【実施例】
【0274】
実施例
方法論
細菌株、プラスミド及びオリゴヌクレオチド
大腸菌株DH5αを、全てのDNA操作に使用し、且つBL21(λDE3)(Stratagene)株を、タンパク質発現のために使用した。培養は、アンピシリン(100μg/ml)を補充した、2xYT培地中で、37℃で成長させた。使用したオリゴヌクレオチドプライマーは、表1に列記している。
【0275】
C2 Cpe0147構築体のクローニング
Cpe0147アミノ酸配列439−563(完全配列についてはUniprotエントリーB1R775参照)をコードしているDNAを、Kwonらの論文(2014)において先に報告されたC2構築体から、プライマーPYC2NtermFwd[配列番号5]及びPYC2NtermRev[配列番号6]を用いて、PCR増幅した。増幅したPCR断片を、EcoRI及びKasI制限エンドヌクレアーゼにより消化し、発現ベクターpMBP−ProExHta(Invitrogen)へクローニングした。pMBP−ProExHtaは、先にTing, Y. T.;Batot, G.;Baker, E. N.;Young, P. G.の論文Acta crystallographica. Section F, Structural biology communications 2015, 71, 61において報告されており、これは、マルトース結合タンパク質(MBP)遺伝子を、pProExHtaのHis
6−タグとrTEV(組換えタバコEtchウイルスプロテアーゼ)切断部位の間に挿入することにより作製した。生じたベクターpMBP−Cpe0147
439−563は、N−末端His
6−タグ付きMBP融合タンパク質、それに続くrTEV切断部位及びCpe0147
439−563切断型タンパク質ドメインを作製した。
【0276】
切断可能なrTEV認識配列を欠いている第二の構築体を、Cpe0147
439−563の、先にTingらの論文(2015)において説明されたベクターpMBP3へのサブクローニングにより作製した。生じたベクターpMBP3L−Cpe0147
439−563は、N−末端His
6−タグ付きMBP融合タンパク質、それに続く−AGA−3残基リンカー及びCpe0147
439−563切断型タンパク質ドメインを作製した。
【0277】
第三の自己−重合性構築体は、プライマーFwdcomp1[配列番号7]及びPYC2NtermRev[配列番号6]を使用する、C2構築体からの、Cpe0147アミノ酸配列416−563のPCR増幅により作製した。増幅されたPCR断片は、EcoRI及びKasI制限エンドヌクレアーゼにより消化し、発現ベクターpMBP−ProExHtaへクローニングし、構築体pMBP−Cpe0147
416−563Polyを作出した。
【0278】
Cpe0147の残基565−587由来のN−末端ペプチドタグを伴う操作された増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)を含む構築体を、以下のように作製した。Cpe0147の残基565−587をコードしている特注した相補性76bp合成オリゴヌクレオチドCtermpeptF2[配列番号8]及びCtermpeptR2[配列番号9];Integrated DNA Technologies)を、100℃から20℃への温度勾配を適用することにより、アニーリングした。アニーリングされた生成物は、KasI及びNcoI制限エンドヌクレアーゼ部位に相補的な一本鎖オーバーハングを含み、且つKasI部位とNcoI部位の間で、構築体SP−GFP(Tingら、2015)のeGFPのN−末端で挿入し、構築体pC2pept−GFPを作出した。この構築体は、N−末端His
6−タグ配列、それに続くrTEV切断部位及びeGFPに融合されたCpe0147
565−587 ペプチド配列を含む。全ての構築体は、オークランド大学生物化学学部DNAシークエンシング施設(School of Biological Sciences, University of Auckland)において配列を検証した。
【表1】
【0279】
Cpe0147の部位特異的変異誘発
pMBP3L−Cpe0147
439−563のT450S変種を、鋳型としてのpMBP3L−Cpe0147
439−563による、リン酸化プライマーPYC2T13SFwd[配列番号10]及びPYC2T13SRev[配列番号11]を使用する、インバースPCR部位特異的変異誘発により作製した。簡単にいうと、高−忠実度DNAポリメラーゼ(iProof、Bio−Rad)を、pMBP3L−Cpe0147
439−563プラスミドのPCR増幅に使用し、センスプライマーの5’端に所望の変異を持つ線状化されたPCR産物を作製した。次にT450S変異を持たないメチル化された親鋳型を、DpnI消化により、非−メチル化線状PCR産物から取り除いた。最後に、このPCR産物を、分子間ライゲーションにより、再環状化した。生じたプラスミドpMBP3L−Cpe0147−T450S
439−563を、大腸菌DH5α細胞へ形質転換し、増幅し、抽出し、且つ配列検証のために精製した。完全に無傷のドメインCpe0147−T450S
439−587も、操作した。
【0280】
タンパク質発現及び精製
組換え発現構築体を収容する大腸菌BL21(λDE3)細胞を、アンピシリン(100μg/ml)を補充した2xYT培地において、オービタル振盪機(180rpmで)上で、37℃で、光学密度OD
600=0.5〜0.6まで成長させた。タンパク質発現を、イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)最終濃度0.3mMの添加により誘導し、培養物を、更に18℃で16時間インキュベーションさせた。細胞を、4℃で、4000gで20分間ペレット化し、瞬間凍結させ、−20℃で貯蔵した。
【0281】
組換えタンパク質を、凍結細胞から精製し、これは解凍し、完全EDTA−非含有プロテアーゼインヒビターカクテル錠(Roche)を添加した、溶解緩衝液[50mM HEPES pH7.0、300mM NaCl、5%(v/v)グリセロール、10mMイミダゾール]中に再浮遊させ、18,000psiで細胞破壊装置(Constant Systems)を用いて溶解させた。不溶性タンパク質画分を、遠心分離(55,000g、4℃で30分間)により除去し、可溶性組換えタンパク質画分を、固定式金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)による精製のために、5mL Protino NiNTA 5カラム(Macherey−Nagel)上に負荷した。組換えタンパク質は、洗浄緩衝液[50mM HEPES pH7、300mM NaCl、20mMイミダゾール]により洗浄し、溶出緩衝液(500mMイミダゾールを含む洗浄緩衝液)により、直線勾配で溶出した。
【0282】
除去可能なHis−又はHis/MBP親和性タグを持つ構築体について、組換えタンパク質を含有するIMAC由来の画分を、>100×容積の透析緩衝液[20mM HEPES pH7、100mM NaCl、1mMベータ−メルカプトエタノール]に対し一晩透析し、且つrTEVの組換えタンパク質に対するモル比1:50で組換えTEVプロテアーゼを使用し、His6−タグ又はHis−MBPを同時に除去した。未消化のタンパク質及びrTEVプロテアーゼを、第二ラウンドIMACにより除去した。切断されたHis−MBPタグを持つタンパク質を、アミロース樹脂(NEB)を通過させることによる追加の精製に供し、夾雑している切断されたMBPタンパク質を除去した。精製されたタンパク質を濃縮し、且つ10mM HEPES pH7及び100mM NaClで平衡化したSuperdex 200 10/300カラム(GE Healthcare)上で、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供した。SEC−精製したタンパク質を、〜20mg/mlまで濃縮し、液体窒素によりフラッシュ凍結し、引き続き−80℃で貯蔵した。
【0283】
ペプチド合成
Cpe0147
565−587を含む合成ペプチドを、好適に官能基化されたアミノメチルポリスチレン樹脂を使用する0.1mmolスケールのTribute(Tucson、Az)自動合成装置上で、Fmoc/tBu固相法を用いて調製した。簡単に述べると、N−Fmoc基を、DMF(v/v)中の20%ピペリジンにより2×5分間除去し、生じるFmocアミノ酸(0.5mmol)を、DMF中で、HATU(0.45mmol)及びDIPEA(1mmol)と20分間カップリングさせた。このペプチドを、95%TFA、2.5%TIPS及び2.5%水(v/v/v)により、3時間かけて樹脂から放出させ、エーテルにより沈殿させ、且つ遠心分離により除去した。粗ペプチドを、その分析プロファイル及びLC−MSにより確認した質量を基に、好適な勾配を使用する逆相HPLCにより精製した。
【0284】
質量分析
Cpe0147
439−563−Cpe0147
565−587産物のタンパク質質量は、ポジティブモードでのESIを用いるHewlett Packardシリーズ1100 MSD質量分析計を備える、Agilent 1120コンパクトLCシステムを用い、LC−MSにより確認した。LC−MSは、Zorbax SB−300 C3(5μm;3.0×150mm)カラム(Agilent)、及び流量0.3ml/分で、21分間にわたり5%から65%のBの直線勾配(〜3%のB/分)を用いて行った。使用した溶媒システムは、A(H
2O中0.1%ギ酸)及びB(アセトニトリル中0.1%ギ酸)であった。データ(date)は、400−2000のm/z範囲内で獲得し、且つm/z値は、デコンボルーションし、モノアイソトピック質量を得た。全ての他の質量分析実験は、オークランド大学の質量分析センター(オークランド、ニュージーランド)において、LC−MS/MS、Q−Star XL四重極飛行時間型システムを用い、行った。
【0285】
エステル結合ライゲーション反応
Cpe0147
439−563の最初のタンパク質精製を、トリス・HCl(pH8.0)緩衝システムにおいて行った。pH及び緩衝システムに対する作用を調べる最初の実験は、希釈したタンパク質から残留トリス・HCl(〜2−5mM)及びNaCl(5mM)を含んだ。引き続きの実験のために、タンパク質を、HEPES緩衝システムにより精製した。エステル結合形成を決定する反応は、10μMのタンパク質濃度により実行した。−80℃で貯蔵した濃縮したタンパク質を解凍し、〜20倍希釈し、反応緩衝液中10μMとし、一方他の成分の濃度は変動させた。全ての反応物は、特に言及しない限りは、20℃でインキュベーションした。時間経過実験に関して、試料は、反応チューブ中により大きい容積から収集し、SDS負荷緩衝液の添加及び99℃で〜3分間の加熱により停止した。
【0286】
NMR分光法
NMR実験は、BBFOプローブを装備した、Bruker 500MHz装置を使用して実施した。通常の5mm NMRチューブ(Norell)を使用した。試料は典型的には、90%H
2O及び10%D
2Oを含んだ。特に言及しない限りは、全ての実験は、300Kで行った。標準
1Hプロトンパルス配列を使用し、ウォーターサプレッションを、2ms Squa100.1000パルスでの、励起スカルプティング法により達成した。シングル−パルスニューテーション法を用いるパルスチップ−アングル検量(Bruker pulsecal routine)(Wu, P. S. C.;Otting, G. J. Magn. Reson. 2005, 176, 115)を、各試料について行った。
【0287】
X線小角散乱法
X線小角散乱法のための試料は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、10mM HEPES pH7.0、100mM NaClへ緩衝液交換した。データは、Australian Synchrotron SAXS/WAXSビームラインで、0.006<q<0.6Å
−1(q=4πsin(θ)/ λ)の運動量移行範囲を対象とする、カメラ長1.6mの、波長1.03Åで、収集した。データは、SEC−SAXSにより収集し、且つscatterBrain
4及びPRIMUS
5を用い処理した。SAXSデータは更に、GASBOR及びDAMMIFにおいて作製されたアブイニシオモデリングを含むASTASパッケージのプログラムを用い、並びにDAMAVERで作製されたコンセンサスモデルにより分析した(Petoukhov, M. V.;Franke, D.;Shkumatov, A. V.;Tria, G.;Kikhney, A. G.;Gajda, M.;Gorba, C.;Mertens, H. D.;Konarev, P.V.;及び、Svergun, D.I.、J Appl Crystallogr. 2012, 45, 342)。
【0288】
ライゲーションされたMBP−Cpe−GFP集成体のX線小角散乱法を行い、構造の低解像度エンベロープを決定した。データは、SEC−SAXSにより、Superdex S200インクリース5/150 GLカラム(GE Healthcare Life Sciences)へ注入した12mg/mlタンパク質の25μlから、2秒毎に収集した。SEC溶出プロファイルの中央ピークを表す画像(イメージ120−130)を、散乱曲線に示したように(
図14A)、分析のために使用した。緩衝液を減算した散乱曲線は、Guinierプロット(挿入図)と共に、
図14Bに示している。SAX分散パラメータ及び統計を、表2に示している。
【表2】
【0289】
モビルンカス・ムリエリスアドヘシンの3ドメイン構築体のX線結晶解析
モビルンカス・ムリエリス株BV 64−5[ATCC(登録商標)35240(商標)]の3−ドメインエステル結合構築体のクローニングを、ゲノムDNAからのPCR増幅及び制限クローニングにより達成した。4つの重複する3−ドメインエステル結合構築体を、表3に列挙した遺伝子特異的プライマー対を用い、M.ムリエリスゲノムDNA(ATCC(登録商標)35240(商標))から、PCR増幅した。簡単に述べると、GC−リッチ緩衝液により高−忠実度DNAポリメラーゼ(iProof、Bio−Rad)を、0.5ngゲノムDNAからの3−ドメイン構築体のPCR増幅に使用した。増幅したPCR断片を、KasI及びXhoI制限エンドヌクレアーゼにより消化し、発現ベクターpProExHta(Invitrogen)へクローニングし、以下の構築体を作製した:Mol3−5、Mol5−7、Mol7−9、及びMol9−11。生じたプラスミドを、配列検証し、タンパク質発現のために、大腸菌BL21(DE3)細胞へ形質転換した。
【0290】
組換え発現構築体を収容する大腸菌BL21(λDE3)細胞を、アンピシリン(100μg/ml)を補充した2xYT培地において、オービタル振盪機(180rpmで)上で、37℃で、光学密度OD
600=0.5〜0.6まで成長させた。タンパク質発現を、イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)最終濃度0.3mMの添加により誘導し、培養物を、更に18℃で16時間インキュベーションさせた。細胞を、4℃で、4000gで20分間ペレット化し、瞬間凍結させ、−20℃で貯蔵した。
【0291】
組換えタンパク質を、凍結細胞から精製し、これは解凍し、完全EDTA−非含有プロテアーゼインヒビターカクテル錠(Roche)を添加した、溶解緩衝液[50mM HEPES pH7.0、300mM NaCl、5%(v/v)グリセロール、10mMイミダゾール]中に再浮遊させ、18,000psiで細胞破壊装置(Constant Systems)を用いて溶解させた。不溶性タンパク質画分を、遠心分離(55,000g、4℃で30分間)により除去し、可溶性組換えタンパク質画分を、固定式金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)による精製のために、5mL Protino NiNTA 5カラム(Macherey−Nagel)上に負荷した。組換えタンパク質は、洗浄緩衝液[50mM HEPES pH7、300mM NaCl、20mMイミダゾール]により洗浄し、溶出緩衝液(500mMイミダゾールを含む洗浄緩衝液)により、直線勾配で溶出した。
【0292】
組換えタンパク質を含有するIMAC由来の画分を、>100×容積の透析緩衝液[20mM HEPES pH7、100mM NaCl、1mMベータ−メルカプトエタノール]に対し一晩透析し、且つrTEVの組換えタンパク質に対するモル比1:50で組換えTEVプロテアーゼを使用し、His6−タグを同時に除去した。未消化のタンパク質及びrTEVプロテアーゼを、第二ラウンドIMACにより除去した。精製されたタンパク質を濃縮し、且つ10mM HEPES pH7及び100mM NaClで平衡化したSuperdex 200 10/300カラム(GE Healthcare)上で、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供した。SEC−精製したタンパク質を、〜200−400mg/mlまで濃縮し、及びMol5−7の場合750mg/mlに濃縮し、液体窒素によりフラッシュ凍結し、引き続き−80℃で貯蔵した。
【0293】
セレノメチオニン−標識したMol7−9タンパク質を、メチオニン生合成の阻害を基にした改変プロトコール(Doublie S, Carter C. (1992) Preparation of Selenomethionyl Protein Crystals. Oxford University Press. New York)を用いて、作製した。簡単に述べると、2xYT培地を、M9最小培地と置き換え、細胞を、未変性のタンパク質の発現について説明した前記プロトコールのように成長させた。一旦OD600が1.5に到達したならば、リジン、フェニルアラニン及びトレオニンの各々100mg/l並びにイソロイシン、ロイシン及びバリンの各々50mg/lを、この培養物に添加した。次に豊富なL−セレノメチオニン(60mg/l)を添加し、細胞を、37℃で更に15分間成長させ、その後0.1mM IPTGにより、18℃で16時間誘導した。
【0294】
精製した組換えタンパク質は、部分的にコンパイルされた結晶化スクリーンを使用し、290Kで、シッティングドロップ蒸気拡散結晶化スクリーニング試験に供した。最初の結晶化条件は、ハンギングドロップ蒸気拡散フォーマットにより、等量のウェル溶液と混合した1μlタンパク質溶液により、最適化した。各構築体に関する結晶化条件、タンパク質濃度及び凍結防止溶液は、表4及び5に列挙した。
【0295】
X線回折データは、Australian Synchrotron(MX1及びMX2)において収集した。データは、XDS(Kabsch, W. (2010). XDS. Acta Cryst. D66, 125-132)及びPOINTLESS/AIMLESS(Evans, P.R. & Murshudov, G.N. (2013) Acta Cryst. D69, 1204-1214)により、処理し且つスケール化した。Smet−Mol7−9の構造は、SADによる位相決定により解明した。位相決定、密度変更及びモデルビルディングには、SHELX−CDEを使用した(A short history of SHELX. Sheldrick, G.M. (2008). Acta Cryst. A64,112-122)。モデルビルディングは、COOTにより完了した(Emsley, P., Lohkamp, B., Scott, W. G. & Cowtan, K. (2010). Acta Cryst. D66, 486 - 501)。SeMet−Mol7−9構造は、REFMACにより精緻化した(Murshudov G. N., Skubak P., Lebedev A. A., Pannu N. S., Steiner R. A., Nicholls R.A., Winn M.D., Long, F. & Vagin, A.A. (2011). Acta Cryst. D67, 355-367)。Mol7−9の未変性構造並びにMol9−11、Mol5−7及びMol3−5の構造は、先に解明された各構造の重複するドメインを使用する、分子交換により解明し、REFMACを用いて精緻化した。最終検証には、MOLPROBITYを使用した(Chen V. B., Arendall W. B. 3
rd, Headd J. J. , Keedy D. A., Immormino R. M., Kapral, G.J., Murray, L.W., Richardson, J.S. & Richardson, D.C. (2010). Acta Cryst. D66, 12 - 21.)。
【表3】
【表4】
【表5】
【0296】
実施例1
この実施例は、Cpe0147
439−563切断型タンパク質ドメインとCpe0147
565−587ペプチドの間のエステル結合の自発的形成を明らかにする。
【0297】
方法
Cpe0147残基439−587を包含しているIg様ドメインを、2つのパーツに分けた;配列439−563を含む切断型タンパク質、及びそのドメインの最終β−鎖を含む残基565−587(DTKQVVKHEDKNDKAQTLVVEKP [配列番号3])ペプチド。切断型タンパク質は、マルトース結合タンパク質(MBP)構築体として、大腸菌において組換えにより作製し、引き続きMBPタグを除き、他方で相補的C−末端ペプチドを化学的に合成した。
【0298】
結果
一緒に混合した場合、これらのN−末端切断物及びペプチドは、共有的エステル結合連結を自発的に形成し、これはSDS−PAGE分析において明確である(
図2A及び
図5)。この複合体の質量は、質量分析により、17129.2±1.4Da(計算値17131.6Da)と確認した。このシステムにおけるエステル結合形成の速度は、インキュベーション条件を最初のトリス・HCl(pH8.0)システムから変更することにより最適化し、分子密集剤、二価陽イオン及び特異的pH緩衝分子を含むことにより達成される結合形成速度は、有意に増加した(
図2A)。最適化された反応緩衝液は、50mM HEPES(pH7.0)、10mM NaCl、100μM CaCl
2及び20%グリセロールを含有している。この反応緩衝液を10μMタンパク質と共に用い、タンパク質:ペプチド比1:2で、エステル結合形成反応は、5分間と短い間にほぼ完了した(
図2B)。結合形成の速度は、4℃〜28℃の温度範囲にわたり類似しており、氷上又は冷蔵庫内でインキュベーションされる実験が可能である。
【0299】
興味深いことに、pH/緩衝液スクリーニングは、使用した特定の緩衝分子は、溶液それ自身のpHよりも、結合形成により大きい影響を及ぼすことを示唆している(
図6及び
図7)。最も有効な緩衝分子MES、MOPS及びHEPESは、全て両性イオン性であり、アルキル(エチル又はプロピル)連結したスルホン酸官能基を持つ飽和された複素環式6員環を含む。
【0300】
実施例2
この実施例は、2つのタンパク質間の共有の架橋を明らかにしている。
【0301】
方法
N−末端のMBP−タグ付きCpe0147切断型タンパク質は、Cpe0147アドヘシンタンパク質の残基565−587に由来する、N−末端ペプチドタグにより操作された増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)と対形成した。
【0302】
結果
先に最適化した緩衝液システム中での、Cpe0147
439−563切断型タンパク質ドメインのeGFPに融合したCpe0147
565−587ペプチド配列とのインキュベーションは、質量84,580Daの二量体の不可逆的に架橋した集成体を作製した。MBP−Cpe0147−eGFPライゲーション産物は、X線小角散乱(SAXS)により可視化した。構築されたアブイニシオエンベロープ(
図3A)及びSAXSデータから誘導した粒子分布関数は、最大寸法〜176Åの分子を説明しており、これはライゲーションされた集成体の個別の成分の既知のサイズと非常に良くフィットしている。
図3B及び
図3Cに図示した時間経過は、〜1時間の時点でのエステル結合形成が50%に及び6時間で〜90%変換に近づいたことを示している。
【0303】
実施例3
この実施例は、Cpe0147
439−563切断型タンパク質ドメインのインビボにおける自己−重合を明らかにしている。
【0304】
方法
Cpe0147のIg様ドメインは、自己−重合性構築体として操作され、全長に沿ってMBP−カーゴタンパク質を展示している中心のCpe0147−由来の柄を含むナノ鎖を形成した(
図3D、右側)。そのC−末端β−鎖を欠いているCpe0147の切断型第二ドメインは、完全長Cpe0147タンパク質において先行するIg様ドメインの最終β−鎖(残基416−438、DTKQVVKHEDKNDKAQTLIVEKP[配列番号4])を含むように、伸びたそのN−末端を有した。His
6−タグ付きMBPカーゴタンパク質は、このN−末端伸長に融合され、このタンパク質は、発現され、且つ固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー樹脂を用い、粗細菌溶菌液から単離される。
【0305】
結果
SDS−PAGE分析は、〜56kDa(モノマー)から>500kDa分子質量までの範囲の種の混合物による、重合の指標である診断的ラダーパターンを示している(
図3D)。この結果は、インビトロにおいて開発されたエステル結合技術は、架橋形成並びに細菌の内部でのタンパク質分解及び加水分解の両方に対する安定性による、インビボにおける実験に振り替え可能であることを示している。
【0306】
実施例4
この実施例は、可逆的エステル結合を明らかにしている。
【0307】
方法
架橋しているThr−Gln対を、Ser−Gln対と置き換えた(T450S変種)。先に最適化した緩衝液システム下での、Cpe0147のIg様ドメイン2のT450S変種を使用する、Ser−Gln架橋の形成は、トリプシン消化及び質量分析により最初に確認した(
図9)。この同じシステムにおいて、加水分解反応性は、SDS−PAGE及び
1H−NMRにより評価し(
図10から
図12)、最適化し、その後本発明の3種のタンパク質のMBPカーゴシステムのT450S変種に適用した(
図4)。
【0308】
結果
低pH条件下並びにCaCl
2及びグリセロールの存在下で、この構築体は、安定しており、且つ加水分解しないエステル結合を形成する(
図4A及び
図4B)。しかし、pH8〜9までのpH上昇並びにCaCl
2及びグリセロールの除去は、エステル結合の加水分解を促進し、野生型Glnの代わりにGluアミノ酸を残した(
図4A及び
図4B)。
【0309】
図4Cに示した、エステル結合形成及び加水分解の時間経過は、野生型システムのように、二相指数関数モデルにフィットすることができる;結合形成に関して会合モデルに、及び加水分解に関して崩壊モデルに。T450Sシステムにおけるエステル結合形成は、野生型同等物のように、〜1時間で、>50%変換を示し、このことはこれらが、それらのライゲーション能においてほぼ同等であることを示唆している。加水分解は、結合形成よりもより遅く、〜20%無傷のエステル結合が20時間後も残存している。
【0310】
加水分解後、分離されたMBP構築体及びeGFP構築体は、エステル結合形成を開始する本発明者らの低pHの最適化された条件への緩衝液の交換により、簡単に再ライゲーションすることができる。これは、野生型Glnは、活性部位において、Gluと置き換えることができ、且つ依然エステル結合を形成するということを暗示している。興味深いことに、結合形成及び結合破壊のプロセスは、同じ試料について、少なくとも3つのサイクルを通じて完了される(
図13)。
【0311】
実施例5
この実施例は、Cpe0147−ドメイン2の活性部位における必須残基のペプチド配列、相対原子配置、及び原子間距離を明らかにしている。
【0312】
方法
Cpe0147−ドメイン2(残基439-587)のペプチド配列は、Uniprot(エントリーB1R775)から入手した。
【0313】
Cpe0147-ドメイン2の自発的分子間エステル結合形成に関する4つの必須残基の各々に関する原子の座標データは、タンパク質データバンクファイル4MKMから得た。タンパク質データバンク(PDB)標準直交座標系を使用した。トレオニン反応性残基のCβ(CB)原子は、参照座標(0、0、0)として選択した。
【0314】
原子間距離は、ソフトウェアプログラムPymol内の距離測定ツールを用いて得た。
【0315】
Cpe0147-ドメイン2
表6は、Cpe0147-ドメイン2のペプチド配列を示す。必須の反応性アミノ酸及びアクセサリーアミノ酸は、太字で記す。HxDxxDxxQには、下線をつけている。
【表6】
【0316】
トレオニン、アスパラギン酸、ヒスチジン及びグルタミン残基の原子の座標は、下記表7に列記している。
【表7】
【0317】
トレオニンのCβ(CB)からグルタミンのCδ(CD)、ヒスチジンのCγ(CG)及びアスパラギン酸のCγ(CG)までの原子間距離(オングストローム)を、下記表8に列記している。
【表8】
【0318】
実施例6
この実施例は、T450S−Cpe0147−ドメイン2の活性部位におけるペプチド配列及び必須残基を明らかにしている。
【0319】
方法
Cpe0147-ドメイン2(残基439-587)のペプチド配列は、Uniprot(エントリーB1R775)から入手し、且つアミノ酸位置450のトレオニンは、セリンアミノ酸と置き換えた。
【0320】
T450S−Cpe0147-ドメイン2
表9は、T450S−Cpe0147-ドメイン2のペプチド配列を示す。必須の反応性アミノ酸及びアクセサリーアミノ酸は、太字で記す。HxDxxDxxQ配列モチーフには、下線をつけている。
【表9】
【0321】
実施例7
この実施例は、Mol3の活性部位における必須残基のペプチド配列、相対原子配置、及び原子間距離を明らかにしている。
【0322】
方法
Mol3のペプチド配列は、Uniprot(エントリーE0QN07)から入手した。
【0323】
Mol3の自発的分子間エステル結合形成に関する4つの必須残基の各々に関する原子の座標データは、Mol3−Mol4−Mol5構築体(E0QN07配列5430−5825)の未公表のX線結晶構造から得た。タンパク質データバンク(PDB)標準直交座標系を使用した。トレオニン反応性残基のCβ(CB)原子を、参照座標(0、0、0)として選択した。
【0324】
原子間距離は、ソフトウェアプログラムPymol内の距離測定ツールを用いて得た。
【0325】
Mol3
表10は、Mol3のペプチド配列を示す。必須の反応性アミノ酸及びアクセサリーアミノ酸は、太字で記す。HxDxxDxxQペプチド配列モチーフには、下線をつけている。
【表10】
【0326】
トレオニン、アスパラギン酸、ヒスチジン及びグルタミン残基の原子の座標は、下記表11に列記している。
【表11】
【0327】
トレオニンのCβ(CB)からグルタミンのCδ(CD)、ヒスチジンのCγ(CG)及びアスパラギン酸のCγ(CG)までの原子間距離(オングストローム)を、下記表12に列記している。
【表12】
【0328】
実施例8
この実施例は、Mol4の活性部位における必須残基のペプチド配列、相対原子配置、及び原子間距離を明らかにしている。
【0329】
方法
Mol4のペプチド配列は、Uniprot(エントリーE0QN07)から入手した。
【0330】
Mol4の自発的分子間エステル結合形成に関する4つの必須残基の各々に関する原子の座標データは、Mol3−Mol4−Mol5構築体(E0QN07配列5430−5825)の未公表のX線結晶構造から得た。タンパク質データバンク(PDB)標準直交座標系を使用した。トレオニン反応性残基のCβ(CB)原子を、参照座標(0、0、0)として選択した。
【0331】
原子間距離は、ソフトウェアプログラムPymol内の距離測定ツールを用いて得た。
【0332】
Mol4
表13は、Mol4のペプチド配列を示す。必須の反応性アミノ酸及びアクセサリーアミノ酸は、太字で記す。HxDxxDxxQペプチド配列モチーフには、下線をつけている。
【表13】
【0333】
トレオニン、アスパラギン酸、ヒスチジン及びグルタミン残基の原子の座標は、下記表14に列記している。
【表14】
【0334】
トレオニンのCβ(CB)からグルタミンのCδ(CD)、ヒスチジンのCγ(CG)及びアスパラギン酸のCγ(CG)までの原子間距離(オングストローム)を、下記表15に列記している。
【表15】
【0335】
実施例9
この実施例は、Mol5の活性部位における必須残基のペプチド配列、相対原子配置、及び原子間距離を明らかにしている。
【0336】
方法
Mol5のペプチド配列は、Uniprot(エントリーE0QN07)から入手した。
【0337】
Mol5の自発的分子間エステル結合形成に関する4つの必須残基の各々に関する原子の座標データは、Mol3−Mol4−Mol5構築体(E0QN07配列5430−5825)の未公表のX線結晶構造から得た。タンパク質データバンク(PDB)標準直交座標系を使用した。トレオニン反応性残基のCβ(CB)原子を、参照座標(0、0、0)として選択した。
【0338】
原子間距離は、ソフトウェアプログラムPymol内の距離測定ツールを用いて得た。
【0339】
Mol5
表16は、Mol5のペプチド配列を示す。必須の反応性アミノ酸及びアクセサリーアミノ酸は、太字で記す。HxDxxDxxQペプチド配列モチーフには、下線をつけている。
【表16】
【0340】
トレオニン、アスパラギン酸、ヒスチジン及びグルタミン残基の原子の座標は、下記表17に列記している。
【表17】
【0341】
トレオニンのCβ(CB)からグルタミンのCδ(CD)、ヒスチジンのCγ(CG)及びアスパラギン酸のCγ(CG)までの原子間距離(オングストローム)を、下記表18に列記している。
【表18】
【0342】
実施例10
この実施例は、Mol6の活性部位における必須残基のペプチド配列、相対原子配置、及び原子間距離を明らかにしている。
【0343】
方法
Mol6のペプチド配列は、Uniprot(エントリーE0QN07)から入手した。
【0344】
Mol6の自発的分子間エステル結合形成に関する4つの必須残基の各々に関する原子の座標データは、Mol5−Mol6−Mol7構築体(E0QN07配列5681−6100)の未公表のX線結晶構造から得た。タンパク質データバンク(PDB)標準直交座標系を使用した。トレオニン反応性残基のCβ(CB)原子を、参照座標(0、0、0)として選択した。
【0345】
原子間距離は、ソフトウェアプログラムPymol内の距離測定ツールを用いて得た。
【0346】
Mol6
表19は、Mol6のペプチド配列を示す。必須の反応性アミノ酸及びアクセサリーアミノ酸は、太字で記す。HxDxxDxxQペプチド配列モチーフには、下線をつけている。
【表19】
【0347】
トレオニン、アスパラギン酸、ヒスチジン及びグルタミン残基の原子の座標は、下記表20に列記している。
【表20】
【0348】
トレオニンのCβ(CB)からグルタミンのCδ(CD)、ヒスチジンのCγ(CG)及びアスパラギン酸のCγ(CG)までの原子間距離(オングストローム)を、下記表21に列記している。
【表21】
【0349】
実施例11
この実施例は、Mol7の活性部位における必須残基のペプチド配列、相対原子配置、及び原子間距離を明らかにしている。
【0350】
方法
Mol7のペプチド配列は、Uniprot(エントリーE0QN07)から入手した。
【0351】
Mol7の自発的分子間エステル結合形成に関する4つの必須残基の各々に関する原子の座標データは、Mol5−Mol6−Mol7構築体(E0QN07配列5681−6100)の未公表のX線結晶構造から得た。タンパク質データバンク(PDB)標準直交座標系を使用した。トレオニン反応性残基のCβ(CB)原子を、参照座標(0、0、0)として選択した。
【0352】
原子間距離は、ソフトウェアプログラムPymol内の距離測定ツールを用いて得た。
【0353】
Mol7
表22は、Mol7のペプチド配列を示す。必須の反応性アミノ酸及びアクセサリーアミノ酸は、太字で記す。HxDxxDxxQペプチド配列モチーフには、下線をつけている。
【表22】
【0354】
トレオニン、アスパラギン酸、ヒスチジン及びグルタミン残基の原子の座標は、下記表23に列記している。
【表23】
【0355】
トレオニンのCβ(CB)からグルタミンのCδ(CD)、ヒスチジンのCγ(CG)及びアスパラギン酸のCγ(CG)までの原子間距離(オングストローム)を、下記表24に列記している。
【表24】
【0356】
実施例12
この実施例は、Mol8の活性部位における必須残基のペプチド配列、相対原子配置、及び原子間距離を明らかにしている。
【0357】
方法
Mol8のペプチド配列は、Uniprot(エントリーE0QN07)から入手した。
【0358】
Mol8の自発的分子間エステル結合形成に関する4つの必須残基の各々に関する原子の座標データは、Mol7−Mol8−Mol9構築体(E0QN07配列5958−6383)の未公表のX線結晶構造から得た。タンパク質データバンク(PDB)標準直交座標系を使用した。トレオニン反応性残基のCβ(CB)原子を、参照座標(0、0、0)として選択した。
【0359】
原子間距離は、ソフトウェアプログラムPymol内の距離測定ツールを用いて得た。
【0360】
Mol8
表25は、Mol8のペプチド配列を示す。必須の反応性アミノ酸及びアクセサリーアミノ酸は、太字で記す。HxDxxDxxQペプチド配列モチーフには、下線をつけている。
【表25】
【0361】
トレオニン、アスパラギン酸、ヒスチジン及びグルタミン残基の原子の座標は、下記表26に列記している。
【表26】
【0362】
トレオニンのCβ(CB)からグルタミンのCδ(CD)、ヒスチジンのCγ(CG)及びアスパラギン酸のCγ(CG)までの原子間距離(オングストローム)を、下記表27に列記している。
【表27】
【0363】
実施例13
この実施例は、T6105S−Mol8の活性部位における必須残基のペプチド配列、相対原子配置、及び原子間距離を明らかにしている。
【0364】
方法
Mol8のペプチド配列は、Uniprot(エントリーE0QN07)から入手し、且つアミノ酸位置6105のトレオニンを、セリンアミノ酸と置き換えた。
【0365】
T6105S−Mol8の自発的分子間エステル結合形成に関する4つの必須残基の各々に関する原子の座標データは、Mol7−T6105S−Mol8−Mol9構築体(E0QN07配列5958−6383)の未公表のX線結晶構造から得た。Mol7−Mol8−Mol9(E0QN07配列5958−6383)の野生型DNA配列を、部位特異的変異誘発に供し、Mol8のT6105S変種を作出した。Mol7及びMol9ドメイン配列は、野生型配列を含んだ。タンパク質データバンク(PDB)標準直交座標系を使用した。セリン反応性残基のCβ(CB)原子を、参照座標(0、0、0)として選択した。
【0366】
原子間距離は、ソフトウェアプログラムPymol内の距離測定ツールを用いて得た。
【0367】
T6105S−Mol8
表28は、T6105S−Mol8のペプチド配列を示す。必須の反応性アミノ酸及びアクセサリーアミノ酸は、太字で記す。HxDxxDxxQペプチド配列モチーフには、下線をつけている。
【表28】
【0368】
セリン、アスパラギン酸、ヒスチジン及びグルタミン残基の原子の座標は、下記表29に列記している。
【表29】
【0369】
セリンのCβ(CB)からグルタミンのCδ(CD)、ヒスチジンのCγ(CG)及びアスパラギン酸のCγ(CG)までの原子間距離(オングストローム)を、下記表30に列記している。
【表30】
【0370】
実施例14
この実施例は、Mol10の活性部位における必須残基のペプチド配列、相対原子配置、及び原子間距離を明らかにしている。
【0371】
方法
Mol10のペプチド配列は、Uniprot(エントリーE0QN07)から入手した。
【0372】
Mol10の自発的分子間エステル結合形成に関する4つの必須残基の各々に関する原子の座標データは、Mol9−Mol10−Mol11構築体(E0QN07配列6247−6669)の未公表のX線結晶構造から得た。タンパク質データバンク(PDB)標準直交座標系を使用した。トレオニン反応性残基のCβ(CB)原子を、参照座標(0、0、0)として選択した。
【0373】
原子間距離は、ソフトウェアプログラムPymol内の距離測定ツールを用いて得た。
【0374】
Mol10
表31は、Mol10のペプチド配列を示す。必須の反応性アミノ酸及びアクセサリーアミノ酸は、太字で記す。HxDxxDxxQペプチド配列モチーフには、下線をつけている。
【表31】
【0375】
トレオニン、アスパラギン酸、ヒスチジン及びグルタミン残基の原子の座標は、下記表32に列記している。
【表32】
【0376】
トレオニンのCβ(CB)からグルタミンのCδ(CD)、ヒスチジンのCγ(CG)及びアスパラギン酸のCγ(CG)までの原子間距離(オングストローム)を、下記表33に列記している。
【表33】
【0377】
実施例15
この実施例は、Mol11の活性部位における必須残基のペプチド配列、相対原子配置、及び原子間距離を明らかにしている。
【0378】
方法
Mol11のペプチド配列は、Uniprot(エントリーE0QN07)から入手した。
【0379】
Mol11の自発的分子間エステル結合形成に関する4つの必須残基の各々に関する原子の座標データは、Mol9−Mol10−Mol11構築体(E0QN07配列6247−6669)の未公表のX線結晶構造から得た。タンパク質データバンク(PDB)標準直交座標系を使用した。トレオニン反応性残基のCβ(CB)原子を、参照座標(0、0、0)として選択した。
【0380】
原子間距離は、ソフトウェアプログラムPymol内の距離測定ツールを用いて得た。
【0381】
Mol11
表34は、Mol11のペプチド配列を示す。必須の反応性アミノ酸及びアクセサリーアミノ酸は、太字で記す。HxDxxDxxQペプチド配列モチーフには、下線をつけている。
【表34】
【0382】
トレオニン、アスパラギン酸、ヒスチジン及びグルタミン残基の原子の座標は、下記表35に列記している。
【表35】
【0383】
トレオニンのCβ(CB)からグルタミンのCδ(CD)、ヒスチジンのCγ(CG)及びアスパラギン酸のCγ(CG)までの原子間距離(オングストローム)を、下記表36に列記している。
【表36】
【0384】
実施例16
この実施例は、Mol9の活性部位における必須残基のペプチド配列、相対原子配置、及び原子間距離を明らかにしている。
【0385】
方法
Mol9のペプチド配列は、Uniprot(エントリーE0QN07)から入手した。
【0386】
Mol9の自発的分子間エステル結合形成に関する4つの必須残基の各々に関する原子の座標データは、Mol9−Mol10−Mol11構築体(E0QN07配列6247−6669)の未公表のX線結晶構造から得た。タンパク質データバンク(PDB)標準直交座標系を使用した。トレオニン反応性残基のCβ(CB)原子を、参照座標(0、0、0)として選択した。
【0387】
原子間距離は、ソフトウェアプログラムPymol内の距離測定ツールを用いて得た。
【0388】
Mol9
表37は、Mol9のペプチド配列を示す。必須の反応性アミノ酸及びアクセサリーアミノ酸は、太字で記す。HxDxxDxxQペプチド配列モチーフには、下線をつけている。
【表37】
【0389】
セリン、アスパラギン酸、ヒスチジン及びグルタミン残基の原子の座標は、下記表38に列記している。
【表38】
【0390】
トレオニンのCβ(CB)からグルタミンのCδ(CD)、ヒスチジンのCγ(CG)及びアスパラギン酸のCγ(CG)までの原子間距離(オングストローム)を、下記表39に列記している。
【表39】
【0391】
実施例17
この実施例は、柄又は幹様多量体構造を形成するため、特定の順番で一緒にライゲーションする操作されたモビルンカス・ムリエリス(Mol)ドメイン間のエステル結合の自発的形成を通じた「幹」構造を有する共有的に連結した多量体タンパク質複合体の調製を明らかにしている。
【0392】
方法
Mol7、Mol8、Mol9、Mol10及びMol11のIg様ドメインを修飾し、これにより各個別の構築体のドメイン境界をシフトさせ、その結果Mol7からMol10までの構築体は、それら自身の最終ベータ−鎖を欠き、且つ各Mol構築体は、先行するMolドメインの最終ベータ−鎖を含むようにN−末端で延長され、これは本明細書において鎖相補配列とも称される。His
6−タグ及びrTEV切断モチーフは、各N−末端伸長に融合され、各タンパク質は発現され、且つ粗溶菌液から、固定された金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)樹脂を用いて単離し、次にHis
6−タグを、rTEVプロテアーゼにより除去した。
【0393】
この実施例において使用した修飾されたMol構築体Mol7a−Mol11のアミノ酸配列は、下記表40及び
図23に示している。各配列において、HisTag及びrTEV切断ドメインはイタリック体で示し、Mol幹ドメインは通常文字で示し、鎖相補領域には下線をつけ、且つ反応性残基及びアクセサリー残基は太字で示した。Mol7aドメイン構築体は、N−末端鎖相補配列を欠いているのに対し、Mol11ドメイン構築体は、N−末端Mol10鎖相補配列を伴う未変性のMol11ドメインで構成されている。
【表40】
【0394】
一緒に混合する場合各構築体は、鎖相補及びエステル結合形成を通じて特定の順序で他とライゲーションし(
図21A参照)、
図21A及び
図21Bに示したように、未変性のドメイン構造と同等の構造を再編成する。
【0395】
各構築体の特異性は、最適化された反応緩衝液(50mM HEPES(pH7.0)、10mM NaCl、100μM CaCl
2、及び20%グリセロール)中で、24時間、等モル量のMolドメインの添加により試験した。結合形成は、SDS−PAGEにより分析した。
【0396】
結果
SDS−PAGE分析は、エステル結合のみ、隣接対間に形成される(
図22)−すなわち、共有的に結合されたタンパク質構築体は、未変性のタンパク質中に存在するIg様ドメイン配列を反復発生することを示している。非隣接対の間には、エステル結合形成は存在しない。4種全ての構築体が混合される場合、4種の構築体の合計と一致する共有複合体が形成される。
【0397】
考察
この実施例は、所望の規定された構造を有する多量体タンパク質複合体は、個別の成分構築体間の適切な相補性の選択を介して調製され得ることを明らかにしている。ここで、Mol Ig様タンパク質のβ−クラスプドメイン由来の相補的アミノ酸配列の選択は、方向を持ったライゲーション及び多量体タンパク質複合体の形成を可能にし、幹様スカフォールドを提供する。更に所望の規定された構造は、個別の成分全てが単独の反応に存在する場合であっても、達成することができる。
【0398】
実施例18
この実施例は、互いに所望の関係で配置された機能活性(「価数」)を伴う「ツリー様」構造を有する、多価の多量体タンパク質複合体の形成を明らかにしている。
【0399】
ここで、Mol幹ドメインは、特異的エステル結合ペプチドタグを持つカーゴタンパク質を捕獲する、Cpe0147 Ig様ドメイン2(Cpe2)枝ドメインを保持するように操作された。操作されたキメラMol−Cpe2(すなわち、モビルンカス・ムリエリス−クロストリジウム・パーフリンゲンスCpe0147 Ig様ドメイン2)構築体と、カーゴタンパク質の間のエステル結合の自発的形成は、特定の順序で各成分を一緒にライゲーションし、ツリー様構造を有する多量体タンパク質複合体を形成する。
【0400】
方法
実施例17由来のMol7、Mol8、Mol9、Mol10及びMol11のIg様ドメインは、先に実施例1に説明したように、Cpe2ドメインと一緒にされるよう操作した。ここで、Cpe2ドメインは、ヘリカルリンカー(HL)へ、及びこのヘリカルリンカーは各ドメインのN−末端鎖相補性ペプチドのN−末端(Cpe2−HL−Mol)に融合させた。これは、Mol幹ドメイン及びCpe2枝ドメインが、α−ヘリカルリンカーにより分離されている構築体を形成する(
図24)。
【0401】
この実施例で調製されたCpe2−HL−Mol構築体のアミノ酸配列は、下記表41及び
図28に示している。各配列において、HisTag及びrTEV切断ドメインはイタリック体で示し、Cpe2枝ドメインには下線をつけ、ヘリカルリンカードメインは下線付きのイタリック体で示し、且つMol幹ドメインは通常文字で示している。Mol7b−含有する構築体は、本明細書記載のHXDXX[D/S]XX[Q/E](配列番号56)コンセンサス配列、すなわちHXDXXSXX[Q/E](配列番号57)ペプチド配列モチーフの一例を具体化している。
【表41】
【0402】
N−末端C2peptタグを持つT抗原カーゴタンパク質(C2pept−Tタンパク質)を操作した。各々ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes)の異なる株により天然に発現される4種の異なるT−抗原を使用し、4種の異なるC2pept−Tタンパク質構築体を生じた。
【0403】
これらのC2pept−T構築体のアミノ酸配列を、下記表42及び
図29に示している。各配列において、HisTag及びrTEV切断ドメインはイタリック体で示し、C2peptタグ及びリンカーには下線をつけ、ヘリカルリンカードメインは下線付きのイタリック体で示し、且つMol幹ドメインは通常文字で示している。
【表42】
【0404】
これらのタンパク質構築体を、個別に発現させ且つ精製した。各成分は、構築体のN−末端に融合されたHis6−タグ及びrTEV切断モチーフを伴い、発現させた(すなわち、His6−rTEV−Cpe様−HL−Mol及びHis6−rTEV−pept−T18.1)。組換えタンパク質は、粗溶菌液から、固定された金属イオンアフィニティクロマトグラフィーを用いて単離し、引き続きT18.1を除く全てのタンパク質構築体から、His6−タグを、rTEVプロテアーゼにより除去した。
【0405】
概略すると、多量体タンパク質複合体を以下のように調製した。各Cpe2−HL−Mol構築体を、対をなすC2pept−Tタンパク質へ個別に初回ライゲーションし(
図25Aに図示したように)、その結果異なるT−抗原を、各独自のCpe2−HL−Mol構築体へライゲーションした。次にこれらの個別の反応物を、
図25Bに示したように、一緒に混合し、これにより前記実施例16において先に説明したように、幹ドメインを、鎖相補性及び自発的エステル結合形成により、特定の順序で一緒に結合し且つライゲーションした。これは、エステル結合により共有的に連結されたツリー様構造を有する多量体タンパク質複合体を形成し、これは
図25Cに示したように、枝末端にT−抗原を展示した。
【0406】
等モル量の各Cpe2−HL−Mol構築体を、個別の反応において、対をなすC2pept−Tタンパク質へ、初回ライゲーションした。アリコートを、SDS−PAGEによる結合形成の検証のために、取り除いた。
【0407】
次工程において、全ての個別にライゲーションされたT−タンパク質−Cpe2−HL−Mol構築体を、一緒に混合した。24時間インキュベーションした後、多量体タンパク質複合体を、IMACにより精製し、あらゆる部分的に形成されたスカフォールド及びあらゆるモノマー性タンパク質を除去した。T18.1タンパク質のみ、His−タグを保持し、その理由は他の構築体上の全てのHis−親和性タグは、rTEVプロテアーゼにより除去されるからであり、従ってT18.1を含む構築体のみ、親和性カラム上に保持された。
【0408】
結果
SDS−PAGE分析(
図26)は、各C2pept−Tタンパク質カーゴが、相補性Cpe2−HL−Mol構築体と混合される場合、Cpe2ドメインとC2pept−Tタンパク質の間にエステル結合が形成されたことを示している。特に、
図26のレーンC、F、I及びLを参照し、そこでは各高MWの共有的に結合したCpe2−HL−Mol−C2pept−Tタンパク質を、
図26の「架橋したT−抗原−枝−幹」として規定された位置に、容易に認めることができる。
【0409】
4種のCpe2−HL−Mol−C2pept−Tタンパク質が一緒に混合され、インキュベーションされ、その後IMACにより精製される、第二のライゲーション工程の代表的結果を、
図27に示した。
【0410】
高分子量種は、IMAC前にインキュベーションした試料において認められ(
図27、レーンA)、またフロースルー画分及び溶出された画分においても認められた(
図27、各々、レーンB及びC)。IMAC精製から溶出したタンパク質は、
図27のレーンCにおいて認められるように、2つの主要なタンパク質種を含んだ。>250kDaの主要な高MW複合体、及びおよそ70kDAのより小さいMWの複合体が、認められた。これらの分子量は、多価の多量体タンパク質複合体(すなわち、
図25Cに図示した完全に形成された多量体タンパク質複合体)の理論的質量290kDa、及びモノマー性T18.1−Cpe2−HL−Mol7構築体の理論的質量69.1kDaと、各々、非常に良く対応していた。
【0411】
これら2つの種は、各々、
図27のレーンD及びEに示したように、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分離した。
【0412】
考察
この実施例は、規定された所望の構造を有し且つ予め決められた位置に異なるカーゴタンパク質を保持する多量体タンパク質複合体は、個別の成分構築体間の適切な相補性を介して調製され得ることを明らかにしている。ここで、Mol Ig様タンパク質のβ−クラスプドメイン由来の相補的アミノ酸配列の選択は、方向を持ったライゲーション及び幹様スカフォールドを提供する多量体タンパク質複合体の形成を可能にし、ここで各異なる「幹」成分は、特異的Cpe2−C2pept結合パートナー間の更なる共有的連結を介して、特異的機能性タンパク質カーゴを保持する。
【0413】
この場合、各一価の構築体が単独の異なる抗原を有する、個別の一価の多量体タンパク質構築体(「幹−枝−カーゴ」タンパク質構築体)が、個別の反応において最初に調製された。これに、単独の第二の反応における複数の一価の多量体タンパク質構築体の組合せによる、規定された構造を有する所望の多価の多量体タンパク質複合体の形成が続く。多価の多量体タンパク質中に存在する異なる機能活性の間の構造相関は、ライゲーションパートナーの間の相補性の好適な選択により、及びライゲーション反応の適切な配列決定により、容易に適合させることができる。
【0414】
実施例19
この実施例は、互いに望ましい関係で配置された機能活性を伴う「ツリー様」構造を有する多量体タンパク質複合体の形成を明らかにしている。
【0415】
ここで、Mol幹ドメインは、クロストリジウム・パーフリンゲンス以外の種由来の細菌性アドヘシンから誘導された多様なCpe様枝ドメインを保持するように操作され、ここで各Cpe様枝ドメインは、共有的に連結したペプチドタグを有する。Cpe様枝ドメインと、それらの特異的ペプチドタグ付きカーゴ(ここでは、増強された緑色蛍光タンパク質、eGFP)の間のエステル結合の自発的形成は、特定の順序で各成分を一緒にライゲーションすることを可能にし、ツリー様構造を有する多価の多量体タンパク質複合体を形成する。
【0416】
方法
Cpe様ドメインは、下記の給源からクローニングした:
Geberg1−ゲメラ・ベルゲリアエATCC 700627、寄託番号AWVP01000087
Gberg2−ゲメラ・ベルゲリアエATCC 700627、寄託番号ERK56535
Corio−コリオバクテリアセアエ菌68−1−3、寄託番号NZ_CP009302。
【0417】
Mol7、Mol8、Mol9、Mol10及びMol11のIg様ドメイン(先に実施例18において説明した)を、ヘリカルリンカーを介して各ドメインのN−末端鎖相補性ペプチドのN−末端へ融合したCpe様ドメイン(例えば、Corio−HL−Mol、
図30A)により操作した。この実施例において調製したCpe様−HL−Mol構築体のアミノ酸配列は、下記表43及び
図33に示している。各配列において、HisTag及びrTEV切断ドメインはイタリック体で示し、Cpe様枝ドメインには下線をつけ、ヘリカルリンカードメインは下線付きのイタリック体で示し、且つMol幹ドメインは通常文字で示している。
【表43】
【0418】
GFPカーゴタンパク質は、各々そのN−末端に先に概説したようなCpe様ドメインに対し相補的な特異的Cpe様peptタグを有するもので操作し、4種の異なるCpe様pept−GFPタンパク質構築体を生じた。4種の異なるCpe様pept−GFPタンパク質構築体のアミノ酸配列は、下記表44及び
図34に示している。各配列において、HisTag及びrTEV切断ドメインはイタリック体で示し、Cpe様peptタグ及びリンカーには下線をつけ、且つGFPドメインは通常文字で示している。
【表44】
【0419】
これらの構築体は、個別に精製し、その後混合し、「ツリー様」構造を有する多量体タンパク質スカフォールド複合体へ集成した。各成分は、構築体のN−末端へ融合されたHis6−タグ及びrTEV切断モチーフと共に発現された(すなわち、His6−rTEV−Cpe様−HL−Mol及びHis6−rTEV−pept−GFP)。組換えタンパク質を、粗溶菌液から、固定された金属イオンアフィニティクロマトグラフィーを用いて単離し、引き続きHis6−タグをrTEVプロテアーゼにより除去した。
【0420】
概略すると、多量体タンパク質複合体を以下のように調製した。各Cpe2−HL−Mol構築体を、対をなすCpe様pept−GFPタンパク質へ個別に初回ライゲーションし(
図30Aに図示したように)、その結果GFP機能性を、各独自のCpe2様−HL−Mol構築体(例えばCorio−pept−GFP)へライゲーションした。次にこれらの個別の反応物を、
図30Bに示したように、一緒に混合し、これにより幹ドメインを、鎖相補性及び自発的エステル結合形成により、特定の順序で一緒に結合し且つライゲーションした。これは、エステル結合により共有的に連結されたツリー様構造を有する多価の多量体タンパク質複合体を形成し、これは
図30Cに示したように、枝末端にGFP機能性を展示した。
【0421】
等モル量の各Cpe様−HL−Mol構築体を、個別の反応において、対をなすCpe様pept−GFPタンパク質へ、初回ライゲーションした。24時間インキュベーションした後、4種の個別のGFP−Cpe様−HL−Molライゲーション集成体を、キャッピングMol11ドメインと一緒にした。アリコートを、SDS−PAGEによる結合形成の検証のために、取り除いた。
【0422】
次工程において、個別の反応物を一緒に混合し、ライゲーション生成物形成を調べた。
【0423】
結果
個別の反応物のSDS−PAGE分析(
図31)は、各Cpe様pept−GFPカーゴタンパク質がその相補的Cpe様−HL−Mol構築体と混合される場合に、エステル結合が、Cpe様ドメインとpept−GFPタンパク質の間に形成されることを示した。「架橋したGFP−枝−幹二量体」と表示された位置の、
図31のレーンG、H、I及びJにおける高MW種を参照のこと。
【0424】
24時間インキュベーションした後、4種の個別のGFP−Cpe様−HL−Molライゲーション集成体を、キャッピングMol11ドメインと一緒に組合せた。Mol幹ドメインは、鎖相補性を通じて会合し、「ツリー様」構造を有する多価の多量体タンパク質複合体を形成し、これは次にエステル結合形成を介して共有的に連結し、共有的に連結された多量体タンパク質を生じた。
【0425】
図32において容易に認めることができるように、個別の反応物を混合した場合、ライゲーション生成物は、各連続するGFP−Cpe様−HL−Mol複合体の追加により、段階的に質量が増加した。例えば
図32のレーンD、E、F、及びGを参照のこと。最終生成物は、特定された順序で一緒に共有的にライゲーションされた、9種の個別のタンパク質の複合体であった−「完全ツリー」とラベルされた位置のレーンGにおける高MW種を参照のこと。
【0426】
考察
この実施例は、望ましい規定された構造を有し、且つ予め決定された位置に複数のカーゴタンパク質を保持する、多価の多量体タンパク質複合体は、個別の成分構築体間の適切な相補性により調製することができることを明らかにしている。ここで異なる細菌種由来のIg様タンパク質のβ−クラスプドメインからの相補的アミノ酸配列の選択は、幹様スカフォールドを提供する多量体タンパク質複合体の方向を持ったライゲーション及び形成を可能にし、ここで各異なる「幹」成分は、特異的Cpe様−Cpe様pept結合パートナー間の更なる共有的連結を介して、機能性タンパク質カーゴを保持する。
【0427】
この場合においては、各一価の構築体がタンパク質機能性を有する、個別の一価の多量体タンパク質構築体(「幹−枝−カーゴ」タンパク質構築体)を、個別の反応において最初に調製した。これに、複数の段階的反応における複数の一価の多量体タンパク質構築体の組合せによる、規定された構造を有する所望の多価の多量体タンパク質複合体の形成が続く。多価の多量体タンパク質に存在する機能活性の間の構造上の関係は、ライゲーションパートナー間の相補性の適切な選択により、及びライゲーション反応の適切な配列により、容易に適合させることができる。
【0428】
実施例20
この実施例は、互いに所望の関係に配置された機能活性を持つ「ツリー様」構造を有する多価の多量体タンパク質複合体の形成を介した、複数のタンパク質カーゴの機能活性及びこれらのタンパク質官能基の共配置を明らかにしている。
【0429】
方法
実施例18に説明したように調製した多価のT抗原−含有多量体タンパク質複合体の免疫原性は、ウェスタンブロット及びELISAにより分析した。
【0430】
多量体タンパク質複合体のアリコートは、SDS−PAGEにより電気分解し(実施例18において先に概説し、且つ
図27に図示した)、且つ標準技術を使用するウェスタンブロット分析のためにメンブレンへ転写した。ELISAプレートを、個別の組換えT抗原タンパク質又は完全多価の多量体タンパク質複合体(例えば、
図27、レーンDにおいて「架橋したT−抗原ツリー」として同定された種)のいずれかによりコーティングした。次にこれらのプレートを、以下のT抗原の抗血清と共にインキュベーションした:T1タイピング血清はT1抗原に対し特異的であり、T6タイピング血清はT6抗原に対し特異的であり、且つT18タイピング血清はT18抗原に対し特異的である。T18特異的モノクローナルFABであるアルファE3もまた使用し、且つ組換えT18又はT抗原ツリーとのみ反応性があった。組換えT6タンパク質は、本多量体タンパク質の一部ではないので、このT抗原を陰性対照として使用した。
【0431】
結果
ウェスタンブロット分析(データは示さず)は、本多価の多量体タンパク質複合体は、T抗血清との免疫原性を発揮することを確立し、これはT抗原は、本多価の多量体タンパク質複合体と共配置されていることを確認した。
【0432】
ELISAの結果は、
図35に示している。T1タイピング血清は、T1組換えタンパク質により、及び多価の多量体タンパク質により結合されたが、T18又はT6組換えタンパク質へは結合されなかった。同様に、T18タイピング血清及びT18−特異的FABアルファE3の両方は、組換えT18タンパク質へ、及び多価の多量体タンパク質へ結合した。本多価の多量体タンパク質への反応性は、T6タイピング血清により示されず、これはT6抗原は本多価の多量体タンパク質上に存在しないことと一致した。
【0433】
考察
これらの結果は、タンパク質カーゴの機能は、本明細書に説明されたような多価の多量体タンパク質複合体に存在する場合に、維持されることを明確に明らかにしている。先に報告されたウェスタンブロット分析は、本タンパク質複合体中に成分T抗原を含む線状エピトープの存在を確立している。更に、非変性条件下で実行されるELISAは、本多価の多量体の複合体中に存在する抗原は、それらの未変性のコンホメーション及び免疫原性機能を維持することを確立している。
【0434】
この実施例は、複数のタンパク質カーゴの機能−この場合各T抗原の免疫原性機能「価数」−は、維持され、且つ本明細書記載のような多価の多量体タンパク質複合体により提示されることを明らかにしている。ここで、各異なる「幹」成分が機能性タンパク質カーゴを保持する場合、幹様スカフォールドを提供する多量体タンパク質複合体の方向を持ったライゲーション及び形成は、規定された構造様式で複数の官能基の提示及び共配置を可能にする。
【0435】
産業的応用
本発明は、多量体複合体の、特に共有的に連結した多量体タンパク質複合体の制御された集成及び分解を可能にする、ペプチド及びタンパク質のライゲーション技術を提供する。従って、本発明は、バイオ医学、医薬、診断、遺伝子操作、農業、及び園芸栽培の部門を含む、広範な産業における適用を有する。
【0436】
前述の説明的言及が、公知の同等物を有する構成要素又は整数を作製する場合、そのような同等物は、個別に言及されるように含まれる。
【0437】
本発明は、実施例により及び特定の実施態様を参照し説明されているが、本発明の範囲又は精神を逸脱することなく、修飾及び/又は改善が行われてよいことは理解されるべきである。
【0438】
加えて、本発明の特徴又は態様がマーカッシュグループの観点から説明される場合、当業者は、これにより、本発明はまた、マーカッシュグループの個別のメンバー又はメンバーの亜群の観点から説明されることを認めるであろう。