特表2019-535981(P2019-535981A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-535981(P2019-535981A)
(43)【公表日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】水素燃料補給システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20191115BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20191115BHJP
【FI】
   F17C5/06
   H01M8/04 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-527934(P2019-527934)
(86)(22)【出願日】2016年12月6日
(85)【翻訳文提出日】2019年5月23日
(86)【国際出願番号】JP2016005074
(87)【国際公開番号】WO2018104983
(87)【国際公開日】20180614
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】000109428
【氏名又は名称】日本エア・リキード株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エチエンヌ・ヴェルレン
(72)【発明者】
【氏名】チエリー・オット
【テーマコード(参考)】
3E172
5H127
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BA04
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA13
3E172EA23
3E172EA48
3E172KA03
3E172KA23
5H127AB04
5H127BA02
5H127BA22
5H127FF20
(57)【要約】
本発明は、FCVがHRSに入るとH予冷熱交換器を十分に速く冷却することができ、その結果、燃料補給を開始する前に顧客の待ち時間が全くないかまたはごくわずかしかない、水素燃料補給システムを提供することである。水素燃料補給システム(100)は、極低温流体を貯蔵する極低温流体タンク(110)と、極低温流体タンク(110)から供給される低温流体および/または極低温流体でHを冷却する熱交換器(121)を含む、車両にHを供給する分配器(120)と、極低温流体タンクから熱交換器に低温流体および/または極低温流体を送る入口ラインと、熱交換器から送られた極低温流体を集める出口ラインと、入口ラインに設けられる注入弁(131)とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温流体を貯蔵する極低温流体タンクと;
前記極低温流体タンクから供給される低温流体および/または極低温流体でHを冷却する熱交換器を含む、車両にHを供給する分配器と;
前記極低温流体タンクから前記熱交換器に前記低温流体および/または極低温流体を送る入口ラインと;
前記熱交換器から送られる前記極低温流体を集める出口ラインと;
前記入口ラインに設けられた注入弁と
を備えた水素燃料補給システムであって:
前記水素燃料補給システムは、前記システムのアイドル時間の一部の間に、前記極低温流体タンクから供給される前記低温流体および/または極低温流体でHを冷却する前記熱交換器が、FCVの燃料補給中のその公称温度より7℃超高く昇温するように、および、再充填される車両が到着すると前記熱交換器が冷却されるように操作される、
水素燃料補給システム。
【請求項2】
を燃料補給される車両が水素燃料補給ステーション(HRS)に入りつつあることを検出する車両検出システムと;
前記車両検出システムの検出結果と特定の制御ストラテジとに基づいて前記注入弁の開放を制御する制御装置と
をさらに備える、請求項1に記載の水素燃料補給システム。
【請求項3】
前記熱交換器の温度を測定する温度測定ユニットと;
前記温度測定ユニットによって測定された温度が所定の温度範囲内にまたは目標温度の近くに維持されるように、前記注入弁の開口率を調整する弁制御ユニットと;
をさらに備える、請求項1または2に記載の水素燃料補給システム。
【請求項4】
前記温度測定ユニットによって測定された前記熱交換器の温度が所定の温度範囲内にあるかどうか、または前記目標温度に十分に近いかどうかを判定する温度比較ユニットと;
前記測定された温度が前記所定の温度範囲内にあるか、または前記目標温度に十分に近いと前記温度比較ユニットが判定した場合、充填準備完了信号を出力する出力ユニットと
をさらに備える、請求項3に記載の水素燃料補給システム。
【請求項5】
前記制御装置が、車両へのH燃料補給の流れを制御する燃料補給制御ユニットをさらに備え、前記出力ユニットから充填準備完了信号を受信することは、車両へのH燃料補給の流れを許可するために前記燃料補給制御ユニットによって使用される1つの条件である、請求項4に記載の水素燃料補給システム。
【請求項6】
車両へのH燃料補給方法であって:
を燃料補給される車両が水素燃料補給ステーションに入りつつあることを検出すること;
入口ラインに設けられた注入弁を開放すること;
極低温流体タンクから低温流体および/または極低温流体を熱交換器に供給すること;
低温流体および/または極低温流体によって前記熱交換器を冷却すること;および
前記熱交換器の温度を所定の温度範囲内または目標温度近くに維持しながら、前記熱交換器によって冷却された低温Hを前記車両に燃料補給することを含み、
前記方法は、アイドル時間の一部の間に、前記極低温流体タンクから供給される前記低温流体および/または極低温流体でHを冷却する前記熱交換器がFCV燃料補給の間のその公称温度よりも7℃超高く昇温するように、および再充填される車両が到着すると前記熱交換器が冷却されるように行われる方法。
【請求項7】
前記熱交換器の温度(t1)を測定すること;
前記測定された温度(t1)が所定の温度範囲内にあるかどうか、または前記目標温度に十分に近いかどうかを判定すること;
前記測定された温度(t1)が前記所定の温度範囲内にあるか、または前記目標温度に十分に近いと判定した場合、充填準備完了信号を出力すること;および
制御弁の対応するインターロック条件を解除すること、および/またはH燃料補給シーケンスの移行条件のステータスに影響を及ぼすこと
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素燃料補給システム、例えば水素燃料補給ステーション(HRS)に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料補給手順の現在の標準によれば、70MPaの公称水素燃料補給圧力で燃料電池自動車(FCV)タンクの急速な燃料補給を達成するために、水素を分配器出口で−33℃未満に予冷し、断熱圧縮によるFCVタンク内の過熱を回避する必要がある。
【0003】
今日、これは、1つの熱交換器、典型的には小型拡散接合熱交換器を分配器520内に設置し、それに熱伝達流体、典型的にはブラインを供給することによって行われる(図3、従来技術参照)。熱伝達流体は、冷媒を用いる従来型のチラー510と分配器520との間でポンプによって循環される。
【0004】
入って来た車両にすぐに充填できる状態にHRSを保つために、熱交換器は常に約−40℃に保たれる。システム(熱伝達流体ループ、熱交換器、チラー510)における冷却損失のために、特に夏の間、電力の消費量は高い。1つのHRSのFCVローディングが典型的に非常に不規則であることを考えると、これはFCVが来ない期間中、非常に非効率的である。しかしながら、チラーを停止してシステムを周囲温度に戻すことはできない。それというのもシステム全体の冷却時間を来客の待ち時間として受け入れることはできないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以前はFCVの公称H燃料補給圧力は35MPaに制限されていた。この状況においては、燃料補給時の断熱圧縮によって引き起こされるFCVタンクの過熱はほとんどなく、H予冷は不要である。FCVの自律性を高めるために、公称H燃料補給圧力は70MPaに引き上げられた。この新しい状況において、および燃料補給手順の現在の標準に従って急速なFCV燃料補給を達成するために、FCVタンク上流でのH予冷が必要である。それというのも、そうしない場合、FCVタンクの過熱は、FCVタンクを製造するために現在使用されている複合材料(ポリエチレンなど)の能力を超え得るからである。予冷中、最も低い分配器燃料供給温度カテゴリ(最速の燃料補給に対応する)では、分配器の出口の温度が−33℃〜−40℃の間になるようにHを冷却することが必要である。
【0006】
70MPaのFCV燃料補給の目標は、5kgのH燃料供給量について約3分以内に、15℃で70MPaに相当するFCVタンク内の公称H密度(すなわち40.2g/l)に達することである。予冷なしでは、FCVタンクの名目上の充填を十分な速さで達成することはできないだろう。
【0007】
図3の従来技術のシステムでは、点線内のすべての要素は低温でなければならないので、起動時にシステムを冷却するのに必要な時間は長い。また、システムの冷却損失のために、H燃料補給のために低温が必要とされなくても、HRSの営業時間中に永続的な電力消費が観察される。それにより、長期間FCV燃料補給が行われなくても、電気代は高くつく。
【0008】
これは効率的ではなく、HRSのアイドル時間中にチラーを停止させることが可能であれば、節約を達成できるだろう。現在の状況では、これは不可能である。なぜなら、図3の点線内の全ての要素を冷却するのに必要な時間が顧客の待ち時間として受け入れられない可能性があるからである。実際のところ、H予冷熱交換器の金属塊を冷却することは、燃料補給を開始するために必要な予備条件である。また、記載された他の従来技術国際公開第2016/067780号パンフレットも知られているが、これは上記の問題を解決することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、FCVがHRSに入るとH予冷熱交換器を十分に速く冷却することができ、その結果、燃料補給を開始する前に顧客の待ち時間が全くないかまたはごくわずかしかない、水素燃料補給システムを提供することである。
【0010】
第1の発明として、水素燃料補給システムは:
極低温流体を貯蔵する極低温流体タンク;
極低温流体タンクから供給される極低温流体でHを冷却する熱交換器を含む、車両にHを供給する分配器;
極低温流体タンクから熱交換器に極低温流体を送る入口ライン;
熱交換器から極低温流体を集める出口ライン;
入口ラインに設けられる注入弁
を含む。
【0011】
第1の発明において、水素燃料補給システムは、システムのアイドル時間の一部の間に、極低温流体タンクから供給される低温流体および/または極低温流体でHを冷却する熱交換器が、FCVの燃料補給中のその公称温度より7℃超高く昇温するように、および、再充填される車両の到着時にそれが冷却されるように動作され得る。
【0012】
第1の発明において、システムはさらに以下のものを含み得る:
を燃料補給される車両がHRSに入りつつあることを検出する車両検出システム;および
車両検出システムの検出結果と特定の制御ストラテジとに基づいて注入弁の開放を制御する制御装置。
【0013】
第1の発明において、特定の制御ストラテジは、温度制御、圧力制御、所定の固定開放値などの1つまたは複数の制御タイプを含み得る。
【0014】
第1の発明において、制御装置は、システムのアイドル時間の一部の間に、極低温流体タンクから供給される低温流体および/または極低温流体でHを冷却する熱交換器が、FCVの燃料補給中のその公称温度より7℃超高く昇温するように、および、再充填される車両の到着時にそれが冷却されるように注入弁の開放を制御し得る。
【0015】
第1の発明において、注入弁の開放を制御することは、注入弁を開閉することを含み得る。
【0016】
第1の発明において、システムは、熱交換器の温度を測定する温度測定ユニットと;
温度測定ユニットによって測定された温度が所定の温度範囲内にまたは目標温度の近くに維持されるように、注入弁の開口率を調整する弁制御ユニットと;
をさらに含み得る。
【0017】
第1の発明において、制御装置は弁制御ユニットを含み得る。
【0018】
第1の発明において、システムはさらに以下のものを含み得る:
温度測定ユニットによって測定された熱交換器の温度が所定の温度範囲内であるかどうか、または目標温度に十分に近いかどうかを判定する温度比較ユニット;および
測定された温度が所定の温度範囲内にあるか、または目標温度に十分に近いと温度比較ユニットが判定した場合、充填準備完了信号を出力する出力ユニット。
【0019】
第1の発明において、制御装置は、車両へのH燃料補給の流れを制御する燃料補給制御ユニットをさらに含んでもよく;出力ユニットから充填準備完了信号を受信することは、車両へのH燃料補給の流れを許可するために燃料補給制御ユニットによって使用される1つの条件である。
【0020】
第1の発明によれば、HRSアイドル時間中に熱交換器を低温に維持することなく、HRSに入りつつある車両が検出されると熱交換器の冷却が開始される。入口ライン上に配置されている注入弁を開放することによって、極低温流体タンクからの低温流体および/または極低温流体が、熱交換器を冷却するために熱交換器に供給される。この方法では、燃料補給を開始するための条件に達するために冷却される必要がある装置は、熱交換器、および極低温流体タンクから熱交換器へのラインだけである。これは、燃料補給を開始する前に顧客の待ち時間が全くないか最小限になるように十分な速さで行うことができる。燃料補給を開始すると、H供給弁を開くことによってHが予冷された熱交換器に供給され、熱交換器の低温は低温流体および/または極低温流体の循環によって維持される。所定の温度に冷却されたHは、車両に燃料補給することができる。
【0021】
第1の発明において、制御装置は、熱交換器の急速冷却と、一旦目標温度に到達した後の温度調整とを達成するために注入弁の開放を調整し得る。
【0022】
第1の発明において、温度測定ユニット(またはプローブ)は、熱交換器金属塊平均温度を表す温度(t1)を測定し得る。弁制御ユニットは、温度測定ユニットによって測定された温度(t1)が所定の温度範囲内に維持されるか目標温度に近くにあるように注入弁の開口率を調整することができる。注入弁の開口率を調整することにより、熱交換器は所定の目標温度まで急冷され、所定の温度範囲に到達した後に、燃料補給の間のHの温度を所望の温度範囲内に維持することができる。
【0023】
動作条件に応じて、弁制御ユニットは、温度制御ユニット、圧力制御ユニット、レベル制御ユニット、または所定の固定開放値などの異なる制御ストラテジを使用し得る。
【0024】
温度制御ユニットは、例えば、測定された温度(例えばt1)に応じて注入弁開口率を調整するためにPIDアルゴリズムを使用することができる。
【0025】
第1の発明において、弁制御ユニットは、熱交換器金属塊の温度(t1)を制御するため、または出口ライン内の熱交換器の出口で極低温流体の温度を制御するために使用されてもよい。
【0026】
圧力制御ユニットは、例えば、測定された圧力に応じて注入弁開口率を調整するためにPIDアルゴリズムを使用することができる。
【0027】
レベル制御ユニットは、例えば、測定されたレベル(例えば極低温流体タンク内の極低温流体レベル)に応じて弁注入弁の開口率を調整するためにPIDアルゴリズムを使用することができる。
【0028】
例えば、弁制御ユニットは、HRSに入りつつあるFCVを検出すると、急速冷却を達成するために第1のストラテジを使用し、測定温度(t1)が所定の温度範囲に達した後、熱交換器温度(t1)または交換器の出口における極低温流体の温度(t2)を所定の温度範囲内に維持するために第2のストラテジを使用し、次いで、HをFCVに燃料補給する間に第3のストラテジを使用し、最後に燃料補給終了後に第4のストラテジを使用してもよい。
【0029】
例えば、第1の発明において、注入弁制御ユニットは、測定温度(t1)が所定の温度範囲に達するまで、HRSに進入しつつあるFCVの検出時に固定の開口率を用い、その後、測定温度(t1)を所定の温度範囲内に維持するために温度制御ユニットを用いてもよい。
【0030】
例えば、第1の発明において、弁制御ユニットは、燃料補給終了の信号を受信した後に注入弁を閉鎖してもよい。
【0031】
第1の発明において、温度測定ユニットは、熱交換器の壁部に、熱交換器内または熱交換器金属塊内の入口ラインまたは出口ラインの流路に設けることができる。あるいは、温度測定ユニットは、出口ライン内で熱交換器の出口に設けられてもよい。それというのも、熱交換器の出口における極低温流体温度は、一旦熱交換器の金属塊が冷却されるとその平均温度を表すからである。
【0032】
第1の発明において、熱交換器の温度(t1)または熱交換器の出口における極低温流体の温度の所定の温度範囲は、例えば−45℃〜−35℃であり得、その間に目標温度がある。第1の発明において、燃料補給中の分配器出口におけるHの所望の温度範囲は、例えば、−40℃〜−33℃であり得る。
【0033】
第1の発明において、H燃料補給中、燃料補給制御ユニットは、熱交換器、分配器ホースおよび燃料補給ノズルを介して1つの高圧H源をFCVタンクに接続する分配器Hライン上のH制御弁の開口率を制御してもよい。燃料補給制御ユニットは、インターロック論理および/または移行条件を有するシーケンス論理を有し得る。
【0034】
第1の発明において、出力ユニットは、充填準備完了信号を燃料補給制御ユニットに送信してもよい。出力ユニットから充填準備完了信号を受信すると、燃料補給制御ユニットは、対応するインターロックを解除することによって、および/またはH燃料補給シーケンスの移行条件のステータスに影響を及ぼすことによって、H制御弁の開放を許可することができる。
【0035】
第1の発明において、燃料補給制御ユニットは、車両へのH燃料補給を開始するための熱交換器温度条件のステータスに関する情報を表示してもよい。車両へのH燃料補給を開始することを禁止するすべての条件および/またはインターロックが解除されると、燃料補給制御ユニットは、車両へのH燃料補給を開始することができるという情報を表示するために、および/または音響装置によって知らせるために、信号を送信してもよい。
【0036】
第1の発明において、燃料補給の終了が検出されると、燃料補給制御ユニットは、燃料補給終了信号を制御装置または弁制御ユニットに送信してもよい。
【0037】
第1の発明において、制御装置は、車両待ち行列計算ユニットを含むことができ、これは、燃料補給を待っている車両がないことを示す信号を計算するために車両検出システムからの信号を用いる。
【0038】
第1の発明において、車両待ち行列計算ユニットは、燃料補給を待っている車両がないというオペレータによる手動入力の可能性をさらに含んでもよい。
【0039】
第1の発明において、車両待ち行列計算ユニットは、燃料補給を待っている車両がないことを示す信号を計算するために燃料補給終了信号をさらに使用してもよい。
【0040】
第1の発明において、制御装置または弁制御ユニットは、燃料補給終了信号を受信した後に注入弁を閉鎖するようにさらに制御してもよい。
【0041】
第1の発明において、制御装置または弁制御ユニットは、燃料補給を待っている車両がないという信号を車両待ち行列計算ユニットから受信して初めて注入弁を閉鎖するようにさらに制御してもよい。
【0042】
第1の発明において、車両検出システムは、例えば、画像処理システムを備えたカメラ、IR検出器、地上の圧力検出器、地中の磁気ループ、またはいくつかの検出器および/または技術の組み合わせからなる。
【0043】
第2の発明として、車両へのH燃料補給方法は:
を燃料補給される車両が水素燃料補給ステーションに入りつつあることを検出すること;
入口ラインに設けられた注入弁を開放すること;
極低温流体タンクから低温流体および/または極低温流体を熱交換器に供給すること;
低温流体および/または極低温流体によって熱交換器を冷却すること;および
熱交換器の温度を所定の温度範囲内または目標温度近くに維持しながら、熱交換器によって冷却された低温Hを車両に燃料補給すること
を含む。第2の発明において、この方法は、アイドル時間の一部の間に、極低温流体タンクから供給される低温流体および/または極低温流体でHを冷却する熱交換器がFCV燃料補給の間のその公称温度よりも7℃超高く昇温するように、および再充填される車両が到着するとそれが冷却されるように行われる。
【0044】
第2の発明において、方法は、熱交換器の温度(t1)を測定すること;
測定温度(t1)が所定の温度範囲内にあるかどうか、または目標温度に十分に近いかどうかを判定すること;
測定温度(t1)が所定の温度範囲内にあるか、または目標温度に十分に近いと判定した場合、充填準備完了信号を出力すること;および
制御弁の対応するインターロック条件を解除すること、および/またはH燃料補給シーケンスの移行条件のステータスに影響を及ぼす
をさらに含み得る。
【0045】
第1および第2の発明において、「極低温流体」は、例えば液体窒素、液体二酸化炭素を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】実施形態1による水素再充填システムを示す説明的な図を示す。
図2】実施形態1による水素再充填システムを示す説明的なフローチャートを示す。
図3】水素再充填システムの従来技術を示す説明的な図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するためのものである。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で実施される各種の変形を含む。なお、以下で説明される構成のすべてが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0048】
実施形態1
図1および2を参照して、第1の実施形態の水素燃料補給システム100について説明する。水素燃料補給システム100は、液体窒素(LN)タンク110と分配器120とを備える。LNタンク110は、液体窒素(LN)を貯蔵する。
【0049】
まず、分配器120について以下で説明する。分配器120はHを車両に供給する。分配器120は、LNタンク110から供給されるLNでHを冷却する熱交換器121を含む。分配器120は、分配器ホースと、車両にHを燃料補給するための燃料補給ノズルとを含む。
【0050】
この実施形態では、温度制御ユニット151は、熱交換器金属塊の温度(t1)を測定する。温度制御ユニット151は、熱交換器121内の出口ライン132の流路において、熱交換器121の壁部の温度を測定してもよい。この実施形態では、温度制御ユニット151は、温度測定ユニットと弁制御ユニットの両方の機能を含む。
【0051】
他の実施形態では、温度制御ユニット151は、出口ライン132内の熱交換器121の出口でLNの温度を測定してもよい。
【0052】
他の実施形態では、温度制御ユニット151の代わりに、温度測定ユニットは、熱交換器121の温度(t1)を測定してもよい。温度測定ユニットは、熱交換器121内または熱交換器金属塊内の出口ライン132の流路において熱交換器121の壁に設けられてもよい。
【0053】
入口ライン130は、LNタンク110からLNを熱交換器121に送るためのラインである。出口ライン132は、熱交換器121からLNを集めるためのラインである。入口ライン130または出口ライン132は構成され、通常のパイプまたは断熱されたパイプであり得る。
【0054】
注入弁131は入口ライン130において熱交換器121の入口側に設けられているが、入口ライン130の任意の地点に位置付けられてもよい。
【0055】
車両検出システム140は、Hを燃料補給する車両がHRS(水素燃料補給ステーション)に入って来たことを検出する。車両検出システム140は、例えば、画像処理システムを備えたカメラ、IR検出器、地上の圧力検出器、地上の磁気ループ、またはいくつかの検出器および/または技術の組み合わせである。
【0056】
次に、制御装置150について以下で説明する。制御装置150は、ハードウェアとソフトウェアプログラムとの組み合わせ、ファームウェア、専用回路またはそれらの組み合わせにより構成することができる。制御装置150は、1つまたは複数の機能ユニット(それはいわゆる機能モジュールである)を含む。
【0057】
制御装置150は、車両検出システム140の検出結果と特定の制御ストラテジとに基づいて、注入弁131の開放を制御する。より具体的には、制御装置150は、以下の要素によって構成される。
【0058】
温度制御ユニット151は、温度制御ユニット151によって測定された温度(151)が所定の温度範囲内(または目標温度付近)に維持されるように、測定温度(t1)に応じて注入弁131の開口率を調整することができる。注入弁131の開口率を調整することにより、熱交換器121を所定の目標温度まで急冷し、燃料補給の間のHの温度を所定の温度範囲に到達した後に所望の温度範囲内に維持することができる。
【0059】
温度比較ユニット152は、温度制御ユニット151により測定された温度(t1)が所定の温度範囲内に維持されている(または目標温度に十分に近い)か否かを判定する。
【0060】
出力ユニット153は、温度比較ユニット152が測定温度(t1)が所定の温度範囲内である(または目標温度に十分に近い)と判定した場合に、充填準備完了信号を出力する。
【0061】
この実施形態では、熱交換器温度(t1)の所定の温度範囲は、例えば−45℃〜−35℃であり得、その間に目標温度がある。燃料補給中の分配器出口におけるHの所望の温度範囲は、例えば、−40℃〜−33℃であり得る。出力ユニット153は、燃料補給制御ユニット154に充填準備完了リリース信号を送信する。
【0062】
燃料補給制御ユニット154は、分配器120による車両へのH燃料補給の流れを制御する。H燃料補給の間、燃料補給制御ユニット154は、1つの高圧H源126と接続する分配器Hライン125上のH制御弁123の開口率を制御し、それによりH源126から熱交換器121にHを供給するようにする。
【0063】
燃料補給制御ユニット154は、インターロック論理および/または移行条件を有するシーケンス論理を有する。典型的には、H制御弁123は、インターロック論理および/またはシーケンス論理の機能によって開放されない、すなわち閉鎖される。関連するインターロックを解除することおよび/またはH燃料補給シーケンス移行条件に影響を及ぼすことによって、Hを燃料補給することができる。
【0064】
この実施形態では、燃料補給制御ユニット154は、出力ユニット153から充填準備完了信号を受信した後、H制御弁123の対応するインターロック状態を解除し、および/またはH燃料補給シーケンスの移行条件のステータスに影響を及ぼす。その後、車両へのH燃料補給を開始することを禁止する他のすべての条件および/またはインターロックが解除されると、オペレータまたは顧客による手動の命令に応じて、燃料補給制御ユニットは燃料補給を開始し、H制御弁123を開放する。
【0065】
燃料補給制御ユニット154は、車両へのH燃料補給を開始するために、熱交換器の温度条件のステータスに関する情報を表示する。車両へのH燃料補給を開始することを禁止するすべての条件および/またはインターロックが解除されると、燃料補給制御ユニット154は、車両へのH燃料補給を開始することができるという情報を表示するためにおよび/または音響装置によって知らせるために信号を送信する。
【0066】
燃料補給制御ユニット154は、燃料補給終了の信号を送信する。燃料補給終了の信号は、例えば、充填終了条件に達したことおよびH制御弁123が閉鎖されたことを示す(知らせる)ための信号である。
【0067】
この実施形態では、車両待ち行列計算ユニット155は、車両検出システム140からの検出信号を用いることによって、燃料補給を待っている車両がないことを示す信号を計算する。車両待ち行列計算ユニット155は、燃料補給を待っている車両がないというオペレータによる手動入力の可能性を含み得る。車両待ち行列計算ユニット155は、燃料補給を待っている車両がないことを示す信号を計算するために燃料補給終了信号を用いてもよい。この実施形態では、温度制御ユニット151は、車両待ち行列計算ユニット155から燃料補給を待っている車両がないという信号を受信して初めて注入弁131を閉鎖するように制御してもよい。
【0068】
図2の次のフローチャートを以下に説明する。HRSアイドル時間において、注入弁131が閉鎖され、システム100は周囲温度に戻る(ステップS11)。システム100が周囲温度に戻る代わりに別の実施形態として、制御装置150は、注入弁131の開放を以下のように制御してもよい、すなわち、システム100のアイドル時間の一部の間に、タンク110から提供されるLNでHを冷却する熱交換器121が、FCV燃料補給中のその公称温度よりも7℃超高く昇温し、燃料補給されるべき車両が到着すると冷却されるように注入弁131の開放を制御してもよい。
【0069】
車両検出システム140は、Hを燃料補給される車両がHRSに入りつつあることを検出する(移行T11)。
【0070】
制御装置150が注入弁131の開放および低温を制御し、タンク110から入口ライン130を介して熱交換器121に低温窒素および/または液体窒素が供給される(ステップS12)。熱交換器121内の温度は急速に降温する。液相および/または気相中で混合されている可能性のあるLNは、熱交換器121から出口ライン132を介してガス抜きまたはリサイクルプロセスに送られる。
【0071】
温度制御ユニット151は、HRSにFCVが入りつつあることを検出すると注入弁131を一定の高い開口率に制御し、かくして高い冷却力を提供する。
【0072】
熱交換器121の温度は温度制御ユニット151によって測定される。温度比較ユニット152は、温度制御ユニット151によって測定された温度(t1)が所定の温度範囲内に維持されているかどうか、または目標温度に十分に近いかどうかを判定する。
【0073】
その間、燃料補給される車両は分配器の前に配置される。次に、オペレータまたは顧客は、分配器ホースおよびノズルを使用してFCV受け口を分配器に接続する。
【0074】
出力ユニット153は、温度比較ユニット152が、測定温度(t1)が所定の温度範囲内にあるか、または目標温度に十分に近いと判断すると、充填準備完了信号を出力する。出力ユニット153から充填準備完了信号を受信した後、燃料補給制御ユニット154は、H制御弁123上の対応するインターロック条件を解除し、および/またはH燃料補給シーケンスの移行条件のステータスに影響を及ぼす。
【0075】
出力ユニット153から充填準備完了信号を受信した後、温度制御ユニット151は、それが所定の温度範囲内にあるか、または目標温度に十分近くなるように熱交換器測定温度(t1)に応じて注入弁131の開口率を調整するためのストラテジを変更する。
【0076】
その後、他の充填準備完了条件が満たされると(例えば、分配器ノズルがFCV受け口に接続されたことの検出)、システムはステップS13に進む(移行T12)。
【0077】
HRSは充填準備完了ステータスにあり、熱交換器を所定の温度範囲内または目標温度近くに維持するために、低温窒素/液体窒素は循環し続ける(ステップS13)。温度制御ユニット151は、熱交換器温度(t1)を所定の温度範囲内に維持するために同じストラテジを使用し続ける。
【0078】
燃料補給制御ユニット154は、車両へのH燃料補給を開始するために、熱交換器の温度条件のステータスに関する情報を表示する。燃料補給制御ユニット154は、車両へのH燃料補給を開始することができるという情報を表示するため、および/または音響装置によって知らせるために信号を送信する。
【0079】
オペレータまたは顧客は、車両にH燃料補給の開始命令を与える(移行T13)。
【0080】
充填手順に従って、燃料補給制御ユニット154は、水素高圧源126からFCVのタンクに水素を移送するために、H制御弁123を制御し;熱交換器を所定の温度範囲内または目標温度近くに維持するために、低温窒素/液体窒素は循環し続ける(ステップS14)。温度制御ユニット151は、熱交換器温度(t1)を所定の温度範囲内に維持するために同じストラテジを使用し続ける。
【0081】
燃料補給制御ユニット154は、充填終了条件に達し、H制御弁123が閉鎖されたことを示す(知らせる)燃料補給終了の信号を送信する(移行T14)。車両待ち行列計算ユニット155が燃料補給を待っている他の車両がないという信号を送信する場合、システムは既に上述したステップS11に進む。
【0082】
車両待ち行列計算ユニット155が別の車両が燃料補給を待っているという信号を送信した場合、システムは後述するステップS15に進む。
【0083】
燃料補給される次の車両は、分配器の前に配置される。次に、オペレータまたは顧客は、分配器ホースおよびノズルを使用してFCV受け口を分配器に接続する(ステップS15)。温度制御ユニット151は、熱交換器温度(t1)を所定の温度範囲内に維持するために同じストラテジを使用し続ける。
【0084】
その後、他の充填準備完了条件が満たされると(例えば、分配器ノズルがFCV受け口に接続されたことの検出)、システムは既に上述したステップS13に進む(移行T12)。
【0085】
例1
現在、H分配器に使用されている小型ステンレス鋼拡散接合熱交換器の重さは、約150kgであり得る。この熱交換器の塊を30℃〜−40℃に冷却するためには、約5000kJが必要である。これは、約30kWの冷却パワーで3分以内に達成可能である。そのようなパワーは、〜500l/時の液体窒素の注入によって達成可能である。
図1
図2
図3
【国際調査報告】