(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-534170(P2019-534170A)
(43)【公表日】2019年11月28日
(54)【発明の名称】可撓性導体を備える電気回路
(51)【国際特許分類】
B32B 25/04 20060101AFI20191101BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20191101BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20191101BHJP
【FI】
B32B25/04
B32B7/025
H05K1/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-503943(P2019-503943)
(86)(22)【出願日】2017年7月24日
(85)【翻訳文提出日】2019年3月14日
(86)【国際出願番号】EP2017068595
(87)【国際公開番号】WO2018019754
(87)【国際公開日】20180201
(31)【優先権主張番号】62/368,140
(32)【優先日】2016年7月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】16186328.7
(32)【優先日】2016年8月30日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アポストロ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】オリアーニ, アンドレーア ヴィットーリオ
(72)【発明者】
【氏名】マウリ, ステファノ
【テーマコード(参考)】
4F100
5E338
【Fターム(参考)】
4F100AA02B
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4F100JK17
5E338AA12
5E338AA16
5E338EE27
(57)【要約】
本発明は、電気導電率を有し且つ歪/曲げ下で同じ電気導電率を維持する能力を有する金属化エラストマーから製造される可撓性導体を含む電気回路、前記可撓性導体を通って電流を伝導する方法、可撓性ディスプレイ、ウェアラブル電子機器、コンフォーマブルセンサー及びアクチュエーター内の導電性部品としての同導体の使用、及び同導体を含むデバイスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電圧発生器と、少なくとも1つのエラストマーを含むエラストマー組成物[組成物(C)]から製造される少なくとも1つの可撓性導体[導体(F)]とを備える電気回路[回路(E)]であって、少なくとも1つの表面[表面(S)]を有する前記導体(F)が、
− 前記表面(S)の少なくとも一部の上の窒素含有基[基(N)]と、
− 少なくとも50nm及び最大でも1500nmの厚さを有する前記表面(S)の少なくとも前記一部に付着された少なくとも1つの層[層(L1)]であって、(i)少なくとも107ジーメンス/mの電気導電率を有する金属からなる群から選択される酸化数ゼロの金属化合物[化合物(M)]及び(ii)ドープト亜鉛酸化物、ドープト銅/クロム酸化物、場合によりドープされたインジウム/スズ酸化物から選択される金属酸化物[化合物(MO)]からなる群から選択される少なくとも1つの材料から製造される少なくとも1つの層[層(L1)]とを含む、電気回路[回路(E)]。
【請求項2】
前記材料が銀、銅、金、アルミニウム、モリブデン、亜鉛、ニッケル、リチウム、及び鉄からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む金属化合物(M)であり、好ましくは銀、銅、金、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む、請求項1に記載の回路(E)。
【請求項3】
前記材料が、
− ドープト亜鉛酸化物(ドーパントが、アルミニウム(例えばAZOを生じる)、ガリウム(例えばGZOを生じる)、ナトリウム、マグネシウム、銅、銀、カドミウム、インジウム(例えばIZOを生じる)、スズ、スカンジウムイットリウム、コバルト、マンガン、クロム、及びホウ素から好ましくは選択されるn型ドーパント、並びに窒素、及びリンから好ましくは選択されるp型ドーパントからなる群から選択される);
− ナトリウム、マグネシウム、リチウム、ニッケル、スズの少なくとも1つでドープされた銅酸化物から選択される、ドープト銅(混合)酸化物;及び
− 場合によりドープされたインジウム/スズ酸化物から選択される金属酸化物である、請求項1に記載の回路(E)。
【請求項4】
前記エラストマーが、(モル%における)以下の組成物:
(i)フッ化ビニリデン(VDF)35〜85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10〜45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜30%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜15%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(ii)フッ化ビニリデン(VDF)50〜80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5〜50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜20%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(iii)フッ化ビニリデン(VDF)20〜30%、C2〜C8非フッ素化オレフィン(Ol)10〜30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及び/又はパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)18〜27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10〜30%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(iv)テトラフルオロエチレン(TFE)50〜80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜50%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(v)テトラフルオロエチレン(TFE)45〜65%、C2〜C8非フッ素化オレフィン(Ol)20〜55%、フッ化ビニリデン0〜30%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(vi)テトラフルオロエチレン(TFE)32〜60%モル%、C2〜C8非フッ素化オレフィン(Ol)10〜40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜40%、フルオロビニルエーテル(MOVE)0〜30%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(vii)テトラフルオロエチレン(TFE)33〜75%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15〜45%、フッ化ビニリデン(VDF)5〜30%、ヘキサフルオロプロペンHFP 0〜30%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(viii)フッ化ビニリデン(VDF)35〜85%、フルオロビニルエーテル(MOVE)5〜40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0〜30%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(ix)テトラフルオロエチレン(TFE)20〜70%、フルオロビニルエーテル(MOVE)30〜80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜50%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%
の1つを有する、(パー)フルオロ−エラストマーである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路(E)。
【請求項5】
前記導体(F)が、
(i)少なくとも1つのエラストマーを含むエラストマー組成物[組成物(C)]から製造され、少なくとも1つの表面[表面(S−1)]を有する物品を提供する工程と;
(ii)窒素含有基[基(N)]を前記少なくとも1つの表面(S−1)の少なくとも一部の上に形成して、少なくとも1つの窒素含有表面部分[表面(S−2)]を有するエラストマー物品を提供する工程と;
(iii)前記少なくとも1つの表面(S−2)を、少なくとも1つの金属化触媒を含む第1の組成物[組成物(C1)]と接触させて、基(N)と少なくとも1つの金属化触媒とを含有する少なくとも1つの表面[表面(S−3)]を有する物品を提供する工程と;
(iv)前記少なくとも1つの表面(S−3)を、少なくとも107ジーメンス/mの電気導電率を有する金属の群から選択される金属の少なくとも1つの塩[化合物(M1)]を含有する第2の組成物[組成物(C2)]と、及び/又は上に詳述されたような金属酸化物(MO)の少なくとも1つの前駆体[化合物(M2)]と、少なくとも50nm及び最大でも1500nmの層(L1)の厚さを提供するような量において及び時間の間接触させる工程とを含む方法によって製造される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路(E)。
【請求項6】
前記導体(F)の前記層(L1)の前記厚さが、少なくとも75nm及び/又は最大でも1000nm、より好ましくは最大でも500nmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路(E)。
【請求項7】
少なくとも1つのエラストマーを含むエラストマー組成物[組成物(C)]から製造される少なくとも1つの可撓性導体[導体(F)]を通って電流を伝導する方法であって、少なくとも1つの表面[表面(S)]を有する前記導体(F)が、前記導体(F)と少なくとも1つの電圧発生器とを備える電気回路[回路(E)]において、
− 前記表面(S)の少なくとも一部の上の窒素含有基[基(N)]と、
− 少なくとも50nm及び最大でも1500nmの厚さを有する前記表面(S)の少なくとも前記一部に付着された少なくとも1つの層[層(L1)]であって、(i)少なくとも107ジーメンス/mの電気導電率を有する金属からなる群から選択される酸化数ゼロの金属化合物[化合物(M)]及び(ii)ドープト亜鉛酸化物、ドープト銅/クロム酸化物、場合によりドープされたインジウム/スズ酸化物から選択される金属酸化物[化合物(MO)]からなる群から選択される少なくとも1つの材料から製造される少なくとも1つの層[層(L1)]とを含み、
前記方法が、前記導体(F)を少なくとも1つの変形に供する工程を含む、方法。
【請求項8】
前記変形が伸びであり、前記導体(F)が、軸引張り力に供され、前記軸の方向に、一般的に、電流の流れに平行なその軸の方向に伸びを生じる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記変形が曲げであり、前記導体(F)が、前記導体(F)の少なくとも一部に直交した方向の力に供されて、前記導体を直線形状から曲線形状にさせるか、又は曲線形状から異なった形状にさせ、好ましくは前記導体が、電流の流れに対して直交した方向の力を適用することによって曲げられる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのエラストマーを含むエラストマー組成物[組成物(C)]から製造される少なくとも1つの可撓性導体[導体(F)]を組み立てる工程を含む、可撓性ディスプレイ、ウェアラブル電子機器、コンフォーマブルセンサー及びアクチュエーターからなる群から好ましくは選択される、電気デバイスを製造する方法であって、少なくとも1つの表面[表面(S)]を有する前記物品が、少なくとも1つの電圧発生器を含む電気回路[回路(E)]において、
− 前記表面(S)の少なくとも一部の上の窒素含有基[基(N)]と、
− 少なくとも50nm及び最大でも1500nmの厚さを有する前記表面(S)の少なくとも前記一部に付着された少なくとも1つの層[層(L1)]であって、(i)少なくとも107ジーメンス/mの電気導電率を有する金属からなる群から選択される酸化数ゼロの金属化合物[化合物(M)]及び(ii)ドープト亜鉛酸化物、ドープト銅/クロム酸化物、場合によりドープされたインジウム/スズ酸化物から選択される金属酸化物[化合物(MO)]からなる群から選択される少なくとも1つの材料から製造される少なくとも1つの層[層(L1)]とを含む、方法。
【請求項11】
少なくとも1つのエラストマーを含むエラストマー組成物[組成物(C)]から製造される少なくとも1つの可撓性導体[導体(F)]と、少なくとも1つの電圧発生器と、を備える少なくとも1つの電気回路[回路(E)]を含む、可撓性ディスプレイ、ウェアラブル電子機器からなる群から好ましくは選択される電気デバイスであって、少なくとも1つの表面[表面(S)]を有する前記物品が、
− 前記表面(S)の少なくとも一部の上の窒素含有基[基(N)]と、
− 少なくとも50nm及び最大でも1500nmの厚さを有する前記表面(S)の少なくとも前記一部に付着された少なくとも1つの層[層(L1)]であって、(i)少なくとも107ジーメンス/mの電気導電率を有する金属からなる群から選択される酸化数ゼロの金属化合物[化合物(M)]及び(ii)ドープト亜鉛酸化物、ドープト銅/クロム酸化物、場合によりドープされたインジウム/スズ酸化物から選択される金属酸化物[化合物(MO)]からなる群から選択される少なくとも1つの材料から製造される少なくとも1つの層[層(L1)]とを含む、電気デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年7月28日に出願された米国仮特許出願第62/368140号及び2016年8月30日に出願された欧州特許出願第16186328.7号に対する優先権を請求し、これら出願の各々の全内容は、あらゆる目的のために参照として本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、電気導電率を有し且つ歪/曲げ下で同じ電気導電率を維持する能力を有する可撓性導体を含む電気回路、前記可撓性導体を通って電流を伝導する方法、可撓性ディスプレイ、ウェアラブル電子機器、コンフォーマブルセンサー及びアクチュエーター内の導電性部品としての同導体の使用、及び同導体を含むデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
伸縮性及び曲げサイクルを繰り返した時に電気導電率を維持する能力は可撓性導体の有利な性質であり、それは、同導体の使用分野を劇的に拡大することができる。
【0004】
確かに、電気導電材料は典型的に、不十分な機械的レジリエンスを有する硬質材料であり、それは、サイクル経過される又は繰り返される伸長又は曲げ現象に耐えることができない。
【0005】
この分野の進歩は、導電性活性材料が伸縮性/折り曲げ可能母材中に分散されている方法によって促されている:それにもかかわらず、適合性/加工制限条件は支持材料の選択をかなり狭めることがあり、機械的性質及び電気的性質の自由度の範囲を制限する。代替案として、適切な可撓性基材上のナノ材料のパターン化もまた追求されているが、化学蒸着に基づきしたがって高温で運転する、使用される典型的な製造技術は、使用される軟質材料の選択をなんらかの形で制限する。
【0006】
他方、金属化ゴム部品が公知である。とりわけ、米国特許出願公開第2007098978号明細書3/05/2007は、フッ素ゴムであり得る、軟質材料を含む基材の表面の全体又は一部の上に金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物及びそれらの化合物の群から選択される1種以上の金属又は金属化合物を含むコーティングフィルムを含む、ゴム基材の強度、硬度、硬さ、及びシーリング特性を維持しながら耐薬品性、耐プラズマ性、及び非粘着性を有する、表面がコートされたシーリング材料に関する。コーティングフィルムは、例えばイオンめっき法、スパッタリング法、CVD法、及び真空蒸発法などの真空成膜法によってゴム表面上に製造される。この文献によれば、そこで提供されるコートされたゴムは、改良された耐薬品性及び耐プラズマ性を有する。電気デバイス及び電気化学デバイスにおけるそれらの使用は言及されているが、シーリング材料として及び/又は絶縁体としてだけである。そこにおいて電気導電率は言及されていない。
【0007】
同様に、国際公開第2016/079230号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY S.P.A.)26/05/2016は一般的に、少なくとも1つのエラストマーを含むエラストマー組成物から製造され、窒素含有基を有する少なくとも1つの表面と、少なくとも1つの金属化合物を含む前記表面に付着された少なくとも1つの層とを有する複数層エラストマー物品に関する。前記組立体は、表面の窒素プラズマ予備処理と、予備処理済み表面を金属化触媒と接触させ、次に、金属塩を含む溶液と接触させる工程を含む無電解めっきの工程とを包含する二段階プロセスによって製造される。前記複数層組立体は、電気及び熱伝導性並びにガス及び液体に対するバリアを提供すると共に、その典型的な可撓性及び機械的性質を維持しながら、耐薬品性、耐擦傷性及び耐摩耗性のために極端な環境条件に耐えることができると記載されている。それにもかかわらず、金属化合物、厚さ及び加工パラメーターの広い選択は、適切な伸縮性及び電気導電率を有する可撓性導体を提供するようなものではない。
【0008】
米国特許出願公開第2014202744号明細書(TOKAI RUBBER IND LTD)24/07/2014には、エラストマー部品、繊維炭素材料、及び黒鉛構造物を有するフレーク状炭素材料を含有する導電性組成物から形成される導電性フィルムが開示されている。
【発明の概要】
【0009】
したがって、第1の態様において、本発明は、少なくとも1つの電圧発生器と、少なくとも1つのエラストマーを含むエラストマー組成物[組成物(C)]から製造される少なくとも1つの可撓性導体[導体(F)]とを備える電気回路[回路(E)]に関し、少なくとも1つの表面[表面(S)]を有する前記可撓性導体が、
− 前記表面(S)の少なくとも一部の上の窒素含有基[基(N)]と、
− 少なくとも50nm及び最大でも1500nmの厚さを有する前記表面(S)の少なくとも前記一部に付着された少なくとも1つの層[層(L1)]であって、(i)少なくとも10
7ジーメンス/mの電気導電率を有する金属からなる群から選択される酸化数ゼロの金属化合物[化合物(M)]及び(ii)ドープト亜鉛酸化物、ドープト銅/クロム酸化物、場合によりドープされたインジウム/スズ酸化物から選択される金属酸化物[化合物(MO)]からなる群から選択される少なくとも1つの材料から製造される少なくとも1つの層[層(L1)]とを含む。
【0010】
また、本発明はさらに、上に詳述されたような導体(F)を少なくとも1つの変形に供する工程を含む、導体(F)を通って電流を伝導する方法に関する。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、少なくとも電圧発生器を備える電気回路において、上に詳述されたような導体(F)を組み立てる工程を含む、可撓性ディスプレイ、ウェアラブル電子機器、コンフォーマブルセンサー及びアクチュエーターからなる群から好ましくは選択される、電気デバイスを製造する方法である。
【0012】
本発明は最後に、少なくとも1つの上に詳述されたような導体(F)と、少なくとも1つの電圧発生器とを備える少なくとも1つの組立体を含む、可撓性ディスプレイ、ウェアラブル電子機器からなる群から好ましくは選択される電気デバイスに関する。
【0013】
金属の適切な選択及び厚さの適合によって、可撓性導体が曲げられ且つ伸長される能力を維持しながら、著しい電気導電率を同時に達成して、電流(コンフォーマブルセンサーにおいて、アクチュエーターにおいて、ウェアラブル電子機器において、例えば可撓性ディスプレイのための、例えば、電気信号を伝導する間に導体が変形されることが必要とされるすべての分野において同導体の有利な使用を可能にできることを本出願人は見出した。
【0014】
さらに、特定の実施形態によれば、本発明の回路は可撓性導体の変形下で電流の伝導を可能にしながら同時に、可視光線が可撓性導体を通過することができるように、前記可撓性導体は透明であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】電気回路内の可撓性導体について、伸長による変形の間(◆)又は元の形状の回復する間(□)に測定された時の、伸び(%単位)の関数として抵抗(ohm単位)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
可撓性導体
上に詳述されたような導体(F)の可撓性導体は一般的に、層(L1)の化合物(M)及び/又は化合物(MO)の導電率と実質的に似ている電気導電率を有する。したがって、導体(F)の導電率は、回路(E)において使用するための導電率の要件と適合するために化合物(M)及び/又は化合物(MO)の適切な選択によって十分に調節され得る。
【0017】
導体(F)は、上に詳述されたような(i)金属化合物[化合物(M)]及び(ii)金属酸化物[化合物(MO)]からなる群から選択される1つの材料から製造される層(L1)を含む。
【0018】
本発明の文脈内で使用される表現「場合によりドープされたインジウム/スズ酸化物」は、インジウム/スズ混合酸化物及びドープトインジウムスズ混合酸化物を包含する。
【0019】
層(L1)は、導体(F)の表面(S)の一部の上に延在することができるか又は前記表面(S)を完全にコートしてもよい。特定の実施形態によれば、導体(F)は、表面(S)の前記一部の少なくとも2つの点間の少なくとも連続した経路を有利には画定し、その間で電流が回路(E)内で循環することができる、上に詳述されたような、基(N)を含む表面(S)の前記一部の上にパターンの形態で前記層(L1)を含んでもよい。
【0020】
導体(F)の好ましい実施形態において、前記基(N)が前記表面(S)上にグラフトされる。これは、基(N)が、組成物(C)の表面(S)を形成するポリマー鎖に共有結合によって結合していることを意味すると理解される。
【0021】
いかなる理論にも縛られずに、前記表面(S)上にグラフトされた前記基(N)の少なくとも一部が化合物(M)及び(MO)から選択される前記少なくとも1つの材料と化学結合を形成し、従って、基(N)を含む表面(S)の少なくとも前記一部と、化合物(M)及び/又は(MO)を含む前記層(L1)との間の著しい接着性を得ると本出願人は考える。
【0022】
表現「化学結合」は、エラストマーの表面上にグラフトされた基(N)の少なくとも一部と化合物(M)及び/又は(MO)との間の、例えば共有結合、イオン結合、配位(dipolar)(又は配位(coordinate))結合などの任意の種類の化学結合を表わすことを意図する。
【0023】
本説明の範囲内で及び以下の請求の範囲において使用されるとき用語「エラストマー」は、ASTM D3418に従って測定された、室温未満のガラス転移温度値(T
g)を有する、非晶質ポリマー又は低い結晶度(20体積%未満の結晶相)を有するポリマーを示す。より好ましくは、本発明によるエラストマーは、5℃未満、さらにより好ましくは0℃未満のT
gを有する。
【0024】
好ましくは、前記エラストマーは、少なくとも1つの少なくとも1つの(過)フッ素化モノマー及び/又は少なくとも1つの含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む。前記モノマーを含むエラストマーは、ここでは(パー)フルオロ−エラストマーと称される。好ましい実施形態において、前記モノマーは窒素原子を含有しない。
【0025】
表現「少なくとも1つの(過)フッ素化モノマー」とは、1つ以上の(過)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマーを意味することが本明細書によって意図される。本明細書の下記において、表現「(過)フッ素化モノマー」は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で理解される、すなわち、それらは上に定義されたような1種又は2種以上のフッ素化モノマーの両方を意味する。表現「(過)フッ素化モノマー」及び用語「(パー)フルオロエラストマー」における接頭辞「(パー)」は、モノマー又はエラストマーが完全に又は部分的にフッ素化され得ることを意味する。
【0026】
好適な(過)フッ素化モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、以下のものが挙げられる:
− C
3〜C
8パーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロペン(HFP);
− C
2〜C
8の含水素フルオロオレフィン、例えばフッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレン、及びトリフルオロエチレン(TrFE);
− クロロ−及び/又はブロモ−及び/又はヨード−C
2〜C
6フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
− CH
2=CH−R
f0(式中、R
f0は、C
1〜C
6(パー)フルオロアルキル又は1つ以上のエーテル基を有するC
1〜C
6(パー)フルオロオキシアルキルである);
− CH
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1〜C
6のフルオロ又はパーフルオロアルキル基、例えばCF
3、C
2F
5、C
3F
7である);
− CF
2=CFOR
f2(式中、R
f2は、C
1〜C
6フルオロ又はパーフルオロアルキル基、例えばCF
3、C
2F
5、C
3F
7;又はC
1〜C
12オキシアルキル又は1つ以上のエーテル基を含むC
1〜C
12(パー)フルオロオキシアルキル基、例えばパーフルオロ−2−プロポキシ−プロピル;又は式−CF
2OR
f3(式中、R
f3は、C
1〜C
6フルオロ又はパーフルオロアルキル又は1つ以上のエーテル基を含むC
1〜C
6(パー)フルオロオキシアルキル基、例えば−C
2F
5−O−CF
3である)の基;
− CF
2=CFOR
f4(式中、R
f4は、C
1〜C
12アルキル又は(パー)フルオロアルキル基;C
1〜C
12オキシアルキル;又はC
1〜C
12(パー)フルオロオキシアルキルであり;前記R
f4は、カルボン酸又はスルホン酸基であって、その酸、酸ハロゲン化物又は塩の形態におけるカルボン酸又はスルホン酸基を含む);
− フルオロジオキソール、例えばパーフルオロジオキソール;
− フルオロシラン、例えばCF
3−C
2H
4−Si(R
f5)
3又はAr−Si(R
f5)
3(式中、R
f5のそれぞれは、独立して、Cl、C
1〜C
3アルキル又はC
1〜C
3アルコキシから選択され、Arは、C
1〜C
6フルオロ又はパーフルオロアルキル基、例えばCF
3、C
2F
5、C
3F
7又は1つ以上のエーテル基を含むC
1〜C
6(パー)フルオロオキシアルキル基、例えば−C
2F
5−O−CF
3で任意選択的に置換されるフェニル環である);及びCH
2=CH
2−Si(R
f6)
3(式中、R
f6のそれぞれは、独立して、H、F及びC
1〜C
3アルキルから選択されるが、ただし、前記R
f6の少なくとも1つはFである)。
【0027】
表現「少なくとも1種の含水素モノマー」は、ポリマーが1種又は2種以上の含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよいことを意味することを意図する。
【0028】
表現「含水素モノマー」とは、ここでは、少なくとも1個の水素原子を含み、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーを意味することを意図する。
【0029】
適した含水素モノマーの非限定的な例には、とりわけ、C
2〜C
8非フッ素化オレフィン(OI)などの非フッ素化モノマー、特にエチレン、プロピレン、1−ブテンなどのC
2〜C
8非フッ素化アルファ−オレフィン(OI);ジエンモノマー;酢酸ビニル及びメチル−ビニルエーテル(MVE)などのビニルモノマー;メチルメタクリレート、ブチルアクリレートのような、アクリルモノマー;スチレン及びp−メチルスチレンのようなスチレンモノマー;及びケイ素含有モノマーが挙げられる。
【0030】
好ましい実施形態によれば、前記エラストマーは、(パー)フルオロ−エラストマー又はシリコーンエラストマーである。
【0031】
好ましくは、前記(パー)フルオロ−エラストマーは、ASTMD−3418に従って測定されたとき測定されたとき、0℃未満、より好ましくは−10℃未満のT
gを有する。
【0032】
典型的に、前記(パー)フルオロ−エラストマーは、上述の(過)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0033】
より好ましくは、前記(パー)フルオロ−エラストマーは、以下のものに由来する繰り返し単位を含む:
− C
3〜C
8パーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロペン(HFP);
− C
2〜C
8の含水素フルオロオレフィン、例えばフッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレン、及びトリフルオロエチレン(TrFE);
− CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1〜C
6フルオロ又はパーフルオロアルキル基、例えばCF
3、C
2F
5、C
3F
7、又は式−CFOCF
2OR
f2(式中、R
f2は、C
1〜C
6フルオロ又はパーフルオロアルキル基、例えばCF
3、C
2F
5、C
3F
7である)の基である);
− フルオロシラン、例えばCF
3−C
2H
4−Si(R
f3)
3(式中、R
f3のそれぞれは、独立して、Cl、C
1〜C
3アルキル又はC
1〜C
3アルコキシから選択される)、及びCH
2=CH
2−Si(R
f4)
3(式中、R
f4のそれぞれは、H、F及びC
1〜C
3アルキルから選択される)。
【0034】
任意選択的に、前記(パー)フルオロエラストマーは、少なくとも1つのビス−オレフィンに由来する繰り返し単位をさらに含む。
【0035】
好適なビス−オレフィンの非限定的な例は、下式:
− R
1R
2C=CH−(CF
2)
j−CH=CR
3R
4(式中、jは、2〜10、好ましくは4〜8の整数であり、R
1、R
2、R
3、R
4は、互いに等しいか又は異なり、−H、−F又はC
1〜C
5アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル基である);
− A
2C=CB−O−E−O−CB=CA
2(式中、Aのそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、−F、−Cl、及び−Hから独立して選択され;Bのそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、−F、−Cl、−H及び−OR
B(ここで、R
Bは、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化又は塩素化され得る分岐鎖又は直鎖アルキル基である)から独立して選択され;Eは、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択的にフッ素化された、2〜10個の炭素原子を有する二価基であり;好ましくはEは、−(CF
2)
z−基(zは、3〜5の整数である);及び
− R
6R
7C=CR
5−E−O−CB=CA
2(式中、E、A及びBは、上で定義されたものと同じ意味を有し;R
5、R
6、R
7は、互いに等しいか又は異なり、−H、−F又はC
1〜C
5アルキルもしくはフルオロアルキル基である)
のものから選択される。
【0036】
ビス−オレフィンが利用される場合、生じた(パー)フルオロエラストマーは、典型的には、ポリマー中の単位の総量に対して、ビス−オレフィンから誘導する単位を0.01モル%〜5モル%含む。
【0037】
任意選択的に、前記(パー)フルオロエラストマーは、特定の繰り返し単位に結合した側基として又はポリマー鎖の末端基としてのいずれかで、少なくとも1個のヨウ素又は臭素原子、より好ましくは少なくとも1個のヨウ素原子を含む硬化部位を含んでもよい。
【0038】
硬化部位含有繰り返し単位の中でも、特には以下のものを挙げることができる:
(CSM−1)式:
[式中、A
Hfのそれぞれは、互いに及び出現するごとに等しいか又は異なり、F、Cl、及びHから独立して選択され;B
Hfは、F、Cl、H及びOR
HfB(ここで、R
HfBは、部分的、実質的に又は完全にフッ素化又は塩素化されていることができる分岐又は直鎖アルキル基である)のいずれかであり;W
Hfのそれぞれは、互いに及び出現するごとに等しいか又は異なり、独立して、共有結合又は酸素原子であり;E
Hfは、任意選択でフッ素化された、2〜10個の炭素原子を有する二価基であり;R
Hfは、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化されていることができる分岐又は直鎖アルキル基であり;R
Hfは、ヨウ素及び臭素からなる群から選択されるハロゲン原子であり、それらは、エーテル結合が挿入されていてもよく;好ましくはEは、−(CF
2)
m−基(mは、3〜5の整数である)である]
のヨウ素又は臭素含有モノマー;
(CSM−2)場合によりフッ素化されている、シアニド基を含むエチレン性不飽和化合物。
【0039】
タイプ(CSM1)の硬化部位含有モノマーの中で、好ましいモノマーは、以下からなるもの群から選択されるものである:
(CSM1−A)式:
(式中、mは、0〜5の整数であり、nは、0〜3の整数であり、ただし、m及びnの少なくとも1つは0と異なり、R
fiは、F又はCF
3である)
のヨウ素含有パーフルオロビニルエーテル(米国特許第4745165号明細書(AUSIMONT SPA)、米国特許第4564662号明細書(MINNESOTA MINING)及び欧州特許第199138号明細書(ダイキン工業株式会社)にとりわけ記載されているような);及び
(CSM−1B)式:
CX
1X
2=CX
3−(CF
2CF
2)
p−I
(式中、X
1、X
2及びX
3のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立してH又はFであり;pは1〜5の整数である)
のヨウ素含有エチレン性不飽和化合物;これらの化合物の中でも、CH
2=CHCF
2CF
2I、I(CF
2CF
2)
2CH=CH
2、ICF
2CF
2CF=CH
2、I(CF
2CF
2)
2CF=CH
2を挙げることができる;
(CSM−1C)式:
CHR=CH−Z−CH
2CHR−I
(式中、Rは、H又はCH
3であり、Zは、1つ以上のエーテル酸素原子を任意選択で含有する直鎖又は分岐の、C
1〜C
18(パー)フルオロアルキレン基、又は(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である)
のヨウ素含有エチレン性不飽和化合物;これらの化合物の中でも、CH
2=CH−(CF
2)
4CH
2CH
2I、CH
2=CH−(CF
2)
6CH
2CH
2I、CH
2=CH−(CF
2)
8CH
2CH
2I、CH
2=CH−(CF
2)
2CH
2CH
2Iを挙げることができる;
(CSM−1D)2〜10個の炭素原子を含有するブロモ及び/又はヨードアルファ−オレフィン、例えば、米国特許第4035565号明細書(DU PONT)に記載されているブロモトリフルオロエチレン又はブロモテトラフルオロブテンなど、又は米国特許第4694045号明細書(DU PONT)に開示されている他の化合物ブロモ及び/又はヨードアルファ−オレフィン。
【0040】
タイプ(CSM2)の硬化部位含有モノマーのなかで、好ましいモノマーは、以下からなる群から選択されるものである:
(CSM2−A)X
CNがF又はCF
3であり、mが0、1、2、3又は4であり;nが1〜12の整数である、式CF
2=CF−(OCF
2CFX
CN)
m−O−(CF
2)
n−CNのシアニド基を含有するパーフルオロビニルエーテル;
(CSM2−B)X
CNがF又はCF
3であり、m’が0、1、2、3又は4である、式CF
2=CF−(OCF
2CFX
CN)
m’−O−CF
2−CF(CF
3)−CNのシアニド基を含有するパーフルオロビニルエーテル。
本発明の目的に適したタイプCSM2−A及びCSM2−Bの硬化部位含有モノマーの具体例は、とりわけ米国特許第4281092号明細書(DU PONT)、米国特許第5447993号明細書(DU PONT)及び米国特許第5789489号明細書(DU PONT)に記載されたものである。
【0041】
好ましくは、前記(パー)フルオロエラストマーは、0.001〜10重量%の量のヨウ素又は臭素硬化部位を含む。これらのなかでも、ヨウ素硬化部位は、硬化速度を最大にするために選択されるものであり、その結果として、ヨウ素硬化部位を含む(パー)フルオロエラストマーが好ましい。
【0042】
この実施形態によると、許容される反応性を確保するために、一般に、(パー)フルオロエラストマー中のヨウ素及び/又は臭素の含有量は、(パー)フルオロエラストマーの全重量に対して少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.15重量%とすべきであることが理解される。
【0043】
他方、(パー)フルオロエラストマーの総重量に対して、好ましくは7重量%を超えない、より具体的には5重量%を超えない、又は4重量%さえ超えないヨウ素及び/又は臭素の量が、副反応及び/又は熱安定性への悪影響を回避するために一般に選択されるものである。
【0044】
本発明のこれらの好ましい実施形態のこれらのヨウ素又は臭素硬化部位は、(パー)フルオロエラストマーポリマー鎖の主鎖に結合しているペンディング基として(上述したような(CSM−1)型モノマー由来の、及び好ましくは上述したような(CSM−1A)〜(CSM1−D)モノマー由来の、繰り返し単位の(パー)フルオロエラストマー鎖への組み込みによって)含まれていてもよく、又は前記ポリマー鎖の末端基として含まれていてもよい。
【0045】
第1の実施形態によれば、ヨウ素及び/又は臭素硬化部位は、(パー)フルオロエラストマーポリマー鎖の主鎖に結合しているペンディング基として含まれる。この実施形態による(パー)フルオロエラストマーは一般に、(パー)フルオロエラストマーの全ての他の繰り返し単位100モルあたり0.05〜5モルの量でヨウ素又は臭素を含有するモノマー(CSM−1)に由来する繰り返し単位を含み、こうして上述のヨウ素及び/又は臭素重量含有量を有利に確保している。
【0046】
第2の好ましい実施形態によれば、ヨウ素及び/又は臭素硬化部位は(パー)フルオロエラストマーポリマー鎖の末端基として含まれ、この実施形態によるフルオロエラストマーは、一般に、
− ヨウ素化及び/又は臭素化連鎖移動剤;好適な鎖−鎖移動剤は、典型的には、式R
f(I)
x(Br)
y(式中、R
fは、1〜8個の炭素原子を含有する(パー)フルオロアルキル又は(パー)フルオロクロロアルキルであり、一方、x及びyは、1≦x+y≦2で、0〜2の整数である)のものである(例えば、米国特許第4243770号明細書(ダイキン工業株式会社)及び米国特許第4943622号明細書(日本メクトロン株式会社)を参照されたい);及び
− とりわけ米国特許第5173553号明細書(AUSIMONT SRL)に記載されているなどの、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属ヨウ化物及び/又は臭化物
のいずれかをフルオロエラストマー製造中に重合媒体に添加することによって得られる。
【0047】
本発明の目的に好適な前記(パー)フルオロエラストマーの具体的な組成のなかでも、以下の組成(モル%単位)を有するフルオロエラストマーを挙げることができる:
(i)フッ化ビニリデン(VDF)35〜85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10〜45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜30%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜15%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(ii)フッ化ビニリデン(VDF)50〜80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5〜50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜20%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(iii)フッ化ビニリデン(VDF)20〜30%、C
2〜C
8非フッ素化オレフィン(Ol)10〜30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及び/又はパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)18〜27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10〜30%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(iv)テトラフルオロエチレン(TFE)50〜80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜50%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(v)テトラフルオロエチレン(TFE)45〜65%、C
2〜C
8非フッ素化オレフィン(Ol)20〜55%、フッ化ビニリデン0〜30%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(vi)テトラフルオロエチレン(TFE)32〜60%モル%、C
2〜C
8非フッ素化オレフィン(Ol)10〜40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜40%、フルオロビニルエーテル(MOVE)0〜30%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(vii)テトラフルオロエチレン(TFE)33〜75%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15〜45%、フッ化ビニリデン(VDF)5〜30%、ヘキサフルオロプロペンHFP 0〜30%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(viii)フッ化ビニリデン(VDF)35〜85%、フルオロビニルエーテル(MOVE)5〜40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0〜30%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
(ix)テトラフルオロエチレン(TFE)20〜70%、フルオロビニルエーテル(MOVE)30〜80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜50%、ビス−オレフィン(OF)0〜5%。
【0048】
(パー)フルオロエラストマーの適した例は、商品名Tecnoflon(登録商標)、例えばTecnoflon(登録商標)PL855としてSOLVAY SPECIALTY POLYMERS S.p.A.によって販売される製品である。
【0049】
好ましくは、前記シリコーンエラストマーは、ASTM D−3418に従って測定されたとき測定されたとき、−10℃未満、より好ましくは−30℃未満、さらにより好ましくは−50℃未満のT
gを有する。
【0050】
典型的に、前記シリコーンエラストマーは、上に開示されたようにケイ素含有モノマー、並びに任意選択的に追加の含水素モノマー及び/又は(過)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0051】
表現「ケイ素含有モノマー」とは、交互のケイ素及び酸素原子を含有する直鎖又は分岐モノマーを意味することが本明細書によって意図される。
【0052】
適したケイ素含有モノマーの非限定的な例には、
− シラン、例えばCH
2=CH
2−Si(R
f7)
3(式中、R
f7のそれぞれは、独立して、H、F及びC
1〜C
3アルキルから選択される);
− 式(R)
3Si−O−Si(R)
3及び(R)
2Si(OH)
2(式中、それぞれのRが、独立して、H、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、好ましくはメチル基、又はフェニル基から選択される)のシロキサン
が挙げられる。
【0053】
典型的に、前記シリコーンエラストマーは、ポリオルガノシロキサン系シリコーンゴムベース、例えばヒドロキシル、ビニル又はヘキセニル基を有する架橋基を含有するポリジメチルシロキサン、又はポリメチルフェニルシロキサンである。
【0054】
シリコーンエラストマーの適した例は、商品名Silastic、例えばSilastic 35U及びSilastic TR−55(ジメチルビニル末端、ジメチルオルガノシロキサン)としてDow Corning Corp.(U.S.A.)によって販売されている製品である。
【0055】
前記基(N)は、特に限定されないが、ただし、少なくとも1個の窒素原子を含有する。基(N)の例はアミノ基、アミド基、イミノ基、ニトリル基、ウレタン基及び尿素基である。
【0056】
前記層(L1)の厚さは少なくとも50nm、好ましくは少なくとも75nm及び/又は最大でも1500nm、好ましくは最大でも1000nm、より好ましくは最大でも500nmである。
【0057】
層(L1)が50nm未満の厚さを有するとき、電気導電率は十分ではない。層(L1)が1500nm超の厚さを有するとき、金属層は硬質で脆くなり、どちらも、伸長又は曲げ形式の両方において変形を妨げ、変形時に導電率の低下の原因であるクラッキング/破損を場合により生じる。
【0058】
金属化合物(M)は、銀、銅、金、アルミニウム、モリブデン、亜鉛、ニッケル、リチウム、鉄からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含み、好ましくは銀、銅、金、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む。特定の実施形態によれば、金属化合物(M)は、例えば黄銅Cu/Zn合金などの合金の形態で含めて前述の金属の2つ以上を含んでもよい。
【0059】
金属酸化物[化合物(MO)]は、ドープト亜鉛酸化物、ドープト銅(混合)酸化物、場合によりドープされたインジウム/スズ酸化物から選択される。
【0060】
酸化亜鉛のためのドーパントは有利には、アルミニウム(例えばAZOを生じる)、ガリウム(例えばGZOを生じる)、ナトリウム、マグネシウム、銅、銀、カドミウム、インジウム(例えばIZOを生じる)、スズ、スカンジウムイットリウム、コバルト、マンガン、クロム、及びホウ素から好ましくは選択されるn型ドーパント、並びに窒素、及びリンから好ましくは選択されるp型ドーパントからなる群から選択される。
【0061】
ドープト銅(混合)酸化物の中では、ナトリウム、マグネシウム、リチウム、ニッケル、スズの少なくとも1つでドープされた銅酸化物を挙げることができる。
【0062】
上に詳述されたような化合物(MO)は、単独で又は複数の化合物(MO)と組み合わせてすなわち化合物(MO)と別の酸化物とを組み合わせて使用することができる。
【0063】
上に詳述されたような導体(F)は有利には、
(i)少なくとも1つのエラストマーを含むエラストマー組成物[組成物(C)]から製造され、少なくとも1つの表面[表面(S−1)]を有する物品を提供する工程と;
(ii)窒素含有基[基(N)]を前記少なくとも1つの表面(S−1)の少なくとも一部の上に形成して、少なくとも1つの窒素含有表面部分[表面(S−2)]を有するエラストマー物品を提供する工程と;
(iii)前記少なくとも1つの表面(S−2)を、少なくとも1つの金属化触媒を含む第1の組成物[組成物(C1)]と接触させて、基(N)と少なくとも1つの金属化触媒とを含有する少なくとも1つの表面部分[表面(S−3)]を有する物品を提供する工程と;
(iv)前記少なくとも1つの表面(S−3)を、少なくとも10
7ジーメンス/mの電気導電率を有する金属の群から選択される金属の少なくとも1つの塩[化合物(M1)]を含有する第2の組成物[組成物(C2)]と、及び/又は上に詳述されたような金属酸化物(MO)の少なくとも1つの前駆体[化合物(M2)]と、少なくとも50nm及び最大でも1500nmの層(L1)の厚さを提供するような量において及び時間の間接触させる工程とを含む方法によって製造することができる。
【0064】
本発明の方法の工程(i)下で、前記エラストマー組成物(C)は、典型的に、例えばスラブ、粉末、かけら、液体、ゲルの形態の少なくとも1つのエラストマー;及び追加の成分を含む。
【0065】
適した追加の成分及びそれらの量は、使用されるエラストマーのタイプ、架橋工程において使用される条件及び/又は最終物品において望ましい性質に応じて、当業者によって選択され得る。
【0066】
典型的に、追加の成分は以下から選択され得る:
− 硬化剤、例えばポリヒドロキシル化合物(例えばビスフェノールA)、トリアリル−イソシアヌレート(TAIC)及び有機過酸化物(例えばジ−tertブチルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、ビス(1,1−ジエチルプロピル)パーオキシド、ビス(1−エチル−1−メチルプロピル)パーオキシド、1,1−ジエチルプロピル−1−エチル−1−メチルプロピル−パーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−アミルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーベンゾエート、ビス[1,3−ジメチル−3−(tert−ブチルパーオキシ)ブチル]カーボネート及び商品名Luperox(登録商標)101XL45として販売されている2,5−ビス(tert−ブチルパー−オキシ)−2,5−ジメチルヘキサン);
− 塩基性化合物、特に二価金属酸化物及び/又は水酸化物、例えばMgO、ZnO及びCa(OH)
2;弱酸の塩、例えばBa、Na、K、Pb、Caステアリン酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、又は亜リン酸塩(phopshite);及びそれらの混合物;及び
− 従来の添加剤、特に充填剤、例えばカーボンブラック及びヒュームドシリカ;促進剤、例えばアンモニウム、ホスホニウム及びアミノホスホニウム塩;増粘剤;顔料;酸化防止剤;安定剤;加工助剤。
【0067】
好ましくは、組成物(C)において、前記硬化剤は0.5〜15phr(すなわち、エラストマー100重量部当たりの重量部)、より好ましくは2〜10phrの量である。
【0068】
好ましくは、組成物(C)において、前記塩基性化合物は0.5〜15phr、より好ましくは1〜10phrの量である。
【0069】
好ましくは、組成物(C)において、前記従来の添加剤は0.5〜50phr、より好ましくは3〜40phrの量である。
【0070】
また、エラストマーがシリコーンエラストマーであるとき、組成物(C)はオルガノシランカップリング剤を好ましくは前記組成物(C)の0.1重量%〜1.5重量%の量でさらに含むことができる。
【0071】
前記組成物(C)は、典型的に、標準的方法を使用することによって製造される。
【0072】
典型的に、全ての成分が最初に一緒に混合される。密閉式ミキサー又はオープンミルミキサーなどのミキサー装置を使用することができる。
【0073】
本発明の方法の工程(i)下で、前記物品は前記組成物(C)を硬化させることによって得られる。
【0074】
前記組成物(C)の硬化条件は、使用されるエラストマー及び硬化剤に応じて当業者によって選択され得る。
【0075】
例えば、エラストマーがフルオロエラストマーであるとき、硬化は、100℃〜250℃、好ましくは150℃〜200℃の温度で5〜30分間にわたり行うことができる。
【0076】
あるいは、エラストマーがシリコーンエラストマーであるとき、硬化は、100℃〜200℃の温度で5〜15分間の間行なうことができる。
【0077】
好ましくは、本発明による方法において、前記工程(ii)は、窒素含有ガスの存在下で前記表面(S−1)を処理することによって行われる。
【0078】
本発明の工程(ii)下で、前記窒素含有ガスは、好ましくは、任意選択的にCO
2及び/又はH
2などの窒素を含有しないガスと混合して、N
2、NH
3又はそれらの混合物から選択される。より好ましくは、前記窒素含有ガスは、N
2及びH
2の混合物である。
【0079】
ガス流速は、当業者によって選択され得る。5nl/分〜15nl/分の間、好ましくは約10nl/分のガス流を使用して良い結果が得られた。
【0080】
好ましくは、前記工程(ii)は大気プラズマ法によって行われる。
【0081】
好ましくは、前記大気プラズマ法は、大気圧下で及び50Wmin/m
2〜30,000Wmin/m
2、より好ましくは500Wmin/m
2〜15000Wmin/m
2の等価コロナ線量を使用して行われる。
【0082】
有利には、前記少なくとも1つの表面(S−1)を窒素含有ガスの存在下で前記大気プラズマ法によって連続的に処理して、窒素含有表面(S−2)を提供し、以下に開示されるようにそれに適用される、少なくとも1つの金属化合物を含む層(L1)との著しい接着性を提供する。
【0083】
特定の実施形態によれば、前記工程(ii)において、表面(S1)の少なくとも一部を選択的に処理するためにスクリーン及び/又は他のパターン形成ツールを使用して、上に詳述されたような基(N)を、特に、前記表面の一部の上に選択的に形成することができる。
【0084】
好ましくは、本発明の工程(iii)下で、前記組成物(C1)は、水などの適した溶媒中の金属化触媒の溶液又はコロイド懸濁液である。
【0085】
好ましくは、工程(iii)は、工程(ii)で得られたエラストマーを前記組成物(C1)中に浸漬することによって行われる。
【0086】
好ましくは、本発明の方法において金属化触媒として使用されてもよい化合物は、Pd、Pt、Rh、Ir、Ni、Cu、Ag及びAu触媒を含む群から選択される。
【0087】
より好ましくは、金属化触媒は、PdCl
2などのPd触媒から選択される。
【0088】
好ましくは、工程(iv)下で、前記組成物(C2)は、少なくとも1つの化合物(M1)と、少なくとも1つの還元剤と、少なくとも1つの液体媒体と、任意選択的に、1つ以上の添加剤とを含む無電解金属化めっき浴である。
【0089】
好ましくは、前記化合物(M1)は、1つ以上の金属塩を含む。より好ましくは、前記化合物(M1)は好ましくは、化合物(M)に対して上に記載された金属の1つ以上の金属塩を含む。
【0090】
好ましくは、前記還元剤は、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、グリコール酸及びグリオキシル酸を含む群から選択される。
【0091】
好ましくは、前記液体媒体は、水、有機溶媒及びイオン性液体を含む群から選択される。
【0092】
有機溶媒のなかでも、エタノールなどのアルコールが好ましい。
【0093】
好適なイオン性液体の非限定的な例としては、特には、カチオンとしてスルホニウムイオンまたはイミダゾリウム環、ピリジニウム環、ピロリジウム環、又はピペリジウム環(前記環は任意選択的に窒素原子上が置換されていてもよく、特には1〜8個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換されていてもよく、また、炭素原子上も置換されていてもよく、特には1〜30個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換されていてもよい)を含むものが挙げられる。
【0094】
好ましくは、イオン性液体は、有利には、アニオンとしてハライドアニオン、過フッ素化アニオン、及びホウ酸塩から選択されるものを含むイオン性液体から選択される。
【0095】
好ましくは、添加剤は、液体組成物中の触媒の安定性を強化するために適した塩、緩衝液及びその他の材料を含む群から選択される。
【0096】
好ましくは、前記工程(iv)は30℃を超える温度、例えば40℃〜50℃で行われる。
【0097】
好ましくは、前記工程(iv)は、例えば、工程(iii)において得られたエラストマーを前記組成物(C2)に浸漬することにより、前記表面(S)を完全に覆う連続した層(L1)を提供するように行われる。しかしながら、複数層物品の用途に応じて、前記工程(iv)は、前記表面(S)を部分的に覆う不連続な層(L1)を提供するように行われてもよい。
【0098】
好ましくは、前記工程(iii)及び(iv)は、より好ましくは無電解めっきにより、単一工程[工程(iii−D)]として行われる。
【0099】
「無電解めっき」によって、典型的には、めっき浴中で、金属カチオンと、前記金属カチオンをその元素状態に還元するのに適する適切な化学還元剤との間で行われるレドックスプロセスが意味される。
【0100】
工程(iii)及び工程(iv)に対して上に開示された好ましい条件は、工程(iii)及び(iv)が別々に行われるか否かにかかわらず、又は工程(iii)及び工程(iv)が単一工程(iii−D)として行われるときに適用される。
【0101】
化合物(M2)が使用されるとき、金属酸化物(MO)の前記前駆体は、金属塩、金属水酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。堆積は、とりわけレドックス化学、中和など、異なった方法で行なうことができる。
【0102】
特定の実施形態によれば、導体(F)は、透明な導体(F)、すなわち、入射光の強度と透過光の強度との比として測定されるとき(400〜700nmの波長領域の)入射可視光線の透過率が少なくとも60%、好ましくは70%、さらにより好ましくは少なくとも75%である導体であってもよい。
【0103】
電気回路
上記のように、本発明の電気回路又は回路(E)は、少なくとも1つの電圧発生器と、少なくとも1つの上に詳述されたような導体(F)とを備える。
【0104】
当業者は、回路(E)の使用の特定の意図された分野の関数として最も適切な電圧発生器を選択する。一定の又は可変発生電圧によって、直流又は交流電圧発生器を使用することができる。異なった形態のエネルギー(例えば位置、運動...)を電気エネルギーに変換することができる任意の電圧発生器を使用することができる。
【0105】
導体(F)がその表面(S)の一部の少なくとも2つの点間の連続した経路を画定するパターンの形態で前記層(L1)を含む実施形態については、電圧発生器は一般的に前記点に接続される。
【0106】
電気回路は、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、モーター、アウトレットボックス、ライト、スイッチ、及びその他の電気及び電子部品のような1つ又は2つ以上の付加的な部品を含んでもよく、それらは、前記回路(E)内で異なった方法で接続されてもよい。
【0107】
一般的に、回路(E)は、その動作中、電圧発生器によって発生される電流が上に詳述されたような導体(F)を通って流れるように考案される。これらの動作中、導体(F)は、その電気的性能が影響されずに、曲げ及び伸長などの変形に供されてもよい。
【0108】
電流を伝導する方法
したがって、本発明の別の目的は、上に詳述されたような、回路(E)内の導体(F)を通って電流を伝導する方法であり、前記方法は、導体(F)を少なくとも1つの変形に供する工程を含む。
【0109】
導体(F)の導電率に変形ヒステリシスは実質的に無く、その結果、変形の関数として導体(F)の導電率が変化する間、初期形状及び寸法の回復は導体(F)によって本来示されるのと実質的に同じ導電率の回復を有利には確実にすることを出願人は見出した。
【0110】
この方法によれば、導体(F)は元の寸法及び形状を有する。
【0111】
変形はとりわけ伸び及び曲げから選択され得る。
【0112】
伸びによる変形の場合、導体(F)は一般的に、軸引張り力に供せられ、前記軸の方向に伸びを生じる。
【0113】
導体(F)は一般的に、電流の流れに平行なその軸の方向の伸び、最大でも50%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも35%の伸びで変形されるが、伸びのパーセンテージは、導体(F)の寸法増加を元の寸法で割るパーセント比として定義される。
【0114】
曲げによる変形の場合、導体(F)は一般的に、導体(F)の少なくとも一部に直交した方向の力に供されて、導体を直線形状から曲線形状にさせるか、又は曲線形状から異なった形状にさせる。
【0115】
一般的に、導体が、電流の流れに対して直交した方向の力を適用することによって曲げられる.
【0116】
ただ1つの表面(S)に付着された層(L1)を有する導体(F)の場合、曲げは、前記層(L1)が凹表面に付着されるように導体(F)を変形することによるか(ここでは負の曲げと称される)、又は前記層(L1)が凸表面に付着されるように導体(F)を変形することによるか(ここでは正の曲げと称される)どちらかで適用することができる。
【0117】
本発明のさらに別の目的は、上に詳述されたような導体(F)を電気デバイス内の回路(E)において組み立てる工程を含む、可撓性ディスプレイ、ウェアラブル電子機器、コンフォーマブルセンサー及びアクチュエーターからなる群から好ましくは選択される、前記電気デバイスを製造する方法である。
【0118】
本発明は最後に、上に詳述されたような少なくとも1つの回路(E)を含む、可撓性ディスプレイ、ウェアラブル電子機器からなる群から好ましくは選択される電気デバイスに関する。
【0119】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0120】
本発明は、以下の実施例を参照してより詳細にこれから説明されるが、実施例の目的は、例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0121】
予備実施例1-エラストマー物品の製造
以下の表1に記載される成分をオープンミルミキサー内で一緒に混合した。
【0123】
このように得られた組成物を5分間にわたり170℃でプレス硬化し、厚さ2mm及び側面130mmのプラックを形成した。次に、プラックを(空気中の)炉内で4時間にわたり230℃で後硬化した。
【0124】
次に、このように得られたプラックは、夾雑物及び汚染物を除去するために、イソプロピルアルコール(IPA)で浸漬した実験室用クロスを使用して清浄化された。
【0125】
予備実施例2−可撓性導体の製造
工程2(A)−表面活性化
実施例1のエラストマー部品の成形プラックの表面の1つは、Plasmatreater(登録商標)AS400計測器を使用して、高周波プラズマ放電プロセスによって大気圧で処理された。エッチングガスは、N
2であった。動作周波数は20kHzであり、電圧は0.3kVであった。
【0126】
工程2(B)−清浄化後の金属化プロセス
試料の処理済み表面を以下に詳述した手順に従って無電解めっきによって金属銅でコートした。処理済み表面は最初に、試料表面をパラジウムクラスターで覆うために、1分間の間0.03g/LのPdCl
2を含有する水溶液中に浸漬することによって活性化された。次に、Printogant PV溶液(それはAtotechによって商業化された商用めっき液であり、その主成分は、銅イオン源として硫酸銅(CuSO
4)、還元剤としてホルムアルデヒド(HCHO)、pH調整剤として水酸化ナトリウム(NaOH)、及び溶液中の銅イオンを安定化する錯化剤である)を保有する槽に試料を120秒間の間45℃で浸漬することによって銅の無電解めっきを実施し、金属銅をプラックの表面に堆積させた。表面の処理済み表面上にコーティングされた銅層の厚さは、SEMによって測定して、0.2μmであった。
【0127】
可撓性導体を備える回路の電気導電率性能の特性決定
抵抗対伸びの測定
幅2cm×長さ6cmの試料を実施例2において得られた可撓性導体試料から切り分けた。2つの幅4mm銅ストリップを3cmの相対距離で試料上の電気接点として使用し、デジタルマルチメーターに接続して回路を得た。試料の末端を固定端及び可動クロスビームを有するフレーム内にクランプし、調節可能なエンドレススクリューで張力を適用して、可変伸びを生じた。伸びの間に一定の変形値においてデジタルマルチメーターを使用して可撓性導体の抵抗を測定した。30%変形が達せられるとき、適用された張力を徐々に解除し、伸長の間に使用される伸び値に似た伸び値において抵抗値を測定した。
【0128】
以下の表2は、そのように得られた結果をまとめる。
【0130】
上に再び集めたデータが示すように、試料が30%を超える伸び値まで伸長されたとき、伸長された可撓性導体を通って電流が流れるのをまだ確実にしながら、可撓性導体の抵抗が中程度に増加する。これは、可撓性導体が変形時に測定可能な電気導電率を維持することを示すために重要である。さらに、伸びが解除されて試料が初期長さに戻るとき、抵抗は実質的に初期値に戻った。それは、伸び段階の間に不可逆的な現象が生じず、この方法によって金属導電層が損なわれなかったことを明示する。
【0131】
抵抗対曲げの測定
幅2cm×長さ6cmの試料を実施例2において得られた可撓性導体試料から切り分けた。2つの幅1cm接着剤可撓性銅ストリップを3cmの相対距離において付けられた試料上の電気接点として使用し、デジタルマルチメーター電圧発生器に接続した。
【0132】
したがって、試料を公知の半径の非導電性円筒上で曲げた。円筒表面と対向して/接触して金属表面を配置して可撓性導体の「負の」曲げが得られた。円筒表面と対向して/接触してエラストマー表面を配置して可撓性導体の「正の」曲げが得られた。
前記異なった円筒上での曲げの後にデジタルマルチメーターを使用して可撓性導体の抵抗を測定した。
以下の表は、異なった曲げ半径において測定された抵抗値を記載する。
【0134】
上の表のデータは、曲げ試験においてもまた導電率は実質的に保持され、ヒステリシス現象が無いことを裏づけた。
【国際調査報告】