3、−CF
2Cl、−CF
2CF
3、−CF(CF
3)
2、−CF
2H、−CFH
2、−CF
2CH
3、−CF
2CHF
2、−CF
2CH
2F、−CFZ*CH
2OH、−CFZ*COOH、−CFZ*COOR
h、および−CFZ*−CH
2(OCH
2CH
2)
k−OHのいずれかの基から選択され、kは0〜10であり、Z*はFまたはCF
3であり;R
hは炭化水素鎖である)。
【0025】
より繰り返し見出された副生成物は、次の式(V)を満たし得る:
W*−O−(CF
2CF
2O)
a’(CFYO)
b’(CF
2CFYO)
c’(CF
2O)
d’(CF
2(CF
2)
zCF
2O)
e’−W*’
(式中:
− YはC
1〜C
5パーフルオロ(オキシ)アルキル基であり;
− zは1または2であり;
− a’、b’、c’、d’、e’は0以上の整数であり;
− 互いに等しいかまたは異なるW*およびW*’の各々は、式−CF
3、−CF
2Cl、−CF
2CF
3、−CF(CF
3)
2、−CF
2H、−CFH
2、−CF
2CH
3、−CF
2CHF
2、−CF
2CH
2F、−CFZ*CH
2OH、−CFZ*COOH、−CFZ*COOR
h、および−CFZ*−CH
2(OCH
2CH
2)
k−OHのいずれかの基から選択され、kは0〜10の範囲に含まれる整数であり、Z*はFまたはCF
3であり;R
hは炭化水素鎖である)。
【0026】
化合物(CN−PFPE)は、鎖末端にニトリル基を導入するために好適な化学反応を、入手可能なPFPE前駆体に適用することで合成することができる。
【0027】
化合物(CN−PFPE)は、とりわけ、米国特許第6984759号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)(2004年4月8日)、特に、米国特許第3810874号明細書(MINNESOTA MINING)(1974年5月14日)、米国特許第4647413号明細書(MINNESOTA MINING)(1987年3月3日)および米国特許第5545693号明細書(DU PONT)(1996年8月13日)の実施例1において記載される合成方法によって、とりわけ製造することができる。
【0028】
化合物(CN−PFPE)の量は、通常、フルオロエラストマー(A)の100重量部当たり0.1〜30重量部の範囲であり、好ましくはフルオロエラストマー(A)の100重量部当たり0.5〜15重量部の範囲であり、より好ましくはフルオロエラストマー(A)の100重量部当たり1〜10重量部の範囲である。
【0029】
述べられたように、組成物(C)は、少なくとも1つの−NH−基を含むニトリル硬化助剤[薬剤(A)]を含む。
【0030】
実際に、本出願人は、この理論によって拘束されないが、少なくとも1つの−NH−基を含むニトリル硬化化合物が、適切な硬化温度でアンモニアおよび/またはアミンを発生させており、これらは、向上した性能をもたらすための前記プロセス中においてニトリル基のトリアジンへの環化を正に促進し、かつ触媒していると考えている。
【0031】
ニトリル硬化助剤は、
(i)式(Ur):
(式中、Eは、OまたはSであり、好ましくは、Eは、Oであり、かつ互いに等しいかまたは異なるR
uの各々は、水素およびC
1〜C
6炭化水素基(特にC
1〜C
6アルキル基)からなる群から独立して選択される)
の(チオ)尿素化合物;
(ii)アンモニアまたは第一級アミンとアルデヒトとの環状付加生成物;
(iii)式(Ca):
(式中、Eは、酸素または硫黄であり;R
bは、C
1〜C
36炭化水素基であり、かつR
cは、HまたはC
1〜C
6アルキル基である)
の(チオ)カルバマート
からなる群から選択されることが好ましい。
【0032】
好適な薬剤(A)の中で、上に詳述されたとおりの(チオ)尿素化合物は、好ましくは
(i−A)式(Ur−2):
(式中、E’は、OまたはSである)
の(チオ)尿素からなる群から選択され;
上に詳述されたとおりの、アンモニアまたは第一級アミンとアルデヒドとの環状付加生成物は、好ましくは
(ii−A)式(T):
(式中、互いに等しいかまたは異なるR
aの各々は、水素およびC
1〜C
6炭化水素基(特にC
1〜C
6アルキル基)からなる群から選択される)
の環状アルデヒド付加物三量体からなる群から選択され;
上で詳述されたとおりの(チオ)カルバマートは、好ましくは式(Ca−1):
(式中、R’
dは、C
1〜C
36炭化水素基、好ましくは任意選択的に置換されたベンジル基である)
のカルバマートからなる群から選択される。
【0033】
本発明の組成物中で特に有用であると見出された薬剤(A)は、以下:
(Ag A−2)式:
のアセトアルデヒドアンモニア三量体
(Ag A−3)式:
のベンジルカルバマート
である。
【0034】
薬剤(A)の量は、通常、フルオロエラストマー(A)の100重量部当たり0.1〜10重量部の範囲であり、好ましくはフルオロエラストマー(A)の100重量部当たり0.1〜5重量部の範囲であり、より好ましくはフルオロエラストマー(A)の100重量部当たり0.1〜2重量部の範囲である。
【0035】
薬剤(A)の使用は、ニトリル基からトリアジンへの環化三量化を促進することが知られる他の可能な触媒または助剤と比べて特に有利であり、というのも、これらの薬剤は熱に不安定であり、硬化中にそれらの寄与がいったんなされると、それらはもはや逆反応を触媒しなくなり、場合により、分解事象をもたらすためである。
【0036】
前述のように、組成物(C)は、少なくとも1種の多価不飽和化合物または化合物(U)を含む。「多価不飽和化合物」という表現は、本明細書では、2つ以上の炭素−炭素不飽和を含む化合物を示すものとする。
【0037】
組成物(C)は、上述のように1種または2種以上の化合物(U)を含み得る。
【0038】
化合物(U)は、2つの炭素−炭素不飽和を含む化合物、3つの炭素−炭素不飽和を含む化合物、および4つまたは5つ以上の炭素−炭素不飽和を含む化合物から選択され得る。
【0039】
2つの炭素−炭素不飽和を含む化合物(U)の中で、一般式:
(式中、互いに等しいかまたは異なるR
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、Hまたは基−R
OFまたは−OR
OFであり、R
OFは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり;Zは、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された、酸素原子を任意選択で含有する直鎖または分岐のC
1〜C
18炭化水素基(アルキレンまたはシクロアルキレン基を含む)、または1つ以上のカテナリーエーテル性結合を含む(パー)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基である)を有するビス−オレフィン[ビス−オレフィン(OF)]を挙げることができる。
【0040】
ビス−オレフィン(OF)は、好ましくは、式(OF−1)、式(OF−2)および式(OF−3):
(式中、jは2〜10、好ましくは4〜8の整数であり、互いに等しいかまたは異なるR1、R2、R3、R4は、H、FまたはC
1〜5アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル基であり;好ましくは、R1、R2がHであり、かつjが4または6であり;(OF−1)タイプの好ましいビス−オレフィンは、H
2C=CH−(CF
2)
4−CH=CH
2またはH
2C=CH−(CF
2)
6−CH=CH
2である)
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるAの各々は、独立して、F、Cl、およびHから選択され;互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるBの各々は、独立して、F、Cl、HおよびOR
Bから選択され、R
Bは、部分的に、実質的にまたは完全にフッ化もしくは塩素化されている場合があるC
1〜C
5の分岐もしくは直鎖のアルキル基であり;Eは、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択によりフッ素化された、2〜10個の炭素原子を有する二価の基であり;好ましくは、Eは、mが3〜5の整数である−(CF
2)
m−基であり;(OF−2)タイプの好ましいビス−オレフィンは、F
2C=CF−O−(CF
2)
5−O−CF=CF
2である)
(式中、E、AおよびBは、上で定義されたものと同じ意味を有し;互いに等しいかまたは異なるR5、R6、R7は、H、FまたはC
1〜5アルキルもしくはC
1〜5(パー)フルオロアルキル基である)
を満たすものからなる群から選択される。
【0041】
3つの炭素−炭素不飽和を含む化合物(U)の中で、次のものを挙げることができる:
− 一般式:
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR
cyの各々は、独立して、H、または基−R
rcyもしくは−OR
rcyから選択され、R
rcyは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるJ
cyの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合または二価炭化水素基から選択される)の三置換シアヌラート化合物であって;
三置換シアヌラート化合物は、とりわけ好ましいトリアリルシアヌラート、トリビニルシアヌラートを含み;
− 一般式:
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR
isocyの各々は、独立して、H、または基−R
risocyもしくは−OR
risocyから選択され、R
risocyは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるJ
isocyの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合または二価炭化水素基から選択される)の三置換イソシアヌラート化合物であって;
三置換イソシアヌラート化合物は、とりわけ好ましいトリアリルイソシアヌラート(それ以外の場合は、「TAIC」と呼ばれる)トリビニルイソシアヌラートであり、TAICが最も好ましく;
− 一般式:
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR
azの各々は、独立して、H、または基−R
razもしくは−OR
razから選択され、R
razは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるJ
azの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合または二価炭化水素基から選択される)の三置換トリアジン化合物であって;三置換トリアジン化合物は、
とりわけ欧州特許出願公開第0860436A号明細書(AUSIMONT SPA)(1998年8月26日)および国際公開第97/05122号パンフレット(DU PONT)(1997年2月13日)に開示される化合物を含み;
− 一般式:
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR
phの各々は、独立して、H、または基−R
rphもしくは−OR
rphから選択され、R
rphは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるJ
phの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合または二価炭化水素基から選択される)の三置換亜リン酸塩化合物であって;三置換亜リン酸塩化合物は、
とりわけ好ましいトリ−アリル亜リン酸塩を含み;
− 一般式:
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR
siの各々は、独立して、H、または基−R
rsiもしくは−OR
rsiから選択され、R
rsiは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR’
siの各々は、独立して、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキル基から選択され、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるJ
siの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合または二価炭化水素基から選択される)の三置換アルキルトリシロキサンであって;三置換アルキルトリシロキサン化合物は、とりわけ好ましい2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサンおよび2,4,6−トリビニルエチルトリシロキサンを含み;
− 一般式:
(式中、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるR
anの各々は、独立して、H、または基−R
ranもしくは−OR
ranから選択され、R
ranは、場合によりハロゲンを含むC
1〜C
5アルキルであり、互いにおよび各存在で等しいかまたは異なるJ
anの各々は、独立して、ヘテロ原子を任意選択的に含む結合または二価炭化水素基から選択される)のN,N−二置換アクリルアミド化合物であって;N,N−二置換アクリルアミド化合物は、とりわけ好ましいN,N−ジアリルアクリルアミドを含む。
【0042】
4つ以上の炭素−炭素不飽和を含む化合物(U)の中で、式
のトリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン、ヘキサ−アリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラ−アリルテレフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラ−アリルマロンアミドを挙げることができる。
【0043】
一般的に、化合物(U)が、(i)上に詳述されたとおりのオレフィン(OF)、特に(OF−1)タイプのオレフィン;および(ii)上に詳述されたとおりの三置換イソシアヌラート化合物、特にTAICからなる群から選択されることが好ましい。
【0044】
化合物(U)の量は、通常、フルオロエラストマー(A)の100重量部当たり0.1〜10重量部の範囲であり、好ましくはフルオロエラストマー(A)の100重量部当たり0.1〜5重量部の範囲であり、より好ましくはフルオロエラストマー(A)の100重量部当たり0.1〜2重量部の範囲である。
【0045】
本発明の目的のために、用語「(パー)フルオロエラストマー」[フルオロエラストマー(A)]は、真のエラストマーを得るための基本構成成分として役立つフルオロポリマー樹脂を指すことが意図され、前記フルオロポリマー樹脂は、10重量%超、好ましくは30重量%超の、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以下、(パー)フッ素化モノマー)に由来する繰り返し単位、および任意選択により、フッ素原子を含まない少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以下、水素化モノマー)に由来する繰り返し単位を含む。
【0046】
真のエラストマーは、それらの固有の長さの2倍まで室温で引き伸ばすことができ、そして5分間張力下にそれらを保持した後にそれらが解放されると、同時にそれらの最初の長さの10%以内に戻る材料として、ASTM,Special Technical Bulletin,No.184標準により定義されている。
【0047】
通常、フルオロエラストマー(A)は、上に詳述されたとおりのモノマー(CSM)に由来する繰り返し単位に加えて、少なくとも1種の(パー)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み、前記(パー)フッ素化モノマーは通常、
− テトラフルオロエチレン(TFE)およびヘキサフルオロプロペン(HFP)などの、C
2〜C
8パーフルオロオレフィン;
− フッ化ビニルなどのC
2〜C
8水素含有フルオロオレフィン;
1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、ペンタフルオロプロピレン、およびヘキサフルオロイソブチレン;
− 式CH
2=CH−R
f0(式中、R
f0は、C
1〜C
6(パー)フルオロアルキルまたは1つ以上のエーテル基を有するC
1〜C
6(パー)フルオロオキシアルキルである)を満たす(パー)フルオロアルキルエチレン;
− クロロトリフルオロエチレン(CTFE)のようなクロロ−、および/またはブロモ−、および/またはヨード−C
2〜C
6フルオロオレフィン;
− 式CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1〜C
6フルオロ−またはパーフルオロアルキル、例えば、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7である)を満たすフルオロアルキルビニルエーテル;
− 式CH
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1〜C
6フルオロ−またはパーフルオロアルキル、例えば、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7である)を満たすヒドロフルオロアルキルビニルエーテル;
− 式CF
2=CFOX
0(式中、X
0は、1つ以上のエーテル基を有するC
1〜C
12オキシアルキルまたはC
1〜C
12(パー)フルオロオキシアルキルである)を満たすフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル;特に式CF
2=CFOCF
2OR
f2(式中、R
f2は、C
1〜C
6フルオロ−またはパーフルオロアルキル、例えば、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7または−C
2F
5−O−CF
3のような、1つ以上のエーテル基を有するC
1〜C
6(パー)フルオロオキシアルキルである)を満たす(パー)フルオロ−メトキシ−ビニルエーテル;
− 式CF
2=CFOY
0(式中、Y
0は、C
1〜C
12アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル、またはC
1〜C
12オキシアルキルもしくはC
1〜C
12(パー)フルオロオキシアルキルであり、前記Y
0基は、カルボン酸基またはスルホン酸基を、その酸、酸ハライドもしくは塩の形態で含む)を満たす官能性フルオロ−アルキルビニルエーテル;
− 式:
(式中、互いに等しいかまたは異なる、R
f3、R
f4、R
f5、R
f6の各々は、独立して、フッ素原子、1つ以上の酸素原子を任意選択で含むC
1〜C
6フルオロ−またはパー(ハロ)フルオロアルキル、例えば−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−OCF
3、−OCF
2CF
2OCF
3である)の(パー)フルオロジオキソール
からなる群から選択される。
【0048】
水素化モノマーの例は、とりわけ、エチレン、プロピレン、1−ブテンを含む、水素化アルファ−オレフィン、ジエンモノマー、スチレンモノマーであり、アルファ−オレフィンが典型的に使用される。
【0049】
フルオロエラストマー(A)は、一般に、非晶質生成物、または低い結晶化度(20体積%未満の結晶相)および室温未満のガラス転移温度(T
g)を有する生成物である。ほとんどの場合、フルオロエラストマー(A)は、有利には10℃未満、好ましくは5℃未満、より好ましくは0℃のT
gを有する。
【0050】
フルオロエラストマー(A)は、好ましくは、
(1)VDF系コポリマー(ここで、VDFは、上に詳述されたとおりのモノマー(CSM)、および
(a)C
2〜C
8パーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP);
(b)水素含有C
2〜C
8オレフィン、例えば、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロイソブテン(HFIB)、式CH
2=CH−R
f(式中、R
fは、C
1〜C
6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン;
(c)ヨウ素、塩素および臭素の少なくとも1つを含む、C
2〜C
8フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d)式CF
2=CFOR
f(式中、R
fは、C
1〜C
6(パー)フルオロアルキル基、好ましくは、CF
3、C
2F
5、C
3F
7である)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF
2=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC
1〜C
12((パー)フルオロ)−オキシアルキル、例えば、パーフルオロ−2−プロポキシプロピル基である)の(パー)フルオロ−オキシ−アルキルビニルエーテル;
(f)式:
(式中、互いに等しいかまたは異なる、R
f3、R
f4、R
f5、R
f6の各々は、独立して、フッ素原子、および任意選択で1個または2個以上の酸素原子を含む、C
1〜C
6(パー)フルオロアルキル基、例えば、とりわけ−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−OCF
3、−OCF
2CF
2OCF
3からなる群から選択される)を有する(パー)フルオロジオキソール;好ましくはパーフルオロジオキソール;
(g)式:
CF
2=CFOCF
2OR
f2
を有する(パー)フルオロ−メトキシ−ビニルエーテル(以下、MOVE)
(式中、R
f2は、C
1〜C
6(パー)フルオロアルキル;C
5〜C
6環状(パー)フルオロアルキル;および少なくとも1つのカテナリー酸素原子を含むC
2〜C
6(パー)フルオロオキシアルキルからなる群から選択され;R
f2は、好ましくは−CF
2CF
3(MOVE1);−CF
2CF
2OCF
3(MOVE2);または−CF
3(MOVE3)である);
(h)C
2〜C
8非フッ素化オレフィン(Ol)、例えばエチレンおよびプロピレン
からなる群から選択される少なくとも1つの追加のコモノマーと共重合されている);ならびに
(2)TFE系コポリマー(ここで、TFEは、上に詳述されたとおりのモノマー(CSM)、ならびに上に詳述されたとおりの(c)、(d)、(e)、(g)、(h)、および(i)からなる群から選択される少なくとも1つの追加のコモノマーと共重合されている)
の中で選択される。
【0051】
フルオロエラストマー(A)は通常、上に詳述されたとおりのTFE系コポリマーの中で選択される。
【0052】
任意選択により、本発明のフルオロエラストマー(A)はまた、上に詳述されたとおりの、ビス−オレフィン[ビス−オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位を含んでもよい。
【0053】
フルオロエラストマー(A)に含まれる、上に詳述されたとおりのタイプ(CSM)の硬化部位含有モノマーの中で、好ましいモノマーは、(パー)フッ素化されており、特に、
(CSM−1)X
CNがFまたはCF
3であり、mが0、1、2、3または4であり;nが1〜12の整数である、式CF
2=CF−(OCF
2CFX
CN)
m−O−(CF
2)
n−CNのニトリル基含有パーフルオロビニルエーテル;
(CSM−2)X
CNがFまたはCF
3であり、m’が0、1、2、3または4である、式CF
2=CF−(OCF
2CFX
CN)
m’−O−CF
2−CF(CF
3)−CNのニトリル基含有パーフルオロビニルエーテル
からなる群から選択されるものである。
【0054】
本発明の目的に好適なタイプCSM−1およびCSM−2の硬化部位含有モノマーの具体例としては、とりわけ、米国特許第4281092号明細書(DU PONT)(1981年7月28日)、米国特許第4281092号明細書(DU PONT)(1981年7月28日)、米国特許第5447993号明細書(DU PONT)(1995年9月5日)、および米国特許第5789489号明細書(DU PONT)(1998年8月4日)に記載されているものである。
【0055】
好ましい硬化部位モノマーは、式:CF
2=CF−O−CF
2−CF(CF
3)−O−CF
2−CF
2−CN(8−CNVE)のパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)である。
【0056】
前述のように、フルオロエラストマー(A)は、ヨウ素および/または臭素硬化部位を含む。
【0057】
これらのヨウ素および/または臭素硬化部位は、フルオロエラストマー(A)ポリマー鎖の主鎖に結合されたペンダント基として含まれてよく、あるいは、前記ポリマー鎖の末端基として含まれてもよい。
【0058】
第1の実施形態によれば、ヨウ素および/または臭素硬化部位は、フルオロエラストマー(A)ポリマー鎖の主鎖に対して結合されたペンダント基として含まれ;この実施形態によるフルオロエラストマー(A)は、通常、
− 例えば、米国特許第4035565号明細書(DU PONT)(1977年7月12日)に記載のブロモトリフルオロエチレンもしくはブロモテトラフルオロブテン、または米国特許第4694045号明細書(DU PONT)(1987年9月15日)に開示の他の化合物であるブロモおよび/またはヨードアルファ−オレフィンなどの、2〜10個の炭素原子を含有するブロモおよび/またはヨードアルファ−オレフィン;
− ヨードおよび/またはブロモフルオロアルキルビニルエーテル(とりわけ、米国特許第4564662号明細書(MINNESOTA MINING & MFG[US])(1986年1月14日)および欧州特許出願公開第199138A号明細書(DAIKIN IND LTD)(1986年10月29日)の特許に記載のとおり)
から選択される臭素化および/またはヨウ素化硬化部位コモノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0059】
第2の好ましい実施形態によれば、ヨウ素および/または臭素硬化部位(好ましくは、ヨウ素硬化部位)は、フルオロエラストマー(A)ポリマー鎖の末端基として含まれ;この実施形態によるフルオロエラストマーは、通常、
− ヨウ素化および/または臭素化連鎖移動剤;好適な鎖−鎖移動剤は、典型的には式R
f(I)
x(Br)
y(式中、R
fは、1〜8個の炭素原子を含有する(パー)フルオロアルキルまたは(パー)フルオロクロロアルキルである一方で、xおよびyは、1≦x+y≦2の0〜2の整数である)のものである(例えば、米国特許第4243770号明細書(DAIKIN IND LTD)(1981年1月6日)および米国特許第4943622号明細書(NIPPON MEKTRON KK)(1990年7月24日)を参照されたい);ならびに
− とりわけ米国特許第5173553号明細書(AUSIMONT SRL)(1992年12月22日)に記載のものなどの、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ヨウ化物および/または臭化物
の少なくとも1つのフルオロエラストマー(A)製造中の重合媒体への添加によって得られる。
【0060】
有利には、許容される反応性を確保するために、フルオロエラストマー(A)中のヨウ素および/または臭素の含有量がフルオロエラストマー(A)の合計重量に対して少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.06重量%でなければならないということが一般に理解されている。
【0061】
他方で、フルオロエラストマー(A)の合計重量に対して、好ましくは7重量%を超えない、より具体的には5重量%を超えない、またはさらには4重量%を超えないヨウ素および/または臭素の量は、一般に副反応および/または熱安定性に対する悪影響を回避するために選択されるものである。
【0062】
本発明の組成物中で使用することができる例示的なフルオロエラストマー(A)は、末端基として含まれるヨウ素硬化部位を有し、かつ以下のモノマー組成(繰り返し単位の合計モル数に対するモル%):
(i)テトラフルオロエチレン(TFE):50〜80%;(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE):15〜50%;モノマー(CMS):0.1〜10%;ビス−オレフィン(OF):0〜5%;
(ii)テトラフルオロエチレン(TFE):20〜70%;(パー)フルオロ−メトキシ−ビニルエーテル(MOVE):25〜75%;(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE):0〜50%;モノマー(CMS)0.1〜10%;ビス−オレフィン(OF):0〜5%を有するものである。
【0063】
組成物(C)はさらに、少なくとも有機過酸化物[過酸化物(O)]を含み;前記過酸化物(O)の選択は、それが熱分解によりラジカルを発生させることができるのであれば、特に重大ではない。最も一般的に使用される過酸化物の中で、例えば、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシドを含むジ(アルキル/アリール(alryl))ペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド、ジコハク酸ペルオキシド、ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、デカノイルペルオキシドを含むジアシルペルオキシド;ジ−tert−ブチルペルベンゾアート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、1,1,3,3−テトラメチルエチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンを含む過カルボン酸およびエステル;とりわけジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボナート、ジ(2−フェノキシエチル)ペルオキシジカルボナート、ビス[1,3−ジメチル−3−(tert−ブチルペルオキシ)ブチル]カルボナート、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルカルボナート、およびt−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナートを含むペルオキシカルボナートを挙げることができる。他の好適な過酸化物系は、とりわけ、欧州特許出願公開第136596A号明細書(MONTEDISON SPA)(1985年4月10日)および欧州特許出願公開第410351A号明細書(AUSIMONT SRL)(1991年1月30日)に記載のものであり、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
硬化条件(時間、温度)に応じた最も適切な過酸化物の選択は、とりわけ過酸化物(O)の10時間での半減時間温度を考慮して、当業者によってなされることになる。
【0065】
組成物(C)中の過酸化物(O)の量は通常、フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、0.1〜5phr、好ましくは0.2〜4phrである。
【0066】
組成物(C)はさらに、フルオロエラストマーの過酸化物硬化に一般的に使用され得る成分を追加的に含んでもよく、より具体的には、組成物(C)は通常さらに:
(a)フルオロエラストマー(A)100重量部に対して、通常0.5〜15phr、好ましくは1〜10phrの量の、1種または2種以上の金属系塩基性化合物;金属系塩基性化合物は、通常、(j)例えばMg、Zn、Ca、もしくはPbの酸化物または水酸化物などの、二価金属の酸化物または水酸化物、ならびに(jj)例えばBa、Na、K、Pb、Caのステアリン酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、または亜リン酸塩などの弱酸の金属塩、からなる群から選択される;
(b)フルオロエラストマー(A)100重量部に対して、通常0.5〜15phr、好ましくは1〜10phrの量の、金属系塩基性化合物ではない1種または2種以上の酸受容体;これらの酸受容体は通常、とりわけ欧州特許出願公開第708797A号明細書(DU PONT)(1996年5月1日)に記載のような、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、オクタデシルアミンなどの窒素含有有機化合物から選択される;
(c)他の従来の添加剤、例えば、フィラー、増粘剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、加工助剤など
を含んでもよい。
【0067】
本発明はまた、上に記載されたとおりの、組成物(C)を硬化させる工程を含む、造形物品を加工する方法に関する。
【0068】
組成物(C)は、例えば、成形(射出成形、押出成形)、カレンダー加工、または押出しによって、所望の造形物品に加工することができ、造形物品は有利には、加工それ自体の間および/またはその後の工程(後処理または後硬化)において加硫(硬化)に供され、有利には、相対的に柔らかく、弱いフルオロエラストマー未硬化組成物を、非粘着性の、強い、不溶性の耐化学薬品性および耐熱性の硬化フルオロエラストマー材料から作られた完成物品に変換させる。
【0069】
さらに、本発明は、上で詳述されたとおりの、組成物(C)から得られた硬化物品に関する。前記硬化物品は、一般に、上で詳述されたとおりの、フルオロエラストマー組成物を成形し、かつ硬化させることによって得られる。これらの硬化物品は、O(正方形)−リング、パッキン、ガスケット、ダイヤフラム、軸シール、バルブステムシール、ピストンリング、クランクシャフトシール、クラムシャフトシールおよびオイルシールを含む、シーリング物品、または恐らくは配管および管類、特に、炭化水素流体および燃料の送達のための導管を含む、フレキシブルホースもしくは他の品目であってもよい。
【0070】
組成物(C)から得られる硬化物品は、それらの顕著な熱および水蒸気耐性によって、極めて要求の厳しい使用条件が、例えば、油ならびにガス市場におけるシール、部材、およびシーリング要素であるガスケット、ホース、チューブとしての使用のために水蒸気への暴露と組み合わされる、活動分野における使用に好適である。
【0071】
さらに加えて、本発明は、射出成形、圧縮成形、押出成形、コーティング、スクリーン印刷技術、フォームインプレース技術のいずれかによる、上に詳述されたような、組成物(C)の加工方法に関する。
【0072】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が、用語を不明瞭にさせ得る程度まで本記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0073】
本発明はこれから、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、実施例の目的は、例示的であるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0074】
ニトリル含有フルオロエラストマーの製造
実施例1
630rpmで動作する機械撹拌機を備えた5リットルの反応器に3.1リットルの脱塩水、および式:CF
2ClO(CF
2−CF(CF
3)O)
n(CF
2O)
mCF
2COOH(式中、n/m=10であり、600の平均分子量を有する)の酸性末端基を有する7.4mlのパーフルオロポリオキシアルキレンと、1.9mlの30%v/vNH
4OH水溶液と、17.4mlの脱塩水と、n/m=20の、450の平均分子量を有する式:
CF
3O(CF
2CF(CF
3)O)
n(CF
2O)
mCF
3の4.3mlのGALDEN(登録商標)D02パーフルオロポリエーテルとを混合することによって予め得られた、31mlのマイクロエマルションを導入した。
【0075】
次に、連鎖移動剤として1,4−ジヨードパーフルオロブタン(C
4F
8I
2)2.5gを導入し、反応器を加熱し、80℃の設定値温度に維持し;続いて、テトラフルオロエチレン(TFE)(38モル%)とパーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)(62モル%)の混合物を添加して、最終圧力21bar(2.1MPa)に達した。開始剤としての0.31gの過硫酸アンモニウム(APS)を次に導入した。TFE(60モル%)およびMVE(40モル%)の混合気体を合計1350gまで連続的に供給することにより、圧力を21barの設定値に維持し、129gの8−CNVEを重合開始から変換が各5%増加する毎に20回に分けて反応器に供給した。さらに、0.16gのAPSを混合気体の変換が15%、40%、および55%の時点で導入した。次に、反応器を冷却し、ガス抜きし、ラテックスを回収した。凝固剤として硝酸を用いてラテックスを凝固させ、ポリマーを水相から分離し、脱イオン水で洗浄し、120℃の対流式乾燥機内で24時間乾燥させた。
【0076】
得られるポリマーの組成は、NMR分析から、TFE 64.6モル%、MVE 34.2モル%、8−CNVE 1.2モル%であることがわかった。また、121℃でのムーニー粘度は64MUである。
【0077】
一般的な配合および硬化手順
実施例1のフルオロエラストマーを、2ロールのオープンミル中で下に詳述されるような成分と配合した。プラークを加圧モールド内で硬化させ、次いで、空気循環オーブン内にて下表に詳述された条件で後処理した。
【0078】
ムービング・ダイ・レオメータ(MDR)により、以下に明記される条件で、以下の特性を決定することによって、硬化挙動を特徴付けした:
M
L=最小トルク(lb×in)
M
H=最大トルク(lb×in)
t
S2=スコーチ時間、M
Lから2単位上昇のための時間(秒);
t
50=50%の硬化状態までの時間(秒);
t
90=90%の硬化状態までの時間(秒)。
【0079】
後硬化の後および220℃または250℃で過熱された水蒸気への暴露後、ASTM D 412標準に準拠して、プラークから打ち抜いた試験片で引張特性を測定した。
【0080】
TSはMPa単位での引張強度であり;
M
100は、100%の伸びにおけるMPa単位での弾性率であり;
E.B.は、%単位での破断点伸びである。
【0081】
水蒸気に暴露した際の特性の変化量(重量変化、体積膨潤率および機械的特性を含む)を、後硬化の後の硬化試料で測定された対応する特性値に対する百分率として再収集した。値「破壊された試験片」(本明細書中下記の表3における「D」)は、試験片が暴露によって破壊され、その結果有効な測定ができなかったことを意味する。
【0082】
圧縮永久歪み(CS)値を、200℃〜300℃の範囲の温度で、ASTM D 395 方法Bに準拠して、Oリング(#214クラス)で測定した。表の値は、4つの試験片でなされた測定の平均値である。値「破壊された試験片」(本明細書中下記の表3における「D」)は、示された条件における圧縮により全ての試験片が破壊され、その結果、変形%の測定ができなかったことを意味する。
【0083】
硬化配合処方および条件、ならびに220℃または250℃での水蒸気への暴露前後の硬化した試料の特性をそれぞれ表1〜表3に要約する。
【0084】
【0085】
【0086】
【国際調査報告】