特表2019-535834(P2019-535834A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-535834感染症及び関連炎症プロセスの処置のためのCD6及びイミペネムの併用療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-535834(P2019-535834A)
(43)【公表日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】感染症及び関連炎症プロセスの処置のためのCD6及びイミペネムの併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20191115BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20191115BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20191115BHJP
   A61K 31/201 20060101ALI20191115BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20191115BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20191115BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20191115BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20191115BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20191115BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20191115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20191115BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20191115BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20191115BHJP
【FI】
   A61K38/17
   A61K31/407
   A61K45/00
   A61K31/201
   A61P31/00
   A61P29/00
   A61P31/04
   A61P31/10
   A61P31/12
   A61P33/00
   A61P43/00 121
   C07K14/705ZNA
   C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2019-547774(P2019-547774)
(86)(22)【出願日】2017年11月17日
(85)【翻訳文提出日】2019年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2017079654
(87)【国際公開番号】WO2018091679
(87)【国際公開日】20180524
(31)【優先権主張番号】16382540.9
(32)【優先日】2016年11月18日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】513295641
【氏名又は名称】ユニベルシタ デ バルセロナ
(71)【出願人】
【識別番号】513295630
【氏名又は名称】ホスピタル クリニック デ バルセロナ
(71)【出願人】
【識別番号】519178423
【氏名又は名称】インスティトゥート ディンベスティガシオンス ビオメディケス アウグスト ピ イ スニェール − イディバプス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロサノ ソト フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】マルチネス フロレンサ マリオ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084AA22
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA53
4C084DC50
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB311
4C084ZB312
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZB371
4C084ZB372
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086CC08
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB11
4C086ZB31
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB37
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA26
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB11
4C206ZB31
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZB37
4C206ZC75
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、医薬の分野に関し、特に、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法において用いられるCD6産物とイミペネムとを含む組成物及びキットオブパーツを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームとイミペネムとを含む組成物。
【請求項2】
薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とともに、請求項1に記載の組成物を含む医薬組成物。
【請求項3】
CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームとイミペネムとを含むキットオブパーツ。
【請求項4】
前記CD6産物は、組換え可溶性CD6、好ましくはヒト組換え可溶性CD6産物である、請求項1若しくは2に記載の組成物、又は請求項3に記載のキットオブパーツ。
【請求項5】
前記CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームは、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項1〜2及び請求項4のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項3若しくは4に記載のキットオブパーツ。
【請求項6】
前記組成物及び/又は前記キットオブパーツは、シラスタチンを更に含む、請求項1〜2及び請求項4〜5のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項3〜5のいずれか一項に記載のキットオブパーツ。
【請求項7】
薬剤として用いられる、請求項1〜2及び請求項4〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法のために用いられる、請求項1〜2及び請求項4〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
薬剤として、同時に、順次的に、又は別々に用いられる、請求項3〜6のいずれか一項に記載のキットオブパーツ。
【請求項10】
感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法において、同時に、順次的に、又は別々に用いられる、請求項3〜6のいずれか一項に記載のキットオブパーツ。
【請求項11】
前記感染症は、微生物感染、好ましくは菌血症であり、及び/又は前記炎症状態は、全身性炎症反応症候群又は敗血症であり、及び/又は前記感染病原体は、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物、又は請求項10に記載のキットオブパーツ。
【請求項12】
感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法において用いられる、CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームであって、該方法は、ヒトを含む哺乳類に、該CD6産物、又はその誘導体及びイミペネムを、同時に、順次的に又は別々に投与することを含む、CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム。
【請求項13】
前記方法は、シラスタチンの投与を更に含む、請求項12に記載のCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム。
【請求項14】
感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法において用いられるイミペネムであって、該方法は、ヒトを含む哺乳類に、イミペネム及びCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームを、同時に、順次的に又は別々に投与することを含む、イミペネム。
【請求項15】
前記方法は、シラスタチンの投与を更に含む、請求項14に記載のイミペネム、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に、特に、感染症、及びそれに関連した炎症状態の治療的及び/又は予防的処置のための、抗生物質と組み合わせたCD6等のタンパク質の性質を有する化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
敗血症は、感染病原体、最も一般的には細菌であるが、同様に真菌、ウイルス又は寄生虫に対する宿主反応によって引き起こされる生命を脅かす状態である。敗血症は、感染によって引き起こされる調節不全の全身性炎症反応症候群(SIRS)とみなされ、重篤で持続的な炎症促進性状態を招く。免疫系がかかる反応を制御することができないために、多臓器機能不全(MOD)及び心血管虚脱(敗血症性ショック)となり、解決されないと、死に至る可能性がある(非特許文献1)。かかる機能不全性宿主炎症反応は、病原体関連分子パターン(PAMP)と称される微生物細胞壁上に存在する保存構造によって誘発される。PAMPは、微生物生理機能にとって必須化合物であり、それらの中には、グラム陰性(G−)菌由来のLPS、グラム陽性(G+)菌由来のリポテイコ酸(LTA)及びペプチドグリカン(PGN)、真菌由来のβ−グルカン及びマンナン、又はウイルス由来の一本/二本鎖核酸がある(非特許文献2)。
【0003】
敗血症は、多くの原因に起因し得るが、通常は、自然発症した、又は外傷、手術、火傷の結果として、若しくは癌若しくはAIDS等の衰弱性状態により誘導される診断未確定及び/又は無処置の局部的感染(例えば、肺炎又は腹膜炎)によって誘発される。敗血症は通常、振戦、発熱、血圧低下(敗血症性ショック)、呼吸促迫、高心拍数、及び皮膚病変から始まる。敗血症は、数時間のうちに、血管での自然凝固、重症低血圧、多臓器不全、ショック、壊疸及び最終的には死を引き起こし得る。敗血症は、ヒト及び他の動物において高い罹患率及び死亡率をもたらす(重症敗血症患者の死亡率は最大60%)。米国及び欧州では、毎年150万人が敗血症を発症する。これらの患者の30%が、1ヵ月後に死亡し、20%が、6ヵ月後に死亡する。米国では、敗血症は、10番目の死因であり、これは、梗塞、乳癌又は肺癌により引き起こされる死亡率よりも死亡率が高いことを表している。
【0004】
敗血症における最も重要な介入は、迅速な診断と処置である(診断と処置が1時間遅れる毎に、死亡率が5%〜10%増加する)。敗血症の診断は、困難である場合がある。発熱、頻脈及び呼吸困難等のその症状の幾つかはよく見られるものであり、他の障害に起因するものであると混同されることがある。重症敗血症と診断された患者は通常、専門治療のため病院の集中治療室(ICU)に入ることになる。
【0005】
今日でも、敗血症、重症敗血症及び敗血症性ショックは、人口の高齢化の結果としての予測発生率の増加及び莫大な社会経済的負担、侵襲的医療処置の増加、多剤耐性(MDR)細菌の出現、並びに慢性疾患の有病率の増加を伴って、依然として臨床ニーズが満たされないままである(非特許文献3)。
【0006】
PAMPの検出は、免疫細胞上に存在する、生殖系列によりコードされ、クローン選択されず、非多型であるパターン認識受容体(PRR)によって達成される。PRRは、種々の構造タンパク質及び機能タンパク質受容体ファミリー(例えば、Toll様受容体、スカベンジャー受容体又はC型レクチン)に属し、病原体検出だけでなく、自然免疫反応及び適応免疫反応の会合及び調節にも寄与する(非特許文献4)。
【0007】
スカベンジャー受容体システインリッチスーパーファミリー(SRCR−SF)は、90〜110アミノ酸長のシステインリッチ球状ドメインの1回又は数回の反復の存在を特徴とするタンパク質受容体の古来の高度に保存された群である(非特許文献5)。哺乳類では、SRCR−SFの成員は、造血及び非造血由来細胞によって発現され、そこで、多重機能を示す。SRCR−SFの成員全てに関して統一した役割は見られないが、それらの幾つかが、PRRとして機能する。かかる群として、マクロファージ(SR−AI、MARCO、CD163及びSpα)、上皮(SCARA5、DMBT1、及びS5D−SRCRB)、又はリンパ球(CD5及びCD6)受容体が挙げられる(非特許文献6)。
【0008】
CD6糖タンパク質は、SRCR−SFの別のリンパ球性の成員であるCD5に非常に相同的なリンパ球表面受容体である。受容体はともに、共通の祖先遺伝子からの複製によって得られると考えられ(非特許文献7)、主にT細胞、及び自然抗体の産生に関与するB1a細胞サブセットによって発現される。CD6及びCD5は、3つのタンデムSRCRドメイン及びシグナル伝達に適した細胞質側末端(cytoplasmic tail)によって構成される類似した細胞外領域を共有する。実際に、CD6及びCD5は、T細胞受容体(TCR)複合体に物理的に結合され(非特許文献8)、T細胞発達及び活性化プロセスを調節するのにふさわしい役割を果たす(非特許文献9、非特許文献10)。CD6は、LPS、LTA及びPGN等の細菌PAMPと相互作用するが、CD5は相互作用しない。CD6−LPS(2.69±0.32×10-8M)、CD6−LTA(0.17±0.02μM)及びCD6−PGN(1.1±0.1nM)相互作用のKdが決定されており、細菌構成成分に関する主要なマクロファージ受容体であるCD14に関して報告されるKdと類似している(非特許文献11、非特許文献12)。
【0009】
したがって、ヒトCD6の組換え可溶性形態(rshCD6)の予防的注入は、G+及びG−細菌エンドトキシン(それぞれ、LTA+PGN、及びLPS)、並びにMDR表現型とは無関係に、生きている細菌(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii))全体によって誘導される敗血症性ショックのマウスモデルにおいて、死亡率、及び炎症促進性サイトカイン(IL−1β、IL−6及びTNF−α)の血清レベルを大幅に低減させる(非特許文献6、非特許文献13)。
【0010】
敗血症及び敗血症性ショックの全死亡率は、対症療法及び強力な広域スペクトル抗生物質の利用能の飛躍的な進歩にも関わらず、依然として高いままである(それぞれ、35%及び60%)(非特許文献14)。抗生物質は、敗血症の処置の欠かせない部分を構成するものであるが、重症敗血症及び敗血症性ショックと関係するMODと関連付けられる死亡率を実質的に低減するにはおそらく不十分である。これにより、MDR細菌の増加とともに、代替非抗生物質(補助的)戦略に関する研究が必須となる。これらの戦略として、対症療法の改善の他に、細菌病原性因子及び/又は宿主炎症性メディエーター及び免疫メディエーターを対象とした処置が挙げられる(非特許文献3、非特許文献1、非特許文献15)。
【0011】
特許文献1は、rshCD6の腹腔内(i.p.)投与により、マウスにおけるLPS誘導性敗血症性ショックによって引き起こされる致死効果が相殺されること、またCD6が、敗血症性ショック症候群及び感染症に関連した他の炎症性疾患の介入の治療可能性を有することを開示している。
【0012】
さらに、発症の初期段階における幾つかの薬物候補は、TREM−1(Triggering Receptor Expressed on Myeloid cells-1)受容体アゴニスト(Merck & Co Inc及びBioXell SpA);スーパー抗原と称される黄色ブドウ球菌及び化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)によって産生される致命的な細菌毒素のファミリーの作用を阻止する短ペプチドであるスーパー抗原アンタゴニスト(Atox Bio Ltd.);免疫系及び代謝機能を制御する自己免疫性及び抗炎症性薬物である免疫調節ホルモン(IRH、Hollis-Eden Pharmaceuticals Inc.);並びにグラム陰性菌血症用の処置としてのアデノシンA1受容体アンタゴニスト(Endacea Inc.)である。開発中の他の分子は、Toll様受容体−4アンタゴニスト(武田薬品工業株式会社及びエーザイ株式会社);抗TNF−アルファポリクローナル抗体断片(Protherics);ウシ腸由来アルカリホスファターゼ(AM-Pharma);一酸化窒素を中和するNorathiol(Medinox);及び2006年に欧州規制当局から販売承認を受け、米国では後期臨床試験中のトランスジェニックアンチトロンビンIIIであるATryn(商標)(GTC Biotherapeutics)である。
【0013】
抗IL−8抗体(特許文献2)、抗IL−18抗体(特許文献3)、抗C5a抗体及びC末端切断型C5aペプチド(特許文献4)、ケモカイン及びケモカイン断片(特許文献5)、プロテインC及びBPI抗体の組合せ(特許文献6)、COX−2阻害剤(特許文献7)、藻類リポ多糖(特許文献8)並びにTNF−αに対する抗体及び細菌リポ多糖に対する抗体(特許文献9)等の、敗血症を処置するための他のアプローチが提唱されている。
【0014】
しかしながら、重症感染の処置におけるこの数十年間の大きな進歩にもかかわらず、敗血症の発生率及び敗血症に起因する死亡率は、増加し続けている。したがって、感染症及びこれらの感染症に関連した炎症状態の予防及び治療用の新規の改善された方法及び組成物を提供することが望ましいと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第2143436号
【特許文献2】米国特許出願第2003002178号
【特許文献3】米国特許出願第20030008822号
【特許文献4】米国特許出願第20020165138号
【特許文献5】米国特許出願第20020155094号
【特許文献6】米国特許出願第20020044929号
【特許文献7】米国特許出願第20020006915号
【特許文献8】米国特許第6534648号
【特許文献9】米国特許第6315999号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Delano MJ, Ward PA. 2016. Sepsis-induced immune dysfunction: can immune therapies reduce mortality? J Clin Invest 126:23-31
【非特許文献2】Janeway CA, Medzhitov R. 2002. Innate immune recognition. Annu Rev Immunol 20:197-216.
【非特許文献3】Okeke EB, Uzonna JE. 2016. In Search of a Cure for Sepsis: Taming the Monster in Critical Care Medicine. J Innate Immun 8:156-70
【非特許文献4】Palm NW, Medzhitov R. 2009. Pattern recognition receptors and control of adaptive immunity. Immunol Rev 227:221-33
【非特許文献5】Sarrias MR, et al., 2004. The Scavenger Receptor Cysteine-Rich (SRCR) Domain: An Ancient and Highly Conserved Protein Module of the Innate Immune System. Crit Rev Immunol 24:1-38.
【非特許文献6】Martinez-Florensa M, et al., 2014. Targeting of key pathogenic factors from gram-positive bacteria by the soluble ectodomain of the scavenger-like lymphocyte receptor CD6. J Infect Dis 209:1077-1086
【非特許文献7】Lecomte O, et al., 1996. Molecular linkage of the mouse CD5 and CD6 genes. Immunogenetics 44:385-90
【非特許文献8】Gimferrer I, et al., 2004. Relevance of CD6-mediated interactions in T cell activation and proliferation. J Immunol 173:2262-70
【非特許文献9】Santos RF, et al., 2016. Tuning T Cell Activation: The Function of CD6 At the Immunological 439 Synapse and in T Cell Responses. Curr Drug Targets 17:630-9
【非特許文献10】Soldevila G, et al., 2011. The immunomodulatory properties of the CD5 lymphocyte receptor in health and disease. Curr Opin Immunol 23:310-8
【非特許文献11】Dziarski R, et al., 1998. Binding of bacterial peptidoglycan to CD14. J Biol Chem 273:8680-90
【非特許文献12】Tobias PS, et al., 1995. Lipopolysaccharide binding protein-mediated complexation of lipopolysaccharide with soluble CD14. J Biol Chem 270:10482-8
【非特許文献13】Sarrias M-R, et al., 2007. CD6 binds to pathogen-associated molecular patterns and protects from LPS-induced septic shock. Proc Natl Acad Sci U S A 104:11724-9
【非特許文献14】Cohen J. 2009. Non-antibiotic strategies for sepsis. Clin Microbiol Infect 15:302-7
【非特許文献15】Fink MP, Warren HS. 2014. Strategies to improve drug development for sepsis. Nat Rev Drug Discov 13:741-58
【発明の概要】
【0017】
本出願は、盲腸結紮穿孔(Cecal ligation and puncture:腸管穿孔)(CLP)によって誘導される腹腔内起源の多微生物感染の致死的モデルにおけるスカベンジャー様リンパ球受容体CD6(sCD6)由来の可溶性エクトドメインのin vivoでの予防効果及び治療効果について開示する。結果により、CLP誘導後のマウス生存率に対するsCD6注入の時間及び用量依存的効果が示され、それらは、全身性炎症反応及び細菌負荷の低減を伴う。驚くべきことに、ヒト及びマウスsCD6注入はともに、広域スペクトル殺菌性抗生物質イミペネムと組み合わせた場合に、マウス生存率に対する効果の改善を示した(が、同じファミリー、又は異なるファミリーの抗生物質、例えばメロペネム又はエリスロマイシン等の他の抗生物質は効果の改善を示さなかった)。
【0018】
主にリンパ系統の細胞によって発現される細胞表面受容体であるヒトCD6のエクトドメインは、広域スペクトル殺菌性カルバペネム系イミペネムと組み合わせて投与すると、マウスにおけるCLP誘導性敗血症性ショックによって引き起こされる致死効果を低減する際のCD6の効果を大幅に増加させることが可能である。したがって、CD6及びイミペネムの併用療法は、敗血症性ショック症候群及び感染症に関連した他の炎症性疾患の介入の治療可能性を有する。
【0019】
したがって、本発明は、CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームと、イミペネムとを含む新規組成物を提供する。さらに、本発明は、CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームと、イミペネムとを含む、本明細書中で複合製品及び医薬製品とも称されるキットオブパーツを提供する。さらに、本発明は、薬剤としての、特に、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法における薬剤としての本発明の新規組成物及び/又は新規キットオブパーツの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】CLP誘導性多微生物敗血症性ショックに対する予防的なrshCD6のi.p.注入の効果を示す図である。A,C57BL/6Jマウスに、CLP誘導性敗血症性ショックの誘導の1時間前に、生理食塩水(n=18)、rshCD5(1.25mg/kg、n=9)、又はrshCDC6(1.25mg/kg、n=15)をi.p.(腹腔内に)注入した。B,C57BL/6Jマウスに、CLP誘導性敗血症性ショックの1時間前に、生理食塩水(n=21)、又は漸増量のrshCDC6(0.31mg/kg、n=12;0.62mg/kg、n=10;1.25mg/kg、n=17;又は2.50mg/kg、n=5)のいずれかを注入した。A及びBにおいて、生存率の平均パーセントを、各群に関して経時的に分析して、ログランクt検定を使用して、生理食塩水で処置した群と比較した。C,表示したサイトカインの血漿レベルを、生理食塩水(n=10)又はrshCD6(1.25mg/kg、n=10)のいずれかで予防的に処置した(−1時間)C57BL/6Jマウスにおいて、CLP後の表示した時点(+4時間、+20時間)でモニタリングした。データは、ng又はpg/mL(平均値±SEM)で表し、統計学的差異は、両側スチューデントt検定を使用して評価した。D,細菌負荷を、生理食塩水(n=8)又はrshCD6(1.25mg/kg、n=8)のいずれかで予防的に処置した(−1時間)C57BL/6Jマウスにおいて、CLP後の表示した時点(+4時間、+20時間)で、血液、脾臓及び腎臓で測定した。データは、cfu(コロニー形成単位)×102/mL又はmg(平均値±SD)で表し、統計学的差異は、両側スチューデントt検定を使用して評価した。
図2】CLP誘導性多微生物敗血症性ショックに対する治療的なrshCD6のi.p.注入の効果を示す図である。A,C57BL/6Jマウスに、CLP誘導性敗血症性ショックの前(−1時間、n=19)又は後(+1時間、n=31;+3時間、n=14;+6時間、n=17)のいずれかの種々の時点で、生理食塩水(n=46)又はrshCD6(1.25mg/kg)のいずれかをi.p.注入した。B,C57BL/6Jマウスに、CLPの1時間後(+1時間、n=31)に、生理食塩水(n=46)若しくはrshCD6(1.25mg/kg)の単回用量を、又はCLP誘導性敗血症性ショックの誘導後の+1時間、+3時間及び+6時間に(1+3+6時間、n=19)、rshCD6(1.25mg/kg)の反復投与量をi.p.注入した。A及びBにおいて、生存率の平均パーセントを、経時的に分析して、ログランクt検定を使用することによって統計学的比較を行った。C,炎症促進性サイトカイン(TNF−α、IL−1β、IL−6)及び抗炎症性サイトカイン(IL−10)の血漿レベルを、生理食塩水(n=10)又はrshCD6(1.25mg/kg、n=10)のいずれかでi.p.で治療的に処置した(+1時間)C57BL/6Jマウスにおいて、CLP誘導性敗血症性ショック後の表示した時点(+4時間、+20時間)で、ELISAによってモニタリングした。データは、ng又はpg/mL(平均値±SD)で表し、両側スチューデントt検定を使用することによって統計学的比較を行った。D,細菌負荷を、生理食塩水(n=10)又はrshCD6(1.25mg/kg、n=10)のいずれかで治療的に処置した(+1時間)C57BL/6Jマウスにおいて、CLP誘導性敗血症性ショック後の表示した時点(+4時間、+20時間)で、血液、脾臓及び腎臓で測定した。データは、cfu×102/mL又はmg(平均値±SD)で表し、両側スチューデントt検定を使用して、統計学的比較を行った。E,C57BL/6Jマウスに、生理食塩水(n=24)、rshCD6(1.25mg/kg、n=18)、イミペネム/シラスタチン(I/C、33mg/kg/8時間、n=25)又は後者の組合せ(n=24)をi.p.で治療的に(+1時間)注入し、マウス生存率の平均パーセントを、経時的に表示した。
図3】CLP誘導性多微生物敗血症性ショックに対する治療的なrshCD6のi.v.注入の効果を示す図である。A,C57BL/6Jマウスに、rshCD6(1.25mg/kg)をi.p.(n=6、左)又はi.v.(静脈内)(n=6、右)で注入し、rshCD6の血漿レベルを、ELISAによってμg/mL(平均値±SD)として決定した。B,C57BL/6Jマウスに、CLP誘導性敗血症性ショック後の種々の時点(+1時間、n=20;+3時間、n=10;及び+6時間、n=5)で、生理食塩水(n=18)又はrshCD6(1.25mg/kg)をi.v.で注入した。C,C57BL/6Jマウスに、生理食塩水(n=24)、rshCD6(1.25mg/kg、n=18)、イミペネム/シラスタチン(I/C、33mg/kg/8時間、n=25)又は後者2つの組合せ(n=24)をi.v.で治療的に(+1時間)注入した。B及びCにおいて、生存率の平均値を、各群に関して経時的に分析して、ログランクt検定を使用して、生理食塩水で処置した群と統計学的に比較した。
図4】CLP誘導性多微生物敗血症性ショックに対するrsmCD6のAAV媒介性遺伝子送達の効果を示す図である。A,C57BL/6Jマウス(n=6)を、rsmCD6をコードする肝臓指向性AAVウイルス(アデノ随伴ウイルス)(AAV−rsmCD6)でi.v.処置し、種々の時点で出血させて、ELISAによってrsmCD6血漿レベルをモニタリングした。データは、μg/mL(平均値±SD)で表す。B,CLP誘導性敗血症性ショックの2週前に1×1011個のAAV−rsmCD6又はAAV−Lucウイルス粒子でi.v.処置したC57BL/6Jマウスに、イミペネム/シラスタチン(I/C、33mg/kg/8時間)をi.p.で治療的に(+1時間)注入した(それぞれ、n=15及びn=16)か、又は注入しなかった(それぞれ、n=14及びn=13)。生存率の平均パーセントを、経時的に分析して、ログランクt検定を使用することによって統計学的比較を行った。C,表示したサイトカインの血漿レベルを、2週前に1×1011個のAAV−rsmCD6(n=10)又はAAV−Luc(n=10)ウイルス粒子で処置したC57BL/6Jマウスにおいて、CLP誘導性敗血症性ショック後の表示した時点(+4時間、+20時間)でELISAによってモニタリングした。データは、ng又はpg/mL(平均値±SD)で表し、両側スチューデントt検定を使用して統計学的比較を行った。D,細菌負荷を、2週前に1×1011個のAAV−rsmCD6(n=8)又はAAV−Luc(n=8)ウイルス粒子で処置したC57BL/6Jマウス由来の血液、腹膜灌流、脾臓及び腎臓で、CLP誘導後の表示した時点(+4時間、+20時間)でモニタリングした。データは、cfu×103/mL又はmgの平均値±SDで表し、両側スチューデントt検定を使用することによって統計学的比較を行った。
図5】CLP誘導性多微生物敗血症性ショックに対するrshCD6及び/又はエリスロマイシンのi.p.注入の治療有効性を示す図である。C57BL/6Jマウス(8週齢〜10週齢)に、CLP誘導性敗血症性ショック後の時間+0時間(A、上)又は+1時間(B、下)で、生理食塩水(n=10)、rshCD6(1.25mg/kg)、エリスロマイシン(2.75μg/kg/8時間)又は後者2つの組合せ(n=12)をi.p.で注入した。生存率の平均値を、各群に関して経時的に分析して、ログランクt検定を使用して、生理食塩水で処置した群と統計学的に比較した。
図6】CLP誘導性多微生物敗血症性ショックに対するrshCD6及び/又はメロペネムのi.p.注入の治療有効性を示す図である。C57BL/6Jマウス(8週齢〜10週齢)に、CLP誘導性敗血症性ショック後の時間+0時間(A、上)又は+1時間(B、下)で、生理食塩水、rshCD6(1.25mg/kg)、メロペネム(17mg/kg/8時間)又は後者2つの組合せ(n=15)をi.p.で注入した。生存率の平均値を、各群に関して経時的に分析して、ログランクt検定を使用して、生理食塩水で処置した群と統計学的に比較した。
図7】CLP誘導性多微生物敗血症性ショックに対するrshCD6のi.v.注入及び/又はイミペネム/シラスタチンのi.v.注入の治療有効性を示す図である。C57BL/6Jマウス(8週齢〜10週齢)に、CLP誘導性敗血症性ショック後の+1時間で、生理食塩水(n=14)、rshCD6(1.25mg/kg)(n=15)をi.v.で、イミペネム/シラスタチン(33mg/kg/8時間、n=17)又は後者2つの組合せ(n=15)をi.p.で注入した。生存率の平均値を、各群に関して経時的に分析して、ログランクt検定を使用して、生理食塩水で処置した群と統計学的に比較した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
組成物
第1の態様において、本発明は、CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームと、イミペネムとを含む組成物(「本発明の組成物」)を提供する。本発明の組成物はまた、本明細書中で、「組合せ」(「本発明の組合せ」)とも称することができる。
【0022】
好ましくは、本発明の組成物は、医薬組成物である。当業者が理解しているように、医薬組成物は、1つ以上の有効成分(例えば、本発明の場合、CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム、及びイミペネム)の他に、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤を含んでもよい。したがって、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とともに、本発明の組成物を含む。
【0023】
本明細書中で使用する場合、「CD6産物の誘導体」という表現は、生物学的機能を果たすことが可能なCD6産物の任意の誘導体、即ち、CD6エクトドメイン又はその断片を含む産物と同じ生物学的機能を果たすことが可能なCD6産物の任意の誘導体を含む。例えば、CD6産物の誘導体は、配列番号1と少なくとも70%同一性を有するタンパク質又はその断片であってもよい。例えば、CD6産物の誘導体は、本発明のCD6産物と同じ生物学的機能を果たすことが可能な配列番号1と少なくとも70%、例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%又は99%同一性を有するタンパク質又はその断片であってもよい。
【0024】
タンパク質「アイソフォーム」は、同じタンパク質の幾つかの異なる形態のいずれかを意味する。異なる形態のタンパク質は、関連遺伝子から産生され得るか、又は選択的スプライシングによって、若しくはタンパク質分解的切断、リン酸化、グリコシル化等の翻訳後修飾によって同じ遺伝子から生じ得る。また、多数のアイソフォームが、同じ遺伝子の対立遺伝子間の小さな遺伝的差異である一塩基多型即ちSNPによって引き起こされる。これらは、遺伝子内の特異的な個々のヌクレオチド位置で起きる。或いは、アイソフォームは、従来の分子生物学技法によって人工的に生成され得る。アイソフォームはまた、本明細書中で使用する場合、完全長タンパク質の断片を含む。例えば、(例えば、天然に存在する)完全長タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%を有するポリペプチドは、上記完全長タンパク質のアイソフォームと称することができる。また、「アイソフォーム」は本明細書中で使用する場合、グリコフォーム、即ち、グリコシル化パターンが(本質的に)異なるが、同じ生物学的機能を果たすことが可能なタンパク質変異体の概念を含む。
【0025】
配列番号1は、ヒトCD6の成熟(完全にプロセシングされた)可溶性アイソフォームに相当する。ヒトCD6受容体の配列は、受託番号P30203で同定されるものである(CD6_HUMAN、最終更新日2009年12月15日。UniProtKB/Swiss−Protデータベースのバージョン3)。この配列は、膜アイソフォームにおける受容体に相当する。CD6の可溶性アイソフォームがまた、タンパク質分解的切断によって生成されるかどうかは、完全にはまだ決定されていない。配列番号1は、膜貫通領域に先行するストーク領域における停止コドンの付加によって得られる。
【0026】
配列番号1
DQLNTSSAESELWEPGERLPVRLTNGSSSCSGTVEVRLEASWEPACGALWDSRAAEAVCRALGCGGAEAASQLAPPTPELPPPPAAGNTSVAANATLAGAPALLCSGAEWRLCEVVEHACRSDGRRARVTCAENRALRLVDGGGACAGRVEMLEHGEWGSVCDDTWDLEDAHVVCRQLGCGWAVQALPGLHFTPGRGPIHRDQVNCSGAEAYLWDCPGLPGQHYCGHKEDAGVVCSEHQSWRLTGGADRCEGQVEVHFRGVWNTVCDSEWYPSEAKVLCQSLGCGTAVERPKGLPHSLSGRMYYSCNGEELTLSNCSWRFNNSNLCSQSLAARVLCSASRSLHNLSTPEVPASVQTVTIESSVTVKIENKESR
【0027】
配列番号1は、配列番号2を含むヌクレオチド配列の転写及び翻訳によって生じる。
【0028】
配列番号2
gaccagctca acaccagcag tgcagagagt gagctctggg agccagggga gcggcttccg
gtccgtctga caaacgggag cagcagctgc agcgggacgg tggaggtgcg gctcgaggcg
tcctgggagc ccgcgtgcgg ggcgctctgg gacagccgcg ccgccgaggc cgtgtgccga
gcactgggct gcggcggggc ggaggccgcc tctcagctcg ccccgccgac ccctgagctg
ccgcccccgc ctgcagccgg gaacaccagc gtagcagcta atgccactct ggccggggcg
cccgccctcc tgtgcagcgg cgccgagtgg cggctctgcg aggtggtgga gcacgcgtgc
cgcagcgacg ggaggcgggc ccgtgtcacc tgtgcagaga accgcgcgct gcgcctggtg
gacggtggcg gcgcctgcgc cggccgcgtg gagatgctgg agcatggcga gtggggatca
gtgtgcgatg acacttggga cctggaggac gcccacgtgg tgtgcaggca actgggctgc
ggctgggcag tccaggccct gcccggcttg cacttcacgc ccggccgcgg gcctatccac
cgggaccagg tgaactgctc gggggccgaa gcttacctgt gggactgccc ggggctgcca
ggacagcact actgcggcca caaagaggac gcgggcgtgg tgtgctcaga gcaccagtcc
tggcgcctga cagggggcgc tgaccgctgc gaggggcagg tggaggtaca cttccgaggg
gtctggaaca cagtgtgtga cagtgagtgg tacccatcgg aggccaaggt gctctgccag
tccttgggct gtggaactgc ggttgagagg cccaaggggc tgccccactc cttgtccggc
aggatgtact actcatgcaa tggggaggag ctcaccctct ccaactgctc ctggcggttc
aacaactcca acctctgcag ccagtcgctg gcagccaggg tcctctgctc agcttcccgg
agtttgcaca atctgtccac tcccgaagtc cctgcaagtg ttcagacagt cactatagaa
tcttctgtga cagtgaaaat agagaacaag gaatctcggt ag
【0029】
本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容可能な担体」という表現は、医薬組成物、即ち、患者への投与が可能な投薬形態の形成を可能にするための無毒性溶媒、分散剤、賦形剤、アジュバント、又は有効成分(複数の場合もある)と混合される他の材料を意味する。かかる担体の一例は、非経口投与に通常使用される薬学的に可溶な油である。
【0030】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、本明細書中で使用する場合、本発明の化合物の塩を医薬品調製物に使用することができることを意味する。しかしながら、他の塩が、本発明による化合物又はその薬学的に許容可能な塩の調製物において有用である場合もある。
【0031】
「担体」という用語は、有効成分(複数の場合もある)とともに投与される希釈剤又は賦形剤を指す。かかる医薬担体は、滅菌液体、例えば水及び石油、動物、植物又は合成起源のものを含む油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等であり得る。水、又は生理食塩水の水溶液並びにデキストロース及びグリセロールの水溶液が、特に注射液のために、担体として使用されることが好ましい。適切な医薬担体は、1995年にE.W. Martinによって「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0032】
「アジュバント」は、本明細書中で使用する場合、それ自体では薬理学的効果をほとんど又は全く有さないが、他の作用物質と(本質的に)同じ時間に、多くの場合(本質的に)同じ投与経路で(本質的に)同じ部位に付与されると(例えば、同じ筋肉への注射)、他の作用物質の有効性又は効力を高め得る物質である。より詳細には、免疫化において使用する場合、アジュバントは、それ自体ではいかなる特異的な抗原効果も有さずに、免疫系を刺激するか、又は免疫系を刺激する可能性があり、免疫化剤に対する反応を高め得る物質である。より具体的には、免疫原性アジュバントは、特異的な抗原剤(複数の場合もある)と組み合わせて使用すると、抗原特異的な免疫反応を加速するか、延長させるか、又は増強するように作用する物質として定義され得る。
【0033】
本発明の医薬組成物の所望の医薬投薬形態を製造するのに必要な担体及び補助物質は、他の要因の中でもとりわけ、選択される医薬投薬形態に依存する。本発明の医薬組成物の上記医薬投薬形態は、当業者が既知の従来法に従って製造される。
【0034】
医薬組成物の例として、経口、局所、腹腔内、静脈内又は非経口投与用の任意の固体(錠剤、丸剤、カプセル、顆粒等)又は液体(溶液、懸濁液又はエマルジョン)組成物が挙げられる。さらに、医薬組成物は、必要に応じて、安定剤、懸濁液、防腐剤、界面活性剤等を含有することができる。
【0035】
当業者は、特定の投与様式に応じて組成物を適応させることができる。本発明の組成物は、感染症若しくはそれに関連した炎症状態に対する他の治療剤、又はそれらの組み合わせを更に含んでもよい。
【0036】
キットオブパーツ
第2の態様において、本発明は、本発明のCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームと、イミペネムとを含むか、或いはそれらからなるキットオブパーツ(「本発明のキットオブパーツ」)を提供する。キットオブパーツはまた、本明細書中では、「複合製品」及び/又は「医薬製品」と称される場合があり、本出願において、例えば組成物中で必ずしも結合体(union)として存在するわけではなく、同時の、別々の又は順次的な適用又は投与に利用可能な2つ以上の構成成分を含む製品又は多成分系と定義される。したがって、キットオブパーツの構成成分は、以下で詳細に記載するように、異なる容器中で物理的に分けられてもよい。
【0037】
多成分系を使用して、一方の容器中に本発明のCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームを、他方の容器中にイミペネムを保管することができる。構成成分を、適切な時間で混合して、本発明の組成物を提供することができる。或いは、構成成分を、別々に又は順次的に、即ち、構成成分を必要とする対象への投与前に混合せずに使用してもよい。
【0038】
特に、かかるキットオブパーツは、(a)本発明のCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームを含む第1の容器と、(b)イミペネムを含む第2の容器とを備え得るか、或いはそれらからなる場合がある。
【0039】
本発明のキットオブパーツは、対象(哺乳類、好ましくはヒト)に、同時に、順次的に又は別々に投与され得る別々の実体として(例えば、別々の容器中に含まれる)CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームと、イミペネムとを含み得るか、或いはそれらからなり得る。好ましい実施形態において、本発明のキットオブパーツは、対象(哺乳類、好ましくはヒト)に、同時に、順次的に又は別々に投与され得る別々の実体として(例えば、別々の容器中に含まれる)本発明のCD6産物、その誘導体、又はそのアイソフォームとイミペネムとを含むか、或いはそれらからなる。別の実施形態において、容器は、容器間に障壁を有する単一の製造品へと組み合わせられる。この障壁を除去又は破壊することで、適切な時間での構成成分の混合が可能となる。
【0040】
したがって、本発明は、本発明のキットオブパーツに、以下で定義するように、特に感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法における、薬剤としての同時使用、順次的な使用又は別々の使用を提供する。
【0041】
本発明のキットオブパーツは、
a)本発明のCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームと薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物と、
b)イミペネムと薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物と、
を含み得るか、或いはそれらからなり得る。
【0042】
医薬組成物(a)及び医薬組成物(b)はともに、対象(哺乳類、好ましくはヒト)に、同時に、順次的に又は別々に投与され得る別々の実体として(例えば、上述するように、別々の容器中の別々の液体又は固体組成物として)本発明のキットオブパーツ中に含まれることが好ましい。
【0043】
以下に記載するように、本発明の組成物、医薬組成物及び/又はキットオブパーツは、シラスタチンを更に含んでもよい。シラスタチンは、好ましくはシラスタチンと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物の形態で、第3の別々の容器中に、(第3の)別々の実体として本発明のキットオブパーツに含まれてもよい。好ましくは、シラスタチンは、イミペネムと同じ実体(同じ容器)で含まれる(例えば、イミペネムとシラスタチンとを含む組成物又は医薬組成物)。
【0044】
例えば、本発明のキットオブパーツにおいて、好ましくは別々の実体として含まれる発明のCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム(又はCD6産物、若しくはその誘導体、若しくはそのアイソフォームと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)及びイミペネム(又はイミペネムと薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)は、同時に(同じ時間に)対象(哺乳類、好ましくはヒト)に投与され得る。
【0045】
或いは、本発明のキットオブパーツおいて、好ましくは別々の実体として含まれる、本発明のCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム(又はCD6産物、若しくはその誘導体、若しくはそのアイソフォームと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)及びイミペネム(又はイミペネムと薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)は、順次的に対象(哺乳類、好ましくはヒト)に投与され得る。例えば、本発明のCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム(又はCD6産物、若しくはその誘導体、若しくはそのアイソフォームと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)は、第1の場所で投与されてもよく、その後、イミペネム(又はイミペネムと薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)が、対象(哺乳類、好ましくはヒト)に投与される。
【0046】
好ましくは、イミペネム(又はイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)が、まず対象(哺乳類、好ましくはヒト)に投与され、その後、本発明のCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム(又はCD6産物、若しくはその誘導体、若しくはそのアイソフォームと、薬学的に許容可能な担体、薬学的器許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)が、対象に投与される。
【0047】
或いは、本発明のキットオブパーツおいて、好ましくは別々の実体として含まれる、本発明のCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム(又はCD6産物、若しくはその誘導体、若しくはそのアイソフォームと、薬学的に許容可能な担体、薬学的器許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)及びイミペネム(又はイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)は、別々に対象(哺乳類、好ましくはヒト)に投与され得る。例えば、対象(哺乳類、好ましくはヒト)は、イミペネム(又はイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)を既に服薬しており、本発明のCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム(又はCD6産物、若しくはその誘導体、若しくはそのアイソフォームと、薬学的に許容可能な担体、薬学的器許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)は、好ましくは単回用量で投与される。
【0048】
したがって、本発明のキットオブパーツの構成成分は、以下に記載するように、好ましくは、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の処置の治療法及び/又は予防法において、対象(ヒトを含む哺乳類)に、同時に、順次的に又は別々に投与され得る。
【0049】
CD6産物
CD6受容体は、胸腺細胞、成熟T細胞、及びB1a B細胞サブセットの膜上に発現される105kDa〜130kDaのリンパ系特異的な表面糖タンパク質であるが、CD6発現はまた、脳の或る特定の領域上でも報告されている。CD6受容体は、SRCRと呼ばれるシステインリッチ細胞外ドメインの1個又は数個の反復の存在を特徴とするSRCR−SFに属する(M.R. Sarrias et al., "The Scavenger Receptor Cysteine-Rich (SRCR) domain: an ancient and highly conserved protein module of the innate immune system", Crit. Rev. Immunol. 2004, vol. 24, pp. 1-37を参照)。その細胞外領域は、3つの連続したSRCRドメインで専ら構成される。機能的に、膜結合性CD6は、T(TCR/CD3)細胞上に存在する抗原特異的な受容体複合体に物理的に結合され、そこで、CD6は、その受容体複合体によって送達される活性化及び分化シグナルの正又は負の調節のいずれかに寄与する。CD6は、免疫グロブリンスーパーファミリーの広範に発現される接着分子であるその天然リガンドALCAM(「活性化白血球細胞接着分子」、CD166としても知られる)に結合することが広く受け入れられている(M.A. Bowen et al., "Analysis of domain-domain interactions between CD6 and activated leukocyte cell adhesion molecule (ALCAM)", Tissue Antigens 1996, vol. 48, pp. AS401.32を参照)。
【0050】
本明細書中で使用する場合、「CD6産物」という用語は、上述するように、CD6エクトドメイン又はその断片、又はそのアイソフォームを含む産物を意味する。エクトドメインは、介在配列及びそれを膜と分離するストーク領域を有する3つのSRCRドメインを指す。適切なCD6産物は、CD6エクトドメイン又はその断片の天然、合成又は組換えの生物活性なポリペプチド;ハイブリッド融合タンパク質又はホモ若しくはヘテロオリゴマーを含むCD6エクトドメイン又はその断片の生物学的に活性なポリペプチド変異体を含む。CD6産物は、哺乳類起源に、より好ましくはヒト起源に由来する。好ましくは、本発明のCD6産物は、組換え可溶性CD6産物(rsCD6)である。好ましくは、本発明のCD6産物は、ヒトCD6産物(hCD6)である。より好ましくは、本発明のCD6産物は、組換え可溶性ヒトCD6産物(rshCD6)である。別の実施形態において、CD6産物は、マウスCD6産物(mCD6)である。
【0051】
GenBank受託番号NP_006716に記載されるヒト完全長CD6タンパク質は、668個のアミノ酸を有する。エクトドメインは、3つのSRCRドメイン、介在配列及びストーク領域で構成される。
【0052】
特定の実施形態において、本発明のCD6産物(CD6、rsCD6、rshCD6、hCD6及び/又はmCD6)は、上述するように、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、或いはそれらからなる。この配列は、3つのSRCRドメイン、介在配列及びストーク領域を含む。上述するように、配列番号1は、配列番号2を含むか、或いはそれからなるヌクレオチド配列の転写及び翻訳によって生じる。
【0053】
可溶性CD6の低い血漿レベルに起因して、血漿又は血清の精製からCD6を得ることは、工業的に実行不可能である。したがって、本発明の目的では、遺伝子工学の方法によってCD6産物を産生することが好ましい。当該技術分野で一般的に使用される任意の方法を用いて、これ以降でrsCD6と称される組換え可溶性CD6を産生することができる。rshCD6を発現及び精製する好ましい方法は、特許文献1の実施例に記載されている。この方法は、実験目的でrshCD6を産生するのを可能とし、そのため、大量のrshCD6を産生するには、工業的なスケールアップが必要である。本発明のCD6産物はまた、融合タンパク質として発現されてもよい。
【0054】
CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームが、本発明の目的に適しているかどうかを試験するために、微生物結合アッセイが使用され得る。適切なアッセイは、特許文献1の実施例1に記載されている。
【0055】
明細書、実施例及び図面において、rshCD6は、組み換えにより得られた、可溶性のヒトCD6エクトドメインを指し、膜結合性CD6受容体と区別される。
【0056】
イミペネム
イミペネムは、カルバペネムクラスの抗生物質に属するβ−ラクタム抗生物質である。カルバペネムは、多くの多剤耐性G−細菌によって産生されるβ−ラクタマーゼ酵素に対して非常に耐性である。イミペネムは、様々なG+細菌及びG−細菌の細胞壁合成を阻害すること、したがって溶菌中に放出されるPAMPの量を低減することにより、抗菌薬として作用する。イミペネムは、幾つかの細菌によって産生されるβ−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ及びセファロスポリナーゼの両方)の存在下で非常に安定なままであり、ほとんどのβ−ラクタム抗生物質に対して耐性である幾つかのG−細菌由来のβ−ラクタマーゼの強力な阻害剤である。イミペネムに関するIUPAC系統名は、(5R,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−3−({2−[(イミノメチル)アミノ]エチル}チオ)−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸であり、そのCAS登録番号は、74431−23−5であり、その化学式は、以下で式1において記載している:
【化1】
【0057】
以下で詳述するように、イミペネムは、一般的にシラスタチンとともに投与される。したがって、好ましい実施形態において、本発明の組成物、医薬組成物及び/又はキットオブパーツは、シラスタチンを更に含む。
【0058】
シラスタチン
シラスタチンは、抗生物質イミペネムのin vivoでの分解に関与する酵素であるヒトデヒドロペプチダーゼを阻害する化合物である。したがって、シラスタチンは、イミペネムとともに投与されて、デヒドロペプチダーゼによるその分解を抑え、それにより、身体中の循環時間、したがってその抗菌効果を延ばし得る。シラスタチン自体は、抗生物質活性を持たない。当業者が承知しているように、イミペネム単独は、有効な抗生物質であり、シラスタチンを伴わずに投与することができる。しかしながら、好ましくは、イミペネムは、好ましくはイミペネム:シラスタチンの比1:1でシラスタチンとともに投与される。
【0059】
本発明の組成物、医薬組成物及びキットオブパーツの効果
本発明の教示に従って、本発明の組成物、医薬組成物及び/又はキットオブパーツの構成成分を、哺乳類、好ましくはヒトに投与することができる。本発明の組成物、医薬組成物及び/又はキットオブパーツの構成成分の投与の目的は、予防的(これらの疾患の発症を回避するため)及び/又は治療的(これらの疾患が発症/導入された後に、これらの疾患を処置するため)であり得る。
【0060】
本発明の組成物、医薬組成物及び/又はキットオブパーツの構成成分は、薬学的に許容可能な形態で投与されることは理解されよう。当業者は、標準的な手順を使用して、適正な用量を確認し得る。炎症反応の低減が、処置した対象で見られるという意味で、用量は、CD6産物及びイミペネム(上述するように、好ましくは、シラスタチンとともに)の有効量であるべきであることが理解される。
【0061】
本発明者らは、CD6産物及びイミペネム(上述するように、好ましくは、シラスタチンとともに)の特異的な共投与(同時に、順次的に又は別々に)(腹腔内、i.p.及び/又は静脈内、i.v.)が、ヒトを含む哺乳類において、特に感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の治療及び/又は予防において、明らかに改善された相加的治療効果を提供することを発見した。
【0062】
CD6産物が、ヒトを含む哺乳類において、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の処置に関して最適な他の広域スペクトル抗生物質とともに投与された場合には、この相加的効果の改善は観察されなかったことに留意されたい。
【0063】
例えば、以下の実施例2に示すように、CLP誘導性敗血症において、抗生物質エリスロマイシンをCD6産物であるrshCD6と共投与した場合に、非相加的効果が観察された。さらに、以下の実施例2に示すように、CLP誘導性敗血症において、抗生物質メロペネムをCD6産物であるrshCD6と共投与した場合に、非相加的効果が観察された。CLP誘導性敗血症は、多微生物敗血症を引き起こす盲腸結紮穿孔(CLP)法を使用して、マウスに実験的敗血症を誘導する代表的な方法である。
【0064】
エリスロマイシン及びメロペネムはともに、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、例えば敗血症の治療及び/又は予防のための広域スペクトル抗生物質である。
【0065】
メロペネムは、多種多様な感染を処置するのに一般的に使用される広域スペクトル殺菌性注射可能抗生物質である。メロペネムは、イミペネムと同様に、β−ラクタムであり、カルバペネムの亜群に属する。しかしながら、メロペネムは、ヒト酵素デヒドロペプチダーゼによって分解されず、シラスタチンとの結合は不要となる。メロペネムのIUPAC系統名は、(4R,5S,6S)−3−(((3S,5S)−5−(ジメチルルカルバモイル)ピロリジン−3−イル)チオ)−6−((R)−1−ヒドロキシエチル)−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクル[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸であり、そのCAS登録番号は、119478−56−7であり、その化学式は、以下で式2に表される通りである:
【化2】
【0066】
エリスロマイシンは、種々の起源(主に、皮膚及び気道)由来のG+細菌種及びG−細菌種の両方によって引き起こされる全身感染に対して有効な静菌性抗生物質である。エリスロマイシンのIUPAC系統名は、(3R,4S,5S,6R,7R,9R,11R,12R,13S,14R)−6−{[(2S,3R,4S,6R)−4−(ジメチルアミノ)−3−ヒドロキシ−6−メチルオキサン−2−イル]オキシ}−14−エチル−7,12,13−トリヒドロキシ−4−{[(2R,4R,5S,6S)−5−ヒドロキシ−4−メトキシ−4,6−ジメチルオキサン−2−イル]オキシ}−3,5,7,9,11,13−ヘキサメチル−1−オキサシクロテトラデカン−2,10−ジオンである。エリスロマイシンは、アミノアシル転位を妨げて、rRNA複合体のP部位への、rRNA複合体のA部位で結合されるtRNAの移行を防ぐことによって、タンパク質合成及び細菌の増殖を阻止する。
【0067】
処置方法
更なる態様において、本発明の組成物、医薬組成物及び/又はキットオブパーツは、それらの変形形態のいずれかにおいて、薬剤として、好ましくは感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法における薬剤として使用することができる。したがって、本発明は、本発明の組成物、医薬組成物及び/又はキットオブパーツの構成成分を哺乳類に投与することを含む、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の処置の治療法及び/又は予防法を提供する。好ましい実施形態において、哺乳類はヒトである。
【0068】
例えば、本発明は、薬剤としての同時使用、順次的な使用又は別々の使用のための本発明のキットオブパーツを提供する。特に本発明は、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法における同時使用、順次的な使用又は別々の使用のための本発明のキットオブパーツを提供する。
【0069】
本発明の特定の実施形態において、感染症は、微生物感染である。より特定の実施形態において、微生物感染は、細菌感染(G+細菌又はG−細菌、非病原性又は病原性、好気性又は嫌気性のいずれか)、真菌感染、ウイルス感染、寄生虫感染、及びそれらの組合せ(多微生物感染)からなる群から選択される。
【0070】
別の特定の実施形態において、感染症は、菌血症である。本明細書中で使用する場合、「菌血症」という用語は、血流中の任意の微生物の存在を指す。特に、菌血症は、細菌血症(bacteremia)、真菌血症、ウイルス血症、寄生虫血症及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0071】
生存可能な微生物の存在は、感染症に関連した炎症状態のほとんどの事例で見られるのに対して、患者の20%〜30%が、いかなる供給源からも同定される微生物を有さないが、微生物に由来する産物を有する。したがって、別の実施形態において、炎症状態は、感染病原体に由来する産物に関連する。特に、感染病原体は、細菌(G+細菌又はG−細菌、非病原性又は病原性、好気性又は嫌気性のいずれか)、真菌、ウイルス、寄生虫、及び/又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0072】
敗血症は、全身性炎症反応症候群(SIRS)と呼ばれる全身反応の徴候を付随する感染の存在又は推定される存在として定義される。敗血症の定義に関して、"Severe sepsis and septic shock: review of the literature and emergency department management guidelines", H.B. Nguyen et al., Ann. Emergency Med. 2006, vol. 48, pp. 28-54という論文を参照する。敗血症は通常、細菌感染(G+細菌又はG−細菌のいずれか)によって引き起こされるが、他の病原体によっても引き起こされ得る。しかしながら、最も多くの場合、敗血症は、G+細菌感染及びG−細菌感染によって引き起こされる。しかしながら、敗血症に起因する損傷及び症状は、生きている細菌全体によって引き起こされるだけでなく、エンドトキシンとして知られる細菌細胞壁の構成成分によっても引き起こされる。エンドトキシン(例えば、LPS、LTA、PGN)は、G+細菌及びG−細菌の外膜に遍在する糖脂質である。エンドトキシンは、免疫系が侵入細菌を破壊すると放出される。放出されたエンドトキシンは、免疫細胞(単球、マクロファージ、顆粒球、リンパ球、並びに内皮細胞及び上皮細胞)に結合して、サイトカイン(例えば、TNF−α、IL−1β及びIL−6)及びケモカイン(例えば、IL−8)等の炎症の各種可溶性メディエーターの産生を誘発し、これらは、重症形態の敗血症の主要な原因となる。
【0073】
本発明の特定の実施形態において、炎症状態は、SIRS(全身性炎症反応症候群)である。別の特定の実施形態において、炎症状態は、敗血症である。SIRSは、(1)38℃を超えるか、又は36℃未満の体温、(2)90回の拍動/分を超える脈拍数、(3)20回の呼吸/分を超える呼吸数(又は32トール未満のPCO2)及び(4)12000個/mm3を超えるか、若しくは4000個/mm3未満の白血球数、又は10%を超える未熟桿型のうちの2つ以上の存在として定義される。
【0074】
特定の実施形態において、敗血症は、多微生物敗血症である。多微生物敗血症は、多重感染病原体(例えば、細菌及び真菌;非病原性及び病原性;好気性及び嫌気性等)の同時発生に関与する複雑な全身感染と定義される。
【0075】
別の特定の実施形態において、炎症状態は、重症敗血症である。重症敗血症は、1つ以上の臓器不全を付随する敗血症と定義される。臓器不全は、急性肺損傷、凝固異常、血小板減少症、精神状態変化、腎不全、肝不全若しくは心不全、又は乳酸アシドーシスを伴う低灌流として定義することができる。
【0076】
別の特定の実施形態において、炎症状態は、敗血症性ショックである。敗血症性ショックは、敗血症及び難治性低血圧、即ち、90mmHg未満の収縮期血圧、65mmHg未満の平均動脈圧、又は20ml/kg〜40ml/kgの晶質液負荷(challenge)に対して応答しない、ベースラインと比較して収縮期血圧における40mmHgの減少の存在として定義される。したがって、敗血症ショックは、事実上、重症敗血症の一形態である。最終的に、敗血症性ショックは、エンドトキシン誘導性敗血症性ショックであってもよい。
【0077】
感染の供給源は、身体全体にわたる多数の場所のいずれかであり得る。敗血症に至る可能性のある一般的な感染部位は、虫垂の炎症(虫垂炎)、憩室炎、腸管障害、腹腔の感染(腹膜炎)、及び胆嚢又は肝臓感染;脳又は脊髄の炎症又は感染(髄膜炎、脳炎);肺炎等の肺感染;創傷又は静脈内カテーテルでできた開口による皮膚感染、蜂巣炎(皮膚の結合組織の炎症);尿路感染、特に患者が尿を排出する導尿カテーテルを有する場合;歯科及び婦人科の検査又は処置;鈍傷又は穿通性外傷、手術及び心内膜炎症を含む。
【0078】
ヒトを含む哺乳類への本発明の組成物、医薬組成物及び/又はキットオブパーツの構成成分の投与は、それらの変形形態のいずれかにおいて、腹腔内で(i.p.)及び/又は静脈内で(i.v.)行われる。好ましい実施形態において、本発明の組成物、医薬組成物及び/又は産物は、ヒトを含む哺乳類に、静脈内で投与される。本発明者らは、i.v.経路の使用により、CLP誘導後の最大+3時間又は+6時間、rshCD6の治療効果を延ばすことが可能となることを発見した(以下の実施例を参照)。
【0079】
好ましくは、本発明のキットオブパーツの構成成分は、下記の通りに投与される。CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム、好ましくはrshCD6(又はCD6産物、好ましくはrshCD6、若しくはその誘導体、若しくはそのアイソフォームと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)の単回用量を、できる限り早期に、好ましくはi.v.で、イミペネム(上述するように、好ましくはシラスタチンとともに)処置中に投与する。マウスにおける最適なrshCD6用量は、1.25mg/kg〜2.50mg/kgである。当業者に理解されるように、ヒトを含む他の哺乳類の最適なrshCD6用量は、臨床アッセイで確立させるべきである。
【0080】
別の好ましい実施形態において、本発明のキットオブパーツの構成成分は、下記の通りに投与される。CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム、好ましくはrshCD6(又はCD6産物、好ましくはrshCD6、若しくはその誘導体、若しくはそのアイソフォームと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)の単回用量を、できる限り早期に、好ましくはi.v.で投与し、続いて、イミペネム(又はイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)(上述するように、好ましくはシラスタチンとともに)を、それを必要とする対象に投与する。
【0081】
別の好ましい実施形態において、本発明のキットオブパーツの構成成分は、下記の通りに投与される。まず、イミペネム(又はイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)(上述するように、好ましくはシラスタチンとともに)を、それを必要とする対象に投与する。続いて、CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム、好ましくはrshCD6(又はCD6産物、好ましくはrshCD6、若しくはその誘導体、若しくはそのアイソフォームと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)の単回用量を、好ましくはi.v.で投与する。
【0082】
或いは、本発明のCD6産物の単回用量を、上述するように、それを必要とする対象に投与するだけでなく、2回以上の用量、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回又はそれ以上の用量を、それを必要とする対象に投与してもよい。当業者に理解されるように、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回又はそれ以上の用量を、イミペネム(好ましくはシラスタチンとともに)の投与の前、投与の間又は投与の後のいずれかで投与してもよい。さらに、CD6産物は、複数回の用量で投与しなくてもよく、連続灌流(好ましくは、i.v.で)として、イミペネム(好ましくはシラスタチンとともに)の投与の前、投与の間又は投与の後のいずれかで投与してもよい。
【0083】
当然のことながら、それを必要とする対象は、本発明の組成物、医薬組成物及び/又はキットオブパーツの構成成分が、その変形形態のいずれかにおいて、投与される場合に、他の抗生物質等の他の薬物の処置下にあってもよい。
【0084】
本発明はまた、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法における使用のためのCD6産物、又はその誘導体であって、該方法は、ヒトを含む哺乳類に、該CD6産物、又はその誘導体及びイミペネムを、同時に、順次的に又は別々に投与することを含む、CD6産物、又はその誘導体を提供する。上記方法は、シラスタチンの投与を更に含むことが好ましい。
【0085】
さらに本発明は、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法における使用のためのイミペネムであって、該方法は、ヒトを含む哺乳類に、イミペネム及びCD6産物、又はその誘導体を、同時に、順次的に又は別々に投与することを含む、使用のためのイミペネムを、好ましくはシラスタチンとともに提供する。上記方法は、シラスタチンの投与を更に含むことが好ましい。
【0086】
したがって、治療上有効量のCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム(又はCD6産物、好ましくはrshCD6、若しくはその誘導体、若しくはそのアイソフォームと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)及びイミペネム(又はイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)(上述するように、好ましくはシラスタチンとともに)を、それを必要とする対象(ヒトを含む哺乳類)に、順次的に又は別々に投与してもよい。これは、特に対象がすでにイミペネム(好ましくはシラスタチンとともに)による抗生物質処置下にある場合に当てはまり、その後に、治療上有効量のCD6産物、又はその誘導体を対象に投与する。
【0087】
好ましくは、治療上有効量のCD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォーム(又はCD6産物、好ましくはrshCD6、若しくはその誘導体、若しくはそのアイソフォームと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)及びイミペネム(又はイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)(上述するように、好ましくはシラスタチンとともに)を、それらを必要とする対象(ヒトを含む哺乳類)に、同時に投与してもよい。例えば、感染の臨床症状を伴う対象は、抗生物質による処置を受けてもよい。感染が寛解しない場合、臨床医は、上述するように本発明の組成物、医薬組成物及び/又はキットオブパーツの構成成分を投与してもよい。
【0088】
好ましい実施形態において、本発明のCD6産物、又はその誘導体、又はアイソフォームは、それらを必要とする対象に、遺伝子療法により投与される。例えば、血漿中の持続性CD6レベルは、アデノウイルス媒介性発現(例えば、肝臓特異的なAAV媒介性の発現)により達成され得る。これは、小児科又は成人の免疫不全対象(患者)等の免疫不全対象(患者)に特に適している。これらの対象(患者)はすでに、CD6産物、又はその誘導体、又はそのアイソフォームで処置されている。上述するように、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の臨床所見が見られたら、イミペネム(又はイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)(上述するように、好ましくはシラスタチンとともに)を、対象(患者)に投与する。
【0089】
「治療上有効量」は、いわゆる障害又は状態を処置する際に有効な化合物の量を意味する。
【0090】
本明細書中で使用する場合、「約」という用語は、表示した値±その値の1%を意味するか、又は「約」という用語は、表示した値±その値の2%を意味するか、又は「約」という用語は、表示した値±その値の5%を意味するか、又は「約」という用語は、表示した値±その値の10%を意味するか、又は「約」という用語は、表示した値±その値の20%を意味するか、又は「約」という用語は、表示した値±その値の30%を意味し、好ましくは、「約」という用語は、正確に表示した値(±0%)を意味する。
【0091】
「処置」又は「療法」という用語は、疾患を処置する予防法及び治癒法の両方を包含する。というのは、ともに、健康の維持又は回復に関するためである。疼痛、不快感又は不能の原因に関わらず、適切な作用物質の投与によるその緩和は、本出願において療法又は治療的使用と解釈されるべきである。
【0092】
したがって、本発明の組成物、医薬組成物及び/又はキットオブパーツは、治療的処置(疾患の臨床所見後)及び/又は予防的処置(疾患の臨床所見前)の方法において使用され得る。
【0093】
特許請求の範囲の記載中で、「を含む」という語句及びその変形は、他の技術的特徴、添加剤、構成成分又は工程を排除すると意図されない。さらに、「を含む」という用語はまた、「からなる」という用語を包含し得る。
【0094】
別記しない限り、本明細書中で使用する技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載するものに類似するか、又はそれらと同等の方法及び材料を、本発明の実施に使用することができる。本発明の付加的な目的、利点及び特徴が本明細書を検討することで当業者に明らかとなるか、又は本発明の実施によって理解され得る。以下の実施例及び図面は実例として提示され、本発明を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0095】
材料及び方法
組換えタンパク質の発現、精製及びビオチン化
精製rshCD6及びrshCD5タンパク質の産生(10%グリセロールを有するPBS中、pH7.4)は、Selexis SUREtechnology Platform(商標)(スイス、ジュネーブ)からのSURE CHO−M細胞株(商標)クローンを使用すること、及び無血清上清をPX'Therapeutics(フランス、グルノーブル)で開発されたサイズ排除クロマトグラフィープロトコルに付すことによって実行した。
【0096】
盲腸結紮穿孔(CLP)手順
動物手順は全て、バルセロナ大学の動物実験倫理委員会によって承認された。CLP誘導性敗血症性ショックを、これまでに報告された方法に従って、8週齢〜10週齢のC57BL/6J雄マウス(20g〜25g;Charles River)において誘導した(Rittirsch D, et al., 2009. Immunodesign of experimental sepsis by cecal ligation and puncture. Nat Protoc 4:31-36)。CLPモデルの重篤性は、盲腸の75%を結紮することによって高い死亡率(最初の48時間〜72時間で死亡率90%以上を意味する)を達成するように調節した。マウスを100mg/kgのケタミン(Imalgene 1000、Merial)及び10mg/kgのキシラジン(Rompun、Bayer)で麻酔し、続いて、腹腔内に(i.p.)生理食塩水血清1mLを用いて蘇生した。疼痛の作用を軽減するために、0.05mg/kg/12時間のブプレノルフィンを皮下投与した。必要であれば、イミペネム/シラスタチン(33mg/kg/8時間、Actavis、アイスランド)、エリスロマイシン(2.75μg/kg/8時間)、メロペネム(17mg/kg/8時間)及び/又はrshCD6(0.32mg/kg〜2.5mg/kg)の単回用量をi.p.又はi.v.で投与した。最終的な実験結果は、自然死亡率の観察であり、それは、時間に対する生存動物のパーセントとして表された。毎日の体重損失のモニタリング(通常、CLP後の最初の48時間で、10%〜15%以下であった)により、臨床的敗血症を受けない動物の排除が可能となった。
【0097】
細菌負荷の決定
CLPの4時間後に顔面静脈穿刺により、生きているマウスから血液試料を採取した。腹膜、脾臓及び腎臓試料は、CLPの20時間後に、安楽死させたマウスから入手した。腹膜灌流に関しては、安楽死させたマウスに、冷PBS 3mLをi.p.注入した。腹部を5分間、穏やかにもんだ後、脂肪組織による詰まりを回避して、かつ内臓に損傷を与えないように注意しながら、腹水を収集した。血液汚染された腹膜試料を廃棄した。収集した腹水を遠心分離して(3500rpm、4℃で10分)、ペレットをPBS 200μL中に再懸濁させた。冷PBS 3mL中で40μmのセルストレーナーに通してシリンジプランジャーで臓器を押すことによって、脾臓(100mg)及び腎臓(250mg)の均質化を実施した。得られたホモジネートを遠心分離して(3500rpm、4℃で10分)、ペレットをPBS 750μL中に再懸濁させた。37℃で一晩の5%ヒツジ血液(Becton Dikinson、英国)を用いた寒天上でのプレーティング用に、血液、腹膜灌流、並びに脾臓及び腎臓ホモジネートの段階希釈物を、滅菌PBS中に調製した。生存細菌数は、1mL又は1mg当たりのコロニー形成単位(cfu)で表した。
【0098】
rshCD6及びサイトカイン血漿レベルのELISA測定
それぞれ、捕捉抗血清及び検出抗血清として、非標識(161.8)抗CD6モノクローナル抗体及びビオチン標識(SPV−L14.2)抗CD6モノクローナル抗体(それぞれ、2μg/mL)を使用して、rshCD6の血漿レベルを、サンドイッチELISAによって決定した。精製rshCD6の段階希釈物を標準物質として使用した。希釈血漿試料又は希釈していない血漿試料を、市販のELISAキットによって、製造業者の説明書に従って、IL−6(1:70;マウスIL−6 ELISAセット、BD Bioscience−555240)、TNF−α(1:10;マウスTNF−α ELISAセット、BD Bioscience−558534)、IL−10(ニート;マウスIL−10 ELISAセット、BD Bioscience−555252)、及びIL−1β(ニート;マウスIL−1β ELISAセット、BD Bioscience−559603)レベルをモニタリングするのに使用した。プレートをホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Roche Diagnostics)及びTMB基質試薬セット(BD OptEIA、BD Biosciences)で発色させて、450nmでの光学密度(OD450nm)の更なる測定を行った。
【0099】
組換えAAVベクター構築並びにウイルス産生及び精製
アルブミンエンハンサー及びヒトα−1−アンチトリプシンプロモーター(EalbAAT)によって形成されるキメラ肝臓特異的なプロモーターの制御下でマウス可溶性CD6(msCD6)又はルシフェラーゼタンパク質を発現する組換えAAV8ベクターを構築した(Vanrell L, et al., 2011. Development of a liver-specific Tet-on inducible system for AAV vectors and its application in the treatment of liver cancer. Mol Ther 19:1245-1253)。msCD6由来のアミノ酸Gly25〜Thr398とインフレームで融合された免疫グロブリンκ軽鎖可変領域由来のシグナルペプチドをコードするcDNA(Whitney G, et al., 1995. Cloning and characterization of murine CD6. Mol Immunol 32:89-92)を、AAV2ゲノムへSal I−Not Iとしてクローニングして、pAAV−EalbAAT−rmsCD6を得た。AAV−rmsCD6ウイルス産生に関して、pAAV−EalbAAT−rmsCD6(20μg)及びpDP8.ape(55μg;PlasmidFactory GmbH & Co. KG、ドイツ、ビーレフェルト)プラスミドの混合物を、線状ポリエチレンイミン(PEI、分子量25kDa;Polysciences、ペンシルバニア州、ウォリントン)を使用してセミコンフルエントな293T細胞を播種した15cmのプレートにトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後に、細胞を収集して、3回の細胞凍結融解によってウイルスを放出させた。これまでに記載された方法(Zolotukhin S, et al., 1999. Recombinant adeno-associated virus purification using novel methods improves infectious titer and yield. Gene Ther 6:973-985)に従って、粗製溶解物をベンゾナーゼ(50U/mL)で、37℃にて1時間処置して、イオジキサノール勾配を使用することによって精製するまで、−80℃で保持した。精製したウイルスバッチを、クロスフロー濾過によって濃縮した後、濾過して(0.22μm)、−80℃で保管した。ヒトα−1−アンチトリプシンプロモーターに特異的なプライマー(AAT−フォワード(Fw):5’−CCCTGTTTGCTCCTCCGATAA−3’及びAAT−リバース(Rv):5’−GTCCGTATTTAAGCAGTGGATCCA−3’)を使用して、リアルタイム定量的PCRによって、ウイルス力価(1mL当たりのゲノムのコピー数に関して)を決定した。AAV生体内分布研究に関して、マウスに、1×1011個のウイルス粒子/マウスの単回i.v.用量(最終容量200μL)を付与して、msCD6血漿レベルを、種々の時点でELISA(DuosetマウスCD6、R&D Systems)によってモニタリングした。
【0100】
統計解析
Prism 5.00コンピュータープログラム(GraphPad Software Inc、カリフォルニア州、サンディエゴ)を使用して、統計解析を実施した。生存率データは、カプラン・マイヤーグラフで表し、ログランクχ2検定によって解析した。統計学的有意差(P<0.01)を、両側ノンパラメトリックマン・ホイットニー検定によって決定した。
【0101】
結果
実施例1.多微生物敗血症の致死モデルにおけるヒト及びマウス可溶性スカベンジャー様CD6リンパ球受容体の防御効果
CLP誘導性敗血症性ショックにおけるrshCD6のi.p.注入の予防効果
rshCD6の、G+(LTA、PGN)及びG−(LPS)細菌由来の病原因子を標的とする報告されている能力を考慮して(Sarrias M-R, et al., 2007. CD6 binds to pathogen-associated molecular patterns and protects from LPS-induced septic shock. Proc Natl Acad Sci U S A 104:11724-1197、Florensa M, et al., 2014. Targeting of key pathogenic factors from gram-positive bacteria by the soluble ectodomain of the scavenger-like lymphocyte receptor CD6. J Infect Dis 209:1077-1086)、腹腔内起源、即ちCLPの多微生物敗血症の予防及び/又は治療に関するその潜在的使用を試験した。単一細菌誘導性腹膜炎のマウスモデルで得られたこれまでの結果に基づいて(Florensa M, et al., 2014. Targeting of key pathogenic factors from gram-positive bacteria by the soluble ectodomain of the scavenger-like lymphocyte receptor CD6. J Infect Dis 209:1077-1086)、まず、C57BL/6マウスに、rshCD6(1.25mg/kg)の単回用量を、CLP誘導の1時間前に(−1時間)i.p.で注入した。図1Aに示すように、生理食塩水で処置した群(6.52%、n=18)又はrshCD5で処置したマウス(11.11%、n=9)と比較して、rshCD6で処置したマウス(47.06%、n=15)に関して、生存率は有意に増加した(P=0.0067)。マウス生存率に対するこれらの予防効果は、用量依存的であり、0.625mg/kgを超える用量は、統計学的に有意な結果を付与し、2.5mg/kgで最大の有効性に達した(図1B)。また、rshCD6の予防的注入は、生理食塩水で処置した群と比較して、より高レベルの抗炎症性サイトカインIL−10とともに、炎症促進性サイトカインIL−1β、IL−6及びTNF−αの血漿レベルを有意に低下させた(図1C)。同様に、血液、脾臓及び腎臓試料の細菌負荷もまた、生理食塩水で処置した群と比較して、rshCD6の予防的注入によって低下し(図1D)、それぞれ、4時間及び20時間で、血液及び腎臓に関して統計学的有意性に達した。まとめると、これらの結果により、rshCD6の予防的注入が、CLP誘導性敗血症性ショック後のマウス生存率に対して特異的かつ用量依存的な効果を有することが示され、また全身性炎症及び細菌負荷パラメーターに関して有意な低減を示す。
【0102】
CLP誘導性敗血症性ショックにおけるrshCD6のi.p.注入の治療効果
rshCD6注入の推定治療効果を更に研究するために、タイムコース実験を実施した。図2Aに示すように、CLP前及び後の種々の時間でのi.p.によるrshCD6(1.25mg/kg)の単独注入により、生理食塩水で処置した群(6.52%、n=46)と比較して、CLP後の+1時間(29.03%、n=31)で投与した場合には、マウス生存率に対して統計学的に有意な効果が示された(P=0.012)が、CLP後の+3時間(14.28%、n=14)又は+6時間(17.65%、n=17)では示されなかった。しかしながら、+1時間でrshCD6を注入することによって達成される生存率は、CLP前の−1時間で得られたものよりも低く、CLP後の+1時間、+3時間及び+6時間での反復投薬によって改善されなかった(26.32%、n=19)が、後者は依然として、生理食塩水で処置した群と比較して、統計学的有意性に達した(P=0.0016)(図2B)。CLP後の4時間及び20時間でのサイトカイン血漿レベルのモニタリングにより、CLP後の+1時間にi.p.によりrshCD6で処置したマウスは、生理食塩水で処置した群と比較して、より低い炎症促進性サイトカインレベルを示し、IL−1β及びIL−6に関しては統計学的有意性に達したが、TNF−αに関しては到達せず、抗炎症性サイトカインIL−10に関して差が観察されなかった(図2C)。同様に、細菌負荷のモニタリングにより、CLP後の+1時間にrshCD6で処置したマウスの血液、脾臓及び腎臓由来のより低いcfuが示され、cfuは、生理食塩水で処置した群に関して、統計学的有意性に到達しなかった(図2D)。結論として、これらの結果は、i.p.経路でのrshCD6注入の治療効果は、CLP誘導後の早期のみで(+1時間)達成されるが、後期(+3時間又は+6時間)の時点では、反復投薬として投与された場合でさえも、達成されないことを示す。
【0103】
CLP誘導性敗血症性ショックにおけるrshCD6のi.v.注入の治療効果
i.p.経路は、化合物を動物に全身投与するのに広く使用されている(Lukas G, et al., 1971. The route of absorption of intraperitoneally administered compounds. J Pharmacol Exp Ther 178:562-4)が、ヒト臨床目的で選択される経路は、全身薬物バイオアベイラビリティに影響を与えることができるi.v.経路である。したがって、rshCD6血漿レベルは、単回用量(1.25mg/kg)をi.p.又はi.v.のいずれかでC57BL/6マウスに投与した場合に異なった。図3Aに示すように、最大rshCD6レベルは、i.p.注入後の+3時間で達成されたが、+6時間までにはほぼ基礎レベルにまで減少した。対比して、i.v.注入は、+1時間〜+3時間で最大かつ持続性血漿レベルに達し、続いてそれは、+6時間までにはほぼ基礎レベルに低下した。興味深いことに、i.v.で達成される最大レベルは、i.p.で得られる最大レベルよりも高く、したがって、i.v.経路に関して、より高くかつより持続性の全身バイオアベイラビリティが支持された。
【0104】
これらの結果を鑑みて、CLP誘導性マウス生存率に対するrshCD6のi.v.注入の治療有効性を研究するタイムコース実験を実施した。図3Bに示すように、マウス生存率は、生理食塩水で処置した群と比較して、+1時間(30%、n=20、P=0.02)での単回用量のi.v. rshCD6(1.25mg/kg)によって有意に改善されたが、CLP後の+3時間(20%、n=10;P=0.0405)及び+6時間(40%、n=5;P=0.02)でも有意に改善された。+1時間、+3時間及び+6時間でのrshCD6処置群間で統計学的有意差は見られなかったが、結果により、i.v.経路が、経時的にrshCD6の治療効果を延ばすことが示される。
【0105】
CLP誘導性敗血症性ショックにおけるマウス可溶性CD6の肝臓特異的なAAV媒介性の発現の予防効果
可溶性CD6の高くかつ持続性の循環レベルを達成するために、組換えAAV8を操作して、肝臓特異的なプロモーターの転写制御下でマウスsCD6型(AAV−rmsCD6)を発現させた。ヒトsCD6を使用せずに、mscCD6を使用した論理的根拠は、後者が、マウスにとって免疫原性が低いこと、またその長期発現及び機能が、新たに出現する中和抗体によって妨害されないことであった。C57BL/6マウスにAAV−rsmCD6ウイルスを形質導入することにより、10日目から血漿中に検出可能なrsmCD6が生じ、15日目〜20日目に最大レベルに達した(図4A)。この発現系は、3ヵ月以上の期間、5μg/mL〜15μg/mLの範囲のrmsCD6の持続性発現レベルを可能にした。これらの結果に従って、AAV−rmsCD6又は対照AAV−Lucの1×1011個のウイルス粒子による形質導入の2週後に、マウスをCLP誘導性敗血症性ショックに付して、それらの生存率を経時的にモニタリングした。図4Bに示すように、AAV−rmsCD6で処置したマウスは、AAV−Lucで処置した対照マウス(7.14%、n=13)と比較して、統計学的に有意に高い生存率(42.85%、n=14;P=0.0145)を示した。この効果は、炎症促進性サイトカイン(TNF−α、IL−1β及びIL−6)の血清レベルの有意な低減及びIL−10の血清レベルの増加を伴った(図4C)。同様に、血液、腹膜、脾臓及び腎臓由来の細菌負荷もまた、対照(AAV−Luc)と比較して、AAV−rmsCD6群で低減したが、差は、腹膜及び脾臓においてのみ統計学的有意性に達した(図4D)。
【0106】
実施例2.CLP誘導性敗血症の治療及び予防におけるCD6産物と広域スペクトル抗生物質との共投与の比較効果
CLP誘導性敗血症におけるイミペネム/シラスタチン+rshCD6の効果
CLP後のマウス生存率に対する、敗血症を患う重症患者用の処置であるrshCD6及び広域スペクトル殺菌性カルバペネム系イミペネム/シラスタチンを組み合わせることの治療効果を研究した。この目的で、CLPに付したマウスに、+1時間でrshCD6(1.25mg/kg)、イミペネム/シラスタチン(33mg/kg/8時間)又はその2つの組合せをi.p.注入した。図2Eに示すように、単独で付与したrshCD6(26.4%、n=34;P=0.008)及びイミペネム/シラスタチン(19%、n=21;P=0.03)はともに、生理食塩水で処置した群と比較して、マウス生存率に対して類似の有意な効果を示した。重要なことに、rshCD6+イミペネム/シラスタチンの同時投与は、マウス生存率に対して少なくとも相加的効果を示し(37.5%、n=24)、それらは、生理食塩水で処置した群と比較した場合(P<0.0001)だけでなく、イミペネム/シラスタチンのみで処置した群と比較した場合(P=0.032)にも統計学的に有意であった。
【0107】
同様に、CLP後の+1時間でのイミペネム/シラスタチン(33mg/kg/8時間、i.p.)の治療的注入は、AAV−rsmCD6(42.85%、n=14対78.57%、n=14)及びAAV−Luc(7.14%、n=13対56.25%、n=16)処置群の両方において、マウス生存率の有意な増加を誘導した(図4B)。
【0108】
重要なことに、マウス生存率に対するCLP後の+1時間でi.p.で注入したrshCD6+イミペネム/シラスタチンの相加的効果は、同じ用量及び時点で、i.v.経路でrshCD6を投与することによって延びた。図7に示すように、イミペネム/シラスタチン(33mg/kg/8時間;i.p.)(23.5%、n=17、P=0.017)又はrshCD6(1.25mg/kg;i.v.)(33.3%、n=15;P=0.006)の個々の投与によって達成されるマウス生存率は、生理食塩水で処置した群と比較して、それらの複合投与(60%、n=15;P=0.0001)によって大いに改善された。重要なことに、イミペネム/シラスタチン単独を付与した群又はrshCD6と組み合わせた群間で観察されるマウス生存率の差もまた、統計学的に有意であった(P=0.008)。これらの効果は、2つの処置に関して異なる作用機序を示している。
【0109】
CLP誘導性敗血症におけるエリスロマイシン+rshCD6の非相加的効果
CLP誘導性敗血症性ショック後のマウス生存率に対するrshCD6及び/又はエリスロマイシン注入の治療有効性を、C57BL/6マウスで分析した。図5Aに示すように、CLP後の+0時間の時点でのi.p.によるrshCD6(1.25mg/kg、n=9)又はエリスロマイシン(2.75μg/kg/8時間、n=12)のいずれかの単独注入は、生理食塩水で処置した群(0%、n=10)と比較した場合に、マウス生存率に対して統計学的に有意な効果(それぞれ、22.2%、P=0.0065、及び16.6%、P=0.054)を示した。rshCD6及びエリスロマイシンを組み合わせて付与した場合に、同様の統計学的に有意な結果が得られた(33.3%、n=12、P=0.0034)。しかしながら、併用群を単独療法群と比較した場合には、統計学的有意差は見られなかった。
【0110】
CLP誘導後の+1時間で同じ療法を施した場合に、非常に類似した状況が観察された。図5Bに示すように、CLP後の+1時間でのi.p.によるrshCD(1.25mg/kg、n=10)又はエリスロマイシン(2.75μg/kg/8時間、n=15)のいずれかの単独注入は、生理食塩水で処置した群(0%、n=8)と比較した場合に、マウス生存率に対して統計学的に有意な効果を示した(それぞれ、20%、P=0.0071、及び13.3%、P=0.0029)。rshCD6及びエリスロマイシンを複合化合物として注入した場合に、同様の統計学的に有意な結果が得られた(20%、n=15、P=0.0094)。しかしながら、単独療法群と併用療法群との間に、有意差は見られなかった。
【0111】
CLP誘導性敗血症におけるメロペネム+rshCD6の非相加的効果
CLP誘導性敗血症性ショック後のマウス生存率に対するrshCD6及び/又はメロペネム注入の治療有効性を、C57BL/6マウスで分析した。図6Aに示すように、CLP後の+0時間の時点でのi.p.によるrshCD6(1.25mg/kg、n=16)又はメロペネム(17mg/kg/8時間、n=20)のいずれかの単独注入は、生理食塩水で処置した群(0%、n=19)と比較した場合に、マウス生存率に対して統計学的に有意な効果(それぞれ、37.5%、P<0.0001、及び15%、P=0.0006)を示した。rshCD6及びメロペネムを複合化合物として注入した場合に、同様の結果が得られた(26.6%、n=15、P=0.001)。しかしながら、単独併用群と併用療法群との間に、有意差は見られなかった。
【0112】
メロペネム+rshCD6対メロペネム p=0.15
【0113】
CLP誘導後の+1時間で同じ療法を施した場合に、非常に類似した状況が観察された。図6Bに示されるように、CLP後の+1時間でのrshCD(1.25mg/kg、i.v.、n=15)又はメロペネム(17mg/kg/8時間、i.p.、n=21)のいずれかの単独注入は、生理食塩水で処置した群(n=21)と比較した場合に、マウス生存率に対して統計学的に有意な効果を示した(それぞれ、26.7%、P=0.0011、及び14.28%、P=0.01)。rshCD6及びメロペネムを複合化合物として注入した場合に、有意な結果が得られた(P=0.0003、22.2%、n=18)。単独療法群と併用群との間に、有意差は観察されなかった。
【0114】
CLP誘導性敗血症におけるエリスロマイシン+rshCD6の非相加的効果
CLP誘導性敗血症性ショック後のマウス生存率に対するrshCD6及び/又はエリスロマイシン注入の治療有効性を、C57BL/6マウスで分析した。図5Aに示すように、CLP後の+0時間の時点でのi.p.によるrshCD6(1.25mg/kg、n=9)又はエリスロマイシン(2.75μg/kg/8時間、n=12)のいずれかの単独注入は、生理食塩水で処置した群(0%、n=10)と比較した場合に、マウス生存率に対して統計学的に有意な効果(それぞれ、22.2%、P=0.0065、及び16.6%、P=0.054)を示した。rshCD6及びエリスロマイシンを組み合わせて付与した場合に、同様の統計学的に有意な結果が得られた(33.3%、n=12、P=0.0034)。しかしながら、併用群を単独療法群と比較した場合には、統計学的有意差は見られなかった。
【0115】
CLP誘導後の+1時間で同じ療法を施した場合に、非常に類似した状況が観察された。図5Bに示すように、CLP後の+1時間でのi.p.によるrshCD6(1.25mg/kg、n=10)又はエリスロマイシン(2.75μg/kg/8時間、n=15)のいずれかの単独注入は、生理食塩水で処置した群(0%、n=8)と比較した場合に、マウス生存率に対して統計学的に有意な効果を示した(それぞれ、20%、P=0.0071、及び13.3%、P=0.0029)。rshCD6及びエリスロマイシンを複合化合物として注入した場合に、同様の統計学的に有意な結果が得られた(20%、n=15、P=0.0094)。しかしながら、単独療法群と併用療法群との間に、有意差は見られなかった。
【0116】
考察
したがって、本発明の実施例は、腹腔内起源の多微生物感染の致死モデルにおいて、スカベンジャー様リンパ球受容体CD6(sCD6)由来の可溶性エクトドメインのin vivoでの予防効果及び治療効果を示す。結果により、CLP誘導後のマウス生存率に対して、sCD6注入の時間依存的及び用量依存的効果が示され、それらは、全身性炎症反応及び細菌負荷の低減を伴う。興味深いことに、ヒト及びマウスのsCD6注入はともに、広域スペクトル殺菌性抗生物質イミペネム/シラスタチンと組み合わせた場合に、マウス生存率に対する効果の改善を示した。
【0117】
これまでの研究により、sCD6は主に、G−(LPS)及びG+(LTA及びPGN)細菌細胞壁由来の重要な病原因子への直接結合により作用し、その結果として、細菌増殖及び生存度を低減させることに加えて、それらによって誘導されるTLR2及びTLR4媒介性サイトカイン放出を妨害することが示されている(Florensa M, et al., 2014. Targeting of key pathogenic factors from gram-positive bacteria by the soluble ectodomain of the scavenger-like lymphocyte receptor CD6. J Infect Dis 209:1077-1086)。かかる広範囲の細菌結合特性により、sCD6は、CLPによって誘導されるもの場合と同様に、複雑な多微生物感染を処置するのに適した候補物となる。このモデルにおいて、常在性腸内フローラ(主に、細菌、嫌気性から通性好気性又は好気性まで)の、腹膜及び全身循環への大量の播種は、腹膜炎及び敗血症を特徴とする症状を発症し、sCD6の広域スペクトル抗菌特性を試験することが可能になる。
【0118】
それにもかかわらず、sCD6によって標的とされるPAMPは、細菌細胞壁の保存された成分であり、これらは、細菌生存に必須であり、生存度及び/又は病原性を損失することなく、容易に突然変異を行いにくい。これらの特性全てにより、sCD6は代替的/補助的な抗菌戦略に対する良好な標的となり、sCD6は、抗生物質に耐性である細菌株の場合でさえ有効である。
【0119】
結果により、sCD6注入の予防効果及び治療効果の両方の誘導が示され、またそれらが、どのようにして投与経路に影響されるかが示される。i.p.経路を使用することによって、予防モードで(CLP前の−1時間で)最良の結果が達成されるが、治療効果は、CLP後の早期(+1時間)の時点では依然として観察されたが、CLP後の後期(+3時間)の時点では観察されなかった。興味深いことに、i.v.経路の使用により、CLP後の最大+3時間又は+6時間まで、sCD6の治療効果が延びた。
【0120】
イミペネム/シラスタチンをsCD6と共投与する(i.p.又はi.v.で)と、少なくとも明確な相加的治療効果が明らかであった。
【0121】
予想外にも、sCD6の少なくとも相加的治療効果は、同じ(メロペネム)系又は異なる(エリスロマイシン)系由来の他の広域スペクトル抗生物質と組み合わせた場合には観察されなかった。このことは、観察された少なくとも相加的効果が、イミペネムに特異的であり、系統的に他の抗生物質に拡張させることができないことを示す。
【0122】
生涯にわたる広域スペクトル抗生物質もまた、先天性又は後天性免疫不全等の幾つかの臨床的背景における感染の予防又は治療に適した選択である。しかしながら、臨床医は、予防的な抗生物質の使用法の利益と、コンプライアンス、有害反応及び抗生物質耐性の発現等の問題とのバランスを取らなくてはならない。これらの状況を鑑みて、肝臓特異的なAAV媒介性の発現により持続性sCD6血漿レベルを誘導することによって達成される予防効果は、臨床的介入として検討され得る。
【0123】
ヒトタンパク質に関連した免疫原性関連問題を最低限に抑えるために、マウスsCD6をコードするAAVウイルスを使用した。これにより、ヒト及びマウスのsCD6の両方が進化により保存された類似の抗菌特性を共有することを実証することが可能になった。
【0124】
結論として、本発明の結果は、sCD6ターゲティングが、イミペネム抗生物質療法に対する実現可能な補助的戦略であることを示す。
【0125】
本発明の項目−本発明は、下記項目を提供する:
【0126】
1.CD6産物、又はその誘導体と、イミペネムとを含む組成物。
【0127】
2.薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とともに、項目1に記載の組成物を含む医薬組成物。
【0128】
3.CD6産物、又はその誘導体と、イミペネムとを含むキットオブパーツ。
【0129】
4.上記CD6産物は、組換え可溶性CD6である、項目1若しくは2に記載の組成物、又は項目3に記載のキットオブパーツ。
【0130】
5.上記CD6産物は、ヒトCD6産物である、項目1〜項目2及び項目4のいずれか1つに記載の組成物、又は項目3若しくは項目4に記載のキットオブパーツ。
【0131】
6.上記CD6産物は、配列番号1のアミノ酸配列1を含む、項目1〜2及び項目4〜5のいずれか一項に記載の組成物、又は項目3〜5のいずれか1つに記載のキットオブパーツ。
【0132】
7.上記組成物及び/又は上記キットオブパーツは、シラスタチンを更に含む、項目1〜2及び項目4〜6のいずれか一項に記載の組成物、又は項目3〜6のいずれか一項に記載のキットオブパーツ。
【0133】
8.薬剤としての使用のための項目1〜2及び項目4〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【0134】
9.感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法における使用のための項目1〜2及び項目4〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【0135】
10.薬剤としての同時使用、順次的な使用又は別々の使用のための項目3〜7のいずれか一項に記載のキットオブパーツ。
【0136】
11.感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法における同時使用、順次的な使用又は別々の使用のための項目3〜7のいずれか一項に記載のキットオブパーツ。
【0137】
12.上記感染症は、微生物感染である、項目8若しくは9に記載の使用のための組成物、又は項目10若しくは11に記載の使用のためのキットオブパーツ。
【0138】
13.上記微生物感染は、細菌感染、真菌感染、ウイルス感染、寄生虫感染、及びそれらの組合せからなる群から選択される、項目12に記載の使用のための組成物又はキットオブパーツ。
【0139】
14.上記感染症は、菌血症である、項目9に記載の使用のための組成物、又は項目11に記載の使用のためのキットオブパーツ。
【0140】
15.上記菌血症は、細菌血症、真菌血症、ウイルス血症、寄生虫血症及びそれらの組合せからなる群から選択される、項目14に記載の使用のための組成物又はキットオブパーツ。
【0141】
16.上記感染病原体は、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫、及びそれらの組合せからなる群から選択される、項目9に記載の使用のための組成物、又は項目11に記載の使用のためのキットオブパーツ。
【0142】
17.上記炎症状態は、全身性炎症反応症候群である、項目9に記載の使用のための組成物、又は項目11に記載の使用のためのキットオブパーツ。
【0143】
18.上記炎症状態は、敗血症である、項目9に記載の使用のための組成物、又は項目11に記載の使用のためのキットオブパーツ。
【0144】
19.上記敗血症は、多微生物敗血症である、項目18に記載の使用のための組成物又はキットオブパーツ。
【0145】
20.上記敗血症は、重症敗血症である、項目18に記載の使用のための組成物又はキットオブパーツ。
【0146】
21.上記重症敗血症は、敗血症性ショックである、項目20に記載の使用のための組成物又はキットオブパーツ。
【0147】
22.上記敗血症性ショックは、エンドトキシン誘導性敗血症性ショックである、項目21に記載の使用のための組成物又はキットオブパーツ。
【0148】
23.上記組成物は、ヒトを含む哺乳類に、静脈内に及び/又は腹腔内に投与される、項目9〜項目22のいずれか1つに記載の使用のための組成物又はキットオブパーツ。
【0149】
24.感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法における使用のためのCD6産物、又はその誘導体であって、該方法は、ヒトを含む哺乳類に、該CD6産物、又はその誘導体及びイミペネムを、同時に、順次的に又は別々に投与することを含む、CD6産物、又はその誘導体。
【0150】
25.上記CD6産物は、組換え可溶性CD6である、項目24に記載の使用のためのCD6産物、又はその誘導体。
【0151】
26.上記CD6産物は、ヒトCD6産物である、項目24に記載の使用のためのCD6産物、又はその誘導体。
【0152】
27.上記CD6産物は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、項目24に記載の使用のためのCD6産物、又はその誘導体。
【0153】
28.上記方法は、シラスタチンの投与を更に含む、項目24に記載の使用のためのCD6産物、又はその誘導体。
【0154】
29.感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法における使用のためのイミペネムであって、該方法は、ヒトを含む哺乳類に、イミペネム及びCD6産物、又はその誘導体を、同時に、順次的に又は別々に投与することを含む、使用のためのイミペネム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2019535834000001.app
【国際調査報告】