(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-533906(P2019-533906A)
(43)【公表日】2019年11月21日
(54)【発明の名称】光起電力デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 31/075 20120101AFI20191025BHJP
H01L 31/076 20120101ALI20191025BHJP
【FI】
H01L31/06 500
H01L31/06 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-522234(P2019-522234)
(86)(22)【出願日】2017年10月24日
(85)【翻訳文提出日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】GB2017053200
(87)【国際公開番号】WO2018078348
(87)【国際公開日】20180503
(31)【優先権主張番号】1618024.2
(32)【優先日】2016年10月25日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】514051257
【氏名又は名称】アイキューイー パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】IQE PLC.
(71)【出願人】
【識別番号】506076891
【氏名又は名称】ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】510313603
【氏名又は名称】インペリアル イノベーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL INNOVATIONS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン, スーン ファ
(72)【発明者】
【氏名】タン, キアン ファー
(72)【発明者】
【氏名】ロキ, ワン カイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィチャクソノ, サトリオ
(72)【発明者】
【氏名】エキンス−ダウケス, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, トモス
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, アンドリュー デビッド
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA08
5F151CB11
5F151CB12
5F151DA04
5F151DA12
5F151DA15
(57)【要約】
光起電力ダイオードは、ドープされたIII−V族半導体材料のエミッタ層であって、前記エミッタ層の少なくとも一部に第1の導電型及び第1のバンドギャップを有するエミッタ層と、式:Ga
1−zIn
zN
xAs
ySb
1−x−y(ただし、0<z<0.20、0.01<x<0.05、y>0.80である)で与えられる組成を有し、第2のバンドギャップを有する希薄窒化物III−V族半導体材料の真性層と、第3のバンドギャップ及び前記第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する半導体材料のベース層と、を備えており、前記エミッタ層、前記真性層及び前記ベース層がダイオード接合を形成し、前記第1のバンドギャップは、前記第2のバンドギャップよりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドープされたIII−V族半導体材料のエミッタ層であって、前記エミッタ層の少なくとも一部に第1の導電型及び第1のバンドギャップを有するエミッタ層と、
式:Ga1−zInzNxAsySb1−x−y(ただし、0<z<0.20、0.01<x<0.05、y>0.80である)で与えられる組成を有し、第2のバンドギャップを有する希薄窒化物III−V族半導体材料の真性層と、
第3のバンドギャップ及び前記第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する半導体材料のベース層と、を備えており、
前記エミッタ層、前記真性層及び前記ベース層がダイオード接合を形成し、前記第1のバンドギャップは、前記第2のバンドギャップよりも大きい、光起電力ダイオード。
【請求項2】
前記ベース層は、式:Ga1−zInzNxAsySb1−x−y(ただし、0<z<0.20、0.01<x<0.05、y>0.80である)で与えられる組成を有する希薄窒化物III−V族半導体材料の層である請求項1に記載の光起電力ダイオード。
【請求項3】
前記エミッタ層は、前記第1のバンドギャップを有するIII−V族半導体材料のワイドバンドギャップエミッタ層と、前記ワイドバンドギャップエミッタ層と前記真性層との間のナローバンドギャップエミッタ層とを含み、
前記ナローギャップエミッタ層は、前記第1の導電型を有し、式:Ga1−zInzNxAsySb1−x−y(ただし、0<z<0.20、0.01<x<0.05、y>0.80である)によって与えられる組成を有する希薄窒化物III−V族半導体材料であり、前記第1のバンドギャップより小さい第4のバンドギャップを有する、請求項1又は2に記載の光起電力ダイオード。
【請求項4】
前記第4のバンドギャップは、前記第2のバンドギャップと同じである、請求項3に記載の光起電力デバイス。
【請求項5】
前記第4のバンドギャップは、前記第1のバンドギャップと前記第2のバンドギャップとの間にある、請求項3に記載の光起電力デバイス。
【請求項6】
前記ナローバンドギャップエミッタ層は、前記ワイドバンドギャップエミッタ層に格子整合されている、請求項3〜5のいずれか1項に記載の光起電力デバイス。
【請求項7】
前記ナローバンドギャップエミッタ層は、前記真性層に格子整合されている、請求項3〜6のいずれか1項に記載の光起電力デバイス。
【請求項8】
前記ナローバンドギャップエミッタ層は、少数キャリアの拡散長よりも厚さが薄い、請求項3〜7のいずれか1項に記載の光起電力デバイス。
【請求項9】
前記ナローバンドギャップエミッタ層の厚さが200nm未満である、請求項3〜7のいずれか1項に記載の光起電力デバイス。
【請求項10】
前記ナローバンドギャップエミッタ層の厚さが100nmである、請求項9に記載の光起電力デバイス。
【請求項11】
前記エミッタ層は、厚さ方向にわたって傾斜した組成及びバンドギャップを有する傾斜層としての傾斜希薄窒化物III−V族半導体材料層を含み、前記傾斜層の組成が、式:Ga1−zInzNxAsySb1−x−y(ただし、0<z<0.20、0.01<x<0.05、y>0.80である)の範囲内である、請求項1又は2に記載の光起電力デバイス。
【請求項12】
前記エミッタ層は、厚さ方向にわたって傾斜した組成及びバンドギャップを有する傾斜層としての傾斜アルミニウムガリウムヒ素半導体材料層を含む、請求項1又は2に記載の光起電力デバイス。
【請求項13】
前記エミッタの前記傾斜層の前記バンドギャップは、前記真性層との界面を有し、その界面において、前記真性層のバンドギャップと等しいバンドギャップを有する、請求項11又は請求項12に記載の光起電力デバイス。
【請求項14】
前記エミッタの前記傾斜層の前記バンドギャップは、前記真性層との界面を有し、その界面において、前記真性層のそれと同じ組成を有する、請求項11又は請求項12又は請求項13に記載の光起電力デバイス。
【請求項15】
前記エミッタの前記傾斜層が、ガリウムヒ素又はアルミニウムガリウムヒ素の層との界面を有するか、又はさらなる組成傾斜で連続する、請求項11〜14のいずれか1項に記載の光起電力デバイス。
【請求項16】
前記真性層及び前記ベース層は、同じ組成の半導体材料を有する、先行する請求項のいずれかに記載の光起電力ダイオード。
【請求項17】
前記真性層及び前記ベース層は、互いに同じバンドギャップを有する、先行する請求項のいずれかに記載の光起電力ダイオード。
【請求項18】
前記ベース層は、前記傾斜層の厚さ方向にわたって傾斜した組成及びバンドギャップを有する傾斜希薄窒化物III−V族半導体材料層を含み、前記傾斜層の組成が、式:Ga1−zInzNxAsySb1−x−y(ただし、0<z<0.20、0.01<x<0.05、y>0.80である)の範囲内である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の光起電力デバイス。
【請求項19】
前記ベースの前記傾斜層の前記バンドギャップが前記真性層との界面を有し、その界面ではその界面における前記真性層のバンドギャップと等しいバンドギャップを有する、請求項18に記載の光起電力デバイス。
【請求項20】
前記ベースの前記傾斜層の前記バンドギャップが前記真性層との界面を有し、その界面ではその界面における前記真性層の組成と同じ組成を有する、請求項18又は請求項19又は請求項12に記載の光起電力デバイス。
【請求項21】
前記エミッタ層は、ガリウムヒ素の層を含む、先行する請求項のいずれかに記載の光起電力ダイオード。
【請求項22】
前記エミッタ層は、アルミニウムガリウムヒ素の層を含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の光起電力ダイオード。
【請求項23】
前記真性層は、0.7〜1.4eVの範囲のバンドギャップを有する、先行する請求項のいずれかに記載の光起電力ダイオード。
【請求項24】
前記ベース層は、0.7〜1.0eVの範囲のバンドギャップを有する、先行する請求項のいずれかに記載の光起電力ダイオード。
【請求項25】
前記エミッタ層、前記真性層、及び前記ベース層が、互いに格子整合している、先行する請求項のいずれかに記載の光起電力ダイオード。
【請求項26】
先行する請求項のいずれかに記載の光起電力ダイオードを含む太陽電池。
【請求項27】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の光起電力ダイオードをその接合部の1つとして含む多接合光起電力デバイス。
【請求項28】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の第1の光起電力ダイオードをその接合部の1つとして含み、請求項1〜25のいずれか1項に記載の第2の光起電力ダイオードをその接合部の1つとして含み、前記第1及び第2の光起電力ダイオードのベースが異なるバンドギャップを有する多接合光起電力デバイス。
【請求項29】
前記真性層及び前記ベース層の方向に前記エミッタ層を通して光りを光起電力ダイオード内に向け、
前記真性層内の光を吸収して光キャリアを生成させ、
前記ダイオードが光キャリアを分離して電気を発生させる、請求項1〜25のいずれか1項に記載の光起電力ダイオードを用いて発電する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光起電力ダイオードデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野で知られているように、いくつかの太陽電池は、複数の積み重ねられたサブセルを含み、それぞれがフォトダイオードを含み、吸収される光がサブセルを順に通過し、各サブセルは、異なるバンドギャップを有するため、異なる範囲の周波数(又は同等に異なる範囲のエネルギー)を吸収する。これらの太陽電池は、しばしば、多接合光起電力(PV)太陽電池と呼ばれる。希薄窒化物III−V族半導体は、約1eVのバンドギャップを有するサブセルとして高効率多接合PVデバイスに適用するのに興味深い。これらの半導体の吸収閾値(すなわち、バンドギャップを超えて電子を励起する最小光子周波数/エネルギー)は、半導体に数パーセントの窒素(N)を含めることによって調整することができ、これらの半導体は近赤外の光を吸収するサブセルを製造するための適切な候補となる。
【0003】
希薄窒化物III−V族半導体は、インジウム及び/又はアンチモンが材料に含まれる場合、GaAsに格子整合するように成長させることができる。GaInAsSbへのNの取り込みは、少数キャリア寿命を1ns未満に低減させる傾向があり、200nm以下の拡散長をもたらす。短い拡散長の問題を解決するための従来のアプローチは、空乏領域における光生成キャリアのドリフト輸送を利用して、空乏n−i−p接合を成長させることであった。例えば、インペリアルカレッジプレス発行のシリーズ「半導体材料の特性」第1版のジェニー ネルソン著「太陽電池の物理学」(2003年9月5日)(ISBN-10:1860943497,ISBN-13:978-1860943492)(非特許文献1)を参照されたい。そのようなサブセルのn−i−pダイオード100が
図1に示されており、これは、n−i−p接合を形成する半導体材料層と、層に垂直な距離に対する材料の対応するバンド構造との両方を示す。
【0004】
この装置100では、ダイオード接合は3層で形成されている。接合の上部エミッタ層101は、n型希薄窒化物GaInNAsSbエミッタ層である。「上部」は、入射光を最初に受ける接合部の層を示すために使用される(
図1では、入射光は、波状矢印によって示されるように、左から来る。)。当該技術分野で知られているように、太陽電池は、他のサブセル及び太陽電池の他の層、例えば窓及び電極層と重ね合わせることができる(すなわち、図の左側に)。次の2つの層102及び103は、「下部」(すなわち、図の右側)にあり、エミッタ層と同じ組成の希薄窒化物GaInNAsSb材料である。しかし、ベース層103は、p型であり、真性(i)層102は、ドープされていないか、又は層101及び103よりも著しく低活性にドープされている。ここで重要なことは、真性層の活性バックグラウンドドーピング濃度が、デバイスによって形成されるダイオード接合の空乏幅(
図1においてwで示す)が、GaInNAsSb半導体における光子の吸収深さ以上であることを確実にするのに十分に低いことである。その結果、生成される光キャリアが空乏領域の電界によって引き起こされるドリフトによって分離される空乏領域において光が吸収される。すなわち、w>1/αである。ここで、wは空乏幅であり、αは吸収係数である(αは吸収長の逆数である)。十分に大きなwを達成することは困難であり、一般的には、10
15cm
−3という低さのバックグランドドーピングレベルがこの材料において好ましい。また、このn−i−pダイオードでは、n型エミッタ層101が薄く保たれることが重要であるが、それは、その層内に長距離拡散輸送が存在しない場合、その層101で光生成されたキャリアは、層の厚さを横切って効率的に輸送されず、そこで再結合するために失われるからである。(なお、図中の矢印wで示す空乏領域は、エミッタ領域及びベース領域の中までに延びているので、真性領域の厚さt
iよりもわずかに長いことに留意されたい。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ジェニー ネルソン著、シリーズ「半導体材料の特性」第1版の「太陽電池の物理学」(ISBN-10:1860943497,ISBN-13:978-1860943492) インペリアルカレッジプレス発行、2003年9月5日(Jenny Nelson, “The Physics of Solar Cells” from the series “Properties of Semiconductor Materials” 1st Edition (September 5, 2003),published by Imperial College Press (ISBN-10:1860943497, ISBN-13:978-1860943492))
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ドープされたIII−V族半導体材料のエミッタ層であって、前記エミッタ層の少なくとも一部に第1の導電型及び第1のバンドギャップを有するエミッタ層と、式:Ga
1−zIn
zN
xAs
ySb
1−x−y(ただし、0<z<0.20、0.01<x<0.05、y>0.80である)で与えられる組成を有し、第2のバンドギャップを有する希薄窒化物III−V族半導体材料の真性層と、第3のバンドギャップ及び前記第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する半導体材料のベース層と、を備えており、前記エミッタ層、前記真性層及び前記ベース層がダイオード接合を形成し、前記第1のバンドギャップは、前記第2のバンドギャップよりも大きい、光起電力ダイオードが提供される。
【0007】
これらバンドギャップの差は、少数の光生成キャリアに対する障壁を提供する。
【0008】
前記ベース層は、次式で与えられる組成を有する希薄窒化物III−V族半導体材料の層であってもよい。
Ga
1−zIn
zN
xAs
ySb
1−x−y(ただし、0<z<0.20、0.01<x<0.05、y>0.80である。)
【0009】
前記エミッタ層は、前記第1のバンドギャップを有するIII−V族半導体材料のワイドバンドギャップエミッタ層と、前記ワイドバンドギャップエミッタ層と前記真性層との間のナローバンドギャップエミッタ層とを含むことができ、前記ナローギャップエミッタ層は、前記第1の導電型を有し、式:Ga
1−zIn
zN
xAs
ySb
1−x−y(ただし、0<z<0.20、0.01<x<0.05、y>0.80である。)によって与えられる組成を有する希薄窒化物III−V族半導体材料であり、前記第1のバンドギャップより小さい第4のバンドギャップを有する。
【0010】
前記第4のバンドギャップは、前記第2のバンドギャップと同じであってもよい。前記第4のバンドギャップは、前記第1のバンドギャップと前記第2のバンドギャップとの間にあってもよい。前記ナローバンドギャップエミッタ層は、より広いバンドギャップエミッタ層に格子整合させることができる。前記ナローバンドギャップエミッタ層は、前記真性層に格子整合させることができる。前記ナローバンドギャップエミッタ層は、少数キャリアの拡散長よりも厚さが薄くてもよい。前記ナローバンドギャップエミッタ層は、厚さが200nmよりも薄い厚さであってもよい。前記ナローバンドギャップエミッタ層は、厚さが100nmであってもよい。
【0011】
前記エミッタ層は、厚さ方向にわたって傾斜した組成及びバンドギャップを有する傾斜希薄窒化物III−V族半導体材料層(傾斜層)を含むことができ、前記傾斜層の組成は、式:Ga
1−zIn
zN
xAs
ySb
1−x−y(ただし、0<z<0.20、0.01<x<0.05、y>0.80である)の範囲内である。
【0012】
前記エミッタ層は、前記傾斜層の厚さ方向にわたって傾斜した組成及びバンドギャップを有する傾斜アルミニウムガリウムヒ素半導体材料層を含むことができる。
【0013】
前記エミッタの前記傾斜層の前記バンドギャップは、前記真性層との界面を有することができ、その界面では、その界面における前記真性層のバンドギャップと等しいバンドギャップを有する。前記エミッタの前記傾斜層の前記バンドギャップは、前記真性層との界面を有することができ、その界面では、その界面における前記真性層の組成と同じ組成を有することができる。前記エミッタの前記傾斜層は、ガリウムヒ素又はアルミニウムガリウムヒ素の層との界面を有してもよく、又はさらなる組成傾斜で連続することができる。
【0014】
前記真性層及び前記ベース層は、同じ組成の半導体材料を有することができる。前記真性層及び前記ベース層は、互いに同じバンドギャップを有することができる。
【0015】
前記ベース層は、厚さ方向にわたって傾斜した組成及びバンドギャップを有する傾斜希薄窒化物III−V族半導体材料層(傾斜層)を含むことができ、前記傾斜層の組成は、式:Ga
1−zIn
zN
xAs
ySb
1−x−y(ただし、0<z<0.20、0.01<x<0.05、y>0.80である。)の範囲内である。前記ベースの前記傾斜層の前記バンドギャップは、前記真性層との界面を有することができ、その界面では、その界面における前記真性層の前記バンドギャップと等しいバンドギャップを有することができる。前記ベースの前記傾斜層の前記バンドギャップは、前記真性層との界面を有することができ、その界面では、その界面における前記真性層の組成と同じ組成を有することができる。
【0016】
前記エミッタ層は、ガリウムヒ素の層を含むことができる。前記エミッタ層は、アルミニウムガリウムヒ素の層を含むことができる。
【0017】
前記真性層は、0.7〜1.4eVの範囲のバンドギャップを有することができる。前記ベース層は、0.7〜1.0eVの範囲のバンドギャップを有することができる。
【0018】
前記エミッタ層、前記真性層、及び前記ベース層は、互いに格子整合していてもよい。
【0019】
本発明はまた、前記光起電力ダイオードを含む太陽電池を提供する。
【0020】
本発明はさらに、前記光起電力ダイオードを含む多接合光起電力デバイスを提供する。
【0021】
また、本発明は、第1の光起電力ダイオードをその接合部の1つとして、及び第2の光起電力ダイオードをその接合部の1つとして備え、前記第1の光起電力ダイオード及び前記第2の光起電力ダイオードのベースが異なるバンドギャップを有する、多接合型光起電力デバイスを提供する。
【0022】
本発明は、さらに、真性層及びベース層の方向にエミッタ層を通して光起電力ダイオードに光を向け、前記真性層内の光を吸収して光キャリアを生成させ、前記ダイオードが光キャリアを分離して電気を発生させる、光起電力ダイオードを用いて発電する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】既知のn−i−p光起電力ダイオードの層及びバンド図を示した概略図である。
【
図2】例示的なヘテロ構造n−i−p光起電力ダイオードの接合部の層及びバンド図を示した概略図である。
【
図3】別の例示的なヘテロ構造n−i−p光起電力ダイオードの接合部の層及びバンド図を示した概略図である。
【
図4】例示的な傾斜ヘテロ構造n−i−p光起電力ダイオードの接合部の層及びバンド図を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0025】
図2は、本発明によるヘテロ構造n−i−p光起電力ダイオードの第1の例の層及びバンド図を示す。これは、例えば、多接合光起電力デバイスのサブセルを形成することができる。このダイオード200には、ダイオード接合を形成する3つの層201、202及び203がある。接合の「上部」エミッタ層201は、この例ではGaAs(あるいはAlGaAsを使用することもできる)のn型層である。中間の真性層202及びベース層203は、いずれも希薄窒化物GaInNAsSb材料である。ベース層203は、p型層であり、真性層202は、ドープされていないか、又は層201及び203よりも著しく低活性にドープされている。3つの層すべての材料は、格子整合しており、すなわち、同じ格子パラメータを有するか、又は、材料がエピタキシャル成長されるときに転位を形成させない(又は、時々知られているように「塑性緩和」しない)ように格子定数が十分に近い。知られているように、わずかに異なる格子定数を有する格子整合は、厚い層及び薄い層の両方において達成することができ、後者の場合、格子定数の差は、層の臨界厚さを超えない限り、より大きくすることができる。ベース層及び真性層は、同じバンドギャップを有することが好ましい。
【0026】
これらの層は、格子整合基板上に順次エピタキシャル成長させることができる。これは、ベース層203、次いで真性層202、次いでエミッタ層201の順であり得る。しかし、当該技術分野で知られているように、層は、基板上で他の方向に成長させられ、次いで、その基板から除去され、別の基板上に実装される前に裏返され得る。
【0027】
希薄窒化物GaInNAsSb層の組成の好ましい範囲は、式:Ga
1−zIn
zN
xAs
ySb
1−x−yによって与えられる。ここで、0<z<0.20、0.01<x<0.05、y>0.80である。ベース層203及び真性層は、好ましくは同じ組成を有するが、異なる組成であってもよく、それらが同じバンドギャップを有する場合、ならびに互いに格子整合される場合(材料が形成されている異なる元素の数が与えられる場合)でも可能である。
【0028】
また、当該技術分野で知られているように、上部層201は、太陽電池の他のサブセル(
図5及び以下の関連する説明を参照)及び他の層、例えば窓及び電極層と重ね合わせることができる(すなわち、図の左側に)。(「上部」層は、入射光を最初に受ける接合の層という意味でもある。
図2では、光は左から来る。)
【0029】
図1の既知の例と同様に、真性層202内の活性バックグラウンドドーピング濃度は、空乏幅(
図2では再びwで示す)が半導体内の光子の吸収深さに等しいか、又はそれよりも大きいこと、すなわちw>1/αであることを確実にするのに十分に低いことが好ましい。
図2の例では、約10
15cm
−3のドーピングレベルが好ましい。達成するのは困難であるが、10
14cm
−3は、さらに良好であり得る。
図2の例におけるエミッタ層201及びベース層203の好ましいドーピングレベルは、それぞれ5×10
17〜1×10
19cm
−3及び5×10
16〜1×10
18cm
−3である。
【0030】
この例、すなわち
図2の例では、n型エミッタ層201が真性層202のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有することが注目される。
【0031】
ここで、
図1に関して上述した既知のn−i−pホモ接合では、そのn型エミッタ層101が薄く保たれることが重要であったが、それは、長距離拡散輸送がない場合、n型層101で光生成されたキャリアは、再結合なしにその層の厚さを横切って輸送されないからである。しかし、この例では、n型エミッタ層201のバンドギャップが真性層202のバンドギャップよりも大きい場合、n型エミッタ層201は、それを通過する光子のかなりの割合を吸収せず、したがって、光キャリアは生成されず、代わりに、光子は、より小さいバンドギャップを有する真性層202に吸収される。したがって、バンドギャップの差の1つの効果は、もはやn型層を薄く保つ必要がないことであり、例えば、100nmを超える厚さをn型エミッタ層201に使用することができる。一般に、多くの層状デバイスの製造及び構造は、通常、多くの、そしてしばしば競合する要件によって決定され、したがって、このデバイスにおけるこの要件の緩和は、
図2のデバイスがそのようなデバイスの一部を形成する場合に利点を有し得る。例えば、より厚い層は、しばしば、より良好な材料特性を有し、例えば、バルクは、隣接する層からのドーパントの拡散を受けない。
【0032】
また、n層201の材料にGaAs又はAlGaAsを有することの有用な利点は、多接合太陽電池のサブセル間で典型的に使用される、上に重なるトンネル接合及び少数キャリアホールのためのバリアを有することに適合することである。このような適合性の一例では、201の上の次の層の上の次の層は、GaAs又はAlGaAsで形成される。
【0033】
本発明に従うヘテロ構造「p−i−n」ダイオードを有することも可能である。一例は、
図2のものと同様であり、エミッタ層、真性層及びベース層がそれぞれ
図2のn−i−pダイオードの層201、202及び203と同じ材料であるが、エミッタ層がp型にドープされ、ベース層がn型にドープされており、実際にそれらは同じように機能する。(すなわち、この例では、エミッタ及びベースの導電型(n型/p型)は、
図2の例のものとは反対である。)
【0034】
図3は、本発明によるヘテロ構造n−i−p光起電力ダイオード300の第2の例の層及びバンド図を示す。この場合も、これは、多接合光起電力デバイスのサブセルを形成することができる。このダイオードは、n型エミッタ層301と、真性層302と、p型ベース層303とを有する。これらは、一般に、
図2の例と同じ材料であるが、この場合、エミッタ層301は、2つの層、すなわち、ワイドバンドギャップエミッタ層301a及びナローバンドギャップエミッタ層301bを有し、これらは両方ともn型にドープされている。層301bは、層301aと層302との間にある。この例は
図2の例と同様に、ワイドバンドギャップエミッタ層301aは、GaAs又はAlGaAs材料からなる。ナローバンドギャップエミッタ層301bは、希薄窒化物GaInNAsSbである。それは、ワイドバンドギャップエミッタ層よりも小さいバンドギャップを有し、好ましくは、真性層302のバンドギャップに等しいバンドギャップを有する(あるいは、それは、主エミッタ層301aのバンドギャップ及び真性層302のバンドギャップの間にバンドギャップを有してもよい)。ナローバンドギャップエミッタ層301bは、主エミッタ層301a及び真性層302と格子整合することが好ましい。
【0035】
ナローバンドギャップエミッタ層301bは、主エミッタ層301aよりも狭いバンドギャップを有するので、ナローバンドギャップエミッタ層のバンドギャップよりも大きいエネルギーを有するワイドバンドギャップエミッタ層から通過する光子を吸収し、電子−正孔対を生成する。ナローバンドギャップエミッタ層301bの厚さC
n(典型的には10nm)は、光子の吸収長よりも小さいので、前述の例のように、そのような光子の全てがナローバンドギャップエミッタ層301bに吸収されるわけではなく残部が真性層302へと進み、そこで吸収される。ナローバンドギャップエミッタ層301bはドープされているが、この例におけるその厚さは、その層の材料中の光キャリアの拡散長に等しいか、又はそれより薄い。そのため、電子は、非常に迅速にワイドバンドギャップエミッタ層301a中に拡散又はドリフトする。そして重要なことに、少数キャリアの正孔が空乏領域中に拡散する(そこで、それらは、真性領域302を横切る空乏領域の電界によってベース303に輸送される)。ナローバンドギャップエミッタ層301bとワイドバンドギャップエミッタ層301aとの間の価電子帯端部における段差は、ワイドバンドギャップエミッタ層301a内に拡散する正孔に対する障壁として作用し、もちろん、正孔は電子と再結合する。この例では、光子を吸収する全体の領域は、長さC
n及びwを組み合わせたものである(もちろん、C
n及びwがわずかに重なることに留意されたい)。実際には、これは吸収のための余分な長さを提供するが、それは、上述のように、wの実際の長さは、達成可能な真性領域のバックグランドドーピングレベルによって制限され(これは、
図2の例と同じである)、その長さwは、これらの材料における光の吸収長さよりもあまり長くはないので、余分な長さC
nを有意にする。
【0036】
図4は、本発明によるヘテロ構造n−i−p光起電力ダイオード400の第3の例の層及びバンド図を示す。この場合も、これは、多接合光起電力デバイスのサブセルを形成することができる。また、ダイオードは、n型エミッタ層401と、真性層402と、p型ベース層403a/403bとを有する。しかし、この例では、組成傾斜401、403aが、エミッタ領域及び/又はベース領域のそれぞれに提供される。この例の場合のように、ドーピングの傾斜を使用することもできる。
【0037】
図4の例では、全ての層は、GaInNAsSbの様々な組成のものである。真性層の組成は、材料に〜1.0eVのバンドギャップエネルギーを与える上記の例のようなものであることが好ましい。組成傾斜401は、真性層との界面からの距離と共にバンドギャップを広げる。示されるように、その界面でバンドギャップに段差変化がないことが好ましい。バンドギャップは、好ましくは、上の次の層のそれと等しくなるように広がり、これは、例えばGaAs又はAlGaAsであり得る。エミッタ401の代替材料は、組成傾斜のAlGaAsである。
【0038】
同様に、組成傾斜403aは、ベース層403bのそれに等しくなるまで、真性層との界面からバンドギャップを狭める。
【0039】
この例では、傾斜層はドーパントレベルにも傾斜を有し、真性領域とのそれぞれの界面から離れるにつれて増大する。これらの領域に活性ドーピングが存在するので、空乏領域は、それぞれの中に短い距離で終端する。
【0040】
組成傾斜層は、それぞれ、C
n及びC
pの範囲に電界を誘起することによって、太陽電池内の収集長さをさらに延長し、C
n、w、及びC
pの組合せの能動的収集長さをもたらす(wとC
nとの間、及びwとC
pとの間には小さな重複があることに留意されたい。)。好都合なことに、組成傾斜401及びドープ傾斜403aは、少数キャリアをドリフトさせるための電界も提供し、より高い光キャリア収集効率をもたらす。
【0041】
設計上の制約は、(1)傾斜層401及び403aの厚さ(C
n及びC
p)が、傾斜半導体材料、ドーピング傾斜及びドープ半導体の拡散長の組合せに対応すべきであること、及び(2)真性領域402の厚さt
iが、真性層402が動作電圧で空乏化されたままであることを確実にするために、バックグランド不純物濃度レベルによって決定されることである。
【0042】
ベース層の組成傾斜は、例えば、
図2及び
図3の実施形態においても使用することができる。
【0043】
なお、
図2のバンド図では、GaInAsSb材料の組成によっては、価電子帯に障壁が形成されているが伝導帯にも障壁が形成されている理想的なバンド配向を示している。
図3では、301aと301bとの間の界面において、いくつかのバンド曲がりが予想され、その空間的広がりは、n型層における自由キャリア密度によって決定される。
図4において、価電子帯のプロファイルは、ドーピングレベルと半導体組成を同時に制御することによって、制御することができる。
図4は、層401に均一なn型ドーピングを有する典型的な例を示す。
【0044】
図5は、いくつかのサブセルを有する例示的な光起電力デバイス500を示す。この例では、直列(又は、これらのデバイスでしばしば呼ばれる「多層」)に接続された4つのサブセルが存在する。第1のサブセル501は、AlGaInPの活性光吸収領域を有し、これは非常に広いバンドギャップを有し、>〜1.9eVのエネルギーで入射光を吸収する。第2のサブセル502は、Ga(In)Asの活性光吸収領域を有し、これは501のバンドギャップよりも狭いバンドギャップを有し、サブセル501からそのサブセルを通過する1.4eV〜1.9eVのエネルギーを有する入射光を吸収する。第3のサブセル503は、本発明によるサブセル、例えば、上記の
図2、
図3又は
図4を参照して説明したサブセルのうちの1つである。ここで、エミッタ201/301aもGaAsであり、勿論、サブセル502と同じバンドギャップを有する。これは、GaAsエミッタによって吸収されるはずの光が、サブセル502及び501によって既に吸収されていることを意味する。したがって、エミッタ201/301aに吸収されることによって光が無駄にされることはない。第4のサブセル504は、Geの活性光吸収領域を有し、これは、全てのサブセルの中で最も狭いバンドギャップを有し、サブセル503からそのサブセルまで通過する0.66eVから1.0eVのエネルギーを有する入射光を吸収する。サブセル504の代替例は、上述のように第2のn−i−pダイオードを有するが、サブセル503よりも真性層のバンドギャップが小さい。
【0045】
上記のデバイスは、分子線エピタキシー(MBE)又は有機金属気相エピタキシー(MOVPE)などの既知の技術によって製造することができる。国際公開WO2009/157870号は、希薄窒化物材料の製造方法を開示しており、参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】