(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
BCMA特異的フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン、FN3ドメインを有するBCMA標的化キメラ抗原受容体(CAR)、及びCARを発現する遺伝子操作されたBCMA標的化免疫細胞について記載する。FN3ドメイン及びCARをコードする核酸及び発現ベクター、当該ベクターを含む組み換え細胞、並びに遺伝子操作された免疫細胞を含む組成物についても記載する。FN3ドメイン、CAR、及び遺伝子操作された免疫細胞を作製する方法、並びにがんを含む疾患を治療するために遺伝子操作された免疫細胞を使用する方法についても記載する。
前記FN3ドメインが、配列番号8〜44及び配列番号58〜145のうちの1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の単離FN3ドメイン。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の背景において、また、明細書全体を通じて各種刊行物、論文及び特許を引用又は記載する。これら参照文献のそれぞれをその全容において参照により本明細書に援用するものである。本明細書に含まれる文書、操作、材料、装置、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又はすべてが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0029】
別の定義がなされない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。本明細書に引用するすべての特許、公開された特許出願及び公開公報は、参照によって恰もその全体が本明細書に記載されているものと同様にして援用するものである。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意しなければならない。
【0030】
特に断らない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、すべての場合において、「約」なる語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は一般的に、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は0.9mg/mL〜1.1mg/mLを含む。同様に、1%〜10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)〜11%(w/v)を含む。本明細書で使用する場合、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、すべての可能な部分範囲、その範囲内のすべての個々の数値を明示的に含む。
【0031】
本明細書で使用するところの「単離された」なる用語は、生物学的構成成分(例えば、核酸、ペプチド、又はタンパク質)が、これらの構成成分が天然に存在する生物の他の生物学的構成成分(すなわち、他の染色体及び染色体外DNA及びRNA、並びにタンパク質)から実質的に分離されるか、これらの他の成分とは別に生成されるか、又はこれらの他の成分から精製されたものであることを意味する。このため、「単離」されている核酸、ペプチド、及びタンパク質は、標準的な精製法により精製された核酸及びタンパク質を含む。「単離された」核酸、ペプチド、及びタンパク質は、組成物の一部であることができ、このような組成物が核酸、ペプチド、又はタンパク質の本来の環境の一部ではない場合であっても単離されている。また、この用語は、宿主細胞中での組み換え発現により調製された核酸、ペプチド、及びタンパク質、並びに化学合成された核酸も包含する。
【0032】
本明細書で使用するところの「単離された」FN3ドメインとは、異なる抗原特異性を有する他のFN3ドメインを実質的に含まないFN3ドメインを指すものとする(例えば、ヒトBCMAに特異的に結合する単離FN3ドメインは、BCMA以外の抗原に特異的に結合するFN3ドメインを実質的に含まない)。ただし、BCMAのエピトープ、アイソフォーム、又は変異体に特異的に結合する単離されたFN3抗体は、例えば、他の種に由来する他の関連する抗原(例えば、BCMAの種間ホモログ)に対する交差反応性を有してもよい。
【0033】
本明細書で使用するところの「フィブロネクチンIIIドメイン」又は「FN3ドメイン」なる用語は、フィブロネクチン、テネイシン、細胞内細胞骨格タンパク質、サイトカイン受容体及び原核生物酵素を含むタンパク質にしばしば存在するドメイン(Bork and Doolittle,PNAS USA 89:8990〜8994,1992;Meinke et al.,J Bacteriol 175:1910〜1918,1993;Watanabe et al.,J Biol Chem 265:15659〜15665,1990)、又はこれらの誘導体を指す。例示的なFN3ドメインとしては、ヒトテネイシンC中に存在する15個の異なるFN3ドメイン、ヒトフィブロネクチン(FN)中に存在する15個の異なるFN3ドメイン、及び非天然の合成FN3ドメインがある(例えば米国特許第8278419号に記載される)。個々のFN3ドメインは、ドメイン番号とタンパク質名で呼ばれる(例えばテネイシンの3番目のFN3ドメイン(TN3)、又はフィブロネクチンの10番目のFN3ドメイン(FN10))。
【0034】
本明細書で使用するところの「テンコン」(Tencon)とは、配列番号1に示され、米国特許出願公開第2010/0216708号に記載される配列を有する合成FN3ドメインのタンパク質を指す。
【0035】
本明細書で使用するところの「特異的に結合する」又は「特異的な結合」なる用語は、所定の標的と、約1×10
−6M又はより強く、例えば約1×10
−7M以下、約1×10
−8M以下、約1×10
−9M以下、約1×10
−10M以下、約1×10
−11M以下、約1×10
−12M以下、又は約1×10
−13M以下の解離定数(K
D)で結合する本発明のFN3ドメインの能力のことを指す。KD値は、本開示を考慮して当該技術分野における方法を用いて測定することができる。例えば、FN3ドメインタンパク質のKDは、例えばバイオセンサーシステム(例えばBiacore(登録商標)システム又はProteon Instrument(BioRad社))を使用することによって、又はOctet RED96システムのようなバイオレイヤーインターフェロメトリー技術を使用することによって、表面プラズモン共鳴を用いて測定することができる。一般的に、FN3ドメインは、例えばProteon Instrument(BioRad社)を使用した表面プラズモン共鳴によって測定した場合に、非特異的標的に対するK
Dよりも少なくとも10倍低いK
Dで所定の標的(すなわちヒトBCMA)に結合する。しかしながら、BCMAに特異的に結合するFN3ドメインは、他の関連する標的、例えば、マカカ・ファシキュラリス(Macaca Fascicularis)(カニクイザル、cyno)、又はパン・トログロダイテス(Pan troglodytes)(チンパンジー)などの他種由来の同じ所定の抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有し得る。
【0036】
本明細書で使用するところの「BCMA」なる用語は、形質細胞上及び成熟B細胞上で発現される腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーメンバーであるB細胞成熟抗原タンパク質(TNFRSF17、BCM又はCD269とも呼ばれる)のことを指す。例えば、ヒトBCMAは、ヌクレオチド994個の長さの一次mRNA転写産物によりコードされるアミノ酸184個の長さのタンパク質である(NM_001192.2)。ヒトBCMAのアミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号NP_001183.2に示される。本明細書で使用するところの「BCMA」なる用語は、例えば、完全長の野生型BCMAの点突然変異、フラグメント、挿入、欠失、及びスプライス変異体などの突然変異を有するタンパク質を含む。「BCMA」なる用語には、BCMAのアミノ酸配列の翻訳後修飾も含まれる。翻訳後修飾としては、これらに限定されるものではないが、N−及びO−結合グリコシル化が挙げられる。
【0037】
本明細書で使用するところの「BCMA特異的FN3ドメイン」とは、BCMAに特異的に結合するFN3ドメインを指す。
【0038】
本明細書で使用するところの「ランダム化する」、又は「ランダム化された」、又は「多様化された」、又は「多様化する」なる用語は、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に少なくとも1つの置換、挿入、又は欠失を行うことを指す。本明細書で使用するところの「ライブラリ」なる用語は、変異体のコレクションのことを指す。ライブラリは、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの変異体で構成されてよい。本明細書で使用するところの「変異体」なる用語は、例えば、置換、挿入、又は欠失などの1つ以上の改変によって参照ポリペプチド又は参照ポリヌクレオチドと異なるポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。本明細書で使用するところの「置換する」、又は「置換された」、又は「突然変異する」、又は「突然変異した」なる用語は、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列中の1個以上のアミノ酸又はヌクレオチドを変化させるか、欠失させるか、又はポリペプチド又はポリヌクレオチド配列中に1個以上のアミノ酸又はヌクレオチドを挿入することによってその配列の変異体を生成することを指す。
【0039】
本明細書で使用するところの「テンコンライブラリ」とは、テンコンの変異体のコレクションを指す。テンコンライブラリ内の分子は「センチリン」とも呼ばれる。
【0040】
本明細書で使用するところの「キメラ抗原受容体」(CAR)なる用語は、少なくとも、抗原又は標的に特異的に結合する細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内T細胞受容体活性化シグナル伝達ドメインと、を含む組み換えポリペプチドを指す。CARの細胞外ドメインと標的細胞の表面上の標的抗原との結合によって、CARはクラスター化し、CAR保有細胞に活性化刺激が与えられる。CARは、免疫エフェクター細胞の特異性を新たに方向付け、主要組織適合性(MHC)とは独立したかたちで、標的抗原発現細胞の細胞死を媒介し得る増殖、サイトカイン産生、貪食作用、及び/又は分子の産生を誘導する。
【0041】
本明細書で使用するところの「シグナルペプチド」なる用語は、新生CARタンパク質のアミノ末端(N末端)におけるリーダー配列であって、新生タンパク質を翻訳と同時又は翻訳後に小胞体に誘導した後、表面発現させる配列のことを指す。
【0042】
本明細書で使用するところの「細胞外抗原結合ドメイン」、「細胞外ドメイン」、又は「細胞外リガンド結合ドメイン」なる用語は、細胞膜の外側に位置し、抗原、標的、又はリガンドに結合することができるCARの部分を指す。
【0043】
本明細書で使用するところの「ヒンジ領域」なる用語は、CARタンパク質の2つの隣接するドメイン、例えば、細胞外ドメインと膜貫通ドメインとを連結するCARの部分を指す。
【0044】
本明細書で使用するところの「膜貫通ドメイン」なる用語は、細胞膜を横切って延在し、CARを細胞膜に固定するCARの部分を指す。
【0045】
本明細書で使用するところの「細胞内T細胞受容体活性化シグナル伝達ドメイン」、「細胞質シグナル伝達ドメイン」、又は「細胞内シグナル伝達ドメイン」なる用語は、細胞膜の内側に位置し、エフェクター信号を伝達することができるCARの部分を指す。
【0046】
本明細書で使用するところの「刺激分子」なる用語は、T細胞シグナル伝達経路の少なくとも一部の側面において、刺激によってT細胞受容体(TCR)複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を与える、T細胞によって発現される分子を指す。刺激分子は、抗原依存的な一次活性化を開始する配列(「一次シグナル伝達ドメイン」と呼ばれる)と、抗原と独立して作用することで二次又は共刺激シグナルを与える配列(「共刺激シグナル伝達ドメイン」と呼ばれる)の2つの異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列を含む。
【0047】
本明細書で使用するところの「ポリヌクレオチド」なる用語は、同義的に、「核酸分子」、「ヌクレオチド」、又は「核酸」とも称され、非修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAであってよい、任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。「ポリヌクレオチド」としては、これらに限定されるものではないが、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるRNA、一本鎖又はより一般的には二本鎖又は一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であってよいDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が挙げられる。加えて、「ポリヌクレオチド」は、RNA若しくはDNA又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。用語、ポリヌクレオチドには、1つ以上の修飾塩基を含有するDNA又はRNA、及び安定性若しくは他の理由により修飾された主鎖を有するDNA又はRNAも含まれる。「修飾」塩基は、例えば、トリチル化塩基及び異常な塩基、例えば、イノシンを含む。様々な修飾をDNA及びRNAに行うことができる。したがって、「ポリヌクレオチド」は、典型的に天然に認められるポリヌクレオチドの化学的、酵素的又は代謝的に修飾された形態、並びにウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特徴を有する化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短い核酸鎖(多くの場合、オリゴヌクレオチドと呼ばれる)も包含する。
【0048】
本明細書で使用するところの「ベクター」なる用語は、別の核酸セグメントを機能的に挿入することによってそのセグメントの複製又は発現を行うことができるレプリコンのことである。
【0049】
本明細書で使用するところの「宿主細胞」なる用語は、本発明の核酸分子を含む細胞のことを指す。「宿主細胞」は、例えば、初代細胞、培養中の細胞、又は細胞株由来の細胞のいずれのタイプの細胞であってもよい。一実施形態では、「宿主細胞」は、本発明の核酸分子をトランスフェクトした細胞である。別の実施形態では、「宿主細胞」は、かかるトランスフェクトされた細胞の子孫又は潜在的な子孫である。ある細胞の子孫は、例えば、後続の世代で生じ得る突然変異若しくは環境の影響、又は宿主細胞ゲノムへの核酸分子の組み込みによって、親細胞と同じではない場合がある。
【0050】
本明細書で使用するところの「発現」なる用語は、遺伝子産物の生合成のことを指す。かかる用語には、遺伝子のRNAへの転写が含まれる。また、かかる用語には、RNAの1つ以上のポリペプチドへの翻訳も含まれ、あらゆる天然に生じる転写後及び翻訳後修飾も更に含まれる。発現されるFN3ドメイン又はCARは、宿主細胞の細胞質中、細胞培養の増殖培地などの細胞外環境中に存在し得るか、又は細胞膜に固定され得る。
【0051】
本明細書で使用するところの「免疫細胞」又は「免疫エフェクター細胞」なる用語は、免疫応答、例えば免疫エフェクター応答の促進に関与する細胞のことを指す。免疫細胞の例としては、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マスト細胞、及び骨髄由来食細胞が挙げられる。特定の実施形態によれば、遺伝子操作された免疫細胞はT細胞であり、本発明のCARを発現するように遺伝子操作されていることから、CAR−T細胞と呼ばれる。
【0052】
本明細書で使用するところの「遺伝子操作された免疫細胞」なる用語は、細胞の全遺伝物質にDNA又はRNAの形の更なる遺伝物質を加えることによって遺伝子改変された免疫細胞(免疫エフェクター細胞とも呼ばれる)のことを指す。本明細書の実施形態によれば、遺伝子操作された免疫細胞は、本発明に基づくBCMA標的化CARを発現するように遺伝子改変されたものである。
【0053】
本明細書で使用するところの「担体」なる用語は、あらゆる賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、バッファー、安定剤、可溶化剤、油、脂質、脂質含有小胞、ミクロスフェア、リポソーム封入体、又は医薬製剤で使用するための当該技術分野では周知の他の材料を指す。担体、賦形剤又は希釈剤の特性は、特定の用途の投与経路によって決る点は理解されよう。本明細書で使用するころの「薬学的に許容される担体」なる用語は、本発明に基づく組成物の効果又は本発明に基づく組成物の生物活性を妨げない無毒性材料を指す。
【0054】
本明細書で使用するところの「対象」なる用語は、動物、好ましくは哺乳動物を指す。特定の実施形態によれば、対象は、非霊長類(例えば、ラクダ、ロバ、シマウマ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ラット、ウサギ、モルモット又はマウス)、又は霊長類(例えば、サル、チンパンジー、又はヒト)を含む哺乳動物である。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0055】
本明細書で使用するところの「治療的有効量」なる用語は、対象に所望の生物学的又は薬理的応答を誘導する有効成分又は要素の量を指す。治療有効量は、記載される目的に対して経験的かつ一般的な方法で決定することができる。
【0056】
本明細書で使用するところの「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」なる用語はいずれも、がん又は自己免疫に関連した少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善又は逆転を指すものであり、これは対象において必ずしも認識されるとは限らないが、対象において認識可能な場合もある。「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」なる用語はまた、疾患、障害、又は病態の退縮を生じる、その進行を防止する、又は少なくともその進行を遅らせることを指す場合もある。特定の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」は、腫瘍若しくはより好ましくはがんなどの疾患、障害、若しくは病態に関連する1つ以上の症状の緩和、進展若しくは発症の予防、又はその期間の短縮を指す。特定の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」は、疾患、障害、又は病態の再発の防止を指す。特定の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」は、疾患、障害、又は病態を有する対象の生存率の向上を指す。特定の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」は、対象における疾患、障害、又は病態の消失を指す。
【0057】
FN3の配列に基づいたライブラリ
テンコンは、ヒトテネイシンCの15個のFN3ドメインのコンセンサス配列から設計された、天然には存在しないFN3ドメインである(Jacobs et al.,Protein Engineering,Design,and Selection,25:107〜117,2012、米国特許出願公開第2010/0216708号)。テンコンの結晶構造は、FN3ドメインの特徴である、7個のβ鎖をつなぐ6個の表面露出ループを示し、β鎖は、A、B、C、D、E、F、及びGと呼ばれ、ループは、AB、BC、CD、DE、EF、及びFGループと呼ばれている(Bork and Doolittle,PNAS USA 89:8990〜8992,1992;米国特許第6,673,901号)。これらのループ又は各ループ内の選択された残基をランダム化することでFN3ドメインのライブラリを構築することができ、このライブラリを用いて、BCMAに結合する新規分子を選択することができる。表1は、テンコン(配列番号1)の各ループ及びβ鎖の位置及び配列を示す。
【0059】
したがって、テンコン配列に基づいて設計されたライブラリは、ループ又はストランドのうちの1つ以上にランダム化された配列を有することができる。例えば、テンコンに基づくライブラリは、ABループ、BCループ、CDループ、DEループ、EFループ、及びFGループのうちの1つ以上にランダム化配列を有することができる。例えば、テンコンのBCループはアミノ酸7個の長さを有しており、したがって、1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸をテンコン配列に基づいたライブラリでランダム化し、BCループで多様化させたライブラリとすることができる。テンコンのCDループはアミノ酸6個の長さを有しており、したがって、1、2、3、4、5、又は6個のアミノ酸をテンコン配列に基づいたライブラリでランダム化し、CDループで多様化させたライブラリとすることができる。テンコンのEFループはアミノ酸5個の長さを有しており、したがって、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸をテンコン配列に基づいたライブラリでランダム化し、EFループで多様化させたライブラリとすることができる。テンコンのFGループはアミノ酸7個の長さを有しており、したがって、1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸をテンコン配列に基づいたライブラリでランダム化し、FGループで多様化させたライブラリとすることができる。テンコンライブラリのループにおける更なる多様性を、ループでの残基の挿入及び/又は欠失によって得ることができる。例えば、BC、CD、EF及び/又はFGループをアミノ酸1〜22個だけ伸長することができ、又はアミノ酸1〜3個だけ減少させることができる。テンコンのFGループがアミノ酸7個の長さを有するのに対して、抗体重鎖の対応するループは、残基4〜28個の範囲である。最大の多様性を得るためには、残基4〜28個の範囲の抗体CDR3の長さに対応するように、FGループの配列及び長さを多様化させることができる。例えば、更に1、2、3、4、又は5個のアミノ酸によってループを伸長することにより、FGループの長さを更に多様化させることができる。
【0060】
テンコン配列に基づいて設計されたライブラリはまた、FN3ドメインの側面を形成する、2個以上のβ鎖と少なくとも1つのループを含む、ランダム化された別の表面を有してもよい。そのような別の表面の1つは、C及びFのβ鎖、並びにCD及びFGループのアミノ酸によって形成される(C−CD−F−FG表面)。テンコンの別のC−CD−F−FG表面に基づいたライブラリの設計については、米国特許出願公開第2013/0226834号に記載されている。テンコン配列に基づいて設計されたライブラリには、11、17、46、及び/又は86位(残基の番号付けは配列番号1に対応する)の残基の置換を有し、熱安定性が向上したテンコン変異体などのテンコン変異体に基づいて設計されたライブラリが含まれる。代表的なテンコン変異体が米国特許出願公開第2011/0274623号に記載されており、配列番号1のテンコンと比較してE11R、L17A、N46V及びE86Iの置換を有するテンコン27(配列番号45)が含まれる。
【0061】
テンコンライブラリ及び他のFN3配列に基づくライブラリは、ランダムな又は既定のアミノ酸の組を用いて、選択された残基の位置でランダム化することができる。例えば、ランダムな置換を有するライブラリの変異体は、天然に存在する20種すべてのアミノ酸をコードするNNKコドンを用いて作製することができる。他の多様化のスキームでは、アミノ酸Ala、Trp、Tyr、Lys、Thr、Asn、Lys、Ser、Arg、Asp、Glu、Gly、及びCysをコードするためにDVKコドンを用いることができる。あるいは、NNSコドンを用いて20種すべてのアミノ酸残基を生じさせると同時に終止コドンの頻度を低減することもできる。多様化させる位置でアミノ酸の偏った分布を有するFN3ドメインのライブラリは、例えばSlonomics(登録商標)技術(http:_//www_sloning_com)を用いて合成することができる。この技術は、何千もの遺伝子合成プロセスにおいて充分な普遍的構成単位として機能する、既製の二本鎖トリプレットのライブラリを用いたものである。トリプレットのライブラリは、あらゆる所望のDNA分子を構築するのに必要とされるすべての可能な配列組み合わせを表す。コドン指定は、周知のIUBコードに基づく。
【0062】
BCMA特異的FN3ドメイン及びその使用
一般的な一態様では、本発明は、BCMAに特異的に結合する単離FN3ドメインに関する。
【0063】
本発明の実施形態によれば、単離FN3ドメインは、ヒトBCMAの残基1〜54内の配列のようなBCMAの細胞外ドメインに特異的に結合する。
【0064】
いくつかの実施形態では、単離されたBCMAに特異的なFN3ドメインは、分子のN末端に連結された開始メチオニン(Met)を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、単離FN3ドメインは、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、このFN3ドメインは、表面プラズモン共鳴を用いて測定した場合に1×10
−6M未満のKDでBCMA、好ましくはヒトBCMAに結合する。例えば、FN3ドメインは、バイオセンサーシステム、例えば、Proteon Instrument(BioRad社)を使用して測定した場合に1×10
−6M、5×10
−7M、1×10
−7M、5×10
−8M、1×10
−8M、5×10
−9M、1×10
−9M、5×10
−10M、1×10
−10M、5×10
−11M、1×10
−11M、5×10
−12M、1×10
−12M、5×10
−13M、又は1×10
−13M未満のKDでヒトBCMAに結合する。
【0066】
他のいくつかの実施形態では、BCMA、好ましくはヒトBCMAに特異的に結合する単離FN3ドメインは、配列番号7と少なくとも80%、85%、90%又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0067】
本発明の他の実施形態によれば、単離FN3ドメインは、配列番号8〜44及び58〜145からなる群から選択される1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、当該FN3ドメインは、BCMA、好ましくはヒトBCMAに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、単離されたBCMA特異的FN3ドメインは、配列番号8〜44及び58〜145のうちの1つのアミノ酸配列と比較した場合に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14個の置換を有する。好ましくは、単離FN3ドメインは、配列番号8〜44及び58〜145のアミノ酸配列のうちの1つを含む。
【0068】
特定の実施形態では、BCMA特異的FN3ドメインは、A鎖、B鎖、BCループ、C鎖、CDループ、D鎖、EFループ、F鎖、FGループ及び/又はGループが、記載されるBCMA特異的FN3ドメイン配列(すなわち、配列番号8〜44及び58〜145)のいずれかのA鎖、B鎖、BCループ、C鎖、CDループ、D鎖、EFループ、F鎖、FGループ及び/若しくはGループの配列のそれぞれの組に、又は記載されるBCMA特異的FN3ドメイン配列(すなわち、配列番号8〜44及び58〜145)のいずれかのA鎖、B鎖、BCループ、C鎖、CDループ、D鎖、EFループ、F鎖、FGループ及び/若しくはGループの配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する配列に置き換えられた、配列番号8〜44及び58〜145のうちの1つに示される配列の変異体を含むことができる。
【0069】
本発明の実施形態に基づく、ヒトBCMAなどのBCMAに特異的に結合するFN3ドメインは、本開示を考慮することで当業者には周知の方法を用いて、任意のFN3ドメインをテンプレートとして使用してライブラリを生成し、BCMAに特異的に結合する分子についてライブラリをスクリーニングすることで作製することができる。使用可能な例示的なFN3ドメインとしては、テナシンCの3番目のFN3ドメイン(TN3)、フィブコン、及びフィブロネクチンの10番目のFN3ドメイン(FN10)がある。例えば、米国特許第9200273号を参照されたい。
【0070】
標準的なクローニング及び発現法を用いてベクターにライブラリをクローニングするか、又はライブラリの二本鎖cDNAカセットを合成することによって、インビトロでライブラリを発現又は翻訳させる。例えば、リボソームディスプレイ(Hanes and Pluckthun,PNAS USA,94,4937〜4942,1997)、mRNAディスプレイ(Roberts and Szostak,PNAS USA,94,12297〜12302,1997)、又は他の無細胞系(米国特許第5643768号)を使用することができる。FN3ドメインの変異体のライブラリは、例えば任意の適当なバクテリオファージの表面にディスプレイされた融合タンパク質として発現させることができる。バクテリオファージの表面に融合ポリペプチドをディスプレイするための方法は周知のものである(米国特許出願公開第2011/0118144号、国際公開第2009/085462号、米国特許第6969108号、同第6172197号、同第5223409号、同第6582915号、同第6472147号)。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、ヒトBCMAに特異的に結合するFN3ドメインは、cisディスプレイを用いて、FN3スカフォールドタンパク質をコードするDNAフラグメントをRepAをコードするDNAフラグメントにライゲートすることで、各タンパク質がそれをコードするDNAと安定的に結合された、インビトロ翻訳後に生成されるタンパク質−DNA複合体のプールを生成することにより、テンコンライブラリのようなFN3ライブラリを作製し(米国特許第7842476号、Odegrip et al.,PNAS USA 101,2806〜2810,2004)、当該技術分野においては周知の、実施例に記載されるいずれかの方法によって、ヒトBCMAへの特異的結合についてライブラリをアッセイすることによって単離することができる。使用可能な例示的な周知の方法は、ELISA、サンドイッチイムノアッセイ、並びに競合的及び非競合的アッセイである(例えば、Ausubel et al.,eds,1994,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkを参照されたい)。ヒトBCMAに特異的に結合する特定されたFN3ドメインは、所望の特性にしたがって更に特徴付けられる。
【0072】
ヒトBCMAなどのBCMAに特異的に結合するFN3ドメインは、熱安定性並びに熱によるフォールディング及びアンフォールディングの可逆性を改善するなどの特性を改善するために改変することができる。タンパク質及び酵素の見かけの熱安定性を高めるために、高度に類似した熱安定性配列との比較に基づく合理的設計、ジスルフィド架橋を安定化する設計、α−へリックス性向を高める突然変異、塩架橋の操作、タンパク質の表面電荷の変化、定方向進化、及びコンセンサス配列の組成を含むいくつかの方法が応用されている(Lehmann and Wyss,Curr Opin Biotechnol,12,371〜375,2001)。高熱安定性は、発現されるタンパク質の収率を高め、溶解度又は活性を改善し、免疫原性を減少させ、製造におけるコールドチェーンの必要性を最小に抑えることができる。テンコン(配列番号1)の熱安定性を高めるために置換することができる残基としては、これらに限定されるものではないが、参照により本明細書に援用するところの米国特許出願公開第2011/0274623号に記載される配列番号1の11、14、17、37、46、73及び86位の1つ以上の残基が挙げられる。これらの残基に対応する置換を、本発明の実施形態に基づくFN3ドメインに組み込むことができる。
【0073】
本発明の実施形態に基づく、ヒトBCMAなどのBCMAに特異的に結合するFN3ドメインは、治療目的、診断目的、又はBCMAへの特異的結合が望ましい他のあらゆる目的で使用することができる。例えば、FN3ドメインを診断目的で使用して、生体試料中のBCMAの存在を検出するか又はその濃度を定量することができる。FN3ドメインはまた、本明細書に開示されるものなどのBCMAに関連する疾患又は障害を予防又は治療するための治療目的で使用することもできる。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のFN3ドメインと、本明細書に開示されるものなどの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物にも関する。FN3ドメインは、更に、例えば、本発明に基づくCARの細胞外ドメイン中の1つ以上の他の構成要素と共に使用することができる。
【0074】
BCMA標的化キメラ抗原受容体(CAR)
他の一般的な態様では、本発明は、BCMA特異的FN3ドメインを含むBCMA標的化CARに関する。
【0075】
一態様では、本発明は、
BCMAに特異的に結合するFN3ドメインを有する細胞外ドメインと、
膜貫通ドメインと、
細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むCARに関する。
【0076】
いくつかの実施形態では、新生CARでは、細胞外ドメインの先にはN末端にシグナルペプチドが付いている。任意の適当なシグナルペプチドを本発明で使用することができる。シグナルペプチドは、天然、合成、半合成、又は組み換えられた供給源に由来するものとすることができる。一実施形態によれば、シグナルペプチドは、ヒトCD8シグナルペプチド、ヒトCD3δシグナルペプチド、ヒトCD3εシグナルペプチド、ヒトGMCSFRシグナルペプチド、ヒト41−BBシグナルペプチド、又はこれらの誘導体である。特定の実施形態によれば、シグナルペプチドは、配列番号2と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を有する。他の特定の実施形態によれば、シグナルペプチドは、配列番号50〜53のうちの1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、好ましくは配列番号50〜53のうちの1つのアミノ酸配列を有する。シグナルペプチドは、移行中又は移行の完了後にシグナルペプチダーゼによって切断されることで、シグナルペプチドを含まない成熟CARを生成することができる。
【0077】
本発明の実施形態によれば、CARの細胞外ドメインはBCMA特異的FN3ドメインを含む。本明細書に記載されるものを含むがそれらに限定されない、本発明の実施形態に基づく任意のBCMA特異的FN3ドメインを、CARの細胞外ドメインに用いることができる。
【0078】
本発明の実施形態によれば、CARは、細胞外ドメインと膜貫通ドメインとを連結するヒンジ領域を更に含むことができる。ヒンジ領域は、遺伝子操作された免疫細胞の表面から離れるように細胞外ドメインを動かして、適切な細胞/細胞間の接触、標的又は抗原との結合、及び活性化を可能とする機能を有する(Patel et al.,Gene Therapy,1999;6:412〜419)。任意の適当なヒンジ領域を本発明のCARに使用することができる。ヒンジ領域は、天然、合成、半合成、又は組み換えられた供給源に由来するものとすることができる。いくつかの実施形態によれば、CARのヒンジ領域は、6xGSペプチド、若しくはそのフラグメント、若しくはCD8タンパク質に由来するヒンジ領域、又はこれらの誘導体である。特定の実施形態では、ヒンジ領域は、配列番号3と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、好ましくは配列番号3のアミノ酸配列を有する。
【0079】
任意の適当な膜貫通ドメインを本発明のCARに使用することができる。膜貫通ドメインは、天然、合成、半合成、又は組み換えられた供給源に由来するものとすることができる。いくつかの実施形態によれば、膜貫通ドメインは、CD8、CD28、CD4、CD2、GMCSFRなどの分子の膜貫通ドメインである。特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号4と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、好ましくは配列番号4のアミノ酸配列を有する。他の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号54〜57のうちの1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、好ましくは配列番号54〜57のうちの1つのアミノ酸配列を有する。
【0080】
任意の適当な細胞内シグナル伝達ドメインを本発明のCARに使用することができる。特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメイン全体が用いられる。他の特定の実施形態では、エフェクターシグナルを伝達するシグナル伝達ドメインの切頭部分が用いられる。本発明の実施形態によれば、細胞内シグナル伝達ドメインは、これらに限定されるものではないが、増殖、活性化、及び/又は分化を含む、CAR保有細胞、例えばCAR−T細胞の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを生成する。特定の実施形態では、シグナルは、CAR−T細胞の細胞溶解活性、ヘルパー活性、及び/又はサイトカイン分泌を促進する。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD16、CD22、CD27、CD28、CD30、CD79a、CD79b、CD134(TNFRSF4又はOX−40としても知られる)、4−1BB(CD137)、CD278(ICOSとしても知られる)、FcεRI、DAP10、DAP12、ITAMドメイン、又はCD66dなどに由来する機能性シグナル伝達ドメインを含む。
【0082】
特定の実施形態によれば、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメイン及び1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0083】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ζ由来の機能性シグナル伝達ドメインを有する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号6と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、好ましくは配列番号6のアミノ酸配列を有する。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒト4−1BBに由来する共刺激細胞内シグナル伝達ドメインを更に含む。特定の実施形態では、共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号5と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、好ましくは配列番号5のアミノ酸配列を有する。
【0085】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号49と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、好ましくは配列番号49のアミノ酸配列を有する。
【0086】
特定の実施形態では、CARは、N末端からC末端にかけて、BCMA特異的FN3ドメイン(センチリン)、ヒトCD8ヒンジ領域、ヒトCD8膜貫通領域、ヒト4−1BB細胞内ドメイン、及びヒトCD3ζ細胞内ドメインを含む、
図1に示される構造を有する。新生CARはヒトCD8シグナルペプチドを更に含み、このペプチドはその後、成熟したCARでは切断される。
【0087】
一実施形態では、本発明のCARは、CARを発現する宿主細胞に付随する。
【0088】
別の実施形態では、本発明のCARは、CARを発現する宿主細胞の単離細胞膜中に存在する。
【0089】
更に別の実施形態では、本発明のCARは、CARを発現する宿主細胞の他の構成成分から精製又は単離される。
【0090】
ポリヌクレオチド、ベクター、及び宿主細胞
他の一般的な態様では、本発明は、本発明のFN3ドメイン又はCARをコードする単離ポリヌクレオチド及びベクター、並びにベクターを含有する組み換え細胞に関する。
【0091】
本明細書に開示される様々なタンパク質又はポリペプチドのいずれかをコードする核酸は、化学的に合成するか又は本開示を考慮して当該技術分野における他の方法を用いて合成することができる。コドンの使用を選択することで、細胞における発現を改善することができる。このようなコドン使用は、選択される細胞のタイプに依存する。特化したコドンの使用パターンが、大腸菌及び他の細菌、並びに哺乳類細胞、植物細胞、酵母細胞、及び昆虫細胞用に開発されている。例えば、Mayfield et al.,PNAS USA.2003 100(2):438〜42;Sinclair et al.Protein Expr Purif.2002(1):96〜105;Connell,Curr Opin Biotechnol.2001(5):446〜9;Makrides et al.Microbiol Rev.1996 60(3):512〜38;及びSharp et al.Yeast.1991 7(7):657〜78を参照されたい。
【0092】
核酸操作の一般的な技術は、当業者の技術の範囲内であり、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Vols.1〜3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2 ed.,1989又はAusubel et al.,eds,1994,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,John Wiley&Sons,Inc.,New York、及び定期的な最新報告にも記載されており、これらを参照により援用するものである。タンパク質をコードするDNAは、哺乳類、ウイルス、又は昆虫遺伝子由来の適当な転写又は翻訳調節エレメントに機能的に連結される。このような調節エレメントとしては、転写プロモーター、転写を制御するための任意のオペレーター配列、適当なmRNAのリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の停止を制御する配列を挙げることができる。通常は複製起点によって与えられる、宿主内で複製する能力及び形質転換体の識別を容易とする選択遺伝子が、更に組み込まれる。適当な調節エレメントは、当該技術分野では周知のものである。
【0093】
当業者であれば、あるタンパク質のコード配列は、そのタンパク質のアミノ酸配列を変えずに変化させることができる点は理解されよう。したがって、本発明のFN3ドメイン又はCARをコードする核酸配列を、タンパク質のアミノ酸配列を変えずに変化させることができる点は当業者には理解されるであろう。
【0094】
一実施形態では、本発明は、本発明のFN3ドメイン又はCARをコードする単離核酸を含むベクターに関する。プラスミド、コスミド、ファージベクター、又はウイルスベクターなどの、本開示を考慮して当業者には周知のいずれのベクターも使用することができる。一実施形態では、ベクターは、プロモーター配列、場合により1つ以上の他の調節配列に機能的に連結された本発明のFN3ドメイン又はCARをコードしたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターである。
【0095】
別の実施形態では、本発明は、CARをコードしたmRNAによる本発明のCARの一過性の発現に関する。一態様では、CARをコードするmRNAは、組み込まれない導入遺伝子の発現が数時間、数日間、又は数週間にわたって発現される一過性トランスフェクションの形態として免疫エフェクター細胞に導入されるが、その発現期間は、その遺伝子がゲノムに組み込まれるか又は宿主細胞内の安定的なプラスミドレプリコン内に含まれている場合の遺伝子の発現期間よりも短い。一態様では、mRNAは、PCRで生成された鋳型を用いたインビトロ転写によって生成される。
【0096】
別の一般的な態様では、本発明は、本発明のFN3ドメイン又はCARをコードする単離核酸を含む宿主細胞に関する。本発明の核酸分子を安定的又は一過的に宿主細胞にトランスフェクトすることができる。
【0097】
適当な宿主細胞としては、原核生物、酵母、哺乳類細胞、又は細菌細胞が挙げられる。適当な細菌としては、グラム陰性又はグラム陽性生物、例えば、大腸菌又はバチルス属の菌種が挙げられる。酵母、好ましくはS.セレビシエ(S.cerevisiae)などのサッカロマイセス属の種の酵母を、ポリペプチドの産生に使用することもできる。様々な哺乳動物又は昆虫細胞の培養系を用いて組み換えタンパク質を発現させることもできる。昆虫細胞で異種タンパク質を産生するためのバキュロウイルス系については、Luckow及びSummers(Bio/Technology,6:47,1988)により概説されている。場合によっては、グリコシル化を行う目的などで脊椎動物細胞内でタンパク質を産生することが望ましく、培養(組織培養)中の脊椎動物細胞の増殖は通常の手順となっている。適当な哺乳類宿主細胞株の例としては、内皮細胞、COS−7サル腎臓細胞、CV−1、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、ヒト胎児腎臓細胞、HeLa、293、293T、及びBHK細胞株が挙げられる。
【0098】
本発明の宿主細胞は、下記に詳細に述べる、遺伝子操作されたBCMA標的化免疫細胞とすることができる。
【0099】
タンパク質生産
別の一般的な態様では、本発明は、本発明のFN3ドメインを産生する条件下でFN3ドメインをコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、細胞又は細胞培養物から(例えば、上清から)FN3ドメインを回収することと、を含む、本発明のFN3ドメインを生産する方法に関する。発現されたFN3ドメインは、本開示を考慮して当該技術分野で周知の従来技術にしたがって、細胞又は細胞培養物から収穫し、精製することができる。
【0100】
別の一般的な態様では、本発明は、本発明のCARを産生する条件下でCARをコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、CARを回収することと、を含む、本発明のCARを生産する方法に関する。発現されたCARは、当該技術分野で周知の従来技術にしたがって、また、本明細書に記載されるように、細胞から収穫し、精製することができる。
【0101】
宿主細胞は、タンパク質産生用の発現又はクローニングベクターで形質転換され、例えば、プロモーターを誘導する、形質転換体を選択する、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅する、などを目的として適宜改変された従来の栄養培地で培養される。
【0102】
本発明のタンパク質を生産するために使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養することができる。Ham F10(Sigma社)、最小必須培地((MEM)、Sigma社)、RPMI−1640(Sigma社)、及びダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、Sigma社)などの市販の培地が、宿主細胞の培養に適している。更に、Ham et al,Meth.Enz.58:44(1979);Barnes et al,Anal.Biochem.102:255(1980);米国特許第4767704号、同第4657866号、同第4927762号、同第4560655号、同第5122469号、国際公開第90/03430号、同第87/00195号、又は米国再発行特許第USRE30985号に記載される培地のいずれも、宿主細胞の培養培地として使用することができる。これらの培地のいずれも、必要に応じてホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は上皮成長因子など)、塩類(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、バッファー(例えばHEPESなど)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシン(商標)剤など)、微量元素(通常、マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、及びグルコース又は同等のエネルギー源を添加することができる。他の任意の必要な添加物質が、当業者には周知の適当な濃度で含まれてもよい。温度、pHといった培養条件は、発現用に選択される宿主細胞と共に以前より用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0103】
本明細書に開示されるタンパク質は、インビトロの細胞翻訳系を利用して生産することもできる。かかる目的のため、タンパク質をコードする核酸は、インビトロでの転写を可能にしてmRNAを産生し、かつ、利用される特定の無細胞系におけるmRNAの無細胞翻訳を可能とするように改変する必要がある。真核細胞を含まない翻訳系の例としては、例えば、哺乳類又は酵母細胞を含まない翻訳系が挙げられ、原核細胞を含まない翻訳系の例としては、例えば、細菌細胞を含まない翻訳系が挙げられる。
【0104】
本明細書に開示されるタンパク質は、化学合成(例えば、Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.,1984,The Pierce Chemical Co.社(イリノイ州ロックフォード)に記載の方法によって)により製造することもできる。タンパク質の修飾も、化学合成によって行うことができる。
【0105】
本明細書に開示されるタンパク質は、タンパク質化学分野で一般的に知られるタンパク質の単離/精製方法によって精製することができる。その非限定的な例としては、抽出、再結晶化、塩析(例えば、硫酸アンモニウム又は硫酸ナトリウムによる)、遠心分離、透析、限外濾過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過、ゲル浸透クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動、向流分配、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。精製後、タンパク質は、異なるバッファー中に交換するか、かつ/又は、これらに限定されるものではないが、濾過及び透析を含む当該技術分野では周知の様々な方法のいずれかによって濃縮することができる。
【0106】
精製タンパク質は、好ましくは少なくとも純度85%、より好ましくは少なくとも純度95%、最も好ましくは少なくとも純度98%である。
【0107】
遺伝子操作されたBCMA標的化CAR−T細胞、組成物及びその方法
別の一般的態様では、本発明は、本発明のBCMA標的化CARを含む遺伝子操作されたBCMA標的化免疫細胞、遺伝子操作された免疫細胞を作製する方法、遺伝子操作された免疫細胞を含む組成物、及び多発性骨髄腫などの疾患を治療するために、遺伝子操作された免疫細胞を使用する方法に関する。
【0108】
一般的な一態様では、本発明は、本発明のBCMA標的化CARを含む遺伝子操作された免疫細胞に関する。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、免疫細胞は、例えば国際公開第2013/176915号に記載されるようなT細胞受容体(TCR)の1つ以上の構成要素を発現する少なくとも1つの遺伝子の不活性化を、HLA I/B2マイクログロブリン(B2M)タンパク質をコードするか又はその発現を調節する遺伝子の不活性化と組み合わせることができることによって、同種性をより低めることができる。したがって、移植片対宿主症候群及び移植片拒絶のリスクが大幅に低くなる。「TCRノックアウト(TCR knockout)」又は「TCRノックアウト(TCR-KO)」細胞と呼ばれる機能性TCRを欠くT細胞は、その表面に機能性TCRをいっさい発現しないように遺伝子操作するか、機能性TCRを構成する1つ以上のサブユニットを発現しないように遺伝子操作する(例えば、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRδ、TCRε、及び/又はTCRζを発現しない(又はその発現が低減される)ように遺伝子操作する)か、又はその表面上にごくわずかな機能性TCRを生成するように遺伝子操作することができる。あるいは、T細胞は、例えばTCRのサブユニットの1つ以上の突然変異型又は切断型を発現させることによって、実質的に機能不全のTCR(すなわち、宿主に有害な免疫反応を誘発しないTCR)を発現することもできる。機能性TCR及び/又はB2Mを発現しない改変T細胞は、TCR及び/又はB2Mの1つ以上のサブユニットのノックアウト又はノックダウンを含む任意の適当な手段によって得ることができる。例えば、T細胞は、siRNA、shRNA、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)(クラスター化された一定間隔で配置された短い回文配列リピート)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、megaTAL、メガヌクレアーゼ、又はジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)を用いたTCR及び/又はB2Mのノックダウンを有することができる。
【0110】
特定の実施形態では、本発明のBCMA標的化CARを含む免疫エフェクター細胞は、T細胞、NKT細胞、又はNK細胞、好ましくはヒトT細胞又はヒトNK細胞、より好ましくはTCRノックアウト細胞、最も好ましくはヒトTCRノックアウト細胞及び/又はHLA I/B2Mノックアウト細胞である。他の実施形態では、本発明のBCMA標的化CARを含む免疫エフェクター細胞は、TALL−104T細胞株(すなわち、CD8及びCD3を発現するがCD16は発現しないIL−2依存性ヒト非制限細胞毒性T細胞株)などの遺伝子操作されたT細胞である。
【0111】
本発明の免疫エフェクター細胞は、自家(すなわち、「自己」、例えば自己原性)又は非自家(すなわち、「非自己」、例えば同種、同系、異種)であってよい。自家とは、その物質が後で再導入される個体と同じ個体に由来する任意の物質を指す。非自家とは、その物質が後で再導入される個体と同じ種の異なる個体に由来する任意の物質を指す。
【0112】
別の一般的な態様では、本発明は、本発明のBCMA標的化CARを含む遺伝子操作されたBCMA標的化免疫細胞の作製方法に関する。CARをコードするベクターは、免疫細胞に直接形質導入することができる。あるいは、CARをコードするインビトロで転写されたRNA又は合成RNAを免疫細胞に導入することもできる。
【0113】
特定の実施形態によれば、遺伝子操作されたBCMA標的化免疫細胞を作製する方法は、免疫エフェクター細胞が本発明の実施形態に基づく1つ以上のCARを発現するように、個体から単離された免疫エフェクター細胞にトランスフェクト又は形質導入することを含む。免疫治療用の免疫細胞の調製方法は、例えば、参照により本明細書に援用するところの国際公開第2014/130635号、同第2013/176916号、及び同第2013/176915号に記載されている。遺伝子操作された免疫細胞を調製するために使用することが可能な個々の工程は、例えば、参照によって本明細書に援用するところの国際公開第2014/039523号、同第2014/184741号、同第2014/191128号、同第2014/184744号、及び同第2014/184143号に開示されている。
【0114】
特定の実施形態では、T細胞などの免疫エフェクター細胞は、本発明のCARにより遺伝子改変された(例えば、CARをコードする核酸を含むウイルスベクターにより形質導入された)後、インビトロで活性化及び増殖される。様々な実施形態では、T細胞は、例えば、参照によって本明細書に援用するところの米国特許第6352694号、同第6534055号、同第6905680号、同第6692964号、同第5858358号、同第6887466号、同第6905681号、同第7144575号、同第7067318号、同第7172869号、同第7232566号、同第7175843号、同第5883223号、同第6905874号、同第6797514号、同第6867041号、米国特許出願公開第2006/121005号に記載される方法を用いて、CARを発現するように遺伝子改変される前又は後で活性化及び増殖させることができる。T細胞は、インビトロ又はインビボで増殖させることができる。一般的に、本発明のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤及びT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドを結合させた表面と接触させることによって増殖させることができる。非限定的な例として、T細胞集団は、本明細書に記載されるように、例えば、抗CD3抗体、若しくはその抗原結合フラグメント、又は表面上に固定化された抗CD2抗体との接触によって、又はタンパク質キナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)との接触とカルシウムイオノフォアとの組み合わせによって、又はCAR自体の活性化などによって、刺激することができる。T細胞の表面のアクセサリ分子を共刺激するには、アクセサリ分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞集団を、T細胞の増殖を刺激するのに適した条件下で、抗CD3抗体及び抗CD28抗体と接触させることができる。T細胞培養に適した条件としては、例えば、血清(例えば、ウシ胎児又はヒト血清)、IL−2、IL−7、IL−15、及び/若しくIL−21、インスリン、IFN−g、GM−CSF、TGFb、並びに/又は当業者には周知の細胞の増殖用の他の任意の添加物質を含む、増殖及び生存に必要な因子を含有し得る適当な培地(例えば、最小必須培地又はRPMI培地1640又は、X−vivo5(Lonza社))が挙げられる。他の実施形態では、T細胞は、参照によって本明細書に援用するところの米国特許第6040177号、同第5827642号、及び国際公開第2012129514号に記載される方法などの方法を用いて、フィーダー細胞及び適当な抗体及びサイトカインによって活性化及び刺激して増殖させることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、本発明のCAR発現細胞は、同じ標的又は異なる標的に特異的に結合する細胞外ドメインを有する第2のCARを更に含むことができる。好ましくは、免疫細胞は2つの異なる標的に特異的に結合する2つのCARを発現するか、又は免疫細胞は、2つの異なる標的(すなわち、BCMA及び同じ対象疾患に関連する別の標的)に特異的に結合する2個のFN3ドメインを含むCARのような二重特異性受容体を発現する。例えば、他の標的は、CD19、CD20、CS−1、κ軽鎖、CD138、Lewis Y抗原、又はCD38などの多発性骨髄腫に関連したものであってもよい(Garfall et al.,Discovery Medicine,2014,17(91):37〜46)。より好ましくは、2種類のCARもまた、異なる細胞内シグナル伝達ドメインを有し、例えば、第1のCARが共刺激シグナル伝達ドメインを有するが一次シグナル伝達ドメインは有さず、第2のCARは一次シグナル伝達ドメインを有するが共刺激シグナル伝達ドメインは有さない、又はその逆である。4−1BB、CD28、CD27 ICOS、又はOX−40に由来するものなどの共刺激シグナル伝達ドメインを一方のCARに配置し、CD3ζに由来するものなどの一次シグナル伝達ドメインを他方のCARに配置することにより、両方の標的が発現される細胞にCAR活性を制限することで、例えば特異性を高めることができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、本発明のCAR発現細胞は、T細胞に基づいた治療を制限し、腫瘍外毒性(off-tumor toxicity)を回避するための自己調節式の安全スイッチとしての阻害性CARを更に含むことができる。例えば、阻害性CARは、正常細胞にみられる標的に特異的に結合するが、標的癌細胞にみられる標的には結合しない細胞外ドメインを含むことができる。阻害性CARには、これらに限定されるものではないが、PD1、PD−L1、PD−L2、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えばCEACAM−1、CEACAM−3及び/又はCEACAM−5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、CD80、CD86、B7−H3(CD276)、B7−H4(VTCN1)、HVEM(TNFRSF14又はCD270)、KIR、A2aR、MHCクラスI、MHCクラスII、GAL9、アデノシン、及びTGFRβを含む阻害性分子の細胞内ドメインなどの阻害性受容体シグナル伝達ドメインを有する細胞内ドメインも含まれる。BCMA標的化CAR及び阻害性CARを発現している細胞は、正常細胞に出合うと抑制されるが、正常細胞の標的を発現していない腫瘍細胞に出合うと活性化される。
【0117】
他のいくつかの実施形態では、本発明のCAR発現細胞は、CAR発現細胞の活性を高める薬剤を更に含むことができる。例えば、かかる薬剤は、本明細書に記載されるものなどの阻害性分子の宿主細胞中での活性を阻害することができる。
【0118】
特定の実施形態によれば、遺伝子操作された免疫CAR発現細胞は、少なくとも1つの抗がん化学療法に対して耐性を示すように更に遺伝子操作される。この薬剤耐性は、BCMA発現細胞を選択的に標的化しつつ、遺伝子操作された免疫細胞が薬剤の存在下で生存することを可能にするものである。
【0119】
いくつかの実施形態によれば、薬剤耐性は、少なくとも1つの薬剤耐性遺伝子を発現するようにCAR発現細胞を遺伝子操作することによって、CAR発現細胞に与えることができる。本発明の薬剤耐性遺伝子は、代謝拮抗物質、メトトレキサート、ビンブラスチン、シスプラチン、アルキル化剤、アントラサイクリン、細胞毒性抗生物質、抗イムノフィリン剤、それらの類似体又は誘導体などに対する耐性をコードすることができる。本発明の遺伝子操作された免疫CAR発現細胞に薬剤耐性を付与するために使用することができる、いくつかの薬剤耐性遺伝子が特定されている。例えば、Takebe et al.,Mol Ther.2001 Jan;3(1):88〜96.;Sugimoto et al,J Gene Med.2003 May;5(5):366〜76;Zielske et al.,J Clin Invest.2003 Nov;112(10):1561〜70;Nivens et al,Cancer Chemother Pharmacol.2004 Feb;53(2):107〜15;Bardenheuer et al.,Leukemia.2005 Dec;19(12):2281〜8;Kushman et al.,Carcinogenesis.2007 Jan;28(1):207〜14を参照されたい。細胞で発現させることができる薬剤耐性遺伝子の例としては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の変異体又は修飾型、イノシン−5’−一リン酸デヒドロゲナーゼII(IMPDH2)の変異体又は修飾型、多剤耐性タンパク質1(MDR1)、カルシニューリン、メチルグアニントランスフェラーゼ(MGMT)、microRNA−21、抗生物質耐性遺伝子であるble及びmcrAなどが挙げられる。特定の実施形態によれば、かかる薬剤耐性遺伝子は、例えば、少なくとも1つのベクターによってコードされる導入遺伝子を細胞に導入することを含む、任意の適当な手段によって細胞内で発現させることができる。
【0120】
抗がん化学療法に対する耐性も、例えば、薬剤に対する細胞の感受性をもたらす遺伝子を不活性化することによって付与することができる。細胞に薬剤耐性を付与するために不活性化することができる遺伝子の例としては、例えば、CD52、糖質コルチコイド受容体、CD3、ヒトヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ヒトデオキシシチジンキナーゼ(dCK)などが挙げられる。抗がん剤に対する細胞の感度に関与する遺伝子は、例えば、siRNA、shRNA、CRISPR、TALEN、又はZFNを用いた遺伝子のノックアウト又はノックダウンを含む任意の適当な手段によって、不活性化することができる。
【0121】
別の一般的な態様において、本発明は、本発明の遺伝子操作されたBCMA標的化免疫細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。本開示を考慮すると、CAR−Tの医薬組成物での使用に適したいずれの薬学的に許容される担体も本発明で使用することができる。
【0122】
別の一般的な態様では、本発明は、治療有効量の本発明の医薬組成物を対象に投与することを含む、B細胞関連疾患の治療を要する対象におけるB細胞関連疾患を治療する方法に関する。B細胞関連疾患としては、不適当なB細胞活性及びB細胞悪性疾患に関連する疾患、障害若しくは病態、例えば、がん若しくは悪性疾患などの増殖性疾患、前がん状態、又はBCMAを発現する細胞に関連する非がん状態が挙げられる。特定の実施形態によれば、本発明は、本発明の医薬組成物を対象に投与することを含む、多発性骨髄腫の治療を要する対象における多発性骨髄腫を治療する方法に関する。
【0123】
本発明の実施形態によれば、治療有効量の医薬組成物は、免疫応答の刺激を要する対象の免疫応答を刺激し、好ましくは、疾患、障害、若しくは病態の治療をもたらすか、疾患、障害、若しくは病態を予防若しくはその進行を遅らせるか、又は免疫疾患、障害、若しくは病態に関連する症状を軽減若しくは完全に緩和する。
【0124】
特定の実施形態によれば、治療される疾患、障害又は病態は、過剰増殖性疾患である。他の特定の実施形態によれば、治療される疾患、障害又は病態は、がん若しくは腫瘍、又は悪性過増殖性疾患であり、好ましくは固体腫瘍、血液がん、膀胱がん、胆管がん、脳腫瘍、乳がん、結腸がん、食道がん、胃がん、神経膠腫、頭部がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、多発性骨髄腫、頸部がん、卵巣がん、黒色腫、膵臓がん、腎臓がん、唾液腺がん、胃がん、胸腺上皮がん、及び甲状腺がんからなる群から選択されるがんである。好ましくは、治療される疾患、障害又は病態は、がん若しくは悪性疾患、又は骨髄異形成症、骨髄異形成症候群若しくは前白血病のうちの1つ以上から選択される前がん状態である。
【0125】
いくつかの実施形態によれば、治療される疾患、障害又は病態は、B細胞急性リンパ性白血病(BALL)、T細胞急性リンパ性白血病(TALL)、急性リンパ性白血病(ALL)のうちの1つ以上から選択される急性白血病;慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL);B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、毛細胞白血病、小細胞又は大細胞濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症及び骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンストレームマクログロブリン血症;前立腺がん、膵臓がん、肺がん、又は形質細胞増殖性疾患、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、ワルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞質腫、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、及びPOEMS症候群、又はこれらの組み合わせである。
【0126】
一実施形態によれば、治療される疾患、障害又は病態は、多発性骨髄腫である。特定の実施形態によれば、多発性骨髄腫は、定型多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌型骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、骨の孤立性形質胞腫、及び髄外形質細胞腫からなる群から選択される。
【0127】
特定の実施形態によれば、治療有効量のBCMA標的化免疫細胞組成物は、治療を要する対象において、以下の効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上を実現するうえで充分である。すなわち、(i)治療される疾患、障害若しくは病態又はそれに関連する症状の重症度を低減又は改善すること、(ii)治療される疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状の期間を短縮すること、(iii)治療される疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状の進行を防止すること、(iv)治療される疾患、障害若しくは状態、又はそれに関連する症状の退縮を生じること、(v)治療される疾患、障害又は病態、又はそれに関連する症状の進展又は発症を予防すること、(vi)治療される疾患、障害又は病態、又はそれに関連する症状の再発を防止すること、(vii)治療される疾患、障害、若しくは状態、又はそれに関連する症状を有する対象の入院を減少させること、(viii)治療される疾患、障害若しくは状態、又はそれに関連する症状を有する対象の入院期間を短縮させること、(ix)治療される疾患、障害又は病態、又はそれに関連する症状を有する対象の生存率を高めること、(xi)治療される対象の疾患、障害若しくは状態、又はそれに関連する症状を阻害又は軽減すること、及び/又は(xii)別の治療の予防又は治療効果を強化又は改善すること。特定の実施形態では、治療有効量とは、以下の効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上を実現するうえで充分な治療薬の量を指す。すなわち、(i)腫瘍体積を減少させること、(ii)腫瘍細胞の数を減少させること、(iii)転移の回数を減少させること、(iv)余命を延ばすこと、(v)腫瘍細胞の増殖を低下させること、(vi)腫瘍細胞の生存率を低下させること、(vii)がん状態に関連する生理学的症状を改善すること、及び/又は(viii)腫瘍の発生を予防すること。
【0128】
治療有効量又は用量は、治療される疾患、障害又は病態、投与手段、標的部位、対象の生理学的状態(例えば、年齢、体重、健康状態を含む)、対象がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬剤、及び、治療が予防的なものであるか治療的なものであるか、などの様々な因子によって異なり得る。治療用量は、安全性及び有効性を最適化するために最適に滴定される。正確な用量は、周知の技術を用いて当業者により確認することができる。一般に、BCMA標的化免疫細胞は、体重1kg当たり約10
5〜10
8個の細胞の用量で投与される。いくつかの実施形態によれば、細胞の総用量は、分割投与、例えば、1回、2回、3回、又はそれ以上の別々の部分用量の投与によって対象に投与することができる。
【0129】
特定の実施形態によれば、本明細書に記載される組成物は、対象への想定される投与経路に適した形で製剤化される。例えば、本明細書に記載される組成物は、静脈内投与、皮下投与、又は筋肉内投与に適した形で製剤化することができる。
【0130】
特定の実施形態によれば、がんの治療に使用される組成物は、これらに限定されるものではないが、化学療法、リンパ球枯渇療法、放射線治療、他のがん免疫療法剤、標的化療法、がんワクチン、又は他の抗がん剤を含む別の治療と併用することができる。
【0131】
本明細書で使用するところの「併用される」なる用語は、対象への2種以上の治療薬の投与との関連において、複数の治療の使用を指す。「併用される」なる用語の使用は、治療が対象に投与される順序を限定しない。例えば、第1の治療(例えば、本明細書に記載される組成物)を、対象への第2の治療の投与の前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)、同時に、又はその後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)に投与することができる。
【0132】
別の一般的な態様では、本発明は、免疫細胞を新たに方向付けて、治療を要する対象におけるBCMA提示細胞の殺傷を標的とする方法であって、本発明の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。
【0133】
別の一般的な態様では、本発明は、本発明のBCMA標的化免疫細胞を含む医薬組成物を製造する方法であって、BCMA標的化免疫細胞と、薬学的に許容される担体とを組み合わせて医薬組成物を得ることを含む、方法に関する。
【0134】
本発明は以下の非限定的な実施形態を更に提供する。
【0135】
実施形態
実施形態1は、BCMA、好ましくはヒトBCMAに特異的に結合する、単離FN3ドメインである。
【0136】
実施形態2は、単離FN3ドメインが、ヒトBCMAの残基1〜54内の配列のような、BCMAの細胞外ドメインに特異的に結合する、実施形態1の単離FN3ドメインである。
【0137】
実施形態3は、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、FN3ドメインが、バイオセンサーシステム、例えば、Proteon Instrument(BioRad社)などを使用して、表面プラズモン共鳴を用いて測定した場合に1×10
−6M、5×10
−7M、1×10
−7M、5×10
−8M、1×10
−8M、5×10
−9M、1×10
−9M、5×10
−10M、1×10
−10M、5×10
−11M、1×10
−11M、5×10
−12M、1×10
−12M、5×10
−13M、又は1×10
−13M未満のKDでBCMA、好ましくはヒトBCMAに結合する、実施形態1の単離FN3ドメインである。
【0138】
実施形態4は、配列番号7と少なくとも80%、85%、90%、又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1の単離FN3ドメインである。
【0139】
実施形態5は、配列番号8〜44及び58〜145のうちの1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは配列番号8〜44及び58〜145のうちの1つのアミノ酸配列を含む、実施形態1の単離FN3ドメインである。
【0140】
実施形態6は、実施形態1〜5のいずれか1つのFN3ドメインをコードする単離ポリヌクレオチドである。
【0141】
実施形態7は、実施形態6のポリヌクレオチドを含むベクターである。
【0142】
実施形態8は、実施形態6のポリヌクレオチド又は実施形態7のベクターを含む宿主細胞である。
【0143】
実施形態9は、FN3ドメインをコードする核酸を含む宿主細胞を、FN3ドメインを産生する条件下で培養することと、細胞又は細胞培養物からFN3ドメインを回収することと、を含む、実施形態1〜5のいずれかのFN3ドメインを生産する方法である。
【0144】
実施形態10は、実施形態1〜5のいずれかのFN3ドメインと薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物である。
【0145】
実施形態11は、生体試料中のBCMAを検出する方法であって、生体試料を実施形態1〜5のいずれかのFN3ドメインと接触させることと、BCMAに特異的に結合するFN3ドメインを検出することと、を含み、好ましくはFN3ドメインが標識されたものである、方法である。
【0146】
実施形態12は、治療有効量の実施形態10の医薬組成物を対象に投与することを含む、BCMAに関連する疾患の治療を要する対象におけるBCMAに関連する疾患を治療する方法である。
【0147】
実施形態13は、BCMA標的化キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離ポリヌクレオチドであって、
BCMAに特異的に結合するFN3ドメインを有する細胞外ドメインと、
膜貫通ドメインと、
細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む、単離ポリヌクレオチドである。
【0148】
実施形態14は、FN3ドメインが、ヒトBCMAの残基1〜54内の配列のようなBCMAの細胞外ドメインに特異的に結合する、実施形態13の単離ポリヌクレオチドである。
【0149】
実施形態15は、FN3ドメインが、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、FN3ドメインが、バイオセンサーシステム、例えば、Proteon Instrument(BioRad社)などを使用して、表面プラズモン共鳴を用いて測定した場合に1×10
−6M、5×10
−7M、1×10
−7M、5×10
−8M、1×10
−8M、5×10
−9M、1×10
−9M、5×10
−10M、1×10
−10M、5×10
−11M、1×10
−11M、5×10
−12M、1×10
−12M、5×10
−13M、又は1×10
−13M未満のKDでBCMA、好ましくはヒトBCMAに結合する、実施形態13の単離ポリヌクレオチドである。
【0150】
実施形態16は、FN3ドメインが、配列番号7と少なくとも80%、85%、90%、又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態13の単離ポリヌクレオチドである。
【0151】
実施形態17は、FN3ドメインが、配列番号8〜44及び58〜145のうちの1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは配列番号8〜44及び58〜145のうちの1つのアミノ酸配列を含む、実施形態13の単離ポリヌクレオチドである。
【0152】
実施形態18は、CARが細胞外ドメインを膜貫通ドメインに連結するヒンジ領域を更に含み、好ましくはヒンジ領域が配列番号3と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、より好ましくは、ヒンジ領域が配列番号3のアミノ酸配列を含む、実施形態13〜18のいずれかの単離ポリヌクレオチドである。
【0153】
実施形態19は、CARがアミノ末端におけるシグナルペプチドを更に含み、好ましくは、シグナルペプチドが配列番号2と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、より好ましくは、シグナルペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を含む、実施形態13〜18のいずれかの単離ポリヌクレオチドである。
【0154】
実施形態20は、膜貫通ドメインが配列番号4と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、より好ましくは、膜貫通ドメインが配列番号4のアミノ酸配列を含む、実施形態13〜19のいずれかの単離ポリヌクレオチドである。
【0155】
実施形態21は、細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ζ、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD16、CD22、CD27、CD28、CD30、CD79a、CD79b、CD134(TNFRSF4又はOX−40としても知られる)、4−1BB(CD137)、CD278(ICOSとしても知られる)、FcεRI、DAP10、DAP12、ITAMドメイン、又はCD66dなどに由来する機能性シグナル伝達ドメインを含む、実施形態13〜20のいずれかの単離ポリヌクレオチドである。
【0156】
実施形態22は、細胞内シグナル伝達ドメインが、一次シグナル伝達ドメインと、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインとを含む、実施形態13〜21のいずれかの単離ポリヌクレオチドである。
【0157】
実施形態23は、細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号6と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含み、より好ましくは、配列番号6のアミノ酸配列を有する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む、実施形態13〜22のいずれかの単離ポリヌクレオチドである。
【0158】
実施形態24は、細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号5と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する共刺激細胞内シグナル伝達ドメインを含み、より好ましくは、配列番号5のアミノ酸配列を有する共刺激細胞内シグナル伝達ドメインを含む、実施形態13〜23のいずれかの単離ポリヌクレオチドである。
【0159】
実施形態25は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離ポリヌクレオチドであって、
配列番号2と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有するシグナルペプチドと、
配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むFN3ドメインであって、バイオセンサーシステム、例えば、Proteon Instrument(BioRad社)などを使用して、表面プラズモン共鳴を用いて測定した場合に1×10
−6M、5×10
−7M、1×10
−7M、5×10
−8M、1×10
−8M、5×10
−9M、1×10
−9M、5×10
−10M、1×10
−10M、5×10
−11M、1×10
−11M、5×10
−12M、1×10
−12M、5×10
−13M、又は1×10
−13M未満のKDでBCMA、好ましくはヒトBCMAに結合する、FN3ドメインを含む細胞外ドメインと、
配列番号3と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有するヒンジ領域と、
配列番号4と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する膜貫通ドメインと、
配列番号5と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する共刺激ドメインと、配列番号6と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する一次シグナル伝達ドメインとを含む細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む、単離ポリヌクレオチドである。
【0160】
実施形態26は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離ポリヌクレオチドであって、
配列番号2と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有するシグナルペプチドと、
配列番号7と少なくとも80%、85%、90%又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するFN3ドメインを含む細胞外ドメインであって、好ましくは、FN3ドメインが配列番号7のアミノ酸配列を含み、FN3がBCMAに特異的に結合する、細胞外ドメインと、
配列番号3と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有するヒンジ領域と、
配列番号4と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する膜貫通ドメインと、
配列番号5と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する共刺激ドメインと、配列番号6と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する一次シグナル伝達ドメインとを含む細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む、単離ポリヌクレオチドである。
【0161】
実施形態27は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離ポリヌクレオチドであって、
配列番号2と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有するシグナルペプチドと、
配列番号8〜44及び58〜145のうちの1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有するFN3ドメインを含む細胞外ドメインであって、FN3がBCMAに特異的に結合する、細胞外ドメインと、
配列番号3と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有するヒンジ領域と、
配列番号4と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する膜貫通ドメインと、
配列番号5と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する共刺激ドメインと、配列番号6と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する一次シグナル伝達ドメインとを含む細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む、単離ポリヌクレオチドである。
【0162】
実施形態28は、シグナルペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を有し、細胞外ドメインが配列番号8〜44及び58〜145のうちの1つのアミノ酸配列を有し、ヒンジ領域が配列番号3のアミノ酸配列を有し、膜貫通ドメインが配列番号4のアミノ酸配列を有し、細胞内シグナル伝達ドメインが配列番号5のアミノ酸配列及び配列番号6のアミノ酸配列を含む、実施形態27の単離ポリヌクレオチドである。
【0163】
実施形態29は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離ポリヌクレオチドである。
【0164】
実施形態30は、実施形態13〜29のいずれかのポリヌクレオチドを含むベクター、好ましくは、実施形態13〜29のいずれかのポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む発現ベクターである。
【0165】
実施形態31は、実施形態13〜29のいずれかのポリヌクレオチド又は実施形態30のベクターを含む宿主細胞である。
【0166】
実施形態32は、実施形態31の宿主細胞の単離細胞膜である。
【0167】
実施形態33は、単離細胞膜を調製する方法であって、
実施形態31の宿主細胞を、CARを産生する条件下で培養することと、
細胞膜を宿主細胞から単離することと、を含む、方法である。
【0168】
実施形態34は、実施形態13〜29のいずれかのポリヌクレオチド又は実施形態30のベクターを含む遺伝子操作された免疫細胞であって、実施形態13〜29のいずれかのポリヌクレオチドがプロモーターに機能的に連結されている、遺伝子操作された免疫細胞である。
【0169】
実施形態35は、免疫細胞が、遺伝子操作されたT細胞受容体ノックアウト免疫細胞である、実施形態34の遺伝子操作された免疫細胞である。
【0170】
実施形態36は、免疫細胞が、BCMAとは異なる第2の標的に特異的に結合する細胞外ドメインを有する第2のCARを更に発現する、実施形態34又は35の遺伝子操作された免疫細胞である。
【0171】
実施形態37は、第2の標的が、CD19、CD20、CS−1、κ軽鎖、CD138、Lewis Y抗原、CD38などの多発性骨髄腫に関連する標的である、実施形態36の遺伝子操作された免疫細胞である。
【0172】
実施形態38は、第2の標的が、正常細胞で発現されるががん細胞では発現しない標的であり、第2のCARが、阻害性受容体シグナル伝達ドメインを有する細胞内ドメインを含む、実施形態36の遺伝子操作された免疫細胞である。
【0173】
実施形態39は、細胞が、少なくとも1つの抗がん化学療法に対する耐性を有する、実施形態34〜38のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞である。
【0174】
実施形態40は、細胞が、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、イノシン−5’−一リン酸デヒドロゲナーゼII(IMPDH2)の変異体又は修飾型、多剤耐性タンパク質1(MDR1)、カルシニューリン、メチルグアニントランスフェラーゼ(MGMT)、microRNA−21、抗生物質耐性遺伝子であるble及びmcrAなどからなる群から選択されるものなどの、1つ以上の薬剤耐性遺伝子を更に発現する、実施形態39の遺伝子操作された免疫細胞である。
【0175】
実施形態41は、細胞が、CD52、糖質コルチコイド受容体、CD3、ヒトヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ヒトデオキシシチジンキナーゼ(dCK)などからなる群から選択される不活性化遺伝子などの、薬剤に対する細胞の感受性に関与する1つ以上の不活性化遺伝子を更に発現する、実施形態39の遺伝子操作された免疫細胞である。
【0176】
実施形態42は、実施形態34〜41のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞と薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物である。
【0177】
実施形態43は、治療有効量の実施形態42の医薬組成物を対象に投与することを含む、B細胞に関連する病態の治療を要する対象におけるB細胞に関連する病態を治療する方法である。
【0178】
実施形態44は、B細胞に関連する病態が、がん若しくは悪性疾患、又は骨髄異形成症、骨髄異形成症候群若しくは前白血病のうちの1つ以上から選択される前がん状態である、実施形態43の方法である。
【0179】
実施形態45は、B細胞に関連する病態が、B細胞急性リンパ性白血病(BALL)、T細胞急性リンパ性白血病(TALL)、リンパ性白血病(ALL)のうちの1つ以上から選択される急性白血病;慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL);B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、毛細胞白血病、小細胞又は大細胞濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症及び骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンストレームマクログロブリン血症;前立腺がん、膵臓がん、肺がん、又は形質細胞増殖性疾患、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、ワルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞質腫、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、及びPOEMS症候群、又はこれらの組み合わせである、実施形態43の方法である。
【0180】
実施形態46は、B細胞に関連する病態が、定型多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌型骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、骨の孤立性形質胞腫、及び髄外形質細胞腫、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される多発性骨髄腫などの多発性骨髄腫である、実施形態45の方法である。
【0181】
実施形態47は、化学療法、リンパ球枯渇療法、放射線治療、別のがん免疫療法剤、標的化療法、又は別の抗がん剤などの別の治療を対象に投与することを更に含む、実施形態43〜46の方法である。
【0182】
実施形態48は、免疫細胞を遺伝子操作する方法であって、(a)免疫細胞を得ることと、(b)実施形態13〜29のいずれかのポリヌクレオチド又は実施形態30のベクターを当該細胞内に導入することとを含む、方法である。
【0183】
実施形態49は、実施形態34〜41のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞を薬学的に許容される担体と組み合わせて医薬組成物を得ることを含む、医薬組成物を製造する方法である。
【0184】
実施形態50は、B細胞に関連する病態の治療を要する対象におけるB細胞に関連する病態の治療のための実施形態13〜29のいずれかのポリヌクレオチド、実施形態30のベクター、実施形態34〜41のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞、又は実施形態42の医薬組成物の使用であって、好ましくは、B細胞に関連する病態が多発性骨髄腫である、使用である。
【0185】
実施形態51は、B細胞に関連する病態の治療を要する対象におけるB細胞に関連する病態を治療するための実施形態13〜29のいずれかのポリヌクレオチド、実施形態30のベクター、実施形態34〜41のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞、又は実施形態42の医薬組成物であって、好ましくは、B細胞に関連する病態が多発性骨髄腫である、ポリヌクレオチド、ベクター、遺伝子操作された免疫細胞、又は医薬組成物である。
【実施例】
【0186】
以下の本発明の実施例は、本発明の本質を更に説明するためのものである。以下の実施例は本発明を限定するものではなく、本発明の範囲は付属の請求項によって定められる点を理解されたい。
【0187】
実施例1−CISディスプレイによる組み換えBCMAタンパク質に対するFN3ドメインライブラリのパンニング
BCMA組み換えタンパク質標的抗原の2つのコンストラクトをAB Biosiences社から購入した。一方はBCMAタンパク質単独(カタログ番号P011Xp)であり、他方はマウスIgG2aのFcドメイン(カタログ番号P001F)と融合されたBCMAであった。
【0188】
FN3ドメインのCIS−ディスプレイによるライブラリ選択
CISディスプレイを用いて、TCL18、TCL19、TCL21、TCL23、及びTCL24ライブラリからBCMAと結合するFN3ドメインを選択した。
【0189】
TCL19、TCL21、及びTCL23テンコンライブラリ(配列番号46)は、C鎖及びF鎖内並びにCDループ及びFGループ内の各位置でランダム化されたものであり、これらの位置におけるアミノ酸の分布が表2に示されるようなものである。TCL19及びTCL21は、すべての位置で、システイン及びメチオニンのみを除く18種類の天然アミノ酸の等しい分布(それぞれ5.55%)を有するように設計した。TCL23は、ランダム化された各位置が、システイン及びメチオニンを除いて、機能性の抗体のCDR−H3ループに見られるアミノ酸分布(Birtalan et al.,J Mol Biol.2008 Apr 11;377(5):1518〜28)に近くなるように設計した。TCL24テンコンライブラリ(配列番号47)は、ライブラリTCL19、TCL21、及びTCL23と比較して、4つの更なるランダム化テンコン位置を含むように設計した。これらの位置には、D鎖のN46及びT48と、G鎖のS84及びI86が含まれる。これらの位置は、これらの残基の側鎖がD及びGβ鎖から表面露出しており、C及びF鎖のランダム化した部分に構造的に隣接して位置しており、そのため、標的タンパク質と結合するためにアクセス可能な表面積が大きくなることから選択された。TCL24の各位置で用いたアミノ酸分布は、表2でTCL19及びTCL21について述べたものと同じである。
【0190】
【表2】
【0191】
TCL18テンコンライブラリ(配列番号48)はBCループ及びFGループ内でランダム化され、ランダム化されたBCループの長さ6〜9個の残基と、ランダム化されたFGループの長さ7〜12個の残基との組み合わせからなる。
【0192】
インビトロ転写及び翻訳(ITT)を行うため、3μgのライブラリDNAを、0.1mMの完全アミノ酸、1xS30プレミクス成分、及び15μLのS30エクストラクト(Promega社)と50μLの全体積で、30℃でインキュベートした。1時間後、375μLのブロッキング溶液(1xTBS、pH7.4、2%BSA、100μg/mlニシン精子DNA)を加え、反応混合物を氷上で15分間インキュベートした。ITT反応液を、マウスIgG2aのFcドメインに融合したビオチン化組み換えBCMAタンパク質(AB Biosciences社、カタログ番号P011F)とインキュベートした。4μMのマウスIgG2a(CNTO1037)を用いた競合結合アッセイを行って、マウスFcの代わりにBCMAに特異的に結合するFN3ドメインを濃縮した。
【0193】
ビオチン化組み換えタンパク質及び結合したライブラリのメンバーを、ニュートラアビジン又はストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズ上に捕捉した。未結合のライブラリのメンバーを、TBST及びTBSで順に洗浄して除去した。洗浄後、DNAを、85℃で10分間加熱することにより標的タンパク質から溶出し、更なるパニングのラウンドを行うためにPCRにより増幅した。各ラウンドにおいて、標的BCMA−mFcタンパク質の濃度を400nMから100nMに順次低下させて、洗浄のストリンジェンシーを上げることによって、高親和性の結合物質を単離した。5回の連続した選択のラウンドを行った。
【0194】
オフレート選択(Off-rate selection)
選択の5回目のラウンドからの生成物に、4ラウンドのオフレート選択を行った。ITT反応混合物を、マウスIgG2aのFcに融合したビオチン化組み換えBCMA細胞外ドメインタンパク質とインキュベートした。ビオチン化標的タンパク質の濃度を最初の2ラウンドの25nMから最後の2ラウンドの2.5nMにまで順次下げて、FN3ドメインの標的タンパク質との高い親和性についてFN3ドメインを選択した。2.5μMのマウスIgG2a(CNTO1037)を用いた競合結合アッセイを行って、マウスFcの代わりにBCMAに特異的に結合するFN3ドメインを濃縮した。
【0195】
ビオチン化組み換えタンパク質及び結合したライブラリのメンバーを、ニュートラアビジン又はストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズ上に捕捉し、TBSTでよく洗った。次いで、結合した複合体を5μMの低温の組み換えBCMA−mFcタンパク質で1時間洗浄し、TBST及びTBSで順次洗浄した後、DNAを溶出して、より遅い解離速度のFN3ドメインを選択した。
【0196】
パニングのラウンド5クローニング
パニングからの生成物をpET15bベクターにInfusionクローニングし、BL21(DE3)Goldコンピテント細胞に形質導入した。自動コロニーピッカーを使用してシングルコロニーをピックし、2mLの96ウェルプレート中、Luria Broth+100μg/mLアンピシリン中で6時間増殖させた。細菌増殖物を用いて、Terrific Broth+100μg/mLアンピシリン+Auto−induction培地中に培養物を接種した。24時間後、細菌を遠心分離によりペレット化し、Bugbuster HT+0.2mg/mLリゾチーム(Sigma社)で溶解した。
【0197】
パニングのラウンド5スクリーニング
Nuncマキシソーププレートを、PBS中、5μg/mLのニュートラアビジンにより100μL/ウェルで一晩コーティングした。翌日、プレートをBioTekプレートウォッシャー(3x300μL TBST)を用いて洗浄し、StartingBlock T20(Thermo社)で1時間ブロッキングした。プレートを3x300μL TBSTで洗浄した。抗原(1μg/mLのbt−BCMA、1μg/mLのbt−BCMA−mFc、又は5μg/mLのCNTO1037コントロール)を、100μLのStartingBlock T20/ウェル中で1時間コーティングした。
【0198】
新鮮な細菌ライセートを調製し、1:5の希釈率でELISAプレートに1時間添加した。次いで、プレートを更に1回洗浄し、100μLの抗テンコン25抗体pAb25−HRPを1:5000の希釈率で更に1時間添加した。プレートを最後に1回洗浄し、50μLのPOD基質(Roche社)を1:100の希釈率で各プレートに1つずつ添加した後、Spectramax M5プレートリーダーで発光を読み取った。
【0199】
バックグラウンド(B)に対するシグナル(S)を3DXで分析し、S/Bが10倍未満かつ相対発光単位(RLU)が50,000未満のクローンを廃棄した。合計7ヒットがFcタグなしのbt−BCMA抗原を用いて特定されたのに対して、281ヒットがbt−BCMA−mFcを用いて特定された。配列解析後、142個の固有の配列が特定された。
【0200】
パニングのラウンド9クローニング
パニングからの生成物をpD444−CHベクターにInfusionクローニングし、BL21(DE3)Goldコンピテント細胞に形質導入した。自動コロニーピッカーを使用してシングルコロニーをピックし、2mLの96ウェルプレート中、Luria Broth+100μg/mLアンピシリン中で6時間増殖させた。細菌増殖物を用いて、Terrific Broth+100μg/mLアンピシリン+Auto−induction培地中に培養物を接種した。24時間後、細菌を遠心分離によりペレット化し、Bugbuster HT+0.2mg/mLリゾチーム(Sigma社)で溶解した。
【0201】
パン290ラウンド9スクリーニング
10,000倍のライセート希釈液を使用し、bt−BCMA−mFc(1μg/mL)及びbt−CNTO1037(2μg/mL)抗原のみを使用した点を除いて、R5について上記に述べた方法を用いて生成物をスクリーニングした。この希釈率でS/Bが10倍未満のクローンを廃棄した。合計145ヒットを特定し、配列決定した。配列解析後、77個の固有の配列を特定した(例えば、配列番号8〜44及び58〜145を参照)。
【0202】
実施例2−ヒトBCMAを一過性に発現するHEK293F細胞との結合についてのBCMA特異的FN3ドメインのスクリーニング
hBCMA発現HEK293F及びMock HEK293F細胞の細胞数及び細胞生存率を測定し、25×10
6個の各細胞タイプを175gで5分間スピンダウンした。培地を吸引し、25mLのFACSバッファーに置き換えた。各細胞タイプにつき2枚のV底96ウェルプレートに各ウェル当たり100,000個の細胞を播種し、各プレートを、実験を通して氷上に保持した。各試料は以下のように設定した。
hBCMA細胞:2μMで処理
hBCMA細胞:0.2μMで処理
モック細胞:2μMで処理
Mock細胞:0.2μMで処理
【0203】
ポジティブ及びネガティブ抗体コントロールを含めた。12.5μLのコントロール抗体を238.5μLのFACSバッファーに加え、処理体積100μL当たり5μLの抗体(2.5μg)を得た。バッファーコントロールも含めた。バッファーコントロールウェルには、250μLのFACSバッファーのみを入れた。
【0204】
プレートを1200rpmで5分間、4℃でスピンして細胞をペレット化した。プレートを裏返してバッファーを捨て、100μLの希釈FN3ドメイン又はコントロールを細胞に加え、ピペットで混合した。プレートを裏返した後、ウェル内にはいくらかの残留液が残っていたが、その量はウェル間で概ね一定であった。
【0205】
プレートを氷上で1時間インキュベートした。その後、細胞を「Mock:2μMで処理」プレートのうちの1つの4個のウェルから回収し、Vi−CellシステムでTrypan blueを使用して細胞数及び生存率を確認した。生存率>90%で細胞数は約75,000個/ウェルであった。
【0206】
1時間後、プレートを1200rpmで5分間、4℃でスピンして細胞をペレット化した。プレートを裏返してバッファーを捨て、100uLのFACSバッファーを各ウェルに加えた。FACSバッファーによる洗浄を更に2回繰り返した。プレートを1200rpmで5分間、4℃でスピンして細胞をペレット化し、プレートを裏返してバッファーを捨てた。
【0207】
FACSバッファー中50μLの二次抗体を各ウェルに加えた。抗マウスmAbを1/1000の希釈率で加えた二次抗体コントロールウェル又はバッファーコントロールウェル以外のすべてのウェルに、抗His mAbを1/100の希釈率で加えた。プレートを氷上で1時間インキュベートした。その後、細胞を「Mock:2μMで処理」プレートのうちの1つの4個のウェルから回収し、Vi−CellシステムでTrypan blueを使用して細胞数及び生存率を確認した。生存率96%で細胞数は約67,000個/ウェルであった。
【0208】
1時間後、プレートを1200rpmで5分間、4℃でスピンして細胞をペレット化した。プレートを裏返してバッファーを捨て、100uLのFACSバッファーを各ウェルに加えた。FACSバッファーによる洗浄を更に2回繰り返した。プレートを1200rpmで5分間、4℃でスピンして細胞をペレット化し、プレートを裏返してバッファーを捨てた。
【0209】
細胞を30μLのIntellicytバッファー(FACSバッファー、0.1%Pluronic Acid、1mM EDTA、SytoX Red Live/Dead Stain、希釈率1:1000)中に再懸濁し、よく混合して塊を壊した。プレートを氷上に保持し、Intellicytプレートリーダーで読み取った。細胞を以下の順序でゲート化した:(a)細胞、(b)単一細胞、(c)生細胞。Alexa488チャンネルの幾何平均を計算し、生存細胞の割合を計算した。データは、hBCMA/Mock Alexa488シグナルの比を参照エンドポイントとして用いて表に収集した。データに基づき、14個のBCMA特異的FN3ドメインを更なる分析用に選択した。
【0210】
実施例3−ヒトBCMAを一過性に発現するHEK293F細胞との結合についての抗BCMAFN3ドメインの用量反応曲線(DRC)評価
10個のFN3ドメインの3倍希釈物を、開始濃度5μMでBD FACSバッファーで滴定した。コントロール試料はFACSバッファーで希釈した。ヒトBCMAを一過性に発現するHEK293F細胞にオーバーレイするために、それぞれが7個のFN3ドメインを単点用量滴定で有するソースプレートを非特異的テンコン25のコントロールと並行して作製した。アッセイコントロールは以下を含んだ。
【0211】
非特異的結合を測定するための各プレート上の一連のテンコン25用量反応曲線;
非特異的標識を測定するための抗His Alexa−488で染色した未処理細胞;
絶対バックグラウンドを測定するための抗His抗体染色を行わない非処理細胞;
シグナル強度のプレート間のばらつきを調節するための参照として使用した、「G10」と呼ばれるFN3ドメイン1uMのポジティブコントロール;及び
明らかに低い生存率を調整するための生存率試験ウェル。
【0212】
hBCMA発現HEK293F細胞の細胞数及び細胞生存率を測定し、45×10
6個のhBCMA発現細胞を175gで5分間スピンダウンした。培地を吸引し、25mLのFACSバッファーに置き換えた。4枚のV底96ウェルプレートに各ウェル当たり100,000個の細胞を播種し、プレートを、実験を通して氷上に保持した。プレーティングに使用しない5×10
6細胞は、後の比較生存率試験のために氷上に維持した。
【0213】
プレートを1200rpmで5分間、4℃でスピンして細胞をペレット化した。プレートを裏返してバッファーを捨て、60μLの希釈FN3ドメイン又はコントロールを細胞に加え、プレートをボルテックスして静かに混合した。
【0214】
プレートを氷上で1時間インキュベートした。1時間後、プレートを1200rpmで5分間、4℃でスピンして細胞をペレット化した。プレートを裏返してバッファーを捨て、100uLのFACSバッファーを各ウェルに加えた。FACSバッファーによる洗浄を更に2回繰り返した。プレートを1200rpmで5分間、4℃でスピンして細胞をペレット化し、プレートを裏返してバッファーを捨てた。プレートをボルテックスして細胞を静かに混合した。
【0215】
FACSバッファー中50μLの二次抗体を各ウェルに加えた。FACSバッファーのみのネガティブコントロールウェル以外のすべてのウェルに、抗His mAbを1/100の希釈率で加えた。プレートを氷上で1時間インキュベートした。その後、4枚のプレートすべての2個のウェルから細胞を回収して加え合わせ、Vi−CellシステムでTrypan blueを使用して細胞数及び生存率を確認した。生存率96.6%で細胞数は約67,500個/ウェルであった。比較用に氷上に維持したコントロール細胞の細胞数は、生存率95.1%で1×10
6/mLであった。
【0216】
1時間の染色後、プレートを1200rpmで5分間、4℃でスピンして細胞をペレット化した。プレートを裏返してバッファーを捨て、100uLのFACSバッファーを各ウェルに加えた。FACSバッファーによる洗浄を更に2回繰り返した。プレートを1200rpmで5分間、4℃でスピンして細胞をペレット化し、プレートを裏返してバッファーを捨てた。
【0217】
細胞を30μLのIntellicytバッファー(FACSバッファー、0.1%Pluronic Acid、1mM EDTA、SytoX Red Live/Dead Stain、希釈率1:1000)中に再懸濁し、プレートをボルテックスして静かに混合した。プレートを氷上に保持し、Intellicytプレートリーダーで読み取った。細胞を以下の順序でゲート化した:(a)細胞、(b)単一細胞、(c)生細胞。Alexa488チャンネルの幾何平均を計算し、生存する単一細胞の割合を計算した。正規化及び較正されたデータの結果を、
図2(結合飽和、一部位特異的結合曲線フィッティングプログラムを使用したPRISM曲線フィット分析)、及びPRISMソフトウェアを使用して計算したBmax及び解離定数(Kd)を示す表3に示す。
【0218】
【表3】
【0219】
実施例4−BCMA特異的FN3ドメイン保有CARの作製
23種類のBCMA特異的FN3ドメイン(配列番号8〜19及び58〜68)を125種類(配列番号8〜44及び58〜145)のリストから選択し、
図1に示すドメイン構造にしたがってCARコンストラクトに遺伝子操作により組み込んだ。
【0220】
BCMA標的化CARコンストラクトの各構成要素のアミノ酸配列は、表4に示すとおりであった。
【0221】
【表4】
【0222】
mRNA合成用の5’T7プロモーターを含むdsDNA PCRテンプレートを増幅するために、BCMA標的化CAR遺伝子のそれぞれについてプライマーを合成した。BCMA標的化CAR mRNAは、市販のmMESSAGE mMACHINE(登録商標)T7 ULTRA Transcription Kitを使用して生成した。
【0223】
実施例5−BCMA標的化CARを発現する遺伝子操作した免疫細胞の作製及び分析
mRNAを、正常なヒト血液(正常血液ドナーサービス−TSRI)に由来するpan T細胞に、ECM 830 Square Wave Electropolation System(BTX社)を用いてエレクトロポレートした。5×10
6個のpan T細胞に、10μgのBCMA標的化CAR mRNAの存在下又は非存在下で、製造者のプロトコールにしたがって単一の電気パルス(500V、750μ秒)を与えた。ポリクローナル抗FN3ドメイン抗体を用いて、CARの表面発現を24時間後に評価した。結果を
図3に示す。
【0224】
次いで、BCMA標的化CAR細胞を、クロム放出細胞毒性アッセイにより評価した。
【0225】
エフェクターは、BCMA標的化CAR発現T細胞、scFv−発現T細胞、CD19 CAR−T細胞、及び野生型T細胞とした。T細胞に、対応するmRNAをエレクトロポレートしたところ、約90%の表面発現が得られた。
【0226】
使用した標的細胞は、U2932(CD19
+/BCMA
+B細胞リンパ腫細胞株)、H929(CD19
−/BCMA
+形質細胞腫骨髄腫細胞株)、及びK562(CD19
−/BCMA
−慢性骨髄性白血病細胞株)とした。
【0227】
標的に腫瘍標的細胞10×10
6個当たり100μCiのCr51を37℃で1時間ロードした後、3回洗浄した。次いで、10,000個の標的細胞を、腫瘍標的に対する遺伝子操作したエフェクターT細胞の示される比(E:T)で約13〜14時間インキュベートした。「最大放出」試料は、Triton−Xを用いてインキュベートした標的であり、「T細胞なし、自然放出」試料は、標的のみのものである。カウントを60秒間収集し、アッセイを3重で設定した。細胞毒性率(%)の計算は以下のとおりに行った。
細胞毒性率(%)=(実験CPM−自発放出CPM)×100%/(最大放出CPM−自発放出CPM)
【0228】
図4〜7に示されるデータを分析し、Prismでグラフ化し、平均細胞毒性率(%)±SEMとして示した。
【0229】
これらの結果は、初代T細胞上のFN3ドメイン保有CARの発現が、TAA特異的な細胞殺傷を誘発し得ることを示すものである。
【0230】
以上、本発明を詳細に、かつその具体的な実施形態を参照して説明したが、当業者には、発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変更及び改変を行い得る点は明らかであろう。
【0231】
参考文献
Ausubel et al.,eds,1994,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,John Wiley & Sons,Inc.,New York
Barnes et al,Anal.Biochem.102:255(1980)
Bellucci et al.,Blood.2005 May 15;105(10):3945−50
Birtalan et al.,J Mol Biol.2008 Apr 11;377(5):1518−28
Bork and Doolittle,PNAS USA 89:8990−8992,1992
Connell,Curr Opin Biotechnol.2001(5):446−9
Coquery and Erickson,Crit Rev Immunol.2012;32(4):287−305
Curran and Brentjens,J Clin Oncol.2015 May 20;33(15):1703−6
Dai et al.,J Natl Cancer Inst.2016 Jan 27;108(7)
Ham et al,Meth.Enz.58:44(1979)
Hanes and Pluckthun,PNAS USA,94,4937−4942,1997
Jacobs et al.,Protein Engineering,Design,and Selection,25:107−117,2012
Lehmann and Wyss,Curr Opin Biotechnol,12,371−375,2001
Makrides et al.Microbiol Rev.1996 60(3):512−38
Maus et al.,Blood.2014 Apr 24;123(17):2625−35
Mayfield et al.,PNAS USA.2003 100(2):438−42
Meinke et al.,J Bacteriol 175:1910−1918,1993
Moreaux et al.,Blood.2004 Apr 15;103(8):3148−57
Naymagon and Abdul−Hay,J Hematol Oncol.2016 Jun 30;9(1):52
Neri et al.,Clin Cancer Res.2007 Oct 1;13(19):5903−9
Novak et al.,Blood.2004 Jan 15;103(2):689−94
Odegrip et al.,PNAS USA 101,2806−2810,2004
Patel et al.,Gene Therapy,1999;6:412−419
Roberts and Szostak,PNAS USA,94,12297−12302,1997
Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Vols.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2 ed.,1989
Sharp et al.Yeast.1991 7(7):657−78.
Sinclair et al.Protein Expr Purif.2002(1):96−105
Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.,1984,The Pierce Chemical Co.,Rockford,IL
Watanabe et al.,J Biol Chem 265:15659−15665,1990