【実施例】
【0073】
(実施例1:変形性関節症の処置のためのIL−1RaのscAAV−媒介遺伝子送達:ウマモデルにおける時間的発現および体内分布)
以下に議論したデータは、scAAVが、eqIL−1Raおよびコザック配列をコードするコドン改変遺伝子を使用して、ウマ関節においてeqIL−1Raの持続的な発現を提供し得ることを示す。
【0074】
ウマの前肢の手根骨および中手指節(mcp)関節を標的化する研究を行った。運動中、これらの関節がウマの体重の60〜65%を担持するため、外傷および過剰な負荷に続発性のOAにも非常に脆弱である。
【0075】
関節内送達後の治療導入遺伝子発現のパターンおよびその相対的な安全性を特徴付けるため、IL−1RaのウマオルソログのcDNAを使用して、投薬および時間的発現試験を実施した。最も有効なベクター用量、および細胞学的レポーター遺伝子として緑色蛍光タンパク質(GFP)を使用して、ウイルスゲノムの局所形質導入された細胞集団および全身分散への疾患の効果に重点を置いて、健康な関節および自然発生したOAを有するものへの送達後のベクターの体内分布を検査した。
【0076】
試験動物
試験に使用した動物は、フロリダ大学に寄贈されたか、または地元農家および研修施設から購入したかのいずれかであった。試験の各パラメーターのエンドポイントは、以下に記載したように予め定義した。いかなる動物もデータ分析から除外しなかった。全ての動物手順は、NIHの実験動物の管理と使用に関する指針およびフロリダ大学の動物実験委員会の両方に従って行った。他に言及しない限り、ウマは大きな覆いのない放牧場で、十分に自由に運動させ、群で飼育した。
【0077】
AAVベクターの構築および生成
IL−1Ra導入遺伝子産物の免疫認識を最小限にし、AAVベクターによる相同なIL−1Ra遺伝子移入の薬物動態プロファイルをアセンブルするため、IL−1RaのウマオルソログをコードするDNA配列を治療レポーターとして使用した。トランスジェニックタンパク質の発現を最大にするため、天然のeqIL−1Ra cDNAをコドン改変し、コンセンサスコザック配列を翻訳開始コドンのすぐ上流に挿入した(
図1)。この構築物において、導入遺伝子の発現はCMV最初期プロモーター/エンハンサーによって駆動される。AAVベクターは、以前に記載した方法によって、フロリダ大学Vector Coreまたはノースカロライナ大学チャペルヒル校Vector CoreでAAV2.5カプシドにパッケージングした。
【0078】
GFPおよび改変eqIL−1RaをコードするcDNAを、pHpa−trs−SKプラスミド、AAV2のゲノムから操作された自己相補型(二本鎖DNA)AAVベクターバリアントの発現カセットのSac IIおよびNot I部位に指向的に挿入した。この構築物において、導入遺伝子の発現はCMV最初期プロモーター/エンハンサーによって駆動される。AAVベクターは、フロリダ大学Vector Coreまたはノースカロライナ大学チャペルヒル校Vector CoreでAAV2.5カプシドにパッケージングした。
【0079】
in vivo投薬および発現
in vivo導入遺伝子発現分析のため、6頭の健康な、骨格的に成熟した、2〜7歳のウマを使用した。実験は、各動物の両前肢のMCPおよび手根骨間関節の両方を使用して実施した。ベクター注射の2週間前に、各関節から滑液を関節穿刺によって吸引し、ベースラインのeqIL−1Raレベルを確立した。注射時に、無作為化した様式で、0、5×10
10、5×10
11および5×10
12vgのscAAV.eqIL−1Raを含有する5または10mLの液量の乳酸加リンゲル液を各動物の4つの前肢関節に送達した。この戦略を使用して、最小数の被験体を使用するそれぞれの用量で導入遺伝子発現の動物間変動性の最高評価を提供した。注射後、動物は24時間隔離下で飼育し、獣医スタッフによって注意深くモニターした。注射後7、14、および30日目、その後全部で6ヵ月間毎月、ELISAによるeqIL−1Ra含量の測定のために滑液、末梢血および尿を各動物から収集した。滑液、末梢血および尿は別々の実験で最長1年間収集し、関節へのコドン最適化IL−1Raの注射の効果の寿命を評価する。
【0080】
ウマIL−1RaのELISA
ウマIL−1Raのレベルを、特異的ELISA(R&D Systems)を使用してアッセイした。処置および対照関節両方からの滑液試料を、50u/mlでヒアルロニダーゼを含有する緩衝食塩水で1:1に希釈し、タンパク質含量の測定前に37℃で30分間インキュベートした。アッセイの変動性を明らかにするため、試薬希釈剤(R&D Systems)中で2倍段階希釈した滑液試料を広範囲にわたって生成した。各希釈系列は2連で生成し、各希釈試料は3連のウェルでアッセイした。平均は、それぞれのアッセイの標準曲線の境界内での読み取りによって試料から算出した。
【0081】
in vivoでのベクターの体内分布
関節内注射後、AAVベクターの全身の体内分布を決定するため、3頭の健康なウマおよび後期の自然発生したOAの3頭の手根骨間関節に、5mlの乳酸加リンゲル液中で希釈した5×10
12vgのscAAV.GFPを注射した。動物は、2週間後に安楽死させ、剖検した。筋骨格系以外の臓器では顕著な病変は検出されなかった。組織は注射した手根骨間関節、隣接する橈骨手根骨関節、隣接する四頭筋、同側MCP関節、対側手根骨間関節および隣接する四頭筋、脳、心臓、肺、肝臓および脾臓から採取した。注射部位から最も離れた組織をまず採取し、試料のクロスコンタミネーションを最小限にするため注意が払われた。各試料の一部を、新しい組織の倒立蛍光顕微鏡、またはパラフィン切片および免疫組織化学染色後のいずれかによるGFP発現のその後の分析のため、10% FBSを含むDMEM中に入れた。残りの組織部分をRNALater(Ambion)に入れ、ゲノムDNA(gDNA)のその後の単離のため−80℃で保存した。
【0082】
ベクターゲノムをアッセイするため、gDNAを、製造業者の指示に従って、Qiagen DNeasy Blood and Tissue Kit(Qiagen)を使用して保存した組織試料から抽出した。gDNA濃度はNanoDrop分光光度計(Thermo Scientific)を使用して決定した。定量的リアルタイムPCRは、100ng gDNAおよびEppendorf RealPlex PCR machine(Eppendorf)を使用して実施した。プライマーは、ベクター発現カセットのCMVプロモーター中の配列にアニールするように設計した。フォワードおよびリバースプライマーの配列は、それぞれ、5’−CACGCTGTTTGACCTCCATAGAAGACAC(配列番号5)および5’−TTCTTTGATTTGCACCACCACCGGATCCG(配列番号6)であった。各セットの反応に関して、pHpa−tr−skプラスミドDNAの段階希釈を使用して標準曲線を生成した。ウマβアクチンに特異的なPCR反応(フォワードプライマー5’−CCAGCACGATGAAGATCAAG(配列番号7)およびリバースプライマー5’−GTGGACAATGAGGCCAGAAT(配列番号8))および鋳型DNA無しを、それぞれ、陽性および陰性対照として使用した。全てのgDNA試料は3連でアッセイした。試料特異的な反応阻害を試験するため、gDNA試料のアリコートに、100コピー/μgのgDNAで、pHpa−trs−SKベクターDNAでスパイクした。40コピー/μgまたはそれよりも多いスパイクインDNAが検出された場合、gDNA試料は許容できると考えた。
【0083】
免疫組織化学
目に見えるGFP活性を含有する体内分布試験からの組織試料を、パラホルムアルデヒド中で固定し、組織学のために処理し、パラフィン包埋した。5μmでカットし、荷電したスライド上にマウントした切片は、脱パラフィンし、熱媒介性抗原回復を実施した。スライドは10% 正常血清でブロックし、次いで1:200希釈のウサギ抗GFP抗体(Abcam)で、室温で1時間、続いてビオチン化二次抗体(Invitrogen)で1:500の希釈で、室温で30分間インキュベートした。スライドはDAPI(Vector Laboratories)でマウントし、蛍光顕微鏡で見た。
【0084】
scAAV.eqIL−1Raベクター構築物およびin vitroおよびin vivoでの特徴付け
ウマの関節へのヒトIL−1Ra cDNAのscAAV送達を含む以前の研究では、注射後1〜2週間でのピーク後、導入遺伝子発現は着実に減り、7週間後、ヒトIL−1RaはELISAによって滑液中に検出できないことが見出された。これは、異種導入遺伝子産物を発現する形質導入された細胞の免疫認識に原因がある。組換えアデノウイルスベクターによる測定可能なレベルのウマIL−1Ra発現を生成することが可能であったが、通常天然cDNAからのタンパク質発現は比較的控えめであった。したがって、IL−1Ra導入遺伝子産物の免疫認識を最小にし、発現を最大にするため、ウマIL−1RaオルソログのコドンのcDNAを改変し、翻訳開始部位のすぐ上流にコンセンサスコザック配列リーダーあり(配列番号3)およびなし(配列番号2)の両方を合成した。scAAVベクタープラスミド(pHpa−trs−sk)への挿入後、両方の改変構築物は、一過性トランスフェクションアッセイにおいて天然の配列より30〜50倍増強した発現を生じた(
図2A)。コザック配列を含む構築物が、最高レベルのeqIL−1Ra発現を一貫して提供したため、それをウイルスパッケージングおよびin vivo試験のために選択した。
【0085】
以前のデータは、培養中のヒト滑膜線維芽細胞がAAV2による感染に対する優先性を有することを示した。ヒト試験への可能な移行を考慮すると、eqIL−1Raベクター構築物はAAV2.5カプシド中にパッケージングされ、それはAAV2向性を維持するが、ヒト集団の間で蔓延しているAAV2中和抗体との反応性の減少を示す。一定範囲の用量のAAV2.5ベクターによるウマ滑膜線維芽細胞培養物の感染は、10
5ウイルスゲノム(vg)/細胞で10μg/mlを超える、eqIL−1Raの非常に高い発現をもたらした(
図2B)。GFPを含有するAAV2.5ベクターにより10
5vg/細胞で感染した並行する対照培養物において、eqIL−1R産生はバックグラウンドを超えなかった。
【0086】
関節内送達後のscAAV.eqIL−1Ra発現に対するベクター用量の効果を決定するため、最小数の実験動物を使用して動物内および動物間の変動性への洞察を提供するように設計された手法をとった。6頭のウマそれぞれにおいて、3つの異なる用量(5×10
10、5×10
11および5×10
12vg、
図2D)でのscAAV.eqIL−1Raの注射は、両前肢の両手根骨間関節およびMCP関節の間で無作為な順序で分配される。残りの関節は、等体積の送達ビヒクル(乳酸加リンゲル液)を注射し、陰性対照としての役目を果たした。その後、約6ヵ月の予め決定した間隔にわたって定期的に、滑液をそれぞれの前肢関節から吸引し、末梢血および尿を収集した。生体液中のeqIL−1Ra含量は市販のELISAキットを使用して測定し、注射前の値と比較して解釈した。
【0087】
3つの前肢関節においてAAVを受けたにもかかわらず、急性的なまたはプロトコール中の任意の時点での有害効果は観察されなかった。流体ビヒクルのみを受けた対照関節の中では、滑液eqIL−1Raは全体を通して注射前のレベル(<1ng/ml)のままであった(
図2B)。ウイルスを受けた関節では、平均レベルが5×10
10vgで約6ng/ml〜5×10
12vgで約40ng/mlの範囲で、滑液eqIL−1Raの用量に関連した増加が、注射の2〜4週間以内に観察された。ピークのeqIL−1Ra産生は、注射後4〜8週間の間で生じ、試験の残りの間維持された(
図2B)。ベクター用量と培養中に見られるeqIL−1Ra発現の間のほぼ直線関係と対照的に、in vivoで試験した範囲にわたるベクター用量の100倍の増加は、IL−1Ra発現において約10倍の増加をもたらすだけであった。さらに、5×10
11から5×10
12vgへの用量の増加は、滑液eqIL−1Raを1.5倍上昇させただけであった。したがって、これらの値は最大、またはほぼ最大である可能性がある。
【0088】
健康な関節およびOA関節におけるAAV2.5導入遺伝子発現
scAAV.eqIL−1Raの5×10
12vg用量が関節内に最高のeqIL−1Ra産生を一貫して提供し、適度に安全であると考えられるため、それをin vivoでのさらなる特徴付けのために選択した。AAVベクターおよび形質導入された細胞集団の局所および全身分布へのOA環境の影響を決定するため、GFPのコード配列を含有するscAAVベクター構築物をAAV2.5カプシドにパッケージングした。次いで5×10
12vgのscAAV.GFPを、3頭の健康なウマおよび進行した自然発生したOAの3頭のウマの1つの手根骨間関節に注射した(
図3A〜3B)。2週間後、ウマは安楽死させ、注射した関節および体全体の部位から組織を収集した。
【0089】
以前に試験したAAV血清型と同様に、それぞれの健康な関節においてGFP発現が優勢な部位は滑膜であった。新しい組織試料の検査により、関節嚢の内層全体の豊富な蛍光細胞が明らかになり、より厚い絨毛領域に集中していることが多かった(
図3C〜3D)。GFP活性は関節軟骨の薄片(shaving)で目に見えたが、かすかであり、散在する単離した細胞に限られた(
図3G〜3H)。顕著に対照的に、OA滑膜のGFP活性は健康な関節よりもはるかに高かった。これらの試料は、低倍率でも明るく蛍光性であることが多かった(
図3E)。蛍光細胞の密度は、滑膜の内層全体の広がりにわたって目に見えてより高いが、特に炎症および滑膜炎の領域で高かった(
図3Fおよび4A〜4B)。健康な関節と同様に、蛍光細胞はほぼ排他的に滑膜および滑膜下組織の範囲に限定され、わずかに支持線維組織に見られるのみであった。
【0090】
明るい蛍光細胞の集団が回収した全ての薄片で容易に明らかであるように、OA軟骨はGFP活性の最も劇的な増強を示した(
図3J〜3K)。全層侵食の近くで採取した薄片は、強い蛍光の巣状領域を含有することが多く(
図3Lおよび4C〜4D)、紡錘形の形態を有する細胞を頻繁に含有し、線維軟骨細胞への脱分化と一致している(20)。より高い倍率は、GFP発現が常在の軟骨細胞集団の大部分で、目で見えたが、OA軟骨に特有の軟骨細胞クラスターで特に顕著であったことを示した(
図3Mおよび4E〜4G)。明るい蛍光細胞のポケットはまた、OA関節の縁から回収した骨棘の表面に沿っても目で見えた(
図3Nおよび4H)。
【0091】
ウイルスを受けた健康な関節およびOA関節両方に関して、手根の橈骨手根骨関節の滑膜は、目に見える蛍光を含有する手根骨間関節の外側の唯一の組織であった。その位置は、注射の部位にすぐ近位であるにもかかわらず(
図2C)、まばらな蛍光細胞のみが見られ、ほんのわずかな採取した試料においてであった(
図3O)。
【0092】
関連する観察において、健康な軟骨の薄片におけるGFP発現(採取時にはほとんど検出できない)が、鮮やかな蛍光細胞の密集した集団が各試料中のマトリクス全体で見られるように、外植片培養において48時間のインキュベーション後劇的に増加したことが見出された(
図3I)。これは、大きいパーセンテージの軟骨細胞がin situでウイルスによって実際に形質導入されたが、健康な関節に関しては、目に見える閾値を超えて蛍光レポータータンパク質を発現できなかったことを示した。
【0093】
AAV2.5体内分布
関節内注射後、関節からのAAVベクターの遊出を評価するため、全DNAを組織試料から単離し、定量的PCRによってベクターゲノム含量をアッセイした。表1に示すように、ベクターゲノムの全身分布は目に見えるGFP活性とかなり一致していた。全ての動物に関して、ウイルスを受けた関節からの組織は、最高のベクターゲノム含量を示した。個体間で広範な変動があるが、平均して、滑膜におけるベクターDNAは軟骨よりも約30〜50倍高く、OAと正常な関節の間に有意な差はなかった。検出可能だが、かなり少ないベクターゲノムが、両群のウマにおいて隣接する橈骨手根骨関節の滑膜で見出された。手根の外側で、健康な群の1頭の動物は、肝臓において少ない数のベクターゲノムを示したが、OA群の1頭の動物からの肝臓および脾臓も、ベクター含量が陽性であった。要するに、健康なおよび疾患状態両方の下で、検出された>99.7%のAAVベクターゲノムは関節組織においてであった。これらの結果は、ベクターが主に関節内に含有され、OA環境は関節内での導入遺伝子発現を増強し得るが、関節外のベクター分散に重要な影響を及ぼさないようであることを示す。
【0094】
【表1】
【0095】
本実施例に記載の試験は、大型哺乳動物関節において、遺伝子改変された細胞は6ヵ月にわたりタンパク質合成の上昇したレベルを持続し得ることを示す。関節病理、例えば急性外傷または慢性侵食性疾患は、ウイルス形質導入およびトランスジェニック発現を著しく増加し得る。さらに、健康な関節および罹患関節両方において、大多数のベクターDNAは関節組織に維持され、IL−1Raの局所での過剰産生は循環中に検出されない。データに基づき、遺伝子改変された細胞が、6ヵ月よりも長い間(例えば、最長1年、最長2年、最長5年または最長10年)、上昇したレベルのタンパク質合成を持続し得ることが予測され得る。
【0096】
ウマモデルへの利点
局所AAV媒介遺伝子移入は、関節リウマチ(26)の処置のためにヒト関節において以前に探究され、フェーズII試験に入った(27)。残念ながら、関節で産生されたトランスジェニックタンパク質(腫瘍壊死因子αアンタゴニスト)の測定は、プロトコールの一部ではなく、ヒト関節において達成されたトランスジェニック発現のレベルおよび持続期間に関するこの治験から明らかになる情報はない。しかしながら、治療有効性へのその関係を考えると、この情報は有効な臨床適用に重要である。
【0097】
この目的のため、ウマシステムの使用は特に情報価値があり、ヒトの処置に関連するスケールで、および自然発生したOAの関連で、遺伝子送達のためのAAVベクターの能力を試験することを可能にすることが分かっている。滑液を連続的に吸引する能力は、関節内の導入遺伝子発現および意味のある薬物動態プロファイルの生成の直接定量を可能にする。さらに、非近交系動物の使用、骨軟骨傷害へのそれらの変動する応答、行動および治癒力の固有の差は、臨床設定でのヒトの処置と関連する変動性の妥当なシミュレーションを提供する。
【0098】
遺伝子発現パターン
進行したOAに典型的な関節における細胞および形態学的変化と関連して、GFPレポーターの実質的により高い発現が観察された。滑膜において、慢性炎症性刺激は頻繁に、過形成、血管新生、白血球浸潤、および線維症性肥厚を誘導する。AAV媒介GFP発現は、OA関節の滑膜全体で一貫してより高いようであるが、蛍光は特に滑膜炎の領域で明白であり、増加した細胞充実性が、AAV形質導入に受容性の標的細胞の密度を高める役目を果たした。
【0099】
OA関節におけるGFP発現の最も顕著な増加は、関節軟骨において生じる。GFP+細胞がまばらで、蛍光がほとんど目に見えない健康な関節からの軟骨とは全く対照的に、豊富な明るい蛍光細胞がOA関節から採取した薄片全体で見られ、侵食の明らかな徴候を有する部位で最も著しく増加した。マトリクス完全性の喪失は、OA軟骨においてベクター粒子の侵入および拡散を促進するようであるが、本データは、軟骨(および滑膜)における高められた導入遺伝子発現の多くは、炎症およびサイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーターのストレス誘導性活性化から生じることを示す。
【0100】
健康な軟骨の軟骨細胞は、異常無く、休止状態で広く存在する。OAでは、軟骨マトリクスの分解はその保護特性を減らし、局所的な軟骨細胞に過度の機械的負荷を生じさせる。これらの異常な力は、核因子κB(NF−κB)、およびストレス誘導性マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)からのシグナル伝達を刺激し、通常休止した軟骨細胞の非常に活性化した状態への代謝を駆動する。活性化した軟骨細胞は、表現型の明らかな変化を受け、それらは増殖性になり、高レベルの炎症性サイトカインを分泌し、局所的なマトリクスをさらに分解するタンパク分解酵素を放出する。CMV最初期プロモーターは通常、高レベルな構成的プロモーターと考えられるが、このエレメントからの転写はNF−κB、ならびにp38および他のストレス活性化タンパク質キナーゼからのシグナル変換に応答することが公知である。天然のウイルスでは、これらの経路の係合が、CMV最初期プロモーターの活性化およびウイルス複製の開始に必要である。同様に、炎症および細胞性ストレスは、その制御下で導入遺伝子の発現を著しく増加し得る(40,43〜45)。この点で、OA軟骨は、ストレス活性化軟骨細胞が富化され、高密度で侵食の領域に集合する。GFP発現も、軟骨細胞増殖およびクラスター形成部位で、ならびに骨棘の表面に沿って目立ち、軟骨から滑膜への移行時に骨軟骨性前駆細胞(chondro−osseus progenitor)の持続的な活性化から生じる。GFP発現の有力な活性化は、外植片培養におけるインキュベーション後、健康な関節からの軟骨薄片にも見られた。さらなるベクターが薄片に添加されないため、この誘導は軟骨細胞に既に存在するベクターDNAから生じなければならなかった。したがって、これは、採取のストレスおよび/または成長条件の変化から形質導入した軟骨細胞における代謝および転写活性の劇的な増加を反映するはずである。
【0101】
したがって、いくつかの報告が遺伝子治療適用のための合成の炎症誘導性プロモーターシステムの生成を記載しているが、CMV最初期プロモーターは、少なくともOAおよび大型哺乳動物関節の状況内では、先天的に疾患調節性であるようである。さらに、OA軟骨において見られるGFP発現の領域的な差は、AAVベクターおよびCMVプロモーターによって駆動される発現カセットにより、優先的に導入遺伝子発現を最大の病理的ストレス下の関節軟骨のエリアに方向付ける可能性を示している。これは、標的化軟骨保護および再生戦略の開発のための基礎を作る。
【0102】
要するに、この試験からのデータは、scAAVが大型哺乳動物関節において相同の治療導入遺伝子の持続的な発現を提供し得ることを実証する。さらに、遺伝子送達はOAに関しては著しくより効率的であるようであり、滑膜組織および関節軟骨において発現の増強を可能にする。
【0103】
(実施例2:変形性関節症の処置のためのIL−1RaのscAAV−媒介遺伝子送達:ウマモデルにおける薬物動態および有効性)
この実施例では、OAのウマの骨軟骨断片化(OCF)モデルにおいてrAAVを使用するeqIL−1Ra送達を議論する。データは、組換えAAVを使用する遺伝子ベース療法が、ヒトサイズの関節において抗関節炎タンパク質の有効な送達を提供し得ることを実証する。OAの任意の既存の処置とは異なり、この手法は、疾患の痛みのある症状および侵食性の進行をブロックする能力を有する。
【0104】
試験動物
試験に使用した動物は、フロリダ大学に寄贈されたか、または地元農家および研修施設から購入したかのいずれかであった。OCFモデルの有効性試験のため、動物の調教師および評価者は、処置群の割り当てを盲検化された。もともと処置群に割り当てられた1頭のウマは、麻酔回復中の合併症から生じる肺炎のため、実験プロトコールの中途で安楽死させた。この動物は、続いて、統計分析に必要な被験体数を満たすために置き換えられた。試験の各パラメーターのエンドポイントは、以下に記載したように予め定義した。提示した全てのデータは、実験プロトコールを完了した10頭の処置動物、および10頭の対照動物からであり、いかなる動物もデータ分析から除外しなかった。外れたデータ点の議論は、文章および図で明確に表した。全ての動物手順は、NIHの実験動物の管理と使用に関する指針およびフロリダ大学の動物実験委員会の両方に従って行った。他に言及しない限り、ウマは大きな覆いのない放牧場で、十分に自由に運動させ、群で飼育した。
【0105】
AAVベクターの構築および生成
IL−1Ra導入遺伝子産物の免疫認識を最小限にし、AAVベクターによる相同なIL−1Ra遺伝子移入の薬物動態プロファイルをアセンブルするため、IL−1RaのウマオルソログをコードするDNA配列を治療レポーターとして使用した。トランスジェニックタンパク質の発現を最大にするため、天然のeqIL−1Ra cDNA(57,58)をコドン改変し(16)(GeneArt)、コンセンサスコザック配列(17)を翻訳開始コドンのすぐ上流に挿入した(
図1)。この構築物において、導入遺伝子の発現はCMV最初期プロモーター/エンハンサーによって駆動される(30)。AAVベクターは、以前に記載した方法によって(7)、フロリダ大学Vector Coreまたはノースカロライナ大学チャペルヒル校Vector CoreでAAV2.5カプシドにパッケージングした(18,19)。
【0106】
ウマIL−1β、IL−1RaおよびPGE
2のELISA
ウマIL−1Ra(R&D Systems)、PGE
2(R&D Systems)およびウマIL−1β(GenWay)のレベルを、特異的ELISAを使用してアッセイした。処置および対照関節両方からの滑液試料を、50u/mlでヒアルロニダーゼを含有する緩衝食塩水で1:1に希釈し、タンパク質含量の測定前に37℃で30分間インキュベートした。アッセイの変動性を明らかにするため、血清および滑液試料の試薬希釈剤(R&D Systems)中での2倍段階希釈物を広範囲にわたって生成した。各希釈系列は2連で生成し、各希釈試料は3連のウェルでアッセイした。平均は、それぞれのアッセイの標準曲線の境界内での読み取りによって試料から算出した。
【0107】
OCFモデルにおける有効性試験
2〜9歳の間の、混合性別の20頭のサラブレッドのウマをこのフェーズの試験で使用した。動物は、健康であり、跛行も手根骨関節疾患のX線学的徴候もなかった。疾患モデルの導入前に、ウマは、3週間、5日/週でトレッドミル運動によって条件付けられた。各運動日に、ウマは2分間速歩(4〜5m/秒)、2分間ギャロップ(約9m/秒)、再び2分間速歩をさせた。さらなる使用の前に、動物を無作為に処置および対照群に等しく分けた。
【0108】
トレッドミル条件付け後、全身麻酔下で、両方の手根骨間関節において両側で関節鏡検査を実施した。手順の間に、無作為に割り当てた1つの関節において、関節面に垂直に配置した骨刀を使用して、8mmの骨軟骨病変が橈骨手根骨の内側に作られた(14)。断片は嚢組織に付着したままにした。天然の傷害を模倣するため(59)、親骨のデブリドマン(14)は実施しなかった。各ウマの対側関節は、偽手術された内部対照としての役目を果たした。全てのウマは、手術および適切な獣医医療を受けた後、馬屋で7日間飼育された。
【0109】
手術2週間後、前肢関節の手術時手洗い後、処置群に割り当てられたウマのOCF関節は、総体積5mLで乳酸加リンゲル液中に懸濁した5×10
12vgのscAAV.eqIL−1Raの注射を受けた。対照群のウマは、ウイルスを含まない5mLの乳酸加リンゲル液を受けた。注射1週間後、ウマは上記の5日/週のトレッドミル運動プログラムに、10週間戻した。トレーニング中、ウマは毎週臨床検査し、跛行評価した。10週間のトレーニング期間の終わりに、最終の関節鏡検査を両方の手根骨間関節で実施した。断片を除去し、親骨の病変を清拭および修復した。回復後、動物は調査の群れに戻した。両方の関節鏡手順中にデジタル画像を収集した。X線学的およびMRイメージングは、両方の関節鏡手順の直前および第0週の処置の前に実施した。プロトコール全体を通して隔週で、末梢血および尿を収集し、滑液を両方の手根骨間関節から吸引した。
【0110】
跛行評価
前肢の跛行は10週間、主観的および客観的方法両方による手術後のトレッドミルトレーニング期間の間、毎週評価した。主観的な視覚による跛行評価を、アメリカ馬臨床獣医師協会のガイドラインに従って、歩行および速歩(約4m/秒)でのトレッドミル中のウマで、適切には盲検で、2人の有資格の評価者によって実施した。段階分けシステムは以下の通りであった:0、跛行が知覚できない;1、跛行の観察が困難であり、一貫して明らかではない;2、歩行時または直線を速歩する時に跛行の観察が困難であるが、ある特定の状況下では一貫して明らかである;3、全ての状況下で、速歩時に跛行が一貫して観察可能である;4、歩行時に跛行が明らかである;5、跛行が、動作時および/もしくは静止時に最小限の荷重負荷を生じるか、または完全な運動不能を生じる。
【0111】
客観的な歩行評価のため、ウマの跛行を検出および評価するために特別に設計された慣性動作分析システム(Lameness Locator(登録商標)、Equinosis)を使用した(22,23)。毎週のセッションのため、トレッドミルにおける約4m/秒の速歩時に、少なくとも3回の測定を行った。各測定は、最低30回の中断していない歩幅から算出した。跛行は、各測定中の歩幅ごとに左と右の歩幅の間の平均最大頭差(mean maximum head difference)(HDmax)および平均最小頭差(mean minimum head difference)(HDmin)を使用するベクトル和として算出した(22,23)。HDmaxは、左の前肢位置の後に起こる最高の頭の高さに対する右前肢位置の後に起こる最高の頭の高さの差である。HDminは、左の前肢位置の間に起こる最低の頭の高さに対する右前肢位置の間に起こる最低の頭の高さの差である。各セッションに関して、少なくとも3回の測定からのHDmaxとHDminの平均を使用して、以下:
【化8】
のようにベクトル和(VS)を算出した。
【0112】
主観的および客観的評価の両方に関して、第1週の跛行値は各ウマのベースラインとして使用した。各ウマの続く測定は、ベースラインに対するパーセント変化として算出した。
【0113】
MRイメージングおよび評価
両手根のMR検査は、東芝 Titan(日本)1.5 Tesla high−field unitを使用して実施した。全身麻酔下で、ウマは、直交送受信膝用コイル(QD Knee)で、各手根骨を部分的に屈曲させて(15〜25度)、左側横臥位で置いた。MRコイルおよびシーケンスを選択し、生きたウマに臨床的に適用できるように改変し(24)、サジタルおよびアキシャルのプロトン密度(PD)、背側T2強調、アキシャルT2ショートタウ反転回復(STIR)、サジタルの脂肪抑制を伴うプロトン密度(PD−SF)、およびサジタルの脂肪抑制を伴うスポイルドグラジエントエコー(spoiled gradient echo)(SPGR−FS)を含めた。全取得時間は、両肢の全てのシーケンスのためにおよそ1時間と20分であった。各ウマのMRスキャンは、処置群の割り当てを盲検化した3人の評価者によって検査された。各手根骨間関節および時点の、6つのMRシーケンスからのスキャンの検討後、スコアは、0が正常を表し、10が重症な病理を表す0〜10のスケールを使用して、滑膜滲出液、滑膜増殖、骨軟骨病変の重症度、関節軟骨の損傷、橈骨手根骨における骨髄浮腫、橈側手根骨および第三手根骨の硬化症、関節嚢浮腫および関節嚢線維症を含むモデルと関連する優勢な病理に割り当てた(60,61)。スコア化は、手根骨間関節内のみへの関与に基づいた。各病理の最終スコアは、3人の評価者の平均を表す。全MR病理スコアは、個々の病理の合計から決定した(60,61)。
【0114】
関節鏡評価
骨軟骨病変の生成後、および実験プロトコールのエンドポイントで再び、処置および対照群のウマの両方の手根骨間関節を検査し、関節鏡でイメージングした。手順の間に収集したデジタル画像は、病変のサイズおよび断片修復の程度、周辺の軟骨を伴う欠損の境界ゾーンの統合、表面軟骨全体の外観、ならびに滑膜および靭帯の外観に関して、3人の盲検化された評価者によってスコア化した。Dymockら(62)からの基準に基づき、0が正常を表し、10が重症な病理を表す0〜10のスコア化システムを使用した。
【0115】
組織学
関節鏡検査法のエンドポイントの間に取り除いた骨軟骨断片および滑膜組織を、パラホルムアルデヒド中で固定し、脱灰し、パラフィン包埋した。5μmの連続切片を荷電したスライド上にマウントし、脱パラフィンおよび再湿潤化(rehydrate)し、3%過酸化物/メタノール中、室温で10分間ブロックした。目的の領域の別の切片は、それぞれヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびにトルイジンブルーで染色した。連続切片は、McIlwraithら(63)から適用した段階分けシステムを使用して2人の盲検化した評価者によって分析および段階分けされた。簡単に言うと、関節軟骨の完全性は、軟骨細胞壊死、クラスター形成、原線維性、および/または巣状細胞喪失の徴候に基づいてスコア化した。滑膜は、血管分布、内膜肥厚、内膜下浮腫および/または内膜下線維症の徴候に基づき評価および段階分けした。白血球浸潤は炎症の読み取りと同じスケールでスコア化した。最終的に、軟骨下骨および修復境界面は、マトリクス品質、骨軟骨病変、骨リモデリング、および骨軟骨分裂(osteochondral splitting)を評価した。総スコアは、個々のスコアの合計から算出した。
【0116】
カプシド標的化中和抗体の測定
方法は、Liら(64)によって記載されたものから適用した。滑液はELISAのために記載されたようにヒアルロニダーゼで消化し、血清は補体不活性化のために30分間56℃でインキュベートした。無血清培地を使用して、前処置した血清または滑液から一連の2倍段階希釈物を生成した。希釈した試料は、AAV2.5カプシド中にパッケージングされた約1×10
9vg scAAV.eqIL−1Raと総体積250μlで混合し、37℃で1時間インキュベートし、抗体を結合させた。混合物を、次いで、250μlの培養培地を含有する24ウェルプレート中にウマ滑膜線維芽細胞のコンフルエントな培養物に添加した(総体積500μl/ウェル)。標準的な培養条件下で48時間インキュベーション後、馴化培地を採取し、ELISAによってeqIL−1Ra含量をアッセイした。NAb力価は、上記のようにプレインキュベートしたAAV.eqIL−1Raに感染させた細胞によって産生されるeqIL−1Raレベルを、50%まで減らすことができるが、生体液を含まない最高希釈の逆数として示した。
【0117】
統計分析
分析は、独立した試料のt検定、共変数として役目を果たすベースラインスコアを用いる共分散t検定の分析、および相関分析からなった。ほとんどの場合、先験的にscAAV.eqIL−1Raによる処置を受けたウマは、用いた診断評価からのより低い平均値を有し、したがって、その末尾側(tail)の方向を規定するであろうと仮定されたため片側検定が用いられた。実験レイアウトは、処置群(処置または対照)に無作為に割り当てられたウマによる2試料反復測定デザインであった。データは、複数の独立した試料のt検定を使用して分析した。第1種過誤0.05、検出力80%およびエフェクトサイズ(effect size)d=1.3(大)とすると、常に処置効果を示すため試験には全部で20頭のウマが必要であった。ベースライン測定と反復測定の間に相関があると予測されたため、共変数としてベースライン測定を含めて、試験の検出力は80%を超えた。
【0118】
OAの骨軟骨断片モデルにおけるscAAV.eqIL−1Raの有効性
AAV媒介IL−1Ra発現の機能的能力を評価するため、Frisbieら(14)から適用した、OAのOCFモデルを使用した。この試験(
図5Aに図解した)のため、20頭の健康なサラブレッドのウマを均等な群:処置および対照に無作為に割り当てた。各動物の1つの手根骨間関節において、関節鏡で橈骨手根骨の内側部に8mmの骨軟骨病変が生成された。対側関節は、並行して関節鏡検査を受け、偽手術された内部対照としての役目を果たした。手術2週間後(試験0日目)、処置群のウマのOCF関節は5×10
12vgのscAAV.eqIL−1Raの注射を受けた。対照群のウマは、同様の注射体積の生理食塩水を受けた。1週間後(トランスジェニックIL−1Ra発現の開始の時間を考慮に入れる)、ウマは10週間の運動トレーニングスケジュールに置かれ、骨軟骨傷害に関して、初期のOAに一致する病理を誘導する。
【0119】
運動トレーニングの終わりに、動物の手根骨間関節は関節鏡で評価し、骨軟骨断片および隣接する滑膜を分析のために収集した。病変は清拭および修復され、回復後、動物は研究の群れに戻した。
【0120】
ベクターの関節内注射後の局所および全身eqIL−1Raレベル
処置群のOCF関節からの滑液のELISA測定は、12週間の試験全体を通して、eqIL−1Ra含量の顕著な増加を示した。注射後2週間で平均レベル214ng/mlに達し、eqIL−1Ra産生は、同じウイルス用量を受ける健康な関節で測定されたよりも約4倍多かった(
図5B)。トレーニングプロトコールの過程にわたり、eqIL−1Ra発現は徐々に低下し、第12週では約59ng/mLと測定され、正常な関節で観察されたものに近かった。対照群のOCF関節、ならびに両群の偽手術された関節からの滑液において、全体を通してIL−1Raは処置前のレベルのままであり、1ng/mlを超えなかった。処置した関節における平均eqIL−1Raレベルのプロットは、適度に滑らかな傾向を示したが、個々の動物間の発現は非常に可変的であり(
図5C)、特に最も早い時点では、発現は230倍超におよび、1頭の動物では930ng/mlを超えた。試験の終わりまでに、初期の変動のほとんどは解消し、範囲は、約30倍まで狭まり、最も高い発現は119ng/mlであった。
【0121】
関節からのトランスジェニックタンパク質の漏出をアッセイするため、各時点での尿および末梢血血清におけるeqIL−1Ra含量も測定した。尿中のeqIL−1Raは、処置および対照群の間で意味のある差がなく、一貫して低い(<3ng/ml)ままであった(
図5D)。同様に、血清中の平均eqIL−1Raは、両群において10頭中9頭のウマで4ng/mlより少ないままであった(
図5E)。注射の前に、処置および対照群のそれぞれからの1頭のウマは、明らかな原因無く100ng/mlを超える血清eqIL−1Raレベルを示した(
図5F)。これらの動物において循環するeqIL−1Raは続いて>500ng/mlに上がったにもかかわらず、eqIL−1Raの付随する増加は対照のウマのOCF関節、またはいずれかのウマの偽手術された関節の滑液中に見られず、それぞれにおけるeqIL−1Raは一貫して1ng/mlより低いままであった。滑液中の内在性IL−1は、試験の過程にわたって全ての生体液中で検出のレベルより低い(16pg/ml)ままであった。これらの結果は、これらの処置条件下で、トランスジェニックeqIL−1Raの発現が関節内に機能的に含有され、IL−1Raレベルを全身的には上昇させないことを示す。逆に、血清中のeqIL−1Raの正常から最大200倍の増加は、滑液中のeqIL−1Ra含量への検出可能な効果を有さなかった。
【0122】
他の知見と一致して(21)、時間によるAAV2.5中和抗体(NAb)の平均レベルの増加が、ベクターを受けたウマの血清および滑液両方において観察された(
図5G)。ベクターを受けた関節の滑液中のNAb力価は血液よりも一貫して高かった。対照動物の体液中では、常にNabは検出されなかった。
【0123】
scAAV.eqIL−1Ra処置と関連する跛行の減少
関節痛への処置効果を評価するため、視覚的な跛行スコア化を使用して、および接着した慣性センサーのワイヤレス検出を使用する動作分析によって、前肢跛行を評価した(22、23)。跛行は、注射後第1週でのトレーニング開始に対する平均パーセント変化として時間をわたりプロットした。対照と比較して、処置群の動物は、両方法により跛行の徐々にだが進行性の減少を示し、視覚的な評価によって第10週に36%(P=0.03)の改善でピークに達し(
図6A、左のパネル)、動作分析によって第10および11週に40%(P=0.04)であった(
図6A、右のパネル)。これらの機能的指標による関節痛の減少と一致して、関節液(joint fluid)中のプロスタグランジンE
2(PGE
2)含量の測定は、第4週からプロトコールの終わりまで対照群よりも処置群において>50%の減少を示した(
図6B)。
【0124】
scAAV.eqIL−1Ra送達は急性骨軟骨傷害の修復を改善する
X線学的異常は、手術後2週間およびエンドポイントで全てのOCF関節で見られたが、イメージングセッション間の位置の変動性と合わさって、手根骨関節の解剖学的な複雑さは、ウマ間の均一な時間比較を妨げた。同時点で得た磁気共鳴(MR)画像は、各骨軟骨傷害と関連する関節病理の変化の明らかな提示を提供し、各個体に関して12週間隔で処置前およびエンドポイントスコアの比較を可能にした(24)。全ての場合、MR画像の変化は、外科的に生成された骨折の付近で、主に内側に見出された(
図7A)。傷害後2週間で、明白な高強度シグナルは橈側手根骨における各断片の境界を描写し、隣接する骨の密度の増加、骨髄中の局所体液蓄積(骨髄浮腫)、関節滲出液、滑膜肥厚、ならびに線維症性肥大および関節嚢の浮腫により、OCF関節間の変動を伴った。各ウマのベースラインとしてこれらの病理の処置前スコア(第0週)を使用して、エンドポイントで得たMRスキャンでの共分散分析を実施し、関節形態への処置の効果を評価した。
図7A〜7Bに反映されるように、両群は関節嚢において、類似の嚢浮腫の喪失および線維症性肥厚の増加を伴い、同等の変化を示し、これは、主に関節鏡手順および輸液によるもので、骨軟骨病変によるものは少なかった。関節内IL−1Raの抗炎症特性と一致して、処置群のOCF関節は対照群と比較して著しく減少した関節滲出液(34%、P=0.008)および滑膜増殖(27%、P=0.008)を示した(
図7B)。処置群はまた、骨折修復において32%(P=0.01)改善および骨髄浮腫において36%(P=0.02)減少も示した。OCFによって誘導される主な病理にわたって、処置した関節は対照群と比較して全病理スコアにおいて25%(P=0.001)減少を示した(
図7B)。
【0125】
OCFの生成中およびエンドポイント(断片の外科的修復直前)で撮った関節鏡の画像はまた、病理に関して盲検的にスコア化した。共変数分析は、ベースラインとして処置前スコア(第−2週)を使用して実施した(
図8A〜8B)。
図8Aに示すように、これらの結果はMR画像からのものとほぼ一致した。処置群の動物は、骨軟骨病変(29%、P=0.03)および骨折に隣接する関節軟骨(17%、P=0.02)の著しく改善した修復を示した。グローバル軟骨スコアおよび靭帯炎症における改善に対する傾向があったが、これらは個々には統計的有意性は達成しなかった。しかしながら、累積的には、全ての病理パラメーターにわたって、処置したOCF関節は、全関節鏡病理スコアにおいて24%(P=0.04)改善を示した(
図8A)。これらのデータと一致して、処置群の8/10頭のウマにおいて、骨軟骨病変は、もともと作成された断片の除去のためにチゼルを必要とする程度まで修復した。逆に、対照群の7/10頭のウマにおいて、修復組織は圧入試験中スポンジ状であり柔らかく、断片は関節鏡鉗子によって容易に除去された。
【0126】
回収した断片および隣接する滑膜組織の組織学的検査は、OCF病変の境界での修復骨の質に有意差を示した(
図8B〜8C)。関節鏡検査法およびMRIからの知見と一致して、処置群において、境界面の骨組織はより成熟し、より大きなミネラル化および定義した骨単位の層状骨の形成を伴うようであった(
図8D)。対照群の修復組織は、主に一次網状骨から構成された。改善した軟骨に対する強い傾向があったが、スコアは統計的有意性の範囲のすぐ外に入る(P=0.06)。滑膜浸潤および線維症の平均スコアにおける中程度の減少も観察されたが、これらもまた統計的に有意ではなかった。基準の評価によって、処置した関節は未処置の対照群と比較して全病理スコアにおいて24%(P=0.003)改善を示した(
図8C)。
【0127】
eqIL−1Raレベルと関節病理の間の関連
自然発生したOAを有するウマ関節におけるGFP活性の増加を見ると(実施例1参照)、処置群のOCF関節におけるeqIL−1Ra発現と注射時の関節病理の重症度の間の関連は相関していた。各動物の第0週での全MRIスコアを、注射後第2週でのピーク滑液eqIL−1Raレベル(
図9A、左パネル)、および10週間の試験にわたる平均eqIL−1Raレベル(
図9A、右パネル)と比較して、10頭全てのウマを使用しても有意な相関は認められなかった。しかしながら、第2週で930ng/mlのeqIL−1Ra発現を有するウマは外れ値とみなされた場合、注射時の関節病理および第2週で産生されたeqIL−1Ra(r=0.80、P=0.01)および全ての時点にわたる平均eqIL−1Raレベル(r=0.69、P=0.03)の間に強い直接の相関が見出される。したがって、90%の動物では、処置時の関節病理および関節で産生されたトランスジェニックIL−1Raの量の間に有意な直接関連があった。
【0128】
興味深いことに、処置したOCF関節では、試験の10週間の過程にわたる平均滑液IL−1Raレベルは、約6〜159ng/mlの範囲であったが、治療利益との有意な相関は依然として見られなかった。注射直前の各ウマの全MRIスコア 対 エンドポイントの全MRIスコアのプロットは、生理食塩水と比較したAAV.eqIL−1Raによる処置の効果を示す(
図9B)。処置および対照群の最良適合直線のための式を使用して、病理の開始にかかわらず、scAAV.eqIL−1Raでの一貫した24〜25%改善が推定される。最も悪い全体的な病理を有する動物が、通常、最も高いレベルのeqIL−1Raを産生したことを考慮すると(
図9A)、産生された具体的な量のIL−1Raにかかわらず、かなり一貫した処置効果が全ての処置動物で観察された。動物間の導入遺伝子発現の変動性を考えると(
図5A〜5G、および9A)、これらのデータは、各動物に関して、scAAV.eqIL−1Raを受けるそれぞれの関節において産生されるIL−1Raのレベルが、このモデルシステムにおいて最大レベルの有効性を達成したことを示唆する。
【0129】
これらの試験は、大型哺乳動物関節において、直接関節内AAV媒介遺伝子送達が、滑液中の定常状態レベルの分泌型の相同な治療遺伝子産物(IL−1Ra)を内在性バックグラウンドの50倍を超えて上昇させ得ることを示す。急性骨軟骨病変に関しては処置した関節間の変動する発現にもかかわらず、IL−1Raの持続的な増加は、傷害後第2週でのAAV.IL−1Raの単回投与は、関節痛および関節内炎症を減らし、損傷した骨および隣接する軟骨の内在性修復を改善するように、意味のある利益を提供した。
【0130】
要するに、これらのデータは、サイズがヒトの膝に比例する関節においてAAVが持続的で、治療上適当なIL−1Ra発現を提供でき、関節傷害のすぐ後に適用した場合、前OAの急性モデルの症状発生に対して保護し得ることを実証した。さらに、ベクターまたは導入遺伝子への有害な応答は観察されず、少なくともウマのシステム内でのIL−1Raの関節内過剰発現は全身的な免疫抑制の明らかなリスクを提供しなかった。
【0131】
Ishiharaら(21)による報告と同様に、滑液および血清中両方において、ベクター送達後のNAb力価の増加が観察された。しかしながら、関節の軟骨細胞の形質導入の見かけの効率を考えると、それらは比較的安定な細胞集団である可能性があり、頻繁なベクターの再投与は必要がない場合がある。さらに、一次抗体力価が減退するにつれて、低力価で循環するNAbは、関節内に送達されたAAVビリオンの超生理学的なボーラスを阻害することができない場合がある。
【0132】
遺伝子発現パターン
薬物送達の従来の方法は、大きく予測可能な効果を達成するために規定される用量が投与され得る点で医師に妥当な程度の対照を提供する。現在のパラダイムでは、関節組織の細胞は組換えウイルスによって遺伝子改変され、関節腔および局所組織に抗関節炎タンパク質、IL−1Raを継続的に合成および分泌する。しかしながら、任意の特定の時間で産生されたトランスジェニックIL−1Raの量が関節に存在する改変細胞の集合的合成を反映するので、レベルは、ウイルスによってもともと改変され、それらの組成物および代謝活性における変化を確実にする細胞集団の性質に基づいて広く変動することができる(個体内および個体間の両方)。
【0133】
この点において、ウマ関節における本データは、処置時の関節の病理状態が、トランスジェニック発現に強力かつ直接的な影響を有することを示す。急性骨軟骨傷害を有する炎症した関節へのAAV.IL−1Ra送達は、健康な関節に見られるよりも平均IL−1Raレベルの約5倍の増加をもたらした。滑液中のIL−1Raは、処置後2週間で、OCF関節間で100倍を超える範囲であったが、10頭の動物のうち9頭において、注射および下流のIL−1Ra産生の時間で、病理のレベル(全MRIスコア)間に強い直接の相関があった。炎症の喪失および骨折の治癒と同時に、高くしたIL−1Ra発現は同様に、次第に減少し、第12週で、エンドポイントは正常な関節において産生されたレベルに近づいた。
【0134】
OAにおける治療遺伝子としてのIL−1Ra
scAAV.eqIL−1Raで処置した関節では、対照群に対して約25%の病理における平均改善が観察された。抗炎症薬としてのその役割と一致して(49)、eqIL−1Raの持続的な過剰発現は、可動性を改善し、関節滲出液および滑膜炎を低減した。病変に隣接する軟骨における保護の証拠があったが、効果は関節全体ではなかった。この急性傷害モデルでは、骨軟骨病変に遠位の軟骨変性は中程度であり、処置によるあらゆる変化を検出することを困難にした。より完全に軟骨侵食を阻害するこの処置の能力に関して、12ヵ月の時間枠にわたる慢性OAモデルにおける局所scAAV.eqIL−1Ra送達の有効性および安全性は、持続的なIL−1Ra発現がより明確な軟骨保護効果をもたらすことを示すと予想される。
【0135】
興味深いことに、滑液PGE
2の減少にもかかわらず、処置群は対照と比較して、骨軟骨骨折の修復の顕著な改善を示した。この知見は、骨折修復におけるシクロオキシゲナーゼ2およびプロスタグランジンのきわめて重要な役割を示す文献と矛盾するようである(50、51)。これらの分子は、骨治癒の急性炎症期に主に寄与するが、急性炎症期は、傷害後およそ7〜14日で消散し始め、細胞の分化およびマトリクス合成の修復プロセスにとって代わられる(52)。急性炎症は修復プロセスの開始に必要とされるが、持続的な炎症はWnt/β−カテニン経路の活性化および骨芽細胞分化を妨げることがあり、骨の修復を阻害する(53,54)。したがって、手術後2週間でベクターを投与することにより、IL−1Ra過剰発現からの減少した炎症性シグナル伝達は、修復期中の骨芽細胞分化の増強に役立ち、治癒の改善をもたらす可能性がある。このように、関節傷害後、類似の時間枠でのAAV.IL−1Raによる処置は、減少した炎症および増強した組織修復を可能な下流の軟骨保護と組み合わせて、外傷後OAにおいて治療的/予防的利益を提供し得る。
【0136】
広い範囲にわたる関節内IL−1Ra発現にもかかわらず、滑液のeqIL−1Ra含量と治療利益の間の相関は観察されなかった。これは、IL−1 1型受容体の競合阻害剤としてのIL−1Raの作用様式に起因した(4)。IL−1シグナル伝達の能力により、IL−1Raは、その活性を完全に阻害するためにIL−1の100〜1000倍過剰に存在しなければならない(55、56)。OCF関節において、滑液IL−1は、検出限界(16pg/ml)未満であった。したがって、処置した関節の大部分では、IL−1Raは6,000倍過剰に存在し、最も低い発現の関節で少なくとも400倍であった。IL−1Raは公知のアゴニスト効果を有さない(4)ので、いったん利用可能なIL−1受容体が占有されると、さらなるIL−1Raはさらなる利益を提供できない。これらの点を考慮すると、処置群において観察された関節病理の一貫した約24〜25%の改善は、IL−1Ra送達のこの方法を有するこの疾患モデルにおいて達成可能な最大の利益を反映する可能性がある。
【0137】
全体的なこれらのデータは、IL−1RaがOAの関節内遺伝子療法によく適していることを示す。それは、洗練された調節を必要とせず、治療閾値を超えた合成レベルだけを必要とする。達成されると、過剰生産は、ほとんど明白な有害結果を有さず、したがって、in vivoでのウイルス媒介遺伝子送達と関連する広い変動に寛容である。データは、大規模な病理ならびに組織および臓器のレベルで媒介されるプロセスを含むきわめて複雑な疾患のIL−1シグナル伝達構成成分をブロックすることができるだけであるため、IL−1Ra遺伝子送達はOAの治療法になる可能性は低いことを示す。それでもなお、IL−1は炎症カスケードの主要なドライバーであり、細胞レベルで媒介されるOAの侵食性のプロセスの大部分に活発な役割を果たすので、疾患重症度の広範なスペクトルにわたり、患者に意味のある利益をもたらす可能性を有する。
【0138】
要するに、この試験からのデータは、組換えAAVを使用する遺伝子ベースの療法が、ヒトサイズの関節に、安全で、持続的な、抗関節炎タンパク質の有効な送達を提供し得ることを実証する。さらに、関節傷害後まもなく適用したAAV.IL−1Raは、前OAの急性モデルの症状発生を減少することができる。任意の既存の処置とは異なり、この手法は疾患の痛みのある症状および侵食性の進行をブロックする能力を有する。本明細書での知見に基づき、AAV.IL−1Raは有効性を適切なレベルの安全性と合わせ、ヒトおよびウマOAでの臨床試験を支えるプロファイルを提供する。
【0139】
(実施例3:コドン改変ヒトIL−1Ra cDNAの生成)
遺伝子改変された細胞からのIL−1Raの最も高い発現(分泌)を提供した、ヒトインターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)のcDNAは、遺伝子療法プロトコールにおける臨床適用の目的で生成された。この目的のため、天然のcDNA配列コドンを2つのDNA合成会社GeneScriptおよびGeneArtのヒト最適化アルゴリズムを使用して改変した。2つの改変したIL−1Ra配列は、翻訳開始部位のすぐ上流にコンセンサスコザック配列ありおよびなしで、GeneArtから注文した。合成cDNAを受け取ると、3つ全てを、pHpa−trs−SKプラスミド、AAV2のゲノムから操作された自己相補型(二本鎖DNA)AAVベクターバリアントの発現カセットのSacIIおよびNotI部位に指向的に挿入し、Sure II細菌細胞に形質転換した。この構築物において、導入遺伝子の発現はCMV最初期プロモーター/エンハンサーによって駆動される。それぞれの挿入の検証後、大規模培養物を3つの新しい構築物、ならびにa)ヒトIL−1Raの天然のcDNA、およびb)緑色蛍光タンパク質(GFP)のコード配列を含有する2つの既存のscAAVベクター構築物から生成した。各培養物からプラスミドを単離し、塩化セシウム勾配によって2回精製した。各DNA調製物の濃度は、分光光度計およびアガロースゲルによる可視化によって決定した。
【0140】
各構築物からのIL−1Raタンパク質の相対発現を決定するため、等量の各プラスミドを、約70%コンフルエンシ―のHEK293細胞にトランスフェクトした。およそ48時間後、各培養物からの馴化培地を収集し、ヒトIL−1Ra含量を市販のキットを使用してELISAによって測定した。
図10は、各プラスミド構築物による3つのトランスフェクションからの平均レベルを示す。予想したように、scAAV.GFPプラスミドを受ける培養物には測定可能なIL−1Raは見られなかった。3つのコドン改変cDNAからのIL−1Ra発現は、天然の配列からのIL−1Ra発現を約2〜4倍上回った。GeneArtによって合成された両構築物からのIL−1Ra発現はGeneScriptからのIL−1Ra発現を上回ったが、コンセンサスコザック配列を有するGeneArt cDNAは最も高いIL−1Ra発現を提供した。
【0141】
異なる細胞系において、293細胞で観察された結果を確かめるため(
図10)、GeneArtコドン改変ヒトIL−1Ra cDNA(コザックリーダー配列ありおよびなし)を含有する等量のscAAVベクタープラスミドを、ヒト骨肉腫(OS)細胞の培養物に、約75%コンフルエンシ―でトランスフェクトした。OS細胞の並行培養物に、GFPまたは天然のヒトIL−1Raのコード配列を含有するscAAVベクタープラスミドをトランスフェクトした。およそ48時間後、培養物から培地を採取し、IL−1Ra含量を市販のELISAによって測定した。
図11は、各プラスミドによる3つのトランスフェクションからの平均レベルを示す。293細胞で見られたのと同様に(
図10)、改変構築物を受けるOS細胞からのヒトIL−1Ra発現は、天然のヒト配列からのものよりも実質的に高く、コザック配列を有する改変配列は全体で最も高いレベルを産生した。
【0142】
ウイルス媒介遺伝子送達に関して、改変ヒトIL−1Ra cDNAの発現レベルを試験するため、a)GFP、b)天然のヒトIL−1Ra、およびc)コザックリーダーを有するGeneArtコドン改変ヒトIL−1Ra配列(opt+K)のコード配列を含有するscAAVベクタープラスミドは、AAV2カプシドにパッケージングした。それぞれのウイルス調製物の力価は、PCRおよびスロットブロットアッセイの両方によって決定した。初代ヒト滑膜線維芽細胞の培養物に、IL−1Raウイルス調製物の両方を、細胞当たり10
3〜10
5のDNAse耐性ウイルスゲノム(vg)の用量の範囲にわたって感染させた。10
5vg/細胞のscAAV.GFPによる並行感染は、陰性対照として使用した。感染5日後、感染した培養物によって馴化した培地を採取し、ELISAによってIL−1Ra含量を分析した。
図12に示すように、コドン改変ヒトIL−1Raベクターを感染させた細胞は、全てのウイルス用量で、より高いレベルのトランスジェニックヒトIL−1Raを産生した。
【0143】
図13は、天然のヒトIL−1Ra cDNAおよび下線を引いたコザック配列を含むコドン改変IL−1Ra配列のアライメントを示す。アライメントは、天然のIL−1Ra cDNA配列における534ヌクレオチド中105個が、改変によって変更されたことを示す。DNA配列はIL−1Ra RNAの翻訳および発現を改善するために変更され、翻訳されたタンパク質のアミノ酸配列は天然のタンパク質と同一である。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0144】
他の実施形態
本明細書で開示される全ての特性は、任意の組合せで組み合わされてよい。本明細書で開示される各特性は、同じ、均等のまたは類似の目的を果たす代替的特性によって置き換えられてよい。したがって、そうでないと明確に述べる場合を除いて、開示される各特性は、一般的な一連の均等または類似の特性の一例にすぎない。
【0145】
上の記載から当業者は、本開示の本質的な特徴を容易に確認でき、それを種々の使用および条件に適合させるために、本開示の種々の変更および改変を、その精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内である。
【0146】
均等物
いくつかの発明実施形態が本明細書に記載および例示されているが、当業者は、本明細書に記載される機能を実施するため、ならびに/または結果および/もしくは1つもしくは複数の利点を得るための種々の他の手段ならびに/または構成を容易に想定し、そのような変形形態および/または改変のそれぞれは、本明細書に記載される発明実施形態の範囲内であると見なされる。さらに一般には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメーター、大きさ、材料および配置が例示的であることが意図され、実際のパラメーター、大きさ、材料および/または配置が、発明教示が使用される1つまたは複数の具体的な適用に依存することを容易に理解する。当業者は、本明細書に記載される具体的な発明実施形態への多数の均等物を認識する、または単なる日常的な実験を使用して確認できる。したがって、前述の実施形態が例示の方法によってのみ示され、添付される特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、発明実施形態が具体的に記載される以外の方法で実施され、特許請求され得ることは理解される。本開示の発明実施形態は、本明細書に記載されるそれぞれ個々の特性、システム、論文、材料、キットおよび/または方法を対象とする。付加的に、2つまたはそれより多いそのような特性、システム、論文、材料、キットおよび/または方法の任意の組合せは、そのような特性、システム、論文、材料、キットおよび/または方法が互いに矛盾しない場合、本開示の発明範囲内に含まれる。
【0147】
本明細書で定義され、使用される全ての定義は、辞書的定義、参照により組み込まれる文書における定義、および/または定義された用語の通常の意味を網羅して管理すると理解されるべきである。
【0148】
本明細書で開示される全ての参考文献、特許および特許出願は、それについてそれぞれが引用される対象物に関して参照により組み込まれ、一部の場合は、文書全体を包含し得る。
本明細書で使用される場合、本明細書におけるおよび特許請求の範囲における、不定冠詞「a」および「an」は、そうでないと明らかに示される場合を除いて、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0149】
本明細書で使用される場合、本明細書におけるおよび特許請求の範囲における句「および/または」は、結合される要素、すなわち一部の場合では結合して存在し、他の場合では分離して存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」を用いて列挙される複数の要素は、同じ様式にある、すなわち、そのように結合された要素の「1つまたは複数」と理解されるべきである。他の要素は、「および/または」節で具体的に同定された要素以外に、具体的に同定されたこれらの要素に関連するまたは関連しないに関わらず必要に応じて存在してよい。それにより、非限定的例として、「含む」などの非限定語(open−ended language)と併せて使用される場合「Aおよび/またはB」の言及は、一実施形態では、Aのみ(必要に応じてB以外の要素を含む);別の実施形態では、Bのみ(必要に応じてA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(必要に応じて他の要素を含む);などを指す場合がある。
【0150】
本明細書で使用される場合、本明細書におけるおよび特許請求の範囲における「または」は、上に定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、列挙における項目を分離する場合、「または」または「および/また」は、包括的、すなわち少なくとも1つだけでなく、1つより多くを含んで、数または列挙における要素、および必要に応じて、追加的な列挙されていない項目の含有であるとして解釈される。「1つだけ」または「正確に1つ」または特許請求の範囲において使用される場合の「からなる(consisting of)」などの、それとは反対と明確に示される用語だけは、数または列挙における要素の正確に1つの要素の含有を指す。一般に、本明細書で使用される場合、用語「または」は、「いずれか(either)」、「1つの」、「1つだけ」または「正確に1つ」などの排他的用語が先行する場合、排他的選択肢を示す(すなわち「一方または他方だが両方でなく」)としてだけ解釈される。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法の分野において使用されるその通常の意味を有する。
【0151】
本明細書で使用される場合、本明細書においておよび特許請求の範囲において、1つまたは複数の要素の列挙を参照して、句「少なくとも1つ」は、要素の列挙における任意の1つまたは複数の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素の列挙において具体的に列挙されたそれぞれおよび全ての要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、要素の列挙における要素の任意の組合せを排除しないと理解されるべきである。この定義は、具体的に同定されたこれらの要素に関連するまたは関連しないに関わらず、句「少なくとも1つ」が指す要素の列挙内において具体的に同定された要素以外に、要素が必要に応じて存在する場合があることも許容する。それにより、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または均等に、「AまたはBの少なくとも1つ」または均等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つの、必要に応じて1つより多くを含んで、AをBが存在せずに指し(および必要に応じてB以外の要素を含む);別の実施形態では、少なくとも1つの、必要に応じて1つより多くを含んで、BをAが存在せずに指し(および必要に応じてA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、少なくとも1つの、必要に応じて1つより多くを含んで、Aおよび少なくとも1つの、必要に応じて1つより多くを含む、Bを指す(および必要に応じて他の要素を含む);などを指す場合がある。
【0152】
それとは反対と明確に示される場合を除いて、1つより多いステップまたは作用を含む、本明細書で特許請求される任意の方法において、方法のステップまたは作用の順序は、方法のステップまたは作用が引用される順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
【0153】
特許請求の範囲、および上の本明細書では、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「からなる(composed of)」などの全ての移行句は、非限定である、すなわち、含むがこれに限定されないことを意味すると理解される。移行句「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」だけは、the United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures、2111.03節に記載されるとおり、それぞれ限定的または半限定的移行句である。非限定的移行句(例えば、「含む(comprising)」)を使用する本文書に記載される実施形態が、代替的実施形態では、非限定的移行句によって記載された特性「からなる(consisting)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」としても企図されることは理解されるべきである。例えば、本開示が「AおよびBを含む組成物」を記載する場合、本開示は、代替的実施形態「AおよびBからなる組成物」およびに「AおよびBから本質的になる組成物」も企図する。