特表2019-533419(P2019-533419A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-533419(P2019-533419A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】ハイブリッド整流器
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20191018BHJP
【FI】
   H02M7/12 F
   H02M7/12 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-521697(P2019-521697)
(86)(22)【出願日】2017年10月17日
(85)【翻訳文提出日】2019年5月20日
(86)【国際出願番号】CA2017051232
(87)【国際公開番号】WO2018072016
(87)【国際公開日】20180426
(31)【優先権主張番号】62/410,026
(32)【優先日】2016年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519142103
【氏名又は名称】イマログ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】トレンブレイ,マルコ
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA01
5H006AA06
5H006BB01
5H006CA01
5H006CA02
5H006CA07
5H006CA12
5H006CA13
5H006CB02
5H006CB07
5H006CB08
5H006CC02
5H006CC05
5H006DA04
5H006DC05
(57)【要約】
ライン電流の正側電流部分の間に電流を通電するための上側ダイオードと、上側ダイオードに並列接続された上側トランジスタと、ライン電流の負側電流部分の間に電流を通電するための下側ダイオードと、下側ダイオードに並列接続された下側トランジスタとを備えるハイブリッド整流器が提供される。ハイブリッド整流器コントローラが、ライン電流の正側電流部分の間に、ライン電流が正弦波基準電流を下回る場合にのみ上側ダイオードが電流を通電するとともに下側トランジスタが電流を通電するようなトランジスタ制御ストラテジを実施するために上側トランジスタ及び下側トランジスタに接続される。同様に、ライン電流の負側電流部分の間に、ライン電流が正弦波基準電流を上回る場合にのみ下側ダイオードが電流を通電するとともに上側トランジスタが電流を通電する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン電流を整流するためのハイブリッド整流回路であって、
前記ライン電流の正側電流部分の間に電流を通電するための上側ダイオードと、
前記上側ダイオードに並列接続された上側トランジスタと、
前記ライン電流の負側電流部分の間に電流を通電するための下側ダイオードと、
前記下側ダイオードに並列接続された下側トランジスタと、
前記上側トランジスタ及び前記下側トランジスタに接続されたハイブリッド整流器コントローラと
を備え、
前記ハイブリッド整流器コントローラは、
前記ライン電流の前記正側電流部分の間に、
前記ライン電流が正弦波基準電流を下回る場合に前記下側トランジスタが電流を通電するように前記下側トランジスタをスイッチングし、
前記ライン電流が前記正弦波基準電流を上回る場合に前記下側トランジスタが電流を通電しないように前記下側トランジスタをスイッチングし、
前記ライン電流の前記負側電流部分の間に、
前記ライン電流が前記正弦波基準電流を上回る場合に前記上側トランジスタが電流を通電するように前記上側トランジスタをスイッチングし、
前記ライン電流が前記正弦波基準電流を下回る場合に前記上側トランジスタが電流を通電しないように前記上側トランジスタをスイッチングする
ように、前記上側トランジスタ及び前記下側トランジスタをスイッチングする、前記ハイブリッド整流回路。
【請求項2】
前記ライン電流が3相ライン電流であり、前記上側及び下側整流器スイッチが前記3相ライン電流の第1の位相に関し、前記ハイブリッド整流器コントローラは少なくとも1つのハイブリッド整流器コントローラを備え、
前記ハイブリッド整流器は、
第2の上側トランジスタに並列の第2の上側ダイオードを備える第2の上側整流器スイッチ並びに第2の下側トランジスタ及び第2の下側ダイオードを備える第2の下側整流器スイッチであって、前記3相電流の第2の位相に関する第2の上側及び下側整流器スイッチと、
第3の上側トランジスタに並列の第3の上側ダイオードを備える第3の上側整流器スイッチ並びに第3の下側トランジスタ及び第3の下側ダイオードを備える第3の下側整流器スイッチであって、前記3相電流の第3の位相に関する第3の上側及び下側整流器スイッチと
をさらに備え、
前記少なくとも1つのハイブリッド整流器コントローラは、さらに、
前記ライン電流の前記第2の位相の正側電流部分の間に、
前記第2のライン電流が前記上側基準値を下回る場合に前記第2の下側トランジスタが電流を通電するように前記第2の下側トランジスタをスイッチングし、
前記第2のライン電流が前記正弦波基準電流を上回る場合に前記第2の下側トランジスタが電流を通電しないように前記第2の下側トランジスタをスイッチングし、
前記ライン電流の前記第2の位相の負側電流部分の間に、
前記第2のライン電流が前記正弦波基準電流を上回る場合に前記第2の上側トランジスタが電流を通電しないように前記第2の上側トランジスタをスイッチングし、
前記第2のライン電流が前記正弦波基準電流を下回る場合に前記第2の上側トランジスタが電流を通電しないように前記第2の上側トランジスタをスイッチングし、
前記ライン電流の前記第3の位相の正側電流部分の間に、
前記第3のライン電流が前記正弦波基準電流を下回る場合に前記第3の下側トランジスタが電流を通電するように前記第3の下側トランジスタをスイッチングし、
前記第3のライン電流が前記正弦波基準電流を上回る場合に前記第3の下側トランジスタが電流を通電しないように前記第3の下側トランジスタをスイッチングし、
前記ライン電流の前記第3の位相の負側電流部分の間に、
前記第3のライン電流が前記正弦波基準電流を上回る場合に前記第3の上側トランジスタが電流を通電するように前記第3の上側トランジスタをスイッチングし、
前記第3のライン電流が前記正弦波基準電流を下回る場合に前記第3の上側トランジスタが電流を通電しないように前記第3の上側トランジスタをスイッチングする
よう構成されている、請求項1に記載のハイブリッド整流回路。
【請求項3】
前記少なくとも1つのハイブリッド整流器コントローラが、前記第2の上側トランジスタ及び前記第2の下側トランジスタを制御するための第2のハイブリッド整流器コントローラ並びに前記第3の上側トランジスタ及び前記第3の下側トランジスタを制御するための第3のハイブリッド整流器コントローラを備える、請求項2に記載のハイブリッド整流回路。
【請求項4】
前記上側及び下側トランジスタの各々が電界効果トランジスタ(FET)からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハイブリッド整流回路。
【請求項5】
前記正弦波基準電流の振幅が、負荷に基づいて調整される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のハイブリッド整流回路。
【請求項6】
前記正弦波基準電流の振幅が、DCバス電圧及びピークライン間電圧の比較に基づいて調整される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のハイブリッド整流回路。
【請求項7】
パルス幅変調器が、前記上側トランジスタ及び前記下側トランジスタの少なくとも一方の前記スイッチングを制御する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハイブリッド整流回路。
【請求項8】
ヒステリシスコントローラが、前記上側トランジスタ及び前記下側トランジスタの少なくとも一方の前記スイッチングを制御する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のハイブリッド整流回路。
【請求項9】
ライン電流を整流するためのハイブリッド整流回路であって、
前記ライン電流の正側電流部分の間に電流を通電し、前記ライン電流の負側電流部分の間にスイッチングするための上側トランジスタと、
前記ライン電流の前記負側電流部分の間に電流を通電し、前記ライン電流の前記正側電流部分の間にスイッチングするための下側トランジスタと、
前記上側トランジスタ及び前記下側トランジスタに接続されたハイブリッド整流器コントローラであって、前記ライン電流が正弦波基準電流を下回る場合に前記ライン電流の前記正側電流部分の間に前記上側及び下側トランジスタをスイッチングし、前記ライン電流が前記正弦波基準電流を上回る場合に前記ライン電流の前記負側電流部分の間に前記下側及び上側トランジスタをスイッチングする前記ハイブリッド整流器コントローラと
を備えた前記ハイブリッド整流回路。
【請求項10】
前記上側及び下側トランジスタの各々が電界効果トランジスタ(FET)からなる、請求項9に記載のハイブリッド整流回路。
【請求項11】
前記ライン電流が3相ライン電流であり、前記上側及び下側トランジスタが前記3相ライン電流の第1の位相に関し、前記ハイブリッド整流器コントローラは少なくとも1つのハイブリッド整流器コントローラを備え、
前記ハイブリッド整流器は、
前記3相ライン電流の第2の位相に関する第2の上側トランジスタ及び第2の下側トランジスタと、
前記3相ライン電流の第3の位相に関する第3の上側トランジスタ及び第3の下側トランジスタと
をさらに備え、
前記少なくとも1つのハイブリッド整流器コントローラは、さらに、
前記3相ライン電流の前記第2の位相が前記正弦波基準電流を下回る場合に前記3相ライン電流の前記第2の位相の正側部分の間に前記第2の上側及び下側トランジスタをスイッチングし、
前記3相ライン電流の前記第2の位相が前記正弦波基準電流を上回る場合に前記3相ライン電流の前記第2の位相の負側部分の間に前記第2の下側及び上側トランジスタをスイッチングし、
前記3相ライン電流の前記第3の位相が前記正弦波基準電流を下回る場合に前記3相ライン電流の前記第3の位相の正側部分の間に前記第3の上側及び下側トランジスタをスイッチングし、
前記3相ライン電流の前記第3の位相が前記正弦波基準電流を上回る場合に前記3相ライン電流の前記第3の位相の負側部分の間に前記第3の下側及び上側トランジスタをスイッチングする、請求項9又は10に記載のハイブリッド整流回路。
【請求項12】
前記少なくとも1つのハイブリッド整流器コントローラは、前記第2の上側トランジスタ及び第2の下側トランジスタを制御するための第2のハイブリッド整流器コントローラ並びに前記第3の上側トランジスタ及び前記第3の下側トランジスタを制御するための第3のハイブリッド整流器コントローラを備える、請求項9から11のいずれか一項に記載のハイブリッド整流回路。
【請求項13】
電力再生のためのハイブリッド整流回路であって、
前記ライン電流の正側電流部分の間に電流を通電するための上側ダイオードと、
前記上側ダイオードに並列接続された上側トランジスタと、
前記ライン電流の負側電流部分の間に電流を通電するための下側ダイオードと、
前記下側ダイオードに並列接続された下側トランジスタと、
前記上側トランジスタ及び前記下側トランジスタに接続されたハイブリッド整流器コントローラと
を備え、
前記ハイブリッド整流器コントローラは、DCバス電圧を測定し、該DCバス電圧が再生トリガレベルを超えると、
前記ライン電流の前記正側電流部分の間に、
前記ライン電流が正弦波基準電流を下回る場合に前記下側トランジスタが電流を通電するように前記下側トランジスタをスイッチングし、
前記ライン電流が前記正弦波基準電流を上回る場合に前記下側トランジスタが電流を通電しないように前記下側トランジスタをスイッチングし、
前記ライン電流の前記負側電流部分の間に、
前記ライン電流が前記正弦波基準電流を上回る場合に前記上側トランジスタが電流を通電するように前記上側トランジスタをスイッチングし、
前記ライン電流が前記正弦波基準電流を下回る場合に前記上側トランジスタが電流を通電しないように前記上側トランジスタをスイッチングする
ように前記上側トランジスタ及び前記下側トランジスタをスイッチングする、前記ハイブリッド整流回路。
【請求項14】
DCバス電圧保護をさらに備え、前記ハイブリッド整流器コントローラはさらに、前記DCバス電圧が前記DCバス電圧保護レベルを超えると前記上側トランジスタ及び前記下側トランジスタをオフにスイッチングする、請求項13に記載のハイブリッド整流回路。
【請求項15】
並列高出力整流器の高調波をフィルタリングするためのハイブリッド整流器であって、
前記高出力整流器に並列接続された請求項1から12のいずれか一項に記載のハイブリッド整流回路
を備えるハイブリッド整流器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年10月19日出願の米国特許出願第62/410026号の優先権を主張し、それはその全体において参照によりここに取り込まれる。
【0002】
記載される実施形態は、パワーエレクトロニクスに関する。
【背景技術】
【0003】
整流器は、交流形式(AC)で電力会社によって供給される電源を何らかのアプリケーションに必要とされる直流形式(DC)に変換するのに使用されるデバイスである。電子整流器は、ほとんどのAC/DC電源、モータドライブ(可変周波数又はサーボ)、充電器などにおいて用いられる。電気分散ネットワークによって給電されるほとんど全ての電子デバイスは、整流器を用いる。単純なものから複雑なものまで多数の種類の整流器があり、各々は異なるレベルの性能を提供する。
【0004】
通常、最も単純な整流器は、多数のダイオードを用いる。これらのダイオード整流器は、IEEE519などの規制又は標準に従うようなアプリケーションについては許容できない大きなレベルの電流歪を生じさせる特性を有する。
【0005】
ダイオード整流器よりも良いレベルの電流歪を実現するために、アクティブ整流器が開発されてきた。旧来的には、その目的は、規制及び標準によって設定される限度を超える歪を大幅に低減することであった。アクティブ整流器は、ダイオード整流器よりも複雑であり、能動スイッチ(通常はトランジスタ)を用いて電流のフローを制御する。しかし、使用されるトランジスタが比較的高い電流を通電可能でなければならないため、アクティブ整流器はダイオード整流器よりも高い関連コストが伴い、高価となる。
【0006】
またさらに、トランジスタの断続的なスイッチングに起因して、アクティブ整流器では通常、軽負荷において効率が低く、負荷がゼロとなる場合でさえも損失が生じる。あるアプリケーション及び産業については、周知のアクティブ整流器の効率は許容できないほどに低く、又は少なくとも本質的な問題を示す。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様において、発明の幾つかの実施形態は、交流を整流するためのハイブリッド整流回路を提供する。各AC位相について、ハイブリッド整流回路は、交流の正側電流部分の間に電流を通電するための上側ダイオード、及び上側ダイオードに並列接続された上側トランジスタを備える。ハイブリッド整流回路は、交流の負側電流部分の間に電流を通電するための下側ダイオード、及び下側ダイオードに並列接続された下側トランジスタをさらに備える。ハイブリッド整流器コントローラは、上側トランジスタ及び下側トランジスタをスイッチングするために上側トランジスタ及び下側トランジスタに接続される。幾つかの実施形態によると、トランジスタスイッチングを最小限にするように制御が設計され得る。交流の正側電流部分の間に、上側ダイオードを介する電流が正弦波基準電流を下回る場合に下側トランジスタが電流を通電するように下側トランジスタがスイッチングされ、上側ダイオードを介する電流が正弦波基準電流を上回る場合に下側トランジスタが電流を通電しないように下側トランジスタがスイッチングされる。同様に、交流の負側電流部分の間に、下側ダイオードを介する電流が正弦波基準電流を上回る場合に上側トランジスタが電流を通電するように下側トランジスタがスイッチングされ、下側ダイオードを介する電流が正弦波基準電流を下回る場合に上側トランジスタが電流を通電しないように上側トランジスタがスイッチングされる。
【0008】
幾つかの実施形態によると、ハイブリッド整流器は、各位相についての上側トランジスタ、上側ダイオード、下側トランジスタ、下側ダイオード及びハイブリッド整流器コントローラを有する3相ハイブリッド整流器として実施可能である。
【0009】
第2の態様において、発明の幾つかの実施形態は、交流を整流するためのハイブリッド整流回路を提供する。ハイブリッド整流回路は、交流の正側電流部分の間に電流を通電し、交流の負側電流部分の間にスイッチングするための上側トランジスタを備える。ハイブリッド整流回路は、交流の負側電流部分の間に電流を通電し、交流の正側電流部分の間にスイッチングするための下側トランジスタをさらに備える。ハイブリッド整流器コントローラは、上側トランジスタを介する電流が正弦波基準電流を下回る場合に交流の正側部分の間に下側トランジスタをスイッチングし、下側トランジスタを介する電流が正弦波基準電流を上回る場合に交流の負側部分の間に上側トランジスタをスイッチングするために上側及び下側トランジスタにそれぞれ接続される。
【0010】
幾つかの実施形態によると、ハイブリッド整流器におけるトランジスタは電界効果トランジスタ(FET)であり得る。
【0011】
第3の態様において、発明の幾つかの実施形態は、電力再生のためのハイブリッド整流回路を提供する。ハイブリッド整流回路は、交流の正側電流部分の間にフリーホイール電流を通電するための上側ダイオード、及び上側ダイオードに並列接続された上側トランジスタを備える。ハイブリッド整流回路は、交流の負側電流部分の間にフリーホイール電流を通電するための下側ダイオード、及び下側ダイオードに並列接続された下側トランジスタをさらに備える。ハイブリッド整流器コントローラは、交流の正側電流部分の間に、下側トランジスタを介する電流が正弦波基準電流を下回る場合に下側トランジスタが電流を通電するように下側トランジスタがスイッチングされ、下側トランジスタを介する電流が正弦波基準電流を上回る場合に下側トランジスタが電流を通電しないように下側トランジスタがスイッチングされるように、上側トランジスタ及び下側トランジスタに接続される。交流の負側電流部分の間に、上側トランジスタを介する電流が正弦波基準電流を上回る場合に上側トランジスタが電流を通電するように下側トランジスタがスイッチングされ、上側トランジスタを介する電流が正弦波基準電流を下回る場合に上側トランジスタが電流を通電しないように上側トランジスタがスイッチングされる。
【0012】
第4の態様において、発明の幾つかの実施形態は、高出力整流器に並列接続されたハイブリッド整流器を備える、並列高出力整流器の高調波をフィルタリングするためのハイブリッド整流器を提供する。
【0013】
図面を参照して本発明の好適な実施形態を詳細にここに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、幾つかの実施形態によるハイブリッド整流器の回路図である。
図2図2は、幾つかの実施形態による3相ハイブリッド整流器の電流通電の曲線を示す。
図3図3は、幾つかの実施形態によるハイブリッド整流器コントローラの概略図である。
図4図4は、幾つかの実施形態によるハイブリッド整流器コントローラによって使用され得るようなDCバス電圧リップルを示す。
図5図5は、幾つかの実施形態による負荷ダンピング保護中の電圧及び電流曲線を示す。
図6図6は、幾つかの実施形態によるハイブリッド整流器のダイオード及びトランジスタを介した電流を示す電圧及び電流曲線を示す。
図7図7は、幾つかの実施形態によるFETを用いたハイブリッド整流器の回路図である。
図8図8は、幾つかの実施形態による、ダイオードに並列なFETを用いるハイブリッド整流器の動作中の電流フローを示す回路図である。
図9図9は、幾つかの実施形態による、FETのみを用いる(並列ダイオードなしの)ハイブリッド整流器の動作中の電流フローを示す回路図である。
図10図10は、幾つかの実施形態によるFETを用いる3相ハイブリッド整流器の電流通電の曲線を示す。
図11図11は、幾つかの実施形態による大型整流器に対して高調波フィルタとして使用されるハイブリッド整流器の回路図である。
図12図12は、標準的な300Aの整流器に対する平均ダイオード順方向電圧降下を示す曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、ハイブリッド整流器100の回路図が示される。概略として、ハイブリッド整流器100は、ダイオード整流器の長所とアクティブ整流器の長所とを組み合わせることによって周知のアクティブ整流器及びダイオード整流器によって示される問題を軽減する。ハイブリッド整流器100の概略図は周知のアクティブ整流器と類似する部分もあるが、ハイブリッド整流器に対する部品のサイズがアクティブ整流器に対するものとは異なることを理解することが重要である。このように、ハイブリッド整流器は、アクティブ整流器と比較してより少ない損失しか生じない一方で、同時に、向上した効率を与える。
【0016】
特に、ハイブリッド整流器100と周知のアクティブ整流器との間の大きな相違は、制御技術である。アクティブ整流器とは対照的に、ハイブリッド整流器のより簡素な位相制御回路が多位相整流器の各位相レッグに対して埋め込み可能であり、これにより、アクティブ整流器に通常は必要な絶縁信号をなくすことができる。任意の周知の位相電流及びDCバス電圧センサが、その実装が動作に重要ではないので使用され得る。
【0017】
ハイブリッド整流器100が3相ハイブリッド整流器として示され、名称「a」、「b」及び「c」は3つの位相の各々を示すのに使用される。幾つかの実施形態によると、例えば、ハイブリッド整流器100における単相に対応する構成要素のセット「a」、「b」又は「c」の1つ(又は2つ)を備える単相ハイブリッド整流器が使用され得る。
【0018】
ハイブリッド整流器100は、上側トランジスタ112aと並列に上側ダイオード110aを備え、共に上側スイッチを形成する。下側スイッチは、図示するように、下側トランジスタ116aと並列に下側ダイオード114aを備える。トランジスタ112a及び116aとともにダイオード110a及び114aは、3相ハイブリッド整流器100のうちの1つの位相に対応する。同様に、ハイブリッド整流器100は、他の2つの位相に対応するダイオード110b、110c、114b及び114c並びにトランジスタ112b、112c、116b及び116cを備える。
【0019】
ここで使用するように、用語「トランジスタ」は、任意に転流オン及びオフとすることができる高速半導体スイッチ、例えば、ただしこれに限定されずに、バイポーラジャンクショントランジスタ(BJT)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、酸化金属半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)又はジャンクションゲート電界効果トランジスタ(JFET)などの任意のタイプの電界効果トランジスタ(FET)、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)及び強制転流サイリスタを表現するのに使用される。当業者であれば、他のデバイスが同様に使用され得ることを理解するはずである。
【0020】
ここで使用するように、用語「上側」及び「下側」は、整流器概略図における構成要素の観点で使用される(例えば、上側整流器スイッチ、上側ダイオード、上側トランジスタ、下側整流器スイッチ、下側ダイオード、下側トランジスタ)。当業者には分かるように、一般に用語「上側」及び「下側」は整流器としての構成要素の役割をいうものであり、具体的回路レイアウト又はトポロジをいうものではない。例えば、「上側ダイオード」は、構成要素の何らかの特定の物理的レイアウトにかかわらず、交流の正側電流部分(すなわち、半周期)を整流するのに用いられる。
【0021】
ハイブリッド整流器コントローラ118aは、トランジスタの状態を制御するために、上側トランジスタ112a及び下側トランジスタ116aの双方に接続される。図1に示すように(IGBTトランジスタが例として示される)、ハイブリッド整流器コントローラ118aは、上側トランジスタ112aのゲート及び下側トランジスタ116aのゲートに接続される。他のタイプのトランジスタについて、ハイブリッド整流器コントローラ118aがそれに従ってゲートではなくトランジスタのベースなどに接続され得ることが分かるはずである。ここに説明するように、この回路トポロジにより、ハイブリッド整流器コントローラ118aは、単純なダイオード整流器モードとより複雑なアクティブ整流器モードとの間でハイブリッド整流器100を動作させるのに使用され得る。幾つかの実施形態によると、ハイブリッド整流器100は、これらのモード間のスイッチングによって使用され、アクティブ整流器よりも実装が簡素であり及び/又は安価でありながらも、単純なダイオード整流器の高調波歪問題を改善することができる。
【0022】
前述したように、ハイブリッド整流器は、図1に示すハイブリッド整流器110のような3相ハイブリッド整流器として実装され得る。3相の場合には、別個のハイブリッド整流器コントローラ(例えば、ハイブリッド整流器コントローラ118a、118b及び118c)が各位相に対して用いられる。この場合、所望であれば、複数のコントローラが単一の回路基板に搭載され得る。またさらに、ハイブリッド整流器は、同様にマルチレベル整流器について使用され得る。あるいは、幾つかの実施形態によると、単一のハイブリッド整流器コントローラが、2以上の位相を制御するのに使用され得る。
【0023】
ハイブリッド整流器コントローラ118aは、ダイオードを主整流素子として維持するトランジスタに対するスイッチングストラテジを実施するのに使用され得る。この場合、上側整流器スイッチ及び下側整流器スイッチの双方が、ダイオードをトランジスタに組み合わせることによって、及びそのダイオードを主整流素子として使用することによって行われる。これは、トランジスタが主整流素子となる周知のアクティブ整流器とは対照的である。
【0024】
言い換えると、ここに開示される制御ストラテジは、周知のアクティブ整流器との比較として、構成要素の異なる動作によるものである。ハイブリッド整流器についての制御ストラテジによると、位相電流が通常時に所望のものよりも(例えば、所望の基準電流と比較して)低くなる場合、トランジスタは電流をダイオードに向けるのにしか使用されない。周知のアクティブ整流器の場合、DCバス電圧は、ダイオード整流器の動作するレベルよりも少なくとも10%〜30%だけ昇圧される必要があるが、ハイブリッド整流器であれば、トランジスタが断続的にスイッチングし、DCバス電圧がダイオード整流器のレベルに非常に近い、より低い平均値に維持される。
【0025】
ある実施形態では、ハイブリッド整流器は、ダイオード整流器と同様のより低い損失及び/又はより低いコストでありながらも、アクティブ整流器の特性の多くを保持することができる。例えば、ハイブリッド整流器は、アクティブ「昇圧」整流器よりも低いスイッチング及び導通損失を有することになり、特にアクティブ整流器の効率が劇的に低下する低出力時に高効率となり得る。
【0026】
またさらに、ハイブリッド整流器におけるトランジスタは、単極変調に起因するデッドタイム又はシュートスルーに影響されにくい。したがって、通常それらは低い導通損失しか生じないので、遅いターンオフのデバイスが使用可能となる。
【0027】
ハイブリッド整流器の他の側面は、場合によっては、スイッチングイベントの回数の減少及び/又はスイッチングイベントがより低い電流において生じることに起因して、アクティブ整流器と比較してより低いEMI及びリップル電流放出であるといえる。またさらに、ハイブリッド整流器は、アクティブ整流器と比較してより小さいDCバス容量を有することになり、それはダイオード整流器の安定性を維持し又はDC電圧リップルを低減するのに使用され得る。
【0028】
幾つかの実施形態によると、ハイブリッド整流器は、アクティブ整流器において必要なものよりも小さなトランジスタを用いて構成され得るので、アクティブ整流器と比較してハイブリッド整流器のコスト低減を導くことになる。
【0029】
ハイブリッド整流器はアクティブ整流器よりも効率が向上するように実施され得るが、それはまたダイオード整流器よりも電流歪(高調波)が低減するように実施され得る。言い換えると、制御ストラテジが、トランジスタ導通及びスイッチング損失を最小化しつつ歪を許容可能レベルに制限するために実施可能となる。
【0030】
またさらに、ハイブリッド整流器は、ダイオード整流器よりもDCバス電圧が平滑するように実施可能である。例えば、ダイオード整流器では約14%となり得るのに対し、3相ハイブリッド整流器は、2%〜5%の範囲においてDCバス電圧の変動を有し得る。それでもなお、ハイブリッド整流器は、ダイオード整流器と比較して同様の(すなわち、「低い」)DCバス電圧で動作することができ、これは部品のストレスを低減する効果を有し得る。
【0031】
図2を参照すると、3相ダイオード整流電流210、正弦波基準電流(例えば、「理想の」)212の曲線、及び下側トランジスタ(転流モード)214、上側ダイオード(連続通電モード)216、上側トランジスタ(転流モード)218及び下側ダイオード(連続通電モード)220に対するハイブリッド整流器を介した通電の曲線を示す図が示される。制御ストラテジは、ハイブリッド整流器コントローラ(例えば、ハイブリッド整流器コントローラ118a)によって実施され得るように、図2を参照して説明可能である。
【0032】
図2に示すように、ダイオード整流器210を介する交流の正側電流部分の間に、ライン電流が正弦波基準電流212を下回る場合には常に下側トランジスタ214を介した通電があるように、制御ストラテジが決定され得る。ライン電流が正弦波基準電流212を上回る場合には、通電は上側ダイオード216を介する。
【0033】
同様に、負側電流部分については、ライン電流が正弦波基準電流212を上回る場合には常に上側トランジスタ218を介した通電がある。ライン電流が正弦波基準電流212を下回る場合には、通電は下側ダイオード220を介する。
【0034】
ここに開示される制御ストラテジは、以下の5つの課題のいずれか又は全てに対して使用され得る。
【0035】
第1に、トランジスタスイッチングが、最小に維持され、かつ大部分においてライン周期のうちの低い振幅のライン電流が流れる領域において維持され得る。これは、図2における下側トランジスタ214及び上側トランジスタ218の導通に見ることができる。幾つかの実施形態によると、これは、トランジスタ、ダイオード及びラインインダクタにおける転流損失を低減可能とする。
【0036】
第2に、上側ダイオード216及び下側ダイオード220の導通を参照すると、高い電流の通電の多くは、一般にトランジスタよりも導通損失が低いダイオードによってなされる。
【0037】
第3に、トランジスタ及びダイオードの各対(すなわち、単相について上側整流器スイッチ及び下側整流器スイッチ)が独立して動作するようにコントローラが(例えば、アクティブ整流器と比較して)比較的簡素となるので、回路をパッケージングすること(例えば、整流器スイッチ及び関連のハイブリッド整流器コントローラを含めること)が容易化され得る。
【0038】
第4に、ハイブリッド整流器によって生成される高調波レベルが、例えば、IEEE519などの特定の規制に関して管理され得る。幾つかの実施形態によると、特定の規制によって禁止されるよりも良い高調波レベルを達成することは不要となる。
【0039】
第5に、DCバス電圧リップルが、ダイオード整流器よりも大幅に低いアクティブ整流器のものに即して維持され得る。この効果は、負荷を介する電流歪の低減となる。
【0040】
幾つかの実施形態によると、制御ストラテジは、総電流歪要求(TDD−I)を許容可能レベルまで維持するのにラインインダクタ(例えば、ラインインダクタ120a、120b及び120c)及びトランジスタパルスを用いることができる。
【0041】
簡素化された制御ストラテジでは、ハイブリッド整流器コントローラはラインとの厳密な同期を必要とせず、これはアクティブ整流器と比較して、それをよりロバストなものとすることができる。この場合、電流基準は、ライン電圧から単に抽出される。
【0042】
場合によっては、予めプログラムされた制御ストラテジが使用され得る。これは、簡単なフィードバックで調整可能なトランジスタスイッチングパターンで実現可能である。例えば、ライン電流からのフィードバックは、整流器の負荷に適合することである。あるいは、ライン電圧に対するDC電圧は、DC電圧リップルを低減しつつ昇圧モード(すなわち、アクティブ整流器の)に移行するのを回避するのに使用され得る。
【0043】
またさらに、ライン電圧極性を用いてトランジスタスイッチング命令をリアルタイムで生成するとともにライン電流振幅を基準と比較する、より精巧な制御ストラテジが使用され得る。この場合、ライン電流振幅が基準よりも低い場合にトランジスタスイッチングが起こる。基本的に、トランジスタは電流を、それがダイオード整流器による正弦波基準よりも低くなる場合に維持する。
【0044】
幾つかの実施形態によると、ハイブリッド整流器コントローラは、トランジスタのパルス幅を制御するためにPID(又は類似の)コントローラ及び基本ロジックで実施可能である。より複雑なハイブリッド整流器コントローラが、ベクトル制御、デッドビート制御、又はスイッチング損失と高調波の生成との間のトレードオフを最適化するのに使用される他の高度な方法に基づいていてもよい。
【0045】
図3を参照すると、独立した制御をその位相に与えるように各位相に使用され得るような簡素なハイブリッド整流器コントローラ300の概略が示される。コントローラは、正側半周期の間の正側電流コントローラ314を介した下側トランジスタ及び負側半周期の間の負側電流コントローラ316を介した上側トランジスタのみの動作のみを可能とするのに電圧コンパレータ310及びインバータ312を用いる。
【0046】
正側電流コントローラ314の詳細のみが示されるが、ハイブリッド整流器コントローラ300は正側電流コントローラ314及び負側電流コントローラ316の双方を含む。負側電流コントローラ316における同様の構成要素は、図3には示されていない。
【0047】
ダイオード電流318が正弦波基準電流320を下回ると、トランジスタスイッチング(例えば、正側電流コントローラ314を介した下側トランジスタスイッチング)が活性化される。正弦波基準電流320は、図2に示すように、ライン電圧と同相となるように生成され得る。電流を保持するために、ダイオード電流318が正弦波基準電流320を下回ると(図2におけるダイオード電流210及び正弦波基準電流212も参照)、パルス幅変調器322が用いられてパルス幅変調(PWM)を増加させる。トランジスタを停止させるために、ダイオード電流318が正弦波基準電流320を上回ると、PWMはゼロに低減される。
【0048】
単純なPI又はPID誤差増幅器324が、コントローラに対して使用されてもよい。アプリケーションによっては、負荷に適合する予めプログラムされたスイッチングパターンが使用されてもよい。他の一般的な誤差増幅器トポロジが、このアプリケーションに同様に適し得る。
【0049】
トランジスタスイッチングはパルス幅変調器322を用いて、例えば、PID324の出力に従ってパルス幅を変調することによって実現可能であるが、他のトランジスタスイッチング方式が用いられてもよい。例えば、ヒステリシスコントローラが、トランジスタスイッチングを制御するのに用いられてもよい。
【0050】
正弦波基準電流320の振幅は、負荷を満足するのに必要なAC電流を生成するように調整され得る。幾つかの実施形態によると、これは、以下の技術のいずれかを用いて実現可能である。
【0051】
第1に、ライン又は負荷電流が、同等の正弦波ライン電流を導くように測定され得る。
【0052】
第2に、DCバス電圧が、ライン電圧に対して使用され得る。この場合、正弦波基準電流320の振幅は、DCバス電圧がピークライン間電圧(√2VLL)を下回ると増加し、上回ると減少する。
【0053】
第3に、DCバス電圧リップルが、正弦波基準電流320の振幅を調整するのに使用され得る。図4に示すように、リップルが比較的小さくなる場合に、正弦波基準電流320の最適な振幅が得られることになる。
【0054】
第4に、予め計算されたスイッチングパターンが、メモリに保存され、単にダイオード電流318又はDCバス電圧とともに拡縮され得る。
【0055】
幾つかの実施形態によると、トランジスタに対する過電流及び高温保護並びにDCバス電圧から活性化されるスイッチング無効化レベルのような何らかの基本的保護がハイブリット整流器に含まれ得る。
【0056】
トランジスタに対する過電流及び高温保護は、転流モードを減少させ、最終的には停止させる。ダイオードは依然として動作するので、高調波歪の結果的な増加があり得る。ただし、整流器は依然として動作するので、高い利用可能性をもたらす。
【0057】
DCバス電圧保護レベルは、DCバス電圧が許容可能な値に戻るまでトランジスタスイッチングを停止させるために、想定DC電圧よりも数%高く規定され得る。DCバスを無効化する能力は、トランジスタスイッチングがDCバス電圧を危険レベルまで上昇させ得るような負荷の急な除去(負荷ダンピング)の場合に使用され得る。
【0058】
負荷ダンピング保護によってもたらされるトランジスタのスイッチングの動作無効化が図5に示され、510はDCバス電圧を示し、512はAC電圧を示し、514はトランジスタ電流を示し、516はダイオード電流を示し、518はACライン電流を示し、520は負荷電流を示す。
【0059】
負荷ダンピング保護は、図5に示すように、単純な電圧コンパレータによって高いDCバス電圧を検出し、それが所望の値に戻るまでトランジスタスイッチングを全て停止する。負荷ダンピング保護はまた、ハイブリッド整流回路のエネルギー回生(再生)アプリケーションと組み合わされ得る。DCバスがそれらの設定レベルを上回ると、負荷ダンピング保護及びエネルギー回生の双方が作動する。第1のレベルがトランジスタを停止させ、一方でより高い第2のレベルがエネルギー回生スイッチングパターンをトリガする。
【0060】
図6を参照すると、3相ハイブリッド整流器アプリケーションにおける1つのレッグの動作例が示される。他の電圧又は電流は、同様の態様で動作する。
【0061】
トレース610は、220VLN/380VLL電源に対するDCバス電圧を示す。図6は、DCバス電圧がVdc=√2VLL=1.41×380VLL=535Vdcに非常に近いことを示す。トレース612は、220VLNのライン電圧を示す。トレース614は下側トランジスタを介する電流を示し、トレース616は上側トランジスタを介する電流を示す。トレース618は上側ダイオード電流を示し、これは614及び616に示すトランジスタを介する電流よりも大幅に高い。トレース620は、理想電流に重畳されたACライン電流を示す。
【0062】
図7を参照し、幾つかの実施形態によると、ハイブリッド整流器700が、同期整流器と電流操縦スイッチの双方を実現するために、上側トランジスタ712a、712b及び712c並びに下側トランジスタ716a、716b及び716cとしてFETを用いて構成され得る。このタイプのトランジスタは、ダイオードの代わりに又はそれと並列に逆通電するとともに、トランジスタとしてスイッチングすることができる。
【0063】
ハイブリッド整流器はFETを用いて構成される。FETトランジスタは、ダイオードの代わりに又は代替的にダイオードとともに、特に低出力時に逆通電するように同期整流器として使用され得る。したがって、これはダイオード(例えば、図7に示すダイオード712a、712b、712c、714a、714b、714)をなくすことによって部品点数を減少させるのに使用され得る。あるいは、図7に示すハイブリッド整流器700の場合のように、ダイオードと並列にトランジスタを動作させる場合に全体導通損失が低減され得る。
【0064】
幾つかの実施形態によると、FETを用いて構成されたハイブリッド整流器は、他の整流器と比較して半導体の数を減少させる。またさらに、より単純な制御ストラテジで用いられる場合、整流器モジュールは、コストを低減するためにFETの特性を利用する製品となり得る。ここに開示するハイブリッド整流器の場合、FETは、上述した制御ストラテジによると、整流器及びスイッチの両方として使用される。
【0065】
ダイオードに並列のFETの場合を図8に示す。図8において、800はダイオード810のみを介する電流802の整流を示し、830はダイオード810を介する電流802及び上側トランジスタ812を介する電流804の双方からの並列整流を示し、860は電流806のフローを維持するように上側トランジスタ812がスイッチングされたことを示す。図8は、交流の正側電流部分を示す。
【0066】
ダイオードを用いないFETハイブリッド整流器の場合を図9に示す。図9において、900は上側トランジスタ912を介する電流902の整流を示し、950は下側トランジスタ916を介する電流906のフローを維持するように上側トランジスタ912がスイッチングされたことを示す。図9は、交流の正側電流部分を示す。
【0067】
図10を参照すると、3相整流電流1010、正弦波基準電流(例えば「理想の」)1012並びにFETハイブリッド整流器についての、下側FETがスイッチングされる(転流モード)間の上側FETを介する導通1014、上側FETを介する(連続通電モード)導通1016、上側FETがスイッチングされる(転流モード)間の下側FETを介する導通1018及び下側FET(連続通電モード)を介する通電1020の曲線を表す図を示す。図10に基づく制御ストラテジは、ハイブリッド整流器コントローラ(例えば、ハイブリッド整流器コントローラ118a)によって実施され得るように、図2に基づく制御ストラテジについて説明したものと同様である。
【0068】
図10に示すように、交流の正側電流部分の間では、ライン電流が正弦波基準電流1012を下回る場合は常に下側FETがスイッチングされる一方で上側FETが電流を整流するように、制御ストラテジが決定され得る。ライン電流が正弦波基準電流1012を上回る場合、導通は上側FET1016を介する。同様のストラテジが、これに従って交流の負側電流部分に拡張される。
【0069】
ハイブリッド整流器は、無停電電源(UPS)、大型DC電源(例えば、プラズマトーチ、溶接、レーダー送信機、電気化学などのための)、HVDC電力分散ライン並びに充電器及び輸送電源を含む広範なアプリケーションに使用され得る。
【0070】
またさらに、ハイブリッド整流器は、変速ドライブ並びに再生ブレーキング及びエネルギー回収による他のAC/DC/ACコンバータとともに使用され得る。この目的のため、ハイブリッド整流器は、低電圧、中電圧及び高電圧整流器として適切なものとなり得る。
【0071】
幾つかの実施形態によると、スイッチングストラテジは、DCバスがモータ制動などの再生負荷によって充電されると、エネルギーをラインに戻すのに使用され得る。これは、ダイオード整流器アプリケーションについて現在実施されているようにエネルギーを動的な制動抵抗器に放電させるのではなく、エネルギーをラインに戻す。これは、前述した単純な制御ストラテジと同様の制御ストラテジを用いてハイブリッド整流器で実現可能である。このように、ダイオード整流器を用いて現在実施されているものとは対照的に、再生が効率的再生で可能となる。例えば、モータドライブにおいて、制動エネルギーを放電させる動的制動抵抗器は必要とならない。再生では、アクティブ整流器におけるように、トランジスタが作用のほとんどを行う。トランジスタはまた、整流モードではダイオードの逆方向に動作する。
【0072】
モータ可変ドライブなどの多数のアプリケーションにおいて、モータの運動エネルギーの一部を放電することによってモータを減速する必要がある場合がある。単純なモータドライブにおける通常の技術は、運動エネルギーを抵抗器のバンクにおいて放電させることを伴っていた。これはエネルギーの損失を意味し、無駄である。より複雑かつ高価なアクティブ整流器ドライブは、このエネルギーをより少ない損失でラインに戻す能力を有する。ここで記載した(制御ストラテジを含む)ハイブリッド整流器の使用により、再生中に、DC電圧が数パーセントだけ増加し、それによりダイオードの動作を遮断することが可能となる。これが起こると、トランジスタは、整流と相補的なストラテジで転流される。言い換えると、上側トランジスタは、正側ライン電圧の間に、又は他の適切な制御方式を用いることによって導通する。
【0073】
要は、ハイブリッド整流器を動作させる再生モードは、前述した整流ストラテジの逆(相補)とみることができる。再生モードは、DCバス電圧が充分に高いレベルにある場合に活性化され得る。再生モードでは、下側トランジスタは交流の正側電流部分の間に転流し、上側トランジスタは交流の負側電流部分の間に転流する。
【0074】
異なる変調技術が、再生モードの間に用いられてもよい。幾つかのアプリケーションについて、予めプログラムされたパルスシーケンシング技術で充分である。通常、再生電流は、比較的低く、高調波歪が大きな問題とならないような比較的短い時間だけ起こる。これは、単純な制御ストラテジを許容可能とする。一般に、再生電流は、回路に対して選択されたトランジスタの容量に制限されるべきである。完全な再生が要求又は選択される場合、完全にレーティングされたトランジスタが整流器に使用され得る。
【0075】
幾つかの実施形態によると、ハイブリッド整流回路はハイブリッドフィルタとして、例えば、並列高調波フィルタの代替として使用され得る。
【0076】
アクティブ高調波フィルタは、高調波生成負荷に並列にラインインダクタ及びDC容量バンクを含む完全なアクティブ整流回路を用いて作製されることが多い。反転高調波電流が注入されて高調波生成負荷からの高調波成分を相殺することを可能とするように高調波成分を測定するために、電流センサが高調波生成負荷に対する回路に付加される。この方式の種々のバージョンが周知であり、全ては、昇圧された独立のDCバス電圧及びこのハイブリッド整流器のものよりも複雑な制御ストラテジを必要とする。
【0077】
図11を参照すると、ハイブリッド整流回路1110が示される。ハイブリッド整流回路1110は、ハイブリッド整流器1110から大きな方の整流器1112の低周波高出力整流器部品を分離するために、ハイブリッドフィルタとして使用され得る。場合によっては、ハイブリッド整流器について前述した制御ストラテジが、必要なフィルタリングを付与可能であってもよい。アクティブ高調波フィルタとは対照的に、ハイブリッド整流器1110は、再生能力をダイオード整流器に付加することができる。このような構成は、既存の整流器を改造するために適し、又はトランジスタからの高周波電流パルスを扱うには高出力整流器部品が低速すぎる場合に適することになり得る。
【0078】
図11に示すように、ハイブリッド整流器1110は、主整流器1112のDCバスを用いる並列高調波フィルタとして使用され得る。この場合、ハイブリッド整流器1110及びそのラインインダクタは、既存の高出力整流器1112と並列接続されて、ハイブリッド整流器1110の単純な制御ストラテジの使用を介して高調波を最小化することができる。
【0079】
またさらに、前述したように、単純な制御ストラテジの幾つかは、高出力整流器1112によって生成された高調波を測定する追加の電流センサを必要としない。
【0080】
前述したように、ハイブリッド整流器は、同様のアクティブ整流器よりも低いコストを実現するために使用され得る。これは、例えば、トランジスタの電流容量が安価なダイオードのものよりも充分に低い場合にみることができる。この場合、上述の制御ストラテジは、電流通電の多くを整流用にダイオードに向け、スイッチング損失を比較的低く維持するので、有利となる。このような場合、合計の整流器コストは、アクティブ整流器とダイオード整流器のコストの間に低減され得る。幾つかの実施形態によると、各位相の整流回路は、プリント回路基板(PCB)上のディスクリート部品から組み立てられ、若しくはインテリジェント電力モジュールにおいて組み立てられ、又は集積回路として生産され得る。トランジスタはこの電力レベルでは非常に高価であるので、中電圧及び高電圧整流器もこの構成から利益を受けることができる。
【0081】
一般的に、任意の特定のハイブリッド整流器について、部品選定(例えば、トランジスタ及び/又はダイオード)はコスト及び効率に関して最適化され得る。電流通電の多くはダイオードを介して転送されるので、効率の主な増加はトランジスタを介した導通損失の低減から得られる。トランジスタはほとんど低電流においてスイッチングし、低いDCバス電圧において動作しているので、効率における他の増加はトランジスタのスイッチング損失の低減に基づくとみなされ得る。スイッチング損失は、DCバス電圧の二乗に関係する。したがって、DCバス電圧を15%〜20%低減することで、スイッチング損失の30%の節約となり得る。
【0082】
導通損失は、選定部品のサイズにも関係し得る。例えば、特定のアプリケーションにおいてアクティブ整流器ではなくハイブリッド整流器を用いることで、図6から分かるように、トランジスタの導通損失をダイオードの15%まで低減させることができる。(備考:図12は、アクティブフロントエンドについての損失を示す。ここでは必要ではない。当初の図はシミュレーション計算であったが、これは紛らわしい。図12は全て除く方がよい。)
【0083】
多くの場合、導通損失は、デバイスにわたる電流及び電圧降下に比例する。多くのアクティブ整流器設計では、ダイオード及びトランジスタは、同様の電圧降下を有するようにサイズ決定される。これは、同様に設計されたパラメータについて、ハイブリッド整流器におけるトランジスタのサイズはダイオードのサイズの約15%である。これを踏まえて、コストの低減は、トランジスタはダイオードよりも通常は高価であることを考慮に入れつつ、より小さなトランジスタを用いることによって実現可能となる。
【0084】
損失は、アクティブ整流器で可能となるものよりも整流器の全体コストに対する一層小さな影響で、それらの導通損失をさらに低減するのにより大きなダイオードを用いることによって最適化され得る。
【0085】
例えば、ダイオードのサイズを倍にすることは、動作電流を半減することと同等である。標準的なパワーダイオードについて、電圧降下は、1.65Vから1.25Vに低減され得るので、比較的小さなコストの増加に対して導通損失の25%を節約することになる。この関係は、150A及び300Aの電流レベルについて図12の曲線によって表される。
【0086】
幾つかの実施形態によると、アクティブ整流器と比較して(例えば、>90%)、トランジスタが比較的短い期間にわたって低い振幅(例えば、15%)でハイブリッド整流器を介して電流を通電することに起因してトランジスタのコスト低減が実現可能となる。したがって、ハイブリッド整流器におけるトランジスタは、小型化されるのでより安価となり得る。これは、トランジスタが一般にダイオードよりも高価であることを考慮すると、重要なこととなり得る。またさらに、より大型のシステムでは、より小型のトランジスタはゲートドライバ電流及びその関連の補助電源を低減することもできるので、簡素化されたゲートドライバ技術の使用が可能となる。より大型のシステムでは、これは、必要な電力を達成するようにトランジスタを並列接続することのタスクを簡素化し又はなくすことができる。
【0087】
幾つかの実施形態によると、各位相についての単純な制御ストラテジは、インテリジェントパワーモジュール(IPM)における各トランジスタと集積され得る。通常のアクティブ整流器では、トランジスタスイッチングの全てを統括する中央プロセッサによって全ての位相についての制御が行われ、これはスイッチング命令を転送するために多数のセンサ及び信号絶縁を必要とする。しかし、ハイブリッド整流器コントローラによると、各位相は独立可能であり、関連のロジックはアクティブ整流器と比較してより少ない集積センサしか必要としない簡素なモジュールで実施可能となる。これは、複雑な信号絶縁及び中央コントローラを不要とすることができる。
【0088】
本発明が、例示としてのみここに説明された。種々の変形及びバリエーションが、添付の特許請求の範囲のみによって制限される発明の趣旨及び範囲から離れることなくこれらの例示の実施形態に対してなされ得る。
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【国際調査報告】