(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-533155(P2019-533155A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】スプライスのライフサイクルを予測するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/04 20060101AFI20191018BHJP
【FI】
G01R31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-521054(P2019-521054)
(86)(22)【出願日】2017年10月18日
(85)【翻訳文提出日】2019年6月12日
(86)【国際出願番号】US2017057141
(87)【国際公開番号】WO2018075617
(87)【国際公開日】20180426
(31)【優先権主張番号】15/297,460
(32)【優先日】2016年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519138760
【氏名又は名称】スマートケーブル、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーシュ、ダグラス エス.
(72)【発明者】
【氏名】ミュールマン、マイケル
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA23
2G014AB33
2G014AB43
2G014AC08
2G014AC19
(57)【要約】
被試験回路に特有の予測故障アルゴリズムを介して、ゼロ交差角度歪みにおける波形シフトによって接合部特性を決定することができる、監視装置および使用方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプライスのライフサイクルを予測する方法であって、
a)正弦波、ならびに、監視時点の振幅と開始時点の振幅との第1の比、および、前記監視時点の周期と前記開始時点の前記周期とに基づく周期変化率を使用して信号曲線のゼロ交差点付近で、前記スプライスの信号曲線の逸脱に基づいて所定の構成のスプライスの経時的なベースラインを確立するステップと、
b)稼働中スプライスの前記信号についてステップ(a)で使用された前記逸脱を使用して前記稼働中スプライスの信号のゼロ交差点付近で前記稼働中スプライスを監視するステップと、
c)前記稼働中スプライスの劣化および崩壊率曲線を決定するために、ステップ(a)の前記ベースラインをステップ(b)からの情報と比較するステップであって、前記崩壊率曲線は、前記稼働中スプライスの残存有用寿命の割合および故障までの時間の指標を提供し、前記崩壊率曲線は、有用寿命および故障までの時間について他のスプライスを監視するためのガイドを提供する、比較するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記スプライスが伝送線でのスプライスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法を実施するのに適した装置であって、
a)スプライスにわたる瞬間電位を決定するためのプローブと、
b)前記スプライスに基づいて瞬間電流出力を決定するための電流検知装置と、
c)関連装置を支持するための非導電性プラットフォームであって、前記関連装置は、監視中の稼働中スプライスからデータを収集および分析する、非導電性プラットフォームと、
d)ベースラインを確立し、前記稼働中スプライスを監視し、ステップ(a)の前記ベースラインをステップ(b)からの情報と比較して前記稼働中スプライスの劣化および崩壊率曲線を決定するための手段と
を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本技法を使用し、スプライス(splice)の将来の故障期間を予測するために劣化の属性を監視して、電流を通過させ、検証し、分析することができる、類似または異なる材料で継がれる任意の接合部に関する。
【背景技術】
【0002】
送電網の接続点は、歴史的に、スプライスと呼ばれる機械的手段を介して結合されてきた。これらの接合部は、通常、あらゆる伝送網の「弱いリンク」であり、現在これらの部品を機械的に接合した後にスプライスの完全性を判定する方法は限られている。これらのスプライスを現場に設置する場合、最初の設置時または環境条件もしくは材料の劣化による将来の故障からスプライスの完全性を検査するための簡単で費用対効果の高い方法は存在しない。この劣化は導電性を低下させ、伝送損失を増大され、典型的にはスプライスが交換される前に壊滅的な故障を招く。
【0003】
設置されたスプライスの状態を特性化し、壊滅的な事態が起こる前にスプライスの平均寿命を予測するために迅速、正確、かつ費用効果的に展開することができる技術および/または製品に対する重大な要求がある。予防保守実務は、ネットワークを維持するためのマンパワー、予算、およびリソースを予測する手段を管理に提供する「故障までの時間」(TTF)情報を用いて展開することができる。
【0004】
接合部完全性の予防保守を必要とするそのような典型的な用途の1つは、各々が約1/2km毎にスプライスを必要とする高出力高圧線からなる高電圧送電網である。電力線のこれらの個々の区画は、大きな機械的圧着スプライスによって接続される。これは、公益事業会社による重要なリンクと考えられている。現在、これらの接合部の大部分は平均寿命を過ぎており、本質的に北米全域の壊滅的な故障に起因する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、劣化について接合部を監視することによって配備されたスプライスの平均寿命を予測する方法を提供する。
【0006】
過去の従来技術は、良好なスプライスまたは不良な(故障した)スプライスを決定する手段のみを提供していた。過去の先行技術は単一信号測定のゼロ交差法に言及しているが、これらの限界試験法は、壊滅的な故障を防止しまたは平均寿命を予測する手段を提供しない。
【0007】
スプライスの状態を監視する本発明の方法は、特定のタイプのスプライス(各々が幾分異なる)について既知のベースライン信号を確立することと、波形のゼロ交差点、電圧(振幅)、および周期(時間長)に関してこれらの特性を定義することとを含む。理想的には、正弦波の角度成分は垂直、すなわちX軸に対して90度であるべきである。ベースライン正弦波は、監視されている特定のタイプのスプライスに起因する予測測定値を最もよく示す電流、電圧、これらの任意の高調波、またはこれらの信号の組み合わせであり得る。将来の波形は、観察中の特定のスプライスのベースライン信号および/または以前の波形と比較したときのゼロ交差点の角度、振幅、および周期成分の集約に基づく崩壊率を示す。崩壊率は特定の接合部の平均寿命を決定するために予測される。
【0008】
ゼロ交差点における角変位、正弦波の周期、および/またはこれらの個々の信号の他の信号特性は、ネットワーク管理にTTF情報を提供するためのアルゴリズムを通して集約される。
【0009】
過去の従来技術はそのような測定技術を個々に記載してきたが、将来の故障モードまたは平均寿命を予測する方法においてこれらの測定の成分を組み合わせまたは分析したものはない。そのような例は、被試験スプライスの劣化を示す10%以上の角変位電圧信号を含む。この時点で、被試験スプライスは内在的な故障点にある。または、別の例は、150度以上の位相シフトを有する原信号の高調波の測定を含んでもよい。ここでも、被試験スプライスは切迫した故障点にあり、予測不可能である。
【0010】
本発明は、費用対効果の高い予防的管理を実施するためにネットワーク管理にリアルタイムの予測手段を提供するための方法および装置を提供する。装置および包括的通信ネットワークは、中央ロケーションからこれらの重要な決定を可能にする。より詳細には、一形態において、本発明の方法は、最初に、正弦波、ならびに、監視時点の振幅と開始時点の振幅との第1の比、および、監視時点の周期と開始時点の周期とに基づく周期変化率を使用して、信号曲線のゼロ交差点付近におけるスプライスの信号曲線の逸脱に基づいて、所定の構成のスプライスの経時的なベースラインを確立することによって、スプライスのライフサイクルを予測する。次に、ステップで使用された逸脱を使用して稼働中スプライスがゼロ交差点付近で監視され、稼働中スプライスの劣化を決定するために、ベースラインが監視ステップからの情報と比較される。この監視により、時間対崩壊率をプロットした崩壊率曲線を作成することが可能になる。これにより、稼働中スプライスの残り有用寿命および故障までの時間を決定することができ、スプライスの修理または交換が必要になり得る時期を決定する目的で、この崩壊率曲線を使用して同様のスプライスの挙動を予測することができる。スプライスはどのようなタイプでもよいが、好ましいスプライスは伝送線におけるスプライスである。本発明はまた、本発明の方法を実施するのに適した装置を含み、装置は、スプライスにわたる瞬間電位を決定するためのプローブと、スプライスに基づいて瞬間電流出力を決定するための電流検知装置と、ベースラインを確立し、稼働中スプライスを監視し、稼働中スプライスの劣化および崩壊率曲線を決定するためにステップ(a)のベースラインとステップ(b)からの情報とを比較するための手段とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1a】伝送線スプライス、その部品、および電気スプライスの監視位置の典型的な例を示す図である。
【
図1b】伝送線スプライス、その部品、および電気スプライスの監視位置の典型的な例を示す図である。
【
図2】アルゴリズムに入力するための電位、電流出力、および計算された高調波比の処理を示すフローチャートである。
【
図3】既知の新しいスプライスについての時間期間に対する電圧および電流の正規化値のグラフ図である。
【
図4】既知の欠陥スプライスの時間期間に対する電圧および電流の正規化値のグラフ図である。
【
図5】第2の既知の欠陥スプライスの時間期間に対する電圧および電流の正規化値のグラフ図である。
【
図6】「完璧な」正弦波形に対するゼロ交差点における新しいスプライスの詳細図である。
【
図7】「完璧な」正弦波形に対するゼロ交差点における既知の良好なスプライスの詳細図である。
【
図8】「完璧な」正弦波形に対するゼロ交差点における既知の良好なスプライスの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、スプライスの重要な構成要素の各々を測定し、組み合わせ属性調査を行い、完全なTTF予測分析を行い、管理行動のために遠隔中央ロジスティックシステムに報告するための装置および方法を提供する。
【0013】
図1aを参照すると、瞬間電流101および電位(正弦波形)111がシステム内に含まれるか、または伝送線1およびスプライス3に特定の時間にわたって導入される、典型的な伝送線1およびスプライス3が示されている。電圧プローブ103はデバイスクランプシステムの一部として設置されて、点102および104におけるスプライスにわたる瞬間電圧降下を監視し、波形の振幅特性成分(約1ボルト)を提供する。電流検知装置105は、瞬間電流101を同時に測定するように構成されている。
図1bは、
図1aの装置の代替物を示す。典型的なロックオン式クランプ303が、評価中のスプライスの両端において伝送線に取り付けられる。これらのクランプ303はまた、入口信号および出口信号を収集するためのプローブとしても作用する。追加のプローブ305がデータ収集のためにスプイスの中心に配置されている。クランプ機構は、スプライス監視のために非導電プラットフォーム308および関連装置306を保持する。無線周波数(RF)および/または赤外線(IR)アンテナ307が、評価のために、ローカルまたはリモートを問わず、「他の」データ収集および分析機器へのデータ送信のために提供される。
【0014】
図2に示すように、アナログまたはデジタル方法のいずれかを使用して、電位102および104のデータの同期された収集、ならびに電流検知装置105の出力が、ゼロ交差点の角度歪み、振幅、および周期係数について処理される。
【0015】
好ましい実施形態では、信号V
senseおよびI
senseがA/D変換器202および205を介して処理される。次に、デジタル出力V
dおよびI
dが、後述するように、ウィザー離散ハードウェアフィルタ207および209、または、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、もしくはこれらの方法のハイブリッド組み合わせによって処理される離散もしくは連続周波数領域アルゴリズムを含む他の周波数領域フィルタを使用して、信号分析のためにフィルタリングされる。高調波信号分析構成要素の出力および/または比が、ゼロ交差点分析を完了するために、マイクロプロセッサ208、または他のデジタル比較器ハードウェア、アナログ比較器ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェア方法によって処理される。上記の分析方法論はまた、純粋にアナログ的な方法、または同じもしくは類似のエンドポイントを達成するアナログ方法とデジタル方法との組み合わせによって完了することもできる。
【0016】
なお
図2を参照して、別の実施形態では、スプライス102および104にわたる瞬間電位、および瞬間電流検知105の出力は、A/D変換器202、205を介して処理され、その後、出力V
d、I
dが、デジタルハードウェア210またはアナログ方法のいずれかを用いてゼロ交差点分析について分析される。上記の分析方法論はまた、純粋にアナログ的な方法、または同じもしくは類似の結果を達成するアナログ方法とデジタル方法との組み合わせによって完了することもできる。
【0017】
ハードウェアフィルタ207および209からの3つの出力310〜303とハードウェア210からの4つの出力304〜307をオリジナル111と比較すると、ゼロ交差点比401〜403において微視的な角度劣化が生じる。
【0018】
これらの信号の特性振幅、ゼロ交差点、および周期比は、特定のスプライスまたは電気接合部の劣化速度を分類および定量化するために使用される。元の波形111は、標準的な波形発生電子機器を使用して外部手段によって発生させることができ、または、1000−2000アンペア範囲内の電流レベルで50および60ヘルツ正弦波波形で動作する高出力高圧ワイヤの場合のように標準動作条件中に回路自体によって発生させることができる。この技法は、可変デューティサイクルを有するものを含む所望の特性を含む様々な波形を含むがこれらに限定されない、DCオフセットを伴うまたは伴わない任意の交流信号に適用され得る。
【0019】
瞬間測定およびその後の分析は、管理下のスプライスの崩壊率に応じて一定または可変の間隔で実行することができる。スプライスの減衰は非線形のイベントであり、これは、崩壊率が時間の経過とともに変化することを意味する。
図9を参照されたい。崩壊率アルゴリズムは、元の状態および前の測定サイクルと比較したときの、各測定サイクルについて計算された振幅、ゼロ交差点、および周期比に基づく。
【0020】
図1および
図2の上記の説明は、スプライスにわたる瞬間電位を決定するプローブ、および、任意のスプライスの瞬間電流検知出力を決定する電流検知装置を使用して、後続信号および高調波信号の振幅および周期と組み合わせた、ゼロ点交差における角度劣化の比率を決定する手段を説明する。
【0021】
スプライスの監視がどのように劣化を示すことができるかを示すために、既知の良品スプライスと欠陥スプライスとの間で比較を行った。これらの値から、予測分析を可能にする各特性の比を決定することができる。
【0022】
表1は3つのスプライス、すなわち、良品スプライス、スプライス#365、およびスプライス#477を示し、後者は既知の故障したスプライスを表す。表1は、スプライスにわたる純電圧降下、スプライス瞬間電流、および計算された電力損失を示している。
【表1】
【0023】
単純な抵抗電力損失の計算から、良品スプライスは不良品スプライスよりも4〜5倍効果的であることが分かる。
【0024】
次に、各スプライスの正規化波形を比較して、示されている複合リアクタンスの量を決定した。これらは
図3〜
図5に示されており、各波形の品質の一般的な性質、および各スプライスが引き起こす電圧と電流の遅延を示している。
図3は、完璧ではないが、良品スプライスの波形を示している。一方、
図4および
図5は、故障したスプライス#365および#477の波形を丁寧に示す。これらすべてが明らかに電流波形と電圧波形との間の遅延を示していることは明らかであるが、この遅延が発生するのにどのくらいの時間がかかり、どの時点で「故障」が起こったのかは分からない。これらの図から得られることは、良品スプライスの状態が知られており(完璧な圧着スプライスは時間T
iにおいてずれのないものと同一の電流および電圧波形を有することになる)、これらの波形間の遅延が時間T
fにある何らかの故障点において存在することである。ただし、抵抗率に関連する単純な電力損失測定では、予測可能な減衰曲線は得られない。
【0025】
表2は、誘導リアクタンスがこれらのスプライスで観察される一般的な劣化損失においてより大きな役割を果たし得ることを示唆している。スプライスを通る完全に真っ直ぐな電流の流れからのわずかな逸脱でさえも局在磁場を誘導し、渦電流加熱を誘導するため、これは高電流条件では合理的である。これはまた、単純な抵抗測定がスプライスライフサイクルの予測において特に正確ではない理由も説明する。
【表2】
【0026】
非線形性は電圧と電流とに異なる影響を及ぼしているため、これは、電流がスプライスの導電性ストランド内の異なる非平行チャネルへの力であるときに示される非線形で不安定な誘導メカニズムを説明し得る。これらの非平行電流経路は、小さい誘導領域を設定し、非線形予測曲線電位の不規則性をもたらす漂遊磁場および内部渦電流領域を生成するのに一役買うことになる。また、
図3〜
図5の波形は、完璧な正弦波よりも特性が劣っていることが分かる。高調波歪みを正確に分析するために、従来技術の焦点であることが以前に知られていたように、リアルタイムFFTが3次および5次高調波に対して実行された。この手順により、波形の様々な周波数におけるリップルの大きさを表す一連の係数が得られる。良品スプライスと比較して係数の比が約150%を超える場合、その比は金属導体間に腐食が存在することの指標となり得る。
【0027】
得られた高調波データを表3に示す。純粋な誘導相分析ではライフサイクル分析に適した予測曲線が得られないことは明らかである。
【表3】
【0028】
予測減衰曲線を作成するための試みにおいて、良品スプライスからのスペクトル逸脱が求められる。この分析を実行するために、それらの1次60Hz値に対する係数を正規化し、結果を表4に示す。
【表4】
【0029】
一見したところ、この分析はいくらかの潜在的な予測減衰曲線安定性を提供するように見えたが、崩壊を誘発する可能性がある腐食条件は消えるように見えた。波形は変更されているように見えるが、通常の意味ではゼロ交差ではない。したがって、良品スプライスにおいて示されるシフトと比較して、電流および電圧波形が互いに対してどのようにシフトしているかを比較するためにさらなる研究を行った。これを行うために、電流を電圧係数(一種のフーリエコンダクタンス)で除算することによって相対変化を調べた。これから導き出された係数は表5に示されている。
【表5】
【0030】
これらの結果は、ゼロ交差点において異なる形態の高調波歪みを示唆するという点で興味深いものであり、これは、特定のスプライス内の電流信号および電圧信号から一致する信号形状の逸脱が増大するものである。特に、不良品スプライスは、良品スプライスと比較して、5次高調波で大きく逸脱し、3次高調波で大きく逸脱しないように見える。これは、3次および5次の高調波係数が正規化されたときに明瞭に示される(表6)。
【表6】
【0031】
上記のデータは、予測崩壊率分析手段として説得力がある。これから、波形のゼロ点交差比が崩壊率曲線を決定する手段を提供できることが分かる。故障したスプライスの良好と推定される区画および不良と推定される区画を通る電流経路を分析するために、電流導入接続条件を可能な限り変化させるさらなる試験が行われた。これはもはや高出力高圧システムと恒久的に接続されていないため、主に試験が実験室的な性質を持つことによる。
【0032】
これらの結果は表7に示されており、これが未知のスプライスの全体的な健康状態および条件を予測する試みにおいて、もう1つの有用なパラメータであり得ることを示唆している。
【表7】
【0033】
電圧降下に対する現在の周波数F
OHzにおける波形およびスプライスを通る電流波形と比較してスプライスの全動的リアクタンス(比としての全抵抗率、インダクタンス、および容量値)を決定することによって、スプライスの条件はゼロ点交差比から決定することができる。
【0034】
完璧なスプライスでは、負荷は純粋に抵抗性であり、抵抗の大きさは非常に小さい。スプライスが劣化すると、抵抗性負荷の大きさが増加し得、および/または負荷が複雑になる可能性があり、したがって非線形性が導入される。複雑な負荷はまた、誘電体特徴が形成されるために容量性要素を導入する可能性もあり、または電流が抵抗のより高い領域の周りの周方向経路内を移動することを強制されるとき誘導性成分を導入する可能性がある。特定のスプライスの複素負荷解析に関する波形のゼロ点交差比、電圧および電流振幅、ならびに周期係数を測定することによって、特定のスプライスのライフサイクルを予測するための安定した崩壊率解析ツールが提供される。
【0035】
ここで
図3〜
図9を参照する。
図3では、ゼロ交差角変位は、これが完璧なスプライスではないこと、ゼロ交差点での曲線の角度が、完璧なスプライスから予測されるようなゼロではないことを示していることに注意する必要がある。例えば、
図6を参照されたい。
【0036】
既知の欠陥スプライスの時間期間に対する電圧および電流の正規化値のグラフである
図4において、電圧および電流曲線の周期はわずかに一貫しておらず、「遅延」が生じている。各々のゼロ交差角変位は劣化し始めている。各曲線の振幅はまだ比較的一定している。
【0037】
第2の既知の欠陥スプライスの時間期間に対する電圧および電流の正規化値のグラフである
図5において、電圧および電流曲線の周期はわずかに相対的に一貫しているが、「遅延」は依然として生じている。各々のゼロ交差角変位は大きく劣化している。各曲線の振幅は一貫していない。
【0038】
「完璧な」正弦波形(良好な信号1)に対するゼロ交差点での新しいスプライス(劣化した信号2)の詳細図である
図6では、これらの間の角変位はx軸に対する垂直性に対して約1度オフセットしている。
【0039】
「完璧な」正弦波形(良好な信号1)に対するゼロ交差点での既知の良好なスプライス(劣化した信号2)の詳細図である
図7では、これらの間の角変位はx軸に対する垂直性に対して約5度オフセットしている。
【0040】
「完璧な」正弦波形(良好な信号1)に対するゼロ交差点での既知の良好なスプライス(劣化した信号2)の詳細図である
図8では、これらの間の角変位はx軸に対する垂直性に対して約10度オフセットしている。このスプライスは「良好」と見なされたが、劣化した信号は故障までの期間が非常に短いことを示している。
【0041】
図9は、接合部の典型的な劣化速度曲線が経時的にどのように見えるかを示している。
図9はまた、スプライスを分類し、それらの「残存有用寿命の割合」(PULR)を決定するための閾値を示す。この閾値は、ユーティリティ管理によって任意に設定され、新しいスプライスの製造業者によって得られる値、または既存のスプライスの検査中に確立される標準に基づいている。これらのベースライン値は、材料、機械的な取り付け方法、および電力線の設置に基づいて地理的地域によって異なり得る。
【0042】
図9において約50%の崩壊率であることが示されている特定のスプライスに対して適切なベースラインが確立されると、PULRを計算するために定量的閾値を確立することができる。
図9は、50%の減衰の閾値が60年から70年の時間に変換されることを示す。これにより、スプライス監視手段に、スプライスをどのように維持する必要があるかという着想が得られる。PULRは将来の分析に基づいて再確立される可能性があり、予防保守措置を、PULR予測に基づいてスケジュールすることができる。PULRを知っていれば、スプライスの保守を担当する者は、スプライスの修理または交換が必要な時期を知ることができる。
【0043】
本発明は、理論的ベースライン信号曲線を有するスプライスを取り扱い、ゼロ点交差点付近の信号曲線を経時的な逸脱について監視する。正弦関数ならびに監視時点の振幅変化/元の振幅の比および監視時点の周期変化/元の周期の比を使用して、ベースライン測定値(故障までの)を確立する。次に、動作しているスプライスをベースライン測定値からの逸脱について同じ方法で監視する。この監視により、動作しているスプライスの所与の逸脱について、スプライスに修理または交換が必要であることを決定することができる。
【0044】
例えば、ベースライン信号を監視する場合、データはゼロ交差点付近で収集される。すなわち、データは交差時(ゼロ点にする)および1ミリ秒の間隔をおいた両側の2〜3点(曲線の±側)で収集されて(合計5〜7データ点)、ゼロ点およびその逸脱(周期)が確立される。他の間隔も同様に使用され得る。
【0045】
作動中の接合部についてデータが収集されてPULRが与えられると、その接合部に対していつ措置を取るべきかを決定することができ、例えば50%のPULRが、接合部が修復を必要とすることの指標となり得る。
図1bの関連装置306は、電圧および電流を測定するように設計された構成要素ならびに
図2の構成要素と共に、正弦波、ならびに、監視時点の振幅と開始時点の振幅との第1の比、および、監視時点の周期と開始時点の周期とに基づく周期変化率を使用して信号曲線のゼロ交差点付近で、スプライスの信号曲線の逸脱に基づいて所定の構成のスプライスの経時的なベースラインを確立し、稼働中スプライスの信号についてステップ(a)で使用された逸脱を使用して稼働中スプライスをゼロ交差点付近で監視し、稼働中スプライスの劣化および崩壊率曲線を決定するための手段である。汎用コンピュータを使用して、本明細書に記載のアルゴリズムを使用して稼働中スプライスを監視することから得られたデータを処理する。
【0046】
ベースライン信号を標準波形発生電子機器からスプライスに導入することができ、または既存の電圧/電流信号を利用して、評価および予測のための逸脱点を確立することができる。新しいスプイスの場合、ベースラインは他の同様のスプライスと比較したスプライスの「強さ」を評価するために使用することができる。既存のスプライスに配備する場合、このスプライスの状態を「現状のまま」だけでなく、評価と予測のためにも決定するためのベースラインが確立される。
【0047】
純粋なベースライン信号は、ほぼ垂直である、または対応するアルゴリズムコンポーネントを使用して評価されたときにゼロ度であるゼロ交差点を有することになり、非加法的な結果を生み出すことになる。正弦(0)は、乗数として使用すると、周期および振幅に関連する他のアルゴリズムコンポーネントを相殺する。
【0048】
そのようなアルゴリズムの一例は、正弦(ゼロ交差点)×周期変化/元の周期×振幅変化/元の振幅オリジナル×スプライス係数であり、これは正味ゼロの結果をもたらす。スプライス係数は、材料(鋼鉄、アルミニウム、またはそれらの組み合わせ)、圧着技法(手動対自動)およびスプライスの寸法(長さおよび直径)によって定義される。一般的な「良品」スプライスは、材料、圧着スタイル、および寸法の一般的な相違のために、1.25に近い係数になるが、完璧なスプライス係数は1になる。
【0049】
臨界ゼロ点交差点角度のわずかな変化は、純粋なスプライスからの小さな逸脱を生み出し、崩壊率曲線を開始する小さな正の結果を生み出すことになる。周期および振幅のアルゴリズムコンポーネントは、スプライスの複雑な負荷要素(容量性成分および誘導性成分)を監視することによって、アルゴリズム出力減衰曲線に影響を与える。スプライス係数は、評価中の特定のスプライスによって特性化され、材料、圧着技法、および寸法特性によって影響される。
【0050】
これらのアルゴリズムの結果を経時的にプロットすると、特定の種類のスプライスに対して非線形の崩壊率曲線が得られる。例えば、
図9を参照されたい。
図9の崩壊率曲線上のx軸は時間、ならびに、残存有用寿命の割合(PULR)と故障までの時間(TTF)の両方を表す。ベースライン曲線および関連する崩壊率が分かると、他のすべての事項を新規および既存のスプライスの予測分析のために曲線に対して評価することができる。
【0051】
アルゴリズムの変形が、あらゆる潜在的なスプライスおよび電気的接続部品に対して可能である。
【0052】
このように、本発明はその好ましい実施形態に関して開示されており、この実施形態は上述したような本発明のすべての目的を達成し、伝送線におけるスプライスのライフサイクルを予測するための新規かつ改善された方法および装置を提供する。
【0053】
当然のことながら、本発明の教示からの様々な変更、修正、および改変が、その意図する精神および範囲から逸脱することなく当業者によって企図され得る。本発明は添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されることが意図される。
【国際調査報告】